説明

スラミン、ペントサン・ポリサルフェート、テロメラーゼアンチセンス、及びテロメラーゼ阻害剤を用いるための方法及び成分

本発明は、テロメラーゼ活性を阻害する方法及び成分と、テロメラーゼ介在性の病気または疾患の治療を提供する。本発明の方法、化合物、成分は、テロメラーゼ活性介在性の病気または疾患の治療、例えば癌の治療において、単剤で用いることもでき、他の薬理学的に活性がある薬剤、手術、または放射線と組み合わせて用いることもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この特許出願は、2003年1月31日に出願された「Inhibition of Telomerase Activity by Suramin, Pentosan Polysulfate or Antisense to Human Telomerase」と題する出願番号第60/444,061号の仮出願の利益を主張する。この特許出願は、2003年6月18日に出願された「Methods and Compositions for Modulating Drug Activity through Telomere Damage」と題する米国特許出願第10/464,018号、2000年6月5日に出願された「Methods and Compositions for Modulating Cell Proliferation and Cell Death」と題する米国特許出願第09/587,559号の相互参照でもあり、これらの全開示は引用を以って本明細書の一部となす。
【0002】
政府支援調査
この特許出願に記載された研究は、米国保健福祉省(the United States Department of Health and Human Services)の助成金に一部支援されている(助成番号R01CA77091,R01CA97067,R37CA49816;R01CA78577;R01CA74179;R21CA91547;U01CA76576)。
【0003】
技術分野
本発明は、ヒトの癌細胞においてヒト・テロメラーゼ(hTRアンチセンス)のRNA部分を標的にしかつテロメラーゼ活性を阻害するようなアンチセンス分子に関する。本発明はまた、スラミン、ペントサン・ポリサルフェート(PPS)、またはhTRアンチセンスを用いてテロメラーゼ活性を阻害する方法を教示する。本発明は更に、別のテロメラーゼ阻害剤である3’−アジド−ジデオキシチミジン(AZT)をナノモル範囲の血漿濃度を生じさせる無毒性量で用い、腫瘍を治療する方法を教示する。本発明は更に、外科的または非外科的腫瘍サイズ減少(細胞減少)と同時またはその後にテロメラーゼ阻害剤を用いて腫瘍を治療する他の方法を教示する。本発明は更に、非外科的腫瘍サイズ減少治療前にテロメラーゼ阻害剤を用いて腫瘍細胞をそのような治療の効果に対して感作させる方法を教示し、テロメラーゼ阻害剤、例えば、スラミン、PPS、またはhTRアンチセンスを用いて癌の進行を防ぐ方法を教示する。
【背景技術】
【0004】
テロメア及びテロメラーゼ。テロメアは、染色体末端部にある構造であり、染色体完全性及び複製可能性の維持にとって重大な意味を持つ。DNAポリメラーゼによって染色体の3’末端を複製することは不可能なので、テロメアは細胞分裂を繰り返すごとに50〜200bp短縮される。テロメアが臨界最小長さ以下に短くなると、細胞死を招いたり(非特許文献33)、細胞を老化(例えば増殖能力を喪失)させたりする(非特許文献20、非特許文献37)。酵素テロメラーゼは、RNAとタンパク質構成成分とからなるが、テロメアの長さを回復することが可能であり、腫瘍細胞にほぼ例外なく存在し、正常な体細胞には通常存在しない(非特許文献25)。
【0005】
テロメラーゼ阻害剤の使用方法。腫瘍細胞におけるテロメラーゼの選択的存在及び機能の臨界性から、テロメラーゼが望ましい腫瘍特異標的であり、テロメラーゼ阻害剤が有用な治療的抗癌剤であるという最初の仮説が導かれる(例えば、Huminiecki, L., Acta Biochimica Polonica, 43: 531-538,1996を参照)。ここで提唱されているテロメラーゼ阻害剤の使用は、新形成の開始及び維持に活性テロメラーゼが必要であるという仮説に基づいている。テロメラーゼ阻害の臨床的な有効性を示す証拠は報告されていない。それどころか、幾つかの重要な発見は既に誰かが述べていることであり、これら全てがテロメラーゼ阻害剤には限定的な治療的価値しかないことを示している。第1に、テロメラーゼに依存しないようなテロメアの長さを長くするメカニズムが他にあることが分かっている(例えば、非特許文献17)。第2に、腫瘍細胞に既存のテロメアは通常、テロメラーゼが完全に阻害されたときであっても複数回の細胞増殖をサポートするのに十分な長さである。従って、テロメラーゼ阻害剤はかなりの遅延時間が経過するまで細胞毒性を生じさせない。例えば、テロメラーゼ阻害剤は23〜26細胞倍化後にHeLa細胞に細胞毒性を生じさせる(非特許文献12)。例えば患者の腫瘍の間接死は腫瘍サイズの10以下の倍化後に発生するのが普通であり、制御されていない腫瘍成長によって腫瘍量は致命的になるので、細胞死または老化を生じさせるためにテロメラーゼ阻害に長い遅延時間を要せば、テロメラーゼ阻害剤は非実用的なものとなって有用な治療薬ではなくなる。癌治療のためにテロメラーゼ阻害剤を用いるという仮説が初めて現れたのは約10年前であるが(特許文献2)、テロメラーゼ阻害剤として特に同定された薬物が今日までヒト患者において抗癌剤として試験されたことはない。
【0006】
米国特許出願第10/464,018号において、出願人は、パクリタキセルによる癌の治療がテロメアを損傷し、それによってテロメラーゼ活性を誘発し、癌のパクリタキセル治療への抵抗性につながるという発見と、テロメラーゼ阻害剤(例えば、AZT、hTRアンチセンス)の同時投与がこの抵抗性を減少させ、パクリタキセルの抗腫瘍効果を高めるという発見について述べている。
【0007】
本願では、出願人の以前の発明を拡張し、テロメラーゼ阻害による効果的な抗腫瘍治療の方法について教示する。ある側面では、本発明は、テロメラーゼ阻害剤がアポトーシス及び細胞老化が発生する臨界レベル以下にテロメアの長さを侵食する前に腫瘍量が致死レベルに達しないように腫瘍量を低減し、それによってテロメラーゼ阻害が効果的な治療となるようにするために、テロメラーゼ阻害剤の投与に先行してまたは投与と同時に施される細胞減少治療の使用を教示する。故に、本発明は、細胞減少治療(例えば、手術、放射線療法、化学療法など腫瘍サイズを減少させる治療)を癌患者に施し、例えば数週間または数ヵ月の長期にわたりテロメラーゼ阻害剤の血漿濃度がテロメラーゼ抑制レベルで維持されるように、テロメラーゼ阻害剤を投与する過程を含むような、テロメラーゼ阻害剤を用いて癌と闘う方法を教示する。テロメラーゼ阻害剤は、細胞減少治療と同時に投与することもできる。この教示は、化学療法などの細胞減少治療中及び/または完了後にテロメラーゼを抑制するが無毒性であるような濃度に血漿中のスラミンを維持すると、ヒト癌患者の腫瘍縮小を増強し、腫瘍の進行を遅らせ、生存期間を延ばすという出願人の発見に基づく。
【0008】
本発明の別の側面は、細胞毒性治療の用量規定毒性などによる細胞毒性治療終了後のテロメラーゼ阻害剤の使用を教示する。化学療法などの細胞毒性治療は通常、癌患者中に毒性を生じさせるので、無期限に行うことはできない(即ち、維持期間中に維持治療として行う)。化学療法により治療する殆どの癌は進行性であり、通常は根絶不可能であるという臨床的な観点からすれば、これは重大な問題である。例えば、1%以下の非小細胞肺癌患者は、化学療法によって腫瘍が根絶されるような完全寛解に達する(Schiller, et al., New Eng J Med, 346: 92-98, 2002)。そうであるから、残りの腫瘍細胞は細胞毒性治療の休止後に成長を再開し得る。対照的に、テロメラーゼ阻害剤は、腫瘍細胞におけるテロメラーゼの選択的発現のため、毒性を生じさせる可能性が低く、よって無期限にまたは長期にわたり投与可能である。テロメラーゼ阻害剤の細胞増殖阻害または細胞老化低下能力は同様に腫瘍再成長を妨げ、生存優位性につながることになる。
【0009】
例えば、進行性非小細胞肺癌ヒト患者の一般的かつ効果的な化学療法は、3週間毎に投与されるパクリタキセル(225mg/m)とカルボプラチン(AUC=6)の併用である。パクリタキセルの神経毒性は累積的で、通常は4〜6回の治療後に用量規定毒性になり、治療を終了しなければならなくなる。腫瘍は通常数ヵ月以内に成長を再開し始め、生存時間中央値は約8ヵ月である(Schiller, et al., 2002)。
【0010】
この分野の先行技術に関連して、特許文献12にテロメラーゼ(PNA)へのペプチド核酸アンチセンス分子及び制癌剤の併用が教示されている。非特許文献31は、テロメラーゼの阻害がDNA損傷薬に対する腫瘍の感受性を増加させることを述べている。故に、これらの先行出版物は、2つの効果的なモダリティーを併用した癌治療は個々のモダリティーそれぞれによる治療より効果的である場合があるという一般的に受け入れられている考えを教示している。しかし、これらの出版物は、テロメラーゼ阻害剤による処置を効果的にするのに十分な腫瘍サイズの低減を目的とした細胞減少治療の使用に関して開示していない。これらの出版物は、闘癌手段としての、細胞毒性治療終了後のテロメラーゼ阻害剤の使用に関しても開示していない。故に、効果的な抗癌治療としてテロメラーゼ阻害を与えるために細胞減少治療が必要であるという出願人の発見は、そのような使用または結果が以前に述べられていないので、新規である。先行技術(非特許文献8、非特許文献11、非特許文献10、非特許文献28、非特許文献41、非特許文献43、非特許文献45、非特許文献55、非特許文献56)はそのような低用量のスラミンはヒト中に抗腫瘍活性を有しないことを示しているので、テロメラーゼの阻害に十分であるが抗腫瘍活性を生じさせるには不十分な抗腫瘍活性血漿スラミン濃度を維持するような低用量のスラミンを細胞減少治療と共に投与したところヒト患者において癌に対して効果的であったという出願人の発見もまた驚くべきことである。
【0011】
本発明はまた、テロメラーゼ阻害剤での前治療が化学療法の抗腫瘍効果を高めることも教示している。これは、例えばテロメラーゼの阻害に十分であるが細胞毒性を生じさせるには不十分な50μM以下の血漿濃度を生じさせる低用量スラミンを用いた前治療が化学療法の活性を向上させるという出願人の発見に基づいている。スラミンの化学増感効果が観察されたのは、腫瘍定着の前または後に低用量スラミンを投与したとき、または腫瘍量が命にかかわるものではないときである。この発見は、そのような使用または結果が以前に述べられていないので、新規である。それどころか、先行技術(例えば非特許文献52)によれば、そのような低用量スラミンはヒトではない動物腫瘍定着の前または後で抗腫瘍活性を有しないことになっているので、この発見は驚くべきことである。
【0012】
テロメラーゼ阻害剤。本願発明は、テロメラーゼを阻害するためのスラミン、PPS、またはhTRアンチセンスの使用を教示している。これは、スラミン、PPS及びhTRアンチセンスが効果的なテロメラーゼ阻害剤であり、動物に移植された腫瘍のテロメアの長さを低減するという出願人の発見に基づいている。先行技術は、テロメラーゼ阻害剤の特性を有する幾つかの化合物を教示している(例えば、特許文献4、特許文献5、特許文献7、特許文献8、特許文献9に記載されているもの)。先行技術は、シスプラチンが、恐らくはテロメアの反復配列の架橋により、テロメラーゼ阻害を阻害することについても教示している(非特許文献4)。先行技術は、ペプチド核酸(PNA)アンチセンス分子及びホスホロチオネート型オリゴヌクレオチドを用いて、テロメラーゼのRNA構成成分を標的にすることによりテロメラーゼ活性を阻害することについても更に教示している(非特許文献49)。しかし、これらの記事は、スラミン、PPS、またはhTRアンチセンスをテロメラーゼ阻害剤として使用することを教示していない。
【0013】
化学的予防手段としてのテロメラーゼ阻害剤。テロメラーゼ阻害剤を用いる化学的予防については既に提唱されている。例えば、特許文献10は、チアゾリジノン化合物のクラスのテロメラーゼ阻害剤を予防薬として投与する可能性を示唆している。しかし、特許文献10には、スラミン、PPS、またはhTRアンチセンスを用いてテロメラーゼを阻害することまでは教示されていない。
【0014】
スラミンの使用方法。ポリスルホネート型ナフチル尿素(polysulfonated naphthylurea)であるスラミンは、複数の薬理活性を有する(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献8、非特許文献11、非特許文献10、非特許文献18、非特許文献21、非特許文献22、非特許文献24、非特許文献26、非特許文献28、非特許文献36、非特許文献42、非特許文献47、非特許文献50、非特許文献54、非特許文献53、非特許文献59、非特許文献63、非特許文献66、非特許文献67)。その抗腫瘍活性は、DNAポリメラーゼα及び逆転写酵素の阻害、成長因子(即ち血小板由来の成長因子、繊維芽細胞成長因子またはFGF、トランスフォーミング成長因子−β、上皮細胞成長因子、血管内皮成長因子、及びインシュリン様成長因子−1)の結合の阻害、IL−2及びトランスフェリンのそれぞれの受容体への結合の阻害、PKCのリン酸化活性の阻害、グリコサミノグリカン代謝によるものであると信じられている。スラミンはまた、Na/K−ATPアーゼ、腫瘍ネクローシス因子α、トポイソメラーゼII型を阻害する。任意の濃度でのスラミンによるテロメラーゼ活性の阻害は知られておらず、これは出願人による新規な発見である。
【0015】
スラミンは、前立腺癌において活性を示し(非特許文献6、非特許文献9、非特許文献13、非特許文献27)、単剤として使用するか或いは他の化学治療剤と併用するかいずれかで多種多様な固形腫瘍において試験されてきた。スラミンの治療的血漿濃度は、100〜200μM(140〜280μg/ml)であり(非特許文献14)、70〜210μM(100〜300μg/ml)が最も広い限界として示されている(特許文献3)。これらの濃度では、スラミンは患者において著しい毒性及び適度の活性のみを示す。スラミンを用いた単剤療法がヒト患者にはっきりした抗腫瘍効果を有さないこと、高用量スラミンと細胞毒性剤の併用が単剤と比較してヒト患者に有益な結果を生むものではないことは、複数の研究者グループが示している。同研究者らは、自らの発見に基づき、単剤としてのスラミンの使用または他の細胞毒性剤との併用のいずれかに反対している(非特許文献8、非特許文献11、非特許文献10、非特許文献28、非特許文献41、非特許文献43、非特許文献45、非特許文献55、非特許文献56)。故に、本発明が拠所とする発見がなければ、スラミンを単剤として使用するか、任意量のスラミンと細胞毒性剤と併用するか、或いは治療量以下かつ無毒性量のスラミンと細胞毒性剤と併用するかのいずれの動機づけも存在しない。唯一の例外は、他の治療モダリティーの作用を増強するための治療量以下の量でのスラミンの使用であろう。この使用は、出願人によって発見されたものであってその詳細は米国特許第6,599,912号に記載されているが、化学療法や放射線など他のモダリティーによる患者の治療の直前、治療中及び治療直後にスラミンの投与を必要とする。本願発明は、スラミンの追加的使用及び異なる使用を支持し、テロメラーゼを阻害しかつ十分なテロメア短縮に細胞増殖の阻害または細胞死発生をさせるために、例えば、数週間、数ヵ月間、数年間、または不定期間の長い合計治療持続時間が必要であることを強調する。
【0016】
本発明は、連続したテロメラーゼの阻害の必要性を教示している。故に、体からゆっくり排出される化合物が望まれる。スラミンは、そのような要求を満たすものである。ヒト患者におけるスラミンの薬物動態学は、5.5時間、4.1日、及び78日の半減期を有する三相性血漿濃度減退によって特徴付けられる。総ボディクリアランスは、0.0095l/hr/mである(非特許文献29)。イヌ中でのスラミンの処分もゆっくりで、終末半減期は約13日間である(例8を参照)。
【0017】
PPSの使用方法。PPSは、半合成ヘパリノイドであり、抗凝血効果を有する(非特許文献68)。患者血清に抗凝血効果がなく細胞毒性効果より1,000倍低いような濃度では、PPSはFGFがその受容体に結合するのを阻害し、ニワトリ漿尿膜アッセイにおける血管形成も阻害する(非特許文献51、非特許文献68)。血液凝固阻止は、1μg/ml以上の濃度でのみ見られる(非特許文献51)。in vivo条件下では、PPSは、腫瘍が触診可能な程ではないときに治療を開始すればラットMAT−LyLu腫瘍の成長を阻害するが、定着した腫瘍に対する効果は殆どなく、マウスのMCF7腫瘍の転移を阻害することができない(非特許文献39、非特許文献48、非特許文献69)。前臨床的な腫瘍モデルにおけるPPSの抗腫瘍活性は、その臨床的評価を導いた。結果は、血液凝固阻止効果を防止するように量を調整されたPPSが十分に耐容性を有することを示したが、患者において抗腫瘍活性を示さなかった(非特許文献34、非特許文献62)。結果的に、PPSが潜在的に有用な抗腫瘍または抗血管新生剤として評価されることはなくなる。活動期の癌の臨床試験全てに対するPDQ臨床試験データベース(http://www.nci.nih.gov)を検索すると、2000年1月27日現在で、全世界における1,790の試験が示されるが、PPSの試験は示されていない。故に、この発見がなければPPSを用いて癌を治療するための動機づけがない。
【0018】
抗腫瘍活性評価に用いたPPSの用量は約400mg/m/日即ち約10mg/kg/日であり、経口的に投与した。血漿濃度は連続的に毎日投与された期間にわたって増加し、治療の15日目に200〜460ng/mlに達した。この用量レベルでは、下痢、胃腸出血、直腸炎などの血液学的毒性は、通常であれば1〜3カ月以内に発生した。直腸炎は、この試験では用量規定毒性であった(非特許文献38)。テロメラーゼ活性の50%阻害に必要なPPS濃度(0.5〜0.6μg/ml、例3を参照)は、直腸炎毒性を生じさせるような濃度より実質的に高い。この考察から、標的にされた器官へのスラミンの局所投与は標的にされた組織におけるテロメラーゼ阻害剤濃度(例えば5〜100μg/g)をもたらすが血漿におけるスラミン濃度は非常に低い(例えば0.1μg/ml、例13を参照)という発見と共に、テロメラーゼ阻害が所望されるような器官へのPPSの局所投与の発明が導かれる。この新たな使用は、全身的な宿主毒性の潜在的な問題を排除する。
【0019】
AZTの使用方法。メラナ(Melana)らは近頃、AZTに関する歴史を集約した(非特許文献40)。AZTは、ヒト免疫不全症ウイルスに感染した患者の治療に用いられる。AZTは元来抗腫瘍剤として開発された。しかし、飲料水中に投与されると動物中で相対的に高い細胞毒性を示すので、AZTを潜在的な抗腫瘍剤とは考えられない。AZTは、大量瞬時投与として投与されると非常に低い毒性を有することが後にわかった。それ以来、AZTは胃腸癌の治療においてフェーズI及びIIの臨床試験で単剤として或いは他剤と併用して試験されてきた。これら全ての先行試験では、以下のように利用可能なデータに基づき計算された10μM超の血漿濃度を生じさせるようなAZT(即ち7〜10g/m/日)の量が用いられた。4時間毎に2.5mg/kg即ち15mg/kg/日を普通に経口投与した後、患者の血漿におけるAZTの平均定常状態濃度は1.06μg/mlである(非特許文献71)。AZTによる細胞毒性の治療の場合、3g/m/日の最小量が用いられるが(特許文献1)、これは換算すると約85mg/kg/日である。1.06μg/mlから15mg/kg/日に対して定常状態濃度の線形外挿を行ったところ、85mg/kg/日の用量に対して6μg/mlまたは22μMの血漿濃度期待値が得られた。先行技術は、AZTがテロメラーゼ阻害剤であり、50%阻害を生じさせる濃度はマイクロモルからミリモルの範囲にあることを教示している(非特許文献60、非特許文献61)。
【0020】
本発明は、低用量のAZTの使用について教示する。出願人は、ナノモル血漿濃度を送達する無毒性量のAZT投与が動物中の定着した腫瘍を消失させることを発見した。 そのような無毒性量のAZTの追加はまた、動物におけるパクリタキセルの抗腫瘍活性を高める。AZTは抗腫瘍剤及びテロメラーゼ阻害剤として評価されてきたが、そのような低用量でのAZTの使用または有効性について記載された先行技術はない。それどころか、低用量で生じるAZTの抗腫瘍活性がナノモル濃度になるという出願人の発見は、血漿中でマイクロモル濃度になるような更に高用量でAZTの抗腫瘍活性が見られることを示す先行技術(非特許文献5)を考えれば、驚くべき発見である。ナノモル濃度でAZTが化学療法の活性を高めるという発見も、AZTの細胞毒性またはテロメラーゼ阻害濃度がマイクロモルまたはミリモルの範囲にあることを示す先行技術(非特許文献60、非特許文献61、非特許文献40、例1の表1)を考えれば、驚くべき発見である。
【0021】
テロメラーゼテロメラーゼへのアンチセンス。アンチセンス作成物による阻害活性に関する報告と、アンチセンス作成物を癌の治療に適用する可能性に関する提案は既になされている(Kelland, Lancet Oncol, 2:95-102, 2001)。しかし、本明細書に記載されているhTRアンチセンスは報告されていない。更に、テロメアアンチセンス作成物の使用によるテロメラーゼ阻害の長期治療と細胞減少治療との併用について提唱または記載されたものはない。
【0022】
【特許文献1】米国特許第5,116,823号
【特許文献2】米国特許第5,489,508号
【特許文献3】米国特許第5,597,830号
【特許文献4】米国特許第5,656,638号
【特許文献5】米国特許第5,760,062号
【特許文献6】米国特許第5,767,110号
【特許文献7】米国特許第5,767,278号
【特許文献8】米国特許第5,770,613号
【特許文献9】米国特許第5,863,936号
【特許文献10】米国特許第6,452,014号
【特許文献11】WO特許第93 23572号
【特許文献12】WO特許第97 38013 A号
【非特許文献1】Ahmann, F. R. , J. Schwartz, R. Dorr, and S. Salmon, Suramin in hormone resistant metastatic prostatic cancer: Significant anticancer activity but unanticipated toxicity., Proc. Am. Soc. Clin. Oncol., 10,178, 1991.
【非特許文献2】Armand, J. P. , M. Bonnay, D. Gandia, E. Cvitkovic, F. De Braud, F. Bertheault, J. P. Droz, P. Carde, M. Schlumberger, and D. Fourcault, Phase I-II suramin (SRM) study in advanced cancer patients. (abstract), Proc. Am. Assoc. Cancer Res., 32,175, 1991.
【非特許文献3】Armitage, J. O., D. D. Weisenburger, M. Hutchins, D. F. Moravec, M. Dowling, S. Sorensen, J. Milliard, J. Okerbloom, P. S. Johnson, D. Howe, and et al., Chemotherapy for diffuselarge-cell lymphoma--rapidly responding patients have more durable remissions., J Clin. Oncol., 4,160-164, 1986.
【非特許文献4】Burger, A. M., J. A. Double, and D. R. Newell, Inhibitionof telomerase activity by cisplatin in human testicular cancer cells., Eur J Cancer, 33,638-644, 1997.
【非特許文献5】Clark, J. , W. Sikov, F. Cumings,M. Browne, W. Akerley, H. Wanebo, A. Weitberg, T. Kennedy, B. Cole, J. Bigley, J. Beitz, and J. Darnowski, PhaseII study of 5-fluoruracil leucovorin and azidothymidine in patients with metastaticcolorectal cancer., J CancerRes. Clin. Oncol., 122,554-558, 1996.
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【非特許文献66】Wade, T. P., A. Kasid, C. A. Stein, R. LaRocca, E. R. Sargent, L. G. Gomella, C. E. Myers, and W. M. Linehan, Suramin interference with transforming growth factor-inhibition of human renal cell carcinoma in culture., J. Surg. Res. , 53,195-198, 1992.
【非特許文献67】Waltenberger, J. , U. Mayr, H. Frank, and V. Hombach, Suramin is a potent inhibitor of vascular endothelial growth factor. A contribution to the molecular basis of its antiangiogenic action., J. MoLCell Cardiol., 28,1523-1529, 1996.
【非特許文献68】Wellstein, A. and F. Czubayko, Inhibition of fibroblast growth factors., Breast Cancer Res. Treat., 38,109-119, 1996.
【非特許文献69】Wellstein, A. , G. Zugmaier, J. A. Califano, S. Paik, and M. E. Lippman, Tumor growth dependent on Kaposi's sarcoma-derived fibroblast growth factor inhibited by pentosan polysulfate., J. Natl. Cancerlnst, 83,716-720, 1991.
【非特許文献70】Zugmaier, et al., Ann. NYAcad. Sciences, 886: 243-248,1999.
【非特許文献71】Physician Desk Reference, 2003. http://pdrel.thomsonhc.com.
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0023】
本願は、テロメラーゼ阻害及びテロメア短縮に関する幾つかの関連する発見に基づいている。第1に、出願人は、スラミン、PPS、hTRアンチセンスは効果的なテロメラーゼ阻害剤であり、動物に移植された腫瘍においてテロメアの長さを低減することを発見した。第2の発見は、スラミンを用いた前治療は腫瘍を有する動物において定着した腫瘍に対する化学療法の活性を高めることである。第3の発見は、スラミン及びPPSなどのテロメラーゼ阻害剤が癌化学療法及び放射線の抗癌活性を高めたことである。第4の発見は、細胞減少治療中及び完了後に血漿中のスラミンをテロメラーゼ阻害濃度で維持すると、腫瘍縮小を促進し、腫瘍成長を遅延させ、ヒト癌患者の生存期間を延長したことである。第5の発見は、治療しようとする標的である組織へのスラミンの局所投与が、組織中ではテロメラーゼを阻害しかつテロメアを短縮するのに十分な局所組織濃度となり、同時に血漿中ではテロメラーゼを阻害するのに十分でないような非常に低いスラミン濃度になったことである。第6の発見は、ナノモル血漿濃度を送達した無毒性量のAZTの投与が動物における定着した腫瘍を消失させ、動物中のパクリタキセルの抗腫瘍活性を高めたことである。
【0024】
故に、出願人は、広範な腫瘍の治療に適用可能な、標準的な治療に比べて治療成果を高める、方法、化合物及び成分を示す。
【0025】
第1の側面では、本発明は、テロメラーゼまたはテロメラーゼを含む細胞をスラミン、PPS、またはhTRアンチセンスに接触させることによってテロメラーゼを阻害する方法を教示する。
【0026】
第2のかつ関連する側面は、テロメラーゼ介在性の病気または疾患を患う患者、好適には哺乳動物におけるテロメラーゼ活性を阻害する方法であって、治療上効果的な量のスラミンまたは別のテロメラーゼ阻害剤を患者に投与する過程を含む方法を教示する。
【0027】
第3の側面は、癌患者、好適には哺乳動物の治療成果を向上させる方法であって、テロメラーゼを抑制する量のスラミンまたは別のテロメラーゼ阻害剤を患者に投与する過程を含む方法を教示する。少なくとも幾つかの増殖サイクル、より好適には少なくとも10または20の増殖サイクルの持続時間にわたり腫瘍がテロメラーゼ阻害剤に曝されるような方法でテロメラーゼ阻害治療を施す。
【0028】
第4の側面は、癌患者、好適には哺乳動物の治療を強化する方法であって、テロメラーゼを抑制する量のスラミンまたは別のテロメラーゼ阻害剤を細胞減少治療中または完了後に患者に投与する過程を含む方法を教示する。そのような細胞減少治療は、腫瘍の外科的切除または非外科的治療、例えば、放射線療法、化学療法、光線力学療法を含む。よりよい治療結果を得るために1若しくは複数のテロメラーゼ阻害剤を用いることもできる。
【0029】
第5の側面では、本発明は、小さすぎて検出できないような癌になりそうであるか或いはそのような癌を抱えているような患者を先ず識別し、次に癌の治療または癌進行の予防が達成されるように患者にテロメラーゼ阻害薬を投与することにより患者の癌を処置する方法を教示する。そのような患者をテロメラーゼ阻害薬により治療することは効果的であろう。というのも、腫瘍の初期サイズが小さければ、腫瘍量が患者の健康を脅かすことになる前に多くの腫瘍増殖周期を経ることになるからである。
【0030】
第6の側面では、本発明は、癌の治療が成功した後に寛解状態にあるが新たな癌または再発した癌を進行させる実質的なリスクを抱えたままであるような患者を治療する方法である。このことは、良好なリスク対効果比を与えるので患者に対する毒性が最小であるかまたは全くない薬剤に特に当てはまる。スラミン、PPS、またはAZTは、とりわけテロメラーゼ活性を阻害するために必要とされる低量では、患者に対する毒性が最小であるか或いは全くなく、そのような良好なリスク対効果比を与える。
【0031】
第7の側面は、hTRアンチセンスを細胞に形質移入することによってテロメラーゼを阻害する方法を教示する。
【0032】
第8の側面では、本発明は、癌と闘うべくマイクロモル範囲以下、例えばナノモル範囲の血漿濃度を生じさせる無毒性量のAZTの使用を教示する。
【0033】
第9の側面では、既知の腫瘍の部位付近または現在または未来において腫瘍の発生が疑われる器官にテロメラーゼ阻害剤の局所または限局投与が可能である。局所的に投与されたテロメラーゼ阻害剤は、投与部位に近接して位置する腫瘍細胞または組織に効果的なテロメラーゼ阻害濃度を与えることになる。例えば、注射または植込みなどの局所投与は、持続放出機構などのデポー製剤の形をとることが可能である。テロメラーゼ阻害剤の局所投与は治療の標的である組織にテロメラーゼ阻害濃度を与えるものであるが、血漿または治療の標的ではない他の器官におけるテロメラーゼ阻害濃度を生じさせる必要はない。
【0034】
別進行で、出願人は、相互参照特許出願(米国特許出願第09/587,559号)において、酸性及び塩基性繊維芽細胞成長因子(FGF)が広いスペクトルの腫瘍に化学療法への抵抗性を生じさせ、FGFの阻害剤が癌化学療法及び放射線療法の抗腫瘍活性を高めるという発見について述べている。スラミン及びPPSはFGF阻害剤である。本発明は、同化合物がテロメラーゼ活性を阻害することを教示している。FGF阻害を与えるスラミン及びPPSの濃度はまた、テロメラーゼ阻害も与える。従って、細胞毒性剤の効果を高めるために細胞毒性抗癌治療と組み合わせてスラミンまたはPPSを患者に投与することができ、同時に、テロメラーゼを阻害してテロメアの長さを減少させ、それによって付加的な有益な抗腫瘍効果を達成する。細胞毒性治療レジメンの完了後、長期(long-term)テロメラーゼの阻害活性を達成するためにスラミンまたはPPS投与を維持することが可能である。FGF抵抗性メカニズム及びテロメラーゼ抵抗性メカニズムの両方を標的にするために同一の薬剤を用いることは、患者にも治療を行う医師にも便利であり、細胞毒性治療の成果を向上させる。
【0035】
上述のように、テロメラーゼ阻害剤を用いた効果的な抗癌治療は、複数の腫瘍細胞増殖サイクルにわたるテロメラーゼの阻害活性を必要とする。そのような阻害は、稀な間隔の治療でテロメラーゼ活性の阻害を連続的に維持するべく患者において例えば1週間以上の長い終末半減期を有する薬剤によって最も効果的に達成される。スラミンは、ヒト(非特許文献29)及びヒト以外の動物(例8参照)において1週間超の排出半減期を有するものであり、この要求を満足する。
【0036】
本発明の化合物は、例えばヒトなどの哺乳動物における癌の治療などに有害なテロメラーゼ活性の阻害剤として、多くの価値ある用途がある。本発明の医薬品成分は、in vivoで癌細胞を死滅させるような治療レジメンに用いることができ、或いはex vivoで癌細胞を死滅させるために用いることができる。従って、本発明は、ヒト及び他の哺乳動物(例えば、イヌ、ネコ、ウシ、ウマや、他の獣医学的興味の対象となる動物)において、癌を治療するための治療的化合物及び成分と、癌及び他のテロメラーゼ介在性の病気または疾患を治療する方法を提供する。
【0037】
本発明の他の機能及び利点については、詳細な説明及び請求項から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本発明を明確かつ矛盾なく理解するために、明細書、例、請求項において用いられる幾つかの用語をここにまとめて示す。
【0039】
定義
本明細書中において「異常成長」なる語は、細胞の正常表現型とは異なる細胞表現型を指し、特に癌などの疾患に直接または間接的に関連するものを指す。
【0040】
本明細書中において「投与する」なる語は、薬剤をin vitroなどで細胞に、動物中の細胞に即ちin vivoで、または動物中に戻される細胞(即ちex vivo)に導入することである。
【0041】
本明細書中において「薬剤」、「薬物」、「化合物」、「抗癌剤」、「化学治療的」、「制癌剤」、「抗腫瘍剤」なる語は、互換可能に用いられ、(別段の制限がなければ)癌などの異常な細胞成長を阻害または緩和する特性を有する薬剤を指す。上記の用語には、細胞毒性剤、細胞破壊剤、または細胞分裂停止剤を含むことを意図している。「薬剤」なる語は、小分子、高分子(例えば、ペプチド、タンパク質、抗体または抗体断片)、核酸(例えば、遺伝子療法作成物、組換えウイルス、核酸断片(例えば合成核酸断片を含む))を含む。
【0042】
本明細書中において「アポトーシス」なる語は、当該分野で十分に確立されている基準によって画定されるような、非壊死性、細胞調節型の細胞死を指す。
【0043】
本明細書中において「良性」、「悪性になる前の」、「悪性」なる語は、当該技術分野において認められている意味を与えるものである。
【0044】
本明細書中において「癌」、「腫瘍細胞」、「腫瘍」、「白血病」、または「白血病細胞」なる語は、互換可能に用いられ、任意の新生物(「新成長」)、例えば、癌(上皮細胞由来)、腺癌(腺細胞由来)、肉腫(結合組織由来)、リンパ腫(リンパ組織由来)、または血液癌(例えば白血病または赤白血病)を指す。「癌」及び「腫瘍細胞」なる語は、癌細胞または腫瘍細胞の集合と解されるべき癌性組織または腫瘍塊を含むことを意図する。
【0045】
更に、「癌」及び「腫瘍細胞」なる語は、良性か、悪性になる前か、悪性かいずれかであるような癌または細胞を含むことを意図する。通常、癌または腫瘍細胞は、種々の当該技術分野において認められている顕著な特徴、例えば成長因子非依存性、細胞/細胞接触成長阻害の欠失及び/または異常な核型を示す。対照的に、正常細胞は通常、有限数の継代に対して培養物において継代可能でしかなく、及び/または、種々の当該技術分野において認められている正常細胞に帰する顕著な特徴(例えば、成長因子依存性、接触阻害及び/または正常な核型)を示す。
【0046】
本明細書中において「細胞」なる語は、体細胞や生殖系列哺乳動物細胞などの真核細胞、または例えばHeLa細胞(ヒト)、NIH3T3細胞(マウス)などの細胞株、胎児性幹細胞及び細胞型、例えば造血幹細胞、筋芽細胞、肝細胞、リンパ球、上皮細胞、及び例えば本明細書中に記載の細胞株を含む。
【0047】
本明細書中において「(癌を)有するか或いは(癌に)なりそうな患者を識別する」なる語は、例えば前立腺特異抗原(PSA)試験、BRCA1及び/またはBRCA2ゲノタイピング、遺伝的プロファイリングなどを含む、種々の当該技術分野において認められている診断または予後判定技術を用いて癌を有することが決定されたか或いは統計的に癌に罹る恐れがある患者を指す。この語はまた、患者が癌を有するか或いは癌になりそうであるであることを示す情報(例えば、予後、診断)を単に知ることまたは受け取ることも含めるものとする。
【0048】
本明細書中において「細胞(例えば癌細胞)の成長を阻害するまたは低下させる」なる語は、その成長及び/または転移を遅くする、中断する、或いは抑止することを指し、必ずしもそうである必要はないが、例えば細胞の異常成長の全排出であることもある。この語は、細胞死(アポトーシス)またはネクローシスによる細胞成長の阻害または低下を含むことも意図している。
【0049】
本明細書中において「局所的に」及び「限局的に」なる語は、互換可能に用いられ、腫瘍塊、腫瘍を有する器官、または、転移が疑われる一般的な腫瘍分野または領域に、或いは悪性になる前の病変部、例えば前立腺癌に対する前立腺など腫瘍型に特異的な器官に、治療を施すことを指す。
【0050】
本明細書中において「腫瘍量」なる語は、当該技術分野において広く認められている語であり、患者の腫瘍組織の一部または全部の質量体積(mass volume)またはサイズを指す。腫瘍サイズの決定には、通常は触診または画像を使う方法(例えばX線、CATスキャン、PETスキャン、超音波画像)からなる標準的な臨床手段が用いられる。腫瘍量は、腫瘍サイズの相加から推定可能である。腫瘍量は、当該技術分野において認められている、疾患の臨床的な過程の指標であり、腫瘍量が大きければ予後が悪いことを示し、腫瘍量が小さければ予後徴候は肯定的である。腫瘍量は、多くの場合患者の腫瘍死亡率に関連して考えられる。ヒト患者は多くの場合約1kgの腫瘍量に耐えることができるが、これを一般原則として適用することはできない。というのも、腫瘍の位置、腫瘍により引き起こされるであろうダメージが腫瘍塊に関連する死亡率の重要な決定要因であるためである。例えば、脳の転移性腫瘍成長は僅か数センチメートルでも致命的である場合があり、それより大きな腫瘍でも肝臓または内臓にあれば耐容性を示すこともある。よって、脳へ転移するような腫瘍を有する患者に対する致命的な腫瘍量は、そのような転移のない患者に対する致命的な腫瘍量よりもずっと小さい。
【0051】
本明細書中において「全身的に」なる語は、経口または静脈内投与などにより薬剤を被験対象全体に広範に散在させることを意図した治療を施すことを指す。同様に、「全身的な」濃度は、循環血漿に見られるような体全体での濃度を指す。
【0052】
本明細書中において「薬学的に許容される担体」なる語は、当該技術分野において認められており、本発明の化合物を哺乳動物に投与するのに適した薬学的に許容される物質、成分または媒体を含む。
【0053】
本明細書中において「医薬品成分」なる語は、ヒトなどの哺乳動物への投与に適した製剤を含む。本発明の化合物を医薬品としてヒトなどの哺乳動物に投与するとき、他に関係なく、または例えば、0.1〜99.5%(より好適には0.5〜90%)の有効成分(例えば治療上効果的な量)を含む医薬品成分として薬学的に許容される担体と併用して、投与することができる。
【0054】
本明細書中において「被験対象」なる語は、ヒト及びヒト以外の動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ネコ、イヌ、家畜、霊長類)を含む意図で用いられる。
【0055】
好適なヒト動物には、異常な細胞成長(例えば癌)によって特徴付けられるような疾患を有するヒト患者を含む。
【0056】
本明細書中において「テロメア」なる語は、真核性染色体の末端部を指すが、これは癌細胞においてしばしば異常に伸長する。
【0057】
本明細書中において「テロメラーゼ」なる語は、テロメアとして知られる染色体末端のヌクレオチド重合または維持を対象にする細胞の酵素または酵素活性を指す。
【0058】
本明細書中において「テロメラーゼ阻害剤」なる語は、酵素テロメラーゼの活性を(完全にまたは部分的に)阻害する薬剤を指す。
【0059】
本明細書中において「テロメラーゼの阻害」なる語は、例えば、非特許文献16に記載されている改良TRAPアッセイを用いて実証されるか、或いは非特許文献15に記載されているTALAアッセイを用いて実証されるような全ての細胞における平均テロメアの長さの減少または非特許文献15に記載されているFISHアッセイを用いて個々の細胞における個々のテロメアの侵食に基づくような、テロメラーゼ酵素の直接測定可能な阻害を指す。
【0060】
本明細書中において「化学増感剤」なる語は、抗癌化学療法剤など第2の薬剤の抗腫瘍効果を増加させる薬剤を指す。「化学増感」なる語は、化学増感剤がないの場合癌化学療法剤の抗腫瘍活性と比較したときの化学増感剤による癌化学療法剤の抗腫瘍活性の増加を指す。
【0061】
本明細書中において「化学的予防」なる語は、薬剤を用いて腫瘍、癌の進行を予防することを指す。「化学的予防薬」なる語は、腫瘍、癌の進行を予防する薬剤を指す。
【0062】
本明細書中において、テロメラーゼ阻害剤及び/または化学治療剤の「治療上効果的な量」なる語は、単剤または他剤と併用で、ヒト患者などの被験対象への単回または複数回投与で、テロメラーゼ活性を阻害する(テロメラーゼ阻害薬の場合)或いは癌などの異常な細胞成長を阻害または緩和する(化学治療薬の場合)のに効果的である薬剤の量を指す。
【0063】
本明細書中において「ペントサン・ポリサルフェート」または「PPS」なる語は、1500〜5000の範囲の分子量を有し、ヘパリンに似た特性を示すβ−D−キシロピラノース残基で構成される半合成硫酸ポリアニオンを指す。化合物は、例えば、メルクインデックス(Merck index, 10th edition, page 1025, Merck &Co, Inc, 1983)に記載されている。この化合物は他の名称でも呼ばれるが、とりわけ、硫酸水素キシラン、ポリ硫酸キシラン、CB 8061、Fibrase、Hemoclarと称される。
【0064】
本明細書中において「バイオマーカ」なる語は、当該技術分野において認められているものを意図し、その存在またはレベルが癌などの疾患の存在または疾患の進行の高い可能性を示すようなタンパク質または遺伝子などの分子または化合物を指す。例えば、高レベルの前立腺特異抗原を有する患者は、前立腺癌を有しそうであるか或いは進行させそうである。BRCA1またはBRCA2遺伝子に突然変異を有する患者は、乳癌及び卵巣癌を有しそうであるか或いは進行させそうである。
【0065】
本明細書中において「ex vivo」なる語は、組織培養物中で生細胞を用いて実施する試験を指す。
【0066】
テロメラーゼ阻害剤
上記したように、細胞の不死化は、多くの場合、とりわけテロメラーゼの活性化を伴う。より具体的には、皮膚、結合組織、脂肪、乳房、肺、胃、膵臓、卵巣、頚部、子宮、腎臓、膀胱、大腸、前立腺、中枢神経系、網膜及び血液の腫瘍細胞株を含む多くの腫瘍細胞株の能力とテロメラーゼ活性との結合が永続することは、テロメラーゼ活性の分析(Kim et al., 1994, Science, 266: 2011-2014)により実証されている。この情報は、テロメアの長さの短縮がアポトーシスに対するシグナルまたは複製的老化を与え得ることを示す先行技術(特許文献11)によって補足されるが、十分に長時間にわたるテロメラーゼ活性の阻害は効果的な抗癌療法であり得ることを示す。
【0067】
関連する実施形態では、本発明は、増殖または複製する細胞の能力を阻害する方法である。この方法では、本発明中で述べているようなテロメラーゼ酵素活性を阻害することができる1若しくは複数の化合物が細胞複製中に与えられる。上述のように、線状の染色体DNAの末端が各鎖の5’末端で末端塩基の欠失なしに完全に複製されるようにする際に、テロメアは重要な役割を果たす。不死の細胞及び高速増殖細胞は、テロメラーゼを用いてテロメアのDNA反復を染色体末端に加える。テロメラーゼの阻害はテロメアを加えることができない増殖性細胞で起きることになり、これらは最終的に分裂を停止することになる。当業者に明らかであるように、増殖する細胞の能力を阻害するこの方法は、例えば、癌などにおける細胞の増殖(悪性細胞におけるテロメラーゼ活性)及び造血(造血幹細胞テロメラーゼ活性)の速度増大に関連する病気の治療に有用である。
【0068】
従って、ある側面では、本発明は、テロメラーゼを阻害し、それによって多種の悪性腫瘍を予防または治療するための、スラミン、PPS、及びhTRアンチセンスの使用を教示する。特に、本発明の化合物は、高いパーセンテージの、テロメラーゼを発現するヒト腫瘍細胞株及び腫瘍によって示されるような、悪性腫瘍の非常に一般的な治療方法を提供することができる。さらに重要なことには、本発明に記載されている化合物は、悪性細胞を選択的に標的にし、分裂細胞を無差別に殺すような細胞毒性化学療法剤にたいてい関連する有害な副作用の多くを回避するような治療を与えるのに効果的であり得る。
【0069】
本発明の化合物は、同様にテロメラーゼを阻害するようなスラミン及びPPSの類似体に及ぶ。
【0070】
別の側面では、本発明は、テロメラーゼ酵素を阻害するための化合物と、医薬品成分と、これらの化合物またはその薬学的に許容される塩に関連する、テロメラーゼ酵素を化合物またはその薬学的に許容される塩に接触させる過程を含む方法を提供する。ここで、化合物は、スラミンまたはPPSである。
【0071】
好適実施例においては、阻害されるテロメラーゼは、ヒト・テロメラーゼなどの哺乳動物テロメラーゼである。
【0072】
テロメラーゼ阻害剤の抗腫瘍活性
本発明の第2の、関連する側面は、スラミンが、被験対象中でテロメラーゼの阻害活性に効果的な量に維持されているとき、腫瘍においてテロメアの長さを短縮することができるという発見である。従って、本発明のこの側面は、テロメラーゼ介在性の病気または疾患を患っている患者、好適には哺乳動物においてテロメラーゼ活性を阻害する方法であって、治療上効果的な量のスラミンまたは別のテロメラーゼ阻害剤を患者に投与する過程を含む方法を教示する。
【0073】
本発明に記載の化合物は、細胞抽出物、培養細胞及び無処置動物においてテロメラーゼを阻害する。本発明の化合物の活性は、本明細書中に記載されている方法を用いて実証することもできる。
【0074】
テロメラーゼ活性を阻害する本発明の化合物を識別する1つの方法は、テロメラーゼを含む細胞、組織、または好適には細胞抽出物または他の製剤をテロメラーゼ活性融和性の緩衝液中で幾つかの既知の濃度の試験化合物に接触させる過程を含む。
【0075】
試験化合物の各濃度に対するテロメラーゼ活性のレベルを測定し、標準的な技術を用いてIC50(元の値または対照値に対して酵素活性の50%阻害を生じさせるような試験化合物の濃度)または化合物に対するIC50を決定した。本明細書の開示に基づき当業者に明らかであるように、テロメラーゼに対する本発明の化合物の阻害濃度を決定する別の方法を用いることもできる。
【0076】
上記した方法によってスラミン及びPPSに対するIC50値を決定し、それが10μM以下であることがわかった。
【0077】
本明細書中に記載されている化合物を用いた悪性疾患の治療に関して、本発明に記載の化合物は、テロメラーゼ依存性細胞株においてクリーゼを誘発するはずである。本発明の化合物を用いた、ヒト咽頭FaDu細胞などのテロメラーゼ依存性細胞株の治療はまた、処置した細胞においてテロメアの長さの減少を誘発するはずである。
【0078】
本発明に記載の化合物はまた、FaDuやヒト前立腺PC3などのヒト腫瘍細胞株において細胞分裂中にテロメア減少を誘発するはずである。重要なことは、しかし、繊維芽細胞由来のBJ細胞など対照として用いられる正常なヒト細胞においては、観察されるテロメアの長さの減少は生理食塩水などの媒体でしか処置されていない細胞と差がないはずである。本発明に記載の化合物はまた、提唱された使用のテロメラーゼ阻害濃度で正常細胞中において著しい細胞毒性効果を示さないはずである。
【0079】
それに加えて、テロメラーゼに対する本発明に記載の化合物の特異性は、テロメラーゼ上での活性(IC50)を他の酵素上での活性と比較することにより決定することができる。酵素は、当該技術分野において認められているように、生物反応を促進する分子である。例として、in vitroでテロメラーゼに核酸結合または変更活性が類似の酵素は、DNAポリメラーゼI、HeLaRNAポリメラーゼII、T3RNAポリメラーゼ、MMLV逆転写酵素、トポイソメラーゼI型、トポイソメラーゼII型、末端転移酵素及び一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)を含む。この群にはない他の酵素も含まれる。ふるい分けされる他の酵素に対するIC50値と比較してテロメラーゼに対するIC50値が低い化合物は、テロメラーゼに対する特異性を有すると言われている。或いは、ふるい分けされる他の酵素に対するIC90値と比較してテロメラーゼに対するIC90値が低い化合物は、テロメラーゼに対する特異性を有すると言われている。
【0080】
ヌードマウスに移植されたFaDu腫瘍細胞などのマウス異種移植片モデルを用いて、in vivo試験を実施することもできるが、このとき本発明の化合物で処置したマウスは、初回量に続く期間では平均で減少するか変化しないままであるか或いは増加すらし得るが連続的な治療により質量が縮小することになるような腫瘍塊を有するはずである。対照的に、生理食塩水で処置した対照動物は、増大し続ける腫瘍塊を有するはずである。
【0081】
前記から当業者は、本発明が本発明の化合物の投与に関与する治療レジメンを選択する方法も提供することを理解するであろう。そのような目的のために、腫瘍細胞からのDNAがテロメアの(TAG配列以外の配列に特異な制限酵素による消化により分析されるような末端制限断片(TRF)分析を行うことが役に立つことがある。そのような分析の例は、以前の特許出願(米国特許出願第10/464,018号)に記載されている。
【0082】
DNAの消化に続き、ゲル電気泳動を行って制限断片をサイズに従って分離する。その後、テロメアの配列に特異的な核酸プローブで分離断片をプローブし、サンプル中で細胞のテロメアDNAを含む末端断片の長さを決定する。テロメアのDNAの長さを測定することにより、テロメラーゼ阻害剤を投与する期間はどれくらいか、他の治療方法(例えば、手術、化学療法及び/または放射線)も用いるべきかを推定することができる。それに加えて、治療中、治療の効力を実証するべく、細胞を試験して、進行性細胞分裂中のテロメアの長さが減少するか決定することもできる。
【0083】
化学療法を行う前のテロメラーゼ阻害前治療
本発明の第3の側面は、最小の余病の存在下でかつテロメラーゼ活性を阻害するのに効果的な量のスラミンが投与されると、癌化学療法の開始前のスラミンでの治療が癌化学療法の効力を高めるという発見である。
【0084】
従って、本発明のこの側面は、癌患者、好ましくは哺乳動物の治療成果を向上させる方法であって、患者にテロメラーゼ抑制量のスラミンまたは別のテロメラーゼ阻害剤を投与する過程を含む方法を教示する。少なくとも幾つかの増殖サイクルの持続時間、より好適には少なくとも10〜20の増殖サイクルの持続時間にわたり腫瘍がテロメラーゼ阻害剤に曝されるような方法でテロメラーゼ阻害治療を施すのが好ましい。好ましい方法は、細胞毒性レジメン実施前にテロメラーゼ阻害剤を投与することである。別の好ましい方法は、細胞毒性レジメン実施前及び実施中にテロメラーゼ阻害剤を投与することである。好適実施例ではテロメラーゼ阻害剤はスラミンであり、このスラミンを、テロメラーゼの阻害活性には効果的であるが抗腫瘍活性を生じさせるには不十分な量を投与する。
【0085】
腫瘍細胞減少療法後の連続テロメラーゼ阻害
本発明の第4の側面は、腫瘍縮小を促進する細胞減少治療の治療中及び完了後に血漿中のスラミンをテロメラーゼ阻害濃度で維持すると、腫瘍成長を遅延させ、ヒト癌患者の生存期間を延ばすという発見である。従って、本発明のこの側面は、癌患者、好適には哺乳動物の治療を高める方法であって、細胞減少治療中及び完了後に患者に治療上効果的な量のスラミンまたは別のテロメラーゼ阻害剤を投与する過程を含む方法を提供する。そのような細胞減少治療は、腫瘍の外科的切除または非外科的治療、例えば、放射線療法、化学療法、光線力学療法などを含む。少なくとも幾つかの増殖サイクル、より好適には少なくとも10〜20の増殖サイクルに等しい持続時間にわたり腫瘍細胞中でテロメラーゼ阻害を生じさせることが知られているような血漿濃度で腫瘍がテロメラーゼ阻害剤に曝されるような方法でテロメラーゼ阻害治療を施すのが好ましい。好ましい方法は、細胞毒性レジメン実施中及び実施後にテロメラーゼ阻害剤を投与することである。このとき、細胞毒性レジメンは患者の腫瘍量を低減することになり、それによってテロメラーゼ阻害剤がテロメアを臨界長さ以下に短縮して細胞死及び老化を誘発するのに十分な準備期間を与える。別の実施例では、腫瘍サイズの低下は外科的手段によって達成される。別の実施例では、例えば癌患者における用量規定毒性による細胞毒性レジメンの終了後、闘癌手段としてテロメラーゼ阻害剤を投与する。好適には、細胞毒性レジメンの終了後にテロメラーゼ阻害剤を投与し、テロメラーゼ阻害剤の投与は少なくとも数週間、数ヵ月間、数年間、またはより好適には無限に続けられる。
【0086】
出願人は、スラミン及びPPSが癌化学療法や放射線などの細胞毒性治療に対して腫瘍細胞を感作させることを発見した(米国特許出願第09/587,559号、例10)。故に、これらの化合物のいずれかを用いて、或いはこれら2つの化合物を併用して、腫瘍細胞を細胞毒性の抗癌治療に対して感作させ、同時にテロメラーゼ活性を阻害する追加的な利点を与え、故にテロメアの短縮を促進することができる。細胞毒性の癌治療レジメンの完了後、スラミン及びPPSまたは別のテロメラーゼ活性阻害剤を用いた治療を続ける。このスラミンとPPSのダブルでの治療上の利点は、3つの化合物を用いた治療の予期せぬ利点を示す。
【0087】
テロメラーゼ阻害による化学的予防
第5の側面では、本発明は、従来の手段では小さすぎて検出できないような癌になりそうであるか或いはそのような癌を抱えているような患者の識別により患者の癌を処置し、かつ癌の治療または癌進行の予防がなされるようにテロメラーゼ阻害薬を患者に投与する方法を教示する。例として、従来の腫瘍検出方法の幾つかは、物理的方法(例えば触診)、病理学的方法(例えば尿または便中の血液)、または画像を使う方法(例えばX線、CATスキャン、PETスキャン、超音波画像)であった。検出不可能な癌に罹る恐れがあるか或いはそのような癌を抱えているような患者の識別は、バイオマーカまたは遺伝的欠陥をモニターすることによって行うこともできる。例えば、患者は、正常の限界である4ng/ml以上の血液レベルの前立腺特異抗原(PSA)を有するかもしれないが、直腸指診によって触診可能であるか或いは超音波画像によって目に見えるような腫瘍を有していないかもしれない。PSAレベルが高ければ、前立腺の癌の形成または存在の可能性が高いことを示し、物理的検出の不存在は腫瘍が非常に小さいか或いは前駆状態にあることを示す。別の例として、検出可能な腫瘍を現在有していない女性患者は、BRCA1またはBRCA2遺伝子において乳癌または卵巣癌に対する強力な素因を示すような突然変異を有する可能性がある。当該技術分野において認められている、腫瘍発生の可能性及び腫瘍量を判定するための他の方法も含まれる。そのような患者をテロメラーゼ阻害薬で治療することは効果的であろう。というのも、腫瘍の初期サイズが小さければ、腫瘍量が患者の健康を脅かすことになる前に多くの腫瘍増殖周期を経ることになるからである。
【0088】
第6の側面では、本発明は、癌の治療が成功した後寛解状態にあるが新たな癌または再発した癌を進行させる実質的なリスクを抱えたままであるような患者を治療する方法である。例えば、750mg/mの静脈内シクロホスファミド、50mg/mのドキソルビシン、1.4mg/mのビンクリスチン、及び100mg/mの経口プレドニゾンのレジメンによる広められたびまん性大細胞型B細胞リンパ腫を処置された患者は、この治療への反応が遅いことがわかっており、最終的に寛解に到達し、癌が再発する確率が統計的に高くなる(非特許文献3)。この患者は、テロメラーゼ阻害剤による治療の恩恵を受けるであろう。テロメラーゼ阻害剤は、患者の癌が再発しても癌と効果的に闘うことになる。このことは、良好なリスク対効果比を与えるので患者に対する毒性が最小であるかまたは全くない薬剤に特に当てはまる。スラミン、PPS、またはAZTは、とりわけテロメラーゼ活性を阻害するために必要とされる低量では、患者に対する毒性が最小であるか或いは全くなく、そのような良好なリスク対効果比を与える。
【0089】
hTRアンチセンスによるテロメラーゼ阻害
本発明の第7の側面は、細胞へのhTRアンチセンスの形質移入がテロメラーゼ酵素活性をin vitroで効果的に阻害するという出願人の発見に基づく。hTRアンチセンスを画定するヌクレオチド配列は、例4から明らかである。従って、本発明は、hTRアンチセンスを細胞に形質移入することによってテロメラーゼを阻害する方法を教示する。
【0090】
低用量AZT
第8の側面では、本発明は、癌と闘うべくマイクロモル範囲以下、例えばナノモル範囲の血漿濃度を生じさせる無毒性量のAZTの使用を教示する。ある実施形態では、AZTは他の付随する治療なしに癌患者に投与される。別の実施例では、AZTは外科的細胞減少治療後に癌患者に投与される。別の実施例では、AZTは非外科的細胞減少治療の前、後、もしくは同時に投与される。
【0091】
標的部位または器官へのテロメラーゼ阻害剤の局所投与
第9の側面では、既知の腫瘍の部位付近または現在または未来において腫瘍の発生が疑われる器官にテロメラーゼ阻害剤の局所または限局投与が可能である。局所的に投与されたテロメラーゼ阻害剤は、投与部位に隣接して位置する腫瘍細胞に効果的な阻害濃度を与えることになる。例えば、注射または植込みなどの局所投与は、持続放出機構などのデポー製剤の形をとることが可能である。
【0092】
治療部位によっては植込みに外科的手順が必要となることがある。例えば、高いグレードの表在性膀胱癌の処置に成功した患者は、既知の腫瘍が残っていることはないであろうが、腫瘍再発の統計的リスクが高い。そのような患者においては、数週間または数ヵ月間または数年間にわたってテロメラーゼ阻害剤を持続放出する機構を経尿道挿入によって直接膀胱に設けることができる。放出されたテロメラーゼ阻害剤は、膀胱の粘膜または筋肉細胞層に効果的な阻害濃度を与え、腫瘍形成と最終的に腫瘍再発を阻害することになる。別の例として、前立腺特異抗原(PSA)濃度が高く故に疑わしい前立腺癌を有する患者において、1若しくは複数のテロメラーゼ阻害剤を送達するために前立腺内またはその付近に持続放出製剤の局所投与または植込みを行えば、症候性腫瘍の進行の確率を低減することが可能である。
【0093】
テロメラーゼ阻害剤の局所投与は、治療の標的である組織にテロメラーゼ阻害濃度を与えるものであるが、治療の標的ではない血漿または他の器官にテロメラーゼ阻害濃度を生じさせる必要はない。本発明のこの側面は、標的にされた器官へスラミンを局所投与すると、標的にされた組織にはテロメラーゼ阻害濃度(例えば5〜100μg/g)をもたらすが、血漿中のスラミンは非常に低濃度(例えば0.1μg/ml以下)であるという発見に基づく。
【0094】
テロメラーゼ阻害剤の局所投与は、全身的な投与経路に対して或る利点を有する。利点の1つは、テロメラーゼ阻害が連続的かつ中断されないと仮定すれば、テロメラーゼ阻害剤の局所投与によって頻繁に薬物を投与する必要が無くなることである。別の利点は、局所投与によって、治療の標的とする意図がない他の組織に対するテロメラーゼ阻害剤の毒性の可能性が減少することである。ヒト癌患者にテロメラーゼ阻害濃度を与える必要がないような低用量のテロメラーゼ阻害剤、例えばスラミン(例えば例7を参照)の全身投与後に毒性がないことが明らかになったとしても、腫瘍を有しない器官の曝露が減少すれば、過敏性反応または他の稀なイベントが生じる確率を更に減らすことになる。全身投与後に毒性を示すかもしれない他のテロメラーゼ阻害剤の適用を考えると、この利点は尚も大きな意義を持つであろう。
【0095】
PPS(またはスラミン)を利用した別の実施例では、本発明を用いて、膀胱局所投与を用いることによって膀胱間質性膀胱炎を治療することができる。例えば、注射または植込みは、持続放出機構などのデポー製剤の形であり得る。この方法は、膀胱間質を有する患者の処置の治療成果を高めるためのものであり、効果的な量のスラミン、スラミンの薬学的に許容される塩、ペントサン・ポリサルフェート(PPS)、PPSの薬学的に許容される塩のうちの1つまたはそれ以上を患者に局所的に投与することによって実行される。
【0096】
細胞成長を阻害または緩和する方法
ある側面では、本発明は、少なくとも1つの腫瘍細胞減少剤及び少なくとも1つのテロメラーゼ阻害剤に細胞を接触させることによって、細胞成長、例えば過形成性または肥大性の細胞成長などの異常成長を阻害または緩和する方法を特徴としている。一般的に、この方法は、細胞の増殖を緩和または阻害するか或いは細胞の死滅を誘発するのに効果的な少なくとも1つのテロメラーゼ阻害剤に接触させる過程を含む。
【0097】
この方法は、培養物中で、例えばin vitroまたはex vivoで細胞に実施することができ、或いは、被験対象中で、例えば治療プロトコールの一部としてin vivoで細胞に実施することができる。治療レジメンは、ヒトまたは他の動物被験対象において実行可能である。本発明の併用療法の増強された治療的有効性は、従来の抗癌剤の高度毒性レジメンに代わる有望な代替案を示す。
【0098】
テロメラーゼ阻害薬は単剤でも利用可能であるが、単剤で各薬剤に期待される治療的効果より大きな治療的効果を得るために細胞毒性剤と併用するのが好ましい。更にもっと、これらの薬剤を他の抗癌剤、例えば微小管阻害剤、ポイソメラーゼI型阻害剤、トポイソメラーゼII型阻害剤、代謝拮抗物質、有糸分裂阻害剤、アルキル化剤、插入剤、シグナル伝達経路を妨げることができる薬剤(例えば、タンパク質キナーゼC阻害剤、例えば抗ホルモン、例えば成長因子受容体に対する抗体)、アポトーシス及び/またはネクローシスを促進する薬剤、生物反応モディファイヤ(例えばインターフェロン、例えばインターロイキン、例えば腫瘍ネクローシス因子)、手術または放射線と併用することもできる。
【0099】
上述の戦略を用いて、細胞毒性剤の増強されたかつ好適には相乗作用は、テロメラーゼ阻害薬と併用されるとき、これらの薬剤のうちの1つまたはそれ以上をより低量で投与することを可能にする抗癌剤(例えば、併用よりも単剤での試験または使用でさえ治療量以下の量の薬剤さえも)の効力を向上させ、従って、ヒト癌患者などの被験対象における副作用(例えば、当該技術分野において認められている、変更されていない量の化学治療剤の投与に関連する副作用。例えば、脱毛、好中球減少、腸上皮細胞腐肉化など)の誘発を低減する。
【0100】
癌の治療方法
本発明の方法は、種々の器官系の悪性腫瘍、例えば肺、乳房、リンパ器官、胃腸(例えば、大腸、直腸)、尿生殖器管(例えば、前立腺、膀胱、精巣)、咽頭などに発症する悪性腫瘍と、大腸癌、直腸癌、腎細胞癌、前立腺癌及び/または精巣癌、小腸の肺癌の非小細胞癌、食道の癌などの悪性腫瘍を含む腺癌とを治療する際に用いることができる。
【0101】
治療可能な固形腫瘍には、例えば、繊維肉腫、筋肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ血管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、胃癌、食堂癌、大腸 癌、直腸 癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、子宮癌、頭部及び頚部の癌、皮膚癌、脳癌、扁平上皮細胞癌、脂腺癌、乳頭状癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎児性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頚癌、精巣癌、肺癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽細胞腫、頭蓋咽頭管腫瘍、脳室上皮腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起神経膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、白血病、リンパ腫、またはカポジ肉腫などがある。
【0102】
本発明の方法を用いて、骨髄球性、リンパ球系または赤血球系の系統またはその前駆細胞から例えば生じるような造血起源の細胞の成長を阻害または緩和することもできる。例えば、本発明は、限定されるものではないが、急性前骨髄性白血病(APML)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)(Vaickus, L. (1991) Crit. Rev. Oncol./Hemotol. 11: 267-97でレビューされている)を含む種々の骨髄性疾患の治療を視野に入れている。この方法で処置できるようなリンパ球性悪性腫瘍には、限定されるものではないが、急性リンパ球性白血病(ALL;B系統ALL及びT系統ALLを含む)、慢性リンパ性白血病(CLL)、前リンパ球性白血病(PLL)、有毛状細胞性白血病(HLL)及びヴァルデンストレームマクログロブリン血症(WM)がある。
【0103】
本発明の治療方法が視野に入れている悪性リンパ腫の形態には更に、限定されるものではないが、非ホジキンリンパ腫及びその変異体、例えば、成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、顆粒性大リンパ球性白血病(LGF)などの末梢T細胞リンパ腫がある。
【0104】
本発明の方法で処置できるような他の悪性腫瘍には、赤白血病、リンパ腫、ホジキン病、及び、例えば容易に分類できずかつある種の胎児性癌または奇形腫など複数の細胞型を示し得るような、起源不明の悪性腫瘍がある。
【0105】
例えば、被験対象は、非小細胞肺癌の患者である場合があり、パクリタキセル、カルボプラチン、長期スラミンの併用で処置されるが、スラミン治療は、薬物関連毒性のためまたは患者が反応しなくなったためにパクリタキセル/カルボプラチン併用の中断が必要になってもその後も続けられる。或いは、非小細胞肺癌患者をゲムシタビン、シスプラチン、長期スラミンの併用により処置することもできる。
【0106】
別の例では、被験対象は、リン酸エストラムスチン、タキソテール、長期スラミンの組合せ、または、ドキソルビシン、ケトコナゾール、長期スラミンの組合せによる治療が行われるようなホルモン不応性前立腺癌の患者である場合がある。
【0107】
更に別の例では、被験対象は、シクロホスファミド、ドキソルビシン、5−フルオロウラシル、長期スラミンの組合せ、または、ドキソルビシン、タキソテール、長期スラミンの組合せによる治療が行われるような転移性乳癌の患者である場合がある。関連する例では、被験対象は、HER2/neu腫瘍遺伝子を過剰発言する進行性乳癌の患者であって、ハーセプチン及び長期スラミンと、場合によってはパクリタキセルまたはシスプラチンとにより処置される。
【0108】
更に別の例では、被験対象は、イリノテカンと長期スラミンを併用して治療が行われている進行性または転移性結腸直腸癌の患者である場合がある。関連する例では、被験対象は、5−フルオロウラシル、ロイコボリン、長期スラミンの併用で処置している進行性大腸癌の患者である。
【0109】
投与方法
本発明の好適実施例においては、テロメラーゼ阻害薬を全身的に投与する。例えば、選択された薬剤を非経口的に(例えば、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮内、くも膜下腔内に)、経口的に、経鼻的、吸入により肺内に、経直腸的に、及び/または経皮的に投与することができる。
【0110】
別の実施例では、テロメラーゼ阻害薬を局所的または限局的に投与する。例えば、選択された薬剤を膀胱内に(即ち膀胱に)、前立腺内に(intraprostatically)、腫瘍内に、または表面投与することができる。
【0111】
別の実施例では、本発明の方法は同一または異なる薬剤の反復投与を更に含むが、それに関する詳細については後述する。
【0112】
投与量レジメン
当該技術分野における通常の知識を有する医師または獣医師は要求された効果的な量の薬剤を容易に決定しかつ(例えば医薬品成分の形で)処方することができる。例えば、医師または獣医師は通常、所望の治療的効果が出始めるのに必要なレベルより低いレベルで本発明の薬剤の用量を開始し、所望の効果が得られるまで徐々に投与量を増加させることができる。
【0113】
一般的に、本発明の薬剤の適切な量は、治療的効果を奏する、即ち被験対象の病気、例えば癌などを治療するのに効果的な最低量であるような薬剤の量である。そのような効果的な量は、概ね上記した因子に依存することになる。概して、本発明の薬剤の患者に対する静脈内及び皮下用量は、体重1kg当たり約0.0001乃至約100mg、好適には体重1kg当たり約0.01乃至約10mg、更に好適には体重1kg当たり約0.10乃至約4mgの範囲にあることになる。所望であれば、活性を有する薬剤の効果的な一日量は、1日を通して適切な間隔で別々に投与される2、3、4、5、6、またはそれ以上の少量として、状況に応じては単位用量の形で、投与することができる。
【0114】
好適実施例においては、テロメラーゼ阻害剤はスラミンであり、スラミンは、テロメラーゼ活性を阻害するのに十分であるが、(i)細胞増殖の有意な阻害、(ii)ヒト及び/または動物腫瘍細胞における有意な細胞死、(iii)被験対象、例えばヒト被験対象における測定可能な抗腫瘍効果、及び/または(iv)細胞サイクル停止のうちの1つまたはそれ以上を生じさせるには不十分な濃度にある。培養細胞に対する効果の判定は、例14に記載の系により行うことができる。
【0115】
好適実施例においては、テロメラーゼ阻害剤はスラミンであり、存在するスラミンの血漿濃度が(i)有意な細胞サイクル停止、(ii)有意な細胞死、または(iii)細胞成長の有意な阻害のうちの1つまたはそれ以上を生じさせないようなレベルで投与される。例えば、培養細胞に同一濃度のスラミンが与えられるのであれば、血漿中の濃度は、スラミンによる治療に続いて、サイクリング細胞が細胞サイクルを通して進行を続けるか、細胞が生細胞のままであるか、或いは、細胞が増殖可能なままであるかのうちの1つまたはそれ以上に、少なくとも50%、より好適には少なくとも80%、最も好適には少なくとも99%の処置された培養細胞が関与し続けるようなレベルである。
【0116】
スラミンの投与は、血漿濃度範囲が約0.001乃至100μg/ml、好適には約0.1乃至70μg/ml、更に好適には約0.5乃至30μg/mlであるような量で行うのが好ましい。スラミンの薬物動態学は、5.5時間、4.1日、及び78日の半減期を有する三相性血漿濃度減退によって特徴付けられる。総ボディクリアランスは、0.0095l/hr/mである(非特許文献29)。当業者であれば、薬物動態学的原理に基づき、168時間で血漿濃度を約90μg/ml(63μM)から約14μg/ml(10μM)まで減退させるには約240mg/mの初期量を平均的な患者に投与すべきことが計算できる。168時間または1週間の持続時間は、この時間間隔が治療を行う医師への繰り返し訪問に用いられることが多いので、一例として選択したものである。同様の計算を行い、他の所望の治療持続時間よりも好ましいスラミン血漿濃度を送達するべく初期スラミン量を識別することができる。後の治療サイクルのために血漿濃度を調整するための維持量も同様に計算できる。
【0117】
好適実施例においては、血漿中の総スラミン曝露は、好適には112日間で7,840μM-日以下、1127,100μM-日以下、84日間で5,880μM-日以下、84日間で5,300μM-日以下、20日間で2,000μM-日以下、好適には96時間で800μM-日以下、好適には96時間で600μM-日以下、好適には96時間で500μM-日以下、好適には96時間で400μM-日以下、好適には96時間で300μM-日以下、好適には96時間で252μM-日以下、好適には96時間で200μM-日以下、好適には96時間で150μM-日以下、好適には96時間で100μM-日以下、最も好適には96時間で52μM-日以下である。μM-日で表されるスラミンへの曝露の合計は、μM-日で表される薬物血漿濃度(例えば24時間の平均マイクロモル濃度)と日で表される治療持続時間の積である。例えば、13μMのスラミンで被験対象を4日間処置すると、薬物への曝露の合計は96時間で52μM-日になる。
【0118】
好適には、血漿濃度が100μg/ml以下、好適には90μg/ml以下、好適には80μg/ml以下、好適には60μg/ml以下、好適には40μg/ml以下、より好適には15μg/ml以下、最も好適には10μg/ml以下になるような量のスラミンを投与する。
【0119】
好適実施例においては、テロメラーゼ阻害剤はスラミンであり、スラミンを投与する期間またはテロメラーゼ活性を阻害するのに十分な血漿濃度にスラミンを維持する期間は1ヵ月以上、または好適には1年以上、または尚も好適には無期限である。
【0120】
好適実施例においては、テロメラーゼ阻害剤はスラミンであり、スラミンを投与する期間またはテロメラーゼ活性を阻害するのに十分な血漿濃度にスラミンを維持する期間は60日以上、好適には100日以上、好適には150日以上、好適には1年以上、より好適には2年以上、最も好適には細胞減少治療を施す持続時間を超えて不定の期間である。
【0121】
好適実施例においては、テロメラーゼ阻害剤はスラミンであり、スラミンは標的器官に局所的に投与され、スラミン治療を目的とする組織中のスラミン濃度がテロメラーゼ活性を阻害するのに十分である期間は1ヵ月以上、または好適には1年以上、またはより好適には不定である。例えば、スラミンを癌予防薬として用いるとき、患者の余命を延ばすのに治療を何年も続ける必要がある。
【0122】
好適実施例においては、テロメラーゼ阻害剤はスラミンであり、スラミンは標的器官に局所的に投与され、スラミン治療を目的とする組織中のスラミン濃度がテロメラーゼ活性を阻害するのに十分である期間は60日以上、好適には100日以上、好適には150日以上、好適には1年以上、より好適には2年以上、最も好適には細胞減少治療を施す持続時間を超えて不定の期間である。
【0123】
好適実施例においては、テロメラーゼ阻害剤はスラミンであり、スラミンを投与する期間またはテロメラーゼ活性を阻害するか或いは細胞減少治療の効力を高めるのに十分な血漿濃度にスラミンを維持する期間は、細胞減少治療を施す初日より遡って30日以上、好適には60日以上、好適には100日以上、好適には150日以上、好適には1年以上、最も好適には2年以上前から開始する。
【0124】
本明細書に記載の方法は、スラミンを用いて細胞減少治療の抗腫瘍効果を高めるが、スラミン量は、細胞減少治療により処置する哺乳動物において100μg/ml以下の血漿濃度、好適には80μg/ml以下、好適には60μg/ml以下、より好適には40μg/ml以下、最も好適には15μg/ml以下の血漿濃度を送達するように選択する。スラミン量の投与は、少なくとも1つの抗癌剤または他の細胞減少治療の投与前、投与と同時、または投与後に行う。本明細書に提示している動物試験は、6週間にわたる毎週2回の10mg/kgの静脈内スラミン大量瞬時投与でのマウスの治療がそれに引き続いて投与される抗癌剤(例えばパクリタキセル)の抗腫瘍効果を高めるが、更に体重を減らすことにはならないことを示している。この量は、投薬から72時間後の血漿スラミン濃度が約10μM(〜14μg/ml)になるように計算される。当該分野の方法は、高用量スラミンを単剤で用いるか或いは細胞毒性剤と併用するが、被験対象がヒトである場合、測定可能な抗腫瘍効果を生じさせるために血漿スラミン濃度を150〜300pg/mlに維持することが必要である(非特許文献9、特許文献3及び特許文献6)。スラミン血漿濃度を150〜300μg/mlに維持することを目標とする典型的なスラミン投与計画は、第1週目に2100mg/mの初期投与と、6ヵ月間またはそれ以上の間28日毎に反復される継続投与とからなり、継続投与の調整はベイズの薬物動態学的な方法を用いて行う(Dawson et al., Clin Cancer Res 4: 37-44, 1998、非特許文献10)。これらの用量及び慢性治療では、スラミンはヒト患者に次の毒性、即ち副腎不全、凝固障害、末梢神経障害、及び近位の筋肉衰弱を生じさせる(Dorr and Von Hoff, Cancer Chemotherapy Handbook, 1994, pp 859-866)。これらの毒性の発生率及び重症度は、蓄積された量に明確に関連し、本明細書に記載されている方法において最小化される。
【0125】
好適実施例においては、テロメラーゼ阻害剤はPPSである。PPSは、腫瘍細胞においてテロメラーゼ活性を阻害しテロメアの短縮を誘発するのに十分であるが、(i)有意な抗凝血活性、(ii)ヒト及び/または動物腫瘍細胞における有意な細胞死、(iii)被験対象、例えばヒト被験対象における測定可能な抗腫瘍効果、及び/または(iv)細胞サイクル停止のうちの1つまたはそれ以上を生じさせるのに十分でないような濃度にあるのが好ましい。
【0126】
本発明の薬剤は単剤で或いは他剤と併用して投与することができるが、医薬品成分として薬剤を投与することが好ましい。
【0127】
好適実施例においては、テロメラーゼ阻害薬はスラミンである。
【0128】
成分及び製剤
別の側面では、本発明は、少なくとも1つのテロメラーゼ阻害薬と、薬学的に許容される担体とを含む医薬品成分を特徴としている。好適には、患者の腫瘍中のテロメラーゼ活性を阻害するか或いは過剰増殖細胞の死滅を増強するのに効果的な量の薬剤が存在する。
【0129】
好適実施例においては、医薬品成分または成分は、本明細書で述べているように使用説明書と共にパッケージングされる。
【0130】
本発明はまた、徐放性製剤、例えばテロメラーゼ阻害薬の持続放出製剤と、薬学的に許容される担体とを含む。
【0131】
別の実施例では、医薬品成分は静脈内注射に適している。医薬品成分はまた、局所、限局、または全身投与に適していることもある。
【0132】
別の実施例では、医薬品成分は1若しくは複数の薬学的に許容される担体を含み得る。更に別の実施形態では、本発明は、架橋ゼラチンと例えばスラミンまたはPPSなどのテロメラーゼ阻害薬などの治療薬とを含むナノ粒子に関連する。更なる実施形態では、本発明は、ナノ粒子と薬学的に許容される担体とを含む成分に関連する。担体は、例えば、全身投与、限局投与、または局所投与に適したものであり得る。ある実施形態では、ナノ粒子の直径は約500乃至約1μm、または約600nm乃至約800nmである。
【0133】
本発明はまた、スラミンまたはPPSなどのテロメラーゼ阻害薬などの治療薬を含む微小粒子に関連する。ある実施形態では、微小粒子の直径は約500nm乃至約100μm、約500nm乃至約50μm、約500nm乃至約25μm、約500nm乃至約20μm、約500nm乃至約15μm、約500nm乃至約10μm、約750nm乃至約10μm、約1μm乃至約10μm、約750nm乃至約7.5μm、約1μm乃至約7.5μm、約2μm乃至約7.5μm、3μm乃至約7μm、または約5μmである。別の実施例では、本発明は、微小粒子と薬学的に許容される担体とを含む成分に関連する。薬学的に許容される担体は、例えば、患者への局所、限局または全身投与に適したものであり得る。本発明はまた、患者を処置する方法であって、本発明の微小粒子及び薬学的に許容される担体を患者に投与する過程を含む方法に関連する。
【0134】
別の実施例では、本発明は、患者への局所、限局または全身投与に適している、パクリタキセルを含む微小粒子を特徴としており、前記微小粒子の直径は約5μmである。別の更なる実施形態では、本発明は、患者への局所、限局または全身投与に適している、スラミンまたはPPSを含む微小粒子を特徴としており、前記微小粒子の直径は約5μmである。
【0135】
本発明はまた、癌の治療のためのキット即ち製品に関連する。キットは、薬学的に許容される担体中のテロメラーゼ阻害薬と、容器と、例えば癌または腫瘍などに関連する異常成長などの細胞の成長を阻害または緩和するためのテロメラーゼ阻害薬のための使用説明書を含む。例えば、本発明のキットは、前投与、後投与、または同時投与のためのテロメラーゼ阻害薬を含むこともある。キットはまた、投与量に調剤されたテロメラーゼ阻害薬及び局所、限局または全身投与に適した担体を提供することもある。更になお、キットは、例えば癌の感受性または抵抗性を決定するために、癌を予知、診断及び/またはステージングすることもある。
【0136】
本発明の化合物を含む医薬品成分には、着色剤、剥離剤、被覆剤、甘味剤、着香剤、芳香剤、保存剤はもとより、湿潤剤、乳化剤及び潤滑剤、例えばラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウムも含めることができる。
【0137】
本発明の製剤は、経口、経鼻、表面、吸入、経皮、頬側、舌下、直腸、経膣及び/または非経口投与に適した製剤を含む。これらの製剤は、各投与経路に適した形態で投与される。例えば、錠剤またはカプセル形態で注射、吸入、目薬、軟膏、坐薬などにより投与されるが、投与には、注射、注入または吸入による投与、ローションまたは軟膏による表面投与、坐薬による直腸投与がある。製剤は便利なように単位投薬形態で存在することもあり、薬学の分野で公知の方法によって調製可能である。担体物質と組み合わせて1つの投薬形態にすることができるような有効成分の量は、概ね治療的効果を生じさせる薬剤の有効成分量になる。
【0138】
一般的に、100%のうち、この量は約1%から約99%まで、好適には約5%から約70%まで、最も好ましいのは約10%から約30%までの有効成分の範囲にある。
【0139】
経口投与に適した本発明の製剤は、カプセル、カシェ剤、ピル、錠剤、ロゼンジ(香りをつけた主成分、通常はショ糖及びアカシアまたはトラガカントを用いる)、粉末、顆粒の形であってよく、または水性または非水性液体に溶かした溶液または懸濁剤として、または水中油または油中水液体乳剤として、またはエリキシルまたはシロップとして、または香錠として(ゼラチン及びグリセリン、またはショ糖及びアカシアなどの不活性ベースを用いて)及び/または洗口剤などとして処方することができる。
【0140】
経皮パッチは、本発明の化合物を体に制御送達する利点を更に有する。そのような投薬形態は、適切な培地に化合物を溶解または分散することによって作ることができる。
【0141】
吸収エンハンサは、皮膚全域で化合物の流動を増加させるためにも用いられる。そのような流動速度は、速度制御膜を与えるか或いは高分子マトリクスまたはゲル状の活性化合物を分散するかのいずれかによって制御可能である。
【0142】
眼病用製剤、眼軟膏、粉末、溶液なども本発明の範囲内にあると考えられる。
【0143】
非経口投与に適した本発明の医薬品成分は、1若しくは複数の本発明の化合物と、1若しくは複数の薬学的に許容される無菌等張性の水性または非水性の溶液、分散液、懸濁液、または乳濁液、または無菌注射用溶液に再構成できるような無菌粉末、または使用直前に所期のレシピエントの血液または懸濁剤または増粘剤と等張の製剤を与えるような緩衝剤、静菌剤、溶質を含み得る分散剤との組合せを含む。
【0144】
場合によっては、薬物の効果を延ばすために、皮下または筋内注射からの薬物の吸収を遅くするのが望ましい。これは、水溶性があまりない結晶または非結晶物質の液体懸濁剤を用いて達成することができる。このとき薬物の吸収率は溶解速度に依存し、溶解速度は同様に結晶サイズ及び結晶形状に依存することがある。或いは、非経口投与された薬物形態の遅延吸収は、油性媒体に薬物を溶解または懸濁することにより達成される。
【0145】
例えばポリ乳酸−ポリグリコライド(polyglycolide)などの生分解性高分子において本発明の化合物のマイクロカプセル化マトリクスを形成することにより、注射用デポー製剤形態を作ることができる。薬物対高分子の比及び用いられる特定の高分子の性質に依って、薬物放出の速度は制御可能である。他の生分解性高分子の例としては、例えば、ポリ(オルトエステル)及びポリ(無水物)がある。デポー注射用製剤は、リポソームまたはマイクロエマルションに薬物を閉じ込めることにより調製することもでき、これは体組織に適合したものである。
【0146】
どの投与経路を選択するにしても、適切な水化物の形で使用できる本発明の化合物及び/または本発明の医薬品成分は、当業者に既知の従来の方法によって、薬学的に許容される投薬形態に調剤される。
【0147】
患者に有毒でないように特定の患者、成分、及び投与モードに対して所望の治療的反応を達成するのに効果的な有効成分量を得るために、本発明の医薬品成分における有効成分の実際の用量レベルを変えることができる。
【0148】
選択された用量レベルは、種々の因子、とりわけ、使用する本発明の特定の化合物、またはそのエステル、塩、アミドの活性、投与経路、投与時間、使用する特定の化合物の排出速度、治療期間、使用する特定の化合物と併用される他の薬物、化合物及び/または物質、治療する患者の年齢、性別、体重、状態、全般的健康及び既往歴、及び医療分野で公知の同様の因子を含む因子に依存することになる。
【0149】
本発明の例証
ここまで本発明の概要を述べてきたが、以下の例を参照すれば理解が更に容易になるであろう。但し、これらは本発明の一側面及び実施形態を説明するためだけのものであり、本発明を限定する意図はない。
【0150】
以下の例を通して、別段の記載がない限り、本発明の実施は、化学、分子生物学、微生物学、組換えDNA技術、細胞培養、家畜学の従来の技術を用いることになるが、これらは当該分野における通常の知識の範囲内のものであり、文献に全て記載されている。例えば、Sambrook, Fritsch and Maniatis, Molecular Cloning: Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989); DNA Cloning, Vols. 1 and 2, (D. N. Glover, Ed. 1985); Harlow and Lane, Antibodies: a Laboratory Manual, (1988) Cold Spring Harbor; Oligonucleotide Synthesis (M. J. Gait, Ed. 1984); Nucleic Acid Hybridization (B. D. Hames and S. J. Higgins, Eds. 1984); the series Methods In Enzymology (Academic Press, Inc.), 特にVol. 154 and Vol. 155 (Wu and Grossman, Eds; and Current Protocols in Molecular Biology, eds. Ausubel et al., JohnWiley & Sons (1992) を参照されたい。
【0151】
物質及び方法:
一般的な方法論。必要な物質(例えば、薬物、化学薬品及び試薬、ヒト乳房MCF7細胞、咽頭FaDu細胞、前立腺PC3細胞)、免疫不全マウス中のFaDu腫瘍異種移植片、3次元腫瘍組織培養(histoculture)は、米国特許出願第09/587,662号及び非特許文献17に記載されているように取得、調製及び使用される。培養細胞中の薬物効果の測定は、米国特許出願第09/587,662号に記載されている通りである。
【0152】
細胞可溶化物及び無処置の細胞におけるテロメラーゼ活性の阻害。改良TRAP(Telomeric Repeat Amplification Protocol)アッセイ(非特許文献16)を用いて、細胞可溶化物中でテロメラーゼ活性を検出した。無処置の細胞におけるテロメラーゼ活性は、以下のように細胞内TRAPを用いて測定した。細胞(1×10)をPBSで2回洗浄し、遠心した。細胞ペレットは、5u/mlのストレプトリジンO、2μMのTSプライマー、50μMのdNTPを含む100μlの無血清のRPMI1640中で再懸濁し、室温で5分間インキュベートした。TSプライマーへの細胞膜透過性を高めるために、酵素ストレプトリジンOを用いた。細胞に入るとき、TSプライマーをin situで細胞内テロメラーゼによって伸長した。そして伸長したTSプライマーを細胞から単離し、PCR増幅のための鋳型として用いられた。その後、200μlの10%FBSを含むRPMI1640培地を細胞に添加して浸透プロセスを停止した。テロメラーゼによる細胞内TSプライマーの伸展を可能にするべく、混合物を30℃で5分間インキュベートした。その後、細胞を溶解し、細胞溶解産物(既に伸展したTSプライマーが含まれている)をTRAPにより直接解析した。
【0153】
培養細胞中のテロメア長さの測定。テロメアの長さを測定するために2つの方法を用いた。第1の方法は、末端制限断片(TRF)の平均長さを測定する、溶液ハイブリダイゼーションベースのテロメア量及び長さアッセイ(TALA)(非特許文献15)である。第2の方法は、テロメアシグナルを検出しかつ染色体の末端で個々のテロメア構造の近似長さを推定するための蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)である。FISH法については、米国特許出願第09/587,662号及び非特許文献15に記載されている
老化細胞の検出。老化細胞は、記載(非特許文献7)のとおり、4−ガラクトシダーゼ染色によって同定した。
【0154】
例1 スラミン及びAZTは細胞抽出物及び培養細胞において効果的なテロメラーゼ阻害剤である
テロメラーゼの阻害。緩やかな逆転写酵素阻害活性を有するがテロメラーゼを阻害することは知られていない薬剤であるスラミンに関して、ヒト咽頭FaDu、ヒト前立腺PC3、ヒト乳房MCF7を含む複数のヒト癌細胞株において研究を行った。スラミンの活性をAZTの活性と比較した。
【0155】
治療プロトコール。培養フラスコ中で細胞を成長面に付着させるようにした後でスラミンまたはAZTでの処置を開始した。実験の当日、培養培地を除去して阻害剤含有培地と置換した。用いた薬物濃度は、スラミンで0、0.1、1、5、10、50μM、AZTで0、0.1、1、10、100μMである。細胞可溶化物及び無処置細胞のテロメラーゼ活性と、濃度が0〜50μMであるスラミンまたはAZTを含む培地で7〜15週間成長させた後のテロメアの長さとを測定した。
【0156】
スラミン及びAZTのテロメラーゼ活性への効果。ヒト癌細胞においてテロメラーゼ活性は濃度依存性の方法でスラミン及びAZTによって阻害された。50%阻害になる濃度は、表1に示す通りである。90%阻害に必要な濃度は、50μMであった。
【0157】
【表1】

スラミン及びAZTのテロメアの長さへの効果。スラミンまたはAZTで長期治療(7〜15週間)を行うと、FaDu細胞で34〜55%、PC3細胞で約30%のテロメア短縮が生じた。
【0158】
結論。スラミンは、低マイクロモル濃度でテロメラーゼを効果的に阻害し、既知のテロメラーゼ阻害剤AZTと同様に振る舞う。
【0159】
例2 スラミンは腫瘍を有する動物において効果的なテロメラーゼ阻害剤である
スラミンはin vivoでテロメラーゼを阻害し、テロメアを短縮する。免疫抑制マウスに移植された腫瘍細胞においてテロメアの長さを測定することによって、テロメラーゼ活性の阻害剤としてのスラミンのin vivo有効性を評価した。
【0160】
治療プロトコール。オスのBALB/c nu/nuマウスにFaDu細胞(体積100μl当たり0.5〜1×10細胞)を皮下に移植した。これらのマウスには、尾静脈への静脈内注射により10mg/kgスラミンを反復投与した。初回投与は腫瘍植込みの直後に行い、その後反復投与を1週間に2回行った。スラミン治療の2〜6週間後に腫瘍を回収した。凍結組織切片で蛍光in situハイブリダイゼーションを用いて個々の細胞におけるテロメアの長さを分析した。各切片に対して400倍の拡大率で約10の顕微鏡視野を無作為に選択し、弱められた或いは消失したテロメアシグナルを有する腫瘍細胞のパーセンテージを計数した。結果をスラミンの代わりに生理食塩水注射を受けた対照動物と比較した。
【0161】
スラミンのテロメアの長さin vivoへの効果。スラミンまたは生理食塩水で処置したマウスは、100%の等しい腫瘍定着速度と、識別不能な体重増加率を示した。FISH結果は、経時的な腫瘍細胞のテロメアの段階的短縮を示した。スラミン処置した動物では、低下または消失したテロメアシグナルを有する細胞の画分は、最初の2週間の治療の間は対照レベルが約10%のままであったが、3週目で約40%の細胞、4週目で75%、5週目で80%以上、6週目で95%に増加した。塩水処置した対照動物の腫瘍細胞には変化が見られなかった。
【0162】
結論。スラミンは、in vivoで成長した腫瘍においてテロメアの長さを効果的に低減する。
【0163】
例3 PPSは効果的なテロメラーゼ阻害剤である
PPSはテロメラーゼを阻害する。PPSに曝露後のFaDu細胞におけるテロメラーゼの阻害活性を調べた。
【0164】
治療プロトコール。培養フラスコ中で細胞を成長面に付着させるようにした後でPPSでの治療を開始した。実験の当日、培養培地を除去して阻害剤含有培地と置換した。PPSの薬物濃度は、0、0.1、1、10、100、1000μg/mlを用いた。改良定量TRAPアッセイによってテロメラーゼ活性を測定した。
【0165】
テロメラーゼ活性への効果。FaDu及びSKOV−3細胞においてテロメラーゼ活性は濃度依存性の方法でPPSによって阻害された。50%阻害になる濃度は、それぞれ0.56μg/ml、0.60μg/mlであった。80%阻害になる濃度は、両細胞とも10μg/ml以下であった。90%阻害濃度になる濃度は、両細胞とも100μg/ml以下であった。
【0166】
結論。PPSは、細胞におけるテロメラーゼ活性の効果的な阻害剤である。PPSが50%テロメラーゼの阻害活性を生じさせる濃度は、血液凝固阻止に必要な濃度(1μg/ml以上)より低い。
【0167】
例4 hTRアンチセンスはヒト・テロメラーゼを阻害する
hTRアンチセンスはテロメラーゼを阻害する。以下の過程からなるアンチセンス研究を行った。(a)ヒト・テロメラーゼ(hTR)のRNA部分へのセンス及びアンチセンスの構築、(b)hTRアンチセンス(またはhTRセンス対照)の細胞への安定的な形質移入、(c)テロメラーゼ活性を阻害しテロメア短縮を誘発するhTRアンチセンスの能力の決定。方法論は、例えば非特許文献44に記載されている。
【0168】
アンチセンス及びセンス作成物。テロメラーゼのRNA部分に対するセンス及びアンチセンス発現プラスミドを作成した。185塩基対センス及びアンチセンス配列は、以下に示すが、GenBank配列(受け入れ番号NR 001566)と一致することがわかった。これらの手順により、hTR断片を含むクローンが5つできた。配列分析は、1つのクローンがセンスで他の4つのクローンがアンチセンスであることを示していた。これらのhTRセンス及びhTRアンチセンス発現プラスミドをその後ヒト咽頭FaDu癌細胞に形質移入した。
【0169】
形質移入手順。アンチセンス作成物の形質移入は、IPTG誘発性哺乳動物発現系を用いた。結果として得られたクローンを用いて実験を行った。
【0170】
hTRアンチセンスの細胞成長への効果。表2は、アンチセンスを形質移入されていないか、IPTGを形質移入されていないがIPTGで処置されたか、センスを形質移入されかつIPTGで処置されたか、或いはアンチセンスを形質移入されたがIPTG誘発はないかのいずれかである細胞(即ち、対照、+IPTG、+センス+IPTG、及びアンチセンス)と比較して、アンチセンス+IPTG細胞(即ち、hTRアンチセンスによって形質移入されかつhTRの発現を誘発するべくIPTGで処置された細胞)に対してよりゆっくりな成長率を示す結果を要約したものである。
【0171】
hTRアンチセンスのパクリタキセルの細胞毒性効果への効果。hTRアンチセンスを安定的に形質移入された細胞の2つのクローンについて研究を行った。全細胞タンパク質を測定するSRB法を用いてパクリタキセルの細胞毒性効果を定量化した。hTRアンチセンスを形質移入された細胞は、IPTGで44日間(クローン#1)から57日間(クローン#2)処置し、その後パクリタキセルで96時間処置した。結果は、表2にまとめたように、hTRアンチセンスがテロメラーゼ活性を阻害し、パクリタキセル細胞毒性を両クローンにおいて約2倍高めることを示している。これは、他の対照細胞と比較してアンチセンス形質移入細胞中のパクリタキセルのIC50が低下していることからわかる。
【0172】
【表2】

185bpアンチセンスhTR配列:
5’:
1 cagctgacattttttgtttgctctagaatgaacggtggaaggcggcaggccgaggctttt
61 ccgcccgctgaaagtcagcgagaaaaacagcgcgcggggagcaaaagcacggcgcctacg
121 cccttctcagttagggttagacaaaaaatggccaccacccctcccaggcccaccctccgc
181 aaccc
3’
185bpセンスhTR配列:
5’:
1 gggttgcgga gggtgggcct gggaggggtg gtggccattt tttgtctaac cctaactgag
61 aagggcgtag gcgccgtgct tttgctcccc gcgcgctgtt tttctcgctg actttcagcg
121 ggcggaaaag cctcggcctg ccgccttcca ccgttcattc tagagcaaac aaaaaatgtc
181 agctg
3’
hTRアンチセンスのテロメア長さ及びテロメラーゼ活性への効果。テロメアの長さ(末端制限断片と呼ばれる)はTALA法を用いて測定した。テロメラーゼ活性は改良TRAP法を用いて測定した。結果は、表2にまとめたように、hTRアンチセンスがテロメアの長さ及びテロメラーゼ活性を低減したことを示している。
【0173】
結論。総合すれば、これらの結果は、hTRアンチセンスによるヒト癌細胞の治療が、テロメラーゼの阻害活性、テロメアの欠失、細胞成長の阻害、パクリタキセル細胞毒性の向上をもたらすことを示している。
【0174】
例5 テロメラーゼ阻害量のスラミンの投与は動物において腫瘍サイズを減少させる
一部の動物における低用量スラミン後の腫瘍サイズ減少。FaDu腫瘍を移植された免疫抑制マウスにおいて低用量スラミン投与の腫瘍サイズへの効果を決定した。
【0175】
治療プロトコール。免疫抑制マウスに5×10のFaDu細胞を大腿領域に皮下注入した。スラミン(10mg/kg)を腹腔内注射により1週間に2回、6週間にわたり投与した。スラミン投与は腫瘍細胞接種の日に開始した。注射のためのスラミン溶液を生理食塩水溶液に置き換えた以外は対照動物を等しく処置した。腫瘍サイズは1週間に2回観察した。
【0176】
腫瘍成長の低用量スラミン治療の効果。6匹の動物にスラミンを与えた。5匹の動物で腫瘍サイズが時間と共に増加した。最初に成長した残りの動物の腫瘍は、2週間後に約4mmの大きさに達したが、その後減退し、6週間で完全に消失した。
【0177】
結論。テロメラーゼ阻害剤であるスラミンで長期治療を行うと、一部の宿主において腫瘍を完全に消失させることができる。
【0178】
例6 低用量スラミンでの前治療は腫瘍を有する動物における化学療法の抗腫瘍活性を高める
この実施例は、テロメラーゼ阻害剤での延長前治療後の化学療法薬剤の抗腫瘍効果の向上に関して述べる。最小または検出不可能な腫瘍の状態と比べて腫瘍量が低くかつ未だ触診可能でないときにテロメラーゼ阻害治療を開始した。
【0179】
治療プロトコール。6〜8週齢のメス無胸腺ヌードマウスに5×10のFaDu生細胞を大腿領域に皮下注入した。スラミン(10mg/kg)を腹腔内注射により1週間に2回、6週間にわたり投与した。スラミン投与は、腫瘍が非常に小さいサイズである即ち疾患が最小であることを示すような腫瘍細胞接種の日に開始した。注射のためのスラミン溶液を生理食塩水溶液に置き換えた以外は対照動物を等しく処置した。6週間の前治療期間の後、スラミン治療を中断し、全ての動物に1週間に2回、3週間にわたり10mg/kgのパクリタキセルを与えた。3週間のパクリタキセル治療の間、腫瘍サイズは1週間に2回観察して記録した。
【0180】
低用量スラミン前治療の効果。表3に示すように、6週間の生理食塩水前治療を受けた対照動物は、3週間後に腫瘍サイズが増加していた。一方で、スラミン前治療を受けた動物は、腫瘍サイズが減退していた。
【0181】
【表3】

例7 スラミンのテロメラーゼ阻害濃度を低く保つと、腫瘍縮小を促進し、腫瘍成長を遅らせ、ヒト癌患者の生存を延ばす
病理学的に確認された、進行性、転移性の第IIIB/IV期非小細胞肺癌のヒト患者の処置を、パクリタキセル、カルボプラチン、及びスラミンで行った。処置は、約3週間に1回施された。スラミンの初回量は約240mg/mであり、それに続く量は出願人が開発した数式(PCT出願PCT/US02/30210)に基づき計算した。これらのスラミン量は、少なくとも21日間で血漿濃度が約2〜約90μMになった。例1で示したように、これらの濃度は、テロメラーゼを阻害するのに十分である。全部で54人の患者に処置を施した。最初の6人の患者にはスラミンを単回投与し、残りの患者には24時間離して2分割でスラミンを投与した。スラミンの使用に起因する毒性は観察されなかった。49人の患者が評価可能であった。全体の寛解率は40.8%であり(内訳は、腫瘍の完全消失に相当する完全寛解率が6%、少なくとも50%の腫瘍縮小に相当する部分寛解率が34.8%)、疾患が進行するまでの時間(TTP)は6ヵ月より長く、生存期間中央値(MST)は12ヵ月より長かった(非特許文献64、非特許文献65)。
【0182】
これらの臨床結果を類似の進行性、転移性の第IIIB/IV期非小細胞肺癌の患者におけるパクリタキセル/カルボプラチンに対する以前の臨床試験と比べると、スラミンを加えることによりパクリタキセル/カルボプラチンの抗腫瘍活性が著しく高められたことがわかる。例えば、最近行われた290人の患者への試験では、全体の寛解率が約17%(完全寛解を達成した患者は1%以下に過ぎない)、TTPは3.1ヵ月、MSTは8.1ヵ月である(Schiller et al., New Eng J Med, 346: 92-98,2002)。
【0183】
結論。例えば12〜30週間の長期の間、テロメラーゼ阻害性の血漿濃度でスラミンを維持することにより、パクリタキセル及びカルボプラチンの抗腫瘍活性を向上させ、寛解率を向上させ、腫瘍の進行を遅延させ、ヒト癌患者の生存を延長することができる。
【0184】
例8 スラミンはイヌにおいて長い血漿半減期を有する
イヌ中のスラミン薬物動態学。4匹のビーグル犬においてスラミンの血漿薬物動態学を研究した。
【0185】
治療プロトコール。体重11.4±0.4kgのビーグル犬を4匹用いた。動物は、両前脚の橈側皮静脈にカニューレ処置した。一方の静脈にスラミン(6.75mg/kg)を30分間以上静脈内に注入し、他方の静脈からは血液サンプルを採取した。スラミンは、スラミンのナトリウム水性溶液として投与した。5,30分目、1,2,4,6,9,12,24,48,72時間目、7,14,21日目に血液サンプルを採取し、ヘパリン化管に載置し、遠心によって血漿を作成した。スラミンの血漿濃度は、以前に述べたように高速液体クロマトグラフィーを用いて決定した(非特許文献30)。標準的な手段(非特許文献19)によって、薬物動態学的非コンパートメント解析を行った。
【0186】
結果。スラミンはイヌにおいて、2.1±0.2ml/hr/kgの総クリアランスと13.0±3.8日の終末半減期でゆっくり排出される。
【0187】
結論。スラミンは、イヌにおいて、13日の著しく長い排出半減期でゆっくり排出される。
【0188】
例9 PPSは化学療法の抗腫瘍活性を高める
この例は、第2のテロメラーゼ阻害剤即ちペントサン・ポリサルフェート(PPS)が培養腫瘍細胞及び患者腫瘍の初代培養における細胞毒性剤の抗腫瘍活性を高めることを教示する。PPSの化学増感効果は、10及び100μg/mlのテロメラーゼ阻害濃度で生じるが、これらの濃度は抗腫瘍活性を生成するPPS濃度より10倍以上及び100倍以上低い(非特許文献69、非特許文献70)。
【0189】
2つの腎細胞癌細胞(RCC45及びRCC54)を用いて研究を行った。化学療法剤として5−フルオロウラシルを用いた。5−フルオロウラシルで96時間、PPSが有る場合と無い場合で、細胞を処置した。ELISAを用いてDNA前駆体(ブロモデオキシウリジンまたはBrdU)の取り込みの阻害として薬物効果を測定した。結果は、PPSが10及び100g/mlで細胞毒性を有さず、PPSのIC50が単剤として1,400μg/ml以下であったことを示している。表4は、PPSを加えることにより5−フルオロウラシルのIC50値(即ち50%阻害を生じさせるのに必要な薬物濃度)が低下したことを示している。表4の結果は、テロメラーゼ阻害濃度(即ち30μM)で第2のテロメラーゼ阻害剤、スラミンを加えることにより5−フルオロウラシルのIC50を更に低下させることを更に示している。このことは、テロメラーゼ阻害剤の化学増感効果が相加的であることを示している。
【0190】
【表4】

例10 テロメラーゼ阻害剤AZTは非常に低い濃度での化学療法剤のin vivo抗腫瘍効果を高める
この例では、ヒトの頭及び頚癌FaDu異種移植片を有する免疫不全マウスにおけるテロメラーゼ阻害剤AZTによる化学治療剤(即ちパクリタキセル)の抗腫瘍効果の向上について述べる。
【0191】
ヒト咽頭FaDu異種移植片を有する免疫不全マウス(オスのBalb/c nu/nu マウス、6〜8週齢)において、AZTが有る場合と無い場合で、パクリタキセルの活性を評価した。左右の側腹部領域に0.1mlの生理食塩水中に10の腫瘍生細胞の皮下注射により異種移植片を形成し、薬物治療開始前に約14日間15mm以下のサイズになるまで成長させた。4つの治療群は、生理食塩水対照群、AZT群、パクリタキセル群、パクリタキセル+AZT群である。生理食塩水対照群には、200μl/日の生理食塩水を5日連続して注射した。パクリタキセル群には、体積200μlのクレモフォア(Cremophor)及びエタノール(即ちタキソール)に溶解したパクリタキセルを10mg/kg/日、5日連続して注射した。AZT群には、皮下に植え込まれたAlzetミニポンプによって200ng/時間の速度でAZTを7日間注入した。パクリタキセル+AZT群には、パクリタキセル群とAZT群の併用療法を施したが、パクリタキセル注射を開始する1日前にAZT注入を開始した。パクリタキセル治療開始後1,3,6,8,10日目に動物の体重及び腫瘍サイズを測定した。
【0192】
薬物治療の抗腫瘍効果を3通りの方法で測定した。第1は、腫瘍サイズの低減である。先ず、Jeltrateを用いて押出用腫瘍鋳型を作成し、成形する物質を手早くセットし、その後、逆鋳型(countermold)を作成及び秤量することによって、腫瘍サイズを決定した。第2に、アポトーシス効果を測定した。10日目に動物を安楽死させ、腫瘍を収集してホルマリン中に固定した。5ミクロン厚の病理組織切片を準備し、ヘマトキシリン及びエオシンで染色した。腫瘍切片の腫瘍細胞密度及びアポトーシス細胞の密度を形態学的に調べた。アポトーシス細胞は経時的に消失するので、非アポトーシス細胞の密度はアポトーシスの2次指標である。画像解析手順を用いて400倍の拡大率で4つの無作為に選択された顕微鏡視野で細胞の数を計数することにより細胞密度を決定した(非特許文献58)。第3に、薬物治療が生存時間を延長する能力を測定した。この研究では、100日間、または1.0cmを超える腫瘍の長さによって画定される活動休止状態に達するまで、動物をモニターした。血漿中のAZT濃度は、皮下にAlzet1002浸透圧ミニポンプを植え込まれた3匹のマウスを用いて平行実験により決定した。動物の血液を収集する4日前に薬物注入を行うことができた。この長い注入持続時間は、一定の定常状態血漿濃度に到達したことを保証した。血漿中のAZT濃度は、市販のELISAアッセイ(Neogen, Lexington, KY)を用いて決定した。
【0193】
結果は、表5に要約されるように、AZTがパクリタキセルのin vivo抗腫瘍効果を高めることを示した。先ず、対照群、パクリタキセル群、AZT群の動物では腫瘍サイズが最大4倍に増加したが、パクリタキセルとAZTを併用した治療は10日間の追跡治療期間中に腫瘍サイズを低下させた。パクリタキセルとAZTの併用治療を受けた動物の腫瘍サイズは10日目には他の全ての群より有意に小さくなった(p<0.001、分散分析で反復測定)。第2に、腫瘍形態の評価によって、パクリタキセルとAZTの併用治療を受けた動物の腫瘍が他の全ての用量群よりアポトーシス細胞密度が2〜4倍高く、非アポトーシス細胞密度が2.6〜4倍低いことが示された。第3に、生存分析(即ちカプランメイヤー分析)によれば、活動休止状態に達するまでの時間の中央値は、対照群及びAZT群では21〜26日、パクリタキセル群では42日、併用群では49日から増加したことが示された。パクリタキセル群では無腫瘍で残ったものはなかったが、併用群では無腫瘍で残ったものが2つあった(12分の2,16%)。パクリタキセルとAZTの併用治療を受けた群の生存は、統計的には他の全ての群より長い(対数順位検定により、p<0.01)。
【0194】
単剤(パクリタキセルまたはAZTのいずれか)での処置は、非毒性関連死がなく治療前体重と比べて体重減少が最小(<3%)であるような最小毒性を生じさせた。パクリタキセルにAZTを加えても体重減少を増強しなかったが、これはAZTがパクリタキセルの宿主毒性を高めなかったことを示している。ELISAアッセイによって決定された血漿中のAZT濃度は、9.6nMであった。この濃度は、テロメラーゼの阻害に必要な濃度(FaDu細胞中で2μM、表1参照)または細胞毒性の誘発に必要な濃度(FaDu細胞中で20μM;非特許文献44)よりも十分低い。故に、この研究の結果は驚くべきものである。
【0195】
【表5】

結論。この結果は、血漿中にナノモルAZT濃度を生じさせるような非常に低いAZT量が化学療法の抗腫瘍効果を高めることを示す。
【0196】
例11 テロメラーゼ阻害量のAZTの投与は動物における腫瘍サイズを減少させる
動物におけるAZT後の腫瘍サイズ減少。FaDu腫瘍を移植された免疫抑制マウスにおけるAZT単剤の反復投与の腫瘍サイズへの効果を決定した。
【0197】
治療プロトコール。免疫抑制マウスの両側腹部に片側腹部につき10のFaDu細胞を皮下注入した。Alzet(登録商標)浸透圧ミニポンプを用いて5μg/マウス/日の速度で連続皮下注入によってAZTを投与した。このAZT投与により、約10ng/mlの定常状態血漿濃度が得られた。AZT投与は接種の14日後に開始し、14日間継続した。注射のためのAZT溶液を生理食塩水溶液に置き換えた以外は対照動物を等しく処置した。腫瘍サイズは1週間に2回観察した。
【0198】
腫瘍成長のAZT治療の効果。腫瘍細胞を移植された16匹の動物全てがAZT治療前に測定可能な腫瘍を示した。2匹の動物において、腫瘍はAZT投与時に成長を停止し、その後腫瘍サイズが減退した。検屍により確認したところ、腫瘍は38日目には触診可能ではなくなり、59日目には完全に消失した。これら2匹の動物は、平均初期腫瘍サイズが35mm(18〜80mmの範囲)であり、これは残りの動物の腫瘍サイズと類似していた。
【0199】
結論。血漿中でナノモル濃度を生じさせるような、テロメラーゼ阻害剤である、低用量のAZT単剤での長期治療によって、腫瘍を完全に消失させることができる。
【0200】
例12 テロメラーゼ阻害と腫瘍サイズ減少治療との併用により治療成果の向上が期待できる
この例では、細胞減少治療をテロメラーゼ阻害剤での長期治療と組み合わせたときに期待される細胞減少治療の抗腫瘍効果の向上について述べる。テロメラーゼ阻害剤を用いた治療は、細胞減少治療より前に、同時に、または完了後に開始することができる。
【0201】
細胞減少治療を併用してテロメラーゼ阻害剤を用いた長期治療の効果。テロメラーゼ阻害剤が細胞増殖を阻害するか或いはアポトーシス及び細胞老化を誘発するのに効果的になるようにするために、テロメラーゼ阻害剤が増殖を阻害しアポトーシス及び細胞老化を誘発する臨界レベル以下にテロメアの長さを侵食することができる前に宿主の腫瘍量が致死レベルに達しないように腫瘍量は小さくなければならない。これは、細胞減少治療を用いることにより達成することができる。故に、細胞減少治療の形態が長期テロメラーゼの阻害活性と組み合わせて用いられるのであれば、腫瘍細胞中のテロメアの長さは時間と共に減少することになり、最終的にアポトーシスまたは細胞老化が誘発されることになることが期待される。
【0202】
治療プロトコール。最良の治療オプションが腫瘍細胞減少療法の形態であるような癌を呈している患者は、それに対する最適な細胞減少治療で処置されることになる。個々の患者に対して選択された細胞減少治療は、患者の癌、健康状態、年齢、以前の治療暦や、治療プロトコールの選択において通常考えられる他の因子に依存することになる。細胞減少治療レジメンの完了時に、患者が治癒したと考えていないのであれば、或いは疾患が再発しそうであると考えられるのであれば、患者は継続して、テロメラーゼの阻害を誘発するのに十分な用量レベルでテロメラーゼ阻害剤による治療を受けることになる。治療を続ける持続時間は長引くことになり、少なくとも2週間だが好適には2カ月以上、より好適には6カ月以上、またはより好適には患者が治癒したと考えられるまで続くことになるであろう。テロメラーゼ阻害剤治療が細胞減少治療前または治療と同時に開始されかつ細胞減少治療レジメンの完了後まで続くような別の治療プロトコールは、腫瘍がより長い期間テロメラーゼ阻害効果に曝されることになるので、有利であろう。
【0203】
結論。テロメラーゼ阻害治療を従来の細胞減少治療アプローチと併用することによりテロメラーゼ阻害治療を効果的なものにすることができ、癌に苦しめられている患者の治療にテロメラーゼ阻害を有利に用いる方法を画定する長年の問題を解決することになると期待できる。
【0204】
例13 スラミンの局所投与は血漿ではない所期の標的器官にテロメラーゼ阻害濃度を生じさせる
この例では、血漿において低くかつ効果的でないテロメラーゼ阻害剤濃度を示す一方で標的組織または器官においてテロメラーゼ阻害濃度を達成するためのテロメラーゼ阻害剤の限局投与に関して述べる。
【0205】
限局的送達後のスラミン膀胱壁及び全身的な濃度。スラミンの溶液をイヌの膀胱腔に注入し、全身的な血漿濃度の他に膀胱壁濃度を膀胱腔からの関数距離として調査した。
【0206】
治療プロトコール。体重9.0±0.4kgのビーグル犬を5匹用いた。動物は、麻酔薬投与のために橈側皮静脈にカニューレ処置し、血液サンプリングのために頚静脈にカニューレ処置した。用量滴注及び膀胱内容物のサンプリングのために尿道カテーテルを挿入した。動物には、水に溶かしたスラミン(6mg/mlのスラミンを含む20ml)を膀胱内投与した。膀胱内容物及び全身的な血漿の濃度を120分間頻繁な間隔で試料採取し、その時間に膀胱組織を収集し、動物を屠殺した。膀胱壁から表面積約2cm×2cmの組織切片を切り、ドライアイス上で冷却した平坦なステンレス鋼板上で急速凍結した。滴注流体によって汚染されないように組織サンプルの外端を切って整え、凍結組織を尿路上皮表面に平行に40μm切片に切り出した。組織層、血漿及び膀胱内容物のスラミン濃度の決定は、HPLC解析によって行った。
【0207】
結果。6mg/mlでスラミンを膀胱内投与された動物は、膀胱内容物の濃度が0分で6mg/mlから120分で3.6mg/mlに減退した。血漿濃度は常に0.1μg/ml以下であった。膀胱壁組織の濃度は、尿道表面(0mm)から漿膜表面(4〜5mm)に減退した。0mmでの組織濃度は約80μg/gであり、約3μg/gの濃度に到達する約2mmまでは対数線形減退を示した。膀胱壁の残りの濃度は深さによる差がほとんどなく、約3μg/gであった。
【0208】
結論。これらの結果は、器官における限局投与は所期の器官または組織にテロメラーゼ阻害剤濃度を与えることができるが、全身的な血漿濃度は何倍も低く、必ずしもテロメラーゼを阻害するものではないことを示している。
【0209】
例14 細胞培養系
ヒト前立腺PC3腫瘍細胞、ヒト乳房MCF7細胞、またはヒト咽頭FaDu細胞において細胞培養アッセイ実験を行うことができる。3つの細胞のいずれかで本発明の要求が合えば、テロメラーゼ阻害剤の選択及び投薬は本発明における使用に適している。好適には、PC3細胞を用いる。
【0210】
ヒト前立腺PC3腫瘍細胞、乳房MCF7細胞、または咽頭FaDu細胞は、ATCC(American Type Culture Collection)から入手可能である。3つの細胞株全ての倍化時間は、約24時間である。3つの細胞株は全て、37℃で5%のCO及び95%の空気を含む加湿環境で単層として培養する。PC3細胞はRPMI1640培地中で、MCF7細胞はRPMI1640中またはMEM(Minimal Essential Medium)中のいずれかで、FaDu細胞はMEM中で維持する。全ての培養培地には、9%の加熱不活性化したウシ胎児血清、2mMのI−グルタミン、0.1%、10mMの非必須アミノ酸、90μg/mlのゲンタマイシン、90μg/mlのセフォタキシムナトリウムを補充する。トリプシンを用いてサブコンフルエント培養から細胞を収集し、蒔く前に新鮮な培地中で再懸濁する。トリパンブルー排除によって決定される90%以上の生存度を有する細胞は、スラミンなどテロメラーゼ阻害剤の細胞毒性を評価するために用いられる。治療期間の終了時にコンフルエントになることがないような密度で細胞を96ウェルのマイクロタイタプレートに蒔く。細胞は、無薬物培地で20〜24時間成長させることによりプレート表面に付着させることができる。その後、FGFアンタゴニスト(一例では0.2μlのスラミンを使用)含有培養培地で、少なくとも4対数スケールに及ぶ濃度で、細胞をインキュベートした。薬物効果は、例えば細胞増殖ELISA BrdU(ベーリンガーマンハイム(Boehringer Mannheim))に従ってBrdU取り込みの阻害として測定する。
【0211】
結論
本発明について種々の実施形態を参照して説明してきたが、本発明の範囲から逸脱することなくこれらの実施形態の構成要素を種々に変更したり等価な物に置換したりし得ることは当業者には自明のことである。それに加えて、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく特定の状況または物質を本発明の教示に適合させるように多くの改変をなすこともできる。本発明の特定の実施形態と等価な多くのものが本明細書中に具体的に記載されていることは、当業者であれば認識するか或いは手間のかからないルーチンの実験を用いて確認することができる。そのような等価物は特許請求の範囲に含まれる。よって、本発明は本発明を実行するために考えられたベストモードとして開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に含まれる全ての実施形態を含むものであることを意図している。この特許出願においては、別段の記載がなければ、全ての単位はメートル法、全ての量及びパーセンテージは重量により示されている。また、本明細書中で引用している全ての引用文献は、明示的に引用を以って本明細書の一部となす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍を有する癌患者の治療の治療成果を向上させる方法であって、
(a)前記癌患者の腫瘍量を決定する過程と、
(b)投与されたテロメラーゼ阻害剤が前記癌患者に少なくとも幾つかの腫瘍細胞増殖サイクルの持続時間にわたり存在することを妨げるのに前記決定した腫瘍量が十分であれば、前記腫瘍に細胞減少を起こさせる過程と、
(c)前記癌患者にテロメラーゼを阻害する量のテロメラーゼ阻害剤を投与する過程とを含み、
前記腫瘍量が、前記癌患者の治療の治療成果を向上させるための少なくとも幾つかの腫瘍細胞増殖サイクルの持続時間にわたり、前記腫瘍が前記テロメラーゼ阻害剤に曝されるようなものであることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記テロメラーゼ阻害剤が、スラミン、スラミンの薬学的に許容される塩、ペントサン・ポリサルフェート(PPS)、PPSの薬学的に許容される塩、または前記腫瘍の細胞のhTRアンチセンス形質移入のうちの1つまたはそれ以上であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記癌患者が哺乳動物であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記テロメラーゼを阻害する量が、前記癌患者の体重1kg当たり約0.0001乃至約100mgの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記テロメラーゼを阻害する量が、前記癌患者の体重1kg当たり約0.01乃至約10mgの範囲にあることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記テロメラーゼを阻害する量が、前記癌患者の体重1kg当たり約0.1乃至約4mgの範囲にあることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記持続時間が、約1日乃至約365日であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記持続時間が、維持期間の間であることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記テロメラーゼ阻害剤が、前記哺乳動物の血漿濃度が約0.001乃至100μg/mlになるような量で投与されたスラミンを含むことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項10】
前記哺乳動物の血漿濃度が約10乃至70μg/mlになるような量でスラミンが投与されることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記テロメラーゼ阻害剤がスラミンを含み、前記哺乳動物が血漿中の約7,840μm-日以下のスラミンに112日間にわたり曝されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項12】
前記テロメラーゼ阻害剤がスラミンを含み、前記哺乳動物が約800μM以下のスラミンに96時間にわたり曝されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項13】
前記テロメラーゼ阻害剤が、前記哺乳動物中の血漿濃度が約0.001乃至1μg/mlになるような量で投与されたPPSを含むことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項14】
細胞減少治療が、腫瘍の外科的切除、放射線療法、化学療法、または光線力学療法のうちの1つまたはそれ以上であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記癌患者が、繊維肉腫、筋肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ血管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、胃癌、食堂癌、大腸癌、直腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、子宮癌、頭部及び頚部の癌、皮膚癌、脳癌、扁平上皮細胞癌、脂腺癌、乳頭状癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎児性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頚癌、精巣癌、肺癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽細胞腫、頭蓋咽頭管腫瘍、脳室上皮腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起神経膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、白血病、リンパ腫、カポジ肉腫、急性前骨髄性白血病(APML)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ球性白血病、慢性リンパ性白血病(CLL)、前リンパ球性白血病(PLL)、有毛状細胞性白血病(HLL)、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症(WM)、非ホジキンリンパ腫、末梢 T細胞リンパ腫as, 成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、顆粒性大リンパ球性白血病(LGF)、赤白血病、リンパ腫、ホジキン病、胎児性癌または奇形腫のうちの1つまたはそれ以上に苦しんでいることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記幾つかの腫瘍細胞増殖サイクルが、前記腫瘍の細胞の約3乃至26倍化の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項17】
過程(c)の前記投与が、過程(b)の細胞減少前、過程(b)の細胞減少と同時、または過程(b)の細胞減少後のうちの1つまたはそれ以上に開始することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記テロメラーゼ阻害剤の前記投与が限局投与であり、前記阻害剤の組織濃度が腫瘍細胞中でテロメラーゼ活性を阻害するのに十分であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記処置が、処置の標的ではない1若しくは複数の血漿または器官にテロメラーゼを阻害する濃度を生じさせないことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記腫瘍が、テロメラーゼ依存腫瘍を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記テロメラーゼ阻害剤が、以下の投与経路、即ち、皮下投与、静脈内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、皮内投与、膀胱内投与、くも膜下腔内投与、経口投与、経鼻投与、吸入による肺内投与、経直腸投与、表面投与、局所投与、限局投与、または経皮投与のうちの1つまたはそれ以上の投与経路で前記癌患者に投与されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記テロメラーゼ阻害剤が、徐放性製剤中にあることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記テロメラーゼ阻害剤が、投与のために固体または液体のうちの1つまたはそれ以上に調剤されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記テロメラーゼ阻害剤が、アジュバントに添加されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記アジュバントが、保存剤、湿潤剤、乳化剤、または分散剤のうちの1つまたはそれ以上であることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記テロメラーゼ阻害剤が、約500nm乃至100μmの平均粒子サイズを有する微小粒子の形であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記微小粒子が、約1μm乃至10μmの平均粒子サイズを有することを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
腫瘍を有する癌患者の処置の治療成果を向上させる方法であって、前記処置が、
前記癌患者にテロメラーゼ阻害量のテロメラーゼ阻害剤、即ち、スラミン、ペントサン・ポリサルフェート(PPS)、またはhTRアンチセンスのうちの1つまたはそれ以上を投与する過程を含むことを特徴とする方法。
【請求項29】
前記テロメラーゼ阻害剤を投与する過程が、少なくとも幾つかの腫瘍細胞増殖サイクルの持続時間にわたり、前記腫瘍が前記テロメラーゼ阻害剤に曝されるような方法で実行されることを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項30】
テロメラーゼ阻害剤が約10μM以下のIC50を有することを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項31】
キットであって、
(a)薬学的に許容される担体中のテロメラーゼ阻害剤と、
(b)容器と、
(c)腫瘍に関連する異常成長を阻害するか、緩和するか、或いはその両方を行うために前記テロメラーゼ阻害剤を使用するための説明書とを含むことを特徴とするキット。
【請求項32】
前記テロメラーゼ阻害剤が、スラミン、スラミンの薬学的に許容される塩、ペントサン・ポリサルフェート(PPS)、PPSの薬学的に許容される塩、またはhTRアンチセンスのうちの1つまたはそれ以上であることを特徴とする請求項31に記載のキット。
【請求項33】
細胞減少を必要としない最小新生物疾患の患者を治療する方法であって、
(a)第1に、テロメラーゼ活性を阻害するのに効果的な量のテロメラーゼ阻害剤を前記患者に投与する過程と、
(b)第2に、腫瘍の再発が認められた時点で、テロメラーゼ阻害剤を含む細胞毒性化学療法レジメンを前記患者に施す過程とを含み、
前記化学療法レジメンに前記テロメラーゼ阻害剤を加えることによって細胞毒性化学療法レジメンの効力を高めることを特徴とする方法。
【請求項34】
前記テロメラーゼ阻害剤が、スラミン、スラミンの薬学的に許容される塩、ペントサン・ポリサルフェート(PPS)、PPSの薬学的に許容される塩、またはhTRアンチセンスのうちの1つまたはそれ以上であることを特徴とする請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記テロメラーゼ阻害剤が、スラミンがテロメラーゼ活性を阻害するが実質的な細胞毒性効果を生じさせないような用量レベルで投与されたスラミンであることを特徴とする請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記患者が哺乳動物であることを特徴とする請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記テロメラーゼ阻害薬の投与が限局投与であり、前記阻害剤の組織濃度が腫瘍細胞におけるテロメラーゼ活性の阻害に十分であることを特徴とする請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記治療が、治療の標的ではないような血漿または他の器官中にテロメラーゼを阻害する濃度を生じさせないことを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項39】
患者を治療する方法であって、
(a)(1)触診、尿中の血液の検出、便中の血液の検出、或いは、X線、CATスキャン、PETスキャン、または超音波画像のうちの1つまたはそれ以上を含む画像モダリティーの使用のうちの1つまたはそれ以上を含む従来の手段では小さすぎて検出できないような癌になりそうであるか或いは(2)そのような癌を抱えているかのいずれかまたは両方である患者を識別する過程と、
(b)癌の治療または癌進行の予防のうちの1つまたはそれ以上が達成されるように前記患者にテロメラーゼ阻害剤を投与する過程とを含むことを特徴とする方法。
【請求項40】
前記テロメラーゼ阻害剤が、スラミン、スラミンの薬学的に許容される塩、ペントサン・ポリサルフェート(PPS)、PPSの薬学的に許容される塩、またはhTRアンチセンスのうちの1つまたはそれ以上であることを特徴とする請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記テロメラーゼ阻害剤が、スラミンがテロメラーゼ活性を阻害するが実質的な細胞毒性効果を生じさせないような用量レベルで投与されるスラミンであることを特徴とする請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記患者が哺乳動物であることを特徴とする請求項39に記載の方法。
【請求項43】
前記テロメラーゼ阻害薬の前記投与が限局投与であり、前記阻害剤の前記組織濃度が腫瘍細胞におけるテロメラーゼ活性の阻害に十分であることを特徴とする請求項39に記載の方法。
【請求項44】
前記治療が、治療の標的ではない血漿または他の器官におけるテロメラーゼを阻害する濃度を生じさせないことを特徴とする請求項43に記載の方法。
【請求項45】
癌患者を治療する方法であって、
細胞減少治療に前記テロメラーゼ阻害剤を加えることによって患者の治療成果を向上させるような細胞減少治療の最中及び完了後にテロメラーゼ抑制量のスラミン、ペントサン・ポリサルフェート(PPS)またはhTRアンチセンスのうちの1つまたはそれ以上を前記癌患者に投与する過程を含むことを特徴とする方法。
【請求項46】
癌患者を治療する方法であって、
癌の治療が達成されるようにAZTを前記患者に投与する過程を含み、
前記患者における3’−アジド−ジデオキシチミジン(AZT)の血漿濃度がHIV感染の治療に用いられる濃度以下であることを特徴とする方法。
【請求項47】
前記患者が腫瘍を有し、前記患者に外科的腫瘍細胞減少治療が施されるのと同時または治療後のうち一方または両方で、前記患者に前記AZTが投与されることを特徴とする請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記患者が腫瘍を有し、前記患者が非外科的腫瘍細胞減少治療を受ける前、同時、またはその後のうちの1つまたはそれ以上で、前記患者に前記AZTが投与されることを特徴とする請求項46に記載の方法。
【請求項49】
前記患者の前記血漿中のAZTの血漿濃度がナノモル範囲にあることを特徴とする請求項46に記載の方法。
【請求項50】
テロメラーゼ介在性疾患を有する患者の治療の治療成果を高める方法であって、
テロメラーゼ阻害量のスラミン、スラミンの薬学的に許容される塩、ペントサン・ポリサルフェート(PPS)、PPSの薬学的に許容される塩、またはhTRアンチセンスの形質移入のうちの1つまたはそれ以上であるテロメラーゼ阻害剤を患者に投与する過程を含むことを特徴とする方法。
【請求項51】
前記患者が哺乳動物であることを特徴とする請求項50に記載の方法。
【請求項52】
腫瘍を有する癌患者の治療の治療成果をテロメラーゼ阻害量のテロメラーゼ阻害剤で高める方法であって、
(a)前記腫瘍のサンプルを取得する過程と、
(b)前記腫瘍サンプルを末端制限断片(TRF)解析にかけ、前記サンプル中の細胞のテロメアDNAを含む末端断片の長さを決定する過程と、
(c)前記テロメアDNAの長さを、テロメラーゼ阻害量のスラミン、スラミンの薬学的に許容される塩、ペントサン・ポリサルフェート(PPS)、PPSの薬学的に許容される塩、またはhTRアンチセンスの形質移入のうちの1つまたはそれ以上であるテロメラーゼ阻害剤で前記癌患者を治療するのに必要な時間の長さと関連付ける過程とを含むことを特徴とする方法。
【請求項53】
前記患者が哺乳動物であることを特徴とする請求項52に記載の方法。
【請求項54】
テロメラーゼを阻害する量のテロメラーゼ阻害剤により腫瘍を有する癌患者の治療の治療成果を高める方法であって、
(a)前記腫瘍のサンプルを取得する過程と、
(b)前記腫瘍サンプルを末端制限断片(TRF)解析にかけ、前記サンプル中の細胞のテロメアDNAを含む末端断片の長さを決定する過程と、
(c)前記テロメアDNAの長さを前記治療の過程と関連付ける過程とを含むことを特徴とする方法。
【請求項55】
前記患者が哺乳動物であることを特徴とする請求項54に記載の方法。
【請求項56】
膀胱間質性膀胱炎を有する患者の治療成果を高める方法であって、効果的な量のスラミン、スラミンの薬学的に許容される塩、ペントサン・ポリサルフェート(PPS)、PPSの薬学的に許容される塩のうちの1つまたはそれ以上を前記患者に局所的に投与する過程を含むことを特徴とする方法。

【公表番号】特表2007−525414(P2007−525414A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503176(P2006−503176)
【出願日】平成16年1月30日(2004.1.30)
【国際出願番号】PCT/US2004/002609
【国際公開番号】WO2004/070008
【国際公開日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(501393106)
【氏名又は名称原語表記】AU, Jessie, L., −S.
【住所又は居所原語表記】2287 Palmleaf Court, Columbus, OH 43235 U.S. A.
【出願人】(501393128)
【住所又は居所原語表記】2287 Palmleaf Court, Columbus, OH 43235 U.S. A.
【Fターム(参考)】