説明

ストレス判定システムおよびストレス改善システム

【課題】被測定者のストレス状態を正確に判定することができるストレス判定システム及びそれを用いるストレス改善システムを提供する。
【解決手段】心拍検出装置2の心拍検出部23には、心臓の拡張/収縮に伴う活動電流が検出電極21を介して入力され、この活動電流からR波の発生を検出すると、無線通信部22から表示装置1へR波の発生タイミングを知らせる検出信号を送信させる。表示装置1は、被測定者の体に加わる加速度を検出する加速度センサ11と、加速度センサ11の検出値をもとに被測定者が行った活動強度を演算により求める活動強度検出部12と、心拍検出装置2から送信された検出信号を受信する無線通信部13と、受信した検出信号をカウントすることにより心拍数を求める心拍数検出部14と、活動強度および心拍数の測定結果と所定の基準値との高低を比較することにより被測定者のストレス状態を判定するストレス状態判定部16を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストレス判定システムおよびストレス改善システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、被測定者の体表の振動を含む加速度を検出する圧電センサを備え、この圧電センサで心拍情報と体動情報と呼吸情報とを検出し、これらの検出結果から生体の状態(集中度、覚醒度、疲労度、緊張度、不快度など)を判定する支援システムが提供されていた(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−95307号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の支援システムでは、体表の振動を検出する1つの圧電センサで、心拍情報と体動情報とを測定しており、微少な振動から被測定者の心拍数を測定しているので、座っている時など被測定者が安静にしている状態でしか、被測定者の心拍数を正確に測定することができないという問題があった。また心拍情報の測定結果が不正確な場合、生体の状態を正確に判断できないという問題もあった。
【0004】
本発明は上記問題点に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、被測定者のストレス状態を正確に判定することができるストレス判定システムおよびストレス改善システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、被測定者の生体情報を取得する生体情報取得手段と、被測定者の活動状態に関する活動情報を取得する活動情報取得手段と、生体情報取得手段により取得された生体情報および活動情報取得手段により取得された活動情報に基づいて被測定者のストレス状態を判定する判定手段とを備えたことを特徴とする。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、生体情報取得手段は生体情報として被測定者の心拍数を取得し、判定手段は、活動強度が第1の基準値よりも少なく、且つ、心拍数が第2の基準値以上の場合にストレス状態であると判定することを特徴とする。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1の発明において、生体情報取得手段は生体情報として被測定者の発汗量を取得し、判定手段は、活動強度が第3の基準値よりも少なく、且つ、発汗量が第4の基準値以上の場合にストレス状態であると判定することを特徴とする。
【0008】
請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れか1つの発明において、生体情報取得手段および活動情報取得手段を具備して被測定者が携帯する測定装置と、判定手段を具備して測定装置にネットワークを介して接続されるサーバとを備え、測定装置は、生体情報取得手段の取得した生体情報および活動情報取得手段の取得した活動情報を、ネットワークを介してサーバへ送信するとともに、サーバは、測定装置から送信された生体情報および活動情報をもとに被測定者のストレス状態を判定し、判定結果をネットワークを介して測定装置に送信することを特徴とする。
【0009】
請求項5の発明は、請求項1乃至3の何れか1つに記載のストレス判定システムと、被測定者の五感に刺激を与えることによって被測定者の精神的な緊張状態を改善するリラクゼーション機器と、判定手段にネットワークを介して接続され、判定手段からネットワークを介して取得した被測定者のストレス状態の判定結果をもとに、当該被測定者のストレス度合いに応じてリラクゼーション機器を動作させる制御装置とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、生体情報を取得する生体情報取得手段と、活動情報を取得する活動情報取得手段とを別々に設けているので、信号レベルの異なる生体情報および活動情報の両方を1つの手段で取得する場合のように生体情報または活動情報の測定精度が悪化することがなく、被測定者が活動している場合でも生体情報および活動情報のそれぞれを精度良く求めることができ、その結果、判定手段によるストレス状態の判定精度が向上するという効果がある。
【0011】
請求項2の発明は生体情報として心拍数を取得し、請求項3の発明は生体情報として発汗量を取得しており、請求項1の発明と同様の効果がある。
【0012】
請求項4の発明によれば、判定手段をサーバ側に設けているので、測定装置の構成を簡素化でき、測定装置の製造コストを安価にすることができる。
【0013】
請求項5の発明によれば、制御装置が、ネットワークを介して判定手段から取得した判定結果をもとに、被測定者のストレス度合いに応じてリラクゼーション機器を動作させているので、被測定者のストレス状態を改善させることができる。またリラクゼーション機器は、測定装置にネットワークを介して接続された制御装置によって動作が制御されるので、測定装置の構成を簡素化でき、測定装置の製造コストを安価にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
(実施形態1)
図1は実施形態1のストレス判定システムのブロック図であり、表示装置1と心拍検出装置2とを主要な構成として備えている。
【0016】
心拍検出装置2は表示装置1とは別体に設けられ、ベルトなどを用いて被測定者の胸部付近に取り付けられる。この心拍検出装置2は、図1に示すように、器体の表面に露設されて被測定者の体表に接触する一対の検出電極21と、表示装置1との間で例えば赤外線通信やブルートゥースなどの通信方式により近距離の無線通信を行う無線通信部22と、心臓の拡張および収縮に伴って発生する活動電流が検出電極21を介して入力され、この活動電流からR波(血液を左心室から大動脈に送出する際に発生する波形)の発生を検出すると、無線通信部22から表示装置1へR波の発生タイミングを知らせる検出信号を送信させる心拍検出部23と、電池E1を電源として内部回路に動作電力を供給する電源部24とを備えている。
【0017】
表示装置1は、被測定者の体に加わる加速度を検出する加速度センサ11と、加速度センサ11の検出値をもとに、被測定者が行った活動強度を演算により求める活動強度検出部12と、心拍検出装置2との間で例えば赤外線通信やブルートゥースなどの通信方式により近距離の無線通信を行い、心拍検出装置2から送信された検出信号を受信する無線通信部13と、無線通信部13が受信したR波の検出信号をカウントすることによって心拍数を求める心拍数検出部14と、心拍数および活動強度とストレス状態との関係を示すデータを蓄積したデータベース15と、データベース15に蓄積されたデータをもとに設定された所定の基準値と、活動強度および心拍数の測定結果との高低を比較することによって被測定者のストレス状態(精神的な緊張状態)を判定するストレス状態判定部16(判定手段)と、ストレス状態判定部16による判定結果などを表示する表示部17と、電池E2を電源として内部回路に動作電力を供給する電源部18とを備えている。尚、活動強度検出部12と心拍数検出部14とストレス状態判定部16とは例えばマイクロコンピュータの演算機能により実現される。
【0018】
ここで、加速度センサ11と活動強度検出部12とで構成される活動情報取得手段が活動強度を検出する検出方法について以下に説明する。活動強度検出部12では、例えば16〜32Hzのサンプリング周波数で加速度センサ11から検出データを取り込み、この検出データをもとに例えば運動強度(METs)などの算出処理を行った後、活動量(運動強度など)の算出結果を記憶部(図示せず)に書き込むとともに、算出結果を表示部17にリアルタイムで表示する。
【0019】
ここにおいて、活動強度検出部12は、所定のサンプリング周波数で取り込んだ加速度センサ11の検出データをもとに、一定時間tw(秒)の加速度の変動平均(標準偏差値)を求める演算機能と、この変動平均から、運動強度(METs)を求める演算機能とを備えている。尚、METsとは、身体活動の“強さ”を安静時の何倍に相当するかで表す単位であり、アメリカスポーツ医学界で用いられている。
【0020】
ところで、運度強度を変化させた状態で呼気ガス計測装置により測定した酸素消費量と、加速度分散値との関係式が予め求められて活動強度検出部12に組み込まれており、活動強度検出部12ではこの関係式を用いて、加速度分散値から運動強度を求めている。この演算方法について図3(a)(b)を用いて以下に説明する。
【0021】
図3(a)は加速度センサ11による各軸(x軸、y軸、z軸)の検出データを示し、活動強度検出部12では、一定時間twが経過する毎に、一定時間tw内に取り込んだ加速度の検出データから、各軸の加速度変動分の合成値を算出する。ここで、加速度変動分の合成値の時間平均(標準偏差)をSwとすると、合成値Swは以下の式(1)から求めることができる。
【0022】
【数1】

【0023】
なお、ax、ay、azは、ある期間tw(秒)内でk番目にサンプリングした加速度サンプリング値を示し、bx、by、bzは一定時間tw(秒)における平均値を示している。
【0024】
また、図3(b)は加速度変動値の測定結果と運動強度(METs)の測定結果との関係を示す散布図であり、散布図上にプロットされた点を最小自乗近似して得た直線式は以下の式(2)で示される。
【0025】
Y=a×X+b、相関関数R=0.92 …(2)
但し、Yは加速度変動値、Xは運動強度(METs)である。
【0026】
したがって、活動強度検出部12では、上述の式(1)を用いて加速度変動分の合成値Swを求めた後、上述の式(2)を変形した得た以下の式(3)を用いて、ある期間twの運動強度wi(METs)を求め、運動強度wiの検出結果をストレス状態判定部16に出力する。
【0027】
wi=α×Sw+β …(3)
ここで、α、βは、運度強度を変化させた状態で呼気ガス検出装置により測定した酸素消費量と、加速度分散値との間に得られた関係式における係数を示す。なお、加速度変動値を求める期間twとしては4秒から15秒が適当な値であり、本実施形態ではtw=12秒としてある。
【0028】
また心拍数検出部14では、所定のサンプリング周波数で、無線通信部13を介して心拍検出装置2から心拍(R波)の検出信号が取り込まれ、検出信号の入力間隔を計時したり、所定時間当たりの検出信号の数を計数することによって、被測定者の心拍数を検出し、検出結果をストレス状態判定部16に出力する。ここにおいて、本実施形態では生体情報として心拍数を検出しており、心拍検出装置2および心拍数検出部14などから生体情報取得手段が構成される。また加速度センサ11と活動強度検出部12とで活動情報取得手段が構成される。
【0029】
ストレス状態判定部16には、活動強度検出部12から活動強度の検出結果が入力されるとともに、心拍数検出部14から心拍数の検出結果が入力されており、活動強度および心拍数の検出結果と所定の基準値との高低を比較することで、被測定者のストレス状態を判定し、判定結果を表示部17に表示させる。なおデータベース15には、1乃至複数の被測定者について心拍数および活動強度を測定した過去の測定データが、測定時のストレス状態を示すデータとともに蓄積されており、ストレス状態判定部16では、データベース15に蓄積されたデータをもとにストレス状態か否かを判定するための基準値を設定している。
【0030】
ここで、ストレス状態判定部16では、図2に示すように心拍数の基準値としてN1,N2(N1<N2)を、活動強度の基準値としてM1,M2(M1<M2)をそれぞれ設定しており、心拍数の検出値が基準値N1未満で活動強度の検出値が基準値M1未満であれば(図2の領域A)、活動量および心拍数がそれぞれ基準値M1,N1よりも少ないので、被測定者が安静状態(リラックスできている状態)にあると判断する。またストレス状態判定部16は、心拍数の検出値が基準値N1以上且つ基準値N2未満で、活動強度の検出値が基準値M1以上且つ基準値M2未満であれば(図2の領域D)、活動量および心拍数がそれぞれ基準値M1,N1以上であるので、被測定者が活動状態にあると判断する。またストレス状態判定部16は、心拍数の検出値が第2の基準値N1以上で、活動強度の検出値が第1の基準値M1未満であれば(図2の領域B)、活動強度が小さいにも関わらず心拍数が多いことから、被測定者がストレス状態にあると判断する。なお心拍数の検出値が基準値N1未満で、活動強度の検出値が基準値M1以上且つ基準値M2未満となる状態は(図2の領域C)、心拍数が少ないにも関わらず、活動強度が大きくなっており、このような状態は一般的にあり得ないので、ストレス状態判定部16では、心拍数および活動強度の検出値が領域C内に入る場合は判定不能としている。
【0031】
そして、ストレス状態判定部16が上述の判定を行った結果、被測定者がストレス状態にあると判定すると、予め登録されたリラクゼーション機器4に対して無線通信部13から制御信号を送信し、リラクゼーション機器4を動作させ、被測定者の精神的な緊張状態の改善を図っている。ここにおいてリラクゼーション機器4とは、人の五感に刺激を与えることによって、精神的な緊張状態の改善を図る装置であり、例えば癒し効果のある照明を行う照明器具や、癒し効果のある音楽を流す音響機器や、例えばアロマオイルを加熱することによって癒し効果のある香りを発生させる芳香機器などがある。
【0032】
以上説明したように、本実施形態では表示装置1のストレス状態判定部16が、活動強度検出部12により検出された活動強度と、心拍数検出部14により検出された心拍数とに基づいて、被測定者のストレス状態を判定しており、活動情報(活動強度)を取得するための活動情報取得手段(加速度センサ11および活動強度検出部12からなる)と、生体情報(心拍数)を取得するための生体情報取得手段(心拍検出装置2および心拍数検出部14などからなる)とを別々に設けているので、信号レベルの異なる生体情報および活動情報を1つのセンサで測定する場合のように、被測定者が活動していても、生体情報および活動情報の測定精度が悪化することがなく、生体情報および活動情報のそれぞれを精度良く求めることができ、その結果、ストレス状態判定部16によるストレス状態の判定精度を向上させることができる。尚、本実施形態では表示装置1と心拍検出装置2とを別体に形成した例について説明を行ったが、表示装置1に心拍検出装置2の機能を付加して、表示装置1と心拍検出装置2とを一体化しても良い。
【0033】
(実施形態2)
本発明の実施形態2を図4および図5に基づいて説明する。実施形態1のストレス判定システムでは、生体情報として脈拍数を検出しているのに対して、本実施形態では生体情報として被測定者の手のひらの発汗量を検出し、活動強度の検出値と発汗量の検出値とに基づいてストレス状態の判定を行っている。
【0034】
図4は実施形態2のストレス判定システムのブロック図であり、表示装置1と発汗量センサ3とを主要な構成として備えている。尚、実施形態1と共通する構成要素には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0035】
発汗量センサ3は表示装置1とは別体に設けられ、ベルトなどを用いて例えば被測定者の掌に取り付けられる。この発汗量センサ3は、図4に示すように、器体の表面に露設されて被測定者の体表に接触する一対の検出電極31a,31bと、表示装置1との間で例えば赤外線通信やブルートゥースなどの通信方式により近距離の無線通信を行う無線通信部32と、検出電極31a,31b間に微少な電流を流した際の生体インピーダンスを検出し、検出結果を無線通信部32から表示装置1へ送信させる生体インピーダンス検出部33と、電池E3を電源として内部回路に動作電力を供給する電源部34とを備えている。
【0036】
一方、表示装置1は、被測定者の体に加わる加速度を検出する加速度センサ11と、加速度センサ11の検出値をもとに、被測定者が行った活動強度を演算により求める活動強度検出部12と、発汗量センサ3との間で例えば赤外線通信やブルートゥースなどの通信方式により近距離の無線通信を行い、発汗量センサ3から送信された検出信号を受信する無線通信部13と、無線通信部13が受信した生体インピーダンスの検出結果から発汗量を求める発汗量検出部19と、発汗量および活動強度とストレス状態との関係を示すデータを蓄積したデータベース15と、データベース15に蓄積されたデータをもとに設定された所定の基準値と、活動強度および発汗量の測定結果との高低を比較することによって被測定者のストレス状態を判定するストレス状態判定部16と、ストレス状態判定部16による判定結果などを表示する表示部17と、電池E2を電源として内部回路に動作電力を供給する電源部18とを備えている。
【0037】
表示装置1の活動強度検出部12では、実施形態1で説明したように、所定のサンプリング周波数で加速度センサ11から取り込んだ検出データをもとに運動強度の演算を行い、演算結果をストレス状態判定部16に出力するとともに、演算結果をリアルタイムで表示部17に表示させる。
【0038】
また表示装置1の発汗量検出部19では、所定のサンプリング周波数で無線通信部13を介して発汗量センサ3から生体インピーダンスの検出結果が取り込まれ、この検出結果をもとに掌の発汗量を検出して、検出結果をストレス状態判定部16に出力する。
【0039】
ストレス状態判定部16には、活動強度検出部12から活動強度の検出結果が入力されるとともに、発汗量検出部19から発汗量の検出結果が入力されており、活動強度および発汗量の検出結果と所定の基準値との高低を比較することで、被測定者のストレス状態を判定し、判定結果を表示部17に表示させる。なおデータベース15には、1乃至複数の被測定者について発汗量および活動強度を測定した過去の測定データが、測定時のストレス状態を示すデータとともに蓄積されており、ストレス状態判定部16では、データベース15に蓄積されたデータをもとにストレス状態か否かを判定するための基準値を設定している。
【0040】
ここで、ストレス状態判定部16では、図5に示すように発汗量の基準値としてS1,S2(S1<S2)を、活動強度の基準値としてM1,M2(M1<M2)をそれぞれ設定しており、発汗量の検出値が基準値S1未満で活動強度の検出値が基準値M1未満であれば(図5の領域A)、活動量および発汗量がそれぞれ基準値M1,S1よりも少ないので、被測定者が安静状態(リラックスできている状態)にある判断する。またストレス状態判定部16は、発汗量の検出値が基準値S1以上且つ基準値S2未満で、活動強度の検出値が基準値M1以上且つ基準値M2未満であれば(図5の領域D)、活動量および発汗量がそれぞれ基準値M1,S1以上となっているので、被測定者が活動状態にあると判断する。またストレス状態判定部16は、発汗量の検出値が第4の基準値S1以上で、活動強度の検出値が第3の基準値M1未満であれば(図5の領域B)、活動強度が小さいにも関わらず発汗量が多いことから、被測定者がストレス状態にあると判断する。なお発汗量の検出値が基準値S1未満で、活動強度の検出値が基準値M1以上且つ基準値M2未満となる状態は(図5の領域C)、発汗量が少ないにも関わらず、活動強度が大きくなっており、このような状態は一般的にあり得ないので、ストレス状態判定部16は、発汗量および活動強度の検出値が領域C内に入る場合は判定不能としている。
【0041】
そして、ストレス状態判定部16が上述の判定を行った結果、被測定者がストレス状態にあると判定すると、予め登録されたリラクゼーション機器4に対して無線通信部13から制御信号を送信し、リラクゼーション機器4を動作させることで、被測定者の精神的な緊張状態の改善を図っている。
【0042】
以上説明したように、本実施形態では表示装置1のストレス状態判定部16が、活動強度検出部12により検出された活動強度と、発汗量検出部19により検出された発汗量とに基づいて、被測定者のストレス状態を判定しており、活動情報(活動強度)を取得するための活動情報取得手段(加速度センサ11および活動強度検出部12からなる)と、生体情報(発汗量)を取得するための生体情報取得手段(発汗量センサ3および発汗量検出部19などからなる)とを別々に設けているので、信号レベルの異なる生体情報および活動情報を1つのセンサで測定する場合のように、生体情報および活動情報の測定精度が悪化することはなく、生体情報および活動情報のそれぞれを精度良く求めることができ、その結果、ストレス状態判定部16によるストレス状態の判定精度を向上させることができる。尚、本実施形態では表示装置1と発汗量センサ3とを別体に形成した例について説明を行ったが、表示装置1に発汗量センサ3の機能を付加して、表示装置1と発汗量センサ3とを一体化しても良い。
【0043】
(実施形態3)
本発明の実施形態3を図6に基づいて説明する。上述の実施形態1では表示装置1および心拍検出装置2からなる測定装置側で、ストレス状態の判定処理を行っているのに対して、本実施形態では、表示装置1にインターネットのようなネットワークNTを介して接続されたサーバ5側でストレス状態の判定を行っている。尚、実施形態1と共通する構成要素には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0044】
本実施形態のストレス判定システムは、表示装置1および心拍検出装置2からなる測定装置Aと、測定装置A(表示装置1)にインターネットのようなネットワークNTを介して接続されるサーバ5とを主要な構成として備える。なお心拍検出装置2は、実施形態1で説明したものと同様の構成を有しているので、その説明は省略する。
【0045】
表示装置1は、例えばマイクロコンピュータからなり各回路要素の全体的な制御を行う演算処理部10と、被測定者の体に加わる加速度を検出する加速度センサ11と、加速度センサ11の検出値をもとに、被測定者が行った活動強度を演算により求める活動強度検出部12と、心拍検出装置2との間で例えば赤外線通信やブルートゥースなどの通信方式により近距離の無線通信を行い、心拍検出装置2から送信された検出信号を受信する無線通信部13と、無線通信部13が受信したR波の検出信号をカウントすることによって心拍数を求める心拍数検出部14と、ストレス状態の判定結果などを表示する表示部17と、従来周知の通信手段により構成されネットワークNTを介してサーバ5との間で通信を行うネットワーク通信部20と、電池E2を電源として内部回路に動作電力を供給する電源部18とを備えている。尚、活動強度検出部12および心拍数検出部14は演算処理部10を構成するマイクロコンピュータの演算機能により実現されている。
【0046】
一方、サーバ5は、従来周知の通信手段により構成されネットワークNTを介して表示装置1との間で通信を行う通信部51と、心拍数および活動強度とストレス状態との関係を示すデータを蓄積したデータベース52と、データベース52に蓄積されたデータをもとに設定された所定の基準値と、表示装置1から送信された活動強度および心拍数の測定結果との高低を比較することによって被測定者のストレス状態を判定し、判定結果を通信部51から送信元の表示装置1へ返送させるストレス状態判定部53とを備えている。
【0047】
表示装置1の活動強度検出部12では、実施形態1で説明したように、所定のサンプリング周波数で加速度センサ11から取り込んだ検出データをもとに運動強度の演算を行い、演算結果を演算処理部10に出力する。
【0048】
また心拍数検出部14では、所定のサンプリング周波数で、無線通信部13を介して心拍検出装置2から心拍(R波)の検出信号が取り込まれ、検出信号の入力間隔を計時したり、所定時間当たりの検出信号の数を計数することによって、被測定者の心拍数を検出し、検出結果を演算処理部10に出力する。
【0049】
演算処理部10では、所定のサンプリング周波数で、活動強度検出部12から活動強度の検出結果が入力されるとともに、心拍数検出部14から心拍数の検出結果が入力されると、活動強度および心拍数の検出結果をネットワーク通信部20からサーバ5へ送信させるとともに、活動強度および心拍数の検出結果を表示部17にリアルタイムで表示させる。
【0050】
サーバ5では、表示装置1から送信された活動強度および心拍数の検出結果を通信部51が受信すると、ストレス状態判定部53が、活動強度および心拍数の検出結果と所定の基準値との高低を比較することによって、被測定者のストレス状態を判定しており、判定結果を通信部51から送信元の表示装置1へ返送させる。なおストレス状態判定部53では、実施形態1で説明したストレス状態判定部16と同様の方法でストレス状態の有無を判定しているので、その判定方法については説明を省略する。
【0051】
そして、表示装置1のネットワーク通信部20がサーバ5から返送されたストレス状態の判定結果を受信すると、演算処理部10が表示部17の表示を制御して判定結果を表示させるとともに、ストレス状態と判定された場合は無線通信部13からリラクゼーション機器4へ制御信号を送信させ、リラクゼーション機器4を動作させることでストレス状態の改善を図っている。
【0052】
以上説明したように、本実施形態ではサーバ5が表示装置1から送信された活動強度および心拍数の検出結果に基づいてストレス状態の判定を行っており、加速度センサ11の検出結果をもとに活動強度(活動情報)を検出する活動強度検出部12と、心拍検出装置2の検出結果をもとに心拍数(生体情報)を検出する心拍数検出部14とを別々に設けているので、信号レベルの異なる生体情報および活動情報を1つのセンサで測定する場合のように、生体情報および活動情報の測定精度が悪化することがなく、生体情報および活動情報のそれぞれを精度良く求めることができ、その結果、サーバ5によるストレス状態の判定精度を向上させることができる。またストレス状態を判定する判定手段(ストレス状態判定部53)をサーバ5側に設けているので、表示装置1および心拍検出装置2からなる測定装置Aの構成を簡素化でき、測定装置Aの製造コストを安価にできる。
【0053】
なお本実施形態では、実施形態1で説明したストレス判定システムにおいて表示装置1でストレス状態を判定する代わりに、表示装置1からネットワークNTを介してサーバ5へ活動強度および心拍数の検出結果を送信させるとともに、サーバ5側で活動強度および心拍数の検出結果をもとにストレス状態の有無を判定した結果を表示装置1へ返送させているが、実施形態2で説明したストレス判定システムにおいて、表示装置1でストレス状態を判定する代わりに、表示装置1からネットワークNTを介してサーバ5へ活動強度および発汗量の検出結果を送信させるとともに、サーバ5側で活動強度および発汗量の検出結果をもとにストレス状態の有無を判定した結果を表示装置1へ返送させるようにしても良い。
【0054】
(実施形態4)
本発明の実施形態4を図7に基づいて説明する。上述の実施形態1〜3では、表示装置1が、ストレス状態の判定結果に基づいてリラクゼーション機器4の動作を直接制御し、被測定者のストレス状態を緩和しているのに対して、本実施形態では、表示装置1に宅内LANなどのネットワークNTを介して接続される制御装置6を備え、制御装置6が、ネットワークNTを介して表示装置1から取得した被測定者のストレス状態の判定結果をもとに、当該被測定者のストレス度合いに応じてリラクゼーション機器4を動作させることで、被測定者のストレス状態の改善を図っている。ここにおいて、表示装置1および心拍検出装置2からなるストレス判定システムと、ネットワークNTと、制御装置6と、リラクゼーション機器4とで本発明に係るストレス改善システムが構成される。尚、制御装置6およびリラクゼーション機器4以外のストレス判定システムの構成は、実施形態1と同様であるので、共通する構成要素には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0055】
表示装置1は、実施形態1で説明した構成に加えて、ネットワークNTを介して制御装置6との間で通信を行うためのネットワーク通信部20を備えている。
【0056】
リラクゼーション機器4は、人の五感に刺激を与えることによって、精神的な緊張状態の改善を図る装置であり、例えば癒し効果のある照明を行う照明器具や、癒し効果のある音楽を流す音響機器や、例えばアロマオイルを加熱することによって癒し効果のある香りを発生させる芳香機器などがある。
【0057】
一方、制御装置6は、ネットワークNTを介して表示装置1との間で通信を行う通信部61と、通信部61がネットワークNTを介して表示装置1から取得した被測定者のストレス状態の判定結果をもとに、被測定者のストレス度合いに応じてリラクゼーション機器4を動作させる制御部62とを備えている。
【0058】
次に本システムによって被測定者のストレス状態を改善する処理について説明を行う。表示装置1では、実施形態1と同様の方法で被測定者のストレス状態を判定しており、判定結果をネットワーク通信部20からネットワークNTを介して制御装置6に送信させる。そして制御装置6では、通信部61が表示装置1から送信されたストレス状態の判定結果を受信すると、この判定結果に基づいて、制御部62が被測定者のストレス度合いに応じてリラクゼーション機器4を動作させているので、被測定者のストレス状態を改善させることができる。
【0059】
なお本実施形態では、実施形態1で説明したストレス判定システムに制御装置6およびリラクゼーション機器4を付加してストレス改善システムを構成しているが、実施形態2又は3で説明したストレス判定システムに上述の制御装置6およびリラクゼーション機器4を付加してストレス改善システムを構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】実施形態1のストレス判定システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】同上の判定方法を説明する説明図である。
【図3】(a)(b)は同上による運動強度の演算方法を説明する説明図である。
【図4】実施形態2のストレス判定システムの概略構成を示すブロック図である。
【図5】同上の判定方法を説明する説明図である。
【図6】実施形態3のストレス判定システムの概略構成を示すブロック図である。
【図7】実施形態4のストレス改善システムの概略構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0061】
1 表示装置
2 心拍検出装置(生体情報取得手段)
11 加速度センサ(活動情報取得手段)
12 活動強度検出部(活動情報取得手段)
13 無線通信部
14 心拍数検出部(生体情報取得手段)
16 ストレス状態判定部(判定手段)
21 検出電極
22 無線通信部
23 心拍検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定者の生体情報を取得する生体情報取得手段と、被測定者の活動状態に関する活動情報を取得する活動情報取得手段と、生体情報取得手段により取得された生体情報および活動情報取得手段により取得された活動情報に基づいて被測定者のストレス状態を判定する判定手段とを備えたことを特徴とするストレス判定システム。
【請求項2】
前記生体情報取得手段は生体情報として被測定者の心拍数を取得し、前記判定手段は、活動強度が第1の基準値よりも少なく、且つ、心拍数が第2の基準値以上の場合にストレス状態であると判定することを特徴とする請求項1記載のストレス判定システム。
【請求項3】
前記生体情報取得手段は生体情報として被測定者の発汗量を取得し、前記判定手段は、活動強度が第3の基準値よりも少なく、且つ、発汗量が第4の基準値以上の場合にストレス状態であると判定することを特徴とする請求項1記載のストレス判定システム。
【請求項4】
前記生体情報取得手段および前記活動情報取得手段を具備して被測定者が携帯する測定装置と、前記判定手段を具備して測定装置にネットワークを介して接続されるサーバとを備え、測定装置は、生体情報取得手段の取得した生体情報および活動情報取得手段の取得した活動情報を、ネットワークを介してサーバへ送信するとともに、サーバは、測定装置から送信された生体情報および活動情報をもとに被測定者のストレス状態を判定し、判定結果をネットワークを介して測定装置に送信することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1つに記載のストレス判定システム。
【請求項5】
請求項1乃至3の何れか1つに記載のストレス判定システムと、被測定者の五感に刺激を与えることによって被測定者の精神的な緊張状態を改善するリラクゼーション機器と、前記判定手段にネットワークを介して接続され、前記判定手段からネットワークを介して取得した被測定者のストレス状態の判定結果をもとに、当該被測定者のストレス度合いに応じてリラクゼーション機器を動作させる制御装置とを備えたことを特徴とするストレス改善システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−148372(P2009−148372A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−327762(P2007−327762)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】