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ステータコアとコイルを固定するワニスとこれを具備するモータ
説明

ステータコアとコイルを固定するワニスとこれを具備するモータ

【課題】モータの小型化や軽量化を図りながら、モータの温度上昇を効果的に抑制することのできるステータコアとコイルを固定するワニスとこれを具備するモータを提供する。
【解決手段】モータを構成するステータコアとコイルを固定するワニスであって、該ワニスには潜熱蓄熱剤が配合されており、モータ駆動時のコイルで発熱した熱を潜熱蓄熱剤の融解潜熱で吸収するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータコアとコイルを固定するワニスとこれを具備するモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
モータ(電動機)を構成するステータは、円環状のヨークと、該ヨークから径方向内側に突出する複数のティースと、隣接するティース間に形成されるスロットとを備えた鋼板積層体もしくは圧粉磁心からなるステータコアと、ティースの周りに形成されるコイルとから大略構成されている。
【0003】
コイル用の導線は一般に断面円形であって、たとえば銅素材の導線とその周囲に形成された絶縁皮膜とから構成されたものが適用されているが(このコイルは丸線と称される)、占積率を向上させる目的で、たとえば銅素材の平角線の周囲に絶縁被膜を形成したものをエッジワイズ巻きしたコイルが用いられることもある。
【0004】
ティース周りにコイルを形成する方法としては、たとえば予め導線を巻装してコイルを形成したものをティースの先端(ロータ側)から嵌め込む方法や、巻線装置にて巻線をティースに所定ターン数巻回してコイルを作製する方法などがある。いずれの方法であっても、ティース周りにコイルが形成された後にこのコイルとティースを固定すること、および、コイルとティース間のエアギャップを閉塞してコイルで生じた熱を効果的にティースに伝熱して放熱性を高めること、といった目的を達成するべく、コイルを構成する巻線間、および、コイルとステータコアの間にワニスを含浸させ、全体を加熱してワニスを熱硬化させることでステータコアにコイルが固定される。
【0005】
ところで、昨今のモータは小型化や軽量化、高出力化が図られており、これに起因して高密度電流によるコイル発熱時の温度の上昇が大きな問題となっており、この熱を如何に効果的に放熱するか、もしくは温度上昇自体を如何に抑制するかが当該技術分野における重要な解決課題の一つとなっている。
【0006】
この放熱性を高めることを目的とした公開技術として、特許文献1には、ステータとロータからなるモータの発熱部を冷却するシステムとして、冷却用流体供給手段から供給された冷却用流体を発熱部へ導入する導入通路部と、発熱部を通過した冷却用流体を外部に導出する導出通路部を備えたモータの冷却システムが開示されている。
【0007】
しかしながら、このような冷却システムを搭載することにより、モータの小型化が阻害され、重量も嵩んでしまうことから、モータの小型化、軽量化を図りながら、高い放熱性を保証できる技術とは言い難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−148047号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記する問題に鑑みてなされたものであり、モータの小型化や軽量化を図りながら、モータの温度上昇を効果的に抑制することのできる、ステータコアとコイルを固定するワニスと、これを具備するモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成すべく、本発明によるワニスは、ステータコアとコイルを固定するワニスであって、前記ワニスには潜熱蓄熱剤が配合されており、モータ駆動時のコイルで発熱した熱を潜熱蓄熱剤の融解潜熱で吸収するようになっているものである。
【0011】
本発明はステータコアとコイルを固定するワニスに関し、潜熱蓄熱剤が配合されているというこれまでにない新規な構成のワニスとしたことにより、従来技術のように放熱のための特別なシステムをステータ等に搭載することなく、したがって、モータの小型化や軽量化を図りながら、ワニスにてモータ駆動時の温度上昇を抑制することを可能としたものである。
【0012】
ここで、上記するワニスは、エポキシ樹脂や不飽和ポリエステル、フェノール樹脂といった熱硬化性樹脂から形成されるのがよいが、そこに配合される潜熱蓄熱剤を変質させることなく、モータの最高到達温度に耐え得る素材であれば特に限定されるものではない。また、熱可塑性樹脂からなるワニスの場合には、その素材に固有のガラス転移点や融点などに応じて物性が大きく変化し易いことから、熱硬化性樹脂に比して好適とは言えない。
【0013】
また、潜熱蓄熱剤としては、有機化合物、無機金属塩水和物のいずれか一種もしくは双方が混合されたものを適用することができる。たとえば、有機化合物としては、パラフィンワックス類、エリスリトールやスレイトールといった糖アルコール類、無機金属塩水和物としては、酢酸ナトリウム三酸化物や塩化マグネシウム六水和物、水酸化バリウム八水和物などを挙げることができるが、ステータコアやコイル、ワニスを変質等させないものであって、モータの使用温度域に適合した融点を具備するものであれば特に限定されるものではない。
【0014】
また、潜熱蓄熱剤の形態としては、ブロック状の形態、粉状の形態、粒状の形態、マイクロカプセルの形態など、多様な形態が適用できるが、モータの形状やコイルの形態(3相交流で分布巻き、集中巻き、平角線のエッジワイズ巻き、セグメントコイル巻き(SC巻き)など)などに応じて好適な形状形態の潜熱蓄熱剤を選定するのがよい。
【0015】
さらに、前記ワニスの好ましい実施の形態として、潜熱蓄熱剤の配合割合が40〜70vol%の範囲にあるのがよく、より好ましくは60〜65vol%の範囲にあるのがよく、望ましくは65vol%に調整されているのがよい。
【0016】
配合割合が40vol%未満の場合では十分な潜熱量が得られないこと、配合割合が70vol%を超える場合ではワニス量が少なくなり過ぎてワニスが潜熱蓄熱剤を十分に保持できなくなり、ワニスが硬化した際の強度が不十分となるからである。
【0017】
前記ワニスがモータを構成するステータのティース周囲に配設もしくは巻装されたコイルに対して含浸され、これが硬化することによってステータとコイルの固定構造が形成され、この固定構造とその内部のロータからモータが構成される。ここで、コイルは断面円形の丸線コイルであってもよいし、占積率向上を図ることのできる平角線であってもよく、さらには、この平角線をSC巻き(セグメントコイル巻き)したものであってもよい。
【0018】
このモータに負荷がかかって発熱している際には、潜熱蓄熱剤の顕熱や融解潜熱によってモータから発生する熱を吸収することにより、モータの温度上昇を抑制することができ、温度上昇の遅延を図ることができる。
【0019】
また、既述する従来技術では、モータで発生した熱を冷却システムで冷却するという技術思想であったために、モータでの発熱を許容するものであるが、本願発明のワニスでは、モータで発生した熱による温度上昇そのものを抑制することから、モータの最高到達温度を効果的に低減することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上の説明から理解できるように、本発明のステータコアとコイルを固定するワニスによれば、ワニスに潜熱蓄熱剤が配合され、モータ駆動時のコイルで発熱した熱を潜熱蓄熱剤の融解潜熱で吸収することにより、モータの小型化や軽量化を図りながら、モータの温度上昇を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】潜熱蓄熱剤が配合されたワニスにて20%吸熱する場合、40%吸熱する場合、潜熱蓄熱剤が配合されていないワニスによる場合の吸熱理論グラフ図である。
【図2】(a)〜(d)の順で試験片の作成方法を説明した図である。
【図3】試験片を用いて最高到達温度と温度上昇時間を測定した実験の概要を説明した図である。
【図4】最高到達温度と温度上昇時間を測定した実験結果を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明のモータを構成するステータコアとコイルを固定するワニスの実施の形態を説明する。
【0023】
(ワニスの実施の形態)
本発明のモータを構成するステータコアとコイルを固定するワニスは、エポキシ樹脂や不飽和ポリエステル、フェノール樹脂といった熱硬化性樹脂から形成されており、さらに、その内部に潜熱蓄熱剤が配合されており、モータ駆動時のコイルで発熱した熱を潜熱蓄熱剤の融解潜熱で吸収するようになっている。
【0024】
ワニスに配合される潜熱蓄熱剤としては、有機化合物、無機金属塩水和物のいずれか一種もしくは双方が混合されたものを適用でき、たとえば、有機化合物としては、パラフィンワックス類、エリスリトールやスレイトールといった糖アルコール類、無機金属塩水和物としては、酢酸ナトリウム三酸化物、塩化マグネシウム六水和物、水酸化バリウム八水和物などを挙げることができる。
【0025】
また、潜熱蓄熱剤の配合割合は40〜70vol%の範囲にあるのがよく、より好ましくは60〜65vol%の範囲にあるのがよく、望ましくは65vol%に調整されているのがよい。配合割合が40vol%未満の場合では十分な潜熱量が得られないこと、配合割合が70vol%を超える場合ではワニス量が少なくなり過ぎてワニスが潜熱蓄熱剤を十分に保持できなくなり、ワニスが硬化した際の強度が不十分となるからである。
【0026】
このようなワニスをモータを構成するステータとコイルの固定に適用することにより、モータに負荷がかかって発熱している際には、潜熱蓄熱剤の顕熱や融解潜熱によってモータから発生する熱を吸収することにより、モータの温度上昇を抑制することができ、温度上昇の遅延を図ることができ、このことがモータの駆動時間や寿命の延長に繋がる。また、ワニス自体がモータの温度上昇を抑制することから、別途の冷却システムをモータに組み込む等の措置が一切不要であり、モータの小型化や軽量化にも寄与できるものである。
【0027】
ここで、図1を参照して潜熱蓄熱剤を配合したワニスによる温度上昇抑制効果を概説する。
【0028】
同図は、潜熱蓄熱剤が配合されたワニスにて20%吸熱する場合、40%吸熱する場合、潜熱蓄熱剤が配合されていないワニスによる場合の吸熱理論グラフ図である。
【0029】
所定時間経過後に177℃まで温度上昇するモータに対し(図中の蓄熱剤なしのグラフ参照)、120℃以上でモータにて発生する熱の20%を吸収した場合(図中の20%吸熱のグラフ参照)では、177℃から160℃まで温度上昇を低減することができる。さらに、120℃以上でモータにて発生する熱の40%を吸収する場合(図中の40%吸熱のグラフ参照)では、177℃から144℃まで温度上昇を低減することができる。
【0030】
すなわち、120℃付近で相変化を起こし、20%吸熱、40%吸熱等の熱吸収量に応じた量の潜熱蓄熱剤を使用することにより、モータの温度上昇を所望に制御することが可能になる。
【0031】
[最高到達温度と温度上昇時間を測定した実験とその結果]
本発明者等は、種々の素材の潜熱蓄熱剤を配合したワニスを有する試験片(実施例1、2、3、4)と、潜熱蓄熱剤を配合しないワニスもしくは潜熱蓄熱剤の配合割合の少ないワニスを有する試験片(比較例1、2、3、4、5)を試作し、それぞれの試験片の最高到達温度と温度上昇時間を測定する実験をおこなった。以下、各実施例と各比較例の試験片の製作方法と測定方法を概説する。なお、本実験においては、潜熱蓄熱剤の配合割合が40〜70vol%の範囲にない試験片を比較例(比較例4、5)と位置づけているが、これらは実施例に比して効果が低いものの、潜熱蓄熱剤が配合されたワニスを適用していることで従来のワニスに比して十分な効果があることを付言しておく。
【0032】
(実施例1)
まず、潜熱蓄熱剤を配合したワニスの製作方法として、粒状エリスリトール(三菱化学フーズ社製):1液硬化エポキシ樹脂(ソマール社製)=65:35(体積比)にて混合攪拌をおこない、真空脱気槽にて30分間真空脱気をおこない、潜熱蓄熱剤を配合したワニスを製作した。
【0033】
測定用の試験片の製作方法は、図2aで示すように銅ブロック上に熱電対を貼付し、図2bで示すようにこれを型に嵌め込み、図2cで示すように、型に形成された開口を介して潜熱蓄熱剤を配合したワニスを空気が入らないようにして流し込む。
【0034】
次に、この型を恒温槽に収容し、120℃で1時間保管してワニスを硬化させた後、室温まで自然冷却させ、型より取り外すことによって図2dで示す試験片が製作される。
【0035】
(実施例2)
潜熱蓄熱剤を配合したワニスの製作方法として、2液硬化不飽和ポリエステルイミド樹脂(日東シンコー社製)を用いて、ワニス硬化条件を120℃で8時間とした以外は実施例1と同様の方法で試験片を製作した。
【0036】
(実施例3)
潜熱蓄熱剤を配合したワニスの製作方法として、粉状スレイトール(エーピーアイコーポレーション社製)を用いて、ワニス硬化条件を70℃で1時間とした以外は実施例1と同様の方法で試験片を製作した。なお、実施例1のエリスリトール(融点:119℃)と実施例3のスレイトール(融点:88℃)は構造異性体(C4H10O4)である。
【0037】
(実施例4)
粒状エリスリトール:1液硬化エポキシ樹脂=50:50(体積比)に変更した以外は実施例1と同様の方法で試験片を製作した。
【0038】
(比較例1)
ワニスを使用せず、図2aで示す銅ブロック上に熱電対を貼付して試験片を製作した。
【0039】
(比較例2)
潜熱蓄熱剤を使用せず、1液硬化エポキシ樹脂からなるワニスを用いた以外は実施例1と同様の方法で試験片を製作した。
【0040】
(比較例3)
潜熱蓄熱剤を使用せず、2液硬化不飽和ポリエステルイミド樹脂からなるワニスを用いた以外は実施例2と同様の方法で試験片を製作した。
【0041】
(比較例4)
潜熱蓄熱剤を配合したワニスの製作方法として、粒状エリスリトール:1液硬化エポキシ樹脂=75:25(体積比)に変更した以外は実施例1と同様の方法で試験片を製作した。
【0042】
(比較例5)
潜熱蓄熱剤を配合したワニスの製作方法として、粒状エリスリトール:1液硬化エポキシ樹脂=35:65(体積比)に変更した以外は実施例1と同様の方法で試験片を製作した。
【0043】
(測定方法)
上記実施例1〜4、比較例1〜5の各試験片を製作し、各試験片を図3で示すようにシリコンラバーヒーター上に銅ブロックをヒータに密着するようにして載置し、試験片の温度が30℃になるように30分間保温した後、シリコンラバーヒーターで加熱をおこない、その際の温度変化を測定した。
【0044】
測定結果より、最高到達温度と80℃〜150℃への温度上昇時間を測定した。さらに、試験後にワニスの硬化体が強度を維持しているか否かを押圧して確認した。以下の表1と図4に試験結果を示す。
【0045】
【表1】

【0046】
表1および図4より、実施例1〜4の潜熱蓄熱剤を配合したワニスを使用した試験片では、ワニスを使用していない試験片(比較例1)、潜熱蓄熱剤が配合されていないワニスを使用した試験片(比較例2、3)と比較して、最高到達温度を低減する効果と80℃〜150℃への温度上昇時間の遅延性の双方に優れていることが実証されており、このことから、モータの温度上昇抑制効果に大きく寄与できるものと考えられる。
【0047】
また、潜熱蓄熱剤の配合割合が40〜70vol%の範囲にない試験片のうち、比較例4の試験片では、蓄熱剤量は十分であったが、試験後にワニス硬化体を押圧した際に形状を保つことができなかった。エポキシ樹脂量が少な過ぎて強度が不十分となっていると考えられる。
【0048】
一方、比較例5の試験片では、蓄熱剤量が少な過ぎたために実施例と比較して温度上昇抑制効果が小さく、使用に適していないものとなっている。
【0049】
この実験結果を踏まえ、潜熱蓄熱剤が配合されたワニスを適用することで最高到達温度の低減と温度上昇時間の遅延の双方を図ることができ、さらに、潜熱蓄熱剤の配合割合を所定範囲に調整することでワニス硬化体の強度を維持することができ、かつ高い温度上昇抑制効果を奏することができることが実証されている。
【0050】
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータを構成するステータコアとコイルを固定するワニスであって、
前記ワニスには潜熱蓄熱剤が配合されており、モータ駆動時のコイルで発熱した熱を潜熱蓄熱剤の融解潜熱で吸収するようになっているステータコアとコイルを固定するワニス。
【請求項2】
前記潜熱蓄熱剤が、有機化合物、無機金属塩水和物のいずれか一種もしくは双方が混合されたものからなる請求項1に記載のステータコアとコイルを固定するワニス。
【請求項3】
前記潜熱蓄熱剤の配合割合が40〜70vol%の範囲にある請求項1または2に記載のステータコアとコイルを固定するワニス。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のワニスにてステータコアとコイルが固定されているモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−115868(P2013−115868A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257693(P2011−257693)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】