説明

スタッカークレーン

【課題】スタッカークレーンにおいて、走行車輪同士の距離を短くし、軽量化・コストダウンも図る。
【解決手段】スタッカークレーンは、ラック2の複数の物品収納棚13との間で物品Wを移載するためのものであって、上下方向に延びる前側マスト22Aと、前側マスト22Aに沿って昇降可能な昇降台27と、前側マスト22Aに装着された走行車輪23とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタッカークレーンに関し、特に、上下方向に延びるマストと、マストに沿って昇降可能な昇降台とを有するスタッカークレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動倉庫は、例えば、一対のラックと、スタッカークレーンと、入庫ステーションと、出庫ステーションとを備えている。一対のラックは、前後方向に所定間隔をあけるようにして設けられている。スタッカークレーンは、前後のラック間において左右方向に移動自在に設けられている。入庫ステーションは、一方のラックの側方に配置されている。出庫ステーションは、他方のラックの側方に配置されている。ラックは、上下・左右に多数の物品収納棚を有する。スタッカークレーンは、走行台車と、それに設けられたマストに昇降自在となされた昇降台と、それに設けられた物品移載装置(例えば、前後方向に摺動自在に設けられたスライドフォーク)とを有している。
【0003】
走行台車は、下部フレームと、それに取り付けられた走行車輪、走行モータおよび制御盤などから構成されている。走行車輪は、下部フレームの走行方向前後両側に設けられている。
【0004】
走行車輪をマストの真下に配置したスタッカークレーンが知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平4−29508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のスタッカークレーンでは、走行車輪同士の距離が短くなりそのため走行台車の走行方向前後方向寸法を短くできるという効果が得られる。しかし、依然として以下の課題がある。つまり、走行車輪を回転自在に支持するための構造を下部フレームに設ける必要があり、そのため下部フレームに所定の強度が必要とされる。その結果、スタッカークレーンの軽量化・コストダウンが困難である。
【0007】
本発明の課題は、スタッカークレーンにおいて、走行車輪同士の距離を短くし、さらに軽量化・コストダウンも図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るスタッカークレーンは、棚の複数の物品載置部との間で物品を移載するためのものであって、上下方向に延びるマストと、マストに沿って昇降可能な昇降台と、マストに平面視で重なる位置で装着された走行車輪とを備えている。
このスタッカークレーンでは、走行車輪がマストに装着されているので、走行車輪同士の距離が短くなるとともに、下部フレームの強度を高める必要がなくなりそのため軽量化・コストダウンを実現できる。
なお、走行車輪は、マストに対して平面視で完全に重なっている必要はなく、一部が外れていてもよい。
【0009】
走行車輪は、車輪本体と、車輪本体から延びる車軸とを有していてもよい。その場合は、マストには、走行車輪を側方から挿入可能な切り欠きが形成されている。また、マストの外側に取り付けられ、車軸を回転自在に支持する一対の車軸支持部材をさらに備えている。
このスタッカークレーンでは、走行車輪はマストの切り欠きからマスト内に挿入され、さらに車軸が車軸支持部材によってマストの外側から支持される。このように走行車輪をマストに取り付ける作業が容易にある。なお、「切り欠き」とは、マストの内部と外部を連通する空間であって、縁が連続していても途中で切れていてもよい。
【0010】
床面に配置されたレールにガイドされるガイドローラと、ガイドローラが取り付けられてマストに固定された固定部材とをさらに備えていてもよい。その場合、固定部材は、ガイドローラが取り付けられた第1部分と、第1部分から延びマストの切り欠きを覆うように固定された第2部分とを有している。
このスタッカークレーンでは、ガイドローラが取り付けられた固定部材がマストの切り欠きを覆うように固定されているので、専用の部材によって部品点数が増えることがない。なお、「覆う」とは、切り欠きの少なくとも一部を外側から見えない状態にすることをいう。
【0011】
走行車輪を回転させるための走行モータをさらに備えていてもよい。その場合、走行モータはマストの下端部の左右側面に取り付けられている。走行モータは、鉛直方向に対して傾いて設けられ、マストに固定された下端部と、下端部より走行方向外側に位置する上端部とを有する。
この装置では、走行モータが鉛直方向に対して傾いてマストに固定されているので、スタッカークレーンの昇降台をマストにガイドするガイドローラが走行モータに当接しにくくなり、その結果、昇降台をより下方にまで下ろすことができるようになる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るスタッカークレーンでは、走行車輪同士の距離が短いうえに、軽量化・コストダウンも実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態が採用された自動倉庫の概略平面図。
【図2】図1のII−II矢視図であり、ラックとスタッカークレーンを説明するための図。
【図3】スタッカークレーンの制御部の機能ブロック図。
【図4】前側マストの下部の正面図。
【図5】前側マストの下部の側面図。
【図6】前側マスト下部の横断面図。
【図7】車軸支持部材の正面図。
【図8】後側マストの下部の側面図。
【図9】走行車輪を取り付ける前の前側マストの下部の正面図。
【図10】ガイドローラ取り付けアッセンブリーを取り付ける前の前側マストの下部の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(1)自動倉庫全体
図1および図2を用いて、本発明に係る一実施形態としての自動倉庫1を説明する。図1は、本発明の一実施形態が採用された自動倉庫の概略平面図である。なお、この実施形態において、図1の上下方向が自動倉庫1の左右方向であり、図1の左右方向が自動倉庫1の前後方向である。
【0015】
自動倉庫1は、主に、一対のラック2と、スタッカークレーン3とから構成されている。
【0016】
(2)ラック
一対のラック2は、図1の左右方向に延びるスタッカークレーン通路5を挟むように配置されている。ラック2は、所定間隔で左右に並ぶ多数の前側支柱7と、前側支柱7の後方にそれとの間に所定間隔をあけて並ぶ後側支柱9と、前側支柱7および後側支柱9に設けられた多数の物品支承部材11とを有している。左右一対の物品支承部材11によって、物品収納棚13が構成されている。各物品収納棚13には、図から明らかなように、物品Wが載置可能である。なお、各物品Wは、パレットP(図2を参照。)上に載置され、パレットPと共に移動させられる。なお、左右一対の物品支承部材11間は、後述のスライドフォーク29の上下方向の移動を許容するフォーク通過間隙15となっている。
【0017】
(3)スタッカークレーン
図2を用いて、スタッカークレーン3について説明する。図2は、図1のII−II矢視図であり、ラック2とスタッカークレーン3を説明するための図である。
スタッカークレーン通路5に沿って、上下一対の走行レール21が設けられており、これら走行レール21にスタッカークレーン3が左右に移動可能に案内されている。スタッカークレーン3は、主に、一対のマスト22である前側マスト22Aおよび後側マスト22Bと、前側マスト22Aおよび後側マスト22Bにそれぞれ装着された走行車輪23と、前側マスト22Aおよび後側マスト22Bに昇降自在に装着された昇降台27と、昇降台27に進退機構(図示せず)によって前後方向に摺動自在に設けられたスライドフォーク29とを有している。
昇降台27は、前側マスト22Aおよび後側マスト22Bにガイドされる昇降ガイドローラ28を有する。昇降ガイドローラ28は、一方のマストに対して上下一対ずつ合計4個が当接している。より具体的には、一対の昇降ガイドローラ28は、マスト22の左右方向両側面の走行方向内側部分に当接している。
なお、図2において、昇降台27のスライドフォーク29の上には、パレットPと物品Wが載っている。
【0018】
マスト22は、内部が空洞で断面四角形状の支柱である。前側マスト22Aおよび後側マスト22Bの下端同士は下側フレーム25によって連結され、上端同士は上側フレーム26によって連結されている。
【0019】
走行車輪23は、マスト22の下端に装着されている。詳細については後述するが、このスタッカークレーン3では、走行車輪23がマスト22に装着されているので、走行車輪23同士の距離が短くなるとともに、下部フレームの強度を高める必要がなくなりそのため軽量化・コストダウンを実現できる。
【0020】
スタッカークレーン3は、制御盤41と、走行モータ59と、昇降モータ63とを有している。制御盤41は、後側マスト22Bのさらに後側に設けられている。走行モータ59は、前側マスト22Aに設けられている。昇降モータ63は、前側マスト22Aに設けられている。
制御盤41は、内部に、走行モータ59や昇降モータ63用のインバータ、コンバータ、ブレーカ等の電装機器を有している。制御盤41は、さらに、制御基板ボックス(図示せず)を有している。制御盤41は、これら電装機器を覆うフレームを有している。制御盤41は、電源(図示せず)、走行モータ59、昇降モータ63、スライドフォーク29等に動力ケーブル(図示せず)を介して接続されている。制御盤41は、さらに、制御ケーブルを介して、通信インターフェースを介して地上制御盤、センサ類、スライドフォーク29並びに制御電源に接続されている。
【0021】
昇降モータ63は、図2に示すように、ドラム64を駆動可能である。ドラム64からは、ワイヤ40が延びている。ワイヤ40は、上側フレーム26に設けられたローラ44に掛け回され、さらに昇降台27に連結されている。
【0022】
(4)スタッカークレーンの制御構成
次に、図3を用いて、制御基板ボックス(図示せず)内に配置されたクレーンコントローラ51について説明する。図3は、スタッカークレーンの制御部の機能ブロック図である。
クレーンコントローラ51は、スタッカークレーン3に搭載され、自動倉庫1全体を制御するシステムコントローラ52と通信可能である。
【0023】
クレーンコントローラ51は、メインコントローラ53と、走行制御部54と、昇降制御部55と、移載制御部56とを有している。これら制御部は、CPUやメモリ等のコンピュータ・ハードウェアを含んでおり、図3においてはコンピュータ・ハードウェアとソフトウェアの協働によって実現される機能ブロックとして表現されている。なお、これら制御部は、複数の機能を持つ単独のコンピュータによって実現されもよい。
【0024】
メインコントローラ53は、走行制御部54,昇降制御部55および移載制御部56と交信可能である。
【0025】
走行制御部54は、走行車輪23の走行・停止を制御するための制御部であり、走行モータ59と、ロータリエンコーダ61に接続されている。昇降制御部55は、昇降台27を前側マスト22Aおよび後側マスト22Bに沿って上下動させるための制御部であり、昇降モータ63と、ロータリエンコーダ65に接続されている。移載制御部56は、スライドフォーク29を前後方向に移動させるための制御部であり、移載モータ67と、ロータリエンコーダ69に接続されている。
【0026】
(5)走行車輪装着構造
図4〜図7を用いて、前側マスト22Aに設けられた走行車輪装着構造70について説明する。図4は前側マストの下部の正面図であり、図5は前側マストの下部の側面図であり、図6は前側マスト下部の横断面図であり、図7は車軸支持部材の正面図である。
【0027】
走行車輪装着構造70は、主に、走行車輪23と、一対の車軸支持部材71と、ガイドローラ取り付けアッセンブリー72とから構成されている。
【0028】
最初に、前側マスト22Aの下部の構造について説明する。前側マスト22Aの前側面22aの下部には、走行方向外側に車輪挿入用孔22cが形成されている。車輪挿入用孔22cは、上下方向に長い概ね長方形状である。また、車輪挿入用孔22cの両側には、第1固定用プレート31が溶接により固定されている。第1固定用プレート31は上下方向に長く延びる概ね長方形状のプレート部材であり、上下に並んだ一対のボルト孔31aを有している。
【0029】
前側マスト22Aの側面22bには円形の取り付け孔22dが形成されており、取り付け孔22d内には第2固定用プレート32が溶接で固定されている。第2固定用プレート32は、概ね円形状の部材であり、中心孔32aを有している。また、第2固定用プレート32には、複数のボルト孔32bが形成されている。なお、中心孔32aの中心線O−Oは、車輪挿入用孔22cの上下方向中心より低い位置に設けられている(図9を参照。)。
【0030】
走行車輪23は、車輪本体73と、車輪本体73を貫通する車軸74とから構成されている。車輪本体73は、マスト22内の空間に配置されている。車軸74は、前側マスト22Aに取り付けられた第2固定用プレート32の中心孔32aからマスト22の外部に突出している。
【0031】
車軸支持部材71は、円板状の第1プレート75、第2プレート76および第3プレート77から構成されており、前側マスト22Aの第2固定用プレート32にボルト78によって固定されている。前側マスト22A側から第1プレート75,第2プレート76および第3プレート77の順番で配置され、又その順番で外径が小さくなっている。第1プレート75の内径は第2固定用プレート32の外径に等しくて、第1プレート75は第2固定用プレート32にはまりこんでいる。第2プレート76および第3プレート77の内径は第2固定用プレート32の内径と等しく、これらの内周面つまり車軸支持部材71の中心孔71aが車軸74を回転時在荷支持する軸受け面になっている。ボルト78は、第2プレート76および第3プレート77内の孔を通って、第2固定用プレート32のボルト孔32bに螺合している。
【0032】
車軸74の一端には、車軸支持部材71からの移動を規制するための抜け止めプレート79がボルト80によって固定されている。車軸74の他端は、走行モータ59の出力軸に連結されている。
【0033】
以上のように車軸支持部材71を前側マスト22Aに装着することで、従来の車輪ケースが不要になっている。また、軸受を取り付けるための複雑な構造を下部フレームに形成する必要がない。
【0034】
ガイドローラ取り付けアッセンブリー72は、主に、取り付けプレート81と、一対の走行ガイドローラ82とから構成されている。取り付けプレート81は、走行ガイドローラ82が取り付けられる第1部分83と、マスト22に取り付けられる第2部分84とから構成されている。第1部分83は、前後方向に長く延びる概ね長方形状のプレートである。第1部分83の前後方向両側の下部には、走行ガイドローラ82が取り付けられている。走行ガイドローラ82には、走行ガイドローラ82を回転自在に支持する軸88が設けられている。軸88は、走行ガイドローラ82から上方に延びており、上端が第1部分83の孔83a内を貫通し、さらにボルト89によって固定されている。第2部分84は、第1部分83の前側マスト22A側端部から上方に延びる概ね正方形状のプレートである。第2部分84は、複数のボルト86によって、マスト22に固定された第1固定用プレート31に固定されている。これにより、第2部分84は前側マスト22Aの車輪挿入用孔22cを覆っている。ここで「覆っている」とは、正面から見た場合に車輪挿入用孔22cの少なくとも一部、好ましくは大半が取り付けプレート81によって見えなくなっている状態をいう。この実施形態では、車輪挿入用孔22cの上端の一部のみが見えるようになっている。
【0035】
なお、取り付けプレート81は、第1部分83と第2部分84を連結する概ね三角形状のリブ85をさらに有している。
【0036】
以上のようにして、走行車輪23は走行レール21の上面に載っており、一対の昇降ガイドローラ28は走行レール21の側面にそれぞれ当接している。
【0037】
このスタッカークレーン3では、走行車輪23が前側マスト22Aに装着されているので、走行車輪23同士の距離が短くなるとともに、下側フレーム25の強度を高める必要がなくなりそのため軽量化・コストダウンを実現できる。
【0038】
このスタッカークレーン3の利点を下記にさらに詳細に説明する。
・前側マスト22Aの真下に走行車輪23が配置されているので、車輪ピッチが狭くなっている。したがって、走行レール21の全長も短くできる。
・走行車輪23が前側マスト22Aの内部に収納されているので、スタッカークレーン3の高さを短くできる。
・前側マスト22Aなどのスタッカークレーン3の自重を走行車輪23の真上で受けるので、従来の高強度の下部フレームが不要になる。
・前側マスト22A自体に走行車輪23が設けられているので、前側マスト22Aを据え付ける作業時に、クレーンの他の部材から離れた位置で前側マスト22Aを立てておいて、走行レール21に走行車輪23を載せて前側マスト22Aを移動させることができる。
【0039】
図8を用いて、後側マスト22Bにおける走行車輪装着構造70について説明する。図8は、後側マストの下部の側面図である。
後側マスト22Bにおける走行車輪装着構造70は、前側マスト22Aにおける走行車輪装着構造70とほぼ同じであり、走行モータが後側マスト22Bに装着されていない点のみが異なる。以上より、後側マスト22Bの走行車輪装着構造70においても前側マスト22Aの走行車輪装着構造70と同じ効果が得られる。
【0040】
(6)走行車輪の取り付け・取り外し作業
図9および図10を用いて、走行車輪の取り付け・取り外し作業について説明する。図9は、走行車輪を取り付ける前の前側マストの下部の正面図である。図10は、ガイドローラ取り付けアッセンブリーを取り付ける前の前側マストの下部の正面図である。
最初に、走行車輪23を前側マスト22Aに取り付ける作業について説明する。図9の状態から、車輪本体73を前側マスト22Aの車輪挿入用孔22cから内部に入れる。次に、車軸74を前側マスト22Aの第2固定用プレート32の中心孔32aを貫通させ、さらに車輪本体73に貫通させる。この状態で車輪本体73を車軸74に固定する。
【0041】
続いて、車軸支持部材71を車軸74の両端に通し、その状態で車軸支持部材71をボルト78を用いて前側マスト22Aの第2固定用プレート32に固定する。さらに、車軸74の一端に抜け止めプレート79をボルト80によって固定する。これにより、図10の状態が得られる。
【0042】
さらに、ガイドローラ取り付けアッセンブリー72をボルト86によって前側マスト22Aの第1固定用プレート31に固定する。この結果、図4〜図6に示すように、走行車輪装着構造70が完成する。
【0043】
以上に述べたように、このスタッカークレーン3では、走行車輪23は前側マスト22Aの切り欠きから前側マスト22A内に挿入され、さらに車軸74が車軸支持部材71によって前側マスト22Aの外側から支持される。このように走行車輪23を前側マスト22Aに取り付ける作業が容易にある。
なお、走行車輪23を取り外す際には、取り付け作業と反対の作業を行う。
【0044】
(7)昇降台ガイドローラに関連する構造
昇降ガイドローラ28は、前側マスト22Aの側面22bに当接可能な一対の部材である。昇降ガイドローラ28が前側マスト22Aに対して移動できる最下方位置が、昇降台27の最下方位置を決定する。本実施形態では、走行車輪23が前側マスト22Aに取り付けられており、それによって複数の部材が前側マスト22Aに集中しているので、それら部材と昇降ガイドローラ28の干渉を防ぐことが昇降ガイドローラ28をより下方に移動可能とするために重要になる。以下に、そのための工夫を説明する。
【0045】
(7−1)走行モータの取り付け構造
走行モータ59は、前側マスト22Aの下端に固定されている。より具体的には、走行モータ59は、前側マスト22Aの下端部の側面22b(走行方向を向いた場合の左右側面)に固定されている。走行モータ59は、下端部がマストに固定され、上下方向に長く延びている。しかし、走行モータ59は、上端が下端より走行方向前側に位置するように傾けて配置されている。これにより、走行モータ59の大半の部分が昇降ガイドローラ28の走行面である前側マスト22Aの側面22bの走行方向後側部分から外れている。これにより、昇降ガイドローラ28は走行モータ59の下端部近傍まで移動可能である。
【0046】
(7−2)車軸支持部材の形状
車軸支持部材71を構成する複数のプレート75,76,77が円形であるので、昇降ガイドローラ28を車軸支持部材71に近接する位置まで下方に下ろすことができる。もしも車軸支持部材を構成する部材が四角形状であれば、その角部によってガイドローラの下方への移動が制限されてしまう。また、複数のプレート75,76,77は前後方向外側にいくに従って外径が小さくなっているので、昇降ガイドローラ28を車軸支持部材71に近接する位置まで下方に下ろすことができる。もしも複数のプレートの外径が前後方向外側にいくにしたがって変化していないのであれば、前後方向外側のプレートによってガイドローラの下方への移動が制限されてしまう。
【0047】
以上のようにして、昇降台27が下方まで移動可能になるので、スタッカークレーン3の下部のデッドスペースを減らせる。
【0048】
(8)特徴
スタッカークレーンは、ラック2の複数の物品収納棚13との間で物品Wを移載するためのものであって、上下方向に延びる前側マスト22Aと、前側マスト22Aに沿って昇降可能な昇降台27と、前側マスト22Aに平面視で重なる位置で装着された走行車輪23とを備えている。
このスタッカークレーン3では、走行車輪23が前側マスト22Aに装着されているので、走行車輪23同士の距離が短くなるとともに、下側フレーム25の強度を高める必要がなくなりそのため軽量化・コストダウンを実現できる。
なお、実施形態では、走行車輪23は、前側マスト22Aに対して平面視で完全に重なっているが、一部が外れていてもよい。
【0049】
走行車輪23は、車輪本体73と、車輪本体73から延びる車軸74とを有している。前側マスト22Aには、走行車輪23を側方から挿入可能な切り欠きが形成されている。また、前側マスト22Aの外側に取り付けられ、車軸74を回転自在に支持する一対の車軸支持部材71をさらに備えている。
このスタッカークレーン3では、走行車輪23は前側マスト22Aの切り欠きから前側マスト22A内に挿入され、さらに車軸74が車軸支持部材71によって前側マスト22Aの外側から支持される。このように走行車輪23を前側マスト22Aに取り付ける作業が容易になる。
【0050】
床面に配置された走行レール21にガイドされる走行ガイドローラ82と、走行ガイドローラ82が取り付けられて前側マスト22Aに固定された取り付けプレート81とをさらに備えている。取り付けプレート81は、走行ガイドローラ82が取り付けられた第1部分83と、第1部分83から延びて前側マスト22Aの車輪挿入用孔22cを覆うように固定された第2部分84とを有している。
このスタッカークレーンでは、走行ガイドローラ82が取り付けられた取り付けプレート81が前側マスト22Aの車輪挿入用孔22cを覆うように固定されているので、専用の部材によって部品点数が増えることがない。
【0051】
走行車輪23を回転させるための走行モータ59をさらに備えている。走行モータ59は前側マスト22Aの下端部の側面22bに取り付けられている。走行モータ59は、鉛直方向に対して傾いて設けられ、前側マスト22Aに固定された下端部と、下端部より走行方向外側に位置する上端部とを有する。
この装置では、走行モータ59が鉛直方向に対して傾いて前側マスト22Aに固定されているので、スタッカークレーン3の昇降台27を前側マスト22Aにガイドする昇降ガイドローラ28が走行モータ59に当接しにくくなり、その結果、昇降台27をより下方にまで下ろすことができるようになる。
【0052】
(9)他の実施形態
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0053】
(A)前記実施形態では走行モータは一方の走行車輪に対応してのみ設けられていたが、本発明はそのような実施形態に限定されない。例えば、両方の走行車輪に走行モータが配置されていてもよい。この場合に、前後の走行車輪の同期を取れば、前後のマストを連結する部材を省略できる。さらにマストの下端同士を互いに一定以上離れないようにロープ等で連結するだけでもよくなる。
【0054】
(B)前記実施形態では車輪の車輪本体をマスト内に挿入した後に車軸を車輪本体に固定したが、本発明はそのような実施形態に限定されない。例えば、車輪本体を車軸に予め固定して走行車輪を完成しておき、それをマスト内に挿入するようにしてもよい。その場合、マストには車軸も貫通可能な切り欠きが形成されている必要がある。
【0055】
(C)前記実施形態ではマストは最下端までストレートに形成されていたが、本発明はそのような実施形態に限定されない。例えば、マストの下端部をそれより上側の部分より走行方向前後の幅を大きくして、走行車輪を収納するようにしてもよい。
【0056】
(D)前記実施形態では車輪はマストの下端部内に完全に収納されるように配置されていたが、本発明はそのような実施形態に限定されない。例えば、車輪がマストに対して完全に覆われておらず、つまり一部が露出されるようになっていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、上下方向に延びるマストと、マストに沿って昇降可能な昇降台とを有するスタッカークレーンに広く適用できる。
【符号の説明】
【0058】
1 自動倉庫
2 ラック
3 スタッカークレーン
5 スタッカークレーン通路
7 前側支柱
9 後側支柱
11 物品支承部材
13 物品収納棚(物品載置部)
15 フォーク通過間隙
21 走行レール
22 マスト
22A 前側マスト
22B 後側マスト
22a 前側面
22b 側面
22c 車輪挿入用孔
22d 取り付け孔
23 走行車輪
25 下側フレーム
26 上側フレーム
27 昇降台
28 昇降ガイドローラ
29 スライドフォーク
31 第1固定用プレート
31a ボルト孔
32 第2固定用プレート
32a 中心孔
32b ボルト孔
40 ワイヤ
41 制御盤
44 ローラ
51 クレーンコントローラ
52 システムコントローラ
53 メインコントローラ
54 走行制御部
55 昇降制御部
56 移載制御部
59 走行モータ
61 ロータリエンコーダ
63 昇降モータ
64 ドラム
65 ロータリエンコーダ
67 移載モータ
69 ロータリエンコーダ
70 走行車輪装着構造
71 車軸支持部材
71a 中心孔
72 ガイドローラ取り付けアッセンブリー
73 車輪本体
74 車軸
75 第1プレート
76 第2プレート
77 第3プレート
78 ボルト
79 抜け止めプレート
80 ボルト
81 取り付けプレート(固定部材)
82 走行ガイドローラ
83 第1部分
83a 孔
84 第2部分
85 リブ
86 ボルト
88 軸
89 ボルト
P パレット
W 物品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
棚の複数の物品載置部との間で物品を移載するためのスタッカークレーンであって、
上下方向に延びるマストと、
前記マストに沿って昇降可能な昇降台と、
前記マストに平面視で重なる位置で装着された走行車輪と、
を備えたスタッカークレーン。
【請求項2】
前記走行車輪は、車輪本体と、前記車輪本体から延びる車軸とを有しており、
前記マストには、前記走行車輪を側方から挿入可能な切り欠きが形成されており、
前記マストの外側に取り付けられ、前記車軸を回転自在に支持する一対の車軸支持部材をさらに備えている、請求項1に記載のスタッカークレーン。
【請求項3】
床面に配置されたレールにガイドされるガイドローラと、
前記ガイドローラが取り付けられて前記マストに固定された固定部材とをさらに備えており、
前記固定部材は、前記ガイドローラが取り付けられた第1部分と、前記第1部分から延びて前記マストの前記切り欠きを覆うように固定された第2部分とを有している、請求項2に記載のスタッカークレーン。
【請求項4】
前記走行車輪を回転させるための走行モータをさらに備え、
前記走行モータは、マストの下端部の左右側面に取り付けられており、
前記走行モータは、鉛直方向に対して傾いて設けられ、前記マストに固定された下端部と、前記下端部より走行方向外側に位置する上端部とを有する、請求項1〜3のいずれかに記載のスタッカークレーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−32002(P2011−32002A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−177389(P2009−177389)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】