説明

スパウト付き包装容器充填食品の製造法

【課題】現在産業上最も広く使用されている、容器本体はガスバリア性であるが、スパウト部分はガスバリア性が余り高くないスパウト付き包装容器に充填した食品において、長期間保管しても、酸素による品質の劣化の少ない食品を提供する。
【解決手段】スパウト付き包装容器充填食品の加熱殺菌処理において、スパウト付き包装容器に食品を充填した後、該包装容器のスパウト部分が該充填飲食品よりも高い位置になるように載置して、加熱殺菌するスパウト付き包装容器充填食品の製造法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパウト付き包装容器に食品を充填し、加熱殺菌処理するスパウト付き包装容器充填食品の製造法に関するものであり、より詳細にはバナナピューレやアップルソースなどの果実処理物を充填したスパウト付き包装容器充填食品の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
吸口付き(スパウト付き)包装容器(以下、「スパウト付きパウチ」ともいう)は、従来の包装容器には無い軽量、使い易さ、リクローズ性、環境対応を目標に開発されたもので、1985年に初めて上市された。対象食品は、液体食品、ゼリー食品、サプリメント、トッピングソース等、液体から粘稠性のある食品、固液食品までの広範な分野にわたっている。ゼリー飲料でその便利性が認識され、アイスクリーム、ヨーグルト、味噌、調味料等に、非食品ではシャンプーやリンスなどに用途が拡大している。そして、スパウト付きパウチは、(1)容器自体が軽量でかつ耐久性が高い。(2)リキャップができ、リクローザブルである。(3)本体が軟包材でスクイーズ性があり、本体が潰れて中身を容易に飲める。(4)中身を出すとパウチを折りたたむことができ、減容化ができる。(5)本体が軟包材であり、凍らせても内容物の体積変化に追従できる等の利点がある(非特許文献1参照)。このようなスパウト付き包装容器に関しては、以下に示す技術が開示されている。
【0003】
高温での加熱殺菌処理が可能で、加熱殺菌処理後も高い酸素バリア性を有し、充填されている液状飲料品、食料品、医薬品等の充填物の酸素による変質を防ぐために、スパウト付きパウチのガスバリア層がカルボキシル基及びカルボン酸無水物基から選ばれる少なくとも1つの官能基を含有する重合体を含む組成物からなり、前記少なくとも1つの官能基に含まれる−COO−基の少なくとも一部が2価以上の金属イオンで中和されているスパウト付きパウチが開示されている(特許文献1参照)。
【0004】
又、酸素吸収性に優れ、密封後の容器内に残存する酸素を吸収し、内容物の保存性を良好にすることができる、容器本体とキャップ、スパウト及びスパウト導管部に、1000μm以下の粒度分を20%以上含む酸素吸収剤をベース樹脂に対して20%以下の割合で分散配合してなる酸素吸収剤含有樹脂層を有する、アクティブ・バリアー性のある酸素吸収性スパウト付きパウチ容器が開示されている(特許文献2参照)。
【非特許文献1】横山理雄、ほか3名、“食品用包装容器”、[online]、2007年3月14日、特許庁ホームページ、[2007年12月5日検索]、インターネット<URL:http://www.jpo.go.jp/shiryou/index.htm>
【特許文献1】特開2007−8149号公報
【特許文献2】特開2007−15708号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のように従来技術には、容器本体やスパウト等の部材全部が、酸素吸着剤を含む樹脂層からなるスパウト付き包装容器によって、酸素による充填食品への影響を抑制することが開示されている。しかし、現在産業上使用されているほとんどのスパウト付き包装容器は、容器本体には、ナイロン(NY)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリエステル(PE)、アルミ箔(Al)、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)及び直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等のフィルムを積層したバスバリア性の高い部材が用いられているが、スパウト部分には、ポリエチレン、ポリプロピレン又は高密度ポリエチレン(HDPE)等のガスバリア性が余り高くない部材が用いられている。よって、スパウト付き包装容器充填食品において、スパウトの注出部の内側部分と接する食品は、経時的な酸素による品質の劣化を免れ得ない(図1)。よって、本発明は、現在産業上最も広く使用されている、容器本体はガスバリア性であるが、スパウト部分はガスバリア性が余り高くないスパウト付き包装容器に充填した食品において、長期間保管しても、酸素による品質の劣化の少ない食品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意検討した結果、スパウト付き包装容器に充填した食品及び容器を加熱殺菌する際に、スパウトの注出口部分の内側に、充填した食品が流入しないように、スパウト部分を該充填食品より、高い位置に保って加熱殺菌し冷却すると(図2)、該充填食品が固化して、その後の包装工程や流通過程においても、スパウトの注出口部分の内側空間に、該充填食品が流れ込むことがない。従って、該充填食品は、ガスバリア性が高くないスパウトの注出口部分内側に流入することがなく、スパウトを透過した酸素との接触面積も小さくなり、長期間、該充填食品の酸素による品質劣化を抑制できることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
よって、本発明は、スパウト付き包装容器充填食品の加熱殺菌処理において、スパウト付き包装容器に食品を充填した後、該包装容器のスパウト部分が該充填飲食品よりも高い位置になるように載置して加熱殺菌する、スパウト付き包装容器充填食品の製造法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によって、スパウト付き包装容器のスパウト部分を、ガスバリア性の高いものに設計変更をすることなく、充填した内容物の品質の劣化を最小限に抑えた、シェルフ・ライフの長いスパウト付き包装容器充填食品を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、スパウト付き包装容器に充填した食品の製造法に係るものであり、本発明のスパウト付き包装容器の容器本体には、サイドガゼット袋やスタンディング袋、平袋等を用いることが挙げられ、このサイドガゼット袋はスタンディング性を持たせるために、パウチ下部を大きく斜めにカットしたり、底部の折れ目にミシン目や押し型を付けるなどして、パウチの底部を折れやすくしても良い。
【0010】
又、本発明のスパウト付き包装容器の容器本体には、加熱殺菌用耐熱包装容器を用いることが挙げられ、この容器本体の素材としては、耐熱性プラスチックフィルムのポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、延伸ナイロン(ONY)、無延伸ナイロン(CNY)、2軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)、無延伸ポリプロピレン(CPP)、ポリカーボネート(PC)、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)等が挙げられる。
【0011】
又、本発明のスパウト付き包装容器の容器本体には、ガス(酸素)を遮断するために、ナイロンMXD6(メタキシレンアミンとアジピン酸の縮重合による結晶性ポリアミド)、エチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)、シリカ(SiOx)蒸着(セラミック蒸着、酸化ケイ素蒸着、ガラス蒸着)PET、アルミナ蒸着(酸化アルミ蒸着)PET、PVDC塗布又は単体等のハイバリヤーフィルムを用いた積層包装袋等も挙げられる。
【0012】
又、本発明のスパウト付き包装容器のスパウト導管部は、ストロー状のもの、導管部が短いもの、導管部がないもの等が挙げられ、スパウトを構成する材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン又は高密度ポリエチレン等が挙げられる。
【0013】
又、本発明のスパウト付き包装容器に充填する食品としては、茶飲料や清涼飲料、果汁飲料、野菜飲料等の液体食品、ゼリー食品、フルーツソース、野菜ピューレやヨーグルト、アイスクリーム、調味料及び味噌等、液体から粘稠性のある食品、固液食品及び液体で充填し経時的に固化する食品等が挙げられるが、酸素による品質の影響を受け易い食品であるフルーツソースや野菜ピューレ、及びそれらを原料とする食品等を充填食品として用いた際に、本発明の品質劣化抑制の効果が最も顕著となる。
【実施例1】
【0014】
(スパウト付きパウチ充填アップルソースの製造)
(1)アップルソースの調製
りんご果実(品種:ゴールデン・デリシャス)を水で洗浄して、剥皮し除芯して、ダイサーによって13×13×25mmのダイス状に切断した。そして、アップルソース・クッカーによって、当該ダイスカットしたりんごの中心温度が、96℃以上になるように加熱して、スクリーンサイズ0.16cmのパルパーで裏ごしした後、チューブ式熱交換機によって、その品温を50℃以下に冷却して、アップルソースを調製した。
【0015】
(2)スパウト付きパウチ充填アップルソースの製造
上記アップルソースをチューブ式熱交換機によって95℃に加熱殺菌して、スパウチ(高さ135mm×幅80mm×マチ幅27mm、大日本印刷(株)製)に85℃の温度で150g充填し、密封した。尚、当該アップルソースを充填する際には、スパウト部に充填液が入らないようにヘッドペースを調整した。そして、該アップルソースを充填したスパウチを地面に対して17°の傾斜角度を有する台座にスパウト部が上になるように載置して、スチーム式殺菌機によって、該アップルソース充填液が92℃で10分間加熱される条件で後殺菌した後、15℃の水を10分間シャワーして、その品温を40℃以下にして、スパウト付きパウチ充填アップルソース製品を製造した(本発明1)。
【0016】
又、地面に対して水平に載置して(傾斜角度0°)、スチーム式殺菌機によって後殺菌する以外は、上記の製造法と全く同様にして、スパウト付きパウチ充填アップルソースを製造した(比較例1)。
【実施例2】
【0017】
(スパウト付きパウチ充填バナナピューレの製造)
(1)バナナピューレの調製
バナナ(品種:キャベンディッシュ)を水で洗浄して剥皮し、厚さ10mmに輪切りにして、スチームブランチャーを用い、該バナナ果肉の中心温度が85℃に達するまで水蒸気加熱した。当該加熱処理したバナナの重量に対して0.15(w/w)%のL−アスコルビン酸を添加してミキサーで破砕し、バナナピューレを調製した。
【0018】
(2)スパウト付きパウチ充填バナナピューレの製造
上記バナナピューレをチューブ熱交換機によって100℃に加熱殺菌して、スパウチ(高さ135mm×幅80mm×マチ幅27mm、大日本印刷(株)製)に85℃の温度で150g充填し、密封した。尚、当該バナナピューレを充填する際には、スパウト部に充填液が入らないようにヘッドペースを調整した。そして、該バナナピューレを充填したスパウチを17°の傾斜角度を有する台座にスパウト部が上になるように載置して、スチーム式殺菌機によって、該バナナピューレ充填液が92℃で10分間加熱される条件で後殺菌した後、15℃の水を10分間シャワーして、その品温を40℃以下にして、スパウト付きパウチ充填バナナピューレ製品を製造した(本発明2)。
【0019】
又、地面に対して水平に載置して(傾斜角度0°)、スチーム式殺菌機によって後殺菌する以外は、上記の製造法と全く同様にして、スパウト付きパウチ充填バナナピューレを製造した(比較例2)。
【実施例3】
【0020】
(保存試験)
製造した上記本発明1、本発明2、比較例1及び比較例2を35℃の恒温室にスタンディング状態で3ヶ月間保管して、それぞれの充填液の品質を評価した。その結果、比較例1と比較例2の充填液であるアップルソースとバナナピューレは、後殺菌の加熱工程でスパウトの注出口部分に流入して、保存期間中も残留したため、残留物がスパウト部分を透過した酸素によって変色しており、果実加工品として商品価値のないものであった。しかし、本発明1と本発明2の充填液であるアップルソースとバナナピューレは、後殺菌の加熱工程において、スパウトの注出口部分に流入せず、スパウト部分を透過した酸素との接触面積が少なかったため、変色した部分もわずかであり、果実加工品として、十分に商品価値のあるものであった。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】従来のスパウト付き包装容器充填食品の製造、包装及び流通工程における、スパウト付き包装容器内での充填食品と気体(酸素)の移動の透視略図である。
【図2】本発明のスパウト付き包装容器充填食品の製造、包装及び流通工程における、スパウト付き包装容器内での充填食品と気体(酸素)の移動の透視略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパウト付き包装容器充填食品の加熱殺菌処理において、スパウト付き包装容器に食品を充填した後、該包装容器のスパウト部分が該充填食品よりも高い位置になるように載置して、加熱殺菌することを特徴とするスパウト付き包装容器充填食品の製造法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−254251(P2009−254251A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−105207(P2008−105207)
【出願日】平成20年4月15日(2008.4.15)
【出願人】(000104559)日本デルモンテ株式会社 (44)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】