スクータ型車両
【課題】スクータ型車両において、エンジンが水冷式である場合に、面積の大きなラジエターを配設する。
【解決手段】スクータ型車両は、前輪20と、後輪10と、フレーム5と、フレーム5に支持されたハンドル1と、前後方向に関して、ハンドル1とシート2との間に設けられ、足載せ面を有する足載せ台3と、前輪20の回転軸と後輪10の回転軸とを含む平面が横切るように配置された水冷エンジン4と、水冷エンジン4よりも前方において、前記平面が横切るようにフレーム5に対して固定され、斜め上方を向くように後傾されたラジエター42と、を備えることにより、車両の低重心化を図りながらラジエターの面積を大きく取る事が出来る。
【解決手段】スクータ型車両は、前輪20と、後輪10と、フレーム5と、フレーム5に支持されたハンドル1と、前後方向に関して、ハンドル1とシート2との間に設けられ、足載せ面を有する足載せ台3と、前輪20の回転軸と後輪10の回転軸とを含む平面が横切るように配置された水冷エンジン4と、水冷エンジン4よりも前方において、前記平面が横切るようにフレーム5に対して固定され、斜め上方を向くように後傾されたラジエター42と、を備えることにより、車両の低重心化を図りながらラジエターの面積を大きく取る事が出来る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水冷エンジンを有するスクータ型車両のラジエターの配設構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からスクータ型車両は、車体下部に、エンジンと、後端部に後輪を支持するトランスミッションとが一体化されたいわゆるユニットスイング式エンジンが、骨格部材としての車体フレームに、上下方向に揺動自在に配設されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このようなものにあっては、エンジンが水冷式である場合には、ラジエターを如何に配設するか、という問題がある。
【0004】
そこで、この発明は、面積を大きく取ることができるスクータ型車両のラジエター配設構造を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るスクータ型車両は、前輪と、後輪とを有するスクータ型車両であって、フレームと、フレームに支持されたハンドルと、ハンドルの後方に設けられたシートと、前後方向に関して、ハンドルとシートとの間に設けられ、足載せ面を有する足載せ台と、前記前輪の回転軸と前記後輪の回転軸とを含む平面が横切るように配置された水冷エンジンと、前記水冷エンジンよりも前方において、前記平面が横切るようにフレームに対して固定され、斜め上方を向くように後傾されたラジエターと、を備えている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、重量物であるエンジンやラジエターを比較的低い位置に配置することができるので、車両を低重心化することができる。また、ラジエターを斜め上方を向くように後傾させることで、ラジエターの面積を大きく取ることができ、エンジンの冷却性能を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、この発明の実施の形態について説明する。
【0008】
図1乃至図11には、この発明の実施の形態を示す。この発明の実施の形態では、発明箇所を含む自動二輪車であるスクータ型車両の全体について説明する。
【0009】
まず構成について説明すると、この実施の形態のスクーター型車両は、図1及び図2に示すように、概略的には、ハンドル1とシート2の間に低床なメイン足載せ台3を有し、このメイン足載せ台3付近にエンジン4が車体フレーム5(以下「フレーム5」という)に固定されて配設され、このエンジン4の後端部にピボット軸7を介してリヤアーム8が上下揺動自在に配置され、このリヤアーム8の後端部に後輪10が支持されている。
【0010】
具体的には、エンジン4とリヤアーム8との間にリヤクッション48が介装され、またエンジン4は、後述するようにクランクケース4hから車体前方に向かって略水平にシリンダ部4aを突出させた4サイクル並列2気筒エンジンとされている。骨格であるフレーム5は、図2及び図4に示すように、前端部に筒状のヘッドパイプ5aが設けられ、このヘッドパイプ5aから後方に向けて上フレーム5bと、下フレーム5cとが延長されている。
【0011】
この上フレーム5bは、ヘッドパイプ5aの後側に中央パイプ5dが接続されて後方に延長されると共に、この中央パイプ5dの後端部から一対の前パイプ5eが左右に分岐されて後方に延長されている。そして、これら一対の前パイプ5eの後端部に2枚の板金をもなか状に接合してなる箱状部5jを介して、前パイプ5eより径の細い後パイプ5fが後方で、斜め上方に向けて延長されている。さらに、これら一対の後パイプ5fに車幅方向に沿うクロスパイプ5gが架設され、又、その後パイプ5fにはバックステー5hの前端部が前記箱状部5jと同様に形成された箱状がブラケット5iを介して固定され、このバックステー5hの後端部が後パイプ5fの後部側に直接固定されている。
【0012】
また、下フレーム5cは左右一対に設けられている。尚、5Yは前記中央パイプ5dと一対の下フレーム5cとを連続する補強フレームである。
【0013】
そして、このフレーム5のヘッドパイプ5aには、ハンドル1の操向軸11が挿通されて回転自在に支持されている。そして、この操向軸11の前記ヘッドパイプ5aから突出した上端部11aが、クラウンハンドル13を介して左右のフロントフォークパイプ14,14に連結されると共に、この操向軸11の前記ヘッドパイプ5aから突出した下端部11bが、アンダーブラケット16を介して左右のフロントフォークパイプ14,14に連結されている(図5参照)。
【0014】
そのクラウンハンドル13は、中央部の操向軸連結部13aが高く、両端部のフロントフォークパイプ連結部13bが低くなるよう折曲形成され、操向軸連結部13aに上方へ突出するハンドルホルダー部13cが一体形成されるもので、アルミ材(Al)で金型鋳造されている。
【0015】
そして、このフロントフォークパイプ連結部13bの上側が車体カバーであるレッグシールド17の上面部17aで覆われ、前記操向軸連結部13aに形成されたハンドルホルダー部13cがレッグシールド上面部17aに形成された貫通孔17bから上方に臨んでいる。
【0016】
また、この操向軸連結部13aの上側に、前記ハンドルホルダー部13cとキャップホルダー87とで挟持することで、前記ハンドル1が固定され、このハンドル1がハンドルカバー19により覆われ、このハンドルカバー19の筒状の下部19aが前記レッグシールド17の貫通孔17bに回転可能に挿入されている。
【0017】
尚、レッグシールド17は、前記ヘッドパイプ5aやフロントフォークパイプ14などの周囲を覆っている。
【0018】
また、前記フロントフォークパイプ14は、テレスコピック式で、上部のインナーチューブ14aが下部のアウターチューブ14bに軸方向にスライド自在に挿入されると共に、このインナーチューブ14aが図示省略のスプリングにより上方に付勢され、そのアウターチューブ14bの下端部に前輪20が支持されている。
【0019】
このようにクラウンハンドル13は、中央部の操向軸連結部13aが高く、両端部のフロントフォークパイプ連結部13bが低くなるよう折曲形成されているため、操向軸連結部13aの高さが従来と変わらないとすると、フロントフォークパイプ連結部13b側がそれだけ下がることとなり、このフロントフォークパイプ連結部13bの上側を覆うレッグシールド17の上面部17aの位置を下げることができることから、このレッグシールド17の小型化を図ることができる。
【0020】
また、レッグシールド17の上面部17aにより、クラウンハンドル13の上側を覆うと共に、このクラウンハンドル13の操向軸連結部13aのみを高くして、レッグシールド17の貫通孔17bの上方に臨ませたので、この貫通孔17bは小さくてすみ、この貫通孔17bを閉塞するハンドルカバー19の小型化を図ることが出来る。
【0021】
さらに、クラウンハンドル13は中央部の操向軸連結部13aが高く、ヘッドパイプ5aの上下寸法H1を確保できることから、ヘッドパイプ5aによる操向軸11の支持剛性を大きくでき、走行性を向上させることができる。
【0022】
しかも、この実施の形態のようにヘッドパイプ5aの上縁まで延びてヘッドパイプ5aの上側と下側で、左右互いに連結される形式のテレスコピックのフロントフォークパイプ14を用いれば、上記操向軸11の支持剛性の向上と相まって、大排気量の車両にも適用できる。
【0023】
なお、この実施の形態では、ボトムリンク式のテレスコピック式フロントフォークを適用できることは勿論である。
【0024】
一方、図2に示すように、エンジン4の上部は、そのクランクケース4hを前記前パイプ5eと後パイプ5fの間の箱状部5j、後パイプ5fのクロスパイプ5gの両端部に固着されたブラケット5k、及びバックステー5hの下端部の箱状ブラケット5iに、それぞれ左右に前後パイプ5e,5fに跨る長さのボルト22,23,24で固定されている。また、前記一対の下フレーム5cの後端部は扁平に押し潰されると共に、この後端部に板状のブラケット5mがそれぞれ固定され、このブラケット5mにエンジン4のクランクケース4hの前下部がボルト25止めされている。
【0025】
そして、このエンジン4の上側には、フレーム5に支持されて燃料タンク27、この燃料タンク27の後ろ側に荷物収納箱29が配置され、これらの上側にシート2が前端のヒンジ32を中心に回動自在に設けられている。
【0026】
上記のようにフレーム5にエンジン4を取り付けることにより、エンジン4がフレームメンバーとして機能することとなるため、その分フレームパイプを廃止できることから車体の小型化を図ることができると共に、軽量化を図ることができる。また、下フレーム5cを短くして重量物のエンジン4を低い位置に設定できるため、車両の低重心化が図られる。
【0027】
さらに、箱状部5j及び箱状ブラケット5iを利用することによりエンジン4の連結部を容易に形成することができる。
【0028】
しかも、リヤクッション48をエンジン4とリヤアーム8との間に介装していることと相まって各車輪10,20から伝達される大きな荷重は、リヤアーム8,エンジン4及びエンジン4より前側のフレーム5の間で伝達されることになるため、後パイプ5f側には大きな荷重が伝達されないことから、かかる後パイプ5f側を細径化することができ、その分、燃料タンク27や収納箱29を大型化することができる。
【0029】
なお、この実施の形態では、エンジン4より後方に上フレーム5bの後パイプ5f及びバックステー5hなどを設けているが、この代わりに、図3に示すように、アルミダイキャストや板金製の収納箱30をボルト23,24でエンジン4に固定することにより、その後パイプ5f及びバックステー5hなどを廃止することもできる。これによれば、車体後部のフレームが不要となると共に、より収納箱30の大型化等を図ることが出来る。
【0030】
一方、前記フレーム5のヘッドパイプ5aの前方には、図2及び図6に示すように、エアクリーナ34がヘッドパイプ5aに固定されて配設され、このエアクリーナ34と前記エンジン4とが吸気ダクト35を介して連結されている。
【0031】
詳しくは、そのエアクリーナ34は、ヘッドパイプ5aに固定され、フロントフォークパイプ14が図6中二点鎖線に示すように回動した場合でも、干渉しないような位置及び形状に構成されている。また、吸気ダクト35は各一対に設けられた第1吸気ダクト35a、第2吸気ダクト35bからなり、これら第1吸気ダクト35aと第2吸気ダクト35b間に吸気チャンバ37が介装されている。第1吸気ダクト35aは、前記エアクリーナ34から後方に向けて延長され、図2及び図6に示すように、ヘッドパイプ5aとフロントフォークパイプ14との間に挿通されて、所定の容積を有する吸気チャンバ37に接続されている。この吸気チャンバ37はフレーム5に固定され、この吸気チャンバ37から更に第2吸気ダクト35bが延長されて一対の気化器38にそれぞれ接続され、この気化器38がエンジン4に接続されている。
【0032】
尚、符号34aはエアクリーナ34の吸入口、符号34bはエアクリーナ34内に配設される筒状エレメントである。そして吸入口34aから吸入された外気は、筒状エレメント34bを通過したのち、分岐して一対の第1吸気ダクト35a内を流れ、一旦吸気チャンバ37で合流し再度分岐して一対の第2吸気ダクト35bから各気化器38へ導入される。
【0033】
このようにシート2の前下方のメイン足載せ台3付近にシリンダ部4aを前方に向かって略水平に突出させたエンジン4を配設するものでは、この近傍に比較的大きな容積を必要とするエアクリーナ34を配置しようとすると、足置き空間S1及び足通し空間S2が狭くなるのに対し、このエアクリーナ34をヘッドパイプ5aの前側に配置することにより、足置き空間S1及び足通し空間S2を大きく確保できる。
【0034】
また、エアクリーナ34をヘッドパイプ5aの前側に配置し、このエアクリーナ34から後方のエンジン4までは比較的細径な吸気ダクト35で連結することにより、これら吸気系と操舵系との干渉を回避できる。
【0035】
さらに、エアクリーナ34をヘッドパイプ5aの前側に配置することにより、メイン足載せ台3の付近に配置する場合等と比較するとエアクリーナ34の容量を大きくできると共に、このエアクリーナ34にダクトを介さずに直接外気を導入でき、ラムエアーの利用も可能となる。
【0036】
このエアクリーナ34の位置は比較的高い位置であるため、前輪20により跳ね上げられた粉塵、泥水等が掛かることなく、清浄な外気を導入できる。
【0037】
また、吸気ダクト35の途中に所定の容積を有する吸気チャンバ37を配設することにより、エンジン4側の吸気脈動を抑制し、エンジン性能を向上させることが出来る。
【0038】
なお、上記実施の形態では、吸気ダクト35は、ヘッドパイプ5aとフロントフォークパイプ14との間に挿通されているが、図2中二点鎖線に示すように、アンダーブラケット16下方で、左右のフロントフォークパイプ14の間を挿通してエンジン4に接続することもできる。
【0039】
また、このエンジン4は水冷式で、この両側には、左右にメイン足載せ台3が設けられ、この両メイン足載せ台3の間に上方に突出し、前後方向にトンネル状に延びるセンターカバー40が設けられている。そして、そのメイン足載せ台3の足載せ面の下方で、前記前輪20とエンジン4との間にラジエター42が配置されている。このラジエター42は、扁平な直方体形状を呈し、その長手方向を車幅方向に沿って配設され、中央部が後方に位置するように湾曲し、且つ、斜め上方を向くように若干後傾してフレーム5に固定されている。また、このラジエター42は、コア部の両側にタンクを有する形式とされている。このラジエター42の後ろ側には、このラジエター42に外気を導くためのファン43が配置されている。
【0040】
さらに、前記センターカバー40内には、前記エンジン4のシリンダ部4aが配置され、このシリンダ部4aはそのラジエター42の上方に位置している。
【0041】
さらにまた、図1及び図7に示すように、ラジエター42の両側には、前述のレッグシールド17の下部が延設されると共に、このレッグシールド17の車両前方から見て下部中央には、インナーパネル45が着脱自在に配設されている。そして、このレッグシールド17は、前輪20との干渉を避けるために、車幅方向の両端部側が、中央部側より車両前方に位置した形状を呈し、その両端部の内側にルーバ17cが形成され、このルーバ17cから走行風を導入して、図7中矢印に示すように、ラジエター42の側部に送風するようにしている。また、インナーパネル45は、レッグシールド17の開口17dに着脱自在に設けられ、この開口17dにエンジン4のシリンダ部4aが臨むようになっていると共に、このインナーパネル45にも、ルーバ45aが形成され、このルーバ45aから走行風やファン43による外気を導入し、インナーパネル45に固定されたガイド板88によりラジエーターへ導き、図7中矢印に示すようにラジエター42に送風するようにしている。
【0042】
尚、インナーパネル45の上縁は、吸気チャンバ37の後下りに傾斜した下面に滑らかに連なっている。
【0043】
このようにすれば、メイン足載せ台3の足載せ面より下方にラジエター42を配置することにより、このラジエター42は、左右のメイン足載せ台3の下方にまで渡る幅広に形成することが可能となるため、センターカバー40内に配置するもの等と比較すると、ラジエター42の面積を大きく取ることが出来る。
【0044】
また、メイン足載せ台3の足載せ面より下方にラジエター42を配置することにより、エンジン4とラジエター42とを接近させることが出来、ラジエター42をヘッドパイプ5aの前側に配置したものと比較すると、エンジン4とラジエター42との間の配管を短くできる。
【0045】
さらに、インナーパネル45とレッグシールド17左右前面とにルーバ45a,17cを形成することにより、これらルーバ45a,17cの導風孔からラジエター42に外気を導くことが出来るため、冷却性を向上させることが出来る。また、前記吸気チャンバ37をヘッドパイプ5aの直ぐ後の中央パイプ5dの下方に配置し、この吸気チャンバ37の下面37aを導風板の一部として利用し、この下面37aでインナーパネル45より上方を通る走行風を下方へ導きインナーパネル45のルーバ45aから内部に導入することにより、より一層ラジエター42及びエンジン4の冷却性を向上させることが出来る。
【0046】
さらにまた、両メイン足載せ台3の車幅方向中央に成形した上方に突出するセンターカバー40内に、エンジン4のシリンダ部4aを配置して、このシリンダ部4aをラジエター42上方に位置させることにより、以下の利点がある。
【0047】
すなわち、車両前方から見てラジエター42とエンジンシリンダ部4aが上下にオフセットされているため、ラジエター42にて熱交換された空気がエンジンシリンダ部4aに吹き付けられることなく、冷却性能を向上させることが出来る。
【0048】
また、エンジンシリンダ部4aをラジエター42上方に位置させることで、エンジン4及びラジエター42全体が占める車両前後方向の長さを短くしてホイルベースを短くできると同時に、重量物であるエンジン4とラジエター42とを接近させることが出来るため、マスの集中化を図ることが出来る。
【0049】
一方、前記インナーパネル45が脱着可能となっているため、このインナーパネル45をガイド板88とともに取り外すことでレッグシールド17の開口17dを介してエンジン4の整備(例えばプラグ交換等)を行うことが出来、整備性が良好である。
【0050】
また、ラジエター42は、斜め上方を向くと共に湾曲しているため、バンク角を大きく取ることが出来る。
【0051】
一方、図2に示すように、前記エンジン4の下側であって、このエンジン4とリヤアーム8との間にリヤクッション48が架設されている。このリヤクッション48は、略水平状態となり、前端部48aがエンジン4の下部に軸49により回動自在に取り付けられる一方、後端部48bがリヤアーム8に軸50により回動自在に取り付けられている。このリヤクッション48は、後輪10からの荷重により、引張り力を受けるようになっている。
【0052】
また、このリヤクッション48は、図8に示すように、車両後方から見ると、エンジン4の下方に突出したオイルパン4bと乾式Vベルト変速機4cとの間の凹部4dに配置されている。
【0053】
このようにエンジン4にピボット軸7を介してリヤアーム8を取り付けると共に、このエンジン4にリヤクッション48の前端部48aを取り付け、後端部48bをリヤアーム8に取り付けることにより、エンジン4,リヤアーム8,リヤクッション48をユニット化することができ、これらをサブ組みしてフレーム5側へ組み付けることができるため、組付作業の簡素化が可能となる。
【0054】
また、リヤクッション48が低い位置に設定されるため、低重心化が図られると共に、エンジン4の下側近傍にリヤクッション48が配置されることで、マスの集中化が図られる。
【0055】
しかも、リヤクッション48がエンジン4の下側で車幅方向略中央に前後方向に沿って略水平に配設されており、バンク角を充分に確保できると共に、従来のように車体後部に略上下方向に沿って配設されていないため、車体後部のスペース効率を向上させることができる。
【0056】
さらに、リヤクッション48がオイルパン4bと乾式Vベルト変速機4cとの間の凹部4dに配置されているため、スペース効率を向上させることができると共に、地上高を確保でき、しかも、バンク角をより一層大きく取ることが出来る。
【0057】
ところで、前記下フレーム5cの後下端部(略重心位置)で、前記エンジン4の下部に固定された前記ブラケット5mには、サイドスタンド52が軸53を中心に回動自在に取り付けられ、図1及び図2中二点鎖線に示すように、このサイドスタンド52を回動させてエンジン4側面に沿わせて略水平状態として格納することにより、このサイドスタンド52でエンジン4の側面に突出して設けられた補器類(ウオータポンプ55及びウオータパイプ56)を走行中や転倒時等において保護することができる。
【0058】
また、格納状態のサイドスタンド52にウオータパイプ56を平行に配置することにより、当該パイプ56の保護性が一層向上することとなる。
【0059】
一方、メインスタンド58は重心位置より後方で、エンジン4の後部下面に配置され、このメインスタンド58を使ってエンジン4を支持した状態で、このエンジン4をフレーム5から取り外すことにより、このメインスタンド58に、エンジン4,リヤアーム8,後輪10,リヤクッション48等を一体的に支持することが出来、これらのサブ組ユニットの組付性及び整備性を向上させることができる。
【0060】
一方、前記エンジン4は、図9に示すように、水冷式の4サイクル並列2気筒エンジンであり、ピストン4eからの駆動力がクランクシャフト4f、前記乾式Vベルト変速機4cを介してクラッチ機構4gに伝達され、このクラッチ機構4gからの駆動力が歯車減速機構を介して前記リヤアーム8内に設けられた二次伝動装置60に伝達されるようになっている。尚、90はバランサである。
【0061】
そして、リヤアーム8は、図9に示すように、左側分割部62と右側分割部63とに2分割され、これら分割部62,63から互いに取付ボス部62a,63aが延長されて当接され、図2に示すように三点(A,B,C)止めにより固定されている。なお、前記リヤクッション48の後端部48bは、左側分割部62と右側分割部63の間に挟まれるようにして取り付けられている。
【0062】
そして、両分割部62,63の先端部62b,63bがピボット軸7の両側に連結され、両分割部62,63の後端部62c,63cが後輪軸65に連結されている。
【0063】
尚、ピボット軸7は、左右に2分割されており、この内の車体左側すなわち左側分割部62側のピボット軸7’はクランクケース4hにボルト止めされ、右分割部63側のビポット軸7”は、右側分割部63に固定されクランクケース4hに回動自在に支持されている。
【0064】
また、前記二次伝動装置60は、出力軸91に第1スプロケット60aが固定され、この第1スプロケット60aが第1サイレントチェーン60bを介して第2スプロケット60cに連結されて第1段階の減速が行われ、この第2スプロケット60cと同軸上で一体に回転し、この第2スプロケット60cより内側に配置された第3スプロケット60dが第2サイレントチェーン60eを介して第4スプロケット60fに連結されて第2段階の減速が行われるようになっている。そして、この左側分割部62は右ケース半体62dと左ケース半体62eをもなか合せにして構成され、液密構造に形成されており、内部にはオイルが貯留されている。
【0065】
このように車体側にエンジン4を固定し、更に、この車体側に固定されたエンジン4のクランクケース4h内に乾式Vベルト変速機4cを配置することにより、リヤアーム8側の重量を軽くできることから、バネ下重量を軽減できる。
【0066】
また、エンジン4のクランクケース4h内に乾式Vベルト変速機4cを設け、リヤアーム8内に二次伝動装置60を配設することにより、外部に露呈された長いチェーンを介して動力を伝達させる必要がないため、精度を向上させることができると共に、二次伝動装置60を湿式とすることにより、寿命を延ばし、保守点検の頻度を従来よりも減少させることができる。
【0067】
さらに、第1,第2スプロケット60a,60cより、第3,第4スプロケット60d,60fが内側に配置されているため、左側分割部62の外形を図9に示すように後方に向かうに従って内側に寄せることができるため、バンク角を大きく取ることが出来る。
【0068】
一方、前記第4スプロケット60fには後輪軸65が挿通されると共に、この第4スプロケット60fから後輪10側に向けて筒部60gが突設され、この筒部60gと左側分割部62の右ケース半体62dとの間はシール材93によりシールされている。また、後輪10には、主に図10に示すように、第4スプロケット60fの後輪10との動力伝達経路中にダンパー97を介在させるクラッチダンパー67がサークリップ68により抜け止めされて固定され、このクラッチダンパー67から突設されたスプライン軸67aが前記第4スプロケット筒部60gに挿入されてスプライン99結合されている。そして、後輪10と右側分割部63との間には、後輪軸65が挿入されたブレーキキャリパー70が配設されている。
【0069】
尚、後輪10とクラッチダンパー67は、ダンパー97を強く圧縮した状態で前記サークリップ68により一体化される。
【0070】
かかる構成によれば、後輪軸65を抜くことにより、キャリパー70が外れ、後輪10とリヤアーム右側分割部63との間に間隙(移動代C)が発生し、この後輪10を右側分割部63側に移動させることで、第4スプロケット60fとクラッチダンパー67とのスプライン99結合を簡単に外すことが出来る。そして、前述の如く結合に大変な労力を要するクラッチダンパー67と後輪10とを分離することなく、これらのユニットで脱着でき、しかもスプライン99結合を外すだけという簡単な作業で済み後輪10のタイヤ交換等を容易に行うことができると共に、二次伝動装置60側の第4スプロケット60f等を外す必要がないため、チェーン60eの着脱等を行う必要もなく、整備性を極めて向上させることができる。特に、リヤアーム左側分割部62内の二次伝動装置60が湿式であるため、かかる二次伝動装置60側を分解しなくて良いことは、非常に有益である。
【0071】
なお、スプライン99結合が外れ難い場合にも、サークリップ68により、クラッチダンパー67と後輪10との分離が防止される。
【0072】
ところで、ここでのエンジン4は、並列2気筒であり、シリンダ部4aから車両後方に延出された2本の排気管84は、図8に示すように、リヤクッション48の右側を通り、後方から見て後輪10の右側に配置されたマフラー85に接続されている。勿論、図8中二点鎖線で示すように2本の排気管84を1本に収束してもよく、更に図11に示すように排気管84を左右に振り分けて左右に配置されたマフラー85に接続することもできる。尚、図11に示す実施例では、メインスタンド58とリヤクッション48が左右に振り分けられている。
【0073】
一方、図2及び図4に示すように、エンジン4の上側には燃料タンク27が一対の後パイプ5fの間に支持されて配置され、この燃料タンク27の後ろ側に前記収納箱29が一対の後パイプ5f及びバックステー5hの間に支持されて配置されている。
【0074】
その燃料タンク27は上部に給油口27aが設けられ、シート2の蓋部2aを開くことにより、その給油口27aから給油ができるようになっている。
【0075】
そして、図8に示すように、この燃料タンク27の下側のエンジン4上面には前記乾式Vベルト変速機4cとクラッチ機構4gとの間に位置して凹所4iが形成され、この凹所4iと燃料タンク27とで形成される空間に、ブレーキワイヤやワイヤーハーネス等の配線類72が挿通されると共に、この凹所4iを通る走行風によってエンジン4の熱気が車体後方に放出されるため、放熱性が向上することとなる。
【0076】
また、エンジン4の上方に重量物である燃料タンク27を配置することにより、マス集中化が図られることとなる。
【0077】
一方、前記収納箱29は、図2に示すように、エンジン4と後輪10との間のピボット軸7上方空間にフルフェイス型ヘルメット収納部29aが配置され、このヘルメット収納部29aには、運転者用ヘルメット76が逆さ置きで、図4に示すように、該ヘルメット76長手方向を車幅方向に向けて収納可能とし、更に、シート2の前後方向中途部の最大幅B部分に対応して配置されている。また、この収納箱29は、ヘルメット収納部29aから後方に延長され、この後部収納部29bにも同乗者用のジェット型ヘルメット77が収納できるようになっている。また、走行中、つまり、ヘルメット76,77が収納されていない状態では、図2及び図4中二点鎖線に示すように、四角形のバッグ78も収納できるようになっている。
【0078】
尚、後部収納部29b下面の車幅方向中央部を上方へ凹ませることでタイヤハウス94が形成されている。
【0079】
このようにピボット軸7上方空間を利用して収納箱29のヘルメット収納部29aを配置して、このヘルメット収納部29aの位置を下げるようにしているため、重心を低くすることができると共に、この上に配置されるシート2の高さを低くできる。
【0080】
また、収納箱29のヘルメット収納部29aは、シート2の最大幅B部分に対応し、運転者用ヘルメット76を逆さ置き且つ長手方向を車幅方向に向けて収納可能に形成されているため、乗車性を確保できると共に、車体の前後方向の大型化を回避できる。
【0081】
一方、そのシート2は、前方のメインシート2bと、後方の一段高くなったタンデムシート2cとを有しており、前記メイン足載せ台3には、メインシート2bに着座した運転者の足が載置され、このメイン足載せ台3の後方には、タンデムシート2cに着座した同乗者用のタンデム足載せ台81が設けられている。
【0082】
このタンデム足載せ台81は、前記メイン足載せ台3より高い位置に設けられ、このタンデム足載せ台81の下側空間には、図8に示すように、前記エンジン4の幅広で上下に厚いクランクケース4hが配置されている。
【0083】
尚、96は足つき性を向上するための切欠きである。
【0084】
このようにエンジン4の形状に合わせて、メイン足載せ台3とタンデム足載せ台81の位置を設定することにより、メイン足載せ台3とタンデム足載せ台81とが同じ高さのものと比較すると、メイン足載せ台3の位置を下げることが出来る分だけ、メインシート2bの位置も下げることができ運転者の足つき性を向上出来る。
【0085】
また、メイン足載せ台3より高い位置にあるタンデム足載せ台81の下方空間を利用し、ここにエンジン4の幅広で上下に厚いクランクケース4hを配置することで、空間の有効利用を図ることができ、エンジン4とタンデム足載せ台81とを適正な位置関係として効率よく配置できる。
【0086】
なお、ここでは同乗者用の足載せ部材として、メイン足載せ台3と一体的に形成したタンデム足載せ台81を示したが、これに限らず、別体の板状のものでも良いし、又、棒状のものでも良い。
【0087】
尚、従来のスクータ型車両には、エンジンが水冷式である場合には、ラジエターを如何に配設するか、つまり、風を受けやすい位置で、且つ、面積を大きく取ることができるようにするのが望ましい。また、ラジエターをヘッドパイプの前側に配置した場合には、エンジンとラジエターとの間の配管が長くなってしまう、という問題もある。
【0088】
風を受けやすい位置で、且つ、面積を大きく取ることができ、更に、エンジンとラジエターとの間の配管を短くできるスクータ型車両のラジエター配設構造を提供するという課題も存在する。
【0089】
かかる課題を達成するために、本実施形態は、ハンドルとシートの間に低床な足載せ台が設けられ、車体下部に水冷エンジンを有するスクータ型車両であって、前記足載せ台の足載面下方に左右巾広のエンジン冷却用ラジエータを配置したスクータ型車両のラジエター配設構造としたことを特徴とする。
【0090】
本実施形態は、さらに、前記足載せ台付近に前記エンジンが車体フレームに固定されて配置され、前記足載せ台の車幅方向中央に、上方に突出し前後方向にトンネル状に延在するセンターカバーを成形して、該センターカバー内に、前記エンジンのシリンダ部を配置して、該シリンダ部を前記ラジエター上方に位置させたことを特徴とする。
【0091】
以上説明してきたように、本実施形態によれば、足載せ面より下方にラジエターを配置することにより、このラジエターは、足載せ台の左右巾に渡る幅広に形成することが可能となるため、センターカバー内に配置するもの等と比較すると、ラジエターの面積を大きく取ることが出来る。
【0092】
また、足載せ面より下方にラジエターを配置することにより、エンジンとラジエターとを接近させることが出来、ラジエターをヘッドパイプの前側に配置したものと比較すると、エンジンとラジエターとの間の配管を短くできる。
【0093】
上記効果に加え、足載せ台の車幅方向中央に成形した上方に突出するセンターカバー内に、エンジンのシリンダ部を配置して、シリンダ部をラジエター上方に位置させることにより、以下の利点がある。
【0094】
すなわち、車両前方から見てラジエターとエンジンシリンダ部が上下にオフセットされているため、ラジエターにて熱交換された空気がエンジンに吹き付けられることもなく、冷却性能を向上させることが出来る。
【0095】
また、エンジンシリンダ部をラジエター上方に位置させることで、エンジン及びラジエター全体が占める車体前後方向の長さを短くでき、車体をコンパクトにすることができる。
【0096】
さらに、エンジンシリンダ部をラジエター上方に位置させることで、重量物であるエンジンとラジエターとを接近させることが出来るため、マス集中化が図られる、という実用上有益な効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】この発明の実施の形態に係るスクータ型車両の側面図である。
【図2】同実施の形態に係る車体カバー類を外した状態のスクータ型車両の側面図である。
【図3】同実施の形態に係る収納箱の変形例を示すスクータ型車両の側面図である。
【図4】同実施の形態に係るフレームや収納箱等を示す概略平面図である。
【図5】同実施の形態に係るカバー類を外した状態のスクータ型車両の正面図である。
【図6】同実施の形態に係るエアクリーナの配設位置を示す概略平面図である。
【図7】同実施の形態に係る図1のA−A線に沿う断面図である。
【図8】同実施の形態に係るエンジン,燃料タンク,リヤクッション等の配設位置を示す車両後方から見た概略図である。
【図9】同実施の形態に係るエンジン及びリヤアーム等を示す水平断面図である。
【図10】同実施の形態に係る後輪と左側分割部との連結部分を示す断面図である。
【図11】同実施の形態に係る排気管等の配設位置の変形例を示す車両後方から見た概略図である。
【符号の説明】
【0098】
1 ハンドル
2 シート
3 メイン足載せ台(足載せ台)
4 エンジン
4a シリンダ部
5 車体フレーム
5a ヘッドパイプ
7 ピボット軸
8 リヤアーム
10 後輪
42 ラジエター
40 センターカバー
【技術分野】
【0001】
この発明は、水冷エンジンを有するスクータ型車両のラジエターの配設構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からスクータ型車両は、車体下部に、エンジンと、後端部に後輪を支持するトランスミッションとが一体化されたいわゆるユニットスイング式エンジンが、骨格部材としての車体フレームに、上下方向に揺動自在に配設されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このようなものにあっては、エンジンが水冷式である場合には、ラジエターを如何に配設するか、という問題がある。
【0004】
そこで、この発明は、面積を大きく取ることができるスクータ型車両のラジエター配設構造を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るスクータ型車両は、前輪と、後輪とを有するスクータ型車両であって、フレームと、フレームに支持されたハンドルと、ハンドルの後方に設けられたシートと、前後方向に関して、ハンドルとシートとの間に設けられ、足載せ面を有する足載せ台と、前記前輪の回転軸と前記後輪の回転軸とを含む平面が横切るように配置された水冷エンジンと、前記水冷エンジンよりも前方において、前記平面が横切るようにフレームに対して固定され、斜め上方を向くように後傾されたラジエターと、を備えている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、重量物であるエンジンやラジエターを比較的低い位置に配置することができるので、車両を低重心化することができる。また、ラジエターを斜め上方を向くように後傾させることで、ラジエターの面積を大きく取ることができ、エンジンの冷却性能を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、この発明の実施の形態について説明する。
【0008】
図1乃至図11には、この発明の実施の形態を示す。この発明の実施の形態では、発明箇所を含む自動二輪車であるスクータ型車両の全体について説明する。
【0009】
まず構成について説明すると、この実施の形態のスクーター型車両は、図1及び図2に示すように、概略的には、ハンドル1とシート2の間に低床なメイン足載せ台3を有し、このメイン足載せ台3付近にエンジン4が車体フレーム5(以下「フレーム5」という)に固定されて配設され、このエンジン4の後端部にピボット軸7を介してリヤアーム8が上下揺動自在に配置され、このリヤアーム8の後端部に後輪10が支持されている。
【0010】
具体的には、エンジン4とリヤアーム8との間にリヤクッション48が介装され、またエンジン4は、後述するようにクランクケース4hから車体前方に向かって略水平にシリンダ部4aを突出させた4サイクル並列2気筒エンジンとされている。骨格であるフレーム5は、図2及び図4に示すように、前端部に筒状のヘッドパイプ5aが設けられ、このヘッドパイプ5aから後方に向けて上フレーム5bと、下フレーム5cとが延長されている。
【0011】
この上フレーム5bは、ヘッドパイプ5aの後側に中央パイプ5dが接続されて後方に延長されると共に、この中央パイプ5dの後端部から一対の前パイプ5eが左右に分岐されて後方に延長されている。そして、これら一対の前パイプ5eの後端部に2枚の板金をもなか状に接合してなる箱状部5jを介して、前パイプ5eより径の細い後パイプ5fが後方で、斜め上方に向けて延長されている。さらに、これら一対の後パイプ5fに車幅方向に沿うクロスパイプ5gが架設され、又、その後パイプ5fにはバックステー5hの前端部が前記箱状部5jと同様に形成された箱状がブラケット5iを介して固定され、このバックステー5hの後端部が後パイプ5fの後部側に直接固定されている。
【0012】
また、下フレーム5cは左右一対に設けられている。尚、5Yは前記中央パイプ5dと一対の下フレーム5cとを連続する補強フレームである。
【0013】
そして、このフレーム5のヘッドパイプ5aには、ハンドル1の操向軸11が挿通されて回転自在に支持されている。そして、この操向軸11の前記ヘッドパイプ5aから突出した上端部11aが、クラウンハンドル13を介して左右のフロントフォークパイプ14,14に連結されると共に、この操向軸11の前記ヘッドパイプ5aから突出した下端部11bが、アンダーブラケット16を介して左右のフロントフォークパイプ14,14に連結されている(図5参照)。
【0014】
そのクラウンハンドル13は、中央部の操向軸連結部13aが高く、両端部のフロントフォークパイプ連結部13bが低くなるよう折曲形成され、操向軸連結部13aに上方へ突出するハンドルホルダー部13cが一体形成されるもので、アルミ材(Al)で金型鋳造されている。
【0015】
そして、このフロントフォークパイプ連結部13bの上側が車体カバーであるレッグシールド17の上面部17aで覆われ、前記操向軸連結部13aに形成されたハンドルホルダー部13cがレッグシールド上面部17aに形成された貫通孔17bから上方に臨んでいる。
【0016】
また、この操向軸連結部13aの上側に、前記ハンドルホルダー部13cとキャップホルダー87とで挟持することで、前記ハンドル1が固定され、このハンドル1がハンドルカバー19により覆われ、このハンドルカバー19の筒状の下部19aが前記レッグシールド17の貫通孔17bに回転可能に挿入されている。
【0017】
尚、レッグシールド17は、前記ヘッドパイプ5aやフロントフォークパイプ14などの周囲を覆っている。
【0018】
また、前記フロントフォークパイプ14は、テレスコピック式で、上部のインナーチューブ14aが下部のアウターチューブ14bに軸方向にスライド自在に挿入されると共に、このインナーチューブ14aが図示省略のスプリングにより上方に付勢され、そのアウターチューブ14bの下端部に前輪20が支持されている。
【0019】
このようにクラウンハンドル13は、中央部の操向軸連結部13aが高く、両端部のフロントフォークパイプ連結部13bが低くなるよう折曲形成されているため、操向軸連結部13aの高さが従来と変わらないとすると、フロントフォークパイプ連結部13b側がそれだけ下がることとなり、このフロントフォークパイプ連結部13bの上側を覆うレッグシールド17の上面部17aの位置を下げることができることから、このレッグシールド17の小型化を図ることができる。
【0020】
また、レッグシールド17の上面部17aにより、クラウンハンドル13の上側を覆うと共に、このクラウンハンドル13の操向軸連結部13aのみを高くして、レッグシールド17の貫通孔17bの上方に臨ませたので、この貫通孔17bは小さくてすみ、この貫通孔17bを閉塞するハンドルカバー19の小型化を図ることが出来る。
【0021】
さらに、クラウンハンドル13は中央部の操向軸連結部13aが高く、ヘッドパイプ5aの上下寸法H1を確保できることから、ヘッドパイプ5aによる操向軸11の支持剛性を大きくでき、走行性を向上させることができる。
【0022】
しかも、この実施の形態のようにヘッドパイプ5aの上縁まで延びてヘッドパイプ5aの上側と下側で、左右互いに連結される形式のテレスコピックのフロントフォークパイプ14を用いれば、上記操向軸11の支持剛性の向上と相まって、大排気量の車両にも適用できる。
【0023】
なお、この実施の形態では、ボトムリンク式のテレスコピック式フロントフォークを適用できることは勿論である。
【0024】
一方、図2に示すように、エンジン4の上部は、そのクランクケース4hを前記前パイプ5eと後パイプ5fの間の箱状部5j、後パイプ5fのクロスパイプ5gの両端部に固着されたブラケット5k、及びバックステー5hの下端部の箱状ブラケット5iに、それぞれ左右に前後パイプ5e,5fに跨る長さのボルト22,23,24で固定されている。また、前記一対の下フレーム5cの後端部は扁平に押し潰されると共に、この後端部に板状のブラケット5mがそれぞれ固定され、このブラケット5mにエンジン4のクランクケース4hの前下部がボルト25止めされている。
【0025】
そして、このエンジン4の上側には、フレーム5に支持されて燃料タンク27、この燃料タンク27の後ろ側に荷物収納箱29が配置され、これらの上側にシート2が前端のヒンジ32を中心に回動自在に設けられている。
【0026】
上記のようにフレーム5にエンジン4を取り付けることにより、エンジン4がフレームメンバーとして機能することとなるため、その分フレームパイプを廃止できることから車体の小型化を図ることができると共に、軽量化を図ることができる。また、下フレーム5cを短くして重量物のエンジン4を低い位置に設定できるため、車両の低重心化が図られる。
【0027】
さらに、箱状部5j及び箱状ブラケット5iを利用することによりエンジン4の連結部を容易に形成することができる。
【0028】
しかも、リヤクッション48をエンジン4とリヤアーム8との間に介装していることと相まって各車輪10,20から伝達される大きな荷重は、リヤアーム8,エンジン4及びエンジン4より前側のフレーム5の間で伝達されることになるため、後パイプ5f側には大きな荷重が伝達されないことから、かかる後パイプ5f側を細径化することができ、その分、燃料タンク27や収納箱29を大型化することができる。
【0029】
なお、この実施の形態では、エンジン4より後方に上フレーム5bの後パイプ5f及びバックステー5hなどを設けているが、この代わりに、図3に示すように、アルミダイキャストや板金製の収納箱30をボルト23,24でエンジン4に固定することにより、その後パイプ5f及びバックステー5hなどを廃止することもできる。これによれば、車体後部のフレームが不要となると共に、より収納箱30の大型化等を図ることが出来る。
【0030】
一方、前記フレーム5のヘッドパイプ5aの前方には、図2及び図6に示すように、エアクリーナ34がヘッドパイプ5aに固定されて配設され、このエアクリーナ34と前記エンジン4とが吸気ダクト35を介して連結されている。
【0031】
詳しくは、そのエアクリーナ34は、ヘッドパイプ5aに固定され、フロントフォークパイプ14が図6中二点鎖線に示すように回動した場合でも、干渉しないような位置及び形状に構成されている。また、吸気ダクト35は各一対に設けられた第1吸気ダクト35a、第2吸気ダクト35bからなり、これら第1吸気ダクト35aと第2吸気ダクト35b間に吸気チャンバ37が介装されている。第1吸気ダクト35aは、前記エアクリーナ34から後方に向けて延長され、図2及び図6に示すように、ヘッドパイプ5aとフロントフォークパイプ14との間に挿通されて、所定の容積を有する吸気チャンバ37に接続されている。この吸気チャンバ37はフレーム5に固定され、この吸気チャンバ37から更に第2吸気ダクト35bが延長されて一対の気化器38にそれぞれ接続され、この気化器38がエンジン4に接続されている。
【0032】
尚、符号34aはエアクリーナ34の吸入口、符号34bはエアクリーナ34内に配設される筒状エレメントである。そして吸入口34aから吸入された外気は、筒状エレメント34bを通過したのち、分岐して一対の第1吸気ダクト35a内を流れ、一旦吸気チャンバ37で合流し再度分岐して一対の第2吸気ダクト35bから各気化器38へ導入される。
【0033】
このようにシート2の前下方のメイン足載せ台3付近にシリンダ部4aを前方に向かって略水平に突出させたエンジン4を配設するものでは、この近傍に比較的大きな容積を必要とするエアクリーナ34を配置しようとすると、足置き空間S1及び足通し空間S2が狭くなるのに対し、このエアクリーナ34をヘッドパイプ5aの前側に配置することにより、足置き空間S1及び足通し空間S2を大きく確保できる。
【0034】
また、エアクリーナ34をヘッドパイプ5aの前側に配置し、このエアクリーナ34から後方のエンジン4までは比較的細径な吸気ダクト35で連結することにより、これら吸気系と操舵系との干渉を回避できる。
【0035】
さらに、エアクリーナ34をヘッドパイプ5aの前側に配置することにより、メイン足載せ台3の付近に配置する場合等と比較するとエアクリーナ34の容量を大きくできると共に、このエアクリーナ34にダクトを介さずに直接外気を導入でき、ラムエアーの利用も可能となる。
【0036】
このエアクリーナ34の位置は比較的高い位置であるため、前輪20により跳ね上げられた粉塵、泥水等が掛かることなく、清浄な外気を導入できる。
【0037】
また、吸気ダクト35の途中に所定の容積を有する吸気チャンバ37を配設することにより、エンジン4側の吸気脈動を抑制し、エンジン性能を向上させることが出来る。
【0038】
なお、上記実施の形態では、吸気ダクト35は、ヘッドパイプ5aとフロントフォークパイプ14との間に挿通されているが、図2中二点鎖線に示すように、アンダーブラケット16下方で、左右のフロントフォークパイプ14の間を挿通してエンジン4に接続することもできる。
【0039】
また、このエンジン4は水冷式で、この両側には、左右にメイン足載せ台3が設けられ、この両メイン足載せ台3の間に上方に突出し、前後方向にトンネル状に延びるセンターカバー40が設けられている。そして、そのメイン足載せ台3の足載せ面の下方で、前記前輪20とエンジン4との間にラジエター42が配置されている。このラジエター42は、扁平な直方体形状を呈し、その長手方向を車幅方向に沿って配設され、中央部が後方に位置するように湾曲し、且つ、斜め上方を向くように若干後傾してフレーム5に固定されている。また、このラジエター42は、コア部の両側にタンクを有する形式とされている。このラジエター42の後ろ側には、このラジエター42に外気を導くためのファン43が配置されている。
【0040】
さらに、前記センターカバー40内には、前記エンジン4のシリンダ部4aが配置され、このシリンダ部4aはそのラジエター42の上方に位置している。
【0041】
さらにまた、図1及び図7に示すように、ラジエター42の両側には、前述のレッグシールド17の下部が延設されると共に、このレッグシールド17の車両前方から見て下部中央には、インナーパネル45が着脱自在に配設されている。そして、このレッグシールド17は、前輪20との干渉を避けるために、車幅方向の両端部側が、中央部側より車両前方に位置した形状を呈し、その両端部の内側にルーバ17cが形成され、このルーバ17cから走行風を導入して、図7中矢印に示すように、ラジエター42の側部に送風するようにしている。また、インナーパネル45は、レッグシールド17の開口17dに着脱自在に設けられ、この開口17dにエンジン4のシリンダ部4aが臨むようになっていると共に、このインナーパネル45にも、ルーバ45aが形成され、このルーバ45aから走行風やファン43による外気を導入し、インナーパネル45に固定されたガイド板88によりラジエーターへ導き、図7中矢印に示すようにラジエター42に送風するようにしている。
【0042】
尚、インナーパネル45の上縁は、吸気チャンバ37の後下りに傾斜した下面に滑らかに連なっている。
【0043】
このようにすれば、メイン足載せ台3の足載せ面より下方にラジエター42を配置することにより、このラジエター42は、左右のメイン足載せ台3の下方にまで渡る幅広に形成することが可能となるため、センターカバー40内に配置するもの等と比較すると、ラジエター42の面積を大きく取ることが出来る。
【0044】
また、メイン足載せ台3の足載せ面より下方にラジエター42を配置することにより、エンジン4とラジエター42とを接近させることが出来、ラジエター42をヘッドパイプ5aの前側に配置したものと比較すると、エンジン4とラジエター42との間の配管を短くできる。
【0045】
さらに、インナーパネル45とレッグシールド17左右前面とにルーバ45a,17cを形成することにより、これらルーバ45a,17cの導風孔からラジエター42に外気を導くことが出来るため、冷却性を向上させることが出来る。また、前記吸気チャンバ37をヘッドパイプ5aの直ぐ後の中央パイプ5dの下方に配置し、この吸気チャンバ37の下面37aを導風板の一部として利用し、この下面37aでインナーパネル45より上方を通る走行風を下方へ導きインナーパネル45のルーバ45aから内部に導入することにより、より一層ラジエター42及びエンジン4の冷却性を向上させることが出来る。
【0046】
さらにまた、両メイン足載せ台3の車幅方向中央に成形した上方に突出するセンターカバー40内に、エンジン4のシリンダ部4aを配置して、このシリンダ部4aをラジエター42上方に位置させることにより、以下の利点がある。
【0047】
すなわち、車両前方から見てラジエター42とエンジンシリンダ部4aが上下にオフセットされているため、ラジエター42にて熱交換された空気がエンジンシリンダ部4aに吹き付けられることなく、冷却性能を向上させることが出来る。
【0048】
また、エンジンシリンダ部4aをラジエター42上方に位置させることで、エンジン4及びラジエター42全体が占める車両前後方向の長さを短くしてホイルベースを短くできると同時に、重量物であるエンジン4とラジエター42とを接近させることが出来るため、マスの集中化を図ることが出来る。
【0049】
一方、前記インナーパネル45が脱着可能となっているため、このインナーパネル45をガイド板88とともに取り外すことでレッグシールド17の開口17dを介してエンジン4の整備(例えばプラグ交換等)を行うことが出来、整備性が良好である。
【0050】
また、ラジエター42は、斜め上方を向くと共に湾曲しているため、バンク角を大きく取ることが出来る。
【0051】
一方、図2に示すように、前記エンジン4の下側であって、このエンジン4とリヤアーム8との間にリヤクッション48が架設されている。このリヤクッション48は、略水平状態となり、前端部48aがエンジン4の下部に軸49により回動自在に取り付けられる一方、後端部48bがリヤアーム8に軸50により回動自在に取り付けられている。このリヤクッション48は、後輪10からの荷重により、引張り力を受けるようになっている。
【0052】
また、このリヤクッション48は、図8に示すように、車両後方から見ると、エンジン4の下方に突出したオイルパン4bと乾式Vベルト変速機4cとの間の凹部4dに配置されている。
【0053】
このようにエンジン4にピボット軸7を介してリヤアーム8を取り付けると共に、このエンジン4にリヤクッション48の前端部48aを取り付け、後端部48bをリヤアーム8に取り付けることにより、エンジン4,リヤアーム8,リヤクッション48をユニット化することができ、これらをサブ組みしてフレーム5側へ組み付けることができるため、組付作業の簡素化が可能となる。
【0054】
また、リヤクッション48が低い位置に設定されるため、低重心化が図られると共に、エンジン4の下側近傍にリヤクッション48が配置されることで、マスの集中化が図られる。
【0055】
しかも、リヤクッション48がエンジン4の下側で車幅方向略中央に前後方向に沿って略水平に配設されており、バンク角を充分に確保できると共に、従来のように車体後部に略上下方向に沿って配設されていないため、車体後部のスペース効率を向上させることができる。
【0056】
さらに、リヤクッション48がオイルパン4bと乾式Vベルト変速機4cとの間の凹部4dに配置されているため、スペース効率を向上させることができると共に、地上高を確保でき、しかも、バンク角をより一層大きく取ることが出来る。
【0057】
ところで、前記下フレーム5cの後下端部(略重心位置)で、前記エンジン4の下部に固定された前記ブラケット5mには、サイドスタンド52が軸53を中心に回動自在に取り付けられ、図1及び図2中二点鎖線に示すように、このサイドスタンド52を回動させてエンジン4側面に沿わせて略水平状態として格納することにより、このサイドスタンド52でエンジン4の側面に突出して設けられた補器類(ウオータポンプ55及びウオータパイプ56)を走行中や転倒時等において保護することができる。
【0058】
また、格納状態のサイドスタンド52にウオータパイプ56を平行に配置することにより、当該パイプ56の保護性が一層向上することとなる。
【0059】
一方、メインスタンド58は重心位置より後方で、エンジン4の後部下面に配置され、このメインスタンド58を使ってエンジン4を支持した状態で、このエンジン4をフレーム5から取り外すことにより、このメインスタンド58に、エンジン4,リヤアーム8,後輪10,リヤクッション48等を一体的に支持することが出来、これらのサブ組ユニットの組付性及び整備性を向上させることができる。
【0060】
一方、前記エンジン4は、図9に示すように、水冷式の4サイクル並列2気筒エンジンであり、ピストン4eからの駆動力がクランクシャフト4f、前記乾式Vベルト変速機4cを介してクラッチ機構4gに伝達され、このクラッチ機構4gからの駆動力が歯車減速機構を介して前記リヤアーム8内に設けられた二次伝動装置60に伝達されるようになっている。尚、90はバランサである。
【0061】
そして、リヤアーム8は、図9に示すように、左側分割部62と右側分割部63とに2分割され、これら分割部62,63から互いに取付ボス部62a,63aが延長されて当接され、図2に示すように三点(A,B,C)止めにより固定されている。なお、前記リヤクッション48の後端部48bは、左側分割部62と右側分割部63の間に挟まれるようにして取り付けられている。
【0062】
そして、両分割部62,63の先端部62b,63bがピボット軸7の両側に連結され、両分割部62,63の後端部62c,63cが後輪軸65に連結されている。
【0063】
尚、ピボット軸7は、左右に2分割されており、この内の車体左側すなわち左側分割部62側のピボット軸7’はクランクケース4hにボルト止めされ、右分割部63側のビポット軸7”は、右側分割部63に固定されクランクケース4hに回動自在に支持されている。
【0064】
また、前記二次伝動装置60は、出力軸91に第1スプロケット60aが固定され、この第1スプロケット60aが第1サイレントチェーン60bを介して第2スプロケット60cに連結されて第1段階の減速が行われ、この第2スプロケット60cと同軸上で一体に回転し、この第2スプロケット60cより内側に配置された第3スプロケット60dが第2サイレントチェーン60eを介して第4スプロケット60fに連結されて第2段階の減速が行われるようになっている。そして、この左側分割部62は右ケース半体62dと左ケース半体62eをもなか合せにして構成され、液密構造に形成されており、内部にはオイルが貯留されている。
【0065】
このように車体側にエンジン4を固定し、更に、この車体側に固定されたエンジン4のクランクケース4h内に乾式Vベルト変速機4cを配置することにより、リヤアーム8側の重量を軽くできることから、バネ下重量を軽減できる。
【0066】
また、エンジン4のクランクケース4h内に乾式Vベルト変速機4cを設け、リヤアーム8内に二次伝動装置60を配設することにより、外部に露呈された長いチェーンを介して動力を伝達させる必要がないため、精度を向上させることができると共に、二次伝動装置60を湿式とすることにより、寿命を延ばし、保守点検の頻度を従来よりも減少させることができる。
【0067】
さらに、第1,第2スプロケット60a,60cより、第3,第4スプロケット60d,60fが内側に配置されているため、左側分割部62の外形を図9に示すように後方に向かうに従って内側に寄せることができるため、バンク角を大きく取ることが出来る。
【0068】
一方、前記第4スプロケット60fには後輪軸65が挿通されると共に、この第4スプロケット60fから後輪10側に向けて筒部60gが突設され、この筒部60gと左側分割部62の右ケース半体62dとの間はシール材93によりシールされている。また、後輪10には、主に図10に示すように、第4スプロケット60fの後輪10との動力伝達経路中にダンパー97を介在させるクラッチダンパー67がサークリップ68により抜け止めされて固定され、このクラッチダンパー67から突設されたスプライン軸67aが前記第4スプロケット筒部60gに挿入されてスプライン99結合されている。そして、後輪10と右側分割部63との間には、後輪軸65が挿入されたブレーキキャリパー70が配設されている。
【0069】
尚、後輪10とクラッチダンパー67は、ダンパー97を強く圧縮した状態で前記サークリップ68により一体化される。
【0070】
かかる構成によれば、後輪軸65を抜くことにより、キャリパー70が外れ、後輪10とリヤアーム右側分割部63との間に間隙(移動代C)が発生し、この後輪10を右側分割部63側に移動させることで、第4スプロケット60fとクラッチダンパー67とのスプライン99結合を簡単に外すことが出来る。そして、前述の如く結合に大変な労力を要するクラッチダンパー67と後輪10とを分離することなく、これらのユニットで脱着でき、しかもスプライン99結合を外すだけという簡単な作業で済み後輪10のタイヤ交換等を容易に行うことができると共に、二次伝動装置60側の第4スプロケット60f等を外す必要がないため、チェーン60eの着脱等を行う必要もなく、整備性を極めて向上させることができる。特に、リヤアーム左側分割部62内の二次伝動装置60が湿式であるため、かかる二次伝動装置60側を分解しなくて良いことは、非常に有益である。
【0071】
なお、スプライン99結合が外れ難い場合にも、サークリップ68により、クラッチダンパー67と後輪10との分離が防止される。
【0072】
ところで、ここでのエンジン4は、並列2気筒であり、シリンダ部4aから車両後方に延出された2本の排気管84は、図8に示すように、リヤクッション48の右側を通り、後方から見て後輪10の右側に配置されたマフラー85に接続されている。勿論、図8中二点鎖線で示すように2本の排気管84を1本に収束してもよく、更に図11に示すように排気管84を左右に振り分けて左右に配置されたマフラー85に接続することもできる。尚、図11に示す実施例では、メインスタンド58とリヤクッション48が左右に振り分けられている。
【0073】
一方、図2及び図4に示すように、エンジン4の上側には燃料タンク27が一対の後パイプ5fの間に支持されて配置され、この燃料タンク27の後ろ側に前記収納箱29が一対の後パイプ5f及びバックステー5hの間に支持されて配置されている。
【0074】
その燃料タンク27は上部に給油口27aが設けられ、シート2の蓋部2aを開くことにより、その給油口27aから給油ができるようになっている。
【0075】
そして、図8に示すように、この燃料タンク27の下側のエンジン4上面には前記乾式Vベルト変速機4cとクラッチ機構4gとの間に位置して凹所4iが形成され、この凹所4iと燃料タンク27とで形成される空間に、ブレーキワイヤやワイヤーハーネス等の配線類72が挿通されると共に、この凹所4iを通る走行風によってエンジン4の熱気が車体後方に放出されるため、放熱性が向上することとなる。
【0076】
また、エンジン4の上方に重量物である燃料タンク27を配置することにより、マス集中化が図られることとなる。
【0077】
一方、前記収納箱29は、図2に示すように、エンジン4と後輪10との間のピボット軸7上方空間にフルフェイス型ヘルメット収納部29aが配置され、このヘルメット収納部29aには、運転者用ヘルメット76が逆さ置きで、図4に示すように、該ヘルメット76長手方向を車幅方向に向けて収納可能とし、更に、シート2の前後方向中途部の最大幅B部分に対応して配置されている。また、この収納箱29は、ヘルメット収納部29aから後方に延長され、この後部収納部29bにも同乗者用のジェット型ヘルメット77が収納できるようになっている。また、走行中、つまり、ヘルメット76,77が収納されていない状態では、図2及び図4中二点鎖線に示すように、四角形のバッグ78も収納できるようになっている。
【0078】
尚、後部収納部29b下面の車幅方向中央部を上方へ凹ませることでタイヤハウス94が形成されている。
【0079】
このようにピボット軸7上方空間を利用して収納箱29のヘルメット収納部29aを配置して、このヘルメット収納部29aの位置を下げるようにしているため、重心を低くすることができると共に、この上に配置されるシート2の高さを低くできる。
【0080】
また、収納箱29のヘルメット収納部29aは、シート2の最大幅B部分に対応し、運転者用ヘルメット76を逆さ置き且つ長手方向を車幅方向に向けて収納可能に形成されているため、乗車性を確保できると共に、車体の前後方向の大型化を回避できる。
【0081】
一方、そのシート2は、前方のメインシート2bと、後方の一段高くなったタンデムシート2cとを有しており、前記メイン足載せ台3には、メインシート2bに着座した運転者の足が載置され、このメイン足載せ台3の後方には、タンデムシート2cに着座した同乗者用のタンデム足載せ台81が設けられている。
【0082】
このタンデム足載せ台81は、前記メイン足載せ台3より高い位置に設けられ、このタンデム足載せ台81の下側空間には、図8に示すように、前記エンジン4の幅広で上下に厚いクランクケース4hが配置されている。
【0083】
尚、96は足つき性を向上するための切欠きである。
【0084】
このようにエンジン4の形状に合わせて、メイン足載せ台3とタンデム足載せ台81の位置を設定することにより、メイン足載せ台3とタンデム足載せ台81とが同じ高さのものと比較すると、メイン足載せ台3の位置を下げることが出来る分だけ、メインシート2bの位置も下げることができ運転者の足つき性を向上出来る。
【0085】
また、メイン足載せ台3より高い位置にあるタンデム足載せ台81の下方空間を利用し、ここにエンジン4の幅広で上下に厚いクランクケース4hを配置することで、空間の有効利用を図ることができ、エンジン4とタンデム足載せ台81とを適正な位置関係として効率よく配置できる。
【0086】
なお、ここでは同乗者用の足載せ部材として、メイン足載せ台3と一体的に形成したタンデム足載せ台81を示したが、これに限らず、別体の板状のものでも良いし、又、棒状のものでも良い。
【0087】
尚、従来のスクータ型車両には、エンジンが水冷式である場合には、ラジエターを如何に配設するか、つまり、風を受けやすい位置で、且つ、面積を大きく取ることができるようにするのが望ましい。また、ラジエターをヘッドパイプの前側に配置した場合には、エンジンとラジエターとの間の配管が長くなってしまう、という問題もある。
【0088】
風を受けやすい位置で、且つ、面積を大きく取ることができ、更に、エンジンとラジエターとの間の配管を短くできるスクータ型車両のラジエター配設構造を提供するという課題も存在する。
【0089】
かかる課題を達成するために、本実施形態は、ハンドルとシートの間に低床な足載せ台が設けられ、車体下部に水冷エンジンを有するスクータ型車両であって、前記足載せ台の足載面下方に左右巾広のエンジン冷却用ラジエータを配置したスクータ型車両のラジエター配設構造としたことを特徴とする。
【0090】
本実施形態は、さらに、前記足載せ台付近に前記エンジンが車体フレームに固定されて配置され、前記足載せ台の車幅方向中央に、上方に突出し前後方向にトンネル状に延在するセンターカバーを成形して、該センターカバー内に、前記エンジンのシリンダ部を配置して、該シリンダ部を前記ラジエター上方に位置させたことを特徴とする。
【0091】
以上説明してきたように、本実施形態によれば、足載せ面より下方にラジエターを配置することにより、このラジエターは、足載せ台の左右巾に渡る幅広に形成することが可能となるため、センターカバー内に配置するもの等と比較すると、ラジエターの面積を大きく取ることが出来る。
【0092】
また、足載せ面より下方にラジエターを配置することにより、エンジンとラジエターとを接近させることが出来、ラジエターをヘッドパイプの前側に配置したものと比較すると、エンジンとラジエターとの間の配管を短くできる。
【0093】
上記効果に加え、足載せ台の車幅方向中央に成形した上方に突出するセンターカバー内に、エンジンのシリンダ部を配置して、シリンダ部をラジエター上方に位置させることにより、以下の利点がある。
【0094】
すなわち、車両前方から見てラジエターとエンジンシリンダ部が上下にオフセットされているため、ラジエターにて熱交換された空気がエンジンに吹き付けられることもなく、冷却性能を向上させることが出来る。
【0095】
また、エンジンシリンダ部をラジエター上方に位置させることで、エンジン及びラジエター全体が占める車体前後方向の長さを短くでき、車体をコンパクトにすることができる。
【0096】
さらに、エンジンシリンダ部をラジエター上方に位置させることで、重量物であるエンジンとラジエターとを接近させることが出来るため、マス集中化が図られる、という実用上有益な効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】この発明の実施の形態に係るスクータ型車両の側面図である。
【図2】同実施の形態に係る車体カバー類を外した状態のスクータ型車両の側面図である。
【図3】同実施の形態に係る収納箱の変形例を示すスクータ型車両の側面図である。
【図4】同実施の形態に係るフレームや収納箱等を示す概略平面図である。
【図5】同実施の形態に係るカバー類を外した状態のスクータ型車両の正面図である。
【図6】同実施の形態に係るエアクリーナの配設位置を示す概略平面図である。
【図7】同実施の形態に係る図1のA−A線に沿う断面図である。
【図8】同実施の形態に係るエンジン,燃料タンク,リヤクッション等の配設位置を示す車両後方から見た概略図である。
【図9】同実施の形態に係るエンジン及びリヤアーム等を示す水平断面図である。
【図10】同実施の形態に係る後輪と左側分割部との連結部分を示す断面図である。
【図11】同実施の形態に係る排気管等の配設位置の変形例を示す車両後方から見た概略図である。
【符号の説明】
【0098】
1 ハンドル
2 シート
3 メイン足載せ台(足載せ台)
4 エンジン
4a シリンダ部
5 車体フレーム
5a ヘッドパイプ
7 ピボット軸
8 リヤアーム
10 後輪
42 ラジエター
40 センターカバー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪と、後輪とを有するスクータ型車両であって、
フレームと、
前記フレームに支持されたハンドルと、
前記ハンドルの後方に設けられたシートと、
前後方向に関して、前記ハンドルと前記シートとの間に設けられ、足載せ面を有する足載せ台と、
前記前輪の回転軸と前記後輪の回転軸とを含む平面が横切るように配置された水冷エンジンと、
前記水冷エンジンよりも前方において、前記平面が横切るように前記フレームに対して固定され、斜め上方を向くように後傾されたラジエターと、
を備えたスクータ型車両。
【請求項2】
請求項1に記載されたスクータ型車両において、
前記ラジエターは、扁平であるスクータ型車両。
【請求項3】
請求項1に記載されたスクータ型車両において、
前記ラジエターの後ろ側に配置され、前記ラジエターに外気を導くファンをさらに備えたスクータ型車両。
【請求項4】
請求項1に記載されたスクータ型車両において、
前記フレームは、
前記ハンドルの下方に配置され、前記ハンドルを支持するヘッドパイプと、
前記ヘッドパイプから後方に向かって延びる上フレームと、
前記ヘッドパイプから後方に向かって延びる下フレームと、
を有し、
前記ラジエターは、前記下フレームに対して固定されており、
前記ラジエターは、前記足載せ面よりも下方に位置しているスクータ型車両。
【請求項5】
請求項1に記載されたスクータ型車両において、
上下方向に関して、前記ラジエターは、前記水冷エンジンの上端よりも低い位置に配置されているスクータ型車両。
【請求項6】
請求項4に記載されたスクータ型車両において、
前記ハンドルの下方において、前記フレームの少なくとも一部を覆うカバーをさらに備え、
前記カバーには、前記ラジエターへ供給される走行風を前記カバー内に導く導入口が形成されているスクータ型車両。
【請求項1】
前輪と、後輪とを有するスクータ型車両であって、
フレームと、
前記フレームに支持されたハンドルと、
前記ハンドルの後方に設けられたシートと、
前後方向に関して、前記ハンドルと前記シートとの間に設けられ、足載せ面を有する足載せ台と、
前記前輪の回転軸と前記後輪の回転軸とを含む平面が横切るように配置された水冷エンジンと、
前記水冷エンジンよりも前方において、前記平面が横切るように前記フレームに対して固定され、斜め上方を向くように後傾されたラジエターと、
を備えたスクータ型車両。
【請求項2】
請求項1に記載されたスクータ型車両において、
前記ラジエターは、扁平であるスクータ型車両。
【請求項3】
請求項1に記載されたスクータ型車両において、
前記ラジエターの後ろ側に配置され、前記ラジエターに外気を導くファンをさらに備えたスクータ型車両。
【請求項4】
請求項1に記載されたスクータ型車両において、
前記フレームは、
前記ハンドルの下方に配置され、前記ハンドルを支持するヘッドパイプと、
前記ヘッドパイプから後方に向かって延びる上フレームと、
前記ヘッドパイプから後方に向かって延びる下フレームと、
を有し、
前記ラジエターは、前記下フレームに対して固定されており、
前記ラジエターは、前記足載せ面よりも下方に位置しているスクータ型車両。
【請求項5】
請求項1に記載されたスクータ型車両において、
上下方向に関して、前記ラジエターは、前記水冷エンジンの上端よりも低い位置に配置されているスクータ型車両。
【請求項6】
請求項4に記載されたスクータ型車両において、
前記ハンドルの下方において、前記フレームの少なくとも一部を覆うカバーをさらに備え、
前記カバーには、前記ラジエターへ供給される走行風を前記カバー内に導く導入口が形成されているスクータ型車両。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−290710(P2007−290710A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−172997(P2007−172997)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【分割の表示】特願平10−129565の分割
【原出願日】平成10年4月23日(1998.4.23)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【分割の表示】特願平10−129565の分割
【原出願日】平成10年4月23日(1998.4.23)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】
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