説明

スピンドルモータおよびディスク駆動装置

【課題】インナーロータ型のスピンドルモータにおいて、従来よりさらに軸方向の寸法を抑制できる構造を、提供する。
【解決手段】ディスク支持部314Aは、ティース42Aの径方向内側の端部より径方向外側、かつ、コイル222Aより径方向内側に位置している。そして、ティース42Aの径方向内側の端部と、ディスク支持部314Aと、コイル222Aとが、径方向にオーバーラップしている。したがって、ティース42Aの径方向内側の端部とコイル222Aとの間に、ディスク支持部314Aの少なくとも一部分が配置されている。これにより、ステータコア221Aに対する第1支持面611Aの高さが、抑制される。その結果、スピンドルモータ11Aの軸方向の寸法が、抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピンドルモータおよびディスク駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスク装置には、ディスクを回転させるためのスピンドルモータが、搭載されている。従来のスピンドルモータについては、例えば、特開2006−230095号公報や特開2008−187844号公報に、記載されている。これらの公報に記載されたスピンドルモータは、いずれも、コイルの内側でマグネットを回転させる、いわゆるインナーロータ型のスピンドルモータである。インナーロータ型のスピンドルモータは、特に、薄型化を重視したハードディスク装置において、使用されることが多い。
【0003】
特開2006−230095号公報では、ステータのティースを折り曲げることにより、ステータの軸方向位置を下げている(段落0026)。また、モータベースのステータ対応部に開口穴を設けることにより、ステータを軸方向下側に配置している(段落0027)。特開2006−230095号公報では、これらの構造によって、スピンドルモータを薄型化している。また、特開2008−187844号公報においても、傾斜部を有するステータコアが、使用されている(段落0017,図2)。
【特許文献1】特開2006−230095号公報
【特許文献2】特開2008−187844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特開2006−230095号公報の構造では、ロータハブの外周部に設けられた突部の下面が、ステータの巻線の上面より上方に、配置されている(段落0043,図2)。また、特開2008−187844号公報の構造でも、ロータハブの最外周部に設けられた軸方向突出リムの下端部が、ステータコアおよびステータコイルの上面より上方に、配置されている(段落0020,図2)。
【0005】
これらの構造では、スピンドルモータの寸法設計において、コイルの軸方向の厚みと、ロータハブの外周部の軸方向の厚みとが、単純に加算されることとなる。このため、当該構造では、スピンドルモータをさらに薄型化することが、困難であった。一方、近年では、タブレットPC等の極めて薄いコンピュータへの需要が、高まっている。したがって、スピンドルモータの軸方向の寸法を、さらに抑制することが、求められている。
【0006】
本発明の目的は、インナーロータ型のスピンドルモータにおいて、従来よりさらに軸方向の寸法を抑制できる構造を、提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の例示的な第1発明は、静止部と、上下に延びる中心軸を中心として、前記静止部に対して回転可能に支持される回転部とを有し、前記静止部は、上下に延びる中心軸に対して直交する方向に広がるベース部と、前記ベース部の上面側に配置されたステータコアと、前記ステータコアに取り付けられたコイルと、を有し、前記回転部は、前記ステータコアの径方向内側に配置されたマグネットと、ディスクの下面に当接する第1支持面を有し、前記マグネットより径方向外側に配置されるディスク支持部と、を有し、前記ステータコアは、円環状のコアバックと、前記コアバックから径方向内側へ向けて延びる複数のティースと、を有し、前記ディスク支持部が、前記ティースの径方向内側の端部より径方向外側、かつ、前記コイルより径方向内側に位置し、前記ティースの径方向内側の端部と、前記ディスク支持部と、前記コイルとが、径方向にオーバーラップしているスピンドルモータである。
【発明の効果】
【0008】
本願の例示的な第1発明によれば、ティースの径方向内側の端部とコイルとの間に、ディスク支持部の少なくとも一部分が配置される。これにより、ステータコアに対する第1支持面の高さが、抑制される。その結果、スピンドルモータの軸方向の寸法が、抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、スピンドルモータの縦断面図である。
【図2】図2は、ディスク駆動装置の縦断面図である。
【図3】図3は、スピンドルモータの縦断面図である。
【図4】図4は、スピンドルモータの部分縦断面図である。
【図5】図5は、ステータコアの上面図である。
【図6】図6は、ステータコアの部分上面図である。
【図7】図7は、ステータコアの部分上面図である。
【図8】図8は、ステータコアの部分上面図である。
【図9】図9は、ステータコアの部分上面図である。
【図10】図10は、ステータコアの部分上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下では、中心軸に沿う方向を上下方向とし、ベース部に対してコイル側を上として、各部の形状や位置関係を説明する。ただし、これは、説明の便宜のために上下方向を定義したものであって、本発明に係るスピンドルモータおよびディスク駆動装置の、使用時の向きを限定するものではない。
【0011】
<1.一実施形態に係るスピンドルモータ>
図1は、本発明の一実施形態に係るスピンドルモータ11Aの縦断面図である。図1に示すように、スピンドルモータ11Aは、静止部2Aと回転部3Aとを有している。回転部3Aは、静止部2Aに対して、回転可能に支持されている。
【0012】
静止部2Aは、ベース部21Aと、ステータコア221Aと、コイル222Aと、を有する。ベース部21Aは、中心軸9Aに対して直交する方向に、広がっている。ステータコア221Aは、ベース部21Aの上面側に配置されている。ステータコア221Aは、円環状のコアバック41Aと、コアバック41Aから径方向内側へ向けて延びる複数のティース42Aと、を有する。コイル222Aは、ステータコア221Aに取り付けられている。
【0013】
回転部3Aは、中心軸9Aを中心として回転する。回転部3Aは、マグネット33Aと、ディスク支持部314Aと、を有する。マグネット33Aは、ステータコア221Aの径方向内側に、配置されている。ディスク支持部314Aは、マグネット33Aより径方向外側に、配置されている。ディスク支持部314Aには、ディスク12Aの下面に当接する第1支持面611Aが、設けられている。
【0014】
図1に示すように、ディスク支持部314Aは、ティース42Aの径方向内側の端部より径方向外側、かつ、コイル222Aより径方向内側に位置している。そして、ティース42Aの径方向内側の端部と、ディスク支持部314Aと、コイル222Aとが、径方向にオーバーラップしている。したがって、ティース42Aの径方向内側の端部とコイル222Aとの間に、ディスク支持部314Aの少なくとも一部分が配置されている。これにより、ステータコア221Aに対する第1支持面611Aの高さが、抑制される。その結果、スピンドルモータ11Aの軸方向の寸法が、抑制される。
【0015】
<2.より具体的な実施形態>
<2−1.ディスク駆動装置の構成>
続いて、本発明のより具体的な実施形態について説明する。
【0016】
図2は、ディスク駆動装置1の縦断面図である。ディスク駆動装置1は、磁気ディスク12を回転させつつ、磁気ディスク12に対して情報の読み出しおよび書き込みを行う装置である。図2に示すように、ディスク駆動装置1は、スピンドルモータ11、磁気ディスク12、アクセス部13、およびカバー14を有している。
【0017】
スピンドルモータ11は、磁気ディスク12を保持しつつ、当該磁気ディスク12を、中心軸9を中心として回転させる。スピンドルモータ11は、磁気ディスク12の下面に沿って広がるベース部21を、有している。スピンドルモータ11の回転部3、磁気ディスク12、およびアクセス部13は、ベース部21とカバー14とで構成される筐体の内部に、収容されている。
【0018】
アクセス部13は、磁気ディスク12の記録面に沿ってヘッド131を移動させて、磁気ディスク12に対する情報の読み出しおよび書き込みを行う。なお、アクセス部13は、2つ以上のヘッド131を有していてもよい。また、アクセス部13は、磁気ディスク12に対して、情報の読み出しおよび書き込みの一方のみを行うものであってもよい。
【0019】
<2−2.スピンドルモータの構成>
続いて、上記のスピンドルモータ11の構成について説明する。図3は、スピンドルモータ11の縦断面図である。図3に示すように、スピンドルモータ11は、静止部2と回転部3とを有する。静止部2は、ベース部21およびカバー14に対して、相対的に静止している。回転部3は、静止部2に対して、回転可能に支持されている。
【0020】
本実施形態の静止部2は、ベース部21、ステータユニット22、磁気シールド板23、および静止軸受ユニット24を有する。
【0021】
ベース部21は、ステータユニット22および静止軸受ユニット24を、支持している。ベース部21は、例えば、亜鉛めっき鋼板等の磁性体の板を、プレス加工することにより得られる。図3に示すように、ベース部21は、内側円筒部211、内側平板部212、外側円筒部213、および外側平板部214を含んでいる。
【0022】
内側円筒部211は、中心軸9と略同軸に配置されている。内側平板部212は、内側円筒部211の下端部から、径方向(中心軸に直交する方向。以下同じ)外側へ向けて、広がっている。外側円筒部213は、内側平板部212の外周部から、上方へ向けて延びている。外側平板部214は、外側円筒部213の上端部から、さらに径方向外側へ向けて、広がっている。
【0023】
ステータユニット22は、ステータコア221と、複数のコイル222と、を有する。ステータコア221は、内側平板部212の上側かつ外側円筒部213の径方向内側に、配置されている。ステータコア221は、珪素鋼板等の電磁鋼板が軸方向(中心軸に沿う方向。以下同じ)に積層された積層鋼板からなる。ステータコア221は、円環状のコアバック41と、コアバック41から径方向内側へ向けて突出した複数本のティース42と、を有する。
【0024】
コアバック41は、ベース部21の外側円筒部213の内周面に、圧入または隙間を介し接着されている。複数本のティース42は、周方向に略等間隔に、配列されている。コアバック41およびコイル222は、後述するハブ31の外周面612より径方向外側に、配置されている。一方、ティース42の径方向内側の端部は、ハブ31の外周面612より径方向内側に、配置されている。
【0025】
コイル222は、ティース42の径方向外側の端部付近に、取り付けられている。コイル222を構成する導線の端部は、図示を省略した回路基板を介して、電源装置に接続される。
【0026】
磁気シールド板23は、磁性体により形成された円環状の部材である。磁気シールド板23は、コイル222の上端部と磁気ディスク12の下面との間に、介在している。本実施形態では、磁気シールド板23により、コイル222と磁気ディスク12との間の磁気的な相互作用を軽減しつつ、コイル222と磁気ディスク12とを軸方向に接近させている。
【0027】
静止軸受ユニット24は、回転部3側のハブ31を回転可能に支持するための機構である。静止軸受ユニット24は、略円筒状のスリーブ51と、スリーブ51を保持する有底略円筒状のスリーブハウジング52とを有する。スリーブ51は、後述するシャフト部311の外周面を、包囲している。後述するハブ31と、スリーブ51およびスリーブハウジング52との間には、潤滑オイル111が介在している。
【0028】
スリーブハウジング52は、底部521、筒状部522、およびフランジ部523を有する。底部521の上面は、シャフト部311の下端部と、軸方向に対向している。筒状部522は、底部521の外周部から、上方へ向けて延びている。筒状部522は、ベース部21の内側円筒部211の内周面に、圧入または隙間を介し接着されている。フランジ部523は、筒状部522の上端部から、径方向外側へ向けて突出している。
【0029】
本実施形態の回転部3は、ハブ31、抜け止め部材32、およびマグネット33を有する。
【0030】
ハブ31は、静止軸受ユニット24に支持されつつ、中心軸9を中心として回転する。ハブ31は、例えば、フェライト系ステンレス等の強磁性体により形成される。ハブ31は、シャフト部311、天板部312、環状保持部313、およびディスク支持部314を有する。シャフト部311は、中心軸9に沿って、略円柱状に延びている。シャフト部311は、スリーブ51の内側に、挿入されている。天板部312は、シャフト部311の上端部から、径方向外側へ向けて広がっている。環状保持部313は、天板部312の下面から下方へ向けて、略円筒状に延びている。
【0031】
ディスク支持部314は、マグネット33より径方向外側に、配置されている。ディスク支持部314は、環状台部61と環状壁部62とを有する。環状壁部62は、天板部312の外周部から、下方へ向けて延びている。環状台部61は、環状壁部62の下端部から、径方向外側へ向けて突出している。環状台部61の上面は、磁気ディスク12の下面に当接する第1支持面611を、含んでいる。磁気ディスク12の軸方向の位置は、第1支持面611により、定められる。また、環状壁部62の外周面は、磁気ディスク12の内周部に当接する第2支持面621を、含んでいる。磁気ディスク12の径方向の位置は、第2支持面621により、定められる。
【0032】
抜け止め部材32は、環状保持部313の径方向内側、天板部312の下側、かつ、静止軸受ユニット24の径方向外側に配置された、円環状の部材である。抜け止め部材32は、環状保持部313の内周面に、例えば接着剤で、固定されている。抜け止め部材32の内周部は、スリーブハウジング52のフランジ部523の下方に位置している。回転部3が上方へ移動しようとすると、フランジ部523の下面と、抜け止め部材32の内周部の上面とが、接触する。これにより、回転部3の上方への移動が、制限されている。
【0033】
マグネット33は、環状保持部313の径方向外側、天板部312の下側、かつ、ステータコア221の径方向内側に配置された、円環状の部材である。マグネット33は、環状保持部313の外周面に、例えば接着剤で、固定されている。マグネット33の外周面は、複数のティース42の径方向内側の端面と、径方向に対向する。また、マグネット33の外周面には、N極とS極とが、周方向に交互に着磁されている。
【0034】
このようなスピンドルモータ11において、コイル222に駆動電流を与えると、ステータコア221の複数のティース42に、径方向の磁束が生じる。そして、ティース42とマグネット33との間の磁束の作用により、周方向のトルクが発生する。その結果、静止部2に対して回転部3が、中心軸9を中心として回転する。ハブ31に保持された磁気ディスク12は、回転部3とともに、中心軸9を中心として回転する。
【0035】
<2−3.ティースおよびその近傍部位の詳細な構成>
続いて、ティース42およびその近傍部位のより詳細な構成について、説明する。図4は、スピンドルモータ11の部分縦断面図である。図4に示すように、本実施形態のティース42は、外側コア部421、中間コア部422、傾斜コア部423、および先端コア部424を有する。
【0036】
外側コア部421と中間コア部422とは、同一の軸方向位置において、径方向に連続している。外側コア部421は、ハブ31の外周面612より径方向外側に位置している。コイル222を構成する導線は、外側コア部421に巻かれている。中間コア部422は、外側コア部421およびコイル222より、径方向内側に位置している。中間コア部422は、ベース部21の内側平板部212の上面と、ハブ31のディスク支持部314との下面と間を、径方向に延びている。
【0037】
傾斜コア部423は、中間コア部422の内周部から、径方向内側かつ上方へ向けて、斜めに延びている。先端コア部424は、傾斜コア部423の内周部から、径方向内側へ向けて延びている。したがって、先端コア部424の少なくとも上端部は、外側コア部421や中間コア部422より、上方に配置されている。そして、先端コア部424の径方向内側の端面と、マグネット33の外周面とが、径方向に対向している。なお、先端コア部424の全体が、外側コア部421や中間コア部422より、上方に配置されていてもよい。
【0038】
また、図4に示すように、ディスク支持部314は、ティース42の先端コア部424より径方向外側、かつ、コイル222より径方向内側に位置している。そして、先端コア部424と、環状台部61と、コイル222とが、径方向にオーバーラップしている。すなわち、先端コア部424、環状台部61、およびコイル222のそれぞれの少なくとも一部分が、同一の高さ位置に配置されている。
【0039】
このため、環状台部を、コイルまたは先端コア部の上方に配置する場合より、ステータコア221に対する第1支持面611の高さ位置が、抑制される。したがって、ベース部21に対する第1支持面611の高さ位置も、抑制される。その結果、スピンドルモータ11の軸方向の寸法が、抑制される。
【0040】
特に、本実施形態では、コイル222の上端部の高さ位置が、環状台部61の下面より高く、かつ、第1支持面611より低い。したがって、磁気ディスク12とコイル222とが接触することはない。
【0041】
また、本実施形態では、ベース部21の内側平板部212に、貫通孔215が設けられている。そして、当該貫通孔215の内部に、コイル222の下部が収容されている。したがって、コイル222の下端部は、内側平板部212の上面より下方に、位置している。これにより、ベース部21に対するステータコア221およびコイル222の高さ位置が、抑制されている。その結果、スピンドルモータ11の軸方向の寸法が、さらに抑制されている。
【0042】
ただし、ティース42の先端コア部424は、外側コア部421や中間コア部422より、上方に配置されている。具体的には、先端コア部424の径方向内側の端面の上端部が、環状台部61の下面より高く、かつ、第1支持面611より低い位置に、配置されている。これにより、先端コア部424の高さ位置が、マグネット33の軸方向の中央の高さ位置に、近づけられている。したがって、先端コア部424とマグネット33との間で、効率よくトルクを発生させることができる。
【0043】
また、本実施形態では、傾斜コア部423が、ディスク支持部314の第2支持面621より径方向内側に、位置している。このようにすれば、環状台部61と傾斜コア部423とが、互いに軸方向の位置を制限しにくい。したがって、ステータコア221に対する環状台部61の高さを、より抑制できる。その結果、スピンドルモータ11の軸方向の寸法を、より抑制できる。
【0044】
ディスク支持部314の環状壁部62の下面と、傾斜コア部423の上面との間には、軸方向の隙間を確保しなければならない。その一方で、ディスク支持部314の剛性を高めるためには、環状壁部62を軸方向に厚くすることが好ましい。本実施形態では、これらの双方の要求を満たすために、環状壁部62の下面を、傾斜コア部423の上面に沿って広がる傾斜下面622としている。これにより、傾斜コア部423と環状壁部62との間に、必要最小限の隙間を確保しつつ、ディスク支持部314の軸方向の厚みも、確保している。
【0045】
また、スピンドルモータ11の薄型化の観点においては、中間コア部422の上面と、環状台部61の下面との軸方向の間隔も、最小限の間隔とすることが、好ましい。例えば、中間コア部422の上面と環状台部61の下面との軸方向の間隔を、先端コア部424の径方向内側の端面とマグネット33の外周面との径方向の間隔より、小さくすることが好ましい。
【0046】
また、本実施形態では、磁気シールド板23の全体が、ハブ31の外周面612より径方向外側に、配置されている。また、磁気シールド板23の上面が、第1支持面611より下方に位置している。そして、先端コア部424および環状台部61が、コイル222だけではなく、磁気シールド板23とも、径方向にオーバーラップしている。これにより、磁気シールド板23に起因する軸方向寸法の増加が、抑制されている。
【0047】
また、本実施形態では、マグネット33の上端部が、第1支持面611より上方に、位置している。これにより、ベース部21に対する第1支持面611の高さを抑えつつ、マグネット33の軸方向の長さを、長くしている。マグネット33の軸方向の長さを長くすれば、マグネット33の磁力を高めて、スピンドルモータ11のトルクを向上させることができる。
【0048】
本実施形態の構造では、コアバックから径方向内側へ、ティース42が薄板状に長く延びている。このため、ティース42が上下に振動しやすいことが、懸念される。この点を考慮し、本実施形態では、内側平板部212の上面と、中間コア部422の下面との間に、接着剤25を介在させている。このようにすれば、接着剤を介在させない場合より、ティース42の振動を抑制できる。
【0049】
また、本実施形態では、抜け止め部材32とマグネット33とが、環状保持部313に保持されている。このようにすれば、ハブの他の箇所にマグネットを保持させる場合より、環状保持部313の剛性が高まる。したがって、振動や衝撃という外部からの力に対する強度が、より向上する。
【0050】
<2−4.ティースの段差面について>
図5は、ステータコア221の上面図である。図6は、1本のティース42の付近における、ステータコア221の部分上面図である。図5および図6には、コイル222と、ハブ31の外周面612とが、二点鎖線で示されている。図5および図6に示すように、ティース42の外側コア部421の周方向の幅は、中間コア部422、傾斜コア部423、および先端コア部424の周方向の幅より、小さい。そして、外側コア部421と中間コア部422との間に、ティース42の周方向の幅を変化させる段差面70が、設けられている。
【0051】
段差面70は、ハブ31の外周面612より径方向外側、かつ、コイル222より径方向内側に、位置している。そして、段差面70は、コイル222と径方向に隙間を介して対向または接触している。本実施形態では、この段差面70によって、コイル222の径方向内側への巻き崩れを、防止している。また、段差面70によって、コイル222の径方向内側への巻き崩れを防止することで、コイル222を構成する導線と、ハブ31の外周面612との接触を、抑制している。これにより、コイル222をハブ31の径方向外側に配置することを、可能としている。その結果、スピンドルモータ11の軸方向の寸法が、抑制されている。
【0052】
段差面70は、ティース42の側面から、略周方向に広がっている。すなわち、ティース42の軸方向の寸法を拡大することなく、段差面70が形成されている。特に、本実施形態のステータコア221は、軸方向に積層された積層鋼板からなる。このため、略周方向に広がる段差面70を、容易に形成できる。
【0053】
本実施形態では、中間コア部422、傾斜コア部423、および先端コア部424が、外側コア部421より径方向内側に位置する内側コア部を、構成している。そして、内側コア部の径方向外側の端部に、段差面70が形成されている。すなわち、内側コア部は、ハブ31の外周面より径方向外側、かつ、コイル222のより径方向内側に、段差面70を含む位置決め部を、有している。そして、当該位置決め部によって、導線が位置決めされている。
【0054】
段差面70は、ティース42の周方向内側の基端部71と、ティース42の周方向外側の側端部72との間で、略周方向に広がっている。本実施形態では、基端部71と側端部72とが、略同等の径方向位置に、配置されている。図6のように、段差面70の周方向の幅は、コイル222の周方向の幅より、大きいことが好ましい。このようにすれば、コイル222を構成する導線とハブ31の外周面612との接触を、より抑制できる。
【0055】
また、本実施形態では、中間コア部422、傾斜コア部423、および先端コア部424の周方向の幅が、外側コア部421の周方向の幅より大きい。このため、外側コア部421に発生した磁束が、中間コア部422、傾斜コア部423、および先端コア部424において、磁気飽和を起こしにくい。したがって、ティース42の径方向内側の端部に、効率よく磁束を発生させることができる。
【0056】
また、本実施形態では、先端コア部424の周方向の幅が、中間コア部422の周方向の幅より、大きい。このようにすれば、互いに隣り合う先端コア部424の、周方向の間隔が狭まる。そうすると、複数のティース42の径方向内側の端部付近において、周方向の磁束の切り替わりがなだらかとなり、コギングトルクが抑制される。
【0057】
また、図4のように、本実施形態では、コイル222の下部が、接着剤25で固定されている。このように、コイル222の少なくとも一部分を接着剤で固定しておけば、コイル222の巻き崩れを、より防止できる。
【0058】
<3.変形例>
以上、本発明の例示的な実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。
【0059】
図7は、一変形例に係るステータコア221Bの部分上面図である。図7の例では、段差面70Bの側端部72Bが、段差面70Bの基端部71Bより、径方向外側に位置している。このようにすれば、コイル222Bの径方向内側の端部付近において、導線の巻き崩れが、より生じにくくなる。したがって、導線とハブの外周面612Bとの接触を、より抑制できる。
【0060】
図8は、他の変形例に係るステータコア221Cの部分上面図である。図8の例では、段差面70Cの側端部72Cが、段差面70Cの基端部71Cより、径方向内側に位置している。このようにすれば、外側コア部421Cの径方向内側の端部付近に、導線を配置しやすい。したがって、外側コア部421Cに導線を巻いてコイル222Cを形成する作業が、容易となる。
【0061】
図9は、他の変形例に係るステータコア221Dの部分上面図である。図9の例では、中間コア部422Dの周方向の幅と、傾斜コア部423Dの周方向の幅と、先端コア部424Dの周方向の幅とが、略同等となっている。このようにすれば、段差面70Dを、周方向に広くとることができる。したがって、コイル222Dの巻き崩れを、より抑制できる。
【0062】
ただし、図6〜図8のように、中間コア部の周方向の幅を、先端コア部の周方向の幅より狭くすれば、中間コア部の上面と、ハブの環状台部の下面との対向面積を、抑制できる。そうすると、中間コア部から環状台部への磁束の漏れを、抑制できる。特に、ハブが磁性体で構成されている場合には、中間コア部から環状台部への磁束の漏れが生じやすいため、図6〜図8の形状の方が好ましい。
【0063】
図10は、他の変形例に係るステータコア221Eの部分上面図である。図10の例では、外側コア部421Eと中間コア部422Eとの間に、壁部425Eが設けられている。壁部425Eの周方向の幅は、外側コア部421Eの周方向の幅および中間コア部422Eの周方向の幅より、大きい。そして、壁部425Eの径方向外側の段差面70Eによって、コイル222Eの巻き崩れが、抑制されている。
【0064】
このようにすれば、上記の実施形態や各変形例より、中間コア部422Eの周方向の幅を、さらに狭くすることができる。当該中間コア部422Eの少なくとも一部分を、ハブのディスク支持部と、平面視においてオーバーラップさせるように配置すれば、ティース42Eの上面と、ディスク支持部の下面との対向面積を、より抑制できる。したがって、ティース42Eから環状台部への磁束の漏れを、さらに抑制できる。
【0065】
ただし、中間コア部422Eの周方向の幅を、外側コア部421Eの周方向の幅より狭くすると、中間コア部422Eにおいて磁気飽和が生じやすくなる。したがって、ティース42Eの径方向内側の端部に、効率よく磁束を発生させるためには、中間コア部422Eの周方向の幅を、外側コア部421の周方向の幅と、同等またはそれより大きく設定することが、好ましい。
【0066】
また、各部材の細部の形状については、本願の各図に示された形状と、相違していてもよい。
【0067】
また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、スピンドルモータおよびディスク駆動装置に利用できる。
【符号の説明】
【0069】
1 ディスク駆動装置
2,2A 静止部
3,3A 回転部
9,9A 中心軸
11,11A スピンドルモータ
12 磁気ディスク
12A ディスク
13 アクセス部
14 カバー
21,21A ベース部
22 ステータユニット
23 磁気シールド板
24 静止軸受ユニット
25 接着剤
31 ハブ
32 抜け止め部材
33,33A マグネット
41,41A コアバック
42,42A,42E ティース
61 環状台部
62 環状壁部
70,70B〜70E 段差面
71,71B,71C 基端部
72,72B,72C 側端部
215 貫通孔
221,221A〜221E ステータコア
222,222A〜222E コイル
311 シャフト部
312 天板部
313 環状保持部
314,314A ディスク支持部
421,421C,421E 外側コア部
422,422D,422E 中間コア部
423,423D 傾斜コア部
424,424D 先端コア部
425E 壁部
523 フランジ部
611,611A 第1支持面
612,612B 外周面
621 第2支持面
622 傾斜下面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静止部と、
上下に延びる中心軸を中心として、前記静止部に対して回転可能に支持される回転部と
を有し、
前記静止部は、
上下に延びる中心軸に対して直交する方向に広がるベース部と、
前記ベース部の上面側に配置されたステータコアと、
前記ステータコアに取り付けられたコイルと、
を有し、
前記回転部は、
前記ステータコアの径方向内側に配置されたマグネットと、
ディスクの下面に当接する第1支持面を有し、前記マグネットより径方向外側に配置されるディスク支持部と、
を有し、
前記ステータコアは、
円環状のコアバックと、
前記コアバックから径方向内側へ向けて延びる複数のティースと、
を有し、
前記ディスク支持部が、前記ティースの径方向内側の端部より径方向外側、かつ、前記コイルより径方向内側に位置し、
前記ティースの径方向内側の端部と、前記ディスク支持部と、前記コイルとが、径方向にオーバーラップしているスピンドルモータ。
【請求項2】
請求項1に記載のスピンドルモータにおいて、
前記コイルの上端部の高さ位置は、前記ディスク支持部の下面より高く、かつ、前記第1支持面より低いスピンドルモータ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のスピンドルモータにおいて、
前記ティースの径方向内側の端面の上端部の高さ位置は、前記ディスク支持部の下面より高く、かつ、前記第1支持面より低いスピンドルモータ。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれかに記載のスピンドルモータにおいて、
前記ティースは、
前記コイルを構成する導線が巻かれた外側コア部と、
前記外側コア部より径方向内側において、前記ディスク支持部と前記ベース部との間を径方向に延びる中間コア部と、
前記中間コア部の内周部から径方向内側かつ上方へ向けて延びる傾斜コア部と、
前記傾斜コア部の内周部から径方向内側へ向けて延びる先端コア部と、
を有し、
前記先端コア部の径方向内側の端面と、前記マグネットの外周面とが、径方向に対向しているスピンドルモータ。
【請求項5】
請求項4に記載のスピンドルモータにおいて、
前記外側コア部と前記中間コア部とが、同一の軸方向位置において、径方向に連続し、
前記コイルの下端部が、前記ベース部の上面より下方に、位置しているスピンドルモータ。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載のスピンドルモータにおいて、
前記ディスク支持部は、ディスクの内周部に当接する第2支持面を有し、
前記傾斜コア部は、前記第2支持面より径方向内側に位置しているスピンドルモータ。
【請求項7】
請求項4から請求項6までのいずれかに記載のスピンドルモータにおいて、
前記ディスク支持部は、前記傾斜コア部の上面に沿って広がる傾斜下面を有するスピンドルモータ。
【請求項8】
請求項4から請求項7までのいずれかに記載のスピンドルモータにおいて、
前記ディスク支持部の下面と前記中間コア部の上面との軸方向の間隔は、前記先端コア部の径方向内側の端面と前記マグネットの外周面との径方向の間隔より、小さいスピンドルモータ。
【請求項9】
請求項4から請求項8までのいずれかに記載のスピンドルモータにおいて、
前記外側コア部は、前記ディスク支持部より径方向外側に位置し、
前記中間コア部は、前記コイルより径方向内側に位置し、
前記中間コア部の周方向の幅は、前記外側コア部の周方向の幅より、大きいスピンドルモータ。
【請求項10】
請求項1から請求項9までのいずれかに記載のスピンドルモータにおいて、
前記コイルの上方に、磁性体からなる磁気シールド板が配置され、
前記磁気シールド板の上面が、前記第1支持面より下方に位置しているスピンドルモータ。
【請求項11】
請求項1から請求項10までのいずれかに記載のスピンドルモータにおいて、
前記ステータコアは、電磁鋼板が軸方向に積層された積層鋼板からなり、
前記ベース部は、磁性体からなり、
前記ステータコアと前記ベース部との間に、接着剤が介在しているスピンドルモータ。
【請求項12】
請求項1から請求項11までのいずれかに記載のスピンドルモータにおいて、
前記第1支持面は、前記マグネットの上端部より下側に位置するスピンドルモータ。
【請求項13】
請求項1から請求項12までのいずれかに記載のスピンドルモータにおいて、
前記静止部は、
回転部側のシャフトを回転可能に支持する軸受部と、
前記軸受部の周囲において、径方向外側へ向けて突出するフランジ部と、
を有し、
前記回転部は、
前記フランジ部の下方に位置する抜け止め部材と、
前記マグネットおよび前記抜け止め部材を保持する略円筒状の環状保持部と、
を有し、
前記ベース部は、前記軸受部の外周面に固定される内側円筒部を有するスピンドルモータ。
【請求項14】
請求項1から請求項13までのいずれかに記載のスピンドルモータと、
前記スピンドルモータの前記回転部に支持されたディスクに対し、情報の読み出しおよび書き込みの少なくとも一方を行うアクセス部と、
カバーと、
を備え、
前記ベース部と前記カバーとで構成される筐体の内部に、前記回転部および前記アクセス部が、収容されているディスク駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−46455(P2013−46455A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181418(P2011−181418)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000232302)日本電産株式会社 (697)
【Fターム(参考)】