説明

スパッタリングターゲットの製造方法

【課題】La及びCuを含有するオキシカルコゲナイドを主成分とするP型透明導電材料用ターゲットの密度を向上させ、ターゲットを大型化しかつ低コストで製造できるようにするとともに、該ターゲット中の未反応物の存在を無くし、ターゲットの割れの発生を抑制することにより製品歩留りを上げ、さらに成膜の品質を向上させる。
【解決手段】構成元素の単体、酸化物又はカルコゲン化物から選択した1種以上の粉末を原料とし、ガス成分を除き、焼結用原料粉末の平均粒径が50μm以下、比表面積が0.2m/g以上であり、焼結工程中に850°C以下の温度で1時間以上保持する反応工程を含み、この反応工程後に反応工程温度以上の温度である500〜1000°Cの温度で焼結することにより、相対密度90%以上であるLa及びCuを含有するオキシカルコゲナイドを主成分とするスパッタリングターゲットの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、La及びCuを含有するオキシカルコゲナイドを主成分とするスパッタリングターゲット、特にLaCuOS又はLaCuOSeの少なくとも一種以上を主成分とするスパッタリングターゲット及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、La及びCuを含有するオキシカルコゲナイドを主成分とする材料、特にLaCuOS又はLaCuOSeの少なくとも一種以上を主成分とする材料は、P型透明導電材料として有望視されている。
LaCuOS又はLaCuOSeのP型透明導電材料は、400nm近辺の短波長で青紫色に発光する。すなわち青紫色の発光素子として注目を集めている(例えば、「Room-Temperature excitons in wide-gap layered-oxysulfide semicondactor: LaCuOS」 APPLIED PHYSICS LETTERS VOLUME 78, NUMBER 16, 16 APRIL 2001 及び「Transparent P-Type Semiconductor : LaCuOS layered oxysulfide」 APPLIED PHYSICS LETTERS VOLUME 77, NUMBER 17, 23 OCTOBER 2000 参照。
【0003】
このようなP型透明導電材料の薄膜は、通常レーザーアブレーション法又はスパッタリング法によって形成されている。生産性を考慮するとスパッタリング法が望まれる。このスパッタリング法は正の電極と負の電極とからなるターゲットとを対向させ、不活性ガス雰囲気下でこれらの基板とターゲットの間に高電圧を印加して電場を発生させるものであり、この時電離した電子と不活性ガスが衝突してプラズマが形成され、このプラズマ中の陽イオンがターゲット(負の電極)表面に衝突してターゲット構成原子を叩きだし、この飛び出した原子が対向する基板表面に付着して膜が形成されるという原理を用いたものである。
【0004】
これらの材料は、直流(DC)スパッタリング装置、高周波スパッタリング(RF)装置、マグネトロンスパッタリング装置を使用して成膜される。
La及びCuを含有するオキシカルコゲナイドを主成分とする材料のスパッタリングターゲットを作成する場合、通常これらの原材料の粉末を焼結して製造されるが、従来の焼結方法では相対密度75%程度であり、十分に密度が上がらず、焼結途中で割れてしまうという問題があった。
【0005】
また従来は、例えば均一組成のLaCuOS又はLaCuOSeターゲットを製造しようとして焼結しても、これらの成分以外に、原料成分の一部である未反応物(例えばLa)が残存し、成分の均一性が保持できないという問題があった。さらにまた、密度が低いことに起因して大気保管中に水分を吸収し、水との反応によりターゲット表面が劣化し、場合によってはターゲットの一部が剥がれ落ちることもあった。
【0006】
このようなターゲットの脆弱さのために、大型のターゲットの製造が困難であり、成膜コストが大になるという問題があった。また、前記のような未反応物が残存することから一旦密閉容器中での仮焼を行い、この仮焼後に粉砕し、粉砕した後の原料を再び焼結するという工程をとっていた。しかし、これもコスト増となる問題を有していた。
また、一般にターゲットの結晶粒を微細化し、且つ高密度化することで、ターゲットのスパッタ面を均一かつ平滑にすることが可能であり、パーティクルやノジュールを低減させ、さらにターゲットライフも長くすることができるが、この点も十分でないと言う問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、La及びCuを含有するオキシカルコゲナイドを主成分とするP型透明導電材料用ターゲットの密度を向上させ、ターゲットを大型化しかつ低コストで製造できるようにするとともに、該ターゲット中の未反応物の存在を無くし、ターゲットの割れの発生を抑制することにより製品歩留りを上げ、さらにこのようなターゲットを用いてスパッタリングすることによって形成される成膜の品質を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明者らは鋭意研究を行った結果、焼結条件を工夫することによって、ターゲットの未反応物質を無くし、密度を著しく向上させることができるとの知見を得た。
本発明はこの知見に基づき、
1.La及びCuを含有するオキシカルコゲナイドを主成分とし、相対密度80%以上を有することを特徴とするスパッタリングターゲット
2.相対密度90%以上を有することを特徴とする上記1記載のスパッタリングターゲット
3.LaCuOS又はLaCuOSeの少なくとも一種以上を主成分とすることを特徴とする上記1又は2記載のスパッタリングターゲット
4.ガス成分を除き、純度が3N(99.9wt%)以上であることを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載のスパッタリングターゲット
5.Mg、Ca、Sr、Ba、Zr、Hfから選択した元素を少なくとも1種以上を0.01〜5at%含有することを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載のスパッタリングターゲット
6.円盤状ターゲットの直径又は矩形ターゲットの最短長が50mm以上であることを特徴とする上記1〜5のいずれかに記載のスパッタリングターゲット
7.平均結晶粒径が100μm以下であることを特徴とする上記1〜6のいずれかに記載のスパッタリングターゲット、を提供する。
【0009】
本発明はさらに、
8.構成元素の単体、酸化物又はカルコゲン化物から選択した1種以上の粉末を原料とし焼結することを特徴とするLa及びCuを含有するオキシカルコゲナイドを主成分とするスパッタリングターゲットの製造方法
9.焼結用原料粉末に含有される水酸化物量が2wt%以下であることを特徴とする上記8記載のスパッタリングターゲットの製造方法
10.ガス成分を除き、焼結用原料粉末の純度が2N5(99.5wt%)以上であることを特徴とする上記8又は9記載のスパッタリングターゲットの製造方法
11.焼結用原料粉末の平均粒径が50μm以下、比表面積が0.2m/g以上であることを特徴とする上記8〜10のいずれかに記載のスパッタリングターゲットの製造方法
12.焼結用原料にオキシカルコゲン化物相を含有することを特徴とする上記8〜11のいずれかに記載のスパッタリングターゲットの製造方法
13.焼結工程中に850°C以下の温度で1時間以上保持する反応工程を含み、この反応工程後に反応工程温度以上の温度で加圧焼結することを特徴とする上記8〜12のいずれかに記載のスパッタリングターゲットの製造方法
14.500〜1000°Cの温度で加圧焼結することを特徴とする上記8〜13のいずれかに記載のスパッタリングターゲットの製造方法
15.焼結工程中、雰囲気を真空、アルゴン又は窒素雰囲気とすることを特徴とする上記8〜14のいずれかに記載のスパッタリングターゲットの製造方法
16.高温加圧焼結により焼結することを特徴とする上記8〜15のいずれかに記載のスパッタリングターゲットの製造方法
17.ホットプレス、HIP、放電プラズマ焼結により焼結することを特徴とする上記16記載のスパッタリングターゲットの製造方法
18.La、La、CuSの原料粉末を用いて焼結し、LaCuOSを主成分とする焼結体を得ることを特徴とする上記8〜17のいずれかに記載のスパッタリングターゲットの製造方法
19.La、LaSe、CuSeの原料粉末を用いて焼結し、LaCuOSeを主成分とする焼結体を得ることを特徴とする上記8〜17のいずれかに記載のスパッタリングターゲットの製造方法
20.上記1〜7のいずれかに記載のターゲットを製造することを特徴とする上記8〜19のいずれかに記載のスパッタリングターゲットの製造方法、を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、La及びCuを含有するオキシカルコゲナイドを主成分とするP型透明導電材料用ターゲットの密度を向上させ、ターゲットを大型化しかつ低コストで製造できるようにするとともに、該ターゲット中の未反応物の存在を無くし、ターゲットの割れの発生を抑制することにより製品歩留りを上げ、さらにこのようなターゲットを用いてスパッタリングすることによって形成される成膜の品質を向上させることができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のスパッタリングターゲットを製造する場合、純度が2N5(99.5wt%)以上である構成元素の単体、酸化物又はカルコゲン化物から選択した1種以上の粉末を焼結用原料粉末として用いる。これによって、ターゲット及びスパッタ成膜の品質を向上させることができる。
この焼結用原料粉末に含有される水酸化物量が2wt%以下であることが望ましい。これは、昇温中に分解して水が発生したり、組成ずれが生ずるからである。また、焼結原料中に水分量が多い場合には、焼結中に割れが生じやすくなるという問題も発生する。そのため、製造歩留まりをさらに悪化させる原因となる。本発明においては、上記のように水分量を制限することにより、このような問題を低減できるという著しい効果を有する。
【0012】
また、焼結用原料粉末の平均粒径が50μm以下、比表面積(BET)が0.2m/g以上とするのが望ましい。これは焼結性及び反応性を高めるためである。さらに、焼結用原料にオキシカルコゲン化物相を含有させることが望ましい。これによって、目的とする、より均一な成分組成のスパッタリングターゲットを得ることができる。
さらに本発明において重要なことは、焼結工程中に850°C以下の温度で1時間以上保持する反応工程設け、この反応工程後に反応工程温度以上の温度で加圧焼結するものである。これによって、高密度で均質な成分のターゲットを製造することができる。850°Cを超えると蒸発成分が増加するため好ましくない。
【0013】
上記加圧焼結は、500〜1000°Cの温度で行うのが望ましい。500°C未満では、加圧焼結が十分でなく、また1000°Cを超える温度では、多くの成分が蒸発するため好ましくない。したがって、上記の温度範囲とする。
焼結工程中は、雰囲気を真空、アルゴン又は窒素雰囲気とすることが望ましい。これによって、焼結性を向上させ、不純物の混入を防止できる。本発明の焼結は、ホットプレス、HIP、放電プラズマ焼結等の高温加圧焼結法により焼結することができる。
LaCuOSを主成分とする焼結体を得る場合には、La、La、CuSの原料粉末を用いて焼結して製造することができる。また、LaCuOSeを主成分とする焼結体を得る場合には、La、LaSe、CuSeの原料粉末を用いて焼結することができる。
【0014】
上記の製造方法により、La及びCuを含有するオキシカルコゲナイドを主成分とし、相対密度80%以上を有する、さらには相対密度90%以上を有するスパッタリングターゲットを製造することができる。
特に、P型透明導電材料用ターゲットとして、LaCuOS又はLaCuOSeの少なくとも一種以上を主成分とするスパッタリングターゲットが有用である。また、純度は3N(99.9wt%)以上のスパッタリングターゲットを得ることができる。
【0015】
上記のスパッタリングターゲットには、Mg、Ca、Sr、Ba、Zr、Hfから選択した元素を少なくとも1種以上を0.01〜5at%含有させることができる。これは、電気伝導性を制御するためである。
本発明のターゲットの製造方法は、密度が高く割れ難いので、円盤状ターゲットの場合には、その直径を50mm以上とすることができ、矩形ターゲットにおいては、最短長を50mm以上とすることができる。また、ターゲットの平均結晶粒径を50μm以下とすることができ、緻密で均質なスパッタリングターゲットを得ることができる。
【0016】
以上によって得られたターゲットは、品質が一定しており、色むらや変色が発生せず、ターゲットが割れることがなく、製造歩留まりを著しく向上させることができる。また、上記によって得られたスパッタリングターゲットを使用して成膜した場合、光学的問題を発生することなく、良好な品質を維持することができるという特徴を有している。
【実施例】
【0017】
以下、実施例および比較例に基づいて説明する。なお、本実施例はあくまで一例であり、この例によって何ら制限されるものではない。すなわち、本発明は特許請求の範囲によってのみ制限されるものであり、本発明に含まれる実施例以外の種々の変形を包含するものである。
【0018】
(実施例1)
予め500°C程度で仮焼した3N相当で、BET値1.0、平均粒径20μmのLa粉と3N相当で、BET値0.6、平均粒径20μmのLa粉と2N5相当で、BET値0.3、平均粒径30μmのCuS粉を用意し、LaCuOSとなるよう調合して均一に混合し、内径160mmφのカーボン製の型に充填し、温度750°Cで4時間保持する反応を行った。
この後、温度900°Cまで上げて、面圧200kgf/cmで加圧焼結する工程をホットプレスにて行い、さらにこの焼結体を外径6インチφ、厚さ5mmのターゲットに加工した。
ターゲットをXRD測定したところ、LaCuOSの結晶ピークのみが観察された。このターゲットの相対密度は95%であった。また、結晶粒径は40μmであり、緻密な外観を呈していた。以上の条件と結果を表1に示す。
【0019】
(実施例2)
3N相当で、BET値1.0、平均粒径20μmのLa粉と3N相当で、BET値0.6、平均粒径20μmのLa粉と2N5相当で、BET値0.3、平均粒径30μmのCuS粉を用意し、LaCuOSとなるよう調合して均一に混合し、内径160mmφのカーボン製の型に充填し、温度700°Cで4時間保持する反応を行った。
この後、温度950°Cまで上げて、面圧250kgf/cmで加圧焼結する工程をホットプレスにて行い、さらにこの焼結体を外径6インチφ、厚さ5mmにターゲット加工した。
ターゲットをXRD測定したところ、LaCuOSの結晶ピークのみが観察された。このターゲットの相対密度は99%であった。また、ターゲット内の平均結晶粒径は40μmであり、緻密な外観を呈していた。以上の条件と結果を表1に示す。
【0020】
(実施例3)
予め500°C程度で仮焼した4N相当で、BET値1.0、平均粒径10μmのLa粉と3N相当で、BET値0.5、平均粒径25μmのLaSe粉と2N5相当で、BET値0.5、平均粒径25μmのCuSe粉を用意し、LaCuOSeとなるよう調合して均一に混合し、内径160mmφのカーボン製の型に充填し、温度500°Cで4時間保持する反応を行った。
この後、温度600°Cまで上げて、面圧250kgf/cmで加圧焼結する工程をホットプレスにて行い、さらにこの焼結体を外径6インチφ、厚さ5mmにターゲットに加工した。
ターゲットをXRD測定したところ、LaCuOSeの結晶ピークのみが観察された。このターゲットの相対密度は95%であった。また、ターゲット内の平均結晶粒径は30μmであり、緻密な外観を呈していた。以上の条件と結果を表1に示す。
【0021】
(実施例4)
予め500°C程度で仮焼した4N相当で、BET値1.0、平均粒径20μmのLa粉と3N相当で、BET値0.6、平均粒径20μmのLa粉と2N5相当で、BET値0.3、平均粒径30μmのCuS粉と2N5相当で、BET値0.5、平均粒径20μmのSrSを用意し、La0.95Sr0.05CuOSとなるよう調合して均一に混合し、内径160mmφのカーボン製の型に充填し、温度700°Cで4時間保持する反応を行った。
この後、温度800°Cまで上げて、面圧250kgf/cmで加圧焼結する工程をホットプレスにて行い、さらにこの焼結体を外径6インチφ、厚さ5mmにターゲットに加工した。
ターゲットをXRD測定したところ、La0.95Sr0.05CuOSの結晶ピークのみが観察された。このターゲットの相対密度は97%であった。また、ターゲット内の平均結晶粒径は40μmであり、緻密な外観を呈していた。以上の条件と結果を表1に示す。
【0022】
(実施例5)
予め500°C程度で仮焼した3N相当で、BET値0.7、平均粒径40μmのLaCuOS粉と予め500°C程度で仮焼した3N相当で、BET値0.5、平均粒径30μmのLaCuOSe粉を用意し、LaCuOSSeとなるよう調合して均一に混合し、内径160mmφのカーボン製の型に充填し、温度700°Cで4時間保持する反応を行った。
この後、温度800°Cまで上げて、面圧250kgf/cmで加圧焼結する工程をホットプレスにて行い、さらにこの焼結体を外径6インチφ、厚さ5mmにターゲットに加工した。
ターゲットをXRD測定したところ、LaCuOSSeの結晶ピークのみが観察された。このターゲットの相対密度は90%であった。また、ターゲット内の平均結晶粒径は40μmであり、緻密な外観を呈していた。以上の条件と結果を表1に示す。
【0023】
【表1】

【0024】
(比較例1)
予め500°C程度で仮焼した3N相当で、BET値0.02、平均粒径60μmのLa粉と3N相当で、BET値0.01、平均粒径100μmのLa粉と2N5相当で、BET値0.01、平均粒径100μmのCuS粉を用意し、LaCuOSとなるよう調合して、内径160mmφのカーボン製の型に充填し、温度750°Cで4時間保持する反応を行った。
次に、温度900°Cまで上げて、面圧250kgf/cmで加圧焼結する工程をホットプレスにて行い、さらにこの焼結体を外径6インチφ、厚さ5mmにターゲットに加工した。
ターゲットをXRD測定したところ、LaCuOSの結晶ピーク以外に、Laのピークが観察された。このターゲットの相対密度は75%であった。
上記のように、Laを主とする未反応物が残留し、大気保管中に水分等との反応により、ターゲット表面が劣化し、一部剥がれ落ちた。また、ターゲット内の平均結晶粒径は>100μmであり、表面が劣化した外観を呈していた。以上の条件と結果を、同様に表1に示す。
【0025】
(比較例2)
3N相当で、BET値1.0、平均粒径20μmのLa粉と3N相当で、BET値0.6、平均粒径20μmのLa粉と2N5相当で、BET値0.3、平均粒径30μmのCuS粉を用意し、LaCuOSとなるよう調合して、内径160mmφのカーボン製の型に充填し、温度900°Cに上げて、面圧250kgf/cmで加圧焼結する工程をホットプレスにて行い、さらにこの焼結体を外径6インチφ、厚さ5mmにターゲットに加工した。
ターゲットをXRD測定したところ、LaCuOSの結晶ピーク以外に、Laのピークが観察された。このターゲットの相対密度は85%であった。
上記のように、Laを主とする未反応物が残留し、大気保管中に水分等との反応により、ターゲット表面が劣化し、一部剥がれ落ちた。また、ターゲット内の平均結晶粒径は>100μmであり、表面が劣化した外観を呈していた。以上の条件と結果を、同様に表1に示す。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、La及びCuを含有するオキシカルコゲナイドを主成分とするP型透明導電材料用ターゲットの密度を向上させ、ターゲットを大型化しかつ低コストで製造できるようにするとともに、該ターゲット中の未反応物の存在を無くし、ターゲットの割れの発生を抑制することにより製品歩留りを上げ、さらにこのようなターゲットを用いてスパッタリングすることによって形成される成膜の品質を向上させることができるという優れた効果を有するので、La及びCuを含有するオキシカルコゲナイドを主成分とするP型透明導電材料用ターゲットとして有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
La及びCuを含有するオキシカルコゲナイドを主成分とし、相対密度90%以上を有することを特徴とするスパッタリングターゲット。
【請求項2】
LaCuOS又はLaCuOSeの少なくとも一種以上を主成分とすることを特徴とする請求項1記載のスパッタリングターゲット。
【請求項3】
ガス成分を除き、純度が3N(99.9wt%)以上であることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載のスパッタリングターゲット。
【請求項4】
Mg、Ca、Sr、Ba、Zr、Hfから選択した元素を少なくとも1種以上を0.01〜5at%含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のスパッタリングターゲット。
【請求項5】
円盤状ターゲットの直径又は矩形ターゲットの最短長が50mm以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のスパッタリングターゲット。
【請求項6】
平均結晶粒径が100μm以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のスパッタリングターゲット。
【請求項7】
構成元素の単体、酸化物又はカルコゲン化物から選択した1種以上の粉末を原料とし、ガス成分を除き、焼結用原料粉末の平均粒径が50μm以下、比表面積が0.2m/g以上であり、焼結工程中に850°C以下の温度で1時間以上保持する反応工程を含み、この反応工程後に反応工程温度以上の温度である500〜1000°Cの温度で焼結することにより、相対密度90%以上であるLa及びCuを含有するオキシカルコゲナイドを主成分とするスパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項8】
焼結用原料粉末に含有される水酸化物量が2wt%以下であることを特徴とする請求項7記載のスパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項9】
焼結用原料粉末の純度が2N5(99.5wt%)以上であることを特徴とする請求項7又は8記載のスパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項10】
焼結用原料にオキシカルコゲン化物相を含有することを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載のスパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項11】
焼結工程中、雰囲気を真空、アルゴン又は窒素雰囲気とすることを特徴とする請求項7〜10のいずれかに記載のスパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項12】
高温加圧焼結により焼結することを特徴とする請求項7〜11のいずれかに記載のスパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項13】
ホットプレス、HIP、放電プラズマ焼結により焼結することを特徴とする請求項12記載のスパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項14】
La、La、CuSの原料粉末を用いて焼結し、LaCuOSを主成分とする焼結体を得ることを特徴とする請求項7〜13のいずれかに記載のスパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項15】
La、LaSe、CuSeの原料粉末を用いて焼結し、LaCuOSeを主成分とする焼結体を得ることを特徴とする請求項7〜14のいずれかに記載のスパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項16】
請求項1〜6のいずれかに記載のターゲットを製造することを特徴とする請求項7〜15のいずれかに記載のスパッタリングターゲットの製造方法。

【公開番号】特開2009−84696(P2009−84696A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−286051(P2008−286051)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【分割の表示】特願2005−502988(P2005−502988)の分割
【原出願日】平成16年2月3日(2004.2.3)
【出願人】(591007860)日鉱金属株式会社 (545)
【Fターム(参考)】