説明

スピーカー化粧用シート固定用両面粘着テープ

【課題】VOCの発生が極めて少ないスピーカー化粧用シート固定用両面粘着テープを提供する。
【解決手段】本発明のスピーカー化粧用シート固定用両面粘着テープは、基材の両面側に粘着剤層(A層及びB層)を有し、総揮発性有機化合物量(TVOC量)が300μg/g以下であり、ホルムアルデヒド放散量が3μg/m3以下であり、且つトルエン放散量が10μg/g以下であることを特徴とする。前記のA層のベースポリマーは、酢酸エチルのみからなる溶剤又は酢酸エチルの割合が90重量%以上である混合溶剤から選択される溶剤を用いる溶液重合により形成されていることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、VOCの発生が少なく、テレビやオーディオ製品等のスピーカー部分に一定の開孔部分を有する化粧用シートを貼り合わせる際に用いられるスピーカー化粧用シート固定用両面粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
両面粘着テープ(両面粘着シートも含むものとする)は、作業性が良好で接着の信頼性が高い接合手段として、家電製品や自動車、OA機器などの各種産業分野に利用されている。例えば、テレビやオーディオ製品等のスピーカー前面部分には、音量や音質などの音響性能を損なわないようにするため、一定の開孔部分を有する化粧用シートが紗などと共に両面粘着テープで貼り合わせられている(特許文献1及び2参照)。
【0003】
近年、環境衛生やシックハウス症候群への対応から室内空気汚染を防ぐ必要があり、揮発性有機化合物(VOC)が低減された両面粘着テープが強く求められるようになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−305038号公報
【特許文献2】特開平9−157612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、VOCの発生が極めて少ないスピーカー化粧用シート固定用両面粘着テープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、基材の両面側に粘着剤層を有し、少なくとも一方の粘着剤層表面がセパレーターで保護されている両面粘着テープにおいて、総揮発性有機化合物量(TVOC量)、ホルムアルデヒドの放散量及びトルエンの放散量を所定の値以下にすることにより、VOCの発生の少ないスピーカー化粧用シート固定用両面粘着テープが得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、基材の両面側に粘着剤層(A層及びB層)を有し、総揮発性有機化合物量(TVOC量)が300μg/g以下であり、ホルムアルデヒド放散量が3μg/m3以下であり、且つトルエン放散量が10μg/g以下であることを特徴とするスピーカー化粧用シート固定用両面粘着テープを提供する。
【0008】
さらに、本発明は、前記のA層のベースポリマーが、酢酸エチルのみからなる溶剤又は酢酸エチルの割合が90重量%以上である混合溶剤から選択される溶剤を用いる溶液重合により形成されている前記のスピーカー化粧用シート固定用両面粘着テープを提供する。
【0009】
さらに、本発明は、前記のA層及びB層において、ベースポリマーの含有量が、粘着剤層の総重量に対して25重量%以上である前記のスピーカー化粧用シート固定用両面粘着テープを提供する。
【0010】
さらに、本発明は、前記の粘着剤層のベースポリマーが、アクリル系ポリマーである前記のスピーカー化粧用シート固定用両面粘着テープを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のスピーカー化粧用シート固定用両面粘着テープは、前記構成を有しているので、VOCの発生が極めて少なく、特にスピーカー化粧用シートを筐体のスピーカー部分に貼付させる用途に極めて好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のスピーカー化粧用シート固定用両面粘着テープ(以下、単に「本発明の両面粘着テープ」と称する場合がある)は、基材の両面側に粘着剤層(A層及びB層)を有する両面粘着テープである。なお、以下では、基材の一方の面側の粘着剤層をA層、もう一方の面側の粘着剤層をB層と称する場合がある。特に限定されないが、本発明のスピーカー化粧用シート固定用両面粘着テープを使用する際において、A層はスピーカー化粧用シート(化粧用シート)と貼り合わされる側(化粧用シート側)の粘着剤層として用いられ、B層は筐体と貼り合わされる側(筐体側)の粘着剤層として用いられることが好ましい。また、上記「テープ」にはテープ状のものだけでなくシート状のものも含む。即ち、「両面粘着テープ」には「両面粘着シート」も含むものとする。本発明の両面粘着テープは、少なくともA層表面上にセパレーターを有することが好ましい。一方、B層表面にはセパレーターを有していてもよいし、有していなくてもよい。
【0013】
本発明の両面粘着テープの総揮発性有機化合物量(TVOC量)は、300μg/g以下であり、好ましくは200μg/g以下であり、さらに好ましくは150μg/g以下である。300μg/gを超えると環境面や人体に対する安全性の点から好ましくない。なお、総揮発性有機化合物量(TVOC量)は、少ない方が好ましいが、例えば、5μg/g以上であり、好ましくは10μg/g以上である。
【0014】
総揮発性有機化合物量は、下記の[総揮発性有機化合物量(TVOC量)測定方法]により測定された値を採用する。
[総揮発性有機化合物量(TVOC量)測定方法]
両面粘着テープから所定のサイズ(1cm×5cm、面積:5cm2)を切り取り、その片面にアルミホイルを貼り合わせ、もう一方の面を開放状態とすることにより、アルミホイルに貼付した試料を作製する。なお、開放状態とする面は、両面粘着テープのどちらの面であってもよく、任意で選択できる。
このアルミホイルに貼付した試料を、バイアル瓶(容量:20ml)に入れて密栓する。その後、試料を入れたバイアル瓶を、ヘッドスペースオートサンプラーにより80℃30分間加熱し、加熱状態のガス1.0mlを、ガスクロマトグラフ測定装置(GC測定装置)に注入して、測定を行う。
総揮発性有機化合物(TVOC)の量は、別途作成した検量線に基づき、トルエン標準により換算する。より具体的には、GC測定により得られた試料の全成分のピーク面積から下記検量線に基づき、トルエン標準に換算した試料1gあたりの総揮発性有機化合物量(TVOC量)の量を算出する。
(検量線の作成)
標準試料のトルエンをアセトンで希釈し、混合標準液を得る。この混合標準液1.0μlをバイアル瓶に入れ、150℃で30分間加熱し、試料と同様にGC測定を行い、標品の調整濃度とピーク面積とで検量線を作成する。
なお、試料の重量には、基材及び該基材に支持された粘着剤層を含む両面粘着テープ全体の重量であり、セパレーターは含まない。
ガスクロマトグラフの測定条件は、次の通りである。
(ガスクロマトグラフの測定条件)
・カラム:DB−FFAP1.0μm(0.535mmφ×30m)
・キャリアーガス:He 5.0mL/min
・カラムヘッド圧:23kPa(40℃)
・注入口:スプリット(スプリット比 12:1、温度250℃)
・カラム温度:40℃(0min)−<+10℃/min>−250℃(9min)[40℃より、昇温速度10℃/minで250℃まで昇温させた後、250℃で9分間保持させるという意味]
・検出器:FID(温度250℃)
【0015】
本発明の両面粘着テープのホルムアルデヒドの放散量は、3μg/m3以下であり、好ましくは2μg/m3以下であり、さらに好ましくは1μg/m3以下である。ホルムアルデヒドの放散量が3μg/m3を越えると、両面粘着テープから発生するVOCの量が多くなり好ましくない。
【0016】
ホルムアルデヒドの放散量は、JIS A 1901(2003)に準拠した方法により測定された値を採用する。
両面粘着テープから所定のサイズ(表面積:0.043m2)となるように切り取り、片面にアルミホイルを貼り合わせ、もう一方の面を開放状態とすることにより、アルミホイルに貼付した試料を作製する。なお、開放状態とする面は、両面粘着テープのどちらの面であってもよく、任意で選択できる。
該アルミホイルに貼付した試料を、一定の温度、相対湿度及び換気量の条件をもつ小形チャンバー内の中央部に置き、空気を流通させる。
(小形チャンバーの条件)
温度:28.0±0.5℃
相対湿度:(50±5)%
換気回数:0.5回±10%/1時間
試験開始から1日(24時間)経過後、小形チャンバー出口で捕集した空気から小形チャンバー濃度(小形チャンバー出口で測定したホルムアルデヒドの濃度。空気捕集時間中において、小形チャンバーの排気口で採取されるホルムアルデヒドの総量を空気捕集量で除した値。)を求めることにより、試験開始から1日(24時間)経過後の小形チャンバー内のホルムアルデヒド濃度(μg/m3)を算出し、定量する。
この試験開始から1日(24時間)経過後の小形チャンバー内のホルムアルデヒド濃度をホルムアルデヒドの放散量とする。
具体的な条件は次の通りである。
サンプリング条件について
・捕集管:ジーエルサイエンス社製「GL−PAK mini AERO DNPH カートリッジ」
・流量:167mL/min
・採取量:10L
測定機器などについて
・小形チャンバー:ADTEC社製「20Lチャンバー」
・清浄空気供給装置:新菱エコビジネス社製「ADclean」
・シール材、シールボックス:なし
・温湿度制御装置:ADTEC社製「ADPAC−SYSTEM III 温湿度ユニット」
・空気捕集装置:ジーエルサイエンス社製「SP208−1000DUAL サンプリングポンプ」
分析条件について
・高速液体クロマトグラフ:Waters社製「TM996PAD」
・検出器:UV Detector
・カラム:Waters社製「Puresil C18(4.6×150mm)」
・移動相:アセトニトリル水溶液(アセトニトリル:水=50:50)
・注入量:20μL
・検出波長:360nm
【0017】
本発明の両面粘着テープのトルエンの放散量は、10μg/g以下であり、好ましくは5μg/g以下であり、さらに好ましくは3μg/g以下である。トルエンの放散量が10μg/gを越えると、両面粘着テープから発生するVOCの量が多くなり好ましくない。
【0018】
トルエンの放散量は、下記の[トルエン放散量測定方法]により測定された値を採用する。
[トルエン放散量測定方法]
両面粘着テープから所定のサイズ(1cm×5cm、面積:5cm2)を切り取り、片面にアルミホイルを貼り合わせ、もう一方の面を開放状態とすることにより、アルミホイルに貼付した試料を作製する。なお、開放状態とする面は、両面粘着テープのどちらの面であってもよく、任意で選択できる。
このアルミホイルに貼付した試料を、バイアル瓶(容量:20ml)に入れて密栓する。その後、試料を入れたバイアル瓶を、ヘッドスペースオートサンプラーにより80℃で30分間加熱し、加熱状態のガス1.0mlを、ガスクロマトグラフ測定装置(GC測定装置)に注入して、トルエンの量を測定する。より具体的には、GC測定により得られた試料のトルエン帰属のピーク面積から下記にて作成した検量線に基づき、トルエン量を求め、試料(両面粘着テープ)1gあたりのトルエンの含有量(μg/g)を算出する。このトルエン含有量をトルエンの放散量とする。
(検量線の作成)
標準試料のトルエンをアセトンで希釈し、混合標準液を得る。この混合標準液1.0μlをバイアル瓶に入れ、150℃で30分間加熱し、試料と同様にGC測定を行い、標品の調整濃度とピーク面積とで検量線を作成する。
ガスクロマトグラフの測定条件は、次の通りである。
(ガスクロマトグラフの測定条件)
・カラム:DB−FFAP1.0μm(0.535mmφ×30m)
・キャリアーガス:He 5.0mL/min
・カラムヘッド圧:23kPa(40℃)
・注入口:スプリット(スプリット比 12:1、温度250℃)
・カラム温度:40℃(0min)−<+10℃/min>−250℃(9min)[40℃より、昇温速度10℃/minで250℃まで昇温させた後、250℃で9分間保持させるという意味]
・検出器:FID(温度250℃)
【0019】
(基材)
本発明の両面粘着テープを構成する基材としては、特に制限されないが、例えば、紙などの紙系基材;布、不織布、ネットなどの繊維系基材;金属箔、金属板などの金属系基材;プラスチックのフィルムやシートなどのプラスチック系基材;ゴムシートなどのゴム系基材;発泡シートなどの発泡体やこれらの積層体(特に、プラスチック系基材と他の基材との積層体や、プラスチックフィルム(又はシート)同士の積層体など)等の適宜な薄葉体を用いることができる。中でも、柔軟で被着体への追従性に優れる点から、繊維系基材が好ましく、特に不織布基材が好ましい。これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なお、上記の「基材」とは、両面粘着テープが使用される(被着体に貼付される)際には、粘着剤層とともに被着体に貼付される部分である。両面粘着テープの使用時(貼付時)に剥離されるセパレーター(剥離ライナー)は「基材」には含まない。
【0020】
プラスチックのフィルムやシートにおける素材としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のα−オレフィンをモノマー成分とするオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂;ポリ塩化ビニル(PVC);酢酸ビニル系樹脂;ポリフェニレンスルフィド(PPS);ポリアミド(ナイロン)、全芳香族ポリアミド(アラミド)等のアミド系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などが挙げられる。
【0021】
また、本発明の両面粘着テープの基材を構成する不織布としては、両面粘着テープの基材として用いられる慣用乃至公知の不織布(例えば、マニラ麻;パルプ;レーヨン、アセテート繊維、ポリエステル繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維などの化学繊維;及びこれらの混合物など)を用いることができる。
【0022】
不織布の透気度は、特に制限されないが、0.3sec以下が好ましく、より好ましくは0.2sec以下である。不織布の透気度が0.3secよりも大きくなると、不織布に粘着剤を塗布する際の、粘着剤の不織布への含浸性が低下し、両面粘着テープの強度が不十分なものとなる場合がある。なお、不織布の透気度はJIS−P−8117法により測定できる。
【0023】
不織布の坪量は、特に制限されないが、10〜30g/m2が好ましく、より好ましくは10〜25g/m2である。坪量が10g/m2未満であると、基材の強度が不足したり、加工性が劣る場合があり、一方、坪量が30g/m2を越えると、粘着剤層の厚さを厚くすることが難しくなり、所望の厚さの粘着剤層を得ることができず、粘着特性が低下する場合がある。
【0024】
上記基材の厚さは、両面粘着テープに要求される強度や柔軟性、両面粘着テープの使用目的などに応じて適宜に選択でき、例えば、一般的には1000μm以下(例えば1〜1000μm)、好ましくは1〜500μm、さらに好ましくは3〜300μm程度であるが、これらに限定されない。なお、基材は単層の形態を有していてもよく、積層された形態を有していてもよい。また、基材の表面には、粘着剤層等との密着性を高めるため、慣用の表面処理、例えば、コロナ処理、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理等の化学的又は物理的方法による酸化処理等が施されていてもよく、下塗り剤や剥離剤等によるコーティング処理等が施されていてもよい。
【0025】
(粘着剤層、粘着剤)
本発明の両面粘着テープにおいて、粘着剤層(A層及びB層)は、基材の両面側に設けられている。本発明のスピーカー化粧用シート固定用両面粘着テープを使用する際において、A層表面は、スピーカー化粧用シートと貼り合わされる側の粘着面として好適に用いられ、一方B層表面は、筐体と貼り合わされる側の粘着面として好適に用いられる。なお、本発明の両面粘着テープでは、A層表面は少なくともセパレーターで保護されていることが好ましい。
【0026】
本発明の両面粘着テープにおいて、A層及びB層を形成する粘着剤としては、特に制限されないが、例えば、粘着テープや粘着シートに一般的に用いられる公知慣用の粘着剤を用いることができ、より具体的には、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、フッ素系粘着剤、エポキシ系粘着剤などの公知慣用の粘着剤(感圧性接着剤)が挙げられる。上記の粘着剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、A層を形成する粘着剤とB層を形成する粘着剤とは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0027】
また、本発明の両面粘着テープでは、粘着特性の点から、アクリル系ポリマーをベースポリマーとして含有するアクリル系粘着剤が好ましく、すなわちA層及びB層は、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤層であることが好ましい。
【0028】
A層中のベースポリマー(特にアクリル系ポリマー)の含有量は、粘着特性をより発現させる点から、粘着剤層の総重量に対して、25重量%以上(例えば25〜95重量%)であることが好ましく、より好ましくは40重量%以上(例えば40〜90重量%)である。
【0029】
また、B層中のベースポリマー(特にアクリル系ポリマー)の含有量は、粘着特性をより発現させる点から、粘着剤層の総重量に対して、25重量%以上(例えば25〜95重量%)であることが好ましく、より好ましくは55重量%以上(例えば55〜95重量%)であり、さらにより好ましくは65重量%以上(例えば65〜85重量%)である。
【0030】
上記アクリル系ポリマーを構成する主たるモノマー成分としては、直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(以下、単に「(メタ)アクリル酸アルキルエステル」と称する場合がある)を好適に用いることができる。上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシルなどの炭素数が1〜20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。中でも好ましくは炭素数が2〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルであり、さらに好ましくは炭素数が2〜10のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。特に好ましくは、アクリル酸ブチルである。なお、上記「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び/又は「メタクリル」を表し、他も同様である。
【0031】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルは単独で、又は2種以上組み合わせて使用することができる。なお、(メタ)アクリル酸アルキルエステルはアクリル系ポリマーの主たるモノマー成分(モノマー主成分)として用いられているので、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合は、例えば、アクリル系ポリマーを形成するためのモノマー成分全量に対して60重量%以上(例えば、60〜99重量%)が好ましく、より好ましくは80重量%以上である。
【0032】
上記アクリル系ポリマーでは、モノマー成分として、極性基含有モノマーや多官能性モノマーなどの各種共重合性モノマーが用いられてもよい。モノマー成分として共重合性モノマーを用いることにより、例えば、被着体への接着力を向上させたり、粘着剤の凝集力を高めたりすることができる。共重合性モノマーは単独で、又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0033】
前記極性基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸などのカルボキシル基含有モノマー又はその無水物(無水マレイン酸など);(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、ビニルアルコール、アリルアルコールなどの水酸基含有モノマー;アクリルアミド、メタアクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルなどのアミノ基含有モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジルなどのグリシジル基含有モノマー;アクリロニトリルやメタアクリロニトリルなどのシアノ基含有モノマー;N−ビニル−2−ピロリドン、(メタ)アクリロイルモルホリンの他、N−ビニルピリジン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピリミジン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルオキサゾール等の複素環含有ビニル系モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;ビニルスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルフォスフェートなどのリン酸基含有モノマー;シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミドなどのイミド基含有モノマー;2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートなどのイソシアネート基含有モノマーなどが挙げられる。極性基含有モノマーとしては、上記の中でも、カルボキシル基含有モノマー又はその無水物、水酸基含有モノマーが好適であり、アクリル酸、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシブチルが特に好適である。
【0034】
極性基含有モノマーの使用量としては、アクリル系ポリマーを形成するためのモノマー成分全量に対して30重量%以下(例えば1〜30重量%)であり、好ましくは2.5〜20重量%である。極性基含有モノマーの使用量が30重量%を超えると、例えば、アクリル系粘着剤層の凝集力が高くなりすぎ、粘着剤層の粘着性が低下するおそれがある。また、極性基含有モノマーの使用量が少なすぎると(例えば1重量%未満であると)、これらのモノマーの共重合の効果が得られなくなる場合がある。中でも、カルボキシル基含有モノマー又はその無水物を1〜10重量%使用することが好ましい。
【0035】
前記多官能性モノマーとしては、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレートなどが挙げられる。
【0036】
多官能性モノマーの使用量としては、アクリル系ポリマーを形成するためのモノマー成分全量に対して2重量%以下(例えば、0〜2重量%)であり、好ましくは0〜1重量%である。多官能性モノマーの使用量がアクリル系ポリマーを形成するためのモノマー成分全量に対して2重量%を超えると、例えば粘着剤層の凝集力が高くなりすぎ、粘着性が低下するおそれがある。
【0037】
また、極性基含有モノマーや多官能性モノマー以外の共重合性モノマーとしては、例えば、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルやフェニル(メタ)アクリレート等の芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルなどの前述の(メタ)アクリル酸アルキルエステル等以外の(メタ)アクリル酸エステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類、スチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物、エチレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレンなどのオレフィン又はジエン類;ビニルアルキルエーテルなどのビニルエーテル類;塩化ビニルなどが挙げられる。
【0038】
アクリル系ポリマーの重合方法としては、公知乃至慣用の重合方法を採用することができるが、VOCの発生を少なくする点からは、乳化重合、溶液重合、活性エネルギー線重合(光重合)などが好ましい。
【0039】
乳化重合の際には、一般的な一括仕込み方法(一括重合方法)、モノマー滴下方法(連続滴下方法、分割滴下方法など)などの各種重合方法を採用することができる。重合温度は、モノマーの種類や、重合開始剤の種類などに応じて適宜選択することができ、例えば、20〜100℃の範囲から選択できる。
【0040】
乳化重合時に用いられる重合開始剤としては、重合方法の種類に応じて、公知乃至慣用の重合開始剤から適宜選択することができる。重合開始剤としては、例えば、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2´−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2´−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2´−アゾビス(N,N´−ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2´−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2´−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1´−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2´−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、ジメチル−2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオネート、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン等のアゾ系重合開始剤;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩;ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、過酸化水素等の過酸化物系重合開始剤;フェニル置換エタン等の置換エタン系重合開始剤;芳香族カルボニル化合物;過酸化物と還元剤との組み合わせによるレドックス系開始剤[例えば、過酸化物とアスコルビン酸との組み合わせ(過酸化水素水とアスコルビン酸との組み合わせ等)、過酸化物と鉄(II)塩との組み合わせ(過酸化水素水と鉄(II)塩との組み合わせ等)、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムとの組み合わせ等によるレドックス系重合開始剤など]が挙げられる。重合開始剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0041】
乳化重合時に用いられる重合開始剤の使用量は、通常の使用量であればよく、例えば、アクリル系ポリマーを構成する全モノマー成分100重量部に対して、0.005〜1重量部程度の範囲から選択することができる。
【0042】
乳化重合の際には、乳化剤を用いることができる。乳化剤としては、例えば、何れの形態の乳化剤であってもよいが、アニオン系乳化剤、ノニオン系乳化剤を好適に用いることができる。アニオン系乳化剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸カリウム等のアルキル硫酸塩型アニオン系乳化剤;ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩型アニオン系乳化剤;ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩型アニオン系乳化剤;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸塩型アニオン系乳化剤;スルホコハク酸ラウリル二ナトリウム、ポリオキシエチレンスルホコハク酸ラウリル二ナトリウム等のスルホコハク酸型アニオン系乳化剤などが挙げられる。また、ノニオン系乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル型ノニオン系乳化剤;ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル型ノニオン系乳化剤;ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーなどのノニオン系乳化剤などが挙げられる。乳化剤は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
乳化剤の使用量としては、アクリル系ポリマーをエマルジョンの形態に調製することが可能な使用量であれば特に制限されず、例えば、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量に対して0.2〜10重量%(好ましくは0.5〜5重量%)程度の範囲から選択することができる。
【0044】
また、乳化重合の際には、分子量を調整するために、連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては、公知乃至慣用の連鎖移動剤を用いることができ、例えば、ドデカンチオール(ラウリルメルカプタン)、グリシジルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、メルカプト酢酸、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、2,3−ジメチルカプト−1−プロパノール等のメルカプタン類の他、α−メチルスチレンダイマーなどが挙げられる。連鎖移動剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。連鎖移動剤の使用量は、通常の使用量であればよく、例えば、アクリル系ポリマーを構成する全モノマー成分100重量部に対して0.001〜0.5重量部程度の範囲から選択することができる。
【0045】
溶液重合に際しては、各種の一般的な溶剤を用いることができる。このような溶剤としては、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル類;トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類;n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類などの有機溶剤が挙げられる。なお、溶剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0046】
本発明の両面粘着テープでは、VOCの発生を少なくする点から、例えば、溶液重合で使用される溶剤として、酢酸エチル、メチルエチルケトン、アセトン、ヘキサン、これらの混合溶剤などを使用し、トルエンを使用しないことが好ましい。
【0047】
特に、本発明の両面粘着テープでは、酢酸エチルのみからなる溶剤や酢酸エチルを含む混合溶剤が好ましい。また、溶液重合で使用される溶剤として酢酸エチルを含む混合溶剤を使用する場合、酢酸エチルの含有量を混合溶剤全量に対して90重量%以上(好ましくは95重量%以上)とすることが好ましい。酢酸エチルの含有量が混合溶剤全量に対して90重量%未満であると、TVOC量が多くなるおそれがあるからである。
【0048】
上記アクリル系ポリマーを溶液重合により重合させる際に用いられる重合開始剤としては、例えばアゾ系開始剤、過酸化物系重合開始剤(例えば、ジベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルマレエートなど)、レドックス系重合開始剤などが挙げられる。中でも、特開2002−69411号公報に開示されたアゾ系開始剤が特に好ましい。かかるアゾ系開始剤は開始剤の分解物が加熱発生ガス(アウトガス)の発生原因となる部分としてアクリル系ポリマー中に残留しにくいため好ましい。上記アゾ系開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリアン酸などが例示される。このような重合開始剤の使用量は、特に制限されないが、例えば、アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分全量100重量部に対して、0.01〜5重量部が好ましく、より好ましくは0.03〜3重量部である。
【0049】
アクリル系ポリマーを活性エネルギー線重合により調製する際には、光重合開始剤(光開始剤)を用いることができる。なお、光重合開始剤は単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0050】
上記光重合開始剤としては、特に制限されず、例えば、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α−ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤等を用いることができる。
【0051】
上記のベンゾインエーテル系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、アニソールメチルエーテルなどが挙げられる。アセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−(t−ブチル)ジクロロアセトフェノンなどが挙げられる。α−ケトール系光重合開始剤としては、例えば、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル]−2−メチルプロパン−1−オンなどが挙げられる。芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤としては、例えば、2−ナフタレンスルホニルクロライドなどが挙げられる。光活性オキシム系光重合開始剤としては、例えば、1−フェニル−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)−オキシムなどが挙げられる。ベンゾイン系光重合開始剤には、例えば、ベンゾインなどが含まれる。ベンジル系光重合開始剤には、例えば、ベンジルなどが含まれる。ベンゾフェノン系光重合開始剤は、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3、3′−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどが含まれる。ケタール系光重合開始剤には、例えば、ベンジルジメチルケタールなどが含まれる。チオキサントン系光重合開始剤には、例えば、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、ドデシルチオキサントンなどが含まれる。
【0052】
光重合開始剤の使用量としては、特に制限はされないが、例えば、アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分全量100重量部に対して0.01〜5重量部が好ましく、より好ましくは0.03〜3重量部である。
【0053】
上記の活性エネルギー線重合(光重合)に際して照射される活性エネルギー線としては、例えば、α線、β線、γ線、中性子線、電子線などの電離性放射線や、紫外線などが挙げられ、特に紫外線が好適である。よって、活性エネルギー線重合の中でも、紫外線照射による紫外線重合方法が特に好ましい。また、活性エネルギー線の照射エネルギー、照射時間、照射方法などは特に制限されず、光重合開始剤を活性化させて、モノマー成分の反応を生じさせることができればよい。
【0054】
本発明の両面粘着テープでは、粘着剤層(A層及びB層)には、粒子が添加されていてもよい。特にA層では、良好な艶消し効果を安定的に得る点や良好な意匠性を長期間維持する点から、粒子を含有することが好ましい。例えば、本発明のスピーカー化粧用シート固定用両面粘着テープが、A層で粒子を含有していると、スピーカーに実装したあとで、使用時に徐々に意匠性が低下するという問題の発生を効果的に抑制することができる。
【0055】
A層に粒子が含有されている場合における粒子としては、特に制限されず、無機物粒子であってもよく、有機物粒子であってもよい。さらに無機−有機ハイブリット粒子であってもよい。さらにまた、粒子は、中実体、中空体(バルーン)のいずれであってもよい。
【0056】
粒子は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。例えば、粒子を2種以上組み合わせて使用する場合、無機物あるいは有機物のみを2種以上組み合わせて使用してもよいし、有機物と無機物とを組み合わせて使用してもよい。
【0057】
上記無機物粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、シリコーン(シリコーンパウダー)、炭酸カルシウム、クレー、酸化チタン、タルク、層状ケイ酸塩、粘土鉱物、ガラス、ガラスビーズ、ガラスバルーン、アルミナバルーン、セラミックバルーン、チタン白、チタニア、ジルコニア、カーボン(例えばカーボンブラック、カーボンナノチューブ等)、金属粒子(例えばマグネシウム、アルミニウム、ジルコニウム、ケイ素、カルシウム、チタン、バナジウム、クロム、コバルト、ニッケル、銅、ゲルマニウム、モリブテン、ロジウム、銀、インジウム、スズ、タングステン、イリジウム、白金、鉄、金等)、金属酸化物粒子(例えば鉄酸化物、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化銅、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化カルシウム、酸化カドミウム等)などが挙げられる。また、金属酸化物(例えば上記金属酸化物、特に酸化チタンなど)が担持したシリカゲルを用いてもよい。
【0058】
上記有機物粒子としては、ポリエステルビーズ、ナイロンビーズ、シリコンビーズ、ウレタンビーズ、塩化ビニリデンビーズ、アクリルバルーンなどの有機粒子;架橋アクリル粒子、架橋スチレン粒子、メラミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂、ナイロン樹脂などの樹脂粒子が挙げられる。
【0059】
粒子の平均粒径としては、特に制限されないが、A層表面での光沢度維持の効果の点からは、1〜70μmが好ましく、好ましくは1〜20μmである。平均粒径が1μm未満であると光沢度維持の効果が得られない場合があり、一方平均粒径が70μmを越えると粘着力が大幅に低下する場合がある。
【0060】
A層における粒子の含有量としては、特に制限されないが、良好な艶消し効果を安定的に得る点から、ベースポリマー100重量部に対して0.1重量部以上200重量部以下が好ましい。
【0061】
本発明の両面粘着テープでは、粘着剤層(A層及びB層)には、架橋剤が添加されていてもよい。架橋剤は、粘着剤層のゲル分率(溶剤不溶分の割合)をコントロールするなどの役割を担う。架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、アミン系架橋剤などが挙げられる。中でも、イソシアネート系架橋剤が好ましい。これら架橋剤は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0062】
上記イソシアネート系架橋剤としては、例えば、1,2−エチレンジイソシアネート、1,4−ブチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートなどの低級脂肪族ポリイソシアネート類;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロへキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネ−ト、水素添加キシレンジイソシアネ−トなどの脂環族ポリイソシアネート類;2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート類などが挙げられ、その他、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート付加物[日本ポリウレタン工業(株)製、商品名「コロネートL」]、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート付加物[日本ポリウレタン工業(株)製、商品名「コロネートHL」]なども用いられる。
【0063】
上記エポキシ系架橋剤としては、例えば、N,N,N′,N′−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o−フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジル−トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノール−S−ジグリシジルエーテルの他、分子内にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ系樹脂などが挙げられる。
【0064】
上記架橋剤(特にイソシアネート系架橋剤)の使用量は、例えばA層がアクリル系粘着剤層である場合、アクリル系ポリマー100重量部に対して、1〜10重量部が好ましく、より好ましくは1〜5.5重量部である。またB層がアクリル系粘着剤層である場合、アクリル系ポリマー100重量部に対して、1〜5重量部が好ましく、より好ましくは1.5〜3.5重量部である。
【0065】
本発明の両面粘着テープでは、粘着剤層(A層及びB層)には、粘着付与樹脂が添加されていてもよい。粘着付与樹脂が添加されていると、高い接着性および優れた剥がれ防止性を確保することができる。
【0066】
粘着付与樹脂としては、特に制限されないが、例えば、ロジン系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、炭化水素系粘着付与樹脂、エポキシ系粘着付与樹脂、ポリアミド系粘着付与樹脂、エラストマー系粘着付与樹脂、フェノール系粘着付与樹脂、ケトン系粘着付与樹脂などが挙げられる。粘着付与樹脂は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0067】
具体的には、ロジン系粘着付与樹脂としては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンなどの未変性ロジン(生ロジン)や、これらの未変性ロジンを水添化、不均化、重合などにより変性した変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジンの他、その他の化学的に修飾されたロジンなど)の他、各種のロジン誘導体などが挙げられる。前記ロジン誘導体としては、例えば、未変性ロジンをアルコール類によりエステル化したロジンのエステル化合物や、水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジンなどの変性ロジンをアルコール類によりエステル化した変性ロジンのエステル化合物などのロジンエステル類;未変性ロジンや変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジンなど)を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジン類;ロジンエステル類を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類;未変性ロジン、変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジンなど)、不飽和脂肪酸変性ロジン類や不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類におけるカルボキシル基を還元処理したロジンアルコール類;未変性ロジン、変性ロジンや、各種ロジン誘導体等のロジン類(特に、ロジンエステル類)の金属塩などが挙げられる。また、ロジン誘導体としては、ロジン類(未変性ロジン、変性ロジンや、各種ロジン誘導体など)にフェノールを酸触媒で付加させ熱重合することにより得られるロジンフェノール樹脂なども用いることができる。
【0068】
テルペン系粘着付与樹脂としては、例えば、α−ピネン重合体、β−ピネン重合体、ジペンテン重合体などのテルペン系樹脂や、これらのテルペン系樹脂を変性(フェノール変性、芳香族変性、水素添加変性、炭化水素変性など)した変性テルペン系樹脂(例えば、テルペン−フェノール系樹脂、スチレン変性テルペン系樹脂、芳香族変性テルペン系樹脂、水素添加テルペン系樹脂など)などが挙げられる。
【0069】
炭化水素系粘着付与樹脂としては、例えば、脂肪族系炭化水素樹脂[炭素数4〜5のオレフィンやジエン(ブテン−1、イソブチレン、ペンテン−1等のオレフィン;ブタジエン、1,3−ペンタジエン、イソプレン等のジエンなど)などの脂肪族炭化水素の重合体など]、芳香族系炭化水素樹脂[炭素数が8〜10であるビニル基含有芳香族系炭化水素(スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、インデン、メチルインデンなど)の重合体など]、脂肪族系環状炭化水素樹脂[いわゆる「C4石油留分」や「C5石油留分」を環化二量体化した後重合させた脂環式炭化水素系樹脂、環状ジエン化合物(シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン、ジペンテンなど)の重合体又はその水素添加物、下記の芳香族系炭化水素樹脂や脂肪族・芳香族系石油樹脂の芳香環を水素添加した脂環式炭化水素系樹脂など]、脂肪族・芳香族系石油樹脂(スチレン−オレフィン系共重合体など)、脂肪族・脂環族系石油樹脂、水素添加炭化水素樹脂、クマロン系樹脂、クマロンインデン系樹脂などの各種の炭化水素系の樹脂が挙げられる。
【0070】
粘着付与樹脂としては、両面粘着テープにおけるホルムアルデヒド及びトルエンの放散量の低減化とともに、両面粘着テープに高い接着性や、剥がれ防止性、耐熱性を発揮させるために、軟化点(軟化温度)が120℃以上(好ましくは130℃以上、さらに好ましくは140℃以上)である粘着付与樹脂が好適である。なお、粘着付与樹脂の軟化点の上限としては、特に制限されず、例えば、170℃以下(好ましくは160℃以下、さらに好ましくは155℃以下)とすることができる。
【0071】
なお、粘着付与樹脂の軟化点は、JIS K 5902に規定される環球法によって測定された値として定義する。具体的には、試料をできるだけ低温ですみやかに融解し、これを平らな金属板の上に置いた環の中に、あわができないように注意して満たす。冷えたのち、少し加熱した小刀で環の上端を含む平面から盛り上がった部分を切り去る。つぎに、ガラス容器(径85mm以上、高さ127mm以上)の中に支持器を入れ、あらかじめ沸騰させてから冷やした水を深さ90mm以上となるまで注ぐ。つぎに、鋼球(径9.5mm、重量3.5g)と、試料を満たした環とを互いに接触しないようにして水中に浸し、水の温度を20℃プラスマイナス5℃に15分間保つ。つぎに、環中の試料の表面の中央に鋼球をのせ、これを支持器の上の定位置に置く。つぎに、環の上端から水面までの距離を50mmに保ち、温度計を置き、温度計の水銀球の中心の位置を環の中心と同じ高さとし、容器を加熱する。加熱に用いるブンゼンバーナーの炎は、容器の底の中心と縁との中間にあたるようにし、加熱を均等にする。なお、加熱が始まってから40℃に達したのちの水温の上昇する割合は、毎分5.0プラスマイナス0.5℃でなければならない。試料がしだいに軟化して環から流れ落ち、ついに底板に接触したときの温度を読み、これを軟化点とする。軟化点の測定は、同時に2個以上行い、その平均値を採用する。
【0072】
特に、粘着付与樹脂としては、粘着付与樹脂を製造する際の材料(又は原料)として、ホルムアルデヒドが用いられていない粘着付与樹脂を好適に用いることができる。粘着付与樹脂において、ホルムアルデヒドが材料又は原料として用いられていない粘着付与樹脂としては、例えば、ロジン系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、炭化水素系粘着付与樹脂、エポキシ系粘着付与樹脂、ポリアミド系粘着付与樹脂、エラストマー系粘着付与樹脂などが挙げられる。このように、粘着付与樹脂として、材料(又は原料)として、ホルムアルデヒドが用いられていない粘着付与樹脂を用いることにより、粘着付与樹脂含有粘着剤層を有している両面粘着テープにおけるホルムアルデヒドの放散量(含有量)を、3μg/m3未満にコントロールすることができる。また、TVOC量の低減を図ることができる。
【0073】
粘着付与樹脂を粘着剤層に添加する方法としては、特に制限されないが、例えば、後述の粘着剤組成物に添加する方法が挙げられる。より具体的には、後述の粘着剤組成物がエマルジョン型粘着剤組成物の場合、粘着付与樹脂を水に分散させることにより得られる粘着付与樹脂含有エマルジョンを添加する方法が挙げられる。なお、粘着剤組成物は、粘着剤層を形成する組成物を意味する。
【0074】
前記の粘着付与樹脂含有エマルジョンは、粘着付与樹脂を水に分散させて調製することができる。この際、粘着付与樹脂含有エマルジョンは、通常、粘着付与樹脂を溶解又は溶融させてから水に分散させることにより、調製されている。粘着付与樹脂が、軟化点の低い粘着付与樹脂である場合、粘着付与樹脂含有エマルジョンは、加熱により粘着付与樹脂を溶融させてから、水に分散させて調製することができる。一方、粘着付与樹脂が、軟化点の高い粘着付与樹脂である場合、粘着付与樹脂含有エマルジョンは、粘着付与樹脂を、有機溶剤を実質上全く用いずに高温高圧下で溶融させる方法、芳香族炭化水素系有機溶剤以外の材料を用いて溶解させる方法などの粘着付与樹脂の溶解又は溶融方法を利用して、粘着付与樹脂を溶解又は溶融させた後、水に分散させて調製することが好ましい。このように、粘着付与樹脂の溶解又は溶融に際して、前述のような粘着付与樹脂の溶解又は溶融方法を利用することにより、最終的に、両面粘着テープでのホルムアルデヒドの放散量(含有量)や、トルエンの放散量(含有量)を、それぞれ、3μg/m3未満、10μg/g以下にコントロールすることができる。また、TVOC量の低減を図ることができる。
【0075】
なお、有機溶剤を実質上全く用いずに、粘着付与樹脂を乳化させる方法としては、無溶剤系高圧乳化法や、無溶剤系転相乳化法などが挙げられる。無溶剤系高圧乳化法とは、粘着付与樹脂をその軟化点以上に加熱し、溶融状態で、これを水と適当な乳化剤とを予備混合し、高圧乳化機にて乳化して、エマルジョン化する方法である。また、無溶剤系転相乳化法とは、加圧下または常圧下にて、粘着付与樹脂の軟化点以上に昇温して乳化剤を練り込み、熱水を徐々に添加してゆき、転相乳化させて、エマルジョン化する方法である。
【0076】
また、芳香族炭化水素系有機溶剤以外の材料を用いて、粘着付与樹脂を溶解又は溶融させる方法において、芳香族炭化水素系有機溶剤以外の材料としては、粘着付与樹脂の種類などに応じて適宜選択することができ、脂環式炭化水素系有機溶剤を好適に用いることができる。このような脂環式炭化水素系有機溶剤としては、例えば、シクロヘキサン類(シクロヘキサンや、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、メチルエチルシクロヘキサン等のアルキル基含有シクロヘキサンなど)の他、該シクロヘキサン類に対応するシクロペンタン類(シクロペンタンやアルキル基含有シクロペンタンなど)、シクロヘプタン類(シクロヘプタンやアルキル基含有シクロヘプタンなど)、シクロオクタン類(シクロオクタンやアルキル基含有シクロオクタンなど)などが挙げられる。なお、脂環式炭化水素系有機溶剤などの有機溶剤は、単独で又は2種以上を混合して用いることできる。
【0077】
なお、脂環式炭化水素系有機溶剤などの有機溶剤の使用量は、特に制限されないが、粘着付与樹脂を溶解又は溶融させて、必要に応じて乳化剤を用いて水に分散させることが可能な使用量であればよいが、できるだけ最小限の使用量となっていることが好ましい。なお、有機溶剤は、粘着付与樹脂含有エマルジョンを調製した後は、公知乃至慣用の除去方法(例えば、減圧留去方法など)により、できるだけ除去することが重要である。
【0078】
本発明では、粘着付与樹脂含有エマルジョンの調製において、粘着付与樹脂を水に分散させる際には、乳化剤を用いることができる。乳化剤としては、上記に例示の乳化剤の中から、1種又は2種以上適宜選択して用いることができる。
【0079】
なお、上記のアクリル系ポリマーを乳化重合で得る際に用いられる乳化剤と、粘着付与樹脂含有エマルジョンを調製する際の乳化剤とは、同一の乳化剤または異なる乳化剤のいずれであってもよいが、例えば、一方がアニオン系乳化剤であれば、他方もアニオン系乳化剤を用いることが好ましく、また、一方がノニオン系乳化剤であれば、他方もノニオン系乳化剤を用いることが好ましい。
【0080】
乳化剤の使用量としては、粘着付与樹脂をエマルジョンの形態に調製することが可能な使用量であれば特に制限されず、例えば、粘着付与樹脂全量(固形分)に対して0.2〜10重量%(好ましくは0.5〜5重量%)程度の範囲から選択することができる。
【0081】
なお、粘着付与樹脂含有エマルジョンとしては、例えば、商品名「SK−253NS」(ハリマ化成株式会社製;軟化点145℃;有機溶剤を実質上全く用いずに製造された粘着付与樹脂含有エマルジョン)や、商品名「タマノルE−200−NT」(荒川化学株式会社製;軟化点150℃;脂環式炭化水素系有機溶剤を用いて製造された粘着付与樹脂含有エマルジョン)などが使用できる。
【0082】
また、粘着剤層には、前記成分の他、必要に応じて、老化防止剤、充填剤、着色剤(顔料や染料など)、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤、軟化剤、界面活性剤、帯電防止剤などの公知の添加剤が、本発明の特性を損なわない範囲で含まれていてもよい。
【0083】
本発明においては、粘着剤層は、意匠性の観点から、着色されていてもよい。着色される色は被着体であるスピーカーによっても異なり、特に限定されないが、黒色、グレーあるいはダークグレー調の色相などが好適に使用される。特に、スピーカー化粧用シートの開口部分から見える粘着剤層(A層)の表面が目立たないようにする観点から、黒色に着色されていることが好ましい。
【0084】
このような着色は、本発明の効果を損なわない程度の顔料(着色顔料)を添加することでなし得る。具体的な着色方法としては、例えば、後述の粘着剤組成物に顔料を添加することなどが挙げられる。なお、粘着剤組成物は、粘着剤層を形成する組成物を意味する。
【0085】
粘着剤組成物に顔料を添加することの具体的な方法の一例としては、例えば、粘着剤層が、後述のエマルジョン型粘着剤組成物により形成されている場合、エマルジョン型粘着剤組成物と着色剤の水分散液とを混合することにより得られる混合物により粘着剤層を形成することが挙げられる。エマルジョン型粘着剤組成物と着色剤の水分散液との混合物は、エマルジョン型粘着剤組成物に着色剤の水分散液を添加して混合することにより得てもよく、着色剤の水分散液にエマルジョン型粘着剤組成物を添加して混合することにより得てもよいが、通常、エマルジョン型粘着剤組成物に着色剤の水分散液を添加して混合することにより得られる。なお、混合する際のエマルジョン型粘着剤組成物の固形分濃度は、例えば45〜80重量%、好ましくは50〜70重量%程度の範囲から選択することができる。使用する着色剤の水分散液との粘度のバランスや、作業性などを考慮して選択すればよい。
【0086】
例えば、アクリル系粘着剤層を黒色に着色する場合、カーボンブラックを用いることができる。上記カーボンブラックの使用量としては、特に制限されないが、着色度合いなどの観点から、例えば、粘着剤層がアクリル系粘着剤層である場合、アクリル系ポリマー100重量部に対して0.1〜10重量部が好ましく、より好ましくは0.5〜4重量部である。
【0087】
本発明の両面粘着テープにおいて、艶消し性(低光沢度)や意匠性の点から、セパレーターを剥離した直後のA層表面の60度鏡面光沢度は、10%未満であることが好ましく、より好ましく8%未満であり、さらにより好ましく6.5%未満である。なお、「セパレーターを剥離した直後のA層表面の60度鏡面光沢度」を「初期光沢度」と称する場合がある。本願では、光沢度は、JIS Z 8741で規定する方法にて求められ、具体的には、例えば、デジタル変換光沢計(スガ試験器(株)製)を用いて、入射角・受光角を60°で測定した値を用いることができる。
【0088】
本発明の両面粘着テープにおいて、初期光沢度が10%未満であると、初期の艶消し効果にすぐれており、本発明の両面粘着テープがスピーカー化粧用シートを筐体のスピーカー部分に貼付固定する用途に用いられた際に、A層表面が化粧用シートの開孔部分から見えても、意匠性を損なうことはない。一方、初期光沢度が10%以上であると、スピーカーシートの開孔部よりテープ表面のギラツキが見え、テレビ等の高級感や意匠性を失うおそれがある。なお、初期光沢度の下限値は特に制限されず0%以上であればよい。なお、上記光沢度を有するA層を得る方法としては、特に限定されないが、例えば、表面凹凸を有するセパレーター上にA層を形成して転写する方法などが好ましく挙げられる。
【0089】
A層表面は、化粧用シート側の面であり、初期光沢度を低く抑える点から、適度にあれていることが好ましく、より好ましくはA層表面が凹凸形状を有することである。
【0090】
つまり、本発明の両面粘着テープのA層表面は、より良好な艶消し効果を得る点から、粗れていることが好ましい。
【0091】
本発明の両面粘着テープにおいて、A層表面は、特に制限されないが、例えば、表面に凹凸を有するセパレーターを選択して、該セパレーター表面の凹凸構造を粘着剤層表面に転写することなどにより、凹凸形状に制御されることが好ましい。
【0092】
A層の表面の表面粗さ(算術平均粗さRa)は、0.1〜15μmであることが好ましく、より好ましくは2〜4μmである。表面粗さが0.1μm未満では、A層表面での乱反射が少なく、十分な艶消し効果が得られない場合がある。一方、表面粗さが15μmを超えると、A層表面の凹凸が大きすぎて、被着体(化粧用シート)との濡れが十分に得られず、粘着特性が低下する場合がある。なお、算術平均粗さRaは、JIS−B−0601に準拠して求めることができ、例えば、走査型共焦点レーザー顕微鏡「LEXT OLS3000」(オリンパス社製)で測定することができる。
【0093】
一方、B層表面は、特に制限されず、平滑であってもよいし、A層表面のように凹凸構造を有していてもよい。
【0094】
粘着剤層(A層及びB層)は、粘着剤組成物により形成される。粘着剤組成物は、粘着剤層を形成する組成物のことであり、ベースポリマーを必須成分とする組成物であってもよく、ベースポリマーを形成するモノマー混合物又はその部分重合物を必須成分とする組成物であってもよい。また、粘着剤組成物には、必要に応じて、上述の添加剤、粒子、溶剤等が含まれていてもよい。なお、「モノマー混合物」とはベースポリマーを形成するモノマー成分のみからなる混合物を意味し、「部分重合物」とは、モノマー混合物の構成成分のうち1又は2以上の成分が部分的に重合している組成物のことを意味する。
【0095】
なお、粘着剤層(A層及びB層)は、特に制限されないが、例えば、適当なセパレーターや基材等の面上に、粘着剤組成物を塗布し塗布層を形成してから、必要に応じて硬化や乾燥を行うことにより形成される。
【0096】
粘着剤組成物としては、特に制限されず、いずれの形態を有していてもよい。例えば、エマルジョン型粘着剤組成物(水分散型粘着剤組成物)、溶剤型粘着剤組成物、熱溶融型粘着剤組成物(ホットメルト型粘着剤組成物)、活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物(紫外線硬化型粘着剤組成物等)などが挙げられる。
【0097】
本発明の両面粘着テープにおいて、TVOC量、ホルムアルデヒドの放散量、及びトルエンの放散量が所定の値になるように調整されており、A層及びB層を構成する粘着剤組成物は、ホルムアルデヒドおよびトルエンの含有量(又は残存量)の少ないものを用いることが重要である。このため、本発明の両面粘着テープでは、エマルジョン型粘着剤組成物、溶剤型粘着剤組成物、活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物が好ましく、さらに好ましくは溶剤型粘着剤組成物やエマルジョン型粘着剤組成物が好ましい。
【0098】
エマルジョン型粘着剤組成物は、乳化重合方法を利用して調製されたエマルジョン形態の重合物をそのまま用いて調製してもよく、乳化重合方法以外の重合方法を利用して調製されたベースポリマーを水に分散させて調製してもよい。乳化重合方法以外の重合方法を利用して調製されたベースポリマーを水に分散させて調製する場合には、例えば、アクリル系ポリマーである場合、上記乳化剤を用いることができる。また、トルエンを使用しないこと重要である。
【0099】
溶剤型粘着剤組成物は、溶液重合方法を利用して調製された重合物溶液をそのまま用いて調製してもよく、溶液重合方法以外の重合方法を利用して調製されたベースポリマーを溶剤に溶解させて調製してもよい。溶液重合方法以外の重合方法を利用して調製されたベースポリマーを溶剤に溶解させて調製する場合の溶剤としては、上記の各種の一般的な溶剤を用いることができる。特に、溶剤としては、上記の各種の一般的な溶剤を溶液重合に用いる場合と同様であり、トルエンを使用しないことが好ましい。
【0100】
活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物は、モノマー混合物又はその部分重合物から調製される。
【0101】
本発明の両面粘着テープにおける粘着剤層の厚さ(A層の厚さ及びB層の厚さ)は、特に限定されないが、30〜100μmが好ましく、より好ましくは50〜80μmである。粘着剤層の厚さが30μm未満であると接着性能が低下する場合があり、一方100μmを超えると加工性が低下する場合がある。また、粘着剤層は単層、複層の何れの形態を有していてもよい。なお、A層の厚さは、セパレーターをA層表面に貼付してからセパレーターを介して押圧することによりA層の凹凸構造を制御する場合には、凹凸構造を制御する前のA層の厚さをいい、また表面に凹凸を有するセパレーターの凹凸を有する面上に粘着剤を塗布・乾燥(必要に応じて硬化)して粘着剤層を設けた後、該粘着剤層を移着する方法によりA層の凹凸構造を制御する場合には、該セパレーター上に形成したA層の厚さをいう。
【0102】
(セパレーター)
本発明のスピーカー化粧用シート固定用両面粘着テープでは、使用時までの粘着面の保護やブロッキング防止の観点などから、少なくともA層側の表面(粘着面)上にセパレーター(剥離ライナー)を有していることが好ましい。また、B層側表面上にもセパレーターを有していてもよい。
【0103】
A層側の表面にセパレーターが設けられる場合、このセパレーターとしては、特に制限されず、例えば、公知・慣用のセパレーターを使用することができる。
【0104】
中でもA層の表面に設けられるセパレーターは、良好な艶消し効果や良好な意匠性を得る点から、表面に凹凸を有するセパレーターであることが好ましい。A層の表面はスピーカー化粧用シートと貼り合わされる側の面であり、より良好な艶消し性(低光沢度)を得る観点からA層表面では凹凸形状を有することが好ましく、表面に凹凸を有するセパレーターであれば、凹凸構造を転写させることによりA層表面に凹凸形状の付与が可能であるためである。
【0105】
表面に凹凸を有するセパレーターでは、当該凹凸を有する側の表面が、A層側の剥離面として用いられる。これにより、セパレーター表面の凹凸が粘着剤層表面に転写し、粘着剤層表面が適度にあれることによって表面光沢度が低下して艶消しの効果が得られる。
【0106】
本発明の両面粘着テープにおいて用いられるセパレーターとしては、例えば、公知慣用のセパレーターや公知慣用のセパレーターの表面に凹凸構造を施したものが挙げられる。なお、公知慣用のセパレーターの表面に凹凸構造を施す方法としては、特に制限されず、例えばエンボス加工が挙げられる。
【0107】
このような公知慣用のセパレーターとしては、具体的には、例えば、剥離処理剤による剥離処理層をセパレーター基材の少なくとも一方の表面に有するものの他、フッ素系ポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロフルオロエチレン−フッ化ビニリデン共重合体等)からなる低接着性基材や、無極性ポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂など)からなる低接着性基材などを用いることができる。
【0108】
上記セパレーターとしては、例えば、セパレーター用基材の少なくとも一方の面に剥離処理層が形成されているセパレーターを好適に用いることができる。このようなセパレーター用基材としては、ポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム等)、オレフィン系樹脂フィルム(ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等)、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム(ナイロンフィルム)、レーヨンフィルムなどのプラスチック系基材フィルム(合成樹脂フィルム)や紙類(上質紙、和紙、クラフト紙、グラシン紙、合成紙、トップコート紙など)の他、これらをラミネートや共押し出しなどにより複層化したもの(2〜3層の複合体)等が挙げられる。剥離処理層を構成する剥離処理剤としては、特に制限されず、例えば、シリコーン系剥離処理剤、フッ素系剥離処理剤、長鎖アルキル系剥離処理剤などを用いることができる。剥離処理剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0109】
本発明において、A層表面が、セパレーター表面の凹凸構造を粘着剤層表面に転写することなどにより凹凸形状に制御されている場合、表面に凹凸を有するセパレーターは、そのまま、A層を保護する用途に用いられる。
【0110】
セパレーターは、両側の粘着層表面に設けられてもよいし、片方の粘着面に背面剥離層を有するセパレーターを設け、シートを巻回することによって、反対側の粘着面にセパレーターの背面剥離層が接するようにしてもよい。
【0111】
(スピーカー化粧用シート固定用両面粘着テープ)
本発明のスピーカー化粧用シート固定用両面粘着テープは、基材の両面側に、粘着剤層(A層及びB層)を形成することにより、製造することができる。
【0112】
基材の両面側に粘着剤層(A層及びB層)を形成する方法としては、特に制限されず、例えば、粘着剤組成物を、基材表面上に塗布し乾燥(必要に応じて硬化)させる方法(直写法)や、適当なセパレーターの表面上に粘着剤組成物を塗布し乾燥(必要に応じて硬化)させて粘着剤層を形成した後、該粘着剤層を基材上に転写(移着)させる方法(転写法)などが挙げられる。
【0113】
粘着剤層(A層及びB層)を、上記の直写法や転写法により得る場合、TVOC量、トルエン及びホルムアルデヒドの放散量をより低減させる観点から、基材又はセパレーター上に塗布(塗工)し乾燥及び/又は硬化させた後、さらに乾燥工程を設けることが好ましい。前記乾燥工程における乾燥条件としては、特に制限はないが、トルエン及びホルムアルデヒドの放散量を低減させる観点から、通常80〜130℃において1〜5分間乾燥させるのが好ましい。
【0114】
特に、A層の形成方法は転写法が好ましい。中でも、セパレーターとして表面に凹凸を有するセパレーターを用いた転写法が好ましい。同時に、A層上にセパレーターを設けることができるためである。
【0115】
例えば、表面に凹凸を有するセパレーターにアクリル系粘着剤を塗布・乾燥(必要に応じて硬化)して粘着剤層を形成することにより、セパレーター表面の凹凸を粘着剤層表面に転写させて、当該粘着剤層を基材上に転写することにより、A層の表面に凹凸が形成されるので、艶消し性(低光沢度)を効果的に得ることができると同時に、A層上にセパレーターを設けることができる。
【0116】
なお、アクリル系粘着剤組成物の塗布に際しては、慣用の塗工機(例えば、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーターなど)を用いることができる。
【0117】
本発明のスピーカー化粧用シート固定用両面粘着テープは、TVOC量、ホルムアルデヒド及びトルエンの放散量が極めて少ない。このため、本発明のスピーカー化粧用シート固定用両面粘着テープを用いれば、スピーカー化粧用シートおよび筐体に対して優れた接着性を発揮できるとともに、環境衛生面の向上を図ることができる。また、室内空気汚染を防ぐことができ、シックハウス症候群への対応の点からも有効である。
【0118】
本発明のスピーカー化粧用シート固定用両面粘着テープは、スピーカー化粧用シートを筐体(本体)のスピーカー部分に貼付固定する用途に用いられる。
【0119】
上記スピーカー化粧用シートとしては、例えば、ポリカーボネート(PC)などからなるネットや、ポリエステルの繊維を粗く編んだ紗などが挙げられる。また、筐体としては、テレビの筐体(本体部分)などが挙げられ、例えば、ポリスチレン、PC/ABS(ポリカーボネート/ABS樹脂)などからなる場合が多い。
【0120】
本発明の両面粘着テープは、表面に凹凸を有するセパレーターを用いることなどで表面光沢度を制御することにより、環境衛生面の向上や室内空気汚染を防き、スピーカー化粧用シートおよび筐体に対して優れた接着性を発揮するとともに、スピーカー化粧用シート側の表面の艶消し性や意匠性を向上させることができる。さらにまた、良好な艶消し性や意匠性についての経時の安定性も得ることができる。
【0121】
本発明のスピーカー化粧用シート固定用両面粘着テープを用いて、スピーカー化粧用シートを筐体に貼付固定する場合には、特に限定されないが、A層側をスピーカー化粧用シートに貼付し、B層側を筐体に貼付することにより、スピーカー化粧用シートを筐体に貼付固定することが好ましい。
【実施例】
【0122】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0123】
(実施例1)
攪拌機、温度計、環流冷却器、滴下装置、および窒素導入管を備えた反応容器に、イオン交換水を35重量部投入し、窒素ガスを導入しながら60℃で1時間以上攪拌した。これに、重合開始剤として2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]n水和物(和光純薬工業株式会社製、商品名「VA−057」):0.1重量部を加えて、反応液を得た。
また、モノマー原料としてのn−ブチルアクリレート(BA):90重量部、2−エチルヘキシルアクリレート(2−EHA):10重量部、アクリル酸(AA):4重量部、乳化剤としてのポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム:2重量部、及び連鎖移動剤としてのドデカンチオール:0.05重量部を、イオン交換水:40重量部に加えて乳化することにより、モノマー原料乳化液を得た。
60℃に保った上記反応液に、上記モノマー原料乳化液を4時間かけて徐々に滴下して乳化重合させた。その後、モノマー原料100重量部に対して、追加の重合開始剤としてのアスコルビン酸:0.1重量部及び35%過酸化水素水:0.1重量部を加えて、レドックス処理を行った。そして、室温まで冷却した後、10%アンモニア水を添加してpH7に調整し、アクリル重合体エマルションを得た。
上記のアクリル重合体エマルションに対し、該エマルションに含まれるアクリル系重合体100重量部あたり、固形分換算で30重量部の粘着付与剤のエマルション(ハリマ化成株式会社製、商品名「SK−253NS」、軟化点:145℃の重合ロジン系樹脂の水性エマルションで、実質的には有機溶剤を全く用いずに製造されたもの)を加え、水分散型粘着剤組成物を得た。
さらに、上記水分散型粘着剤組成物に水系の黒色顔料(東海カーボン株式会社製、商品名「アクアブラック 162」)をアクリル系重合体100重量部に対して1重量部加え、黒色の水分散型粘着剤組成物を得た。
規則性を有しない凹凸があり、算術平均粗さRaが2.8μmである表面を有する剥離ライナーの当該表面上に、上記の黒色の水分散型粘着剤組成物を乾燥後の厚みが70μmになるように塗布し、100℃で2分間乾燥させ、表面に凹凸を有する剥離ライナー及び粘着剤層(A層、化粧用シート側の粘着剤層)から構成されるシート1を得た。
剥離ライナー(王子製紙株式会社製、商品名「75EPS(M)クリーム改」)の剥離層上に、上記の黒色の水分散型粘着剤組成物を乾燥後の厚みが70μmになるように塗布し、100℃で2分間乾燥させ、剥離ライナー及び粘着剤層(B層、筐体固定側の粘着剤層)から構成されるシート2を得た。
不織布基材(大福製紙株式会社製、商品名「SP原紙−14」;坪量14g/m2、厚さ42μm、嵩密度0.33g/m2のパルプ系不織布)に、シート1及びシート2を貼り合わせ、両面粘着テープ(表面に凹凸を有する剥離ライナー/粘着剤層(A層、化粧用シート側の粘着剤層)/不織布基材/粘着剤層(B層、筐体固定側の粘着剤層)/剥離ライナーの構成)を得た。
【0124】
(実施例2)
攪拌機、温度計、環流冷却器、滴下装置、および窒素導入管を備えた反応容器に、モノマー原料としてのn−ブチルアクリレート(BA):70重量部、2−エチルヘキシルアクリレート(2−EHA):27重量部、アクリル酸(AA):3重量部、及び酢酸エチル:150重量部を入れ、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して容器内を窒素置換して、反応液を得た。
この反応液を70℃に加熱し、重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を0.2重量部加えた。系を70℃に保ちつつ重合反応を8時間行い、アクリル系重合体の酢酸エチル溶液を得た。次に、このアクリル系重合体の酢酸エチル溶液に、アクリル系重合体100重量部あたり、粘着付与樹脂(理化タック社製、商品名「リカタックPCJ」、軟化点128℃の重合ロジンエステル樹脂):20重量部、架橋剤(日本ポリウレタン工業株式会社製、商品名「コロネートL」、イソシアネート系架橋剤):2重量部、カーボンブラック換算で2重量部となる量のカーボンブラック分散樹脂を加え均一に攪拌混合することにより、酢酸エチルを溶媒とする黒色非トルエン溶剤型粘着剤組成物を得た。
次に、黒色の水分散型粘着剤組成物の代わりに黒色非トルエン溶剤型粘着剤組成物を用いたこと以外は実施例1と同様にして、両面粘着テープ(表面に凹凸を有する剥離ライナー/粘着剤層(A層、化粧用シート側の粘着剤層)/不織布基材/粘着剤層(B層、筐体固定側の粘着剤層)/剥離ライナーの構成)を得た。
【0125】
(比較例1)
攪拌機、温度計、環流冷却器、滴下装置、および窒素導入管を備えた反応容器に、モノマー原料としてのn−ブチルアクリレート(BA):100重量部、アクリル酸(AA):3重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート:0.1重量部、酢酸ビニル:5重量部、酢酸エチルとトルエンの混合溶剤(酢酸エチル:30重量部、トルエン:130重量部からなる):160重量部を入れ、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して容器内を窒素置換して、反応液を得た。
この反応液を70℃に加熱し、重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を0.2重量部加えた。系を70℃に保ちつつ重合反応を6時間行い、酢酸エチル:40重量部で希釈し、アクリル系重合体溶液を得た。次に、このアクリル系重合体溶液に、アクリル系重合体100重量部あたり、粘着付与樹脂(住友ベークライト株式会社製、商品名「スミライトレジンPR12603」、テルペンフェノール樹脂):40重量部、架橋剤(日本ポリウレタン工業株式会社製、商品名「コロネートL」、イソシアネート系架橋剤):2重量部、カーボンブラック換算で2重量部となる量のカーボンブラック分散樹脂を加え均一に攪拌混合することにより、黒色トルエン溶剤型粘着剤組成物を得た。
次に、黒色の水分散型粘着剤組成物の代わりに黒色トルエン溶剤型粘着剤組成物を用いたこと以外は実施例1と同様にして、両面粘着テープ(表面に凹凸を有する剥離ライナー/粘着剤層(A層、化粧用シート側の粘着剤層)/不織布基材/粘着剤層(B層、筐体固定側の粘着剤層)/剥離ライナーの構成)を得た。
【0126】
(評価)
上記実施例及び比較例で得られた両面粘着テープについて、総揮発性有機化合物量(TVOC量)、ホルムアルデヒド放散量、トルエン放散量、60°鏡面光沢度、常態粘着力を測定した。その結果を表1に示した。
【0127】
総揮発性有機化合物量(TVOC量)
両面粘着テープから所定のサイズ(1cm×5cm、面積:5cm2)を切り取り、その片面にアルミホイルを貼り合わせ、もう一方の面を開放状態とすることにより、アルミホイルに貼付した試料を作製した。なお、開放状態とする面は、両面粘着テープのどちらの面であってもよく、任意で選択できる。
このアルミホイルに貼付した試料を、バイアル瓶(容量:20ml)に入れて密栓した。その後、試料を入れたバイアル瓶を、ヘッドスペースオートサンプラーにより80℃30分間加熱し、加熱状態のガス1.0mlを、ガスクロマトグラフ測定装置(GC測定装置)に注入して、測定を行った。
総揮発性有機化合物(TVOC)の量は、別途作成した検量線に基づき、トルエン標準により換算した。より具体的には、GC測定により得られた試料の全成分のピーク面積から下記検量線に基づき、トルエン標準に換算した試料1gあたりの総揮発性有機化合物量(TVOC量)の量を算出した。
(検量線の作成)
標準試料のトルエンをアセトンで希釈し、混合標準液を得た。この混合標準液1.0μlをバイアル瓶に入れ、150℃で30分間加熱し、試料と同様にGC測定を行い、標品の調整濃度とピーク面積とで検量線を作成した。
なお、試料の重量は、基材及び該基材に支持された粘着剤層を含む両面粘着テープ全体の重量であり、剥離ライナーは含まない。
ガスクロマトグラフの測定条件は、次の通りである。
(ガスクロマトグラフの測定条件)
・カラム:DB−FFAP1.0μm(0.535mmφ×30m)
・キャリアーガス:He 5.0mL/min
・カラムヘッド圧:23kPa(40℃)
・注入口:スプリット(スプリット比 12:1、温度250℃)
・カラム温度:40℃(0min)−<+10℃/min>−250℃(9min)[40℃より、昇温速度10℃/minで250℃まで昇温させた後、250℃で9分間保持させるという意味]
・検出器:FID(温度250℃)
【0128】
ホルムアルデヒド放散量
ホルムアルデヒドの放散量は、JIS A 1901(2003)に準拠した方法により測定した。
両面粘着テープから所定のサイズ(表面積:0.043m2)となるように切り取り、片面にアルミホイルを貼り合わせ、もう一方の面を開放状態とすることにより、アルミホイルに貼付した試料を作製した。なお、開放状態とする面は、両面粘着テープのどちらの面であってもよく、任意で選択できる。
該アルミホイルに貼付した試料を、一定の湿度、相対湿度及び換気量の条件をもつ小形チャンバー内の中央部に置き、空気を流通させた。
(小形チャンバーの条件)
温度:28.0±0.5℃
相対湿度:(50±5)%
換気回数:0.5回±10%/1時間
試験開始から1日(24時間)経過後、小形チャンバー出口で捕集した空気から小形チャンバー濃度(小形チャンバー出口で測定したホルムアルデヒドの濃度。空気捕集時間中において、小形チャンバーの排気口で採取されるホルムアルデヒドの総量を空気捕集量で除した値。)を求めることにより、試験開始から1日(24時間)経過後の小形チャンバー内のホルムアルデヒド濃度(μg/m3)を算出し、定量した。
この試験開始から1日(24時間)経過後の小形チャンバー内のホルムアルデヒド濃度をホルムアルデヒド放散量とした。
具体的な条件は次の通りである。
(サンプリング条件)
・捕集管:ジーエルサイエンス社製「GL−PAK mini AERO DNPH カートリッジ」
・流量:167mL/min
・採取量:10L
測定機器などについて
・小形チャンバー:ADTEC社製「20Lチャンバー」
・清浄空気供給装置:新菱エコビジネス社製「ADclean」
・シール材、シールボックス:なし
・温湿度制御装置:ADTEC社製「ADPAC−SYSTEM III 温湿度ユニット」
・空気捕集装置:ジーエルサイエンス社製「SP208−1000DUAL サンプリングポンプ」
(分析条件)
・高速液体クロマトグラフ:Waters社製「TM996PAD」
・検出器:UV Detector
・カラム:Waters社製「Puresil C18(4.6×150mm)」
・移動相:アセトニトリル水溶液(アセトニトリル:水=50:50)
・注入量:20μL
・検出波長:360nm
【0129】
トルエン放散量
両面粘着テープから所定のサイズ(1cm×5cm、面積:5cm2)を切り取り、片面にアルミホイルを貼り合わせ、もう一方の面を開放状態とすることにより、アルミホイルに貼付した試料を作製した。なお、開放状態とする面は、両面粘着テープのどちらの面であってもよく、任意で選択できる。
このアルミホイルに貼付した試料を、バイアル瓶(容量:20ml)に入れて密栓した。その後、試料を入れたバイアル瓶を、ヘッドスペースオートサンプラーにより80℃で30分間加熱し、加熱状態のガス1.0mlを、ガスクロマトグラフ測定装置(GC測定装置)に注入して、トルエンの量を測定した。より具体的には、GC測定により得られた試料のトルエン帰属のピーク面積から下記にて作成した検量線に基づき、トルエン量を求め、試料(両面粘着テープ)1gあたりのトルエンの含有量(μg/g)を算出した。このトルエン含有量をトルエン放散量とした。
(検量線の作成)
標準試料のトルエンをアセトンで希釈し、混合標準液を得た。この混合標準液1.0μlをバイアル瓶に入れ、150℃で30分間加熱し、試料と同様にGC測定を行い、標品の調整濃度とピーク面積とで検量線を作成した。
ガスクロマトグラフの測定条件は、次の通りである。
(ガスクロマトグラフの測定条件)
・カラム:DB−FFAP1.0μm(0.535mmφ×30m)
・キャリアーガス:He 5.0mL/min
・カラムヘッド圧:23kPa(40℃)
・注入口:スプリット(スプリット比 12:1、温度250℃)
・カラム温度:40℃(0min)−<+10℃/min>−250℃(9min)[40℃より、昇温速度10℃/minで250℃まで昇温させた後、250℃で9分間保持させるという意味]
・検出器:FID(温度250℃)
【0130】
常態粘着力(N/20mm)
両面粘着テープから、20mm幅×100mm長さの短冊状シート片を切り出し、剥離ライナーを剥がして露出した粘着面に、厚さ25μmのPETフィルムを貼付(裏打ち)して粘着力測定用サンプルを作製した。
該粘着力測定用サンプルを用いて180°剥離試験を行った。測定用サンプルと被着体(ステンレス板)を常態(23℃、50%RH)で貼り合わせて、30分経過した後、引張試験機を用いて、測定用サンプル(両面粘着テープ)側を引き剥がした際の荷重を測定し、常態接着力とした。
測定は、23℃、50%RHの雰囲気下、剥離角度180°、引張速度300mm/分の条件で行った。
【0131】
光沢度(初期光沢度)
JIS Z 8741で規定する方法にて、両面粘着テープのセパレーターを剥がして露出した粘着剤層表面(A層表面、化粧用シート側の粘着剤層表面)の60度鏡面光沢度を測定した。光沢計(ハンディ光沢計、「HG−268」、スガ試験機(株)製)を用いて、入射角・受光角を60°で測定した。
なお、セパレーターを剥離した直後の両面粘着テープを測定サンプルとした。
【0132】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の両面側に粘着剤層(A層及びB層)を有し、総揮発性有機化合物量(TVOC量)が300μg/g以下であり、ホルムアルデヒド放散量が3μg/m3以下であり、且つトルエン放散量が10μg/g以下であることを特徴とするスピーカー化粧用シート固定用両面粘着テープ。
【請求項2】
前記のA層のベースポリマーが、酢酸エチルのみからなる溶剤又は酢酸エチルの割合が90重量%以上である混合溶剤から選択される溶剤を用いる溶液重合により形成されている請求項1記載のスピーカー化粧用シート固定用両面粘着テープ。
【請求項3】
前記のA層及びB層において、ベースポリマーの含有量が、粘着剤層の総重量に対して25重量%以上である請求項1又は2記載のスピーカー化粧用シート固定用両面粘着テープ。
【請求項4】
前記の粘着剤層のベースポリマーが、アクリル系ポリマーである請求項1〜3の何れかの項に記載のスピーカー化粧用シート固定用両面粘着テープ。

【公開番号】特開2012−21053(P2012−21053A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158443(P2010−158443)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】