説明

スプール

【課題】ブロック体が変形してもスプールがその変形に追随して摺動することのできる構造を提供しようとする。
【解決手段】スプール本体10が、軸方向の任意箇所で分断され、該分断部分10a,10b相互が連結部材12で連結されるスプール1であって、前記連結部材12が、前記分断部分10a,10bが外力を受けた際、その外力に応じて変形自在となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、切替弁等に用いられるスプールに関する。
【背景技術】
【0002】
スプールが用いられる切替弁等は、図3に示すように、流体回路を構造するブロック体5の中に、摺動自在なスプール6が配置されることで、流体の切換や開閉の回路が構成される(切替弁の従来構造として、特開2000−170707,特開2001−159470等)。
【特許文献1】特開2000−170707(図1)
【特許文献2】特開2001−159470(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、スプールは剛体であり、屈曲することはない。このため、熱や外力でブロック体が変形すると、剛体のスプールはブロック体の変形に追随できず、摺動が不能となって、回路の切換や開閉動作に不具合を起こすことがあった。
【0004】
この発明は、以上のような問題に鑑み創案されたもので、ブロック体が変形してもスプールがその変形に追随して摺動することのできる構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため、この発明に係るスプールは、スプール本体が、軸方向の任意箇所で分断され、該分断部分相互が連結部材で連結されるスプールであって、前記連結部材が、前記分断部分が外力を受けた際、その外力に応じて変形自在となることを特徴とする。
【0006】
前記連結部材が外力に応じて変形自在となる具体的構成としては、例えば素材を、耐熱性があるが、スプール本体よりは塑性のあるものに選定すること(一例としてそのような特性を備えた変形自在な金属やプラスチック)や、連結部材と分断部分との接続構造を分断部分の移動を許容できるものとすること(例えば、軸受け部にあそびを設ける)などが挙げられる。
【0007】
次に作用を説明すると、本発明のスプールが組み込まれたブロック体に外力が加わり、ブロック体内部の摺動部が変形するような場合、ブロック体に変形を加えた外力はスプール本体の各分断部分にもかかる。このとき各分断部分は変形しないが、それらを連結する連結部材は、外力に応じて変形自在となるので、連結部材の変形によって、スプール本体全体はブロック体の変形に追随することになる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ブロック体が変形してもスプールがその変形に追随して摺動することができるので、従来のように、スプールが摺動不能となって回路の切換や開閉動作に不具合を起こすようなことが未然に防止できるものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に係る具体的形態である形態例を図1に基づき説明する。以下説明する形態例は、切替弁に用いられるスプールの例である。なお、本発明が以下の形態例に限定されないことは当然であり、他の構造の切替弁に用いられても良いし、また分断される箇所や数、連結部材が変形する構成についても他の構成であっても良い。
【0010】
切替弁2は、ブロック体3の内部に摺動面からなるスペース30を有し、該スペース30に、本形態例に係るスプール1を摺動自在に内挿している。該スプール1は、本体10が軸方向のほぼ中央部において二つに分断されているとともに、両分断部分10a,10bは、それらのほぼ軸心となる中央部を貫通する連結棒12で連結されている。該連結棒12はその先端部12a,12bに雄ネジが切られ、両分断部分10a,10bの各端部11a,11bの雌ネジ部を貫通した状態におけるその先端部12a,12bがナット4で締着されることで、貫通する両分断部分10a,10bに固定されている。
【0011】
前記スプール本体10(10a,10b)は、剛体である調質された炭素鋼(例えば、焼結炭素鋼、合金鋼、焼結合金鋼等)である一方、連結棒12は、前記分断部分10a,10bが外力を受けた際、その外力に応じて変形自在となる程度の柔軟性がある非調質の炭素鋼(例えば、アルミニウム合金、ステンレス鋼、アクリル、PTFEなどのプラスチック等)が用いられる。
【0012】
本形態例は以上よりなるので、図2に示すように、熱や外力によって切替弁2のブロック体3が変形し、内部スペース30が変形すると、その変形に伴う外力がスプール本体10の各分断部分10a,10bにもかかる。このとき、各分断部分10a,10bは剛体よりなるので変形しないが、それらを連結する連結部材12は柔軟性があるので、ブロック体3の変形に追随して変形することになる。このため、ブロック体3が変形しても、スプール1の各分断部分10a,10bは摺動可能となり、回路切換の不具合が生じないものとなる。
【産業上の利用可能性】
【0013】
この発明は、流体の流路の切換や開閉を行うスプールとして広く用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る実施形態例の断面図である。
【図2】ブロック体が変形した場合の本形態例の状態を示した断面図である。
【図3】従来の切替弁内のスプールの構造図である。
【符号の説明】
【0015】
1 スプール
2 切替弁
3 ブロック体
4 ナット
10(10a,10b) スプール本体分断部分
12 連結部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプール本体が、軸方向の任意箇所で分断され、該分断部分相互が連結部材で連結されるスプールであって、前記連結部材が、前記分断部分が外力を受けた際、その外力に応じて変形自在となることを特徴とするスプール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−256173(P2008−256173A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−101779(P2007−101779)
【出願日】平成19年4月9日(2007.4.9)
【出願人】(000190297)キャタピラージャパン株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】