スクロール型流体機械
第1固定側部材(41)及び第2固定側部材(46)によって固定スクロール(40)を構成する。第1固定側部材(41)は、第1固定側ラップ(42)と、その周りを囲む第1外周部(43)とを備える。第2固定側部材(46)は、第2固定側ラップ(47)、第2外周部(48)、及び第3平板部(49)を備える。第2固定側ラップ(47)は、第3平板部(49)と一体に形成される。可動スクロール(50)は、第1平板部(51)、第1可動側ラップ(53)、第2平板部(52)、及び第2可動側ラップ(54)を備える。第1可動側ラップ(53)は第1平板部(51)と一体に形成され、第2可動側ラップ(54)は第2平板部(52)と一体に形成される。第1平板部(51)の背面には軸受部(64)が形成され、この軸受部(64)には駆動軸(20)の偏心部(21)が挿入される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクロール型の流体機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、スクロール型流体機械が広く知られており、冷凍装置で冷媒を圧縮する圧縮機など、様々な用途に利用されている。例えば、特開平9−126164号公報や特開2002−235682号公報には、互いに噛み合わされる可動側と固定側のラップを二組備えたスクロール型流体機械が開示されている。このスクロール型流体機械では、可動スクロールにおける平板部の両面に渦巻き状のラップが立設されている。具体的に、このスクロール型流体機械では、平板部の前面に立設された可動側ラップと第1の固定側ラップとを噛み合わせて第1の流体室が形成され、平板部の背面に立設された可動側ラップと第2の固定側ラップとを噛み合わせて第2の流体室が形成されている。
【0003】
この種のスクロール型流体機械では、平板部の両面にラップが立設された可動スクロールに回転軸を係合させなければならない。そこで、特開平9−126164号公報では、可動スクロールにおける平板部の中央部を貫通するように回転軸を設け、この平板部に回転軸の偏心部を係合させている。また、特開2002−235682号公報では、可動スクロールにおける平板部の中央部を貫通するように挿入部を形成し、平板部の背面側から軸挿入部へ回転軸の偏心部を挿入している。
【0004】
−解決課題−
上述のように、可動スクロールにおける平板部の両面にラップが立設されたスクロール型流体機械では、可動スクロールに回転軸を係合させる必要があるため、可動スクロールにおける平板部の中央部にラップを設けることができない。このため、可動側と固定側のラップにより形成される流体室については、その最小容積が大きくなってしまう。そして、ある程度の圧縮比又は膨張比を確保しようとすると、渦巻き状のラップの最外径を大きくして流体室の最大容積を大きく設定せざるを得なくなる。従って、ラップが設けられる可動スクロールや固定スクロールが大型化し、その結果、スクロール型流体機械の大型化を招くという問題があった。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、二組設けられた固定側と可動側のラップによって流体室が形成されるスクロール型流体機械において、その小型化を図ることにある。
【発明の開示】
【0006】
第1の発明は、固定スクロール(40)と、可動スクロール(50)と、該可動スクロール(50)に係合する回転軸(20)と、上記可動スクロール(50)の自転防止機構(39)とを備えるスクロール型流体機械を対象としている。そして、上記固定スクロール(40)は、第1固定側ラップ(42)を備える第1固定側部材(41)と、第2固定側ラップ(47)を備える第2固定側部材(46)とにより構成され、上記可動スクロール(50)は、背面に上記回転軸(20)と係合する係合部(64)が設けられて前面が第1固定側ラップ(42)と摺接する第1平板部(51)と、上記第1固定側ラップ(42)と噛み合って第1流体室(71)を形成する第1可動側ラップ(53)と、上記第1可動側ラップ(53)を挟んで第1平板部(51)に対向して背面が第1固定側ラップ(42)と前面が第2固定側ラップ(47)とそれぞれ摺接する第2平板部(52)と、上記第2固定側ラップ(47)と噛み合って第2流体室(72)を形成する第2可動側ラップ(54)とを備え、上記第2固定側部材(46)には、第2可動側ラップ(54)を挟んで第2平板部(52)に対向して第2可動側ラップ(54)と摺接する第3平板部(49)が設けられるものである。
【0007】
第2の発明は、固定スクロール(40)と、可動スクロール(50)と、該可動スクロール(50)に係合する回転軸(20)と、上記可動スクロール(50)の自転防止機構(39)とを備えるスクロール型流体機械を対象としている。そして、上記固定スクロール(40)は、第1固定側ラップ(42)を備える第1固定側部材(41)と、第2固定側ラップ(47)を備える第2固定側部材(46)とにより構成され、上記可動スクロール(50)は、背面に上記回転軸(20)と係合する係合部(64)が設けられて前面が第1固定側ラップ(42)と摺接する第1平板部(51)と、上記第1固定側ラップ(42)と噛み合って第1流体室(71)を形成する第1可動側ラップ(53)と、上記第1可動側ラップ(53)を挟んで第1平板部(51)に対向して背面が第1固定側ラップ(42)と前面が第2固定側ラップ(47)とそれぞれ摺接する第2平板部(52)と、上記第2固定側ラップ(47)と噛み合って第2流体室(72)を形成する第2可動側ラップ(54)と、上記第2可動側ラップ(54)を挟んで第2平板部(52)に対向して第2固定側ラップ(47)と摺接する第3平板部(49)とを備えるものである。
【0008】
第3の発明は、上記第1又は第2の発明のスクロール型流体機械において、第1可動側ラップ(53)が第1平板部(51)と一体に形成され、第2平板部(52)が第1平板部(51)及び第1可動側ラップ(53)と別体に形成されるものである。
【0009】
第4の発明は、上記第3の発明のスクロール型流体機械において、第2可動側ラップ(54)が第2平板部(52)と一体に形成されるものである。
【0010】
第5の発明は、上記第1又は第2の発明のスクロール型流体機械において、第1固定側ラップ(42)及び第1可動側ラップ(53)の渦巻き方向と第2固定側ラップ(47)及び第2可動側ラップ(54)の渦巻き方向とが互いに相違しているものである。
【0011】
第6の発明は、上記第5の発明のスクロール型流体機械において、可動スクロール(50)が公転すると第1流体室(71)内で流体が圧縮されて第2流体室(72)内で流体が膨張するように構成されるものである。
【0012】
第7の発明は、上記第6の発明のスクロール型流体機械において、第3平板部(49)には、第2流体室(72)に連通する導入用開口(66,68,69)が第2固定側ラップ(47)又は第2可動側ラップ(54)の径方向へ異なる位置に複数形成され、上記各導入用開口(66,68,69)を開閉するための開閉機構(85)を備えるものである。
【0013】
第8の発明は、上記第1又は第2の発明のスクロール型流体機械において、第1固定側ラップ(42)及び第1可動側ラップ(53)の渦巻き方向と第2固定側ラップ(47)及び第2可動側ラップ(54)の渦巻き方向とが互いに同じであるものである。
【0014】
第9の発明は、上記第8の発明のスクロール型流体機械において、第1流体室(71)及び第2流体室(72)は、それぞれの容積についての最小値に対する最大値の比が互いに相違しているものである。
【0015】
第10の発明は、上記第8の発明のスクロール型流体機械において、第1流体室(71)及び第2流体室(72)は、それぞれの容積についての最小値に対する最大値の比が互いに等しくなっているものである。
【0016】
第11の発明は、上記第8の発明のスクロール型流体機械において、第1流体室(71)及び第2流体室(72)のうちの何れか一方で圧縮した流体を他方へ導入して更に圧縮するように構成されるものである。
【0017】
−作用−
上記第1及び第2の発明において、可動スクロール(50)は、自転防止機構(39)に案内されて回転し、自転運動が規制されて公転運動だけを行う。第1流体室(71)及び第2流体室(72)の容積は、この可動スクロール(50)の公転運動に伴って変化する。可動スクロール(50)では、第1平板部(51)の背面に係合部(64)が設けられており、この係合部(64)が回転軸(20)と係合する。
【0018】
また、第1及び第2の発明において、第1平板部(51)の前面側には第1可動側ラップ(53)が設けられる。第1可動側ラップ(53)は、第1固定側部材(41)の第1固定側ラップ(42)と噛み合わされて第1流体室(71)を形成する。第1固定側ラップ(42)は、一方の端面が第1平板部(51)の前面と摺接し、他方の端面が第2平板部(52)の背面と摺接する。第1流体室(71)は、第1可動側ラップ(53)、第1固定側ラップ(42)、第1平板部(51)、及び第2平板部(52)によって区画される。
【0019】
上記第1の発明において、第2平板部(52)の前面側には第2可動側ラップ(54)が設けられる。第2可動側ラップ(54)は、第2固定側部材(46)の第2固定側ラップ(47)と噛み合わされて第2流体室(72)を形成する。第2可動側ラップ(54)の先端面は、第2固定側部材(46)に設けられた第3平板部(49)と摺接する。第2固定側ラップ(47)の先端面は、第2平板部(52)の前面と摺接する。第2流体室(72)は、第2可動側ラップ(54)、第2固定側ラップ(47)、第2平板部(52)、及び第3平板部(49)によって区画される。
【0020】
上記第2の発明において、第2平板部(52)の前面側には第2可動側ラップ(54)が設けられる。第2可動側ラップ(54)は、第2固定側部材(46)の第2固定側ラップ(47)と噛み合わされて第2流体室(72)を形成する。第2固定側ラップ(47)は、一方の端面が第2平板部(52)の前面と摺接し、他方の端面が第3平板部(49)と摺接する。第2流体室(72)は、第2可動側ラップ(54)、第2固定側ラップ(47)、第2平板部(52)、及び第3平板部(49)によって区画される。
【0021】
尚、第1及び第2の発明において、第1固定側ラップ(42)の端面と第1平板部(51)の前面とは、必ずしも互いが直接に触れあっていなくてもよい。つまり、厳密に言うと第1固定側ラップ(42)と第1平板部(51)の間に微小な隙間がある場合であっても、一見して第1固定側ラップ(42)と第1平板部(51)が擦れ合っているように見える状態であればよい。この点は、第1固定側ラップ(42)の端面と第2平板部(52)の背面についても同様であり、第2固定側ラップ(47)の端面と第2平板部(52)の前面についても同様である。また、第1の発明では第2可動側ラップ(54)の端面と第3平板部(49)についても同様であり、第2の発明では第2固定側ラップ(47)の端面と第3平板部(49)についても同様である。
【0022】
上記第3の発明において、第1平板部(51)の前面側には、第1可動側ラップ(53)が一体に形成されている。可動スクロール(50)では、第2平板部(52)が第1平板部(51)又は第1可動側ラップ(53)に取り付けられる。
【0023】
上記第4の発明において、第2平板部(52)の前面側には、第2可動側ラップ(54)が一体に形成されている。可動スクロール(50)では、第2可動側ラップ(54)と一体に形成された第2平板部(52)が第1平板部(51)又は第1可動側ラップ(53)に取り付けられる。
【0024】
上記第5の発明では、第1固定側ラップ(42)及び第1可動側ラップ(53)の渦巻き方向が、第2固定側ラップ(47)及び第2可動側ラップ(54)の渦巻き方向とは逆向きになっている。例えば、第1固定側ラップ(42)及び第1可動側ラップ(53)が右巻の渦巻き形状であれば、第2固定側ラップ(47)及び第2可動側ラップ(54)が左巻の渦巻き形状となる。可動スクロール(50)の公転運動中において、第1固定側ラップ(42)と第1可動側ラップ(53)に挟まれた第1流体室(71)と、第2固定側ラップ(47)と第2可動側ラップ(54)に挟まれた第2流体室(72)とでは、何れか一方の内部で流体が圧縮され、他方の内部で流体が膨張する。つまり、例えば第1流体室(71)へ流体が吸い込まれて圧縮されるとすると、第2流体室(72)へ送り込まれた流体が膨張する。
【0025】
上記第6の発明において、可動スクロール(50)の公転運動中には、第1流体室(71)へ流体が吸い込まれて圧縮され、第2流体室(72)へ送り込まれた流体が膨張する。
【0026】
上記第7の発明では、第3平板部(49)に複数の導入用開口(66,68,69)が形成される。各導入用開口(66,68,69)は、開閉機構(85)によって開閉される。流体は、開口状態となった導入用開口(66,68,69)を通って第2流体室(72)へ流入する。また、この発明において、第3平板部(49)における各導入用開口(66,68,69)の位置は、第2固定側ラップ(47)又は第2可動側ラップ(54)の径方向へ相違している。従って、各導入用開口(66,68,69)が開口する第2流体室(72)の容積は、導入用開口(66,68,69)毎に互いに相違している。このため、流体が通過する導入用開口(66,68,69)を変更すると、流体を導入する時点における第2流体室(72)の容積が変化する。
【0027】
上記第8の発明では、第1固定側ラップ(42)及び第1可動側ラップ(53)の渦巻き方向が、第2固定側ラップ(47)及び第2可動側ラップ(54)の渦巻き方向と同じ向きになっている。例えば、第1固定側ラップ(42)及び第1可動側ラップ(53)が右巻の渦巻き形状であれば、第2固定側ラップ(47)及び第2可動側ラップ(54)も右巻の渦巻き形状となる。可動スクロール(50)の公転運動中において、第1固定側ラップ(42)と第1可動側ラップ(53)に挟まれた第1流体室(71)と、第2固定側ラップ(47)と第2可動側ラップ(54)に挟まれた第2流体室(72)とでは、両方の内部で流体が圧縮され、又は両方の内部で流体が膨張する。つまり、例えば第1流体室(71)へ流体が吸い込まれて圧縮されるとすると、第1流体室(71)へも流体が吸い込まれて圧縮される。
【0028】
上記第9の発明では、第1流体室(71)の最小容積に対する最大容積の比が、第2流体室(72)の最小容積に対する最大容積の比と異なっている。つまり、この発明のスクロール型流体機械(10)を圧縮機として用いる場合、第1流体室(71)における圧縮比は、第2流体室(72)における圧縮比と異なる値に設定される。また、このスクロール型流体機械(10)を膨張機として用いる場合、第1流体室(71)における膨張比は、第2流体室(72)における膨張比と異なる値に設定される。
【0029】
上記第10の発明では、第1流体室(71)の最小容積に対する最大容積の比が、第2流体室(72)の最小容積に対する最大容積の比と等しくなっている。つまり、この発明のスクロール型流体機械(10)を圧縮機として用いる場合、第1流体室(71)における圧縮比は、第2流体室(72)における圧縮比と同じ値に設定される。また、このスクロール型流体機械(10)を膨張機として用いる場合、第1流体室(71)における膨張比は、第2流体室(72)における膨張比と同じ値に設定される。
【0030】
上記第11の発明では、スクロール型流体機械(10)において、いわゆる二段圧縮が行われる。例えば、第1流体室(71)へ先に流体を導入する場合には、第1流体室(71)で圧縮された流体が第2流体室(72)へ吸入されて更に圧縮される。逆に、第2流体室(72)へ先に流体を導入する場合には、第2流体室(72)で圧縮された流体が第1流体室(71)へ吸入されて更に圧縮される。
【0031】
−効果−
本発明では、可動スクロール(50)を構成する第1平板部(51)の背面に係合部(64)を設け、この係合部(64)を回転軸(20)と係合させている。また、本発明では、第1可動側ラップ(53)を第1固定側ラップ(42)と噛み合わせて第1流体室(71)を形成する一方、可動スクロール(50)に設けた第2平板部(52)の前面側に第2可動側ラップ(54)を配置し、この第2可動側ラップ(54)を第2固定側ラップ(47)と噛み合わせて第2流体室(72)を形成している。
【0032】
このため、本発明によれば、互いに噛み合わされる可動側ラップ(53,54)と固定側ラップ(42,47)を二組備えるスクロール型流体機械(10)においても、可動側ラップと固定側ラップを一組だけ備える一般的なスクロール型流体機械と同様に、第1平板部(51)の前面の中央部に第1可動側ラップ(53)を配置することが可能となる。そして、一つの平板部の両面にラップを設ける構成を採る場合に比べ、渦巻き状の第1可動側ラップ(53)及び第2可動側ラップ(54)における巻き始め側の最内径を小さく設定でき、第1流体室(71)及び第2流体室(72)の最小容積を小さく設定できる。
【0033】
従って、本発明によれば、ある程度の圧縮比又は膨張比を確保した場合でも、第1可動側ラップ(53)及び第2可動側ラップ(54)の巻き終わり側の最外径を小さく設定することが可能となり、可動スクロール(50)を小型化できる。この結果、スクロール型流体機械(10)を小型化することができる。
【0034】
上記第2の発明では、第1平板部(51)と共に第1流体室(71)を区画する第2平板部(52)と、第2平板部(52)と共に第2流体室(72)を区画する第3平板部(49)とを可動スクロール(50)に設けている。第1平板部(51)及び第2平板部(52)には第1流体室(71)の内圧が作用するが、第1平板部(51)に作用する力と第2平板部(52)に作用する力とは、互いに大きさが同じで方向が逆向きとなる。同様に、第2平板部(52)及び第3平板部(49)には第2流体室(72)の内圧が作用するが、第2平板部(52)に作用する力と第3平板部(49)に作用する力とは、互いに大きさが同じで方向が逆向きとなる。このため、第1流体室(71)内の流体が第1平板部(51)に及ぼす力と第2平板部(52)へ及ぼす力は互いに打ち消し合い、第2流体室(72)内の流体が第2平板部(52)に及ぼす力と第3平板部(49)へ及ぼす力も互いに打ち消し合う。
【0035】
従って、第2の発明によれば、各流体室(71,72)内の流体から可動スクロール(50)が受ける力を見かけ上ゼロにすることができ、可動スクロール(50)に作用する軸方向荷重(即ちスラスト荷重)を大幅に低減できる。この結果、可動スクロール(50)が公転運動する際の摩擦損失を大幅に削減することができ、スクロール型流体機械(10)の効率を向上させることができる。
【0036】
上記第3の発明では、背面に係合部(64)が設けられた第1平板部(51)と一体に第1可動側ラップ(53)を形成している。つまり、第1平板部(51)と第1可動側ラップ(53)とを一体に形成したものは、可動側と固定側のラップを一組だけ備える一般的なスクロール型流体機械の可動スクロールと殆ど同じ形状となっている。このため、一体形成された第1平板部(51)及び第1可動側ラップ(53)を製造する際には、一般的なスクロール型流体機械の可動スクロールを加工するための設備や方法を利用することができる。従って、この発明によれば、第1平板部(51)及び第1可動側ラップ(53)の加工コストが上昇するのを回避でき、スクロール型流体機械(10)の製造コストの上昇を抑制できる。
【0037】
上記第4の発明では、第1平板部(51)の前面側に第1可動側ラップ(53)を一体形成し、第2平板部(52)の前面側に第2可動側ラップ(54)を一体形成している。従って、一つの平板部の両面に可動側ラップを形成する上記従来のスクロール型流体機械に比べ、可動スクロール(50)の加工工程を簡素化することができ、スクロール型流体機械(10)の製造コストを削減できる。
【0038】
上記第5及び第6の発明によれば、一方の流体室(71,72)において流体を膨張させ、この流体の内部エネルギを回転動力として回収でき、更には回収した動力を他方の流体室(71,72)における流体の圧縮に利用することができる。この結果、これらの発明によれば、スクロール型流体機械(10)で流体を圧縮する際に外部から供給すべき動力を削減でき、スクロール型流体機械(10)の効率を向上させることができる。
【0039】
上記第7の発明では、第3平板部(49)に複数の導入用開口(66,68,69)が設けられ、各導入用開口(66,68,69)が開閉機構(85)によって開閉可能となっている。このため、導入用開口(66,68,69)から流体を導入する時点での第2流体室(72)の容積を変化させることができる。つまり、第2流体室(72)の実質的な最小容積を変化させることができる。従って、この発明によれば、第2流体室(72)の押しのけ容積を可変とすることができ、スクロール型流体機械(10)の使い勝手を向上させることができる。
【0040】
上記第8,第9及び第10の発明では、第1流体室(71)と第2流体室(72)の両方で流体が圧縮され、あるいは流体が膨張する。このため、流体を導入する流体室(71,72)を切り換えることによってスクロール型流体機械(10)の容量を調節することができたり、一方の流体室で圧縮した流体を他方の流体室で更に圧縮する二段圧縮が可能になる等、スクロール型流体機械(10)の用途を広げることができる。
【0041】
上記第11の発明では、スクロール型流体機械(10)において二段圧縮を行うようにしている。従って、この発明によれば、可動スクロール(50)を小型化できると同時に、二段圧縮を行うことでスクロール型流体機械(10)全体としての圧縮比を大きな値に設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実施形態1のスクロール型流体機械の全体構成を示す概略断面図である。
【図2】実施形態1のスクロール型流体機械の要部を示す拡大断面図である。
【図3】実施形態1の固定スクロールの第1固定側部材を示す断面図である。
【図4】実施形態1の可動スクロールを示す断面図である。
【図5】実施形態1の第1固定側部材及び可動スクロールを示す平面図である。
【図6】実施形態1のスクロール型流体機械を備える冷媒回路の概略構成図である。
【図7】実施形態2のスクロール型流体機械及びこれを備える冷媒回路の概略構成図である。
【図8】実施形態3のスクロール型流体機械及びこれを備える冷媒回路の概略構成図である。
【図9】実施形態3の変形例のスクロール型流体機械及びこれを備える冷媒回路の概略構成図である。
【図10】実施形態3の変形例のスクロール型流体機械及びこれを備える冷媒回路の概略構成図である。
【図11】実施形態4のスクロール型流体機械及びこれを備える冷媒回路の概略構成図である。
【図12】実施形態5のスクロール型流体機械及びこれを備える冷媒回路の概略構成図である。
【図13】実施形態5の変形例のスクロール型流体機械及びこれを備える冷媒回路の概略構成図である。
【図14】実施形態6のスクロール型流体機械の全体構成を示す概略断面図である。
【図15】実施形態7のスクロール型流体機械の要部を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下に示す各実施形態のスクロール型流体機械(10)は、何れも冷凍装置の冷媒回路(90)に接続されるものである。
【0044】
《発明の実施形態1》
本発明の実施形態1について説明する。
【0045】
図1に示すように、上記スクロール型流体機械(10)は、縦長で円筒形の密閉容器状に形成されたケーシング(11)を備えている。ケーシング(11)の内部には、上から下へ向かって順に、本体機構(30)と、電動機(16)と、下部軸受(19)とが配置されている。また、ケーシング(11)の内部には、上下に延びる駆動軸(20)が回転軸として設けられている。
【0046】
ケーシング(11)の内部は、本体機構(30)のハウジング(33)によって上下に仕切られている。このケーシング(11)の内部では、ハウジング(33)の上方の空間が低圧室(12)となり、その下方の空間が高圧室(13)となっている。
【0047】
高圧室(13)には、電動機(16)と下部軸受(19)とが収納されている。電動機(16)は、固定子(17)と回転子(18)とを備えている。固定子(17)は、ケーシング(11)の胴部に固定されている。一方、回転子(18)は、駆動軸(20)における上下方向の中央部に固定されている。下部軸受(円)は、ケーシング(11)の胴部に固定されている。この下部軸受(19)は、駆動軸(20)の下端部を回転自在に支持している。
【0048】
ケーシング(11)には、管状の吐出ポート(74)が設けられている。この吐出ポート(74)は、その一端が高圧室(13)における電動機(16)よりも上方の空間に開口している。
【0049】
本体機構(30)のハウジング(33)には、これを上下に貫通する主軸受(34)が形成されている。駆動軸(20)は、この主軸受(34)に挿通され、主軸受(34)によって回転自在に支持される。駆動軸(20)において、ハウジング(33)の上部に突出する上端部分は、偏心部(21)を構成している。偏心部(21)は、駆動軸(20)の中心軸に対して偏心している。
【0050】
駆動軸(20)には、ハウジング(33)と固定子(17)の間にバランスウェイト(25)が取り付けられている。また、駆動軸(20)には、図示しないが、給油通路が形成されている。ハウジング(33)の底部に溜まった冷凍機油は、遠心ポンプの作用によって駆動軸(20)の下端から吸い上げられ、給油通路を通って各部へ供給される。更に、駆動軸(20)には、吐出通路(22)が形成されている。この吐出通路(22)については後述する。
【0051】
図2にも示すように、低圧室(12)には、本体機構(30)の固定スクロール(40)及び可動スクロール(50)が収納されている。この本体機構(30)では、圧縮機を構成する第1容積変化部(31)と、膨張機を構成する第2容積変化部(32)とが形成されている。また、低圧室(12)には、オルダムリング(39)が収納されている。
【0052】
固定スクロール(40)は、第1固定側部材(41)と第2固定側部材(46)とによって構成されている。固定スクロール(40)を構成する第1固定側部材(41)及び第2固定側部材(46)は、ハウジング(33)に固定されている。
【0053】
図3にも示すように、第1固定側部材(41)は、第1固定側ラップ(42)と第1外周部(43)とを備えている。尚、図3は、図2のA−A断面における第1固定側部材(41)だけを図示したものである。
【0054】
第1固定側ラップ(42)は、高さが一定の渦巻き壁状に形成されている。一方、第1外周部(43)は、第1固定側ラップ(42)の周りを囲む厚肉のリング状に形成されると共に、第1固定側ラップ(42)と一体に形成されている。つまり、第1固定側部材(41)では、第1外周部(43)の内周面から第1固定側ラップ(42)が片持ち梁状に突き出ている。また、第1外周部(43)には、挿通孔(44)とボルト孔(45)とが3つずつ形成されている。第1固定側部材(41)は、このボルト孔(45)に通されたボルトによってハウジング(33)に締結固定される。
【0055】
第1固定側部材(41)には、管状の吸入ポート(73)の一端が挿入されている(図2参照)。この吸入ポート(73)は、ケーシング(11)の上端部を貫通して設けられている。第1固定側部材(41)における吸入ポート(73)の下部には、吸入逆止弁(35)が設けられている。この吸入逆止弁(35)は、弁体(36)とコイルばね(37)とによって構成されている。弁体(36)は、キャップ状に形成されており、吸入ポート(73)の下端を塞ぐように設置されている。また、この弁体(36)は、コイルばね(37)によって吸入ポート(73)の下端に押し付けられている。
【0056】
図2に示すように、第2固定側部材(46)は、第2固定側ラップ(47)と、第2外周部(48)と、第3平板部(49)とを備えている。第2固定側部材(46)の全体の形状は、第1固定側部材(41)よりも肉厚が薄くて小径の円板状となっている。第3平板部(49)は、円板状に形成されており、第2固定側部材(46)における上部に配置されている。第2外周部(48)は、第3平板部(49)と一体に形成され、該第3平板部(49)から下方へ延びている。第2外周部(48)の形状は、第3平板部(49)と外径の等しい肉厚のリング状となっている。
【0057】
第2固定側部材(46)において、第2固定側ラップ(47)は、第2外周部(48)の内側に配置され、第3平板部(49)と一体に形成されている。この第2固定側ラップ(47)は、第1固定側ラップ(42)よりも低い渦巻き壁状に形成され、第3平板部(49)の下面から下方へ延びている。また、第2固定側ラップ(47)は、その渦巻き方向が第1固定側ラップ(42)の渦巻き方向と逆方向になっている。つまり、第1固定側ラップ(42)は右巻の渦巻き壁状に形成されているのに対し(図3参照)、第2固定側ラップ(47)は左巻の渦巻き壁状に形成されている。
【0058】
第2固定側部材(46)には、管状の流出ポート(76)の一端が挿入されている。この流出ポート(76)は、ケーシング(11)の上端部を貫通して設けられている。また、第2固定側部材(46)の第3平板部(49)には、その中央部に流入口(66)が形成されている。この流入口(66)は、第2固定側ラップ(47)の巻き始め側の端部の近傍に開口し、第3平板部(49)を貫通している。この流入口(66)には、管状の流入ポート(75)の一端が挿入されている。この流入ポート(75)は、ケーシング(11)の上端部を貫通して設けられている。
【0059】
可動スクロール(50)は、第1平板部(51)と、第1可動側ラップ(53)と、第2平板部(52)と、第2可動側ラップ(54)と、支柱部材(61)とを備えている。第1可動側ラップ(53)は、第1平板部(51)と一体に形成されている。一方、第2可動側ラップ(54)は、第2平板部(52)と一体に形成されている。可動スクロール(50)では、第1可動側ラップ(53)と一体の第1平板部(51)の上面に3つの支柱部材(61)が立設され、第2可動側ラップ(54)と一体の第2平板部(52)が支柱部材(61)の上に載置されている。そして、可動スクロール(50)では、積み重ねられた第1平板部(51)と支柱部材(61)と第2平板部(52)とがボルト(62)によって締結されている。
【0060】
第1平板部(51)及び第1可動側ラップ(53)について、図2,図4,図5を参照しながら説明する。尚、図4は、図2のA−A断面における可動スクロール(50)だけを図示したものである。また、図5は、図2のA−A断面における第1固定側部材(41)及び可動スクロール(50)を図示したものである。
【0061】
図4に示すように、第1平板部(51)は、概ね円形の平板状に形成されている。この第1平板部(51)は、その前面(図2における上面)が第1固定側ラップ(42)の下端面と摺接する。第1平板部(51)には、半径方向へ膨出した部分が3つ形成されており、その部分のそれぞれに支柱部材(61)が1つずつ立設されている。支柱部材(61)は、やや厚肉で管状の部材であって、第1平板部(51)とは別体に形成されている。
【0062】
第1可動側ラップ(53)は、高さが一定の渦巻き壁状に形成され、第1平面部の前面側(図2における上面側)に立設されている。この第1可動側ラップ(53)は、第1固定側部材(41)の第1固定側ラップ(42)と互いに噛み合わされる(図5参照)。そして、第1可動側ラップ(53)は、その側面が第1固定側ラップ(42)の側面と摺接する。
【0063】
図2に示すように、第2平板部(52)は、第1平板部(51)と概ね同形状の平板状に形成されている。この第2平板部(52)は、その背面(図2における下面)が第1固定側ラップ(42)の上端面と摺接し、その前面(図2における上面)が第2固定側ラップ(47)の下端面と摺接する。
【0064】
第2平板部(52)の前面側(図2における上面側)には、第2可動側ラップ(54)が立設されている。この第2可動側ラップ(54)は、その渦巻き方向が第1可動側ラップ(53)の渦巻き方向と逆方向になっている。つまり、第1可動側ラップ(53)は右巻の渦巻き壁状に形成されているのに対し(図4参照)、第2可動側ラップ(54)は左巻の渦巻き壁状に形成されている。
【0065】
本体機構(30)では、第1固定側ラップ(42)と第1可動側ラップ(53)と第1平板部(51)と第2平板部(52)とによって、複数の第1流体室(71)が形成されている。そして、可動スクロール(50)の第1平板部(51)、第2平板部(52)、及び第1可動側ラップ(53)と、第1固定側ラップ(42)を備える固定スクロール(40)の第1固定側部材(41)とが、第1容積変化部(31)を形成している。
【0066】
また、本体機構(30)では、第2固定側ラップ(47)と第2可動側ラップ(54)と第2平板部(52)と第3平板部(49)とによって、複数の第2流体室(72)が形成されている。そして、可動スクロール(50)の第2平板部(52)及び第2可動側ラップ(54)と、第3平板部(49)及び第2固定側ラップ(47)を備える固定スクロール(40)の第2固定側部材(46)とが、第2容積変化部(32)を形成している。
【0067】
可動スクロール(50)の第1平板部(51)には、その中央部に吐出口(63)が形成されている。この吐出口(63)は、第1可動側ラップ(53)の巻き始め側の端部の近傍に開口し(図4参照)、第1平板部(51)を貫通している。また、この第1平板部(51)には、軸受部(64)が形成されている。この軸受部(64)は、略円筒状に形成され、第1平板部(51)の背面側(図2における下面側)に突設されている。更に、軸受部(64)の下端部には、鍔状の鍔部(65)が形成されている。
【0068】
軸受部(64)の鍔部(65)の下面とハウジング(33)の間には、シールリング(38)が設けられている。このシールリング(38)の内側には、駆動軸(20)の給油通路を通じて高圧の冷凍機油が供給されている。シールリング(38)の内側へ高圧の冷凍機油を送り込むと、鍔部(65)の底面に油圧が作用して可動スクロール(50)が上方へ押し上げられる。
【0069】
第1平板部(51)の軸受部(64)には、駆動軸(20)の偏心部(21)が挿入されている。偏心部(21)の上端面には、吐出通路(22)の入口端が開口している。この吐出通路(22)は、その入口端付近がやや大径に形成され、その内部に筒状シール(23)とコイルばね(24)とが設置されている。筒状シール(23)は、その内径が吐出口(63)の直径よりも僅かに大きい管状に形成され、コイルばね(24)によって第1平板部(51)の背面に押し付けられている。また、吐出通路(22)の出口端は、駆動軸(20)の側面における固定子(17)と下部軸受(19)の間に開口している(図1参照)。
【0070】
第1平板部(51)とハウジング(33)の間には、オルダムリング(39)が介設されている。このオルダムリング(39)は、図示しないが、第1平板部(51)と係合する一対のキー部と、ハウジング(33)と係合する一対のキー部とを備え、可動スクロール(50)の自転防止機構を構成している。ここで、シールリング(38)は、その内側が高圧となっており、その外側が低圧(吸入圧)となっている。このためシールリング(38)の内側から外側へ冷凍機油が流出し、この流出した冷凍機油がオルダムリング(39)のキー部へ供給される。
【0071】
図6に示すように、本実施形態のスクロール型流体機械(10)は、冷凍装置の冷媒回路(90)に設けられる。この冷媒回路(90)では、冷媒が循環して蒸気圧縮式冷凍サイクルが行われる。
【0072】
冷媒回路(90)において、スクロール型流体機械(10)は、吐出ポート(74)が凝縮器(91)の一端に接続され、流入ポート(75)が膨張弁(92)を介して凝縮器(91)の他端に接続されている。また、このスクロール型流体機械(10)は、流出ポート(76)が蒸発器(93)の一端に接続され、吸入ポート(73)が蒸発器(93)の他端に接続されている。スクロール型流体機械(10)の第1容積変化部(31)は、冷媒回路(90)の冷媒を圧縮する圧縮機を構成している。一方、その第2容積変化部(32)は、冷媒回路(90)の冷媒を膨張させて動力回収を行う膨張機となっており、膨張弁(92)と共に冷媒の膨張機構を構成している。
【0073】
−運転動作−
スクロール型流体機械(10)において、電動機(16)で発生した回転動力は、駆動軸(20)によって可動スクロール(50)に伝達される。駆動軸(20)の偏心部(21)と係合する可動スクロール(50)は、オルダムリング(39)によって案内され、自転することなく公転運動だけを行う。
【0074】
可動スクロール(50)の公転運動に伴い、蒸発器(93)で蒸発した低圧冷媒が吸入ポート(73)へ吸入される。この低圧冷媒は、吸入逆止弁(35)の弁体(36)を押し下げて第1流体室(71)へ流入する。そして、可動スクロール(50)の第1可動側ラップ(53)が移動するにつれて第1流体室(71)の容積が小さくなり、第1流体室(71)内の冷媒が圧縮される。圧縮された冷媒は、吐出口(63)を通って第1流体室(71)から吐出通路(22)へ流入する。その後、高圧冷媒は、吐出通路(22)から高圧室(13)へ流入し、吐出ポート(74)を通ってケーシング(11)から送り出される。
【0075】
吐出ポート(74)から吐出された高圧冷媒は、凝縮器(91)へ送られて凝縮する。凝縮器(91)で凝縮した冷媒は、膨張弁(92)を通過する際に幾らか減圧された後に流入ポート(75)へ流入する。尚、冷凍装置の運転条件によっては、膨張弁(92)を全開状態に設定し、凝縮器(91)で凝縮した冷媒を殆ど減圧せずに流入ポート(75)へ送り込むようにしてもよい。
【0076】
流入ポート(75)へ流入した冷媒は、第2流体室(72)へ導入されて膨張する。第2流体室(72)内で冷媒が膨張することによって第2可動側ラップ(54)が移動し、第2可動側ラップ(54)が移動するにつれて第2流体室(72)の容積が大きくなる。つまり、第2流体室(72)へ導入された冷媒は、その内部エネルギの一部が第2可動側ラップ(54)を移動させるための動力に変換される。そして、可動スクロール(50)は、電動機(16)で発生した駆動力と、第2容積変化部(32)で冷媒から回収された動力との両方によって駆動される。
【0077】
−実施形態1の効果−
上述のように、本実施形態では、可動スクロール(50)を構成する第1平板部(51)の背面に軸受部(64)を設け、駆動軸(20)の端部を軸受部(64)へ挿入することによって駆動軸(20)を可動スクロール(50)に係合させている。また、本実施形態では、第1可動側ラップ(53)を第1固定側ラップ(42)と噛み合わせて第1流体室(71)を形成する一方、可動スクロール(50)に設けた第2平板部(52)の前面側に第2可動側ラップ(54)を配置し、この第2可動側ラップ(54)を第2固定側ラップ(47)と噛み合わせて第2流体室(72)を形成している。
【0078】
このため、本実施形態によれば、互いに噛み合わされる可動側ラップ(53,54)と固定側ラップ(42,47)を二組備えるスクロール型流体機械(10)においても、可動側ラップと固定側ラップを一組だけ備える一般的なスクロール型流体機械と同様に、第1平板部(51)の前面の中央部に第1可動側ラップ(53)を配置することが可能となる。そして、一つの平板部の両面にラップを設ける構成を採る場合に比べ、渦巻き状の第1可動側ラップ(53)及び第2可動側ラップ(54)における巻き始め側の最内径を小さく設定でき、第1流体室(71)及び第2流体室(72)の最小容積を小さく設定できる。
【0079】
従って、本実施形態によれば、ある程度の圧縮比又は膨張比を確保した場合でも、第1可動側ラップ(53)及び第2可動側ラップ(54)の巻き終わり側の最外径を小さく設定することが可能となり、可動スクロール(50)を小型化できる。この結果、スクロール型流体機械(10)を小型化することができる。
【0080】
また、本実施形態では、背面に軸受部(64)が突設された第1平板部(51)と一体に第1可動側ラップ(53)を形成している。つまり、第1平板部(51)と第1可動側ラップ(53)とを一体に形成したものは、可動側と固定側のラップを一組だけ備える一般的なスクロール型流体機械の可動スクロールと殆ど同じ形状となっている。このため、一体形成された第1平板部(51)及び第1可動側ラップ(53)を製造する際には、一般的なスクロール型流体機械の可動スクロールを加工するための設備や方法を利用することができる。従って、本実施形態によれば、第1平板部(51)及び第1可動側ラップ(53)の加工コストが上昇するのを回避でき、スクロール型流体機械(10)の製造コストの上昇を抑制できる。
【0081】
また、本実施形態では、第1平板部(51)の前面側に第1可動側ラップ(53)を一体形成し、第2平板部(52)の前面側に第2可動側ラップ(54)を一体形成している。従って、一つの平板部の両面に可動側ラップを形成する上記従来のスクロール型流体機械に比べ、可動スクロール(50)の加工工程を簡素化することができ、スクロール型流体機械(10)の製造コストを削減できる。
【0082】
また、本実施形態によれば、一方の流体室(71,72)において流体を膨張させ、この流体の内部エネルギを回転動力として回収でき、更には回収した動力を他方の流体室(71,72)における流体の圧縮に利用することができる。この結果、スクロール型流体機械(10)で流体を圧縮する際に外部から供給すべき動力を削減でき、スクロール型流体機械(10)の効率を向上させることができる。
【0083】
また、本実施形態では、第1容積変化部(31)が圧縮機を構成し、この第1容積変化部(31)の上方に形成された第2容積変化部(32)が膨張機を構成している。このため、本実施形態によれば、オルダムリング(39)とハウジング(33)及び第1平板部(51)との間の潤滑を確実に行うことができ、スクロール型流体機械(10)の信頼性を確保することができる。
【0084】
この点について説明する。本実施形態のスクロール型流体機械(10)において、第1容積変化部(31)を膨張機として用いる場合を仮定する。この場合、第1流体室(71)へ導入された液冷媒が膨張して気液二相状態となり、この気液二相状態の冷媒が第1流体室(71)から送り出されることになる。一方、スクロール型流体機械(10)は、第1流体室(71)から送り出された冷媒が低圧室(12)内へも流入する構造となっている(図2参照)。このため、第1流体室(71)から送り出された液冷媒がオルダムリング(39)の付近へも侵入してしまい、オルダムリング(39)と第1平板部(51)等との間で潤滑不良に陥る可能性がある。
【0085】
これに対し、本実施形態では、第2容積変化部(32)が膨張機として用いられている。そして、流入ポート(75)及び流出ポート(76)が第2固定側部材(46)に接続され、低圧室(12)へは第2流体室(72)を通過する冷媒が流入しない構成となっている。また、圧縮機を構成する第1容積変化部(31)の第1流体室(71)へ吸入される冷媒は、通常の運転状態では完全にガス冷媒となっている。つまり、オルダムリング(39)の近傍へは、ガス冷媒だけが流れ込むこととなる。このため、オルダムリング(39)と第1平板部(51)等との間では、油膜が確保されて適切に潤滑が行われる。
【0086】
また、オルダムリング(39)の近傍へ供給された冷凍機油は、その一部が第1流体室(71)へ吸入される冷媒に混入するが、この冷凍機油は吐出ガスと共に第1流体室(71)から吐出される。第1流体室(71)から出た冷凍機油は、液冷媒中ではなくガス冷媒中に油滴の状態で存在している。このため、吐出ガスと冷凍機油とを容易に分離することができ、ケーシング(11)内における冷凍機油の貯留量を確保できる。
【0087】
このように、第2容積変化部(32)を膨張機として用いることとすると、一般的なスクロール圧縮機と同様の給油方式を採用した場合であっても、オルダムリング(39)とハウジング(33)及び第1平板部(51)との間の潤滑を確実に行うことができる。従って、本実施形態によれば、スクロール型流体機械(10)の信頼性を充分に確保することができる。
【0088】
《発明の実施形態2》
本発明の実施形態2について説明する。本実施形態は、上記実施形態1において、本体機構(30)の構成を変更したものである。ここでは、本実施形態のスクロール型流体機械(10)について、上記実施形態1と異なる点を説明する。
【0089】
図7に示すように、本実施形態の本体機構(30)では、上記実施形態1と同様に、第1容積変化部(31)が圧縮機を構成し、第2容積変化部(32)が膨張機を構成している。ただし、この本体機構(30)では、第2容積変化部(32)により構成される膨張機の容量が可変となっている。また、これに伴い、本実施形態の冷媒回路(90)では、膨張弁(92)が省略されている。
【0090】
上記本体機構(30)では、第2固定側部材(46)の第3平板部(49)に導入用開口としての流入口(66,68,69)が3つ形成されている。これら3つの流入口(66,68,69)は、第2固定側ラップ(47)の径方向へ互いに異なる位置に配置され、第3平板部(49)を貫通している。
【0091】
具体的に、第1流入口(66)は、第2固定側ラップ(47)の巻き始め側の端部の近傍に開口している。第2流入口(68)と第3流入口(69)とは、それぞれ第1流入口(66)から第2固定側ラップ(47)の径方向へ離れた位置に形成されている。第3流入口(69)と第1流入口(66)の距離は、第2流入口(68)と第1流入口(66)の距離よりも長くなっている。なお、これら3つの流入口(66,68,69)は、一直線上に並んで配置されている必要はない。
【0092】
各流入口(66,68,69)は、第3平板部(49)の下面に開口し、第2流体室(72)と連通している。また、上述のように、各流入口(66,68,69)は、第2固定側ラップ(47)の径方向へ互いに異なる位置に形成されている。このため、各流入口(66,68,69)と連通する第2流体室(72)は、それぞれの容積が互いに相違している。
【0093】
本実施形態の流入ポート(75)は、その終端側で3つに分岐されている。流入ポート(75)の各終端部は、第1の終端部が第1流入口(66)に、第2の終端部が第2流入口(68)に、第3の終端部が第3流入口(69)にそれぞれ挿入されている。一方、流入ポート(75)の始端部は、冷媒回路(90)の配管を介して凝縮器(91)に接続されている。
【0094】
上記流入ポート(75)には、四方弁(85)が設けられている。この四方弁(85)は、流入ポート(75)の分岐箇所に配置されている。四方弁(85)は、開閉機構を構成しており、第1〜第3の各流入口(66,67,68)を個別に開閉する。これら3つの流入口(66,67,68)のうち四方弁(85)によって開口状態に設定されたものが、流入ポート(75)の始端部と連通する。そして、凝縮器(91)で凝縮した冷媒は、開口状態に設定された流入口(66,67,68)を通って第2流体室(72)へ流入する。
【0095】
上述のように、四方弁(85)を操作すると、第2流体室(72)へ向けて冷媒が通過する流入口(66,68,69)が変更され、凝縮器(91)からの冷媒が導入される時点での第2流体室(72)の容積が変化する。冷媒の導入時点における第2流体室(72)の容積は、第1流入口(66)を通じて冷媒を導入する場合が最も小さく、第2流入口(68)を通じて冷媒を導入する場合、第3流入口(69)を通じて冷媒を導入する場合の順で大きくなる。言い換えると、第2容積変化部(32)における第2流体室(72)の閉じ込み容積が順に大きくなる。従って、第2容積変化部(32)により構成される膨張機の容量は、第1流入口(66)を通じて冷媒を導入する場合が最小で、第2流入口(68)を通じて冷媒を導入する場合、第3流入口(69)を通じて冷媒を導入する場合の順で段階的に大きくなる。
【0096】
尚、第2流入口(68)を開口状態に設定する場合は、同時に第1流入口(66)を開口状態に設定するのが望ましい。第1流入口(66)を開口状態に設定しておけば、第2流入口(68)よりも中央寄りの第2流体室(72)における内圧の異常低下を防止できる。同様に、第3流入口(69)を開口状態に設定する場合は、同時に第1流入口(66)及び第2流入口(68)を開口状態に設定するのが望ましい。第1流入口(66)及び第2流入口(68)を開口状態に設定しておけば、第3流入口(69)よりも中央寄りの第2流体室(72)における内圧の異常低下を防止できる。
【0097】
−実施形態2の効果−
一般に、膨張機が接続された冷媒回路で冷凍サイクルを行う場合、膨張機に要求される押しのけ量は、冷凍サイクルの運転条件によって変化する。このため、容量が固定の膨張機を冷媒回路に設ける場合には、膨張機の上流に膨張弁を設けたり、膨張機をバイパスする配管を設ける必要があった。つまり、膨張機の容量が要求値に対して過大である場合には、膨張弁で冷媒を予め減圧してから膨張機へ導入し、逆に膨張機の容量が要求値に対して過小である場合には、冷媒の一部をバイパス用の配管へ流すようにしており、何れの場合も冷媒から充分な動力を回収できない状態に陥っていた。
【0098】
これに対し、本実施形態のスクロール型流体機械(10)では、第2容積変化部(32)により構成される膨張機の容量が可変となっている。このため、冷凍サイクルの運転条件にかかわらず、凝縮器(91)で凝縮した冷媒の全てを減圧せずに第2流体室(72)へ導入することができ、冷媒から確実に動力を回収して電動機(16)の消費電力を低減することができる。
【0099】
−実施形態2の変形例−
本実施形態では、第2容積変化部(32)により構成される膨張機の容量だけでなく、第1容積変化部(31)により構成される圧縮機の容量も可変にしてもよい。
【0100】
圧縮機としての第1容積変化部(31)を容量可変とする構成については、次のようなものが挙げられる。先ず、電動機(16)へ供給する交流の周波数をインバータによって変化させ、駆動軸(20)の回転速度を変化させることによって、第1容積変化部(31)の容量を変更してもよい。また、スクロール型流体機械(10)の吐出ポート(74)と吸入ポート(73)を直結するバイパス通路を設け、このバイパス通路を通って吐出ポート(74)から吸入ポート(73)へ直接送り返される冷媒の流量を調節することによって、第1容積変化部(31)の容量を変更してもよい。また、蒸発器(93)とスクロール型流体機械(10)の吸入ポート(73)との間に膨張弁を設け、この膨張弁の開度を調節して吸入ポート(73)へ流入する冷媒の密度を変化させることによって、第1容積変化部(31)の容量を変更してもよい。
【0101】
《発明の実施形態3》
本発明の実施形態3について説明する。本実施形態は、上記実施形態1において、本体機構(30)の構成を変更したものである。ここでは、本実施形態のスクロール型流体機械(10)について、上記実施形態1と異なる点を説明する。
【0102】
本実施形態の本体機構(30)において、第2容積変化部(32)は、圧縮機を構成している。つまり、この本体機構(30)では、第1容積変化部(31)と第2容積変化部(32)の両方が圧縮機を構成している。
【0103】
具体的に、上記本体機構(30)において、第2固定側ラップ(47)は、その渦巻き方向が第1固定側ラップ(42)の渦巻き方向と同方向になっている。つまり、右巻の渦巻き壁状に形成された第1固定側ラップ(42)と同様に(図3参照)、第2固定側ラップ(47)も右巻の渦巻き壁状に形成されている。
【0104】
また、上記本体機構(30)では、第2容積変化部(32)における圧縮比が第1容積変化部(31)における圧縮比よりも大きくなっている。つまり、第2流体室(72)における最小容積に対する最大容積の比は、第1流体室(71)における最小容積に対する最大容積の比よりも大きな値に設定されている。尚、ここでは、第2容積変化部(32)における圧縮比を第1容積変化部(31)における圧縮比よりも大きく設定しているが、スクロール型流体機械(10)の使用条件によっては、第2容積変化部(32)における圧縮比が第1容積変化部(31)における圧縮比よりも小さく設定される場合もあり得る。
【0105】
図8に示すように、上記本体機構(30)では、実施形態1の吸入ポート(73)が第1吸入ポート(73)を構成し、実施形態1の吐出ポート(74)が第1吐出ポート(74)を構成している。また、この本体機構(30)では、実施形態1の吐出口(63)が第1吐出口(63)を構成し、実施形態1の流入口(66)が第2吐出口(67)を構成している。また、この本体機構(30)では、実施形態1の流出ポート(76)が第2吸入ポート(77)を構成し、実施形態1の流入ポート(75)が第2吐出ポート(78)を構成している。
【0106】
本実施形態のスクロール型流体機械(10)が設けられる冷媒回路(90)には、膨張弁(92,95)と蒸発器(93,96)とが2つずつ設けられている。この冷媒回路(90)において、第2蒸発器(96)での冷媒蒸発温度は、第1蒸発器(93)での冷媒蒸発温度よりも低く設定されている。
【0107】
冷媒回路(90)において、スクロール型流体機械(10)の第1吐出ポート(74)及び第2吐出ポート(78)は、凝縮器(91)の一端に接続されている。凝縮器(91)の他端は、第1膨張弁(92)と第2膨張弁(95)とに接続されている。第1蒸発器(93)は、その一端が第1膨張弁(92)に接続され、その他端がスクロール型流体機械(10)の第1吸入ポート(73)に接続されている。第2蒸発器(96)は、その一端が第2膨張弁(95)に接続され、その他端がスクロール型流体機械(10)の第2吸入ポート(77)に接続されている。
【0108】
スクロール型流体機械(10)では、第1容積変化部(31)で圧縮された冷媒が第1吐出ポート(74)から吐出され、第2容積変化部(32)で圧縮された冷媒が第2吐出ポート(78)から吐出される。第1吐出ポート(74)及び第2吐出ポート(78)からは、同じ圧力の冷媒が吐出される。第1吐出ポート(74)及び第2吐出ポート(78)から吐出された冷媒は、凝縮器(91)で凝縮し、その後に凝縮器(91)から流出して二手に分流される。
【0109】
分流された一方の冷媒は、第1膨張弁(92)で減圧された後に第1蒸発器(93)で蒸発し、第1吸入ポート(73)を通じて第1容積変化部(31)の第1流体室(71)へ吸入される。一方、分流された残りの冷媒は、第2膨張弁(95)で減圧された後に第2蒸発器(96)で蒸発し、第2吸入ポート(77)を通じて第2容積変化部(32)の第2流体室(72)へ吸入される。その際、冷媒回路(90)では、第2膨張弁(95)の開度が第1膨張弁(92)の開度よりも小さく設定され、第2蒸発器(96)での冷媒蒸発圧力が第1蒸発器(93)での冷媒蒸発圧力よりも低く設定される。
【0110】
このように、本実施形態によれば、冷媒蒸発温度の相違する2つの蒸発器(93,96)が設けられた冷媒回路(90)においても、1台のスクロール型流体機械(10)だけで冷媒の圧縮を行うことができ、冷凍装置の構成を簡素化できる。
【0111】
また、本実施形態によれば、互いに噛み合わされる可動側ラップ(53,54)と固定側ラップ(42,47)を二組備えるスクロール型流体機械(10)においても、可動側ラップと固定側ラップを一組だけ備える一般的なスクロール型流体機械と同様に、第1平板部(51)の前面の中央部に第1可動側ラップ(53)を配置することが可能となる。この点は、上記実施形態1と同様である。従って、本実施形態によれば、上記実施形態1と同様に、ある程度の圧縮比を確保した上で第1可動側ラップ(53)及び第2可動側ラップ(54)の巻き終わり側の最外径を小さく設定でき、可動スクロール(50)の小型化が可能となる。
【0112】
−実施形態3の変形例−
本実施形態のスクロール型流体機械(10)は、次のような構成の冷媒回路(90)に設けられていてもよい。
【0113】
図9に示すように、本変形例の冷媒回路(90)にも、膨張弁(92,95)と蒸発器(93,96)とが2つずつ設けられている。また、第2蒸発器(96)での冷媒蒸発温度が、第1蒸発器(93)での冷媒蒸発温度よりも低く設定されている点も、図8に示すものと同じである。
【0114】
本変形例の本体機構(30)では、第1容積変化部(31)が低段側の圧縮機を、第2容積変化部(32)が高段側の圧縮機をそれぞれ構成している。このスクロール型流体機械(10)では、第1容積変化部(31)と第2容積変化部(32)とで圧縮比が相違している必要はなく、両者の圧縮比を同じ値に設定してもよい。
【0115】
本変形例において、スクロール型流体機械(10)の第1吐出ポート(74)は、凝縮器(91)の一端に接続されている。凝縮器(91)の他端は、分岐して第1膨張弁(92)と第2膨張弁(95)とに接続されている。第1蒸発器(93)は、その一端が第1膨張弁(92)に接続され、その他端がスクロール型流体機械(10)の第1吸入ポート(73)に接続されている。第2蒸発器(96)は、その一端が第2膨張弁(95)に接続され、その他端がスクロール型流体機械(10)の第2吸入ポート(77)に接続されている。また、スクロール型流体機械(10)の第2吐出ポート(78)は、第1蒸発器(93)と第1吸入ポート(73)の間の吸入配管に接続されている。
【0116】
本変形例では、冷媒回路(90)における冷媒の総循環量のうち、例えば90%が第1蒸発器(93)を流れ、残りの10%が第2蒸発器(96)を流れる。
【0117】
スクロール型流体機械(10)では、第1容積変化部(31)で圧縮された冷媒が第1吐出ポート(74)から吐出され、第2容積変化部(32)で圧縮された冷媒が第2吐出ポート(78)から吐出される。第1吐出ポート(74)からは、第2吐出ポート(78)からよりも高い圧力の冷媒が吐出される。第1吐出ポート(74)から吐出された冷媒は、凝縮器(91)で凝縮し、その後に凝縮器(91)から流出して二手に分流される。
【0118】
分流された一方の冷媒は、第1膨張弁(92)で減圧された後に第1蒸発器(93)で蒸発し、第2吐出ポート(78)から吐出された冷媒と合流してから第1吸入ポート(73)を通って第1容積変化部(31)の第1流体室(71)へ吸入される。一方、凝縮器(91)の下流で分流された残りの冷媒は、第2膨張弁(95)で減圧された後に第2蒸発器(96)で蒸発し、第2吸入ポート(77)を通じて第2容積変化部(32)の第2流体室(72)へ吸入される。その際、冷媒回路(90)では、第2膨張弁(95)の開度が第1膨張弁(92)の開度よりも小さく設定され、第2蒸発器(96)での冷媒蒸発圧力が第1蒸発器(93)での冷媒蒸発圧力よりも低く設定される。また、第2吐出ポート(78)から吐出された冷媒は、第1吸入ポート(73)から第1容積変化部(31)に吸入され、2段圧縮される。
【0119】
ここで、図8に示す冷媒回路(90)において、第1蒸発器(93)と第2蒸発器(96)とで冷媒蒸発温度の差が大きい場合(例えばこの冷媒回路(90)を冷蔵と冷凍、あるいは空調と冷凍などに適用する場合)には、第2容積変化部(32)の必要圧縮比が大きくなり、冷媒の漏れ量が増えたり、吐出温度が高くなりすぎたりするおそれがある。
【0120】
それに対し、図9に示す本変形例の冷媒回路(90)では、第2蒸発器(96)で蒸発した冷媒を第2容積変化部(32)と第1容積変化部(31)とで順次圧縮する2段圧縮を採用している。このため、本変形例のスクロール型流体機械(10)では、第2蒸発器(96)で蒸発した冷媒を第2容積変化部(32)だけで圧縮する場合に比べ、第2容積変化部(32)を過度に大きな圧縮比で運転せずに済むこととなり、第2容積変化部(32)における冷媒の漏れ量を抑えることができる。また、第2容積変化部(32)から吐出される冷媒の温度を低く抑えることができ、第2容積変化部(32)からの吐出冷媒温度の高くなりすぎることに起因する冷媒自体や潤滑油の劣化を回避できる。
【0121】
一方、第1蒸発器(93)と第2蒸発器(96)とで冷媒蒸発温度の差が小さい場合は、第2容積変化部(32)に要求される圧縮比もそれほど大きくならない。このため、図9に示すスクロール型流体機械(10)のように第2容積変化部(32)と第1容積変化部(31)と2段階に分けて圧縮すると、、第2容積変化部(32)と第1容積変化部(31)とでそれぞれ吐出過程を経ることに起因するロスの問題が大きくなるおそれがある。従って、このような場合には、図8に示すような構成、即ち第1蒸発器(93)で蒸発した冷媒を第1容積変化部(31)において、第2蒸発器(96)で蒸発した冷媒を第2容積変化部(32)においてそれぞれ別々に圧縮する構成を採用するほうが望ましい。
【0122】
そこで、図10に示すように冷媒回路(90)を構成し、図8に示す冷媒回路で可能な運転と、図9に示す冷媒回路で可能な運転とを切り換え可能としてもよい。この図10に示す冷媒回路(90)では、図9に示す冷媒回路(90)に三方切換弁(97)を追加したものである。三方切換弁(97)は、第2吐出ポート(78)に接続された吐出配管に設けられている。この吐出配管において、三方切換弁(97)は、第1蒸発器(93)と第1吸入ポート(73)の間の吸入配管が接続される位置よりも第2吐出ポート(78)寄りの位置に設けられている。また、三方切換弁(97)は、第1吐出ポート(74)に接続された吐出配管に接続されている。三方切換弁(97)は、第2吐出ポート(78)側から流入した冷媒の送出先を、第1吸入ポート(73)側と第1吐出ポート(74)とに切り換え可能となっている。このようにすると、図8に示す冷媒回路で可能な運転と、図9に示す冷媒回路で可能な運転とを切り換えることができ、冷媒回路の運転条件等にあわせた運転が可能になる。
【0123】
《発明の実施形態4》
本発明の実施形態4について説明する。本実施形態のスクロール型流体機械(10)は、上記実施形態3のものと同様に構成されている。つまり、本実施形態のスクロール型流体機械(10)では、第1容積変化部(31)と第2容積変化部(32)の両方が圧縮機を構成しており、第2容積変化部(32)における圧縮比が第1容積変化部(31)における圧縮比よりも大きくなっている。
【0124】
図11に示すように、本実施形態のスクロール型流体機械(10)が設けられる冷媒回路(90)には、凝縮器(91,94)と膨張弁(92,95)とが2つずつ設けられている。この冷媒回路(90)において、第2凝縮器(94)での冷媒凝縮温度は、第1凝縮器(91)での冷媒凝縮温度よりも高く設定されている。
【0125】
冷媒回路(90)において、第1凝縮器(91)は、その一端がスクロール型流体機械(10)の第1吐出ポート(74)に接続され、その他端が第1膨張弁(92)の一端に接続されている。一方、第2凝縮器(94)は、その一端がスクロール型流体機械(10)の第2吐出ポート(78)に接続され、その他端が第2膨張弁(95)の一端に接続されている。第1膨張弁(92)及び第2膨張弁(95)の一端は、何れも蒸発器(93)の一端に接続されている。蒸発器(93)の他端は、スクロール型流体機械(10)の第1吸入ポート(73)及び第2吸入ポート(77)に接続されている。
【0126】
スクロール型流体機械(10)では、第1容積変化部(31)で圧縮された冷媒が第1吐出ポート(74)から吐出され、第2容積変化部(32)で圧縮された冷媒が第2吐出ポート(78)から吐出される。第2吐出ポート(78)から吐出された冷媒の圧力は、第1吐出ポート(74)から吐出された冷媒の圧力よりも高くなっている。第1吐出ポート(74)から吐出された冷媒は、第1凝縮器(91)で凝縮した後に第1膨張弁(92)で減圧される。一方、第2吐出ポート(78)から吐出された冷媒は、第2凝縮器(94)で凝縮した後に第2膨張弁(95)で減圧される。
【0127】
第1膨張弁(92)で減圧された冷媒と第2膨張弁(95)で減圧された冷媒とは、合流した後に蒸発器(93)へ導入されて蒸発し、その後に二手に分流される。分流された一方の冷媒は、第1吸入ポート(73)を通じて第1容積変化部(31)の第1流体室(71)へ吸入される。一方、分流された残りの冷媒は、第2吸入ポート(77)を通じて第2容積変化部(32)の第2流体室(72)へ吸入される。
【0128】
このように、本実施形態によれば、冷媒凝縮温度の相違する2つの凝縮器(91,94)が設けられた冷媒回路(90)においても、1台のスクロール型流体機械(10)だけで冷媒の圧縮を行うことができ、冷凍装置の構成を簡素化できる。
【0129】
《発明の実施形態5》
本発明の実施形態5について説明する。本実施形態のスクロール型流体機械(10)は、上記実施形態3のものと同様に構成されている。つまり、本実施形態のスクロール型流体機械(10)では、第1容積変化部(31)と第2容積変化部(32)の両方が圧縮機を構成している。ただし、このスクロール型流体機械(10)では、第1容積変化部(31)と第2容積変化部(32)とで圧縮比が相違している必要はなく、両者の圧縮比を同じ値に設定してもよい。
【0130】
図12に示すように、本実施形態のスクロール型流体機械(10)が設けられる冷媒回路(90)には、凝縮器(91)、膨張弁(92)、及び蒸発器(93)の他に中間熱交換器(97)が設けられている。この冷媒回路(90)では二段圧縮冷凍サイクルが行われる。上記スクロール型流体機械(10)は、第1容積変化部(31)が低段側の圧縮機を構成し、第2容積変化部(32)が高段側の圧縮機を構成する。
【0131】
冷媒回路(90)において、スクロール型流体機械(10)は、第1吐出ポート(74)が中間熱交換器(97)の一端に接続され、第2吸入ポート(77)が中間熱交換器(97)の他端に接続されている。スクロール型流体機械(10)の第2吐出ポート(78)は、凝縮器(91)の一端に接続されている。凝縮器(91)の他端は、膨張弁(92)を介して蒸発器(93)の一端に接続されている。蒸発器(93)の他端は、スクロール型流体機械(10)の第1吸入ポート(73)に接続されている。
【0132】
スクロール型流体機械(10)は、蒸発器(93)で蒸発した冷媒を第1吸入ポート(73)から吸入する。第1吸入ポート(73)へ吸入された冷媒は、第1容積変化部(31)の第1流体室(71)へ吸い込まれて圧縮される。第1容積変化部(31)で圧縮された冷媒は、第1吐出ポート(74)から吐出され、中間熱交換器(97)で冷却された後に第2吸入ポート(77)からスクロール型流体機械(10)へ再び吸入される。第2吸入ポート(77)へ吸入された冷媒は、第2容積変化部(32)の第2流体室(72)へ吸い込まれて更に圧縮される。第2容積変化部(32)で圧縮された冷媒は、第2吐出ポート(78)から吐出され、凝縮器(91)で凝縮する。その後、冷媒は、膨張弁(92)で減圧されてから蒸発器(93)へ流入して蒸発する。
【0133】
このように、本実施形態によれば、1台のスクロール型流体機械(10)だけで低段側の圧縮機と高段側の圧縮機の両方を構成することができ、二段圧縮冷凍サイクルを行う冷凍装置の構成を簡素化できる。
【0134】
また、本実施形態によれば、互いに噛み合わされる可動側ラップ(53,54)と固定側ラップ(42,47)を二組備えるスクロール型流体機械(10)においても、可動側ラップと固定側ラップを一組だけ備える一般的なスクロール型流体機械と同様に、第1平板部(51)の前面の中央部に第1可動側ラップ(53)を配置することが可能となる。この点は、上記実施形態3と同様である。従って、本実施形態によれば、上記実施形態3と同様に、ある程度の圧縮比を確保した上で第1可動側ラップ(53)及び第2可動側ラップ(54)の巻き終わり側の最外径を小さく設定でき、可動スクロール(50)の小型化が可能となる。
【0135】
−実施形態5の変形例−
本実施形態スクロール型流体機械(10)は、次のような構成の冷媒回路(90)に設けられていてもよい。
【0136】
図13に示すように、本変形例の冷媒回路(90)では、中間熱交換器(97)が省略され、第2膨張弁(95)と気液分離器(98)とが設けられている。そして、図12に示す冷媒回路(90)では中間熱交換器(97)における空気との熱交換によって第2容積変化部(32)へ吸入される冷媒のエンタルピを低下させているのに対し、この図13に示す冷媒回路(90)では気液分離器(98)からのガス冷媒を混入させることによって第2容積変化部(32)の吸入冷媒のエンタルピを低下させている。
【0137】
本変形例の冷媒回路(90)において、スクロール型流体機械(10)は、第1吐出ポート(74)が第2吸入ポート(77)に接続されている。スクロール型流体機械(10)の第2吐出ポート(78)は、凝縮器(91)の一端に接続されている。凝縮器(91)の他端は、第1膨張弁(92)を介して気液分離器(98)の頂部に接続されている。気液分離器(98)の頂部は、第1吐出ポート(74)と第2吸入ポート(77)を繋ぐ配管にも接続されている。気液分離器(98)の底部は、第2膨張弁(95)を介して蒸発器(93)の一端に接続されている。蒸発器(93)の他端は、スクロール型流体機械(10)の第1吸入ポート(73)に接続されている。
【0138】
スクロール型流体機械(10)は、蒸発器(93)で蒸発した冷媒を第1吸入ポート(73)から吸入する。第1吸入ポート(73)へ吸入された冷媒は、第1容積変化部(31)の第1流体室(71)へ吸い込まれて圧縮され、その後に第1吐出ポート(74)から吐出される。第1吐出ポート(74)から吐出された冷媒は、気液分離器(98)からの比較的エンタルピの低いガス冷媒と合流し、その後に第2吸入ポート(77)から第2容積変化部(32)の第2流体室(72)へ吸い込まれて更に圧縮される。第2容積変化部(32)で圧縮された冷媒は、第2吐出ポート(78)から吐出され、凝縮器(91)で凝縮する。凝縮器(91)で凝縮した冷媒は、第1膨張弁(92)を通過する際に減圧されて気液二相状態となり、その後に気液分離器(98)へ流入する。気液分離器(98)から流出した液冷媒は、第2膨張弁(95)を通過する際に更に減圧され、その後に蒸発器(93)へ流入して蒸発する。
【0139】
本変形例の冷媒回路(90)では、気液分離器(98)で分離された液冷媒だけが蒸発器(93)へ供給される。このため、蒸発器(93)において冷媒が吸熱する熱量を増大させることができ、冷却能力を向上させることができる。
【0140】
《発明の実施形態6》
本発明の実施形態6について説明する。本実施形態は、上記実施形態3において、本体機構(30)の構成を変更したものである。ここでは、本実施形態のスクロール型流体機械(10)について、上記実施形態3と異なる点を説明する。
【0141】
図14に示すように、本実施形態のスクロール型流体機械(10)では、第1容積変化部(31)と第2容積変化部(32)の両方が圧縮機を構成している。この点は、上記実施形態3と同様である。ただし、このスクロール型流体機械(10)では、第1容積変化部(31)における圧縮比と第2容積変化部(32)における圧縮比とが同じ値に設定されている。
つまり、本実施形態の本体機構(30)において、第1流体室(71)及び第2流体室(72)は、それぞれの容積についての最小値に対する最大値の比が互いに等しくなっている。
【0142】
本実施形態のスクロール型流体機械(10)では、第2吸入ポート(77)及び第2吐出ポート(78)が省略されている。このスクロール型流体機械(10)のケーシング(11)には、第1吸入ポート(73)及び第1吐出ポート(74)だけが設けられている。そして、図14には図示しないが、このスクロール型流体機械(10)は、その第1吸入ポート(73)が冷媒回路の蒸発器に配管接続され、その第1吐出ポート(74)が冷媒回路の凝縮器に配管接続されている。
【0143】
本実施形態の本体機構(30)では、第3平板部(49)の上面に吸入口(79)が開口している。第2容積変化部(32)の第2流体室(72)は、この吸入口(79)を介して低圧室(12)と連通可能になっている。また、上記本体機構(30)において、第2吐出口(67)は、第3平板部(49)ではなく第2平板部(52)に形成されている。具体的に、この第2吐出口(67)は、第2可動側ラップ(54)の巻き始め側端部の近傍に開口し、第2平板部(52)を貫通している。
【0144】
上記スクロール型流体機械(10)において、電動機(16)で可動スクロール(50)を駆動すると、第1吸入ポート(73)へガス冷媒が吸入される。第1吸入ポート(73)からケーシング(11)内へ流入したガス冷媒は、その一部が第1容積変化部(31)の第1流体室(71)へ吸入され、残りが低圧室(12)及び吸入口(79)を通って第2容積変化部(32)の第2流体室(72)へ吸入される。
【0145】
第1流体室(71)へ吸入された冷媒は、第1可動側ラップ(53)の移動に伴って圧縮され、第1吐出口(63)を通って吐出通路(22)へ流入する。一方、第2流体室(72)へ吸入された冷媒は、第2可動側ラップ(54)の移動に伴って圧縮され、第2吐出口(67)及び第1吐出口(63)を通って吐出通路(22)へ流入する。第1流体室(71)及び第2流体室(72)から吐出された冷媒は、吐出通路(22)を通って高圧室(13)へ流入し、第1吐出ポート(74)からケーシング(11)の外部へ吐出される。
【0146】
−実施形態6の効果−
ここで、可動側と固定側のラップを1つずつ備える一般的なスクロール圧縮機において、その押しのけ量を増大させるためにラップ高さを高くすると、それに伴ってラップの加工精度を確保しにくくなる等の理由からラップの加工が困難となる。これに対し、本実施形態の本体機構(30)は、第1固定側ラップ(42)と第1可動側ラップ(53)の間の第1流体室(71)と、第2固定側ラップ(47)と第2可動側ラップ(54)の間の第2流体室(72)との両方へ冷媒を吸入して圧縮している。このため、各ラップ(42,47,53,54)の高さを比較的低く保ちつつ、本体機構(30)全体としての押しのけ量を充分に確保できる。従って、本実施形態によれば、各ラップ(42,47,53,54)の加工性を損なうことなく、スクロール型流体機械(10)の押しのけ量を大きく設定することができる。
【0147】
また、本実施形態の本体機構(30)では、例えば第1固定側ラップ(42)及び第1可動側ラップ(53)の高さは変更せずに第2固定側ラップ(47)及び第2可動側ラップ(54)の高さを変更するだけで、押しのけ量を異なる値に設定可能である。従って、本実施形態によれば、押しのけ量の異なる複数種類のスクロール型流体機械(10)を製造する場合であっても、それに伴う部品の種類の増加を抑制でき、スクロール型流体機械(10)の製造コストを低減できる。
【0148】
《発明の実施形態7》
本発明の実施形態7について説明する。本実施形態は、上記実施形態1において、本体機構(30)の構成を変更したものである。ここでは、本実施形態のスクロール型流体機械(10)について、上記実施形態1と異なる点を説明する。
【0149】
図15に示すように、本実施形態の本体機構(30)において、第3平板部(49)は、第2平板部(52)よりもやや小径の円板状に形成されて可動スクロール(50)に取り付けられている。つまり、この本体機構(30)では、第2固定側部材(46)ではなく可動スクロール(50)に第3平板部(49)が設けられている。この本体機構(30)において、第3平板部(49)は、第2平板部(52)や第2可動側ラップ(54)と共に公転運動を行い、その下面が第2固定側ラップ(47)の上端面と摺接する。
【0150】
上記本体機構(30)において、第2固定側部材(46)は、第2外周部(48)と第2固定側ラップ(47)とによって構成されている。この第2固定側部材(46)では、第2外周部(48)の内周面から第2固定側ラップ(47)が片持ち梁状に突き出ている。つまり、この第2固定側部材(46)は、第1固定側部材(41)の形状(図3参照)と同じような形状に形成されている。
【0151】
上記本体機構(30)において、第1容積変化部(31)は、可動スクロール(50)の第1平板部(51)、第2平板部(52)、及び第1可動側ラップ(53)と、第1固定側ラップ(42)を備える固定スクロール(40)の第1固定側部材(41)とによって形成される。この点は上記実施形態1と同様である。一方、第2容積変化部(32)は、上記実施形態1とは異なり、可動スクロール(50)の第2平板部(52)、第3平板部(49)、及び第2可動側ラップ(54)と、第2固定側ラップ(47)を備える固定スクロール(40)の第2固定側部材(46)とによって形成される。
【0152】
上記本体機構(30)には、カバー部材(80)が設けられている。このカバー部材(80)は、円形の皿を下向きに伏せたような形状に形成されており、第2固定側部材(46)に取り付けられて第3平板部(49)の上方を覆っている。カバー部材(80)と第3平板部(49)の間には、シールリング(81)が設けられている。このシールリング(81)は、カバー部材(80)に形成された凹状の円環溝に嵌め込まれ、その下端面が第3平板部(49)材の上面と摺接している。また、シールリング(81)は、第3平板部(49)における流入口(66)の周囲を囲むように配置されている。そして、カバー部材(80)と第2固定側部材(46)の間に形成された空間のうち、シールリング(81)の内側が高圧空間(82)を構成し、シールリング(81)の外側が低圧空間(83)を構成している。
【0153】
上記本体機構(30)において、流入ポート(75)及び流出ポート(76)は、何れもカバー部材(80)に取り付けられている。そして、流入ポート(75)の一端が高圧空間(82)に開口し、流出ポート(76)の一端が低圧空間(83)に開口している。本実施形態のスクロール型流体機械(10)において、流入ポート(75)へ流入した冷媒は、高圧空間(82)へ一旦流入し、その後に流入口(66)を通って第2流体室(72)へ導入される。また、第2流体室(72)から送り出される冷媒は、低圧空間(83)を通って流出ポート(76)へと送り出される。
【0154】
本実施形態の本体機構(30)では、第1平板部(51)と共に第1流体室(71)を区画する第2平板部(52)と、第2平板部(52)と共に第2流体室(72)を区画する第3平板部(49)とを可動スクロール(50)に設けている。第1平板部(51)及び第2平板部(52)には第1流体室(71)の内圧が作用するが、第1平板部(51)に作用する力と第2平板部(52)に作用する力とは、互いに大きさが同じで方向が逆向きとなる。同様に、第2平板部(52)及び第3平板部(49)には第2流体室(72)の内圧が作用するが、第2平板部(52)に作用する力と第3平板部(49)に作用する力とは、互いに大きさが同じで方向が逆向きとなる。このため、第1流体室(71)内の流体が第1平板部(51)に及ぼす力と第2平板部(52)へ及ぼす力は互いに打ち消し合い、第2流体室(72)内の流体が第2平板部(52)に及ぼす力と第3平板部(49)へ及ぼす力も互いに打ち消し合う。
【0155】
従って、本実施形態によれば、各流体室(71,72)内の流体から可動スクロール(50)が受ける力を見かけ上ゼロにすることができ、可動スクロール(50)に作用する軸方向荷重(即ちスラスト荷重)を大幅に低減できる。この結果、可動スクロール(50)が公転運動する際の摩擦損失を大幅に削減することができ、スクロール型流体機械(10)の効率を向上させることができる。
【0156】
ここで、鍔部(65)の底面におけるシールリング(38)の内側には冷凍機油の油圧が作用しており、この油圧によって可動スクロール(50)には上向きの荷重が作用する。また、第3平板部(49)の上面におけるシールリング(81)の内側には高圧空間(82)内のガス圧が作用しており、このガス圧によって可動スクロール(50)には下向きの荷重が作用する。従って、本実施形態によれば、2つのシールリング(38,81)の直径を適切に設定すれば、油圧による上向き荷重とガス圧による下向き荷重とを釣り合わせることができ、可動スクロール(50)に作用するスラスト荷重をゼロにすることも可能である。
【0157】
−実施形態7の変形例−
上述のように、本実施形態は、第3平板部(49)を第2固定側部材(46)とは別体に形成して可動スクロール(50)に設ける構成を、上記実施形態1の本体機構(30)に適用したものである。しかしながら、このような第3平板部(49)を可動スクロール(50)に設ける構成については、その適用対象が上記実施形態1の本体機構(30)に限られる訳ではなく、上記実施形態3〜6の本体機構(30)に対しても適用可能である。つまり、第3平板部(49)を可動スクロール(50)に設ける構成は、第1容積変化部(31)と第2容積変化部(32)の両方が圧縮機を構成するスクロール型流体機械(10)に対しても適用できる。
【0158】
《その他の実施形態》
上記実施形態3〜6では、スクロール型流体機械(10)の本体機構(30)において、第1可動側ラップ(53)及び第1固定側ラップ(42)と第2可動側ラップ(54)及び第2固定側ラップ(47)との両方を同じ渦巻き方向に形成し、第1容積変化部(31)と第2容積変化部(32)の両方が圧縮機を構成するようにしている。しかしながら、第1可動側ラップ(53)及び第1固定側ラップ(42)と第2可動側ラップ(54)及び第2固定側ラップ(47)との両方を同じ渦巻き方向に形成されたスクロール型流体機械(10)は、第1容積変化部(31)と第2容積変化部(32)の両方が圧縮機ではなく膨張機を構成するものであってもよい。
【0159】
また、上記の各実施形態では、第1平板部(51)の背面側に円筒状の軸受部(64)を形成し、駆動軸(20)の上端に設けられた偏心部(21)を軸受部(64)挿入する構造を採っているが、これに代えて次のような構造を採ってもよい。つまり、第1平板部(51)の背面側に円柱状の突起部を設ける一方、駆動軸(20)の上端部に穴部を形成し、第1平板部(51)の突起部を駆動軸(20)の穴部へ挿入することによって、可動スクロール(50)を駆動軸(20)と係合させてもよい。この場合には、第1平板部(51)の背面に突設された突起部が係合部を構成する。
【産業上の利用可能性】
【0160】
以上説明したように、本発明は、流体の圧縮や膨張が行われるスクロール型流体機械について有用である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクロール型の流体機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、スクロール型流体機械が広く知られており、冷凍装置で冷媒を圧縮する圧縮機など、様々な用途に利用されている。例えば、特開平9−126164号公報や特開2002−235682号公報には、互いに噛み合わされる可動側と固定側のラップを二組備えたスクロール型流体機械が開示されている。このスクロール型流体機械では、可動スクロールにおける平板部の両面に渦巻き状のラップが立設されている。具体的に、このスクロール型流体機械では、平板部の前面に立設された可動側ラップと第1の固定側ラップとを噛み合わせて第1の流体室が形成され、平板部の背面に立設された可動側ラップと第2の固定側ラップとを噛み合わせて第2の流体室が形成されている。
【0003】
この種のスクロール型流体機械では、平板部の両面にラップが立設された可動スクロールに回転軸を係合させなければならない。そこで、特開平9−126164号公報では、可動スクロールにおける平板部の中央部を貫通するように回転軸を設け、この平板部に回転軸の偏心部を係合させている。また、特開2002−235682号公報では、可動スクロールにおける平板部の中央部を貫通するように挿入部を形成し、平板部の背面側から軸挿入部へ回転軸の偏心部を挿入している。
【0004】
−解決課題−
上述のように、可動スクロールにおける平板部の両面にラップが立設されたスクロール型流体機械では、可動スクロールに回転軸を係合させる必要があるため、可動スクロールにおける平板部の中央部にラップを設けることができない。このため、可動側と固定側のラップにより形成される流体室については、その最小容積が大きくなってしまう。そして、ある程度の圧縮比又は膨張比を確保しようとすると、渦巻き状のラップの最外径を大きくして流体室の最大容積を大きく設定せざるを得なくなる。従って、ラップが設けられる可動スクロールや固定スクロールが大型化し、その結果、スクロール型流体機械の大型化を招くという問題があった。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、二組設けられた固定側と可動側のラップによって流体室が形成されるスクロール型流体機械において、その小型化を図ることにある。
【発明の開示】
【0006】
第1の発明は、固定スクロール(40)と、可動スクロール(50)と、該可動スクロール(50)に係合する回転軸(20)と、上記可動スクロール(50)の自転防止機構(39)とを備えるスクロール型流体機械を対象としている。そして、上記固定スクロール(40)は、第1固定側ラップ(42)を備える第1固定側部材(41)と、第2固定側ラップ(47)を備える第2固定側部材(46)とにより構成され、上記可動スクロール(50)は、背面に上記回転軸(20)と係合する係合部(64)が設けられて前面が第1固定側ラップ(42)と摺接する第1平板部(51)と、上記第1固定側ラップ(42)と噛み合って第1流体室(71)を形成する第1可動側ラップ(53)と、上記第1可動側ラップ(53)を挟んで第1平板部(51)に対向して背面が第1固定側ラップ(42)と前面が第2固定側ラップ(47)とそれぞれ摺接する第2平板部(52)と、上記第2固定側ラップ(47)と噛み合って第2流体室(72)を形成する第2可動側ラップ(54)とを備え、上記第2固定側部材(46)には、第2可動側ラップ(54)を挟んで第2平板部(52)に対向して第2可動側ラップ(54)と摺接する第3平板部(49)が設けられるものである。
【0007】
第2の発明は、固定スクロール(40)と、可動スクロール(50)と、該可動スクロール(50)に係合する回転軸(20)と、上記可動スクロール(50)の自転防止機構(39)とを備えるスクロール型流体機械を対象としている。そして、上記固定スクロール(40)は、第1固定側ラップ(42)を備える第1固定側部材(41)と、第2固定側ラップ(47)を備える第2固定側部材(46)とにより構成され、上記可動スクロール(50)は、背面に上記回転軸(20)と係合する係合部(64)が設けられて前面が第1固定側ラップ(42)と摺接する第1平板部(51)と、上記第1固定側ラップ(42)と噛み合って第1流体室(71)を形成する第1可動側ラップ(53)と、上記第1可動側ラップ(53)を挟んで第1平板部(51)に対向して背面が第1固定側ラップ(42)と前面が第2固定側ラップ(47)とそれぞれ摺接する第2平板部(52)と、上記第2固定側ラップ(47)と噛み合って第2流体室(72)を形成する第2可動側ラップ(54)と、上記第2可動側ラップ(54)を挟んで第2平板部(52)に対向して第2固定側ラップ(47)と摺接する第3平板部(49)とを備えるものである。
【0008】
第3の発明は、上記第1又は第2の発明のスクロール型流体機械において、第1可動側ラップ(53)が第1平板部(51)と一体に形成され、第2平板部(52)が第1平板部(51)及び第1可動側ラップ(53)と別体に形成されるものである。
【0009】
第4の発明は、上記第3の発明のスクロール型流体機械において、第2可動側ラップ(54)が第2平板部(52)と一体に形成されるものである。
【0010】
第5の発明は、上記第1又は第2の発明のスクロール型流体機械において、第1固定側ラップ(42)及び第1可動側ラップ(53)の渦巻き方向と第2固定側ラップ(47)及び第2可動側ラップ(54)の渦巻き方向とが互いに相違しているものである。
【0011】
第6の発明は、上記第5の発明のスクロール型流体機械において、可動スクロール(50)が公転すると第1流体室(71)内で流体が圧縮されて第2流体室(72)内で流体が膨張するように構成されるものである。
【0012】
第7の発明は、上記第6の発明のスクロール型流体機械において、第3平板部(49)には、第2流体室(72)に連通する導入用開口(66,68,69)が第2固定側ラップ(47)又は第2可動側ラップ(54)の径方向へ異なる位置に複数形成され、上記各導入用開口(66,68,69)を開閉するための開閉機構(85)を備えるものである。
【0013】
第8の発明は、上記第1又は第2の発明のスクロール型流体機械において、第1固定側ラップ(42)及び第1可動側ラップ(53)の渦巻き方向と第2固定側ラップ(47)及び第2可動側ラップ(54)の渦巻き方向とが互いに同じであるものである。
【0014】
第9の発明は、上記第8の発明のスクロール型流体機械において、第1流体室(71)及び第2流体室(72)は、それぞれの容積についての最小値に対する最大値の比が互いに相違しているものである。
【0015】
第10の発明は、上記第8の発明のスクロール型流体機械において、第1流体室(71)及び第2流体室(72)は、それぞれの容積についての最小値に対する最大値の比が互いに等しくなっているものである。
【0016】
第11の発明は、上記第8の発明のスクロール型流体機械において、第1流体室(71)及び第2流体室(72)のうちの何れか一方で圧縮した流体を他方へ導入して更に圧縮するように構成されるものである。
【0017】
−作用−
上記第1及び第2の発明において、可動スクロール(50)は、自転防止機構(39)に案内されて回転し、自転運動が規制されて公転運動だけを行う。第1流体室(71)及び第2流体室(72)の容積は、この可動スクロール(50)の公転運動に伴って変化する。可動スクロール(50)では、第1平板部(51)の背面に係合部(64)が設けられており、この係合部(64)が回転軸(20)と係合する。
【0018】
また、第1及び第2の発明において、第1平板部(51)の前面側には第1可動側ラップ(53)が設けられる。第1可動側ラップ(53)は、第1固定側部材(41)の第1固定側ラップ(42)と噛み合わされて第1流体室(71)を形成する。第1固定側ラップ(42)は、一方の端面が第1平板部(51)の前面と摺接し、他方の端面が第2平板部(52)の背面と摺接する。第1流体室(71)は、第1可動側ラップ(53)、第1固定側ラップ(42)、第1平板部(51)、及び第2平板部(52)によって区画される。
【0019】
上記第1の発明において、第2平板部(52)の前面側には第2可動側ラップ(54)が設けられる。第2可動側ラップ(54)は、第2固定側部材(46)の第2固定側ラップ(47)と噛み合わされて第2流体室(72)を形成する。第2可動側ラップ(54)の先端面は、第2固定側部材(46)に設けられた第3平板部(49)と摺接する。第2固定側ラップ(47)の先端面は、第2平板部(52)の前面と摺接する。第2流体室(72)は、第2可動側ラップ(54)、第2固定側ラップ(47)、第2平板部(52)、及び第3平板部(49)によって区画される。
【0020】
上記第2の発明において、第2平板部(52)の前面側には第2可動側ラップ(54)が設けられる。第2可動側ラップ(54)は、第2固定側部材(46)の第2固定側ラップ(47)と噛み合わされて第2流体室(72)を形成する。第2固定側ラップ(47)は、一方の端面が第2平板部(52)の前面と摺接し、他方の端面が第3平板部(49)と摺接する。第2流体室(72)は、第2可動側ラップ(54)、第2固定側ラップ(47)、第2平板部(52)、及び第3平板部(49)によって区画される。
【0021】
尚、第1及び第2の発明において、第1固定側ラップ(42)の端面と第1平板部(51)の前面とは、必ずしも互いが直接に触れあっていなくてもよい。つまり、厳密に言うと第1固定側ラップ(42)と第1平板部(51)の間に微小な隙間がある場合であっても、一見して第1固定側ラップ(42)と第1平板部(51)が擦れ合っているように見える状態であればよい。この点は、第1固定側ラップ(42)の端面と第2平板部(52)の背面についても同様であり、第2固定側ラップ(47)の端面と第2平板部(52)の前面についても同様である。また、第1の発明では第2可動側ラップ(54)の端面と第3平板部(49)についても同様であり、第2の発明では第2固定側ラップ(47)の端面と第3平板部(49)についても同様である。
【0022】
上記第3の発明において、第1平板部(51)の前面側には、第1可動側ラップ(53)が一体に形成されている。可動スクロール(50)では、第2平板部(52)が第1平板部(51)又は第1可動側ラップ(53)に取り付けられる。
【0023】
上記第4の発明において、第2平板部(52)の前面側には、第2可動側ラップ(54)が一体に形成されている。可動スクロール(50)では、第2可動側ラップ(54)と一体に形成された第2平板部(52)が第1平板部(51)又は第1可動側ラップ(53)に取り付けられる。
【0024】
上記第5の発明では、第1固定側ラップ(42)及び第1可動側ラップ(53)の渦巻き方向が、第2固定側ラップ(47)及び第2可動側ラップ(54)の渦巻き方向とは逆向きになっている。例えば、第1固定側ラップ(42)及び第1可動側ラップ(53)が右巻の渦巻き形状であれば、第2固定側ラップ(47)及び第2可動側ラップ(54)が左巻の渦巻き形状となる。可動スクロール(50)の公転運動中において、第1固定側ラップ(42)と第1可動側ラップ(53)に挟まれた第1流体室(71)と、第2固定側ラップ(47)と第2可動側ラップ(54)に挟まれた第2流体室(72)とでは、何れか一方の内部で流体が圧縮され、他方の内部で流体が膨張する。つまり、例えば第1流体室(71)へ流体が吸い込まれて圧縮されるとすると、第2流体室(72)へ送り込まれた流体が膨張する。
【0025】
上記第6の発明において、可動スクロール(50)の公転運動中には、第1流体室(71)へ流体が吸い込まれて圧縮され、第2流体室(72)へ送り込まれた流体が膨張する。
【0026】
上記第7の発明では、第3平板部(49)に複数の導入用開口(66,68,69)が形成される。各導入用開口(66,68,69)は、開閉機構(85)によって開閉される。流体は、開口状態となった導入用開口(66,68,69)を通って第2流体室(72)へ流入する。また、この発明において、第3平板部(49)における各導入用開口(66,68,69)の位置は、第2固定側ラップ(47)又は第2可動側ラップ(54)の径方向へ相違している。従って、各導入用開口(66,68,69)が開口する第2流体室(72)の容積は、導入用開口(66,68,69)毎に互いに相違している。このため、流体が通過する導入用開口(66,68,69)を変更すると、流体を導入する時点における第2流体室(72)の容積が変化する。
【0027】
上記第8の発明では、第1固定側ラップ(42)及び第1可動側ラップ(53)の渦巻き方向が、第2固定側ラップ(47)及び第2可動側ラップ(54)の渦巻き方向と同じ向きになっている。例えば、第1固定側ラップ(42)及び第1可動側ラップ(53)が右巻の渦巻き形状であれば、第2固定側ラップ(47)及び第2可動側ラップ(54)も右巻の渦巻き形状となる。可動スクロール(50)の公転運動中において、第1固定側ラップ(42)と第1可動側ラップ(53)に挟まれた第1流体室(71)と、第2固定側ラップ(47)と第2可動側ラップ(54)に挟まれた第2流体室(72)とでは、両方の内部で流体が圧縮され、又は両方の内部で流体が膨張する。つまり、例えば第1流体室(71)へ流体が吸い込まれて圧縮されるとすると、第1流体室(71)へも流体が吸い込まれて圧縮される。
【0028】
上記第9の発明では、第1流体室(71)の最小容積に対する最大容積の比が、第2流体室(72)の最小容積に対する最大容積の比と異なっている。つまり、この発明のスクロール型流体機械(10)を圧縮機として用いる場合、第1流体室(71)における圧縮比は、第2流体室(72)における圧縮比と異なる値に設定される。また、このスクロール型流体機械(10)を膨張機として用いる場合、第1流体室(71)における膨張比は、第2流体室(72)における膨張比と異なる値に設定される。
【0029】
上記第10の発明では、第1流体室(71)の最小容積に対する最大容積の比が、第2流体室(72)の最小容積に対する最大容積の比と等しくなっている。つまり、この発明のスクロール型流体機械(10)を圧縮機として用いる場合、第1流体室(71)における圧縮比は、第2流体室(72)における圧縮比と同じ値に設定される。また、このスクロール型流体機械(10)を膨張機として用いる場合、第1流体室(71)における膨張比は、第2流体室(72)における膨張比と同じ値に設定される。
【0030】
上記第11の発明では、スクロール型流体機械(10)において、いわゆる二段圧縮が行われる。例えば、第1流体室(71)へ先に流体を導入する場合には、第1流体室(71)で圧縮された流体が第2流体室(72)へ吸入されて更に圧縮される。逆に、第2流体室(72)へ先に流体を導入する場合には、第2流体室(72)で圧縮された流体が第1流体室(71)へ吸入されて更に圧縮される。
【0031】
−効果−
本発明では、可動スクロール(50)を構成する第1平板部(51)の背面に係合部(64)を設け、この係合部(64)を回転軸(20)と係合させている。また、本発明では、第1可動側ラップ(53)を第1固定側ラップ(42)と噛み合わせて第1流体室(71)を形成する一方、可動スクロール(50)に設けた第2平板部(52)の前面側に第2可動側ラップ(54)を配置し、この第2可動側ラップ(54)を第2固定側ラップ(47)と噛み合わせて第2流体室(72)を形成している。
【0032】
このため、本発明によれば、互いに噛み合わされる可動側ラップ(53,54)と固定側ラップ(42,47)を二組備えるスクロール型流体機械(10)においても、可動側ラップと固定側ラップを一組だけ備える一般的なスクロール型流体機械と同様に、第1平板部(51)の前面の中央部に第1可動側ラップ(53)を配置することが可能となる。そして、一つの平板部の両面にラップを設ける構成を採る場合に比べ、渦巻き状の第1可動側ラップ(53)及び第2可動側ラップ(54)における巻き始め側の最内径を小さく設定でき、第1流体室(71)及び第2流体室(72)の最小容積を小さく設定できる。
【0033】
従って、本発明によれば、ある程度の圧縮比又は膨張比を確保した場合でも、第1可動側ラップ(53)及び第2可動側ラップ(54)の巻き終わり側の最外径を小さく設定することが可能となり、可動スクロール(50)を小型化できる。この結果、スクロール型流体機械(10)を小型化することができる。
【0034】
上記第2の発明では、第1平板部(51)と共に第1流体室(71)を区画する第2平板部(52)と、第2平板部(52)と共に第2流体室(72)を区画する第3平板部(49)とを可動スクロール(50)に設けている。第1平板部(51)及び第2平板部(52)には第1流体室(71)の内圧が作用するが、第1平板部(51)に作用する力と第2平板部(52)に作用する力とは、互いに大きさが同じで方向が逆向きとなる。同様に、第2平板部(52)及び第3平板部(49)には第2流体室(72)の内圧が作用するが、第2平板部(52)に作用する力と第3平板部(49)に作用する力とは、互いに大きさが同じで方向が逆向きとなる。このため、第1流体室(71)内の流体が第1平板部(51)に及ぼす力と第2平板部(52)へ及ぼす力は互いに打ち消し合い、第2流体室(72)内の流体が第2平板部(52)に及ぼす力と第3平板部(49)へ及ぼす力も互いに打ち消し合う。
【0035】
従って、第2の発明によれば、各流体室(71,72)内の流体から可動スクロール(50)が受ける力を見かけ上ゼロにすることができ、可動スクロール(50)に作用する軸方向荷重(即ちスラスト荷重)を大幅に低減できる。この結果、可動スクロール(50)が公転運動する際の摩擦損失を大幅に削減することができ、スクロール型流体機械(10)の効率を向上させることができる。
【0036】
上記第3の発明では、背面に係合部(64)が設けられた第1平板部(51)と一体に第1可動側ラップ(53)を形成している。つまり、第1平板部(51)と第1可動側ラップ(53)とを一体に形成したものは、可動側と固定側のラップを一組だけ備える一般的なスクロール型流体機械の可動スクロールと殆ど同じ形状となっている。このため、一体形成された第1平板部(51)及び第1可動側ラップ(53)を製造する際には、一般的なスクロール型流体機械の可動スクロールを加工するための設備や方法を利用することができる。従って、この発明によれば、第1平板部(51)及び第1可動側ラップ(53)の加工コストが上昇するのを回避でき、スクロール型流体機械(10)の製造コストの上昇を抑制できる。
【0037】
上記第4の発明では、第1平板部(51)の前面側に第1可動側ラップ(53)を一体形成し、第2平板部(52)の前面側に第2可動側ラップ(54)を一体形成している。従って、一つの平板部の両面に可動側ラップを形成する上記従来のスクロール型流体機械に比べ、可動スクロール(50)の加工工程を簡素化することができ、スクロール型流体機械(10)の製造コストを削減できる。
【0038】
上記第5及び第6の発明によれば、一方の流体室(71,72)において流体を膨張させ、この流体の内部エネルギを回転動力として回収でき、更には回収した動力を他方の流体室(71,72)における流体の圧縮に利用することができる。この結果、これらの発明によれば、スクロール型流体機械(10)で流体を圧縮する際に外部から供給すべき動力を削減でき、スクロール型流体機械(10)の効率を向上させることができる。
【0039】
上記第7の発明では、第3平板部(49)に複数の導入用開口(66,68,69)が設けられ、各導入用開口(66,68,69)が開閉機構(85)によって開閉可能となっている。このため、導入用開口(66,68,69)から流体を導入する時点での第2流体室(72)の容積を変化させることができる。つまり、第2流体室(72)の実質的な最小容積を変化させることができる。従って、この発明によれば、第2流体室(72)の押しのけ容積を可変とすることができ、スクロール型流体機械(10)の使い勝手を向上させることができる。
【0040】
上記第8,第9及び第10の発明では、第1流体室(71)と第2流体室(72)の両方で流体が圧縮され、あるいは流体が膨張する。このため、流体を導入する流体室(71,72)を切り換えることによってスクロール型流体機械(10)の容量を調節することができたり、一方の流体室で圧縮した流体を他方の流体室で更に圧縮する二段圧縮が可能になる等、スクロール型流体機械(10)の用途を広げることができる。
【0041】
上記第11の発明では、スクロール型流体機械(10)において二段圧縮を行うようにしている。従って、この発明によれば、可動スクロール(50)を小型化できると同時に、二段圧縮を行うことでスクロール型流体機械(10)全体としての圧縮比を大きな値に設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実施形態1のスクロール型流体機械の全体構成を示す概略断面図である。
【図2】実施形態1のスクロール型流体機械の要部を示す拡大断面図である。
【図3】実施形態1の固定スクロールの第1固定側部材を示す断面図である。
【図4】実施形態1の可動スクロールを示す断面図である。
【図5】実施形態1の第1固定側部材及び可動スクロールを示す平面図である。
【図6】実施形態1のスクロール型流体機械を備える冷媒回路の概略構成図である。
【図7】実施形態2のスクロール型流体機械及びこれを備える冷媒回路の概略構成図である。
【図8】実施形態3のスクロール型流体機械及びこれを備える冷媒回路の概略構成図である。
【図9】実施形態3の変形例のスクロール型流体機械及びこれを備える冷媒回路の概略構成図である。
【図10】実施形態3の変形例のスクロール型流体機械及びこれを備える冷媒回路の概略構成図である。
【図11】実施形態4のスクロール型流体機械及びこれを備える冷媒回路の概略構成図である。
【図12】実施形態5のスクロール型流体機械及びこれを備える冷媒回路の概略構成図である。
【図13】実施形態5の変形例のスクロール型流体機械及びこれを備える冷媒回路の概略構成図である。
【図14】実施形態6のスクロール型流体機械の全体構成を示す概略断面図である。
【図15】実施形態7のスクロール型流体機械の要部を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下に示す各実施形態のスクロール型流体機械(10)は、何れも冷凍装置の冷媒回路(90)に接続されるものである。
【0044】
《発明の実施形態1》
本発明の実施形態1について説明する。
【0045】
図1に示すように、上記スクロール型流体機械(10)は、縦長で円筒形の密閉容器状に形成されたケーシング(11)を備えている。ケーシング(11)の内部には、上から下へ向かって順に、本体機構(30)と、電動機(16)と、下部軸受(19)とが配置されている。また、ケーシング(11)の内部には、上下に延びる駆動軸(20)が回転軸として設けられている。
【0046】
ケーシング(11)の内部は、本体機構(30)のハウジング(33)によって上下に仕切られている。このケーシング(11)の内部では、ハウジング(33)の上方の空間が低圧室(12)となり、その下方の空間が高圧室(13)となっている。
【0047】
高圧室(13)には、電動機(16)と下部軸受(19)とが収納されている。電動機(16)は、固定子(17)と回転子(18)とを備えている。固定子(17)は、ケーシング(11)の胴部に固定されている。一方、回転子(18)は、駆動軸(20)における上下方向の中央部に固定されている。下部軸受(円)は、ケーシング(11)の胴部に固定されている。この下部軸受(19)は、駆動軸(20)の下端部を回転自在に支持している。
【0048】
ケーシング(11)には、管状の吐出ポート(74)が設けられている。この吐出ポート(74)は、その一端が高圧室(13)における電動機(16)よりも上方の空間に開口している。
【0049】
本体機構(30)のハウジング(33)には、これを上下に貫通する主軸受(34)が形成されている。駆動軸(20)は、この主軸受(34)に挿通され、主軸受(34)によって回転自在に支持される。駆動軸(20)において、ハウジング(33)の上部に突出する上端部分は、偏心部(21)を構成している。偏心部(21)は、駆動軸(20)の中心軸に対して偏心している。
【0050】
駆動軸(20)には、ハウジング(33)と固定子(17)の間にバランスウェイト(25)が取り付けられている。また、駆動軸(20)には、図示しないが、給油通路が形成されている。ハウジング(33)の底部に溜まった冷凍機油は、遠心ポンプの作用によって駆動軸(20)の下端から吸い上げられ、給油通路を通って各部へ供給される。更に、駆動軸(20)には、吐出通路(22)が形成されている。この吐出通路(22)については後述する。
【0051】
図2にも示すように、低圧室(12)には、本体機構(30)の固定スクロール(40)及び可動スクロール(50)が収納されている。この本体機構(30)では、圧縮機を構成する第1容積変化部(31)と、膨張機を構成する第2容積変化部(32)とが形成されている。また、低圧室(12)には、オルダムリング(39)が収納されている。
【0052】
固定スクロール(40)は、第1固定側部材(41)と第2固定側部材(46)とによって構成されている。固定スクロール(40)を構成する第1固定側部材(41)及び第2固定側部材(46)は、ハウジング(33)に固定されている。
【0053】
図3にも示すように、第1固定側部材(41)は、第1固定側ラップ(42)と第1外周部(43)とを備えている。尚、図3は、図2のA−A断面における第1固定側部材(41)だけを図示したものである。
【0054】
第1固定側ラップ(42)は、高さが一定の渦巻き壁状に形成されている。一方、第1外周部(43)は、第1固定側ラップ(42)の周りを囲む厚肉のリング状に形成されると共に、第1固定側ラップ(42)と一体に形成されている。つまり、第1固定側部材(41)では、第1外周部(43)の内周面から第1固定側ラップ(42)が片持ち梁状に突き出ている。また、第1外周部(43)には、挿通孔(44)とボルト孔(45)とが3つずつ形成されている。第1固定側部材(41)は、このボルト孔(45)に通されたボルトによってハウジング(33)に締結固定される。
【0055】
第1固定側部材(41)には、管状の吸入ポート(73)の一端が挿入されている(図2参照)。この吸入ポート(73)は、ケーシング(11)の上端部を貫通して設けられている。第1固定側部材(41)における吸入ポート(73)の下部には、吸入逆止弁(35)が設けられている。この吸入逆止弁(35)は、弁体(36)とコイルばね(37)とによって構成されている。弁体(36)は、キャップ状に形成されており、吸入ポート(73)の下端を塞ぐように設置されている。また、この弁体(36)は、コイルばね(37)によって吸入ポート(73)の下端に押し付けられている。
【0056】
図2に示すように、第2固定側部材(46)は、第2固定側ラップ(47)と、第2外周部(48)と、第3平板部(49)とを備えている。第2固定側部材(46)の全体の形状は、第1固定側部材(41)よりも肉厚が薄くて小径の円板状となっている。第3平板部(49)は、円板状に形成されており、第2固定側部材(46)における上部に配置されている。第2外周部(48)は、第3平板部(49)と一体に形成され、該第3平板部(49)から下方へ延びている。第2外周部(48)の形状は、第3平板部(49)と外径の等しい肉厚のリング状となっている。
【0057】
第2固定側部材(46)において、第2固定側ラップ(47)は、第2外周部(48)の内側に配置され、第3平板部(49)と一体に形成されている。この第2固定側ラップ(47)は、第1固定側ラップ(42)よりも低い渦巻き壁状に形成され、第3平板部(49)の下面から下方へ延びている。また、第2固定側ラップ(47)は、その渦巻き方向が第1固定側ラップ(42)の渦巻き方向と逆方向になっている。つまり、第1固定側ラップ(42)は右巻の渦巻き壁状に形成されているのに対し(図3参照)、第2固定側ラップ(47)は左巻の渦巻き壁状に形成されている。
【0058】
第2固定側部材(46)には、管状の流出ポート(76)の一端が挿入されている。この流出ポート(76)は、ケーシング(11)の上端部を貫通して設けられている。また、第2固定側部材(46)の第3平板部(49)には、その中央部に流入口(66)が形成されている。この流入口(66)は、第2固定側ラップ(47)の巻き始め側の端部の近傍に開口し、第3平板部(49)を貫通している。この流入口(66)には、管状の流入ポート(75)の一端が挿入されている。この流入ポート(75)は、ケーシング(11)の上端部を貫通して設けられている。
【0059】
可動スクロール(50)は、第1平板部(51)と、第1可動側ラップ(53)と、第2平板部(52)と、第2可動側ラップ(54)と、支柱部材(61)とを備えている。第1可動側ラップ(53)は、第1平板部(51)と一体に形成されている。一方、第2可動側ラップ(54)は、第2平板部(52)と一体に形成されている。可動スクロール(50)では、第1可動側ラップ(53)と一体の第1平板部(51)の上面に3つの支柱部材(61)が立設され、第2可動側ラップ(54)と一体の第2平板部(52)が支柱部材(61)の上に載置されている。そして、可動スクロール(50)では、積み重ねられた第1平板部(51)と支柱部材(61)と第2平板部(52)とがボルト(62)によって締結されている。
【0060】
第1平板部(51)及び第1可動側ラップ(53)について、図2,図4,図5を参照しながら説明する。尚、図4は、図2のA−A断面における可動スクロール(50)だけを図示したものである。また、図5は、図2のA−A断面における第1固定側部材(41)及び可動スクロール(50)を図示したものである。
【0061】
図4に示すように、第1平板部(51)は、概ね円形の平板状に形成されている。この第1平板部(51)は、その前面(図2における上面)が第1固定側ラップ(42)の下端面と摺接する。第1平板部(51)には、半径方向へ膨出した部分が3つ形成されており、その部分のそれぞれに支柱部材(61)が1つずつ立設されている。支柱部材(61)は、やや厚肉で管状の部材であって、第1平板部(51)とは別体に形成されている。
【0062】
第1可動側ラップ(53)は、高さが一定の渦巻き壁状に形成され、第1平面部の前面側(図2における上面側)に立設されている。この第1可動側ラップ(53)は、第1固定側部材(41)の第1固定側ラップ(42)と互いに噛み合わされる(図5参照)。そして、第1可動側ラップ(53)は、その側面が第1固定側ラップ(42)の側面と摺接する。
【0063】
図2に示すように、第2平板部(52)は、第1平板部(51)と概ね同形状の平板状に形成されている。この第2平板部(52)は、その背面(図2における下面)が第1固定側ラップ(42)の上端面と摺接し、その前面(図2における上面)が第2固定側ラップ(47)の下端面と摺接する。
【0064】
第2平板部(52)の前面側(図2における上面側)には、第2可動側ラップ(54)が立設されている。この第2可動側ラップ(54)は、その渦巻き方向が第1可動側ラップ(53)の渦巻き方向と逆方向になっている。つまり、第1可動側ラップ(53)は右巻の渦巻き壁状に形成されているのに対し(図4参照)、第2可動側ラップ(54)は左巻の渦巻き壁状に形成されている。
【0065】
本体機構(30)では、第1固定側ラップ(42)と第1可動側ラップ(53)と第1平板部(51)と第2平板部(52)とによって、複数の第1流体室(71)が形成されている。そして、可動スクロール(50)の第1平板部(51)、第2平板部(52)、及び第1可動側ラップ(53)と、第1固定側ラップ(42)を備える固定スクロール(40)の第1固定側部材(41)とが、第1容積変化部(31)を形成している。
【0066】
また、本体機構(30)では、第2固定側ラップ(47)と第2可動側ラップ(54)と第2平板部(52)と第3平板部(49)とによって、複数の第2流体室(72)が形成されている。そして、可動スクロール(50)の第2平板部(52)及び第2可動側ラップ(54)と、第3平板部(49)及び第2固定側ラップ(47)を備える固定スクロール(40)の第2固定側部材(46)とが、第2容積変化部(32)を形成している。
【0067】
可動スクロール(50)の第1平板部(51)には、その中央部に吐出口(63)が形成されている。この吐出口(63)は、第1可動側ラップ(53)の巻き始め側の端部の近傍に開口し(図4参照)、第1平板部(51)を貫通している。また、この第1平板部(51)には、軸受部(64)が形成されている。この軸受部(64)は、略円筒状に形成され、第1平板部(51)の背面側(図2における下面側)に突設されている。更に、軸受部(64)の下端部には、鍔状の鍔部(65)が形成されている。
【0068】
軸受部(64)の鍔部(65)の下面とハウジング(33)の間には、シールリング(38)が設けられている。このシールリング(38)の内側には、駆動軸(20)の給油通路を通じて高圧の冷凍機油が供給されている。シールリング(38)の内側へ高圧の冷凍機油を送り込むと、鍔部(65)の底面に油圧が作用して可動スクロール(50)が上方へ押し上げられる。
【0069】
第1平板部(51)の軸受部(64)には、駆動軸(20)の偏心部(21)が挿入されている。偏心部(21)の上端面には、吐出通路(22)の入口端が開口している。この吐出通路(22)は、その入口端付近がやや大径に形成され、その内部に筒状シール(23)とコイルばね(24)とが設置されている。筒状シール(23)は、その内径が吐出口(63)の直径よりも僅かに大きい管状に形成され、コイルばね(24)によって第1平板部(51)の背面に押し付けられている。また、吐出通路(22)の出口端は、駆動軸(20)の側面における固定子(17)と下部軸受(19)の間に開口している(図1参照)。
【0070】
第1平板部(51)とハウジング(33)の間には、オルダムリング(39)が介設されている。このオルダムリング(39)は、図示しないが、第1平板部(51)と係合する一対のキー部と、ハウジング(33)と係合する一対のキー部とを備え、可動スクロール(50)の自転防止機構を構成している。ここで、シールリング(38)は、その内側が高圧となっており、その外側が低圧(吸入圧)となっている。このためシールリング(38)の内側から外側へ冷凍機油が流出し、この流出した冷凍機油がオルダムリング(39)のキー部へ供給される。
【0071】
図6に示すように、本実施形態のスクロール型流体機械(10)は、冷凍装置の冷媒回路(90)に設けられる。この冷媒回路(90)では、冷媒が循環して蒸気圧縮式冷凍サイクルが行われる。
【0072】
冷媒回路(90)において、スクロール型流体機械(10)は、吐出ポート(74)が凝縮器(91)の一端に接続され、流入ポート(75)が膨張弁(92)を介して凝縮器(91)の他端に接続されている。また、このスクロール型流体機械(10)は、流出ポート(76)が蒸発器(93)の一端に接続され、吸入ポート(73)が蒸発器(93)の他端に接続されている。スクロール型流体機械(10)の第1容積変化部(31)は、冷媒回路(90)の冷媒を圧縮する圧縮機を構成している。一方、その第2容積変化部(32)は、冷媒回路(90)の冷媒を膨張させて動力回収を行う膨張機となっており、膨張弁(92)と共に冷媒の膨張機構を構成している。
【0073】
−運転動作−
スクロール型流体機械(10)において、電動機(16)で発生した回転動力は、駆動軸(20)によって可動スクロール(50)に伝達される。駆動軸(20)の偏心部(21)と係合する可動スクロール(50)は、オルダムリング(39)によって案内され、自転することなく公転運動だけを行う。
【0074】
可動スクロール(50)の公転運動に伴い、蒸発器(93)で蒸発した低圧冷媒が吸入ポート(73)へ吸入される。この低圧冷媒は、吸入逆止弁(35)の弁体(36)を押し下げて第1流体室(71)へ流入する。そして、可動スクロール(50)の第1可動側ラップ(53)が移動するにつれて第1流体室(71)の容積が小さくなり、第1流体室(71)内の冷媒が圧縮される。圧縮された冷媒は、吐出口(63)を通って第1流体室(71)から吐出通路(22)へ流入する。その後、高圧冷媒は、吐出通路(22)から高圧室(13)へ流入し、吐出ポート(74)を通ってケーシング(11)から送り出される。
【0075】
吐出ポート(74)から吐出された高圧冷媒は、凝縮器(91)へ送られて凝縮する。凝縮器(91)で凝縮した冷媒は、膨張弁(92)を通過する際に幾らか減圧された後に流入ポート(75)へ流入する。尚、冷凍装置の運転条件によっては、膨張弁(92)を全開状態に設定し、凝縮器(91)で凝縮した冷媒を殆ど減圧せずに流入ポート(75)へ送り込むようにしてもよい。
【0076】
流入ポート(75)へ流入した冷媒は、第2流体室(72)へ導入されて膨張する。第2流体室(72)内で冷媒が膨張することによって第2可動側ラップ(54)が移動し、第2可動側ラップ(54)が移動するにつれて第2流体室(72)の容積が大きくなる。つまり、第2流体室(72)へ導入された冷媒は、その内部エネルギの一部が第2可動側ラップ(54)を移動させるための動力に変換される。そして、可動スクロール(50)は、電動機(16)で発生した駆動力と、第2容積変化部(32)で冷媒から回収された動力との両方によって駆動される。
【0077】
−実施形態1の効果−
上述のように、本実施形態では、可動スクロール(50)を構成する第1平板部(51)の背面に軸受部(64)を設け、駆動軸(20)の端部を軸受部(64)へ挿入することによって駆動軸(20)を可動スクロール(50)に係合させている。また、本実施形態では、第1可動側ラップ(53)を第1固定側ラップ(42)と噛み合わせて第1流体室(71)を形成する一方、可動スクロール(50)に設けた第2平板部(52)の前面側に第2可動側ラップ(54)を配置し、この第2可動側ラップ(54)を第2固定側ラップ(47)と噛み合わせて第2流体室(72)を形成している。
【0078】
このため、本実施形態によれば、互いに噛み合わされる可動側ラップ(53,54)と固定側ラップ(42,47)を二組備えるスクロール型流体機械(10)においても、可動側ラップと固定側ラップを一組だけ備える一般的なスクロール型流体機械と同様に、第1平板部(51)の前面の中央部に第1可動側ラップ(53)を配置することが可能となる。そして、一つの平板部の両面にラップを設ける構成を採る場合に比べ、渦巻き状の第1可動側ラップ(53)及び第2可動側ラップ(54)における巻き始め側の最内径を小さく設定でき、第1流体室(71)及び第2流体室(72)の最小容積を小さく設定できる。
【0079】
従って、本実施形態によれば、ある程度の圧縮比又は膨張比を確保した場合でも、第1可動側ラップ(53)及び第2可動側ラップ(54)の巻き終わり側の最外径を小さく設定することが可能となり、可動スクロール(50)を小型化できる。この結果、スクロール型流体機械(10)を小型化することができる。
【0080】
また、本実施形態では、背面に軸受部(64)が突設された第1平板部(51)と一体に第1可動側ラップ(53)を形成している。つまり、第1平板部(51)と第1可動側ラップ(53)とを一体に形成したものは、可動側と固定側のラップを一組だけ備える一般的なスクロール型流体機械の可動スクロールと殆ど同じ形状となっている。このため、一体形成された第1平板部(51)及び第1可動側ラップ(53)を製造する際には、一般的なスクロール型流体機械の可動スクロールを加工するための設備や方法を利用することができる。従って、本実施形態によれば、第1平板部(51)及び第1可動側ラップ(53)の加工コストが上昇するのを回避でき、スクロール型流体機械(10)の製造コストの上昇を抑制できる。
【0081】
また、本実施形態では、第1平板部(51)の前面側に第1可動側ラップ(53)を一体形成し、第2平板部(52)の前面側に第2可動側ラップ(54)を一体形成している。従って、一つの平板部の両面に可動側ラップを形成する上記従来のスクロール型流体機械に比べ、可動スクロール(50)の加工工程を簡素化することができ、スクロール型流体機械(10)の製造コストを削減できる。
【0082】
また、本実施形態によれば、一方の流体室(71,72)において流体を膨張させ、この流体の内部エネルギを回転動力として回収でき、更には回収した動力を他方の流体室(71,72)における流体の圧縮に利用することができる。この結果、スクロール型流体機械(10)で流体を圧縮する際に外部から供給すべき動力を削減でき、スクロール型流体機械(10)の効率を向上させることができる。
【0083】
また、本実施形態では、第1容積変化部(31)が圧縮機を構成し、この第1容積変化部(31)の上方に形成された第2容積変化部(32)が膨張機を構成している。このため、本実施形態によれば、オルダムリング(39)とハウジング(33)及び第1平板部(51)との間の潤滑を確実に行うことができ、スクロール型流体機械(10)の信頼性を確保することができる。
【0084】
この点について説明する。本実施形態のスクロール型流体機械(10)において、第1容積変化部(31)を膨張機として用いる場合を仮定する。この場合、第1流体室(71)へ導入された液冷媒が膨張して気液二相状態となり、この気液二相状態の冷媒が第1流体室(71)から送り出されることになる。一方、スクロール型流体機械(10)は、第1流体室(71)から送り出された冷媒が低圧室(12)内へも流入する構造となっている(図2参照)。このため、第1流体室(71)から送り出された液冷媒がオルダムリング(39)の付近へも侵入してしまい、オルダムリング(39)と第1平板部(51)等との間で潤滑不良に陥る可能性がある。
【0085】
これに対し、本実施形態では、第2容積変化部(32)が膨張機として用いられている。そして、流入ポート(75)及び流出ポート(76)が第2固定側部材(46)に接続され、低圧室(12)へは第2流体室(72)を通過する冷媒が流入しない構成となっている。また、圧縮機を構成する第1容積変化部(31)の第1流体室(71)へ吸入される冷媒は、通常の運転状態では完全にガス冷媒となっている。つまり、オルダムリング(39)の近傍へは、ガス冷媒だけが流れ込むこととなる。このため、オルダムリング(39)と第1平板部(51)等との間では、油膜が確保されて適切に潤滑が行われる。
【0086】
また、オルダムリング(39)の近傍へ供給された冷凍機油は、その一部が第1流体室(71)へ吸入される冷媒に混入するが、この冷凍機油は吐出ガスと共に第1流体室(71)から吐出される。第1流体室(71)から出た冷凍機油は、液冷媒中ではなくガス冷媒中に油滴の状態で存在している。このため、吐出ガスと冷凍機油とを容易に分離することができ、ケーシング(11)内における冷凍機油の貯留量を確保できる。
【0087】
このように、第2容積変化部(32)を膨張機として用いることとすると、一般的なスクロール圧縮機と同様の給油方式を採用した場合であっても、オルダムリング(39)とハウジング(33)及び第1平板部(51)との間の潤滑を確実に行うことができる。従って、本実施形態によれば、スクロール型流体機械(10)の信頼性を充分に確保することができる。
【0088】
《発明の実施形態2》
本発明の実施形態2について説明する。本実施形態は、上記実施形態1において、本体機構(30)の構成を変更したものである。ここでは、本実施形態のスクロール型流体機械(10)について、上記実施形態1と異なる点を説明する。
【0089】
図7に示すように、本実施形態の本体機構(30)では、上記実施形態1と同様に、第1容積変化部(31)が圧縮機を構成し、第2容積変化部(32)が膨張機を構成している。ただし、この本体機構(30)では、第2容積変化部(32)により構成される膨張機の容量が可変となっている。また、これに伴い、本実施形態の冷媒回路(90)では、膨張弁(92)が省略されている。
【0090】
上記本体機構(30)では、第2固定側部材(46)の第3平板部(49)に導入用開口としての流入口(66,68,69)が3つ形成されている。これら3つの流入口(66,68,69)は、第2固定側ラップ(47)の径方向へ互いに異なる位置に配置され、第3平板部(49)を貫通している。
【0091】
具体的に、第1流入口(66)は、第2固定側ラップ(47)の巻き始め側の端部の近傍に開口している。第2流入口(68)と第3流入口(69)とは、それぞれ第1流入口(66)から第2固定側ラップ(47)の径方向へ離れた位置に形成されている。第3流入口(69)と第1流入口(66)の距離は、第2流入口(68)と第1流入口(66)の距離よりも長くなっている。なお、これら3つの流入口(66,68,69)は、一直線上に並んで配置されている必要はない。
【0092】
各流入口(66,68,69)は、第3平板部(49)の下面に開口し、第2流体室(72)と連通している。また、上述のように、各流入口(66,68,69)は、第2固定側ラップ(47)の径方向へ互いに異なる位置に形成されている。このため、各流入口(66,68,69)と連通する第2流体室(72)は、それぞれの容積が互いに相違している。
【0093】
本実施形態の流入ポート(75)は、その終端側で3つに分岐されている。流入ポート(75)の各終端部は、第1の終端部が第1流入口(66)に、第2の終端部が第2流入口(68)に、第3の終端部が第3流入口(69)にそれぞれ挿入されている。一方、流入ポート(75)の始端部は、冷媒回路(90)の配管を介して凝縮器(91)に接続されている。
【0094】
上記流入ポート(75)には、四方弁(85)が設けられている。この四方弁(85)は、流入ポート(75)の分岐箇所に配置されている。四方弁(85)は、開閉機構を構成しており、第1〜第3の各流入口(66,67,68)を個別に開閉する。これら3つの流入口(66,67,68)のうち四方弁(85)によって開口状態に設定されたものが、流入ポート(75)の始端部と連通する。そして、凝縮器(91)で凝縮した冷媒は、開口状態に設定された流入口(66,67,68)を通って第2流体室(72)へ流入する。
【0095】
上述のように、四方弁(85)を操作すると、第2流体室(72)へ向けて冷媒が通過する流入口(66,68,69)が変更され、凝縮器(91)からの冷媒が導入される時点での第2流体室(72)の容積が変化する。冷媒の導入時点における第2流体室(72)の容積は、第1流入口(66)を通じて冷媒を導入する場合が最も小さく、第2流入口(68)を通じて冷媒を導入する場合、第3流入口(69)を通じて冷媒を導入する場合の順で大きくなる。言い換えると、第2容積変化部(32)における第2流体室(72)の閉じ込み容積が順に大きくなる。従って、第2容積変化部(32)により構成される膨張機の容量は、第1流入口(66)を通じて冷媒を導入する場合が最小で、第2流入口(68)を通じて冷媒を導入する場合、第3流入口(69)を通じて冷媒を導入する場合の順で段階的に大きくなる。
【0096】
尚、第2流入口(68)を開口状態に設定する場合は、同時に第1流入口(66)を開口状態に設定するのが望ましい。第1流入口(66)を開口状態に設定しておけば、第2流入口(68)よりも中央寄りの第2流体室(72)における内圧の異常低下を防止できる。同様に、第3流入口(69)を開口状態に設定する場合は、同時に第1流入口(66)及び第2流入口(68)を開口状態に設定するのが望ましい。第1流入口(66)及び第2流入口(68)を開口状態に設定しておけば、第3流入口(69)よりも中央寄りの第2流体室(72)における内圧の異常低下を防止できる。
【0097】
−実施形態2の効果−
一般に、膨張機が接続された冷媒回路で冷凍サイクルを行う場合、膨張機に要求される押しのけ量は、冷凍サイクルの運転条件によって変化する。このため、容量が固定の膨張機を冷媒回路に設ける場合には、膨張機の上流に膨張弁を設けたり、膨張機をバイパスする配管を設ける必要があった。つまり、膨張機の容量が要求値に対して過大である場合には、膨張弁で冷媒を予め減圧してから膨張機へ導入し、逆に膨張機の容量が要求値に対して過小である場合には、冷媒の一部をバイパス用の配管へ流すようにしており、何れの場合も冷媒から充分な動力を回収できない状態に陥っていた。
【0098】
これに対し、本実施形態のスクロール型流体機械(10)では、第2容積変化部(32)により構成される膨張機の容量が可変となっている。このため、冷凍サイクルの運転条件にかかわらず、凝縮器(91)で凝縮した冷媒の全てを減圧せずに第2流体室(72)へ導入することができ、冷媒から確実に動力を回収して電動機(16)の消費電力を低減することができる。
【0099】
−実施形態2の変形例−
本実施形態では、第2容積変化部(32)により構成される膨張機の容量だけでなく、第1容積変化部(31)により構成される圧縮機の容量も可変にしてもよい。
【0100】
圧縮機としての第1容積変化部(31)を容量可変とする構成については、次のようなものが挙げられる。先ず、電動機(16)へ供給する交流の周波数をインバータによって変化させ、駆動軸(20)の回転速度を変化させることによって、第1容積変化部(31)の容量を変更してもよい。また、スクロール型流体機械(10)の吐出ポート(74)と吸入ポート(73)を直結するバイパス通路を設け、このバイパス通路を通って吐出ポート(74)から吸入ポート(73)へ直接送り返される冷媒の流量を調節することによって、第1容積変化部(31)の容量を変更してもよい。また、蒸発器(93)とスクロール型流体機械(10)の吸入ポート(73)との間に膨張弁を設け、この膨張弁の開度を調節して吸入ポート(73)へ流入する冷媒の密度を変化させることによって、第1容積変化部(31)の容量を変更してもよい。
【0101】
《発明の実施形態3》
本発明の実施形態3について説明する。本実施形態は、上記実施形態1において、本体機構(30)の構成を変更したものである。ここでは、本実施形態のスクロール型流体機械(10)について、上記実施形態1と異なる点を説明する。
【0102】
本実施形態の本体機構(30)において、第2容積変化部(32)は、圧縮機を構成している。つまり、この本体機構(30)では、第1容積変化部(31)と第2容積変化部(32)の両方が圧縮機を構成している。
【0103】
具体的に、上記本体機構(30)において、第2固定側ラップ(47)は、その渦巻き方向が第1固定側ラップ(42)の渦巻き方向と同方向になっている。つまり、右巻の渦巻き壁状に形成された第1固定側ラップ(42)と同様に(図3参照)、第2固定側ラップ(47)も右巻の渦巻き壁状に形成されている。
【0104】
また、上記本体機構(30)では、第2容積変化部(32)における圧縮比が第1容積変化部(31)における圧縮比よりも大きくなっている。つまり、第2流体室(72)における最小容積に対する最大容積の比は、第1流体室(71)における最小容積に対する最大容積の比よりも大きな値に設定されている。尚、ここでは、第2容積変化部(32)における圧縮比を第1容積変化部(31)における圧縮比よりも大きく設定しているが、スクロール型流体機械(10)の使用条件によっては、第2容積変化部(32)における圧縮比が第1容積変化部(31)における圧縮比よりも小さく設定される場合もあり得る。
【0105】
図8に示すように、上記本体機構(30)では、実施形態1の吸入ポート(73)が第1吸入ポート(73)を構成し、実施形態1の吐出ポート(74)が第1吐出ポート(74)を構成している。また、この本体機構(30)では、実施形態1の吐出口(63)が第1吐出口(63)を構成し、実施形態1の流入口(66)が第2吐出口(67)を構成している。また、この本体機構(30)では、実施形態1の流出ポート(76)が第2吸入ポート(77)を構成し、実施形態1の流入ポート(75)が第2吐出ポート(78)を構成している。
【0106】
本実施形態のスクロール型流体機械(10)が設けられる冷媒回路(90)には、膨張弁(92,95)と蒸発器(93,96)とが2つずつ設けられている。この冷媒回路(90)において、第2蒸発器(96)での冷媒蒸発温度は、第1蒸発器(93)での冷媒蒸発温度よりも低く設定されている。
【0107】
冷媒回路(90)において、スクロール型流体機械(10)の第1吐出ポート(74)及び第2吐出ポート(78)は、凝縮器(91)の一端に接続されている。凝縮器(91)の他端は、第1膨張弁(92)と第2膨張弁(95)とに接続されている。第1蒸発器(93)は、その一端が第1膨張弁(92)に接続され、その他端がスクロール型流体機械(10)の第1吸入ポート(73)に接続されている。第2蒸発器(96)は、その一端が第2膨張弁(95)に接続され、その他端がスクロール型流体機械(10)の第2吸入ポート(77)に接続されている。
【0108】
スクロール型流体機械(10)では、第1容積変化部(31)で圧縮された冷媒が第1吐出ポート(74)から吐出され、第2容積変化部(32)で圧縮された冷媒が第2吐出ポート(78)から吐出される。第1吐出ポート(74)及び第2吐出ポート(78)からは、同じ圧力の冷媒が吐出される。第1吐出ポート(74)及び第2吐出ポート(78)から吐出された冷媒は、凝縮器(91)で凝縮し、その後に凝縮器(91)から流出して二手に分流される。
【0109】
分流された一方の冷媒は、第1膨張弁(92)で減圧された後に第1蒸発器(93)で蒸発し、第1吸入ポート(73)を通じて第1容積変化部(31)の第1流体室(71)へ吸入される。一方、分流された残りの冷媒は、第2膨張弁(95)で減圧された後に第2蒸発器(96)で蒸発し、第2吸入ポート(77)を通じて第2容積変化部(32)の第2流体室(72)へ吸入される。その際、冷媒回路(90)では、第2膨張弁(95)の開度が第1膨張弁(92)の開度よりも小さく設定され、第2蒸発器(96)での冷媒蒸発圧力が第1蒸発器(93)での冷媒蒸発圧力よりも低く設定される。
【0110】
このように、本実施形態によれば、冷媒蒸発温度の相違する2つの蒸発器(93,96)が設けられた冷媒回路(90)においても、1台のスクロール型流体機械(10)だけで冷媒の圧縮を行うことができ、冷凍装置の構成を簡素化できる。
【0111】
また、本実施形態によれば、互いに噛み合わされる可動側ラップ(53,54)と固定側ラップ(42,47)を二組備えるスクロール型流体機械(10)においても、可動側ラップと固定側ラップを一組だけ備える一般的なスクロール型流体機械と同様に、第1平板部(51)の前面の中央部に第1可動側ラップ(53)を配置することが可能となる。この点は、上記実施形態1と同様である。従って、本実施形態によれば、上記実施形態1と同様に、ある程度の圧縮比を確保した上で第1可動側ラップ(53)及び第2可動側ラップ(54)の巻き終わり側の最外径を小さく設定でき、可動スクロール(50)の小型化が可能となる。
【0112】
−実施形態3の変形例−
本実施形態のスクロール型流体機械(10)は、次のような構成の冷媒回路(90)に設けられていてもよい。
【0113】
図9に示すように、本変形例の冷媒回路(90)にも、膨張弁(92,95)と蒸発器(93,96)とが2つずつ設けられている。また、第2蒸発器(96)での冷媒蒸発温度が、第1蒸発器(93)での冷媒蒸発温度よりも低く設定されている点も、図8に示すものと同じである。
【0114】
本変形例の本体機構(30)では、第1容積変化部(31)が低段側の圧縮機を、第2容積変化部(32)が高段側の圧縮機をそれぞれ構成している。このスクロール型流体機械(10)では、第1容積変化部(31)と第2容積変化部(32)とで圧縮比が相違している必要はなく、両者の圧縮比を同じ値に設定してもよい。
【0115】
本変形例において、スクロール型流体機械(10)の第1吐出ポート(74)は、凝縮器(91)の一端に接続されている。凝縮器(91)の他端は、分岐して第1膨張弁(92)と第2膨張弁(95)とに接続されている。第1蒸発器(93)は、その一端が第1膨張弁(92)に接続され、その他端がスクロール型流体機械(10)の第1吸入ポート(73)に接続されている。第2蒸発器(96)は、その一端が第2膨張弁(95)に接続され、その他端がスクロール型流体機械(10)の第2吸入ポート(77)に接続されている。また、スクロール型流体機械(10)の第2吐出ポート(78)は、第1蒸発器(93)と第1吸入ポート(73)の間の吸入配管に接続されている。
【0116】
本変形例では、冷媒回路(90)における冷媒の総循環量のうち、例えば90%が第1蒸発器(93)を流れ、残りの10%が第2蒸発器(96)を流れる。
【0117】
スクロール型流体機械(10)では、第1容積変化部(31)で圧縮された冷媒が第1吐出ポート(74)から吐出され、第2容積変化部(32)で圧縮された冷媒が第2吐出ポート(78)から吐出される。第1吐出ポート(74)からは、第2吐出ポート(78)からよりも高い圧力の冷媒が吐出される。第1吐出ポート(74)から吐出された冷媒は、凝縮器(91)で凝縮し、その後に凝縮器(91)から流出して二手に分流される。
【0118】
分流された一方の冷媒は、第1膨張弁(92)で減圧された後に第1蒸発器(93)で蒸発し、第2吐出ポート(78)から吐出された冷媒と合流してから第1吸入ポート(73)を通って第1容積変化部(31)の第1流体室(71)へ吸入される。一方、凝縮器(91)の下流で分流された残りの冷媒は、第2膨張弁(95)で減圧された後に第2蒸発器(96)で蒸発し、第2吸入ポート(77)を通じて第2容積変化部(32)の第2流体室(72)へ吸入される。その際、冷媒回路(90)では、第2膨張弁(95)の開度が第1膨張弁(92)の開度よりも小さく設定され、第2蒸発器(96)での冷媒蒸発圧力が第1蒸発器(93)での冷媒蒸発圧力よりも低く設定される。また、第2吐出ポート(78)から吐出された冷媒は、第1吸入ポート(73)から第1容積変化部(31)に吸入され、2段圧縮される。
【0119】
ここで、図8に示す冷媒回路(90)において、第1蒸発器(93)と第2蒸発器(96)とで冷媒蒸発温度の差が大きい場合(例えばこの冷媒回路(90)を冷蔵と冷凍、あるいは空調と冷凍などに適用する場合)には、第2容積変化部(32)の必要圧縮比が大きくなり、冷媒の漏れ量が増えたり、吐出温度が高くなりすぎたりするおそれがある。
【0120】
それに対し、図9に示す本変形例の冷媒回路(90)では、第2蒸発器(96)で蒸発した冷媒を第2容積変化部(32)と第1容積変化部(31)とで順次圧縮する2段圧縮を採用している。このため、本変形例のスクロール型流体機械(10)では、第2蒸発器(96)で蒸発した冷媒を第2容積変化部(32)だけで圧縮する場合に比べ、第2容積変化部(32)を過度に大きな圧縮比で運転せずに済むこととなり、第2容積変化部(32)における冷媒の漏れ量を抑えることができる。また、第2容積変化部(32)から吐出される冷媒の温度を低く抑えることができ、第2容積変化部(32)からの吐出冷媒温度の高くなりすぎることに起因する冷媒自体や潤滑油の劣化を回避できる。
【0121】
一方、第1蒸発器(93)と第2蒸発器(96)とで冷媒蒸発温度の差が小さい場合は、第2容積変化部(32)に要求される圧縮比もそれほど大きくならない。このため、図9に示すスクロール型流体機械(10)のように第2容積変化部(32)と第1容積変化部(31)と2段階に分けて圧縮すると、、第2容積変化部(32)と第1容積変化部(31)とでそれぞれ吐出過程を経ることに起因するロスの問題が大きくなるおそれがある。従って、このような場合には、図8に示すような構成、即ち第1蒸発器(93)で蒸発した冷媒を第1容積変化部(31)において、第2蒸発器(96)で蒸発した冷媒を第2容積変化部(32)においてそれぞれ別々に圧縮する構成を採用するほうが望ましい。
【0122】
そこで、図10に示すように冷媒回路(90)を構成し、図8に示す冷媒回路で可能な運転と、図9に示す冷媒回路で可能な運転とを切り換え可能としてもよい。この図10に示す冷媒回路(90)では、図9に示す冷媒回路(90)に三方切換弁(97)を追加したものである。三方切換弁(97)は、第2吐出ポート(78)に接続された吐出配管に設けられている。この吐出配管において、三方切換弁(97)は、第1蒸発器(93)と第1吸入ポート(73)の間の吸入配管が接続される位置よりも第2吐出ポート(78)寄りの位置に設けられている。また、三方切換弁(97)は、第1吐出ポート(74)に接続された吐出配管に接続されている。三方切換弁(97)は、第2吐出ポート(78)側から流入した冷媒の送出先を、第1吸入ポート(73)側と第1吐出ポート(74)とに切り換え可能となっている。このようにすると、図8に示す冷媒回路で可能な運転と、図9に示す冷媒回路で可能な運転とを切り換えることができ、冷媒回路の運転条件等にあわせた運転が可能になる。
【0123】
《発明の実施形態4》
本発明の実施形態4について説明する。本実施形態のスクロール型流体機械(10)は、上記実施形態3のものと同様に構成されている。つまり、本実施形態のスクロール型流体機械(10)では、第1容積変化部(31)と第2容積変化部(32)の両方が圧縮機を構成しており、第2容積変化部(32)における圧縮比が第1容積変化部(31)における圧縮比よりも大きくなっている。
【0124】
図11に示すように、本実施形態のスクロール型流体機械(10)が設けられる冷媒回路(90)には、凝縮器(91,94)と膨張弁(92,95)とが2つずつ設けられている。この冷媒回路(90)において、第2凝縮器(94)での冷媒凝縮温度は、第1凝縮器(91)での冷媒凝縮温度よりも高く設定されている。
【0125】
冷媒回路(90)において、第1凝縮器(91)は、その一端がスクロール型流体機械(10)の第1吐出ポート(74)に接続され、その他端が第1膨張弁(92)の一端に接続されている。一方、第2凝縮器(94)は、その一端がスクロール型流体機械(10)の第2吐出ポート(78)に接続され、その他端が第2膨張弁(95)の一端に接続されている。第1膨張弁(92)及び第2膨張弁(95)の一端は、何れも蒸発器(93)の一端に接続されている。蒸発器(93)の他端は、スクロール型流体機械(10)の第1吸入ポート(73)及び第2吸入ポート(77)に接続されている。
【0126】
スクロール型流体機械(10)では、第1容積変化部(31)で圧縮された冷媒が第1吐出ポート(74)から吐出され、第2容積変化部(32)で圧縮された冷媒が第2吐出ポート(78)から吐出される。第2吐出ポート(78)から吐出された冷媒の圧力は、第1吐出ポート(74)から吐出された冷媒の圧力よりも高くなっている。第1吐出ポート(74)から吐出された冷媒は、第1凝縮器(91)で凝縮した後に第1膨張弁(92)で減圧される。一方、第2吐出ポート(78)から吐出された冷媒は、第2凝縮器(94)で凝縮した後に第2膨張弁(95)で減圧される。
【0127】
第1膨張弁(92)で減圧された冷媒と第2膨張弁(95)で減圧された冷媒とは、合流した後に蒸発器(93)へ導入されて蒸発し、その後に二手に分流される。分流された一方の冷媒は、第1吸入ポート(73)を通じて第1容積変化部(31)の第1流体室(71)へ吸入される。一方、分流された残りの冷媒は、第2吸入ポート(77)を通じて第2容積変化部(32)の第2流体室(72)へ吸入される。
【0128】
このように、本実施形態によれば、冷媒凝縮温度の相違する2つの凝縮器(91,94)が設けられた冷媒回路(90)においても、1台のスクロール型流体機械(10)だけで冷媒の圧縮を行うことができ、冷凍装置の構成を簡素化できる。
【0129】
《発明の実施形態5》
本発明の実施形態5について説明する。本実施形態のスクロール型流体機械(10)は、上記実施形態3のものと同様に構成されている。つまり、本実施形態のスクロール型流体機械(10)では、第1容積変化部(31)と第2容積変化部(32)の両方が圧縮機を構成している。ただし、このスクロール型流体機械(10)では、第1容積変化部(31)と第2容積変化部(32)とで圧縮比が相違している必要はなく、両者の圧縮比を同じ値に設定してもよい。
【0130】
図12に示すように、本実施形態のスクロール型流体機械(10)が設けられる冷媒回路(90)には、凝縮器(91)、膨張弁(92)、及び蒸発器(93)の他に中間熱交換器(97)が設けられている。この冷媒回路(90)では二段圧縮冷凍サイクルが行われる。上記スクロール型流体機械(10)は、第1容積変化部(31)が低段側の圧縮機を構成し、第2容積変化部(32)が高段側の圧縮機を構成する。
【0131】
冷媒回路(90)において、スクロール型流体機械(10)は、第1吐出ポート(74)が中間熱交換器(97)の一端に接続され、第2吸入ポート(77)が中間熱交換器(97)の他端に接続されている。スクロール型流体機械(10)の第2吐出ポート(78)は、凝縮器(91)の一端に接続されている。凝縮器(91)の他端は、膨張弁(92)を介して蒸発器(93)の一端に接続されている。蒸発器(93)の他端は、スクロール型流体機械(10)の第1吸入ポート(73)に接続されている。
【0132】
スクロール型流体機械(10)は、蒸発器(93)で蒸発した冷媒を第1吸入ポート(73)から吸入する。第1吸入ポート(73)へ吸入された冷媒は、第1容積変化部(31)の第1流体室(71)へ吸い込まれて圧縮される。第1容積変化部(31)で圧縮された冷媒は、第1吐出ポート(74)から吐出され、中間熱交換器(97)で冷却された後に第2吸入ポート(77)からスクロール型流体機械(10)へ再び吸入される。第2吸入ポート(77)へ吸入された冷媒は、第2容積変化部(32)の第2流体室(72)へ吸い込まれて更に圧縮される。第2容積変化部(32)で圧縮された冷媒は、第2吐出ポート(78)から吐出され、凝縮器(91)で凝縮する。その後、冷媒は、膨張弁(92)で減圧されてから蒸発器(93)へ流入して蒸発する。
【0133】
このように、本実施形態によれば、1台のスクロール型流体機械(10)だけで低段側の圧縮機と高段側の圧縮機の両方を構成することができ、二段圧縮冷凍サイクルを行う冷凍装置の構成を簡素化できる。
【0134】
また、本実施形態によれば、互いに噛み合わされる可動側ラップ(53,54)と固定側ラップ(42,47)を二組備えるスクロール型流体機械(10)においても、可動側ラップと固定側ラップを一組だけ備える一般的なスクロール型流体機械と同様に、第1平板部(51)の前面の中央部に第1可動側ラップ(53)を配置することが可能となる。この点は、上記実施形態3と同様である。従って、本実施形態によれば、上記実施形態3と同様に、ある程度の圧縮比を確保した上で第1可動側ラップ(53)及び第2可動側ラップ(54)の巻き終わり側の最外径を小さく設定でき、可動スクロール(50)の小型化が可能となる。
【0135】
−実施形態5の変形例−
本実施形態スクロール型流体機械(10)は、次のような構成の冷媒回路(90)に設けられていてもよい。
【0136】
図13に示すように、本変形例の冷媒回路(90)では、中間熱交換器(97)が省略され、第2膨張弁(95)と気液分離器(98)とが設けられている。そして、図12に示す冷媒回路(90)では中間熱交換器(97)における空気との熱交換によって第2容積変化部(32)へ吸入される冷媒のエンタルピを低下させているのに対し、この図13に示す冷媒回路(90)では気液分離器(98)からのガス冷媒を混入させることによって第2容積変化部(32)の吸入冷媒のエンタルピを低下させている。
【0137】
本変形例の冷媒回路(90)において、スクロール型流体機械(10)は、第1吐出ポート(74)が第2吸入ポート(77)に接続されている。スクロール型流体機械(10)の第2吐出ポート(78)は、凝縮器(91)の一端に接続されている。凝縮器(91)の他端は、第1膨張弁(92)を介して気液分離器(98)の頂部に接続されている。気液分離器(98)の頂部は、第1吐出ポート(74)と第2吸入ポート(77)を繋ぐ配管にも接続されている。気液分離器(98)の底部は、第2膨張弁(95)を介して蒸発器(93)の一端に接続されている。蒸発器(93)の他端は、スクロール型流体機械(10)の第1吸入ポート(73)に接続されている。
【0138】
スクロール型流体機械(10)は、蒸発器(93)で蒸発した冷媒を第1吸入ポート(73)から吸入する。第1吸入ポート(73)へ吸入された冷媒は、第1容積変化部(31)の第1流体室(71)へ吸い込まれて圧縮され、その後に第1吐出ポート(74)から吐出される。第1吐出ポート(74)から吐出された冷媒は、気液分離器(98)からの比較的エンタルピの低いガス冷媒と合流し、その後に第2吸入ポート(77)から第2容積変化部(32)の第2流体室(72)へ吸い込まれて更に圧縮される。第2容積変化部(32)で圧縮された冷媒は、第2吐出ポート(78)から吐出され、凝縮器(91)で凝縮する。凝縮器(91)で凝縮した冷媒は、第1膨張弁(92)を通過する際に減圧されて気液二相状態となり、その後に気液分離器(98)へ流入する。気液分離器(98)から流出した液冷媒は、第2膨張弁(95)を通過する際に更に減圧され、その後に蒸発器(93)へ流入して蒸発する。
【0139】
本変形例の冷媒回路(90)では、気液分離器(98)で分離された液冷媒だけが蒸発器(93)へ供給される。このため、蒸発器(93)において冷媒が吸熱する熱量を増大させることができ、冷却能力を向上させることができる。
【0140】
《発明の実施形態6》
本発明の実施形態6について説明する。本実施形態は、上記実施形態3において、本体機構(30)の構成を変更したものである。ここでは、本実施形態のスクロール型流体機械(10)について、上記実施形態3と異なる点を説明する。
【0141】
図14に示すように、本実施形態のスクロール型流体機械(10)では、第1容積変化部(31)と第2容積変化部(32)の両方が圧縮機を構成している。この点は、上記実施形態3と同様である。ただし、このスクロール型流体機械(10)では、第1容積変化部(31)における圧縮比と第2容積変化部(32)における圧縮比とが同じ値に設定されている。
つまり、本実施形態の本体機構(30)において、第1流体室(71)及び第2流体室(72)は、それぞれの容積についての最小値に対する最大値の比が互いに等しくなっている。
【0142】
本実施形態のスクロール型流体機械(10)では、第2吸入ポート(77)及び第2吐出ポート(78)が省略されている。このスクロール型流体機械(10)のケーシング(11)には、第1吸入ポート(73)及び第1吐出ポート(74)だけが設けられている。そして、図14には図示しないが、このスクロール型流体機械(10)は、その第1吸入ポート(73)が冷媒回路の蒸発器に配管接続され、その第1吐出ポート(74)が冷媒回路の凝縮器に配管接続されている。
【0143】
本実施形態の本体機構(30)では、第3平板部(49)の上面に吸入口(79)が開口している。第2容積変化部(32)の第2流体室(72)は、この吸入口(79)を介して低圧室(12)と連通可能になっている。また、上記本体機構(30)において、第2吐出口(67)は、第3平板部(49)ではなく第2平板部(52)に形成されている。具体的に、この第2吐出口(67)は、第2可動側ラップ(54)の巻き始め側端部の近傍に開口し、第2平板部(52)を貫通している。
【0144】
上記スクロール型流体機械(10)において、電動機(16)で可動スクロール(50)を駆動すると、第1吸入ポート(73)へガス冷媒が吸入される。第1吸入ポート(73)からケーシング(11)内へ流入したガス冷媒は、その一部が第1容積変化部(31)の第1流体室(71)へ吸入され、残りが低圧室(12)及び吸入口(79)を通って第2容積変化部(32)の第2流体室(72)へ吸入される。
【0145】
第1流体室(71)へ吸入された冷媒は、第1可動側ラップ(53)の移動に伴って圧縮され、第1吐出口(63)を通って吐出通路(22)へ流入する。一方、第2流体室(72)へ吸入された冷媒は、第2可動側ラップ(54)の移動に伴って圧縮され、第2吐出口(67)及び第1吐出口(63)を通って吐出通路(22)へ流入する。第1流体室(71)及び第2流体室(72)から吐出された冷媒は、吐出通路(22)を通って高圧室(13)へ流入し、第1吐出ポート(74)からケーシング(11)の外部へ吐出される。
【0146】
−実施形態6の効果−
ここで、可動側と固定側のラップを1つずつ備える一般的なスクロール圧縮機において、その押しのけ量を増大させるためにラップ高さを高くすると、それに伴ってラップの加工精度を確保しにくくなる等の理由からラップの加工が困難となる。これに対し、本実施形態の本体機構(30)は、第1固定側ラップ(42)と第1可動側ラップ(53)の間の第1流体室(71)と、第2固定側ラップ(47)と第2可動側ラップ(54)の間の第2流体室(72)との両方へ冷媒を吸入して圧縮している。このため、各ラップ(42,47,53,54)の高さを比較的低く保ちつつ、本体機構(30)全体としての押しのけ量を充分に確保できる。従って、本実施形態によれば、各ラップ(42,47,53,54)の加工性を損なうことなく、スクロール型流体機械(10)の押しのけ量を大きく設定することができる。
【0147】
また、本実施形態の本体機構(30)では、例えば第1固定側ラップ(42)及び第1可動側ラップ(53)の高さは変更せずに第2固定側ラップ(47)及び第2可動側ラップ(54)の高さを変更するだけで、押しのけ量を異なる値に設定可能である。従って、本実施形態によれば、押しのけ量の異なる複数種類のスクロール型流体機械(10)を製造する場合であっても、それに伴う部品の種類の増加を抑制でき、スクロール型流体機械(10)の製造コストを低減できる。
【0148】
《発明の実施形態7》
本発明の実施形態7について説明する。本実施形態は、上記実施形態1において、本体機構(30)の構成を変更したものである。ここでは、本実施形態のスクロール型流体機械(10)について、上記実施形態1と異なる点を説明する。
【0149】
図15に示すように、本実施形態の本体機構(30)において、第3平板部(49)は、第2平板部(52)よりもやや小径の円板状に形成されて可動スクロール(50)に取り付けられている。つまり、この本体機構(30)では、第2固定側部材(46)ではなく可動スクロール(50)に第3平板部(49)が設けられている。この本体機構(30)において、第3平板部(49)は、第2平板部(52)や第2可動側ラップ(54)と共に公転運動を行い、その下面が第2固定側ラップ(47)の上端面と摺接する。
【0150】
上記本体機構(30)において、第2固定側部材(46)は、第2外周部(48)と第2固定側ラップ(47)とによって構成されている。この第2固定側部材(46)では、第2外周部(48)の内周面から第2固定側ラップ(47)が片持ち梁状に突き出ている。つまり、この第2固定側部材(46)は、第1固定側部材(41)の形状(図3参照)と同じような形状に形成されている。
【0151】
上記本体機構(30)において、第1容積変化部(31)は、可動スクロール(50)の第1平板部(51)、第2平板部(52)、及び第1可動側ラップ(53)と、第1固定側ラップ(42)を備える固定スクロール(40)の第1固定側部材(41)とによって形成される。この点は上記実施形態1と同様である。一方、第2容積変化部(32)は、上記実施形態1とは異なり、可動スクロール(50)の第2平板部(52)、第3平板部(49)、及び第2可動側ラップ(54)と、第2固定側ラップ(47)を備える固定スクロール(40)の第2固定側部材(46)とによって形成される。
【0152】
上記本体機構(30)には、カバー部材(80)が設けられている。このカバー部材(80)は、円形の皿を下向きに伏せたような形状に形成されており、第2固定側部材(46)に取り付けられて第3平板部(49)の上方を覆っている。カバー部材(80)と第3平板部(49)の間には、シールリング(81)が設けられている。このシールリング(81)は、カバー部材(80)に形成された凹状の円環溝に嵌め込まれ、その下端面が第3平板部(49)材の上面と摺接している。また、シールリング(81)は、第3平板部(49)における流入口(66)の周囲を囲むように配置されている。そして、カバー部材(80)と第2固定側部材(46)の間に形成された空間のうち、シールリング(81)の内側が高圧空間(82)を構成し、シールリング(81)の外側が低圧空間(83)を構成している。
【0153】
上記本体機構(30)において、流入ポート(75)及び流出ポート(76)は、何れもカバー部材(80)に取り付けられている。そして、流入ポート(75)の一端が高圧空間(82)に開口し、流出ポート(76)の一端が低圧空間(83)に開口している。本実施形態のスクロール型流体機械(10)において、流入ポート(75)へ流入した冷媒は、高圧空間(82)へ一旦流入し、その後に流入口(66)を通って第2流体室(72)へ導入される。また、第2流体室(72)から送り出される冷媒は、低圧空間(83)を通って流出ポート(76)へと送り出される。
【0154】
本実施形態の本体機構(30)では、第1平板部(51)と共に第1流体室(71)を区画する第2平板部(52)と、第2平板部(52)と共に第2流体室(72)を区画する第3平板部(49)とを可動スクロール(50)に設けている。第1平板部(51)及び第2平板部(52)には第1流体室(71)の内圧が作用するが、第1平板部(51)に作用する力と第2平板部(52)に作用する力とは、互いに大きさが同じで方向が逆向きとなる。同様に、第2平板部(52)及び第3平板部(49)には第2流体室(72)の内圧が作用するが、第2平板部(52)に作用する力と第3平板部(49)に作用する力とは、互いに大きさが同じで方向が逆向きとなる。このため、第1流体室(71)内の流体が第1平板部(51)に及ぼす力と第2平板部(52)へ及ぼす力は互いに打ち消し合い、第2流体室(72)内の流体が第2平板部(52)に及ぼす力と第3平板部(49)へ及ぼす力も互いに打ち消し合う。
【0155】
従って、本実施形態によれば、各流体室(71,72)内の流体から可動スクロール(50)が受ける力を見かけ上ゼロにすることができ、可動スクロール(50)に作用する軸方向荷重(即ちスラスト荷重)を大幅に低減できる。この結果、可動スクロール(50)が公転運動する際の摩擦損失を大幅に削減することができ、スクロール型流体機械(10)の効率を向上させることができる。
【0156】
ここで、鍔部(65)の底面におけるシールリング(38)の内側には冷凍機油の油圧が作用しており、この油圧によって可動スクロール(50)には上向きの荷重が作用する。また、第3平板部(49)の上面におけるシールリング(81)の内側には高圧空間(82)内のガス圧が作用しており、このガス圧によって可動スクロール(50)には下向きの荷重が作用する。従って、本実施形態によれば、2つのシールリング(38,81)の直径を適切に設定すれば、油圧による上向き荷重とガス圧による下向き荷重とを釣り合わせることができ、可動スクロール(50)に作用するスラスト荷重をゼロにすることも可能である。
【0157】
−実施形態7の変形例−
上述のように、本実施形態は、第3平板部(49)を第2固定側部材(46)とは別体に形成して可動スクロール(50)に設ける構成を、上記実施形態1の本体機構(30)に適用したものである。しかしながら、このような第3平板部(49)を可動スクロール(50)に設ける構成については、その適用対象が上記実施形態1の本体機構(30)に限られる訳ではなく、上記実施形態3〜6の本体機構(30)に対しても適用可能である。つまり、第3平板部(49)を可動スクロール(50)に設ける構成は、第1容積変化部(31)と第2容積変化部(32)の両方が圧縮機を構成するスクロール型流体機械(10)に対しても適用できる。
【0158】
《その他の実施形態》
上記実施形態3〜6では、スクロール型流体機械(10)の本体機構(30)において、第1可動側ラップ(53)及び第1固定側ラップ(42)と第2可動側ラップ(54)及び第2固定側ラップ(47)との両方を同じ渦巻き方向に形成し、第1容積変化部(31)と第2容積変化部(32)の両方が圧縮機を構成するようにしている。しかしながら、第1可動側ラップ(53)及び第1固定側ラップ(42)と第2可動側ラップ(54)及び第2固定側ラップ(47)との両方を同じ渦巻き方向に形成されたスクロール型流体機械(10)は、第1容積変化部(31)と第2容積変化部(32)の両方が圧縮機ではなく膨張機を構成するものであってもよい。
【0159】
また、上記の各実施形態では、第1平板部(51)の背面側に円筒状の軸受部(64)を形成し、駆動軸(20)の上端に設けられた偏心部(21)を軸受部(64)挿入する構造を採っているが、これに代えて次のような構造を採ってもよい。つまり、第1平板部(51)の背面側に円柱状の突起部を設ける一方、駆動軸(20)の上端部に穴部を形成し、第1平板部(51)の突起部を駆動軸(20)の穴部へ挿入することによって、可動スクロール(50)を駆動軸(20)と係合させてもよい。この場合には、第1平板部(51)の背面に突設された突起部が係合部を構成する。
【産業上の利用可能性】
【0160】
以上説明したように、本発明は、流体の圧縮や膨張が行われるスクロール型流体機械について有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定スクロール(40)と、可動スクロール(50)と、該可動スクロール(50)に係合する回転軸(20)と、上記可動スクロール(50)の自転防止機構(39)とを備えるスクロール型流体機械であって、
上記固定スクロール(40)は、第1固定側ラップ(42)を備える第1固定側部材(41)と、第2固定側ラップ(47)を備える第2固定側部材(46)とにより構成され、
上記可動スクロール(50)は、背面に上記回転軸(20)と係合する係合部(64)が設けられて前面が第1固定側ラップ(42)と摺接する第1平板部(51)と、上記第1固定側ラップ(42)と噛み合って第1流体室(71)を形成する第1可動側ラップ(53)と、上記第1可動側ラップ(53)を挟んで第1平板部(51)に対向して背面が第1固定側ラップ(42)と前面が第2固定側ラップ(47)とそれぞれ摺接する第2平板部(52)と、上記第2固定側ラップ(47)と噛み合って第2流体室(72)を形成する第2可動側ラップ(54)とを備え、
上記第2固定側部材(46)には、第2可動側ラップ(54)を挟んで第2平板部(52)に対向して第2可動側ラップ(54)と摺接する第3平板部(49)が設けられているスクロール型流体機械。
【請求項2】
固定スクロール(40)と、可動スクロール(50)と、該可動スクロール(50)に係合する回転軸(20)と、上記可動スクロール(50)の自転防止機構(39)とを備えるスクロール型流体機械であって、
上記固定スクロール(40)は、第1固定側ラップ(42)を備える第1固定側部材(41)と、第2固定側ラップ(47)を備える第2固定側部材(46)とにより構成され、
上記可動スクロール(50)は、背面に上記回転軸(20)と係合する係合部(64)が設けられて前面が第1固定側ラップ(42)と摺接する第1平板部(51)と、上記第1固定側ラップ(42)と噛み合って第1流体室(71)を形成する第1可動側ラップ(53)と、上記第1可動側ラップ(53)を挟んで第1平板部(51)に対向して背面が第1固定側ラップ(42)と前面が第2固定側ラップ(47)とそれぞれ摺接する第2平板部(52)と、上記第2固定側ラップ(47)と噛み合って第2流体室(72)を形成する第2可動側ラップ(54)と、上記第2可動側ラップ(54)を挟んで第2平板部(52)に対向して第2固定側ラップ(47)と摺接する第3平板部(49)とを備えているスクロール型流体機械。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のスクロール型流体機械において、
第1可動側ラップ(53)が第1平板部(51)と一体に形成され、
第2平板部(52)が第1平板部(51)及び第1可動側ラップ(53)と別体に形成されているスクロール型流体機械。
【請求項4】
請求項3に記載のスクロール型流体機械において、
第2可動側ラップ(54)が第2平板部(52)と一体に形成されているスクロール型流体機械。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のスクロール型流体機械において、
第1固定側ラップ(42)及び第1可動側ラップ(53)の渦巻き方向と第2固定側ラップ(47)及び第2可動側ラップ(54)の渦巻き方向とが互いに相違しているスクロール型流体機械。
【請求項6】
請求項5に記載のスクロール型流体機械において、
可動スクロール(50)が公転すると第1流体室(71)内で流体が圧縮されて第2流体室(72)内で流体が膨張するように構成されているスクロール型流体機械。
【請求項7】
請求項6に記載のスクロール型流体機械において、
第3平板部(49)には、第2流体室(72)に連通する導入用開口(66,68,69)が第2固定側ラップ(47)又は第2可動側ラップ(54)の径方向へ異なる位置に複数形成され、
上記各導入用開口(66,68,69)を開閉するための開閉機構(85)を備えているスクロール型流体機械。
【請求項8】
請求項1又は2に記載のスクロール型流体機械において、
第1固定側ラップ(42)及び第1可動側ラップ(53)の渦巻き方向と第2固定側ラップ(47)及び第2可動側ラップ(54)の渦巻き方向とが互いに同じであるスクロール型流体機械。
【請求項9】
請求項8に記載のスクロール型流体機械において、
第1流体室(71)及び第2流体室(72)は、それぞれの容積についての最小値に対する最大値の比が互いに相違しているスクロール型流体機械。
【請求項10】
請求項8に記載のスクロール型流体機械において、
第1流体室(71)及び第2流体室(72)は、それぞれの容積についての最小値に対する最大値の比が互いに等しくなっているスクロール型流体機械。
【請求項11】
請求項8に記載のスクロール型流体機械において、
第1流体室(71)及び第2流体室(72)のうちの何れか一方で圧縮した流体を他方へ導入して更に圧縮するように構成されているスクロール型流体機械。
【請求項1】
固定スクロール(40)と、可動スクロール(50)と、該可動スクロール(50)に係合する回転軸(20)と、上記可動スクロール(50)の自転防止機構(39)とを備えるスクロール型流体機械であって、
上記固定スクロール(40)は、第1固定側ラップ(42)を備える第1固定側部材(41)と、第2固定側ラップ(47)を備える第2固定側部材(46)とにより構成され、
上記可動スクロール(50)は、背面に上記回転軸(20)と係合する係合部(64)が設けられて前面が第1固定側ラップ(42)と摺接する第1平板部(51)と、上記第1固定側ラップ(42)と噛み合って第1流体室(71)を形成する第1可動側ラップ(53)と、上記第1可動側ラップ(53)を挟んで第1平板部(51)に対向して背面が第1固定側ラップ(42)と前面が第2固定側ラップ(47)とそれぞれ摺接する第2平板部(52)と、上記第2固定側ラップ(47)と噛み合って第2流体室(72)を形成する第2可動側ラップ(54)とを備え、
上記第2固定側部材(46)には、第2可動側ラップ(54)を挟んで第2平板部(52)に対向して第2可動側ラップ(54)と摺接する第3平板部(49)が設けられているスクロール型流体機械。
【請求項2】
固定スクロール(40)と、可動スクロール(50)と、該可動スクロール(50)に係合する回転軸(20)と、上記可動スクロール(50)の自転防止機構(39)とを備えるスクロール型流体機械であって、
上記固定スクロール(40)は、第1固定側ラップ(42)を備える第1固定側部材(41)と、第2固定側ラップ(47)を備える第2固定側部材(46)とにより構成され、
上記可動スクロール(50)は、背面に上記回転軸(20)と係合する係合部(64)が設けられて前面が第1固定側ラップ(42)と摺接する第1平板部(51)と、上記第1固定側ラップ(42)と噛み合って第1流体室(71)を形成する第1可動側ラップ(53)と、上記第1可動側ラップ(53)を挟んで第1平板部(51)に対向して背面が第1固定側ラップ(42)と前面が第2固定側ラップ(47)とそれぞれ摺接する第2平板部(52)と、上記第2固定側ラップ(47)と噛み合って第2流体室(72)を形成する第2可動側ラップ(54)と、上記第2可動側ラップ(54)を挟んで第2平板部(52)に対向して第2固定側ラップ(47)と摺接する第3平板部(49)とを備えているスクロール型流体機械。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のスクロール型流体機械において、
第1可動側ラップ(53)が第1平板部(51)と一体に形成され、
第2平板部(52)が第1平板部(51)及び第1可動側ラップ(53)と別体に形成されているスクロール型流体機械。
【請求項4】
請求項3に記載のスクロール型流体機械において、
第2可動側ラップ(54)が第2平板部(52)と一体に形成されているスクロール型流体機械。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のスクロール型流体機械において、
第1固定側ラップ(42)及び第1可動側ラップ(53)の渦巻き方向と第2固定側ラップ(47)及び第2可動側ラップ(54)の渦巻き方向とが互いに相違しているスクロール型流体機械。
【請求項6】
請求項5に記載のスクロール型流体機械において、
可動スクロール(50)が公転すると第1流体室(71)内で流体が圧縮されて第2流体室(72)内で流体が膨張するように構成されているスクロール型流体機械。
【請求項7】
請求項6に記載のスクロール型流体機械において、
第3平板部(49)には、第2流体室(72)に連通する導入用開口(66,68,69)が第2固定側ラップ(47)又は第2可動側ラップ(54)の径方向へ異なる位置に複数形成され、
上記各導入用開口(66,68,69)を開閉するための開閉機構(85)を備えているスクロール型流体機械。
【請求項8】
請求項1又は2に記載のスクロール型流体機械において、
第1固定側ラップ(42)及び第1可動側ラップ(53)の渦巻き方向と第2固定側ラップ(47)及び第2可動側ラップ(54)の渦巻き方向とが互いに同じであるスクロール型流体機械。
【請求項9】
請求項8に記載のスクロール型流体機械において、
第1流体室(71)及び第2流体室(72)は、それぞれの容積についての最小値に対する最大値の比が互いに相違しているスクロール型流体機械。
【請求項10】
請求項8に記載のスクロール型流体機械において、
第1流体室(71)及び第2流体室(72)は、それぞれの容積についての最小値に対する最大値の比が互いに等しくなっているスクロール型流体機械。
【請求項11】
請求項8に記載のスクロール型流体機械において、
第1流体室(71)及び第2流体室(72)のうちの何れか一方で圧縮した流体を他方へ導入して更に圧縮するように構成されているスクロール型流体機械。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【国際公開番号】WO2005/010371
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【発行日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−512051(P2005−512051)
【国際出願番号】PCT/JP2004/010625
【国際出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【発行日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【国際出願番号】PCT/JP2004/010625
【国際出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】
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