説明

スクリーン印刷版およびその製造方法

【課題】内紗に形成される印刷パターンと外紗に形成されるアライメントマークとの間に相対的な位置ずれが生じにくく、かつ、製造コストの安価なスクリーン印刷版およびその製造方法を提供する
【解決手段】スクリーン印刷版2は、開口部4cを設けた、樹脂製メッシュからなる外紗4と、外紗4の開口部4cに配設された、金属製メッシュからなる内紗6と、内紗6に設けられ、印刷パターン20が形成された、感光性樹脂からなる印刷パターン用乳剤層16と、外紗4に設けられ、アライメントマーク22が形成された、感光性樹脂からなるアライメントマーク用乳剤層14と、を備えている。印刷パターン20およびアライメントマーク22は、印刷パターン用乳剤層16およびアライメントマーク用乳剤層14を、フォトマスクFを介して一括露光、現像して形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スクリーン印刷に使用されるスクリーン印刷版およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、太陽電池などの電子部品の電極パターンやその電極パターン以外の部分の保護膜パターンの印刷方法として、スクリーン印刷法が用いられている。そして、スクリーン印刷法には、ステンレスなどのメッシュ(網)に感光性乳剤を塗布し,露光,現像して作られるスクリーン印刷版が使用される。このスクリーン印刷版においては、被印刷物に対応した印刷パターンの他に、被印刷物とスクリーン印刷版との位置を合わせるためのアライメントマークも形成される場合がある。そして、このアライメントマークは、広面積の印刷パターンエリアを確保するためや、高精度な位置合わせ精度を確保するために、できる限りスクリーン印刷版の額縁状版枠の近傍に配置することが要求される。
【0003】
このため、額縁状版枠の内寸と比較して、アライメントマーク形成可能エリアを広面積に確保できる製版方法、すなわち、額縁状版枠に直接にステンレス製メッシュを貼り付ける(直張り)製版方法が、通常、採用されている。しかし、この直張り製版方法は、印刷時のにじみ抑制の観点からバイアス張り(額縁状版枠の方向に対して、ステンレス製メッシュの繊維方向を一定のバイアス角度分だけ斜めにして張り付ける張り方)したとき、ステンレス製メッシュの使用効率が低く、ステンレス製メッシュの廃棄ロス率が高くなってしまうという問題がある。この理由から、直張り製版方法は、通常、線径が比較的太く安価なステンレス製メッシュを使用する場合に限定されている。
【0004】
一方、高価で線径の細い高オープニングのステンレス製メッシュを使用する場合には、製造コストを低減するために、開口部を設けた安価なポリエステル製メッシュ(外紗)と、外紗の開口部に配設されたステンレス製メッシュ(内紗)とを接着剤で接合してコンビネーション構造のスクリーン体を形成する製版方法も、通常、採用されている。しかし、このコンビネーション構造のスクリーン体において、従来、アライメントマーク形成エリアは内紗部分に限定されていたため、額縁状版枠の内寸と比較して、アライメントマーク形成可能エリアを広面積に確保することができなかった。このため、スクリーン印刷版の額縁状版枠の近傍にアライメントマークを配置することができないという問題があった。
【0005】
この問題を解消する方法として、コンビネーション構造のスクリーン体の外紗の上面や下面に、金属板を加工したアライメントマークや、シートのスクリーンを加工したアライメントマークを貼り付ける方法が考えられる(特許文献1の段落番号0294〜0296および第6図参照)。この方法を用いたスクリーン印刷版は、アライメントマークを額縁状版枠の近傍に配置することができ、高精度な位置合わせ精度などを確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−130820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のスクリーン印刷版は、コンビネーション構造のスクリーン体の外紗の上面や下面に、金属板を加工したアライメントマークや、シートのスクリーンを加工したアライメントマークを貼り付けるものであるため、内紗に形成される印刷パターンと外紗に形成されるアライメントマークとの間に相対的な位置ずれが生じ易いという問題があった。また、別途このようなアライメントマークを加工する必要があり、さらに、外紗の上面や下面の正確な位置にアライメントマークを貼りつける技術や装置および工程が必要であり、製版工程が長くなり、スクリーン印刷版の製造コストがアップする要因となっていた。
【0008】
それゆえに、この発明の主たる目的は、内紗に形成される印刷パターンと外紗に形成されるアライメントマークとの間に相対的な位置ずれが生じにくく、かつ、製造コストの安価なスクリーン印刷版およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、
開口部を設けた、樹脂製メッシュからなる外紗と、
外紗の開口部に配設された、金属製メッシュからなる内紗と、
内紗に設けられ、印刷パターンが形成された、感光性樹脂からなる印刷パターン用乳剤層と、
外紗に設けられ、アライメントマークが形成された、感光性樹脂からなるアライメントマーク用乳剤層と、を備え、
印刷パターンおよびアライメントマークが、印刷パターン用乳剤層およびアライメントマーク用乳剤層を、フォトマスクを介して一括露光、現像して形成されていること、
を特徴とする、スクリーン印刷版である。ここに、アライメントマークとは、スクリーン印刷版に形成されている印刷パターン位置と、被印刷物の印刷位置とを位置合わせするためのマークをいう。
【0010】
この発明では、アライメントマークが外紗部分に形成されているため、アライメントマークを額縁状版枠の近傍に配置することができ、高精度な位置合わせが可能となる。そして、内紗に設けられた印刷パターン用乳剤層と外紗に設けられたアライメントマーク用乳剤層とが、印刷パターン部およびアライメントマークパターン部が作画されたフォトマスクを介して一括露光、現像されるため、内紗に形成される印刷パターンと外紗に形成されるアライメントマークとの間に相対的な位置ずれが生じにくい。さらに、樹脂製メッシュからなる外紗に、アライメントマーク用乳剤層を露光、現像してアライメントマークが形成されているため、外紗として金属メッシュを用いた場合と比較して、金属製メッシュに特有の反射や光非透過性に起因する露光精度の悪化が生じない。
【0011】
また、この発明は、
開口部を設けた樹脂製メッシュからなる外紗と外紗の開口部に配設された金属製メッシュからなる内紗とを有するコンビネーション構造のスクリーン体を形成する工程と、
スクリーン体の内紗に、感光性樹脂からなる印刷パターン用乳剤層乳剤層を形成するとともに、スクリーン体の外紗に、感光性樹脂からなるアライメントマーク用乳剤層を形成する工程と、
フォトマスクを介して印刷パターン用乳剤層およびアライメントマーク用乳剤層を同時に露光、現像し、内紗に印刷パターンを形成すると共に外紗にアライメントマークを形成する工程と、
を備えたことを特徴とする、スクリーン印刷版の製造方法である。
【0012】
この発明では、内紗に形成される印刷パターンと外紗に形成されるアライメントマークとの間に相対的な位置ずれが生じにくく、かつ、製造コストの安価なスクリーン印刷版が生産性良く得られる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、内紗に設けられた印刷パターン用乳剤層と外紗に設けられたアライメントマーク用乳剤層とが、印刷パターン部およびアライメントマークパターン部が作画されたフォトマスクを介して一括露光、現像されるので、印刷パターンとアライメントマークを、両者の間に相対的な位置ずれを生じさせないで形成することができる。さらに、樹脂製メッシュからなる外紗にアライメントマーク用乳剤層を形成して露光することにより、金属製メッシュに特有の反射や光非透過性に起因する露光精度の悪化を生じさせないで、所望のアライメントマークを形成することができるので、印刷精度の向上を図ることができる。また、スクリーン体の外紗に樹脂製メッシュを使用し、かつ、内紗に金属製メッシュを使用することにより、高価な金属製メッシュの使用量を抑えることができ、スクリーン印刷版の製造コストを低減できる。
【0014】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の発明を実施するための形態の説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(A)は本発明に係るスクリーン印刷版の一実施形態を示す平面図、(B)は裏面図、(C)は概略構成図である。
【図2】図1に示したスクリーン印刷版の製造方法の一実施形態を説明するための図であり、(A)は平面図、(B)は概略構成図である。
【図3】図2に続くスクリーン印刷版の製造方法を説明するための図であり、(A)は平面図、(B)は概略構成図である。
【図4】図3に続くスクリーン印刷版の製造方法を説明するための図であり、(A)は平面図、(B)は概略構成図である。
【図5】図4に続くスクリーン印刷版の製造方法を説明するための一部拡大概略構成図である。
【図6】フォトマスクを示す平面図である。
【図7】図5に続くスクリーン印刷版の製造方法を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係るスクリーン印刷版の一実施形態について説明する。図1(A)はスクリーン印刷版2を示す平面図、図1(B)は裏面図、図1(C)は概略構成図である。スクリーン印刷版2は、概略、外紗4および内紗6を有するコンビネーション構造のスクリーン体8と、額縁状版枠10とを備えている。
【0017】
全体形状が矩形の額縁状版枠10はアルミニウムやステンレスなどからなり、重量軽減や機械的歪み低減のために、横断面が矩形の筒形とされるとともに、所定の間隔で長穴10aなどが形成されている。
【0018】
外紗4は、矩形状の樹脂製メッシュからなり、額縁状版枠10にノーマル張り(額縁状版枠10の方向に対して、樹脂製メッシュの繊維方向を平行にして張り付ける張り方)で接着剤によって直接に貼り付けられている。ノーマル張りができるのは、外紗4の部分には印刷パターン20が形成されていないため、印刷時のにじみ抑制を考慮する必要がないからである。従って、樹脂製メッシュの使用効率が高くなり、樹脂製メッシュの廃棄ロス率を低くできる。外紗4の中央部には、スキージを行うための矩形状の開口部4cが形成されている。外紗4は伸縮性や弾性の高いメッシュが好ましく、例えばポリエステルやナイロンなどの樹脂製メッシュが用いられる。
【0019】
外紗4のプリント面42(スクリーン印刷版2の裏側の面)には、感光性樹脂からなる所望の厚さのアライメントマーク用乳剤層14が形成されている。このアライメントマーク用乳剤層14には、円形のアライメントマーク22が額縁状版枠10の内側に上下左右の四方に配置された状態で形成されている。アライメントマーク22の近傍のアライメントマーク用乳剤層14の矩形部分24は着色されている。これにより、アライメントマーク22のコントラストを鮮明にして、CCDカメラによるアライメントマーク22の視認性を確実なものとすることができる。さらに、アライメントマーク用乳剤層14上には、外紗4のテンションの補強・維持のために金属製テープからなるテンションサポータ30が貼り付けられている。テンションサポータ30は、アライメントマーク22および着色矩形部分24を回避して開口部4cの周囲に環状に広面積に配設されている。
【0020】
内紗6は、矩形状の金属製メッシュからなり、外紗4のプリント面42に外紗4の開口部4cを塞ぐように配設され、開口部4cの外周囲に塗布された接着剤12で外紗4に接合されている。このとき、内紗6の外周端部が接着剤12の縁部より若干後退するような状態で接合されることが好ましい。内紗6は、外紗4にバイアス張り(額縁状版枠10の方向に対して、金属製メッシュの繊維方向を一定のバイアス角度分だけ斜めにして張り付ける張り方)で接合している。内紗6の部分には印刷パターン20が形成されているため、印刷時のにじみ抑制を考慮する必要があるからである。内紗6は剛性を有したメッシュが好ましく、例えばステンレスなどのメッシュが用いられる。内紗6は、その四つの角部がテンションサポータ30の内周の四つの角部に近接するように配設されている。
【0021】
内紗6のプリント面62(スクリーン印刷版2の裏側の面)には、感光性樹脂からなる所望の厚さの印刷パターン用乳剤層16が形成されている。この印刷パターン用乳剤層16には、印刷パターン(例えば太陽電池の櫛形の電極パターン)20がスクリーン印刷版2の中央部分に配置された状態で形成されている。なお、印刷パターン20は、簡略化のため一点鎖線でその占有範囲を示しているだけであり、具体的なパターン図形は表示していない。
【0022】
印刷パターン20およびアライメントマーク22は、内紗6に形成した印刷パターン用乳剤層16および外紗4に形成したアライメントマーク用乳剤層14を、同一フォトマスクを用いて一括露光、現像して形成されている。従って、金属板を加工したアライメントマークをコンビネーション構造のスクリーン体の外紗に貼り付ける従来のスクリーン印刷版とは異なり、より簡単にアライメントマークを外紗に形成することができ、金属板の高精度加工や金属板を外紗の正確な位置に貼り付ける特別な技術、装置および工程を必要としない。
【0023】
以上の構成からなるスクリーン印刷版2は、アライメントマーク22が外紗4に形成されているため、アライメントマーク22を額縁状版枠10の近傍に配置することができ、高精度な位置合わせが可能となる。そして、内紗6に形成された印刷パターン用乳剤層16と外紗4に形成されたアライメントマーク用乳剤層14とが、同一フォトマスクを用いて一括露光、現像されているので、内紗6に形成される印刷パターン20と外紗4に形成されるアライメントマーク22を、両者の間に相対的な位置ずれを生じさせないで形成することができる。
【0024】
さらに、樹脂製メッシュからなる外紗4にアライメントマーク用乳剤層14を形成して露光することにより、金属製メッシュに特有の反射や光非透過性に起因する露光精度の悪化を生じさせないで、所望のアライメントマーク22を形成することができ、印刷精度の向上を図ることができる。また、外紗4に樹脂製メッシュを使用し、かつ、内紗6に金属製メッシュを使用することにより、高価な線径の細い高オープニングの金属製メッシュの使用量を抑えることができ、スクリーン印刷版2の製造コストを低減できる。
【0025】
このスクリーン印刷版2とコンピュータと連動したCCDカメラを備えた装置とを用いて、印刷パターン20(例えば太陽電池の櫛形の電極)をセル基板Rの所定の位置に印刷する場合は、アライメントマーク22が、スクリーン印刷版2の上方、下方または上下両方に設置されるCCDカメラによって認識され、スクリーン印刷版2の位置が正確に調整される。次に、電極材ペーストPが内紗6のスキージ面61(スクリーン印刷版2の表側の面)に供給された後、スキージSのエッジにて内紗6のスキージ面61を押圧して、内紗6のプリント面62をセル基板Rに当接させさせながら掃引きする。これにより、電極材ペーストPが内紗6に形成された印刷パターン20の網目を通過して、電極材ペーストPからなる印刷パターン20がセル基板Rの所定の位置に電極として印刷される。
【0026】
次に、スクリーン印刷版2の製造方法の一実施形態について説明する。
【0027】
図2に示すように、矩形状の樹脂製メッシュからなる外紗4を適度な張力(テンション)をかけた状態で額縁状版枠10に張設する。すなわち、紗張り機を用いて、額縁状版枠10に外紗4を直接に接着する。本実施形態では、額縁状版枠10は、全体の外寸が360mm、内寸が300mmの矩形をしている。接着には瞬間接着剤などを使用する。外紗4として、ポリエステル製メッシュ(#230−45μm線径)を使用した。
【0028】
次に、図3に示すように、張設された外紗4のプリント面42に、外紗4の外寸より小さい外寸を有する矩形状の金属製メッシュからなる内紗6が接合される。すなわち、内紗6は、外紗4の中央部分に対応した位置に接着剤12で接着される。本実施形態では、接着剤12は耐溶剤性、耐水性、耐摩耗性を備えたものが好ましく、例えばエポキシ系、合成ゴム系などの接着剤が用いられる。内紗6として、線径が細く高オープニングの高価なステンレス製メッシュ(#360−16μm線径)を使用した。内紗6の形状は1辺が200mmの正方形であり、接着剤12の幅Wは約15mmである。このとき、外紗4と内紗6の外周端部との間に急な段差が生じるのを回避するために、内紗6の外周端部が接着剤12の縁部より若干後退(本実施形態では、後退寸法Dは約5mmである)した状態で接合することで階段状の段差とされる(図5参照)。このようにして、張設された外紗4に対して内紗6が適度な張力が付与された状態で接合される。なお、内紗6は、外紗4にバイアス張り(額縁状版枠10の方向に対して、金属製メッシュの繊維方向を一定のバイアス角度分だけ斜めにして張り付ける張り方)で接合している。
【0029】
次に、図4に示すように、外紗4のうち、内紗6と重複する部分(ただし、内紗6と外紗4との接着部分は含まない)4bをカッターなどで切り取って除去する。この結果、一辺が180mmの矩形状開口部4cを内側に設けた外紗4と、外紗4の開口部4cに配設された内紗6とを有するコンビネーション構造のスクリーン体8が形成される。
【0030】
次に、図5に示すように、スクリーン体8の内紗6に、感光性樹脂からなる印刷パターン用乳剤層16を形成する。すなわち、バケットに感光性乳剤を入れ、感光性乳剤を内紗6に塗布する。塗布方法に限定はない。本実施形態では、感光性乳剤を内紗6のスキージ面61に2回塗布、プリント面62に3回塗布し、40℃のオーブンで乾燥して成膜する。その後、プリント面62に3回塗布し、40℃のオーブンで乾燥して成膜する作業を複数回繰り返して、印刷パターン用乳剤層乳剤層16の厚みを調整し、印刷に必要な所望の厚さの印刷パターン用乳剤層16を内紗6のプリント面62に形成する。例えば、35μm厚の内紗6に30μm厚の印刷パターン用乳剤層乳剤層16を形成することにより、全体の厚みは65μmとなる。本実施形態では、感光性乳剤として、部分けん化ポリビニルアルコール水溶液と、酢酸ビニルまたはポリビニルアルコールを保護コロイドとしたアクリル酸エステル共重合エマルジョンと、光重合開始剤を溶解したアクリロイル基を有する反応性モノマーと、ジアゾ樹脂と、を含有するものを使用した。
【0031】
次に、スクリーン体8の外紗4に、感光性樹脂からなるアライメントマーク用乳剤層14を形成する。すなわち、バケットに印刷パターン用乳剤層16と同様の感光性乳剤を入れ、感光性乳剤を外紗4に塗布する。塗布方法に限定はない。本実施形態では、感光性乳剤を外紗4のスキージ面41に2回塗布、プリント面42に3回塗布し、40℃のオーブンで乾燥して成膜する。その後、プリント面42に3回塗布し、40℃のオーブンで乾燥して成膜する作業を複数回繰り返して、アライメントマーク用乳剤層14の厚みを調整し、所望の厚さのアライメントマーク用乳剤層14を外紗4に形成する。アライメントマーク用乳剤層14は、印刷に使用しないため、5μm程度の厚みとされる。従って、全体の厚みは、外紗4の厚みにアライメントマーク用乳剤層14の5μmを合算した厚みとなる。
【0032】
次に、スクリーン体8のプリント面(印刷パターン用乳剤層16およびアライメントマーク用乳剤層14が形成されている面)に、例えば太陽電池の電極パターン用フォトマスクFを真空密着させる。このフォトマスクFには、図6に示すように、中央部に配置されている太陽電池の櫛形の電極パターンに対応する印刷パターン部51と共に、4個のアライメントマークパターン部52も作画されている。外紗4と内紗6の外周端部との段差が階段状になっているため、外紗4と内紗6の接合部分でのフォトマスクFの変形も小さい。図5においては、スクリーン体8の各構成部材4、6、12、14、16の厚みを強調して記載しているため、外紗4と内紗6の接合部分の段差においてフォトマスクFが極端に屈曲しているように記載されているが、実際はこのようなフォトマスクFの屈曲は認められない。この後、例えば東海商事製SERIA(3kWメタルハライドランプ)の露光機でフォトマスクFを介して紫外線を照射し、印刷パターン用乳剤層16およびアライメントマーク用乳剤層14を同時に硬化させる。
【0033】
次に、現像機(東海商事製SERIA)で水現像し、印刷パターン用乳剤層16およびアライメントマーク用乳剤層14のそれぞれの未露光部分を除去する。水現像を行う際には、スクリーン印刷版2を25℃の水に3分間浸漬して未露光部分の大部分を溶出させ、さらに25℃の水を6kg/cm2の水圧のスプレーガンにより噴射して残存する未露光部分を完全に除去する。その後、40℃のオーブンで乾燥させる。こうして、図7に示すように、内紗6の印刷パターン用乳剤層16に一辺が125mmの略正方形の印刷パターン(太陽電池の櫛形の電極パターン)20を形成すると共に、外紗4のアライメントマーク用乳剤層14に直径1mmの円形のアライメントマーク22を4個形成したコンビネーション構造のスクリーン印刷版2が得られる。アライメントマーク22は、額縁状版枠10の内寸300mmに対して、240mmの間隔で上下左右の四方に配置されている。
【0034】
さらに、CCDカメラによるアライメントマーク22の視認性を確実なものとするため、アライメントマーク22が形成されている近傍のアライメントマーク用乳剤層14の矩形部分24を着色液で着色して、アライメントマーク22のコントラストを鮮明にする。その後、図1(B)に示すように銀テープなどからなるテンションサポータ30を、スクリーン印刷版2のプリント面のアライメントマーク用乳剤層14の外周部分に貼り付ける。こうして、スクリーン印刷版2が量産性良く製造できる。
【0035】
なお、この発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変形される。アライメントマーク22の形状は、円形の他、正方形や多角形など異なる形状であってもよい。また、アライメントマーク22は通常4個使用するが、スクリーン印刷版2の対角線上に2個配置してもよい。
【符号の説明】
【0036】
2 スクリーン印刷版
4 外紗
4c 開口部
6 内紗
8 スクリーン体
14 アライメントマーク用乳剤層
16 印刷パターン用乳剤層
20 印刷パターン
22 アライメントマーク
F フォトマスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を設けた、樹脂製メッシュからなる外紗と、
前記外紗の開口部に配設された、金属製メッシュからなる内紗と、
前記内紗に設けられ、印刷パターンが形成された、感光性樹脂からなる印刷パターン用乳剤層と、
前記外紗に設けられ、アライメントマークが形成された、感光性樹脂からなるアライメントマーク用乳剤層と、を備え、
前記印刷パターンおよび前記アライメントマークが、前記印刷パターン用乳剤層および前記アライメントマーク用乳剤層を、フォトマスクを介して一括露光、現像して形成されていること、
を特徴とする、スクリーン印刷版。
【請求項2】
開口部を設けた樹脂製メッシュからなる外紗と前記外紗の開口部に配設された金属製メッシュからなる内紗とを有するコンビネーション構造のスクリーン体を形成する工程と、
前記スクリーン体の内紗に、感光性樹脂からなる印刷パターン用乳剤層乳剤層を形成するとともに、前記スクリーン体の外紗に、感光性樹脂からなるアライメントマーク用乳剤層を形成する工程と、
フォトマスクを介して前記印刷パターン用乳剤層および前記アライメントマーク用乳剤層を同時に露光、現像し、前記内紗に印刷パターンを形成すると共に前記外紗にアライメントマークを形成する工程と、
を備えたことを特徴とする、スクリーン印刷版の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−218602(P2011−218602A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−87723(P2010−87723)
【出願日】平成22年4月6日(2010.4.6)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】