説明

スパッタリングターゲット用金属ブランクの形成方法

【課題】本発明は、金属プレートの2つの表面のうちの一方のみを平坦化することによる、金属ブランク、ディスク及びスパッタリングターゲットの製造における改善。
【解決手段】金属プレートの第二表面の平坦化をなくすことにより、顕著なコスト削減がなされる。本発明の金属プレートは、好ましくは片面平坦度が0.005インチ以下であり、ターゲットブランクとバッキングプレートとの間の接合の信頼性が改善される。好ましい金属には、タンタル、ニオブ、チタン及びそれらの合金などがあるが、これらには限定されない。また、本発明は、金属プレートの第一面を機械加工し、第一面をバッキングプレートに接合した後、必要に応じて金属プレートの第二面を機械加工することに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来のスパッタリングターゲットの調製方法と比較して、加工コストが減少し、品質及び信頼性が改善されたスパッタリングターゲットの製造方法に関する。本発明はまた、改善された金属ディスクの調製方法に関する。また、本発明は、スパッタリングターゲット及び/又は金属ディスクの製造コストの減少方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に金属加工分野、特にスパッタリングターゲットの分野において、極めて特殊な寸法上の要件を満たす平面ディスクの製造に関連するコストに関して、大きな困難が生じる。金属ディスクの製造分野においては、最終的に金属ディスク、例えばタンタルスパッタリングターゲットプレフォームに成形される金属ブランクの両面を平坦にするのが一般的である。これには、金属ブランクの両面を研磨するか、両面を圧延するか、又は金属の両面の加圧平坦化及び/又は表面調整が必要である。
【0003】
したがって、例えば、平面スパッタリングターゲットプレフォームを圧延金属プレートから機械加工できる。スパッタリングターゲットプレフォームを製造する他の方法、例えば鍛造及び続いての円筒状金属ビレットの処理を使用できる。典型的には、スパッタリングターゲットプレフォームの寸法は、バッキングプレート上への接着後に得られる仕上げスパッタリングターゲットブランクの寸法よりも大きく、仕上げ機械加工操作でもってスパッタリングターゲットアセンブリの製造を完了する。
【0004】
平面タンタルスパッタリングターゲットの製造には、タンタルプレートを圧延して、典型的に仕上げ機械加工ターゲットブランクの厚さよりも0.010〜0.100インチ大きく、厚さ許容差が圧延ゲージの約5〜10%であるゲージにし、公称平坦度0.050インチまでレベル圧延し、得られたプレートをアニーリングし、プレートからブランクを荒切削し、いくつかの労働集約的手動プレス平坦化と表面調整を反復して平坦度0.010インチ以下とした後、ブランクを機械加工して所望の直径とすることが含まれる。次いで、これらのプレフォームブランクをスパッタリングターゲット製造業者に販売し、そこでブランクをバッキングプレートに接着した後、接着プレフォームの面と直径を、スパッタリング装置、Original Equipment Manufacturer(OEM)により規定されているアセンブル後のスパッタリングターゲットの寸法要件、又はターゲットサプライヤーの顧客の寸法要件に合うように機械加工する。
【0005】
しかしながら、製造された最終金属ディスク又はスパッタリングターゲットは、実際において、ディスク又はスパッタリングターゲットの一方の面のみが、高度に特定の寸法特性に由来する真の利点を奏する用途及び/又は高度に特定の寸法特性を必要とする用途に利用されることがしばしばである。
【0006】
例えば、タンタルの固有コスト及び価値が高いため、一般的にタンタルに関連する種々の製造プロセスにおいてスクラップの発生を減少させるための努力がなされている。ターゲットサプライヤーは、ブランクのゲージ及び直径について厳しい寸法許容差を課して、購入する材料の重量を最小限としている。さらに、ターゲットサプライヤーは、ターゲットブランクとバッキングプレートとの間の結合の信頼性を大きく改善できる平坦度0.005インチを満たすブランクを望んでいる。しかしながら、ゲージ及び平坦度においてこのような厳しい許容差を実現するには、ブランクの研磨及びラップ仕上げを必要とする。これは、極めて高価であり且つ切り屑と称される低価値研磨スクラップの発生量が過剰なプロセスである。典型的には、切り屑に含まれるタンタルの価値は、機械加工操作により発生する切り屑の価値よりも小さい。これは、切り屑を含む研磨媒体からタンタル粒子を分離するのが困難且つ高価であることがよくあり、また機械加工と比較して研磨によりタンタルの汚染の傾向が大きいからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、上記した欠点の一つ以上を克服する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一つの特徴によれば、コスト的に経済的な金属製品を製造する方法が提供される。本発明は、金属平面物体の両表面の研磨中に生じる、時間、労働、及び損失金属材料に関連するコストを回避することに関する。
【0009】
本発明の別の特徴は、タンタル又は他の金属ターゲットブランクの許容差を修正することにより、金属ブランク、ディスク及びスパッタリングターゲットの生産性を高めることにある。
【0010】
本発明の別の特徴によれば、プレートの第一表面のみを平坦度約0.005インチ以下に平坦化することによる、金属ブランクの製造方法が提供される。
【0011】
本発明の別の特徴によれば、金属ディスクの製造方法が提供される。
【0012】
本発明のさらに別の特徴によれば、片面機械加工した金属ブランクであって、バッキングプレートに接着し、得られた複合体を続いて付形するか、切断するか、又は構成して、所望のスパッタリングターゲットとすることができる、金属ブランクが提供される。
【0013】
本発明のさらに別の特徴によれば、金属ブランク、ディスク及び金属スパッタリングターゲットの製造コストを改善又は減少させる方法が提供される。
【0014】
本発明のさらに別の特徴によれば、金属プレート又は金属ブランクから金属物品を製造し、よって製造中に物品から除去される材料の価値を最大とする方法が提供される。
【0015】
本発明の別の特徴によれば、除去された材料の汚染量を減少する金属物品の製造方法が提供される。
【0016】
本発明の別の特徴によれば、金属プレート又は金属ブランクから金属ディスクを製造するするコストを減少させる方法が提供される。
【0017】
本発明のさらなる特徴によれば、プレート、ブランク又はディスクから金属スパッタリングターゲットを製造するコストを減少させる方法が提供される。
【0018】
本発明のさらなる特徴及び利点は、一部は以下で述べられおり、一部はその記載から明らかであり、又は本発明を実施することにより理解することができる。本発明の目的及び他の利点は、本明細書の記載及び添付の特許請求の範囲に特に示されている要素及び組み合わせにより実現及び達成されるであろう。
【0019】
本発明のこれらの目的及び他の利点を達成するため、並びに本発明の目的に従って、本明細書で具体化され且つ広範に記載されているように、本発明は、第一表面と第二表面とを有する少なくとも一つの平面金属プレートであって、第一表面と第二表面が実質的に平行である平面金属プレートを供給し;前記プレートの第一表面のみを約0.005インチ以下に平坦化して金属ブランクを製造する、金属ブランク又はディスクの製造方法に関する。
【0020】
また、本発明は、金属ディスクを含む金属スパッターターゲットプレフォームを準備し、バッキングプレートを準備し、必要に応じて接合剤を準備し、ターゲットプレフォーム、バッキングプレート及び必要に応じて接合剤に、十分な温度と十分な圧力を、前記金属ターゲットと前記バッキングプレートとの間に結合を設けるか、受け入れるか、又は達成するのに十分な時間かけることによる、スパッターターゲットアセンブリの形成方法に関する。
【0021】
上記の一般的な記載及び以下の詳細な説明の両方とも、典型的且つ説明の目的のみのものであり、特許請求の範囲に記載される本発明をさらに説明することを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】圧延金属プレートと、その圧延金属プレートを機械加工した後に得られるスパッターターゲットの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、片面が平坦である金属ブランク、ディスク及びスパッタリングターゲットを供給することに関する。一方の表面又は面のみが平坦であると、従来の金属ディスク製造方法に較べていくつかの利点がある。
【0024】
本発明の目的について、「実質的に平行」とは、交差しない平面として定義できる。したがって、金属プレートの表面が絶対的平行面等の非常に特殊な寸法特性を示すことは、本発明の臨界的限定ではない。当業者は、本発明の範囲内において有効である金属プレート、ブランク、ディスク及び/又はスパッタリングターゲットの表面の真の平行からのずれの程度を求めることができる。
【0025】
一般的に、「ブランク」は、ディスク及び/又はスパッタリングターゲットの加工に有用である金属物体として定義できる。本発明においては、ブランクの寸法については、具体的な限定はない。一般的に、用語「ブランク」及び「プレフォーム」は、同義的に用いることができる。一般的に、「金属プレート」は、連続した形態、例えば押出し、加圧又は圧延インゴット冶金又は粉末冶金由来のシート又はビレット又は他の非粉末又は非フレーク形態のいずれかの金属として定義できる。
【0026】
一般的に、「平坦度Xインチ」は、全表面に対していずれかの1点でのフラット又は完全平面からのずれの目安のことである(ここで、フラットは、0.000インチである)。
【0027】
一般的に、「ディスク」は、とりわけ厚さ:直径比が1以下である真円柱として理解できる。ここで、「ディスク」は、楕円、三角、長方形及び他の多角形も含まれる。ディスクが長方形のとき、少なくとも部分的に丸みのあるコーナーを含むことが好ましい。本発明のディスクのサイズについては限定されない。
【0028】
一般的に、「スパッタリングターゲット」は、物理的蒸着等により薄膜を付着させるためのソース材料のことである。本発明において有用な一般的なスパッタリングターゲット材料には、金属、例えばタンタル、銅、チタン、コバルト、ニオブ、白金、銀、金、アルミニウム及びそれらの組み合わせ又はそれらの合金などがあるが、これらには限定されない。
【0029】
一般的に、「バッキングプレート」は、ブランク、ディスク又はスパッタリングターゲットに接触できる、いずれかの材料、化学化合物、金属基板、接着剤、ファンデーション又は他の構造支持体のことである。また、上記した金属は、バッキングプレートに好適な金属の例である。
【0030】
一般的に、「接合剤」は、ブランクとバッキングプレートとの間の結合の形成を促進する、いずれかの材料、化学化合物、金属基板、接着剤、ファンデーション又は他の構造支持体として定義できる。
【0031】
一般的に、研磨は、砥粒又はグリット、さらに接合材料からなる固形回転砥石車の切削作用により、加工物から材料を除去するプロセスとして定義される。
【0032】
一般的に、機械加工は、除去されてスクラップ金属を汚染させることがある、砥粒又はグリットを用いることなく、非消耗工具ビットを用いることにより、金属プレート又はディスクから材料を除去するためのプロセスとして定義される。
【0033】
本発明において、用語「面(face)」、「面(side)」及び「表面(surface)」は、同義的に用いることができる。
【0034】
本発明において、用語「スパッタリングターゲット」及び「スパッターターゲット」は、同義的に用いることができる。
【0035】
金属の一つの表面を平坦化すると、接合一体性を妨害することがある表面欠陥、例えばリップル、ボイド、凹面、凸面を除去することができる。
【0036】
加圧平坦化操作の主要な目的は、十分に平坦で、続いてバッキングプレートに接合できる面を有するプレフォームを得ることであるので、一方の表面のみが平坦であることにより、反復して加圧平坦化する必要性を最小限とするか、又は完全になくすことができる。加圧平坦化は、ブランク加工プロセスにおける障害である金属ターゲットブランクを製造する際の機械加工コストにおけるコスト推進要因であることがわかった。このプロセスは、ブランクのゲージ許容差を増加して、ブランクが、接合及び機械加工工程後の仕上げ許容差を満足することができるようにすることが必要なことがあるが、労働及び在庫コストにおいて推定される節約でなされるのは、わずかに追加の材料歩留りコストを相殺してもそれ以上のものがある。本発明により新たな機械加工工程が導入されたり、必要としないので、ターゲットサプライヤーにより生じる追加の製造コストは、最小限である。
【0037】
さらに、研磨工程が不必要なので実際の金属の損失がないことの他に、スクラップ自体の価値が、本発明により大きく改善又は増加することができる。チタンディスクの両面の研磨から回収される切り屑の価値は、現時点では、含有されるタンタルの1ポンド当たり約50ドル($50.00)である。これはグラインダーから除去される研磨材料は、不純物としてスクラップ金属と混ざることがあり、スクラップ金属の価値が低下するからである。タンタルは、研磨切り屑から、原鉱からタンタルを精錬するのに用いられるのと同じ化学分離及び還元プロセスを用いて回収される。また、重力分離、起泡又は磁気分離(これらには限定されない)等の機械的分離プロセスも使用できるが、これらのプロセスは、タンタル及び研磨媒体の全てを分離する効率がよくなく、タンタルの再生歩留りが低くなり、そしてタンタルから研磨媒体の全てを分離する効率がよくなく、タンタルの汚染が生じる。研磨切り屑におけるタンタルの価値は、天然鉱におけるタンタルの価値と同様である。タンタルディスクの単一の表面の機械加工から回収されるスクラップ金属の価値は、現時点で、含有金属の1ポンド当たり約100ドル($100.00)である。これは、機械加工では、スクラップ金属に、汚染物が導入されないか、又は無視できる量の汚染物が導入されるだけであるからである。タンタル機械加工スクラップは、化学精錬及び還元プロセスの必要性なく、容易に溶融してタンタルインゴットとすることができ、したがって、これらのプロセスからの付加価値が保持される。
【0038】
したがって、一方の表面が平坦である金属ターゲットブランクを製造することにより、製造コストの削減が大きくなされ、続いて機械工場での処理量が増加する。したがって、本発明は、スクラップグレードの価値に大きな広がりを有する材料、例えばタンタル、高純度銅及びチタン等に最適である。
【0039】
同様に、続いてのディスク及びスパッタリングターゲットの調製中に、大きなコストの削減がなされる。
【0040】
片面だけが平坦である金属ブランク、ディスク及びスパッタリングターゲットをバルブメタル又は他の金属から作製することが好ましい。これらのものは、例えばタンタル、銅、アルミニウム、チタン、ニオブ、コバルト、白金、銀及び金から作製することが好ましい。他の例としては、これらの金属の一つ以上を含有する合金などがある。好ましい金属は、タンタルである。
【0041】
好ましくは、金属ブランク、ディスク又はスパッタリングターゲットの平面の平坦度は、約0.060インチ〜約0.001インチであり、より好ましくは平坦度が約0.005インチ以下である。好ましくは、金属ブランクの公称厚さ許容差は、ブランク厚さ約0.250〜約0.500インチについては+0.100/−0.00インチであり、ブランク厚さ約0.250インチ未満については+0.050/−0.00インチである。本発明による公称直径許容差は、直径約2〜約24インチディスクについて+0.025/−0.00インチであることができる。好ましくは、金属ブランクの公称厚さ許容差は、プレートの圧延ゲージの少なくとも約5%であり、より好ましくはプレートの圧延ゲージの約5%〜約10%である。金属ブランク、ディスク又はスパッタリングターゲットの非平坦化表面又は第二表面の平坦度は、約0.010インチ以下〜約0.075インチ以上であることができる。好ましくは、第二表面の平坦度は約0.025インチ以下、より好ましくは第二表面の平坦度は約0.015インチ以下である。
【0042】
一例を挙げれば、第一表面を機械加工又は調整して平坦度0.005インチ以下とした金属ブランクを、まずディスク状に付形した後、バッキングプレートに固定するか、又は直ちにバッキングプレートに接着し、後で変更又は再規定できる。
【0043】
一例を挙げれば、金属ブランクの第二表面も平坦化される。機械加工により両面を平坦化した金属ブランク、ディスク及びスパッタリングターゲットを供給することは、研磨により製造される通常の金属ディスクと比較して、いくつかの利点が得られる。
【0044】
金属ブランク、ディスク又はスパッタリングターゲットの第二表面又は第二面を機械加工して、平坦度約0.025インチ以下としてもよいし、好ましくは第二面を機械加工して、平坦度を約0.005インチ以下としてもよい。第二面の機械加工は、アセンブル後のスパッタリングターゲットの仕上げ機械加工工程の一部分としてバッキングプレート上にスパッタリングターゲットプレフォームを接合した後に行うことができる。
【0045】
先に記載したように、金属プレートの機械加工では、スクラップ金属には汚染物が導入されないか、又は無視できる量の汚染物しか導入されない。したがって、金属プレートの両面を機械加工することにより生成するスクラップ金属(現時点では、1ポンド当たり約$100の価値)は、金属プレートの両面を研磨することにより生成されるスクラップ金属よりも価値(現時点では、含有されるタンタル1ポンド当たり約$50の価値)が高い。したがって、研磨の代わりに金属プレートの両方の表面を機械加工することにより、金属ブランク、ディスク及びスパッタリングターゲットの製造総コストが減少する。
【0046】
スパッタリングターゲットアセンブリの製造方法は、スパッタリングターゲットの加工における工程の順序又はシーケンスには限定されない。スパッタリングターゲットアセンブリの形成方法には、好ましくは金属ブランク又は金属ディスク等のスパッターターゲットを、バッキングプレートに接続又は固定することが含まれる。
【0047】
当業者に知られているいずれの方法を使用して、スパッターターゲットをバッキングプレートに接続又は固定してもよい。例えば、スパッターターゲットを、接着剤を用いることによるか、加圧嵌合によるか、ホットメルティングによるか、はんだ付けによるか、ろう付けによるか、拡散接合によるか、爆着(explosion bonding)によるか、又はクランプ等の機械装置を使用することにより、バッキングプレート又はバッキングプレート前駆体組成物に隣接させることができる。
【0048】
さらに、必要に応じて、スパッターターゲットアセンブリは、ターゲットブランクとバッキングプレートとの間の接合助剤としての役割を果たす中間層材料を含むことができる。中間層材料は、電解メッキ、無電解メッキ、蒸着、イオンビーム蒸着、又は薄膜を付着させるための他の好適な手段により適用される薄膜コーティングの形態であることができる。また、中間層は、箔、プレート又はブロックの形態でもよい。中間層材料としては、例えば米国特許第6376281号にみられるようなジルコニウム、米国特許第5863398号及び米国特許第6071389号にみられるようなチタン、米国特許第5693203号にみられるような銅、アルミニウム、銀、ニッケル及びそれらの合金、並びに米国特許第6183613B1号にみられるような黒鉛などをあげることができるが(これらの各々は、全て引用することにより、本明細書の内容とする)、これらには限定されない。
【0049】
バッキングプレート、中間層及び/又は接合剤は、構造支持体を提供できるいずれの材料、化学化合物、金属基板、接着剤又はファンデーションから製造してもよい。
【0050】
一例を挙げると、第二表面を、第一表面を平坦度約0.005インチ以下とした後に平坦化する。好ましくは、第二表面は、金属ブランクをバッキングプレートに隣接させた後に平坦化する。好ましくは、ターゲットの第二表面を、機械加工により平坦化する。バッキングプレートは、ターゲットの第二表面を機械加工するときに、十分な支持体としての役割を果たすことができる。ターゲットを支持するバッキングプレートを設けないと、ターゲットが曲がることがある。したがって、第一表面を部分的に機械加工した後、第二表面を部分的に機械加工し、第一表面と第二表面の間の修正を継続して、ターゲットが曲がるのを防止する必要がある。このプロセスは、極めて時間がかかるとともに、高価である。また、バッキングプレートに接合後に第二表面を機械加工することが、典型的にOEM又はターゲット製造業者により定められた寸法上の仕様を確保するのに必要である。したがって、第二表面を機械加工するときにバッキングプレートを使用することにより、製造コストを減少させ、且つ余分な機械加工操作を回避することができる。
【0051】
本発明のスパッターターゲットの一部分であることができる金属ブランクを製造する好ましい方法には、実質的に平行である第一表面と第二表面を有する少なくとも一つの金属プレートを供給することが挙げられる。好ましくは、金属プレートの第一表面を平坦化して、金属ブランクを形成し、その後それを付形してディスクとし、次にディスクをバッキングプレートに固定するか、又は金属ブランクの平坦化した第一表面を、バッキングプレートに直接固定(例えば、接合)し、その形状を後で変更するか、又は再規定してもよい。
【0052】
本発明での工程のシーケンスは、本発明にとっては決定的には重要ではない。したがって、例えば当業者は、金属プレートを圧延してシートとし、片面機械加工してブランクを形成した後、切削し、機械加工するか、又はブランクを付形してディスク状とすることができる。次に、ディスクをバッキングプレートに固定してスパッタリングターゲットアセンブリを形成することができる。別法として、所望の最終スパッタリングターゲット又はディスクの形状及びサイズに切削した後、第一表面を機械加工してその所望の平坦度とすることができる。
【0053】
好ましくは、金属の第一表面を、約0.025インチ以下から平坦化し、より好ましくは約0.005インチ以下に平坦化する。好ましくは、金属ブランクの第一表面を、機械加工プロセスにより平坦化する。上記したように、機械加工プロセスからのスクラップ金属は、研磨プロセスからのスクラップ金属よりも価値が高い。これは、機械加工では、汚染物は導入されないか、又はスクラップ金属には無視できる量の汚染物しか導入されないからである。したがって、研磨切り屑の価値は含有タンタルの1ポンド当たり約$50であるのに対して、機械加工から回収されたスクラップ金属の価値は1ポンド当たり約$100である。
【0054】
好ましくは、第一表面を約0.005インチ以下まで平坦化する機械加工プロセスの公称厚さ許容差は、ブランク厚さ約0.250〜約0.500インチについては+0.100/−0.00インチであり、ブランク厚さ約0.250インチ以下について+0.050/−0.00である。
【0055】
このときに好ましくは機械加工されない金属ブランクの第二表面の平坦度は、約0.075インチ以下、好ましくは0.025インチ以下であることができる。好ましくは、金属シートを形成する工程により、平坦度約0.060インチ〜約0.005インチ、より好ましくは約0.030インチ〜約0.005インチである第二表面が形成される。第二表面は、プレートのレベル圧延、延伸平坦化、加圧平坦化、ミリング、研磨、又は金属プレート又はスパッタリングターゲットブランクのラッピングにより平坦化できる。
【0056】
別の例を挙げると、タンタル等の金属の円筒又はビレットから開始し、鍛造して丸形平面物体を形成し、それを機械加工してディスクとしてもよい。本発明の目的では、ブランク及び/又はプレートには、ビレット(例えば、鍛造ビレット)等を含むことができる。
【実施例】
【0057】
以下、本発明の典型例である実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。
【0058】
例1
図1は、圧延金属プレート(10)を示す。この金属プレート(10)は、圧延したまま又はレベル圧延したままの平坦度が「f」であり、初期設定ゲージ厚さが「g」である。仕上げ厚さ「t」の平面スパッタリングターゲット(20)を、製造できる。一般的に、初期平坦度に関する初期厚さと、仕上げ厚さとの間には、以下の関係がある:
g=t+(2f+0.005”)
【0059】
プレート10からターゲット20を製造する際に発生するスクラップの量は、下式を用いて算出できる:
Vs=(2f+0.005”)・AT・ρTa (ここで、AT=ターゲット面積、ρTa=0.60lbs/in3である)
また、スクラップの価値は、下式により算出できる:
S=VS(MS) (ここで、MS=スクラップの販売価格、VS=スクラップの容積、CS=スクラップの価値)
【0060】
直径14”(154平方インチ)、厚さ0.250”であるタンタルブランクの製造コストと、標準プレート製造コスト(Cst)$250/lbを考慮する。
【0061】
ケース1:レベル圧延したままのブランクの平坦度0.005”へのダブルディスク研磨
前提条件:
初期平坦度f=0.075”
研磨コスト=Cgm=ディスク1枚当たり$50
研磨切り屑の値段Msg=$50/lb
初期プレート厚さ
g=t+(2f+0.005)
g=0.250+2(0.075)+0.005
g=0.405インチ初期プレートコスト=g・At・ρTa・CST
(0.405in)(154in2)(0.60lbs/in3)($250/lb)=$9355
製造歩留りt/g
(0.250)/(0.405)=0.62
スクラップの価値+(2f+0.005)At・ρTa・Msg
(2(0.075)+0.005)(154in2)(0.60lb/in3)($50/LB)=$716
生じる製造コスト
(初期プレートコスト/製造歩留り)+研磨コスト−スクラップの価値
(9355/0.62)+50−716=$14423
【0062】
ケース2:平坦度0.005”への加圧平坦化及び面機械加工
前提条件:
加圧したまま平坦度 f=0.010”
平坦化労働コスト CmF=$100/ディスク
機械加工労働コスト Cmm=$500/ディスク
機械加工スクラップの値段 MsM=$100/lb
初期プレート厚さ=0.275”
初期プレートコスト=$6352
製造歩留り=0.91
スクラップの価値=$231
生じる製造コスト=$6999
【0063】
ケース3:片面を平坦度0.005”に機械加工
前提条件:
レベル圧延したままの平坦度 0.075”
機械加工労働コスト $100/ディスク
機械加工スクラップの値段 $100/lb
初期プレート厚さ=0.405”
初期プレートコスト=$9355
製造歩留り=(0.405−f・0.005)/(0.405)=80
スクラップの価値 (0.080)(Af)(ρTa)(MSM)=$739
生じる製造コスト=$11055
【0064】
ケース4:.010”に加圧平坦化及び片面を平坦度0.005”に機械加工
前提条件:
加圧平坦化したままの平坦度0.010”
平坦化労働コスト=$100/ディスク
機械加工労働コスト=$150/ディスク
機械加工スクラップの値段=$100/lb
初期プレート厚さ=0.225”
初期プレートコスト=$6352
製造歩留り=(0.275−0.010−0.005)/0.275=0.95
スクラップの価値 (0.015)(Af)(ρTa)(MSM)=$139
生じる製造コスト=$6797
【0065】
本発明のその他の実施態様は、明細書の検討及び本明細書に開示されている本発明の実施から当業者に明らかであろう。明細書及び実施例は、典型例のみを示したものであり、本発明の真の範囲及び精神は、特許請求の範囲及びその均等物により示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)第一表面と第二表面を有し、前記第一表面及び前記第二表面が実質的に平行である少なくとも一つの平面金属プレートを供給し、
b)前記金属プレートの前記第一表面のみを平坦化することにより、金属ブランクを製造すること
を含む金属ブランクの製造方法。
【請求項2】
前記金属プレートが、タンタル、銅、アルミニウム、チタン、ニオブ、コバルト、白金、銀、金又はそれらの合金を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属プレートは、タンタルである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記金属プレートは、ニオブである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記金属プレートの前記第一表面は、機械加工、研磨又はそれらの組み合わせにより平坦化される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法により製造された前記金属ブランクの前記第一表面を機械加工してディスクとすることを含む、金属ディスクの製造方法。
【請求項7】
前記金属ディスクが、タンタル、銅、アルミニウム、チタン、ニオブ、コバルト、白金、銀、金又はそれらの合金を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
請求項3に記載の方法により製造された前記金属ブランクの前記第一表面を機械加工してディスクとすることを含む、金属ディスクの製造方法。
【請求項9】
請求項4に記載の方法により製造された前記金属ブランクの前記第一表面を機械加工してディスクとすることを含む、金属ディスクの製造方法。
【請求項10】
バッキングプレートに結合した金属ターゲットを備えたスパッターターゲットアセンブリの形成方法であって、
請求項6に記載の方法により製造された金属ディスクを含む金属スパッターターゲットを準備することと、
バッキングプレートを前記金属ディスクに結合させることと
を含む方法。
【請求項11】
前記バッキングプレートが、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン若しくはチタン合金又はそれらの組み合わせを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記金属ディスクが、タンタルである、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記金属ディスクが、ニオブを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
バッキングプレートに結合した金属ターゲットを備えたスパッターターゲットアセンブリの形成方法であって、
請求項1に記載の方法により製造された金属ブランクを含む金属スパッターターゲットを準備することと、
バッキングプレートを前記金属ブランクに結合させることと
を含む方法。
【請求項15】
前記金属ブランクが、タンタル、銅、アルミニウム、チタン、ニオブ、コバルト、白金、銀、金及びそれらの合金を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記金属ブランクが、タンタルである、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記金属ブランクが、ニオブである、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記金属プレートの一方の表面を機械加工することから本質的になる、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記第二表面の平坦度が、約0.075インチ以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記第二表面の平坦度が、約0.060インチ〜約0.005インチである、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記第二表面の平坦度が、約0.030インチ〜約0.005インチである、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記第一表面を平坦に機械加工して、平坦度を約0.005インチ以下とする、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
2つの実質的に平坦な表面を備えたスパッタリングターゲットであって、第一表面の平坦度が約0.005インチ以下であり、第二表面の平坦度が約0.075インチ以下である、スパッタリングターゲット。
【請求項24】
チタン、コバルト、アルミニウム、銅、タンタル、ニオブ、白金、金、銀、又はそれらの合金である、請求項23に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項25】
タンタルである、請求項23に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項26】
ニオブである、請求項23に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項27】
2つの実質的に平坦な表面を備えた金属ディスクであって、第一表面の平坦度が約0.010インチ以下であり、第二表面の平坦度が約0.060インチ〜約0.005インチである金属ディスク。
【請求項28】
チタン、コバルト、アルミニウム、銅、タンタル、ニオブ、白金、金、銀、又はそれらの合金である、請求項27に記載の金属ディスク。
【請求項29】
タンタルである、請求項27に記載の金属ディスク。
【請求項30】
ニオブである、請求項27に記載の金属ディスク。
【請求項31】
請求項1に記載の方法により製造された金属ブランク。
【請求項32】
請求項6に記載の方法により製造された金属ディスク。
【請求項33】
請求項14に記載の方法により製造されたスパッタリングターゲットアセンブリ。
【請求項34】
前記金属ターゲットを、前記バッキングプレートに、接着材料によるか、はんだによるか、ろう付けによるか、拡散接合によるか、加圧嵌合によるか、ホットメルティングによるか、又は爆着により結合させる、請求項14に記載の方法。
【請求項35】
前記金属ブランクの公称厚さ許容差が、前記プレートの圧延ゲージの少なくとも約5%である、請求項1に記載の方法。
【請求項36】
直径許容差約+0.025/−0.00インチをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項37】
バッキングプレートに結合した金属ターゲットを備えたスパッターターゲットアセンブリの形成方法であって、
請求項1に記載の方法により製造された金属ブランクを含む金属スパッターターゲットを準備することと、
バッキングプレートを前記金属ブランクに結合することとを含み、かつ
前記金属スパッターターゲットがタンタルであり、前記バッキングプレートが銅又はその合金を含む、
方法。
【請求項38】
前記金属スパッターターゲットと前記バッキングプレートとの間に中間層をさらに設けて前記バッキングプレートを結合させることを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項39】
前記第一表面を平坦に機械加工して、平坦度を約0.010インチ以下とする、請求項1に記載の方法。
【請求項40】
前記第一表面の平坦度が、約0.005インチ以下である、請求項27に記載の金属ディスク。

【図1】
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【公開番号】特開2012−12708(P2012−12708A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−217151(P2011−217151)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【分割の表示】特願2006−503498(P2006−503498)の分割
【原出願日】平成16年2月11日(2004.2.11)
【出願人】(391010758)キャボット コーポレイション (164)
【氏名又は名称原語表記】CABOT CORPORATION
【Fターム(参考)】