説明

スタイラスの成形方法、スタイラス、及び形状測定機

【課題】先端球をステムと同一の材料で短時間で効率よく一体成形することで、スタイラスを高い信頼性で成形可能とする。
【解決手段】棒状のステム104と該ステム104の先端に設けられた先端球106とを備えて接触式計測用プローブに用いられるスタイラス100の成形方法において、前記ステム104を位置決めする工程と、該位置決めされたステム104の先端部分にレーザ光128を照射する工程と、該レーザ光128を照射して該ステム104の先端部分を溶融後、表面張力により該溶融部分を前記先端球106として成形して固化するまで放置する工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒状のステムと該ステムの先端に設けられた先端球とを備えて接触式計測用プローブに用いられるスタイラスの成形方法、スタイラス、及び形状測定機に係り、特に、スタイラスの先端球をステムと同一材料を用いて短時間で効率よく一体成形するスタイラスの成形方法、それによって具現化されたスタイラス、及びそのスタイラスを用いた形状測定機に関する。
【背景技術】
【0002】
ワーク(被形状測定物)等の3次元形状を精密に測定する接触式計測用プローブを用いた形状測定機が、一般に知られている。接触式計測用プローブは、ワーク(被形状測定物)と接触する部分にスタイラスを備える。
【0003】
スタイラス1は、例えば図6(A)に示す如く、棒状のステム4とステムの先端に設けられた先端球6とを備えている。図6(A)に示す如く、一般にはステム4の先端部分4Aは、先端球6に設けられた挿入孔6Aに挿入されて接着剤で固定される。ここで、スタイラス1自体は小さなものなのでハンドリングが問題となり、接着作業が容易ではない。なお、スタイラス10のサイズが小さくなってもある程度の大きさであれば、図6(B)に示す如く、同様に構成されている。しかし、スタイラス10が小さくなると接着面積が少なくなるので、しばしば先端球16の脱落が起こる。そして、スタイラス20のサイズが更に小さくなると、先端球26に挿入孔の加工が実際上不可能となる(図6(C))。このため、接着面積は更に少なくなるので、先端球26の脱落の確率が更に増大することとなる。
【0004】
一方で、スタイラスの成形方法として、ステムの先端部分を溶融したガラスに浸漬した後にステムを引き上げて、ステムの先端部分に表面張力でガラスの先端球を成形する方法(以下、ガラス溶融による成形法と称する)も行われている。しかし、ガラスと先端球とは別体に成形されたものに過ぎず、その先端球の脱落の可能性を十分に払拭させるに至っていない。
【0005】
これらに対して、特許文献1では、棒状の母材に対して放電加工を行うことで、ステムと先端球とを一体に成形加工する方法等が提案されている。又、ガラス溶融による成形法においても、特許文献2で示す如く、溶融したガラスに浸漬させるステムの先端部分に、ステム方向に対して交差する方向へ張り出したフランジ部を設けて、先端球の脱落の可能性を低減することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005―96033号公報
【特許文献2】特開2006−258556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1では、スタイラスの成形加工のための放電エネルギを正確に制御するために、成形中の加工電極と母材とのギャップの制御と加工電極に印加する電圧の制御とを正確に行う必要がある。即ち、放電加工の制御が複雑で、成形加工には熟練を必要とする。又、先端球の成形加工には、放電エネルギを制御して、粗い加工をしてから仕上げ加工まで段階を踏んで加工をする必要があり、成形加工にはある程度の時間が必要である。
【0008】
そして、母材から成形加工されたスタイラスにおいては、先端球の表面が物理的に加工された面であるので、仕上げ加工の状態によっては粗さが残るおそれがある。又、その物理的な加工は、先端球に集中されるので、先端球に応力が過度にかかり、ステムとの間にひずみが残るおそれがあり、スタイラスの寿命を短くさせるおそれがある。
【0009】
又、特許文献2では、先端球とステムとは別の材料であり、一体成形されていないので、先端球とステムとの間の境界において感度ロスの生じるおそれがある。又、ステムのフランジ部の形状が先端球の形状にも影響を与えてしまう場合も想定される。更には、先端球の表面とステムのフランジ部とで先端球の材料の肉厚が薄くなる場所が存在する。そのため、ステムの先端部分が十分に浸漬されないと、先端球の成形不良のおそれが残り、従来のガラス溶融による成形法による歩留りを更に低下させるおそれがある。即ち、成形には熟練を必要とする。同時に、強度低下が生じる可能性もあり、十分な寿命を得ることができない場合も想定される。なお、従来のガラス溶融による成形法の歩留りは、60〜80%程度でしかなかった。
【0010】
本発明は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、先端球をステムと同一の材料で短時間で効率よく一体成形することで、スタイラスを高い信頼性で成形可能とするスタイラスの成形方法、それによって具現化されたスタイラス、及びそのスタイラスを用いた形状測定機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願の請求項1に係る発明は、棒状のステムと該ステムの先端に設けられた先端球とを備えて接触式計測用プローブに用いられるスタイラスの成形方法において、前記ステムを位置決めする工程と、該位置決めされたステムの先端部分にレーザ光を照射する工程と、該レーザ光を照射して該ステムの先端部分を溶融後、表面張力により該溶融部分を前記先端球として成形して固化するまで放置する工程と、を含んだことにより、前記課題を解決したものである。
【0012】
本願の請求項2に係る発明は、前記レーザ光を、鉛直方向に向けられた前記ステムの軸上から照射するようにしたものである。
【0013】
又、本願の請求項3に係る発明は、前記レーザ光を照射する工程の前に、棒状の母材に対して放電加工を行い、該母材の少なくとも先端部分を小径加工してステムを形成するようにしたものである。
【0014】
又、本願の請求項4に係る発明は、前記レーザ光を、パルス制御されたレーザ光としたものである。
【0015】
本願の請求項5に係る発明は、又、前記スタイラス成形方法によって成形されることを特徴とするスタイラスを提供するものである。
【0016】
本願の請求項6に係る発明は、又、前記スタイラスを用いて、被形状測定物の形状測定を行うことを特徴とする形状測定機を提供するものである。
【0017】
又、本願の請求項7に係る発明は、前記スタイラスを微小振動させるようにしたものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、位置決めされたステムの先端部分にレーザ光を照射することで、微小な先端球を備えるスタイラスを容易に成形することができる。その際に、最初にレーザ光の設定を行うだけで成形中の制御は不要なため、工数も少なく短時間で安定して高品質の先端球の成形が可能である。そのため、成形に要する熟練を不要とすることができる。
【0019】
スタイラスとしては、先端球がステムと同一の材料で一体成形されているので、先端球の脱落を防止でき、スタイラス自体の信頼性を向上させることができる。又、スタイラスは、短時間で工数少なく成形されているので、リードタイムの短縮と低コスト化が可能である。又、先端球は、表面材料を物理的に除去して成形するのではなく、表面張力を利用するので、短時間の成形にも拘らず先端球を球形に成形できる。更に、その表面は平滑であり且つ一定の品質を保つことができる。更に、短時間で先端球の形状成形と表面成形とが同時に行われるので、先端球やステムに残るひずみは少なく、長寿命化が可能である。
【0020】
形状測定機としては、スタイラスが均一で高品質で長寿命となるので、測定機としても測定精度が安定して、メンテナンスの間隔を長くでき、低コスト化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係るスタイラスの模式図
【図2】同じくスタイラスを成形するためのレーザ成形機の模式図
【図3】同じくスタイラスを成形するフロー図を示す図
【図4】同じく図3の各ステップに応じたスタイラス(母材)を示す模式図
【図5】同じくスタイラスを用いた形状測定機の模式図と測定モードを説明する図
【図6】従来のスタイラスを示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0023】
本発明に係る実施形態について、図1から図4を用いて説明する。図1は本実施形態に係るスタイラスの模式図、図2はスタイラスを成形するためのレーザ成形機の模式図、図3はスタイラスを成形するフロー図を示す図、図4は図3の各ステップに応じたスタイラス(母材)を示す模式図、図5はスタイラスを用いた形状測定機の模式図と測定モードを説明する図、である。
【0024】
最初に、本実施形態のスタイラスについて説明する。
【0025】
スタイラス100は、棒状のステム104とステム104の先端に設けられた先端球106とを備える。ステム104と先端球106とは、棒状の母材102から一体成形されている。スタイラス100の先端球106は、後述するように、ステム104の先端部分が短時間で所定のレーザ光128照射により溶融後、表面張力により溶融部分の形状が球形に成形されて固化したものである。なお、母材102の材料は、例えば超硬材である。超硬材は、炭化タングステン若しくはタングステンカーバイトと呼ばれるものであり、コバルトを含有する複合材料(合金)である。
【0026】
このように、ステム104と先端球106とを備えるスタイラス100は一体成形されているので、先端球106の脱落を防止でき、スタイラス100自体の信頼性を向上させることができる。又、スタイラス100は、図3を用いて後述するように、短時間で工数少なく成形されているので、リードタイムの短縮と低コスト化が可能である。又、先端球106は、表面材料を物理的に除去して成形するのではなく、表面張力を利用している。表面張力は、その表面をできるだけ小さくしようとする力であり、分子間力により分子が互いに引き合って凝縮しようとする力である。そのため、表面張力を利用することで、形状は表面積が少ない球面となると共に、その表面は極めて平滑となり、仕上げ加工を必要としない。このため、短時間の成形にも拘わらず先端球106を球形に成形できる。更に、その表面は平滑であり且つ一定の品質を保つことができる。更に、短時間で先端球106の形状成形と表面成形とが同時に行われるので、先端球106やステム104に残る歪みは少なく、長寿命化が可能である。
【0027】
次に、本実施形態に係わるスタイラス100の成形に使用するレーザ成形機110について説明をする。
【0028】
レーザ成形機110は、図2に示す如く、ベース112上に門形のフレームを有し、その上にスライダ120を備える。門形のフレームは、ベース112上のY方向の両端に固定された一対のコラム116と該一対のコラム116間に架け渡されたビーム118とからなる。
【0029】
スライダ120は、ビーム118上でY方向に移動可能である。スライダ120には、光学ユニット122と放電加工ユニット134とが取り付けてある。そしてスライダ120は、光学ユニット122と放電加工ユニット134をZ方向に移動可能としている。
【0030】
光学ユニット122には、レーザ集光系124とレーザ取り入れポート126とが設けられている。レーザ取り入れポート126から導入されたレーザ光は、レーザ集光系124によって、集光されたレーザ光128として母材102に成形されたステム104の先端部分に照射される。又、光学ユニット122には、ズーム機能付のビューア130が設けられている。このため、作業者は、ビューア130の視野で集束されたレーザ光128の落射位置を連続的に拡大して観察することができる。使用されるレーザ光128は、例えばパルス制御されたレーザ光である。このため、レーザ集光系124は、1パルスで極微小領域に対して高いエネルギ密度でレーザ光128を照射することができる。つまり、レーザ光128を用いる成形は、必要な部分だけを瞬間的に温度を上昇させることができる。このため、レーザ光128を用いる成形は、熱による変形等を最小限に抑えることができ、容易に急速加熱と急速冷却を行うことができる。
【0031】
放電加工ユニット134には、加工電極であるワイヤ電極136が備えられている。図示しない電源によって棒状の母材102とワイヤ電極136との間に電圧が印加されると、ワイヤ電極136に沿って放電加工が可能となる。
【0032】
ベース112上の一対のコラム116の間には、X方向に移動可能なX軸ステージ114が設けられている。X軸ステージ114上には、母材102(若しくはステム104)を固定して移動・回転させるための4軸成形台140が設けられている。4軸成形台140は、例えば、XYステージ142と回転ステージ144とZステージ146と冶具148とを有する。
【0033】
4軸成形台140の最下層には、母材102(若しくはステム104)を、XY方向へ移動可能とするXYステージ142が設けられている。その上には、母材102(若しくはステム104)を、レーザ光128の光軸O(鉛直方向)上及び放電加工軸P上の両方で回転可能とする回転ステージ144が設けられている。その上には、母材102(若しくはステム104)を、図2でZ方向に移動可能とするZステージ146が設けられている。更に、その上に母材102(若しくはステム104)を固定するための治具148が設けられている。回転ステージ144は、放電加工する際には、母材102をX方向(放電加工軸P)に向け、集光されたレーザ光128を照射する際には、ステム104を鉛直方向であるZ方向(光軸O)に向けることができる。
【0034】
次に、図3に基づき、図4を参照しながらスタイラス100の成形方法について説明する。
【0035】
最初に、回転ステージ144の回転軸を放電加工軸P(X方向)に向けて、図4(A)に示す棒状の母材102を冶具148に固定する。そして、XYステージ142を用いて母材102の位置決めを行う(ステップS2)。
【0036】
次に、位置決めされた棒状の母材102を回転ステージ144で回転させながらX軸ステージ114でX方向に移動させる。そして、ワイヤ電極136による放電加工によって、棒状の母材102の先端部分を小径加工してステム104を成形する(ステップS4)。例えば、小径加工として、外径φ0.1mm以上の母材102を外径φ0.1mm以下に加工する。このときの様子を図4(B)に示す。この放電加工において表面が平滑な仕上げ加工まで終了したら、回転ステージ144により、ステム104を鉛直方向(Z方向)となる光軸O(Z方向)に向ける。すると、母材102のZ方向の上端に、母材102よりも小径のステム104の先端部分が位置する。そのステム104の先端部分に、集光したレーザ光128が来るように、XYステージ142とZステージ146とを用いてステム104の位置決めを行う。
【0037】
次に、所定のレーザ光128を、鉛直方向に向けられたステム104の軸上となる光軸O(鉛直方向)上で、図2において上から下で、位置決めされたステム104の先端部分に照射する(ステップS6)。このときの様子を図4(C)に示す。なお、図4(C)は、図4(B)の破線部分の拡大図に相当する。このとき、レーザ光128の照射面の近傍はアルゴンや窒素など不活性ガス雰囲気中にしておく。すると、レーザ光128で加熱されたステム104が溶融した際にも溶融部分の表面酸化のおそれを低減することができる。ここで、ステム104の材料である超硬材は複数の金属からなる複合材(合金)であるため融点が異なる。しかし、レーザ光128の照射される領域(先端部分)は微小領域なので、所定のレーザ光128は、高いエネルギ密度を有してステム104を構成する複合材料を瞬時に溶融させる。
【0038】
次に、所定のレーザ光128の照射後、レーザ光128の照射が止められ、放置される。レーザ光128に照射されて溶融したステム104の材料は重力により降下し、表面張力により溶解部分は球形に成形される。このとき、レーザ光128の照射領域は微小なので、溶融部分の温度は急速に下がり球形のまま固化して、ステム104と同一材料の先端球106が成形される(ステップS8)。この様子を図4(D)に示す。なお、ステム104は鉛直方向に立てられて、レーザ光128も鉛直方向から照射されるので、固化した先端球106はステム104の軸の中心に成形される。
【0039】
具体的な所定のレーザ光128の条件の一例を以下に示す。
【0040】
使用したのは、パルス制御されたYAGレーザ光であり、外径20μφのステム104の先端部分に対してレーザ集光系124により、直径20μφのレーザ光128が集光された。レーザ光128の照射時間は1msec、そしてこの際のレーザ光128の照射エネルギは0.02Jであった。結果として、直径27μφの先端球106がステム104の先端部分に成形できた。なお、この成形歩留りは、9割を超えたものであった。
【0041】
このようにして、位置決めされたステム104の先端部分にレーザ光128を照射することで、微小な先端球106を備えるスタイラス100を容易に成形することができる。その際に、最初にレーザ光128の設定を行うだけで成形中の制御は不要であり、工数も少なく(例えば1msecという)短時間で安定して高品質の先端球106の成形が可能である。そのため、成形に要する熟練を不要とすることができ、スタイラス100を高い歩留りで成形することができる。同時に、リードタイムの短縮と低コスト化が可能である。
【0042】
次に、上述してきたスタイラス100を接触式計測用プローブに用いた形状測定機について、図5を用いて以下に説明する。
【0043】
形状測定機150は、図5に示す如く、ベース152上に固定された門形のフレームを有し、その門形のフレーム上にヘッド160を備える。門形のフレームは、ベース152のY方向の両端に固定された一対のコラム156と、該一対のコラム156間に架け渡されたビーム158とからなる。ヘッド160は、ビーム158上でY方向に移動可能である。ヘッド160は、内部にZ方向への移動機構を備え、スタイラス100を取り付けた検出器162をZ方向に移動させることができる。又、ヘッド160は、スタイラス100を微小振動させる機構も備えている。検出器162は、スタイラス100を介して、XYZ方向において圧力乃至変位を検出することができる。又、ベース152上の一対のコラム156の間にはX方向に移動可能なX軸ステージ154が設けられている。そして、X軸ステージ154上には測定対象となるワーク(被形状測定物)170が固定される。このため、形状測定機150は、スタイラス100の先端球106に対してワーク(被形状測定物)170をXYZ方向に相対的に移動させてその先端球106の変位若しくは圧力によってワーク(被形状測定物)170の形状を測定することができる。
【0044】
ここで、形状測定機150は、微小振動で測定するモードを有している。図5(B)に示す如く、スタイラス100の先端球106がワーク(被形状測定物)170に接触していない状態では、スタイラス100は微小振動で振動し、その振動状態を図(B)の如く維持する。そして先端球106がワーク(被形状測定物)170に接触すると、スタイラス100の振動はワーク(被形状測定物)170により拘束されて、振動の振幅が減少する(図5(C)参照)。この減少がある一定レベルを下回った時に、ワーク(被形状測定物)170への接触状況を判断して、次の計測のために先端球106がワーク(被形状測定物)170から離れる方向にワーク(被形状測定物)170を相対移動させる。そして、先端球106がワーク(被形状測定物)170を離れるとスタイラス100の振動はワーク(被形状測定物)170に接触していない状態(図5(B)参照)に復帰して、次の測定を行うこととなる。
【0045】
このようにして、スタイラス100が均一で高品質で長寿命となることにより、形状測定機150としても測定精度が安定となり、メンテナンスの間隔を長くでき、低コスト化が可能となる。このとき、微小なスタイラス100であっても高い信頼性のもとで使用することができるので、安定して高分解能な形状測定が可能である。
【0046】
又、非常に微細なスタイラス100を用いた場合であっても、スタイラス100が微小振動することにより、スタイラス100のワーク(被形状測定物)170への張付きを防止することができ、高分解能な接触式の測定を安定して行うことができる。
【0047】
本発明について本実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。即ち本発明の要旨を逸脱しない範囲においての改良並びに設計の変更が可能なことは言うまでも無い。
【0048】
本実施形態においては、レーザ光128は鉛直方向(Z方向)に向けられたステム104の軸(光軸O)上でステム104の先端部分に、図2で上から下に照射されたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、鉛直方向に向けられたステムの軸(光軸O)上であっても、ステムが下を向き、レーザ光が光軸O上で、下から上に照射されてステムの先端部分に照射されてもよい。又、光軸Oから外れた方向からレーザ光がステムの先端部分に照射されても構わない。又、ステムの軸が鉛直方向(Z方向)と平行でない斜めの状態で配置されて、レーザ光がステムの先端部分に照射されても構わない。その際に先端球がステムに対して斜めに成形された場合であっても、ステムの中心と先端球との中心を補正することによりスタイラスとして正常な機能を保持させることができる。又、意図的にステムの中心と先端球との中心とをずらして、スタイラスを成形してもよい。
【0049】
又、本実施形態においては、母材102はワイヤ電極136によって放電加工がなされていたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ステムの外径が市販の母材の外径で良い場合においてはワイヤ電極による放電加工を行わなくても良い。
【0050】
又、本実施形態においては、レーザ光128は、パルス制御されていたが、本発明はこれに限定されず、連続発振が可能なレーザ光を用いてもよい。
【0051】
又、本実施形態においては、スタイラス100を微小振動させていたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えばスタイラスを微小振動させずに形状測定を行っても良い。
【0052】
又、本実施形態においては、レーザ128が照射される箇所においては不活性ガスが用いられていたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、大気中で大気の雰囲気であっても構わない。
【符号の説明】
【0053】
1、10、20、100…スタイラス
4、14、24、104…ステム
6、16、26、106…先端球
102…母材
110…レーザ成形機
112、152…ベース
114、154…X軸ステージ
116、156…コラム
118、158…ビーム
120…スライダ
122…光学ユニット
124…レーザ集光系
126…レーザ取り入れポート
128…レーザ光
130…ビューア
134…放電加工ユニット
136…ワイヤ電極
140…4軸成形台
150…形状測定機
160…ヘッド
170…ワーク(被形状測定物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状のステムと該ステムの先端に設けられた先端球とを備えて接触式計測用プローブに用いられるスタイラスの成形方法において、
前記ステムを位置決めする工程と、
該位置決めされたステムの先端部分にレーザ光を照射する工程と、
該レーザ光を照射して該ステムの先端部分を溶融後、表面張力により該溶融部分を前記先端球として成形して固化するまで放置する工程と、
を含むことを特徴とするスタイラスの成形方法。
【請求項2】
前記レーザ光は、鉛直方向に向けられた前記ステムの軸上から照射されることを特徴とする請求項1に記載のスタイラスの成形方法。
【請求項3】
前記レーザ光を照射する工程の前に、棒状の母材に対して放電加工を行い、該母材の少なくとも先端部分を小径加工してステムを形成することを特徴する請求項1又は2に記載のスタイラスの成形方法。
【請求項4】
前記レーザ光は、パルス制御されたレーザ光であることを特徴とする請求項1乃至3に記載のスタイラスの成形方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のスタイラスの成形方法によって成形されることを特徴とするスタイラス。
【請求項6】
請求項5に記載のスタイラスを用いて、被形状測定物の形状測定を行うことを特徴とする形状測定機。
【請求項7】
前記スタイラスは微小振動させられることを特徴とする請求項6に記載の形状測定機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−230534(P2010−230534A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−79136(P2009−79136)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】