説明

スプールケース保持具

【課題】単純な構成により、梱包容器内でスプールケースを移動、回転、振動することなく、安定的に保持できる保持具を低コストで提供する。
【解決手段】スプール4を収納するための略円筒カップ状の容器本体5と、容器本体5の開口位置に被せられ、容器本体5の軸上で容器本体5の外径よりも小さな外径の略円筒状の突出部7を有する蓋体6とでスプールケース2を構成し、このスプールケース2を梱包容器3内に複数並列に配置するために用いるスプールケース保持具1において、突出部7の突出高さに対応する厚みの板状の保持具本体8に、突出部7の横置き時の高さに対応する深さで、突出部7に嵌まり合うU字型の位置決め溝9をスプールケース2の梱包容器3内での配列ピッチで複数形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置用のボンディングワイヤ巻回用のスプールを収めたスプールケースを出荷、運搬する際に利用するスプールケース保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スプールに巻回されたボンディングワイヤを出荷する際は、特許文献1に記載のような個装用のスプールケースを梱包容器内に整列して収めるが、梱包容器の中でスプールケースの振動、回転、移動を避けるために、例えば特許文献2に記載のような梱包部材を用いた梱包手段が提案されていた。
【0003】
特許文献1のスプールケースは、容器本体と蓋体との組み合わせからなり、蓋体は、内部にスプールを収容した状態の容器本体の開口面に対して摩擦的に嵌まり合う。
【0004】
特許文献2は、複数のスプールケースを梱包容器に整列して収めるために、梱包容器本体内に収容する梱包部材として上下一対の下側トレーおよび上側トレーを開示している。それらの一対のトレーは、薄い樹脂製の成形品であり、複数のスプールケースを収容するために、それぞれ収容しようとするスプールケースと同数の立体的な凹部によりケース保持部を形成している。複数のスプールケースは、上下の各ケース保持部の間で挟み込まれるようにして梱包容器に整列状態として納められる。
【0005】
上記のようなトレーの製造方法としては、樹脂ブロックの切削、樹脂の射出成形、薄い樹脂板の真空成形などが挙げられる。そのうち樹脂板の真空成形は、比較的低コストであるが、それでも熱と圧力とによる加工、すなわち加熱と減圧とにより樹脂板を型に密着、成形した後、冷却、常圧への復帰、型から成形品の取り出しのなどの工程を必要とする成形加工であるため、比較的長い加工時間を要する。樹脂ブロックの切削や樹脂の射出成形では、さらに長い加工時間や高いコストが必要となる。上記の梱包容器や梱包部材としてのトレーなどの従来の包装技術によると、いずれにも製造上の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−43360号公報
【特許文献2】特開2001−171769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の解決課題は、前記の従来技術の問題点に鑑み、単純な手段によって、梱包容器内でスプールケースを移動、回転、振動することなく、安定的に保持できる保持具を低コストで提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題の下に、本発明は、スプールを収納するための略円筒カップ状の容器本体と、この容器本体の開口位置に被せられ、上記容器本体の軸上で容器本体の外径よりも小さな外径の略円筒状の突出部を有する蓋体とからなるスプールケースを梱包容器内に複数並列に配置するために用いる保持具において、上記突出部の突出高さに対応する厚みの板状の保持具本体に、上記突出部の横置き時の高さに対応する深さで、上記突出部に嵌まり合うU字型の位置決め溝を上記梱包容器内での上記スプールケースの配列ピッチで複数形成したことを特徴とする(請求項1)。
【0009】
上記突出部は、直径方向のスリットを形成しており、上記位置決め溝は、底部に上記スリットに入り込む突片を有している(請求項2)。
【0010】
上記保持具本体の厚みは、上記突出部の突出高さの約2倍とし、スプールケースは、上記位置決め溝に対して両開口面から2個の上記突出部を向き合わせ状態として配置可能としてある(請求項3)。
【0011】
上記保持具本体は、樹脂製もしくは木製の板状材料により構成され、上記板状材料の厚み方向で同じ輪郭の形状として構成されている(請求項4)。
【発明の効果】
【0012】
本発明のスプールケース保持具によると、下記の特有の効果がある。上記突出部の突出高さに対応する厚みの板状の保持具本体に、上記突出部の横置き時の高さに対応する深さで、上記突出部に嵌まり合う位置決め溝が梱包容器内での上記スプールケースの配列ピッチで複数形成されている。このため、梱包容器内でスプールケースの蓋体の突出部が位置決め溝に嵌まり合うことによって、梱包容器内でのスプールケースの転がり方向の移動が制限され、スプールケースが梱包容器内で安定して保持されると共に、保持具本体の厚さがスプールケースの蓋体の突出部の突出高さと略同一としたので、蓋体の突出部が位置決め溝内に収まり、蓋体の突出部が梱包容器に直接接触して、姿勢が不安定となることもない。このように、スプールケースの必要な要部のみが規制される構成であるから、保持の安定性が得られ、しかもコンパクトであり、点数が少なくて済むといった効果を有する(請求項1)。
【0013】
また、上記突出部が直径方向のスリットを形成しており、これに対応して、上記位置決め溝の底部に上記スリットに入り込む突片を有していると、位置決め用溝の突片に対する突出部のスリットの入り込みによって、梱包容器内でスプールケースの回転や転がりが一層確実に防止できる(請求項2)。
【0014】
上記保持具本体の厚みは、上記突出部の突出高さの約2倍とし、スプールケースは、上記位置決め溝に対して両溝開口面から2個の上記突出部を向き合わせ状態として配置可能としてあるから、スプールケース保持具が向かい合って保持されるスプールケースによって共用されるので、必要となる保持具の数を半減させることができ、梱包コストが低減できる(請求項3)。
【0015】
さらに、上記保持具本体が樹脂板または木製板により厚み方向で同じ輪郭の形状として構成されていると、板体の厚み方向でプレス打ち抜き加工によって、極めて高速に製作でき、大幅なコストの低減に役立つといった顕著な効果が得られる(請求項4)。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例1に係るスプールケース保持具を示し、(a)はその正面図、(b)はその側面図である。
【図2】本発明の実施例1に係るスプールケース保持具にスプールケースを組み合わせた状態を示し、(a)はその正面図、(b)はその側面図である。
【図3】本発明の実施例1に係るスプールケース保持具にスプールケースを組み合わせ、梱包容器に収納した状態を示し、(a)はその平面図、(b)はその側面図である。
【図4】内部にスプールを収納した状態のスプールケースの一部破断拡大側面図であり、(a)は正面図、(b)は(a)に示すA−A矢視図である。
【図5】本発明の実施例2に係るスプールケース保持具を示し、(a)はその正面図、(b)はその側面図である。
【図6】本発明の実施例2に係るスプールケース保持具にスプールケースを組み合わせた状態を示し、(a)はその正面図、(b)はその側面図である。
【図7】本発明の実施例3に係るスプールケース保持具にスプールケースを組み合わせ、梱包容器に収納した状態を示し、(a)はその平面図、(b)はその側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1ないし図4は、本発明の実施例1によるスプールケース保持具1を示している。図1ないし図3において、スプールケース保持具1は、複数例えば10個のスプールケース2を梱包容器3の内部に並列で整列状態として配置するために用いる。この例で、スプールケース2の収容数は10個であり、それらは、梱包容器3の内部に2列で、各列に5個ずつ収納されている。
【0018】
図2、図3および図4に示すように、スプールケース2は、例えばポリプロピレンの成形品であり、スプール4を収納するための略円筒カップ状の容器本体5と、容器本体5の開口位置に被せられる蓋体6とからなる。容器本体5は、内部にスプール4を収納した状態で、内側への突出部分を形成した底部12をスプール4の中心孔に位置させ、底側でその動きを規制している。なお、スプール4の外周に一定の長さのボンディングワイヤ13が巻き付けられている。
【0019】
蓋体6は、容器本体5の軸の延長上で、外側面に容器本体5の外径よりも小さな外径の略円筒状の突出部7を、また容器本体5の内側に突出部7の延長として一対の円弧状の摩擦板11をそれぞれ一体的に有している。なお、突出部7は、二つ割り型であり、直径方向にスリット10を形成している。上記構成の蓋体6は、容器本体5の開口部分に摩擦的に嵌まり合うとともに、摩擦板11をスプール4の中心孔に位置させ、容器本体5の開口側でその動きを規制している。
【0020】
図4に示すように、スプールケース2の内部にスプール4が納められている状態で、利用者が二つ割り型の突出部7をつまんで、2つの突出部7の間のスリット10の幅を狭める方向に力を加えると、一対の円弧状の摩擦板11は、中心から離れる方向に変位し、外周面でスプール4の中心孔内周面に摩擦的に圧接する。ここで利用者は、上記の力を加えたまま蓋体6を容器本体5の開口面から引き離すと、蓋体6は、摩擦板11とスプール4の中心孔内周面との間の摩擦力により、スプール4を容器本体5の内部から引き出す。これによって、利用者は、スプール4やボンディングワイヤ13に触れなくても、スプール4を容器本体5の内部から取り出せることになる。
【0021】
そして、図1ないし図3に示すように、本発明に係るスプールケース保持具1は、板状の保持具本体8により構成されており、保持具本体8は、突出部7の突出高さに対応する厚みの板状であり、U字型の位置決め溝9を複数形成している。位置決め溝9は、スプールケース2の横置き時に、突出部7の下側面の高さに対応する深さで、上方で開口しており、それらの位置決め溝9の間隔は、複数のスプールケース2を梱包容器3の内部に、並列状態で配置したときの配列ピッチに対応している。
【0022】
保持具本体8は、樹脂製もしくは木製の板状材料により構成されており、板状材料の厚み方向で同じ輪郭の形状としてある。このため、保持具本体8は、厚み方向のプレス打ち抜き加工によって、極めて高速で製作できる。このような製作態様は、大幅なコストの低減に役立つといった顕著な効果を奏する。
【0023】
図3に示すように、2個のスプールケース保持具1は、長方形で上面開口型の梱包容器3の内部で、対向する側壁に内側面に沿って納められる。2個のスプールケース保持具1に対して、10個のスプールケース2は、梱包容器3の内部に2列で、各列に5個ずつ、スプールケース2の底側を向き合わせながら横置きとし、突出部7をU字型の位置決め溝9に納めて収納される。この収納状態で、スプールケース2は、位置決め溝9に対する位置規制の要部としての突出部7の納まり具合によって転がらないように保持される。
【0024】
このように、梱包容器3内でのスプールケース2の転がり方向の移動が制限され、スプールケース2が梱包容器3内で安定して保持されると共に、板状の保持具本体8の厚さが蓋体6の突出部7の突出高さと略同一としたので、突出部7が位置決め溝9内に収まり、突出部7が梱包容器3に直接接触して、姿勢が不安定となることもない。しかも、スプールケース保持具1がコンパクトであり、点数が少なくて済むといった効果を有する
【0025】
なお、各部の具体的な寸法は、次の通りである。スプールケース2は外径74mm、高さ80mmの略円筒形であり、そのうち高さ17mmの部分は蓋体6の突出部7であり、その外形は直径約44mmの略円柱を円柱の直径方向に設けた幅約9mmのスリット10で二分した形をしている。梱包容器3の外形はスプールケース2を2列合計10個納めるために外形寸法で長さ380(=2t+74φ÷2+p75×4+74φ÷2+2t+余裕2)mm、幅166mm、高さ85mmで、その材質は厚みは2mmのプラスチック板である。なお、梱包容器3の上面に多孔質樹脂製で厚み10mm緩衝材が入る。そして、スプールケース保持具1は、一例として長さ365mm、高さ45mm、厚さ17、位置決め溝9の溝幅45mm、溝深さ33mm、配列ピッチ75mmとなっている。
【0026】
次に、図5および図6は、実施例2に係るスプールケース保持具1を示している。図5および図6において、各位置決め溝9は、突出部7のスリット10に対応して、位置決め溝9の底部に上向きの突片14を有している。突片14は、幅約8mmの平板状であり、プレス打ち抜きと同時に形成される。これらの突片14に対してスリット10が入り込むため、梱包容器3内でスプールケース2の回転や転がりが一層確実に防止できる。なお、実施例2のスプールケース保持具1の寸法は、第1の実施例のものとほぼ同一となっている。
【0027】
図7は、実施例3に係るスプールケース保持具1を示している。図7において、保持具本体8の厚みは、2個の突出部7に対応させるために、突出部7の突出高さの約2倍としてある。10個のスプールケース2は、梱包容器3の内部で、位置決め溝9に対して溝両開口面から各突出部7を向き合わせ状態として配置される。この実施例3によると、スプールケース保持具1の必要数を半減させることができ、梱包コストが低減できる。なお、実施例3のスプールケース保持具1の寸法も、その厚み以外は、実施例1のものとほぼ同一である。もちろん、実施例3のスプールケース保持具1もプレス打ち抜きにより製作できる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明において、スプールケース2は、スプール4の形状に応じた外形や高さ寸法、外形寸法として成形される。したがって、スプールケース保持具1の外形寸法、その厚み、位置決め溝9の大きさ、突片14の大きさなどは、スプールケース2の具体的な外形に応じた形態として実施される。
【符号の説明】
【0029】
1 スプールケース保持具
2 スプールケース
3 梱包容器
4 スプール
5 容器本体
6 蓋体
7 突出部
8 保持具本体
9 位置決め溝
10 スリット
11 摩擦板
12 底部
13 ボンデングワイヤ
14 突片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプールを収納するための略円筒カップ状の容器本体と、この容器本体の開口位置に被せられ、上記容器本体の軸上で容器本体の外径よりも小さな外径の略円筒状の突出部を有する蓋体とからなるスプールケースを梱包容器内に複数並列に配置するために用いる保持具において、上記突出部の突出高さに対応する厚みの板状の保持具本体に、上記突出部の横置き時の高さに対応する深さで、上記突出部に嵌まり合うU字型の位置決め溝を上記スプールケースの梱包容器内での配列ピッチで複数形成したことを特徴とするスプールケース保持具。
【請求項2】
上記突出部に直径方向のスリットを形成しておき、上記位置決め溝の底部に上記スリットに入り込む突片を設けたことを特徴とする請求項1記載のスプールケース保持具。
【請求項3】
上記保持具本体の厚みを上記突出部の突出高さの約2倍とし、上記位置決め溝に対して両開口面から2個の上記突出部を向き合わせ状態として配置可能としたことを特徴とする請求項1または請求項2記載のスプールケース保持具。
【請求項4】
上記保持具本体を樹脂製もしくは木製の板状材料により構成し、上記板状材料の厚み方向で同じ輪郭形状としたことを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載のスプールケース保持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−274924(P2010−274924A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−126154(P2009−126154)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】