説明

ステージ装置、露光装置およびデバイス製造方法

【課題】 複数のガイドを連結させてもエアベアリング用として良好に機能させることができるガイドを有するステージ装置を提供する。
【解決手段】 ステージと前記ステージを駆動する駆動手段と前記ステージを案内するガイドと前記ガイドに対して前記ステージを非接触で支持するためのエアベアリングとを備えるステージ装置であって、前記ガイドのガイド面は、複数のガイドが結合されることで構成される面にセラミックス溶射を施すことで形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば液晶用のガラス基板のような大型の基板にマスクのパタ−ンを転写する際に用いられるステージ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、露光装置における可動ステージのエアベアリング用セラミックスガイドは、一体物または特許文献1のように複数枚の板状セラミックスを接着剤により結合させ平滑加工を施したものが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−260691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基板の大型化に伴い、可動ステージも大型化する必要がある。可動ステージが大型化するに伴い、可動ステージをガイドするエアベアリング用セラミックスガイドも大型化する必要がある。しかし、加工機械のワークサイズに限界があるため一体物では製作することが難しい。また、複数枚のセラミックスガイドを接着剤により連結させても、つなぎ部に隙間や凹凸が出来てしまい、エアベアリングとして良好に機能させることが難しいという問題がある。
【0005】
そこで本発明は、複数のガイドを連結させてもエアベアリング用として良好に機能させることができるガイドを有するステージ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ステージと前記ステージを駆動する駆動手段と前記ステージを案内するガイドと前記ガイドに対して前記ステージを非接触で支持するためのエアベアリングとを備えるステージ装置であって、前記ガイドのガイド面は、複数のガイドが結合されることで構成される面にセラミックス溶射を施すことで形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
複数のガイドを連結させてもエアベアリング用として良好に機能させることができるガイドを有するステージ装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】露光装置断面図
【図2】プレートステージの概略断面図
【図3】つなぎ部の概略図
【図4】レーザ干渉用バーミラーの概略図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を説明する。
図1を用いて、連結ガイドを用いた液晶用のガラス基板のような大型の基板にマスク(原版)のパターンをプレート(基板)に転写するステージ装置について説明する。
【0010】
投影光学系10を挟んで垂直方向の上側にマスクステージ20が配置され、下側にプレートステージ(被露光基板設置ステージおよびエア駆動ステージ)30が配置されている。マスクステージ20およびプレートステージ30は、それぞれリニアモータ等によって移動可能であり、これらの移動位置はともにレーザ干渉測長器50により計測制御可能である。
【0011】
プレートステージ30は、Yガイド31上に配置したYステージ32およびXステージ33を有する。Yガイド31は、ベース200に支持される。また、ベース200は、除振機構等を備えたマウント201に支持される。なお、X方向およびY方向は互いに直交する方向とする。
【0012】
このXステージ33上にθZステージ34が搭載され、この上にプレートチャック35を配置し、それにより露光されるべきプレート36を保持する。従って、プレート36は、プレートステージ30によりX、YおよびZ方向に移動可能であると共にXY面内でも回転可能に保持されることになる。θZステージ34は、露光時、プレート36の表面を投影光学系10のプレート側焦点面に一致させるためのものである。
【0013】
マスクステージ20は、マスクステージ基板21と、その上に配置されたXYθステージ22とを備え、この上に投影されるべきパタ−ンを有するマスク23を配置される。従って、マスク23はXおよびY方向に移動可能であると共にXY面内で回転可能に保持されることになる。
【0014】
マスクステージ20の上方には、マスク23とプレート36の像を投影光学系10を介して観察できる観察光学系40が配置され、さらにその上方に照明光学系41が配置されている。
【0015】
マスクステージ20およびプレートステージ30は共にレーザ干渉測長器50により位置計測制御される。レーザ干渉測長器50はレーザヘッド51、干渉ミラー52、53、およびθZステージ34に取り付けられた第1の反射ミラー54とマスクステージ基板21に取り付けられた第2の反射ミラー55を有する。ここで、レーザ干渉測長器50のレーザビーム位置は、マスクステージ20については上下方向(投影光学系10の光軸方向)ではほぼ投影光学系10のマスク側焦点面に、水平面内ではほぼ投影光学系10の光軸位置に設定される。プレートステージ30については水平面内ではほぼ投影光学系10の光軸位置に設定されているが、上下方向では投影光学系10のプレート側焦点面から下側に距離Lだけ変位した位置を通るように設定されている。
【0016】
図2を用いて、プレートステージ30の構成の詳細を説明する。
Yガイド31の上部には、Yステージ32およびXステージ33が構成されている。Yステージ32は、リニアモータ可動子202に接続されており、リニアモータ可動子202とリニアモータ固定子203とによってY方向に駆動される。Yステージ32の下面にはエアベアリング61aが複数個接続されている。これにより、Yステージ32はYガイド31の上面68(ガイド面)に対して数ミクロン程度の隙間を介して非接触に案内支持される。Xステージ33とYステージ32との間には、不図示のリニアモータが構成されており、Xステージ33はYステージ32に対してX方向に駆動される。また、Xステージ33の下面にはエアベアリング61bが複数個接続されている。これにより、Xステージ33はYステージ32の上面64(ガイド面)に対して数ミクロン程度の隙間を介して非接触に案内支持される。
【0017】
Yステージ32は、セラミックス部材32aおよび32bとが連結部材66で連結され、さらに、その表面64およびつなぎ部63にセラミックス溶射69が施されている。連結部材66の連結によって、溶接が出来ないセラミックス部材32aおよび32b同士の連結を可能としている。また、セラミックス溶射および平面加工によってつなぎ部63の隙間・凹凸を平滑にし、エアベアリングを可能としている。同様に、Yガイド31もセラミックス部材31aおよび31bとが連結部材66で連結され、さらに、その表面68およびつなぎ部63にセラミックス溶射69および平面加工が施されている。これにより、Yガイド31もエアベアリングを可能としている。
【0018】
なお、図3(a)はYガイド31のつなぎ部63の詳細図を示す。セラミックス部材31aおよび32bは連結部材66で連結されている。ここでは、連結部材66はボルト96およびナット97で構成され、ボルト締結を行っている。セラミックス部材31aの表面68aおよびセラミックス部材31bの表面68bにはセラミックス溶射69が施されている。また、セラミックス部材31aおよび31bのつなぎ部は三角型つなぎ部94となっている。このつなぎ部の形状は図3(b)に示すようにお椀型つなぎ部101とすることも可能である。
【0019】
なお、連結後に平面加工を施した面の平面度は0.01ミリ以内であることが好ましい。更に、表面粗さはRa=0.4ミクロンメートル以下であることが好ましい。
【0020】
また、セラミックス部材はアルミナセラミックス、炭化珪素、窒化珪素あるいはジルコニアセラミックスであることが望ましい。
【0021】
セラミックス部材におけるつなぎ部の断面形状としては三角型または御椀型とすることが好ましい。
【0022】
上記セラミックスの連結は、エアベアリング用ガイドだけでなく、広い領域で平滑面が望まれるレーザ干渉用バーミラー(図1における第一の反射ミラー54および第二の反射ミラー55にあたる)にも実施可能である。レーザ干渉用バーミラーに本発明を適用することで、マスクステージ20およびプレートステージ30の可動範囲を拡大することができる。そのため、装置の大型化に大きく寄与することができる。
【0023】
図4(a)は、セラミックス連結によりレーザ干渉用バーミラーを製作した例の斜視図を示す。バー状のセラミックス130および131を上記方法により連結している。図4(b)はバーミラーつなぎ部の詳細断面図を示す。バーミラーのミラー面110は、セラミックス溶射層112を形成した後にメッキ層111を形成させミラー研磨加工を施す。これにより、一体成形では難しい大型のバーミラーも比較的容易に形成することが可能となる。なお、つなぎ部の許容隙間は1ミリメートル以下、許容段差は150ナノメートル以下であることが好ましい。
【0024】
デバイス製造方法を以下に説明する。半導体集積回路素子、液晶表示素子等のデバイスは、本発明のステージ装置を有する露光装置を使用して感光剤を塗布した基板(ウエハ、ガラス基板等)を露光する工程と、その基板を現像する工程と、他の周知の工程と、を経ることにより製造される。
【符号の説明】
【0025】
31 Yガイド
31a セラミックス部材
31b セラミックス部材
32 Yステージ
32a セラミックス部材
32b セラミックス部材
33 Xステージ
61a エアベアリング
61b エアベアリング
66 連結部材
202 リニアモータ可動子
203 リニアモータ固定子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステージと前記ステージを駆動する駆動手段と前記ステージを案内するガイドと前記ガイドに対して前記ステージを非接触で支持するためのエアベアリングとを備えるステージ装置であって、
前記ガイドのガイド面は、複数のガイドが連結されることで構成される面にセラミックス溶射を施すことで形成されていることを特徴とするステージ装置。
【請求項2】
前記ガイド面は、セラミックス溶射の後に平面加工されていることを特徴とする請求項1に記載のステージ装置。
【請求項3】
前記複数のガイドの連結はボルト締結によって行われていることを特徴とする請求項1または2に記載のステージ装置。
【請求項4】
前記複数のガイドのつなぎ部における断面形状が三角型またはお椀型であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のステージ装置。
【請求項5】
原版のパターンを基板に露光する露光装置であって、
前記原版のパターンを基板に投影する投影光学系と、
前記原版または前記基板を保持する請求項1乃至4のいずれか1項に記載のステージ装置と、
を備えることを特徴とする露光装置。
【請求項6】
請求項5に記載の露光装置を用いて基板を露光する工程と、
前記露光された基板を現像する工程と、
を含むことを特徴とするデバイス製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−123135(P2011−123135A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−278950(P2009−278950)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】