説明

ステッピングモータ駆動式の制御弁

【課題】小型で構造が簡単なステッピングモータ駆動式の制御弁を提供する。
【解決手段】制御弁1は、上流側から冷媒を導入する導入ポート110と、下流側へ冷媒を導出する導出ポート112,114と、導入ポート110と導出ポート112,114とを連通する弁孔120,144とを有するボディ104と、弁孔120,144に接離して弁部を開閉する弁体130,132と、弁体130,132を弁部の開閉方向に駆動するためのロータ172を含むステッピングモータと、ロータ172とともに回転し、その軸線周りの回転運動を軸線方向の並進運動に変換することにより弁体130,132を弁部の開閉方向に駆動する弁作動体134と、を備える。弁作動体134は、ロータ172に対する回転が規制される一方、ロータ172に対して軸線方向に並進可能となるようロータ172に支持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はステッピングモータ駆動式の制御弁に関し、特に車両用冷暖房装置に好適な制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、内燃機関を搭載した車両においてはエンジンの燃焼効率が向上したこともあり、熱源として利用してきた冷却水が暖房に必要な温度にまで上昇し難くなっている。一方、内燃機関と電動機を併用したハイブリッド車両においては内燃機関の稼働率が低いため、そのような冷却水の利用がさらに難しい。電気自動車に至っては内燃機関による熱源そのものがない。このため、冷房のみならず暖房にも冷媒を用いたサイクル運転を行い、車室内を除湿暖房可能なヒートポンプ式の車両用冷暖房装置が提案されている。
【0003】
このような車両用冷暖房装置は、圧縮機、室外熱交換器、蒸発器、室内熱交換器等を含む冷凍サイクルを有し、暖房運転時と冷房運転時とで室外熱交換器の機能が切り替えられる。暖房運転時においては室外熱交換器が蒸発器として機能する。その際、冷凍サイクルを冷媒が循環する過程で室内熱交換器が放熱し、その熱により車室内の空気が加熱される。一方、冷房運転時においては室外熱交換器が凝縮器として機能する。その際、室外熱交換器にて凝縮された冷媒が蒸発器にて蒸発し、その蒸発潜熱により車室内の空気が冷却される。その際、除湿も行われる。
【0004】
ところで、このように冷凍サイクルの運転状態によって複数の蒸発器が機能する場合、各蒸発器を流れる冷媒流量の割合を調整する必要がある。複数の凝縮器が機能する場合も同様である。このため、冷媒循環通路の特定位置に弁開度を電気的に調整可能な制御弁を設けることがあるが、一般には比較的低コストで大きな駆動力が得られるソレノイド駆動の電磁弁が用いられることが多い。しかし、特に弁開度の精密な制御が必要となる場合には、住宅用冷暖房装置に多くみられるようにステッピングモータ駆動式の制御弁を用いるのが好ましい(例えば特許文献1,2参照)。ステップ数(駆動パルス数)の設定により弁体の変位量、ひいては弁開度を正確に調整できるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−21554号公報
【特許文献2】実開平5−965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、例えば特許文献1に記載の制御弁は、弁の開閉駆動にロータの並進移動を伴うためステッピングモータが大きくなり、車両への設置スペース上の問題が生じる。この点、特許文献2に記載の制御弁は、ロータと弁体とを駆動軸にて接続し、ロータの回転力を駆動軸の並進力に変換して弁体を開閉駆動させる構成を有する。具体的には、ロータの内周面に雌ねじ部を設ける一方、駆動軸の外周面に雄ねじ部を設け、それらのねじ機構により回転運動を並進運動に変換する。このため、モータ全体をコンパクトに構成することが可能となる。しかし、このような構成では、弁体を駆動する際にその弁体から作用する軸線方向の反力がロータに作用するため、ロータをその軸線方向に安定に支持するために高価なベアリングが必要となり、コストが嵩むといった問題が残る。
【0007】
本発明の目的の一つは、ステッピングモータ駆動式の制御弁をコンパクトに構成できるようにし、かつそれを低コストに実現可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の制御弁は、ステッピングモータ駆動式の制御弁において、上流側から冷媒を導入する導入ポートと、下流側へ冷媒を導出する導出ポートと、導入ポートと導出ポートとを連通する弁孔とを有するボディと、弁孔に接離して弁部を開閉する弁体と、弁体を弁部の開閉方向に駆動するためのロータを含むステッピングモータと、ロータとともに回転し、その軸線周りの回転運動を軸線方向の並進運動に変換することにより弁体を弁部の開閉方向に駆動する弁作動体と、を備える。弁作動体は、ロータに対する回転が規制される一方、ロータに対して軸線方向に並進可能となるようロータに支持されている。
【0009】
この態様によると、ロータの回転運動を並進運動に変換して弁体を弁部の開閉方向に駆動する弁作動体が設けられるため、ロータの軸線方向への変位をなくし、ステッピングモータをコンパクトに構成することができる。また、弁作動体はロータに対する回転が規制されるが、ロータに対する軸線方向の並進動作は許容される。このため、弁体側から弁作動体に作用する軸線方向の反力がロータに伝わることを抑制できる。その結果、ロータを軸線方向に支持するための高価なベアリングを別途設ける必要がなくなり、制御弁を低コストに製造できるようになる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ステッピングモータ駆動式の制御弁をコンパクトに構成でき、また低コストに実現できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1実施形態に係る制御弁の構成および動作を表す断面図である。
【図2】第1実施形態に係る制御弁の構成および動作を表す断面図である。
【図3】第1実施形態に係る制御弁の構成および動作を表す断面図である。
【図4】第2実施形態に係る制御弁の構成および動作を表す断面図である。
【図5】第2実施形態に係る制御弁の構成および動作を表す断面図である。
【図6】第2実施形態に係る制御弁の構成および動作を表す断面図である。
【図7】第3実施形態に係る制御弁の構成および動作を表す断面図である。
【図8】第3実施形態に係る制御弁の構成および動作を表す断面図である。
【図9】第3実施形態に係る制御弁の構成および動作を表す断面図である。
【図10】第4実施形態に係る制御弁の構成および動作を表す断面図である。
【図11】第4実施形態に係る制御弁の構成および動作を表す断面図である。
【図12】第4実施形態に係る制御弁の構成および動作を表す断面図である。
【図13】第5実施形態に係る制御弁の構成および動作を表す断面図である。
【図14】第5実施形態に係る制御弁の構成および動作を表す断面図である。
【図15】第5実施形態に係る制御弁の構成および動作を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態について説明する。図1〜図3は、第1実施形態に係る制御弁の構成および動作を表す断面図である。なお、本実施形態の制御弁は、例えば電気自動車に搭載されるヒートポンプ式の冷暖房装置への適用を想定したものである。
【0013】
すなわち、車両用冷暖房装置には、圧縮機、室内凝縮器、室外熱交換器、蒸発器およびアキュムレータ等を配管にて接続した冷凍サイクル(冷媒循環回路)が設けられ、冷媒が冷凍サイクル内を状態変化しながら循環する過程でなされる熱交換により車室内の空調が行われる。冷媒循環回路には冷暖房を適切に制御するための各種制御弁が配設されており、制御弁1はその一つを構成する。
【0014】
制御弁1は、上流側通路から第1下流側通路および第2下流側通路に分岐する分岐点に設けられ、その上流側通路から各下流側通路へ流れる冷媒の流量を調整する。制御弁1は、その開度が設定開度に調整される比例弁として構成されている。制御弁1は、基本的には全開状態、大口径制御状態、小口径制御状態、閉弁状態のいずれかの状態に制御される。なお、大口径制御状態は全開状態には到らないが開度が大きい状態であり、小口径制御状態は閉弁状態には到らないが開度が小さい状態である。制御弁1は、小口径制御により膨張装置としても機能する。
【0015】
図1に示すように、制御弁1は、ステッピングモータ駆動式の電動弁として構成され、弁本体101とモータユニット102とを組み付けて構成されている。弁本体101は、有底筒状のボディ104に小口径の第1弁105(「弁部」を構成する)と、大口径の第2弁106(「弁部」を構成する)とを同軸状に収容して構成される。
【0016】
ボディ104の一方の側部には導入ポート110が設けられ、他方の側部には上下に第1導出ポート112、第2導出ポート114が設けられている。導入ポート110は上流側通路に連通し、第1導出ポート112は第1下流側通路に連通し、第2導出ポート114は第2下流側通路に連通する。すなわち、ボディ104には、導入ポート110と第1導出ポート112とをつなぐ第1冷媒通路と、導入ポート110と第2導出ポート114とをつなぐ第2冷媒通路が形成される。
【0017】
ボディ104の上半部には、円筒状のガイド部材116が配設されている。ガイド部材116は、シール部材を介してボディ104に同心状に組み付けられている。ガイド部材116は、その上半部の内周面がガイド孔118を形成し、その下端部が弁孔120を形成している。また、弁孔120の下端開口端縁により弁座122が形成されている。ガイド部材116における第1導出ポート112との対向面には、内外を連通する連通孔が設けられている。
【0018】
ボディ104の上端部には、円板状の区画部材124が配設されている。区画部材124は、弁本体101の内部とモータユニット102の内部とを区画する。区画部材124の中央部には、円ボス状の軸受部126が設けられている。軸受部126の内周面には雌ねじ部が設けられ、外周面は滑り軸受として機能する。
【0019】
ボディ104の内方には、大径の弁体130、小径の弁体132、および弁作動体134が同軸状に配設されている。弁体130が上流側から弁孔120に接離して大口径の第2弁106の開度を調整することにより、第1冷媒通路を流れる冷媒の流量が調整される。弁体130の外周面にはリング状の弾性体(例えばゴム)からなる弁部材136が嵌着されており、その弁部材136が弁座122に着座することにより、第2弁106を完全に閉じることが可能になる。
【0020】
一方、ボディ104の下半部には、小円筒状のガイド部材140が配設されている。ガイド部材140は、第2冷媒通路の中央部に弁体130と同軸状に設けられ、その下半部がボディ104に圧入されている。ガイド部材140は、その上半部の内周面がガイド孔142を形成し、その下端部が弁孔144を形成している。また、弁孔144の上端開口端縁により弁座146が形成されている。ガイド部材140における導入ポート110との対向面には、内外を連通する連通孔が設けられている。図示のように、弁孔120および弁孔144の上流側に導入ポート110に連通する共通の高圧室115が形成され、弁孔120の下流側には第1導出ポート112に連通する低圧室117が形成され、弁孔144の下流側には第2導出ポート114に連通する低圧室119が形成されている。
【0021】
弁体130は、縮径部を介して区画部148が連設されている。区画部148は、低圧室117に配置されている。そして、区画部148の上端部がガイド孔118に摺動可能に支持されることにより、弁体130の開閉方向への安定した動作が確保されている。区画部148と区画部材124との間には背圧室150が形成される。また、弁体130と区画部148とを貫通する連通路151が形成され、高圧室115と背圧室150とを連通させている。これにより、背圧室150には常に、導入ポート110から導入される上流側圧力Pinが満たされる。
【0022】
本実施形態においては、弁孔120の有効径Aとガイド孔118の有効径Bとが等しく設定されているため(弁体130の有効受圧面積と区画部148の有効受圧面積とが実質的に等しくされているため)、弁体130に作用する冷媒圧力の影響はキャンセルされる。特に、その圧力キャンセルを厳密に実現するために、背圧室150における区画部148の上方には、第2弁106が閉弁状態となるときに区画部148に密着してその有効受圧面積を拡大する受圧調整部材149が配設されている。受圧調整部材149は、リング状をなす弾性体(例えばゴム)からなり、その外周端部がガイド部材116と区画部材124との間に挟まれるようにして支持されている。
【0023】
すなわち、弁体130の有効受圧面積は、弁孔120の有効径Aに対応するように設定されている。しかし、弁部材136が弁座122に着座した完全シール状態においては、弾性体の性質により実際の有効受圧径が弁孔120の有効径Aよりもやや大きくなる。これに対応するため、その完全シール時においては、受圧調整部材149が区画部148の下面に密着するようにすることで、背圧室150側の有効受圧径がガイド孔118の有効径Bよりもやや大きくなるようにする。このようにして弁体130の有効受圧面積と区画部148の有効受圧面積とを等しくすることにより、完全な圧力キャンセルを実現する。
【0024】
弁体132は、段付円柱状をなし、弁体130の内方に同軸状に配設されている。弁体132の下半部は、ガイド部材140に摺動可能に挿通され、その先端部が弁孔144に対向配置されいる。一方、弁体132の上半部は、弁体130の連通路151を貫通し、その上端部が弁作動体134に支持されている。弁体132は、いわゆるニードル弁体として構成され、その尖った先端部が弁孔144に挿抜される。そして、弁体132が弁座146に着脱することにより第1弁105が開閉される。弁体132の上端部は弁作動体134の底部を貫通し、その先端部が外方に加締められて係止部156となっている。
【0025】
弁作動体134は、段付円筒状をなし、その外周部に雄ねじ部が形成されている。雄ねじ部は、軸受部126の雌ねじ部に螺合する。弁作動体134の上端部には半径方向外向きに延出する複数(本実施形態では4つ)の脚部152が設けられており、モータユニット102のロータに嵌合している。弁体132と区画部148との間には、弁体132を閉弁方向に付勢するスプリング154(「付勢部材」として機能する)が介装されている。通常の状態では図示のように、スプリング154によって弁体132が下方へ付勢される一方、弁体132の係止部156が弁作動体134の上端部に係止される。このため、弁体132は、弁作動体134に対して最も下方に位置する状態となる。
【0026】
弁作動体134は、モータユニット102の回転駆動力を受けて回転し、その回転力を並進力に変換する。すなわち、弁作動体134が回転すると、ねじ機構(「作動変換機構」として機能する)によって弁作動体134が軸線方向に変位し、弁体132を開閉方向に駆動する。第1弁105の開弁時には弁体132と弁作動体134とが一体に動作する。
【0027】
一方、モータユニット102は、ロータ172とステータ173とを含むステッピングモータとして構成されている。モータユニット102は、有底円筒状のスリーブ170の内方にロータ172を回転自在に支持するようにして構成されている。スリーブ170の外周には、励磁コイル171を収容したステータ173が設けられている。スリーブ170は、その下端開口部がボディ104に組み付けられており、ボディ104とともに制御弁1のボディを構成する。
【0028】
ロータ172は、円筒状に形成された回転軸174と、その回転軸174の外周に配設されたマグネット176を備える。本実施形態では、マグネット176は24極に磁化されている。回転軸174の内方にはモータユニット102のほぼ全長にわたる内部空間が形成されている。回転軸174の内周面の特定箇所には、軸線に平行に延びるガイド部178が設けられている。ガイド部178は、後述する回転ストッパと係合するための突部を形成するものであり、軸線に平行に延びる一つの突条により構成されている。
【0029】
回転軸174の下端部はやや縮径され、その内周面に軸線に平行に延びる4つのガイド部180が設けられている。ガイド部180は、軸線に平行に延びる一対の突条により構成され、回転軸174の内周面に90度おきに設けられている。この4つのガイド部180には、上述した弁作動体134の4つの脚部152が嵌合し、ロータ172と弁作動体134とが一体に回転できるようになっている。ただし、弁作動体134は、ロータ172に対する回転方向の相対変位は規制されるものの、そのガイド部180にそった軸線方向の変位は許容される。すなわち、弁作動体134は、ロータ172とともに回転しつつ弁体132の開閉方向に駆動される。
【0030】
ロータ172の内方には、その軸線に沿って長尺状のシャフト182が配設されている。シャフト182は、その上端部がスリーブ170の底部中央に圧入されることにより片持ち状に固定され、ガイド部178に平行に内部空間に延在している。シャフト182は、弁作動体134と同一軸線上に配置されている。シャフト182には、そのほぼ全長にわたって延在する螺旋状のガイド部184が設けられている。ガイド部184は、コイル状の部材からなり、シャフト182の外面に嵌着されている。ガイド部184の上端部は折り返されて係止部186となっている。
【0031】
ガイド部184には、螺旋状の回転ストッパ188が回転可能に係合している。回転ストッパ188は、ガイド部184に係合する螺旋状の係合部190と、回転軸174に支持される動力伝達部192とを有する。係合部190は一巻きコイルの形状をなし、その下端部に半径方向外向きに延出する動力伝達部192が連設されている。動力伝達部192の先端部がガイド部178に係合している。すなわち、動力伝達部192は、ガイド部178の一つの突条に当接して係止される。このため、回転ストッパ188は、回転軸174により回転方向の相対変位は規制されるが、ガイド部178に摺動しつつその軸線方向の変位が許容される。
【0032】
すなわち、回転ストッパ188は、ロータ172と一体に回転し、その係合部190がガイド部184にそってガイドされることで、軸線方向に駆動される。ただし、回転ストッパ188の軸線方向の駆動範囲はガイド部178の両端に形成された係止部により規制される。同図には、回転ストッパ188が中間位置にある状態が示されている。回転ストッパ188が上方へ変位して係止部186に係止されると、その位置が上死点となる。回転ストッパ188が下方へ変位すると、その下死点にて係止される。
【0033】
ロータ172は、その上端部がシャフト182に回転自在に支持され、下端部が軸受部126に回転自在に支持されている。具体的には、回転軸174の上端開口部を封止するように有底円筒状の端部部材194が設けられ、その端部部材194の中央に設けられた円筒軸196の部分がシャフト182に支持されている。すなわち、軸受部126が一端側の軸受部となり、シャフト182における円筒軸196との摺動部が他端側の軸受部となっている。
【0034】
以上のように構成された制御弁1は、モータユニット102の駆動制御によってその弁開度を調整可能なステッピングモータ作動式の制御弁として機能する。以下、その動作について詳細に説明する。
制御弁1の流量制御において、車両用冷暖房装置の図示しない制御部は、設定開度に応じたステッピングモータの駆動ステップ数を演算し、励磁コイル171に駆動電流(駆動パルス)を供給する。それによりロータ172が回転し、一方で弁作動体134が回転駆動されて小口径の第1弁105および大口径の第2弁106の開度が設定開度に調整され、他方で回転ストッパ188がガイド部184にそって駆動されることにより、各弁体の動作範囲が規制される。
【0035】
具体的には、小口径制御を実行する場合、図1の状態からロータ172が一方向に回転駆動(正転)されることにより弁体132が開弁方向に変位し、図2に示すように第1弁105が開弁状態となる。すなわち、ロータ172とともに回転する弁作動体134がねじ機構によって上昇し、係止部156を吊り上げるようにして弁体132を開弁方向に変位させる。弁体132は、図1に示す全閉状態と図2に示す全開位置との間の範囲で駆動され、第1弁105の開度が調整される。
【0036】
また、大口径制御を実行する場合、図1の状態からロータ172が他方向に回転駆動(逆転)されることにより弁体132が閉弁方向に変位し、図3に示すように第2弁106が開弁状態となる。すなわち、ロータ172とともに回転する弁作動体134が区画部148に当接してこれを押し下げるようにして弁体130を開弁方向に変位させる。弁体130は、図1に示す全閉状態と図3に示す全開位置との間の範囲で駆動され、第2弁106の開度が調整される。このとき、図示のように、弁体132の係止部156と弁作動体134の底部との係合状態が解除されるため、弁体132と弁座146との間に過度な押圧力が作用することもない。
【0037】
ロータ172の回転数は制御指令値としての駆動ステップ数に対応するため、図示しない制御部は、制御弁1を任意の開度に制御することができる。本実施形態では、ロータ172の1回転あたり、各弁体が0.5mmストロークする。なお、弁体132がスプリング154により常に閉弁方向に付勢されているため、弁体130が弁座122から離間した第2弁106の開弁状態においては、弁体132が弁座146に着座した第1弁105の閉弁状態が維持されるようになる。
【0038】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態に係る制御弁は、弁機構の構成等が第1実施形態と異なるが、その他の部分に共通の構成を有する。このため、第1実施形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付す等して適宜その説明を省略する。図4〜図6は、第2実施形態に係る制御弁の構成および動作を表す断面図である。
【0039】
制御弁2は、冷媒循環通路を構成する第1通路と第2通路と第3通路との接続点に設けられ、各通路間の冷媒の流れを切り替えるとともにその流量を調整する。本実施形態において、第1通路は上流側通路、第3通路は下流側通路となるが、第2通路は車両用冷暖房装置の運転状態に応じて上流側通路になりまた下流側通路にもなる共用通路である。制御弁2は、第1弁205(「弁部」を構成する)と第2弁206(「弁部」を構成する)を有し、一方の閉弁状態において他方の開度が設定開度に調整される比例弁として構成されている。ただし、第1弁205と第2弁206は、第1実施形態のような大きさの差はなく、基本的には第1弁205の制御状態、第2弁206の制御状態、閉弁状態のいずれかの状態に制御される。
【0040】
図4に示すように、制御弁2は、弁本体201とモータユニット102とを組み付けて構成されている。弁本体201は、ボディ104に第1弁205と第2弁206とを同軸状に収容して構成される。ボディ104の一方の側部には導入ポート210および導出ポート212が設けられ、他方の側部には導入出ポート214が設けられている。導入ポート210は第1通路に連通し、導入出ポート214は第2通路に連通し、導出ポート212は第3通路に連通する。ボディ104には、車両用冷暖房装置の運転状態に応じて、導入ポート210と導入出ポート214とをつなぐ第1冷媒通路、および導入出ポート214と導出ポート212とをつなぐ第2冷媒通路のいずれか一方が形成される。
【0041】
ボディ104の内方には、弁体130、弁体232、および弁作動体234が同軸状に配設されている。本実施形態において、区画部材124の軸受部226の外周面は滑り軸受として機能するが、内周面には第1実施形態のような雌ねじ部は設けられていない。一方、区画部248の内周面に雌ねじ部が設けられている。弁作動体234は、その上半部の外周面に雄ねじ部が形成され、区画部248の雌ねじ部に螺合している。弁作動体234は、その下半部が弁体130の下方に延出し、その先端にて弁体232に当接するように接続されている。区画部248と区画部材124との間には、弁体130を開弁方向に付勢するスプリング251(「付勢部材」として機能する)が介装されている。
【0042】
ボディ104の下半部には、段付円筒状の区画部材230が配設されている。区画部材230は、シール部材を介してボディ104に同心状に組み付けられている。区画部材230の内周面には軸線に平行な突条231が設けられ、弁体130の下端外周部に設けられた脚部を回転方向に係止している。すなわち、突条231は弁体130の回り止めとなっている。区画部材230の下部には、半径方向内向きに延出するフランジ部が形成され、そのフランジ部の内周部により弁孔144が形成されている。また、弁孔144の下端開口端縁により弁座146が形成されている。区画部材230における導入出ポート214との対向面には、内外を連通する連通孔が設けられている。
【0043】
弁体232は、弁孔144と導入ポート210との間の圧力室215に配設され、上流側から弁孔144に接離して第1弁205の開度を調整する。弁体232は、有底円筒状をなし、その上端部の外周面にはリング状の弾性体(例えばゴム)からなる弁部材250が嵌着されており、その弁部材250が弁座146に着座することにより、第1弁205を完全に閉じることが可能になる。圧力室215には、円ボス状のガイド部252が弁孔144と同軸状に形成されている。そして、弁体232の下端部がシール部材を介してガイド部252に摺動可能に内挿されている。弁体232とガイド部252とに囲まれた空間により背圧室254が形成される。弁体232とボディ104との間には、弁体232を閉弁方向に付勢するスプリング256(「付勢部材」として機能する)が介装されている。
【0044】
弁作動体234は、弁体232の上底部に当接する。その上底部に導入出ポート214と背圧室254とを連通させる連通孔258が設けられているため、背圧室254には導入出ポート214から導入または導出される中間圧力Ppが満たされる。ここで、本実施形態においては、弁孔144の有効径Cとガイド部252の有効径Dとが等しく設定されているため、弁体232に作用する冷媒圧力の影響はキャンセルされる。また、第1実施形態と同様に弁体130に作用する冷媒圧力の影響もキャンセルされる。
【0045】
以上のように構成された制御弁2は、モータユニット102の駆動制御によってその弁開度を調整可能なステッピングモータ作動式の制御弁として機能する。すなわち、車両用冷暖房装置の運転状態に応じて第1冷媒通路を開弁する場合、図4の状態からロータ172が一方向に回転駆動(正転)されることにより弁作動体234が弁体130に対して相対的に下方へ変位する。このとき、弁体130が弁座122に着座して第2弁206を閉じ、上方へ変位できない状態となっているため、弁作動体234が下方へ変位して弁体232を開弁方向へ押し下げる。弁体232は、図4に示す全閉状態と図5に示す全開位置との間の範囲で駆動され、第1弁205の開度が調整される。その結果、導入ポート210から導入された冷媒が第1弁205を経て導入出ポート214から導出される。
【0046】
また、車両用冷暖房装置の運転状態に応じて第2冷媒通路を開弁する場合、図4の状態からロータ172が他方向に回転駆動(逆転)されることにより弁作動体234が弁体130に対して相対的に上方へ変位する。このとき、スプリング256の付勢力により弁体232が弁座146に着座した状態、つまり第1弁205の閉弁状態が維持される。一方、弁作動体234が弁体130から離間する方向に変位するため、スプリング256の荷重とバランスするスプリング251の荷重が緩和され、スプリング251が伸長する。その結果、弁体130が下方へ変位する。弁体130は、図4に示す全閉状態と図6に示す全開位置との間の範囲で駆動され、第2弁206の開度が調整される。
【0047】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態に係る制御弁は、弁機構の構成等が第1,第2実施形態と異なるが、その他の部分に共通の構成を有する。このため、第1,第2実施形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付す等して適宜その説明を省略する。図7〜図9は、第3実施形態に係る制御弁の構成および動作を表す断面図である。
【0048】
制御弁3は、冷媒循環通路を構成する第1上流側通路と第2上流側通路と下流側通路との接続点に設けられ、各通路間の冷媒の流れを切り替えるとともにその流量を調整する。制御弁3は、第1弁305と第2弁306を有し、一方の閉弁状態において他方の開度が設定開度に調整される比例弁として構成されている。
【0049】
図7に示すように、制御弁3は、弁本体301とモータユニット102とを組み付けて構成されている。弁本体301は、ボディ104に第1弁305と第2弁306とを同軸状に収容して構成される。ボディ104の一方の側部には第1導入ポート310および第2導入ポート312が設けられ、他方の側部には導出ポート314が設けられている。第1導入ポート310は第1上流側通路に連通し、第2導入ポート312は第2上流側通路に連通し、導出ポート314は下流側通路に連通する。ボディ104には、車両用冷暖房装置の運転状態に応じて、第1導入ポート310と導出ポート314とをつなぐ第1冷媒通路、および第2導入ポート312と導出ポート314とをつなぐ第2冷媒通路のいずれか一方が形成される。
【0050】
ボディ104には、段付円筒状の区画部材330が内挿されている。区画部材330は、シール部材を介してボディ104に同心状に組み付けられている。そして、区画部材330の上半部に弁孔120が形成され、下半部に弁孔144が形成されている。ボディ104の内方には、弁体130、弁体332、弁作動体134および伝達ロッド334が同軸状に配設されている。区画部材124の軸受部226の内周面には、第1実施形態と同様に雌ねじ部が設けられている。弁作動体134の下端部には、伝達ロッド334が連結されている。伝達ロッド334は、段付円柱状をなし、弁体130の中央部を軸線方向に貫通している。伝達ロッド334の上端部は、弁作動体134の底部に固定されている。伝達ロッド334の下半部は大径化され、その段部が弁体130との相対変位を規制する係止部となっている。
【0051】
区画部材124の内方にはガイド孔118が形成されている。弁体130に連設された区画部348は、その上端部がガイド孔118に摺動可能に支持されている。区画部材124と区画部348とに囲まれた空間により背圧室150が形成されている。伝達ロッド334と弁体130との間に所定のクリアランスが存在するため、弁孔120の下流側の下流側圧力Poutがそのクリアランスを介して背圧室150に導入される。
【0052】
区画部材124と弁体130との間には、弁体130を閉弁方向に付勢するスプリング351(「付勢部材」として機能する)が介装されている。区画部材124と区画部材330との間には受圧調整部材349が配設されている。受圧調整部材349は、第1実施形態の受圧調整部材149とは異なり、薄膜状に形成され、区画部348に対して下方から当接する。
【0053】
弁体332は、弁孔144と第1導入ポート310との間の圧力室315に配設され、上流側から弁孔144に接離して第1弁305の開度を調整する。弁体332は、第2実施形態の弁体232に近似した構造を有する。弁体332とガイド部252との間には背圧室254が形成され、下流側圧力Poutが導入される。区画部材330の下端部とボディ104との間にも受圧調整部材349が配設されている。受圧調整部材349は、弁体332の下端部に対して上方から当接する。
【0054】
ここで、本実施形態においても、弁孔144の有効径Cとガイド部252の有効径Dとが等しく設定され、また弁孔120の有効径Aとガイド孔118の有効径Bとが等しく設定されている。このため、弁体130および弁体232に作用する冷媒圧力の影響はキャンセルされる。
【0055】
以上のように構成された制御弁3は、モータユニット102の駆動制御によってその弁開度を調整可能なステッピングモータ作動式の制御弁として機能する。すなわち、車両用冷暖房装置の運転状態に応じて第1冷媒通路を開弁する場合、図7の状態からロータ172が一方向に回転駆動(正転)されることにより弁体332が開弁方向に変位し、図8に示すように第1弁305が開弁状態となる。すなわち、ロータ172とともに回転する弁作動体134がねじ機構によって下降し、弁体332を押し下げるようにして開弁方向に変位させる。弁体332は、図7に示す全閉状態と図8に示す全開位置との間の範囲で駆動され、第1弁305の開度が調整される。その結果、第1導入ポート310から導入された冷媒が第1弁305を経て導出ポート314から導出される。
【0056】
また、車両用冷暖房装置の運転状態に応じて第2冷媒通路を開弁する場合、図7の状態からロータ172が他方向に回転駆動(逆転)されることにより弁体332が閉弁方向に変位し、図9に示すように第2弁306が開弁状態となる。すなわち、ロータ172とともに回転する弁作動体134がねじ機構によって上昇し、伝達ロッド334を吊り上げるようにして弁体130を開弁方向に変位させる。弁体130は、図7に示す全閉状態と図9に示す全開位置との間の範囲で駆動され、第2弁306の開度が調整される。このとき、伝達ロッド334が弁体332から離間して弁体332を押し下げる方向の力がなくなり、スプリング256の付勢力によって弁体332が弁座146に着座し、第1弁305が閉弁状態を維持する。その結果、第2導入ポート312から導入された冷媒が第2弁306を経て導出ポート314から導出される。
【0057】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態について説明する。本実施形態に係る制御弁は、弁機構の構成およびポートの数が第1実施形態と異なるが、その他の部分に共通の構成を有する。このため、第1実施形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付す等して適宜その説明を省略する。図10〜図12は、第4実施形態に係る制御弁の構成および動作を表す断面図である。
【0058】
制御弁4は、冷媒循環通路の所定位置に設けられ、上流側通路から下流側通路へ流れる冷媒の流量を調整する。図10に示すように、制御弁4は、弁本体401とモータユニット102とを組み付けて構成されている。制御弁4は、有底筒状のボディ104に小口径の第1弁405と、大口径の第2弁406とを同軸状に収容して構成され、一方の閉弁状態において他方の開度が設定開度に調整される比例弁として構成されている。
【0059】
ボディ104の一方の側部には導入ポート110が設けられ、他方の側部には導出ポート412が設けられている。導入ポート110は上流側通路に連通し、導出ポート412は下流側通路に連通する。制御弁4は、車両用冷暖房装置の運転状態に応じて第1弁405のみ、または第1弁405および第2弁406の双方を開弁する。
【0060】
ボディ104には、有底円筒状の区画部材420と段付円筒状の区画部材433とが同軸状に内挿されている。区画部材420は、ボディ104の下半部に嵌合され、ボディ104との間に連通路422を形成する。区画部材420の底部中央を軸線方向に貫通する段付孔が設けられ、その上端開口部にリング状の弁座形成部材424が圧入されている。弁座形成部材424の内周部により弁孔144が形成され、その上端開口端縁により弁座146が形成されている。弁体132が弁座146に着脱することにより、第1弁405が開閉される。連通路422は、弁孔144と導出ポート412とを連通させる。
【0061】
区画部材433は、シール部材を介してボディ104に同心状に組み付けられている。そして、区画部材433の中央部に弁孔120が形成されている。区画部材433の下半部にはガイド孔118が形成されている。ボディ104の内方には、弁体130、弁体132、弁作動体134および伝達ロッド430が同軸状に配設されている。区画部材124の軸受部226の内周面には、第1実施形態と同様に雌ねじ部が設けられている。伝達ロッド430は弁体132に一体に設けられ、弁体130および区画部148の内方の連通路151を摺動可能に貫通する。伝達ロッド430は、その上端部および中央部に半径方向外向きに突出する係止部を有する。伝達ロッド430は、弁作動体134および弁体130のそれぞれと相対変位可能であるが、その上側の係止部が弁作動体134の上面に係止されることにより、弁作動体134との相対変位が規制される。また、中央の係止部が弁体130の上端部に係止されることにより弁体130との相対変位が規制される。
【0062】
弁体130は、導入ポート110と弁孔120との間の圧力室415に配設され、上流側から弁孔120に接離して第2弁406の開度を調整する。弁体130と区画部材124との間には、弁体130を閉弁方向に付勢するスプリング431(「付勢部材」として機能する)が介装されている。弁体132は、伝達ロッド430の下端部に一体に設けられ、背圧室150から弁座146に着脱する。伝達ロッド430と弁作動体134との間には、弁体132を閉弁方向に付勢するスプリング432(「付勢部材」として機能する)が介装されている。区画部148と区画部材420とに囲まれた空間により背圧室150が形成されている。導入ポート110を介して導入された上流側圧力Pinは、連通路151を介して背圧室150に導入される。区画部材420と区画部材433との間には受圧調整部材149が配設されている。ここで、本実施形態においても、弁孔120の有効径Aとガイド孔118の有効径Bとが等しく設定されている。このため、弁体130に作用する冷媒圧力の影響はキャンセルされる。
【0063】
以上のように構成された制御弁4は、モータユニット102の駆動制御によってその弁開度を調整可能なステッピングモータ作動式の制御弁として機能する。すなわち、車両用冷暖房装置の運転状態に応じて小口径制御を実行する場合、図10の状態からロータ172が一方向に回転駆動(正転)されることにより弁体132が開弁方向に変位し、第1弁405が開弁状態となる。つまり、弁体132が、図10に示す全閉状態と図11に示す全開位置との間の範囲で駆動される。本実施形態では、第1弁405の閉弁状態からロータ172が5回転すると第1弁405が全開状態となり、弁体132が弁座146から2.5mmリフトする(1回転あたり0.5mm)。その間、小口径の第1弁405の弁開度(弁ストローク)は比例的に変化する。
【0064】
また、車両用冷暖房装置の運転状態に応じて大口径制御を実行する場合、図11に示す第1弁405の全開状態からロータ172がさらに同方向に回転(正転)される。その結果、弁体130が伝達ロッド430に引き上げられるようにして開弁方向に駆動される。このとき、弁体130は、図11に示す全閉状態と図12に示す全開位置との間の範囲で駆動される。本実施形態では、第2弁406の閉弁状態(第1弁405の全開状態)からロータ172が7回転すると第2弁406が全開状態となり、弁体130が弁座122から3.5mmリフトする(1回転あたり0.5mm)。すなわち、回転ストッパ188が上死点位置で係止部186に係止される結果、ロータ172の回転そのものが停止される。その間、大口径の第2弁406の弁開度(弁ストローク)は図示のように比例的に変化する。なお、ロータ172が逆方向に回転されると、上述と逆の手順で弁体130および弁体132が閉弁方向に動作する。ロータ172の回転数は制御指令値としての駆動ステップ数に対応するため、制御部は、制御弁4を任意の開度に制御することができる。その結果、導入ポート110から導入された冷媒が第1弁405および第2弁406を経て導出ポート412から導出される。
【0065】
[第5実施形態]
次に、本発明の第5実施形態について説明する。本実施形態に係る制御弁は、弁機構の構成およびポートの配置が第2実施形態と異なるが、その他の部分に共通の構成を有する。このため、第2実施形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付す等して適宜その説明を省略する。図13〜図15は、第5実施形態に係る制御弁の構成および動作を表す断面図である。
【0066】
制御弁5は、冷媒循環通路を構成する第1通路、第2通路、第3通路および第4通路の接続点に設けられ、各通路間の冷媒の流れを切り替えるとともにその流量を調整する。本実施形態において、第1通路は上流側通路、第2通路は第1下流側通路、第3通路は共用通路、第4通路は第2下流側通路である。制御弁5は、第1弁505、第2弁506および第3弁507を有し、各弁の開度が設定開度に調整される比例弁である。
【0067】
図13に示すように、制御弁5は、弁本体501とモータユニット102とを組み付けて構成されている。弁本体501は、ボディ104に第1弁505、第2弁506および第3弁507を同軸状に収容して構成される。ボディ104の一方の側部には導入ポート510および第2導出ポート516が設けられ、他方の側部には第1導出ポート512および導入出ポート514が設けられている。導入ポート510は第1通路に連通し、第1導出ポート512は第2通路に連通し、導入出ポート514は第3通路に連通し、第2導出ポート516は第4通路に連通する。
【0068】
ボディ104の内方には、弁体530、共用弁体532、弁作動体534、伝達ロッド536が同軸状に配設されている。本実施形態において、区画部材124の軸受部226の外周面は滑り軸受として機能するが、内周面には第1実施形態のような雌ねじ部は設けられていない。一方、弁体530の上半部の内周面に雌ねじ部が設けられている。弁作動体534は、その外周面に雄ねじ部が形成され、弁体530の雌ねじ部に螺合している。伝達ロッド536は、その上半部が弁体530に摺動可能に内挿され、その上端部にて弁作動体534に連結されている。
【0069】
ボディ104の上半部には区画部材517が配設され、区画部材517の下部に弁孔120が形成されている。ボディ104の下半部には区画部材230が配設され、区画部材230の下部に弁孔144が形成されている。さらに、ボディ104の下部には弁孔540が設けられ、その上端開口端縁により弁座545が形成されている。弁体530と区画部材230との間には、弁体530を閉弁方向に付勢するスプリング550(「付勢部材」として機能する)が介装されている。弁体530は、上流側から弁座122に着脱して第2弁506を開閉する。
【0070】
共用弁体532は、伝達ロッド536の下端部に同軸状に固定されている。共用弁体532は、段付円柱状の本体を有し、その上端部が弁孔144に接離可能に構成され、下端部が弁孔540に接離可能に構成されている。共用弁体532の上端部には弁孔144に摺動しつつ支持される複数の脚部(同図にはその1つのみ表示)が延設されている。また、共用弁体532の下端部には弁孔540に摺動しつつ支持される複数の脚部(同図にはその1つのみ表示)が延設されている。
【0071】
共用弁体532の上端部には第1弁部材541が嵌着され、下端部には第2弁部材542が嵌着されている。第1弁部材541は、環状の弾性体(本実施形態ではゴム)からなり、弁座146に着脱して第1弁505を開閉する。第2弁部材542は、環状の弾性体(本実施形態ではゴム)からなり、弁座545に着脱して第3弁507を開閉する。
【0072】
以上のように構成された制御弁5は、モータユニット102の駆動制御によってその弁開度を調整可能なステッピングモータ作動式の制御弁として機能する。すなわち、車両用冷暖房装置の運転状態に応じて第1冷媒通路を開弁する場合、図13に示す状態となる。このとき、第3弁507が開弁状態となる一方、第1弁505および第2弁506は閉弁状態となる。その結果、導入ポート510から導入された冷媒が第3弁507を経て第1導出ポート512から導出される。
【0073】
また、車両用冷暖房装置の運転状態に応じて第2冷媒通路を開弁する場合、図13の状態からロータ172が一方向に回転駆動(正転)されることにより弁作動体534が弁体530に対して相対的に下方へ変位する。このとき、弁体530が弁座122に着座して第2弁206を閉じ、上方へ変位できない状態となっているため、弁作動体534が下方へ変位して共用弁体532を押し下げる。共用弁体532は、図13に示す状態から図14に示すように第1弁505の開弁方向(第3弁507の閉弁方向)に駆動され、第1弁505および第3弁507の開度が調整される。このとき、第3弁507が閉弁状態にあれば、導入ポート510から導入された冷媒が第1弁505を経て導入出ポート514から導出される。
【0074】
また、車両用冷暖房装置の運転状態に応じて第3冷媒通路を開弁する場合、図13の状態からロータ172が他方向に回転駆動(逆転)されることにより弁作動体534が弁体530に対して相対的に上方へ変位する。このとき、スプリング550の付勢力により共用弁体532が引き上げられて第1弁505の閉弁状態が維持される。一方、弁作動体534が弁体530から離間する方向に変位する。弁体530は、図13に示す全閉状態と図15に示す全開位置との間の範囲で駆動され、第2弁506の開度が調整される。
【0075】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はその特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
【0076】
上記実施形態では、モータユニット102におけるシャフト182のガイド部184や回転ストッパ188の係合部190をいずれもコイル状の部材により螺旋状に形成する例を示した。変形例においては、例えばシャフト182のガイド部184を雄ねじ部とし、回転ストッパ188の係合部190を雌ねじ部とするねじ機構としてもよい。すなわち、両者により回転を並進に変換する機構が構成されればよい。
【0077】
上記実施形態では、本発明の車両用冷暖房装置を電気自動車に適用した例を示したが、内燃機関を搭載した自動車や、内燃機関と電動機を搭載したハイブリッド式の自動車に提供することが可能であることは言うまでもない。上記実施形態では、圧縮機として電動圧縮機を採用した例を示したが、エンジンの回転を利用して容量可変を行う可変容量圧縮機を採用することもできる。
【符号の説明】
【0078】
1,2,3,4,5 制御弁、 101 弁本体、 102 モータユニット、 104 ボディ、 105 第1弁、 106 第2弁、 110 導入ポート、 112 第1導出ポート、 114 第2導出ポート、 120 弁孔、 122 弁座、 126 軸受部、 130,132 弁体、 134 弁作動体、 144 弁孔、 146 弁座、 148 区画部、 150 背圧室、 172 ロータ、 173 ステータ、 174 回転軸、 182 シャフト、 184 ガイド部、 188 回転ストッパ、 190 係合部、 192 動力伝達部、 201 弁本体、 205 第1弁、 206 第2弁、 210 導入ポート、 212 導出ポート、 214 導入出ポート、 226 軸受部、 232 弁体、 234 弁作動体、 248 区画部、 254 背圧室、 301 弁本体、 305 第1弁、 306 第2弁、 310 第1導入ポート、 312 第2導入ポート、 314 導出ポート、 332 弁体、 334 伝達ロッド、 348 区画部、 401 弁本体、 405 第1弁、 406 第2弁、 412 導出ポート、 430 伝達ロッド、 501 弁本体、 505 第1弁、 506 第2弁、 507 第3弁、 510 導入ポート、 512 第1導出ポート、 514 導入出ポート、 516 第2導出ポート、 530 弁体、 532 共用弁体、 534 弁作動体、 536 伝達ロッド、 540 弁孔、 545 弁座。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステッピングモータ駆動式の制御弁において、
上流側から冷媒を導入する導入ポートと、下流側へ冷媒を導出する導出ポートと、前記導入ポートと前記導出ポートとを連通する弁孔とを有するボディと、
前記弁孔に接離して弁部を開閉する弁体と、
前記弁体を前記弁部の開閉方向に駆動するためのロータを含むステッピングモータと、
前記ロータとともに回転し、その軸線周りの回転運動を軸線方向の並進運動に変換することにより前記弁体を前記弁部の開閉方向に駆動する弁作動体と、
を備え、
前記弁作動体は、前記ロータに対する回転が規制される一方、前記ロータに対して軸線方向に並進可能となるよう前記ロータに支持されていることを特徴とする制御弁。
【請求項2】
前記弁体または前記ボディの内周面に設けられた雌ねじ部と、前記弁作動体の外周面に設けられた雄ねじ部との螺合構造により、前記ロータの回転運動を並進運動に変換する作動変換機構が構成されていることを特徴とする請求項1に記載の制御弁。
【請求項3】
前記ボディに固定され、前記ロータの軸線方向に延びるシャフトと、
前記シャフトの外周面に軸線方向にそって延設された螺旋状のガイド部と、
前記ガイド部にそって係合する係合部と前記ロータに支持される動力伝達部とを有し、前記ロータの回転とともに前記シャフトの軸線方向に変位し、前記動力伝達部が前記シャフトの一端側および他端側のそれぞれで係止されることにより前記ロータの回転を規制する回転ストッパと、
を備え、
前記ロータがその一端側と他端側に軸受部を有する中空形状をなし、
前記シャフトが前記ロータの内部空間に延設されることにより、前記回転ストッパがその内部空間において変位するように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の制御弁。
【請求項4】
前記ボディに設けられた第1の弁孔と、
前記ボディに前記第1の弁孔と同軸状に設けられた第2の弁孔と、
前記第1の弁孔に接離することにより第1の弁部を開閉する第1の弁体と、
前記第2の弁孔に接離することにより第2の弁部を開閉する第2の弁体と、
を備え、
前記第1の弁体と前記第2の弁体とが、前記ステッピングモータを共用のアクチュエータとしてそれぞれ駆動され、
前記第1の弁体および前記第2の弁体の一方の内周面または前記ボディの内周面に設けられた雌ねじ部と、前記弁作動体の外周面に設けられた雄ねじ部との螺合構造により、前記ロータの回転運動を並進運動に変換する作動変換機構が構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の制御弁。
【請求項5】
前記第1の弁体と前記第2の弁体との間に設けられ、両弁体をそれぞれ閉弁方向に付勢する付勢部材を備え、
前記雌ねじ部が前記ボディに設けられ、
前記ロータの回転に応じて前記弁作動体が軸線方向に変位することにより、前記付勢部材の付勢力が変化するように構成されていることを特徴とする請求項4に記載の制御弁。
【請求項6】
前記第2の弁体を開弁方向に付勢する第1の付勢部材と、
前記第1の弁体を閉弁方向に付勢する第2の付勢部材と、
を備え、
前記雌ねじ部が前記第2の弁体に設けられ、
前記弁作動体が前記第2の弁体を貫通して前記第1の弁体に接続可能に構成され、
前記ロータが一方向に回転すると前記第2の弁体が閉弁方向に変位し、その第2の弁体の閉弁状態においてさらに前記ロータが一方向に回転すると、前記弁作動体により前記第1の弁体が開弁方向に駆動されることを特徴とする請求項4または5に記載の制御弁。
【請求項7】
前記第2の弁体を閉弁方向に付勢する第1の付勢部材と、
前記第1の弁体を閉弁方向に付勢する第2の付勢部材と、
を備え、
前記雌ねじ部が前記ボディに設けられ、
前記弁作動体が前記第2の弁体を貫通して前記第1の弁体に接続可能に構成され、
前記ロータが一方向に回転すると、前記弁作動体により前記第1の弁体が開弁方向に駆動され、前記ロータが他方向に回転すると、前記第1の弁体が閉弁方向に変位し、その第1の弁体の閉弁状態においてさらに前記ロータが他方向に回転すると、前記第2の弁体が前記弁作動体に引き上げられるようにして前記第2の弁部を開弁させることを特徴とする請求項4または5に記載の制御弁。
【請求項8】
前記ロータが一方向に回転することにより前記第1の弁体が変位して前記第1の弁部が全開状態となったときに前記第2の弁体が前記第1の弁体に係合し、前記ロータが同方向にさらに回転することにより前記第2の弁体が前記第1の弁体に引き上げられるようにして前記第2の弁部を開弁させることを特徴とする請求項4または5に記載の制御弁。
【請求項9】
前記第1の弁孔の前記第2の弁孔とは反対側に同軸状に設けられた第3の弁孔と、
前記第3の弁孔に接離して第3の弁部を開閉可能な第3の弁体と、
前記第1の弁孔と前記第3の弁孔との間に配置され、前記第1の弁体と前記第3の弁体とが一体に設けられた共用弁体と、
前記第2の弁体を閉弁方向に付勢する付勢部材と、
を備え、
前記雌ねじ部が前記第2の弁体に設けられ、
前記弁作動体が前記第2の弁体を貫通して前記共用弁体に接続され、
前記ロータが一方向に回転すると前記第2の弁体が閉弁方向に変位し、その第2の弁体の閉弁状態においてさらに前記ロータが一方向に回転すると、前記弁作動体により前記共用弁体が前記第1の弁体の開弁方向かつ前記第3の弁体の閉弁方向に駆動され、
前記ロータが他方向に回転すると前記共用弁体が前記第1の弁体の閉弁方向かつ前記第3の弁体の開弁方向に駆動され、その第1の弁体の閉弁状態においてさらに前記ロータが他方向に回転すると、前記弁作動体により前記第2の弁体が開弁方向に駆動されることを特徴とする請求項4または5に記載の制御弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−107709(P2012−107709A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257431(P2010−257431)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(000133652)株式会社テージーケー (280)
【Fターム(参考)】