説明

スフェンタニルおよびナロキソンを含む経口腔投与製剤

本発明は、医薬担体とスフェンタニルとを含む経口腔投与製剤を被験者に投与することと、in vitroドナー媒体試験を用いて決定される、経口腔投与製剤の投与後の投薬期間の間の平均pHを、約3.5〜約5.5の範囲内に保持することと、を含む方法に関する。関連する投与製剤をも開示する。そのほかに開示されるのは、経口腔投与製剤および関連する方法である。ただし、経口腔投与製剤は、(1)約5〜約1000マイクログラムのスフェンタニルと、(2)約50マイクログラム〜約100ミリグラムのナロキソンと、(3)in vitroドナー媒体試験を用いて決定される、経口腔投与製剤の投与後の投薬期間の間の平均pHを、約3.5〜約5.5の範囲内にするのに十分な量の酸性化用材料と、を含みうる。この場合、投薬期間は、経口腔投与製剤の投与後約1分以降に始まり、かつ経口腔投与製剤の投与後約120分以内に終わる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、突出痛を治療するための投与製剤および関連する方法に関する。より特定的には、本発明は、突出痛を治療するためのスフェンタニルを経口腔投与するための方法および投与製剤に関する。さらには、本発明は、経口腔投与製剤および関連する方法に関し、ただし、この経口腔投与製剤は、スフェンタニルとナロキソンと医薬担体とを含む。
【背景技術】
【0002】
毎年、何百万人もの被験者が慢性疼痛を患う。慢性疼痛としては、多かれ少なかれ連続的に生じる持続痛、および持続痛は抑えられている被験者における中等度〜重度の疼痛の一時的突発である突出痛(「BTP」)が挙げられる。BTPは、3分間程度の短い時間でピーク強度に到達可能であり、多くの場合、30〜60分間持続する。BTPは、特定の動作時に明確な原因もなく自然に生じうるか、または持続痛治療薬の用量が消失した時に生じうる。
【0003】
BTPは、最初、癌患者で研究されたが、最近、研究者らは、非癌性疼痛患者がほぼ等しい割合でBTPを患うことを見いだした。持続痛の治療を受けたすべての癌患者のうち推定で64%は、BTPを経験している可能性がある。RK Portenoy et al., "Breakthrough pain: definition, prevalence and characteristics" Pain 41(3):273-81 (1990)。腰痛、糖尿病性神経障害、および骨関節炎のような他の病態に由来する持続痛の治療を受けた患者のうち74%までは、BTPを経験している可能性がある。
【0004】
BTPを治療するためのいくつかの薬剤が市販されている。ACTIQ(登録商標)(Cephalon Inc.から入手可能な経口腔粘膜クエン酸フェンタニル)は、BTP用として承認されている。ACTIQ(登録商標)は、棒付きロゼンジ剤の形態で入手可能である。もう1つのそのような医薬は、FENTORA(登録商標)(Cephalon, Inc.から入手可能なフェンタニルバッカル錠)である。これらの医薬は、BTPの発生時に摂取して迅速な除痛を提供すべく、速効性になるようにデザインされる。
【0005】
しかしながら、ACTIQ(登録商標)およびFENTORA(登録商標)が入手可能であるにもかかわらず、BTP治療は、医療の必要性が満たされないままである。BTPを有する多くの被験者は、既存の薬物療法で適切に治療することができない。ACTIQは、疼痛を患う被験者がロゼンジ剤を頬に当てて15分間保持することが必要なこともあるので、使用時に不快感を与える可能性がある。とくに1日に複数回の投与が必要な場合、ロゼンジ剤および棒の物理的サイズは、その時間内に不快感を引き起こす可能性がある。製品ラベルで推奨されているように粘膜表面に当ててロゼンジ剤を擦ると、被験者の口腔粘膜表面を刺激する可能性がある。このほかに、無監視下(ほとんどのBTPエピソードはこの時に起こる)におけるフェンタニルの使用に関連する有害事象としては、重篤な呼吸抑制が挙げられうる。
【0006】
このほかに、強力なオピオイドを含有するBTP治療剤の転用およびそれに続く乱用に関する懸念が存在する。乱用者は、BTPの治療に使用することが意図された薬剤を取得して投与製剤からオピオイドを抽出する可能性がある。抽出されたオピオイドは、非経口的にまたは鼻腔内投与により乱用される可能性がある。他の選択肢として、投与製剤は、粉砕されて抽出工程を経ることなく直接鼻腔内投与される可能性がある。乱用者はまた、全乱用形態の一部としてBTP薬剤の他の投与経路または過量を使用する可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、以上に述べたような問題に対処するために、新しい投与製剤および関連する方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、本発明は、医薬担体とスフェンタニルとを含む経口腔投与製剤(transoral dosage form)を被験者に投与することと、in vitroドナー媒体試験(in vitro donor media test)を用いて決定される、経口腔投与製剤の投与後の投薬期間(dosing period)の間の平均pHを、約3.5〜約5.5の範囲内に保持することと、を含む方法に関する。
【0009】
もう1つの態様では、本発明は、約5〜約1000マイクログラムのスフェンタニルと、in vitroドナー媒体試験を用いて決定される、経口腔投与製剤の投与後の投薬期間の間の平均pHを、約3.5〜約5.5の範囲内にするのに十分な量の酸性化用材料と、を含む経口腔投与製剤に関する。
【0010】
一態様では、本発明は、(1)スフェンタニルと(2)ナロキソンと(3)医薬担体とを含む経口腔投与製剤を被験者に投与することと、in vitroドナー媒体試験を用いて決定される、経口腔投与製剤の投与後の投薬期間の間の平均pHを、約3.5〜約5.5の範囲内に保持することと、を含む方法に関する。この場合、投薬期間は、経口腔投与製剤の投与後約1分以降に始まり、かつ経口腔投与製剤の投与後約120分以内に終わる。
【0011】
もう1つの態様では、本発明は、(1)約5〜約1000マイクログラムのスフェンタニルと、(2)約50マイクログラム〜約100ミリグラムのナロキソンと、(3)in vitroドナー媒体試験を用いて決定される、経口腔投与製剤の投与後の投薬期間の間の平均pHを、約3.5〜約5.5の範囲内にするのに十分な量の酸性化用材料(acidifying material)と、を含む経口腔投与製剤に関する。この場合、投薬期間は、経口腔投与製剤の投与後約1分以降に始まり、かつ経口腔投与製剤の投与後約120分以内に終わる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、実施例2に開示された実施形態においてin vitroでブタ頬粘膜中を透過したスフェンタニルおよびフェンタニルの累積量を示している。
【図2】図2は、実施例3に開示された実施形態においてin vitroでブタ頬粘膜中を透過したスフェンタニルおよびフェンタニルの累積量を示している。
【図3】図3は、実施例4に開示された実施形態においてin vitroでブタ頬粘膜中を透過したスフェンタニルおよびフェンタニルの累積量を示している。
【図4】図4は、実施例5に開示された実施形態においてin vitroでブタ頬粘膜中を透過したスフェンタニルおよびフェンタニルの累積量を示している。
【図5】図5は、実施例2から得られたin vitroデータに基づいて未吸収薬剤累積%対時間を示している。
【図6】図6は、フェンタニル発泡バッカル錠の場合の観測値対予測値を含むフェンタニルの血清中濃度を示している。
【図7】図7は、フェンタニルバッカル錠の場合のモデルのあてはめを示している。
【図8】図8は、経口腔粘膜クエン酸フェンタニル投与製剤(ACTIQ(登録商標))の場合のモデルのあてはめを示している。
【図9】図9は、モデルのあてはめおよびin vitro流動から得られた予測薬剤濃度を示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明について詳細に説明する前に、本発明はとくに例示された材料にもプロセスパラメーターにも限定されるものではないことを理解しなければならない。なぜなら、それらは当然のことながら変更可能であるからである。また、本明細書中で用いられる用語は、本発明の特定の実施形態を説明することだけを目的としたものにすぎず、限定しようとするものではないことも理解しなければならない。
【0014】
以上または以下のいずれにおいても、本明細書に引用された刊行物、特許、および特許出願はすべて、それらの全体が参照によりあらゆる目的で本明細書に組み入れられるものとする。
【0015】
本明細書および添付の特許請求の範囲で用いられる場合、単数形の「a」、「an」、および「the」は、内容上明らかに異なる場合を除いて、複数形の指示対象を包含する。たとえば、「ポリマー」が参照された場合、2種以上のそのような分子の混合物が包含され、「溶媒」が参照された場合、2種以上のそのような組成物の混合物が包含され、「接着剤」が参照された場合、2種以上のそのような材料の混合物が包含され、他も同様である。
【0016】
A. 序
驚くべきことに、本発明者らは、医薬担体とスフェンタニルとを含む経口腔投与製剤を被験者に投与することと、in vitroドナー媒体試験を用いて決定される、被験者への経口腔投与製剤の投与後の投薬期間の間の平均pHを、約3.5〜約5.5の範囲内に保持することと、を含む方法を提供することにより、以上に述べた当技術分野の問題に対処しうることを見いだした。
【0017】
このほかに、本発明者らは、経口腔投与製剤中に存在するいかなる塩形のスフェンタニルをも遊離塩基等価重量に変換することに基づいて表される約5〜約1000マイクログラムのスフェンタニルと、in vitroドナー媒体試験を用いて決定される、被験者への経口腔投与製剤の投与後の投薬期間の間の平均pHを、約3.5〜約5.5の範囲内にするのに十分な量の酸性化用材料と、を含む経口腔投与製剤を提供することにより、以上に述べた当技術分野の問題に対処しうることを見いだした。
【0018】
さらには、本発明者らは、(1)スフェンタニルと(2)ナロキソンと(3)医薬担体とを含む経口腔投与製剤を被験者に投与することと、in vitroドナー媒体試験を用いて決定される、経口腔投与製剤の投与後の投薬期間の間の平均pHを、約3.5〜約5.5の範囲内に保持することと、を含む方法を提供することにより、以上に述べた当技術分野の問題に対処しうることを見いだした。この場合、投薬期間は、経口腔投与製剤の投与後約1分以降に始まり、かつ経口腔投与製剤の投与後約120分以内に終わる。
【0019】
このほかに、本発明者らは、(1)約5〜約1000マイクログラムのスフェンタニルと、(2)約50マイクログラム〜約100ミリグラムのナロキソンと、(3)in vitroドナー媒体試験を用いて決定される、経口腔投与製剤の投与後の投薬期間の間の平均pHを、約3.5〜約5.5の範囲内にするのに十分な量の酸性化用材料と、を含む経口腔投与製剤を提供することにより、以上に述べた当技術分野の問題に対処しうることを見いだした。この場合、投薬期間は、経口腔投与製剤の投与後約1分以降に始まり、かつ経口腔投与製剤の投与後約120分以内に終わる。
【0020】
強力なオピオイドと強力なオピオイドアンタゴニストとの組合せは、最初は、突出痛治療製剤に関して直観的にわかる組合せではない。なぜなら、効果を発揮させるために、オピオイドを含むBTP治療製剤は、オピオイドがきわめて急速に吸収されるような投与条件下でかつ投与経路により投与されるからである。多くのオピオイドアンタゴニストは、化学構造がオピオイドに類似しており、したがって、オピオイドの急速吸収を促進する投与条件および投与経路はまた、オピオイドアンタゴニストの急速吸収をももたらす傾向がある。アンタゴニストは、オピオイドの効果を打ち消すことにより鎮痛作用を減少させる可能性があるので、理論的には、オピオイドとオピオイドアンタゴニストとの両方が吸収されることは望ましくない。
【0021】
したがって、スフェンタニルおよび/またはその製薬上許容される塩とナロキソンおよび/またはその製薬上許容される塩とを効果的に組み合わせた方法および投与製剤を本発明者らが規定したことは、本発明の利点である。そのような方法および投与製剤は、突出痛の治療に有効であるとともに乱用抑止特性を提供することが実証されうる。
【0022】
スフェンタニルおよび/またはその製薬上許容される塩は、本発明を実施するのに有用である。それは、BTPに対して広く処方されるフェンタニルよりも優れたいくつかの安全上の利点を提供する。それは、実験動物においてフェンタニルよりも優れた改善された安全域を有することが示されている。CJE Niemegeers et al., "Sufentanil, a very Potent and Extremely Safe Morphine-like Compound in Mice, Rats, and Dogs" Arzneim.-Forsch (Drug Res) 26:8 (1976)。スフェンタニルは、フェンタニルと比較して呼吸抑制で好ましい安全域を有しうる。P. Bailet et al., "Difference in Magnitude and Duration of Opioid-Induced Respiratory Depression and Analgesia with Fentanyl and Sufentanil" Anesth. Analg. 70:8-15 (1990)、ただし、"Does Sufentanil Produce Less Ventilory Depression Than Fentanyl" Anesth. Analg. 71 :564-6 (1990)を参照されたい。スフェンタニルはまた、他のそれほど強力でないオピオイドまたは鎮痛剤と比較して、特定の臨床上の利点をも有する。なぜなら、それほど強力でないオピオイドまたは鎮痛剤と比較して、被験者においてスフェンタニルの有効濃度を提供するために被験者により吸収される必要がある薬剤の量がより少なくてすむからである。
【0023】
ナロキソンおよびその製薬上許容される塩は、とくにオピオイド過量投与を治療するために一般に静脈内経路を介して投与されるオピオイドアンタゴニストである。その経口生物学的利用能は、静脈内投与と比較してきわめて低く、おそらく約2%である。注射時、ナロキソンは、速効性があり、多くの場合、投与後数分で活性を示す。ナロキソンは、かなり強力であり、オピオイド依存性被験者において退薬症状を引き起こす可能性がある。
【0024】
スフェンタニルの送達に有用な投与経路は、経口腔経路を介する。経口腔経路は、初回通過代謝作用を回避するので有利である。このほかに、経口腔経路は、外来患者が使用するのに好適な他の経路すなわち非侵襲的(non-parenteral)経路、たとえば、経口経路、経皮経路などよりも急速に中枢神経系への吸収および分布を提供することが可能である。しかしながら、経口腔スフェンタニルを用いた場合、当技術分野で認識されてきた問題が存在する。
【0025】
従来的には、スフェンタニル遊離塩基は、経口腔吸収されるように意図された製剤で使用されるスフェンタニルの好ましい形態である。なぜなら、スフェンタニル遊離塩基は、非イオン型であり、したがって、イオン型スフェンタニルよりも容易に口腔粘膜組織中を通過すると予想しうるからである。しかしながら、スフェンタニル遊離塩基は、水性流体への溶解性がきわめて低いので、口腔粘膜組織中を透過しうる溶解状態のスフェンタニルが制限される。こうしたきわめて低い溶解性が原因で、遊離塩基の生物学的利用能は低い。
【0026】
この問題に対処するために、いくつかの試みがなされてきた。例としては、最初に低pH環境を提供して溶解性を増大させ、次に、高pH環境を提供して遊離塩基形の薬剤の方向に平衡を移動させるフェンタニル発泡バッカル錠が挙げられる。そのような系は、S. Durfee et al., "Fentanyl Effervescent Buccal Tablets: Enhanced Buccal Absorption" Am J Drug Daily 4(1): 1-5 (2006)(Durfee")に開示されている。他の類似の系は、Singhらの米国公開特許出願第2005/0042281号(「Singh」)に記載されている。
【0027】
しかしながら、本発明に係る投与製剤がスフェンタニルとナロキソンとの両方および/またはスフェンタニルもしくはナロキソンの製薬上許容される塩を含む場合、そのような系は、問題を生じる可能性がある。他の個所で述べたように、スフェンタニルおよび/またはその製薬上許容される塩の吸収促進を提供する条件はまた、ナロキソンおよび/またはその製薬上許容される塩の経口腔吸収をも促進する。したがって、Durfee系のような系中にスフェンタニルとナロキソンとの両方を含むと、オピオイドとそのアンタゴニストとの両方が吸収される可能性があるので、おそらく有効性が不十分な系を生じるであろう。
【0028】
反対に、ナロキソンが不十分に吸収されうる条件はまた、スフェンタニルが不十分に吸収されると予想されうる条件でもある。たとえば、イオン型種は、口膜中を通過する受動輸送がそれほど有効でない傾向があるので、イオン型ナロキソンは、不十分に経口腔吸収されると予想されうる。しかしながら、ナロキソンがイオン型であるpH値では、スフェンタニルもまた、イオン型である。イオン型スフェンタニルは、従来的には、不十分に経口腔吸収されて、BTPの治療に有効でない投与製剤を与えると予想されうる。
【0029】
しかしながら、本発明者らは、予期せずして、有効血漿中濃度のスフェンタニルを被験者に提供するように経口腔投与製剤から吸収させるのに十分なイオン型スフェンタニルを提供しうることに気付いた。特定の作用機序に限定することを望むものではないが、本発明者らは、スフェンタニルとくにその遊離塩基の送達の律速段階が初期の溶解段階であると仮定した。溶解に続いてかつ周囲pHに依存して、口腔粘膜中を通過して吸収され被験者に除痛を提供するイオン型スフェンタニルと平衡状態で、十分な溶存スフェンタニル遊離塩基材料が存在可能である。さらには、スフェンタニルは、ナロキソンと比較して、μレセプターに対してより大きい親和性を有する。P.J. Emmerson et al., "Binding Affinity and Selectivity of Opioids at Mu, Delta, and Kappa Receptors in Monkey Brain Membranes" J. Pharmacol. And Exp. Therapeutics 271-1630-1637 (1994)。スフェンタニルに十分に拮抗するためには、スフェンタニル流動(flux)よりも大きいナロキソン流動が必要になる可能性がある。本発明に係る方法および投与製剤によれば、ナロキソンがスフェンタニルに十分に拮抗することがなく、それにより、BTPの治療におけるスフェンタニルの有効性が潜在的に保持されるように、ナロキソンおよびスフェンタニルの相対流動が設定される条件を提供することが可能である。
【0030】
この原理を実施例2〜4および実施例6に示す。実施例2〜4は、薬剤をイオン化状態で吸収させるように提供した時、すなわち、in vitroドナー媒体試験を用いて決定される、被験者への経口腔投与製剤の投与後の投薬期間の間の平均pHを、約3.5〜約5.5の範囲内にして、吸収させるように提供した時、有意なスフェンタニル流動が達成されることを裏付けるin vitro試験の結果を示している。実施例6では、このin vitroデータの一部をスフェンタニルおよびフェンタニルの投与に関連する他のデータと比較して使用し、被験者における本発明に係る投与製剤および方法の有望な性能を計算する。これらの計算の結果、本発明に係る投与製剤および方法の有効性が裏付けられる。こうした有効性は、本明細書中の他の個所で述べたように、スフェンタニル経口腔投与製剤に組み込むためのスフェンタニルの適切な形態に関する従来の理解に照らして、驚くべきものである。
【0031】
本発明者らはさらに、吸収が有意に減少する上限と、被験者において組織損傷および/または刺激を生じうる下限と、を有するpH範囲が存在することに気付いた。このpH範囲内では、スフェンタニルの適切な送達が行われる。このことは、実施例2〜4を実施例5と比較すればわかる。実施例5は、pH=6.5では、経口腔投与製剤により送達した後のスフェンタニルの吸収が、pH=5.0のようなより低いpH(実施例2〜4)で期待されうるよりも少なくなる可能性があることを示唆するin vitro試験の結果を示している。この知見は、たとえば、以上に記載したSinghの発明とは対照的である。Singhの発明は、存在する主要な薬剤種が非イオン形であるpH点、すなわち、5.0よりも6.5に近いpH点にpHを調整するように意図されていることは明らかである。3.5未満のpH値では、被験者の口腔組織の刺激および関連する不快感を生じる可能性がある。
【0032】
一方、in vitroドナー媒体試験を用いて決定される、経口腔投与製剤の投与後の投薬期間の間の平均pHを、約3.5〜約5.5にすると、ナロキソンの吸収は大幅に低減されると予想されうる。したがって、ナロキソンの吸収を減少させることにより、経口腔投与経路を介するBTPの治療におけるスフェンタニルの有効性に及ぼすその悪影響が低減される。そのような状況下では、本発明に係る方法および投与製剤は、乱用抑止特性を有してBTPの有効な治療を提供する。
【0033】
本発明の実施に有用でありうる種々の経口腔投与製剤を実施例に示す。
【0034】
次に、本発明についてより詳細に論述する。
【0035】
B. 定義
「酸性化用材料(acidifying material)」とは、in vitroドナー媒体試験を用いて決定される投薬期間の間の平均pHを所望の値に低下させて保持するために使用される材料を意味する。いくつかの実施形態では、酸性化剤は、被験者への投与製剤の経頬投与後の投薬期間の間の平均in vitro人工唾液pHを約3.5〜約5.5の範囲内にするのに十分な量で存在する。約3.5未満のpH値は、被験者の口腔組織に損傷を与える可能性があるので望ましくない。本発明者らにより見いだされたように、かつ本明細書中の他の箇所でさらに詳細に論述されているように、約5.5超のpHは、経口腔吸収が少ないので望ましくない。
【0036】
特定の実施形態では、酸性化用材料は、本明細書中の他の箇所に記載されるように、1種以上の緩衝剤を含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、酸性化用材料は、アスコルビン酸、酢酸、クエン酸、D-グルコン酸、ジメチルグルタル酸、DL-乳酸、塩酸、L-リンゴ酸、フマル酸、ガラクタル酸、L-乳酸、L-酒石酸、もしくはコハク酸のような酸、またはそれらの組合せを含む。
【0038】
「緩衝剤」とは、溶解時、少量の酸もしくは塩基の添加によるまたは希釈によるヒドロニウムイオン濃度および水酸化物イオン濃度の変化(ならびに結果として生じるpH)に抵抗する材料を意味する。緩衝剤は、典型的には、弱酸およびその共役塩基、または弱塩基およびその共役酸を含みうる。特定の実施形態では、in vitroドナー媒体試験により測定される投薬期間の間の平均pHを約3.5〜約5.5の範囲内に保持するように作用する緩衝剤を使用することが可能である。所望のpH範囲を達成するのに必要な緩衝剤の量は、唾液の緩衝能の文献値をその流量と共に用いて推定可能であり、かつ/または試験動物もしくはヒト被験者を用いて実験的に確定可能である。
【0039】
いくつかの実施形態では、緩衝剤は、次の弱酸:アスコルビン酸、酢酸、クエン酸、D-グルコン酸、ジメチルグルタル酸、DL-乳酸、L-リンゴ酸、フマル酸、ガラクタル酸、L-乳酸、L-酒石酸、コハク酸のうちの1つ以上を(それらの対応する共役塩基と共に)含みうる。そのほかの緩衝剤は、"Handbook of Pharmaceutical Salts - Properties, Selection, and Use" Editors: P. Heinrich Stahl and Camille G. Wermuth published by: Verlag Helvetica Chimica Acta, Zurich, Switzerland and Wiley-VCH, Weinheim, Germany (2002)に記載されている。
【0040】
「投与製剤(dosage form)」とは、医薬投与に好適な組成物を意味する。特定の実施形態では、本発明を実施するのに有用な投与製剤は、経口腔投与製剤を含む。本発明を実施するのに有用な投与製剤に関するそのほかの情報は、本明細書中の他の箇所に見いだされる。
【0041】
「投薬期間(dosing period)」とは、本発明に係る投与製剤を投与した後の時間間隔を意味する。特定の実施形態では、本発明に係る投薬期間は、経口腔投与製剤の投与後約1分以降に始まり、かつ経口腔投与製剤の投与後約120分以内に終わる。他の実施形態では、本発明に係る投薬期間は、経口腔投与製剤の投与後約2分以降に始まり、かつ経口腔投与製剤の投与後約60分以内に終わる。さらに他の実施形態では、本発明に係る投薬期間は、経口腔投与製剤の投与後約2分以降に始まり、かつ経口腔投与製剤の投与後約30分以内に終わる。さらに他の実施形態では、本発明に係る投薬期間は、経口腔投与製剤の投与後約3分以降に始まり、かつ経口腔投与製剤の投与後約60分以内に終わる。さらなる実施形態では、本発明に係る投薬期間は、経口腔投与製剤の投与後約4分以降に始まり、かつ経口腔投与製剤の投与後約60分以内に終わる。さらに他の実施形態では、本発明に係る投薬期間は、経口腔投与製剤の投与後約5分以降に始まり、かつ経口腔投与製剤の投与後約60分以内に終わる。
【0042】
「in vitroドナー媒体試験(in vitro donor media test)」とは、一般に次のように行われるin vitro試験を意味する。
【0043】
新しいブタ頬組織を室温の水道水で洗浄し、外科用のメスおよびハサミにより筋組織を除去する。いかなる損傷組織領域をも除外するように注意しながら、頬組織を1インチの円形試験片にカットする。次に、頬組織の側底側をレセプターチャンバーに向けて、あらかじめカットされた頬組織試験片を、改良型ガラス製フランツ(Franz)セルのレセプター側の上縁上に定置する。試験対象の投与製剤は、投与製剤の性質に依存して、この時点では適用可能であるか、またはセルの組立てが実質的に終了した後で添加可能である(固定された薬剤放出領域を有する経口腔投与製剤は、セルを組み立てる前または組み立てた後のいずれかで適用可能であり、一方、可変の薬剤放出領域を有する経口腔投与製剤は、好ましくはセルを組み立てた後で添加される)。頬組織/系集合体を覆うようにフランツ(Franz)セルのドナー側を確実に定置し、ドナー溶液の蒸発を回避するためにプラスチックキャップを取り付ける。レセプターチャンバーにpH5.0のクエン酸緩衝液を充填し、テフロン(Teflon)被覆磁気回転子を用いて約400rpmで絶えず撹拌する。実験を行っている間、透過セルを循環水浴中で37℃に平衡化させる。レセプター容積は6.9mlである。実験を行っている間、レセプターチャンバー内を実質的に無限大のシンク条件に保持する。1もしくは2ミリリットルの脱イオン水のいずれかをドナーコンパートメントに添加する。1もしくは2mlの水のいずれを選択するかは、使用される投与製剤の体積、組成などに依存する。一般的には、より大きい投与製剤では、そのような投与製剤を完全に覆うために2mlの水を使用する必要があろう。投与製剤の投与後、ドナー側媒体の攪拌を行わない。
【0044】
ドナーコンパートメント内の投与製剤への水の添加または水の入ったドナーコンパートメントへの投与製剤の添加は、本発明のために投薬期間の間のpHを決定することを目的とした投与製剤の投与を含む。
【0045】
ドナー媒体のpHは、適切な投薬期間の間、pH紙または電子式pHプローブを用いて測定可能である。好ましい実施形態では、電子式pHプローブが好ましい。いくつかの実施形態では、in vitro試験を用いて決定されるpHは、約3.5〜約5.5、好ましくは約4.5〜約5.5の範囲内である。in vitroドナー媒体試験の目的は、被験者の口腔内のpHを実際に測定する必要なしに、被験者の口腔のpHがどのようになりうるかをモデル化することである。in vitroドナー媒体試験は、in vivoで起こっていることを反映し、特許請求された本発明のin vivo性能を効果的に反映するものであると、本発明者らは考えている。
【0046】
「保持」とは、物理的性質を特定の値の範囲内に維持することを意味する。
【0047】
「平均」とは、複数の値の平均値を意味する。
【0048】
「ナロキソン」とは、17-アリル-4,5α-エポキシ-3,14-ジヒドロキシモルフィナン-6-オン(CAS番号465-65-6、「ナロキソン遊離塩基」とも呼ばれる)および/またはその製薬上許容される塩を意味する。
【0049】
「透過促進剤(permeation enhancer)」とは、非イオン型および/またはイオン型のスフェンタニルのより大きい経口腔流動(transoral flux)を促進するように選択された物質を意味する。透過促進剤の例としては、エタノール、ポリエチレングリコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、ユーカリプトール、メントール、メチルサリチレート、チモール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノカプリレート、オレオイルマクロゴール6グリセリド、リノレオイルマクロゴール6グリセリド(oleoyl macro 6 glycerides)、カプリロカプロイルマクロゴール8グリセリド、プロピレングリコールモノラウレート、ポリグリセリル6ジオレエート、およびジエチレングリコールモノエチルエーテル、ならびにこれらの組合せが挙げられるが、それらに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、透過促進剤は、非イオン型および/またはイオン型のスフェンタニルの経口腔流動を促進するのに有効な量で本発明に係る投与製剤および/または方法に組み込まれる。好ましい実施形態では、透過促進剤は、全投与製剤重量に基づいて約0.1〜約40wt%の範囲内の量で存在可能である。本発明を実施するのに有用な特定の親油性透過促進剤は、Gattefosse (Paramus, NJ)から入手可能である。
【0050】
「医薬担体」とは、除痛に関して薬理学的に不活性な製薬上許容される材料を意味する。いくつかの実施形態では、医薬担体は、主媒体(たとえば、水、非水性溶媒、またはそれらの組合せ)、1種以上のゲル化剤、1種以上の酸性化剤、場合により存在していてもよい透過促進剤、および場合により存在していてもよい他の医薬賦形剤、たとえば、風味剤、着色剤、保存剤などを包含しうる。
【0051】
「その製薬上許容される塩」とは、医薬投与に好適なスフェンタニルの塩を意味する。有用な塩は、酢酸塩、重酒石酸塩、塩化物、クエン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、臭化水素酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、リン酸塩または酸性リン酸塩、硫酸塩、および酒石酸塩、ならびに類似の酸付加塩、さらにはそれらの組合せを包含しうる。好ましい実施形態では、スフェンタニルの製薬上許容される塩は、クエン酸スフェンタニルを包含する。好ましい実施形態では、ナロキソンの製薬上許容される塩は、塩酸ナロキソンを包含する。
【0052】
「被験者」は、「個人」と同義的に用いられ、本発明の実施対象とすることが望まれる任意のヒトを意味する。「被験者」という用語は、特定の年齢を表すものではなく、したがって、本発明に係る系は、任意の年齢の被験者、たとえば、乳児、青年、成人、および高齢の被験者に使用するのに適している。特定の実施形態では、被験者は、患者を包含しうる。
【0053】
「スフェンタニル」とは、N-[4-(メトキシメチル)-1-(2-チオフェン-2-イルエチル)-4-ピペリジル]-N-フェニル-プロパンアミド(CAS番号56030-54-7、「スフェンタニル遊離塩基」とも呼ばれる)および/またはその製薬上許容される塩を意味する。
【0054】
「経口腔」とは、被験者の口腔の表面を通過する投与、たとえば、頬面、舌下面、および舌面を通過する投与を意味する。
【0055】
C. 投与製剤および投与
本発明を実施する際、多種多様な投与製剤を使用することが可能である。これらの投与製剤は、一般に、2つの主要なカテゴリー、すなわち、固定された薬剤放出領域(fixed drug releasing area)を有する経口腔投与製剤および可変の薬剤放出領域(variable drug releasing area)を有する経口腔投与製剤に分類可能である。
【0056】
いくつかの実施形態では、固定された薬剤放出領域を有する経口腔投与製剤としては、頬接着性錠剤、頬接着性貼付剤、および舌下接着性錠剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。固定された薬剤放出領域を有するそのような経口腔投与製剤の特定の実施形態は、その一部が、米国特許第5,288,497号、同第6,103,257号、同第6,183,775号、同第6,368,625号、および同第6,552,024号に開示されている。
【0057】
他の実施形態では、可変の薬剤放出領域を有する経口腔投与製剤としては、速溶性錠剤、速溶性オブラート剤または速溶性ストリップ剤、ゲル剤、頬スプレー剤、および液体投与製剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明を実施するのに有用な可変の薬剤放出領域を有する経口腔投与製剤は、Adhesives Research (Glen Rock, PA、速溶性オブラート剤)およびLTS Lohmann (West Caldwell, NJ、速溶性オブラート剤)から入手可能であり、Yamanouchi Inc.に付与された米国特許第5,466,464号で開示されている。
【0058】
いずれの場合も、これらの経口腔投与製剤は、投与後の投薬期間の間、所望のpHが提供されるように、本発明に係る酸性化剤の適切な添加により適合化させることが必要である。本発明を実施するのに一般に有用な投与製剤のさらなる例は、Remington: The Science & Practice of Pharmacy. 21st edition (2005), see esp. Part 5に見いだしうる。
【0059】
特定の実施形態では、本発明に係る経口腔投与製剤は、ゲル投与製剤を包含する。本発明に係るゲル投与製剤は、スフェンタニルと、ナロキソン(特定の実施形態、一方、他の実施形態は、ナロキソンを含まないかまたは実質的に含まないことが考えられる)と、主媒体(たとえば、水、非水性溶媒、またはそれらの組合せ)、1種以上のゲル化剤、1種以上の酸性化剤、場合により存在していてもよい透過促進剤、場合により存在していてもよい他の医薬賦形剤、たとえば、風味剤、着色剤、保存剤などを包含しうる医薬担体と、を含みうる。好適な非水性溶媒は、アルコール(たとえばエタノール)、カプリル酸カプリン酸トリグリセリド、プロピレングリコールカプリレート/カプレート、プロピレングリコールラウレート、グリセリルモノリノレエート、グリセリルモノオレエート/リノレエート、グリセリルモノオレエート、プロピレングリコールモノカプリレート、オレオイルマクロゴール6グリセリド、リノレオイルマクロゴール6グリセリド(linoleoyl macro 6 glycerides)、カプリロカプロイルマクロゴール8グリセリド、プロピレングリコールモノラウレート、ポリグリセリル6ジオレエート、およびジエチレングリコールモノエチルエーテル、ならびにそれらの組合せを包含する。
【0060】
本発明を実施するのに有用なゲル化剤としては、セルロースエーテルポリマー、たとえば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(たとえば、HPMC K4MおよびHPMC K100M)、ヒドロキシエチルメチルセルロース;ポリビニルアルコール;ポリエチレングリコール;ポリビニルアルコール-ポリエチレングリコールグラフトコポリマー(たとえば、Kollicoat(登録商標)IR);Carbopol(登録商標)ポリマー(ポリアクリル酸);カルボキシメチルセルロース;またはポリアルキレンオキシドたとえばポリエチレンオキシドが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0061】
ゲル投与製剤中のゲル化剤の全濃度は、ゲル投与製剤の全重量を基準にして、約0〜約80重量パーセント、好ましくは約1〜約60重量%、より好ましくは約1〜約50重量%の範囲内である。使用されるゲル化剤の量は、ゲル化剤のタイプおよび目標粘度、したがって、口腔組織上でのゲルの湿潤性および展延性(範囲および速度)に依存する。ゲル投与製剤の湿潤効率および展延効率に関して所望の効果を達成すべく、2種以上のゲル化剤を使用することが可能である。特定の実施形態では、本発明に係るゲル投与製剤は、37℃で1〜5000cPの粘度範囲、および口腔組織のような低エネルギー面(10〜50ダイン/cm)上で0〜30°の範囲内の接触角を有する。
【0062】
いくつかの実施形態では、本発明に係るゲル投与製剤の製造に使用される酸性化剤の量および性質は、in vitroドナー媒体試験を用いて決定されるゲル投与製剤の投与後の投薬期間の間の平均pHが、約3.5〜約5.5の範囲内の平均pH、好ましくは約4.5〜約5.5の範囲内の平均pHに保持されるように決定される。使用される酸性化剤の量および性質を決定するための製剤の最適化は、投与製剤中に存在するスフェンタニルの量またはスフェンタニルとナロキソンとの量、投与製剤中の医薬担体の性質および量、推定唾液量(初期推定値として約5ml)、推定唾液流量(初期推定値として約0.5ml/分)、および推定唾液pH(推定唾液pHは約7.4である)、薬剤溶解性-pHの関係、ならびに経口腔経路を介するスフェンタニルおよび/またはナロキソンの全流動に対するスフェンタニルおよび/またはナロキソンのイオン型種および非イオン型種(イオン型種対非イオン型種)の相対寄与率のようなパラメーターに基づきうる。
【0063】
特定の状況下では、スフェンタニルまたはナロキソンは、「口渇」症状を引き起こす可能性がある。これが問題になる場合、塩化ナトリウムおよびまたはグリセリンのような浸透圧剤を本発明に係る投与製剤に添加することが可能である。そのような浸透圧活性材料は、唾液分泌を促進するであろう。したがって、投与後の被験者の口腔内のpHを所要範囲内に保持するのに役立つであろう。
【0064】
スフェンタニルまたはその医薬活性塩の量は、投与される所望の薬剤の量によって異なりうる。好ましい実施形態では、本発明に係る投与製剤は、投与製剤中に存在するいかなる塩形のスフェンタニルをも遊離塩基等価重量に変換することに基づいて表される約5マイクログラム〜約1000マイクログラムのスフェンタニルまたはその医薬活性塩を含む。特定の好ましい実施形態では、投与製剤は、投与製剤中に存在するいかなる塩形のスフェンタニルをも遊離塩基等価重量に変換することに基づいて表される約10、約20、約40、約60、約80、または約100マイクログラムのスフェンタニルまたはその医薬活性塩を含みうる。
【0065】
本発明に係る経口腔投与製剤中に存在するナロキソンの量は、投与される所望のナロキソンの量によって異なりうる。好ましい実施形態では、本発明に係る投与製剤は、投与製剤中に存在するいかなる塩形のナロキソンをも遊離塩基等価重量に変換することに基づいて表される約50マイクログラム〜約100ミリグラムのナロキソンを含む。特定の好ましい実施形態では、投与製剤は、投与製剤中に存在するいかなる塩形のナロキソンをも遊離塩基等価重量に変換することに基づいて表される約100マイクログラム〜約50ミリグラムのナロキソン、より好ましくは約100マイクログラム〜約10ミリグラムのナロキソン、さらにより好ましくは約100マイクログラム〜約5ミリグラムのナロキソンを含みうる。
【0066】
本発明に係る投与製剤は、各投与製剤の性質に基づいて従来方式で投与可能である。典型的には、被験者は、BTPを生じたときに本発明に係る投与製剤を自己投与するであろう。これは好ましい投与方法である。
【0067】
本発明は、本発明の個々の態様を単独に例示することが意図された本出願に記載の特定の実施形態により限定されるものではない。当業者には自明なことであろうが、本発明に対してその趣旨および範囲から逸脱することなく多くの修正および変更を加えることが可能である。本明細書中に列挙されたもの以外の本発明の範囲内にある機能的に等価な方法は、以上の説明から当業者には自明であろう。そのような修正および変更は、添付の特許請求の範囲に包含されるものとみなされる。本発明は、添付の特許請求の範囲(そのような特許請求の範囲の権利の及ぶ等価物の全範囲を包含する)によってのみ限定されるものとする。
【実施例】
【0068】
D. 実施例
以下は、本発明を実施するための特定の実施形態の例である。実施例は、単に例示を目的としたものにすぎず、本発明の範囲をなんら限定しようとするものではない。
【0069】
実施例1: スフェンタニル溶液およびフェンタニル溶液
脱イオン水で構成されたpH5のクエン酸緩衝液に過剰のスフェンタニル塩基およびフェンタニル塩基を添加して、クエン酸スフェンタニルおよびクエン酸フェンタニルのストック溶液を作製した。ストック溶液を37℃で一晩平衡化させ、飽和状態として薬剤の溶液濃度を、たとえば、37℃でスフェンタニル(4.76mg/ml)およびフェンタニル(17.35mg/ml)と推定した。実験に使用する前に0.1Mのクエン酸溶液を用いてストック溶液をpH5.0の所望の試験pHに反復調整した。以下の実施例では、透過試験の間、pHをさらに測定することはしなかった。
【0070】
実施例2: ブタ頬粘膜組織を介するスフェンタニルおよびフェンタニルの透過性のin vitro評価
新しいブタ頬組織を用いてin vitro透過経頬流動試験を行った。in vitro経頬流動実験の前に室温の水道水で頬組織を洗浄し、外科用のメスおよびハサミにより筋組織を除去した。いかなる損傷組織領域をも除外するように注意しながら、頬組織を1インチの円形試験片にカットした。
【0071】
次に、頬組織の側底側をレセプターチャンバーに向けて、あらかじめカットされた頬組織試験片を、改良型フランツ(Franz)セルのレセプター側の上縁上に定置した。皮膚/系集合体を覆うようにフランツ(Franz)セルのドナー側を確実に定置し、ドナー溶液の蒸発を回避するためにプラスチックキャップを取り付けた。レセプターチャンバーにpH5.0のクエン酸緩衝液を充填し、テフロン(Teflon)被覆磁気回転子を用いて約400rpmで絶えず撹拌した。実験を行っている間、透過セルを循環水浴中で37℃に平衡化させた。レセプター容積は6.9mlであった。実験を行っている間、レセプターチャンバー内を実質的に無限大のシンク条件に略保持した。
【0072】
実施例1に従って調製されたストックフェンタニル溶液またはストックスフェンタニル溶液を含むドナー溶液をセルのドナー側に充填した(約1ml)。
【0073】
所定の間隔(30分間、1時間、1.5時間、2時間、2.5時間、3時間、および3.5時間、さらには4時間)で全レセプター溶液を透過セルから捕集し、新しいレセプター媒体を再充填した。HPLCクロマトグラフィー法を用いてスフェンタニルまたはフェンタニルの含有率に関してレセプター溶液をアッセイした。各セルアセンブリーごとに、送達された累積量(cumulative amount)をスフェンタニルまたはフェンタニルの遊離塩基として計算した。
【0074】
結果を表1および図1に示す。各時間点で3つの試験セルの平均を求めて報告値を得た。
【表1】

【0075】
実施例3: ブタ頬粘膜組織を介するスフェンタニルおよびフェンタニルの透過性のin vitro評価
異なるブタ頬組織サンプルを用いて実施例2を反復した。結果を表2および図2に示す。各時間点で3つの試験セルの平均を求めて報告値を得た。
【表2】

【0076】
実施例4: ブタ頬粘膜組織を介するスフェンタニルおよびフェンタニルの透過性のin vitro評価
異なるブタ頬組織サンプルを用いて実施例2を反復した。結果を表3および図3に示す。各時間点で3つの試験セルの平均を求めて報告値を得た。
【表3】

【0077】
異なるブタ頬組織サンプルを用いて実施例2を反復した。このほかに、試験の開始前、実施例1に基づくドナー溶液のpHを5.0のpHではなく6.5のpHに調整した。結果を表4および図4に示す。各時間点で3つの試験セルの平均を求めて報告値を得た。
【表4】

【0078】
実施例5: in vitro経頬流動データからのin vivoスフェンタニルプロファイルの予測
スフェンタニル血漿中濃度の薬動学的挙動を実施例2〜4で得られたデータから次の4工程で予測的にモデル化した。(1)スフェンタニルの動態パラメーター(disposition parameters)を確定した。(2)実施例2から得られたin vitroデータを用いてワーグナー・ネルソン(Wagner-Nelson)法により予測吸収速度定数(Ka)を推定した。(3)Durfee et al. "Fentanyl Effervescent Buccal Tablets: Enhanced Buccal Absorption" Am. J. Drug Deliv. 4(1): 1-5 (2006)(「Durfee」)の文献記載の血清中濃度データを用いてフェンタニルの動態パラメーターを計算した。(4)経皮流動予測「Ka」値ならびにフェンタニルおよびスフェンタニルの動態パラメーターを用いて、それぞれの濃度を予測した。
【0079】
予測モデリングで用いたスフェンタニルの動態パラメーターは、以下のとおりであった。
【0080】
V1 = 144,586.060232 ミリリットル
K21 = 0.241440 hr-1
α = 1.730311 hr-1
β = 0.144651 hr-1
ブタ頬組織を介するフェンタニルおよびスフェンタニルのin vitro経皮流動データは、以上の実施例2で得られたものであった。
【0081】
実施例2のin vitroデータは、in vivo入力データ(吸収)を表し、かつ4時間かけて送達された全量に基づいて、未吸収累積%対時間プロットは、以下に示されるように生成され、これらのラインのlog勾配は、スフェンタニルおよびフェンタニルに対してそれぞれ0.555および0.553 hr-1の「Ka」推定値として機能するという仮定を立てた。
【0082】
次に、FENTORA(登録商標)(Cephalon Pharmaceuticalsから入手可能)として商品化された200μg用量のフェンタニル発泡バッカル錠(「FEBT」)を追跡したフェンタニルの血清中濃度データ(Durfeeにより発表された)を、2コンパートメントの薬動学的モデルにあてはめた。モデルのあてはめ(model fit)は、以下に示されており、観測データとモデル予測データとのあてはめは非常に良好であり、R2は0.9488(非加重)および0.9178(加重)である。
【0083】
推定コンパートメント間移動速度定数は、以下のとおりである。
【0084】
Ka = 2.05 hr-1、K10 = 0.278 hr-1、K12 = 0.511 hr-1、K21 = 0.872 hr-1
【表5】

【0085】
非発泡フェンタニル錠(FBT)で、Durfeeに報告されるように、200μg用量データを以下に示されるように同様にモデルにあてはめて動態パラメーターを誘導した。見てわかるように、非発泡錠は、発泡錠と比較して遅延されかつ低減されたCmaxを有していた。
【0086】
モデルのあてはめから推定されたフェンタニルのKa値は、0.615 hr-1であり、実施例2に見られるin vitro経皮流動データから得られた観測値0.553 hr-1に非常によく類似している。観測データおよびモデルあてはめデータに基づくPKパラメーター間の比較を以下に提供する。
【表6】

【0087】
次に、Durfeeにより発表されたデータを用いて、200μg用量の経口腔粘膜クエン酸フェンタニル(Cephalon Inc.からACTIQ(登録商標)として製剤化された「OTFC」)を追跡したフェンタニルの血清中濃度データを以下に示されるように同様にモデルにあてはめた。
【0088】
次に、スフェンタニルの0.555 hr-1のkaとフェンタニルの0.553および2.05 hr-1のkaとを用いて、経口腔送達に関して単回用量の薬剤濃度を予測した。
【0089】
いくつかの関連する予測された薬動学的パラメーターは、表7に示されるとおりである。
【表7】

【0090】
実施例6〜8: 経口腔ゲル投与製剤(予測的)
実施例6〜8では、適切な量の出発原料を組み合わせて、表8に表形式で示される成分濃度を有する本発明に係る投与製剤を得る。酸または塩基を用いて製剤のpHを3.5〜5.5に調整する。クエン酸スフェンタニルと塩酸ナロキソンとを水性形態としてゲル製剤中に組み込む。バッチが均一系になるまで混合を維持する。
【表8】

【0091】
実施例9〜11: 経口腔速溶性フィルム投与製剤(予測的)
実施例9〜11では、選択された量の出発原料を用いて、実施例6に対する製剤調製方法により、表9に示された成分濃度を有する十分に混合された組成物を得る。酸または塩基を用いて製剤のpHを3.5〜5.5に調整する。本発明に係るフィルム投与製剤の製造のために溶媒キャスティング法を使用する。ポリエステルフィルム剥離ライナーのシリコン処理されていない側のような平滑表面上に均一混合物をキャストする。次に、通気下、60℃〜80℃の温度で、フィルムを乾燥させる。このプロセスにより形成されたドライフィルムは、光沢のある独立型の自己支持性、非粘着性、かつ可撓性のフィルムである。次に、遊離塩基等価量で表される10〜100マイクログラムの範囲内の投与量のスフェンタニルを含有する単回投与量ユニットを与えるように、カッティングダイを用いてフィルムを好適な形状および表面積にカットすることが可能である。最終的には、米国特許第6,394,306号または米国特許出願第10/122,808号に開示されているようなシングルパウチパッケージ、マルチユニットブリスターカード、またはマルチプルユニットディスペンサーの形態にフィルムをパッケージングすることが可能である。
【表9】

【0092】
実施例12: バッカル錠(予測的)
米国特許第5,288,497号の実施例2に以下のような変更を加えて、本発明に係る経口腔投与製剤を作製する。
【0093】
クエン酸スフェンタニルを可溶性マトリックス製剤中に組み込む。ゼラチンを可溶性マトリックス材料として選択する。
【0094】
次のように以下の成分を組み合わせることにより、好適な混合物を調製する。
【0095】
成分 % グラム
クエン酸スフェンタニル 0.005% 0.001
塩酸ナロキソン 0.0315 0.0063
クエン酸 1% 0.2
リボチド 2% 0.4
コンプリトール888 2% 0.4
アスパルテーム 2% 0.4
バニラマイクロカプセル 5% 1.0
バニラクリームマイクロカプセル 5% 1.0
ワイルドチェリーマイクロカプセル 3% 0.6
ペパーミントマイクロカプセル 3% 0.6
ゼラチン 76.9635% 15.3927
全量 100% 20
すべて成分が混合物中に均一に分布することが保証されるように、ミキサーを用いて成分を組み合わせる。次に、脱水により各2グラムのアリコートを形成する。この手順により、それぞれ100マイクログラムのクエン酸スフェンタニルと633マイクログラムの塩酸ナロキソンとを含有する10個の経口腔粘膜投与製剤を得る。他の可溶性マトリックス材料、たとえば、脂肪、ワックス(天然もしくは合成)、タンパク質、ヒドロゲル、可溶性樹脂、または他の好適な可溶性マトリックス材料を用いて、類似の投与製剤を作製しうることがわかる。
【0096】
実施例13〜15: 経口腔ゲル投与製剤(予測的)
実施例13〜15では、適切な量の出発原料を組み合わせて、表10に表形式で示される成分濃度を有する本発明に係る投与製剤を得る。クエン酸により製剤のpHを約3.5〜約5.5の範囲内のpHに調整する。クエン酸スフェンタニルを水性形態としてゲル製剤中に組み込む。バッチが均一系になるまで混合を維持する。
【表10】

【0097】
実施例16〜18: 経口腔速溶性フィルム投与製剤(予測的)
実施例16〜18では、選択された量の出発原料を用いて、実施例5に対する製剤調製方法により、表11に示された成分濃度を有する十分に混合された組成物を得る。クエン酸により製剤のpHを3.5〜5.5に調整する。本発明に係るフィルム投与製剤の製造のために溶媒キャスティング法を使用する。ポリエステルフィルム剥離ライナーのシリコン処理されていない側のような平滑表面上に均一混合物をキャストする。次に、通気下、60℃〜80℃の温度で、フィルムを乾燥させる。このプロセスにより形成されたドライフィルムは、光沢のある独立型の自己支持性、非粘着性、かつ可撓性のフィルムである。次に、遊離塩基等価量で表される10〜100マイクログラムの範囲内の投与量のスフェンタニルを含有する単回投与量ユニットを与えるように、カッティングダイを用いてフィルムを好適な形状および表面積にカットすることが可能である。最終的には、米国特許第6,394,306号または米国特許出願第10/122,808号に開示されているようなシングルパウチパッケージ、マルチユニットブリスターカード、またはマルチプルユニットディスペンサーの形態にフィルムをパッケージングすることが可能である。
【表11】

【0098】
実施例19: バッカル錠(予測的)
米国特許第5,288,497号の実施例2に以下のような変更を加えて、本発明に係る経口腔投与製剤を作製する。
【0099】
クエン酸スフェンタニルを可溶性マトリックス製剤中に組み込む。ゼラチンを可溶性マトリックス材料として選択する。
【0100】
次のように以下の成分を組み合わせることにより、好適な混合物を調製する。
【0101】
クエン酸スフェンタニル 0.005% 0.001
クエン酸 1% 0.2
リボチド 2% 0.4
コンプリトール888 2% 0.4
アスパルテーム 2% 0.4
バニラマイクロカプセル 5% 1.0
バニラクリームマイクロカプセル 5% 1.0
ワイルドチェリーマイクロカプセル 3% 0.6
ペパーミントマイクロカプセル 3% 0.6
ゼラチン 76.995% 15.399
全量 100% 20
すべて成分が混合物中に均一に分布することが保証されるように、ミキサーを用いて成分を組み合わせる。次に、脱水により各2グラムのアリコートを形成する。この手順により、それぞれ100マイクログラムのクエン酸スフェンタニルを含有する10個の経口腔粘膜投与製剤を得る。他の可溶性マトリックス材料、たとえば、脂肪、ワックス(天然もしくは合成)、タンパク質、ヒドロゲル、可溶性樹脂、または他の好適な可溶性マトリックス材料を用いて、類似の投与製剤を作製しうることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬担体とスフェンタニルとを含む経口腔投与製剤を被験者に投与することと、
in vitroドナー媒体試験を用いて決定される、該経口腔投与製剤の投与後の投薬期間の間の平均pHを、約3.5〜約5.5の範囲内に保持することと、
を含む方法であって、
該投薬期間が、該経口腔投与製剤の投与後約1分以降に始まり、かつ該経口腔投与製剤の投与後約120分以内に終わる、上記方法。
【請求項2】
前記投薬期間が、前記経口腔投与製剤の投与後約2分以降に始まり、かつ前記経口腔投与製剤の投与後約60分以内に終わる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記投薬期間が、前記経口腔投与製剤の投与後約2分以降に始まり、かつ前記経口腔投与製剤の投与後約30分以内に終わる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記投薬期間が、前記経口腔投与製剤の投与後約3分以降に始まり、かつ前記経口腔投与製剤の投与後約60分以内に終わる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記投薬期間が、前記経口腔投与製剤の投与後約4分以降に始まり、かつ前記経口腔投与製剤の投与後約60分以内に終わる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記投薬期間が、前記経口腔投与製剤の投与後約5分以降に始まり、かつ前記経口腔投与製剤の投与後約60分以内に終わる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記経口腔投与製剤が、固定された薬剤放出領域を有する経口腔投与製剤を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記経口腔投与製剤が、可変の薬剤放出領域を有する経口腔投与製剤を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記経口腔投与製剤がゲル投与製剤を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記スフェンタニルがスフェンタニル遊離塩基の製薬上許容される塩を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記製薬上許容される塩がクエン酸スフェンタニルを包含する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記平均pHを約4.5〜約5.5の範囲内に保持する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記経口腔投与製剤が、in vitroドナー媒体試験を用いて決定される、投薬期間の間の平均pHを、約3.5〜約5.5の範囲内に保持するように機能する酸性化剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記酸性化剤が緩衝剤を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記医薬担体が1種以上の透過促進剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
約5〜約1000マイクログラムのスフェンタニルと、
in vitroドナー媒体試験を用いて決定される、経口腔投与製剤の投与後の投薬期間の間の平均pHを、約3.5〜約5.5の範囲内にするのに十分な量の酸性化用材料と、
含む経口腔投与製剤であって、
該投薬期間が、上記経口腔投与製剤の投与後約1分以降に始まり、かつ上記経口腔投与製剤の投与後約120分以内に終わる、上記経口腔投与製剤。
【請求項17】
クエン酸スフェンタニルを含む、請求項16に記載の経口腔投与製剤。
【請求項18】
前記酸性化用材料が酸または緩衝剤を含む、請求項16に記載の経口腔投与製剤。
【請求項19】
前記緩衝剤が、アスコルビン酸、酢酸、クエン酸、D-グルコン酸、ジメチルグルタル酸、DL-乳酸、L-リンゴ酸、フマル酸、ガラクタル酸、L-乳酸、L-酒石酸、またはコハク酸のうちの1種以上を含み、いずれの場合も、酸が、その酸の対応する共役塩基と対をなす、請求項16に記載の経口腔投与製剤。
【請求項20】
前記投薬期間が、前記経口腔投与製剤の投与後約2分以降に始まり、かつ前記経口腔投与製剤の投与後約60分以内に終わる、請求項19に記載の経口腔投与製剤。
【請求項21】
前記投薬期間が、前記経口腔投与製剤の投与後約2分以降に始まり、かつ前記経口腔投与製剤の投与後約30分以内に終わる、請求項20に記載の経口腔投与製剤。
【請求項22】
前記投薬期間が、前記経口腔投与製剤の投与後約3分以降に始まり、かつ前記経口腔投与製剤の投与後約60分以内に終わる、請求項16に記載の経口腔投与製剤。
【請求項23】
前記投薬期間が、前記経口腔投与製剤の投与後約4分以降に始まり、かつ前記経口腔投与製剤の投与後約60分以内に終わる、請求項22に記載の経口腔投与製剤。
【請求項24】
前記投薬期間が、前記経口腔投与製剤の投与後約5分以降に始まり、かつ前記経口腔投与製剤の投与後約60分以内に終わる、請求項23に記載の経口腔投与製剤。
【請求項25】
前記経口腔投与製剤が、固定された薬剤放出領域を有する経口腔投与製剤を包含する、請求項16に記載の経口腔投与製剤。
【請求項26】
前記経口腔投与製剤が、可変の薬剤放出領域を有する経口腔投与製剤を包含する、請求項16に記載の経口腔投与製剤。
【請求項27】
前記経口腔投与製剤がゲル投与製剤を包含する、請求項16に記載の経口腔投与製剤。
【請求項28】
前記酸性化用材料が、in vitroドナー媒体試験を用いて決定される、投薬期間の間の平均pHを、約4.5〜約5.5の範囲内にするのに十分な量で存在する、請求項16に記載の経口腔投与製剤。
【請求項29】
医薬担体をさらに含む、請求項16に記載の経口腔投与製剤。
【請求項30】
前記医薬担体が1種以上の透過促進剤を含む、請求項29に記載の経口腔投与製剤。
【請求項31】
前記スフェンタニルがスフェンタニル遊離塩基の製薬上許容される塩を包含する、請求項16に記載の経口腔投与製剤。
【請求項32】
前記製薬上許容される塩がクエン酸スフェンタニルを包含する、請求項31に記載の経口腔投与製剤。
【請求項33】
(1)スフェンタニルと
(2)ナロキソンと
(3)医薬担体と
を含む経口腔投与製剤を被験者に投与することと、
in vitroドナー媒体試験を用いて決定される、該経口腔投与製剤の投与後の投薬期間の間の平均pHを、約3.5〜約5.5の範囲内に保持することと、
を含む方法であって、
該投薬期間が、該経口腔投与製剤の投与後約1分以降に始まり、かつ該経口腔投与製剤の投与後約120分以内に終わる、上記方法。
【請求項34】
前記投薬期間が、前記経口腔投与製剤の投与後約2分以降に始まり、かつ前記経口腔投与製剤の投与後約60分以内に終わる、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記投薬期間が、前記経口腔投与製剤の投与後約2分以降に始まり、かつ前記経口腔投与製剤の投与後約30分以内に終わる、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記投薬期間が、前記経口腔投与製剤の投与後約3分以降に始まり、かつ前記経口腔投与製剤の投与後約60分以内に終わる、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記投薬期間が、前記経口腔投与製剤の投与後約4分以降に始まり、かつ前記経口腔投与製剤の投与後約60分以内に終わる、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記投薬期間が、前記経口腔投与製剤の投与後約5分以降に始まり、かつ前記経口腔投与製剤の投与後約60分以内に終わる、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記経口腔投与製剤が、固定された薬剤放出領域を有する経口腔投与製剤を包含する、請求項33に記載の方法。
【請求項40】
前記経口腔投与製剤が、可変の薬剤放出領域を有する経口腔投与製剤を包含する、請求項33に記載の方法。
【請求項41】
前記経口腔投与製剤がゲル投与製剤を包含する、請求項33に記載の方法。
【請求項42】
前記スフェンタニルがスフェンタニル遊離塩基の製薬上許容される塩を包含する、請求項33に記載の方法。
【請求項43】
前記製薬上許容される塩がクエン酸スフェンタニルを包含する、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記平均pHを約4.5〜約5.5の範囲内に保持する、請求項33に記載の方法。
【請求項45】
前記経口腔投与製剤が、in vitroドナー媒体試験を用いて決定される、投薬期間の間の平均pHを、約3.5〜約5.5の範囲内に保持するように機能する酸性化剤を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項46】
前記酸性化剤が緩衝剤を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記医薬担体が1種以上の透過促進剤を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項48】
前記ナロキソンがナロキソン遊離塩基の製薬上許容される塩を包含する、請求項33に記載の方法。
【請求項49】
前記製薬上許容される塩が塩酸ナロキソンを包含する、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
(1)約5〜約1000マイクログラムのスフェンタニルと、
(2)約50マイクログラム〜約100ミリグラムのナロキソンと、
(3)in vitroドナー媒体試験を用いて決定される、経口腔投与製剤の投与後の投薬期間の間の平均pHを、約3.5〜約5.5の範囲内にするのに十分な量の酸性化用材料と、
を含む経口腔投与製剤であって、
該投薬期間が、上記経口腔投与製剤の投与後約1分以降に始まり、かつ上記経口腔投与製剤の投与後約120分以内に終わる、上記経口腔投与製剤。
【請求項51】
クエン酸スフェンタニルを含む、請求項50に記載の経口腔投与製剤。
【請求項52】
前記酸性化用材料が酸または緩衝剤を含む、請求項50に記載の経口腔投与製剤。
【請求項53】
前記緩衝剤が、アスコルビン酸、酢酸、クエン酸、D-グルコン酸、ジメチルグルタル酸、DL-乳酸、L-リンゴ酸、フマル酸、ガラクタル酸、L-乳酸、L-酒石酸、またはコハク酸のうちの1種以上を含み、いずれの場合も、酸が、その酸の対応する共役塩基と対をなす、請求項50に記載の経口腔投与製剤。
【請求項54】
前記投薬期間が、前記経口腔投与製剤の投与後約2分以降に始まり、かつ前記経口腔投与製剤の投与後約60分以内に終わる、請求項50に記載の経口腔投与製剤。
【請求項55】
前記投薬期間が、前記経口腔投与製剤の投与後約2分以降に始まり、かつ前記経口腔投与製剤の投与後約30分以内に終わる、請求項54に記載の経口腔投与製剤。
【請求項56】
前記投薬期間が、前記経口腔投与製剤の投与後約3分以降に始まり、かつ前記経口腔投与製剤の投与後約60分以内に終わる、請求項50に記載の経口腔投与製剤。
【請求項57】
前記投薬期間が、前記経口腔投与製剤の投与後約4分以降に始まり、かつ前記経口腔投与製剤の投与後約60分以内に終わる、請求項56に記載の経口腔投与製剤。
【請求項58】
前記投薬期間が、前記経口腔投与製剤の投与後約5分以降に始まり、かつ前記経口腔投与製剤の投与後約60分以内に終わる、請求項57に記載の経口腔投与製剤。
【請求項59】
前記経口腔投与製剤が、固定された薬剤放出領域を有する経口腔投与製剤を包含する、請求項50に記載の経口腔投与製剤。
【請求項60】
前記経口腔投与製剤が、可変の薬剤放出領域を有する経口腔投与製剤を包含する、請求項50に記載の経口腔投与製剤。
【請求項61】
前記経口腔投与製剤がゲル投与製剤を包含する、請求項50に記載の経口腔投与製剤。
【請求項62】
前記酸性化用材料が、in vitroドナー媒体試験を用いて決定される、投薬期間の間の平均pHを、約4.5〜約5.5の範囲内にするのに十分な量で存在する、請求項50に記載の経口腔投与製剤。
【請求項63】
医薬担体をさらに含む、請求項50に記載の経口腔投与製剤。
【請求項64】
前記医薬担体が1種以上の透過促進剤を含む、請求項63に記載の経口腔投与製剤。
【請求項65】
前記スフェンタニルがスフェンタニル遊離塩基の製薬上許容される塩を包含する、請求項50に記載の経口腔投与製剤。
【請求項66】
前記製薬上許容される塩がクエン酸スフェンタニルを包含する、請求項65に記載の経口腔投与製剤。
【請求項67】
前記ナロキソンがナロキソン遊離塩基の製薬上許容される塩を包含する、請求項50に記載の経口腔投与製剤。
【請求項68】
前記製薬上許容される塩が塩酸ナロキソンを包含する、請求項67に記載の経口腔投与製剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−518086(P2010−518086A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549118(P2009−549118)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【国際出願番号】PCT/US2008/001711
【国際公開番号】WO2008/100434
【国際公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
2.TEFLON
【出願人】(508027589)デュレクト コーポレーション (14)
【Fターム(参考)】