説明

ストリーム記録システム

【課題】 従来のストリーム記録システムでは、IEEE1394インタフェースを介して外部からの入力TSを記録する場合には、記録位置の制御ができず、繋ぎ記録時に繋ぎ点でストリームを崩すことなく記録を行うことができない。
【解決手段】 送信側撮像装置では、磁気テープを再生してこれから送信するストリームの先頭部分のPCRパケット21を検出し、PCR_Aを取得した後、このPCR_Aから、送信するストリームのGOPを記録しているトラックの開始位置のPCRの値(SPCR)を求めた後、このSPCRから予め定めたNフレーム前の値(PPCR)を求める。その後、送信開始時には、DITパケットを送信し、PPCRの値を持つPCRパケットを送信する。その後NフレームはPCRを送信し、システムクロックがSPCRの値になったところで、磁気テープに記録されているストリームの再生と送信を開始する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はストリーム記録システムに係り、特に伝送されたMPEG(Moving Picture Experts Group)ストリームを、IEEE1394等の規格により伝送して、記録媒体に記録するストリーム記録システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、IEEE1394シリアルバスによるディジタル画像信号の同期・非同期通信が可能な撮像装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この撮像装置では、タイミングジェネレータにより生成されるクロックにより動作する撮像部と、撮像部と外部装置との間でデータ通信を行うためのIEEE1394シリアルバスによるディジタル画像信号の同期・非同期通信が可能な1394カメラリンク層ブロックと、物理層ブロックとからなる通信用インタフェース部とを備え、通信用インタフェース部のクロックを撮像部のタイミングジェネレータに供給し、タイミングジェネレータを通信用インタフェース部のクロックに基づいて駆動することにより、ビート成分による画像の干渉縞の発生を防止する構成としたものである。
【0003】
このような撮像装置が、その記録媒体に撮像した映像信号を記録し再生する記録再生機構を備えたカメラ一体型VTRである場合は、二台の撮像装置を用意し、一方の撮像装置の記録済みの第1の記録媒体から再生された再生映像信号を、IEEE1394シリアルバスを介して他方の撮像装置へ伝送して、その他方の撮像装置の第2の記録媒体にダビング記録あるいは繋ぎ記録することが可能となる。
【0004】
ここで、上記の第2の記録媒体にダビング記録あるいは繋ぎ記録される再生映像信号が、例えば周知のMPEG(Moving Picture Experts Group)方式により高能率圧縮符号化されたディジタル映像信号のトランスポートストリーム(TS)である場合、第2の記録媒体に繋ぎ記録されたディジタル映像信号をフリーズやノイズ無しに再生するためには、MPEG方式で定められた複数フレームからなる一つのGOP(Group of Picture)をそれに相当するトラックに記録し、1本のトラックには、違うGOPのフレームが記録されてはならない。
【0005】
つまり、例えば、フレームレートが30Hzで一つのGOPが12フレームの場合、その12フレーム分を圧縮したMPEGのTSパケットは、後述のHDVフォーマットのHD1モードでは決められた120(=12×10)トラックの中に記録しなければならず、この120トラックの中には他のGOPのパケットが入ってはならない。このように記録すれば、GOPの切れ目のトラックで繋ぎ記録を開始することによって、ストリームを大きく崩すことなく、繋ぎ点でスムーズな再生を行うことが可能となる。
【0006】
【特許文献1】特開2000−115601号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記IEEE1394規格でTSを送受信可能な従来の記録再生機構付きの撮像装置(カメラ一体型VTR)が、磁気テープを用いてMPEGのTSを記録再生可能なHDV規格の撮像装置であり、そのHDV規格のHD1モード(水平1280画素、垂直720画素の720p信号などを、MPEG2−TSの信号形態で、プロファイル/レベルがMP@HLなどで、記録レート19.7Mbpsで記録、再生するモード)で、一方の撮像装置から再生されたTSをIEEE1394インタフェース経由で他方の撮像装置に伝送してダビング記録を行う場合、従来は、HD1モードでの記録位置の同期に関する規定はないため、送信側のGOPの記録タイミングを記録側(受信側)で検出できないため、タイミングの制御を行うことなく記録している。
【0008】
このため、上記の2台の撮像装置から構成される従来のストリーム記録システムでは、IEEE1394インタフェースを介して外部からの入力TSを記録する場合には、記録位置の制御ができず、1トラック中に2つのGOPのパケットが記録されてしまい、繋ぎ記録時に繋ぎ点でストリームを崩すことなく記録を行うことができないという問題がある。
【0009】
本発明は以上の点に鑑みなされたもので、ダビング記録時や編集後の書き戻しをした記録媒体であっても、その記録媒体の繋ぎ撮り個所をスムーズに再生することが可能なストリーム記録システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明は、情報信号が予め定めたパケットの信号形態で、かつ、時刻参照情報を含む予め定めた複数のパケットからなるグループ単位で時系列的に合成された第1のストリームを所定のインタフェースを介して送信する送信側機器と、送信された第1のストリームを所定のインタフェースを介して受信する受信手段と、受信手段により受信された第1のストリームを時刻参照情報を用いて所定のフォーマットの第2のストリームに変換して記録媒体に記録する記録手段と、を少なくとも備えた受信側機器とが接続されたストリーム記録システムであって、
送信側機器は、送信開始時に予め定めた送信開始用パケットに続いて、予め定めた時間を示す時刻参照情報を生成して送信する第1の送信手段と、時刻参照情報送信時点から、時刻参照情報が示す予め定めた時間経過後に、所望のグループ単位の先頭のパケットから第1のストリームの送信を開始させる第2の送信手段とを有し、
受信側機器は、受信手段により送信開始用パケットに続いて予め定めた時間を示す時刻参照情報を受信したときには、受信したその時刻参照情報に基づいて第1のストリームに同期した基準信号を生成する基準信号生成手段と、受信手段により時刻参照情報を受信してから予め定めた時間経過後に記録手段を制御して、受信された第1のストリームを所定のフォーマットの第2のストリームに変換して記録媒体に記録開始させる記録制御手段と、を有することを特徴とする。
【0011】
この発明では、送信側機器においては、送信開始時に予め定めた送信開始用パケットに続いて予め定めた時間を示す時刻参照情報を生成して送信させた後、予め定めた時間経過後に、グループ単位の先頭のパケットから第1のストリームを送信し、受信側機器においては、受信した送信開始用パケット及び時刻参照情報に基づいて、その時刻参照情報受信時点から予め定めた時間経過後に受信した第1のストリームの記録媒体への記録を開始するようにしたため、受信側機器では、第1のストリームのグループ単位の先頭のパケットから記録開始することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、送信側機器における第1のストリームのグループ単位の先頭のパケットの記録タイミングを受信側機器で検出することができない伝送フォーマット規格であっても、受信側機器では、受信した送信開始用パケット及び時刻参照情報に基づいて、その時刻参照情報受信時点から予め定めた時間経過後に受信した第1のストリームの記録媒体への記録を開始することにより、第1のストリームのグループ単位の先頭のパケットから記録開始することができるため、記録媒体に送信側機器から送信された第1のストリームのダビング記録時や繋ぎ撮り記録の繋ぎ記録箇所をストリームを崩すことなく記録ができ、繋ぎ記録箇所をスムーズに再生することができ、特に送信側機器及び受信側機器としてHDV規格のHD1モード対応機器に適用して好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明の実施の形態について図面と共に説明する。図1は本発明になるストリーム記録システムの一実施の形態の概略構成図を示す。同図に示すように、本実施の形態のストリーム記録システムは、それぞれIEEE1394インタフェースを備えた送信側撮像装置1と受信側撮像装置2とがケーブル3を介して接続された構成である。
【0014】
送信側撮像装置1と受信側撮像装置2はそれぞれ同一構成であり、前述したHDV規格のフォーマットで撮像映像信号をMPEG2−TSの信号形態で磁気テープに記録し再生する機能を備えたカメラ一体型VTR(所謂ムービー)であり、送信側撮像装置1が、装填されている記録済みの磁気テープからHDV規格のHD1モードのTSを再生してケーブル3を介して送信し、受信側撮像装置2がそれを受信して、装填されている一部記録済みの又は未記録の磁気テープにHDV規格のHD1モードでダビング記録あるいは繋ぎ撮り記録する構成で、送信側撮像装置1の送信タイミングと受信側撮像装置2の受信タイミングとを本実施の形態特有の方法で決定して、繋ぎ記録時に繋ぎ点でストリームを崩すことなく記録を行えるようにしたものである。
【0015】
なお、本発明のストリーム記録システムは、送信側機器はHDV規格のHD1モードに対応したMPEGエンコーダやパーソナルコンピュータ(PC)であっても適用可能であるが、図1では説明の便宜上、送信側も受信側と同じ撮像装置であるとしている。
【0016】
次に、本実施の形態の動作について説明する。送信側撮像装置1に装填されている磁気テープには、図2に模式的に示すように、記録トラックT1〜T9等が順次に形成されており、記録トラックT3の先頭から記録TSを再生して送信するものとする。ここで、記録トラックT1〜T9等はHDV規格のHD1モードで正常にディジタル映像信号がTSの形態で記録されており、送信開始する記録トラックT3の先頭にはGOPの先頭位置が記録されているものとする。
【0017】
また、GOP内には必ずプログラム時刻基準参照値(PCR:Program Clock Reference)が所定時間間隔であり、このPCRのうちの先頭部分のPCRが図2に21で示すように記録トラックT4に記録されているものとする。送信側撮像装置1では、まず、磁気テープを再生してこれから送信するストリームの先頭部分のPCRパケット21を検出し、PCRの値(PCR_A)を取得する。このPCR_Aには、図3に示すようにPCRパケット21の送信時間を表わすタイムスタンプt2が書かれている。
【0018】
続いて、送信側撮像装置1はこのタイムスタンプt2から、送信するストリームのGOPを記録しているトラックT3の開始位置のPCRの値(SPCR)、すなわちGOP先頭時刻t1を図3に模式的に示すように求めた後、このPCRの値(SPCR)から予め定めた数フレーム(ここではN)前の値(PPCR)を図3に模式的に示すように求める。
【0019】
続いて、送信側撮像装置1は、記録トラックT3以降に記録されているTSの送信に先立って、パケットの途切れを示す予め定められた公知のDITパケットを図3に模式的に示すように送信し、その後、PPCRの値を持つPCRパケットを送信する。その後NフレームはPCRをHDVフォーマットのHD1モードの規格に合わせて送信し、システムクロックがSPCRの値になったところで、図3に模式的に示すように磁気テープに記録されているダビングするストリームの再生及びその送信を開始する。これにより、図2に示す記録トラックT3以降の記録TSの再生及びその送信がGOP先頭位置から開始される。
【0020】
次に、受信側撮像装置2の構成及び動作について図4及び図5と共に説明する。図4は受信側撮像装置2の一実施の形態のブロック図を示す。同図に示すように、受信側撮像装置2はIEEE1394インタフェースを介して送信側撮像装置1から送信されたTSを受信部11で受信し、受信TSを受信TS中のPCRによりセットされるカウンタを有する公知の構成のPLL12とMPEGデコーダ13とフォーマッタ15にそれぞれ供給する。
【0021】
PLL12は、DITパケット後の最初のPCRパケットの到着時刻をフレームの切り替わり点として内部のカウンタがPPCRの値にセットされ、PCRの値に同期した27MHzのシステムクロックを生成し、そのシステムクロックを基準信号発生器14に供給して基準信号を発生させる一方、MPEGデコーダ13に供給する。
【0022】
上記の基準信号は、フォーマッタ15、マイクロコンピュータ(マイコン)16、及びサーボ回路19にそれぞれ供給され、フレームや記録トラックの基準となるタイミングを作成する。このようにすることで送信側と受信側のフレームやトラックが同期し位相がロックする。そして、記録再生ヘッド18をこのトラック基準に合わせて動作させることで送信側と受信側のヘッドの位置がロックする。
【0023】
一方、フォーマッタ15はHDV規格のHD1モードで入力TS信号をフォーマットする大規模半導体集積回路(LSI)である。また、サーボ回路19は、記録再生ヘッド18を基準信号に同期させて動作させる。また、マイコン16は、フォーマッタ15及びサーボ回路19の動作を制御するが、これらをPPCRの値を持つPCRパケット受信からNフレーム経過するまでは記録動作を待機状態(記録ポーズ状態)に制御している。このPPCRの値を持つPCRパケット受信後のNフレームの記録待機時間(記録ポーズ時間は、PCRで内部のカウンタがセットされるPLL12の動作を安定させるのに使われる。
【0024】
この状態で、マイコン16は、図5に模式的に示すように、PPCRの値を持つPCRパケット受信からNフレーム経過した時刻t3に達したことを検出すると、フォーマッタ15及びサーボ回路19を制御して、受信部11にて受信されフォーマッタ15でHDV規格のHD1モードのフォーマットに変換されたTSパケットを、アンプ17を介して記録再生ヘッド18に供給して、これにより磁気テープ20に順次に記録トラックを形成して記録し始める。
【0025】
なお、記録再生ヘッド18による磁気テープ20へのTSパケットの記録は、例えば周知のヘリカルスキャニング方式により、回転する記録再生ヘッド18により一定方向に走行する磁気テープ20に対してテープ長手方向に対して傾斜した記録トラックを形成して行われる。
【0026】
ここで、記録開始される最初のトラックは、PPCRの値を持つPCRパケット受信からNフレーム経過した直後に記録開始されるものであるから、図3に時刻t1で示した時刻から再生開始される送信側撮像装置1の磁気テープ上の図2の記録トラックT3に対応したトラックである。この記録開始される最初のトラックをGOPの先頭位置記録トラックと認識する。
【0027】
このようにして、本実施の形態によれば、受信側撮像装置2は、送信側撮像装置1のGOPの記録タイミングを間接的に検出することができるため、送信側撮像装置1が再生する磁気テープとほぼ同じ磁気テープ上の位置に、受信したパケットをHDV規格のHD1モードで記録することが可能になる。従って、受信側撮像装置2により磁気テープの記録ダビング時や編集後の書き戻しをした磁気テープであっても、その磁気テープの繋ぎ撮り箇所をストリームを崩すことなくスムーズに再生することができる。
【0028】
なお、本発明は以上の実施の形態に限定されるものではなく、送信側及び受信側は撮像装置でなくてもよい。送信側機器が例えばPCの場合は、ハードディスクのファイルにTSが記録されているが、TSのGOPの先頭パケットのアドレスはPCが管理しているので、送信するTSのGOPの先頭のパケットはファイルを再生することなく分かり、また、例えば送信側機器がMPEGエンコーダの場合は、記録媒体の記録再生機能は有していないが、送信するTSのGOPの先頭のパケットは分かるので、いずれも送信開始前にDITパケット、PPCRの値を持つPCRパケットの順で送信した後、Nフレーム経過後にシステムクロックがSPCRの値になったところで、記録しようとするTSをGOPの先頭パケットから順に送信開始する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明システムの一実施の形態の概略構成図である。
【図2】送信側の磁気テープ上の記録トラックの記録情報の一例を模式的に示す図である。
【図3】図1中の送信側撮像装置が送信する情報及びその送信タイミングの一例の説明図である。
【図4】図1中の受信側撮像装置の一実施の形態の概略ブロック図である。
【図5】図4の受信側撮像装置の一例の記録開始タイミング説明図である。
【符号の説明】
【0030】
1 送信側撮像装置
2 受信側撮像装置
11 受信部
12 PCR PLL
13 MPEGデコーダ
14 基準信号発生器
15 フォーマッタ
16 マイクロコンピュータ(マイコン)
18 記録再生ヘッド
19 サーボ回路
20 磁気テープ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報信号が予め定めたパケットの信号形態で、かつ、時刻参照情報を含む予め定めた複数のパケットからなるグループ単位で時系列的に合成された第1のストリームを所定のインタフェースを介して送信する送信側機器と、
前記送信された前記第1のストリームを前記所定のインタフェースを介して受信する受信手段と、前記受信手段により受信された前記第1のストリームを前記時刻参照情報を用いて所定のフォーマットの第2のストリームに変換して記録媒体に記録する記録手段と、を少なくとも備えた受信側機器とが接続されたストリーム記録システムであって、
前記送信側機器は、
送信開始時に予め定めた送信開始用パケットに続いて、予め定めた時間を示す前記時刻参照情報を生成して送信する第1の送信手段と、
前記時刻参照情報送信時点から、該時刻参照情報が示す前記予め定めた時間経過後に、所望の前記グループ単位の先頭のパケットから前記第1のストリームの送信を開始させる第2の送信手段とを有し、
前記受信側機器は、
前記受信手段により前記送信開始用パケットに続いて前記予め定めた時間を示す時刻参照情報を受信したときには、受信したその時刻参照情報に基づいて前記第1のストリームに同期した基準信号を生成する基準信号生成手段と、
前記受信手段により前記時刻参照情報を受信してから前記予め定めた時間経過後に前記記録手段を制御して、受信された前記第1のストリームを所定のフォーマットの第2のストリームに変換して前記記録媒体に記録開始させる記録制御手段と、を有することを特徴とするストリーム記録システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−127587(P2006−127587A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−311694(P2004−311694)
【出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】