説明

スプリンクラ消火設備

【課題】 家庭用のスプリンクラ消火設備において、コストをかけずに、消火性能を向上させることを目的とする。
【解決手段】 水道配管3に接続され、スプリンクラヘッド11が接続された二次側配管4を備えたスプリンクラ消火設備において、二次側配管の基端側に、逆止弁12及び開閉弁17を介して接続され、タンク14を接続する。タンク14の内部には、消火剤が入っており、タンクの内部は、コンプレッサ16によって加圧されている。
また、スプリンクラヘッドが設けられる室内に、無線式の火災警報器23を設け、火災警報器が動作したときに、開閉弁を開放させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道水を使用したスプリンクラ消火設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一般のビルなどの建屋には、スプリンクラ消火設備が設置されている。通常、火災は、初期段階において、たくさんの水を放水することで、火災の拡大を抑制し、再着火を防止することができる。このような観点のもと、一般のスプリンクラ消火設備においては、ポンプにインバータを使用して回転数の制御を行ったり、自動火災報知設備の火災感知器のアナログ信号をもとに放水量を制御したり、開放度合いの制御可能な開閉弁を使用したりして、初期段階の放水量を多くし、その後、放水量を低下させるようにして、消火性能を向上させている特許が開示されている。
【0003】
これに対し、家庭用のスプリンクラ消火設備として、水源として水道本管からの水道水を使用したスプリンクラ消火設備がある(特許文献1参照)。
【特許文献1】実開平5−74554
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この家庭用のスプリンクラ消火設備では、水道直結方式を採用しており、設備の放水能力は、水道給水能力によって決定する。通常、水道水の水圧は、0.2〜0.3MPaであり、水圧の低さから、一般のビル向けのスプリンクラ消火設備に比べると、消火性能は劣ってしまう。また、家庭用の設備のため、上述したポンプや開閉弁は、コストの関係から設置されることは、ほとんどない。
【0005】
そこで、本発明は、家庭用のスプリンクラ消火設備において、コストをかけずに、消火性能を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、水道配管に接続され、スプリンクラヘッドが接続された二次側配管を備えたスプリンクラ消火設備において、二次側配管の基端側に、弁を介して接続され、内部に消火剤の入ったタンクと、該タンクに接続され、タンクの内部を加圧するコンプレッサとを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、水道配管に接続された二次側配管の基端側に、内部に消火剤の入ったタンクを備え、タンクの内部はコンプレッサによって加圧されているので、スプリンクラヘッドが動作すると、タンク内の消火剤が短い時間でヘッドから放出される。このため、火災の初期段階における流量を一時的に増加させることが可能となる。また、設備としては、コンプレッサとタンクしか必要としないので、コストをかけずに、家庭内に設置することができる。
【0008】
また、室内に、無線式の火災警報器を設け、火災警報器が動作したときに、弁を開放させるようにしたので、ヘッドの暴発による水損を防止できる。この火災警報器は、無線式であるので、一般の自動火災報知設備の火災感知器のように信号線の敷設も不要であり、安価で家庭内に設けることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施形態1
図1は本発明の消火設備のシステム図である。図において、1は給水源としての公設水道配水管である。2は逆止弁である。この逆止弁2を基準にして、一次側には、一次側配管としての水道配管3が接続され、二次側には、二次側配管4としてのスプリンクラ配管が接続されている。
【0010】
公設水道配水管1と逆止弁2との間に設けられる水道配管3には、止水弁6、水道メータ7などが設けられる。逆止弁2と水道メータ7との間からは、生活用配管9が分岐されて設けられ、図示しない一般給水器具が接続されている。
【0011】
逆止弁2の二次側に設けられる二次側配管4には、スプリンクラヘッド11が複数接続されている。二次側配管4内は、常時、水道水が充水された状態にある。
【0012】
二次側配管4の基端側(スプリンクラヘッドの一次側)には、逆止弁12を介して分岐管13が接続されている。この分岐管13は、内部に水の入ったタンク14の中に設けられる。タンク14には、加圧源としての家庭用コンプレッサ16が接続され、このコンプレッサ16により、タンク14の内部は加圧されている。タンク14は、水道水の水圧よりも高められ、例えば、0.7MPaに加圧されている。このタンク14には、図示しない圧力計が設けられ、圧力が低下したときには、コンプレッサ16を手動または自動で起動して、所定圧、0.7MPaに加圧する。
【0013】
ここで、逆止弁12は、タンク14内の水が、分岐管13を通って、二次側配管4側にのみ流れる向きで設けられている。また、タンク14内の水は、液体の消火剤に代えてもよい。本発明は、設備としては、通常の家庭用スプリンクラ消火設備に、家庭用のコンプレッサ16とタンク14だけを追加した簡素な設備なので、コストをかけずに、家庭内に設置することができる。
【0014】
分岐管13には、常時は、開放した開閉弁17が設けられる。この開閉弁17は、図示しない制御盤からの信号によって開閉されるもので、二次側配管4の末端に設けた給水栓18の使用に連動するようになっている。つまり、給水栓18を使用するために、給水栓18が開放されるときには、開閉弁17は、制御盤からの信号によって、閉じるように制御される。水道水を使用したスプリンクラ消火設備では、二次側配管4の末端に設けた給水栓18を適宜開放することで、配管内に水道水が停滞しないようにすることが必要である。しかし、給水栓18を開けると、タンク14内の水が出てしまうことから、これを防止するために、給水栓18の使用時に、連動して開閉弁17を閉じ、タンク14内の水が放水されないようにしてある。
【0015】
次に図1を使用して、本発明のスプリンクラ消火設備のシステムの動作について説明する。まず、スプリンクラヘッド11が設置された防護領域で、火災が発生し、スプリンクラヘッド11が火災時の熱によって開放すると、スプリンクラヘッド11から二次側配管4内に充水されている水が放水される。
【0016】
スプリンクラヘッド11の開栓により、タンク14内において、加圧された水が、分岐管13、逆止弁12及び開閉弁17を通って、二次側配管4に押し出され、タンク14内の圧力によって、動作したスプリンクラヘッド11から、短い時間で、タンク14内の水が、圧力の影響を受けて、勢い良く放水される。このため、火災の初期段階における流量を一時的に増加させることが可能となり、消火性能を向上させることが可能となる。
【0017】
防護対象となる室内の危険性が異なる場合においては、危険性が高くヘッド設置個数が多い室内には、ヘッドの開栓数の増加が見込まれるので、このタンク14を備えるようにした方がよい。
【0018】
続いて、実施形態1において、タンク14の容量を100L(リットル)として、80Lの水を入れ、残りの20Lを加圧空気として、コンプレッサ16により0.7MPaに加圧した場合について、表1を使用して、説明する。
【0019】
【表1】

【0020】
表1は、スプリンクラヘッド11が動作した時点からの経過時間をもとに、そのときのタンク14内の圧力と、ヘッド11からの流量を示したものである。
【0021】
スプリンクラヘッド11が動作していない時点、つまり経過時点が0秒のときは、タンク14内の圧力は、0.7MPaを維持しており、またヘッド11からの流量(L/min)は0である。ここで、スプリンクラヘッド11が動作すると、時間がさほど経過していない時点、つまり0〜15秒までの間では、タンク14内の圧力が高い状態にあり、スプリンクラヘッド11からは、60L/min以上の流量で放水が行われる。
【0022】
15秒経過後は、タンク14内の圧力が低下していくことに伴い、ヘッドからの流量も低下していき、およそ30秒が経過した時点で、タンク内の圧力は、0.27MPaという水道水の圧力とほぼ同じになり、ヘッド11からの流量は、49L/minにほぼ落ち着くという結果になった。なお、図3は、表1の結果をグラフにしたものであり、タンク14内の圧力及びヘッドからの放水量が徐々に減っていき、最終的には、タンク14内の圧力は、水道の水圧に等しくなる。
【0023】
実施形態2
二次側配管4の水が、生活用配管9に入りこまないように、二次側配管4と生活用配管9とを図2のようにして、遮断するようにしてもよい。図2は、水道メータ7から逆止弁2までのシステム図である。図2において、水道メータ7の二次側には三方弁20が設けられる。この三方弁20は、通常時は、生活用配管9側(水道配管3)と二次側配管4とを閉じ、かつ、二次側配管4と排水配管21とを連通させている。このため逆止弁2の一次側に水がある場合には、その水は、生活用配管9側に流れ込むことなく、排水配管21から排水される。
【0024】
三方弁20は、スプリンクラヘッド11が設けられる室内に設置した火災警報器23が火災を検出したときに開放されるものである。具体的には、火災警報器23は、無線式の火災警報器であり、室内のどこにでも容易に設置できるものである。この火災警報器23は、火災を検出すると、無線で火災信号を制御盤24に送信するものである。制御盤24は、火災信号を受信すると、三方弁20を開放するように制御して、二次側配管4と水道配管3とを接続して給水する。このようなシステムでは、二次側配管4内に水が停滞しても問題ないから、実施形態1の給水栓18や開閉弁17は不要となる。
実施形態3
実施形態1において、逆止弁12及び開閉弁17の代わりに、それらの弁を一つにまとめて、常時は、閉じており、火災信号で開放する開閉弁を設けるようにしてもよい。この場合、火災感知器としては、実施形態2で説明した、無線式の火災警報器23を使用すればよく、火災警報器23が動作したときに、開閉弁を開放させるようにすれば、ヘッドの暴発によって、タンク14内の水が放水されて生じる水損を防止することができる。
【0025】
火災警報器として、無線式のものを使用すれば、信号線の敷設が不要であり、安価で家庭内に設けることが可能である。
【0026】
実施形態4
本実施形態では、水道水の圧力を高める手段としてコンプレッサを使用し、火災初期段階での流量を増加させるようにしたが、小型のポンプを二次側配管に設けて、火災時に起動して、水道水圧を高めるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、実施形態1の消火設備のシステム図である。
【図2】図2は、実施形態2の消火設備のシステム図である。
【図3】タンクを使用したときの時間経過に伴う放水流量のグラフである。
【符号の説明】
【0028】
1 公設水道配水管、 2 逆止弁、 3 水道配管、
4 二次側配管、 6 止水弁、 7 水道メータ、
9 生活用配管、 11 スプリンクラヘッド、
12 逆止弁、 13 分岐管、 14 タンク、
16 コンプレッサ、 17 開閉弁、 20 三方弁、
21 排水配管、 23 火災警報器、tt 24 制御盤、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水道配管に接続され、スプリンクラヘッドが接続された二次側配管を備えたスプリンクラ消火設備において、
前記二次側配管の基端側に、弁を介して接続され、内部に消火剤の入ったタンクと、
該タンクに接続され、タンクの内部を加圧するコンプレッサとを備えたことを特徴とするスプリンクラ消火設備。
【請求項2】
前記スプリンクラヘッドが設けられる室内に、無線式の火災警報器を設け、該火災警報器が動作したときに、前記弁を開放させることを特徴とする請求項1記載のスプリンクラ消火設備。
【請求項3】
前記二次側配管の基端側に接続され、前記タンク内に設けられる分岐管と、前記二次側配管の末端に設けられる給水栓とを備え、
前記分岐管に、前記給水栓の使用に連動して閉止する開閉弁を設けたことを特徴とする請求項1記載のスプリンクラ消火設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−253299(P2008−253299A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−95666(P2007−95666)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】