説明

スピーカ搭載モバイル機

【課題】ハウジングそのものにスタンドを設けることによって、モバイル機の使用状態での利便性を向上させ、併せて、スタンドを音響反射板に利用してステレオ効果を向上させる。
【解決手段】ハウジング10にスタンド20を設ける。スタンド20は、ハウジング10の中央部近傍箇所を支点P1,P2としてハウジング内格納姿勢とハウジング支持姿勢との間で揺動可能な左右一対の板片状部材21,21によって形成する。それらの板片状部材21,21の裏面を音響反射面22,22として利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジング内の左右両側に設置されているスピーカの音響的なステレオ効果を増大させるための対策が講じられているスピーカ搭載モバイル機に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータには、音響的なステレオ効果を得るために、スクリーンを備えたハウジング内の左右両側にスピーカが設置されているものが知られている(たとえば、特許文献1参照)。この特許文献1には、スクリーンのハウジングがキーボードを備えた本体に開閉可能に取り付けられていると共に、スピーカがスクリーンの背部でその後方を指向している。そして、スクリーンの背部を覆うように取り付けられたカバー部材によって、左側のスピーカの音をスクリーンの左側に導き、右側のスピーカの音をスクリーンの右側に導くことによって音響的なステレオ効果を増大させることが記載されている。また、人の腕に装着可能な通信機器のバンドに2つのスピーカを組み付け、その通信機器のバントを開いて机上面などにおいたときに、2つのスピーカの指向方向が上拡がりになるように構成した装着型電子機器が提案されている(たとえば、特許文献2参照)。さらに、音声や音楽を再生するためのクレードルに円弧状の音響反射板を取り付け、その音響反射板によって、クレードルに組み込まれたスピーカの音を反射させて前方に指向させるように構成したものも提案されている(たとえば、特許文献3参照)。さらに、自動車の後部ガラスを音を反射させるのに利用することや、表示パネルの化粧板などを音の振動板として利用することなども知られている(たとえば、特許文献4、特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2001−520836号公報
【特許文献2】特開2004−289522号公報
【特許文献3】特開2006−157397号公報
【特許文献4】実公平6−273号公報
【特許文献5】特許第4302468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、AV視聴用端末として使用されるモバイル機では、机上面や床面などでスタンドに立て掛けた使用状態を採ることが行われている。そこで、ハウジングそのものにスタンドを具備させておくと、そのモバイル機を机上面や床面などでAV視聴用端末として使用するときに便利である。また、モバイル機のハウジング内の左右両側にスピーカが組付けられているものでは、それらのスピーカによって一定のステレオ効果が得られるものの、モバイル機自体のサイズが小さいために左右のスピーカの設置間隔を拡げてステレオ効果を向上させることには限界がある。
【0005】
一方、上掲の特許文献1に見られるように、スクリーンを備えるハウジングにカバー部材を取り付け、そのカバー部材によってスピーカの音を反射させてスクリーンの左右に導くようにすると、それだけ音響的なステレオ効果が向上するということが云える。
【0006】
しかしながら、特許文献1のようにカバー部材をハウジングに取り付けるという技術をモバイル機に適用して、そのモバイル機のステレオ効果を向上させようとすることは、もともと軽量で小形であることが要求されているモバイル機にとっては、重さが重くなることや大形化を来すといった問題が生じる。
【0007】
そこで、本願発明者は、鋭意調査を行った結果、ハウジングそのものにスタンドを具備させておけば、AV視聴用端末として使用されるモバイル機の利便性が高まるということに着目した上で、そのスタンドを、ハウジングを立て掛けるためだけに利用するのではなく、ハウジング内の左右両側に設置されているスピーカの音を反射させるための音響反射板としても利用することができれば、モバイル機の音響的なステレオ効果を向上させることができるであろうと考え、本発明を完成させるに至った。
【0008】
本発明は以上の状況の下でなされたものであり、ハウジングそのものにスタンドを設けることによって、当該モバイル機の使用状態での利便性を向上させることができるだけでなく、そのスタンドを音響反射板に利用してステレオ効果を向上させることのできるスピーカ搭載モバイル機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るスピーカ搭載モバイル機は、ハウジング内の左右両側にそれぞれスピーカが設置されている。そして、上記ハウジングにそのハウジングを支えるスタンドが設けられていて、そのスタンドが、上記ハウジングの中央部近傍箇所との対向位置から左右の各端部に近付くほどそのハウジングの背面から後方へ遠ざかるように傾斜した音響反射面を左右両側に有していると共に、左側の上記スピーカが左側の上記音響反射面を指向して設置され、右側の上記スピーカが右側の上記音響反射面を指向して設置されている。
【0010】
この構成を採用すると、ハウジングを立て掛けることにスタンドを利用することができるので、当該モバイル機を立て掛けるための別体のスタンドやその他の物品を用いることなくAV視聴を楽しむことが可能になる。そして、そのスタンドには一定の方向に傾斜した左右の音響反射面が備わり、左側のスピーカが左側の音響反射面を指向して設置され、右側の上記スピーカが右側の音響反射面を指向して設置されているので、スピーカの音がそれら左右の音響反射面で反射して左右に拡げられる。そのため、ユーザにとっては、ハウジング内の左右に設置されたスピーカの音を直接に視聴する場合に比べて、左右の広い範囲から音響が聞こえるようになり、それだけ視聴の際のステレオ効果が向上する。
【0011】
本発明では、上記スタンドが、上記ハウジングに形成された凹所に収容されるハウジング内格納姿勢と、その凹所の外側の上記ハウジングの背面側に迫り出してそのハウジングを支えるハウジング支持姿勢と、の間で出退可能に取り付けられていることが望ましい。この構成であると、当該モバイル機を持ち運んだりするときには、スタンドをハウジング内格納姿勢としておくことが可能である。このハウジング内格納姿勢は、スタンドがハウジングの凹所に収容された姿勢であるので、当該モバイルきを持ち運ぶときにスタンドがじゃまになるという事態が起こらない。また、当該モバイル機で視聴を楽しむときには、スタンドをハウジング支持姿勢にしてそのモバイル機を立て掛けておくことができるという利便性がある。
【0012】
本発明では、上記スタンドが、上記ハウジングの中央部近傍箇所を支点として上記ハウジング内格納姿勢と上記ハウジング支持姿勢との間で揺動可能にそのハウジングに取り付けられた左右一対の板片状部材によって形成され、それらの板片状部材の裏面が上記音響反射面に利用されている、という構成を採用することが可能である。この構成であれば、スタンドが左右一対の板片状部材によって形成されていることにより、スタンドを格納するためにハウジングに設けられる凹所が狭いスペースで済む。そのため、スタンドをハウジングに設けたとしても、ハウジングひいては当該モバイル機の大形化を来さないという利点がある。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ハウジングそのものがスタンドを備えているので、当該モバイル機の使用状態での利便性が向上する。また、そのスタンドを音響反射板に利用してステレオ効果を向上させたので、特許文献1に見られるような重量増や大形化を来すカバー部材をハウジングに余分に取り付ける必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係るスピーカ搭載モバイル機の使用状態の概略斜視図である。
【図2】ステレオ効果増大作用を説明するためのモバイル機の一部破断平面図である。
【図3】スタンド格納状態でのモバイル機の一部破断平面図である。
【図4】スタンドの板片状部材を例示した概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は本発明の実施形態に係るスピーカ搭載モバイル機Aの使用状態の概略斜視図、図2はステレオ効果増大作用を説明するためのモバイル機Aの一部破断平面図、図3はスタンド格納状態でのモバイル機Aの一部破断平面図、図4はスタンド20の板片状部材21を例示した概略斜視図である。
【0016】
図1のように、このモバイル機Aは、ディスプレイ11を備えた正面視略矩形のハウジング10を有し、このハウジング10の内部に、図2又は図3のように左右に振り分けて一対のスピーカ12,12が組み付けられている。これら一対のスピーカ12,12の設置間隔はハウジング10の横幅サイズの影響を受ける。そのため、左右一対のスピーカ12,12をハウジング10の左右の各端部に設置して、できるだけそれら相互の間隔を拡げているとしても、それらのスピーカ12,12から出る音響の拡がり幅が、ハウジング10の横幅サイズに見合う幅になる。また、この実施形態において、左右一対のスピーカ12,12は、ハウジング10の後方を指向して設置されている。
【0017】
ハウジング10にはスタンド20が取り付けられている。図例のスタンド20は、左右一対の平らな樹脂成形体でなる板片状部材21,21によって形成されている。そして、ハウジング10には、その背面の中央部を境にして左右に振り分けられた箇所にそれぞれ凹所13,13が設けられていて、左側の凹所13には左側の板片状部材21の全体を収容することができ、右側の凹所13には右側の板片状部材21の全体を収容することができるようになっている。また、左側の板片状部材21は、その一端部が左側の上記凹所13内のハウジング10の中央部近傍箇所に揺動支点P1を有し、右側の板片状部材21は、その一端部が右側の上記凹所13内のハウジング10の中央部近傍箇所に揺動支点P2を有している。そのため、それらの揺動支点P1,P2を中心として左右の板片状部材21,21をハウジング10の背面の後方へ開いて図2に示したハウジング支持姿勢にすることが可能である。なお、ハウジング2には、左右の板片状部材21,21に引掛かってそれらをハウジング支持姿勢に保つための開き角度規制手段が備わっている。
【0018】
上記したハウジング支持姿勢では、図1のように机上面などに載置したハウジング10をそれらの板片状部材21,21に立て掛けて起立姿勢に保ったまま、ユーザが左右のスピーカ12,12の音を聴きながら、ディスプレイ11の表示画像を楽しむことが可能である。その一方で、左右の板片状部材21,21を各揺動支点P1,P2を中心として左右の各凹所13,13に収容させたハウジング内格納姿勢に保つことも可能であり、このようなハウジング内格納姿勢でも、ユーザが左右のスピーカ12,12の音を聴きながら、ディスプレイ11の表示画像を楽しむことが可能である。このハウジング内格納姿勢では、左右の板片状部材21,21の外面(表面)がハウジング10の背面と面一に連続するように構成されている。
【0019】
この実施形態では、スタンド20を左右一対の平らな板片状部材21,21によって形成し、かつ、それらの板片状部材21,21の全体をハウジング10に具備させた左右の凹所13,13に図3のように収容してハウジング内格納姿勢に保つことができるようになっている。そのため、凹所13には、平らな板片状部材21を収容し得るだけの内容積を付与しておくだけで済むので、ハウジング10内の狭いスペースに凹所13を形成することが可能になり、そのことが、ハウジング10ひいてはモバイル機Aの大形化を回避することに役立つ。
【0020】
また、図2のように左右の板片状部材21,21をハウジング10の後方に開いてハウジング支持姿勢にしたときには、左側の板片状部材21の内面(裏面)が、左側のスピーカ12の指向方向を斜めに横切り、右側の板片状部材21の内面(裏面)が、右側のスピーカ12の指向方向を斜めに横切るようになっていて、それらの各板片状部材21,21の内面が音響反射面22,22として役立つようになっている。したがって、左右の板片状部材21,21をハウジング支持姿勢に保っているときには、それらの音響反射面22,22が、ハウジング10の中央部近傍箇所との対向位置から左右の各端部に近付くほどそのハウジング10の背面から後方へ遠ざかるように傾斜している。そのため、ハウジング10の後方を指向している左側のスピーカ12の音が、左側の板片状部材21の音響反射面(内面)22で反射して、図2に矢印S1で示したように、ハウジング10の左側端部よりも外側に拡がる。同様に、ハウジング10の後方を指向している右側のスピーカ12の音が、右側の板片状部材21の音響反射面(内面)22で反射して、図2に矢印S2で示したように、ハウジング10の右側端部よりも外側に拡がる。このような左右の板片状部材21,21の音響反射面22,22による音響反射作用によって、ユーザにとっては、ハウジング10内の左右に設置されたスピーカ12,12の音を直接に聴く場合に比べて、左右の広い範囲から音響が聞こえるようになり、それだけ視聴の際の音響的なステレオ効果が向上する。
【0021】
実施形態のモバイル機Aでは、図3に示したように、スタンド20の左右の板片状部材21,21をハウジング内格納姿勢にしたまま、左右のスピーカ12,12の音を聴くこともできるようになっている。この場合には、左右の12,12の音が、左右の板片状部材21,21を経てハウジング10の背面側へ出る。このことに関して、図4に示したように、板片状部材21に貫通孔でなる音孔23を形成しておき、スピーカ12の音がその音孔23を通ってハウジング10の背面側へ出るようにしておけば、音籠もりが軽減されてユーザがクリアな音を聴くことができるようになるという利点がある。
以上説明した実施形態では、スタンド20が、ハウジング内格納姿勢とハウジング支持姿勢との間で揺動可能な左右一対の板片状部材21,21によって形成されているけれども、本発明に係るモバイル機では、スタントがハウジングに固定されている単一の板片状部材によって形成されていてもよい。その場合には、スタンドを形成している単一の板片状部材が、ハウジングの中央部との対向位置から左右の各端部に近付くほどそのハウジングの背面から後方へ遠ざかるように傾斜した音響反射面を左右両側に有している必要がある。
【符号の説明】
【0022】
A モバイル機
10 ハウジング
12 スピーカ
13 凹所
20 スタンド
21 板片状部材
22 音響反射面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内の左右両側にそれぞれスピーカが設置されているスピーカ搭載モバイル機において、
上記ハウジングにそのハウジングを支えるスタンドが設けられていて、そのスタンドが、上記ハウジングの中央部近傍箇所との対向位置から左右の各端部に近付くほどそのハウジングの背面から後方へ遠ざかるように傾斜した音響反射面を左右両側に有していると共に、左側の上記スピーカが左側の上記音響反射面に向けて設置され、右側の上記スピーカが右側の上記音響反射面を指向して設置されていることを特徴とするスピーカ搭載モバイル機。
【請求項2】
上記スタンドが、上記ハウジングに形成された凹所に収容されるハウジング内格納姿勢と、その凹所の外側の上記ハウジングの背面側に迫り出してそのハウジングを支えるハウジング支持姿勢と、の間で出退可能に取り付けられている請求項1に記載したスピーカ搭載モバイル機。
【請求項3】
上記スタンドが、上記ハウジングの中央部近傍箇所を支点として上記ハウジング内格納姿勢と上記ハウジング支持姿勢との間で揺動可能にそのハウジングに取り付けられた左右一対の板片状部材によって形成され、それらの板片状部材の裏面が上記音響反射面に利用されている請求項2に記載したスピーカ搭載モバイル機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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