説明

ステロイド/核レセプター媒介性疾患の治療のための組成物および方法

本発明は、タイツリオウギ(HQ)の非水性抽出物およびその組成物に関する。有効量の少なくとも1つの上記の抽出物を被験体に投与するステップを含む、PPAR媒介性生理学的容態の治療方法が提供され、さらにステロイド/核レセプターの少なくとも1つのリガンドの存在下で、有効量の少なくとも1つのタイツリオウギ(HQ)の抽出物またはフラボノイド化合物を被験体に投与するステップを含む、ステロイド/核レセプターのリガンドの活性の増大または相乗作用方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステロイド/核媒介性生理学的容態の治療のための組成物および方法に関する。特に、漢方薬(Chinese herb)抽出物およびこれらから抽出された化合物を提供する。
【背景技術】
【0002】
ステロイド/核レセプター
ステロイド/核レセプターは、そのエンハンサー領域またはプロモーター領域に存在するホルモン応答エレメントへの結合によって遺伝子を活性化するリガンド活性化転写因子である。ステロイド/核レセプタースーパーファミリーのメンバーには、アンドロゲンレセプター(AR)、プロゲステロンレセプター(PR)、糖質コルチコイドレセプター(GR)、エストロゲンレセプター(ER)、およびペルオキシソーム増殖活性化レセプター(PPAR)が含まれる。ステロイド/核レセプターは、一般に、特異的機能を有するドメインに組織化される。N末端トランス活性化ドメイン(TAD)は、リガンド独立性活性化機能を有するのに対して、DNA結合ドメイン(DBD)は、レセプターを、応答遺伝子のプロモーター中の同族(cognate)標的部位に結合させることができる。C末端リガンド結合ドメイン(LBD)は、小さな疎水性リガンドとの特異的相互作用のためのポケットを含む。リガンド結合の際、ステロイド/核レセプターは、高次構造が変化してレセプターがDNAと相互作用し、それにより、標的遺伝子由来のRNA転写が調節される。RNA転写の調整によって対応するタンパク質レベルが変化し、これらのレセプターに関連する無数の生理学的活性をもたらす。
【0003】
ペルオキシソーム増殖因子活性化レセプター(PPAR)およびPPARアクチベーター(リガンド)
PPARは、レチノイドXレセプター(RXR)とヘテロ二量体を形成し、標的遺伝子のプロモーター領域中のペルオキシソーム増殖因子応答エレメント(PPRE)への結合によって遺伝子発現を調節する核/ホルモンレセプタースーパーファミリーのメンバーである(Mangelsdorf DJ,Evans RM 1995)。3つの公知のPPARアイソタイプ(すなわち、α、β、およびγ)が存在する。PPARγは、グルコース代謝、脂質生成、およびインスリン感作の調節ならびに発癌および炎症過程に関与する遺伝子発現を制御する(Kersten S et al 2000)。公知のPPARγの合成リガンドには、化合物のチアゾリジンジオン(TZD)クラスが含まれ、これは、血漿グルコースの維持、長期糖尿病合併症の発症の予防、および糖尿病耐性に関してII型糖尿病の治療に有効であることが臨床的に証明されている(Saltiel AR,Olefsky JM 1996)。これらのPPARγアクチベーターは、腫瘍成長阻害のための抗増殖薬としても開発されている(Koeffler HP 2003)。さらに、その潜在的な抗炎症効果が証明されたことにより、炎症性疾患モデルおよび炎症性腸疾患患者における治療試験が開始されている(Wada K et al 2001)。他方では、多くの研究により、PPARαが脂肪酸取り込み(脂肪酸結合タンパク質(FATP))、β酸化(アシル−CoAオキシダーゼ)、およびω酸化(シトクロムP450)などの脂質代謝に関与する遺伝子を調節することが証明されている(Gould Rothberg BE et al 2001)。これらの所見と一致して、PPARαの薬理学的アクチベーターであるフィブレートクラスの薬物(フェノフィブレートおよびゲムフィブロジルが含まれる)は、高脂血症患者の血清トリグリセリド(TG)を低下させ、HDLコレステロールを増加させる。PPARαはまた、アポリポタンパク質C−III(リポタンパク質リパーゼによるTG加水分解を阻害するタンパク質)をダウンレギュレートすることが示されている。PPARαリガンドのこの活性は、脂質低下効果にさらに寄与する(Haubenwallner S et al 1995)。さらに、心血管疾患におけるフィブレート介入は、全身のTG減少によって心臓および血管壁の脂肪蓄積が減少するので、有益な可能性が高い。したがって、PPARαアクチベーターは、異常脂質血症、アテローム性動脈硬化症、冠状動脈性心疾患、肥満症、および多嚢胞性卵巣疾患などの容態の治療に有用である。
【0004】
PPARアクチベーターがグルコースおよび脂質代謝の調節において多くの効果があることが、II型糖尿病、異常脂質血症、アテローム性動脈硬化症、肥満症、および多嚢胞性卵巣疾患の治療においてこれらの薬剤が使用される要因となっている。さらに、乳癌、前立腺癌、および結腸癌に対するその抗増殖効果が、これらの癌の治療で活用されている。最近、結腸炎および炎症性腸疾患などの炎症性疾患に対処するその抗炎症効果のために、PPARアクチベーターに別の治療項目が加えられた。
【0005】
PPARアクチベーターの広範な治療用途を考慮して、治療で使用することができるPPARγおよびPPARαのアゴニストまたは相乗活性を有する化合物を同定することが有利であろう。
【0006】
ホルモンおよびホルモンモジュレーター
テストステロン、エストロゲン、プロゲストゲン、および糖質コルチコイドは、体内でそれぞれAR、ER、PR、およびGRへの結合によってヒトの生殖器系および免疫系で広範な役割を果たすステロイド系ホルモンである。テストステロンは、子宮内での男性形態形成、思春期の配偶子形成および前立腺成長、および高齢男性の前立腺癌の発症を媒介する。一方で、プロゲステロンはエストロゲンと共に、卵母細胞の受精、胚の着床、および妊娠の維持に重要な女性生殖器官の変化を開始させるように中枢神経系、卵巣、および子宮に作用する。他方では、糖質コルチコイドは、内分泌ホメオスタシス、ストレス応答、脂質代謝、炎症、およびアポトーシスなどの多数の生理学的過程に関与する。これらのホルモンによって調節されるその各ホルモンレセプターに対する複数の効果により、所望の効果を発揮するためにこれらのレセプターに対する選択的親和性を有する合成アンドロゲン、エストロゲン、プロゲスチン、および糖質コルチコイドを使用する機会が得られる。しかし、これらの薬剤の使用は、癌リスクの増加、視床下部−下垂体軸の抑制、および成長遅延による骨粗鬆症に及ぶ副作用に関する多数の報告により妨げられている。したがって、現在、その有効性を維持し、且つ、有益であるが副作用の少ない薬剤の開発に挑んでいる。したがって、外因性薬剤を使用して以前に試験した副作用を防止および減少させるために体内の既存のステロイド系ホルモンの活性を増大および相乗作用する化合物または天然産物を同定することが有利である。このような物質は、治療組成物の開発および/または栄養補助食品への適用に必要である。
【0007】
タイツリオウギ(HQ)由来の抽出物および化合物の使用
アストラガルス(Astragalus)は、マメ科(エンドウマメ)に属する。125種のアストラガルス種のうち、タイツリオウギ(Astragalus membranaceus)の乾燥根は、最も一般的に医薬品に使用されているものである。中国では、タイツリオウギの乾燥根は、黄耆(Huang qi)(HQ)として一般に公知である。これは、伝統的に、気を強化し、表部(superficial)の耐性を強化し、排膿および新規の組織の成長を促進するために使用される。伝統的には、真性糖尿病、慢性腎炎のタンパク尿症、気の欠如に起因する浮腫、貧血、および膿瘍の治療に適応される(Pharmacopoeia of the People’s Republic of China,1997)。
【0008】
タイツリオウギ(HQ)は、ウイルス疾患治療のために他の抗ウイルス薬または薬草と組み合わせて使用されている(Qian Z et al 1990)。これは、副作用を軽減するための化学療法の補助薬および潜在的な抗癌薬としても研究されている(Sun A,Chiang CP 2001)。さらに、糖尿病予防におけるタイツリオウギの水性抽出物の有用性を決定する研究がいくつか行われている(Lu J et al 1999)。多くの研究者は、心臓病治療におけるタイツリオウギの水性抽出物の用途を研究している(Ma J et al 1998,Yang Y et al 1990)。タイツリオウギの根のエタノール抽出物は、He ZQ and Wang BQ,1990に記載されている。タイツリオウギの根のn−ブタノール抽出物も、Ma X,et al.,2003に記載されている。要するに、現在報告されている潜在的な臨床上の利点は、ウイルス疾患、心疾患、糖尿病、および炎症症候群から癌に及ぶ。
【0009】
タイツリオウギの根の医学的性質は、アストラメンブラニン(Astramembrannin)およびアストラガロシドI〜IVが含まれるその多糖類に帰する(Keiji K et al 1997,Zhang W 1997)。同様に、この薬草から単離したアフロモルシン(afromorsin)、カリコシン(calycosin)、ホルモノネチン、およびオドラチン(odoratin)などのフラボノイドは、薬草の抗酸化特性および抗炎症特性を明らかにすることができる(Yoshiaki S et al 1997,Shizuo T et al 1998)。単離された他の成分には、γ−アミノ酪酸、ダウコステロール、β−シトステロール、4−アミノブタン酸、ジメチル4,4’−ジメトキシ−5,6:5’,6’−ビス(メチレンジオキシ)ビフェニル−2,2’−ジカルボキシレート、パルミチン酸、リノール酸、リノレン酸、葉酸、ベタイン、プラリン(praline)、アスパラミド(asparamide)、カナバニン、およびγ−アミノ酪酸が含まれる(Zhong Yao Xian Dai Yan Jiu 1993;Phytochemical Dictionary of the Leguminosae 1994)。これらの全化合物の濃度は、培養条件によって変化し得る(Ma XQ et al 2002)。タイツリオウギの根のエタノール抽出物から単離した10種の構成要素は、He ZQ and Wang BQ,1990に記載されている。10種の構成要素は、パルミチン酸(I)、ルペオール(II)、β−シトステロール(III)、アステラガロシド(asteragaloside)IV(IV)、3S−3−(−)ムクロヌラトール(mucronulatol)−7−O−β−D−グルコピラノシド(V)、ダウコステロール(VI)、ジメチル4,4−ジメトキシ−5,6,5’,6’−ジメチレンジオキシビフェニル−2,2−ジカルボキシレート(VII)、アスパラギン(VIII)、γ−アミノ酪酸(IX)、およびスクロース(X)である。
【0010】
タイツリオウギから単離した主要化合物の1つであるカリコシンは、(Lin LZ et al 2000)を、イヌカンゾウの根毛培養物などの他の供給源から単離することもできる(Li W et al 2002)。天然供給源だけでなく、カリコシンを化学合成することもできる(Jain AC et al 1969)。研究により、マカエリウム・アリスツラタム(Machaerium aristulatum)の抗ジアルジア活性が単離されたカリコシンおよびホルモノネチンの生体活性に起因することが示されている(ElSohly HN et al 1999)。さらに、ブラウンハート(アンディラ・イネルミス、Andira inermis)の抗プラスモジウム活性も、カリコシンによるものと説明されている(Kraft C et al 2000)。
【0011】
他方では、ヒト肝臓でミクロソーム代謝を受けるホルモノネチンはカリコシン(Tolleson WH et al 2002)よりも研究されている。ホルモノネチンは、そのエストロゲン作用(Miksicek RJ 1994,Willard ST and Frawley LS 1998,Kuiper GGJM et al 1998,Morito K et al 2002)および抗酸化能力(Pool−Zobel BL et al 2000)について広範に研究されている。
【0012】
カリコシンおよびホルモノネチンは、タイツリオウギの根のn−ブタノール抽出によっても得られている(Ma X,et al.,2003,J.Chromatogr.,Apr.11;992(1−2):193−7)。
【0013】
カリコシンおよびホルモノネチンは、イソフラボンファミリーに属し、メンバーの間ではゲニステインが含まれる。強力な植物エストロゲンとしてのゲニステインの性質は広範に研究されている。疫学的研究により、アジア人男性の前立腺癌発症の少なさと高ダイズゲニステイン食とが関連づけられている。しかし、ゲニステインのアンドロゲン効果には解明の余地がある。
【0014】
最近、薬草または天然の供給源の医薬品の使用に関心が向けられ始めている。さらに、天然産物由来の薬物は、栄養補助処方物または栄養補助食品としての商業上または産業上の機会を生むことができる。最後に、天然産物中の有効成分として同定された化合物は、薬学的研究の重要な基礎を形成する。
【0015】
しかし、タイツリオウギおよび他の薬草の抽出物ならびにこれらから単離されたフラボノイド化合物を調査する場合でさえ、ステロイド/核レセプター(PPARレセプターが含まれる)に対するタイツリオウギの抽出物またはこれから単離されたフラボノイド化合物(カリコシンおよびホルモノネチン)の効果に関する研究は報告されていない。
【発明の開示】
【0016】
本発明者らは、薬草、特に、タイツリオウギ(以後、「HQ」と示す)の抽出物および/またはこれから単離したフラボノイド化合物がステロイド/核レセプター関連生理学的容態の治療に有用であることを見出した。
【0017】
1つの態様によれば、本発明は、タイツリオウギ(HQ)のヘキサン抽出物、ジクロロメタン抽出物、またはクロロホルム抽出物を提供し、タイツリオウギ(HQ)の非水性抽出物も提供する(但し、HQ抽出物はエタノールまたはブタノールHQ抽出物ではない)。このような抽出物の特徴は、PPAR生体活性物質に富むことである。
【0018】
本発明はまた、タイツリオウギ(HQ)のヘキサン抽出物、タイツリオウギ(HQ)のジクロロメタン抽出物、タイツリオウギ(HQ)のクロロホルム抽出物、またはタイツリオウギ(HQ)の非水性抽出物のうちの少なくとも1つを含む組成物(但し、HQ抽出物は、エタノールまたはブタノールHQ抽出物ではない)を提供する。
【0019】
組成物は、少なくとも1つのフラボノイド化合物をさらに含み得る。
【0020】
特に、本発明は、タイツリオウギ(HQ)のヘキサン抽出物、タイツリオウギ(HQ)のジクロロメタン抽出物、タイツリオウギ(HQ)のクロロホルム抽出物、およびタイツリオウギ(HQ)の非水性抽出物からなる群(但し、HQ抽出物はエタノールまたはブタノールHQ抽出物ではない)から選択される有効量の少なくとも1つの抽出物を含む、ステロイド/核(s/n)レセプター媒介性生理学的容態の治療のための薬学的組成物または栄養補助組成物を提供する。
【0021】
薬学的組成物または栄養補助組成物を、食品または飲料の形態で調製することもできる。
【0022】
上記組成物の任意の形態および使用説明書を含む商業包装も提供する。
【0023】
別の態様によれば、本発明は、タイツリオウギ(HQ)のヘキサン抽出物、タイツリオウギ(HQ)のジクロロメタン抽出物、タイツリオウギ(HQ)のクロロホルム抽出物、およびタイツリオウギ(HQ)の非水性抽出物からなる群(但し、HQ抽出物はエタノールまたはブタノールHQ抽出物ではない)から選択される有効量の少なくとも1つの抽出物を被験体に投与するステップを含む、ステロイド/核(s/n)レセプター媒介性生理学的容態の治療方法を提供する。
【0024】
PPARγ媒介性生理学的容態は、糖尿病、癌、多嚢胞性卵巣疾患、または炎症性腸疾患である。
【0025】
PPARα媒介性生理学的容態は、異常脂質血症、アテローム性動脈硬化症、冠状動脈性心疾患、または肥満症である。
【0026】
さらなる態様によれば、本発明者らは、フラボノイド化合物(例えば、上記薬草抽出物から単離したイソフラボノイド化合物)もPPAR媒介性生理学的容態の治療に有用であり得ることを見出した。したがって、本発明はまた、有効量のカリコシンおよび/またはホルモノネチンを被験体に投与するステップを含む、ステロイド/核(s/n)レセプター媒介性生理学的容態の治療方法(但し、前立腺癌および乳癌の治療を除く)を提供する。
【0027】
別のさらなる態様によれば、本発明は、ステロイド/核レセプターの少なくとも1つのリガンドの存在下で、有効量の
i)タイツリオウギ(HQ)の抽出物;
ii)フラボノイド化合物;
iii)本発明の任意の実施形態の組成物;
のうちの少なくとも1つを被験体に投与するステップを含む、ステロイド/核レセプターのリガンドの活性を増大および/または相乗作用する方法を提供する。
【0028】
ステロイド/核レセプターリガンドは、抗糖尿病薬または脂質低下薬であり得る。リガンドは、ホルモン(例えば、アンドロゲン、プロゲストゲン、または糖質コルチコイド)であり得る。
【0029】
特に、上記のステロイド/核レセプターのリガンドの活性を増大または相乗作用する方法では、
a)リガンドがアンドロゲンであり、被験体が、男性不妊症、慢性の骨および筋肉の減少、老年男性更年期、アンドロゲン不感性症候群、クラインフェルター症候群、または停留睾丸の疾患または容態下にあるか、該疾患または該容態下になく、
b)リガンドがプロゲストゲンであり、被験体が、閉経後ホルモン代替療法、女性不妊症、子宮内膜癌、続発性無月経、機能性子宮出血、または月経異常の疾患または容態下にあるか、該疾患または該容態下になく、および/または
c)リガンドが糖質コルチコイドであり、被験体が、自己免疫疾患、関節炎、術後移植片拒絶、または喘息の疾患または容態下にあるか、該疾患または該容態下にない。
【0030】
上記方法では、フラボノイド化合物も使用することができる。例えば、適切なフラボノイド化合物は、カリコシン、ホルモノネチン、ゲニステイン、アフロモルシン、ビオカニンA、クメストロール、オドラチン、およびダイゼインなどである。
【0031】
特に、ステロイド/核レセプターのリガンドの活性を増大または相乗作用する方法は、糖尿病、アテローム性動脈硬化症、多嚢胞性卵巣疾患、ホルモン依存性の乳癌、結腸癌、もしくは前立腺癌、または炎症性腸疾患からなる群から選択されるPPARγ媒介性疾患の治療方法である。
【0032】
別の態様によれば、本発明は、タイツリオウギの植物体または植物体の一部を、ヘキサン、ジクロロメタン、および/またはクロロホルムで処理するステップを含む、タイツリオウギの抽出物の調製方法を提供する。
【0033】
別のさらなる態様によれば、本発明は、ステロイド/核レセプターのリガンドの活性を増大するか相乗作用することができる化合物または抽出物をスクリーニングおよび/または発見する方法であって、
化合物または抽出物をステロイド/核レセプターの少なくとも1つのリガンドを含む組成物と接触させるか混合するステップと、
リガンドの活性の増大または相乗作用を決定するステップと
を含む、方法を提供する。
【0034】
特に、リガンドは、ステロイド/核レセプターのポケットに結合し、化合物または抽出物は、ステロイド/核レセプターのリガンド結合ポケットに特異的に結合しない。
【0035】
リガンドは、内因性のアンドロゲン、プロゲストゲン、糖質コルチコイド、および/またはPPARアゴニストであってよい。
【0036】
本発明の別の態様によれば、本発明は、医薬品用のタイツリオウギ(HQ)のヘキサン抽出物、ジクロロメタン抽出物、またはクロロホルム抽出物を提供し、タイツリオウギ(HQ)の非水性抽出物(但し、HQ抽出物は、エタノールまたはブタノールHQ抽出物ではない)も提供する。特に、抽出物は、ステロイド/核(s/n)レセプター生体活性物質に富む。
【0037】
さらなる態様によれば、抽出物は、少なくとも1つのフラボノイド化合物をさらに含む。
【0038】
本発明の別の態様は、被験体のステロイド/核(s/n)レセプター媒介性容態の治療のための薬学的組成物または栄養補助組成物の調製のための本発明の抽出物の使用である。組成物は、少なくとも1つのフラボノイド化合物をさらに含んでもよい。
【0039】
s/nレセプター媒介性容態は、PPAR媒介性容態、特に、PPARα媒介性容態および/またはPPARγ媒介性容態でもよい。
【0040】
本発明はまた、ステロイド/核(s/n)レセプター媒介性容態の治療(但し、前立腺癌および乳癌の治療を除く)のための薬学的組成物または栄養補助組成物の調製のためのカリコシンおよび/またはホルモノネチンの使用を提供する。
【0041】
s/nレセプター媒介性容態がPPAR媒介性容態、特に、PPARα媒介性容態および/またはPPARγ媒介性容態であり得る。
【0042】
さらなる態様によれば、組成物は、食品もしくは飲料中、および/または商業包装中に存在することができ、包装は使用説明書を含む。
【0043】
本発明の別の態様は、ステロイド/核レセプターのリガンドの活性の増大または相乗作用のための薬学的組成物または栄養補助組成物の調製のための、
タイツリオウギ(HQ)の抽出物;および
フラボノイド化合物またはその混合物
のうちの少なくとも1つの使用である。
【0044】
ステロイド/核レセプターの少なくとも1つのリガンドの存在下で、有効量のタイツリオウギ(HQ)の抽出物およびフラボノイド化合物またはその混合物を被験体に投与するステップを含む、インビボで増大および/または相乗作用する方法を実施することができる。特に、抽出物は、本発明の任意の態様による抽出物である。被験体は、s/nレセプター媒介性生理学的容態、特に、PPAR媒介性容態、さらにより詳細には、PPARα媒介性容態および/またはPPARγ媒介性容態を罹患し得る。
【0045】
さらに、リガンドは、以下のうちのいずれか1つであってもよい。
(a)リガンドがアンドロゲンであり、被験体が、男性妊性、慢性の骨および筋肉の減少、老年男性更年期、アンドロゲン不感性症候群、クラインフェルター症候群、または停留睾丸の疾患または容態下にあるか、該疾患または該容態下になく、
(b)リガンドがプロゲストゲンであり、被験体が、閉経後ホルモン代替療法、女性不妊症、子宮内膜癌、続発性無月経、機能性子宮出血、または月経異常の疾患または容態下にあるか、該疾患または該容態下になく、または
(c)リガンドが糖質コルチコイドであり、被験体が、自己免疫疾患、関節炎、術後移植片拒絶、または喘息の疾患または容態下にあるか、該疾患または該容態下にない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
本明細書中に記載の引用文献は、便宜上参考文献一覧表の形態で列挙し、実施例の最後に添付している。このような引用文献の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0047】
本発明者らは、細胞ベースの報告された遺伝子系を使用してステロイド/核レセプター、詳細にはPPAR、より詳細にはPPARγおよびPPARαのアクチベーターを同定するために伝統的な漢方薬(すなわち、真性糖尿病または「喉が渇く疾患(thirst−disease)」に伝統的に適応される薬草)をスクリーニングした。このスクリーニングから、タイツリオウギ(「黄耆」としても知られている)の非水性抽出物が、新規のステロイド/核レセプター、詳細にはPPARγおよびPPARαのアゴニスト活性を示すことを見出した。
【0048】
したがって、本発明は、タイツリオウギ(HQ)の非水性抽出物(但し、HQ抽出物は、エタノールまたはブタノールHQ抽出物ではない)を提供する。特に、本発明は、タイツリオウギ(HQ)のヘキサン抽出物、ジクロロメタン抽出物、またはクロロホルム抽出物に関する。
【0049】
これらの抽出物は、ステロイド/核(s/n)レセプター生体活性物質、特に、PPARγおよびPPARαの生体活性物質に富む。
【0050】
ステロイド/核(s/n)レセプターファミリー、特に、レセプターのペルオキシソーム増殖活性化レセプター(PPAR)ファミリーの強力なアクチベーターであるので、上記タイツリオウギ抽出物は、糖尿病、異常脂質血症、アテローム性動脈硬化症、肥満症、多嚢胞性卵巣疾患、ホルモン依存性の乳癌、結腸癌、および前立腺癌、ならびに炎症性腸疾患などのs/nレセプターファミリーによって媒介される容態の治療に有用であり得る。
【0051】
「ステロイド/核レセプター」は、エンハンサー領域またはプロモーター領域中に存在するホルモン応答エレメントへの結合によって遺伝子を活性化するリガンド活性化転写因子をいう。ステロイド/核レセプタースーパーファミリーのメンバーには、アンドロゲンレセプター(AR)、プロゲステロンレセプター(PR)、糖質コルチコイドレセプター(GR)、エストロゲンレセプター(ER)、およびペルオキシソーム増殖活性化レセプター(PPAR)が含まれる。PPARレセプターには、PPARγおよびPPARαが含まれる。
【0052】
本発明はまた、特にPPARに対するs/nレセプターの活性に基づいたタイツリオウギおよびその抽出物の生物活性を測定および標準化する新規の方法に関する。
【0053】
本発明の抽出物を、タイツリオウギの植物体または植物体の一部、特に植物体の根から調製することができる。抽出物を、当技術分野で公知の任意の標準的な方法(例えば、He ZQ and Wang BQ,1990 and by Ma X,et al.,2003に記載の方法)にしたがって調製することができる。本発明の方法では、植物の乾燥根を、小片に挽き、その後非水性溶媒(好ましくは、ヘキサン、ジクロロメタン、および/またはクロロホルム)で抽出することが好ましい。本発明の抽出物の調製方法を、実施例に開示する。
【0054】
タイツリオウギという用語は、天然または人為的に作製されたタイツリオウギの変種も含む。人為的に作製された変種には、選択的交配または遺伝子操作によって作製された変種が含まれる。タイツリオウギの一部には、植物体の樹皮、葉、幹、根、花、種子、他の生殖部分、もしくは植物部分、または2つ以上のこれらの部分の組み合わせが含まれる。
【0055】
本発明者らは、本発明の抽出物がフラボノイド化合物で富化されることを見出した。特に、カリコシンおよびホルモノネチンのようなイソフラボノイド化合物である。
【0056】
本発明者らは、カリコシンが強力なステロイド/核レセプターアゴニスト、特に、強力なPPARγアゴニストであることを見出した。したがって、カリコシンは、糖尿病、アテローム性動脈硬化症、多嚢胞性卵巣疾患、ホルモン依存性の乳癌、結腸癌、および前立腺癌、ならびに炎症性腸疾患などのPPARγによって媒介される容態の治療に有用であり得る。
【0057】
本発明者らはまた、ホルモノネチンが強力なステロイド/核レセプターアゴニスト、特に、強力なPPARαアゴニストおよびPPARγアゴニストであることを見出した。したがって、ホルモノネチンは、糖尿病、異常脂質血症、アテローム性動脈硬化症、肥満症、多嚢胞性卵巣疾患、ホルモン依存性の乳癌、結腸癌、および前立腺癌、ならびに炎症性腸疾患などのPPARγおよびPPARαによって媒介される容態の治療に有用であり得る。ステロイド/核レセプターのアゴニストとして適切な他のフラボノイド化合物も本発明の範囲内に含まれる。
【0058】
カリコシン、ホルモノネチン、および他のフラボノイド化合物を、当技術分野で公知の任意の標準的な方法によって調製することができる。カリコシンおよびホルモノネチンの調製方法を、実施例に開示する。カリコシン、ホルモノネチン、および他の適切なフラボノイド化合物を、標準的な方法によって化学合成することもできる。
【0059】
本明細書中で使用される、用語「アゴニスト」は、任意のステロイド/核レセプターと結合した場合にステロイド/核レセプターを活性化する、本発明の少なくとも1つの抽出物もしくはフラボノイド化合物、その混合物、または本発明の抽出物もしくはフラボノイド化合物を含む組成物をいう。本明細書中で使用される、用語「調整する」は、任意のステロイド/核レセプターの生物活性の変化または変更をいう。調整は、タンパク質活性の増減、結合特性の変化、またはステロイド/核レセプターの生物学的、機能的、または免疫学的性質の任意の他の変化であり得る。
【0060】
本発明はまた、本発明の少なくとも1つの抽出物および/または少なくとも1つのフラボノイド化合物を含む組成物または処方物に関する。
【0061】
本発明の組成物は、タイツリオウギの一部、その植物もしくは園芸等価物、その抽出物、抽出物の化学的もしくは機能的等価物、または抽出物の1つ以上の成分の精製形態もしくは化学合成形態を含み、組成物は、被験体のステロイド/核レセプター媒介性容態の調整で有効である。本発明の組成物は、薬草組成物、自然薬品、処方物、および/または医学的または改善特性を有する処方物もしくは組成物ということもできる。用語「処方物」および「組成物」を、本明細書中で交換可能に使用する。
【0062】
用語「組成物」には、液体、固体、エアゾール、または蒸気形態のタイツリオウギまたはその一部の抽出物が含まれる。特に、処方物は、タイツリオウギの非水性抽出物を含む。より詳細には、抽出物は、エタノールおよびブタノール抽出物ではない。好ましくは、ヘキサン抽出物、ジクロロメタン抽出物、またはクロロホルム抽出物である。処方物はまた、当業者が適切と考えるフラボノイド化合物を含み得る。例えば、カリコシン、ホルモノネチン、ゲニステイン、アフロモルシン、ビオカニンA、クメストロール、オドラチン、およびダイゼインなどである。しかし、適切なフラボノイド化合物のリストは、これらの化合物に制限されない。任意の適切なフラボノイド(例えば、公的または私的なフラボノイドまたはイソフラボノイドのデータベース(以下を参照のこと)に記載の任意の適切なフラボノイド)は、本発明の範囲内に含まれる。
【0063】
したがって、組成物は、タイツリオウギ(HQ)のヘキサン抽出物、タイツリオウギ(HQ)のジクロロメタン抽出物、タイツリオウギ(HQ)のクロロホルム抽出物、タイツリオウギ(HQ)の非水性抽出物、またはフラボノイド化合物(但し、HQ抽出物は、エタノールまたはブタノールHQ抽出物ではない)のうち、少なくとも1つを含み得る。
【0064】
特に、本発明は、タイツリオウギ(HQ)のヘキサン抽出物、タイツリオウギ(HQ)のジクロロメタン抽出物、タイツリオウギ(HQ)のクロロホルム抽出物、およびタイツリオウギ(HQ)の非水性抽出物からなる群(但し、HQ抽出物は、エタノールまたはブタノールHQ抽出物ではない)から選択される有効量の少なくとも1つの抽出物を含み、少なくとも1つのフラボノイド化合物をさらに含む、ステロイド/核(s/n)レセプター媒介性生理学的容態の治療のための薬学的組成物または栄養補助組成物に関する。
【0065】
特に、s/nレセプター媒介性生理学的容態は、PPAR媒介性疾患であり、糖尿病、癌、多嚢胞性卵巣疾患、炎症性腸疾患、異常脂質血症、アテローム性動脈硬化症、冠状動脈性心疾患、または肥満症である。
【0066】
タイツリオウギ抽出物形態の本組成物または処方物を、任意の適切な形態(摂取、局所適用、蒸気、またはエアゾール手段が含まれる)で投与することができる。用語「摂取」は、薬草または抽出物の可食手段または液体手段を介した投与を含む。
【0067】
インビボ適用のために、抽出物または植物の一部を、投与のための薬学的に許容可能な処方物(キャリアまたは希釈剤が含まれる)に組み込むことができる。当業者は、適切な投薬レベルを容易に決定する。例示的な薬学的に許容可能なキャリアには、経口、静脈内、皮下、および筋肉内への投与などに適切なキャリアが含まれる。クリーム、ローション、錠剤、分散性粉末、顆粒、シロップ、エリキシル、滅菌水性もしくは非水性溶液、懸濁液、または乳濁液などの形態での投与が意図される。経口液の調製のために、適切なキャリアには、湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、甘味料、香味物質、および香料などの添加物を含む乳濁液、溶液、懸濁液、およびシロップなどが含まれる。非経口投与用の流動物の調製のために、適切なキャリアには、滅菌水性または非水性の溶液、懸濁液、または乳濁液が含まれる。非水性溶媒または賦形剤の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(オリーブ油およびトウモロコシ油など)、ゼラチン、および注射用有機エステル(オレイン酸エチルなど)である。このような投薬形態はまた、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、および分散剤などのさらなる成分を含み得る。処方物を、例えば、細菌保持フィルターによる濾過、組成物への滅菌薬の組み込み、組成物の照射、または組成物の加熱によって滅菌することができる。処方物を、使用直前の滅菌水またはいくつかの他の滅菌注射用媒体による溶液として製造することもできる。
【0068】
「適切な投薬レベル」は、ステロイド/核レセプターを活性化するのに十分に高い循環濃度を得るのに十分なレベルを含む。
【0069】
本発明の組成物は、s/nレセプター媒介性生理学的容態の治療のための有効量の1〜1000μg/mL(1〜1000×10-6g/mL)の抽出物(血漿中)を含み得る。特に、組成物は、PPARαおよび/またはPPARγ媒介性生理学的容態の治療のための有効量の1〜1000μg/mLの抽出物を(血漿中に)含み得る。
【0070】
本発明はまた、本発明の組成物、薬学的組成物、または栄養補助組成物を含む食品および/または飲料を提供する。
【0071】
本発明は、さらに、本発明の任意の組成物を含む商業包装を提供する。
【0072】
別の態様によれば、本発明は、タイツリオウギ(HQ)のヘキサン抽出物、タイツリオウギ(HQ)のジクロロメタン抽出物、タイツリオウギ(HQ)のクロロホルム抽出物、およびタイツリオウギ(HQ)の非水性抽出物からなる群(但し、HQ抽出物は、エタノールまたはブタノールHQ抽出物ではない)から選択される有効量の少なくとも1つの抽出物を被験体に投与するステップを含む、ステロイド/核レセプター(s/n)レセプター媒介性生理学的容態の治療方法を提供する。
【0073】
実施例に示すように、5Lの正常な血液容量を有する成人における100%吸収を考慮すると、臨床効果を得るために約5〜5000mg(5〜5000×10-3g)の乾燥抽出物容量が必要である。
【0074】
したがって、方法は、1mLの血液容量あたり約1〜1000μgの抽出物により被験体を治療するステップを含む。
【0075】
より詳細には、本発明は、PPARαおよび/またはPPARγ媒介性生理学的容態の治療のために、5〜5000mgの乾燥抽出物により被験体を治療するステップを含む方法を提供する。さらに、本発明は、PPARαおよび/またはPPARγ媒介性生理学的容態の治療のための、1mLの血液容量あたり1〜1000μgの抽出物により被験体を治療するステップを含む方法を提供する。
【0076】
より詳細には、本発明の抽出物およびフラボノイド化合物の値および容量を、実施例に開示する。
【0077】
特に、本発明の方法では、s/nレセプター媒介性生理学的容態はPPARγ媒介性生理学的容態であり、且つ糖尿病、癌、多嚢胞性卵巣疾患、または炎症性腸疾患であるか、PPARα媒介性生理学的容態であり、且つ異常脂質血症、アテローム性動脈硬化症、冠状動脈性心疾患、または肥満症である。
【0078】
本発明は、さらに、有効量のカリコシンおよび/またはホルモノネチンを被験体に投与するステップを含む、ステロイド/核レセプター(s/n)レセプター媒介性生理学的容態の治療方法(但し、前立腺癌および乳癌の治療を除く)に関する。
【0079】
特に、s/nレセプター媒介性生理学的容態はPPAR媒介性生理学的容態であり、且つ糖尿病、アテローム性動脈硬化症、炎症性腸疾患、多嚢胞性卵巣疾患、肥満症、異常脂質血症、および/または結腸癌である。
【0080】
本発明者らは、タイツリオウギ抽出物が、s/nレセプターの公知のリガンド、特に、公知のPPARリガンドに対して相乗活性を有することをさらに見出し、このことは本発明のさらなる目的を示す。したがって、タイツリオウギ抽出物を、標準的な薬物(例えば、抗糖尿病薬および脂質低下薬)の効果を増強するための栄養補助薬として使用することができる。
【0081】
本明細書中で使用される、「相乗活性」または等価物である「相乗効果」は、単独で作用した場合のその効果の単純な合計よりも高い、共に作用する2つの化合物の任意の効果をいい、このような化学物質は相乗効果を示すと言われる。より詳細には、第1の化学物質は、本発明のタイツリオウギ抽出物、フラボノイド化合物、もしくはこれらの混合物、またはタイツリオウギ抽出物もしくはフラボノイド化合物の少なくとも1つを含む組成物である。第2の化学物質は、s/nレセプターの任意の公知のリガンドである。
【0082】
本発明者らは、タイツリオウギの抽出物から単離したイソフラボノイド化合物がs/nレセプターのリガンドの活性を増大および相乗作用することも見出した。特に、PPAR、AR、PR、およびGRによって作用するホルモン活性である。当業者は、タイツリオウギ由来の抽出物のこの新規の増大能力を使用して、内因性または外因性のPPARαおよびPPARγリガンドである、アンドロゲン、プロゲストゲン、および糖質コルチコイドのこれらのホルモンの欠損に起因する疾患または容態における効果を増強することができることを理解するであろう。アンドロゲン活性の増大が必要な容態の例は、男性不妊症、慢性の骨および筋肉の減少、老年男性更年期、アンドロゲン不感性症候群、クラインフェルター症候群、または停留睾丸であり、プロゲストゲン活性の増大が必要な容態の例は、閉経後ホルモン代替療法、女性不妊症、子宮内膜癌、続発性無月経、機能性子宮出血、および関連する月経異常(ホルモンの欠損または不均衡に起因する)であり、糖質コルチコイド活性の増大が必要な容態の例は、自己免疫疾患、関節炎、術後移植片拒絶、または喘息である。これを使用して、このような増強効果が望まれる正常なヒトのこれらのホルモンの効果を増大することもできる。
【0083】
しかし、本発明は、タイツリオウギの植物体、植物体の一部、または抽出物から単離されたフラボノイド化合物に制限されず、異なる供給源から単離されたか化学合成された任意の適切なフラボノイド化合物も含む。
【0084】
特に、カリコシンは、PPARγ、PPARα、AR、PR、およびERαのシグナル伝達系に対するピオグリタゾン、WY14643、ジヒドロテストステロン、プロゲステロン、およびエストラジオールの活性を増大することができる。当業者は、カリコシンのこの新規の増大能力を使用して、内因性または外因性のPPARαおよびPPARγリガンドである、アンドロゲン、エストロゲン、およびプロゲストゲンのこれらのホルモンの欠損に起因する疾患における効果を増強することができることを理解するであろう。アンドロゲン活性の増大が必要なこのような疾患または容態の例は、男性不妊症、慢性の骨および筋肉の減少、老年男性更年期、アンドロゲン不感性症候群、クラインフェルター症候群、または停留睾丸であり、プロゲストゲンおよびエストロゲン活性の増大が必要な容態の例は、閉経後ホルモン代替療法、女性不妊症、子宮内膜癌、続発性無月経、機能性子宮出血、および関連する月経異常(ホルモンの欠損または不均衡に起因する)である。これを使用して、このような増強効果が望まれる正常なヒトのこれらのホルモンの効果を増大することもできる。
【0085】
ホルモノネチンは、PPARα、AR、PR、およびERαのシグナル伝達系に対するWY14643、ジヒドロテストステロン、プロゲステロン、およびエストラジオールの効果を増大することができる。当業者は、ホルモノネチンのこの新規の増大能力を使用して、内因性または外因性のアンドロゲン、エストロゲン、プロゲストゲン、およびPPARαリガンドのこれらのホルモンの欠損に起因する疾患における効果を増強することができることを理解するであろう。アンドロゲン活性の増大が必要なこのような疾患の例は、男性不妊症、慢性の骨および筋肉の減少、老年男性更年期、アンドロゲン不感性症候群、クラインフェルター症候群、および停留睾丸であり、プロゲストゲン活性の増大が必要な容態の例は、閉経後ホルモン代替療法、女性不妊症、子宮内膜癌、続発性無月経、機能性子宮出血、および関連する月経異常(ホルモンの欠損または不均衡に起因する)である。これを使用して、このような増強効果が望まれる正常なヒトのこれらのホルモンの効果を増大することもできる。
【0086】
本発明者らは、ゲニステインおよびダイゼインなどカリコシンおよびホルモノネチン以外のフラボノイドが、PPARγ、PPARα、AR、PR、およびERαのシグナル伝達系に対するピオグリタゾン、WY14643、ジヒドロテストステロン、プロゲステロン、およびエストラジオールの活性を増大する新規の能力を有することも見出した。当業者は、フラボノイドのこの新規の増大能力を使用して、内因性または外因性のPPARαおよびPPARγリガンドである、アンドロゲン、エストロゲン、およびプロゲストゲンのこれらのホルモンの欠損に起因する疾患または容態における効果を増強することができることを理解するであろう。アンドロゲン活性の増大が必要なこのような疾患および容態の例は、男性不妊症、慢性の骨および筋肉の減少、老年男性更年期、アンドロゲン不感性症候群、クラインフェルター症候群、および停留睾丸であり、プロゲストゲンおよびエストロゲン活性の増大が必要な疾患および容態の例は、閉経後ホルモン代替療法、女性不妊症、子宮内膜癌、続発性無月経、機能性子宮出血、および関連する月経異常(ホルモンの欠損または不均衡に起因する)である。これを使用して、このような増強効果が望まれる正常なヒトのこれらのホルモンの効果を増大することもできる。
【0087】
したがって、本発明は、ステロイド/核レセプターの少なくとも1つのリガンドの存在下で、i)タイツリオウギ(HQ)の抽出物;ii)フラボノイド化合物;またはiii)本発明の任意の実施形態の組成物;のうちの少なくとも1つを接触させるステップを含む、ステロイド/核レセプターのリガンドの活性の増大または相乗作用方法に関する。
【0088】
1つの実施形態によれば、本発明は、ステロイド/核レセプターの少なくとも1つのリガンドの存在下で、i)タイツリオウギ(HQ)の抽出物;ii)フラボノイド化合物;またはiii)本発明の任意の実施形態の組成物;のうちの有効量の少なくとも1つを被験体に投与するステップを含む、ステロイド/核レセプターのリガンドの活性の増大または相乗作用方法に関する。
【0089】
特に、本発明の方法では、リガンドはPPARリガンドである。リガンドは、例えば、抗糖尿病薬または脂質低下薬、例えばホルモンである。ホルモンは、アンドロゲン、プロゲストゲン、エストロゲン、または糖質コルチコイドであってよい。
【0090】
特に、本発明は、a)リガンドがアンドロゲンであり、被験体が、男性不妊症、慢性の骨および筋肉の減少、老年男性更年期、アンドロゲン不感性症候群、クラインフェルター症候群、または停留睾丸の疾患または容態下にあるか、該疾患または該容態下になく、b)リガンドがプロゲストゲンまたはエストロゲンであり、被験体が、閉経後ホルモン代替療法、女性不妊症、子宮内膜癌、続発性無月経、機能性子宮出血、または月経異常の疾患または容態下にあるか、該疾患または該容態下になく、および/またはc)リガンドが糖質コルチコイドであり、被験体が、自己免疫疾患、関節炎、術後移植片拒絶、または喘息の疾患または容態下にあるか、該疾患または該容態下にない、方法に関する。
【0091】
任意の適切な公知のまたは依然として発見されていないフラボノイド化合物、特にイソフラボノイド化合物は、本発明の範囲内に含まれる。多数のフラボノイド、特にイソフラボノイドは、例えば、USDA−Iowa State University Database on the Isoflavone Content of Foods,Release 1.3−2002およびUSDA Database for the Flavonoid Content of Selected Foods−2003(http://www.nal.usda.gov/fnic/foodcomp/Data/isoflav/isoflav.html)および(http://www.nal.usda.gov/fnic/foodcomp/Data/Flav/flav.html)(その両方が参照することにより本明細書に組み込まれる)に記載されている。どのようにして本発明の目的に適切なフラボノイド化合物を選択することができるかは当業者に明らかである。例えば、本発明の目的のためのフラボノイド化合物は、カリコシン、ホルモノネチン、ゲニステイン、アフロモルシン、ビオカニンA、クメストロール、オドラチン、およびダイゼインなどであり得る(が、これらに限定されない)。
【0092】
より詳細には、方法は、糖尿病、アテローム性動脈硬化症、多嚢胞性卵巣疾患、ホルモン依存性の乳癌、結腸癌、もしくは前立腺癌、または炎症性腸疾患からなる群から選択されるPPARγ媒介性容態の治療方法である。
【0093】
本発明はまた、ステロイドレセプターのリガンド結合ポケットに結合する特定のリガンドを含まないAR、PR、GR、ER、およびPPARなどのステロイド/核レセプターの作用を増大する新規の方法に関する。この所見により、リガンド−ステロイドレセプターの作用を増大することができる化合物を検索するための新規の薬物発見スクリーニングプラットフォームが開発される。
【0094】
したがって、本発明は、ステロイド/核レセプターのリガンドの活性を増大するか相乗作用することができる化合物または抽出物をスクリーニングおよび/または発見する方法であって、化合物または抽出物をステロイド/核レセプターの少なくとも1つのリガンドを含む組成物と接触させる(または混合する)ステップと、リガンドの活性の増大または相乗作用を決定するステップとを含む方法を提供する。特に、リガンドは、ステロイド/核レセプターのポケットに結合し、化合物または抽出物がステロイド/核レセプターのリガンド結合ポケットに特異的に結合しない。より詳細には、リガンドは、内因性のアンドロゲン、プロゲストゲン、糖質コルチコイド、および/またはPPARアゴニストである。このようなスクリーニングおよび/または発見方法を、当業者に公知の標準的方法にしたがって行う。
【0095】
本発明はまた、上記アゴニスト効果および相乗効果を有するゲニステイン、ダイゼイン、カリコシン、またはホルモノネチンなどに関連する合成または天然化合物をデザインすることができる。
【0096】
別の態様によれば、本発明は、医薬品用の本発明の任意の態様の抽出物、特に、タイツリオウギ(HQ)のヘキサン抽出物、ジクロロメタン抽出物、またはクロロホルム抽出物からなる群(但し、HQ抽出物は、エタノールまたはブタノールHQ抽出物ではない)から選択される抽出物を提供し、タイツリオウギ(HQ)の非水性抽出物も提供する。特に、抽出物は、ステロイド/核(s/n)レセプター生体活性物質に富む。
【0097】
さらなる態様によれば、抽出物は、少なくとも1つのフラボノイド化合物をさらに含む。フラボノイド化合物は、カリコシン、ホルモノネチン、ゲニステイン、アフロモルシン、ビオカニンA、クメストロール、オドラチン、および/またはダイゼインであり得る。
【0098】
本発明の別の態様は、被験体のステロイド/核(s/n)レセプター媒介性容態の治療のための薬学的組成物または栄養補助組成物の調製のための本発明の抽出物の使用である。組成物は、少なくとも1つのフラボノイド化合物をさらに含み得る。フラボノイド化合物は、上記の任意の適切なフラボノイド化合物であり得る。
【0099】
s/nレセプター媒介性容態は、PPAR媒介性容態、特に、PPARα媒介性容態および/またはPPARγ媒介性容態であり得る。例えば、PPARα媒介性疾患には、異常脂質血症、アテローム性動脈硬化症、冠状動脈性心疾患、肥満症、および結腸癌が含まれるが、これらに限定されない。PPARγ媒介性疾患には、糖尿病、癌、多嚢胞性卵巣疾患、および炎症性腸疾患が含まれるが、これらに限定されない。
【0100】
特に、被験体を、PPAR媒介性容態の治療のために5〜5000mgの抽出物で治療する。被験体を、PPAR媒介性容態の治療のために1〜1000μg/mLの抽出物で治療することもできる。
【0101】
本発明はまた、ステロイド/核(s/n)レセプター媒介性容態の治療(但し、前立腺癌および乳癌の治療を除く)のための薬学的組成物または栄養補助組成物の調製のためのカリコシンおよび/またはホルモノネチンの使用を提供する。
【0102】
s/nレセプター媒介性容態がPPAR媒介性容態、特に、PPARα媒介性容態および/またはPPARγ媒介性容態であり得る。PPARα媒介性容態および/またはPPARγ媒介性容態には、上記容態が含まれる。
【0103】
さらなる態様によれば、組成物は、食品もしくは飲料中、および/または商業包装中に存在することができ、包装は使用説明書を含む。
【0104】
本発明の別の態様は、ステロイド/核レセプターのリガンドの活性の増大または相乗作用のための薬学的組成物または栄養補助組成物の調製のための、
タイツリオウギ(HQ)の抽出物;および
フラボノイド化合物;またはその混合物
のうちの少なくとも1つの使用である。
【0105】
ステロイド/核レセプターの少なくとも1つのリガンドの存在下で有効量のタイツリオウギ(HQ)の抽出物およびフラボノイド化合物またはその混合物を被験体に投与するステップを含む、インビボで増大および/または相乗作用する方法を実施することができる。特に、抽出物は、本発明の任意の態様による抽出物である。被験体は、s/nレセプター媒介性生理学的容態、特に、PPAR媒介性容態、さらにより詳細には、PPARα媒介性容態および/またはPPARγ媒介性容態を罹患し得るが、PPARα媒介性容態およびPPARγ媒介性容態の例は、上に記載されている。
【0106】
フラボノイド化合物は、カリコシン、ホルモノネチン、ゲニステイン、アフロモルシン、ビオカニンA、クメストロール、オドラチン、および/またはダイゼインであり得る。
【0107】
リガンドは、PPARリガンド、抗糖尿病薬、もしくは脂質低下薬、および/またはホルモンであり得る。特に、ホルモンは、アンドロゲン、プロゲストゲン、または糖質コルチコイドであり得る。
【0108】
さらに、リガンドは、以下のうちのいずれか1つであってもよい。
(a)リガンドがアンドロゲンであり、被験体が、男性妊性、慢性の骨および筋肉の減少、老年男性更年期、アンドロゲン不感性症候群、クラインフェルター症候群、または停留睾丸の疾患または容態下にあるか、該疾患または該容態下になく、
(b)リガンドがプロゲストゲンであり、被験体が、閉経後ホルモン代替療法、女性不妊症、子宮内膜癌、続発性無月経、機能性子宮出血、または月経異常の疾患または容態下にあるか、該疾患または該容態下になく、または
(c)リガンドが糖質コルチコイドであり、被験体が、自己免疫疾患、関節炎、術後移植片拒絶、または喘息の疾患または容態下にあるか、該疾患または該容態下にない。
【0109】
[実施例]
本発明は、記載の実施形態に制限されない。当業者に明確な場合、多数の変形形態が本発明の範囲内で可能である。PPAR活性を有する薬草を発見および特徴づけるために、キメラPPARレセプターによって駆動されるレポーター遺伝子アッセイ系(以下に詳細に提供する)を使用した。
【実施例1】
【0110】
<PPARアクチベーターの検出のためのキメラPPARαおよびPPARγレセプター>
このようなレポーター遺伝子アッセイの例では、キメラGal4DBD−PPARLBDレセプターcDNAを含むプラスミドを、全長PPARγおよびPPARαのリガンド結合ドメイン(LBD)の切り出しならびにpMベクター(Clontech)中での得られたフラグメントのインフレームでの出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)のGAl4−DNA結合ドメイン(DBD)へのライゲーションによって構築した。詳細には、Gal4DBD−PPARγLBDプラスミドを構築するために、全長PPARγを含むpSG5発現ベクター(Stratagene)をRsaIで切り出し、pMGal4DBD発現プラスミド(Clontech)のHind III部位に平滑末端ライゲーションを行った。Gal4DBD−PPARαLBDプラスミドを構築するために、全長PPARαを含むpSG5発現ベクター(Stratagene)をBstU IおよびBamH Iで切り出し、pMGal4DBD発現プラスミド(Clontech)のBamHI部位にインフレームで平滑末端ライゲーションを行った。HeLa細胞中で発現する場合、得られたプラスミドにより、対応するGal4DBD−PPARLBDタンパク質が産生された。これらのキメラPPARレセプターに結合するリガンドにより、ルシフェラーゼ遺伝子にタンデムでクローン化したガラクトースの上流活性化配列(UASg)の5コピーを含む同時トランスフェクションされたレポーター遺伝子が活性化される(Olsson O et al 1988)。Gal4DBDは、外因性UASgプロモーターと非常に強固に結合し、それにより、高感度且つ特異的なアッセイが得られる。PPARγおよびPPARαアゴニスト活性を測定するために、HeLa細胞を、24ウェルマイクロタイタープレート中で成長させ、その後、リポフェクタミン(Invitrogen)を使用して2つのプラスミド(キメラPPARレセプターおよびUASgレポーター遺伝子)で一過性に同時トランスフェクトした。細胞を、5%二酸化炭素インキュベーター中にて、10%活性炭処理牛胎児血清、2mMのL−グルタミン、0.1mM非必須アミノ酸、および1mMピルビン酸ナトリウムを補足したRPMI 1640培地中で薬草抽出物および純粋な化合物に37℃で40時間曝露した。同時に、細胞を、ポジティブコントロールとしての役割を果たす公知のPPARリガンドに曝露した。薬草抽出物が溶解した賦形剤溶媒(すなわち、エタノールまたはメタノール)に曝露した複製ウェルを、ネガティブコントロールとして使用した。40時間のインキュベーション後、細胞を、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)でリンスし、溶解緩衝液を添加し、照度計を使用したルシフェラーゼ活性の測定のために細胞溶解物を回収した。薬草抽出物/純粋な化合物のPPAR活性を、ネガティブコントロール細胞で認められたルシフェラーゼ活性と比較したルシフェラーゼ活性の増加倍率として示した。全てのデータポイントは3連である。データポイントは、3連のウェルの平均を示す。このようなアッセイにおけるルシフェラーゼ活性は、PPARγまたはPPARαに対する任意のリガンドの活性を正確に反映する。
【実施例2】
【0111】
<PPAR活性を刺激する薬草抽出物のスクリーニングおよび発見>
伝統的な中国の医学関係のテキストおよび薬局方を再検討した。「喉の渇き」に対する作用が主張されているか、もしくは、「気を活性化する」と説明されている生薬物質を、小売り業者から購入した。これらの薬草を、表1に列挙する。薬草を挽き、37℃のエタノールで3日間温浸し、その後、溶媒を濾紙(孔径11μm)で濾過した。濾過した抽出物を、ロータリーエバポレーターで乾燥させた。乾燥させた抽出物を秤量し、100%エタノールに250×10-3g/mlの濃度に再懸濁した。各薬草抽出物を、実施例1に記載のバイオアッセイを使用して、最終濃度250×10-6g/mlにてインビトロでPPARα活性およびPPARγ活性についてスクリーニングした。予備スクリーニングから、3つの薬草抽出物(タイツリオウギ、トリコサンテス属の一種(Trichosantes spp.)、およびアトラクチリス・オラタ(Atractylis orata))が、PPAR刺激活性を示すことが見出された。タイツリオウギで非常に強い活性が認められ、その抽出物は、賦形剤(すなわち、エタノールまたはメタノール)のみに曝露したコントロールと比較して、PPARγおよびPPARα活性をそれぞれ19倍および4倍刺激する(表1)。トリコサンテス属およびアトラクチリス・オラタの抽出物で中等度であるが有意なPPAR刺激活性が認められた。
【0112】
【表1】

【実施例3】
【0113】
<タイツリオウギ(HQ)抽出物は、PPARγおよびPPARαアゴニスト活性を示す>
基準化合物に対するタイツリオウギ(HQ)抽出物の活性を定量するために、PPARバイオアッセイにおいて、HQの100%エタノール抽出物を、生理学的PPARリガンドである15−デオキシ−δ12,14、プロスタグランジンJ2;抗糖尿病PPARγ化合物であるピオグリタゾン;およびPPARαリガンドであるWY14643と比較した。図1(A)で認められるように、HQのPPARγ活性は、最初に30×10-6g/mLで認められ、300×10-6g/mLのピークに上昇した。ピークでのHQ活性は、15DPGJ2で認められた最大活性と同等であり、ピオグリタゾンで認められた最大活性の半分であった。HQ、15DPGJ2、およびピオグリタゾンのEC50は、それぞれ、100、0.5、および5×10-6g/mLであり、HQのエタノール抽出物はピオグリタゾン(現在真性糖尿病の治療のために使用されている純粋な化合物)の約1/20のでしかないことを示した。実施例1に示すバイオアッセイ系を、HeLa細胞の代わりにCOS−7細胞を使用して繰り返し、類似の結果が得られた。HeLa細胞中でのルシフェラーゼレポーター遺伝子の上流にクローン化した全長ヒトPPARγレセプターおよびPPAR応答エレメント(PPRE)を一過性に同時トランスフェクションした場合、HQの類似の用量応答も得られた。したがって、HQエタノール抽出物は、PPARγのアクチベーターであり、したがって、PPARγ媒介性容態の治療で使用することができる。図1aに基づいて、30〜1000×10-5g/mLの血漿HQが得られるHQエタノール抽出物の用量が治療効果を有すると予想される。5Lの通常の血液容量を有する成人で100%吸収と仮定すれば、150〜5000×10-3gの用量のHQエタノール抽出物が、臨床効果を得るために必要であろう。したがって、HQを使用して、糖尿病、多嚢胞性卵巣疾患、癌、および炎症性腸疾患のようなPPARγによって媒介される容態を治療することができる。
【0114】
HQエタノール抽出物は、PPARαのリガンドおよびアクチベーターでもあった。図1Bで認められるように、HQのPPARα活性は、最初に1×10-6g/mLで認められ、300×10-6g/mLのピークに上昇した。ピークでのHQのPPARα活性は、純粋なアゴニストであるWY14643で認められた最大活性と同等であった。したがって、HQの用量応答曲線がWY14643と比較して左にシフトしたにもかかわらず、HQおよびWY14643のEC50は、類似しており、それぞれ、20×10-6g/mLおよび4×10-6g/mLであった。したがって、HQのエタノール抽出物はPPARαの真のアクチベーターであり、PPARα媒介性容態の治療で使用することができる。図1Bに基づいて、治療効果を示す有効用量のHQにより、1〜1000×10-6g/mLの血漿HQが得られるはずである。5Lの通常の血液用量を有する成人で100%吸収と仮定すれば、5〜5000×10-3gの容量のHQが、臨床効果を得るために必要であろう。したがって、HQを使用して、異常脂質血症、アテローム性動脈硬化症、冠状動脈性心疾患、および肥満症のようなPPARαによって媒介される容態を治療することができる。
【実施例4】
【0115】
<公知のPPARリガンドの活性に対するHQ抽出物の相乗作用>
エタノールを使用してHQ抽出物を調製し、実施例1に記載のようにアッセイした。細胞を、固定濃度の基準PPARリガンドであるシグリタゾンの存在下で漸増濃度のHQ抽出物に曝露した(表2)。3×10-6g/mLまたは10×10-6Mのシグリタゾンで最大PPARγ活性が認められた。相対的に、HQ抽出物は、300×10-6g/mLの用量でPPARγ活性を最大に刺激することができた。HQはまた、飽和用量のシグリタゾンのPPARγ活性を用量依存的に増加させることができた。シグリタゾンおよびHQのPPARγ活性は、飽和用量のシグリタゾンのみを使用して認められた活性の450%であった。これは、HQ抽出物がLBDのリガンド結合ポケット以外の部位に対して直接または間接的に作用する化合物を含むことを示す。このHQ抽出物がPPARγ薬の活性を増加させる能力を使用して、これらの薬物の効果を増強し、それにより、その有効性を増加させ、使用される中毒量を低下および減少させることができる。
【0116】
【表2】

【実施例5】
【0117】
<ERα、およびERβレポーター遺伝子系に対するHQのアゴニスト効果>
HQ抽出物が他のステロイドレセプター(すなわち、AR、PR、GR、ERα、およびERβ)を活性化する能力を試験した。AR(Brinkmann AO et al.,1989)、PR(Vegeto E,1992)、およびGR(Muller M et al.,1991)のいずれかをコードするプラスミドを、3つ全てのレセプターに共通のホルモン応答エレメントを含むレポーター遺伝子(ARE)2−Lucで同時発現した。(ARE)2−Lucプラスミドは、pGL3基本ベクター(Promega)中のルシフェラーゼレポーター遺伝子の上流にクローン化したアンドロゲン応答エレメント(ARE)の2つの反復からなる。
【0118】
ERαおよびERβ活性を、ERE−LUCレポーター遺伝子で同時トランスフェクションしたERαまたはERβのいずれかをコードするプラスミドを使用してアッセイした。エストロゲンレセプターアゴニスト活性をアッセイするために、HeLa細胞を、リポフェクタミンを使用して2つのプラスミド(Tcherepanova et al.,2000)で一過性に同時トランスフェクションした。第1のプラスミドはヒトエストロゲンレセプター(ERαまたはERβのいずれか)をコードするDNAを含み、第2のプラスミドは以下を含むエストロゲン駆動レポーター系を含んでいた:その転写が、マウス乳癌ウイルス(MMTV)プロモーターにクローン化された4コピーのビテロゲニンエストロゲン応答エレメント(ERE)を含む上流調節エレメントの調節下にあるルシフェラーゼレポーター遺伝子(LUC)(レポーター系の正式名称は「MMTV−ERE−LUC」である)。
【0119】
AR、PR、GR、ERα、およびERβ活性を、賦形剤(すなわち、エタノールまたはメタノール)のみに曝露したコントロール細胞との試験細胞中でのルシフェラーゼ活性の比較によって測定し、これらの活性は前の実施例に記載のPPAR活性の測定値と類似していた。HQ抽出物は強力なERβ活性を示し、300×10-6g/mLの用量のERβ活性は最大で68倍増加した(エストラジオールの最大活性の200%に匹敵する)。HQ抽出物はERα活性も示し、300×10-6g/mlの用量のERα活性は最大で8倍増加した(エストラジオールの最大活性のたった50%に匹敵する)。ERαおよびERβのEC50は、それぞれ、約130×10-6g/mlおよび50×10-6g/mlであった。
【実施例6】
【0120】
<飽和用量の同族ホルモンの存在下でのHQ、AR、PR、およびGR活性の相乗効果>
実施例1に記載のように、エタノールを使用してHQ抽出物を調製した。前の実施形態に記載するように、(1)AR、(2)PR、(3)GR、または(4)ERレセプター遺伝子系に対する阻害効果または相乗効果を試験するために、固定した飽和濃度の(1)ジヒドロテストステロン、1×10-9M、(2)プロゲステロン、1×10-6M、(3)ヒドロコルチゾン、1×10-9M、または(4)エストラジオール、1×10-9Mの存在下で漸増濃度のHQ抽出物に細胞を曝露した。
【0121】
HQ抽出物がAR、PR、およびGRレポーター遺伝子アッセイにおいていかなるアゴニスト作用も持たなかったにもかかわらず、抽出物は、飽和用量のジヒドロテストステロン、プロゲステロン、およびヒドロコルチゾンの対応するレポーター遺伝子アッセイに対する活性を有意に増大させた(表3)。したがって、HQは、ARおよびGRに対するDHTおよびヒドロコルチゾンの活性を用量依存的に倍加させた。HQはまた、プロゲステロン活性を140%に増大させた。
【0122】
HQ抽出物は、ホルモンが飽和用量であるにもかかわらず、アンドロゲン、プロゲステロン、およびヒドロコルチゾンの作用を増加させることができた。このHQの性質を使用して、アンドロゲン、プロゲステロン、および糖質コルチコイドの内因性または外因性作用を増大させ、これらのレセプターによる活性の増大を必要とする容態を治療することができる。アンドロゲンによる活性の増大を必要とする容態の例は、男性不妊症、慢性の骨および筋肉の減少、老年男性更年期、アンドロゲン不感性症候群、クラインフェルター症候群、および停留睾丸であり、プロゲストゲンによる活性の増大が必要な容態の例は、閉経後ホルモン代替療法、女性不妊症、子宮内膜癌、続発性無月経、機能性子宮出血、および関連する月経異常(ホルモンの欠損または不均衡に起因する)であり、糖質コルチコイドによる活性の増大が必要な容態の例は、自己免疫疾患、関節炎、術後移植片拒絶、および喘息である。
【0123】
【表3】

【実施例7】
【0124】
<PPAR活性化合物を富化したタイツリオウギ抽出物の調製方法>
タイツリオウギ抽出物(HQ抽出物)を、浸軟温度を20℃から100℃に変更したこと以外は実施例1に記載のように調製した。HQ抽出物のPPAR活性は熱によって不活化せず、HQ中のPPAR活性化合物は100℃までの熱に耐性を示し得ることが示唆された。タイツリオウギ抽出物(HQ抽出物)を、種々の極性の溶媒(ヘキサン、ジクロロメタン(DCM)、クロロホルム、およびエタノール)を使用してソックスレー抽出器を4時間使用して調製した。実施例1に記載のように、得られたHQ抽出物を、PPAR活性について試験した(表4および5)。このような系では、主に高非極性ヘキサンおよびDCM画分で強力なPPARγ活性を有する化合物が表示濃度で検出され、クロロホルム画分でより低い活性が認められ、エタノール画分で最小の活性が認められた。表4および図1を参照して、1〜30μg/mLの濃度のエタノール抽出物では非常に活性が低いが、300μg/mLで有意な活性が認められた(表4)。
【0125】
ヘキサン、DCM、およびクロロホルム画分は、PPARα活性を有する化合物も富む(表5)。30×10-6g/mlで最大活性が認められ、この濃度でPPARγおよびPPARα活性がそれぞれ16倍および18倍増加する(すなわち、ヘキサンおよびDCMは共にPPARγにおいて16倍、PPARαにおいて8倍の活性を示した)。PPARαおよびPPARγ生物活性画分を、水を使用するが16時間継続するソックスレー抽出によって抽出することもできる。水抽出物は、PPARγ活性を用量依存的に増加させ、8×10-3g/mlの用量で最大18倍の刺激に達した(表6)。したがって、水抽出物の用量応答曲線は、ヘキサン、DCM、およびクロロホルム画分に関して右にシフトし、水抽出物がより低濃度の活性化合物を含むことを示した。
【0126】
例えば、表4、5、および6の参照により、ヘキサンおよびDCM抽出物の最大PPAR活性は、0.03mg/mLの濃度で認められるが、水抽出物の最大活性は8mg/mLでのみ認められた。これは、ヘキサンおよびDCM抽出物と比較して水抽出物の活性が低い場合、濃度−活性シフトを示す。これはまた、表4、5、および6中のEC50値によって示される。
【0127】
水を使用した抽出収率(重量/重量)は50%であった。相対的に、ヘキサン、DCM、およびエタノールを使用した収率は、それぞれ0.8%、1.2%、および16%であった。したがって、水、DCM、エタノール、およびヘキサンを、PPAR生物活性化合物を抽出するための溶媒として使用することができ、上記技術を使用して、PPARアゴニスト活性を有する漢方薬として使用することができる。ヘキサン抽出物およびジクロロメタン抽出物がエタノール抽出物よりも約10倍強力であったので、これらの溶媒を使用して、PPAR活性化合物に富む抽出物を調製することができる。さらに、HQ抽出物中のホルモノネチンおよびカリコシン濃度を、液体クロマトグラフィ−質量分析−質量分析(LC−MS−MS)を使用して分析し(表7)、両化合物がHQのDCM抽出物中で最も高いことが見出された。さらに、ヘキサン抽出物はホルモノネチンおよびカリコシンに富むことも導くことができる(表4〜7中のデータに基づく)。例えば、DCM抽出物中で最も高いカリコシン濃度が見出され(表7)、この抽出物はまた非常に活性が高かった(表4で認められるように、EC50は15)。ヘキサン抽出物も活性であるので、カリコシンは抽出物中で高濃度で見出されると結論づけた。
【0128】
したがって、HQのヘキサン、DCM、およびクロロホルム抽出物は、PPARγのアクチベーターであり、したがって、PPARγ媒介性容態の治療で使用することができる。表4に基づいて、30×10-6g/mLの血漿HQが得られるHQのヘキサンまたはクロロホルム抽出物の用量が治療効果を有することを示す。5Lの通常の血液容量を有する成人で100%吸収を考慮すると、150×10-3gの容量のHQのヘキサンまたはクロロホルム抽出物が、臨床効果を得るために必要である。したがって、HQを使用して、糖尿病、多嚢胞性卵巣疾患、癌、および炎症性腸疾患のようなPPARγによって媒介される容態を治療することができる。
【0129】
HQのヘキサン、DCM、およびクロロホルム抽出物は、PPARαのアクチベーターでもあった。表5で認められるように、PPARα活性は、最初に1×10-6g/mLで認められ、30×10-6g/mLのピークに上昇した。したがって、有効用量のHQのヘキサン、またはクロロホルム抽出物により、1〜30×10-6g/mLの血漿HQに治療効果が認められる。5Lの通常の血液容量を有する成人で100%吸収を考慮すると、5〜150×10-3gの容量のHQが、治療効果を得るために必要である。したがって、HQを使用して、異常脂質血症、アテローム性動脈硬化症、冠状動脈性心疾患、および肥満症のようなPPARαによって媒介される容態を治療することができる。
【0130】
【表4】

【0131】
【表5】

【0132】
【表6】

【0133】
【表7】

【実施例8】
【0134】
<PPAR活性化合物の分画および単離方法>
生物活性化合物を同定するためにバイオアッセイによる分画を行った。実施例1に記載のように、PPAR活性をアッセイした。タイツリオウギの乾燥根(約8Kg)を、小片に挽き、その後DCMで抽出した。抽出物を40℃で真空乾燥させて油性の褐色抽出物を得た(約90g)。10gのDCM抽出物を、15gのシリカゲル(LiChroprep Si60 40〜63μm)と共に乾燥封入し(dry packed)、加圧下で350gシリカゲル(LiChroprep Si60 15〜25μm)を封入した中圧液体クロマトグラフィガラスカラムの上部にアプライした。99:1、98:2、97:3、...、90:10、80:20、...、10:90、0:100に極性を増加させたヘキサンおよびアセトンの混合物を使用してカラムを連続的に溶離し、最後にメタノールで洗浄した。MPLCシステムによって回収された37画分のうち、化合物Iおよび化合物IIを、それぞれ、画分19(70:30;ヘキサン:アセトン)(72.2mg)および画分29(60:40;ヘキサン:アセトン)(26.3mg)から得た。したがって、これは、化合物Iおよび化合物IIに富む画分を得るための有効な方法である。
【実施例9】
【0135】
<化合物Iの構造の解明>
化合物Iを、融点257〜258℃(ヘキサン/アセトン)の細かい白色の針状物質として得た。逆相HPLCを使用した純度分析により、純度99%以上であることが示された。そのHREIMSは、m/z268.0729での[M]+を示し、分子式C16124と一致した。1Hおよび13CNMRスペクトル分析により、7,4’二置換イソフラボンの特徴的な化学シフトが示された。1H NMRスペクトルでは、最も低い磁場で単一ピークとしてH−2が認められた;H−5(δ7.95,d)およびH−8(δ6.85,d)の両方とカップリングしたH−6(δ6.92)は、典型的なddピーク(J=8.8,2.35 Hz)として認められた。B環の構造対称性の高さにより、低磁場で複数のピークのうちの1群として共鳴するためにH−3’および5’のシグナルが生じ(δ6.96)、その後にH−2’およびH−6’のシグナルが生じた(δ7.50,m)。高磁場では、4’−OCH3のメチルは、δ3.79に鋭い単一ピークを示した。13C−NMRスペクトルデータ(ppm)は以下である:C2−153.0,C3−124.3,C4−174.6,C5−127.2,C6−115.4,C7−163.0,C8−102.1,C9−157.5,C10−116.4,C1’−123.1,C2’−130.0,C3’−113.6,C4’−158.9,C5’−113.6,C6’−130.0,OCH3−55。これらは基準のスペクトルと同一である(P.K.AgrawalによるフラボノイドのC13 NMR)。上記分析によれば、化合物Iの構造を、7−ヒドロキシ−4’−メトキシイソフラボンと確定することができ、これは、ホルモノネチンと名付けられた公知の植物エストロゲンである。
【0136】
ホルモノネチンの構造は、以下である。
【化1】

【実施例10】
【0137】
<化合物IIの構造の解明>
化合物IIを、251〜252℃(ヘキサン/アセトン)のより低い融点の長い白色の針状物質として得た。そのHREIMS分析([M]+m/z 284.0685)は、分子式C16125を示し、ホルモノネチンの分子式よりも「O」原子が1つ多かった。1H、13C NMRスペクトルはまた、イソフラボンの特徴的な化学シフトを示したが、B環のシグナルはホルモノネチンのシグナルと非常に異なっていた。1H NMR スペクトルでは、1つ以上の−OH基のB環への置換により、構造対称性が崩壊し、それにより、いくつかのプロトンシグナルが異なる位置に共鳴した。詳細には、H−2’(δ7.0,d,J=1.85 Hz)が低磁場に広いdピークとして認められ、その後にδ6.94でH−5’およびH−6’のシグナルが高度に重複した。基準と比較すると、13C−NMRスペクトルデータ(ppm)は以下のように決定された:C2−152.9,C3−124.7,C4−174.5,C5−127.1,C6−115.3,C7−163.1,C8−102.0,C9−157.4,C10−116.4,C1’−123.3,C2’−116.3,C3’−146.0,C4’−147.4,C5’−112.0,C6’−119.6,OCH3−55.6。最後に、化合物IIの構造を、3’,7−ジヒドロキシ−4’−メトキシイソフラボンと特徴づけ、これもカリコシンと名付けられた公知の化合物である。
【0138】
カリコシンの構造は、以下である。
【化2】

【実施例11】
【0139】
<PPARγおよびPPARαならびにERαおよびERβに対するホルモノネチンのアゴニスト作用>
前の実施例に記載のようにバイオアッセイを行った。ホルモノネチンを、ジメチルスルホキシド(DMSO)で希釈し、3、10、および30×10-6g/mLの各濃度で試験した。ホルモノネチンは、ERα、ERβ、PPARγ、およびPPARαに強力なアゴニスト活性を示した。ホルモノネチンの存在により、30×10-6g/mlの濃度でERα活性が17倍に増加した(エストラジオールの最大活性に相当する)。ホルモノネチンは強力なERβ活性も示し、30×10-6g/mlの用量で最大130倍増加した(エストラジオールの最大活性の400%に相当する)。他のレセプターに対するホルモノネチンの活性を、表8に示し、この表は、賦形剤のみに曝露した細胞と比較したルシフェラーゼ活性の増加倍率として示す。したがって、ホルモノネチンは、PPARγおよびPPARα活性をそれぞれ6倍および10倍増加させた(表8)。したがって、ホルモノネチンは、これらのレセプターの活性の欠損に関連する疾患におけるPPARγ活性およびPPARα活性を増加させるのに有用であろう。
【0140】
【表8】

【実施例12】
【0141】
<PPARγ、PPARα、AR、PR、ERα、およびERβに対するホルモノネチンの相乗作用>
HeLa細胞を、(1)PPARγ、(2)PPARα、(3)AR、(4)PR、または(5)ERレセプター遺伝子系に対する阻害効果または相乗効果についてそれぞれ試験するために、固定濃度の(1)ピオグリタゾン(30×10-6M)、(2)WY14643(30×10-6M)、(3)ジヒドロテストステロン(1×10-9M)、(4)プロゲステロン(10×10-6M)、または(5)エストラジオール(1×10-9M)の存在下でDMSOにて希釈した漸増濃度のホルモノネチンに曝露した。これらの濃度は、各レセプターで認められた用量応答曲線のプラトーに存在する。これらのレポーター遺伝子アッセイの全詳細を、前の実施例中に記載のように記載した。
【0142】
予想外に、ホルモノネチンは、PPARα、AR、PR、およびERαレポーター遺伝子アッセイに対するWY14643、ジヒドロテストステロン、プロゲステロン、およびエストラジオールの活性を増大させた(表9)。したがって、ホルモノネチンは、相乗作用し、最大用量のPPARアゴニストの活性を4.4倍、ARアゴニストについては2倍、PRアゴニストについては1.8倍、ERαについては3.2倍に増加させることができた。対照的に、ピオグリタゾン(30×10-6M)を添加した場合のホルモノネチン(3〜30×10-6g/mLの範囲の用量)のPPARγ活性は、ピオグリタゾンのみを使用して認められた活性と異ならなかった。さらに、エストラジオール(1×10-9M)を添加した場合のホルモノネチン(1〜30×10-6g/mLの範囲の用量)のERβ活性は、その強力なエストロゲン活性を示した。したがって、ホルモノネチンは、1〜30×10-6g/mLの範囲の用量で、エストラジオールのみの活性を阻害も増大もしなかった。当業者は、ホルモノネチンのこの新規の増大能力を使用して、内因性または外因性のアンドロゲン、エストロゲン、プロゲストゲン、およびPPARαリガンドのこれらのホルモンの欠損に起因する疾患における効果を増強することができることを理解している。これを使用して、このような増強効果が望まれる正常なヒトのこれらのホルモンの効果を増大することもできる。
【0143】
【表9】

【実施例13】
【0144】
PPARγ、ERα、およびERβに対するカリコシンのアゴニスト作用
前の実施例に記載のようにバイオアッセイを行った。カリコシンを、ジメチルスルホキシド(DMSO)で希釈し、3、10、および30×10-6g/mLの各濃度で試験した。カリコシンは、強力なPPARγ活性を示し、30×10-6g/mlの濃度で最大40倍であった(PPARγに対するピオグリタゾンの最大活性の50%に相当する)。さらに、カリコシンはERαアゴニスト活性も示し、30×10-6g/mlの濃度で最大20倍であった(ERαに対するエストラジオールの最大活性の50%に相当する)。同様に、30×10-6g/mlの濃度で、カリコシンは強力なERβ活性を示し、最大100倍に増加した(ERβに対するエストラジオールの最大活性の400%に相当する)。したがって、カリコシンは、これらのレセプターの活性の欠損に関連する疾患におけるPPARγ、ERα、およびERβ活性を増加させることができる。カリコシンはERαよりもERβを活性化するので、SERMでもある。
【実施例14】
【0145】
<PPARγ、PPARα、AR、PR、ERα、およびERβに対するカリコシンの相乗作用>
前の実施例に記載のように、細胞を、(1)PPARγ、(2)PPARα、(3)AR、(4)PR、または(5)ERレセプター遺伝子系に対する阻害効果または相乗効果についてそれぞれ試験するために、固定濃度の(1)ピオグリタゾン(30×10-6M)、(2)WY14643(30×10-6M)、(3)ジヒドロテストステロン(1×10-9M)、(4)プロゲステロン(10×10-6M)、または(5)エストラジオール(1×10-9M)の存在下でDMSOにて希釈した漸増濃度のカリコシンに曝露した。
【0146】
予想外に、カリコシンは、PPARγ、PPARα、AR、PR、およびERαレポーター遺伝子アッセイに対するピオグリタゾン、WY14643、ジヒドロテストステロン、プロゲステロン、およびエストラジオールの活性を増大させた(表10)。これらの濃度は、各レセプターで認められた用量応答曲線のプラトーに存在する。したがって、カリコシンは、相乗作用し、最大用量のPPARγアゴニストの活性を3倍、PPARαアゴニストについては1.8倍、ARアゴニストについては5.8倍、PRアゴニストについては1.8倍、ERαについては2.9倍に増加させることができた。ERβ活性に対するカリコシンの効果は、1〜30×10-6g/mLの範囲の濃度で付加的であり、その強力なエストロゲン活性のために、エストラジオール(1×10-9M)の効果が増加した。当業者は、カリコシンのこの新規の増大能力を使用して、内因性または外因性のPPARα、PPARγリガンドである、アンドロゲン、エストロゲン、およびプロゲストゲンのこれらのホルモンの欠損に起因する疾患における効果を増強することができることを理解している。これを使用して、このような増強効果が望まれる正常なヒトのこれらのホルモンの効果を増大することもできる。
【0147】
【表10】

【実施例15】
【0148】
<PPARγ、PPARα、ERα、およびERβに対するダイゼインのアゴニスト作用>
前の実施例に記載のようにバイオアッセイを行った。ダイゼインを、ジメチルスルホキシド(DMSO)で希釈し、5、10、および20×10-6g/mLの各濃度で試験した。ダイゼインは、PPARγ活性を示し、20×10-6g/mlの濃度で最大20倍であった(PPARγに対するピオグリタゾンの最大活性の22%に相当する)。ダイゼインはまた、10×10-6g/mlの濃度で最大8倍のPPARα活性を有する(PPARαに対するWY14643の最大活性の73%に相当する)。さらに、ダイゼインはERαアゴニスト活性も示し、5×10-6g/mlの濃度で最大20倍増加した(ERαに対するエストラジオールの最大活性の100%に相当する)。同様に、30×10-6g/mlの濃度で、ダイゼインは強力なERβ活性を示し、最大29倍に増加した(ERβに対するエストラジオールの最大活性の200%に相当する)。したがって、ダイゼインを使用して、これらのレセプターの活性の欠損に関連する疾患におけるPPARαおよびγ、ERα、ならびにERβ活性を増加させることができる。ダイゼインはERαよりもERβを活性化するので、SERMでもある。
【実施例16】
【0149】
<PPARα、AR、およびPRに対するダイゼインの相乗作用>
実施例1および4に記載のように、HeLa細胞を、(1)PPARγ、(2)PPARα、(3)AR、(4)PR、または(5)ERレセプター遺伝子系に対する阻害効果または相乗効果についてそれぞれ試験するために、固定濃度の(1)ピオグリタゾン(30×10-6M)、(2)WY14643(30×10-6M)、(3)ジヒドロテストステロン(1×10-9M)、(4)プロゲステロン(100×10-9M)、または(5)エストラジオール(1×10-9M)の存在下でDMSOにて希釈した漸増濃度のダイゼインに曝露した。
【0150】
予想外に、ダイゼインは、PPARα、AR、およびPRレポーター遺伝子アッセイに対するWY14643、ジヒドロテストステロン、プロゲステロンの活性を増大させた(表11)。これらの濃度は、各レセプターで認められた用量応答曲線のプラトーに存在する。したがって、カリコシンは、相乗作用し、最大用量のPPARαアゴニストの活性を7倍、ARアゴニストについては3倍、およびPRアゴニストについては3倍に増加させることができた。当業者は、ダイゼインのこの新規の増大能力を使用して、内因性または外因性のPPARαリガンドである、アンドロゲン、およびプロゲストゲンのこれらのホルモンの欠損に起因する疾患における効果を増強することができることを理解している。これを使用して、このような増強効果が望まれる正常なヒトのこれらのホルモンの効果を増大することもできる。
【0151】
【表11】

【実施例17】
【0152】
<ARおよび他のステロイドレセプターに対するゲニステインの相乗作用>
リガンド化(liganded)AR活性に体するゲニステインの効果を測定するために、HeLa細胞を、固定濃度のジヒドロテストステロン(10×10-9M)の非存在下または存在下でエタノールにて希釈した漸増濃度のゲニステインに曝露した(図2A)。3×10-9Mを超えるジヒドロテストステロン濃度により、アンドロゲン作用が最大になり、この濃度は用量応答曲線のプラトーに存在する。細胞を、固定濃度のゲニステイン(3×10-6M)の非存在下または存在下で漸増濃度のジヒドロテストステロンにも曝露した(図2B)。実施例5に記載のように、AR駆動レポーター遺伝子アッセイを使用して、アンドロゲン活性を測定した。ゲニステイン(0.1〜30×10-6Mの範囲の濃度)は、いかなる内因性のアゴニストAR活性も示さないにもかかわらず、用量応答様式で飽和用量のジヒドロテストステロン活性をさらに5倍に増加させることができた(図2A)。3×10-6Mの固定濃度のゲニステインはまた、ARに対する0.01〜10×10-9Mの濃度範囲のジヒドロテストステロンの活性を増加させた(図2B)。DHTの存在下でゲニステインを含むか含まない複製HeLa細胞溶解物を使用した免疫ブロット分析がいかなるARタンパク質発現の相違も示さなかったので、このゲニステインの相乗作用は、ARタンパク質発現の増加に起因しなかった。ホルモノネチン、ダイゼイン、およびカリコシンと類似のイソフラボノイド骨格により、ゲニステインはまた、PPARαおよびPPARγリガンドであるエストロゲンおよびプロゲストゲンの作用を増強することができる。一般にダイズイソフラボンとして消費されるゲニステインのこの新規の増大能力を使用して、内因性または外因性のPPARαおよびPPARγリガンドである、アンドロゲン、エストロゲン、およびプロゲストゲンのこれらのホルモンの欠損に起因する疾患における効果を増強することができることを理解している。これを使用して、このような増強効果が望まれる正常なヒトのこれらのホルモンの効果を増大することもできる。
【実施例18】
【0153】
<HQの抽出物および化合物の相乗作用に対するPPARγアゴニストであるGW9662の効果>
HQの抽出物および化合物の相乗効果がステロイドレセプター発現の増加に起因しないので、本発明者らは、これらの効果がそのリガンド結合ポケットによって媒介されるかどうかを確定するための実験を行った。GW9662は、PPARのリガンド結合ポケットに不可逆的に結合する混合アゴニスト/アンタゴニストである(Leesnitzer et al.,2002)。単独で、GW9662は、弱いPPARγアゴニスト活性を示した(表12)。予想どおり、1×10-6Mを超える用量のGW9662の存在により、用量依存性様式でピオグリタゾンのPPARγ効果が阻害された。予想外に、HQの水抽出物、HQのDCM抽出物、ホルモノネチン、ゲニステインの存在により、GW9662の内因性アゴニスト活性およびアンタゴニスト活性を増加することができた。したがって、HQの抽出物および化合物を低用量(0.3〜1.0×10-6M)のGW9662に添加した場合、PPARγの刺激効果の増大が認められた(表13)。高用量のGW9662(1×10-6M)により、ピオグリタゾンと類似のアンタゴニスト作用が得られた。したがって、GW9662のこれらのアゴニスト/アンタゴニスト作用は上方にシフトし、HQの抽出物および化合物ならびにゲニステインの増大効果がPPARγのリガンド結合ポケットによって媒介されないことを示した。GW9662がPPARγのリガンド結合ポケットに不可逆的に結合するので、HQの抽出物および化合物ならびにゲニステインは、PPARγのリガンドポケットに関与しない機構を介してその増大効果を示す。より一般的には、本発明者らは、ステロイドレセプターのリガンド結合ポケットへの特異的リガンド結合に関与しないAR、PR、GR、およびERなどのステロイドレセプターの作用を増大させる新規の方法を発見した。この発見により、リガンド−ステロイドレセプターの作用を増大させることができる化合物を検索するための新規の薬物発見スクリーニングプラットフォームを開発可能である。
【0154】
【表12】

【0155】
【表13】

【0156】
【表14】

【0157】
【表15】

【0158】
【表16】

【0159】
【表17】

【0160】
【表18】

【図面の簡単な説明】
【0161】
【図1】図1Aおよび図1Bは、PPARα活性およびPPARγ活性に対するHQ抽出物の用量応答効果。(A)PPARγおよび(B)PPARαのキメラGAL4−DNA結合ドメインおよびLBDを発現するHeLa細胞を、漸増用量のHQのエタノール抽出物に曝露した。これらのキメラGal4DBD−PPARLBDレセプターに結合するリガンドにより、ルシフェラーゼ遺伝子のUASgクローン化上流の5コピーを含む同時トランスフェクションしたレポーター遺伝子が活性化される。PPAR生物活性を測定し、(A)基準PPARγリガンドである15−デオキシ−δ12,14、プロスタグランジンJ2(15dPGJ2)、およびピオグリタゾン、ならびに(B)PPARαリガンドであるWY14643と比較した。試験物質のPPAR活性を、賦形剤のみに曝露した細胞と比較したルシフェラーゼ活性の増加倍率として示す。各データポイントは、平均±SEMである。
【図2】図2Aおよび図2Bは、アンドロゲン作用に対するゲニステインの相乗効果。ヒトアンドロゲンレセプターおよびアンドロゲン応答エレメントによって駆動されるルシフェラーゼレポーター遺伝子を発現するHeLa細胞を、漸増用量の(A)固定濃度のDHT(10×10-9M)の存在下または非存在下でのゲニステイン;または(B)固定濃度のゲニステイン(3×10-6M)の存在下または非存在下でのDHTに曝露した。試験物質のAR活性を、賦形剤のみに曝露した細胞と比較したルシフェラーゼ活性の増加倍率として示す。各データポイントは、平均±SEMである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイツリオウギ(Astragalus membranaceus; HQ)の抽出物であって、前記抽出物が、タイツリオウギ(HQ)のヘキサン抽出物、タイツリオウギ(HQ)のジクロロメタン抽出物、タイツリオウギ(HQ)のクロロホルム抽出物、およびタイツリオウギ(HQ)の非水性抽出物からなる群(但し、前記HQ抽出物は、エタノールまたはブタノールHQ抽出物ではない)から選択される、タイツリオウギ(HQ)の抽出物。
【請求項2】
前記抽出物が、ステロイド/核(s/n)レセプター生体活性物質に富む、請求項1の抽出物。
【請求項3】
請求項1または2の抽出物を含む組成物。
【請求項4】
少なくとも1つのフラボノイド化合物をさらに含む、請求項3の組成物。
【請求項5】
前記組成物が、ステロイド/核(s/n)レセプター媒介性生理学的容態の治療のための薬学的組成物または栄養補助組成物である、請求項3または4の組成物。
【請求項6】
前記s/nレセプター媒介性生理学的容態が、PPAR媒介性疾患であり、糖尿病、癌、多嚢胞性卵巣疾患、炎症性腸疾患、異常脂質血症、アテローム性動脈硬化症、冠状動脈性心疾患、または肥満症である、請求項5の組成物。
【請求項7】
少なくとも1つの薬学的に許容可能なキャリアおよび/または希釈剤をさらに含む、請求項3〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記抽出物が、PPARγ媒介性生理学的容態の治療のための有効量の1〜1000μg/mLの抽出物を含む、請求項3〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記抽出物が、PPARα媒介性生理学的容態の治療のための有効量の1〜1000μg/mLの抽出物を含む、請求項3〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物が、食品または飲料中に存在する、請求項3〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物が商業包装中に存在し、前記包装が使用説明書を含む、請求項3〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
タイツリオウギの植物体または前記植物体の一部を、ヘキサン、ジクロロメタン、および/またはクロロホルムで処理するステップを含む、請求項1または2の抽出物の調製方法。
【請求項13】
ステロイド/核レセプターのリガンドの活性を増大するか相乗作用することができる化合物または抽出物をスクリーニングおよび/または発見する方法であって、
ステロイド/核レセプターの少なくとも1つのリガンドを含む組成物に、化合物または抽出物を接触させるか混合するステップと、
前記リガンドの活性の増大または相乗作用を決定するステップと
を含む、方法。
【請求項14】
前記リガンドが、ステロイド/核レセプターのポケットに結合し、前記化合物または抽出物が前記ステロイド/核レセプターのリガンド結合ポケットに特異的に結合しない、請求項13の方法。
【請求項15】
前記リガンドが、内因性のアンドロゲン、プロゲストゲン、糖質コルチコイド、および/またはPPARアゴニストである、請求項13または14の方法。
【請求項16】
医薬品用のタイツリオウギ(HQ)の抽出物であって、前記抽出物が、タイツリオウギ(HQ)のヘキサン抽出物、タイツリオウギ(HQ)のジクロロメタン抽出物、タイツリオウギ(HQ)のクロロホルム抽出物、およびタイツリオウギ(HQ)の非水性抽出物からなる群(但し、前記HQ抽出物は、エタノールまたはブタノールHQ抽出物ではない)から選択される、タイツリオウギ(HQ)の抽出物。
【請求項17】
前記抽出物が、ステロイド/核(s/n)レセプター生体活性物質(bioactives)に富む、請求項16の抽出物。
【請求項18】
少なくとも1つのフラボノイド化合物をさらに含む、請求項16または17の抽出物。
【請求項19】
前記フラボノイドが、カリコシン(calycosin)、ホルモノネチン、ゲニステイン、アフロモルシン(afromorsin)、ビオカニンA、クメストロール、オドラチン(odoratin)、および/またはダイゼインである、請求項18の抽出物。
【請求項20】
被験体のステロイド/核(s/n)レセプター媒介性容態の治療用の薬学的組成物または栄養補助組成物の調製のためのタイツリオウギ(HQ)の抽出物の使用であって、前記抽出物が、タイツリオウギ(HQ)のヘキサン抽出物、タイツリオウギ(HQ)のジクロロメタン抽出物、タイツリオウギ(HQ)のクロロホルム抽出物、およびタイツリオウギ(HQ)の非水性抽出物からなる群(但し、前記HQ抽出物は、エタノールまたはブタノールHQ抽出物ではない)から選択される、タイツリオウギ(HQ)の抽出物の使用。
【請求項21】
前記組成物が、少なくとも1つのフラボノイド化合物をさらに含む、請求項20の使用。
【請求項22】
前記フラボノイドが、カリコシン、ホルモノネチン、ゲニステイン、アフロモルシン、ビオカニンA、クメストロール、オドラチン、および/またはダイゼインである、請求項21の使用。
【請求項23】
前記s/nレセプター媒介性生理学的容態がPPAR媒介性容態である、請求項20〜22のいずれか1項に記載の使用。
【請求項24】
前記PPAR媒介性容態が、PPARα媒介性容態および/またはPPARγ媒介性容態である、請求項23の使用。
【請求項25】
前記PPARα媒介性疾患が、異常脂質血症、アテローム性動脈硬化症、冠状動脈性心疾患、肥満症、および/または結腸癌である、請求項24の使用。
【請求項26】
前記PPARγ媒介性疾患が、糖尿病、癌、多嚢胞性卵巣疾患、および/または炎症性腸疾患である、請求項24の使用。
【請求項27】
前記被験体を、PPAR媒介性容態の治療のために5〜5000mgの抽出物で治療する、請求項20〜26のいずれか1項に記載の使用。
【請求項28】
前記被験体を、PPAR媒介性容態の治療のための有効量の1〜1000μg/mLの抽出物で治療する、請求項20〜26のいずれか1項に記載の使用。
【請求項29】
ステロイド/核(s/n)レセプター媒介性容態の治療用(但し、前立腺癌および乳癌の治療を除く)の薬学的組成物または栄養補助組成物の調製のためのカリコシンおよび/またはホルモノネチンの使用。
【請求項30】
前記ステロイド/核(s/n)レセプター媒介性容態がPPAR媒介性容態である、請求項29の使用。
【請求項31】
前記PPAR媒介性容態が、PPARα媒介性容態および/またはPPARγ媒介性容態である、請求項30の使用。
【請求項32】
前記PPARα媒介性疾患が、異常脂質血症、アテローム性動脈硬化症、冠状動脈性心疾患、肥満症、および/または結腸癌である、請求項31の使用。
【請求項33】
前記PPARγ媒介性疾患が、糖尿病、癌、多嚢胞性卵巣疾患、および/または炎症性腸疾患である、請求項31の使用。
【請求項34】
前記組成物が、食品または飲料中に存在する、請求項29〜33のいずれか1項に記載の使用。
【請求項35】
前記組成物が商業包装中に存在し、前記包装が使用説明書を含む、請求項29〜34のいずれか1項に記載の使用。
【請求項36】
ステロイド/核レセプターのリガンドの活性の増大または相乗作用のための薬学的組成物または栄養補助組成物の調製のための使用であって、
タイツリオウギ(HQ)の抽出物;および
フラボノイド化合物またはその混合物
のうちの少なくとも1つの使用。
【請求項37】
ステロイド/核レセプターの少なくとも1つのリガンドの存在下で、有効量のタイツリオウギ(HQ)の抽出物およびフラボノイド化合物またはそれらの混合物を被験体に投与するステップを含み、インビボで増大および/または相乗作用させる、請求項36の使用。
【請求項38】
前記抽出物が、タイツリオウギ(HQ)のヘキサン抽出物、タイツリオウギ(HQ)のジクロロメタン抽出物、タイツリオウギ(HQ)のクロロホルム抽出物、およびタイツリオウギ(HQ)の非水性抽出物からなる群(但し、前記HQ抽出物は、エタノールまたはブタノールHQ抽出物ではない)から選択される、請求項36または37の使用。
【請求項39】
前記フラボノイド化合物が、カリコシン、ホルモノネチン、ゲニステイン、アフロモルシン、ビオカニンA、クメストロール、オドラチン、および/またはダイゼインである、請求項36〜38のいずれか1項に記載の使用。
【請求項40】
前記リガンドがPPARリガンドである、請求項36〜39のいずれか1項に記載の使用。
【請求項41】
前記リガンドが、抗糖尿病薬または脂質低下薬である、請求項36〜40のいずれか1項に記載の使用。
【請求項42】
前記リガンドがホルモンである、請求項36〜40のいずれか1項に記載の使用。
【請求項43】
前記ホルモンが、アンドロゲン、プロゲストゲン、または糖質コルチコイドである、請求項42の使用。
【請求項44】
a)前記リガンドがアンドロゲンであり、前記被験体が、男性不妊症、慢性の骨および筋肉の減少、老年男性更年期、アンドロゲン不感性症候群、クラインフェルター症候群、または停留睾丸の疾患または容態下にあるか、該疾患または該容態下になく、
b)前記リガンドがプロゲストゲンであり、前記被験体が、閉経後ホルモン代替療法、女性不妊症、子宮内膜癌、続発性無月経、機能性子宮出血、または月経異常の疾患または容態下にあるか、該疾患または該容態下になく、または
c)前記リガンドが糖質コルチコイドであり、前記被験体が、自己免疫疾患、関節炎、術後移植片拒絶、または喘息の疾患または容態下にあるか、該疾患または該容態下にない、請求項37〜43のいずれか1項に記載の使用。
【請求項45】
前記被験体が、s/nレセプター媒介性生理学的容態を罹患している、請求項37〜44のいずれか1項に記載の使用。
【請求項46】
前記s/nレセプター媒介性生理学的容態がPPAR媒介性容態である、請求項45の使用。
【請求項47】
前記PPAR媒介性容態が、PPARα媒介性容態および/またはPPARγ媒介性容態である、請求項46の使用。
【請求項48】
前記PPARα媒介性疾患が、異常脂質血症、アテローム性動脈硬化症、冠状動脈性心疾患、肥満症、および/または結腸癌である、請求項47の使用。
【請求項49】
前記PPARγ媒介性疾患が、糖尿病、癌、多嚢胞性卵巣疾患、および/または炎症性腸疾患である、請求項47の使用。
【請求項50】
HQ抽出物が、タイツリオウギ(HQ)のヘキサン抽出物、タイツリオウギ(HQ)のジクロロメタン抽出物、タイツリオウギ(HQ)のクロロホルム抽出物、およびタイツリオウギ(HQ)の非水性抽出物からなる群(但し、前記HQ抽出物はエタノールまたはブタノールHQ抽出物ではない)から選択される有効量の少なくとも1つの抽出物を被験体に投与するステップを含む、s/nレセプター媒介性生理学的容態の治療方法。
【請求項51】
前記方法が、PPARα媒介性容態の治療のために5〜5000mgの抽出物で被験体を治療するステップを含む、請求項50の方法。
【請求項52】
前記方法が、PPARγ媒介性容態の治療のために5〜5000mgの抽出物で被験体を治療するステップを含む、請求項50の方法。
【請求項53】
前記方法が、PPARα媒介性容態の治療のために1mLの血液容量あたり1〜1000μgの抽出物で被験体を治療するステップを含む、請求項50の方法。
【請求項54】
前記方法が、PPARγ媒介性容態の治療のために1mLの血液容量あたり1〜1000μgの抽出物で被験体を治療するステップを含む、請求項50の方法。
【請求項55】
前記PPARγ媒介性容態が、糖尿病、癌、多嚢胞性卵巣疾患、および/または炎症性腸疾患である、請求項52または54の方法。
【請求項56】
前記PPARα媒介性容態が、異常脂質血症、アテローム性動脈硬化症、冠状動脈性心疾患、肥満症、および/または結腸癌である、請求項51または53の方法。
【請求項57】
有効量のカリコシンおよび/またはホルモノネチンを被験体に投与するステップを含む、PPAR媒介性容態を治療(但し、前立腺癌および乳癌の治療を除く)する方法。
【請求項58】
前記PPAR媒介性容態が、糖尿病、アテローム性動脈硬化症、炎症性腸疾患、多嚢胞性卵巣疾患、肥満症、異常脂質血症、および/または結腸癌である、請求項57の方法。
【請求項59】
ステロイド/核レセプターの少なくとも1つのリガンドの存在下で、
タイツリオウギ(HQ)の抽出物、
フラボノイド化合物、および
有効量のタイツリオウギの抽出物またはフラボノイド化合物を含む薬学的組成物または栄養補助組成物
のうちの有効量の少なくとも1つを被験体に投与するステップを含む、ステロイド/核レセプターのリガンドの活性を増大または相乗作用させる方法。
【請求項60】
前記薬学的組成物および栄養補助組成物が、タイツリオウギ(HQ)のヘキサン抽出物、タイツリオウギ(HQ)のジクロロメタン抽出物、タイツリオウギ(HQ)のクロロホルム抽出物、およびタイツリオウギ(HQ)の非水性抽出物からなる群(但し、前記HQ抽出物は、エタノールまたはブタノールHQ抽出物ではない)から選択される有効量の少なくとも1つの抽出物を含む、請求項59の方法。
【請求項61】
前記リガンドがPPARリガンドである、請求項59または60の方法。
【請求項62】
前記リガンドが、抗糖尿病薬または脂質低下薬である、請求項59〜61のいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
前記リガンドがホルモンである、請求項59〜62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
前記ホルモンが、アンドロゲン、プロゲストゲン、または糖質コルチコイドである、請求項63の方法。
【請求項65】
a)前記リガンドがアンドロゲンであり、前記被験体が、男性不妊症、慢性の骨および筋肉の減少、老年男性更年期、アンドロゲン不感性症候群、クラインフェルター症候群、または停留睾丸の疾患または容態下にあるか、該疾患または該容態下になく、
b)前記リガンドがプロゲストゲンであり、前記被験体が、閉経後ホルモン代替療法、女性不妊症、子宮内膜癌、続発性無月経、機能性子宮出血、または月経異常の疾患または容態下にあるか、該疾患または該容態下になく、または
c)前記リガンドが糖質コルチコイドであり、前記被験体が、自己免疫疾患、関節炎、術後移植片拒絶、または喘息の疾患または容態下にあるか、該疾患または該容態下にない、請求項59〜64のいずれか1項に記載の方法。
【請求項66】
前記フラボノイド化合物が、カリコシン、ホルモノネチン、ゲニステイン、アフロモルシン、ビオカニンA、クメストロール、オドラチン、および/またはダイゼインである、請求項59〜65のいずれか1項に記載の方法。
【請求項67】
前記方法が、糖尿病、アテローム性動脈硬化症、多嚢胞性卵巣疾患、ホルモン依存性の乳癌、結腸癌、もしくは前立腺癌、または炎症性腸疾患からなる群から選択されるPPARγ媒介性容態の治療のためである、請求項59〜66のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−513153(P2007−513153A)
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−542544(P2006−542544)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【国際出願番号】PCT/SG2004/000387
【国際公開番号】WO2005/053724
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(304038747)ナショナル ユニバーシティー オブ シンガポール (10)
【氏名又は名称原語表記】NATIONAL UNIVERSITY OF SINGAPORE
【住所又は居所原語表記】10 Kent Ridge Crescent, Singapore 119260
【Fターム(参考)】