説明

スペクトルコンピュータ断層撮影のための装置及び方法

コンピュータ断層撮影システムは、少なくとも第1及び第2のエネルギー又はエネルギー範囲内で検出された放射線を表す出力(D、D)を提供する放射線感知検出器素子(100)を含む。さらに、これら検出器信号は、エネルギー分解式光子カウンタ(26)によって、これら信号それぞれのエネルギーに従って分類される。分類された信号は補正器(24)によって補正され、結合器(30)によって或る結合関数に従って結合され、それにより、少なくとも第1及び第2のエネルギー又はエネルギー範囲で検出された放射線を表す出力(E、E)が生成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願はスペクトルコンピュータ断層撮影(CT)の分野に関する。本出願はまた、検出された放射線のエネルギー又はエネルギースペクトルに関する情報を取得することが望ましい場合のx線又はその他の放射線の検出に関する。本出願は、特に医用撮像に適用されるが、非破壊的な検査及び分析、セキュリティ用途、並びにエネルギー弁別が可能なことが有用なその他の用途にも適用される。
【背景技術】
【0002】
従来のCTシステムは、検査対象のx線減衰を表す画像データを提供してきたが、そのようなシステムは、特に、異なる物質が同様の放射線減衰を有する場合において、対象物の物質組成に関する情報を提供する能力が限られていた。しかしながら、CTシステムの物質分離能力を向上させることは数多くの用途で有用である。例えば、医療用途において、様々な組織型を区別することや、組織を造影剤から区別すること等が望ましいことがある。他の一例として、サンプルの組成に関する情報により、セキュリティ用途における検査作業を簡略化することができる。
【0003】
CTシステムの性能に影響する他の一要素は検出器効率である。結果画像の品質は通常、利用可能なx線束が検出・利用される効率の関数だからである。別の見方をすれば、検出器効率を向上させることは、好適な品質の画像を得るために必要な線量を低減する助けとなる。
【0004】
物質組成情報を取得する一手法は、例えばスペクトル能力を有する検出器を用いることにより、対象物のx線減衰を異なるx線エネルギー又はエネルギー範囲で測定するものである。1つのこのような形態において、検出器は、それぞれの層が異なるエネルギー応答を有するように選択された複数のシンチレータ層(又は、直接変換層)を有するものであった。しかし、この手法は残念ながら、かなり限られたエネルギー分解能を有する傾向にあり、また屡々、部分的に重なり合ったスペクトル応答を有する傾向にあり、故に、検出器の出力信号のエネルギー分解能を制限してしまっていた。
【0005】
スペクトル情報を取得するための他の一技術は光子計数検出器を使用するものである。光子計数検出器は、例えば単光子放出型コンピュータ断層撮影(SPECT)及び陽電子放出型断層撮影(PET)等の核医学応用で使用されており、例えばオルトケイ酸ルテチウム(LuSiOすなわちLSO)、ゲルマン酸ビスマス(BGO)及びヨウ化ナトリウム(NaI)等に基づくシンチレータベースの検出器と、例えば光電子増倍管(PMT)等の光検出器とを含んでいる。さらに、例えばGdSiO(GSO)、LuAlO(LuAP)及びYAlO(YAP)等、その他のシンチレータ材料も知られている。例えばテルル化カドミウム亜鉛(CZT)等の直接変換検出器も使用されている。
【0006】
一般的に、光子計数検出器は伝統的なCT検出器より高い感度を有する。また、光子計数検出器は、検出放射線のエネルギー分布に関する情報を取得するために使用されることも可能であり、例えば散乱の影響を補正する等、有用な目的のためにSPECT又はPET応用で使用されている。しかし、光子計数検出器は残念ながら、CT応用で一般的に遭遇するような計数率での使用にはあまり適していない。特に、そのような比較的高い計数率は、とりわけ検出器のエネルギー分解能を制限するよう作用する、パルスのパイルアップやその他の効果をもたらし得る。
【0007】
従って、改善の余地が残されている。特に、エネルギー分解能の向上をもたらすよう、放射線感知検出器から得られるスペクトル情報を利用することが依然として望まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の態様は、これらの問題及びその他の問題を解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様に従って、x線コンピュータ断層撮影装置は、第1及び第2の異なるエネルギー測定技術を用いて、検出器が受けた受信x放射線のエネルギーを測定するエネルギー弁別x線測定システムを含む。当該装置はまた、第1及び第2の技術を用いて生成されたエネルギー測定結果を結合して、受信x放射線のエネルギーを表す出力を生成する結合器を含む。
【0010】
本発明の他の一態様に従って、コンピュータ断層撮影方法は、第1のエネルギー分類技術によって分類された放射線を下位分類するよう第2のエネルギー分類技術を使用する段階、放射線感知検出器が受けた受信放射線のエネルギーを表す出力を生成するよう、下位分類された放射線を結合する段階、及び複数の読み出し期間の各々に対して、第2の技術を使用する段階及び結合する段階を繰り返す段階を含む。第1及び第2のエネルギー分類技術は相異なる。
【0011】
他の一態様に従って、装置は、第1の測定技術を用いて、放射線感知検出器が受けた電離放射線のエネルギーを測定する第1のエネルギー弁別器、及び第1のエネルギー測定の結果と、第2の異なるエネルギー測定技術を用いて取得された第2のエネルギー測定結果とを用いて、複数の読み出し期間の各々に対して、第1の相対的に低いエネルギーレベルを有する受信放射線を表す第1の出力と、第2の相対的に高いエネルギーレベルを有する受信放射線を表す第2の出力とを生成する結合器を含む。
【0012】
他の一態様に従って、装置は、第1のエネルギーを有する放射線に対して感度を有する第1の電離放射線検出器、第2のエネルギーを有する放射線に対して感度を有する第2の電離放射線検出器、第1の放射線検出器に動作的に接続される第1のエネルギー分解式光子カウンタ、第2の放射線検出器に動作的に接続される第2のエネルギー分解式光子カウンタ、並びに、第1及び第2のエネルギー分解式光子カウンタからの信号を結合し、第1の相対的に低いエネルギーを有する放射線を表す第1の出力と、第2の相対的に高いエネルギーを有する放射線を表す第2の出力とを生成する結合器を含む。
【0013】
以下の詳細な説明を読み、理解することにより、本発明の更なる態様が当業者に認識される。
【0014】
本発明は、様々な構成要素及びそれらの配置、並びに様々な段階及びそれらの編成の形態を取り得る。図面は、好適実施形態を例示するためだけのものであり、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】CTシステムを示す図である。
【図2】エネルギー弁別装置を示すブロック図である。
【図3】エネルギー分解カウンタを示す図である。
【図4】エネルギー弁別装置を示すブロック図である。
【図5】撮像方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1を参照するに、CTスキャナは、検査領域14の周りを回転する回転式ガントリー18を含んでいる。ガントリー18は、例えばx線管などのx線源12を支持している。ガントリー18はまた、検査領域14の反対側で或る範囲の弧を定めるx線感知検出器20を支持している。x線源12によって生成されたx線は、検査領域14を横切り、検出器20によって検出される。従って、スキャナ10は、検査領域14内に配置された対象物を通る複数の投影又は光線に沿った放射線減衰を表す投影データを生成する。
【0017】
検出器20は、横断方向及び縦方向に延在する弓形アレイ状に配置された複数の検出器素子100を含んでいる。更に詳細に後述するように、検出器素子100及びそれに結合された信号処理チェーンが協働し、少なくとも2つの異なるエネルギー測定機構又は技術を用いて受信放射線のエネルギーを測定する。一実施形態において、検出器は少なくとも第1及び第2のシンチレータ層を含み、各々に光学的に連通したそれぞれの光子計数検出器が設けられる。
【0018】
スキャナ10及び検出器20の構成に応じて、x線源12は、検出器20の受信可能範囲とほぼ同一の広がりを有する概して扇状、楔状又は円錐状の放射線ビームを生成する。また、検出器20が360°の弧にまたがり、x線源12が検査領域の周りを回転するときに静止したままにされる、いわゆる第4世代スキャナ構成、フラットパネル検出器、及び単一スライス検出器も用いられ得る。多次元アレイの場合、様々な検出器素子100の焦点をx線源12の焦点に合わせ、様々な検出器素子100が球の一部を形成するようにしてもよい。
【0019】
例えばカウチ等の対象支持体16が、検査領域14内の患者又はその他の対象物を支持する。支持体16は好ましくは、ヘリカル、アクシャル、円形、直線、又はその他の所望のスキャン軌道を実現するよう、スキャンと協調して移動可能である。
【0020】
好ましくは回転式ガントリー18上又はその付近に配置されたデータ測定システム23が、様々な検出器素子100により生成された信号を受信し、必要とされるアナログ−デジタル変換、多重化、インタフェース、データ通信、及び同様の機能を提供する。更に詳細に後述するように、このシステムはまた、複数のエネルギー分解式光子カウンタ26a、26b、・・・、26nと、必要に応じての対応する複数の補正器24a、24b、・・・、24nと、結合器30とを含んでおり、これらが協働して、第1及び第2のエネルギー範囲又はウィンドウそれぞれで検出された放射線を表す出力E、Eを提供する。
【0021】
出力E、Eは有利には、検査領域14の周りの様々な投影角度に対応する複数の読み出し期間の各々に関して取得される。当業者に認識されるように、読み出し値が取得される期間は、例えば検出器の感度、横断方向の所望の分解能、及びガントリーの回転速度などの、数多くの設計考慮事項の関数である。好適な読み出し期間は0.1ms−0.5ms程度とし得るが、その他の読み出し期間を用いてもよい。
【0022】
単一組のカウンタ群26、補正器群24、及び結合器30を図示したが、認識されるように、有利には、同様のエネルギー弁別能力が望まれるその他の検出器素子群100にもカウンタ群26、補正器群24及び結合器30が設けられる。
【0023】
再構成器22が投影データを再構成し、患者の内部生体構造を表す体積データが生成される。また、様々なエネルギー範囲からのデータが(再構成の前に、再構成の後に、あるいはそれらの双方に)処理され、検査対象の物質組成に関する情報が提供される。
【0024】
コントローラ28が、例えば管電圧及び管電流等のx線源12のパラメータ、患者カウチ16の移動、データ測定システム23の動作、及び/又は、所望のスキャンプロトコルを実行するのに必要なその他の動作パラメータを調整する。
【0025】
汎用コンピュータが操作者コンソール44としての役割を果たす。コンソール44は、例えばモニタ又はディスプレー等のヒトが読み取り可能な出力装置と、例えばキーボード及び/又はマウス等の入力装置とを含む。コンソールに常駐のソフトウェアにより、操作者が、所望のスキャンプロトコルを構築し、スキャンの開始及び停止を行い、体積画像データの閲覧及びその他の操作を行い、且つその他の方法でスキャナとやり取りすることによって、スキャナ10の動作を制御することが可能にされる。
【0026】
続いて図2を参照し、第1のシンチレータ層202a及び第2のシンチレータ層202bと、光子計数法に適した対応する第1の光光子(光フォトン)検出器204a及び第2の光フォトン検出器204bとを有する例示的な検出器素子100に関連付けて、エネルギー分解式光子カウンタ26a、26b、補正器24a、24b、及び結合器30を更に詳細に説明する。
【0027】
検出器100の放射線受光面とx線源12とに近い側の第1のシンチレータ層202aは、より軟らかい、すなわち、より低いエネルギーのx放射線206を吸収するような材料種類及び厚さで製造されている。第2のシンチレータ層202bは、第1のシンチレータ202aの背後に、x線源12から遠い側に配置され、第1のシンチレータ202aを通過した、エネルギー的により硬い、すなわち、より高い傾向にある放射線を吸収する材料種類及び厚さで製造されている。このような構造の一例は、本出願と同一出願人による同時継続中の、2005年4月26日に出願された「Double Decker Detector for Spectral CT」という発明名称の米国特許出願第60/674900号、及び2006年4月10日に出願された国際特許出願PCT/IB2006/051061号に開示されている。なお、これらの文献の全体をここに援用する。
【0028】
第1の光フォトン検出器204aは、第1のシンチレータ202aからの光信号を受光し、第1の相対的に低いエネルギー範囲を表す検出器信号Dを生成する。第2の光フォトン検出器204bは、第2のシンチレータ202bからの光信号を受光し、第2の相対的に高いエネルギー範囲を表す検出器信号Dを生成する。認識されるように、第1及び第2のエネルギー範囲は、シンチレータ202に関して選択された材料及び厚さの関数であり、典型的に、有限なエネルギー分解能によって特徴付けられる。
【0029】
CT応用において、シンチレータ202は有利には、例えばLuSiO(LSO)、Lu1.80.2SiO(LYSO)、GdSiO(GSO)、LuAlO(LuAP)又はYAlO(YAP)等の比較的高速なシンチレータ材料から製造される。これらのシンチレータは、1ns程度の立ち上がり時定数と、それぞれ、およそ40ns、40ns、40ns、18ns、24nsの減衰時定数とを有する。光子計数検出器は有利には、例えば光電子増倍管、フォトダイオード、ガイガーモード・アバランシェフォトダイオード(GM−APD)、又はシリコン光電子増倍管(SiPM)等の、光センサを用いて実現される。
【0030】
エネルギー分解式カウンタ26は光子計数技術を適用して、検出器204によって提供されたエネルギー情報を活用する。第1のエネルギー分解式カウンタ26aは更に、相対的に低いエネルギーの検出器信号Dを第1及び第2のエネルギーウィンドウに分類し、相対的に低いエネルギー範囲を表す第1の出力信号RLLと、より高いエネルギー範囲を表す第2の出力信号RLHとを生成する。同様に、第2のエネルギー分解式カウンタ26bは更に、相対的に高いエネルギーの検出器信号Dを第1及び第2のエネルギーウィンドウに分類し、相対的に低いエネルギー範囲を表す第1の出力信号RHLと、相対的に高いエネルギー範囲を表す第2の出力信号RHHとを生成する。従って、装置は、それぞれのシンチレータのエネルギー範囲を活用する第1の機構、及び光子計数検出器のエネルギー分解能力を活用する第2の機構という、2つの異なるエネルギー分離機構を用いる。
【0031】
図3を手短に参照するに、光子分解式カウンタ26を実現する一技術は、検出された放射線のエネルギーを推定するために検出器信号Dの変化率を当てにする。より具体的には、光子分解式カウンタ26は、検出器からの信号Dをフィルタリングあるいはその他の方法で調整する信号調整器302と、調整された信号の立ち上がり時間及び振幅の関数として出力値が変化する微分器304と、検出された光子を2つ以上のエネルギー範囲又はウィンドウに分類する弁別器306と、検出されたx線光子の数及びエネルギーを表す出力信号RXL及びRXHを生成するカウンタ又は積分器308とを含んでいる。
【0032】
図2を再び参照するに、必要に応じての補正器24は、カウンタ26からの信号RXL及びRXHへのパイルアップの影響を補正する。より具体的には、補正器24は、カウンタ26が検出信号Dをより高いエネルギーウィンドウに誤って分類する傾向が比較的強いような高計数率の状況を不具にするよう、信号RXL及びRXHを計数率の関数として重み付けする。
【0033】
このようなエネルギー分解式光子カウンタ26及び補正器24は、本出願と同一出願人による同時継続中の、2005年10月28日に出願された「Dual Energy Window X-ray CT with Photon Counting Detectors」という発明名称の米国特許出願第60/596894号に記載されている。なお、この文献をここに援用する。説明した光子計数技術の1つの利点は、CT応用及びその他の比較的高い計数率の用途にとりわけ適していることである。
【0034】
結合器30は、補正器24a、24bからの信号CLL、CLH、CHL、CHHを結合し、高い側、低い側それぞれのエネルギー範囲又はウィンドウで検出された光子の数を表す出力信号E、Eを生成する。図示のように、結合器は、表1に記載されるような4つの入力A、B、C及びDを含んでいる。
【0035】
【表1】

状況Aでは、事象が低い側の出力エネルギーウィンドウの範囲内にあると合理的に期待される。同様に、状況Dでは、事象が高い側の出力エネルギーウィンドウの範囲内にあると合理的に期待される。しかしながら、状況B及びCでは、状況はあまり明確でない。
【0036】
従って、結合器30は入力信号A、B、C及びDを結合し、低い側及び高い側それぞれのエネルギーウィンドウで検出された放射線を表す出力信号E及びEを生成する。一実施形態において、入力信号は線形に重み付けられ、重み関数:
=A+(1−W)・B+W・C (等式1)
及び
=D+(1−W)・C+W・B (等式2)
に従った出力信号が生成される。総カウント数を保存することは、完全なx線スペクトルの標準的なCT画像を再構成することを容易にするので、総カウント数は保存され:
A+B+C+D=E+E (等式3)
である。これらの結合関数を表の形態で表2に提示する。
【0037】
【表2】

補正関数は、所与のシステムの動作特性に基づいて経験的に導出され得る。第1及び第2の弁別機構が相等しい確率で事象を正確に分類する場合、重み係数は通常:
=W=0.5 (等式4)
として定められる(重み係数は等しいと仮定する)。
【0038】
第1及び第2の弁別機構が相等しくない確率で事象を正確に分類する場合、最適な重み係数は、より高い精度を有する弁別方法の側である傾向にある。以上の原理を説明するため、第1の弁別機構が0.7の正確な分類確率を有し、第2の弁別機構が0.75の正確な分類確率を有することが試験により決定されたと仮定する。このようなシステムにおいては、重みパラメータW及びWは有利には0.5より大きい(例えば、0.58)として定められ、厳密な値は、例えば校正プロセスによって、経験的に決定されることが可能である(やはり、相等しい値を仮定する)。この場合、入力Bは、自身のEへの寄与より小さくEに寄与することになる。入力Cは、自身のEへの寄与より大きくEに寄与することになる。
【0039】
総カウント数を保存しないその他の結合関数や、区分的に非線形な、分析に基づく重み関数も意図される。結合関数はまた、ルックアップテーブル又はその他の方法を用いて実現されてもよい。
【0040】
更に他の変形例も意図される。例えば、上述の技術は、3つ以上のエネルギー出力を有する検出器100とともに用いられてもよい。そのようなシステムを、検出器100が3つのエネルギーレベルを有する場合について、図4に示す。好適な結合関数は表3に示される。
【0041】
【表3】

上述の原理はまた、3つ以上のエネルギーウィンドウを表す出力群を提供するシステムにも拡張され得る。
【0042】
検出器100のその他の構成も意図される。例えば、シンチレータ群は、必ずしも図2及び4に概略的に示したようにx線源12に対して積層される必要はなく、相異なる経路を横断した放射線を検出してもよい。また、光検出器204は必ずしもx線206の方向に横向きに配置される必要はない。必要な情報を生成する半導体又はその他の直接変換検出器も用いられ得る。
【0043】
複数の放射線検出層202(シンチレータであろうと直接変換材料であろうと)の1つの利点は、様々な信号Dの計数率が比較的低減されることであり、その他のエネルギー弁別技術も用いられ得る。故に、複数の検出器層及びパルス計数を使用するもの以外のエネルギー弁別機構も意図される。例えば、材料内での各事象の相互作用の深さを測定可能な更なる装置を用いた、単一の比較的厚いシンチレータ(又は直接変換材料)層の既知のエネルギー分解方法によって、x線光子のエネルギーを推定してもよい。上述の技術はまた、CT応用以外のx放射線の測定や、x放射線以外の放射線の測定にも適用可能である。
【0044】
光子カウンタ26、補正器24、及び結合器30は、ハードウェア又はソフトウェアにて実装され得る。補正器24及び結合器30はまた、再構成器22によって、データ測定システム23の一部として、あるいはその他の方法で実装されてもよい。様々な機能がソフトウェアによって実装される場合、有利には、コンピュータプロセッサに上述の技術を実行させる命令が、プロセッサにアクセス可能なコンピュータ読み取り可能記憶媒体に格納される。
【0045】
続いて、図1及び2の例示的な実施形態の動作を図5に関連付けて説明する。
【0046】
段階502にて、スキャンが開始される。
【0047】
段階504にて、検査領域14を横断した放射線が検出される。
【0048】
段階506にて、第1のエネルギー弁別機構を用いて、検出された放射線のエネルギーが決定される。例えば、図2に示したように、第1のシンチレータ層202a及び第2のシンチレータ202bが、第1のエネルギー範囲で検出された放射線を表す出力及び第2のエネルギー範囲で検出された放射線を表す出力を提供する。シンチレータの選択に応じて、これらのエネルギー範囲は少なくとも部分的に重なり合っていてもよい。
【0049】
段階508にて、第2のエネルギー弁別機構を用いて、検出された放射線のエネルギーが決定される。やはり図2の例に関連して、光子計数技術を用いて、放射線は2つ以上のエネルギー範囲に更に分類される。
【0050】
段階510にて、所望の結合関数を用いて第1及び第2のエネルギー弁別の結果が結合され、第1のエネルギー群又はエネルギーウィンドウ群で検出された放射線を表す出力群が生成される。なお、これらの出力は、検査領域14の周りの様々な投影角度を表す複数の読み出し期間の各々に対して提供される。また、この結合機構のエネルギー分離は通常、独立に動作する何れかの機構によって得られるであろうものより優れている。
【0051】
以上の段階群は検出器素子100の観点から説明されたが、当然に認識されるように、同様のエネルギー弁別能力を備えたその他の検出器素子100に関しても同様の段階群が実行される。
【0052】
段階512にて、複数の投影角度で得られた放射線情報が再構成され、1つ以上のエネルギー範囲内で検出された放射線を表す画像データが生成される。結合されたエネルギー範囲を表す画像データを生成するように、2つ以上のエネルギー範囲からの信号が結合されてもよい。
【0053】
段階514にて、画像データは、例えば操作者コンソール44に結合されたモニタ上に、ヒトが読み取り可能な形態で表示される。
【0054】
好適な実施形態を参照しながら本発明を説明した。以上の詳細な説明を読み、理解した者は改良及び改変に想到し得る。本発明は、添付の特許請求の範囲又はその均等範囲に入る限りにおいて、そのような全ての改良及び改変を含むとして解釈されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2の異なるエネルギー測定技術を用いて、検出器が受けた受信x放射線のエネルギーを測定するエネルギー弁別x線測定システムと、前記第1及び第2の技術を用いて生成されたエネルギー測定結果を結合して、前記受信x放射線のエネルギーを表す出力を生成する結合器と、を有するx線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項2】
前記第1の技術はシンチレーションを含み、前記第2の技術は光子計数を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1の技術は前記受信放射線を少なくとも第1及び第2のエネルギー範囲に分類し、前記第2の技術は前記分類された放射線をそのエネルギーの関数として下位分類する、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記第1の技術は前記受信放射線を3つ以下のエネルギー範囲に分類する、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記測定システムは、第1のエネルギーを有するx放射線に対して感度を有する第1の検出器部分と、前記第1のエネルギーとは異なる第2のエネルギーを有するx放射線に対して感度を有する第2の検出器部分とを含むx放射線感知検出器、及び前記第1の検出器部分と動作的に連通したエネルギー分解式光子カウンタを含み、前記結合器は、前記エネルギー分解式光子カウンタと動作的に連通する、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記第1の検出器部分はシンチレータ又は直接変換検出器を含む、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記エネルギー分解式光子カウンタは、前記第1の光子計数検出器からの信号の変化率を表す信号を生成する微分器を含む、請求項5に記載の装置。
【請求項8】
前記結合器は、区分的に線形な結合関数に従って前記測定結果を結合する、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記結合関数は、入力A、B、C及びDを当該結合関数の入力、出力E及びEを当該結合関数の出力、W及びWを重み関数として、表1の関係を有する、
【表1】

請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記結合器は、複数の投影の各々に対して、前記受信x放射線のエネルギー及び強度を表す出力を生成し、当該装置は更に、前記結合器の前記出力を用いて前記受信放射線を表す体積データを生成する再構成器を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記第1の技術は相互作用の深さの測定を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
第1のエネルギー分類技術によって分類された放射線を下位分類するよう第2のエネルギー分類技術を使用する段階であり、前記第1及び第2のエネルギー分類技術は放射線をそのエネルギーの関数として分類するよう使用され、前記第1及び第2のエネルギー分類技術は相異なる、第2の技術を使用する段階;
放射線感知検出器が受けた受信放射線のエネルギーを表す出力を生成するよう、下位分類された放射線を結合する段階;及び
複数の読み出し期間の各々に対して、前記第2の技術を使用する段階及び前記結合する段階を繰り返す段階;
を有するコンピュータ断層撮影方法。
【請求項13】
前記受信放射線をそのエネルギーの関数として分類するよう前記第1のエネルギー分類技術を使用する段階、を有する請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の技術は前記受信放射線を少なくとも2つのエネルギー範囲に分類する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の技術は前記受信放射線を3つ以下の範囲に分類し、前記範囲の数は整数である、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
第1の技術を用いる段階は、前記受信放射線を分類するよう少なくとも第1及び第2のシンチレータを用いることを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記第1のシンチレータは約40ns未満の減衰時定数を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
第2の技術を用いる段階は、光子計数検出器を用いることを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
第2の技術を用いる段階は、エネルギー分解式光子カウンタを用いることを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
パルスのパイルアップを補正する段階、を含む請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記受信放射線は少なくとも4つの下位分類に分類され、前記結合する段階は、相対的に高いエネルギー範囲にて受信された放射線を表す出力、及び相対的に低いエネルギー範囲にて受信された放射線を表す出力を生成する、請求項12に記載の方法。
【請求項22】
検査対象を表す体積データを生成するよう、複数の投影角度で受信された放射線を再構成する段階、を含む請求項12に記載の方法。
【請求項23】
第1の測定技術を用いて、放射線感知検出器が受けた電離放射線のエネルギーを測定する第1のエネルギー弁別器;及び
前記第1のエネルギー測定の結果と、第2の異なるエネルギー測定技術を用いて取得された第2のエネルギー測定結果とを用いて、複数の読み出し期間の各々に対して、第1の相対的に低いエネルギーレベルを有する受信放射線を表す第1の出力と、第2の相対的に高いエネルギーレベルを有する受信放射線を表す第2の出力とを生成する結合器;
を有する装置。
【請求項24】
前記第1のエネルギー弁別器はエネルギー分解式光子カウンタを含む、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記受信放射線を生成するx線管を含む請求項23に記載の装置。
【請求項26】
前記読み出し期間の長さは約0.3ms未満である、請求項23に記載の装置。
【請求項27】
第1のエネルギーを有する放射線に対して感度を有する第1の電離放射線検出器;
第2のエネルギーを有する放射線に対して感度を有する第2の電離放射線検出器;
前記第1の放射線検出器に動作的に接続される第1のエネルギー分解式光子カウンタ;
前記第2の放射線検出器に動作的に接続される第2のエネルギー分解式光子カウンタ;
前記第1及び第2のエネルギー分解式光子カウンタからの信号を結合し、第1の相対的に低いエネルギーを有する放射線を表す第1の出力と、第2の相対的に高いエネルギーを有する放射線を表す第2の出力とを生成する結合器;
を有する装置。
【請求項28】
前記第1の放射線検出器は第1のシンチレータを含み、前記第2の放射線検出器は第2のシンチレータを含む、請求項27に記載の装置。
【請求項29】
放射線受光面を含み、前記第1のシンチレータは物理的に前記第2のシンチレータと前記放射線受光面との間に配置され、前記第2のシンチレータは、前記第1のシンチレータを通過した放射線を受ける、請求項28に記載の装置。
【請求項30】
前記第1のエネルギー分解式光子カウンタの出力に動作的に接続されるパルスパイルアップ補正器、を含む請求項27に記載の装置。
【請求項31】
前記第1の放射線検出器は直接変換検出器を含む、請求項27に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−500119(P2010−500119A)
【公表日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−523881(P2009−523881)
【出願日】平成19年7月23日(2007.7.23)
【国際出願番号】PCT/US2007/074101
【国際公開番号】WO2008/021663
【国際公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】