説明

スフィンゴ脂質

官能性スフィンゴ脂質の製造におけるメタセシス触媒の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機化合物、例えば、スフィンゴ脂質に関する。
【背景技術】
【0002】
スフィンゴ脂質の生物学的機能は構造的機能のみならず、これらの分子のほとんどは細胞外および細胞内シグナル伝達メディエーターとして作用する。例えば、B. J. Pettus et al, Curr. Mol. Medicine, 2004, 4, 405参照。ラベルまたはタグを結合している生物活性のスフィンゴ脂質は局在、結合および代謝研究に対するツールならびにアッセイ基質として有用である。
【0003】
スフィンゴ脂質は少なくとも1個の炭化水素鎖を含むアミノアルコールである。本明細書で使用されるスフィンゴ脂質はセラミド、スフィンゴシンおよびスフィンゴミエリン、ならびに適当なときそれらの対応するリン化合物、糖化合物および他の複合体を含む。
【発明の開示】
【0004】
我々は今回驚くべきことに、官能基が結合すべき炭素原子が水素またはアルキル、好ましくは水素により置換されているスフィンゴ脂質から出発する、1工程の官能性スフィンゴ脂質の製造方法であって、該方法により導入される官能基が対応するスフィンゴ脂質の炭化水素鎖の炭素原子に結合している方法を見いだした。
【0005】
ある局面において、本発明は
−炭化水素鎖が炭素−炭素二重結合を含み、
−炭化水素鎖が官能性であり、そして所望により、例えば、好ましくは
−アミノアルコールの一部であるアミン基が、置換されている、例えば、保護されている
官能性スフィンゴ脂質の製造方法であって、
メタセシス触媒、例えば、第2世代グラブス触媒の存在下で、および有機溶媒の存在下で
−該スフィンゴ脂質の炭化水素鎖が炭素−炭素二重結合を含み、そして所望により
−アミノアルコールの一部であるアミン基が、置換されている、例えば、保護されている
スフィンゴ脂質を
炭素−炭素二重結合を含む官能化反応体と反応させ、
そして
反応混合物から得られる官能性スフィンゴ脂質を単離することを含む方法を提供する。
【0006】
本発明によって、本発明の方法における必要条件は、
−出発物質として使用されるスフィンゴ脂質の炭化水素鎖に好ましくは1個の炭素−炭素二重結合がある
−官能化基を含む反応体のN−末端に好ましくは1個の炭素−炭素二重結合がある
−スフィンゴ脂質および反応体が、出発物質として使用されるスフィンゴ脂質と異なる官能性スフィンゴ脂質が得られるような化学的性質である、および
−スフィンゴ脂質または官能化基中の反応条件下で反応性であるまたは反応条件に適合ではない基が保護されている
のみであることを見いだした。
【0007】
本明細書で使用される炭化水素鎖は3から24個の炭素原子、好ましくは6から24個の炭素原子、例えば、6から18個の炭素原子を有し、炭化水素鎖のいずれかの位置に1個の炭素−炭素二重結合を有するアルケニル鎖を含む。炭化水素鎖は、所望により例えばスフィンゴ脂質化学において通常通りの置換基により置換され得る。
【0008】
本発明によって、スフィンゴ脂質の炭化水素鎖は、例えば、−CO−またはO−CO−基を介してアミノアルコールのアミン基に、またはアミノアルコールのヒドロキシ基を有する炭素原子に結合していてよく、そして好ましくはアミノアルコールのヒドロキシ基を有する炭素原子に結合している。
【0009】
本発明によって、出発物質として使用されるスフィンゴ脂質および官能化反応体の両方において、好ましくは1個の炭素−炭素二重結合の存在がある。
【0010】
本発明によって、炭素−炭素二重結合は炭化水素鎖のいずれかの位置であり得る。好ましい位置はスフィンゴ脂質中のアミノアルコールのヒドロキシ基を有する炭素原子に隣接している位置を含む。
【0011】
本明細書で使用される“官能性スフィンゴ脂質”は、本発明の方法において出発物質として使用されるスフィンゴ脂質と異なるスフィンゴ脂質を意味する。官能性スフィンゴ脂質と出発物質として使用されるスフィンゴ脂質の違いは、鎖長の違いおよび/または異なる置換パターンであり得る。
【0012】
本明細書で使用される官能性スフィンゴ脂質は、好ましくは出発物質として使用されるスフィンゴ脂質との違いとして
−好ましくは保護された形態である化学的に反応性の官能基、
−脱離基、または
−所望により保護された形態の物理学的手段により検出できる基、
好ましくは物理学的手段により検出できる基を含む。このような基はそれ自体は反応性ではない、例えば、リンカーとして機能し得る基の横の官能化基に含まれ得る。
【0013】
本明細書で使用される官能化反応体は、1個の炭素−炭素二重結合を含み、所望により
−所望により保護された形態の、物理学的手段により検出できる基、または
−脱離基および/または
−好ましくは保護された形態である化学的に反応性の官能基、および
−所望により1個またはそれ以上のリンカー;
−所望により異なる鎖長
を含む3から22個の炭素原子の炭化水素鎖を含む。
【0014】
官能基中の反応性の化学基を保護する保護基、置換により容易に置き換えることができる脱離基および所望により保護された形態の物理学的手段により検出できる基は既知であるか、または慣用の方法にしたがって、例えば、準じて適当に提供され得る。
【0015】
反応性の化学基を保護する適当な保護基は反応官能基の性質に依存する。
適当な脱離基は他の基により好都合に置換され得る、例えば、物理学的手段により検出できる基を含む基、例えば、リンカー基に結合している物理学的手段により検出できる基を含む基により置換される基である。
【0016】
適当なリンカー基は既知であり、例えば、慣用の方法にしたがって、例えば、準じて適当に提供され得る。
【0017】
物理学的手段により検出できる基は、例えば、物理学的手段により選択的に検出できる標識基を含む。
【0018】
物理学的手段により検出できる適当な標識基は、例えば
−蛍光手段により選択的に検出できる基、例えば、蛍光基で標識された基、例えば、ピレン、ダンシル(1−ジメチルアミノナフタレン−5−スルホニル基を含む化合物)、ニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾール(NBDs)、フルオレンおよびフルオレノン;および例えば、Invitrogenにより提供される蛍光BODIPY色素、好ましくはニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾール、フルオレンまたはBODIPY色素を含む蛍光色素起源の基、
−選択的光活性化により選択的に検出できる基、例えば、フォトアフィニティプローブとして有用である基、例えば、ベンゾフェノン;または
−バイオアフィニティ法により選択的に検出できる基、例えば、バイオアフィニティ標識のために有用な基、例えば、ビオチン、例えば、ビオチンを含む。
【0019】
好ましい標識基は、例えば、式
【化1】

〔式中、LINはリンカー基であり、
例えば、LINは
−式IIIaの基の場合、−NH−基、
−式IIIbの基の場合、−NH−CO−O−CH−基、
−式IIIcの基の場合、−O−基、例えば、またはリンカーなし、
−式IIIdの基の場合、−NH−CO−(CH−CH−基を含み、そして
−式IIIeおよびIIIfの基の場合、リンカー基はない〕
で示される基を含む。
【0020】
スフィンゴ脂質におけるアミノアルコールのアミン基は所望により置換されている。適当なアミノ置換基は適当であるような置換基、好ましくは
−アシル基、例えば、(C2−25)アシル、例えば、−CO−(C1−24)アルキルまたは−CO−(C2−24)アルキレン;例えば−CO−炭化水素鎖、
−アルキルまたはアルケニル(akenyl)オキシカルボニル基、例えば、−CO−O−(C1−24)アルキル、例えば、−CO−O−(C1−6)アルキル、例えば、tert−ブトキシカルボニルまたは−CO−O−(C2−24)アルキレン、例えば、−CO−O−炭化水素鎖、または
−1または2個のアルキル基、例えば、1または2個の(C1−24)アルキル、例えば、(C1−4)アルキル、例えば、2個の(C1−4)アルキルを含む。
【0021】
本発明の製造における出発物質として有用なスフィンゴ脂質は、式
【化2】

の化合物、例えば、式
【化3】

〔式中、
Rは(C1−24)アルキルまたは炭化水素鎖、例えば、(C3−24)アルキレンであり、
およびRは互いに独立して
−H、
−アルキル、例えば、(C1−24)アルキル、例えば、(C1−4)アルキル、
−炭化水素鎖、例えば、(C3−24)アルキレン、
−アシル、例えば、(C2−25)アシル、例えば、式−CO−R’の基であり、ここで
−R’は(C1−24)アルキルまたは炭化水素鎖、例えば、(C3−24)アルキレンであるか、または
−R’はアルコキシ、例えば、(C1−6)アルコキシ、または、例えば、炭化水素鎖を含むアルケニルオキシ、例えば、(C3−24)アルケニルオキシであり、
はHまたはリン含有の基、例えば、(HO)POであり、例えば、リン含有の基は所望により、例えば、(C1−4)アルキル、例えば、アミノアルキルによりアルキル化されており、例えば、Rは式
【化4】

のホスホリルクロリニルである。
ただし
−Rがアシルのとき、RはHであり、
−炭素−炭素二重結合を含む少なくとも1個の炭化水素鎖が式IIの化合物中に存在し、
−好ましくは1個の炭素−炭素二重結合が式IIの化合物中に存在する;
好ましくは
−RはHまたは(C1−4)アルキルである;
好ましくは
はHまたは(C1−24)アルキルカルボニル、例えば、(C1−18)アルキルカルボニル、または(C1−8)アルコキシカルボニル、例えば、tert.ブトキシカルボニルである〕の化合物を含む。
【0022】
本発明の官能性スフィンゴ脂質は、式
【化5】

の化合物、例えば、式
【化6】

〔式中、R、RおよびRは上記のとおりであり、
CHAINは1個の二重結合を含み、全部で3から24個の炭素原子を含む炭化水素鎖であり、そして
FUNは検出可能な基、脱離基および/または反応性化学基を、所望により適当なリンカー基と一緒に、例えば、所望によりリンカー基の横に検出可能な基を含む基である〕の化合物を含む。
【0023】
他の局面において、本発明は、例えば、官能性スフィンゴ脂質が残基が上記定義のとおりである式Iの化合物であり、本発明の官能性スフィンゴ脂質とは異なる化合物である、本発明の方法であって、
メタセシス触媒、例えば、グラブス触媒、好ましくは第2世代グラブス触媒(グラブスII触媒)の存在下で、
例えば、有機溶媒、例えば、極性有機溶媒、例えば、ハロゲン化炭化水素、例えば、CHClの存在下で、所望により共溶媒、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、またはジメチルスルホキシド(DMSO)の存在下で、
スフィンゴ脂質の炭化水素鎖が炭素−炭素二重結合を含み、所望により、アミノアルコールの一部であるアミン基が置換されているスフィンゴ脂質、例えば、残基が上記定義のとおりの式Iの化合物を
例えば、官能化反応体である式
【化7】

〔式中、
nは所望の官能性炭化水素鎖の所望の鎖長に依存する数であり、そして
FUNは官能基、例えば、少なくとも1個の
−検出可能な基、または
−脱離基、および/または
−保護された形態の反応性の化学基を、
例えば1個またはそれ以上のリンカー基の横に含む、
好ましくは、脱離基は所望によりリンカー基の横である〕
で示される化合物と反応させ、
そして、反応混合物から得られる官能性スフィンゴ脂質を単離することを含む方法を提供する。
【0024】
少なくとも1個の検出可能な基、脱離基または反応性の化学基が存在する基FUNにおいて、例えば、保護された形態の検出可能な基、または脱離基および/または反応性の化学基が、所望により、例えば、1個またはそれ以上のリンカーを介してまたはリンカーなしで結合して存在し得る。
【0025】
適当なリンカーは、例えば、慣用の方法に、例えば、したがって、例えば、準じて得られるリンカーを含む、例えば、所望の長さのアルキレン、例えば、(C1−6)アルキレンを含む適当なリンカー、および所望により官能性化学リンカー基、例えば、酸素、アミン基、アミド基、エステル基、カルバモイル基などである。
【0026】
式IIの化合物中のnは本発明により得られる所望の官能性スフィンゴ脂質の炭化水素鎖の所望の鎖長に依存する。nはC−C二重結合(このCを含む)から数える本発明の官能性スフィンゴ脂質の所望の鎖長からマイナス3である。
【0027】
例えば、式
【化8】

の化合物において、C−C二重結合(このCを含む)から数える所望の鎖長は11であり、式IIの化合物のnは8である。
【0028】
例えば、式
【化9】

の化合物において、C−C二重結合(このCを含む)から数える所望の鎖長は9であり、式IIの化合物のnは6である。
【0029】
式IIの化合物の製造法は既知であるか、または慣用の方法に、例えば、したがって、例えば、準じて適当に実施され得る。
【0030】
例えば、式Iの化合物のFUNが式
【化10】

の基であるとき、式IIの対応する官能化反応体は下記反応スキームにしたがって製造できる:
【化11】

【0031】
メタセシス触媒、例えば、グラブス触媒は既知である(例えば、T. M. Trnka and R. H. Grubbs, Acc. Chem. Res., 2001, 34, 18; A. Fuerstner, Angew. Chem. Int. Ed., 2000, 39, 3012; S. J. Connon and S. Blechert, Angew. Chem. Int. Ed., 2003, 42, 1900; M. Scholl, S. Ding, C. W. Lee, R. H. Grubbs, Org. Lett., 1999, 1, 953参照)、または、適当な方法により、例えば、慣用の方法により製造できる。
【0032】
本発明の方法は下記のとおりに実施され得る。
スフィンゴ脂質の炭化水素鎖が炭素−炭素二重結合を含み、所望によりアミノアルコールの一部であるアミン基が置換されている、例えば、保護されているスフィンゴ脂質および炭素−炭素二重結合を含む本発明の官能化反応体を、所望により共溶媒の存在下で、有機溶媒と混合、例えば、溶解させる。得られる混合物にメタセシス触媒を加え、反応混合物を溶媒(系)の還流温度までの温度に撹拌下で、例えば、数時間加熱する。本発明の官能性スフィンゴ脂質が得られ、反応混合物から単離され、さらに適当な方法により、慣用の方法、例えば、クロマトグラフィーに、例えば、したがって、例えば、準じて精製される。
【0033】
1当量の出発物質として使用されるスフィンゴ脂質に対して、
−少なくとも1当量またはそれ以上、好ましくは2から5当量、例えば、3から4当量の官能化反応体が好都合に使用でき、
−触媒量の、好ましくは0.01から0.5当量、例えば、0.05から0.2当量の範囲の触媒を好都合に使用できる。
【0034】
本発明の工程で得られる官能性スフィンゴ脂質をさらに反応させ、他のスフィンゴ脂質、例えば、本発明の官能性スフィンゴ脂質を得ることができる。さらなる反応は、例えば、
−塩形成、
−飽和であるが本明細書で定義のとおりの炭化水素鎖のようなアルキル鎖を得るためにC−C二重結合の飽和を含み、
−官能基が保護された反応官能基を含む場合、脱保護が続いてよく、
−官能基が脱離基を含む場合、このような脱離基は、例えば、置換反応を介して他の所望の基により置換してよく、例えば、脱離基を物理学的手段により検出できる基により置換してよい。
【0035】
このようなさらなる反応は慣用の方法に、例えば、したがって、例えば、準じて適当に実施し得る。
【0036】
他の局面において、本発明は、本発明の官能性スフィンゴ脂質を得、他のスフィンゴ脂質、例えば、本発明の他の官能性スフィンゴ脂質を得るためにさらに反応させる本発明の方法を提供する。
【0037】
他の局面において、本発明は、本発明の官能性スフィンゴ脂質の製造法であって、アミノアルコールのアミン基が不飽和であり、
a)本発明の方法にしたがってアミノアルコールのアミン基が保護されている、例えば、適当なpH条件下で除去され得る基、例えば、−CO−O−アルキル基、例えば、−CO−O−(C1−8)アルキル;例えば、tert−ブトキシカルボニルにより保護されているスフィンゴ脂質を反応させ
b)アミン保護基を分割し、そして
d)アミン基が非置換である官能性スフィンゴ脂質を反応混合物から単離することを含む反応を提供する。
【0038】
段階b)の脱保護は適当なpH条件下で実施され得る。例えば、−CO−O−アルキル基がアミン保護のために使用されたとき、このような基は慣用の方法に、例えば、したがって、例えば、準じて、例えばHCl、有機溶媒中のHCl、またはTFAの使用により酸条件下で分割し得る。
【0039】
本発明の方法はまた官能性スフィンゴ脂質、例えば、WO2005030780に記載されて、請求されているものの製造のために有用である。
アミノ基が非置換である本明細書またはWO2005030780に記載されている官能性スフィンゴ脂質はまた、アミン基が、例えば、保護基として本発明の実施例5のBoc保護基を使用して保護されている本発明の方法にしたがって、例えば、準じて官能性スフィンゴ脂質を製造し、次いで脱保護することにより得られる。
【0040】
他の局面において、本発明は式
【化12】

【化13】

【0041】
【化14】

【化15】

からなる群から選択される化合物、例えば、実施例1から15の化合物を提供する。
【0042】
実施例1から15のすべての化合物をまた本明細書で“本発明の(による)化合物”と称する。本発明の化合物は、すべての形態、例えば、遊離形、塩形、溶媒和物形ならびに塩の溶媒和物形の化合物を含む。
【0043】
他の局面において、本発明は、塩形の実施例1から15のすべての化合物を提供する。
【0044】
本発明の化合物の塩は、例えば、無機酸および有機酸との酸付加塩、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、トリフルオロ酢酸、フマル酸水素、フマル酸、ナフタリン−1,5−スルホン酸、好ましくは塩酸またはトリフルオロ酢酸との式Iの化合物の塩を含む。
【0045】
遊離形の本発明の化合物は、塩形の対応する化合物に変換し得る;逆も同様。遊離形または塩形および溶媒和物形の本発明の化合物は、遊離形または塩形および非溶媒和物形の対応する化合物に変換し得る;逆も同様である。
【0046】
本発明の化合物は、異性体の形態およびそれらの混合物;例えば、光学異性体、ジアセテレオ異性体、シス/トランス配座異性体で存在し得る。本発明の化合物は、例えば、不斉炭素原子を含み得、したがってエナンチオマーまたはジアステレオ異性体の形態およびそれらの混合物、例えばラセミ体で存在し得る。本発明の化合物は、特定の置換基について(R)−、(S)−または(R,S)−立体配置、好ましくは(R)−または(S)−立体配置で存在し得る。例えば、式Iの化合物において、ヒドロキシ基を有する炭素原子およびアミノアルコールのアミン基を有する炭素原子の両方が不斉炭素原子であり、そして本発明の化合物は、これらの不斉炭素原子での置換基について対応してR−およびS−立体配置(それらの混合物を含む)であり得る。例えば、式Iの化合物はまた炭素−炭素二重結合を含み、該二重結合に結合している置換基はシス/トランス異性体の形態であり得る。
【0047】
異性体混合物は適当に、慣用の方法に、例えば、したがって、例えば、準じて分離し、純粋な異性体を得ることができる。本発明は、すべての異性体およびすべての異性体の混合物の本発明の化合物を含む。
本発明はまた互変異性体が存在するとき式Iの化合物の互変異性体を含む。
【0048】
他の局面において、本発明は生物学的ツール、例えば、アッセイ基質および/または可視化試薬として本発明の方法による官能化されたスフィンゴ脂質の使用を提供する。
【0049】
他の局面において、本発明は官能性スフィンゴ脂質の製造におけるメタセシス触媒の使用を提供する。
【0050】
他の局面において、本発明は、アミン基が所望により置換されており、炭化水素鎖が1個のC−C二重結合を含むスフィンゴ脂質から出発して、
−対応するスフィンゴ脂質で官能化され、
−炭化水素鎖が1個のC−C二重結合を含み、そして
−そのアミン基が所望により置換されている
官能性スフィンゴ脂質の1工程の製造法を提供する。
【実施例】
【0051】
実施例1

【化16】

の官能性スフィンゴ脂質の製造

【化17】

のスフィンゴ脂質をCHCl中に溶解し、得られる混合物を3から4当量の式
【化18】

の化合物および0.1当量の第2世代グラブス触媒で処理する。得られる混合物を2.5から4時間還流で加熱する。得られる混合物から溶媒を蒸発させ、蒸発残渣をsephadex LH20のカラムクロマトグラフィー、次いで分取PLCに付す。式EX1の化合物を得る。収量:理論の49%。
【0052】
適当な出発物質を使用し、C16−セラミド、スフィンゴミエリンまたはビオチニル化ウンデセニルの場合、数滴のN,N−ジメチルホルムアミドを共溶媒としてCHClに加える以外、実施例1に記載に準じて、表1の実施例1から13の式
【化19】

の化合物
表1の実施例14の式
【化20】

の化合物、および
表1の実施例15の式
【化21】

の化合物が得られ、ここで
FUNが表に記載のとおりの式の基であり、それらは式
【化22】

の基であり、
そして
、RおよびRが下記表1に定義のとおりであり、そして
が実施例1から9および11から15でHであり、実施例10で式IVのホスホリルコリニル(phosphorylcholinyl)である。
【0053】
収率(最適化していない)も表1に示す。“EX”は“実施例番号”を意味する。
表1
【表1】

【0054】
実施例13から15の化合物は、アミノアルコールのアミン基がN−tert−ブトキシカルボニル保護されている対応するスフィンゴ脂質から出発し、アミノアルコールのアミン基がN−tert−ブトキシカルボニル保護された本発明の官能性スフィンゴ脂質を得、そしてジオキサン中のHClの使用により保護基を分離して、得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
−炭化水素鎖が炭素−炭素二重結合を含み、
−炭化水素鎖が官能性であり、そして所望により、
−アミノアルコールの一部であるアミン基が、置換されている
官能性スフィンゴ脂質の製造方法であって、
メタセシス触媒の存在下で
−該スフィンゴ脂質の炭化水素鎖が炭素−炭素二重結合を含み、そして所望により
−アミノアルコールの一部であるアミン基が、置換されている
スフィンゴ脂質を
炭素−炭素二重結合を含む官能化反応体と反応させ、
そして
反応混合物から得られる官能性スフィンゴ脂質を単離することを含む方法。
【請求項2】
−該スフィンゴ脂質の炭化水素鎖が炭素−炭素二重結合を含み、そして、所望により
−アミノアルコールの一部であるアミン基が、置換されている
スフィンゴ脂質が

【化1】

〔式中、
Rは(C1−24)アルキルまたは(C3−24)アルキレンであり、
およびRは互いに独立してH、(C1−24)アルキル、(C3−24)アルキレン、または(C2−25)アシルであり、そして
はHまたはリン含有基である〕
で示される化合物である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
官能化反応体が式
【化2】

〔式中、
nは所望の官能性炭化水素鎖の所望の鎖長に依存する数であり、そして
FUNは少なくとも1個の
−検出可能な基、または
−脱離基、および/または
−保護された形態の反応性の化学基を、
所望により1個またはそれ以上の横に含む基である〕
で示される化合物である請求項1または2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
請求項1で定義のとおりの官能性スフィンゴ脂質がさらに
所望により保護された形態の物理学的手段により検出できる基、または
−脱離基、および/または
−保護された形態の化学的に反応性の官能基、および
−所望により1個またはそれ以上のリンカー基を含む請求項1または3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
物理学的手段により検出できる基が、
−蛍光手段により、
−選択的光活性化により、または
−バイオアフィニティ法により
選択的に検出できる基から選択される標識基である請求項4に記載の方法。
【請求項6】
標識基が式
【化3】

〔式中、LINはリンカー基である〕
で示される基である請求項5に記載の方法。
【請求項7】
【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

からなる群から選択される化合物。
【請求項8】
塩形の請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
アッセイ基質および/または可視化試薬のような生物学的ツールとしての請求項1から6のいずれかの方法にしたがって官能化されたスフィンゴ脂質の使用。
【請求項10】
官能性スフィンゴ脂質の製造におけるメタセシス触媒の使用。

【公表番号】特表2008−545724(P2008−545724A)
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−513996(P2008−513996)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【国際出願番号】PCT/EP2006/005105
【国際公開番号】WO2006/128657
【国際公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】