説明

スクリーニングアッセイ

本発明は、タンパク質、ペプチドまたはそれらのフラグメントの不均質サンプルを分析するための方法を提供し、この方法は、(a)アレイ上の間隔をあけて離れた規定された位置に各クラスのメンバーを結合させることによって、タンパク質もしくはペプチドまたはそれらのフラグメントの不均質サンプルを不均質なクラスに分離するステップであって、各クラスのメンバーが、そのクラスに共通するモチーフを有するステップ;および(b)各クラス中のタンパク質またはペプチドもしくはそれらのフラグメントを特性決定するステップを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーニングアッセイに関する。
【背景技術】
【0002】
機能ゲノミクスは、各遺伝子が何をしているか、どのように調節されるか、異なる遺伝子および遺伝子産物がどのように相互作用するかを理解することを目的とした研究分野である。機能ゲノミクスの重要な態様は、遺伝子産物(例えばタンパク質)の構造および機能を理解することであり、のみならず遺伝子がどこで、いつ、どの程度発現されるかを決定することが可能である。用語発現プロファイリングまたは発現分析は、mRNA発現(転写分析)およびタンパク質分析(プロテオーム分析すなわちプロテオミクス)の両方の研究を通常包含する。
【0003】
転写分析は、(例えば、Affymetrix、USAなどから市販されるマイクロアレイを使用して)マイクロアレイ形式でDNAを使用して典型的に実施されて、数千または数万のmRNA分子の平行検出を同時に可能にする。典型的に、これらのアレイは、異なる組織中の転写物の分布をマッピングするため、または例えば健康な個体と病気の個体との間のmRNA発現レベルにおける差異を研究するために使用される。薬物開発および薬物発見における適用は、標的の同定と患者の層別とを含む。
【0004】
タンパク質発現プロファイリングすなわちプロテオミクスは、例えば、組織または細胞集団中のタンパク質内容物の全体的分析である。
【0005】
質量分析と組み合わされた2次元電気泳動は、数千のタンパク質を分離するのに充分に高い分解能を有する、複雑なタンパク質サンプルの分析のための充分に確立された技術である。この技術の主要な欠点は、ダイナミックレンジの欠如(あまり豊富でない種をマスクする傾向がある構造タンパク質および豊富な代謝酵素)、低いスループットおよび高い労働集約性である。
【0006】
表面増強レーザー脱離/イオン化(SELDI)(Weinbergerら、2002、Journal of Chromatography B、782、307〜316頁)は、親和性表面(例えば、イオン交換、逆相、抗体)上のタンパク質の部分集団の選択的富化と、その後のマトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析(MALDI-TOF)(UV光吸収マトリックスおよび生体分子の共沈物が、ナノ秒のレーザーパルスによって照射される技術)による質量分析的分析とに基づく技術である。レーザーエネルギーのほとんどは、生体分子の所望されないフラグメント化を防止するマトリックスによって吸収される。イオン化された生体分子は電場中で加速され、フライトチューブ中でそれらの質量電荷比に従って分離される。しかし、このシステムの分解能は、大きいタンパク質を分析するためのMALDI-TOF質量分析の限定された分解および使用される段階的な固相抽出型の分離技術によって達成されるタンパク質の最適未満の分離に起因して、制限されている。
【0007】
別の代替的な技術は、同位体コードアフィニティタグ(ICAT)(Gygiら、1999、Nature Biotechnology、17(1)994〜9頁)と称され、この技術は、2つの異なるサンプル中のタンパク質発現パターンを比較するために、システイン特異的ビオチンタグを利用する。このタグは、トリプシン消化されたタンパク質混合物からのシステイン含有ペプチドの抽出を可能にし、分析がより容易に実施できるレベルまでペプチドフラグメントの複雑さを低下させる。異なる同位体組成を有する2つの異なるタグを使用することによって、質量分析によって分析した場合に2つの異なるサンプル由来のペプチドが識別され得、存在率の相対的な概算が得られる。しかし、このICAT技術の制限には、高度に複雑なサンプルの複雑さの不十分な低下(従って、液体クロマトグラフィーによるさらなる分離を必要とする)およびシステインを欠くタンパク質は検出されないという事実が含まれる。
【0008】
上記の技術の全ては、例えば、感度、速度、分解能および異なるタイプのタンパク質(例えば、可溶性タンパク質および膜結合タンパク質)に適用される能力に関する一組の制限を被っている。
【0009】
先行技術において公知のタンパク質サンプルを分析する他の方法には、各々が既知のタンパク質由来の既知のペプチドに特異的に結合する抗体を使用した、トリプシンにより生成されたペプチドの捕捉が含まれる(Scrivener,E.ら、2003、Proteomics 3(2)、122〜8頁;WO 02/25287)。次いで、捕捉されたペプチドは、MALDI-TOF質量分析によって特性決定される。類似のアプローチがNelsonら(1995、Anal Chem 67、1153〜8頁)によって記載されており、この文献中、特異的抗体がインタクトなタンパク質を捕捉し、捕捉されたタンパク質が溶出され、質量分析によって分析される。
【非特許文献1】Weinbergerら、2002、Journal of Chromatography B、782、307〜316頁
【非特許文献2】Gygiら、1999、Nature Biotechnology、17(1)994〜9頁
【非特許文献3】Scrivener,E.ら、2003、Proteomics 3(2)、122〜8頁
【特許文献1】WO 02/25287
【非特許文献4】Nelsonら(1995、Anal Chem 67、1153〜8頁)
【非特許文献5】Jenkins,R.E.、Pennington,S.R.(2001、Proteomics、2、13〜29頁)
【非特許文献6】Lalら(2002、Drug Discov Today 15;7(18補遺):S143-9頁)
【非特許文献7】Betterら(1988)Science 240、1041頁
【非特許文献8】Skerraら(1988)Science 240、1038頁
【非特許文献9】Birdら(1988)Science 242、423頁
【非特許文献10】Hustonら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85、5879頁
【非特許文献11】Wardら(1989)Nature 341、544頁
【非特許文献12】WinterおよびMilstein(1991)Nature 349、293〜299頁
【非特許文献13】Clacksonら、1991、Nature 352、624〜628頁
【非特許文献14】Marksら、1991、J Mol Biol 222(3):581〜97頁
【非特許文献15】Smith、1985、Science 228(4705):1315〜7頁
【非特許文献16】Santiら(2000)J Mol Biol 296(2):497〜508頁
【非特許文献17】Gunneriussonら、1999、Appl Environ Microbiol 65(9):4134〜40頁
【非特許文献18】Kenanら、1999、Methods Mol Biol 118、217〜31頁
【非特許文献19】Kiekeら、1999、Proc Natl Acad Sci USA、96(10):5651〜6頁
【非特許文献20】HanesおよびPluckthun、1997、Proc Natl Acad Sci USA 94(10):4937〜42頁
【非特許文献21】HeおよびTaussig、1997、Nucleic Acids Res 25(24):5132〜4頁
【非特許文献22】Nemotoら、1997、FEBS Lett、414(2):405〜8頁
【特許文献2】EP 39578
【非特許文献23】Daughertyら、1998、Protein Eng 11(9):825〜32頁
【非特許文献24】Daughertyら、1999、Protein Eng 12(7):613〜21頁
【非特許文献25】Shustaら、1999、J Mol Biol 292(5):949〜56頁
【特許文献3】米国特許第5856090号
【特許文献4】WO 98/37186
【非特許文献26】Roepstorff,P、2000、EXS、88:81〜97頁
【非特許文献27】Goshe B GおよびSmith D S(2003)Curr Opinion Biotech、14:101〜109頁
【特許文献5】WO 02/060377
【非特許文献28】Hawkins,R.E.、Russel,S.J.およびWinter,G.(1992)J.Mol.Biol.、226、889〜896頁
【非特許文献29】Soederlindら(2000)Nature Biotech、18、852〜856頁
【非特許文献30】Jenkins R.E.およびPennington,S.R.(2001)Proteomic、1、13〜29頁
【非特許文献31】Anderson NL、Anderson NG.(2002)Mol Cell Proteomics、1(11):845〜67頁
【非特許文献32】Borrebaeck CAK、Ekstroem S、Malmborg Hager AC、Nilsson J、Laurell TおよびMarko-Varga G(2001)Biotechniques 30、1126〜1132頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
これらのアプローチは共に、分析されるべきタンパク質成分のアイデンティティを前提とし、各個々のタンパク質に対する結合分子の生成を必要とする。従って、例えば2000のタンパク質を検出および測定するためのアレイを設計するために、これら2000のタンパク質またはペプチドが単離または合成され、その後に2000の特異的抗体または他の結合分子が生成されなければならない。対照的に、本発明は、多数のペプチド(例えば、10,000)を検出でき、はるかに少ない(例えば、わずか200)の異なるバインダーを使用することによって、同様に多数のタンパク質を示すことができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
従って、本発明の第1の態様は、ペプチドもしくはタンパク質またはそれらのフラグメントの不均質サンプルを分析するための方法を提供し、この方法は、
(a)アレイ上の間隔をあけて離れた規定された位置に各クラスの不均質なペプチドメンバーまたはタンパク質メンバーを結合させることによって、ペプチドもしくはタンパク質またはそれらのフラグメントの不均質サンプルを不均質なクラスに分離するステップであって、各クラス中のペプチドまたはタンパク質は、そのクラスに共通するモチーフを有するステップ;および
(b)各クラス中のペプチドまたはタンパク質を特性決定するステップを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
ペプチドまたはタンパク質の不均質サンプルは、細胞サンプルまたは組織サンプルから抽出できるか、あるいは典型的に(必ずしもそうではないが)ヒト起源の細胞サンプルまたは組織サンプルから抽出されたペプチドおよびタンパク質の不均質サンプルのフラグメント化に由来することが可能である。この細胞サンプルまたは組織サンプルは、正常組織または罹患組織に由来することが可能である。この細胞サンプルまたは組織サンプルは、種々の状態の分化または活性の組織に由来することが可能である。タンパク質およびペプチドのさらなる適切な供給源には、原核生物、真核細胞系統、ノックアウトマウスおよび他の動物モデル由来の組織材料、ならびにトランスジェニック植物および植物材料が含まれる。
【0013】
この不均質サンプルは、特に豊富なタンパク質またはペプチド(例えば、血清サンプル中のアルブミンおよび/または免疫グロブリン)を除去するため、あるいは特定のタンパク質もしくはペプチドまたはタンパク質もしくはペプチドの群についてサンプルを富化するために、分析前に処理できる。
【0014】
ペプチドまたはタンパク質の不均質なクラスの各々は、アレイ上に存在する特定の結合分子に結合する不均質サンプル中の全てのペプチドまたはタンパク質からなる。この結合分子は、特定のタンパク質またはペプチドではなくモチーフを結合するその能力について選択され、従って、結合分子は、同じモチーフを含む異なるタイプのタンパク質およびペプチドを結合することができる。好ましくは、各結合分子は所定のモチーフに対して特異的である。従って、本発明の方法において所定の結合分子によって結合されたタンパク質およびペプチドの不均質なクラスは、典型的には平均として少なくとも2つ、より典型的には2つより多くの(例えば、10、20、50、100、200、500、1000またはそれより多くの)異なるタイプのタンパク質またはペプチドを含む。「異なるタイプ」によって、本発明者らは、アミノ酸配列、質量、翻訳後修飾などが異なるタンパク質およびペプチドの意味を含める。
【0015】
従って、タンパク質およびペプチドは、特定の結合分子によって捕捉および保持されるそれらの能力に基づいて、本発明によって分類される。ペプチドまたはタンパク質の不均質なクラスは、特定のクラス全てのメンバーに共通するモチーフの存在に起因して、特定の結合分子に結合する。従って、各クラスのペプチド中の結合したモチーフのアイデンティティは、そのクラスを規定する結合分子の結合特異性の結果である。
【0016】
このモチーフは、アミノ酸(例えば、4、5、6、7、8、9、10またはそれより多くのアミノ酸)の線状または非線状の配列であり得る。線状モチーフは、連続するアミノ酸から形成される。非線状モチーフは、その配列中では隣接しないが、タンパク質またはペプチドの3次元折り畳みの結果として互いに近位になったアミノ酸を含む。
【0017】
アレイ上の結合分子は、タンパク質またはペプチド内の特定の位置の配列(例えば、C末端、N末端または内部特徴(例えば、配列または改変アミノ酸)に対して規定された位置の配列)に対して特異的であり得る。例えば、アレイ上の全ての結合分子がC末端配列に対して特異的であり得るが、各タイプの結合分子は、このアレイ上の他のタイプの結合分子とは異なるC末端配列に対して特異的であり得る。
【0018】
同様に、このアレイ上の結合分子は、「一定」のアミノ酸および可変アミノ酸の混合物を含む配列に対して特異的であり得る。一定のアミノ酸(以下でさらに規定される)は、そのアレイ上の全ての結合分子によって結合される全てのモチーフに共通する一定の特徴を提供することが可能である。しかし、アレイ上の各タイプの結合分子によって結合されるモチーフの正確なアイデンティティは、各モチーフ中に異なるセットの可変アミノ酸が含まれることに基づいて異なり得る。
【0019】
通常、各ペプチドまたはタンパク質中のモチーフは、3つ、4つまたは5つの可変アミノ酸を含む。これらの可変アミノ酸は、ペプチドまたはタンパク質内の(例えば、C末端、N末端または内部特徴に対する)それらの位置によって、および/または「一定の」アミノ酸をも含むより大きいモチーフの一部を形成することによって、このモチーフの一部として同定できる。
【0020】
さらにまたはあるいは、このモチーフの特徴は、改変アミノ酸(例えば、リン酸化アミノ酸またはグリコシル化アミノ酸)の存在であり得る。好ましくは、このモチーフは、少なくとも1つの未改変アミノ酸を含むべきである。より好ましくは、このモチーフ中の全てのアミノ酸が未改変である。
【0021】
サンプルのフラグメント化
本発明の方法は、タンパク質またはペプチドの不均質サンプルをフラグメント化してペプチドフラグメントの不均質サンプルを生成する、最初のステップを含み得る。
【0022】
タンパク質またはペプチドの不均質サンプルのフラグメント化は、元のタンパク質またはペプチドの各々を提示すペプチド分子の数を増大させ得るので、有利であり得る。例えば、元のサンプル中のタンパク質がフラグメント化される場合、その複数のフラグメントのいずれか1つの結合は、マーカーとしてか、またはそのタンパク質の存在および存在率として使用できる。言い換えれば、フラグメント化により、任意の所定の不均質なクラス中に任意の特定のタンパク質またはペプチドが提示される機会が増大する。このことは、分析される各サンプルから得られる情報を減少させることなく、より少ない結合分子が使用できることを意味する。
【0023】
フラグメント化はまた、フラグメント化なしには分析され得ない膜貫通タンパク質の検出を可能にする。
【0024】
【表1】

【0025】
表中、R1およびR2は、以下の式に従って規定される:
N末端---NH-CHR1-CO-NH-CHR2-CO---C末端
【0026】
タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドの不均質サンプルのフラグメント化のステップは、当該分野で公知の任意の方法によって達成できる。例えば、化学的切断または酵素的切断が使用できる。化学的切断または酵素的(すなわち、プロテアーゼに指向される)切断の多数の方法が当該分野で公知である。例えば、プロテアーゼには、トリプシン、キモトリプシン、ペプシン、トロンビン、パパイン、ブロメライン、サーモライシン、サブシリシン(subsilisin)、第Xa因子、Staphylococcus aureusプロテアーゼおよびカルボキシペプチダーゼAが含まれる。好ましい実施形態において、フラグメント化方法は、規定された位置でタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドを切断する。酵素的切断は典型的に、上記表1に示されるような配列指向性である。化学的切断方法もまた配列指向性であり得る(例えば、メチオニンのC末端側でタンパク質またはペプチドを切断する臭化シアンフラグメント化)。
【0027】
従って、例えばトリプシン切断は、タンパク質、ポリペプチドまたはペプチド中のアルギニン残基またはリジン残基の存在によって切断が指向されるので、配列指向性のフラグメント化手段であり、従ってそれらのC末端残基としてアルギニンまたはリジンのいずれかを有する切断フラグメントを生成する。当業者は、「指向性」フラグメント化の多数の他の手段(例えば、WO 02/25287(この内容は、本明細書中で参考として援用される)中に記載される手段)を知っている。
【0028】
通常、各フラグメント中のモチーフは、切断部位に対して、各フラグメント中の同じ位置にある。従って、例えば、フラグメントが配列指向性の切断機構(以下を参照のこと)によって生成される場合、このモチーフは、切断によって生成された末端の部位に隣接する1つまたは複数のアミノ酸を含んでもよく、そのいくつかは、配列指向性の切断機構の結果として一定であり得る。
【0029】
従って、切断を指向する配列を形成する1つまたは複数のアミノ酸が、このフラグメント中に保持できる。例えば、トリプシン切断がフラグメント化方法として使用される場合、生成されたフラグメントは、それらのC末端残基としてアルギニンまたはリジンのいずれかを有する。従って、このモチーフは、切断部位の一部を形成するアミノ酸を包含することが可能である。
【0030】
従って、生成された各フラグメント中のモチーフは、1つまたは複数の(例えば、2つ、3つ、4つまたはそれより多くの)一定のアミノ酸を含み得る。本発明の目的のために、当業者は、モチーフ内のアミノ酸に関して使用する場合、用語「一定の」は、低いレベルの可変性(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9または10種の可能性)が存在するアミノ酸位置を含むことを理解されよう。より低い数が好ましい。例えば、トリプシンフラグメント中のモチーフは、C末端アミノ酸(従って、アルギニンまたはリジンのいずれかの一定の残基である)を含み得る。言い換えれば、「一定の」アミノ酸のアイデンティティは、他の「可変」位置ほどランダムではない。
【0031】
従って、このモチーフは、一定のアミノ酸および一定でない(すなわち可変)アミノ酸の混合物から形成できる。通常、このモチーフは、3つ、4つまたは5つの可変アミノ酸を含み、このモチーフ中の他のアミノ酸(存在する場合)は、全てのフラグメント間で一定である。
【0032】
アレイ
タンパク質、ペプチドおよび/またはそれらのフラグメントの不均質サンプルをモチーフの存在に基づいて不均質なクラスに分離するステップは、アレイ上の間隔をあけて離れた規定された位置に各クラスのメンバーを結合させることによって達成される。
【0033】
アレイ自体は当該分野で周知である。典型的に、アレイは、固体支持体の表面上に形成された、各々が限定された面積を有する間隔をあけて離れた(すなわち別個の)領域(「スポット」)を有する線状または2次元の構造によって形成されている。アレイはまた、各ビーズが分子コードもしくは色コードによって同定できるかまたは連続フローにおいて同定できるビーズ構造であり得る。分析はまた、各々が溶液から分子のクラスを吸着する一連のスポット上をこのサンプルが通過する場合に、連続的に実施できる。この固体支持体は、典型的にはガラスまたはポリマーであり、最も一般に使用されるポリマーは、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルまたはポリプロピレンである。この固体支持体は、チューブ、ビーズ、ディスク、シリコンチップ、マイクロプレート、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)メンブレン、ニトロセルロースメンブレン、ナイロンメンブレン、他の多孔性メンブレン、非多孔性メンブレン(例えば、とりわけプラスチック、ポリマー、パースペックス、シリコン)、複数のポリマーピン、または複数のマイクロタイターウェル、あるいはタンパク質、ポリヌクレオチドおよび他の適切な分子を固定化するためおよび/またはイムノアッセイを実施するために適切な他の表面の形態であり得る。結合プロセスは当該分野で周知であり、タンパク質分子、ポリヌクレオチドなどを固体支持体に架橋、共有結合または物理的に吸着するステップから一般になる。周知の技術(例えば、接触または非接触の印刷、マスキングまたは光リソグラフィ)を使用することによって、各スポットの位置が規定できる。概説については、Jenkins,R.E.、Pennington,S.R.(2001、Proteomics、2、13〜29頁)およびLalら(2002、Drug Discov Today 15;7(18補遺):S143-9頁)を参照のこと。
【0034】
典型的に、このアレイはマイクロアレイである。「マイクロアレイ」によって、本発明者らは、少なくとも約100/cm2、好ましくは少なくとも約1000/cm2の密度の別個の領域を有する領域のアレイの意味を含める。マイクロアレイ中の領域は、約10μm〜約250μmの範囲内の典型的な寸法(例えば直径)を有し、ほぼ同じ距離だけこのアレイ中の他の領域から分離されている。
【0035】
典型的に、アレイ上のこれらのスポットは、(以下に規定されるような)多数の異なるタイプの結合分子を含み、各タイプは、このアレイ上の別個のスポットに固定化されている。従って、規定された位置でスポットを生成する方法を使用することによって、このアレイ上の各スポットのアイデンティティおよび/または結合親和性を知ることが可能である。
【0036】
好ましくは、各タイプの結合分子、従って各スポットは、上で規定したような規定されたモチーフに特異的に結合することが可能であり、異なるタイプの結合分子は異なる結合特異性を有する。従って、1つのスポットに結合するタンパク質、ペプチドおよび/またはそれらのフラグメントは、共通のモチーフを共有する。逆に、異なるスポット上のタンパク質、ペプチドおよび/またはそれらのフラグメントは、異なるモチーフの存在に基づいて不均質なクラスに分離される。
【0037】
従って、このモチーフが末端配列(例えばC末端配列)である場合、1つのスポットにおける結合分子は、所定の第1のC末端配列を含むタンパク質、ペプチドおよび/またはそれらのフラグメントに特異的に結合するが、別のスポットにおける結合分子は、所定の第2のC末端配列を含むタンパク質、ペプチドおよび/またはそれらのフラグメントに特異的に結合する(この第1および第2のC末端配列は異なっている)。
【0038】
一実施形態において、このアレイ上の全ての結合分子がC末端モチーフに対して特異的である。別の実施形態において、このアレイ上の全ての結合分子がN末端モチーフに対して特異的である。別の実施形態において、このアレイ上の全ての結合分子が、位置的に保存されていないモチーフに対して特異的である。
【0039】
タンパク質またはペプチドが分析前にフラグメント化される場合、規定された標的モチーフは、使用されるフラグメント化方法に依存して選択できる。例えば、トリプシン切断がフラグメント化方法として使用される場合、上で考察したように、生成されたフラグメントは、それらのC末端残基としてアルギニンまたはリジンのいずれかを有する。従ってこれは、例えば、それらの最初の4つのC末端残基に基づいてフラグメントを分離するために有用であり得る。各フラグメントは、それらのC末端残基としてアルギニンまたはリジンのいずれかを有するので、可変性は、位置2、3および4(これに関しては、位置1と称されるC末端残基に対する)においてのみ見出される。この例において、C末端テトラペプチドによって示される可変性の最大レベルは、2×20×20×20=16,000種の可能なモチーフである。同じスキームを使用して、トリプシン化フラグメントを分類するために使用されるモチーフが、例えば、それらの最初の5つのC末端残基に基づく場合、示される可変性の最大レベルは、2×20×20×20×20=320,000種の可能なモチーフである。
【0040】
当業者は、生成された異なる末端モチーフの総数は、各モチーフ標的モチーフ中の可変アミノ酸の数を増大させることによって増大でき、可変アミノ酸を一定のアミノ酸で置換することによって低減できることを理解する。さらに、タンパク質、ペプチドまたはそれらのフラグメントの不均質サンプル中の各モチーフの存在率は、そのモチーフのサイズを減少させることによって増大でき、そのモチーフのサイズを増大させることによって低減できる。
【0041】
従って、規定された末端アミノ酸または規定された末端配列を有するフラグメントを生成するために配列指向性切断機構を使用するフラグメント化方法が、任意の所定の長さのモチーフについて異なる末端モチーフの総数を減少させるために使用できる。
【0042】
本発明の第2の態様は、上で規定したような方法における使用に適切なアレイを提供し、このアレイは多数の異なるタイプの結合分子を含み、各タイプはこのアレイ上の規定された別個の位置で固定化され、各タイプの結合分子は上で規定したようなモチーフに特異的に結合することが可能であり、この異なるタイプの結合分子は異なる結合特異性を有する。
【0043】
このアレイは、存在する異なる可能なモチーフほど多数の異なるタイプの結合分子を有する必要はない。これは、(WO 02/25287などの先行技術の方法とは異なり)各結合分子が特定のタンパク質ではなくモチーフに対してのみ特異的であり、従って、複数種のタンパク質、ペプチドまたはそれらのフラグメントがこのアレイ上の所定のスポットに結合することが可能であるからである。さらに、タンパク質サンプルまたはペプチドサンプルが分析前にフラグメント化される場合、元のサンプル中の各タンパク質またはペプチドは、複数のフラグメントを生成することが可能である。従って、このアレイは、適切な数の異なるタイプの結合分子を提供でき、その結果、このサンプル中の各タンパク質またはペプチド由来の少なくとも1つのフラグメントが、結合分子に特異的に結合できる。
【0044】
実際、当業者は、フラグメント化されていないサンプルのタンパク質またはペプチドの全てが提示すことができるわけではない場合でさえ、タンパク質またはペプチドの不均質サンプルが有用に特性決定され得ることを理解する。理想的には、アレイ上に提供された異なるタイプの結合分子の数は、このサンプル中のタンパク質またはペプチドのタイプの少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%または実質的に100%を捕捉するのに適切であるか、あるいはサンプル中のタンパク質またはペプチドのタイプの上記の百分率由来の少なくとも1つのフラグメントを捕捉するのに適切である。本明細書中で使用される場合の百分率は、質量による総タンパク質含量をいうのではない。なぜなら、サンプルは多種のタンパク質を含むことができるが、1つの特定のタンパク質が優勢であってもよく、その場合、全ての他のタンパク質を排除するほどのこの優勢なタンパク質の結合はこのサンプルからの高い百分率のタンパク質の捕捉を示すことが可能であるが、プロテオミクス情報がほとんどまたは全く得られないからである。むしろ、百分率は、各種の存在率とは無関係に、このサンプル中の種々の異なるタンパク質性の種を反映するために使用される。従って、フラグメント化されていないサンプル中の各異なるタイプのタンパク質またはペプチドは「1」を示し、サンプルからのタンパク質またはペプチドの捕捉の百分率は、本発明の方法によって決定されるような捕捉された全ての異なるタイプのタンパク質またはペプチドの合計を、先行技術で公知の方法(例えば、質量分析と組み合わせた2次元電気泳動)によって決定されるようなフラグメント化されていないサンプル中の全ての異なるタンパク質フラグメントまたはペプチドフラグメントの合計によって除算し、100を乗算することによって決定できる。
【0045】
in silicoの例として、SwissProtから抽出された10,000のタンパク質配列のシミュレートされたトリプシン分解は、400,000のペプチドフラグメントを生じる。各タイプの可能なC末端テトラペプチドモチーフを有するフラグメントの存在率は、0%〜10%の間で変動する。適切なアレイは、適切に豊富なモチーフに対する親和性を有する結合分子を選択することによって形成され得、従って、限定数の異なる結合分子が、大きいセットの異なるフラグメントを捕捉することが可能である。例えば、各々が平均100のペプチドを捕捉する200ほどの少ないこのような異なる結合分子は、組織サンプルから作製されたタンパク質調製物のトリプシン消化物から20,000のフラグメントを捕捉する。SwissProt中の全てのヒトタンパク質配列(約10,500の配列)からなる理論的プロテオームのin silico分析は、これらのモチーフが上に規定されたプロテオーム中で約100の理論的頻度で全ての可能なモチーフからランダムに選択される場合、捕捉されたペプチドが、全てのタンパク質の75%由来の1つまたは複数のペプチドを含むことを示す。(特定のタンパク質由来の多数のペプチドを捕捉し、他のタンパク質由来のものを捕捉しないことによって)不要な重複を回避するための結合分子の合理的な選択は、適用範囲をさらに増大させる。
【0046】
従って、このアレイは、少なくとも約10、50、100、150、200、250、300、350、400、500、600、700、800、900、1000またはそれより多くの上に規定されたような異なるタイプの結合分子を有することが可能である。
【0047】
このアレイ上の各スポットは、平均して2、4、6、8、10、20、40、60、80、100、200、400、600、800、900、1000、1500、2000またはそれより多くの異なるタイプのタンパク質、ペプチドまたはそれらのフラグメントを結合でき、これらは各々同じモチーフを有する。これに関して、「異なるタイプ」のタンパク質、ペプチドまたはそれらのフラグメントとは、以下の少なくとも1つを有するタンパク質、ペプチドまたはそれらのフラグメントをいう:異なる配列;異なる分子量;および/または異なる翻訳後修飾。
【0048】
結合分子
結合分子は、以下に考察されるように、所定のモチーフに結合するそれらの能力に基づいて、ライブラリーから選択できる。
【0049】
少なくとも1つのタイプ、より典型的には全てのタイプの結合分子が、抗体またはそのフラグメントもしくは改変体であり得る。
【0050】
従って、フラグメントは、1つまたは複数の可変重鎖(VH)ドメインまたは可変軽鎖(VL)ドメインを含み得る。例えば、用語抗体フラグメントは、Fab様分子(Betterら(1988)Science 240、1041頁);Fv分子(Skerraら(1988)Science 240、1038頁);単鎖Fv(ScFv)分子(VHパートナードメインおよびVLパートナードメインが、可撓性オリゴペプチドを介して連結されている)(Birdら(1988)Science 242、423頁;Hustonら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85、5879頁)および単離されたVドメインを含む単一ドメイン抗体(dAbs)(Wardら(1989)Nature 341、544頁)を含む。
【0051】
用語「抗体改変体」は、任意の合成抗体、組換え抗体または抗体ハイブリッド(例えば、免疫グロブリンの軽鎖および/または重鎖の可変領域および/または定常領域のファージディスプレイによって生成される単鎖抗体分子、あるいは当業者に公知のイムノアッセイ形式において抗原に結合することが可能である他の免疫相互作用分子であるがこれらに限定されない)を含む。
【0052】
それらの特異的結合部位を保持する抗体フラグメントの合成に関与する技術の一般的な概説は、WinterおよびMilstein(1991)Nature 349、293〜299頁中に見出される。
【0053】
さらにまたはあるいは、これらの結合分子の少なくとも1つのタイプ、より典型的には全てのタイプがアプタマーである。
【0054】
さらにまたはあるいは、これらの結合分子の少なくとも1つのタイプ、より典型的には全てのタイプがポリヌクレオチドである。
【0055】
結合分子の選択
抗体ライブラリー(Clacksonら、1991、Nature 352、624〜628頁;Marksら、1991、J Mol Biol 222(3):581〜97頁)、ペプチドライブラリー(Smith、1985、Science 228(4705):1315〜7頁)、発現cDNAライブラリー(Santiら(2000)J Mol Biol 296(2):497〜508頁)、アフィボディ(affibody)などの抗体フレームワーク以外の足場に基づくライブラリー(Gunneriussonら、1999、Appl Environ Microbiol 65(9):4134〜40頁)またはアプタマーに基づくライブラリー(Kenanら、1999、Methods Mol Biol 118、217〜31頁)などの分子ライブラリーが、所定のモチーフに対して特異的な結合分子が本発明の方法における使用のために選択される供給源として使用できる。
【0056】
これらの分子ライブラリーは、原核生物(Clacksonら、1991、前掲書中;Marksら、1991、前掲書中)または真核細胞(Kiekeら、1999、Proc Natl Acad Sci USA、96(10):5651〜6頁)中でin vivoで発現できるか、あるいは細胞の関与なしにin vitroで発現できる(HanesおよびPluckthun、1997、Proc Natl Acad Sci USA 94(10):4937〜42頁;HeおよびTaussig、1997、Nucleic Acids Res 25(24):5132〜4頁;Nemotoら、1997、FEBS Lett、414(2):405〜8頁)。
【0057】
タンパク質に基づくライブラリーが使用される場合、しばしば潜在的結合分子のライブラリーをコードする遺伝子がウイルス中にパッケージングされ、この潜在的な結合分子が、このウイルスの表面に提示される(Clacksonら、1991、前掲書中;Marksら、1991、前掲書中;Smith、1985、前掲書中)。
【0058】
今日最も一般に使用されるこのようなシステムは、それらの表面で抗体フラグメントを提示す線維状バクテリオファージであり、これらの抗体フラグメントは、バクテリオファージのマイナーコートタンパク質との融合物として発現される(Clacksonら、1991、前掲書中;Marksら、1991、前掲書中)。しかし、他のウイルス(EP 39578)、細菌(Gunneriussonら、1999、前掲書中;Daughertyら、1998、Protein Eng 11(9):825〜32頁;Daughertyら、1999、Protein Eng 12(7):613〜21頁)および酵母(Shustaら、1999、J Mol Biol 292(5):949〜56頁)を使用するディスプレイのための他のシステムもまた使用されている。
【0059】
さらに、最近、いわゆるリボソームディスプレイシステムにおけるそのコードするmRNAへのポリペプチド産物の連結(HanesおよびPluckthun、1997、前掲書中;HeおよびTaussig、1997、前掲書中;Nemotoら、1997、前掲書中)、あるいはそのコードするDNAへのポリペプチド産物の連結(米国特許第5856090号およびWO 98/37186を参照のこと)を利用したディスプレイシステムが示されている。
【0060】
潜在的な結合分子がライブラリーから選択される場合、規定されたモチーフを有する1つまたは少数のセレクターペプチドが通常使用される。ペプチドにおける可撓性を低下させる構造、または結合分子との相互作用を可能にする荷電側鎖、極性側鎖もしくは疎水性側鎖を提供するアミノ酸残基が、セレクターペプチドのためのモチーフの設計において使用できる。例えば、
(i)プロリンは、その側鎖がα炭素および窒素の両方と結合しているので、ペプチド構造を安定化することが可能である;
(ii)フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンは芳香族側鎖を有し、高度に疎水性であるが、ロイシンおよびイソロイシンは脂肪族側鎖を有し、これらもまた疎水性である;
(iii)リジン、アルギニンおよびヒスチジンは塩基性側鎖を有し、中性のpHで正に荷電しているが、アスパラギン酸およびグルタミン酸は酸性側鎖を有し、中性のpHで負に荷電している;
(iv)アスパラギンおよびグルタミンは中性のpHで中性であるが、水素結合に関与することが可能であるアミド基を含む;
(v)セリン、スレオニンおよびチロシンの側鎖は、水素結合に関与することが可能であるヒドロキシル基を含む。
【0061】
典型的に、結合分子の選択は、結合分子のタイプに対応するスポットへの結合を分析するための、アレイ技術およびアレイシステムの使用を含み得る。
【0062】
潜在的な結合分子(例えば、ライブラリー中の抗体フラグメント)は、クローニングされてアレイ形式でスポットできる。スポットの位置は、クローンのアイデンティティと相関することが可能である。次に、規定されたモチーフを有するセレクターペプチドは、このアレイへ結合することが可能となる。特定のセレクターペプチドの規定されたモチーフに対する結合分子を偶然含むスポットに、特定のセレクターペプチドが結合し、この結合は、スポットの位置、従ってポジティブ結合分子が得られたクローンのアイデンティティをユーザが決定することを可能にする読み取り可能なシグナルを与える。偽ポジティブ(例えば、そのモチーフ以外のセレクターペプチドの領域に結合する結合分子)は、推定ポジティブがそのモチーフを有さない類似のペプチドに結合する能力を測定することによって回避でき、ここで、これらの類似のペプチドに対する結合は、この推定バインダーが偽ポジティブであることを示す。
【0063】
同様に、潜在的なポリヌクレオチド結合分子のライブラリーは、規定されたモチーフを有するセレクターペプチドを結合する能力について、(例えば市販のAffymetrixチップを使用して)スクリーニングできる。
【0064】
一旦適切な数の結合分子が単離されると、当業者はアレイを製造することが可能である。
【0065】
従って、本発明は、結合分子のライブラリーを作製するための方法を提供し、この方法は、
(a)上に規定されたようなモチーフを含むセレクターペプチドを第1の成分として提供するステップ;
(b)候補結合分子の供給源(例えば、上に規定されたような分子ライブラリー)を第2の成分として提供するステップ;
(c)この第1の成分および第2の成分を合わせるステップ;ならびに
(d)この第1の成分中のセレクターペプチドのモチーフに特異的に結合することが可能である候補結合分子を同定するステップを含む。
【0066】
本発明は、ライブラリー、典型的にはそのメンバーが上記の方法によって予め選択されたライブラリーを提供し、このライブラリーは、少なくとも約10、50、100、150、200、250、300またはそれより多い異なるタイプの結合分子を含み、各タイプは上に規定されたようなモチーフに特異的に結合することが可能であり、これらの異なるタイプは異なる結合特異性を有する。このライブラリー中の少なくとも1つの結合分子、通常はライブラリー中の全ての結合分子が、抗体またはそのフラグメントもしくは改変体(例えば、Fv、scFvまたはFab);アプタマー;ならびに/あるいはポリヌクレオチドであり得る。
【0067】
本発明はまた、本発明に従うアレイを作製するための、上に規定されたような結合分子のライブラリーの使用の使用を提供する。
【0068】
従って、本発明は、本発明の第1の態様に従う方法における使用のために適切なアレイを作製するための方法を提供し、この方法は、
(a)異なるタイプの結合分子のライブラリーを提供するステップであって、各タイプは上に規定されたようなモチーフに特異的に結合することが可能であり、これらの異なるタイプは異なる結合特異性を有するステップ;および
(b)異なるタイプの結合分子が規定された別個の位置で固定化されるように、アレイ上にこれらの結合分子を固定化するステップを含む。
【0069】
結合分子(例えば、抗体、アプタマー、ポリヌクレオチドなど)をアレイ上の規定された別個の位置で固定化する方法は上で考察され、いずれの場合にも当該分野で周知である。
【0070】
従って、本発明はまた、上記の方法によって得られるアレイを提供する。
【0071】
本発明はまた、タンパク質またはペプチドの不均質サンプルを分析するためのシステムを提供し、このシステムは、本発明のアレイ、ならびにこのアレイ上の各異なるタイプの結合分子のアイデンティティおよび/または結合特性および位置についての情報を含むデータキャリアを含む。このデータキャリアは、典型的にはコンピュータ読み取り可能なデータキャリアの形態の、電子データキャリアであり得る。この情報は、このアレイ上の位置(スポット)をそのアレイスポットで結合分子に寄与したライブラリークローンのアイデンティティと相関させることができ、それによって、所定のクローンによって生成される結合分子の特徴をユーザがさらに調査することが可能となる。さらにまたはあるいは、このデータキャリアは、アレイ上の所定の位置での結合分子の結合特性についての情報を含み得る。
【0072】
スクリーニング条件
適切なアレイが提供されると、本発明の方法に従ってサンプルを分析することが可能である。アレイ上の間隔をあけて離れた規定された位置にクラスの各メンバーを結合させることによって、タンパク質、ペプチドおよび/またはそれらのフラグメントの不均質サンプルを不均質なクラス(各不均質なクラスは、そのクラスに共通するモチーフを有する)に分離するために、その結合条件が、非特異的結合を実質的に回避するのに適切にストリンジェントであることが重要である。
【0073】
結合分子:モチーフ複合体の形成は、種々の条件下で実施できる。ペプチドフラグメント含有反応溶液は、種々の程度の塩を含み得るか、または種々のpHレベルで示すことができる。さらに、結合反応は、種々の温度で実施できる。一般に、pH条件は、約2〜10(最も好ましくは約pH8)の範囲であり、温度は0℃〜100℃の範囲であり、塩条件は1μM〜5M(NaClの場合)の範囲である。
【0074】
特異的結合を可能にする条件下で、タンパク質、ペプチドおよび/またはそれらのフラグメントの不均質サンプルをアレイと合わせるステップの後、このアレイは典型的に、未結合のタンパク質、ペプチドまたはそれらのフラグメントを除去するために洗浄される。洗浄のために適切な溶液は、塩(例えば塩化ナトリウム)、緩衝剤(例えばホスフェート緩衝液)、カオトロピック剤(例えば尿素)および界面活性剤(例えばTween-20)を含み得る。これらの成分の濃度ならびにこの溶液のpHは、適切にストリンジェントな洗浄条件を得るために最適化できる。MALDI-TOF質量分析的分析(以下を参照のこと)の前に、このアレイは、塩、界面活性剤、ポリマーまたは分析を妨害することが可能である他の化合物を除去するために、蒸留水で洗浄しなければならない。
【0075】
当業者は、既知の配列を有するタンパク質、ペプチドおよび/またはそれらのフラグメントの混合物をアレイに適用し、任意のタンパク質、ペプチドおよび/またはそれらのフラグメントが(すなわち、この混合物のタンパク質、ペプチドおよび/またはそれらのフラグメント中に含まれないモチーフに対して特異的なタイプの結合分子を有するスポットに)非特異的に結合するか否かを決定することによって、非特異的結合を回避するのに適切な条件に達するようにこの結合反応および洗浄条件を適合することが可能である。非特異的結合が生じる場合、使用された条件のストリンジェンシーは増大できる。あるいは、ユーザは、低い特異性の結合の原因となる結合分子を、より高い特異性の結合分子で置換することが可能である。
【0076】
親和性定数は、特定のリガンドとその同族レセプターとの間の相互作用の測定である。「結合親和性」、すなわち特定の結合分子とそのモチーフ標的との間の結合の強度の測定は、結合分子およびその標的の結合した構成および解離した構成の平衡濃度についての親和性定数によって一般に測定される。好ましくは、結合分子のそのモチーフに対する結合は、本発明のために有用であるべきKD=約10-6M以上の親和性で生じるはずであり、約10-7Mより高い親和性がより好ましく、約10-8Mと約10-11Mとの間の親和性が最も好ましい。抗体フラグメントは、約10-7M〜約10-8Mの範囲内の結合親和性を一般に有する。
【0077】
結合したタンパク質、ペプチドおよび/またはそれらのフラグメントの不均質なクラスの特性決定
アレイ上の不均質なクラスに一旦分離されると、各クラス中のタンパク質、ペプチドまたはそれらのフラグメントは次いで、マススペクトログラム(ここで、各ピークは、特定のペプチドの存在、質量および相対的な量を示す)の形態の情報を得るために、当該分野で公知の分析技術(例えば、脱離質量分析(例えば、MALDI-TOF質量分析;Roepstorff,P、2000、EXS、88:81〜97頁を参照のこと))によってさらに特性決定され得る。
【0078】
サンプルのフラグメント化がサンプル分析の前に実施される場合、捕捉されたフラグメントが由来するタンパク質またはペプチド(すなわち「親タンパク質」)のアイデンティティは、ペプチドから構造情報を得るために使用できる衝突誘起解離質量分析によって決定できる。
【0079】
また、結合分子の特異性が既知であり、充分にストリンジェントな条件が使用された場合、所定のスポット上の捕捉されたタンパク質、ペプチドまたはそれらのフラグメントが所定のモチーフを含むことを知ることができる。例えば、このモチーフが最初の4つのC末端アミノ酸である場合、所定のスポットで全てのタンパク質、ペプチドまたはそれらのフラグメントのC末端テトラペプチドの配列を推定することが可能である。
【0080】
質量分析によって得られた正確な質量決定と組み合わせたモチーフ内容についての情報は、タンパク質配列データベースのin silico分析またはそのデータベース中に存在する配列のin silico消化によって生成されたタンパク質、ペプチドまたはそれらのフラグメントに対してこの情報を比べるのに充分であり得る。
【0081】
従って、各不均質なクラス中のタンパク質、ペプチドまたはそれらのフラグメントを特性決定するステップは、典型的に、例えば、各クラス中のタンパク質、ペプチドもしくはそれらのフラグメントの質量、ならびに/または各クラス中の異なる質量の各タンパク質、ペプチドもしくはそれらのフラグメントの存在率を決定することによって、このアレイ上の規定された別個の位置の各々で結合したタンパク質、ペプチドまたはそれらのフラグメントを特性決定するステップを含む。通常、これは脱離質量分析によって実施される。各不均質なクラス中のフラグメントを特性決定するステップは、検出されたフラグメントが由来するフラグメント化されていない不均質サンプル中のタンパク質またはペプチド(すなわち「親」)のアイデンティティを決定するステップをさらに含み得る。これは典型的に、衝突誘起質量分析によって実施される。このようにして得られたデータは配列情報を生じ得るか、または一致する配列についてタンパク質配列データベースを検索するために使用できる。
【0082】
質量分析によって特定のペプチドから得られたシグナルの相対的な強度は、ペプチドの濃度、分子量およびイオン化特徴に依存する。定量の品質は、同位体標識した参照タンパク質の添加によって改善できる(Goshe B GおよびSmith D S(2003)Curr Opinion Biotech、14:101〜109頁)。
【0083】
フラグメントの存在率および親タンパク質または親ペプチドのアイデンティティに関する情報は、フラグメント化されていない不均質サンプル中の親タンパク質または親ペプチドを定量するために使用できる。
【0084】
本発明の利益の1つは、タンパク質、ペプチドまたはそれらのフラグメントの各不均質なクラスの分析において見られ得る。本発明は、各不均質なクラスが、各クラスの成分のさらなる分離を必要とせずに分析される方法を提供する。従って、本発明は、複数のアフィニティ分離ステップを利用する先行技術の方法(例えば、WO 02/060377)を上回る利点を有する。なぜなら、この先行技術の方法は、骨が折れて時間がかかる、複数のペプチド捕捉/溶出ステップおよび複雑な流体取扱いシステムに頼るからである。対照的に、本発明は、タンパク質、ペプチドまたはそれらのフラグメントの異なる不均質なクラスへの部分分画と、その後の例えば質量分析による各クラスの直接的な特性決定とのための、1ステップの方法を提供する。
【0085】
さらに、本発明は、各不均質なクラスについての定性的情報および定量的情報を提供する。例えば、各クラス内の各種の分子量および存在率が決定できる。これは、いずれか1つのスポットでタンパク質の総量の決定を提供するだけの先行技術(例えば、WO 02/060377)を上回る改善である。
【0086】
適用
本発明の1つの適用は、異なるサンプル間の比較のためのものである。当業者は、本発明に従う方法によって生成されるデータが非常に複雑であることができ、数千種の単位のデータを含んでもよいことを理解されよう。これは、電子的手段によって生成されたデータを収集、保存および分析するのに適切であり得る。従って、本発明は、本発明の第1の態様に従う方法によって得られる情報を含むデータキャリアを提供する。本発明はまた、電子データ処理システム(例えばコンピュータ)を提供し、このシステムは、本発明の第1の態様に従う方法によって得られる情報を含むデータキャリア、ならびに異なるサンプルの分析から得られる情報を比較するための手段を含む。これに関して、比較するための手段は典型的に、複数のサンプルおよびこれらのサンプル間の最も高い差異の分析から生成されるデータを比較し、それによって、目的の候補タンパク質および候補ペプチドをユーザが容易に同定することを可能にするように設計された、コンピュータプログラムである。
【0087】
このような比較は、例えば正常組織および罹患組織由来のサンプル、または例えば種々の状態の分化または活性化の組織由来のサンプルを含み得る。従って、本発明は、タンパク質またはペプチドの組成における差異について研究するために、大きいセットのサンプルを迅速かつ有効に比較するために使用できる。このような差異は、薬物標的としての可能性を有する分子の同定のために使用できる。
【0088】
従って、タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドの2つ以上の不均質サンプル間の組成において差異を同定する方法は、本発明の第1の態様に従う方法によって各サンプルを分析し、それによって任意の差異を同定するステップを含み得る。
【0089】
従って、本発明はまた、上記のような方法を使用して、タンパク質、ペプチドおよび/またはそれらのフラグメントの1つまたは複数の不均質サンプルを分析するための、上記のようなアレイまたはシステムの使用を提供する。この使用は、疾患を有する個体由来の少なくとも1つのサンプル(典型的にはex vivoサンプル)および疾患を有さない個体由来の少なくとも1つの他のサンプル(典型的にはex vivoサンプル)を分析することによって、疾患関連タンパク質を同定するためであり得る。分析に適切な疾患には、神経変性疾患、癌、炎症疾患、心血管疾患および代謝障害が含まれる。
【0090】
従って、疾患関連タンパク質、疾患関連ポリペプチドまたは疾患関連ペプチドを同定するための方法は、上記の方法によって2つ以上のサンプル間の差異を同定するステップを含んでもよく、この方法において、分析されるサンプルの少なくとも1つは疾患を有する個体に由来し、分析されるサンプルの別の1つは疾患を有さない個体に由来する。
【0091】
さらに、疾患関連タンパク質または疾患関連ペプチドが一旦同定されると、本発明は、個体の疾患状態を診断する方法を提供し、この方法は、サンプル(典型的には個体から採取されたex vivoサンプル)を、本発明の第1の態様に従う方法によって分析するステップ、およびその結果が、上記のような方法によって同定された疾患関連タンパク質、疾患関連ポリペプチドまたは疾患関連ペプチドと対応するか否かを決定するステップを含む。
【0092】
上記の方法を使用することによって疾患または状態を有すると個体を診断した後、その個体は、診断された所定の状態に適切な処置レジメンを必要とすると特性決定され得る。従って、本発明はまた、本発明の方法によって処置を必要とすると同定された個体を処置する方法を提供し、この方法は、この個体の疾患状態に適切な有効量の薬剤を投与するステップを含む。医療従事者は、患者の年齢、体重、性別および状態に基づいて薬剤の有効量を決定することが可能である。
【0093】
本発明はまた、本発明の方法によって処置を必要とすると同定された個体を処置するための医薬の製造における薬剤の使用を提供する。
【0094】
以下の非限定的な図面および実施例を参照して、本発明をより詳細にここで記載する。
【実施例1】
【0095】
この実施例は、マイクロアレイをどのように生成することができるか、不均質なタンパク質混合物から生成されたペプチドを検出するためにどのように使用できるかを記載する。この実施例において、本発明者らは、トリプシン消化によってタンパク質をペプチドへとフラグメント化すること、およびこれらのペプチドのC末端に対して指向された結合特性を有する単鎖Fv(scFv)分子を使用してペプチドフラグメントの下位クラスを捕捉することを選択する。
【0096】
結合分子の生成
セレクターペプチドの設計:ファージディスプレイライブラリーから適切な単鎖Fv(scFv)分子を単離する場合、合成ペプチドを捕捉剤として使用する。これらのペプチドを、最後の(すなわちC末端の)アミノ酸がリジンまたはアルギニンのいずれかであったC末端テトラペプチドに対する親和性を有するscFvを提示すファージ粒子を捕捉するために設計する。スペーサーを、このテトラペプチドのN末端側に付加でき、N末端ビオチンも付加できる。これらのアミノ酸配列を、良好なエピトープを生成する可能性が高いアミノ酸(例えば、疎水性アミノ酸(フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ロイシンおよびイソロイシン)または荷電したアミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミンおよびヒスチジン))を含むように設計する。メチオニンは、その酸化する傾向に起因して排除され、システインは、ジスルフィド架橋形成に起因する二量体化の問題を回避するために排除される。これらのテトラペプチドの配列をまた、天然のタンパク質におけるそれらの頻度に基づいて決定する。適切な配列の例は、ビオチン-SGSG-XXXX-COOHであり、この配列中、XXXXは、例えば、EDFR、EPER、HPDK、LPSR、LQSK、PEEK、WDSRまたはYLDKであり得る。
【0097】
ファージディスプレイライブラリーからの特異的バインダーの選択。
n-CoDeRライブラリーからの特異的バインダーの選択は、ストレプトアビジン被覆された磁気ビーズを使用して実施できる(Hawkins,R.E.、Russel,S.J.およびWinter,G.(1992)J.Mol.Biol.、226、889〜896頁)。n-CoDeR scFvファージディスプレイライブラリーの構築および取扱いは、Soederlindら(2000)Nature Biotech、18、852〜856頁中に記載されている。
【0098】
1〜2×1013CFUのライブラリーファージストックを含む体積を、ビオチン化セレクターペプチドと混合する(ペプチドの最終濃度約10-7M)。3%の最終濃度までBSAを添加し、0.02%の最終濃度までアジ化ナトリウムを添加し、0.05%の最終濃度までTween 20を添加する。穏やかに振盪しながら室温で1時間インキュベートする。磁気ビーズ(アルブミンで予めブロッキングしたもの)を添加し、穏やかに振盪しながら室温で15分間インキュベートする。ビーズを磁石で濃縮し、上清を除去する。3×1mlのPBS中3%のBSA、0.05%のTween20、0.02%のアジ化ナトリウムでこのビーズを洗浄し、その後3×1mlのPBS中0.05%のTween 20で洗浄し、最後に3×1mlのPBSで洗浄する。400μlのトリプシンストック溶液(1mg/ml、Boehringer-Mannheim)を添加することによって結合ファージを溶出する。室温で30分間インキュベートする。溶出液を新たなチューブに移し、40μlのアプロチニン(トリプシンインヒビター)ストック溶液(2mg/ml)を添加する。溶出液中のファージの量を(E.coliに感染させた後でCFUの量を測定することによって)決定する。
【0099】
新たなscFvファージストックを、溶出したファージを対数増殖期のE.coliに感染させることによって、この溶出液から生成する。アンピシリンを添加して、非感染細菌を排除する。感染した細菌を約3時間にわたって増幅し、その後ヘルパーファージを感染させ、scFvを提示すファージの生成のためのIPTG誘導を実施する。上記の選択サイクルを2回反復するが、第2ラウンドについては10-8Mの抗原濃度であり、第3ラウンドについては10-9Mの抗原濃度である。得られた最終溶出液を4℃で保存する。
【0100】
結合分子の1次スクリーニング。
選択プロセスは、異なる品質の非特異的バインダーおよび特異的バインダーを含む数万のファージクローンを生成することが可能である。また、全てのクローンが機能的scFvを生じるわけではない。第3の選択由来の溶出されたファージプールをE.coliを感染させるために使用して、プラスミド(ファージミド)DNAを単離する。ファージ特異的DNAを制限酵素消化によって排除し、再連結した材料をE.coli中に形質転換する。形質転換された(すなわちscFvを発現する)クローンを、アンピシリンを使用して選択する。所定の適用にとって最良の結合分子を生成するクローンを同定するために、2ステップのスクリーニング手順を使用する。1次スクリーニングは、予測されたリガンドおよび予測された非リガンドに対する、多数(典型的には10,000)の発現されたscFvの結合特性を評価するために設計され、セレクターペプチドとの特異的相互作用 対 非特異的相互作用を有するscFv間を識別し、特異的バインダー間の相対的な品質の大まかな測定を提供する。
【0101】
1次スクリーニングは、クローンの選択、発現およびアッセイのための自動化された高スループットのシステムを使用して典型的に実施される。
【0102】
典型的に、10,000クローンをQbotコロニーピッカー(Genetix;Hampshire、UK)によって選択し、個々の一晩増殖のために384ウェルのプレートに移す。5μlの細菌懸濁物を、自動化されたシステム(Thermo CRS;Burlington、Ontario、Canada)における増殖および発現のために、発現プレートに移す(複製する)。
【0103】
ELISAシステム(Thermo CRS)において、アッセイプレートをストレプトアビジン(0.1μg/ウェル)で予め被覆し、一晩インキュベートして洗浄する。次いで、プレートをビオチン化ペプチド(1pmole/ウェル)で被覆し、1時間(または+4℃で一晩)インキュベートし、洗浄し、ブロッキングする(ブロック緩衝液:0.05%のTweenを含む1×PBS中、0.45%のゼラチン)。
【0104】
次いで、この発現プレート由来の上清をこのアッセイプレートに添加し(10μl)、1時間インキュベートし、その後洗浄ステップを実施する。
【0105】
次いで、2次抗体(HRPとコンジュゲート化したマウス抗his抗体)を添加し、1時間インキュベートし、その後洗浄ステップを実施する。
【0106】
基質(Pirce Supersignal ELISA Pico)を添加し、その後ルミネセンスモードで読み取る前に10分間インキュベートする。
【0107】
活性体(標的ペプチドと非標的ペプチドとの間のELISAシグナルの10倍を上回る比を有するクローン)を、チェリーピッカーで取り、再試験する(ヒットの確認)。
【0108】
クローンの特異性は、より大きいセットのペプチドが試験される2次スクリーニングにおいて典型的に実施される。次いで、高い特異性を有する選択されたヒットを配列決定して、独自のヒットクローンを得る。96個までのヒットを、コロニーPCRおよびABI PRISM 3100 DNA Analyser(Applied Biosystems、Warrington、UK)を使用したダイターミネーションサイクル配列決定によって配列決定する。
【0109】
配列決定
スクリーニングの間に特異的バインダーとして同定されたクローンをDNA配列決定によって分析して、独自のクローンを同定する。
【0110】
このscFvをコードする遺伝子を、テンプレートとしてPCR増幅したDNAを使用し、特注のプライマーおよびBig Dye Terminator RRキット(Applied Biosystems、USA)を使用して、ジデオキシ鎖終結法に従って配列決定する。終結されたフラグメントを分離し、3100 Genetic Analyser(Applied Biosystems)を使用して分析する。
【0111】
リガンドの特性決定
このscFvが、トリプシン消化したサンプルから適切な数およびタイプのペプチドを実際に捕捉するか否かを決定するための方法は、質量分析的分析と組み合わせたイムノアフィニティ抽出である。
【0112】
血漿タンパク質を含むサンプルを、(例えばメルカプトエタノールアミンで)還元し、(例えばヨードアセトアミドで)アルキル化し、トリプシン(血漿タンパク質1mg当たり20μgのトリプシン、37℃で6時間のインキュベーション)で消化する。
【0113】
6×Hisタグ化scFvは、Ni2+イオンで予め改変された小さいカラム(ZipTip(商標)、Millipore)上で捕捉できる(プロトコルTN229、Millipore、USA)。原則的に、目的のトリプシン加水分解タンパク質由来のペプチドに対して選択的なscFvの固定化を、Ni改変ZipTip(商標)中へのscFv溶液(中性または僅かに塩基性の緩衝液中10μg/ml〜50μg/ml、≒10μl)の吸引-分配の連続サイクルによって実施する。未結合のscFv分子を除去した後、これらの抗原を、上記のものと類似の方法で(例えば、1mlのPBS中2mg〜3mgのタンパク質の濃度まで予め希釈したトリプシン消化物≒10μlからの吸引-分配の連続サイクルによって)、アフィニティカラム中に捕捉する。抗原捕捉の後、このカラムを繰り返し洗浄して、未結合のペプチドを除去する。この洗浄ステップはPBSを用いて実施できるか、またはよりストリンジェントな洗浄が要求される場合、より高い塩(例えば塩化ナトリウム)濃度、変性剤(例えば、グアニジンもしくは尿素)または界面活性剤(例えば、Tween 20)を含む溶液を用いて実施できる。捕捉されたペプチドを、≒1μlの溶出媒体(例えば、5%の酢酸または50%のアセトニトリル+0.1%のトリフルオロ酢酸(TFA))中で、MALDI-TOF(マトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間型)標的プレート上に直接溶出する。次いで、マトリックス溶液(例えば、1%のTFA、75%のアセトニトリル中に飽和されたα-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸)を各サンプルスポットの上部に添加し、乾燥させる。あるいは、マトリックス化合物は、免疫抽出カラムからのペプチドの溶出のために使用される溶液中に直接溶解できる。
【0114】
次いで、こうして調製したサンプルを、MALDI-TOF質量分析によって分析する。
【0115】
アフィニティアレイの生成。
選択された6×Hisタグ化scFvをE.coli中で発現させ、透析し、Ni-NTAカラムで精製する。溶出後、このscFvを、PBS中1mg/ml〜3mg/mlまで濃縮する。次いで、異なる選択性を有するscFvを、(タンパク質スポッティングのための現在存在する技術のいずれか(例えば、非接触印刷または接触印刷)を使用して)適切な支持体(例えば、誘導体化されたガラススライドまたはマイクロタイタープレートのウェル底)上にスポットする。このscFvは、支持体の表面上に共有結合により(例えば、反応性のアミノ基、アルデヒド基またはエポキシ基を介して)固定化できるか、または非共有結合(例えば、ポリスチレンもしくはニトロセルロース改変表面上への受動的吸着:概説については、Jenkins R.E.およびPennington,S.R.(2001)Proteomic、1、13〜29頁を参照のこと)により固定化できるかのいずれかである。さらに、scFvの指向された固定化が、6×Hisタグに結合することが可能であるNi-キレート改変ガラススライドを介してか、またはscFv構造中に予め導入されたCysタグに共有結合するマレイミド改変ガラススライドへの共有結合によってかのいずれかで、可能である。高スループットのマイクロアレイは、同じサンプル由来の多数の抗原の同時分析のために、同じスライド上に1000〜20000種のscFvをスポットすることによって活用できる。この実施例において、各々が2連または3連でスポットされた200〜300種の結合分子で充分であり、400〜1000の総スポット数とすることができる。このアレイは、数週間にわたって4℃で保存できる。
【0116】
複雑なサンプルの分析
サンプル調製:分析すべきサンプル(例えば血漿)は、適切な緩衝液(例えば、50mMの重炭酸ナトリウム、pH7.0)に移した後またはこの適切な緩衝液中に希釈した後に、直接トリプシン消化できる。あるいは、このサンプルは、検出限界を増大させるために、目的のタンパク質を富化するためまたは特定の成分(例えば、アルブミンおよび免疫グロブリン)を除去するために、予め分画できる(Anderson NL、Anderson NG.(2002)Mol Cell Proteomics、1(11):845〜67頁)。サンプルタンパク質は、システイン含有ペプチド間のジスルフィド架橋を回避するために、還元およびカルボキシメチル化できる。
【0117】
サンプル適用:10μl〜200μlのトリプシン消化サンプルを、印刷されたマイクロアレイ上に適用し、インキュベーションチャンバ(Arrayit Hybridization Cassette、TeleChem International Inc、USA)または自動化サンプル処理装置(例えば、ProteinArray Workstation、Perkin-Elmer、USA)のいずれかを使用して、2時間インキュベートする。このマイクロアレイを、例えば、50mMのホスフェート緩衝液(pH7.0)、0.1%のTweenおよび100mMの塩化ナトリウムで繰り返し洗浄する。よりストリンジェントな洗浄条件のために、異なる塩または界面活性剤が種々の濃度で添加できる。
【0118】
検出:UV吸収マトリックス(1%のTFA、75%のアセトニトリル中に飽和されたα-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸)をこのアレイに添加する(100nl/スポット〜500nl/スポット)。このアレイをMALDI-TOF標的プレート(Borrebaeck CAK、Ekstroem S、Malmborg Hager AC、Nilsson J、Laurell TおよびMarko-Varga G(2001)Biotechniques 30、1126〜1132頁)上に取り付け、各スポットからの質量スペクトルを、リフレクターモードでMALDI-TOF質量分析計を使用して得る。
【実施例2】
【0119】
この実施例は、アフィニティカラムのアレイをどのように生成することができるか、不均質なタンパク質混合物から生成されたペプチドを検出するためにどのように使用できるかを記載する。この実施例において、本発明者らは、トリプシン消化によってタンパク質をペプチドへとフラグメント化すること、およびこれらのペプチドのC末端に対して指向される結合特性を有する単鎖Fv(scFv)分子を使用してペプチドフラグメントの下位クラスを捕捉することを選択する。
【0120】
結合分子の生成
セレクターペプチドの設計:ファージディスプレイライブラリーから適切な単鎖Fv分子を単離する場合、合成ペプチドを捕捉剤として使用した。これらのペプチドを、最後のアミノ酸がリジンまたはアルギニンのいずれかであったC末端テトラペプチドまたはC末端ヘキサペプチドに対する親和性を有するscFvを提示すファージ粒子を捕捉するために設計した。スペーサーを、このペプチドのN末端側に付加し、そしてN末端ビオチンも付加した。これらのアミノ酸配列を、良好なエピトープを生成する可能性が高いアミノ酸(例えば、疎水性アミノ酸(フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ロイシンおよびイソロイシン)または荷電したアミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミンおよびヒスチジン))を含むように設計した。メチオニンは、その酸化する傾向に起因して排除し、システインは、ジスルフィド架橋形成に起因する二量体化の問題を回避するために排除した。これらのペプチドの配列をまた、天然のタンパク質におけるそれらの頻度に基づいて決定する。この実施例においてセレクターおよびコンペティターとして使用したペプチドは表2中に記載される。
【0121】
【表2】

【0122】
ファージディスプレイライブラリーからの特異的バインダーの選択。
n-CoDeRライブラリーからの特異的バインダーの選択を、ストレプトアビジン被覆された磁気ビーズを使用して実施した(Hawkins,R.E.、Russel,S.J.およびWinter,G.(1992)J.Mol.Biol.、226、889〜896頁)。n-CoDeR scFvファージディスプレイライブラリーの構築および取扱いは、Soederlindら(2000)Nature Biotech、18、852〜856頁中に記載されている。連続する3ラウンドの選択を実施した;選択1.n-CoDeR(商標)ファージライブラリー(Lib 2000)を、無関係のビオチン化ペプチド(ビオチン-GIVKYLYEDEG、10-7M)に対して最初に予め選択した。このペプチドをストレプトアビジン磁気ビーズ上で捕捉し、これらのビーズを遠心分離によって除去した。この予めの選択は、ストレプトアビジン、ビオチンおよびSGSGリンカーに対するバインダーを除去する。
【0123】
予め選択されたファージストック(ペプチドプール当たり1ライブラリー当量)を、ビオチン化ペプチドの4つのプール(5×10-8Mの各ペプチド)に対して選択した。これらのプールの組成は、表3中に示した通りであった。コンペティターペプチドFN11(10-6M)およびFN12(10-6M)を、プールRおよびプールKにそれぞれ添加した。
【0124】
【表3】

【0125】
ペプチドをストレプトアビジン磁気ビーズ上で捕捉し、非特異的ファージを洗浄によって除去した(ビーズを磁石を使用して濃縮した)。ビーズに結合したファージをトリプシンを使用して溶出し、溶出したファージプールをE.coli HB101F'中で増幅した。選択1由来の増幅されたファージストックを、上記のように無関係のペプチドに対して予め選択した。次いで、予め選択したファージストックを使用して、個々のビオチン化ペプチド(2×10-8Mの各ペプチド)に対するバインダーを選択した。15の別個の選択を実施した。今回、両方のコンペティターペプチドFN11およびFN12(各々2×10-7M)を全ての選択に添加した。
【0126】
ペプチドをストレプトアビジン磁気ビーズ上で捕捉し、非特異的ファージを洗浄によって除去した。ビーズに結合したファージを酸を使用して溶出した。溶出したファージプールを増幅せずに選択3において直接使用した。選択3を、96ウェルのELISAプレート中で固相ファージ選択として実施した。選択2由来の溶出したファージプールを、ストレプトアビジン(0.5μg/ウェル、1選択当たり8ウェル)に対して最初に予め選択し、次いでアビジン(0.5μg/ウェル、1選択当たり8ウェル)に対して予め選択した。
【0127】
予め選択したファージストックを使用して、アビジン上にロードされた標的ペプチド(1ウェル当たり10pmolのペプチド、1選択当たり8ウェル)に対してファージを選択した。両方のコンペティターペプチド(各々2×10-7M)を全ての選択に添加した。非特異的ファージを洗浄によって除去し、ウェルに結合したファージを、トリプシンを使用して溶出した。
【0128】
選択3由来のファージプールの品質を、ファージELISAで評価した。溶出したファージプールをE.coli HB101F'中で増幅し、増幅したプールの希釈シリーズを、1つの標的ペプチドおよび1つの非標的ペプチドに対して試験した。所定の適用にとって最良の結合分子を生成するクローンを同定するために、2ステップのスクリーニング手順を使用した。1次スクリーニングは、予測されたリガンドおよび予測された非リガンドに対する、多数(典型的には10,000)の発現されたscFvの結合特性を評価するために設計され、セレクターペプチドとの特異的相互作用 対 非特異的相互作用を有するscFv間を識別し、特異的バインダー間の相対的な品質の大まかな測定を提供する。ファージELISAに基づいて、特異的バインダーの富化の結果を示した選択を同定した。選択3由来の溶出したファージプールを使用してE.coli HB101F'を感染させ、ファージミドDNAを単離した。ファージ特異的DNAを制限酵素消化によって排除し、再連結した材料を、化学的にコンピテントなE.coli TOP10中に形質転換した。形質転換体(すなわちscFv発現クローン)を、アンピシリンを含むLAプレート上で選択した。
【0129】
単一の細菌クローンを選択し、ルミネセンスELISA(lum ELISA)を用いた引き続くスクリーニングのために384ウェルのプレートにおいてLB中でscFvを発現させた。FN9(768コロニー)およびFN15(1008コロニー)以外、各標的について1920のコロニーを選択した。
【0130】
lum ELISAスクリーニングを、384ウェル形式で実施した。各scFvを、1つの標的ペプチドおよび1つの非標的ペプチドに対してスクリーニングした。ビオチン化ペプチド(1pmol/ウェル)をストレプトアビジン(0.1μg/ウェル)上にロードし、HRPコンジュゲート化抗His抗体を使用して検出した。
【0131】
全てのヘキサペプチド選択(FN13〜FN17)およびテトラペプチド選択の3つ(FN1、FN3、FN9)は、1次ロボットスクリーニングにおいて特異的scFvバインダーの存在を示した。
【0132】
スクリーニングの間に特異的バインダーとして同定されたクローンをDNA配列決定によって分析して、独自のクローンを同定した。
【0133】
このscFvをコードする遺伝子を、テンプレートとしてPCR増幅したDNAを使用し、特注のプライマーおよびBig Dye Terminator RRキット(Applied Biosystems、USA)を使用して、ジデオキシ鎖終結法に従って配列決定した。終結されたフラグメントを分離し、3100 Genetic Analyser(Applied Biosystems)を使用して分析した。
【0134】
どのscFvがトリプシン消化サンプルから適切な数およびタイプのペプチドを捕捉するかを決定するために、これらのscFvをクロマトグラフィー媒体(Poros AL、Applied biosystems)に連結し、ゲルローディングチップ中に詰め込んで、小さいアフィニティカラムを生成した。
【0135】
これらのサンプルをメルカプトエタノールアミンで還元し、ヨードアセトアミドでアルキル化し、トリプシン(PBS(pH7.4)、タンパク質1mg当たり20μgのトリプシン、37℃で6時間のインキュベーション)で消化した。アフィニティカラムを使用して、トリプシン消化したマウス肝臓ホモジネートからペプチドを捕捉し、捕捉したペプチドを溶出し、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化質量分析によって分析した。
【0136】
アフィニティカラムアレイの生成。
14のscFvを、トリプシン処理したマウス肝臓タンパク質由来のペプチドの異なる下位群を捕捉するそれらの能力に基づいて選択した。POROS-ALクロマトグラフィー媒体(Applied Biosystems、Foster City、USA)に対するscFvのカップリング反応を、製造業者の指示に従って実施した。このスラリーをゲルローディングチップ(Invitrogen)中に詰め込んで、約2cmのベッド長さを有するアフィニティカラムを生成した。
【0137】
複雑なサンプルの分析
マウス肝臓ホモジネートを上記のようにアルキル化およびフラグメント化し、PBS(pH7.4)中で2倍希釈した。これらのアフィニティカラムを2×10μlの5%酢酸で洗浄し、2×10μlのPBS(pH7.4)で平衡化した。10μlのサンプルをこのカラム上にロードし、その後2×10μlのPBS(pH7.4)で洗浄した。このカラムを、7μlの5%酢酸を用いてMassprep MALDI標的(Micromass、UK)上に溶出した。この溶出液を乾燥させ、標的ウェルを0.1%のトリフルオロ酢酸で2回洗浄した。最後に、75%のアセトニトリル/1%のトリフルオロ酢酸中0.5mg/mlのα-シアノ-4-ヒドロキシ-ケイ皮酸1μlを添加した。これらのサンプルを、Micromass M@ldi Reflectron質量分析計を使用して分析した。
【0138】
結果
図2〜15は、生成された質量スペクトルを示す。各スペクトルは、3を上回るノイズに対するシグナルの比を有するシグナルを有する約20〜100の別個のピークを含み、ほぼ全てのピークが独自のペプチドに対応する。数個のピークが全てのスペクトルにおいて検出でき、これらは、Poros材料に非特異的に結合するペプチドに対応する。このアレイを使用して検出できるペプチドの総数は、500を充分に上回る。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】本発明の適用の一実施形態の模式的概観を示す図である。
【図2】C末端残基としてアルギニンまたはリジンのいずれかを有する異なるC末端テトラペプチドまたはC末端ヘキサペプチドに結合するそれらの能力について選択された結合分子に結合した、トリプシン処理したペプチドフラグメントの分析によって生成された質量スペクトルを示す図である。
【図3】C末端残基としてアルギニンまたはリジンのいずれかを有する異なるC末端テトラペプチドまたはC末端ヘキサペプチドに結合するそれらの能力について選択された結合分子に結合した、トリプシン処理したペプチドフラグメントの分析によって生成された質量スペクトルを示す図である。
【図4】C末端残基としてアルギニンまたはリジンのいずれかを有する異なるC末端テトラペプチドまたはC末端ヘキサペプチドに結合するそれらの能力について選択された結合分子に結合した、トリプシン処理したペプチドフラグメントの分析によって生成された質量スペクトルを示す図である。
【図5】C末端残基としてアルギニンまたはリジンのいずれかを有する異なるC末端テトラペプチドまたはC末端ヘキサペプチドに結合するそれらの能力について選択された結合分子に結合した、トリプシン処理したペプチドフラグメントの分析によって生成された質量スペクトルを示す図である。
【図6】C末端残基としてアルギニンまたはリジンのいずれかを有する異なるC末端テトラペプチドまたはC末端ヘキサペプチドに結合するそれらの能力について選択された結合分子に結合した、トリプシン処理したペプチドフラグメントの分析によって生成された質量スペクトルを示す図である。
【図7】C末端残基としてアルギニンまたはリジンのいずれかを有する異なるC末端テトラペプチドまたはC末端ヘキサペプチドに結合するそれらの能力について選択された結合分子に結合した、トリプシン処理したペプチドフラグメントの分析によって生成された質量スペクトルを示す図である。
【図8】C末端残基としてアルギニンまたはリジンのいずれかを有する異なるC末端テトラペプチドまたはC末端ヘキサペプチドに結合するそれらの能力について選択された結合分子に結合した、トリプシン処理したペプチドフラグメントの分析によって生成された質量スペクトルを示す図である。
【図9】C末端残基としてアルギニンまたはリジンのいずれかを有する異なるC末端テトラペプチドまたはC末端ヘキサペプチドに結合するそれらの能力について選択された結合分子に結合した、トリプシン処理したペプチドフラグメントの分析によって生成された質量スペクトルを示す図である。
【図10】C末端残基としてアルギニンまたはリジンのいずれかを有する異なるC末端テトラペプチドまたはC末端ヘキサペプチドに結合するそれらの能力について選択された結合分子に結合した、トリプシン処理したペプチドフラグメントの分析によって生成された質量スペクトルを示す図である。
【図11】C末端残基としてアルギニンまたはリジンのいずれかを有する異なるC末端テトラペプチドまたはC末端ヘキサペプチドに結合するそれらの能力について選択された結合分子に結合した、トリプシン処理したペプチドフラグメントの分析によって生成された質量スペクトルを示す図である。
【図12】C末端残基としてアルギニンまたはリジンのいずれかを有する異なるC末端テトラペプチドまたはC末端ヘキサペプチドに結合するそれらの能力について選択された結合分子に結合した、トリプシン処理したペプチドフラグメントの分析によって生成された質量スペクトルを示す図である。
【図13】C末端残基としてアルギニンまたはリジンのいずれかを有する異なるC末端テトラペプチドまたはC末端ヘキサペプチドに結合するそれらの能力について選択された結合分子に結合した、トリプシン処理したペプチドフラグメントの分析によって生成された質量スペクトルを示す図である。
【図14】C末端残基としてアルギニンまたはリジンのいずれかを有する異なるC末端テトラペプチドまたはC末端ヘキサペプチドに結合するそれらの能力について選択された結合分子に結合した、トリプシン処理したペプチドフラグメントの分析によって生成された質量スペクトルを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質、ペプチドまたはそれらのフラグメントの不均質サンプルを分析するための方法であって、
(a)アレイ上の間隔をあけて離れた規定された位置に各クラスのメンバーを結合させることによって、前記タンパク質、ペプチドまたはそれらのフラグメントの不均質サンプルを不均質なクラスに分離するステップであって、各クラスのメンバーは、そのクラスに共通するモチーフを有するステップ;および
(b)各クラス中の前記タンパク質、ペプチドまたはそれらのフラグメントを特性決定するステップ
を含む方法。
【請求項2】
前記タンパク質またはペプチドの不均質サンプルが、細胞または組織型の総タンパク質内容物の抽出物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
請求項1のステップ(a)を実施する前に、前記フラグメントの不均質サンプルが、タンパク質またはペプチドの不均質サンプルをフラグメント化するステップによって形成される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記フラグメント化するステップが、化学的切断または酵素的切断によって実施される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記フラグメント化するステップが、配列指向性の切断機構を使用して実施される、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記フラグメント化するステップが、トリプシンによる前記タンパク質またはペプチドの不均質サンプルの消化によって実施される、請求項3から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
各タンパク質、ペプチドまたはそれらのフラグメント中の前記モチーフが、C末端、N末端または内部特徴に対して、各タンパク質、ペプチドまたはそれらのフラグメント中の同じ位置にある、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記サンプルがタンパク質またはペプチドの不均質サンプルフラグメントであり、各フラグメント中の前記モチーフが、切断部位に対して各フラグメント中の同じ位置にある、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
各タンパク質、ペプチドまたはそれらのフラグメント中の前記モチーフが、3アミノ酸長、4アミノ酸長、5アミノ酸長、6アミノ酸長またはそれより多いアミノ酸長である、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記モチーフが、3つ、4つまたは5つの可変アミノ酸を含み、前記モチーフ中の他のアミノ酸が、全てのタンパク質、ペプチドまたはそれらのフラグメント間で一定である、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記モチーフがC末端にある、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記モチーフがN末端にある、請求項1から10の一項に記載の方法。
【請求項13】
前記アレイが多数の異なるタイプの結合分子を含み、各タイプは前記アレイ上の間隔をあけて離れた規定された位置で固定化されており、各タイプの結合分子は前記請求項のいずれかに記載の規定されたモチーフに特異的に結合することが可能であり、異なるタイプの結合分子は異なる結合特異性を有する、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記アレイ上に提供された異なるタイプの結合分子の数が、フラグメント化されていないサンプル中の前記タンパク質またはペプチドの少なくとも10%を捕捉するのに適切であるか、あるいは前記サンプルがタンパク質またはペプチドの不均質サンプルフラグメントである場合、前記フラグメント化されていないサンプル中の前記タンパク質またはペプチドの少なくとも10%に由来する少なくとも1つのフラグメントを捕捉するのに適切である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記アレイ上に提供された異なるタイプの結合分子の数が、フラグメント化されていないサンプル中の前記タンパク質またはペプチドの少なくとも50%を捕捉するのに適切であるか、あるいは前記サンプルがタンパク質またはペプチドの不均質サンプルフラグメントである場合、前記フラグメント化されていないサンプル中の前記タンパク質またはペプチドの少なくとも50%に由来する少なくとも1つのフラグメントを捕捉するのに適切である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記アレイ上に提供された異なるタイプの結合分子の数が、フラグメント化されていないサンプル中の前記タンパク質またはペプチドの実質的に100%を捕捉するのに適切であるか、あるいは前記サンプルがタンパク質またはペプチドの不均質サンプルフラグメントである場合、前記フラグメント化されていないサンプル中の前記タンパク質またはペプチドの実質的に100%に由来する少なくとも1つのフラグメントを捕捉するのに適切である、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記アレイが、前記アレイ上に提供された少なくとも約10、50、100、150、200、250、300またはそれより多くの異なるタイプの結合分子を有する、請求項13から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記結合分子の少なくとも1つのタイプが、Fv、scFvまたはFabなどの抗体またはそのフラグメントもしくは改変体である、請求項13から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記結合分子のタイプの少なくとも1つがアプタマーである、請求項13から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記結合分子のタイプの少なくとも1つがポリヌクレオチドである、請求項13から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
請求項1のステップ(b)が、前記アレイ上の規定された別個の位置で結合したタンパク質、ペプチドまたはそれらのフラグメントを特性決定するステップを含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
請求項1のステップ(b)が、前記不均質なクラス中のタンパク質、ペプチドまたはそれらのフラグメントの質量を決定するステップを含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
請求項1のステップ(b)が、前記不均質なクラス中の異なる質量のタンパク質、ペプチドまたはそれらのフラグメントの存在率を決定するステップをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
請求項1のステップ(b)が、脱離質量分析または衝突誘起解離質量分析によって、前記不均質なクラス中の前記タンパク質、ペプチドまたはそれらのフラグメントを特性決定するステップを含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
請求項1のステップ(b)由来の情報が、検出されたペプチドフラグメントが由来するフラグメント化されていない不均質サンプル中の親タンパク質または親ペプチドのアイデンティティを決定するために使用される、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
請求項1のステップ(b)由来の情報が、前記不均質サンプル中のタンパク質またはペプチドの存在率を決定するために使用される、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
タンパク質、ペプチドまたはそれらのフラグメントの2つ以上の不均質なフラグメント化されたサンプルまたはフラグメント化されていないサンプル間の組成における差異を同定するための方法であって、前記請求項のいずれか一項に記載の方法によって各サンプルを分析するステップおよび結果を比較することによって任意の差異を同定するステップを含む方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法によって2つ以上のサンプル間の差異を同定するステップを含む疾患関連タンパク質または疾患関連ペプチドを同定するための方法であって、分析される前記サンプルの少なくとも1つが疾患を有する個体に由来し、分析される前記サンプルの別の1つが疾患を有さない個体に由来する方法。
【請求項29】
請求項1から26のいずれか一項に記載の方法によって前記個体から採取したex vivoサンプルを分析するステップおよびその結果が請求項28に記載の方法によって同定された疾患関連タンパク質または疾患関連ペプチドと対応するか否かを決定するステップを含む個体の疾患状態を診断する方法。
【請求項30】
前記請求項のいずれか一項に記載の方法における使用に適切なアレイであって、多数の異なるタイプの結合分子を含み、各タイプは前記アレイ上の規定された別個の位置で固定化され、各タイプの結合分子は請求項7から12のいずれか一項に記載の通りのモチーフに特異的に結合することが可能であり、前記異なるタイプの結合分子は異なる結合特異性を有するアレイ。
【請求項31】
前記アレイ上に提供された異なるタイプの結合分子の数が、タンパク質もしくはペプチドまたはそれらのフラグメントの不均質サンプルが前記アレイに適用される場合、前記サンプル中の前記タンパク質またはペプチドの少なくとも10%、50%または実質的に100%が前記アレイ上に捕捉されるか、あるいは前記サンプルがタンパク質またはペプチドのフラグメントの不均質サンプルである場合、フラグメント化されていないサンプル中の前記タンパク質またはペプチドの少なくとも10%、50%または実質的に100%に由来する少なくとも1つのフラグメントが前記アレイ上に捕捉される、請求項30に記載のアレイ。
【請求項32】
前記アレイ上に提供された前記異なるタイプの結合分子の数が、少なくとも約10、50、100、150、200、250、300またはそれより多い、請求項30または31に記載のアレイ。
【請求項33】
前記結合分子の少なくとも1つが、請求項18から20のいずれか一項に記載の通りである、請求項30から32のいずれか一項に記載のアレイ。
【請求項34】
請求項1から29のいずれか一項に記載の方法における使用に適切なアレイを作製する方法であって、
(a)異なるタイプの結合分子のライブラリーを提供するステップであって、各タイプは請求項7から12のいずれか一項に記載の通りのモチーフに特異的に結合することが可能であり、前記異なるタイプは異なる結合特異性を有するステップ;および
(b)異なるタイプの結合分子が規定された別個の位置で固定化されるように、アレイ上に前記結合分子を固定化するステップ
を含む方法。
【請求項35】
前記異なるタイプの結合分子のライブラリーが、請求項18から20のいずれか一項に記載の通りの少なくとも1つのタイプの結合分子を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
請求項34または35に記載の方法によって得られるアレイ。
【請求項37】
タンパク質またはペプチドの不均質サンプルを分析するためのシステムであって、請求項30から36のいずれか一項に記載のアレイ、ならびに前記アレイ上の各異なるタイプの結合分子のアイデンティティおよび/または結合特性および位置についての情報を含むデータキャリアを含むシステム。
【請求項38】
タンパク質、ペプチドおよび/またはそれらのフラグメントの1つまたは複数の不均質サンプルを分析するための、請求項30から37のいずれか一項に記載のアレイまたはシステムの使用。
【請求項39】
疾患を有する個体由来の少なくとも1つのex vivoサンプルおよび疾患を有さない個体由来の少なくとも1つの他のex vivoサンプルを分析することによって疾患関連タンパク質を同定するための、請求項38に記載の使用。
【請求項40】
少なくとも約10、50、100、150、200、250、300またはそれより多くの異なるタイプの結合分子のライブラリーであって、各タイプは請求項7から12のいずれか一項に記載の通りのモチーフに特異的に結合することが可能であり、前記異なるタイプは異なる結合特異性を有する、ライブラリー。
【請求項41】
請求項18から20のいずれか一項に記載の通りの少なくとも1つのタイプの結合分子を含む、請求項40に記載のライブラリー。
【請求項42】
結合分子のライブラリーを作製するための方法であって、
(a)請求項7から12のいずれか一項に記載の通りのモチーフを含むセレクターペプチドを第1の成分として提供するステップ;
(b)候補結合分子の供給源を第2の成分として提供するステップ;
(c)前記第1の成分および第2の成分を合わせるステップ;ならびに
(d)前記第1の成分中の前記セレクターペプチドの前記モチーフに特異的に結合することが可能である候補結合分子を同定するステップ
を含む方法。
【請求項43】
請求項42に記載の方法によって得られる、少なくとも約10、50、100、150、200、250、300またはそれより多い異なるタイプの結合分子のライブラリー。
【請求項44】
請求項30から33または36のいずれか一項に記載の通りのアレイを作製するための、請求項40、41または43のいずれか一項に記載の通りの結合分子のライブラリーの使用。
【請求項45】
請求項1から29のいずれか一項に記載の方法によって得られる情報を含む、データキャリア。
【請求項46】
請求項45に記載のデータキャリア、および請求項1から29のいずれか一項に記載の方法による異なるサンプルの分析から得られる情報を比較する手段を含む、電子データ処理システム。
【請求項47】
請求項29に記載の方法によって処置を必要とすると同定された個体を処置するための医薬の製造における薬剤の使用。
【請求項48】
請求項29に記載の方法によって処置を必要とすると同定された個体を処置する方法であって、前記個体の疾患状態に適切な有効量の薬剤を投与するステップを含む方法。
【請求項49】
結合分子のライブラリーを作製するための方法であって、
(a)請求項7から12のいずれか一項に記載の通りのモチーフを含むセレクターペプチドを第1の成分として提供するステップ;
(b)候補結合分子の供給源を第2の成分として提供するステップ;
(c)前記第1の成分および第2の成分を合わせるステップ;
(d)前記第1の成分中の前記セレクターペプチドの前記モチーフに特異的に結合することが可能である候補結合分子を同定するステップ;
(e)異なるタイプの結合分子が規定された別個の位置で固定化されるように、アレイ上にステップ(d)で同定された前記結合分子を固定化するステップ;
(f)タンパク質、ペプチドまたはそれらのフラグメントの不均質サンプルを提供するステップであって、前記サンプルは、ステップ(e)で固定化された結合分子によって結合されるモチーフを各々が有するタンパク質、ペプチドまたはそれらのフラグメントを含むステップ;
(g)ステップ(e)で固定化された前記結合分子に各クラスのメンバーを結合させることによって、前記タンパク質、ペプチドまたはそれらのフラグメントの不均質サンプルを不均質なクラスに分離するステップ;ならびに
(h)各クラス中の前記タンパク質、ペプチドまたはそれらのフラグメントを特性決定するステップ
を含む方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペプチド、またはタンパク質もしくはペプチドフラグメントの不均質サンプルを分析するための方法であって、
(a)アレイ上の間隔をあけて離れた規定された位置に各クラスのメンバーを結合させることによって、前記ペプチド、またはタンパク質もしくはペプチドフラグメントの不均質サンプルを不均質なクラスに分離するステップであって、各クラスのメンバーは、そのクラスに共通するモチーフを有するステップ;および
(b)前記不均質なクラス中のペプチド、またはタンパク質もしくはペプチドフラグメントの質量を決定し、前記不均質なクラス中の異なる質量のペプチド、またはタンパク質もしくはペプチドフラグメントの存在率を決定することによって、各クラス中の前記ペプチド、またはタンパク質もしくはペプチドフラグメントを特性決定するステップ
を含む方法。
【請求項2】
前記ペプチドまたはタンパク質もしくはペプチドフラグメントの不均質サンプルが、細胞または組織型の総タンパク質内容物の抽出物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
請求項1のステップ(a)を実施する前に、前記フラグメントの不均質サンプルが、タンパク質またはペプチドの不均質サンプルをフラグメント化するステップによって形成される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記フラグメント化するステップが、化学的切断または酵素的切断によって実施される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記フラグメント化するステップが、配列指向性の切断機構を使用して実施される、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記フラグメント化するステップが、トリプシンによる前記タンパク質またはペプチドの不均質サンプルの消化によって実施される、請求項3から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
各ペプチドまたはタンパク質もしくはペプチドフラグメント中の前記モチーフが、C末端、N末端または内部特徴に対して、各ペプチドまたはタンパク質もしくはペプチドフラグメント中の同じ位置にある、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記サンプルがタンパク質またはペプチドのフラグメントの不均質サンプルであり、各フラグメント中の前記モチーフが、切断部位に対して各フラグメント中の同じ位置にある、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
各ペプチドまたはタンパク質もしくはペプチドフラグメント中の前記モチーフが、3アミノ酸長、4アミノ酸長、5アミノ酸長、6アミノ酸長またはそれより多いアミノ酸長である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記モチーフが、3つ、4つまたは5つの可変アミノ酸を含み、前記モチーフ中の他のアミノ酸が、全てのペプチドまたはタンパク質もしくはペプチドフラグメント間で一定である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記モチーフがC末端にある、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記モチーフがN末端にある、請求項1から10の一項に記載の方法。
【請求項13】
前記アレイが多数の異なるタイプの結合分子を含み、各タイプは前記アレイ上の間隔をあけて離れた規定された位置で固定化されており、各タイプの結合分子は請求項1から12のいずれか一項に記載の規定されたモチーフに特異的に結合することが可能であり、異なるタイプの結合分子は異なる結合特異性を有する、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記アレイ上に提供された異なるタイプの結合分子の数が、フラグメント化されていないサンプル中のペプチドの少なくとも10%を捕捉するのに適切であるか、あるいは前記サンプルがタンパク質またはペプチドの不均質サンプルフラグメントである場合、前記フラグメント化されていないサンプル中の前記タンパク質またはペプチドの少なくとも10%に由来する少なくとも1つのフラグメントを捕捉するのに適切である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記アレイ上に提供された異なるタイプの結合分子の数が、フラグメント化されていないサンプル中のペプチドの少なくとも50%を捕捉するのに適切であるか、あるいは前記サンプルがタンパク質またはペプチドの不均質サンプルフラグメントである場合、前記フラグメント化されていないサンプル中の前記タンパク質またはペプチドの少なくとも50%に由来する少なくとも1つのフラグメントを捕捉するのに適切である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記アレイ上に提供された異なるタイプの結合分子の数が、フラグメント化されていないサンプル中のペプチドの実質的に100%を捕捉するのに適切であるか、あるいは前記サンプルがタンパク質またはペプチドの不均質サンプルフラグメントである場合、前記フラグメント化されていないサンプル中の前記タンパク質またはペプチドの実質的に100%に由来する少なくとも1つのフラグメントを捕捉するのに適切である、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記アレイが、前記アレイ上に提供された少なくとも約10、50、100、150、200、250、300またはそれより多くの異なるタイプの結合分子を有する、請求項13から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記結合分子の少なくとも1つのタイプが、Fv、scFvまたはFabなどの抗体またはそのフラグメントもしくは改変体である、請求項13から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記結合分子のタイプの少なくとも1つがアプタマーである、請求項13から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記結合分子のタイプの少なくとも1つがポリヌクレオチドである、請求項13から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
請求項1のステップ(b)が、前記アレイ上の規定された別個の位置で結合したペプチドまたはタンパク質もしくはペプチドフラグメントを特性決定するステップを含む、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
請求項1のステップ(b)が、脱離質量分析または衝突誘起解離質量分析によって、前記不均質なクラス中の前記ペプチドまたはタンパク質もしくはペプチドフラグメントを特性決定するステップを含む、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
請求項1のステップ(b)由来の情報が、検出されたタンパク質またはペプチドフラグメントが由来するフラグメント化されていない不均質サンプル中の親タンパク質または親ペプチドのアイデンティティを決定するために使用される、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
請求項1のステップ(b)由来の情報が、検出されたタンパク質またはペプチドフラグメントが由来する前記フラグメント化されていない不均質サンプル中の親タンパク質またはペプチドの存在率を決定するために使用される、請求項1から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
ペプチドまたはタンパク質もしくはペプチドフラグメントの2つ以上の不均質なフラグメント化されたサンプルまたはフラグメント化されていないサンプル間の組成における差異を同定するための方法であって、請求項1から24のいずれか一項に記載の方法によって各サンプルを分析するステップおよび結果を比較することによって任意の差異を同定するステップを含む方法。
【請求項26】
請求項25に記載の方法によって2つ以上のサンプル間の差異を同定するステップを含む疾患関連タンパク質または疾患関連ペプチドを同定するための方法であって、分析される前記サンプルの少なくとも1つが疾患を有する個体に由来し、分析される前記サンプルの別の1つが疾患を有さない個体に由来する方法。
【請求項27】
請求項1から24のいずれか一項に記載の方法によって前記個体から採取したex vivoサンプルを分析するステップおよびその結果が請求項26に記載の方法によって同定された疾患関連タンパク質または疾患関連ペプチドと対応するか否かを決定するステップを含む個体の疾患状態を診断する方法。
【請求項28】
請求項1から27のいずれか一項に記載の方法における使用に適切なアレイであって、多数の異なるタイプの結合分子を含み、各タイプは前記アレイ上の規定された別個の位置で固定化され、各タイプの結合分子は請求項7に記載の通りのモチーフに特異的に結合することが可能であり、前記異なるタイプの結合分子は異なる結合特異性を有するアレイ。
【請求項29】
前記アレイ上に提供された異なるタイプの結合分子の数が、ペプチドまたはタンパク質もしくはペプチドフラグメントの不均質サンプルが前記アレイに適用される場合、前記サンプル中の前記ペプチドの少なくとも10%、50%または実質的に100%が前記アレイ上に捕捉されるか、あるいは前記サンプルがタンパク質またはペプチドのフラグメントの不均質サンプルである場合、フラグメント化されていないサンプル中の前記タンパク質またはペプチドの少なくとも10%、50%または実質的に100%に由来する少なくとも1つのフラグメントが前記アレイ上に捕捉される、請求項30に記載のアレイ。
【請求項30】
前記アレイ上に提供された前記異なるタイプの結合分子の数が、少なくとも約10、50、100、150、200、250、300またはそれより多い、請求項28または29に記載のアレイ。
【請求項31】
前記結合分子の少なくとも1つが、請求項18から20のいずれか一項に記載の通りである、請求項28から30のいずれか一項に記載のアレイ。
【請求項32】
請求項1から27のいずれか一項に記載の方法における使用に適切なアレイを作製する方法であって、
(a)異なるタイプの結合分子のライブラリーを提供するステップであって、各タイプは請求項7に記載の通りのモチーフに特異的に結合することが可能であり、前記異なるタイプは異なる結合特異性を有するステップ;および
(b)異なるタイプの結合分子が規定された別個の位置で固定化されるように、アレイ上に前記結合分子を固定化するステップ
を含む方法。
【請求項33】
前記異なるタイプの結合分子のライブラリーが、請求項18から20のいずれか一項に記載の通りの少なくとも1つのタイプの結合分子を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
請求項32または33に記載の方法によって得られるアレイ。
【請求項35】
ペプチドまたはタンパク質もしくはペプチドフラグメントの不均質サンプルを分析するためのシステムであって、請求項28から34のいずれか一項に記載のアレイ、ならびに前記アレイ上の各異なるタイプの結合分子のアイデンティティおよび/または結合特性および位置についての情報を含むデータキャリアを含むシステム。
【請求項36】
ペプチドまたはタンパク質もしくはペプチドフラグメントの1つまたは複数の不均質サンプルを分析するための、請求項28から35のいずれか一項に記載のアレイまたはシステムの使用。
【請求項37】
疾患を有する個体由来の少なくとも1つのex vivoサンプルおよび疾患を有さない個体由来の少なくとも1つの他のex vivoサンプルを分析することによって疾患関連タンパク質を同定するための、請求項36に記載の使用。
【請求項38】
少なくとも約10、50、100、150、200、250、300またはそれより多くの異なるタイプの結合分子のライブラリーであって、各タイプは請求項7に記載の通りのモチーフに特異的に結合することが可能であり、前記異なるタイプは異なる結合特異性を有する、ライブラリー。
【請求項39】
請求項18から20のいずれか一項に記載の通りの少なくとも1つのタイプの結合分子を含む、請求項38に記載のライブラリー。
【請求項40】
結合分子のライブラリーを作製するための方法であって、
(a)請求項7に記載の通りのモチーフを含むセレクターペプチドを第1の成分として提供するステップ;
(b)候補結合分子の供給源を第2の成分として提供するステップ;
(c)前記第1の成分および第2の成分を合わせるステップ;ならびに
(d)前記第1の成分中の前記セレクターペプチドの前記モチーフに特異的に結合することが可能である候補結合分子を同定するステップ
を含む方法。
【請求項41】
請求項40に記載の方法によって得られる、少なくとも約10、50、100、150、200、250、300またはそれより多い異なるタイプの結合分子のライブラリー。
【請求項42】
請求項28から31または34のいずれか一項に記載の通りのアレイを作製するための、請求項38、39または41のいずれか一項に記載の通りの結合分子のライブラリーの使用。
【請求項43】
請求項1から27のいずれか一項に記載の方法によって得られる情報を含む、データキャリア。
【請求項44】
請求項43に記載のデータキャリア、および請求項1から27のいずれか一項に記載の方法による異なるサンプルの分析から得られる情報を比較する手段を含む、電子データ処理システム。
【請求項45】
請求項27に記載の方法によって処置を必要とすると同定された個体を処置するための医薬の製造における薬剤の使用。
【請求項46】
請求項27に記載の方法によって処置を必要とすると同定された個体を処置する方法であって、前記個体の疾患状態に適切な有効量の薬剤を投与するステップを含む方法。
方法。
【請求項47】
ペプチド、またはタンパク質もしくはペプチドフラグメントの不均質サンプルを分析するための方法であって、
(a)請求項7から12のいずれか一項に記載の通りのモチーフを含むセレクターペプチドを第1の成分として提供するステップ;
(b)候補結合分子の供給源を第2の成分として提供するステップ;
(c)前記第1の成分および第2の成分を合わせるステップ;
(d)前記第1の成分中の前記セレクターペプチドの前記モチーフに特異的に結合することが可能である候補結合分子を同定するステップ;
(e)異なるタイプの結合分子が規定された別個の位置で固定化されるように、アレイ上にステップ(d)で同定された前記結合分子を固定化するステップ;
(f)ペプチド、またはタンパク質もしくはペプチドフラグメントの不均質サンプルを提供するステップであって、前記サンプルは、ステップ(e)で固定化された結合分子によって結合されるモチーフを各々が有するペプチド、またはタンパク質もしくはペプチドフラグメントを含むステップ;
(g)ステップ(e)で固定化された前記結合分子に各クラスのメンバーを結合させることによって、前記ペプチド、またはタンパク質もしくはペプチドフラグメントの不均質サンプルを不均質なクラスに分離するステップ;ならびに
(h)前記不均質なクラス中のペプチド、またはタンパク質もしくはペプチドフラグメントの質量を決定し、前記不均質なクラス中の異なる質量のペプチド、またはタンパク質もしくはペプチドフラグメントの存在率を決定することによって、各クラス中の前記ペプチド、またはタンパク質もしくはペプチドフラグメントを特性決定するステップ
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2006−523829(P2006−523829A)
【公表日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504660(P2006−504660)
【出願日】平成16年3月11日(2004.3.11)
【国際出願番号】PCT/EP2004/002566
【国際公開番号】WO2004/081575
【国際公開日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【出願人】(502335349)バイオインヴェント インターナショナル アーベー (2)
【Fターム(参考)】