説明

スター型接続のアドホックな無線ネットワークにおける親機選定方法及び親機選定機能を備えた端末

【課題】接続のアドホックな無線ネットワークにおけるネットワークの維持可能時間を増大させる親機選定方法の提供。
【解決手段】親機端末が、各端末のバッテリ残量を収集するとともに(ステップS201〜S202、ステップS212)、データ送受信量を監視する(ステップS203)。親機端末が、バッテリ残量の変化及びデータ送受信量から、各端末を親機とした場合について予想される各端末のバッテリ残時間をそれぞれ算出する(ステップS208)。その結果、全端末のバッテリ残時間合計値(各端末のバッテリ残時間平均値)を最も大きくすることのできる端末を親機に選定する(ステップS209)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スター型接続のアドホックな無線ネットワークにおける親機選定方法及び親機選定機能を備えた端末に関し、特に、すべての参加端末が親機になりうるようなスター型接続のアドホックな無線ネットワークにおける親機選定方法及び親機選定機能を備えた端末に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯可能な無線通信機器の普及に伴い、ネットワーク参加端末のみで自律分散的に構成されるアドホックなネットワークが注目を浴びている。アドホックなネットワークを普及させるには効率的なネットワーク構成方法を実現しなければならない。特に無線通信端末のバッテリは限られているため、消費電力を出来る限り小さくするネットワーク構成(親機の選定)方法が望まれる。
【0003】
特許文献1には、バッテリ残量が最も多い端末を親機とする従来の親機選定方法に代えて、バッテリ残時間を算出し、バッテリ残時間が最も長い端末を親機とする親機選定方法が提案されている。図11に示す構成を持つ各端末X1(X2、X3も同様)は、図12(a)に示すように定期的にバッテリ残量監視部X102によってバッテリ残量情報を収集して(ステップS301)、バッテリ残量情報記憶部X103に記憶する(ステップS302)。親機を選定する際は、図12(b)に示すように、各端末X1(X2、X3)が、バッテリ切れ時間予測部X106によりバッテリ切れ時間を予測し(ステップS303)、親機へ送信する(ステップS304)。親機は、自分より長時間動作可能な端末がなければ親機変更指示を行わず、自分より長時間動作可能な端末が存在した場合は、当該端末を親機に変更するよう全端末の親機・子機変更制御部X108に指示を出す(ステップ206)。
【0004】
また、特許文献2には、上記バッテリ残量に加えて、各端末の位置関係を考慮して親機を選定し、端末間の負荷を分散することによって、長時間ネットワークを維持する方法が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開2003−32263号公報
【特許文献2】特開2003−273883号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した従来技術の第1の問題点は、スター型接続のアドホックな無線ネットワークにおいてハブ的に機能する親機の負担を考慮した親機選定が出来ないことにある。
【0007】
例えば、特許文献1では、バッテリの残時間を算出するに際し、親機切替え後の電力消費及びバッテリ残量を考慮していない。このため、以下のように頻繁に親端末が変更されて無駄な通信が増える場合がある。
【0008】
例えば、図13(a)のように端末Aが親機であるとする。親機はハブとしての役割も果たすために、子機に比べて通信量が多くなる。この結果、端末Aのバッテリ残時間は他の端末と比較すると短く見積もられ、親機が他の端末に切り替わりやすくなる。
【0009】
そして、図13(b)のように端末Bが親機に切り替わると、ハブとしての役割のため通信量が多くなる。この結果、所定時間後に見積もられるバッテリ残時間は短くなり、端末Aが親機に切り替わりやすくなる。以上のように切り替え処理が増えることにより、電力消費の増加とスループット低下が発生して、無線通信が非効率となる。
【0010】
また、特許文献1の方式には、通信していない端末のバッテリ残時間が長く見積もられて親機になる傾向があり、却って消費電力が増えてデータのスループットが落ちるという問題点もある。
【0011】
上記問題点について、再度、図13の(a)〜(c)の各図を用いて説明する。端末A、B、C、Dの通信特性及びバッテリ特性は同一とする。図13(a)は、端末Aが親機であり、端末Cと端末Dでのみデータ通信が行われている状態を表している。この時、端末Bはデータ通信を行っていない。よって、端末Bの消費電力は小さく、他の通信している端末と比較してバッテリ残時間は長く見積もられる。そのため、次のタイミングでは、端末Bが親機に選定される。
【0012】
図13(b)は、端末Bが親機となり、端末Cと端末Dでのみデータ通信が行われている状態を表している。同様に、この時端末Aは通信していないため、バッテリ残時間が長くなり親機となる。以降、端末AとBの間で親機は交互に切り替わる。
【0013】
一方、図13(c)のように、端末Cが親機になった場合は、端末A及び端末Bの消費電力は抑えられることになる。つまり、バッテリ残時間が一番長い端末を親機に選定すると、本来の通信に参加していない端末A及び端末Bの消費電力を増加させることになる。その結果、ネットワーク全体のトータルの消費電力が大きくなる。
【0014】
また、特許文献2に記載の親機選定方式も、バッテリ残量の多い端末あるいは通信範囲内に端末が最も多く含まれている端末を選択する点で同様であり、上記した通信に参加していない端末が選択されやすいという問題点と、親機の電力消費が大きく切り替えが乱発してしまうという問題点が発生しうる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の視点によれば、親機になりうる端末が複数参加するスター型接続のアドホックな無線ネットワークにおける親機選定方法であって、前記無線ネットワークに参加する任意の端末が、各端末を親機とした場合について予想される各端末のバッテリ残時間をそれぞれ算出し、該結果に基づいて最適な親機を選定すること、を特徴とするスター型接続のアドホックな無線ネットワークにおける親機選定方法が提供される。
【0016】
本発明の第2の視点によれば、スター型接続のアドホックな無線ネットワークに親機又は子機として参加可能な端末であって、前記各端末を親機とした場合について予想される各端末のバッテリ残時間をそれぞれ算出するバッテリ残時間算出部と、前記各端末を親機とした場合について予想される各端末のバッテリ残時間に基づき最適な親機を選定する最適親機選定部と、を備えたこと、を特徴とするスター型接続のアドホックな無線ネットワークに親機又は子機として参加可能な端末が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、無用な親機切り替えやハンチング現象を抑止し、ネットワークの維持可能時間を増大させることが可能となる。その理由は、ネットワークに参加する端末につき、それぞれの端末を親機としたケースを想定してバッテリ残時間をシミュレートし、その結果に基づき親機を選定するよう構成したことにある。例えば、図13(a)の状態と図13(b)の状態とを行き来するのではなく、ダイレクトに図13(c)の状態に遷移し、データスループット・省消費電力性に優れた無線ネットワークを構成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
[第1の実施形態]
続いて、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、スター型接続のアドホック無線ネットワークに接続する本発明の第1の実施形態に係る端末の構成を表した図である。図1を参照すると、送受信部101、バッテリ残量監視部102、バッテリ残量情報記憶部103、データ送受信量監視部104、データ送受信量記憶部105、バッテリ残時間合計算出部106、制御部107、全端末バッテリ残量情報記憶部111、最適親機選定部112を備えた端末1が示されている。
【0019】
送受信部101は、無線伝送路4を介して他の端末2、3との通信を実現する。
【0020】
バッテリ残量監視部102は、自機のバッテリ残量を監視するためのブロックであり、検出されたバッテリ残量は、バッテリ残量情報記憶部103に記録される。
【0021】
データ送受信量監視部104は、送受信したデータ量を記録するためのブロックであり、検出されたデータ量は、データ送受信量記憶部105に記録される。
【0022】
バッテリ残時間合計算出部106は、ネットワークに参加する端末のバッテリ残時間の合計を求めるためのブロックである。
【0023】
制御部107は、親機として動作するか子機として動作するかを決定するための親機・子機変更制御部108と、親機として動作するための親機制御部109と、子機として動作するための子機制御部110と、を含んで構成される。従って、端末1は、親機としても子機としても動作可能となっている。
【0024】
最適親機選定部112は、全端末バッテリ残量情報記憶部111に記憶された全端末のバッテリ残量情報と、データ送受信量記憶部105に記憶されたデータ送受信量に基づいて、端末1、2、3がそれぞれ親機になったと仮定した場合のバッテリ残時間合計値をそれぞれ算出し、バッテリ残時間合計値が一番長くなる端末を親機に選定する。
【0025】
端末2、3も上記端末1と同じ構成であり、最適親機選定部112の判定結果に従って、親機又は子機として動作し、無線伝送路4を通じて通信を行う。但し、バッテリや消費電力等の諸特性は、各端末間で、異なっていてかまわない。
【0026】
続いて、図2のような4台で構成されるスター型ネットワークを例として、本実施形態に係る端末の動作を説明する。図3は、図2のスター型ネットワークに接続する端末の動作を表したフローチャートである。図3を参照すると、まず、親機(端末A)は、子機(端末B〜D)に対してバッテリ残量情報を送信するよう要求する(ステップS201)。
【0027】
子機(端末B〜D)は、親機(端末A)からバッテリ残量情報の送信要求を受け取ると、バッテリ残量監視部102により時刻t0時点でのバッテリ残量情報を収集する。検出されたバッテリ残量情報は、バッテリ残量情報記憶部103に記憶されるとともに、制御部107、送受信部101を介して、親機(端末A)に送信される(ステップS211)。
【0028】
親機(端末A)は、自機のバッテリ残量情報及び子機(端末B〜D)から受信したバッテリ残量情報を全端末バッテリ残量情報記憶部111に記憶する(ステップS202)。
【0029】
図4は、全端末バッテリ残量情報記憶部111に記憶された全端末のバッテリ残量をテーブル形式で表したものであり、時刻t及びt+Δtにおけるバッテリ残量が満充電状態を100%としたパーセント単位で記憶されている。
【0030】
続いて、親機(端末A)は、所定の時間(例:Δt秒間)、子機(端末B〜D)の通信状況を監視し(ステップS203)、自機及び子機(端末B〜D)のデータ送受信量を、データ送受信量記憶部105に記憶する(ステップS204)。
【0031】
図5は、データ送受信量記憶部105に記憶される端末間のデータ送受信量をテーブル形式で表したものである。図5の上段の表には、データの送信元の端末と最終送信先の端末間で送受信されたデータ量(Byte)が記録され、各端末の送信データ量合計は、それぞれ上段の表の最右列の値となる。同様に、各端末の受信データ量合計は、それぞれ上段の表の最下行の列の値となる。下段の表の値は、親機のデータ送受信量を表しており、それぞれ、上記送信データ量合計と、受信データ量合計の合計値と一致する。
【0032】
前記全端末のデータ送受信量の記憶が完了すると、親機(端末A)は、再び、子機(端末B〜D)に対して、時刻t0+Δt時点でのバッテリ残量情報を送信するよう要求する(ステップS205)。
【0033】
子機(端末B〜D)は、親機(端末A)からバッテリ残量情報の送信要求を受け取ると、バッテリ残量監視部102により時刻t0+Δt時点でのバッテリ残量情報を収集する。検出されたバッテリ残量情報は、バッテリ残量情報記憶部103に記憶されるとともに、制御部107、送受信部101を介して、親機(端末A)に送信される(ステップS212)。
【0034】
親機(端末A)は、図4に例示したように自機及び子機(端末B〜D)のバッテリ残量情報をバッテリ残量情報記憶部103に記憶する(ステップS206)。
【0035】
続いて、親機(端末A)は、図4、図5に例示した各端末のバッテリ残量情報及びデータ送受信量から所定時間(例:Δt秒間)に消費されたバッテリ量及び送受信したデータ量を求める。親機(端末A)は、上記バッテリ消費量とデータ送受信量が比例関係にあると仮定して、送受信1Byteあたりのバッテリ消費量を計算して記憶する(ステップS207)。
【0036】
図6は、上記所定時間(例:Δt秒間)の消費バッテリ量とデータ送受信量から送受信1Byteあたりのバッテリ消費量の算出を行った例である。例えば、親機(端末A)は、Δt秒間に5%のバッテリ消費があり、その間のデータ送受信量は1,460,000Byteであるから送受信1Byteあたりのバッテリ消費量は、5/1,460,000=3.4ppmと算出される。なお、図6の例では、説明の簡単のため、送受信の消費電力が同一であるものとして計算しているが、送信と受信で重み付けを変える等、任意の方法を適用することが可能である。
【0037】
続いて、親機(端末A)は、ステップS204で記憶した各端末のデータ送受信量と、ステップS206で記憶したバッテリ残量と、ステップS207で算出したバッテリ消費量に基づいて、各端末が親機となった場合の各端末のバッテリ残時間及びその合計値を見積もる(ステップS208)。
【0038】
例えば、図4、図5、図6のデータを用いると、端末Aが親機のままとした場合、端末Aのバッテリ残時間は85/5=17、端末Bのバッテリ残時間は30/0.1=300、端末Cのバッテリ残時間は69/1.0=69.0、端末Dのバッテリ残時間は85/0.1=850.0と算出される。また、このときのバッテリ残時間合計は、1236と算出される。
【0039】
ただし、親機は、ハブとしての役割を持つために、各子機同士のデータ送受信が加算される。上記端末Aが親機である場合のデータ送受信量は、A⇔B、A⇔C、A⇔D、B⇔C、B⇔D、C⇔Dのデータ送受信量を積み上げたものとなっている。従って、子機である端末B(端末C、Dも同様)を親機とした場合のバッテリ残時間を算出する際は、B⇔A、B⇔C、B⇔Dのデータ送受信量が移動することを考慮してバッテリ残時間を計算する必要がある。
【0040】
上記考え方を基に、図4、図5、図6のデータを用いて、端末Bを親機に切り替えた場合の端末Aのバッテリ残時間は、85/(5.0×121,000/1,460,000)=205.1と算出される。ここで、121,000は、図5より求めた端末Aの正味データ送受信量であり、1,460,000は、図5の親機のデータ送受信量(ネットワーク全体の送受信量)である。反対に、端末Bを親機に切り替えた場合の端末Bのバッテリ残時間は、30/(0.1×1,460,000/656,000)=134.8と算出される。なお、端末Bを親機に切り替えた場合、端末C、Dは子機のままであるから、バッテリ残時間は端末Aが親機である場合と同値となる。
【0041】
図7は、図4、図5、図6のデータを用いて、各端末を親機とした場合の各端末のバッテリ残時間及びその合計値を表したテーブルである。
【0042】
上記各端末が親機となった場合の各端末のバッテリ残時間及びその合計値の算出が完了すると、親機(端末A)は、全端末のバッテリ残時間の合計が一番長くなる端末を親機と選定する(ステップS209)。ここで、選定した端末が自端末でない場合は、親機(端末A)は、各端末の親機・子機変更制御部108に指令を出し、切替え処理を行う(ステップS210)。
【0043】
例えば、図7の例では、端末Cを親機とした場合の全端末のバッテリ残時間の合計値が最大であるため、親機(端末A)は、端末Cを親機とする切替え処理を行うこととなる。
【0044】
ここで、上記全端末のバッテリ残時間の合計値を最大にすることができる端末を親機とする親機選定方式によって如何なる利点がもたらされるかについて、従来のバッテリ残時間による親機選定方式との比較を交えて説明する。
【0045】
例として、図8に示すような3台からなるネットワーク構成を考える。初期状態は、端末Aが親機の状態とする(図8(a))。3台の端末のバッテリ残量・送受信1Byteあたりのバッテリ消費量は変わらないとして、バッテリ残量がそれぞれ10単位、通信するとΔt秒あたりバッテリ1単位を消費すると仮定する。ネットワークの通信状況は、端末A⇔B間でのみ通信していると仮定する。
【0046】
従来の選定方法では、バッテリ残時間が一番長いものが親機として選ばれる。そのため、各端末のバッテリ残時間の推移は、図9のようになる(通信が行われていない状態でのバッテリ残時間は∞であるが、上限値として10000を設定した。)。初期状態で端末Aが親機であり端末A、Bは1単位ずつバッテリを消費する。一方、端末Cは通信していないため、バッテリ残時間に変化は無い。そのため、図9のバッテリ残量見積欄の「*」に示すとおり、バッテリ残時間が最大の端末Cが、Δt秒後に親機に選定される。
【0047】
端末Cが親機に選定された場合、図8(b)に示すように、通信はA⇔CとB⇔Cの間で行われ、端末Cのバッテリ量はΔt秒間に2単位消費される。一方、端末A、Bのデータ送受信量は変わらずバッテリ消費量にも変化が無い。端末Cのバッテリ消費量が大きいため、図9のバッテリ残量見積欄の「*」に示すとおり、2Δt秒後には端末A(もしくは端末B)が親機に選ばれることになる。
【0048】
その後、再度3△t秒後には端末Cが親機として選定される(通信をしていないため、バッテリ残時間が∞となるため。)。以降、この繰り返しであり、一定時間毎に端末Cが親機として選ばれることになる。
【0049】
一方、本発明において初期状態で端末Aが親機と仮定する。Δt秒後にどれが親端末として選定されるか考える。まず、親機の選定のためにバッテリ残時間の合計を計算していく。
【0050】
Δt秒後では端末Aが親機のままの場合10000+9+9=10018である。端末Bの場合も同様で10000+9+9=10018である。端末Cが親機になった場合、9+9+5=23である(端末Cが親機となった場合は通信量が2倍となることが本発明では考慮されるため、端末Cのバッテリ残時間は5Δtと計算される。)。
【0051】
計算結果より他の端末が親機となった方がバッテリ残時間の合計値が長くなることがないため、引き続き端末Aが親機として選定されることになる。そのため、バッテリと親機の推移は図10のようになる。
【0052】
なお、この全端末のバッテリ残時間の合計値は、端末台数で割れば、バッテリ残時間の平均値となる。即ち、本実施形態における親機選定基準は、バッテリ残時間の平均を引き上げることのできる親機を選定することと同義である。
【0053】
以上のとおり、従来の親機選定方法では、通信していない端末のバッテリ残時間が長く見積もられて、親機に選定される傾向があり、無駄な通信が発生するケースがあるが、本発明では、そういった無駄な通信を避けることができるため、データスループットの向上・省消費電力化に貢献できる。
【0054】
[第2の実施形態]
続いて、上記第1の実施形態の親機選定規準に変更を加えた本発明の第2の実施形態について説明する。本発明の第2の実施形態は、上記第1の実施形態と同様の構成で実現でき、その親機選定規準を変更しただけであるので、以下、その相違点を中心に説明する。
【0055】
上記した第1の実施形態では、全端末のバッテリ残時間の合計値を最大にすることのできる端末を親機とする親機選定基準を採用したが、本実施形態では、各端末を親機とした場合のバッテリ残時間のシミュレートの結果のうち、全端末中のバッテリ残時間最小値を最も大きくすることのできるケース(親機)を採用する。この親機選定基準によれば、図7の例では、端末Bを親機としたケースのバッテリ残時間最小値が69.0で最大であるため、親機(端末A)は、端末Bを親機とする切替え処理を行うこととなる。
【0056】
従来技術、例えば、特許文献1では、バッテリ残時間が大きい端末を親機として選定するものとされているが、このバッテリ残時間は、単に、バッテリの減少傾向から一次直線で予測したものに過ぎない。これに対し、本実施形態では、無線ネットワークのハブとして機能する親機のデータ送受信量を考慮して予測バッテリ消費量を算出しているため、無線ネットワークの実質的な維持可能時間をベースとした親機選定を行うことが可能となっている。
【0057】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、ネットワークに参加する全端末についてそれぞれを親機とした場合について予想される各端末のバッテリ残時間を算出し、その結果に基づき最適な親機を選定するという本発明の要旨を逸脱しない範囲で、各種の変形を加えることが可能であることはいうまでもない。
【0058】
例えば、上記した各実施形態では、全端末のバッテリ残時間の合計値やバッテリ残時間最小値を規準として親機を選定する例を挙げて説明したが、その他、端末のバッテリ残時間から各種統計値を得て、バッテリ残時間のばらつきが最も少ない、バッテリ残時間下位n台のバッテリ残時間を最大化するといったさまざまな基準を単独あるいは複数組み合わせて親機を選定することも可能である。
【0059】
また例えば、上記した各実施形態では、各端末のバッテリ残時間による判定後即座に、親機の選定を行うものとして説明したが、バッテリ残時間の算出・判定を複数回繰り返し、同一結果が出た場合にのみ、親機を切り替えるといった方法も適宜採用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】スター型接続のアドホック無線ネットワークに接続する本発明の第1の実施形態に係る端末の構成を表した図である。
【図2】本発明の第1の実施形態を説明するためのスター型接続のアドホック無線ネットワークの模式図である。
【図3】本発明の第1の実施形態における各端末の動作を表したフローチャートである。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る親機端末で管理されるバッテリ残量のイメージ図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る親機端末で管理されるデータ送受信量のイメージ図である。
【図6】図4、図5のデータから、所定時間(例:Δt秒間)の消費バッテリ量、送受信1Byteあたりのバッテリ消費量を算出した例である。
【図7】図4〜図6のデータから、各端末を親機とした場合の各端末のバッテリ残時間及びその合計値を算出した例である。
【図8】本発明の第1の実施形態の効果を説明するための別のスター型接続のアドホック無線ネットワークの模式図である。
【図9】図8のスター型接続のアドホック無線ネットワークにおいて従来方式を用いた場合の各端末のバッテリ残時間、親機の推移を表した図である。
【図10】図8のスター型接続のアドホック無線ネットワークにおいて本発明による方式を用いた場合の各端末のバッテリ残時間、親機の推移を表した図である。
【図11】スター型接続のアドホック無線ネットワークに接続する従来の端末の構成を表した図である。
【図12】スター型接続のアドホック無線ネットワークにおける従来の親機選定処理の流れを表したフローチャートである。
【図13】従来技術の問題点を説明するための図である。
【符号の説明】
【0061】
1〜3 端末
4 無線伝送路
101 送受信部
102 バッテリ残量監視部
103 バッテリ残量情報記憶部
104 データ送受信量監視部
105 データ送受信量記憶部
106 バッテリ残時間合計算出部
107 制御部
108 親機・子機変更制御部
109 親機制御部
110 子機制御部
111 全端末バッテリ残量情報記憶部
112 最適親機選定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親機になりうる端末が複数参加するスター型接続のアドホックな無線ネットワークにおける親機選定方法であって、
前記無線ネットワークに参加する任意の端末が、各端末を親機とした場合について予想される各端末のバッテリ残時間をそれぞれ算出し、該結果に基づいて最適な親機を選定すること、
を特徴とするスター型接続のアドホックな無線ネットワークにおける親機選定方法。
【請求項2】
前記各端末を親機とした場合に予想される各端末のバッテリ残時間を、前記各端末より受信した各端末のバッテリ残量と、前記各端末を親機とした場合の予測バッテリ消費量と、により算出すること、
を特徴とする請求項1に記載のスター型接続のアドホックな無線ネットワークにおける親機選定方法。
【請求項3】
現在の親機である端末が、各端末間のデータ送受信量を監視し、
前記各端末を親機とした場合のデータ送受信量の増減をそれぞれシミュレートして前記予測バッテリ消費量を算出すること、
を特徴とする請求項2に記載のスター型接続のアドホックな無線ネットワークにおける親機選定方法。
【請求項4】
前記各端末を親機とした場合について予想される各端末のバッテリ残時間の合計値を最も大きくすることのできる端末を親機として選定すること、
を特徴とする請求項1乃至3いずれか一に記載のスター型接続のアドホックな無線ネットワークにおける親機選定方法。
【請求項5】
前記各端末を親機とした場合について予想される各端末のバッテリ残時間の最小値を最も大きくすることのできる端末を親機として選定すること、
を特徴とする請求項1乃至3いずれか一に記載のスター型接続のアドホックな無線ネットワークにおける親機選定方法。
【請求項6】
スター型接続のアドホックな無線ネットワークに親機又は子機として参加可能な端末であって、
前記各端末を親機とした場合について予想される各端末のバッテリ残時間をそれぞれ算出するバッテリ残時間算出部と、
前記各端末を親機とした場合について予想される各端末のバッテリ残時間に基づき最適な親機を選定する最適親機選定部と、を備えたこと、
を特徴とするスター型接続のアドホックな無線ネットワークに親機又は子機として参加可能な端末。
【請求項7】
バッテリ残時間算出部は、前記各端末より受信した各端末のバッテリ残量と、前記各端末を親機とした場合の予測バッテリ消費量と、により、前記各端末のバッテリ残時間を算出すること、
を特徴とする請求項6に記載のスター型接続のアドホックな無線ネットワークに親機又は子機として参加可能な端末。
【請求項8】
更に、各端末間のデータ送受信量を監視するデータ送受信量監視部を備え、
自機が親機である場合に、前記バッテリ残時間算出部が、前記各端末を親機とした場合のデータ送受信量の増減をそれぞれシミュレートして前記予測バッテリ消費量を算出し、前記最適親機選定部が前記最適な親機選定を実行すること、
を特徴とする請求項7に記載のスター型接続のアドホックな無線ネットワークに親機又は子機として参加可能な端末。
【請求項9】
前記最適親機選定部は、前記最適な親機として、前記各端末を親機とした場合について予想される各端末のバッテリ残時間の合計値を最も大きくすることのできる端末を選定すること、
を特徴とする請求項6乃至8いずれか一に記載のスター型接続のアドホックな無線ネットワークに親機又は子機として参加可能な端末。
【請求項10】
前記最適親機選定部は、前記最適な親機として、前記各端末を親機とした場合について予想される各端末のバッテリ残時間の最小値を最も大きくすることのできる端末を選定すること、
を特徴とする請求項6乃至8いずれか一に記載のスター型接続のアドホックな無線ネットワークに親機又は子機として参加可能な端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−113354(P2008−113354A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−296200(P2006−296200)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】