説明

ストッパ装置

【課題】回転体を360度以上の角度位置で機械的にストップできるようにする。
【解決手段】ストッパ装置1は、第1のギア2と、この第1のギアと異なる歯数の第2のギア3と、中間ギア4とを備え、第1のギア2及び第2のギア3のいずれかを回転体に連結し、中間ギア4に対して、第1のギア2と第2のギア3とを軸方向に並ぶように噛合させ、第2のギア3に突起5を設け、第1のギア2に突起5と周方向で離間する一方向側被ストッパ部6A及び他方向側被ストッパ部を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転体に対して回転限度角度を機械的に与えるストッパ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ストッパ装置としては、特許文献1に示される技術のストッパ装置がある。このストッパ装置はロボットに適用されており、回転体であるアームを回転可能に支持する支持体に突起状のストッパドグを設け、前記アームに突起状のストッパを設けた構成としている。このストッパ装置では、アームが一方向あるいは他方向に回転すると、該アームと一体的に前記ストッパが回転し、回転し続けると最終的にストッパドグに当たって、それ以上の回転が阻止される。この構成では、アームの回転限度角度は360度を超えることはない。
【特許文献1】実開平6−85784号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、ロボットなどの各種機構では、回転体を360度以上回転させる構成もあり、この場合、360度以上の角度で回転体を機械的にストップすることが要望されているが、前述の技術では、ストップ位置が360度未満での角度限度となってしまい、当該技術を採用できないものであった。
【0004】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、回転体を360度以上の角度位置で機械的にストップできるストッパ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明においては、回転体が一方向あるいは他方向へ回転駆動されると、第1のギアが一方向あるいは他方向へ回転し、中間ギアを介して第2のギアが第1のギアと同じ方向へ回転する。第2のギアが一方向あるいは他方向へ1回転するとき、第1のギアは両ギアの歯数差に応じた角度ピッチだけ相対的に進み回転する、あるいは遅れ回転する。従って、例えば、前記第1のギアを中心とした前記ストッパ部と前記一方向側被ストッパ部及び他方向側被ストッパ部との周方向での離間角度を、前記両ギアの歯数差に応じた角度ピッチに設定しておけば、第2のギアがいずれか方向へ1回転(360°回転)したときに前記ストッパ部といずれかの前記被ストッパ部とが当接し、第2のギアに1回転での回転限度角度が与えられる。そして、第1のギアは、第2のギアの1回転に対して、両ギアの歯数差に応じた角度ピッチだけ相対的に進み回転した角度、あるいは遅れ回転した角度が回転限度角度となる。従って、第2のギアのn(nは正の実数)回転を回転限度角度となるようにするためには、前記ストッパ部と前記両被ストッパ部との離間角度を、それぞれ前記角度ピッチのn倍にしておけば良い。このようにすると、第2のギアはn回転したときにストップされ、第1のギアは、n回転に対して、両ギアの歯数差に応じた角度ピッチ×nだけ相対的に進み回転した角度、あるいは遅れ回転した角度×nが回転限度角度となって、該回転限度角度でストップされる。
【0006】
この結果、本発明によれば、前記第1のギアを中心とした前記ストッパ部と前記一方向側被ストッパ部及び他方向側被ストッパ部との離間角度に基づいて、前記第1のギア又は第2のギアの一方向側及び他方向側の回転限度角度を1回転以上の任意の角度に設定することができ、第1のギア又は第2のギアと回転体とを連結すれば、回転体が1回転以上回転する角度でも回転限度角度を設定することができる。
【0007】
請求項2の発明は、前記第2のギアの1回転当たりの第1のギアの回転進み又は回転遅れの角度ピッチφ[deg]を算出し、設定しようとする前記一方向及び他方向での回転限度角度をK[deg]とし、前記第1のギアを中心とした前記ストッパ部と前記一方向側被ストッパ部及び他方向側被ストッパ部との前記離間角度をα[deg]としたとき、
α=(φ/360)×K
なる関係式により前記離間角度α又は前記回転限度角度Kを求めるようにしている。
【0008】
この請求項2の発明によれば、回転限度角度Kを得るためには、上述の式によりαを求めれば良く、任意の回転限度角度を簡単に設定することができる。
請求項3の発明は、前記第2のギアに、ストッパ部として突起を形成し、前記第1のギアに周方向に延びる長孔を形成し、この長孔内に前記突起を配置し、この長孔の一方向側端部が前記一方向側被ストッパ部を構成し、該長孔の他方向側端部が前記他方向側被ストッパ部を構成するところに特徴を有する。
【0009】
この請求項3の発明によれば、ストッパ部及び被ストッパ部の構造が簡単であり、前記離間角度の設定も容易である。
請求項4の発明は、前記第1のギア、第2のギア、中間ギアのいずれかに、前記回転体を駆動するためのモータの回転力を伝達するところに特徴を有する。
この請求項4の発明によれば、ストッパ装置を構成するギアの一部を利用して回転体を駆動できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施例について図面を参照して説明する。図1には、ストッパ装置1の全体構成を示し、図2にはストッパ装置1を分解した状態を示している。図3には、ストッパ装置1の平面構成を概略的に示している。なお、この場合、各ギアをピッチ円で示している。該ストッパ装置1は、第1のギア2と、この第1のギア2と異なる歯数の第2のギア3と、中間ギア4とを備えている。
【0011】
前記中間ギア4に対して、前記第1のギア2と前記第2のギア3とを軸方向に並ぶように噛合させている。この場合、中間ギア4の中心4Cと第1のギア2の中心2Cとを結ぶ仮想線と、中間ギア4と第2のギア3の中心3Cとを結ぶ仮想線とが、軸方向から見て重なるように並べている(図3参照)。これら第1のギア2、第2のギア3及び中間ギア4は図示しない軸受により支承されている。
【0012】
前記第2のギア3には、ストッパ部に相当する突起5を、前記第1のギア3側へ突出するように設けている。
前記第1のギア2には、周方向に延びる長孔6が形成されており、この長孔6内に前記突起5が配置されている。該突起5に対して周方向で離間する該長孔6の一方向側(図3の矢印a方向側)端部が前記一方向側被ストッパ部6Aを構成し、又該突起5に対して周方向で離間する該長孔6の他方向側(矢印b方向側)端部が前記他方向側被ストッパ部6Bを構成している。
【0013】
図3には、前記突起5が長孔6の中間位置にある状態を示している。
前記中間ギア4には、モータ7の回転軸がカップリング8を介して接続されており、概モータ8が回転されると該中間ギア4、第1のギア2、第2のギア3が回転される。
【0014】
前記第2のギア3の1回転当たりの第1のギア2の回転進み又は回転遅れの角度ピッチをφ[deg]とし、設定しようとする第2のギア3の前記一方向及び他方向での回転限度角度をK[deg]とし、前記第1のギア2を中心とした前記ストッパ部と前記一方向側被ストッパ部及び他方向側被ストッパ部との前記離間角度をα[deg]としたとき、
α=(φ/360)×K
で求められる。ここで前記φは第1のギア2の歯数をZ1とし、第2のギア3の歯数をZ2とすると、その歯数差(Z2−Z1)分の第1のギア2のピッチ角度として求められる。
【0015】
また、前記第2のギア3のn(正の実数)回転当たりの第1のギア2の回転進み又は回転遅れの角度ピッチはn×φ[deg]となる。
従って、たとえば第2のギア2の矢印A方向への360°回転(1回転)角度を回転限度角度Kとしたい場合には、上記式のKに360を代入すれば良く、また、720°回転を回転限度角度Kとしたい場合には、上記Kに720を代入すればよい。
なお、前記第1のギア2の歯数Z1が第2のギア3の歯数Z2より多いときには、第2のギア3が1回転したときに第1のギア2は遅れ回転となる。
【0016】
本実施例では、第2のギア3に例えばロボットのアームなどの回転体を連結し、前記第2のギア3の回転限度角度Kを720°(2回転)に設定しており、つまりαを2φに設定している。
従って、図3の状態から、中間ギア4が矢印Q方向に回転して、第2のギア3が矢印A方向へ回転する(第1のギア2は矢印B方向へ回転する)と、720°回転したところで図7に示すように、突起5が長孔6の一方向側被ストッパ部6Aと当接し、第2のギア3及び第1のギア2が機械的にストップされる。この結果、回転体の回転限度角度は720°となる。この回転の途中状態を図4、図5、図6に示す。図4では、第2のギア3の180°回転状態を示し、図5では、360°回転状態を示し、図6では540°状態を示している。なお、第2のギア3が矢印Aとは反対方向へ回転すると、突起5は他方向側ストッパ部6Bに当接することになる。
【0017】
この場合、回転体は、モータ7の駆動により、該中間ギア4、第1のギア2、第2のギア3が回転されることにより、回転駆動される。但し、このモータ7は、前記回転体の回転限度角度に至る前に停止制御されるようになっている。この停止制御が故障したときに、上述のストッパ機能が発揮されるものとなる。
なお、回転体を第1のギア2に連結した場合の回転限度角度K´[deg]は
K´=K+第2のギア2のK回転時の第1のギア2の回転進みの角度ピッチφ
となる。
【0018】
このような本実施例によれば、第1のギア2を中心とした突起5と一方向側被ストッパ部6A及び他方向側被ストッパ部6Bとの離間角度αに基づいて、前記第1のギア2又は第2のギア3の一方向側及び他方向側の回転限度角度を1回転以上の任意の角度に設定することができ、第1のギア2又は第2のギア3と回転体とを連結すれば、回転体が1回転以上回転する角度でも回転限度角度を設定することができる。
【0019】
また、本実施例においては、前記第2のギア3の1回転当たりの第1のギア2の回転進み又は回転遅れの角度ピッチφ[deg]を算出し、設定しようとする一方向及び他方向での回転限度角度をK[deg]とし、前記第1のギア2を中心とした前記突起5と前記一方向側被ストッパ部6A及び他方向側被ストッパ部6Bとの前記離間角度をα[deg]としたとき、
α=(φ/360)×K
なる関係式により前記離間角度α又は前記回転限度角度Kを求めるようにしている。
【0020】
この実施例によれば、回転限度角度Kを得るためには、上述の式によりαを求めれば良く、任意の回転限度角度を簡単に設定することができる。
また、実施例によれば、前記第2のギア3に、ストッパ部として突起5を形成し、前記第1のギアに周方向に延びる長孔6を形成し、この長孔6内に前記突起5を配置し、この長孔6の一方向側端部が前記一方向側被ストッパ部6Aを構成し、該長孔6の他方向側端部が前記他方向側被ストッパ部6Bを構成するようにしたから、ストッパ部及び被ストッパ部の構造が簡単であり、前記離間角度αの設定も容易である。
【0021】
また、本実施例によれば、中間ギア4に、前記回転体を駆動するためのモータ7の回転力を伝達するようにしたから、ストッパ装置1を構成するギアの一部を利用して回転体を駆動できる。なお、前記第1のギア2、第2のギア3、中間ギア4のいずれかに、モータ7の回転力を伝達するようにすれば良い。
【0022】
なお、本発明は、上記実施例に限定されず、例えば、回転限度角度Kは、720°、360°などの角度に限られず、任意の角度でも良い。また、前記第1のギア2及び第2のギア3のいずれかが、前記回転体と連結されもしくは前記回転体を構成するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施例を示すストッパ装置の側面図
【図2】分解斜視図
【図3】概略構成の平面図
【図4】作用説明のための概略構成の平面図(その1)
【図5】作用説明のための概略構成の平面図(その2)
【図6】作用説明のための概略構成の平面図(その3)
【図7】作用説明のための概略構成の平面図(その4)
【符号の説明】
【0024】
図面中、1はストッパ装置、2は第1のギア、3は第3のギア、4は中間ギア、5は突起(ストッパ部)、6は長孔、6Aは一方向側被ストッパ部(一方向側被ストッパ部)、6Bは他方向側被ストッパ部(他方向側被ストッパ部)、7はモータを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体に対して回転限度角度を機械的に与えるストッパ装置であって、
第1のギアと、
この第1のギアと異なる歯数の第2のギアと、
中間ギアとを備え、
前記第1のギア及び第2のギアのいずれかが、前記回転体と連結されもしくは前記回転体を構成し、
前記中間ギアに対して、前記第1のギアと前記第2のギアとを軸方向に並ぶように噛合させ、
前記第2のギアにストッパ部を設け、
前記第1のギアに前記ストッパ部と周方向で離間する一方向側被ストッパ部及び他方向側被ストッパ部を設けたことを特徴とするストッパ装置。
【請求項2】
前記第2のギアの1回転当たりの第1のギアの回転進み又は回転遅れの角度ピッチφ[deg]を算出し、設定しようとする前記第2のギアの前記一方向及び他方向での回転限度角度をK[deg]とし、前記第1のギアを中心とした前記ストッパ部と前記一方向側被ストッパ部及び他方向側被ストッパ部との前記離間角度をα[deg]としたとき、
α=(φ/360)×K
なる関係式により前記離間角度α又は前記回転限度角度Kを求めることを特徴とする請求項1に記載のストッパ装置。
【請求項3】
前記第2のギアには、ストッパ部として突起が形成され、
前記第1のギアには、周方向に延びる長孔が形成され、
この長孔内に前記突起が配置され、この長孔の一方向側端部が前記一方向側被ストッパ部を構成し、該長孔の他方向側端部が前記他方向側被ストッパ部を構成することを特徴とする請求項1又は2に記載のストッパ装置。
【請求項4】
前記第1のギア、第2のギア、中間ギアのいずれかには、前記回転体を駆動するためのモータの回転力が伝達されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のストッパ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−53954(P2010−53954A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−219582(P2008−219582)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】