説明

ステレオ撮影装置

【課題】 軽量小型で容易に持ち運びができると共に、左右のデジタルカメラを同時にシャッターを切れて、長期にわたって連続撮影できるステレオ撮影装置を得る。
【解決手段】
ステレオ撮影装置は、基線長が30cm程度になるように左右にデジタルカメラの底形状と同じ大きさの形状の右用カメラ溝6a及び左用カメラ溝3aを形成し、これらの溝にデジタルカメラ3とデジタルカメラ6とを入れて固定するステレオ架台5と、このステレオ架台5の中央を支持する一脚のポール4とで形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯が容易で、かつデジタルカメラが動かない構造のステレオ撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ステレオ撮影装置について、例えば構造物の維持管理を取り上げて説明する。
【0003】
全ての構造物は、外力や環境の影響によって経年とともに性能が低下する。従って、想定される作用のもとで、構造物本体あるいは構造物を構成する部材が継続して要求性能を満足している必要がある。
【0004】
そして、設計・施工時には、性能の低下を考慮に入れた様々な配慮が行われるが、適切な維持管理を行うことにより性能低下レベルを抑制することが極めて重要となる。
【0005】
このため、構造物は、構造物の要求性能を満足しているかどうかを定期的に検査し、必要に応じて適切な時期に適切な手法で措置を施す。この時、構造物を検査→計画→工事といった一連の維持管理体系で管理していく。この時、重要となるのが、記録を行う事である。
【0006】
この記録は、変状の経年変化、工事などの履歴を残すことが重要である。そのためには、現状の変状や工事により更新された部材などの形状寸法を測定し、最新の情報を得る必要がある。
【0007】
この記録管理には、基本管理図と呼ばれる構造物管理用図面が一般的に用いられる。基本管理図を最新のものにしておくには、現況の橋梁構造物を測定する必要がある。
【0008】
その測定方法は、構造物に近接できる場合はメジャーによる測定ができるが、巨大な構造物の場合、近接して測定できない場合も多い。その場合、遠隔にて非接触の測定が必要となる。
【0009】
非接触の測定方法としては、TS(トータルステーション)による方法と、地上レーザーによる方法と、ステレオカメラによる方法の3通りの方法が知られている。
【0010】
TSによる方法や地上レーザーによる方法は、測定方法で実績があり、非常に高い測定精度が得られる。しかし、設置位置の正確な座標算出が必要であること、複数地点からの観測や測定データからの橋梁構造物データ作成が高コストであることなどの欠点がある。また、構造物の維持管理に用いられる基本管理図において要求される精度は、変状箇所や補修箇所の正確な位置関係を把握できることが重要であり、測定にmmやcmオーダーの測定精度は不要であり、10cmオーダー程度の測定精度があれば良い。
【0011】
ステレオカメラによる方法は、大きく分けて、単一カメラによる撮影方式と、ステレオ写真撮影方式の2通りの方法が知られている。
【0012】
単一カメラによる撮影方式は、図13(a)に示すように1台のカメラを使用し、撮影位置を順次移動しながら同じ対象物を撮影することでステレオ写真を得る方式である。
【0013】
一方、ステレオ写真撮影方式は、図13(b)に示すように2台のカメラが正確に測定された距離(B:基線長という)だけ離れて、平行光軸になるように平板状の架台などに固定されているカメラ(総称してステレオカメラともいう)を用いて、撮影位置毎にステレオ撮影を行う方式である。
【0014】
単一カメラによる撮影方式とステレオカメラによる撮影装置とは相反する短所と長所とを有している。
【0015】
<単一カメラによる撮影方式の短所と長所>
(長所)
(1) ステレオカメラ用の架台が不要で、一台のカメラによる撮影であるから安価で軽量である。
【0016】
(2) 基線長を自由に変更であり、測定精度への柔軟な対応が可能である。
【0017】
(短所)
(1) 撮影前計画を確実にしなければ、必要な測定個所の撮影漏れが発生する。
【0018】
(2) 測定対象に測量ポール等の基準尺を必ず複数配置する必要がある。
【0019】
(3) 異なる地点からの撮影のため、写真内の同じ場所を見つけることが困難である。特に、複雑な構造物であるほど死角になる個所が多数発生する。
【0020】
(4) ステレオ測定を行う2枚の写真設定が煩雑である。
【0021】
(5) 対象物にはターゲット貼り付けを行う必要がある。
【0022】
<ステレオカメラ撮影方式>
(長所)
(1) 2台のカメラを水平、平行に設置しているので、撮影後の測定作業が容易である。
【0023】
(2) 測定したい方向に向けて撮影すると、過不足なくその範囲の撮影が可能である。
【0024】
(3) 測定対象に基準尺用の測量ポール、撮影のためのターゲット貼り付け等が不要である。
【0025】
(短所)
(1) ステレオ撮影のための架台や、カメラも同機種が2台必要となるので、撮影機材が高くなる。
【0026】
(2) 基線長をある程度とらなければならないので、携帯性に難がある。
【0027】
(3) 測定可能な撮影範囲(ステレオ範囲)に制約を受ける。
【0028】
(4) 固定基線長であるので、求める測定精度仕様から、対象までの測定可能な撮影距離に制約を受ける。
【0029】
すなわち、単一カメラの撮影方式及びステレオ写真撮影の方式は、それぞれが相反する短所と長所を有する。
【0030】
しかし、例えば橋梁を構成する構造物の寸法等を計測するには、ターゲット貼り付けが困難なことからステレオ写真撮影の方式が望ましい。
【0031】
そして、ステレオ写真撮影方式として例えば特許文献1(特開平11−160815号)、特許文献2(特開2005−92121号)が開示されている。
【0032】
特許文献1は、三脚の雲台、固定部材等を介して平板状のスライドの左右にカメラをネジ等で固定可能にしてステレオ撮影するものである。
【0033】
特許文献2は、三脚の上に左右のカメラを設けた輪状の円形台を搭載して、ステレオ写真撮影を可能とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0034】
【特許文献1】特開平11−160815号公報
【特許文献2】特開2005−92121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0035】
しかしながら、特許文献1は、カメラを左右に動かすためにカメラを載せる台をスライド構造にしているので、このカメラを固定するための部材を必要とするものであるから装置が複雑で重量が重くなるという課題があった。
【0036】
また、カメラを固定するための部材を必要とするものであるから、架台を何等かの物にぶつけた場合は、カメラがずれてしまう場合があった。
【0037】
また、特許文献1及び2は、三脚を地面において固定させて撮影させるものであるからさらに重量が重くなり、持ち運びに適さないという課題があった。
【0038】
本発明は以上の課題を解決するためになされたものであり、軽量小型で容易に持ち運びができると共に、左右のデジタルカメラを同時にシャッターを切れて、長期にわたって連続撮影できるステレオ撮影装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0039】
本発明は、構造物を同時撮影したステレオ写真を得るステレオ撮影装置であって、
基線長が使用するデジタルカメラの横幅の数倍以内となる間隔で、右側にデジタルカメラと左側にデジタルカメラを搭載して、これらを固定するステレオ架台と、
一方の先端に前記ステレオ架台を取り付けるためのカメラネジ付きの雲台を、他方に石突きを備えて、前記ステレオ架台の中央に先端が接続されるポールと、
前記ポールの所定位置に設けられ、スイッチの操作によってシャッター信号を送出するシャッタースイッチ部と、
前記シャッタースイッチ部からのシャッター信号を分配して前記右側のデジタルカメラと前記左側のデジタルカメラとに供給するシャッター信号分配部と
を備え、
前記ステレオ架台は、平板状であり、
右側に設けられ、前記右側のデジタルカメラの底形状に合わせた形の所定深さの溝が形成され、該溝には前記右側のデジタルカメラのカメラネジ用の孔が形成された右カメラ用溝と、
前記左側のデジタルカメラの底形状の形に合わせた形の前記所定深さの溝が形成され、該溝には前記左側のデジタルカメラのカメラネジ用の孔が形成された左カメラ用溝と、
当該ステレオ架台の中央に設けられた前記ポールのカメラネジ用の雌ネジと、
を備えたことを要旨とする。
【発明の効果】
【0040】
以上のように本発明によれば、基線長をデジタルカメラの数倍以内にすることにより、ステレオ架台の寸法が短くなるので小型軽量化ができている。
【0041】
また、ステレオ架台の左右にデジタルカメラの底形状と同じ形の溝を形成してデジタルカメラを左右に取り付けているので、小型軽量であると共にステレオ架台が何等かの要因で衝撃を受けたとしても、デジタルカメラがずれることはない。つまり、衝撃を受けたとしてもデジタルカメラがずれることはないので、再度キャリブレーションを行なう必要がないので、長期にわたって使用できる。
【0042】
さらに、左右のデジタルカメラを同時にシャッターを切れるので、作業員にとっては、撮影作業が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本実施の形態のステレオ撮影装置の構成図である。
【図2】ポール4の外観図である。
【図3】ステレオ架台5(材質はアルミが好ましい)を説明する斜視図である。
【図4】ステレオ架台5の側面図及び上面図である
【図5】シャッター信号分配部9のケーブル接続を説明する説明図である。
【図6】シャッター信号分配部9の詳細説明図である。
【図7】ステレオ写真測量の原理を説明する説明図である。
【図8】基線長と被写体までの距離の関係及び測定誤差を説明する説明図である。
【図9】測定誤差を求めるための原理を説明する説明図である。
【図10】測定誤差変化率(測定寸法2000mm)の一覧を示す説明図である。
【図11】測定寸法別測定誤差変化率(基線長30cm)の一覧を示す説明図である。
【図12】他の実施の形態のステレオ架台の斜視図である。
【図13】単一カメラ撮影方式とステレオ撮影方式とを説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1は本実施の形態のステレオ撮影装置の構成図である。図1に示すようにステレオ撮影装置1は、ポール4(一脚ともいう)の頂点に平板台5(本実施の形態ではステレオ架台という)を取り付け、このステレオ架台5の左右にデジタルカメラ3、デジタルカメラ6を固定し、対象の構造物(本実施の形態では新幹線等の橋梁)を撮影して、ステレオ写真I1、I2を得る。
【0045】
そして、このステレオ撮影装置1は、ステレオ架台5の左右のデジタルカメラ3、デジタルカメラ6との間に外部電源部8とシャッター信号分配部9とを設けている。
【0046】
前述のポール4の先端には、一脚用雲台7が設けられ、この一脚用雲台7によってステレオ架台5の中央にポール4が取り付けられる構造になっている。また、ポール4には、シャッタースイッチ部12が設けられている。
【0047】
前述のシャッター信号分配部9は、基板23に雌コネクタ(USB)とコネクタ20とを設けて、シャッタースイッチ部12からのシャッター信号を左のデジタルカメラ3と右のデジタルカメラ6とに分配している。このシャッター信号分配部9については詳細に後述する。
【0048】
図1に示すように、シャッタースイッチ部12にはケーブル13が接続され、このケーブル13の端部に設けられた雄コネクタ13a(USB)がシャッター信号分配部9の雌コネクタ21(USB)に接続されている。また、シャッター信号分配部9のコネクタ20には、右のデジタルカメラ6にシャッター信号を供給するケーブル14と、左のデジタルカメラ3にシャッター信号を供給するためのケーブル15とが接続されている。
【0049】
さらに、外部電源部8と右のデジタルカメラ6とは電源ケーブル23が接続され、また外部電源部8と左のデジタルカメラ3とは電源ケーブル24が接続されている。これらの電源ケーブルは、一方にデジタルカメラの電源入力用コネクタに着脱可能なコネクタを備え、他方が共に外部電源の+端子と−端子に接続されている。
【0050】
前述の外部電源8は、デジタルカメラをステレオ架台5から取り外す都度に、キャリブレーション(焦点距離補正量、レンズ中心位置ズレ、ラジアル方向レンズ歪み係数等)が必要となる。このため、デジタルカメラを取り外さないで長期に使用できるようにするために外部電源部8を設けている。
【0051】
一方、デジタルカメラ3とデジタルカメラ6との基線長Bは、このデジタルカメラ3、6が撮影距離15mにおける撮影範囲が20m以上となるように、かつ長さ5mの対象が測定精度15cm程度となるように、約20〜30cm程度(好ましくは30cm)にしている。
【0052】
さらに、ステレオ撮影装置1のデジタルカメラとして、デジタルカメラ3、デジタルカメラ6は、撮像素子が1/1.7原色CCD(有効画素が約1200万画素)、最小レンズ焦点距離fが35ミリフィルム換算で24mm程度である。
【0053】
また、フォーカスモードはマニュアルフォーカス機能が装備されている。されに、手ぶれ補正機能がオフにできることが必須である。また、このデジタルカメラは、シャッター信号の入力に伴って撮影した画像をメモリ(図示せず)に記憶する機能を有している。
【0054】
そして、寸法は、111.6mm(W)×58.0mm(H)×25.0mm(D)程度である。さらに、重量は208g程度である。
【0055】
さらに、ズーム撮影時でのステップズーム撮影機能があることが望ましい。これにより、指定の焦点距離において焦点距離固定で撮影が可能となる。
【0056】
次にポール4(一脚)とステレオ架台5について説明する。
【0057】
図2はポール4の外観図である。図3はステレオ架台5(材質はアルミが好ましい)を説明する斜視図である。図4(a)はステレオ架台5の側面図である。図4(b)はステレオ架台5の上面図である。なお、ポール4は、カーボン、プラスチック樹脂、アルミ等の材質である。
【0058】
ポール4は図2に示すように、伸縮自在型(45cm〜2.00cm:好ましくは170cm程度)の1本のポールである。そして、このポール4の一方には、一脚用雲台7が設けられている。この一脚用雲台7は、ステレオ架台5の雌ネジ穴11(ポール4を固定するためのもの)に差し込むための雄ネジ31(カメラネジともいう)付きの丸型台32が設けられている。また、他方は、脚ロックレバー、脚ロックナット、石突き構造となっている。
【0059】
さらに、シャッタースイッチ部12及びケーブル13はバンド33a、33b、34でポール4に固定されている。
【0060】
一方、図3に示すようにステレオ架台5は、長さが45cm程度であり、本実施の形態で用いるデジタルカメラ3、デジタルカメラ6との基線長が30cm程度となる間隔で取り付けることを可能としている。
【0061】
そして、図3に示すように、ステレオ架台5の左右には、デジタルカメラ3、デジタルカメラ6の底形状に合わせて厚さ3mmの溝加工処理が施されている。この加工溝を本実施の形態では左用カメラ溝3a、右用カメラ溝6aと称する。本実施の形態で使用するデジタルカメラは、レンズ部分がカメラの底部までに達しているので、このレンズ部のためにステレオ架台5の端まで溝を切っている。
【0062】
また、ステレオ架台5の中央には、ポール4を接続するための雌ネジ穴11(カメラネジともいう)を設けている。
【0063】
前述の右用カメラ溝6aには雌ネジ穴6bが設けられている。さらに、右用カメラ溝6aには、右のデジタルカメラ6の底面の電源コネクタ(図示せず)に外部電源8からの電源ケーブル24を接続させるための四角孔6b(カメラによってはないものもある:丸孔でもよい)を設けている。
【0064】
すなわち、右用カメラ溝6aに右のデジタルカメラ6を入れて、カメラネジ6fで右のデジタルカメラ6を固定する。
【0065】
このため、作業中に何等かの理由で外部から衝撃を受けたとしても、右用カメラ溝6aは3mm程度の溝であるから右のデジタルカメラ6が動くことはない。従って、作業中においてデジタルカメラを取り外して、再び取り付けてキャリブレーションをやり直す必要がない。
【0066】
また、左用カメラ溝3aにはポール4を接続するための雌ネジ穴3b(カメラネジともいう)が設けられている。さらに、左のデジタルカメラ3の底面の電源コネクタ(図示せず)に外部電源8からの電源ケーブル24を接続させるための四角孔3b(カメラによってはないものもある:丸孔でもよい)を設けている。
【0067】
すなわち、左用カメラ溝3aに左のデジタルカメラ3を入れて、カメラネジ3fで左のデジタルカメラ3を固定する。
【0068】
このため、作業中に何等かの理由で外部から衝撃を受けたとしても、左用カメラ溝3aは3mm程度の溝であるから右のデジタルカメラ6が動くことはない。従って、作業中においてキャリブレーションをやり直す必要がない。
【0069】
さらに、ステレオ架台5には、シャッター信号分配部9を雄ネジ9a、9b及び雌ネジ9c、9d(図示せず)で固定する。また、外部電源部8を雌ネジ8a、8b、8c、8d及び雄ネジ8e、8f(図示せず)、8g(図示せず)、8h(図示せず)で固定する。
【0070】
さらに、ステレオ架台5の中央にはポール4の一脚用雲台7のカメラネジ31を挿入するための雌ネジ11が設けられている。
【0071】
従って、本実施の形態のステレオ撮影装置1は、ステレオ架台5の左用カメラ溝3aに左のデジタルカメラ3が、右用カメラ溝6aに右用のデジタルカメラ6がはめ込まれて固定される。このため、外部から衝撃を受けたとしても両方のデジタルカメラが動くことはないし、かつ外部電源部8を有しているので、長期に連続して撮影可能である。
【0072】
さらに、シャッター信号分配部9を有しているので、作業員はシャッタースイッチ12のスイッチ12aを1回操作するだけで同時にステレオ写真I1とステレオ写真I2とを同時に得ることができる。
【0073】
次にシャッター信号分配部9について説明する。
【0074】
図5はシャッター信号分配部9のケーブル接続を説明する説明図である。図6はシャッター信号分配部9の詳細説明図である。図6に示すように、シャッター信号分配部9は、基板13とこの基板23の一方に設けられた雌コネクタ21(USB用)と、基板23の他方に設けられたコネクタ20等から構成されている。この雌コネクタ21には、シャッタースイッチ部12からのケーブル13の端部に接続された雄コネクタ18が接続される。
【0075】
前述の雌コネクタ21及びコネクタ20は2ピンが望ましいが、本実施の形態では4ピンを用いている。
【0076】
また、基板23にはVccパターン19とGNDパターン22とが形成されている。一方、コネクタ20のピン16には基板23のVccパターン19が接続され、さらにこのピン16には、二本の線(16a、16b)が内部で半田付けされている。
【0077】
また、コネクタ20のピン17には基板23のGNDパターン22が接続され、さらにこのピン17には、二本の線(17a、17b)が内部で半田付けされている。
【0078】
すなわち、シャッタースイッチ部12のスイッチ12aの操作(シャッターON)によって出力されるVcc信号をコネクタ20のピン16、線16a、16bによって分配する。さらに、GND信号をコネクタ20のピン17、線17a、17bによって分配する。
【0079】
そして、この線16a(Vcc)と線17a(Vcc)とは、一緒になって左のデジタルカメラ3に信号を供給するケーブル15となって左のデジタルカメラ3に接続される。
【0080】
また、この線17b(GND)と線16b(GND)とは、一緒になって右のデジタルカメラ6に信号を供給するケーブル14となって右のデジタルカメラ6に接続される。
【0081】
従って、シャッタースイッチ部12のスイッチ12aの操作(シャッターON)によって同時に左右のデジタルにシャッター信号が供給されることになるから、同時に撮影ができる。このとき、デジタルカメラは手ぶれ補正防止機能を働かせないで撮影させることが必要である。
【0082】
このケーブル14とケーブル15とシャッター信号分配部9とを総称して同時シャッタリモートケーブルとも称する(図5参照)。
【0083】
次に、本実施の形態のステレオ撮影装置の測定精度について説明する。一般にステレオ写真を用いて被写体の奥行き(高さ)は撮影した2枚一組の写真を用いて、図7に示すようにして対象の3次元位置を求めることができる。
【0084】
そして、X、Z、Y方向の測定誤差は、次式で計算される(図8参照)。
【数1】

【0085】
そして、図9は測定誤差を求めるための原理を説明する説明図である。数2は測定誤差を加味したP1、P2の座標値を求める式である。
【数2】

【0086】
図10にはf(mm)=5.1、ΔCCD(mm)=0.00188、測定寸法L0(mm)=2000、角度(θ)=0°で、基線長B=30cm(0.30m)の場合の測定誤差率変化の一覧を一例として示している。
【0087】
すなわち、基線長B=30cmで対象物の測定寸法が2000mmの場合において、撮影距離Lが20m以下で5%以下の測定誤差を得ている。
【0088】
また、図11には、f(mm)=5.1、ΔCCD(mm)=0.00188、基線長=30cm(0.30m)の場合における撮影距離、測定寸法を相互に変化させた場合の測定誤差率を一例としている。
【0089】
図11に示すように、固定基線方式のステレオ撮影装置は、基線長を固定しているがゆえに、測定精度に対する制約があるが、測定業務の性質や測定対象の必要測定精度を考慮し、撮影を適切にすれば、目標する測定精度は満足することができる。
【0090】
例えば、橋梁維持管理における管理図面においては、測定寸法値にmm、cmオーダーの測定精度を要求する必要はなく、10cmオーダー(寸法値比5%)程度の測定寸法精度があれば良い。このような場合、ステレオ撮影装置において、目的とする測定精度は得ることはできている。
【0091】
さらに、より高い測定精度が必要な場合は、対象に対して近づき撮影するか、或いはズームアップして撮影することで対処することが可能である。
【0092】
従って、このような軽量小型のステレオ写真撮影装置であっても橋梁などの構造物をステレオ撮影した場合は、精度の高い計測ができるステレオ写真を得ることが可能となっている。
【0093】
従って、このような軽量小型のステレオ写真撮影装置であっても橋梁などの構造物をステレオ撮影した場合は、目的の精度での計測ができるステレオ写真を容易に得ることが可能となっている。
【0094】
なお、上記実施の形態ではステレオ架台5を左右のカメラ溝を平行に形成として説明したが図12に示すように、それぞれのカメラ溝を少し内向き(0.1度〜12度)に向け、収斂撮影させてもよい。図12においては、ステレオ架台5の端に対して例えばカメラ溝を3度傾(水平)けて形成している。
【0095】
さらに、上記実施の形態の左右のデジタルカメラはGPS機能を備え、ステレオ写真I1、I2を撮影したときに、GPSの位置情報、時刻情報等をステレオ写真I1、I2に対応させて記憶してもよい。
【0096】
さらに、上記実施の形態ではカメラレンズがカメラ本体の底部に渡っているデジタルカメラを一例としたステレオ架台としたが、カメラレンズがカメラ本体に渡っていないカメラを用いた場合は、カメラ溝にはレンズ領域は形成しなくともよい。
【0097】
また、ステレオ架台5に形成する溝の深さは、3mmとしたが、1mm、2mm、4mm、5mm・・としてもよい。要はカメラがずれない深さであればよい。
【0098】
また、上記実施の形態では基線長を30cmとしたが、対象物の距離又は対象物の大きさによっては、基線長はこれより短くとも良いし長くともよい。
【0099】
また、上記実施の形態では対象物を橋梁として説明したが、ビル、タワー、樹木等であっても良い。
【符号の説明】
【0100】
1 ステレオ撮影装置
3 左のデジタルカメラ
4 ポール
5 ステレオ架台
6 右のデジタルカメラ
8 外部電源部
9 シャッター信号分配部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物を同時撮影したステレオ写真を得るステレオ撮影装置であって、
基線長が使用するデジタルカメラの横幅の数倍以内となる間隔で、右側にデジタルカメラと左側にデジタルカメラを搭載して、これらを固定するステレオ架台と、
一方の先端に前記ステレオ架台を取り付けるためのカメラネジ付きの雲台を、他方に石突きを備えて、前記ステレオ架台の中央に先端が接続されたポールと、
前記ポールの所定位置に設けられ、スイッチの操作によってシャッター信号を送出するシャッタースイッチ部と、
前記シャッタースイッチ部からのシャッター信号を分配して前記右側のデジタルカメラと前記左側のデジタルカメラとに供給するシャッター信号分配部と
を備え、
前記ステレオ架台は、平板状であり、
右側に設けられ、前記右側のデジタルカメラの底形状に合わせた形の所定深さの溝が形成され、該溝には前記右側のデジタルカメラのカメラネジ用の孔が形成された右カメラ用溝と、
前記左側のデジタルカメラの底形状の形に合わせた形の前記所定深さの溝が形成され、該溝には前記左側のデジタルカメラのカメラネジ用の孔が形成された左カメラ用溝と、
当該ステレオ架台の中央に設けられた前記ポールのカメラネジ用の雌ネジと、
を有することを特徴とするステレオ撮影装置。
【請求項2】
前記ステレオ架台には、前記左右のデジタルカメラに電源を供給するための外部電源部が設けられ、
前記外部電源部及び前記シャッター信号分配部は、
前記ポールのカメラネジ用の雌ネジを跨いで、前記右用のデジタルカメラと左側のデジタルのカメラとの間に設けられていることを特徴とする請求項1記載のステレオ撮影装置。
【請求項3】
前記ステレオ架台の右カメラ用溝及び左カメラ用溝の底には、
前記外部電源部からの電源ケーブル用の孔を、そのデジタルカメラの電源入力用コネクタの位置に対応する個所に設けていることを特徴とする請求項1記載のステレオ撮影装置。
【請求項4】
前記右カメラ用溝及び左カメラ用溝は、
それぞれが平行又は所定の角度にされて前記ステレオ架台に設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のステレオ撮影装置。
【請求項5】
前記シャッター信号分配部及び外部電源部はそれぞれがケースに収められて、前記ステレオ架台にネジにより固定されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のステレオ撮影装置。
【請求項6】
前記シャッタースイッチ部と前記シャッター信号分配部とに接続され、前記シャッタースイッチ部からの1つのVcc信号及びGND信号からなるシャッター信号を前記同時シャッター信号生成部に供給する第1のケーブルと、
前記シャッター信号分配部と右側のデジタルカメラに接続され、前記シャッター信号分配部からのシャッター信号を右側のデジタルカメラに供給するための着脱可能な第2のケーブルと、
前記シャッター信号分配部と左側のデジタルカメラに接続され、前記シャッター信号分配部からのシャッター信号を左側のデジタルカメラに供給するための着脱可能な第3のケーブルと、
を有し、
前記シャッター信号分配部は、
前記第1のケーブルに接続される第1のコネクタと、前記第2及び第3のケーブルに接続される第2のコネクタと、これらのコネクタを固定する基板とを備え、
前記基板は、
前記第1のコネクタからのシャッター信号のVccを供給するVccパターンと、前記シャッター信号のGND信号を供給するGNDパターンとが形成され、
前記第2のコネクタは、
前記基板のVcc信号を第1の接続ピンで受ける共に、第2の接続ピンで前記GND信号を受け、
第1の接続ピンには、前記第2のケーブルのシャッター信号のVccライン及びGNDラインを接続してシャッター信号を分配し、前記第2のケーブルを介して右側のデジタルカメラに供給し、
第2の接続ピンには、前記第3のケーブルのシャッター信号のVccライン及びGNDラインを接続してシャッター信号を分配して、前記第3のケーブルを介して左側のデジタルカメラに供給する
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のステレオ撮影装置。
【請求項7】
一方に前記右側の電源入力用コネクタと着脱可能な電源コネクタを備え、他方が前記外部電源に接続された第1の電源用ケーブルと、
一方に前記左側の電源入力用コネクタと着脱可能な電源コネクタを備え、他方が前記外部電源に接続された第2の電源用ケーブルと
を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のステレオ撮影装置。
【請求項8】
前記基線長は、
20cm〜30cm程度であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のステレオ撮影装置。

【図1】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−203473(P2011−203473A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−70518(P2010−70518)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000196587)西日本旅客鉄道株式会社 (202)
【出願人】(592105620)ジェイアール西日本コンサルタンツ株式会社 (15)
【出願人】(591074161)アジア航測株式会社 (48)
【Fターム(参考)】