説明

スプレー塗装方法およびスプレー塗装装置

【課題】ニードルバルブの往復動によって生じる摩擦熱の存在下において塗膜の厚さを良好に制御することができるスプレー塗装方法およびスプレー塗装装置を提供する。
【解決手段】塗液が吐出される吐出口を有するノズル部112、往復動することによって前記吐出口を開閉自在の先端部を有するニードルバルブ、塗液の吐出圧を供給するための塗液供給装置160、ニードルバルブを往復動させることによって、吐出口から塗液をワークWに向かって間欠的に吐出させるためのニードルバルブ駆動機構140、吐出口の温度を検出するための温度センサ126、および、塗液の吐出量と温度センサ126によって検出される吐出口温度との関係に基づき、塗液供給装置160および/又はニードルバルブ駆動機構140を、制御することで、塗液の吐出量を管理するためのコントローラ190を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプレー塗装方法およびスプレー塗装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
固体粒子を含む沈降性の高い塗液からなる塗膜を形成する場合、ニードルバルブを断続的に往復動させ、塗液の吐出口の開閉を繰り返すことで、塗着効率の低下を抑制し、かつ固体粒子を沈降させることなく、微粒化している(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2003−211063号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、ニードルバルブの往復動は、吐出口との間に摩擦熱を生じさせ、吐出口およびその周辺部の温度を時間経過と共に上昇させ、その結果、吐出される塗液の粘度に影響を及ぼす。つまり、塗液の温度の上昇により、粘度が低下し、吐出量の増加を招くため、塗膜の厚さを制御することが困難であり、例えば、塗装終了点の膜厚が。塗装開始点の膜厚より厚くなり、均一な膜厚を得ることができない問題を有している。
【0004】
本発明は、上記従来技術に伴う課題を解決するためになされたものであり、ニードルバルブの往復動によって生じる摩擦熱の存在下において塗膜の厚さを良好に制御することができるスプレー塗装方法およびスプレー塗装装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための本発明の一様相は、塗液の吐出口の温度を温度検出手段によって検出しながら、アクチュエータ手段によってニードルバルブを往復動させて、前記ニードルバルブの先端部で、前記吐出口を開閉することによって、前記吐出口から前記塗液をワークに向かって間欠的に吐出させるスプレー塗装方法である。前記スプレー塗装方法において、塗液を間欠的に吐出させる際に、前記塗液の吐出量と前記温度検出手段によって検出される吐出口温度との関係に基づき、前記塗液の吐出圧供給手段および/又は前記アクチュエータ手段を、制御することで、前記塗液の吐出量を管理する。あるいは、塗液を間欠的に吐出させる際に、前記塗液の吐出量と前記温度検出手段によって検出される吐出口温度との関係に基づき、前記吐出口温度を調整するための温度調整手段を、制御することで、前記塗液の吐出量を管理する。
【0006】
上記目的を達成するための本発明の別の一様相は、ノズル部、ニードルバルブ、吐出圧供給手段、アクチュエータ手段、温度検出手段および制御手段を有するスプレー塗装装置である。ノズル部は、塗液が吐出される吐出口を有する。ニードルバルブは、往復動することによって前記吐出口を開閉自在の先端部を有する。吐出圧供給手段は、前記塗液の吐出圧を供給するために使用される。アクチュエータ手段は、前記ニードルバルブを往復動させることによって、前記吐出口から前記塗液をワークに向かって間欠的に吐出させるために使用される。温度検出手段は、前記吐出口の温度を検出するために使用される。制御手段は、前記塗液の吐出量と前記温度検出手段によって検出される吐出口温度との関係に基づき、前記吐出圧供給手段および/又は前記アクチュエータ手段を、制御することで、前記塗液の吐出量を管理するために使用される。あるいは、前記スプレー塗装装置は、前記吐出口の温度を調整するための温度調整手段をさらに有し、制御手段は、前記塗液の吐出量と前記温度検出手段によって検出される吐出口温度との関係に基づき、前記温度調整手段を、制御することで、前記塗液の吐出量を管理するために使用される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一様相および別の一様相によれば、ニードルバルブの往復動によって摩擦熱が生じて、吐出口温度が上昇し、吐出される塗液の粘度に影響が及ぼされても、塗液の吐出量に影響を及ぼす吐出圧供給手段および/又はアクチュエータ手段を、塗液の吐出量と吐出口温度との関係に基づき、制御することで、塗液の吐出量に対する前記影響を相殺し、塗液の吐出量を管理することができる。一方、出口温度を調整するための温度調整手段を制御する場合、ニードルバルブの往復動によって摩擦熱が生じていても、当該摩擦熱を、温度調整手段によって、かつ、塗液の吐出量と吐出口温度との関係に基づき、吐出口温度を調整することで、塗液の吐出量を管理することができる。
【0008】
したがって、例えば、均一な厚さの塗膜や、傾斜や凹凸を有する不均一な厚み分布を有する塗膜を適宜形成することが可能である。つまり、ニードルバルブの往復動によって生じる摩擦熱の存在下において塗膜の厚さを良好に制御することができるスプレー塗装方法およびスプレー塗装装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0010】
図1は、実施形態1に係るスプレー塗装装置を説明するためのブロック図、図2は、図1に示されるスプレーガンを説明するための断面図である。
【0011】
スプレー塗装装置100は、塗液をワークWに塗装するために使用され、スプレーガン110、駆動装置150、塗液供給装置(吐出圧供給手段)160、溶媒供給装置170、圧縮気体供給装置180およびコントローラ(制御手段)190を有する。ワークWは、燃料電池の電解質膜である。塗液は、触媒インクである。スプレー塗装装置100は、後述するように、塗液吐出量を良好に管理することが可能であり、例えば、均一な厚さの電極触媒層や、傾斜や凹凸を有する不均一な厚み分布を有する電極触媒層を適宜形成することが可能である。
【0012】
触媒インクは、触媒金属を担持した粒子状導電性担体と、イオン交換性高分子(アイオノマー)と、溶媒との混合物から構成される。触媒金属は、例えば、白金などの貴金属触媒である。導電性担体は、例えば、カーボンブラック、グラファイト化カーボン、活性炭などのカーボン材料である。イオン交換性高分子は、良好なプロトン導電性を有する液体、固体、ゲル状材料などからなる。溶媒は、例えば、エタノールやイソプロピルアルコール等の有機溶媒および水である。
【0013】
スプレーガン110は、ノズル部112および本体部132を有する。ノズル部112は、円錐台状の凹部113を有するカップ状先端部を有し、かつ、塗液吐出口114、複数の溶媒吐出口116、および、複数の圧縮気体吐出口118が設けられ、また、ニードルバルブ120および温度センサ(温度検出手段)126が配置されている。
【0014】
塗液吐出口114は、凹部113の底面の中心部に配置されている。溶媒吐出口116は、凹部113の底面かつ塗液吐出口114を等間隔で取り囲むように円状に配置されている。圧縮気体吐出口118は、凹部113の側面かつ塗液吐出口114を等間隔で取り囲むように円状に配置されている。したがって、塗液吐出口114は、内側の溶媒吐出口116と外側の圧縮気体吐出口118とによって、二重に包囲されている。なお、溶媒吐出口116および圧縮気体吐出口118は、塗液吐出口114の軸方向と交差する方向に配向されている。
【0015】
ニードルバルブ120は、塗液吐出口114の内周面に当接自在の円錐状先端部122を有しており、往復動することによって塗液吐出口114を開閉自在に設定されている。温度センサ126は、例えば、測温抵抗体や熱電対からなり、塗液吐出口114の近傍に配置され、塗液吐出口温度を随時検出するために使用される。塗液吐出口114は、ニードルバルブ120の往復動によって摩擦熱が生じる部位であり、例えば、その温度が上昇すると、吐出される塗液の粘度が低下し、塗液吐出量が増加する。
【0016】
本体部132は、駆動装置150に支持されており、塗液導入口134、溶媒導入口136および圧縮気体導入口138が設けられ、また、ニードルバルブ駆動機構(アクチュエータ手段)140が配置されている。塗液導入口134、溶媒導入口136および圧縮気体導入口138は、本体部132の内部に配置される流路135,137,139を経由し、塗液吐出口114、溶媒吐出口116および圧縮気体吐出口118に連通している。なお、ニードルバルブ120は、塗液吐出口114に連通している流路135内に配置されており、その先端部で、塗液吐出口114を開閉することによって、塗液吐出口114から塗液を、ワークWに向かって間欠的に吐出させるために使用される。
【0017】
駆動装置150は、スプレーガン110を3方向(ワークWに対して平行な面を規定するXY軸方向およびワークWからの高さを規定するZ軸方向)に適宜移動させることが可能である。
【0018】
塗液供給装置160は、塗液が貯蔵される塗液タンク、塗液タンクと塗液導入口134とを連結する配管系、および、塗液導入口134に向かって塗液を圧送するための圧送装置を有する。塗液導入口134に圧送された塗液は、流路135を経由して塗液吐出口114から吐出する。塗液供給装置160の圧送圧は、塗液吐出口114において塗液を吐出するための圧力に対応しており、塗液供給装置160は、塗液の吐出力を供給するための機能を有している。
【0019】
なお、超音波ホモジーナイザー等の分散機を塗液タンクに設置し、塗液を混合することによって、塗液に含まれる粒子状導電性担体の分散性を維持する(沈降を抑制する)ことも好ましい。圧送装置に適用される方式は特に限定されず、例えば、ポンプ圧送方式、タンク加圧方式、エジェクタによる吸引方式を採用することが可能である。
【0020】
溶媒供給装置170は、吐出された塗液に対して事後的に添加(混合)される溶媒が貯蔵される溶媒タンク、溶媒タンクと溶媒導入口136とを連結する配管系、および、溶媒導入口136に向かって溶媒を圧送するための圧送装置を有する。溶媒導入口136に圧送された溶媒は、流路137を経由して溶媒吐出口116から吐出する。
【0021】
溶媒吐出口116は、塗液吐出口114を等間隔で取り囲むように円状に配置されているため、溶媒吐出口116から吐出される溶媒を、塗液吐出口114から吐出される塗液と混合することが可能である。つまり、吐出後の塗液に溶媒が添加されるため、塗液を予め低粘度とする必要がなく、塗液に含まれる溶媒を削減し、塗液供給装置160の塗液タンクおよび配管系、スプレーガン110における塗液の流路135における粒子状導電性担体の沈降を抑制することが可能である。
【0022】
事後的に添加される溶媒は、塗液に予め含まれる溶媒と同じもの用いることが好ましい。圧送装置に適用される方式は特に限定されず、例えば、ポンプ圧送方式、タンク加圧方式、エジェクタによる吸引方式を採用することが可能である。
【0023】
圧縮気体供給装置180は、圧縮気体が貯蔵される圧縮気体タンク、圧縮気体タンクと圧縮気体導入口138とを連結する配管系、および、配管系に配置される圧力調整バルブを有する。圧力調整バルブを開にすることによって圧縮気体導入口138に導入される圧縮気体は、流路139を経由して圧縮気体吐出口118から吐出する。
【0024】
圧縮気体吐出口118は、塗液吐出口114を取り囲む溶媒吐出口116の外側を、等間隔かつ円状に配置され、かつ、塗液吐出口114の軸方向と交差する方向に配向されており、塗液を微粒化するために使用される。つまり、圧縮気体吐出口118から吐出される圧縮気体は、塗液吐出口114から吐出される塗液と溶媒吐出口116から吐出される溶媒とを、攪拌および混合し、霧状に微粒化する。圧縮気体は、塗膜の酸化を抑制する観点からは、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスが好ましく、コストを低減する観点からは、空気が好ましい。また、事後的な溶媒と塗液の混合希釈は、塗液の微粒化を促進するため、圧縮気体の圧力を低減することが可能である。
【0025】
コントローラ190は、例えば、中央演算処理装置や記憶装置などを有するコンピュータからなり、スプレーガン110、駆動装置150、塗液供給装置160、溶媒供給装置170および圧縮気体供給装置180を、一体的に制御するために使用され、実施形態1においては、塗液吐出量と、温度センサ126によって随時検出される塗液吐出口温度との関係に基づき、ニードルバルブ駆動機構140を制御することで、塗液吐出量を管理する機能を有する。つまり、ニードルバルブ120の往復動によって摩擦熱が生じて、塗液吐出口温度が上昇し、吐出される塗液の粘度に影響が及ぼされても、塗液吐出量に対する前記影響を相殺し、塗液吐出量を管理することができる。
【0026】
なお、塗液吐出量と塗液吐出口温度との関係は、粘度と温度との関係を表すアンドレード式と、吐出量と粘度との関係を表すニュートン式との組み合わせに基づいている。吐出口温度と塗液吐出量との関係は、理論式に基づくため、制御関係式(塗液吐出量と塗液吐出口温度との関係式)を容易に導出することが可能である。また、コントローラ190は、制御関係式を、制御プログラムのモジュールとして、記憶している。
【0027】
【数1】

【0028】
【数2】

【0029】
【数3】

【0030】
前記関係および制御関係式は、アンドレード式とニュートン式との組み合わせに基づく形態に限定されず、アンドレード式の代わりに、粘度と温度との関係を表す実測式を利用したり、ニュートン式の代わりに、ポアズイユ式を利用したりすることも可能である。
【0031】
次に、ニードルバルブ駆動機構140の構成を詳述する。
【0032】
図3は、ニードルバルブによって塗液吐出口が開放された状態を示している断面図、図4は、ニードルバルブによって塗液吐出口が閉塞された状態を示している断面図、図5は、図3の線V−Vに関する断面図である。
【0033】
ニードルバルブ駆動機構140は、可動部142、弾性部材143、制止装置144および押圧力発生装置148を有する。可動部142は、ニードルバルブ120の基端部124に配置されるフランジ部からなる。弾性部材143は、可動部142を塗液吐出口114から離間する方向に付勢するためのバネからなる。
【0034】
制止装置144は、ニードルバルブ120の基端部124の後退位置(復動の停止位置)を規定するために使用され、基部145、ストッパ146および位置調整機構147を有する。基部145は、スプレーガン110の本体部132に固定される。ストッパ146は、付勢された可動部142が当接する部材である。位置調整機構147は、ストッパ146の当接面と、基部145との間の距離(ストッパ146の突出距離)を調整するために使用される。ストッパ146および位置調整機構147は、例えば、マイクロゲージを適用して構成することが可能である。
【0035】
押圧力発生装置148は、圧縮気体源を有し、コントローラ190からの制御パルスの波形に従って、可動部142と制止装置144の基部145との間に形成される密閉空間Sの内圧を、操作圧と基底圧との間で、間欠的に変化させることで、ニードルバルブ120の往復動を引き起こすことが可能に構成されている。
【0036】
操作圧は、弾性部材143の付勢力より大きい押圧力を発生させる圧力であり、操作圧により発生する押圧力が、弾性部材143の付勢力に逆らって、ニードルバルブ120を前進させるように設定される。つまり、操作圧は、ニードルバルブ120の円錐状先端部122の外周が、塗液吐出口114に当接し、塗液吐出口114を閉塞し得る値に設定される(図4参照)。
【0037】
基底圧は、弾性部材143の付勢力より小さい押圧力を発生させる(あるいは押圧力を発生させない)圧力であり、弾性部材143の付勢力によって、ニードルバルブ120が後退するように設定される。なお、ストッパ146の位置は、ニードルバルブ120の基端部124の後退位置を規定し(図3参照)、ストッパ146の突出距離を調整することによって、塗液吐出口114と、ニードルバルブ120の円錐状先端部122との位置関係を、変更すことが可能である。
【0038】
例えば、ストッパ146の突出距離を短くすると、ニードルバルブ120の後退量が増加し、開口度が増大(塗液吐出口114の内周とニードルバルブ120の円錐状先端部122の外周との隙間が増大)するため、後退位置における塗液吐出量が増加する。なお、開口度は、ニードルバルブ120の基端部124が後退位置ある場合において、塗液吐出口114におけるニードルバルブ120の円錐状先端部122が占める断面部位を、塗液吐出口114の断面積から除した塗液吐出口114の有効断面積115に対応する(図5参照)。
【0039】
一方、ストッパ146の突出距離を長くすると、ニードルバルブ120の後退量が低下し、開口度が減少(塗液吐出口114の内周とニードルバルブ120の円錐状先端部122の外周との隙間が減少)するため、後退位置における塗液吐出量が低下する。
【0040】
以上のように、ニードルバルブ開口度は、ストッパ146の突出距離に依存しており、コントローラ190は、ニードルバルブ開口度とストッパ146の突出距離との関係式を、制御プログラムのモジュールとして、記憶している。したがって、コントローラ190は、目標とする塗液吐出量に対応するニードルバルブ開口度を、ストッパ146の突出距離に換算し、ニードルバルブ駆動機構140の位置調整機構147を制御することができる。つまり、コントローラ190は、ニードルバルブ開口度を調整し、塗液吐出量を管理することが可能である。
【0041】
次に、実施形態1に係るスプレー塗装方法を説明する。
【0042】
実施形態1に係るスプレー塗装方法は、スプレー塗装装置100の稼働準備をするための準備工程、および、燃料電池の電解質膜からなるワークWに触媒インクからなる塗液を塗装して電極触媒層を形成するための塗装工程を有する。塗装工程においては、概して、塗液吐出口温度を、塗液吐出口114の近傍に配置される温度センサ126によって随時検出しながら、塗液を間欠的に吐出させる際に、塗液吐出量と塗液吐出口温度との関係に基づき、ニードルバルブ駆動機構140を制御することで、塗液吐出量が管理される。塗液の間欠的な吐出は、ニードルバルブ駆動機構140によってニードルバルブ120を往復動させ、ニードルバルブ120の円錐状先端部112によって塗液吐出口114を開閉することによって、実行される。
【0043】
次に、準備工程を詳述する。
【0044】
まず、塗液および吐出された塗液に事後的に添加される溶媒を選定し、駆動装置150の操作条件およびスプレーガン110の初期操作条件を設定する。駆動装置150の操作条件は、スプレーガン110の噴角、ワークWとスプレーガン110との間の間隔、X軸方向に関するスプレーガン110の移動速度、Y軸方向に関するスプレーガン110の送りピッチ、重ね塗り回数、オフセット量などである。スプレーガン110の初期操作条件は、塗液吐出口114の開閉周期(開放時間および閉塞時間)、塗液吐出圧(塗液供給装置160の圧送圧)、溶媒吐出口116における溶媒吐出圧(溶媒供給装置170の圧送圧)、圧縮気体吐出口118における圧縮気体吐出圧(圧縮気体供給装置180の供給圧)などである。
【0045】
次に、制御関係式(塗液吐出量と塗液吐出口温度との関係式)における制御するパラメータとして、ニードルバルブ開口度を選択する。ニードルバルブ開口度以外の制御パラメータは、一定とみなせるため、ニードルバルブ開口度と塗液吐出口温度のみがパラメータとなる塗液吐出量の定義式(第1定義式)が得られる。
【0046】
次に、塗装工程を詳述する。
【0047】
図6および図7は、比較例および実施形態1に係る塗液吐出量、塗液吐出口温度、稼動時間の関係の一例を示しているグラフである。
【0048】
まず、スプレーガン110が、コントローラ190に制御される駆動装置150によって、電解質膜からなるワークWの上方(例えば、20〜100mm)に配置される。そして、駆動装置150は、スプレーガン110をY軸方向に適宜送りながら(例えば、1〜10mmの送りピッチ)、スプレーガン110をX軸方向に移動させる(例えば、50〜100mm/秒)。
【0049】
また、スプレーガン110の移動に同期させ、塗液供給装置160、溶媒供給装置170および圧縮気体供給装置180が、コントローラ190によって作動させられ、スプレーガン110の塗液吐出口114、溶媒吐出口116および圧縮気体吐出口118から、触媒インクからなる塗液、吐出された塗液に対して事後的に添加される溶媒および圧縮気体が、それぞれ吐出される。塗液、溶媒および圧縮気体の吐出圧力は、例えば、50kPa、50kPaおよび200kPaである。
【0050】
塗液吐出口114は、凹部113の底面の中心部に配置され、溶媒吐出口116は、凹部113の底面かつ塗液吐出口114を等間隔で取り囲むように円状に配置され、圧縮気体吐出口118は、凹部113の側面かつ塗液吐出口114を等間隔で取り囲むように円状に配置されている。そのため、凹部113の底面に近い場所では、塗液の吐出流の周りを取り囲む溶媒の吐出流が形成され、かつ、当該2重の吐出流は、半径内方向へ吐出される圧縮気体により攪拌される。したがって、塗液および吐出後添加の溶媒は、良好に霧状に微粒化されて、電解質膜からなるワークWの上面に付着する。
【0051】
なお、ニードルバルブ120の往復動によって摩擦熱が生じるため、塗液吐出口温度は、稼動時間が経過するに従って上昇し、塗液粘度が低下する。そのため、ニードルバルブ開口度が一定の場合、図6に示されるように、稼動時間が増加するに従って、塗液吐出量が増大する。
【0052】
一方、実施形態1においては、塗液吐出口の温度は、その近傍に配置される温度センサ126によって正確に随時検出されている。また、コントローラ190は、ニードルバルブ開口度と塗液吐出口温度のみがパラメータとなる塗液吐出量の定義式(第1定義式)、および、ニードルバルブ開口度とストッパ146の突出距離との関係式を記憶している。
【0053】
したがって、塗液吐出量の第1定義式に、目標とする塗液吐出量と検出された塗液吐出口温度を代入することで、必要なニードルバルブ開口度が得られ、そして、ニードルバルブ開口度とストッパ146の突出距離との関係式から、ストッパ146の突出距離が算出される。つまり、ストッパ146の突出距離は、塗液吐出量に対応しており、かつ、塗液吐出口温度を考慮して設定されるため、塗液吐出口温度の上昇に影響されることなく、目標とする塗液吐出量を得ることができる。
【0054】
例えば、塗液吐出量を一定にする場合は、塗液吐出口温度の上昇に対応させ、ストッパ146の突出距離が長くなるように調整し、ニードルバルブ開口度を減少させる。その結果、図7に示されるように、稼動時間が増加して塗液吐出口温度が上昇しても、塗液吐出量は一定に維持されるため、均一な厚さの電極触媒層を得ることができる。また、傾斜や凹凸を有する不均一な厚み分布を有する電極触媒層を形成する場合は、当該電極触媒層の厚み分布に対応する塗液吐出量が得られるように、ストッパ146の突出距離を変更し、ニードルバルブ開口度を適宜調整する。
【0055】
なお、電解質膜に対する塗装の重ね塗りが設定されている場合、オフセット量が適宜設定され、上記操作が繰返される。
【0056】
以上のように、実施形態1においては、ニードルバルブ120の往復動によって摩擦熱が生じて、塗液吐出口温度が上昇し、吐出される塗液の粘度に影響が及ぼされても、ニードルバルブ駆動機構140を、塗液吐出量と塗液吐出口温度との関係に基づき、制御することで、塗液吐出量に対する前記影響を相殺し、塗液吐出量を管理することができる。したがって、例えば、均一な厚さの電極触媒層や、傾斜や凹凸を有する不均一な厚み分布を有する電極触媒層を適宜形成することが可能である。つまり、実施形態1は、ニードルバルブ120の往復動によって生じる摩擦熱の存在下において電極触媒層の厚さを良好に制御することができるスプレー塗装方法およびスプレー塗装装置を提供することができる。
【0057】
また、実施形態1においては、塗液吐出口温度の上昇に対応させ、ニードルバルブ120の後退量を変更し、ニードルバルブ開口度を調整することにより、塗液吐出量を管理することができる。さらに、塗液吐出量と塗液吐出口温度との関係は、粘度と温度との関係を表すアンドレード式と、吐出量と粘度との関係を表すニュートン式との組み合わせに基づいている。したがって、吐出口温度と塗液吐出量との関係を、理論式を利用することで、容易に導出することが可能である。
【0058】
次に、実施形態2を説明する。なお、以下においては、実施の形態1と同様の機能を有する部材については類似する符号を使用し、重複を避けるため、その説明を省略する。
【0059】
図8は、実施形態2に係るスプレー塗装装置を説明するためのブロック図、図9は、ニードルバルブによって塗液吐出口が開放された状態を示している断面図、図10は、塗液吐出口の開閉間隔を制御する制御パルスの波形パターンを示しているグラフ、図11は、図10に比較しオフ状態の割合が増加している制御パルスの波形パターンを示しているグラフである。
【0060】
実施形態2は、制御関係式(塗液吐出量と塗液吐出口温度との関係式)における制御するパラメータに関し、実施形態1と概して異なる。
【0061】
詳述すると、制御関係式における制御するパラメータとして、塗液吐出口の開閉間隔(開閉の時間配分)を選択しており、塗液吐出口の開閉間隔以外の制御パラメータは、一定とみなせるため、塗液吐出口の開閉間隔と塗液吐出口温度のみがパラメータとなる塗液吐出量の定義式(第2定義式)が得られる。そのため、図8に示されるスプレー塗装装置200のコントローラ(制御手段)290は、第2定義式を記憶している。
【0062】
また、コントローラ290は、ニードルバルブ駆動機構(アクチュエータ手段)240の押圧力発生装置248を制御するための制御パルスの波形を調整可能に設定されている。押圧力発生装置248は、圧縮気体源を有し、制御パルスの波形に従って、可動部142と制止装置244の基部145との間に形成される密閉空間Sの内圧を、操作圧と基底圧との間で、間欠的に変化させることが可能である(図9参照)。
【0063】
実施形態2においては、操作圧は、制御パルスがオフ状態の場合における密閉空間Sの内圧であり、当該操作圧によって発生した押圧力が、弾性部材143の付勢力に逆らって、ニードルバルブ120を前進させ、ニードルバルブ120の先端部122の外周が、塗液吐出口114に当接し、塗液吐出口114を閉塞するように設定される。基底圧は、制御パルスがオン状態の場合の場合における密閉空間Sの内圧(例えば、大気圧)であり、弾性部材143の付勢力により、ニードルバルブ120が後退し、ニードルバルブ120の先端部122の外周が、塗液吐出口114から離間し、塗液吐出口114を完全に開放するように設定される。
【0064】
したがって、一定の期間における制御パルスのオン状態の割合を増加させる(例えば、図11に示されるパターンから図10に示されるパターンに変更させる)場合、塗液吐出口114が開放されている期間が長くなるため、一定の期間における塗液吐出量が増加する。一方、制御パルスのオフ状態の割合を増加させる(例えば、図10に示されるパターンから図11に示されるパターンに変更させる)場合、塗液吐出口114が閉塞されている期間が長くなるため、一定の期間における塗液吐出量が減少する。つまり、コントローラ290は、制御パルスの波形を調整し、塗液吐出口の開閉間隔を変更することで、塗液吐出量を管理することが可能である。
【0065】
また、実施形態2においては、塗液吐出口の温度は、その近傍に配置される温度センサ126によって正確に随時検出されている。一方、コントローラ290は、塗液吐出口の開閉間隔と塗液吐出口温度のみがパラメータとなる塗液吐出量の定義式(第2定義式)を記憶し、かつ、塗液吐出口の開閉間隔を決定する制御パルスの波形を調整することができる。
【0066】
したがって、塗液吐出量の第2定義式に、目標とする塗液吐出量と検出された塗液吐出口温度を代入することで、必要な塗液吐出口の開閉間隔が算出され、そして、塗液吐出口の開閉間隔に対応する制御パルスの波形が得られる。つまり、制御パルスの波形は、塗液吐出量に対応しており、かつ、塗液吐出口温度を考慮して設定されるため、塗液吐出口温度の上昇に影響されることなく、目標とする塗液吐出量を得ることができる。
【0067】
例えば、塗液吐出量を一定にする場合は、塗液吐出口温度の上昇に対応させ、制御パルスのオフ状態の割合を増加させて、ニードルバルブ駆動機構240の押圧力発生装置248を制御する。その結果、稼動時間が増加して塗液吐出口温度が上昇しても、塗液吐出量は一定に維持されるため、均一な厚さの電極触媒層を得ることができる。
【0068】
図12は、実施形態2に係る変形例を説明するための断面図である。
【0069】
実施形態2においては、塗液吐出口温度に応じてニードルバルブ開口度を調整していないため、ニードルバルブ220の先端部を、円錐状とする必要はなく、例えば、円錐台状とすることも可能である。
【0070】
以上のように、実施形態2においては、塗液吐出口温度の上昇に対応させ、ニードルバルブ120を往復動させるための制御パルスの波形を変更し、塗液吐出口114の開閉間隔(開閉の時間配分)を調整することによって、塗液吐出量を管理することが可能である。
【0071】
次に、実施形態3を説明する。
【0072】
図13は、実施形態3に係るスプレー塗装装置を説明するためのブロック図である。
【0073】
実施形態3は、制御関係式(塗液吐出量と塗液吐出口温度との関係式)における制御するパラメータに関し、実施形態1および2と概して異なる。
【0074】
詳述すると、制御関係式における制御するパラメータとして、塗液吐出圧を選択しており、塗液吐出圧以外の制御パラメータは、一定とみなせるため、塗液吐出圧と塗液吐出口温度のみがパラメータとなる塗液吐出量の定義式(第3定義式)が得られる。そのため、図13に示されるスプレー塗装装置300のコントローラ(制御手段)390は、第3定義式を、記憶している。
【0075】
また、コントローラ390は、塗液供給装置(吐出圧供給手段)360の圧送圧を調整可能に設定されており、塗液供給装置360の圧送圧を調整し、塗液吐出圧を変更すことで、塗液吐出量を管理することが可能である。なお、塗液吐出口の温度は、その近傍に配置される温度センサ126によって正確に随時検出される。
【0076】
したがって、塗液吐出量の第3定義式に、目標とする塗液吐出量と検出された塗液吐出口温度を代入することで、必要な塗液吐出圧が算出される。つまり、塗液吐出圧は、塗液吐出量に対応しており、かつ、塗液吐出口温度を考慮して設定されるため、塗液吐出口温度の上昇に影響されることなく、目標とする塗液吐出量を得ることができる。
【0077】
例えば、塗液吐出量を一定にする場合は、塗液吐出口温度の上昇に対応させ、塗液吐出圧を低下するように、塗液供給装置360の圧送圧を制御する。その結果、稼動時間が増加しても、塗液吐出量は一定に維持されるため、均一な厚さの電極触媒層を得ることができる。
【0078】
以上のように、実施形態3においては、塗液吐出圧を調整することによって、塗液吐出量を管理することが可能である。なお、塗液吐出圧は、塗液供給装置360の圧送圧によって調整する形態に限定されない。例えば、スプレーガンに圧力調整機構を配置することで、塗液供給装置360の圧送圧を一定に保ちつつ、前記圧力調整機構によって塗液吐出圧を調整することも可能である。
【0079】
次に、実施形態4を説明する。
【0080】
図14は、実施形態4に係るスプレー塗装装置を説明するためのブロック図、図15は、図14に示されるスプレーガンを説明するための断面図である。
【0081】
実施形態4は、制御関係式(塗液吐出量と塗液吐出口温度との関係式)における制御するパラメータに関し、実施形態1〜3と概して異なる。
【0082】
詳述すると、制御関係式における制御するパラメータとして、塗液吐出口温度を選択しており、塗液吐出口温度以外の制御パラメータは、一定とみなせるため、塗液吐出口温度のみがパラメータとなる塗液吐出量の定義式(第4定義式)が得られる。そのため、図14に示されるスプレー塗装装置400のコントローラ(制御手段)490は、第4定義式を、記憶している。
【0083】
また、スプレー塗装装置400は、塗液吐出口温度を調整するための温度調整装置(温度調整手段)402を有する。温度調整装置402は、例えばペルチェ素子などの熱電素子(熱電エネルギー変換器)404と、熱電素子404に電流を供給するための電源部406とを有する。熱電素子404は、スプレーガン410のノズル部412のカップ状先端部の外周に、配置されている。熱電素子404の配置位置は、カップ状先端部の外周に限定されないが、制御性および伝熱効率の観点から、塗液吐出口114の近傍が好ましい。なお、塗液吐出口の温度は、その近傍に配置される温度センサ126によって正確に随時検出される。
【0084】
一方、コントローラ490は、温度センサ126によって検出される微小な温度変化に応じて、電源部406を制御することで、熱電素子404による伝熱量を調整可能に設定されている。
【0085】
したがって、実施形態4においては、塗液吐出量の第4定義式に、目標とする塗液吐出量を代入することで、必要な塗液吐出口温度が算出され、当該温度になるように、温度調整装置402がフィードバック制御される。つまり、ニードルバルブの往復動によって摩擦熱が生じても、塗液吐出口温度を所定の値にすることが可能であり、塗液吐出量を管理することができる。
【0086】
例えば、塗液吐出量を一定にする場合は、塗液吐出口温度が一定となるように、熱電素子404による伝熱量を調整することで、摩擦熱を相殺し、摩擦熱の影響を排除する。その結果、稼動時間が増加しても、塗液吐出量は一定に維持されるため、均一な厚さの電極触媒層を得ることができる。また、傾斜や凹凸を有する不均一な厚み分布を有する電極触媒層を形成する場合は、当該電極触媒層の厚み分布に対応する塗液吐出量が得られ塗液吐出口温度となるように、熱電素子404による伝熱量を適宜調整する。
【0087】
以上のように、実施形態4においては、ニードルバルブの往復動によって摩擦熱が生じていても、当該摩擦熱を、温度調整装置402によって相殺し、かつ、塗液吐出口温度と塗液吐出量との関係に基づき、塗液吐出口温度を調整することで、塗液吐出量を管理することができる。なお、温度調整装置402は、熱電素子によって伝熱する構成するに限定されず、例えば、冷媒を循環させる形態を適用することも可能である。
【0088】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の範囲内で種々改変することができる。例えば、スプレー塗装装置は、ニードルバルブの往復動によって摩擦熱が生じる構成を有しておれば、特に限定されない。また、ワークは、燃料電池の電解質膜に限定されず、塗液も、触媒インクに限定されない。さらに、実施形態1〜4を適宜組み合わせることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】実施形態1に係るスプレー塗装装置を説明するためのブロック図である。
【図2】図1に示されるスプレーガンを説明するための断面図である。
【図3】図1に示されるニードルバルブ駆動機構を説明するための断面図であり、ニードルバルブによって塗液吐出口が開放された状態を示している。
【図4】図1に示されるニードルバルブ駆動機構を説明するための断面図であり、ニードルバルブによって塗液吐出口が閉塞された状態を示している。
【図5】図3の線V−Vに関する断面図である。
【図6】比較例に係る塗液吐出量、塗液吐出口温度、稼動時間の関係の一例を示しているグラフである。
【図7】実施形態1に係る塗液吐出量、塗液吐出口温度、稼動時間の関係を一例を示しているグラフである。
【図8】実施形態2に係るスプレー塗装装置を説明するためのブロック図である。
【図9】ニードルバルブによって塗液吐出口が開放された状態を示している断面図である。
【図10】塗液吐出口の開閉間隔を制御する制御パルスの波形パターンを示しているグラフである。
【図11】図10に比較しオフ状態の割合が増加している制御パルスの波形パターンを示しているグラフである。
【図12】実施形態2に係る変形例を説明するための断面図である。
【図13】実施形態3に係るスプレー塗装装置を説明するためのブロック図である。
【図14】実施形態4に係るスプレー塗装装置を説明するためのブロック図である。
【図15】図14に示されるスプレーガンを説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0090】
100 スプレー塗装装置、
110 スプレーガン、
112 ノズル部、
112 円錐状先端部、
113 凹部、
114 塗液吐出口、
115 有効断面積、
116 溶媒吐出口、
118 圧縮気体吐出口、
120 ニードルバルブ、
122 円錐状先端部、
124 基端部、
126 温度センサ(温度検出手段)、
132 本体部、
134 塗液導入口、
135 流路、
136 溶媒導入口、
137 流路、
138 圧縮気体導入口、
139 流路、
140 ニードルバルブ駆動機構(アクチュエータ手段)、
142 可動部、
143 弾性部材、
144 制止装置、
145 基部、
146 ストッパ、
147 位置調整機構、
148 押圧力発生装置、
150 駆動装置、
160 塗液供給装置(吐出圧供給手段)、
170 溶媒供給装置、
180 圧縮気体供給装置、
190 コントローラ(制御手段)、
200 スプレー塗装装置、
220 ニードルバルブ、
240 ニードルバルブ駆動機構(アクチュエータ手段)、
244 制止装置、
248 押圧力発生装置、
290 コントローラ(制御手段)、
300 スプレー塗装装置、
360 塗液供給装置(吐出圧供給手段)、
390 コントローラ(制御手段)、
400 スプレー塗装装置、
402 温度調整装置(温度調整手段)、
404 熱電素子、
406 電源部、
410 スプレーガン、
412 ノズル部、
490 コントローラ(制御手段)、
S 密閉空間、
W ワーク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗液の吐出口の温度を温度検出手段によって検出しながら、アクチュエータ手段によってニードルバルブを往復動させて、前記ニードルバルブの先端部で、前記吐出口を開閉することによって、前記吐出口から前記塗液を、ワークに向かって間欠的に吐出させる際に、
前記塗液の吐出量と前記温度検出手段によって検出される吐出口温度との関係に基づき、前記塗液の吐出圧供給手段および/又は前記アクチュエータ手段を、制御することで、前記塗液の吐出量を管理する
ことを特徴とするスプレー塗装方法。
【請求項2】
前記関係は、粘度と温度との関係を表すアンドレード式と、吐出量と粘度との関係を表すニュートン式との組み合わせに基づいていることを特徴とする請求項1に記載のスプレー塗装方法。
【請求項3】
前記アクチュエータ手段の制御は、前記吐出口における前記ニードルバルブの開口度を調整することからなり、
前記開口度は、前記ニードルバルブの基端部が復動の停止位置ある場合において、前記吐出口における前記ニードルバルブの先端部が占める断面部位を、前記吐出口の断面積から除した前記吐出口の有効断面積に対応している
ことを特徴とする請求項2に記載のスプレー塗装方法。
【請求項4】
前記アクチュエータ手段の制御は、前記ニードルバルブの先端部による前記吐出口の開閉の時間配分を調整することからなることを特徴とする請求項2に記載のスプレー塗装方法。
【請求項5】
前記吐出圧供給手段の制御は、前記吐出口に対する前記塗液の圧送圧を調整することからなることを特徴とする請求項2に記載のスプレー塗装方法。
【請求項6】
前記塗液の吐出量は、一定となるように調整されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のスプレー塗装方法。
【請求項7】
塗液の吐出口の温度を温度検出手段によって検出しながら、アクチュエータ手段によってニードルバルブを往復動させて、前記ニードルバルブの先端部で、前記吐出口を開閉することによって、前記吐出口から前記塗液をワークに向かって間欠的に吐出させる際に、
前記塗液の吐出量と前記温度検出手段によって検出される吐出口温度との関係に基づき、前記吐出口温度を調整するための温度調整手段を、制御することで、前記塗液の吐出量を管理する
ことを特徴とするスプレー塗装方法。
【請求項8】
前記関係は、粘度と温度との関係を表すアンドレード式と、吐出量と粘度との関係を表すニュートン式との組み合わせに基づいていることを特徴とする請求項7に記載のスプレー塗装方法。
【請求項9】
前記吐出口温度は、前記温度調整手段によって、一定となるように調整されることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載のスプレー塗装方法。
【請求項10】
前記ワークは、燃料電池の電解質膜であり、
前記塗液は、前記電解質膜の電極触媒層を形成するための触媒インクであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のスプレー塗装方法。
【請求項11】
塗液が吐出される吐出口を有するノズル部、
往復動することによって前記吐出口を開閉自在の先端部を有するニードルバルブ、
前記塗液の吐出圧を供給するための吐出圧供給手段、
前記ニードルバルブを往復動させることによって、前記吐出口から前記塗液をワークに向かって間欠的に吐出させるためのアクチュエータ手段、
前記吐出口の温度を検出するための温度検出手段、および、
前記塗液の吐出量と前記温度検出手段によって検出される吐出口温度との関係に基づき、前記吐出圧供給手段および/又は前記アクチュエータ手段を、制御することで、前記塗液の吐出量を管理するための制御手段を有する
ことを特徴とするスプレー塗装装置。
【請求項12】
前記関係は、粘度と温度との関係を表すアンドレード式と、吐出量と粘度との関係を表すニュートン式との組み合わせに基づいていることを特徴とする請求項11に記載のスプレー塗装装置。
【請求項13】
前記制御手段は、前記アクチュエータ手段を制御し、前記吐出口における前記ニードルバルブの開口度を調整することにより、前記塗液の吐出量を管理し、
前記開口度は、前記ニードルバルブの基端部が復動の停止位置ある場合において、前記吐出口における前記ニードルバルブの先端部が占める断面部位を、前記吐出口の断面積から除した前記吐出口の有効断面積に対応している
ことを特徴とする請求項12に記載のスプレー塗装装置。
【請求項14】
前記制御手段は、前記アクチュエータ手段を制御し、前記ニードルバルブの先端部による前記吐出口の開閉の時間配分を調整することにより、前記塗液の吐出量を管理することを特徴とする請求項12に記載のスプレー塗装装置。
【請求項15】
前記制御手段は、前記吐出圧供給手段を制御し、前記吐出口に対する前記塗液の圧送圧を調整することにより、前記塗液の吐出量を管理することを特徴とする請求項12に記載のスプレー塗装装置。
【請求項16】
塗液が吐出される吐出口を有するノズル部、
往復動することによって前記吐出口を開閉自在の先端部を有するニードルバルブ、
前記塗液の吐出圧を供給するための吐出圧供給手段、
前記ニードルバルブを往復動させることによって、前記吐出口から前記塗液をワークに向かって間欠的に吐出させるためのアクチュエータ手段、
前記吐出口の温度を検出するための温度検出手段、
前記吐出口の温度を調整するための温度調整手段、および、
前記塗液の吐出量と前記温度検出手段によって検出される吐出口温度との関係に基づき、前記温度調整手段を、制御することで、前記塗液の吐出量を管理するための制御手段を有する
ことを特徴とするスプレー塗装装置。
【請求項17】
前記関係は、粘度と温度との関係を表すアンドレード式と、吐出量と粘度との関係を表すニュートン式との組み合わせに基づいていることを特徴とする請求項16に記載のスプレー塗装装置。
【請求項18】
前記ワークは、燃料電池の電解質膜であり、
前記塗液は、前記電解質膜の電極触媒層を形成するための触媒インクであることを特徴とする請求項11〜17のいずれか1項に記載のスプレー塗装装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−58049(P2010−58049A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−226282(P2008−226282)
【出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】