説明

スライドドア車両のサイドシル補強構造

【課題】簡単な構成でロアレールカバーとリヤフロアロッカインナとの接続部の強度及び剛性を高めてサイドシルの折れ曲がりを防ぐことができるスライドドア車両のサイドシル補強構造を提供すること。
【解決手段】スライドドアを備えたスライドドア車両の乗降用開口部1の下方に配置され、スライドドア用ロアレールの前端部を収容して車幅方向内側に膨出するロアレールカバー8と、該ロアレールカバー8の後方に配置されて車室内側を構成するリヤフロアロッカインナ4を備え、該リヤフロアロッカインナ4の前端接合部とロアレールカバー8の後端接合部同士を接合して成るサイドシル2の補強構造として、ロアレールカバー8とリヤフロアロッカインナ4との接合部を補強する部材であって、前半部がロアレールカバー8の室内上側角部に接合され、後半部がリヤフロアロッカインナ4の室内上側角部に接合されるリンフォース12を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライドドアを備えるスライドドア車両のサイドシル補強構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
乗降用開口部を開閉するスライドドアを備えたスライドドア車両においては、スライドドアは、その下端部がサイドシルの内部に組み込まれて車両前後方向に延びるロアレール(ガイドレール)に沿ってスライド可能に支持されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
斯かるスライドドア車両において乗降用開口部が開放されている状態ではスライドドアは車体側壁の外側に位置しているが、乗降用開口部が閉じられた状態ではスライドドアは乗降用開口部に嵌り込む。このため、乗降用開口部を閉じる直前にスライドドアを車幅方向内側に案内するように、ロアレールの前端部は車幅方向内側へと湾曲している。
【0004】
ところで、スライドドア車両の乗降用開口部の下方には車両前後方向に延びるサイドシルが配されているが、該サイドシルの車室側にはロアレールの前端部を収容して車幅方向内側に膨出するロアレールカバーと、該ロアレールカバーの後方に配置されるリヤフロアロッカインナが備えられている。ここで、前述のようにロアレールの前端部は車幅方向内側へと湾曲しているため、該ロアレールの前端部を収容するロアレールカバーの前端部分(センターピラーの根元付近)は、リヤフロアロッカインナよりも車室内に大きく張り出す形状を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−291796号公報
【特許文献2】特開2007−008398号公報
【特許文献3】特開2008−024268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スライドドア車両において、ロアレールの前端部を収容するロアレールカバーの前端部分はリヤフロアロッカインナよりも車室内に大きく張り出しているため、該ロアレールカバーとリヤフロアロッカインナとの接続部においてサイドシルの断面形状が急変するとともに、リヤフロアロッカインナの部分のサイドシルがその前後部分に比較して断面積が小さくなるため、この接続部に応力が集中し易い。そして、車両衝突時等においてサイドシルに大きな外力が作用した場合にロアレールカバーとリヤフロアロッカインナに応力が集中し、この部分でサイドシルが折れ曲がるという問題が発生し易い。このため、当該部位は板厚の厚い補強部材で補強されており、車両のコストや重量が増すとともにその生産性が低下していた。
【0007】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、簡単な構成でロアレールカバーとリヤフロアロッカインナとの接続部の強度及び剛性を高めてサイドシルの折れ曲がりを防ぐことができるスライドドア車両のサイドシル補強構造を提供することにある。更には、リヤフロアロッカインナで構成されて相対的に断面積が小さくて強度が低いサイドシル部分を、簡単な構成で補強することができるスライドドア車両のサイドシル補強構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、乗降用開口部を開閉するスライドドアを備えたスライドドア車両の前記乗降用開口部の下方に配置され、スライドドア用ロアレールの前端部を収容して車幅方向内側に膨出するロアレールカバーと、該ロアレールカバーの後方に配置されて車室内側を構成するリヤフロアロッカインナを備え、該リヤフロアロッカインナの前端接合部と前記ロアレールカバーの後端接合部同士を接合して成るサイドシルの補強構造であって、前記ロアレールカバーと前記リヤフロアロッカインナとの接合部を補強する部材であって、前半部が前記ロアレールカバーで構成されるサイドシル部分の室内上側角部に接合され、後半部が前記リヤフロアロッカインナで構成されるサイドシル部分の室内上側角部に接合されるリンフォースを設けたことを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記リンフォースを前記ロアレールカバーと前記リヤフロアロッカインナの接合部に跨がるよう配置するとともに、その前半部を前記ロアレールカバーの角部外面に接合し、後半部を前記リヤフロアロッカインナの角部内面に接合したことを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記リンフォースは、前記ロアレールカバー及び前記リヤフロアロッカインナの各縦壁と各上壁及び各フランジにそれぞれに接合される縦壁部と上壁部及びフランジ部とで鉛直断面が略クランク状に形成されることを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項2又は3記載の発明において、前記リヤフロアロッカインナの前記リンフォースの後半部が位置する部位にリヤフロアパネルの縦壁部を接合するとともに、前記リンフォースの後端部を車幅方向に配されたクロスメンバの側方に配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、ロアレールカバーとリヤフロアロッカインナとの接合部がリンフォースによって効果的に補強され、その接続部の強度と剛性が高められるため、該接続部は車両衝突時等における応力集中に耐えることができ、サイドシルの折れ曲がりが防がれる。特に、サイドシルのロアレールカバーとリヤフロアロッカインナで構成されるサイドシル部分の室内上側角部がリンフォースによって補強されるため、当該部位の潰れが抑制されサイドシルの折れ曲がりが効果的に防がれる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、リンフォースをロアレールカバーとリヤフロアロッカインナの接合部に跨がるよう配置するとともに、その前半部をロアレールカバーの角部外面に接合し、後半部をリヤフロアロッカインナの角部内面に接合したため、該リンフォースがサイドシルの折れ曲がり方向の変形に対抗することができる有利な補強構造とすることができるとともに、リンフォースの剥れを防ぐことができる。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、リンフォースをその鉛直断面が略クランク状となるよう形成したため、その剛性が高められ、ロアレールカバーとリヤフロアロッカインナとの接合部がリンフォースによって効果的に補強される。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、リヤフロアロッカインナのリンフォースの後半部が位置する部位にリヤフロアパネルの縦壁部を接合するとともに、リンフォースの後端部を車幅方向に配されたクロスメンバの側方に配置したため、ロアレールカバーとリヤフロアロッカインナとの接合部付近でその前後に対して剛性が低下する部位の全体をリンフォースによって補強することができ、サイドシルの折れ曲がりを効果的に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るサイドレール車両のサイドシル補強構造を示す部分斜視図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】図1のB−B線断面図である。
【図4】図1のC−C線断面図である。
【図5】図1のD−D線断面図である。
【図6】リンフォースの側面図である。
【図7】リンフォースの平面図である。
【図8】リンフォースの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0018】
図1は本発明に係るサイドレール車両のサイドシル補強構造を示す部分斜視図、図2は図1のA−A線断面図、図3は図1のB−B線断面図、図4は図1のC−C線断面図、図5は図1のD−D線断面図、図6はリンフォースの側面図、図7は同リンフォースの平面図、図8はリンフォースの斜視図である。尚、図1〜図8は一方(右側)のサイドシル補強構造とこれに使用されるリンフォースのみ図示するが、これらの構成は他方(左側)についても同様であるため、その図示と説明は省略する。
【0019】
本実施の形態に係るサイドドア車両の左右両側部には、後部座席に座乗する乗員が出入りする乗降用開口部1がそれぞれ形成されており、該乗降用開口部1は車両前後方向にスライドする不図示のスライドドアによって開閉される。
【0020】
車体左右の前記乗降用開口1の下方には車両前後方向に延びるサイドシル2が配されており、該サイドシル2と車両用開口部1の上方に車両前後方向に配された不図示のルーフサイドレールとは略垂直に配されたセンターピラー3によって連結されている。
【0021】
サイドシル2は、車両の前後方向に延びる断面筒状の閉じ断面構造に形成されており、車両の側方側(車外側)に配置されるサイドボディーアウタパネル(サイドシル部分だけを考えるとサイドシルアウタ5)と車両の中央側(車室側)に配置されるサイドシルインナ4で構成され、サイドシルアウタ5とサイドシルインナ4の各上下端部に車両の左右方向を向く接合面として形成されたフランジを重ね合わせて溶接接合されている。そして、左右の上記各サイドシル2は、図4及び図5に示すように、車幅方向内側(車室内側)に位置するリヤフロアロッカインナ(サイドシルインナ)4とその外側に位置するサイドシルアウタ5及び両者の上部中間に配されたサイドシルエクステンション6を接合一体化して閉断面構造として構成されている。つまり、本実施の形態に係るサイドドア車両の左右両側部では、サイドシル2の下部でサイドシルアウタ5とサイドシルインナ(リヤフロアロッカインナ)4の各下端部に形成されたフランジを重ね合わせて溶接接合され、サイドシル2の上部ではサイドシルアウタ5とサイドシルインナ(リヤフロアロッカインナ)4の各上端部に形成されたフランジの間にサイドシルエクステンション6を配置し、各上端部のフランジとサイドシルエクステンション6の左右の端部に形成された上方に立設されたフランジを重ね合わせて溶接接合されて、車両の前後方向に延びる断面筒状の閉じ断面構造に形成されている。又、リヤフロアロッカインナ4にはフロアパネル13が接合されており、本実施の形態では、車両の前後方向でサイドシルインナ4の位置に車両のフロアパネル13に段部(キックアップ部)が形成され、段部の前方に対して段部の後方が一段高くなるとともに、段部に車両の前後方向を向く縦壁14が配置されている。そして、この段部を利用して、車両の左右方向に延びるクロスメンバが形成されており、段部の後ろ側の車体はその前側に比べて高剛性の構造となっている。尚、リヤフロアロッカインナ4とサイドシルアウタ5及びサイドシルエクステンション6は何れも板金のプレス成形品によって構成されている。
【0022】
ところで、乗降用開口部1を開閉するスライドドアの下端部には、スライドドアを車体(ロアレール7)に支持するブラケットが車両の中央側(車室側)に突出するように取り付けられており、図2〜図5に示すように、サイドシル2の内部にはロアレールが車両前後方向(図2〜図5の紙面垂直方向)に沿って配されており、サイドシルアウタ5には、前記ブラケットがサイドシル2の内部に入り込むための開口が形成されている。そして、乗降用開口部1を開閉するスライドドアの下端部は、ブラケットを介して回転可能に支持されたローラ(何れも不図示)がロアレール7に沿って転動することによって車両前後方向にスライド可能に支持されている。
【0023】
而して、スライドドア車両において乗降用開口部1が開放されている状態ではスライドドアは車体側壁の外側に位置しているが、乗降用開口部1が閉じられた状態ではスライドドアは乗降用開口部1に嵌り込むよう構成されている。このため、乗降用開口部1を閉じる直前にスライドドアを車幅方向内側に案内するように、ロアレール7の前端部は車幅方向内側へと湾曲している。従って、サイドシル2のサイドシルインナはリヤフロアロッカインナ4では構成できないため、リヤフロアロッカインナ4に代えてロアレールカバー8を利用し、図1に示すようにサイドシル2が構成されている。つまり、本実施の形態に係る車幅方向内側に膨出するサイドシル2の部分では、サイドシル2の下部でサイドシルアウタ5とロアレールカバー8の各下端部に形成されたフランジを重ね合わせて溶接接合され、サイドシル2の上部ではサイドシルエクステンション6の車幅方向内側に形成されたフランジとロアレールカバー8の上端部に形成されたフランジを重ね合わせて溶接接合されて、車両の前後方向に延びる断面筒状の閉じ断面構造に形成されている。そして、サイドシル2のリヤフロアロッカインナ4の前端部には、ロアレール7の前端部を収容して車幅方向内側に膨出するロアレールカバー8が接合されている。
【0024】
上記ロアレールカバー8は、図2〜図4に示すように、板金のプレス成形品である上部ロアレールカバー8Aと下部ロアレールカバー8Bを接合一体化して断面コの字状に成形されており、その側部が車両外側方に向かって開口している。詳細には、断面コの字状に成形されたロアレールカバー8は車室側の縦壁にて上部ロアレールカバー8Aと下部ロアレールカバー8Bに分割されて成形性を向上させており、上部ロアレールカバー8Aの車室側の縦壁の下端と下部ロアレールカバー8Bの車室側の縦壁の上端を車両の左右方向に重ね合わせて溶接接合されている。尚、この下部ロアレールカバー8Bは、内部に板金プレス成形品であるリンフォース9が車両の前後方向に沿って配設されて補強されている。
【0025】
そして、図2〜図5に示すように、サイドシル2の内部には、サイドシルアウタ5に形成された前記ブラケット用の開口に合致するように車両外方側に向かって開口しスライドドアのブラケットが入り込む横断面コの字状のロアレールパネル10が車両前後方向に沿って組み込まれている。詳細には、サイドシル2の車両の側方側(車外側)に形成された前記ブラケット用の開口の上周縁にロアレールパネル10の上部フランジを重ね合わせ、前記ブラケット用の開口の下周縁にロアレールパネル10の下部フランジを重ね合わせ接合している。尚、サイドシルアウタ5の前記ブラケット用の開口の上周縁は、サイドシルエクステンション6と接合されるサイドシルアウタ5の上端部のフランジとなっており、ロアレールパネル10の上部フランジは、サイドシルアウタ5の上端部のフランジとサイドシルエクステンション6のフランジとに挟まれてこれらと溶接接合されている。このロアレールパネル10は、板金のプレス成形品である上部ロアレールパネル10Aと下部ロアレールパネル10Bを接合一体化して横断面コの字状に成形されており、断面コの字状に成形されたロアレールパネル10は車室側の縦壁にて上部ロアレールパネル10Aと下部ロアレールパネル10Bに分割されて成形性を向上させており、上部ロアレールパネル10Aの車室側の縦壁の下端と下部ロアレールパネル10Bの車室側の縦壁の上端を車両の左右方向に重ね合わせて溶接接合されている。そして、上部ロアレールパネル10Aの上壁は、その上方に配置されたサイドシルエクステンション6と接合されるとともに、その内面には、下方に向かって開口するチャンネル状の前記ロアレール7が結着されている。尚、サイドシル2の内部のサイドシルアウタ5の前記ブラケット用の開口の下周縁とロアレールパネル10の下部フランジとの接合部にはリンフォース11が接合され、つまり、前記ブラケット用の開口の下周縁の接合部とサイドシルアウタ5とサイドシルインナ(下部ロアレールカバー8B)との接合部の間にはリンフォース11が架設されており、このリンフォース11によってサイドシル2が補強されている。
【0026】
ところで、ロアレール7の前端部を収容するロアレールカバー8の前端部分は他の部分よりも車室内に大きく張り出しているため、該ロアレールカバー8とリヤフロアロッカインナ4との接続部において断面形状が急変して断面積が小さくなるため、この接続部に応力が集中し、車両衝突時等においてサイドシル2に大きな外力が作用した場合にロアレールカバー8とリヤフロアロッカインナ4に応力が集中し、この部分でサイドシル2が折れ曲がるという問題が発生し易いことは前述の通りである。
【0027】
そこで、本実施の形態では、図1に示すように、ロアレールカバー8とリヤフロアロッカインナ4との接合部をリンフォース12によって補強する構造を採用している。ここで、リンフォース12は、ロアレールカバー8とリヤフロアロッカインナ4の接合部に跨がるよう配置され、その前半部がロアレールカバー8の外面上側角部に接合され、後半部がリヤフロアロッカインナ4の内面上側角部に接合されている。詳細には、リンフォース12は、サイドシル2の車室内側の上下の角のうち上部の角部分に接合され、サイドシル2の上部の角部分を補強する。サイドシル2の車室内側の下部には、フロアパネル13が接合されて剛性が高められていることや、その後側に配置される段部やクロスメンバによって剛性が高められていること等から、サイドシル2の上部の角部分が座屈変形して起点となり、サイドシル2が折れ曲がるが、起点となるサイドシル2の上部の角部分を効率補強し、サイドシル2の折れ曲がりを抑制する。
【0028】
図6〜図8に示すように、リンフォース12の前半部には、図2〜図4に示すようにロアレールカバー8の上の角部分を車室内側から覆うように接合され(つまり、サイドシル2の外側に接合されている)、その下端は、上部ロアレールカバー8Aの縦壁の下端と下部ロアレールカバー8Bの縦壁の上端との接合部に重ね合わせて溶接接合されている。詳細には、その下端が上部ロアレールカバー8Aの縦壁の下端と下部ロアレールカバー8Bの縦壁の上端との間に差し込まれて接合されるとともに該ロアレールカバー8の縦壁外面(車室内側の面)に接合される縦壁部12A(縦壁部12C)と、図2〜図4に示すようにロアレールカバー8(上部ロアレールカバー8A)の上壁外面(上壁上面)に接合される上壁部12Bとで略L字状に形成されている。そして、図3に示すように、前半部の後側部分では上壁部12Bの車外側の端縁からサイドシルエクステンション6のフランジと上部ロアレールカバー8Aのフランジに重ねられて接合されるフランジ部12Dが、縦壁部12Aと上壁部12Bに加えて形成されている。
【0029】
又、図1及び図6に示すようにリンフォース12の後半部はリヤフロアロッカインナ4の内部(サイドシル2の内部)に差し込まれて該リヤフロアロッカインナ4の内面上側角部に接合されるが、該リンフォース12の後半部には、図5に示すように、リヤフロアロッカインナ4の縦壁内面に接合される縦壁部12C(前半部の縦壁部12Aに連続)と、リヤフロアロッカインナ4の上壁内面に接合される上壁部12B(前半部の上壁部12Bに連続)と、サイドシルエクステンション6のフランジとリヤフロアロッカインナ4のフランジに挟まれて接合されるフランジ部12Dが形成されており、リンフォース12は全体的に鉛直断面が略クランク状となるよう成形されている。尚、図5はロアレールカバー8とリヤフロアロッカインナ4との接合部を示している。この断面図に示されているように、基本的には前述した図6と同様の構造であり、リヤフロアロッカインナ4のサイドシル2内面にロアレールカバー8が配置されて接合されているとともに、サイドシル2の内側上方の角部では、リヤフロアロッカインナ4と上部ロアレールカバー8Aとの間にリンフォース12が上端のフランジ部分をも含めて配置されて接合されている。
【0030】
そして、本実施の形態では、図4及び図5に示すようにリヤフロアロッカインナ4のリンフォース12の後半部が位置する部位にリヤフロアパネル13の縦壁部14が接合されている。詳細には、リヤフロアパネル13の縦壁部14の側方端縁にはリヤフロアロッカインナ4の縦壁部に重ねられて接合される接合フランジが形成され、リンフォース12の縦壁部12Cがリヤフロアロッカインナ4の縦壁部とリヤフロアパネル13の接合フランジと重ねられて接合されている。又、リンフォース12の後端部は、フロアパネルの段部(縦壁14)の後方にまで延設されており、図1に示すようにこの段部を利用して形成され、車幅方向に配されたクロスメンバの側方に達している。
【0031】
以上説明したサイドシル2の補強構造によれば、ロアレールカバー8とリヤフロアロッカインナ4との接合部がリンフォース12によって補強され、その接続部の強度と剛性が高められるため、該接続部は車両衝突時等における応力集中に耐えることができ、サイドシル2の折れ曲がりが防がれる。特に、サイドシル2のロアレールカバー8とリヤフロアロッカインナ4の室内上側角部がリンフォース12によって補強されるため、サイドシル2の折れ曲がりが効果的に防がれる。又、リンフォース12をその鉛直断面が略クランク状となるよう形成したため、その剛性が高められ、ロアレールカバー8とリヤフロアロッカインナ4との接合部がリンフォースによって効果的に補強される。
【0032】
又、本実施に形態では、リンフォース12をロアレールカバー8とリヤフロアロッカインナ4の接合部に跨がるよう配置するとともに、その前半部をロアレールカバー8の角部外面に接合し、後半部をリヤフロアロッカインナ4の角部内面に接合したため、該リンフォース12がサイドシル2の折れ曲がり方向の変形に対抗することができる有利な補強構造とすることができるとともに、リンフォース12の剥れを防ぐことができる。
【0033】
更に、本実施の形態では、リヤフロアロッカインナ4のリンフォース12の後半部が位置する部位にリヤフロアパネル13の縦壁部13Aを接合するとともに、リンフォース12の後端部を車幅方向に配されたクロスメンバ14の側方に配置したため、ロアレールカバー8とリヤフロアロッカインナ4との接合部付近でその前後に対して剛性が低下する部位の全体をリンフォース12によって補強することができ、サイドシル2の折れ曲がりを一層効果的に防ぐことができる。
【符号の説明】
【0034】
1 乗降用開口部
2 サイドシル
3 センターピラー
4 リヤフロアロッカインナ
5 サイドシルアウタ
6 サイドシルエクステンション
7 ロアレール
8 ロアレールカバー
10 ロアレールパネル
12 リンフォース
12A リンフォースの縦壁部
12B リンフォースの上壁部
12C リンフォースの縦壁部
12D リンフォースのフランジ部
13 リヤフロアパネル
14 リヤフロアパネルの縦壁部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗降用開口部を開閉するスライドドアを備えたスライドドア車両の前記乗降用開口部の下方に配置され、スライドドア用ロアレールの前端部を収容して車幅方向内側に膨出するロアレールカバーと、該ロアレールカバーの後方に配置されて車室内側を構成するリヤフロアロッカインナを備え、該リヤフロアロッカインナの前端接合部と前記ロアレールカバーの後端接合部同士を接合して成るサイドシルの補強構造であって、
前記ロアレールカバーと前記リヤフロアロッカインナとの接合部を補強する部材であって、前半部が前記ロアレールカバーで構成されるサイドシル部分の室内上側角部に接合され、後半部が前記リヤフロアロッカインナで構成されるサイドシル部分の室内上側角部に接合されるリンフォースを設けたことを特徴とするスライドドア車両のサイドシル補強構造。
【請求項2】
前記リンフォースを前記ロアレールカバーと前記リヤフロアロッカインナの接合部に跨がるよう配置するとともに、その前半部を前記ロアレールカバーの角部外面に接合し、後半部を前記リヤフロアロッカインナの角部内面に接合したことを特徴とする請求項1記載のスライドドア車両のサイドシル補強構造。
【請求項3】
前記リンフォースは、前記ロアレールカバー及び前記リヤフロアロッカインナの各縦壁と各上壁及び各フランジにそれぞれに接合される縦壁部と上壁部及びフランジ部とで鉛直断面が略クランク状に形成されることを特徴とする請求項1又は2記載のスライドドア車両のサイドシル補強構造。
【請求項4】
前記リヤフロアロッカインナの前記リンフォースの後半部が位置する部位にリヤフロアパネルの縦壁部を接合するとともに、前記リンフォースの後端部を車幅方向に配されたクロスメンバの側方に配置したことを特徴とする請求項2又は3記載のスライドドア車両のサイドシル補強構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−131317(P2012−131317A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284362(P2010−284362)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】