説明

スタンプミル

【課題】被粉砕物を粉砕した製品の品質維持が容易にできるスタンプミルを提供する。
【解決手段】スタンプミル1は、被粉砕物を収納する凹部41が形成された臼体40と、凹部41の上端開口から凹部41内に突入して凹部41内の被粉砕物を粉砕するために上下動可能に支持された杵部材50と、該杵部材50を上下方向に駆動するための駆動機構60とを有するものであり、凹部41に対して鉛直線上に重ならない位置で上下方向に延設されたシャフト80と、シャフト80に設けられ、該シャフト80に沿って上下に摺動可能なスライドブロック90とを備え、スライドブロック90は、杵部材50を固定支持し、駆動機構60は、スライドブロック90をシャフト80に沿って上下に摺動させて、杵部材50を上下動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被粉砕物を収納する凹部が形成された臼体と、凹部の上端開口から凹部内に突入して凹部内の被粉砕物を粉砕するために上下動可能に支持された杵部材と、該杵部材を上下方向に駆動するための駆動機構とを有するスタンプミルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のスタンプミルは、臼体に収納した香辛料や米、麦、豆等の穀粒類を杵部材で粉砕するものとして、例えば特許文献1に示すようなものが知られている。
すなわち、粉砕する穀粒類を収納する石臼の直上に軸杵を上下動可能に配設し、該軸杵には回転子である回転ベースを設けて構成されている。
【0003】
この回転ベースは円筒カムの周縁に乗っており、円筒カムの周縁はその高さが連続的に変化した形状を有し、円筒カムが回転すると円筒カムの周縁の低い部分に乗っている回転ベースが円筒カムの回転とともに回転しながら円筒カムの周縁の高い部分に押し上げられ、円筒カム周縁の最高点を越えると円筒カムの周縁から外れて軸杵とともに落下し、このとき軸杵の下端部が石臼に収納された被粉砕物を粉砕し、その後、再び円筒カムの周縁の低い部分に回転ベースが乗るという動作を繰り返すようにしたものである。
【0004】
また、図7に示したものは、円筒カムの周縁に乗る回転ベースをローラに変えたものである。
【0005】
【特許文献1】特開昭58−163451号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した特許文献1に記載された従来の技術では、円筒カムの周縁に乗っている回転ベースに注してある潤滑油が軸杵を伝わって垂れて、石臼内の被粉砕物に混入してしまうという問題点があった。
【0007】
この問題点は、被粉砕物を粉砕加工した製品の品質に直結するので、潤滑油が被粉砕物に混入することを防いで製品の品質を保証するためには、人手によって潤滑油の垂れを注意し、監視するという作業が必要であった。
【0008】
また、図7に示したものの場合も、ローラの回転軸に注した潤滑油が軸杵を伝わって垂れ、石臼内の被粉砕物に混入し得る状況は、特許文献1に記載されたものと同じであり、同様に前記問題点があった。
【0009】
また、特許文献1のスタンプミルに代表されるように、従来のスタンプミルは基礎コンクリートの上に不動に立設してあるので移動させることができず、メンテナンスに困難を伴うことがあるという問題点があった。
【0010】
また、一旦、所定位置に立設したスタンプミルを他所に移すことは、基礎コンクリートを新たに打ち直さなければならない等の工事が必要になり、またスタンプミルを移すこと自体が大掛かりな作業となってコストも嵩むという問題点があった。
【0011】
このような設置やメンテナンスを容易にしたり、設置場所を変えることができるようにしたりするために車輪等を設けて移動可能にすることが考えられるが、スタンプミルは、装置全体の重量が大きい上に装置の稼働中は軸杵で石臼を突くという衝撃が連続して発生し続けるので、車輪が破損してしまうことが容易に想像され、このためスタンプミルを移動可能なものにすることは実現が困難であると考えられていた。
【0012】
さらに、従来のスタンプミルでは、軸杵あるいは軸杵の周辺部材のメンテナンスのために軸杵をスタンプミル本体から取り外すときは、軸杵を引き上げてスタンプミル本体から引き抜くようにしなければならず、また、スタンプミル本体に装着するときにはスタンプミル本体の上方から真っ直ぐに下ろすようにして差し込まなければならず、作業が大掛かりになる上に安全性にも問題点があった。
【0013】
本発明は、以上のような従来の技術が有する問題点に着目してなされたもので、被粉砕物を粉砕した製品の品質維持が容易にでき、さらにメンテナンスが容易にできるようにしたスタンプミルを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前述した目的を達成するための本発明の要旨とするところは、以下の各項の発明に存する。
[1]被粉砕物を収納する凹部(41)が形成された臼体(40)と、前記凹部(41)の上端開口から前記凹部(41)内に突入して凹部(41)内の被粉砕物を粉砕するために上下動可能に支持された杵部材(50)と、該杵部材(50)を上下方向に駆動するための駆動機構(60)とを有するスタンプミル(1)において、
前記凹部(41)に対して鉛直線上に重ならない位置で上下方向に延設されたシャフト(80)と、
前記シャフト(80)に設けられ、該シャフト(80)に沿って上下に摺動可能なスライドブロック(90)と、を備え、
前記スライドブロック(90)は、前記シャフト(80)の側方に前記杵部材(50)を固定支持し、
前記駆動機構(60)は、前記スライドブロック(90)を前記シャフト(80)に沿って上下に摺動させることにより、前記杵部材(50)を上下動させることを特徴とするスタンプミル(1)。
【0015】
[2]スタンプミル本体の下部(B)に、
設置面(5)に対してスタンプミル本体を固定した状態に支持するとともに、設置状態のスタンプミル(1)の姿勢を調節するための昇降可能な複数のレベル調節脚部(10)と、
前記各レベル調節脚部(10)を設置面(5)から離隔させた際に、スタンプミル本体を設置面(5)に対して移動可能に支持するキャスター(20)とを備えたことを特徴とする[1]に記載のスタンプミル(1)。
【0016】
[3]前記臼体(40)の前記凹部(41)に収納される被粉砕物の量を検知するための被粉砕物量検知センサ(110)を備え、
前記被粉砕物の量が所定の上限値に達したことを前記被粉砕物量検知センサ(110)が検知したときは、前記臼体(40)への被粉砕物の供給を停止し、
前記被粉砕物の量が所定の下限値に達したことを前記被粉砕物量検知センサ(110)が検知したときは、前記杵部材(50)の上下動を停止することを特徴とする[1]または[2]に記載のスタンプミル(1)。
【0017】
[4]前記杵部材(50)を上昇した位置に保持するためのロック機構(100,101,91a)を備え、
前記被粉砕物の量が所定の下限値に達したことを前記被粉砕物量検知センサ(110)が検知したときは、前記ロック機構(100,101,91a)によって前記杵部材(50)を上昇した位置に保持しておくことを特徴とする[3]に記載のスタンプミル(1)。
【0018】
[5]前記スライドブロック(90)は、
前記シャフト(80)に沿って上下に摺動可能なスライド部(91)と、
前記スライド部(91)に着脱可能であって該スライド部(91)との間に前記杵部材(50)を狭持固定可能な狭持部(92)とからなり、
前記杵部材(50)を狭持するようにして前記スライド部(91)と前記狭持部(92)とを固定手段(93)で固定することにより、前記杵部材(50)が前記スライドブロック(90)に固定支持されることを特徴とする[1],[2],[3]または[4]に記載のスタンプミル(1)。
【0019】
[6]前記被粉砕物の粉砕にともなって生じる該被粉砕物の微粉を臼体(40)から吸引するとともに、臼体(40)内の空気を換気して、被粉砕物の粉砕によって生じる熱が臼体(40)内にこもるのを防止する吸引手段(46,47)を備えたことを特徴とする[1]から[5]のいずれか一項に記載のスタンプミル(1)。
【0020】
前記本発明は次のように作用する。
スタンプミル(1)で粉砕加工する香辛料や米、麦、豆等の穀粒類等の被粉砕物は、臼体(40)の凹部(41)に収納される。杵部材(50)は、駆動機構(60)によって上下動可能に支持されており、落下すると下端が凹部(41)の上端開口から凹部(41)内に突入する。
【0021】
杵部材(50)は、その下端が臼体(40)の凹部(41)の底部に当接する位置まで下降できるように設定支持されている。これにより、臼体(40)の凹部(41)に突入した杵部材(50)の下端が被粉砕物に衝突してから凹部(41)の底部に当接するまでに被粉砕物が粉砕される。
【0022】
凹部(41)の底部に当接する位置まで下降した杵部材(50)は、駆動機構(60)によって上昇に転じ、所定の高さまで上昇した後に落下して、再び臼体(40)の凹部(41)に突入して被粉砕物を粉砕する。このとき、杵部材(50)は所定の高さから自然落下によって下降する。この上下動を連続して繰り返すことにより、被粉砕物を連続して所望の程度に粉砕加工することができる。
【0023】
上下動する杵部材(50)は、スライドブロック(90)を介してシャフト(80)に連結されており、このシャフト(80)は、凹部(41)に対して鉛直線上に重ならない位置で上下方向に延設されている。このスライドブロック(90)を駆動機構(60)が支持しながら上昇させる。前記所定の高さまで上昇したスライドブロック(90)は、駆動機構(60)による支持を失って杵部材(50)とともにシャフト(80)に沿って自然落下する。
【0024】
このように、臼体(40)の凹部(41)に対して鉛直線上に杵部材(50)が配設されているが、杵部材(50)の上下動に伴って部材同士の摺動箇所は、臼体(40)の凹部(41)に対する鉛直線上にはない。このため、摺動箇所に注した潤滑油が垂れてもシャフト(80)を垂れるだけで杵部材(50)を垂れ落ちることがないので、潤滑油が臼体(40)の凹部(41)に収納した被粉砕物に混入してしまうことがなく、被粉砕物を粉砕加工した粉砕物(製品)の品質を良好な状態に手間を掛けずに容易に維持することができる。
【0025】
このようなスタンプミル(1)を設置するときは、スタンプミル本体の下部(B)に設けてある各キャスター(20)が設置面(5)に接するように、全てのレベル調節脚部(10)を設置面(5)に接触しない状態まで上げておく。これにより、スタンプミル(1)を容易に移動することができる。
【0026】
スタンプミル(1)を所望の設置位置まで移動したら、キャスター(20)が設置面(5)から離れるまでレベル調節脚部(10)を下げることで、スタンプミル(1)の設置姿勢を調節する。これにより、スタンプミル本体の重量および被粉砕物の粉砕加工時に生じる衝撃をキャスター(20)で受けることがなくなるので、キャスター(20)の破損を防止することができる。
【0027】
臼体(40)の凹部(41)に収納される被粉砕物の量を検知する被粉砕物量検知センサ(110)を備えたものの場合には、被粉砕物を効率良く粉砕加工することができるとともに杵部材(50)の空打ちを防止することができる。
【0028】
すなわち、被粉砕物の量が臼体(40)の凹部(41)内で所定の上限値まで増加したことを被粉砕物量検知センサ(110)が検知したときは、臼体(40)への被粉砕物の供給を停止することにより、被粉砕物が多過ぎるために粉砕が良好に行われない事態を避けて、粉砕加工の効率が悪くなることを防止することができる。
【0029】
また、被粉砕物の量が所定の下限値まで減少したことを被粉砕物量検知センサ(110)が検知したときは、杵部材(50)の上下動を停止することにより、杵部材(50)の空打ちを防止することができる。なお、被粉砕物量検知センサ(110)は、例えば超音波センサからなるものである。
【0030】
なお、杵部材(50)を上昇した位置に保持するためのロック機構(100,101,91a)を備えたものとすることにより、被粉砕物の量が所定の下限値まで減少したことを被粉砕物量検知センサ(110)が検知したときに、ロック機構(100,101,91a)によって杵部材(50)を上昇した位置に保持しておくようにしても良い。
【0031】
さらに、スライドブロック(90)がシャフト(80)側に設けられたスライド部(91)と該スライド部(91)に着脱可能な狭持部(92)とからなるものの場合、スライド部(91)と狭持部(92)とによって杵部材(50)を狭持してスライド部(91)と狭持部(92)とを固定手段(93)で固定することにより杵部材(50)を固定支持したり、固定手段(93)による固定を解いて杵部材(50)をスライドブロック(90)から取り外したりすることが安全にかつ極めて容易にできる。
【0032】
また、吸引手段(46,47)を備えたものによれば、被粉砕物の粉砕にともなって生じた被粉砕物の微粉を臼体(40)から吸引することができ、さらに、吸引にともなって臼体(40)内の空気が換気されるので、被粉砕物の粉砕によって生じる熱が臼体(40)内にこもるのを防止でき、もって、製品の加工程度を均一なものにすることができるとともに熱による製品の劣化を防止して、製品の品質をより良好に維持することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明に係るスタンプミルによれば、臼体の凹部の上方で上下動する杵部材は、スライドブロックに固定されているので杵部材には潤滑油を注ぐ必要があるような摺動箇所がないので、潤滑油が杵部材を伝わって臼体の凹部に垂れるおそれがなく、したがって、凹部に収納された被粉砕物に潤滑油が混入することがないので、被粉砕物を粉砕加工した製品の品質を容易に維持することができる。
【0034】
また、スタンプミルにキャスターとレベル調節脚部を設けたものの場合には、キャスターによって容易に移動することができるので、メンテナンス等が容易になり、設置位置を変える場合には、新たに基礎コンクリートを打つ等の設置のための工事が必要なく、容易かつ安価に設置位置を変えることができる。
【0035】
さらに、複数のレベル調節脚部それぞれの昇降量を適宜に調節することにより、設置面の状態の如何にかかわらずスタンプミル本体を好適な姿勢に設置することが容易にできる上に、設置時にはキャスターが設置面から浮いたままにして、レベル調節脚部によってスタンプミル本体の重量を支持することができる。
【0036】
これにより、スタンプミル本体の重量および被粉砕物を粉砕加工する際に発生する衝撃をキャスターで受けないようにすることができ、もってキャスターの破損等を防止することができる。また、レベル調節脚部が設置面に接する部分を硬質ゴム等にすることにより、粉砕加工時に発生する振動が設置面に伝播することを防止することができる。
【0037】
また、被粉砕物量検知センサを設けたものの場合には、被粉砕物量検知センサによって臼体の凹部内に収納した被粉砕物の量が所定の下限値に達したことを検知したときに、杵部材の上下動を停止するので、杵部材の空打ちを防止することができる。
【0038】
さらに、スライドブロックがシャフト側に設けたスライド部と該スライド部に着脱可能でスライド部との間にシャフトを狭持固定可能な狭持部とからなり、スライド部がシャフトに沿って上下に摺動可能としたものの場合、スライドブロックへの杵部材の装着固定およびスライドブロックからの杵部材の取り外しに際し、杵部材を引き上げるようにしてスライドブロックから引き抜く必要がなく、狭持部をスライド部に着脱するだけで良いので、杵部材やスライドブロックあるいはそれらの周辺部材のメンテナンス等が極めて容易になるとともにメンテナンス作業を安全なものにすることができる。
【0039】
さらに、被粉砕物の粉砕加工中に生じる被粉砕物の微粉を臼体から吸引するようにしたものの場合には、被粉砕物の微粉が製品に混ざることを防いで、製品の品質を均等にできるとともに、微粉の吸引にともなって臼体内の空気が換気されるので、粉砕加工によって生じる熱が臼体内にこもるのを防止でき、熱による製品の品質劣化を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、図面に基づき、本発明の好適な一実施の形態を説明する。
図1〜図6は、本発明の一実施の形態を示している。
図1に示すように、スタンプミル1は、工場内の床等の設置面5に配設して、香辛料や米、麦、豆等の穀粒類等の被粉砕物を粉砕加工するものである。
【0041】
スタンプミル本体の下部Bには、設置面5に対してスタンプミル本体を支持するとともに、スタンプミル1の設置状態の姿勢を調節するためのレベル調節脚部10と、スタンプミル1の移動時に使用するキャスター20とが設けられている。
【0042】
図6に示すように、スタンプミル1全体の制御やスタンプミル1へ被粉砕物を供給する被粉砕物供給装置2、スタンプミル1で粉砕加工の済んだ被粉砕物(以下、粉砕物と記すことがある。)を収納する粉砕物収納装置3等の制御は、制御装置4によってなされている。
【0043】
図3に示すように、レベル調節脚部10およびキャスター20は、それぞれ複数が設けられている。図3には、12脚のレベル調節脚部10と4つのキャスター20が示されているが、これらは例示であり、それぞれの数および配置は図示したものに限られない。レベル調節脚部10は、昇降可能なものであり、その構成は図5を参照しながら後述する。
【0044】
スタンプミル1は、スタンプミル本体の上部Aとスタンプミル本体の下部Bとの間に、それらを繋ぐ8本の支柱31が立設されている。隣り合う支柱31同士の間には、側面パネル32が開閉可能に設けられている。側面パネル32は例えば透明なアクリル板であるので、内部の様子を確認することができるとともに、被粉砕物が内部から外に飛散したり、外から内部にごみ等が入り込んだりすることが防止される。
【0045】
これらスタンプミル本体の上部A、スタンプミル本体の下部B、支柱31、側面パネル32から構成されるハウジング30内には、粉砕加工する被粉砕物を収納するための臼体40と、臼体40に突入して臼体40内に収納した被粉砕物を粉砕加工するために上下動可能に支持されている杵部材50と、この杵部材50を上下方向に駆動するための駆動機構60の一部と、杵部材50と平行に立設されたシャフト80等が配設されている。駆動機構60は、モータM、駆動軸61、円筒カム63等から成る。
【0046】
円筒カム63と臼体40との間には、カバーCが設けられており、駆動機構60の動作などによって発生する微細粉塵等が臼体40側に入り込まないようになっている。杵部材50、駆動軸61、シャフト80は、このカバーCを貫通して延設されている。
【0047】
駆動機構60の駆動力源であるモータMは、ハウジング30の外部に配設されている。駆動軸61は、スタンプミル本体の下部Bを貫いてハウジング30内に延びており、その上端部をスタンプミル本体の上部Aに設けた軸受62が受けている。駆動軸61の下端部には歯付従動プーリ64(タイミングプーリ)が設けられており、モータMの出力軸には歯付駆動プーリ65(タイミングプーリ)が設けられている。これら歯付駆動プーリ65と歯付従動プーリ64とに歯付ベルトV(タイミングベルト)が掛け渡されており、これによってモータMの駆動力が駆動軸61に伝達される。
【0048】
駆動軸61には、その中央部よりも上方に杵部材50を上下動させるための円筒カム63が固設されている。したがって、この円筒カム63は、駆動軸61の回転/停止とともに回転/停止をする。
【0049】
円筒カム63は、円筒周縁の側壁の上端63a(以下、カム面63aという。)を円筒の底部から高さが連続的に高くなり、最高点で円筒の底部まで垂直に切り立つ形状にしたものが3つ形成されている。このカム面63aには、後述するスライドブロック90に設けられたローラRが乗ることができる。なお、前記のようにカム面63aを形成したものは、3つに限らず、スタンプミルの規模により1つまたは2つでもよいし、4つ以上でもよい。
【0050】
すなわち、ローラRは、カム面63aに対するカムフォロアである。このカム面63aに乗っているローラRは、円筒カム63の回転とともに連続的に押し上げられて、最高点まで上昇した後にカム面63aから外れて最下点まで落下する。さらに、円筒カム63が回転すると、最下点にあるローラRは、次のカム面63aの最も低い部分に乗り、円筒カム63の回転とともに、再び最高点に向かって押し上げられる。このローラRの昇降動作は、円筒カム63の回転が継続する限り繰り返される。
【0051】
図2に示したように、駆動軸61を中心にして駆動軸61を囲む円周上に複数本のシャフト80が立設されている。さらに、駆動軸61を中心にして複数本のシャフト80の外側には円環状の臼体40が配設されている。この臼体40は、図1に横断面を示したように、底面から上端開口に向かって拡がった形状の凹部41が形成されている。また、臼体40は、駆動軸61からの距離がこの凹部41よりも遠い位置に、前記のカバーCに向かって鉛直方向に延びた側方カバー40aが凹部41を囲繞するように立設されている。これら側方カバー40aおよびカバーCによって臼体40が覆われているので、異物や粉塵が外から臼体40内に混入することを防ぐことができる。これら側方カバー40aおよびカバーCは、点検清掃時に便利なように、工具類によることなく着脱することができるようになっている。
【0052】
この臼体40の所定箇所には、粉砕加工する被粉砕物を投入するための被粉砕物投入路42が設けられている。被粉砕物投入路42は、臼体40の上方に位置する受け口42aで受け入れた被粉砕物を、臼体40の上端開口を臨む投入口42bから臼体40の凹部41に投入するように配設されている。被粉砕物は、不図示の貯留部から被粉砕物投入路42まで搬送手段43によって搬送される。搬送手段43は、例えばスクリューコンベアである。なお、投入口42bの開口面積は、被粉砕物の種類に応じて調整できるように構成すると良い。
【0053】
また、臼体40の凹部41の所定の底部には、粉砕加工の済んだ粉砕物を凹部41から落とすようにして排出するための排出口48が設けられている。この排出口48は、杵部材50の下端が凹部41の底部に当接する位置を避けた所に設けられており、ハンドルhの操作によって開閉可能なシャッター49が設けられている。
【0054】
このシャッター49は、被粉砕物の粉砕加工の程度が所望の程度に達しない間は閉じておき、被粉砕物を排出しないようにしておくものである。排出口48には排出した粉砕物を搬送するための搬送管路70が繋げられており、粉砕物は、搬送管路70から粉砕物収納装置3の搬送手段71によって搬送されて収納容器等に収納される。搬送手段71は、例えばスクリューコンベアである。
【0055】
なお、臼体40は、金属製のものであるが、金属に限られず、杵部材50による被粉砕物の粉砕加工に起因する繰り返しの衝撃に対して十分な耐久性を有するものであれば良い。
【0056】
臼体40の凹部41に投入した被粉砕物を撹拌したり、凹部41内全体に均したり、粉砕加工が所望の程度に達したときに粉砕物を前記の排出口48から排出させるために粉砕物を排出口まで掻き集めたりするための引掻き棒44が設けられている。
【0057】
引掻き棒44は、駆動軸61側から凹部41の上端開口の縁付近まで延びる水平アーム部44aと、該水平アーム部44aから屈曲し、凹部41の底部に向かって延びる下降アーム部44bと、該下降アーム部44bの下端から凹部41の底面に並行に延びるとともに凹部41の底面に対して所定の角度で起き上がった板状の引掻き部44cとから成っている。
【0058】
この引掻き棒44は、回転の中心が駆動軸61であり、粉砕加工中は回転を続けるようにすることができる。また、粉砕加工中に回転させないときは、上下動する杵部材50にぶつからない位置に停止させておくことができる。また、後述するようにロック機構によって、全ての杵部材50を上昇させることができるので、その状態のときに引掻き棒44を回転させることもできる。
【0059】
引掻き棒44は、粉砕加工中に回転させても上下動する杵部材50にぶつからないように構成されている。例えば、引掻き棒44が円筒カム63のカム面63aの最高位置の真下から延びるように設けておき、円筒カム63の回転中心である駆動軸61を回転中心にして、引掻き棒44の回転が円筒カム63の回転にシンクロするように構成しておけば良い。
【0060】
図1、図2および図4に示したように、臼体40の凹部41に対してシャフト80は、凹部41の鉛直線上には全く重ならない位置に配設されている。
凹部41の鉛直上方には、鉛直方向に延びる複数本の杵部材50が配設されている。この複数本の杵部材50は、複数本のシャフト80と対になっている。対をなす杵部材50とシャフト80とは、それらの上下二箇所が2つのスライドブロック90によって連結されている。
【0061】
スライドブロック90の1つは、杵部材50の上部をシャフト80に連結しており、もう1つのスライドブロック90は、杵部材50の中央よりも下方の部分をシャフト80に連結している。なお、一対の杵部材50とシャフト80を連結するスライドブロック90の数は、2つに限られず、1つまたは3つ以上であっても良い。
【0062】
スライドブロック90は、金属製のスライド部91と狭持部92とから成っている。スライド部91は、シャフト80に取り付けられており、シャフト80を上下に摺動させることができる。狭持部92は、スライド部91とは別体のものであり、ボルト93(固定手段)で締めてスライド部91に固定することができる。
【0063】
スライド部91と狭持部92とは、それらの間に杵部材50を狭持することができ、杵部材50を狭持した状態でスライド部91と狭持部92とをボルト93で固定することにより、杵部材50を狭持固定することができる。スライドブロック90によって狭持固定された杵部材50は、駆動機構60によってスライドブロック90が上下動すると、スライドブロック90とともに上下動する。杵部材50は、最下点まで下降したときに、下端が凹部41の底部に当接するように狭持固定位置が設定されている。
【0064】
2つのスライドブロック90のうち上方のスライドブロック90のスライド部91には、駆動軸61に面する側に前記したローラRが設けられている。ローラRの上方ではストッパ100(ロック機構)がスタンプミル本体の上部Aに配設されている。このストッパ100は、例えばアクチューエータであり、スライド部91側に向かって出没可能なロッド101(ロック機構)を有している。スライド部91は、ローラRよりも上の部分にロッド101を受け入れ可能なロッド受け孔91a(ロック機構)が穿設されている。
【0065】
これらロッド101とロッド受け孔91aは、杵部材50が最も上昇したときにストッパ100から突出したロッド101をロッド受け孔91aが受け入れることができる位置関係に配設されている。したがって、各杵部材50が最も上昇したときにストッパ100からロッド101を突出させることにより、杵部材50を上昇した位置に保持しておくことができる。
【0066】
このようなロック機構100,101,91aによる杵部材50の保持は、全ての杵部材50を同時に保持するだけでなく、各杵部材50ごとに選択可能に保持することができる。例えば、制御装置4に各杵部材50を表示するタッチパネルを設け、保持する杵部材50をタッチパネル上で選択できるようにすれば良い。
【0067】
杵部材50を上昇した位置に保持しておく場合の一例として、杵部材50の空打ちを防止することがある。すなわち、臼体40の凹部41内に収納される被粉砕物の量が所定の下限値まで減った場合である。この場合、所定の下限値とは凹部41の底面から約25mmである。
【0068】
このように杵部材50を上昇した位置に保持しておくために、図4に示したように、凹部41に収納される被粉砕物の量を検知するための被粉砕物量検知センサ110が凹部41を臨むように配設されている。被粉砕物量検知センサ110は、保持アーム111の下端に保持されている。保持アーム111は、上端が上方のカバーCに取り付けられており、前記の引掻き棒44の回転動作および杵部材50の上下動に干渉しない位置に配設されている。
【0069】
この被粉砕物量検知センサ110は、超音波センサが好ましい。被粉砕物量検知センサ110によって凹部41内の被粉砕物の量が所定の上限値に達したことを検知できたときは、上限値到達信号が制御装置4に送信されて、制御装置4は、被粉砕物供給装置2に臼体40への被粉砕物の供給を停止させる。
【0070】
また、被粉砕物の量が所定の下限値に達したことを検知できたときは、下限値到達信号が制御装置4に送信されて、制御装置4は、その後、スタンプミル1に杵部材50が最も上昇した位置に達したものから順次に前記のストッパ100によって上昇位置に保持させることにより、杵部材50が上下動しないようにさせる。
【0071】
その後、被粉砕物供給装置2からスタンプミル1へ被粉砕物を供給する。なお、上限値と下限値との間に中間値を設定しておき、被粉砕物の量が中間値を下回ったことを被粉砕物量検知センサ110が検知したときに被粉砕物供給装置2からスタンプミル1へ所定量の被粉砕物を供給するようにしても良い。
【0072】
臼体40の側方カバー40aには、粉砕された被粉砕物が必要以上に小さい微粉となって舞い上がったものを吸引するための吸引口46が穿設されている。この吸引口46には、排出チューブ47が繋がれており、被粉砕物の微粉を吸引してこの排出チューブ47を通してスタンプミル1の外部に送ることにより、微粉が臼体40からハウジング30内全体に拡散してしまうことを防止することができる。この吸引には通常の吸引装置を用いればよい。
【0073】
また、臼体40は、カバーCと側方カバー40aによって覆われているので、被粉砕物を粉砕する際に発生する粉砕熱がこもり易くなる。臼体40内の温度が高くなると、粉砕物の品質が低下してしまう。しかし、本実施の形態では、前記のように臼体40内を吸引しているので臼体40内では空気が流動し、常に換気が行われている。これにより、粉砕熱が臼体40内にこもってしまうことを防止することができ、もって、熱による粉砕物の品質低下を防ぐことができる。
【0074】
以上のような構成を有するスタンプミル本体を設置するためには、キャスター20で所望の設置位置に移動した後に、前記のように各レベル調節脚部10の高さを調節してスタンプミル1を設置する設置面5の状態の如何にかかわらずスタンプミル本体の設置状態の姿勢が好適になるように調節するが、この調節を行うためのレベル調節脚部10の構成は、図5に示されている。図示したように、スタンプミル本体の下部Bが設置面5に面する底面には脚受部120が設けられており、この脚受部120にレベル調節脚部10が螺合している。
【0075】
脚受部120は、レベル調節脚部10を受け入れるための脚受孔121が穿設されており、脚受孔121の内面には雌ねじ部122が螺刻されている。この脚受部120に螺合するレベル調節脚部10は、スタンプミル1の設置面5に直接に接して杵部材50による粉砕加工動作時に発生する衝撃と振動を緩和するための防振パット11と、防振パット11と一体に固定されるパットランナー12と、パットランナー12が装着されたパットランナー受け部13と、パットランナー受け部13に固定されたハンドルH等からなっている。
【0076】
防振パット11は、設置面5に直接に接するパット11aと該パット11aが下部に取り付けられ、上部には固定ねじ11cが一体に設けられたパット取付け部11bからなっている。パット11aは、振動を吸収するためのものであり、例えば硬質ゴム製のものである。パットランナー12は、防振パット11の固定ねじ11cによって防振パット11上に固定されるものであり、下部12aから円筒状の上部12bが延びている。
【0077】
下部12aと上部12bとの間には、括れ部12cが形成されている。括れ部12cは、上部12bよりも外径の小さい円筒状に形成されており、上部12bも括れ部12cも外周面は滑面となるように形成されている。パットランナー受け部13には、上部12bが嵌入している。
【0078】
パットランナー受け部13は、円筒状に形成されており、外周面には脚受部120の雌ねじ部122に螺合する雄ねじ部13aが螺刻されている。パットランナー受け部13の内周面13bは滑面加工されており、パットランナー12の上部12bが嵌入している。パットランナー受け部13の下端面にはハンドルHが固定ねじ13cによって固定されている。ハンドルHは、一部がパットランナー12の括れ部12cに嵌合している。この括れ部12cとハンドルHとの嵌合によってパットランナー12とパットランナー受け部13とが連結されている。なお、脚受部120の下面にはロックナット130が締められている。また、脚受部120の一部には側面から貫通する部分が形成されている。この貫通部分には、パットランナー受け部13の雄ねじ部13aに接触可能なねじ山保護部材131と、このねじ山保護部材131を雄ねじ部13aに圧接させるための緩み止めねじ132とが配設されている。これにより、パットランナー受け部13の雄ねじ部13aを保護しながらパットランナー受け部13と脚受部120とが緩んだ状態にならないようにすることができる。
【0079】
このように構成されたレベル調節脚部10は、ハンドルHを回転させると、脚受部120に螺合しているパットランナー受け部13が回転しながら脚受孔121内を上昇あるいは下降する。この際、パットランナー受け部13が回転してもパットランナー受け部13に連結されているパットランナー12は回転することなく、したがってパットランナー12に固定されている防振パット11も回転することなく、パットランナー受け部13とともに昇降することができる。
【0080】
次に作用を説明する。
スタンプミル1を所定位置に設置する場合には、全てのレベル調節脚部10についてハンドルHを回して防振パット11が床等の移動面に着かないように持ち上げて、キャスター20のみが床等に着くような状態にしてから、所定の設置位置に移動させる。
【0081】
スタンプミル1の重量は大きいが、キャスター20を備える本実施の形態では、容易かつ安全に所定位置まで移動させることができる。
所定の設置位置に着いたら、ハンドルHを逆方向に回して防振パット11が設置面5に着くように下げ、さらにスタンプミル1全体の傾き等を修正しながら、キャスター20が設置面5から浮き上がるまで防振パット11を下げる。
【0082】
これにより、スタンプミル1本体の重量および被粉砕物の粉砕加工中に生じる衝撃をキャスター20で受けることがなくなるので、キャスター20の破損を防止することができる。また、衝撃をレベル調節脚部10の防振パット11によって吸収することができるので、衝撃に伴う振動がスタンプミル1から他に伝播してしまうことを防止することができる。
さらに、スタンプミル1の設置箇所を変更することが容易にかつ低コストでできる。また、容易に移動することができるので、保守点検等が容易にできるようになる。
【0083】
所定位置に設置されたスタンプミル1の被粉砕物投入路42に搬送手段43を繋げ、排出口48に設けた搬送管路70は被粉砕物を所望の程度まで粉砕加工した粉砕物を収納容器に収納するための搬送手段71を繋げる。スタンプミル1で粉砕加工する香辛料や米、麦、豆等の穀粒類等の被粉砕物は、被粉砕物供給装置2によって貯留部から搬送手段43を経て搬送され、被粉砕物投入路42の受け口42aから被粉砕物投入路42内に入り、被粉砕物投入路42の傾斜に沿って滑り落ち、投入口42bから臼体40の凹部41に投入される。凹部41に投入した被粉砕物は、引掻き棒44を回転させることにより、凹部41内にほぼ均等に行き渡るように収納することができる。
【0084】
凹部41に収納された被粉砕物を粉砕加工するための杵部材50の上下動は、モータMからの駆動力によって円筒カム63を回転させることで行われる。モータMが回転すると、駆動機構60の駆動軸61が回転し、駆動軸61に固設された円筒カム63が回転する。
【0085】
円筒カム63が回転すると、杵部材50を固定支持しているスライドブロック90のスライド部91に設けられたローラRが、カム面63aの最も低い部分に乗る。カム面63aの低い部分に乗ったローラRは、円筒カム63の回転とともに、カム面63aに下方から支持されながら押し上げられる。したがって、スライドブロック90がシャフト80に沿って押し上げられ、スライドブロック90に狭持固定された杵部材50も同時に押し上げられる。
【0086】
円筒カム63の回転が続いてカム面63aの最も低い部分が次のローラRの位置まで至ると、次のローラRもカム面63aに乗る。すなわち、次の杵部材50が上昇し始める。一方、既にカム面63aに乗っているローラRのうち最高点に達したものは、最高点を越えるとカム面63aから外れてスライドブロック90とともに、最下点まで落下する。
【0087】
すなわち、最も高い位置まで持ち上げられた杵部材50は最高点から落下して、その下端が臼体40の凹部41の上端開口から凹部41内に突入する。
凹部41に突入した杵部材50は、下端が被粉砕物に衝突してから凹部41の底部に衝突するところまで突き進む。これにより、被粉砕物が粉砕されて粉砕物となる。
【0088】
円筒カム63の回転が続いていると、次の杵部材50が最高点を越えて落下する。このように順次に杵部材50が最高点から落下し、被粉砕物を粉砕する。既に落下している杵部材50は、次のカム面63aにローラRが乗るとともに再び最高点に向かって上昇する。
【0089】
このように、円筒カム63の回転が続く限り、全ての杵部材50が順次に上下動を繰り返して被粉砕物の粉砕加工が継続される。これにより、被粉砕物を連続して所望の程度に粉砕することができる。
【0090】
この粉砕加工において、スライドブロック90はシャフト80に沿って上下に摺動するが、杵部材50はスライドブロック90に狭持固定されているだけであり、他の部品等に対して摺動することがない。したがって、杵部材50の上下動をスムーズにするために潤滑油を注す場合、スライドブロック90とシャフト80との間に注すことになるので、潤滑油は、シャフト80を垂れ落ちることがあっても杵部材50に伝わって杵部材50を垂れ落ちることがない。
【0091】
このため、臼体40の凹部41内に収納された被粉砕物に潤滑油が混入してしまう事態の発生を防止することができる。したがって、粉砕加工した製品を良好な品質に維持することができる。なお、シャフト80は、凹部41の鉛直線上には全く重ならない位置に配設されているので、シャフト80を垂れ落ちた潤滑油が凹部41内に落ちることはない。
【0092】
なお、粉砕加工において、全ての杵部材50を上下動させるのではなく、杵部材50を選択的に上下動させたいとき、例えば杵部材50を1本おきに上下動させたいときには、1本おきに前記のストッパ100を動作させて杵部材50が停止するように制御装置4上で選択しておけば良い。
【0093】
杵部材50の上下動による粉砕加工中は、引掻き棒44を回転させておくことが好ましい。粉砕加工中も引掻き棒44を回転させておくことにより、凹部41内の被粉砕物を凹部41全体で常に均等になるようにしておくことができるので、凹部41内の被粉砕物の量を誤りなく被粉砕物量検知センサ110で検知することができる。また、被粉砕物が均等に収納されることにより、被粉砕物は均等に粉砕加工を受けることになるので、品質のよい粉砕物となる。また、臼体40がカバーCと側方カバー40aとによって覆われているので、外から臼体40内の粉砕物に異物や粉塵が混入することがないので、品質の低下を防止することができる。さらに、粉砕加工中は、臼体40内を吸引しているので被粉砕物の微粉を排出除去することができるので、粉砕物はより一層に均質なものとなる。さらにまた、粉砕加工中の吸引は、カバーCと側方カバー40aとによって覆われている臼体40内を換気する作用効果もあるので、粉砕加工によって発生する粉砕熱が臼体40内にこもって臼体40内の温度が高くなってしまうことを防止することができ、もって、熱による粉砕物の品質の低下、劣化を防止することができる。
【0094】
被粉砕物量検知センサ110は、被粉砕物の量が臼体40の凹部41内で所定の上限値まで増加したことを検知したときは、上限値到達信号を制御装置4に送信する。上限値到達信号を受信した制御装置4は、被粉砕物供給装置2に臼体40への被粉砕物の供給を停止させる。これにより、被粉砕物が多過ぎるために粉砕効果が低下して粉砕効率が悪くなってしまうことを防止することができる。
【0095】
また、被粉砕物量検知センサ110は、被粉砕物の量が所定の下限値まで減少したことを検知したときは、下限値到達信号を制御装置4に送信する。下限値到達信号を受信した制御装置4は、スタンプミル1に対してローラRが最高点に達したものからストッパ100を動作させて、杵部材50を最も上昇した位置に保持させるようにする。これにより、杵部材50の空打ちを防止することができる。
【0096】
このように、被粉砕物量検知センサ110によって凹部41内の被粉砕物の量を検知することにより、粉砕効果が低下したり、空打ちが続いたりすることによる粉砕加工の効率低下を防止できるとともに空打ちが続くことに起因する故障や不具合の発生を防止することができる。
【0097】
ロック機構100,101,91aによる杵部材50の保持は、スライドブロック90が最高点まで押し上げられたときに、ストッパ100からロッド101を突出させてスライド部91のロッド受け孔91aに嵌入させることによってなされる。なお、杵部材50を上昇した位置に保持する場合は、被粉砕物の量が所定の下限値まで減少したことを被粉砕物量検知センサ110が検知したときに限らず、スタンプミル1の稼働停止とともに杵部材50を保持するようになっている。また、所定の操作によって任意に杵部材50を保持することもできる。
【0098】
スタンプミル1は、前記のように移動および設置が容易にできるので、保守点検等が容易である。
また、スライドブロック90がシャフト80側に設けられたスライド部91とこのスライド部91に着脱可能な狭持部92とに分割できるので、杵部材50の着脱が容易であり、かつ安全面でも優れており、この点でも保守点検が容易である。
【0099】
また、シャフト80に沿って摺動可能なスライドブロック90によって杵部材50を狭持固定しているので、杵部材50につき粉砕加工に好適な重量をスライドブロック90で稼ぐことができ、その結果、重量を稼ぐために杵部材50を長くする必要がないので、杵部材50をスタンプミル本体に着脱する際の作業がより容易になるとともに安全面でもより優れたものとなる。
【0100】
以上、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は前述した実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。例えば、前記杵部材50の下端部分に、消音機構を設けても良い。かかる消音機構は、衝撃力の緩和により消音するものであるため、被粉砕物の粉砕性能を過度に損なわない程度の衝撃力の緩和に設定することが重要となる。
【0101】
さらにまた、前記の本実施の形態では、臼体40をその凹部41が円環状に形成されたものとして説明したが、各杵部材の直下に各杵部材ごとの臼体を設けたタイプのスタンプミルであっても、本願発明に特有の構成を有するものとして実施できることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明の一実施の形態に係るスタンプミルの全体構成を示す側面図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係るスタンプミルの構成を示す平面図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係るスタンプミルの構成を示す底面図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係るスタンプミルの中心部を示す構成図である。
【図5】図1におけるレベル調節脚部の構成を示す構成図である。
【図6】本発明の一実施の形態に係るスタンプミルと周辺装置との構成を示すブロック図である。
【図7】従来例の主要部を示す簡略図である。
【符号の説明】
【0103】
A…スタンプミル本体の上部
B…スタンプミル本体の下部
C…カバー
H…ハンドル
h…ハンドル
M…モータ
R…ローラ
V…歯付ベルト
1…スタンプミル
2…被粉砕物供給装置
3…粉砕物収納装置
4…制御装置
5…設置面
10…レベル調節脚部
11…防振パット
11a…パット
11b…パット取付け部
11c…固定ねじ
12…パットランナー
12a…下部
12b…上部
12c…括れ部
13…パットランナー受け部
13a…雄ねじ部
13b…内周面
13c…固定ねじ
20…キャスター
30…ハウジング
31…支柱
32…側面パネル
40…臼体
40a…側方カバー
41…凹部
42…被粉砕物投入路
42a…受け口
42b…投入口
43…搬送手段
44…引掻き棒
44a…水平アーム部
44b…下降アーム部
44c…引掻き部
46…吸引口(吸引手段)
47…排出チューブ(吸引手段)
48…排出口
49…シャッター
50…杵部材
60…駆動機構
61…駆動軸
62…軸受
63…円筒カム
63a…カム面
64…歯付従動プーリ
65…歯付駆動プーリ
70…搬送管路
71…搬送手段
80…シャフト
90…スライドブロック
91…スライド部
91a…ロッド受け孔
92…狭持部
93…ボルト(固定手段)
100…ストッパ
101…ロッド
110…被粉砕物量検知センサ
111…保持アーム
120…脚受部
121…脚受孔
122…雌ねじ部
130…ロックナット
131…ねじ山保護部材
132…緩み止めねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被粉砕物を収納する凹部が形成された臼体と、前記凹部の上端開口から前記凹部内に突入して凹部内の被粉砕物を粉砕するために上下動可能に支持された杵部材と、該杵部材を上下方向に駆動するための駆動機構とを有するスタンプミルにおいて、
前記凹部に対して鉛直線上に重ならない位置で上下方向に延設されたシャフトと、
前記シャフトに設けられ、該シャフトに沿って上下に摺動可能なスライドブロックと、を備え、
前記スライドブロックは、前記シャフトの側方に前記杵部材を固定支持し、
前記駆動機構は、前記スライドブロックを前記シャフトに沿って上下に摺動させることにより、前記杵部材を上下動させることを特徴とするスタンプミル。
【請求項2】
スタンプミル本体の下部に、
設置面に対してスタンプミル本体を固定した状態に支持するとともに、設置状態のスタンプミルの姿勢を調節するための昇降可能な複数のレベル調節脚部と、
前記各レベル調節脚部を設置面から離隔させた際に、スタンプミル本体を設置面に対して移動可能に支持するキャスターとを備えたことを特徴とする請求項1に記載のスタンプミル。
【請求項3】
前記臼体の前記凹部に収納される被粉砕物の量を検知するための被粉砕物量検知センサを備え、
前記被粉砕物の量が所定の上限値に達したことを前記被粉砕物量検知センサが検知したときは、前記臼体への被粉砕物の供給を停止し、
前記被粉砕物の量が所定の下限値に達したことを前記被粉砕物量検知センサが検知したときは、前記杵部材の上下動を停止することを特徴とする請求項1または2に記載のスタンプミル。
【請求項4】
前記杵部材を上昇した位置に保持するためのロック機構を備え、
前記被粉砕物の量が所定の下限値に達したことを前記被粉砕物量検知センサが検知したときは、前記ロック機構によって前記杵部材を上昇した位置に保持しておくことを特徴とする請求項3に記載のスタンプミル。
【請求項5】
前記スライドブロックは、
前記シャフトに沿って上下に摺動可能なスライド部と、
前記スライド部に着脱可能であって該スライド部との間に前記杵部材を狭持固定可能な狭持部とからなり、
前記杵部材を狭持するようにして前記スライド部と前記狭持部とを固定手段で固定することにより、前記杵部材が前記スライドブロックに固定支持されることを特徴とする請求項1,2,3または4に記載のスタンプミル。
【請求項6】
前記被粉砕物の粉砕にともなって生じる該被粉砕物の微粉を臼体から吸引するとともに、臼体内の空気を換気して、被粉砕物の粉砕によって生じる熱が臼体内にこもるのを防止する吸引手段を備えたことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のスタンプミル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−22989(P2010−22989A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−190434(P2008−190434)
【出願日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(593060768)有限会社和田技研 (2)
【Fターム(参考)】