説明

スルホキシド誘導体の鏡像選択的な製造方法

スルホキシド誘導体またはその塩の鏡像選択的な製造方法であって、一般式:A−CH−S−B(式中、Aは様々に置換されたピリジニル環、Bはイミダゾ−ピリジニル基を含む複素環基)の硫化物の鏡像選択的酸化を、有機溶剤中で、チタン(IV)ベース触媒および環状β−またはγ−アミノアルコールを含むキラル配位子の存在下、酸化剤を使用し、その後、必要に応じて塩基によって塩を生成することから成る製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスルホキシド置換誘導体の鏡像選択的な製造の方法、特にテナトプラゾールおよび他の類似のスルホキシドの鏡像異性体等の化合物の鏡像選択的な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々なスルホキシド誘導体、特にピリジニルメチルスルフィニルベンゾイミダゾールは、プロトンポンプ阻害剤、すなわち胃酸の分泌を抑制する胃・十二指腸潰瘍の治療用の薬として治療学の分野で役立つことが公知である。プロトンポンプ阻害剤シリーズのうち最初に公知となった誘導体は、オメプラゾール、5−メトキシ−2−[[(4−メトキシ−3、5−ジメチル−2−ピリジニル)メチル]スルフィニル−1H−ベンゾイミダゾールである(特許文献1)。これは、胃酸の分泌を抑制する特性を有し、ヒト治療学では、抗潰瘍薬として広く使用される。類似構造を有する他のベンゾイミダゾールの誘導体は、それらの総称、例えばラベプラゾール、パントプラゾール、およびランソプラゾールとして知られており、これらはすべて類似構造を示し、ピリジニルメチルスルフィニルベンゾイミダゾールのグループと関連する場合がある。
【0003】
テナトプラゾールまたは、5−メトキシ−2−[[(4−メトキシ−3、5−ジメチル−2−ピリジニル)メチルスル]スルフィニル]イミダゾ[4,5−b]ピリジンは、特許文献2に記載されている。それは、またプロトンポンプ阻害剤とされる薬の1つであり、一般には胃食道逆流性疾患、消化管出血および消化不良の治療に用いられる。しかし、テナトプラゾールは、ベンゾイミダゾール環の代わりにイミダゾピリジン環を含むので、上記の他のプロトンポンプ阻害剤とは構造的に区別できる。
【0004】
これらのすべての化合物は、硫黄原子が不斉であるスルホキシドであり、したがって、2つの鏡像異性体のラセミ混合物の形態とすることができる。特定の性質が非常に異なる場合のあるR体およびS体、または(+)および(−)の2つの鏡像異性体の一方の構造または他方の構造について、これらを選択的に分離することは有用であろう。したがって、特許文献3ではテナトプラゾールのS鏡像異性体について記載されている。
【0005】
これらのスルホキシドの一方のまたは他方の鏡像異性体、特にオメプラゾールおよびそのS体の鏡像異性体、エソメプラゾール、ナトリウムまたはマグネシウム塩等のその塩、を選択的または優先的方法で製造するための様々な方法が科学文献に記載されている。
【0006】
すなわち、特許文献4では、キラルなアシルオキシメチル基を含むエステル類、ジアステレオ異性体の分離およびアルカリ溶液中での加溶媒分解を介したオメプラゾールの(−)鏡像異性体のマグネシウム塩の製造方法が記載されている。特許文献5では、スルホキシドのラセミ混合物を対応する硫化物とする立体選択的な生物還元を用いた方法が記載されている。その方法は、DMSOレダクターゼを含む微生物を使用し、(+)鏡像異性体と比較して、(−)鏡像異性体が非常に豊富な混合物を得ることができる。
【0007】
H.Kaganらは、水の存在下で酸化剤としてtert−ブチルヒドロペルオキシドを使用し、0℃より低い温度で、チタンイソプロポキシドと光学活性酒石酸ジエチルとの錯体によって触媒される硫化物のスルホキシドへの不斉酸化の系について記載している(非特許文献1参照)。非特許文献2は、同じ反応条件の下でクメンヒドロペルオキシドを使用することで鏡像選択性が改良できることを示した。Kaganの方法の様々なバリエーションが開発され、例えば、特許文献6は、様々なスルホキシドの鏡像選択的製造法に関する。特に、塩基の存在下で、トルエンや酢酸エチル等の特定の溶剤中の酸化剤を用いた、対応する硫化物(「プロキラル」硫化物)の酸化によるオメプラゾールの(−)鏡像異性体またはそのナトリウム塩の鏡像選択的製造法であり、その反応は、水の存在下で、チタン(IV)化合物、好ましくはチタンイソプロポキシドと、脂肪族および芳香族ジオール、特にL(−)またはD(−)酒石酸ジエチルから選択されるキラルな配位子とから得られたチタン錯体によって、触媒される。反応媒体への塩基の添加は、硫化物をスルホキシドとする酸化反応の鏡像選択性を改良する。当該特許に記載されていた方法では、使用される配位子に従って、(+)および(−)鏡像異性体の一方または他方が豊富な混合物を得ることができる。
【0008】
Kaganの上記方法およびそのバリエーションによって、簡単に鏡像選択的方法で、オメプラゾールおよびその鏡像異性体等のベンゾイミダゾール型構造のスルホキシドを得ることが可能になる。しかしながら、イミダゾ−ピリジニル型のスルホキシドの場合、トルエン等の通常の溶剤中での硫化物の低溶解度により、選択特性の損失とスルホンの重要な形成を伴う不均質な反応媒体が30%の範囲内で生じる。
【0009】
特に、いくつかの硫化物、特にテナトプラゾールのプロキラル硫化物は、トルエンやジクロロメタンなどの通常の溶剤では、わずかに可溶性であり、溶剤の選択はしばしば困難となる。そのため非特許文献3には、上記等の触媒系において、非プロトン性極性溶媒は、ピリジニルメチルベンゾイミダゾール構造の硫化物の不斉酸化に悪影響を及ぼすことが示される。
【特許文献1】欧州特許第005129号明細書
【特許文献2】欧州特許第254588号明細書
【特許文献3】国際公開番号WO2004/060891パンフレット
【特許文献4】欧州特許第652872号明細書
【特許文献5】米国特許第5776765号明細書
【特許文献6】米国特許出願第5948789号明細書
【非特許文献1】P. Pitchen and al. J. Am. Chem. Soc. 106, pp.8188-93 (1984)
【非特許文献2】S.Zhao, O.Samuel and H.Kagan, Tetrahedron vol.43, pp.5135-44 (1987)
【非特許文献3】“Asymmetric Catalysis on Industrial Scale”, H.U. Blaser, E. Schmidt, 2004 Wiley-VCH Verlag GmbH & Co. KG, Grunstadt, ch. 7, p.413
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、十分な鏡像体過剰率のイミダゾール−ピリジニル構造を有するスルホキシド鏡像異性体を製造できる方法であって、良好な収率および高い純度で、スルホンの生成を回避し、且つ工業的規模の実施で許容できる生産レベルを示すと思われる溶剤中で実施する方法が望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本出願人が行った研究は、塩基を反応媒体に添加する必要のない、特定のチタンベース錯体の存在下での対応するプロキラルスルホキシドの鏡像選択的酸化によって、スルホキシド誘導体、特にテナトプラゾールおよび類似構造を有するスルホキシドの鏡像異性体が、優れた鏡像体過剰率および良好な収率で製造可能であることを示した。
【0012】
したがって本発明は、スルホキシド誘導体、およびそれらの塩について、その硫黄原子を不斉とし、良好な選択特性と十分な収率で鏡像異性体の一方または他方を生産する鏡像選択的製造のための方法に関する。
【0013】
本発明は、特に、実質的に鏡像選択的な方法で(−)鏡像異性体、(+)鏡像異性体、およびそれらの塩を生産する製造方法に関する。本明細書中の用語「実質的に鏡像選択的な方法」は、所望の鏡像異性体が選択的に、またはもう一方の鏡像異性体と比べて優越な量で得られること、すなわち鏡像体過剰率が90%以上、好ましくは95%よりも高く、さらに好ましくは98%よりも高いことを意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の方法によれば、以下の一般式(I)の硫化物の鏡像選択的酸化が行われる:
A−CH2−S−B (I)
式中、Aは様々に置換されたピリジニル基、そしてBはイミダゾ−ピリジニル基を含む複素環基である。有機溶剤中で、チタン(IV)ベース触媒および環状β−またはγ−アミノアルコールを含むキラル配位子の存在下、酸化剤を使用し、その後、必要に応じて塩基によって塩生成する。
【0015】
上記一般式(I)において、Aは、好ましくは、ピリジニル基または炭素原子が1〜6の直鎖または分岐鎖のアルキル基、炭素原子が1〜6の直鎖または分岐鎖のアルコキシル基、1または数個のハロゲン原子が置換したメチルまたはエチル基、アミノ基、アルキル部分が1〜5の炭素原子を含む直鎖または分岐鎖であるアルキルアミノまたはジアルキルアミノ基から選択される1または数個の置換基を有するピリジニル基を示し;Bは、イミダゾ−[4,5−b]−ピリジニル複素環を示し、必要に応じて、1または数個の、炭素原子が1〜6の直鎖または分岐鎖のアルキル基、炭素原子が1〜6の直鎖または分岐鎖のアルコキシル基で置換され、好ましくは1または数個の炭素原子が、メチル、エチル、メトキシまたはトリハロゲノメチル基で置換されている。
【0016】
上記一般式(I)において、Aは、好ましくは、1または数個のメチル、エチル、メトキシまたはトリフルオロメチル基で置換された2−ピリジニル基、さらに好ましくは、4−メトキシ−3,5−ジメチル−2−ピリジニル基である。好ましくは、Bは、5−メトキシ−イミダゾ−[4,5−b]−ピリジニル基である。
【0017】
本発明において、「環状β−またはγ−アミノアルコール」は、アミノまたはイミノ基およびヒドロキシル基またはその誘導体を含み、これらの2つの基が他方の基に対してβまたはγの位置にあり、またそれ自体は非芳香族環で、他の環と縮環でき、1または数個のヘテロ原子を含み得る化合物を意味する。
【0018】
すなわち、スルホキシドの一般式
A−CH2−SO−B (Ia)
が得られる。AおよびBは上記の定義である。
【0019】
上記式(I)で表された開始プロキラルスルホキシドは、文献に記載された様々な方法、例えば欧州特許第254588号明細書および欧州特許第103553号明細書の方法を使用することで製造できる公知の製品である。
【0020】
本発明の方法で使用される酸化剤は、好ましくはヒドロペルオキシド、例えばクメンまたはtert−ブチルヒドロペルオキシドである。本発明の方法の好ましい実施によれば、クメンヒドロペルオキシドが用いられる。他の方法としては、酸化剤として、少なくとも30%の高濃度の過酸化水素、または尿素と複合した過酸化水素(UHPまたは「尿素過酸化水素」H2NCONH2・H22)(以下UHPという)を使用できる。後に示すように、水の存在は選択特性を減少させるが、マグネシウムまたは硫酸ナトリウム等の通常の脱水剤または適切なモレキュラーシーブの反応媒体への添加によって、この欠点の少なくとも一部を補うことができる。
【0021】
チタンベース触媒は、反応に寄与し、所望の誘導体が良好な収率で得られるようにする本発明の方法の重要な要素である。本発明によれば、好ましくは、チタニウムアルコキシド等のチタン(IV)錯体の触媒、例えばチタン(IV)イソプロポキシド Ti(OiPr)4またはチタンアセチルアセトナートが使用される。これらの適切なチタンベース触媒は、文献に記載され、市販されている。
【0022】
配位子の選択は、それがキラリティー誘導物質であるので、本発明の方法の別の特色である。それは選択的に所望の鏡像異性体に反応を示す。そのうえ、それは反応の化学選択性を条件とする。
【0023】
本発明の方法によると、配位子は、以下の一般式(II)で表すことができる環状β−またはγ−アミノアルコールである:
【化1】

式中、G1はアミノ基−NR12またはイミノ基−N=CR12を、G2は、−OR3を表すか、またはその逆を表す。nは、0または1である。R1およびR2は、同一または異なり、互いに独立し、水素原子または炭素原子が1〜6の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アシル基またはスルホニル基を示す。R3は、水素原子または炭素原子が1〜6の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基またはアリール基もしくはヘテロアリール基を表す。そして、Yは環状基である。
【0024】
好ましくは、式(II)の環状アミノアルコールは、以下の式(III)の誘導体であってもよい:
【化2】

式中、G1およびG2は上記の定義を有し、pおよびqは同一または異なり、0、1または2である。R4、R5、R6、およびR7は、同一または異なり、水素原子または炭素原子が1〜6の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基を表し、R4およびR6並びに/またはR5およびR7は、互いに結合して、炭素原子と共に脂肪族、芳香族またはヘテロアリールの環を形成することができる。
【0025】
好ましくは、例えばアミノ−インダノール型誘導体を構成するために、R4およびR6、R5およびR7は、互いに結合して芳香族環を形成し、pは1であり、qは0である。
【0026】
本発明において:
− 好ましくは、「アリール基」は、1または数個の芳香族環を有する単環式または多環式系を意味し、フェニル基、ナフチル基、テトラヒドロナフチル基、インダニル基およびビナフチル基を挙げることができる。アリール基は、ヒドロキシル基;メチル、エチル、プロピル、好ましくはtert−ブチル等の1〜4の炭素原子を含む直鎖または分岐鎖のアルキル基;ニトロ基;(C1−C4)アルコキシル基および塩素、臭素または沃素等のハロゲン原子から、互いに独立して選択された1〜3の置換基で置換することができる。
− 好ましくは、「ヘテロアリール基」は窒素、硫黄または酸素等の1〜3のヘテロ原子を含むアリール基を意味する。そして、そのヘテロアリール基として、ピリジニル、ピラジニル、ピリダジニル、キノリル、イソキノリル基等を挙げることができる。
− 好ましくは、「複素環」または「複素環基」は、1〜3の硫黄、窒素および酸素等のヘテロ原子を含む5員環または6員環を意味する。またこの定義は、前に定義した複素環基が、フェニル基、シクロヘキサン基または別の複素環基と縮環した二環をも含む。複素環基としては、イミダゾリル、インドリル、イソオキサゾリル、フリル、ピラゾリル、チエニル等を挙げることができる。
【0027】
好ましくは、本発明で使用される配位子は、非芳香族環の固定した分子構造を示し、G1基およびG2基を有し、環と縮環することができる。行われた試験では、この型の配位子の固定された構造が鏡像選択性に寄与する主要なパラメータであることが示された。
【0028】
その結果、好ましくは、配位子として本発明に使用される光学活性アミノアルコールは、相対立体化学のシス−β−アミノアルコール、例えば(1R,2S)−シス−アミノ−インダノール、3−エクソ−ジメチルアミノボルネオールおよびシス−2−アミノ−シクロペンタノール等である。
【0029】
さらに、式(III)の配位子は、特に、(1S,2R)−(−)−または(1R,2S)−(+)−1−アミノ−2−インダノールである。したがって、この配位子の使用によって、5−メトキシ−2−[[4−メトキシ−3,5−ジメチル−2−ピリジニル]メチル]−チオ]−イミダゾ[4,5−b]−ピリジンの酸化反応は、本明細書で記載するところの、選択的にS−テナトプラゾールを得る選択的方向となる。
【0030】
操作条件の下で、金属が酸化剤で酸化された金属触媒によって、配位子は不斉の錯体を形成する。
【0031】
本発明の方法の実施によれば、反応は有機溶剤中で、または溶剤混合物中で行われる。
【0032】
有機溶剤は、好ましくは非プロトン性であり、極性であり、またN−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)およびピリジンから選択することができ、一種または数種の混合物である。予想外にも、イミダゾ−ピリジニル基を含む硫化物の不斉酸化の場合、これらの溶剤が鏡像選択性とスルホンの形成の制限に寄与することが、実施した試験によって示された。
【0033】
酸化反応は、低温または室温で容易に行われる。鏡像選択性に寄与するために、−10〜30℃、好ましくは約0〜25℃で反応を行うことがより有利であろう。比較的高い温度は、選択特性の低下を引き起こすであろう。例えば、テナトプラゾールを対応するプロキラル硫化物から製造する場合、Ti(OiPr)4およびアミノインダノールの存在下、NMP中で、温度が20〜40℃であるときは、鏡像体過剰率は97から66%に減少する。これに反して、約0℃の低温で行うと99%に上昇する。
【0034】
したがって、酸化反応の実施と同時に使用する配位子に関する限り、本発明のチタン/配位子触媒系は、当該技術の水準で公知の方法のものと相違する。
【0035】
本発明の方法の有利な点の1つは、配位子および反応媒体の成分の添加順序は問題ではなく、転換率や鏡像選択性には特に影響がないということである。本発明の方法の好ましい実施形態によれば、同じ溶剤中に硫化物溶液および最終的に酸化剤を添加する前に、配位子およびチタンベース触媒を溶液とし、溶剤中でチタン/配位子触媒系を形成する。本発明の別の形態によれば、チタン/配位子触媒系は、反応開始時および反応間の2段階で硫化物に加えられる。すなわち配位子およびチタンベース触媒の追添加は反応の間に行われ、酸化剤の追添加に関連することもある。
【0036】
本発明の方法は、有利には、塩基の添加を必要とすることなく中性媒体で行われる。ただし、最終生成物の劣化を引き起こし得る酸性媒体での操作は回避するべきである。実施した試験は、本発明の方法の条件下での反応媒体への塩基の添加が、鏡像選択性を改良せず、スルホキシドの転換率を減少させる傾向があることを示した。すなわち、ジイソプロピルエチルアミンの添加は、転換率を60%以上から約40%まで減少させる。これに反して、上記の米国特許第5948789号に記載の公知の方法においては、トリエチルアミンやN,N−ジイソプロピルエチルアミン等の塩基の添加は反応の鏡像選択性を改良する。
【0037】
さらに本発明による酸化反応は、一般的な場合のように、通常の方法の実施を改良するための水を必要としない。すなわち、実施した試験では反対に、水の添加は、スルホン形成に寄与することによって反応の選択特性に、非常に低下させることで鏡像選択性に、そして、劇的に落ちる転換率にマイナスの影響があることが示された。特に、実施した試験では、他の条件を変えない場合、水の存在は鏡像体過剰率を99%から約60%まで減少させるが、スルホン含量を7%以上に上昇させることを示した。
【0038】
最終的に、チタン(IV)/アミノインダノール錯体の製造に関する操作条件の簡素化は、本発明の有利な点の中で無視できない役割を果たす。本発明の方法の別の形態によれば、チタンとキラル配位子間の予備的な錯体形成は、反応媒体、室温で実施することができ、どのような予備的熟成も必要としない。
【0039】
本発明の方法は、酸化剤および触媒が低コストで広く市販されており、使い易いので特に有利である。そのうえ、触媒を効率的に非常に少量で使用できる。鏡像異性体として得られる収率は良好であり、そしてさらに、鏡像体過剰率を低下させることなく良い条件の下で、一般に触媒と配位子は再生できる。
【0040】
本発明の方法は、以下の一般式で表すことができるテナトプラゾールの鏡像異性体の製造に特に有利である:
【化3】

【0041】
したがって、例えば本発明の方法によれば、(−)−5−メトキシ−2−[[(4−メトキシ−3,5−ジメチル−2−ピリジニル)メチル]スルフィニル]イミダゾ[4,5−b]−ピリジン、すなわち上記式で表されるテナトプラゾールを得るために、Ti(OiPr)4およびアミノインダノールの存在下、NMP中でのクメンヒドロパーオキサイドまたはtert−ブチルヒドロパーオキサイドによる5−メトキシ−2−[[(4−メトキシ−3,5−ジメチル−2−ピリジニル)メチル]−チオ]−イミダゾ−[4,5−b]−ピリジンの鏡像選択性酸化は、有利に行われる。
【0042】
特にチタンベース触媒を、DMF、NMP、DMAまたはピリジン溶液中の(1R,2S)−シス−1−アミノ−インダン−2−オールを含む配位子と一緒に用いた場合、上記硫化物の酸化により、良好な純度と収率の条件の下でS体の(−)鏡像異性体が得られることが認められた。
【0043】
一方、配位子として(1S,2R)−シス−1−アミノ−インダン−2−オールを用いて、良好な選択性と収率の条件の下で、R体の(+)異性体を得ることができる。
【0044】
テナトプラゾールのSおよびR鏡像異性体は、塩の形、特にアルカリまたはアルカリ土類金属塩、例えばナトリウム、カリウム、リチウム、マグネシウムまたはカルシウム塩の形で使用できる。通常の技術的方法による塩生成、例えば、アルカリまたはアルカリ土類の対イオンを含む無機塩試薬の反応によって、あらかじめ単離されているテナトプラゾールのSまたはR鏡像異性体からこれらの塩を得ることができる。
【0045】
テナトプラゾールのS鏡像異性体は、(−)−5−メトキシ−2−[[(4−メトキシ−3,5−ジメチル−2−ピリジニル)メチル]スルフィニル]イミダゾ[4,5−b]−ピリジンまたは(−)−テナトプラゾールに対応する。この形は通常の技術的方法である旋光度測定によって決定できる。そして(−)−テナトプラゾールの旋光度の角度はジメチルホルムアミド中で左旋性であり、融点(分解)は130℃である。
【0046】
以下に述べられる疾病の治療では、テナトプラゾールのSおよびR鏡像異性体は、例えば経口または非経口のルート、好ましくは経口または静脈ルート等選ばれた投与方法に適切な通常の形態で投与できる。
【0047】
例えば、作用物質としてテナトプラゾールのSおよびR鏡像異性体の一方もしくは他方を含むタブレットもしくはカプセルの形態、もしくは経口溶解薬剤、または非経口投与のためのテナトプラゾール塩と薬学的に通常、許容できる媒質とを含む乳剤もしくは溶液が用いられる。例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、マグネシウムまたはカルシウム塩からテナトプラゾール鏡像異性体塩を選ぶことができる。
【0048】
本発明の方法によって得られるテナトプラゾールのSおよびRの鏡像異性体は、消化器系の病気の治療、特に強く長い酸分泌を阻害する治療、食道狭窄−胃食道逆流の症状と損傷の治療、または他のプロトンポンプ阻害剤に抵抗力がある消化管出血の治療のための薬の製造に用いられる。
【0049】
投与量は患者の状態と疾病の重篤さに従って医師が決定する。通常、1日あたり、テナトプラゾールのSまたはR鏡像異性体は10〜120mg、好ましくは20〜80mg含まれる。
本発明の他の利点および詳細は、限定するものではなく例示の目的のための以下の実施例を考慮することで明確となる。
【実施例】
【0050】
以下に鏡像異性体製造の実施例を記載し、発明の範囲を制限することなく本発明を具体的に説明する。
【0051】
実施例1
(S)−(−)−テナトプラゾールの製造
(1R,2S)−(+)−1−アミノ−2−インダノール(22.8mg,0.151mmol)およびチタンイソプロポキシド(IV)(22μl,0.076mmol)を無水NMP溶液(0.65ml)に添加する。
【0052】
5−メトキシ−2−[[(4−メトキシ−3,5−ジメチル−2−ピリジニル)メチル]−チオ]−イミダゾ[4,5−b]−ピリジンのNMPの溶液(100mg,0.303mmol)を上記錯体に添加し、20℃で攪拌する。すぐにクメンヒドロペルオキシド(80%,65μl,0.352mmol)を添加する。
【0053】
この均一な混合物について、20℃で5時間攪拌を続ける。この未加工の生成物は、60%の硫化物、2%のスルホンおよび38%のスルホキシドを含み、鏡像体過剰率(e.e.)が95%である(キラル液体クロマトグラフ分析)。
【0054】
鏡像体過剰率は、CHIRALPAK(商品名)AS10μm(250×4.6mm)のカラム、30℃で、高速液体クロマトを用いて測定する。
溶離液:n−ヘプタン+0.01%TFA/プロパン−2−オール(45:55)
流速:1mL/分
注入量:5μL
波長:302nm
硫化物の保持時間:4.3分
R−鏡像異性体の保持時間:6.7分
スルホンの保持時間:8.1分
S−鏡像異性体の保持時間:11.8分
:129−130℃
[α]20D:−186.6(c0.1,DMF)
【0055】
UVスペクトル(メタノール−水):λmax:272nm(ε=6180),315nm(ε=24877)
【0056】
赤外線(KBr):3006、1581、1436、1364、1262、1026、1040および823cm-1
【0057】
核磁気共鳴1H(NMR)(DMSOd6)δ(ppm):2.20(s,6H),3.70(s,3H),3.91(s,3H),4.69−4.85(m,2H),6.80(d,J8.5Hz,1H),7.99(d,J8.5Hz,1H),8.16(s,H),13.92(s,1H)
【0058】
核磁気共鳴13C(NMR)(DMSOd6)δ(ppm):13.2;15.0;56.6;60.8;62.6;107.2;129.5;130.4;131.9;135.1;150.5;151.4;156.9;160.7;163.0;166.6.
【0059】
実施例2
(R)−(+)−テナトプラゾールの製造
実施例1の方法を繰り返す。ただし(1R,2S)−(+)−1−アミノ−2−インダノールを(1S,2R)−(−)−1−アミノ−2−インダノールに変える。
実施例1と同じ量の同じ酸化剤を5−メトキシ−2−[[(4−メトキシ−3,5−ジメチル−2−ピリジニル)メチル]−チオ]−イミダゾ[4,5−b]−ピリジンに使用し、同じ触媒を用いる。
【0060】
(R)−テナトプラゾールの物理的および分光的数値は、特定の旋光性[α]20D:+185.9(c0.1,DMF)以外は、(S)−テナトプラゾールのものと同じである。
【0061】
実施例3
(S)−テナトプラゾールの製造
(1R,2S)−(+)−1−アミノ−2−インダノール(22.8mg,0.151mmol)およびチタンイソプロポキシド(IV)(22μl,0.076mmol)をDMF溶液(1体積部)に添加する。溶液を30分間0℃で維持する。
【0062】
5−メトキシ−2−[[(4−メトキシ−3,5−ジメチル−2−ピリジニル)メチル]−チオ]−イミダゾ[4,5−b]−ピリジン(100mg,0.303mmol)のDMF溶液(6体積部)を加え、20℃で攪拌する。すぐにクメンヒドロペルオキシド(80%,65μl,0.352mmol)を添加する。
【0063】
この均一な混合物について、0℃で6時間攪拌を続ける。この未加工の生成物は、60%の硫化物、0.1%のスルホンおよび39%のスルホキシドを含み、鏡像体過剰率(e.e.)が99%である(キラル液体クロマトグラフ分析)。
【0064】
実施例4
(S)−テナトプラゾールの製造
DMFをDMAとすること以外は、上記実施例3の記載と同じ方法を用いた。
【0065】
均一な混合物について、22℃で6時間攪拌を続ける。この未加工の生成物は、47%の硫化物、0.5%のスルホンおよび52%のスルホキシドを含み、鏡像体過剰率(e.e.)が99%である(キラル液体クロマトグラフ分析)。
【0066】
実施例5
(S)−テナトプラゾールの製造
5−メトキシ−2−[[(4−メトキシ−3,5−ジメチル−2−ピリジニル)−メチル]チオ]イミダゾ[4,5−b]ピリジン(100mg,0.303mmol)を無水DMF(0.65ml)に溶解する。
チタンイソプロポキシド(IV)(22μl,0.076mmol)および(1R,2S)−(+)−1−アミノ−2−インダノール(22.8mg,0.151mmol)の無水DMF溶液を添加し、22℃で攪拌し、クメンヒドロペルオキシド(80%,65μl,0.352mmol)を添加する。
【0067】
この均一な混合物について、22℃で5時間攪拌を続ける。
【0068】
この未加工の生成物は、61%の硫化物、1%のスルホンおよび38%のスルホキシド、すなわちS−テナトプラゾールを含み、鏡像体過剰率(e.e.)が98%である(キラル液体クロマトグラフ分析)。
【0069】
実施例6
(S)−テナトプラゾールの製造
5−メトキシ−2−[[(4−メトキシ−3,5−ジメチル−2−ピリジニル)−メチル]チオ]イミダゾ[4,5−b]ピリジン(100mg,0.303mmol)および(1R,2S)−(+)−1−アミノ−2−インダノール(22.8mg,0.151mmol)を無水ピリジン(0.65ml)に添加し、チタンイソプロポキシド(IV)(22μl,0.076mmol)を添加し、22℃で攪拌し、クメンヒドロペルオキシド(80%,65μl,0.352mmol)を添加する。
【0070】
この均一な混合物について、22℃で5時間攪拌を続ける。この未加工の生成物は、16%の硫化物、4%のスルホンおよび68%のスルホキシドを含み、鏡像体過剰率(e.e.)が97%である(キラル液体クロマトグラフ分析)。
【0071】
鏡像体過剰率は、CHIRALPAK(商品名)AS10μm(250×4.6mm)のカラム、30℃で、高速液体クロマトを用いて測定する。
【0072】
実施例7
(S)−テナトプラゾールの製造
5−メトキシ−2−[[(4−メトキシ−3,5−ジメチル−2−ピリジニル)−メチル]チオ]イミダゾ[4,5−b]ピリジン(100mg,0.303mmol)を無水NPM(0.65ml)に溶解する。(1R,2S)−(+)−1−アミノ−2−インダノール(22.8mg,0.151mmol)およびチタンイソプロポキシド(IV)(22μl,0.076mmol)を添加し、22℃で攪拌し、クメンヒドロペルオキシド(80%,65μl,0.352mmol)を添加する。
【0073】
この均一な混合物について、22℃で5時間攪拌を続ける。この未加工の生成物は、56%の硫化物、2%のスルホンおよび42%のスルホキシドを含み、鏡像体過剰率(e.e)が95%である(キラル液体クロマトグラフ分析)。
【0074】
実施例8
(S)−テナトプラゾールの製造
5−メトキシ−2−[[(4−メトキシ−3,5−ジメチル−2−ピリジニル)−メチル]チオ]イミダゾ[4,5−b]ピリジン(0.4g)、0.5eq.の(1R,2S)−(+)−1−アミノ−2−インダノールおよび0.25eq.(0.091mL)のTi(OiPr)4を、先にオーブンで乾燥させた100μlのガラスシリンジを使用してNPMに順次攪拌しながら添加する。この溶液に0℃で30秒以上かけて、シリンジ(ガラス、250μl、先にオーブンで乾燥)を使用して、1.16eq.(0.26mL)のクメンヒドロペルオキシドを添加する。
【0075】
この均一な混合物について、0℃で6時間攪拌を続ける。上記のシリンジを使用し、0.25eq.(0.091mL)のTi(OiPr)4、0.5eq.の(1R,2S)−(+)−1−アミノ−2−インダノールおよび1.16eq.(0.26mL)のクメンヒドロペルオキシドを30秒以上かけて再び順次添加し、0℃にする。反応媒体は、0℃で1.75時間攪拌され、5℃の冷蔵庫内で一晩維持される。反応の終期には、反応媒体は均質となり、サンセットオレンジ色となる。
【0076】
この未加工の生成物は、0.5%の硫黄、1%のスルホンおよび90%のスルホキシドを含み、鏡像体過剰率(e.e)が99.5%よりも高い(キラル液体クロマトグラフ分析)。
【0077】
実施例9
(S)−テナトプラゾールの製造
NMPをDMFとすること以外は、上記実施例8の記載と同じ方法を用いた。
【0078】
5時間の反応後、(1R,2S)−(+)−1−アミノ−2−インダノール(0.5eq.)、Ti(OiPr)4(0.25eq.)および1.16eq.(0.26mL)のクメンヒドロペルオキシドを、先にオーブンで乾燥させた250μlのガラスシリンジを使用して30秒以上かけて再び順次添加し、0℃にする。この反応媒体は、0℃で攪拌が維持される。
【0079】
5時間後と24時間後にサンプルを採取する。反応の終期には、反応媒体は均質となり、サンセットオレンジ色となる。
【0080】
5H00後および添加前、未加工の生成物は62%の硫黄、0.1%のスルホン、および38%のスルホキシドを含み、鏡像体過剰率(e.e)が99.0%よりも高い(キラル液体クロマトグラフ分析)。
【0081】
24H00後、未精製の製品は13%の硫黄、2.5%のスルホン、および84%のスルホキシドを含み、鏡像体過剰率(e.e)が99.0%よりも高い(キラル液体クロマトグラフ分析)。
【0082】
実施例10
(S)−テナトプラゾールの製造
DMFをDMAとすること以外は、上記実施例9の記載と同じ方法を用いた。
【0083】
5H00後および添加前、未加工の生成物は60%の硫黄、0.8%のスルホン、および38%のスルホキシドを含み、鏡像体過剰率(e.e)が99.0%よりも高い(キラル液体クロマトグラフ分析)。
【0084】
24H00後、未加工の生成物は3%の硫黄、4.7%のスルホン、および90%のスルホキシドを含み、鏡像体過剰率(e.e)が99.0%よりも高い(キラル液体クロマトグラフ分析)。
【0085】
実施例11
(R)−テナトプラゾールの製造
1.endo−iso−ボルネオールの製造
添加アンプルを備えた10mlのフラスコ内で、カンファキノン−3−オキシムを30%となるよう4.5mlのNaOHに溶解する。その黄色懸濁液を0℃まで冷却し、亜鉛粉末を少しずつ30分以上かけてのアンプルを通して添加する。
【0086】
そして、あと10分間温度を0℃で維持する。23℃まで加熱して灰黄色の懸濁液を得た後、黄色が完全に見えなくなるまで、この温度で維持する。灰色の懸濁液を5分間23℃の攪拌下で維持し、5mlのメチルtert−ブチルエーテル(MTBE)で抽出する。有機相を2×2.5mlの水で連続して洗浄し、MgSO4で乾燥し、約20mlの量が得られるまで集める。
【0087】
次に、この溶液を、窒素圧下、23℃で、コンデンサーを備えた250mlのフラスコ内の50mlのMTBEのLiAlH4溶液に、ビュレットを通して滴下して加える。灰色の懸濁液を40℃まで加熱し、18時間40℃で攪拌して維持する。次に、反応媒体を0℃まで冷却し、温度が5℃を超えないようにして2mlの蒸留水を添加する。懸濁液をセライトフィルターにかけ、40mlのMTBE、次に30mlの水で洗浄し、MgSO4で乾燥する。フィルターと濃縮で、0.65gの白い結晶が生成される。
−単離収率49%
−タイター(Titre)80%(NMR 1Hによるシス/トランス比は5/1)
【0088】
endo−iso−ボルネオールの精製:
25mlのフラスコ内で、8.5mlのHCl(6M)に300mgの白い結晶を
溶解する。溶液を100℃まで加熱し、24時間この温度で攪拌を維持する。茶色の溶液を4×8mlのジクロロメタンで洗浄する。50%NaOH(pH=12)を5mlのNaOHを加えることで水相を塩基性化し、3×8mlのMTBEで抽出する。有機相は、MgSO4で乾燥し、フィルターにかけて集め、80℃、1mmHgで昇華する茶色の固体を得る。
【0089】
タイター90%(NMR 1Hによるシス/トランス比は10/1)の白い結晶を120mg得る。構造は質量スペクトロメトリーによって証明された。
【0090】
2.(R)−テナトプラゾールの製造
endo−iso−ボルネオール(0.5eq.)およびチタンイソプロポキシド(IV)(0.25eq.)を素早くNMPの溶液とし、5−メトキシ−2−[[(4−メトキシ−3,5−ジメチル−2−ピリジニル)−メチル]チオ]イミダゾ[4,5−b]ピリジン(100mg,0.303mmol)に添加する。添加の5秒後、2秒間かけてクメンヒドロペルオキシド(1.16eq.)を添加する。この混合物について、20℃で5時間攪拌を続ける。
【0091】
この未加工の生成物は、71%の硫黄、5%のスルホンおよび24%のスルホキシドを含み、鏡像体過剰率(e.e.)が20%(R鏡像異性体)である(キラル液体クロマトグラフ分析)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の一般式:
A−CH2−SO−B(Ia)
(式中、Aは様々に置換されたピリジニル基、Bはイミダゾ−ピリジニル基を含む複素環基)
で表されるスルホキシド誘導体またはその塩の鏡像選択的な製造方法であって、
以下の一般式(I):A−CH2−S−B (I)(式中、AおよびBは上記と同じ意味を有する)の硫化物の鏡像選択的酸化が行われ、
その酸化では、有機溶剤中で、チタン(IV)ベース触媒および環状β−またはγ−アミノアルコールを含むキラル配位子の存在下、酸化剤を使用し、その後、必要に応じて塩基によって塩を生成する製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の製造方法であって、
一般式(I)において、
前記Aが、ピリジニル基、または炭素原子が1〜6の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、炭素原子が1〜6の直鎖もしくは分岐鎖のアルコキシル基、1もしくは数個のハロゲン原子で置換されたメチルもしくはエチル基、アミノ基、アルキル部分が1〜5の炭素原子を含む直鎖もしくは分岐鎖であるアルキルアミノもしくはジアルキルアミノ基から選択される1もしくは数個の置換基を有するピリジニル基を示し、
前記Bが、必要に応じて、1または数個の、炭素原子が1〜6の直鎖または分岐鎖のアルキル基、炭素原子が1〜6の直鎖または分岐鎖のアルコキシル基で置換されているイミダゾ−[4,5−b]−ピリジニル複素環を示す製造方法。
【請求項3】
前記Aおよび前記Bの1または数個の炭素原子が、メチル、エチル、メトキシまたはトリハロゲノメチル基で置換されている請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記Aが、1または数個のメチル、エチル、メトキシまたはトリフルオロメチル基で置換された2−ピリジニル基である請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記Aが4−メトキシ−3,5−ジメチル−2−ピリジニル基であり、
前記Bが5−メトキシ−イミダゾ−[4,5−b]−ピリジニル基である請求項3または4に記載の製造方法。
【請求項6】
得られた鏡像異性体が、アルカリまたはアルカリ土類の対イオンを含む無機塩試薬に反応することで塩が生成される請求項1〜5のいずれかの項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記塩が、ナトリウム、カリウム、リチウム、マグネシウムまたはカルシウム塩である請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記酸化剤がヒドロペルオキシドである請求項1〜7のいずれかの項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記酸化剤がクメンまたはtert−ブチルヒドロペルオキシドである請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記酸化剤が、少なくとも30%の過酸化水素または尿素と複合した過酸化水素(UHP)であり、
脱水剤または適切なモレキュラーシーブを反応媒体に添加する請求項1〜7のいずれかの項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記触媒がチタン錯体である請求項1〜10のいずれかの項に記載の製造方法。
【請求項12】
前記チタン錯体が、チタンイソプロポキシドまたはチタンアセチルアセトナートである請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記配位子が、以下の一般式(II)で表される環状β−またはγ−アミノアルコールであって:
【化1】

式中、
1はアミノ基−NR12またはイミノ基−N=CR12を、G2は−OR3を表し、またはその逆であり、
nは0または1であり、
1およびR2は、同一または異なり、互いに独立し、水素原子または炭素原子が1〜6の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アシル基またはスルホニル基を表し、
3は、水素原子または炭素原子が1〜6の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基またはアリール基もしくはヘテロアリール基を表し、そして、
Yは環状基である請求項1〜12のいずれかの項に記載の製造方法。
【請求項14】
前記環状アミノアルコールが、以下の一般式(III)で表され:
【化2】

式中、
1およびG2は上記の定義を有し、
pおよびqは、同一または異なり、0、1または2であり、
4、R5、R6およびR7は、同一または異なり、水素原子または炭素原子が1〜6の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基を表し、
4とR6および/またはR5とR7は、互いに結合して、脂肪族、芳香族またはヘテロアリールの環を形成することができ、そして、
5およびR7は、炭素原子と共に、互いに結合して単結合または二重結合を形成することができる請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記R4とR6、R5とR7が互いに結合して芳香族環を形成し、アミノ−インダノール型誘導体を構成する請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
前記配位子が、(1S,2R)−(−)−もしくは(1R,2S)−(+)−1−アミノ−2−インダノール、3−エクソ−ジメチルアミノボルネオールまたはシス−2−アミノ−シクロペンタノールである請求項13に記載の製造方法。
【請求項17】
前記酸化反応が、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)およびピリジンから選択される一種または数種の混合物である非プロトン性極性溶剤の溶液中で行われる請求項1に記載の製造方法。
【請求項18】
チタン/配位子触媒系が、反応開始時および反応中の2段階で硫黄に加えられ、第2段階は、酸化剤が新しく添加されてもよい請求項1に記載の製造方法。
【請求項19】
チタンベース触媒および(1R,2S)−1−[2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチル−ベンジリデン−アミノ]−インダン−2−オールで構成されるリガンドを用いて、5−メトキシ−2−[[(4−メトキシ−3,5−ジメチル−2−ピリジニル)メチル]−チオ]−イミダゾ−[4,5−b]−ピリジンの鏡像選択的酸化を行うことで(−)−5−メトキシ−2−[[(4−メトキシ−3,5−ジメチル−2−ピリジニル)メチル]スルフィニル]イミダゾ[4,5−b]−ピリジンを得る請求項1〜18のいずれかの項に記載の製造方法。
【請求項20】
前記酸化反応が、中性媒体の溶剤中で行われる請求項19に記載の製造方法。
【請求項21】
前記反応が、−10〜30℃の温度で行われる請求項1〜20のいずれかの項に記載の製造方法。

【公表番号】特表2008−515860(P2008−515860A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−535193(P2007−535193)
【出願日】平成17年10月5日(2005.10.5)
【国際出願番号】PCT/FR2005/002447
【国際公開番号】WO2006/037894
【国際公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(506419021)シデム ファーマ ソシエテ アノニム (3)
【Fターム(参考)】