スルーホールの半田付けによる電子機器製造方法とそのための半田鏝
【課題】電子機器の多層基板やスルーホール基板(ランド)に設置された金属ピンのスルーホール半田付けにおいて、金属ピンの熱容量が大きく、充分な予熱が行なえない場合でも、品質の良いスルーホール半田付けを実現する。
【解決手段】被半田部分として、特にスルーホールの内面と金属ピンの予備加熱を適切に行うため、貫通孔を持った筒状半田鏝を使用し、半田鏝を被半田付け部分に接触させる、及び/又は貫通孔に不活性気体を流して、加熱気体を被半田付け部分に供給し予備加熱することにより、適切なスルーホール半田付けが達成できるようにする。
【解決手段】被半田部分として、特にスルーホールの内面と金属ピンの予備加熱を適切に行うため、貫通孔を持った筒状半田鏝を使用し、半田鏝を被半田付け部分に接触させる、及び/又は貫通孔に不活性気体を流して、加熱気体を被半田付け部分に供給し予備加熱することにより、適切なスルーホール半田付けが達成できるようにする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の基板のスルーホールに取り付けられた電子部品のピン等を半田付けする電子機器の製造方法であって、特に熔融半田をスルーホールに流し込んで充填溶接する製造方法に関するものであり、更にそのために使用する半田鏝に関するものである。
【背景技術】
【0002】
これまで、電子機器の配線基板(プリント基板)のスルーホールに電子部品の金属ピンの端子設置し、半田付けして製品を製造する方法として、半田フラックスを滴下すると共に、端子を熱風加熱する方法が知られている(特許文献1)。また、金属ピンの予熱のために、基板表面から突出している棒状の金属ピンを覆うような空洞部を形成した半田鏝が知られている(特許文献2)。一方、レーザービームによる半田熔融方法を用いるが、窒素ガスと水素ガスの混合ガスを加熱して、溶接部位に吹付けて呼び加熱する方法が知られている(特許文献3)。これらは、いずれも半田付け箇所に加熱気体を吹き付け予備加熱する方法である。このように予備加熱を適切にすることがスルーホールに確実な半田付けを行なうために必要であった。
【0003】
しかし、金属ピンの径が1mm前後と太く、かつ長い場合には、溶接対象である金属ピンの熱容量が大きくなり、予熱操作を行なっても予熱不足となり易かった。そのため、スルーホールで、このような径の太い金属ピンを十分に半田付けをすることは困難であった。
また、半田鏝の鏝先を基板に接触させ予熱を過剰に行なえば、配線基盤の樹脂部分が熱変性を起こして焦げ、基板の劣化が生じる。従って、適切な予熱を行ない、品質のよいスルーホール半田付を行なうことが求められていた。そして、品質の揃ったスルーホール半田付けによる、精密電子機器の製造方法が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−335715号公報
【特許文献2】特開2005−93508号公報
【特許文献3】特開2001−252762号公報
【特許文献4】WO2008/023461
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、電子機器のスルーホール基板に設けられたスルーホールとそのスルーホールに挿入された金属ピンを適切に予備加熱し、半田のフラックス飛散を防止して、ランドに金属ピンを品質よく半田付けする方法を提供することである。また、その半田付方法に使用する、好適な半田鏝を提供することを目的とする。更には、これらを用いて、スルーホール半田付けによる電子機器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、図1に示されるような電子機器のスルーホール基板に設けられたスルーホールとそのスルーホールに挿入された金属ピンの半田付けに関して、鋭意検討の結果、筒状の半田鏝(特許文献4)を使用して予備加熱すると、図2に示されるように、従来半田付けが難しかったスルーホール内側面も良好に半田付けできることを見出した。
即ち、ヤニ入りの糸半田片を使用し、半田鏝の先端面はランドと接触し、予備加熱を行う。するとスルーホール部分の内面はランド面からの熱伝導で加熱され、金属ピンは半田鏝の先端部の貫通孔内で周囲から加熱(主に輻射熱加熱)される。以上のようにして、図1の被半田付け部分が効率良く予備加熱される。
その後、糸半田片を貫通孔に投入供給すると、図2a)で示されるように、供給された半田片は金属ピン部分で加熱熔解され、まずフラックスが流出する。次いで予備加熱されたランド、スルーホール内側面、金属ピンにフラックスが広がる。そして、広がったフラックスは被半田付け部分の表面の酸化膜や汚れを化学的に除去し、浄化する。また、フラックスは半田の表面張力を低下させ、ねばりを弱くして半田の濡れ(流れ)を良くしている。
一般に、半田付ではこのフラックスを如何に被半田付け部分に広げるかが大切になっている。本発明では、上記の貫通孔を持つ筒状の半田鏝を使用するため、貫通孔の上部を閉鎖するか、あるいは不活性気体を貫通孔の上部から供給することにより、発生した半田片のフラックスは被半田付け部分にすべて供給されることになる。即ち、図2a)に示されるように、ランドに対して垂直に投入された半田片の先端から流れ出したフラックスがスルーホール部分に流れ込み、スルーホールの内側面に広がることになる。そのため、図2b)に示されるように、スルーホール内側面全体が良好に半田付けできることを見出した。
一方、従来の鏝を用いた半田付け方法では、フラックスが鏝先に付着しているため半田表面に広がり、被半田付け部分には十分な量のフラックスが供給されない状況になっていた。
【0007】
そこで、上記の半田鏝(特許文献4)を使用して、更に好適な半田付けの条件を検討したところ、金属ピンとランドのスルーホール部分に色々な手段で適切な予備加熱を行なうと、品質の良いスルーホール半田付けができることを見出した。即ち、被半田付け部分(金属ピンとランド、スルーホール内側面)の予備加熱には、
a)半田鏝の鏝先の接触による予備加熱、
b)熱風(加熱気体)による予備加熱、
c)半田鏝からの輻射熱による予備加熱、
d)熔融半田による加熱
等の手段が存在する。本発明者は、これらの手段を組み合わせて、被半田付け部分に対して適切な予備加熱を行うことが出来きることを見出した。その結果、安定して品質の良いスルーホール半田付けができることを見出した。
なお、これらの予備加熱方法のそれぞれの手段の概要は以下の通りである。
【0008】
a)半田鏝の接触による予備加熱(温調チップ又は温調キャップの装着):
図2に示されるように、半田鏝をランドに接触させ、予備加熱を行って、被半田付け部分の温度を上昇させる。しかし、耐熱グレードの低い回路基板や、熱容量が小さい回路基板では、予備加熱のために半田鏝先端と長く接触したランド部分の回路基板は熱的に劣化する場合がある。そのようなランドの焼け防止のために、図3〜図4に示されるように、温調チップ又は温調キャップを装着して、半田鏝先端部の温度を適切にコントロールする。
【0009】
更に、図9に示されるように、クッション機構を有する支持台に回路基板を設置する。耐熱グレードが高い回路基板や、熱容量が大きい回路基板のスルーホール半田付けを行なう場合には、予備加熱が充分可能であるので、温調チップ又は温調キャップを装着することなく、またアジャスターピンを設定せず、半田鏝をランドに直接接触させる。
なお、ランド(被半田付け部分)と鏝先の先端面はクッション機構のスプリングにより一定圧で接触することになるので、回路基板の変形も吸収することができ、半田鏝と回路基板(ランド)を密着させることができる。
一方、耐熱グレードの低い回路基板や、熱容量が小さい回路基板を使用する場合には、予備加熱による回路基板の熱的劣化を回避するため、図10に示されるように、アジャスターピンで回路基板を押し下げ、コテ先端と被半田部分の間に必要な微小隙間(例えば、1mm以下)を設けることができる。これにより、接触による予備加熱ではなく、輻射熱による予備加熱に切り替えることが出来る。即ち、アジャスターピンで設定された微小隙間の距離により、鏝の先端からランドに伝える熱量(輻射熱)をコントロールできる。
【0010】
b)加熱気体による被半田付け部分の予備加熱:
図11a)で示されるように、加熱気体を被半田付け部分に供給する方法がある。即ち、貫通孔を持った筒状の半田鏝の上部(糸半田片の投入孔)をシャッターで塞ぐ。次いで、貫通孔上部の気体導入孔から不活性気体を供給する。供給された気体は半田鏝の貫通孔内部で加熱され、鏝の先端から吐出される。鏝先はランドに接触しているので、コテ先から吐出された気体は効率よく(ほぼ全量)スルーホール内側面に供給される。そのため、本発明では、特許文献3のような、加熱気体を上面から噴射する方式とは異なり、スルーホール内側面を効率よく加熱できている。また、本発明を多層基板のスルーホールに適用しても、同様に効率よく加熱することが出来ている。
更に、使用する気体が窒素ガスの場合、特許文献3に記載された問題の多い多層基板スルーホールの半田付(特許文献3、[0025]〜[0027])であっても、本発明では密閉状態の窒素ガス雰囲気中で半田付を行うため、窒素ガスの効果をより向上させることが出来、品質の高い半田付が可能である。
【0011】
c)半田鏝からの輻射熱による予備加熱:
本発明は、貫通孔を持った筒状の半田鏝であるので、先端部の貫通孔内に突出している端子(金属ピン)は、半田鏝からの輻射熱を受けて効率的に加熱される。従って、端子(金属ピン)の径が太く、熱容量が大きいものが使用される場合であっても、貫通孔内部であれば半田鏝の輻射熱を効率的に受けることができるため、より安定した予備加熱ができる。更に、図10に示されるように、アジャスターピンで回路基板を押し下げ、半田鏝とランドの接触を回避し、輻射熱による予備加熱を行うことが可能となっている。
本発明者らは、これらの知見を総合して、本発明を完成した。
【0012】
即ち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)貫通孔を持った筒状の半田鏝を用いて、電子機器の多層基板やスルーホール基板のスルーホール部分と端子(金属ピン)の被半田付け部分を予備加熱し、
糸半田片を貫通孔上部から投入して、筒状半田鏝の先端部(貫通孔先端部)で熔解し、
被半田付け部分をスルーホール半田付けすることを特徴とする電子機器の製造方法であって、予備加熱方法が、以下の工程を選択し組み合わせて行なう方法である、
a)温調チップ又は温調キャップを装着した筒状半田鏝を用いて、被半田付け部分に接触させ、被半田付け部分の予備加熱を行う、
b)アジャスターピンにより、半田鏝と被半田付け部分の間の距離を調整し、被半田付け部分に対して半田鏝の輻射熱による予備加熱を行う、
c)加熱気体を被半田付け部分に流し、被半田付け部分の予備加熱を行う、
ことを特徴とする、電子機器の製造方法。
(2)半田鏝が窒化アルミであり、温調チップがジルコニアまたはステンレスである、上記(1)記載の製造方法。
(3)半田鏝の鏝先端内部(貫通孔内部)の温度が、350〜500℃であり、温調チップ又は温調キャップの表面温度が200〜370℃である、上記(1)又は(2)に記載の製造方法。
(4)アジャスターピンにより、半田鏝と被半田付け部分の間の距離が0.1mm以上で、1mm以下である、上記(1)に記載の製造方法。
(5)端子(金属ピン)の径が0.8〜1.5mmである、上記(1)に記載の製造方法。
(6)電子機器の回路基板をクッション機構を有する支持台に設置して行なうことを特徴とする、上記(1)に記載の製造方法。
(7)半田鏝の貫通孔の内径が0.6〜2mmである、上記(1)に記載の製造方法。
(8)貫通孔を持った筒状のセラミックス製の半田鏝であって、
a)鏝の先端部がステンレス製またはジルコニア製の温調チップまたは温調キャップが装着されており、
b)貫通孔の先端部の内径が0.6〜2mmである、
ことを特徴とする、セラミックス製の半田鏝。
(9)セラミックスが窒化アルミである、上記(8)記載の半田鏝。
(10)ステンレス製の温調チップまたは温調キャップの厚さが、0.3〜0.7mmである、上記(8)記載の半田鏝。
(11)ジルコニア製の温調チップまたは温調キャップの厚さが、0.1〜0.3mmである、上記(8)記載の半田鏝。
(12)鏝の後端部に貫通孔に気体を導入するための導入孔が開設されていてもよい、上記(8)記載の半田鏝。
(13)貫通孔の形状が、鏝の先端部の内径は、後端部の貫通孔の内径より小さく、先端部で傾斜がついて狭くなっていることを特徴とする、上記(8)記載の半田鏝。
【発明の効果】
【0013】
本発明の予備加熱手段を組み合わせた、半田付け方法を用いることにより、被半田付け部分の耐熱グレード(主に回路基板の樹脂)や熱容量(金属ピンやランド)の大小に係らず、スルーホール半田付けが効率的に品質よく実施できるようになった。特に、窒素等の不活性ガスを半田鏝の貫通孔に供給し、加熱された不活性ガスを金属ピンとスルーホール部分(ランドやホール内側面)に当てて加熱することにより、これまでスルーホールの半田付けが困難であった、例えば径が0.8〜1.5mmである熱容量の大きい端子(金属ピン)でも、容易に高品質なスルーホールの半田付けができるようになった。しかも、糸半田片が熔融して発生するフラックスがスルーホール内側面に流れ込み、スルーホール内側面の半田付けが良好に達成できるようになった。以上のように、本発明の製造方法により、スルーホール半田付けが必要である電子機器において、品質の良い電子機器の製造が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のスルーホール半田付けの対象となっている被半田付け部分の概略図(断面図)である。
【図2】本発明による半田鏝とスルーホール部分の接触による予備加熱と半田片の投入・熔解によるスルーホール半田付けの状況を説明する概略図(断面図)である。
【図3】鏝先に温調チップを設置した半田鏝による、被半田部分の予備加熱を表わす断面図である。
【図4】鏝先に温調キャップを装着し、被半田部分の予備加熱を表わす断面図である。
【図5】鏝先に温調チップした、本発明に使用する半田鏝の形状の一例を表した断面図である。
【図6】本発明の半田鏝の鏝先に装着された温調チップの厚みと温調チップの表面温度の相関関係を表わしたグラフである。
【図7】1.5mmのステンレス製の温調チップが設置されている半田鏝の形状の一例を表した断面図である。
【図8】0.2mmのジルコニアセラミック製の温調チップが設置されている半田鏝の形状の一例を表した断面図である。
【図9】本発明の半田鏝がスルーホール部分に接触して予備加熱できるように、アジャスターピンが設置されていることを表わす、本発明の電子機器製造装置。
【図10】本発明の半田鏝がスルーホール部分に接触せず、微小隙間を開け輻射熱による予備加熱ができるように、アジャスターピンが設置されていることを表わす、本発明の電子機器製造装置。
【図11】不活性ガス等の気体を流し、貫通孔内で加熱して、スルーホール部分や金属ピンを予備加熱した後、スルーホール半田付けを行なう方法を表わした概略図(断面図)である。
【図12】熱容量が大きい金属ピンの一例を示した概略図(断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を、添付図面に示された好ましい態様を参照して更に詳細に説明する。
本発明の製造方法で用いられる半田鏝は、図5や図11の形状を持つものであり、これを用いて図2に示されるように電子機器のスルーホール部分(図1)の半田付けが実施される。即ち、本発明の電子機器のスルーホール半田付け製造方法とは、図3〜図4、図11に示されるように、被半田付け部分の予備加熱の工程に特徴がある。本発明の予備加熱は、次の4つの方法に分かれる。
a)半田鏝の鏝先と被半田付け部分との接触による予備加熱、
b)熱風による被半田付け部分の予備加熱、
c)半田鏝からの輻射熱による予備加熱、
d)熔融半田による加熱
【0016】
本発明の半田鏝は、600℃程度の温度に耐えることが出来て少なくとも鏝先先端部と貫通孔内面が半田に対して濡れ難い性質を有するものであれば良く、単一材料からなっていても複数部材の組合せであってもよい。単一部材からなる場合には、窒化アルミニウム、炭化ケイ素などの高熱伝導性セラミックが望ましい。複数部材の組合せとしては、銅等の高熱伝導性金属に、セラミック、またはステンレス、チタンなどの非半田濡れ性金属で被覆するか、あるいは貫通孔や鏝先の先端部に非半田濡れ性金属部材のチップや筒を嵌合することができる。
更に、半田鏝の先端部に温調チップ又は温調キャップを装着することによって、半田鏝が接触する回路基板やランド等(図1の被半田付け部分)への伝熱量を制御することが出来る。温調チップは鏝本体よりも熱伝導率が小さい材料で作製する。例えば、半田鏝が窒化アルミの場合、温調チップはジルコニアを使用する。なお、該温調チップは溶射、接着、機械的に固定、螺子留め等により装着する。温調キャップは、熱伝導率が低い、セラミック等の非濡れ性材料を用いて、図4b)に示されるように、鏝先の先端を覆うように装着する。また、鏝先の先端部を熱伝導率の低い材料で覆うため、鏝の先端部温度の低下を防止できる。
温調チップ又は温調キャップを装着することにより、鏝先端の内部(貫通孔内部)は、半田を溶融させる温度(例えば、350〜500℃)であるが、被半田付け部分と接触する鏝の先端面は回路基板を熱劣化させない温度(例えば、200〜370℃)とすることができる。
本発明では、半田鏝を半田の熔解と半田ボールの飛散防止に使用する(特許文献4)だけでなく、被半田付け部分の予備加熱にも使用するため、電子機器の回路基板の材質によっては、高温の半田鏝での予備加熱のため回路基板の樹脂等が熱変性することが生じる。そこで、半田鏝本体の設定温度を下げるか、上記温調チップ又は温調キャップとして適切な低伝熱性の材料質を選定するか、あるいは半田鏝の接触時間を好適な範囲に設定することにより、回路基板の熱変性や劣化を回避することが出来る。例えば、回路基板(ランド)の焼け防止のために、図3〜図4に示されるように、温調チップ又は温調キャップを半田鏝の鏝先に装着し、ランドに接触する鏝先の温度をコントロールできる。例えば、図6に示されるように、鏝の先端温度は温調チップの厚さで十分制御できている。
本発明の温調チップ又は温調キャップは、半田鏝本体の熱伝導度より低い材質のものであれば何でもよい。例えば、半田鏝本体が窒化アルミの場合、温調チップ又は温調キャップとして、ステンレス又はジルコニアセラミックスを使用することができる。例えばステンレス板(SUS430)を用いれば、図6に示されるように、板の厚みによる伝熱量の制御が可能である。例えばジルコニアセラミックスを使用する場合には、ステンレスより更に熱伝導性が低く、約8分の1であるので、温調チップ等の板の厚みがステンレスの8分の1で済むことになる。その結果、図8に示されるように温調チップ等の板の厚みが0.2mmで済むので、半田片が貫通孔内面の高熱伝導性セラミックに接触しやすくなり、半田の熔解がより容易になる。温調チップ又は温調キャップの好ましい板の厚さは、0.1〜1.2mmを挙げることができる。このように温調チップ又は温調キャップの材質としてステンレスを使用する場合には、より好ましい板の厚さは、0.3〜0.7mmを挙げることができる。また、ジルコニアセラミックスを使用する場合には、0.1〜0.3mmを挙げることができる。
【0017】
本発明の貫通孔の内径は半田片が通過する距離であれば特に限定されない。特に半田が熔解する半田鏝先端部の開口部の孔径が重要であり、開口部の内径は、使用する半田片の径以上であれば良く、使用する半田片の長さ以下であることが好ましい。なお、ランド径が2mmで半田鏝先端部の開口部の孔径が3.5mm以上になると、被半田付け部分が十分加熱されないため、ランド部分に熔融半田が流れ込まない場合が起きる。従って、半田鏝開口部の孔径は、0.5mm以上で、3.5mm以下の範囲が好適である。また、糸半田の長さを大きく超えるような孔径は好ましくないことから、好ましい孔径としては0.6〜2.5mmの径を挙げることができる。より好ましくは、0.6〜2.0mmの径を挙げることができる。更に、被半田付け部分のサイズや端子(金属ピン)の径にも因るが、金属ピンの径が0.8〜1.2mmと太い場合には、1〜2mmの孔径がより好ましく、金属ピンの径が0.2〜0.6mmと細い場合には、0.6〜1.5mmの孔径がより好ましいものである。
【0018】
本発明の製造方法は、被半田付け部分に対する予備加熱の方法が一つの特徴である。まず、「a)半田鏝の鏝先と被半田付け部分との接触による予熱」としては、半田鏝を被半田付け部分の金属ピン及び/又はランドのスルーホール部分に一定時間接触させ、被半田付け部分の温度が半田の融点近傍になるように予備加熱することである。しかし、半田鏝の直接接触による予備加熱では、耐熱グレードの低い回路基板や、熱容量が小さい回路基板の場合には、予備加熱のために半田鏝先端と長く接触したランド部分の回路基板は熱変性、熱劣化することが起きる。それを回避するため、図3〜図4に示されるように、温調チップ又は温調キャップを装着した半田鏝をランド部分に接触させ、熱の伝導を適切にコントロールする。例えば、金属ピンの長さが長くて径が太い場合や、多層基板等のスルーホール部分の孔の深さが深い場合のように、被半田付け部分の熱容量が大きい場合には、被半田付け部分全体を予備加熱して半田の融点近傍にするためには、長時間の半田鏝の接触が必要になる。そうすると過度な予備加熱により、熱変性が起こり易くなる。そこで、温調チップ等を装着した半田鏝を使用し、温調チップ等の表面温度を図5のように低下させ、熱伝導度も低下させて、回路基板の樹脂等の劣化を回避して、充分な予備加熱をすることが出来るようになった。その結果、良好な品質のスルーホール半田付けができるようになった。
【0019】
なお、回路基板を保持する装置にクッション機構を設置することにより、例えば図9に示されるように、スプリングにより一定圧で半田鏝と回路基板を接触させることができ、回路基板の変形も吸収でき、更に半田鏝と回路基板(ランド)を密着させることができるようになる。
耐熱グレードが高い回路基板や、熱容量が大きい回路基板を使用する場合には、予備加熱が充分行なえるので、まず半田鏝が回路基板(ランド)に接触しても、アジャスターピンが働かないように設定する。次いで、コネクターの端子(金属ピン)をスルーホール部分に挿入し、半田鏝をランドに接触させ、予備加熱を行った後、半田片を投入して半田付を行う。
耐熱グレードの低い回路基板や、熱容量が小さい回路基板を使用する場合には、予備加熱による回路基板の熱的劣化を回避するため、図10に示されるように、アジャスターピンで回路基板を押し下げ、鏝の先端と被半田付け部分の間に必要な微小間隔(例えば、1mm以下)を設ける。この微小隙間の距離により鏝の先端からランドに伝える輻射熱の熱量をコントロールすることが出来る。なお、アジャスターピンは鏝の近傍に設けられ、半田鏝の移動に連動して回路基板を押し下げる働きをする。
上記の鏝のコテ先端と被半田付け部分の間隔は、投入した半田片が貫通孔に接触できる状態が維持できる範囲の間隔である。即ち、半田片が熔解しやすい状態が保持できることである。従って、この間隔は1mm以下であり、0.1mm以上であることが好ましい。より好ましくは0.5mm以下が好適である。
【0020】
「b)熱風による被半田付け部分の予備加熱」としては、図11a)に示されるように、本発明に使用する筒状半田鏝の貫通孔の後端部をシャッター等で閉鎖し、気体導入孔から不活性気体を導入し、貫通孔内で加熱し、加熱気体を金属ピンとスルーホール内側面の隙間を通過させる。あるいは、図10のように、半田鏝が回路基盤と接触しない場合には、加熱気体で、近接する回路基板表面と金属ピン、スルーホール部分をゆるやかに予備加熱する。
本発明で使用する気体は、空気、不活性ガス(窒素ガス)、加熱水蒸気等の加熱に好適なものであれば何でもよい。鏝の先端から吐出された気体によりスルーホール部分と端子(金属ピン)が効率よく加熱されることになるので、図12に示される、熱容量の大きい端子(例えばφ0.8〜φ1.5mm)であっても、適切にスルーホール半田付けができる。
使用する気体が、窒素等の不活性ガスであれば半田や被半田付け部分の酸化を防止できることになる。また、フラックスの活性化を高め、高品質な半田付が可能となる。使用する気体が加熱水蒸気であれば、加熱水蒸気の熱容量が大きいので(空気の10倍以上)、効率よく被半田付け部分を加熱できることになる。特に、使用する気体が窒素ガスの場合、よく知られているように半田の濡れ性、広がり性が向上する。また、特許文献3に示された問題の多い多層基板スルーホールの半田付(特許文献3、[0025]〜[0027])に関しても、本発明ではほぼ密閉状態の窒素ガス雰囲気中で半田付を行うことが可能であるため、他の方式に比べ、窒素ガスの効果をより向上させることができる。その結果として、本発明では、より品質の高いスルーホール半田付が可能となっている。
【0021】
「c)半田鏝からの輻射熱による予熱」としては、前述のアジャスターピンによる半田鏝と回路基板に微小間隔を設定する場合の予備加熱と、半田鏝の貫通孔内に突出している端子(金属ピン)に対する予備加熱のことを言う。例えば、端子(金属ピン)の径が太く、熱容量が大きいものであっても、貫通孔内部であれば半田鏝の輻射熱を効率的に受けることができるため、予備加熱が行いやすくなっている。
「d)熔融半田による加熱」とは、熔融半田がスルーホール内側面部分に流れ込んだ場合に、熔融半田の持つ熱量(凝固熱等)が熔融半田の接触部分に伝わり、被半田付け部分の温度を上昇させる。半田付けに使用される半田片の量が多ければ、加熱に用いられる熱量も多くなるが、半田片の使用量が少なければ、その効果も限定的なものとなる。従って、スルーホールに適量な半田量でスルーホール半田付けを行うとき、被半田付け部分の熱容量が大きい場合には、充分な別途の予備加熱が必要となる。
【0022】
本発明は、回路基板のスルーホール半田付けを行う方法であり、使用する糸半田の量も、スルーホール部分の大きさや金属ピンとの隙間のサイズによって変動するが、約1〜60mgの量が使用できる。より微小なスルーホール半田付けのために、約1〜30mgの半田量を使用できる。
糸半田の径は、0.3〜1.2mmの範囲のものが汎用されている。従って、使用する糸半田の量によって、糸半田の径と長さを選択することが出来る。例えば、使用半田量が約6mgの場合には、糸半田として径が0.8mm、長さが約2.2mmのものを使用できる。
従って、目的とするスルーホール半田付けに対応して、適宜、糸半田の径と長さを調整することが出来る。更に、糸半田の径と半田付けする金属ピンの径の太さに対応して、半田鏝の貫通孔の内径(特に鏝先の開口部の内径)が適切なものを選択する。例えば、糸半田と金属ピンの径が0.8mmのものを使用する場合には、貫通孔の内径(特に鏝先の開口部の内径)は、径が1.2mmのものを使用することができる。
【0023】
本発明における半田鏝の先端部の形状は、被半田付け部分の形状(ランド部分の形状)に応じて適宜選択することができる。しかし、被半田付け部分が半田付けに適切な温度になるまで加熱するため、半田鏝に適切な接触面積があることが必要である。従って、被半田付け部分に接触する半田鏝の接触面積は、約1〜20平方mmであることが好ましい。より好ましくは、約3〜9平方mmを挙げることができる。
なお、予備加熱を効果的に行なうため、ランド部位と半田鏝との密着性を向上させることが必要である。そのために、例えば図9〜10に示されるようなクッション機構を回路基板保持装置に導入することが好ましい。
本発明の被半田付け部分とは、図1に示されるような電子機器の回路基板(配線基板)に挿入された端子(金属ピン)とそれを収納するスルーホール孔部分(スルーホール内側面)のことを言う。
【0024】
本発明のスルーホール半田付けによる電子機器の製造法とは、特許文献4で開示の貫通孔を持った筒状の半田鏝を用いて、電子機器の多層基板やスルーホール基板のスルーホール部分と端子(金属ピン)の被半田付け部分(図1)を予備加熱することを特徴としているものである。即ち、図5の半田鏝を用い、図2a)で示されるように糸半田片を貫通孔上部から投入して、筒状半田鏝の先端部(貫通孔下部)で熔解する。予備加熱をしている結果として、図2b)のようにスルーホール半田付けが達成されることになる。そこで、本発明のスルーホール半田付けには、この適切な予備加熱が必須の工程と言うことになる。
本発明の予備加熱方法とは、即ち以下の工程を選択し組み合わせて行なう方法である。例えば図3または図4のように、温調チップ又は温調キャップを装着した筒状半田鏝を用いて、被半田付け部分に接触させ、図9のように被半田付け部分の予備加熱を行う方法と、
図10のようにアジャスターピンにより、半田鏝と被半田付け部分の間の距離を調整し、被半田付け部分に対して半田鏝の輻射熱により予備加熱を行う方法と、更には図11のように、加熱気体を被半田付け部分に流し、被半田付け部分の予備加熱(特にスルーホール内側面の予備加熱)を行う方法である。
そして、これらの予備加熱方法は、組合せて用いることができる。例えば図11a)では、温調チップを装着した筒状半田鏝を用いてランド部分の予備加熱を行なうと共に、加熱気体によるスルーホール内側面の予備加熱を行なっている。これにより、効果的な予備加熱が行なえている。一方、図10に示されるように、アジャスターピンで調整して、半田鏝と被半田付け部分の間に微小な間隔を設定する場合にも、加熱気体を被半田付け部分に流すことによって、半田鏝からの輻射熱による予備加熱と共に加熱気体による予備加熱も行うことができる。これにより、熱分布に偏りのない予備加熱が出来ることになる。
以上の予備加熱により、品質のよいスルーホール半田付けが行えるようになった。
【実施例】
【0025】
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に何等限定されるものではない。
【0026】
(実施例1)温調チップを用いた半田鏝を用いるスルーホール半田付け
・ ステンレス製温調チップの厚みとランドへの接触面の温度:
図5に示されるような半田鏝を作製した。材質は窒化アルミニウムで、熱伝導率(W/m/K)は、170であった。そして、その半田鏝の先端にステンレス板を介在させステンレス板表面の温度を測定した。
ステンレス板の材質(JIS)は、SUS430であり、熱伝導率(W/m/K)が、25であった。ステンレス板の板厚t(mm)は、0.1mm、0.3mm、0.7mmのものを用いた。鏝先のステンレス板表面の温度を熱伝対にて測定した。その結果を図6に示す。
図6に示されるように、鏝の先端面のステンレス板(温調チップ)温度は板厚に反比例して低下することが明らかとなった。即ち、板厚0.7mmのステンレス板を鏝の先端面に設置すれば鏝の先端面の温度を約75℃低下させることが出来ることが分かった。このことから、ステンレス板の厚さで半田鏝の鏝先端面の温度を調整できることになる。この結果、回路基板の耐熱グレードに応じて温調チップの板の厚みを増減させ、ランドに与える熱ダメージを少なく出来るようにした。
【0027】
(2)温調チップの種類と厚みの影響:
ステンレスの板厚を増やせば鏝の先端面温度はさらに低下するが、鏝の先端内部温度も低下させることになる。しかし、鏝の先端内面(貫通孔内)は、半田片を熔融させるために高温に保つ必要がある。特に、微小片ではステンレスの板厚が問題になる。即ち、上記(1)の半田鏝を用いて、微小半田片(長さ1.5mm)とステンレス板温調チップ(厚さ1.5mm)の場合の例を、図7に示す。
鏝温度を上記(1)の場合と同じにした場合、図7に示すように鏝の先端内部(貫通孔内部)は熱伝導の悪いステンレスで囲まれることになり、半田片を溶かす時間が長くなったり、又は半田片を溶かすことができなくなったりする。
そこで、鏝の先端面の温度を低下させ、そして鏝の先端内部を高温に保つためには、熱伝導率がステンレスより更に低い材料を温調チップとして鏝の先端面に装着すればよい。熱伝導率の低い材料としては、熱伝導率が15W/m/Kのオーステナイト系ステンレス鋼(SUS304)やジルコニアセラミック(熱伝導率3W/m/K)等が考えられる。特に、ジルコニアセラミック(熱伝導率3W/m/K)の熱電率はフェライト系ステンレス鋼(SUS430)の1/8程度であり、鏝の先端に装着する材料としては好ましいと考えられる。なお、キャップ状や板状のジルコニアセラミックを鏝の先端面に装着しても良いが、ジルコニアセラミックを溶射により鏝の先端に積層してもよい。
まず、図8で示されるジルコニアセラミック温調チップ(厚さ0.2mm)で装着された半田鏝を作製し、微小半田片(長さ1.5mm)を用いて、半田の溶解時間を上記(1)の場合と対比した。
温調チップ厚さが半田片長さの1/8程度になるので、鏝の先端内部(貫通孔内)は高温(420℃)になっていた。それ故、半田片を短時間(1.5秒以下)で溶かすことができた。
【0028】
(実施例2)アジャスターピンを用いるスルーホール半田付け
図9や図10に示されるように、アジャスターピンを用いて、半田鏝の先端部とランドの間隔を調整する。例えば、耐熱グレードが高い回路基板や、熱容量が大きい回路基板の場合には、コテ先端と長く接触しても、ランド近接部の回路基板が熱劣化することはない。従って、本発明のアジャスターピンは、回路基板に非接触の位置を取る。図9には、耐熱グレードが高い回路基板の例が図示されている。また、
ランド部分(被半田付け部分)と鏝先の先端面はスプリングにより一定圧で接触するようになっている。そのため、回路基板の変形も吸収できる。
一方、耐熱グレードの低い回路基板や、熱容量が小さい回路基板では、鏝の先端と接触したランド近接部の回路基板が熱劣化する場合がある。そこで、そのような材質の回路基板の場合には、図10に示すようにアジャスターピンで回路基板を押し下げ、鏝の先端と被半田付け部分との間に0.2mmの隙間を設ける。
この隙間により、鏝の先端からランドに伝える熱量をコントロールし、耐熱グレードの低い回路基板の熱変性を回避して、目的とするスルーホール半田付けを行うことができる。
【0029】
(実施例3)加熱気体による予備加熱を用いるスルーホール半田付け
金属ピンの径が約1.3mmと太く、長さも約20mmと長く、スルーホールの孔径が2.5mmで、スルーホール孔の深さが5mmである場合、端子(金属ピン)とランドの熱容量が高いため、なかなか予備加熱することが困難であった。そのため、被半田付け部分の温度を半田の融点付近まで加熱することが難しかったので、スルーホール半田付けを品質良く行うことは難しかった。
そこで、図11a)のように、半田鏝貫通孔の上部から窒素ガスを少しづつ導入し、スルーホール孔の内部を加熱された窒素ガスが流れるように設定した。そうすると、被半田付け部分は加熱窒素で予備加熱が充分行なうことができた。また、投入された糸半田片からフラックスが発生すると、窒素気流に乗ってスルーホール孔の内部にもフラックスが広がることとなった。その結果、図11b)に示されるように熱容量の高い被半田付け部分(金属ピンやスルーホール孔部分)であっても、良好なスルーホール半田付を行うことができた。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の製造方法を使用することにより、スルーホールの半田付けが精度よく良好に実施できるようになった。本発明により、端子(金属ピン)や回路基板(ランド)の耐熱性や熱容量の如何に係らず、品質の良好なスルーホール半田付けが行われた電子機器を製造出来るようになった。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の基板のスルーホールに取り付けられた電子部品のピン等を半田付けする電子機器の製造方法であって、特に熔融半田をスルーホールに流し込んで充填溶接する製造方法に関するものであり、更にそのために使用する半田鏝に関するものである。
【背景技術】
【0002】
これまで、電子機器の配線基板(プリント基板)のスルーホールに電子部品の金属ピンの端子設置し、半田付けして製品を製造する方法として、半田フラックスを滴下すると共に、端子を熱風加熱する方法が知られている(特許文献1)。また、金属ピンの予熱のために、基板表面から突出している棒状の金属ピンを覆うような空洞部を形成した半田鏝が知られている(特許文献2)。一方、レーザービームによる半田熔融方法を用いるが、窒素ガスと水素ガスの混合ガスを加熱して、溶接部位に吹付けて呼び加熱する方法が知られている(特許文献3)。これらは、いずれも半田付け箇所に加熱気体を吹き付け予備加熱する方法である。このように予備加熱を適切にすることがスルーホールに確実な半田付けを行なうために必要であった。
【0003】
しかし、金属ピンの径が1mm前後と太く、かつ長い場合には、溶接対象である金属ピンの熱容量が大きくなり、予熱操作を行なっても予熱不足となり易かった。そのため、スルーホールで、このような径の太い金属ピンを十分に半田付けをすることは困難であった。
また、半田鏝の鏝先を基板に接触させ予熱を過剰に行なえば、配線基盤の樹脂部分が熱変性を起こして焦げ、基板の劣化が生じる。従って、適切な予熱を行ない、品質のよいスルーホール半田付を行なうことが求められていた。そして、品質の揃ったスルーホール半田付けによる、精密電子機器の製造方法が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−335715号公報
【特許文献2】特開2005−93508号公報
【特許文献3】特開2001−252762号公報
【特許文献4】WO2008/023461
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、電子機器のスルーホール基板に設けられたスルーホールとそのスルーホールに挿入された金属ピンを適切に予備加熱し、半田のフラックス飛散を防止して、ランドに金属ピンを品質よく半田付けする方法を提供することである。また、その半田付方法に使用する、好適な半田鏝を提供することを目的とする。更には、これらを用いて、スルーホール半田付けによる電子機器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、図1に示されるような電子機器のスルーホール基板に設けられたスルーホールとそのスルーホールに挿入された金属ピンの半田付けに関して、鋭意検討の結果、筒状の半田鏝(特許文献4)を使用して予備加熱すると、図2に示されるように、従来半田付けが難しかったスルーホール内側面も良好に半田付けできることを見出した。
即ち、ヤニ入りの糸半田片を使用し、半田鏝の先端面はランドと接触し、予備加熱を行う。するとスルーホール部分の内面はランド面からの熱伝導で加熱され、金属ピンは半田鏝の先端部の貫通孔内で周囲から加熱(主に輻射熱加熱)される。以上のようにして、図1の被半田付け部分が効率良く予備加熱される。
その後、糸半田片を貫通孔に投入供給すると、図2a)で示されるように、供給された半田片は金属ピン部分で加熱熔解され、まずフラックスが流出する。次いで予備加熱されたランド、スルーホール内側面、金属ピンにフラックスが広がる。そして、広がったフラックスは被半田付け部分の表面の酸化膜や汚れを化学的に除去し、浄化する。また、フラックスは半田の表面張力を低下させ、ねばりを弱くして半田の濡れ(流れ)を良くしている。
一般に、半田付ではこのフラックスを如何に被半田付け部分に広げるかが大切になっている。本発明では、上記の貫通孔を持つ筒状の半田鏝を使用するため、貫通孔の上部を閉鎖するか、あるいは不活性気体を貫通孔の上部から供給することにより、発生した半田片のフラックスは被半田付け部分にすべて供給されることになる。即ち、図2a)に示されるように、ランドに対して垂直に投入された半田片の先端から流れ出したフラックスがスルーホール部分に流れ込み、スルーホールの内側面に広がることになる。そのため、図2b)に示されるように、スルーホール内側面全体が良好に半田付けできることを見出した。
一方、従来の鏝を用いた半田付け方法では、フラックスが鏝先に付着しているため半田表面に広がり、被半田付け部分には十分な量のフラックスが供給されない状況になっていた。
【0007】
そこで、上記の半田鏝(特許文献4)を使用して、更に好適な半田付けの条件を検討したところ、金属ピンとランドのスルーホール部分に色々な手段で適切な予備加熱を行なうと、品質の良いスルーホール半田付けができることを見出した。即ち、被半田付け部分(金属ピンとランド、スルーホール内側面)の予備加熱には、
a)半田鏝の鏝先の接触による予備加熱、
b)熱風(加熱気体)による予備加熱、
c)半田鏝からの輻射熱による予備加熱、
d)熔融半田による加熱
等の手段が存在する。本発明者は、これらの手段を組み合わせて、被半田付け部分に対して適切な予備加熱を行うことが出来きることを見出した。その結果、安定して品質の良いスルーホール半田付けができることを見出した。
なお、これらの予備加熱方法のそれぞれの手段の概要は以下の通りである。
【0008】
a)半田鏝の接触による予備加熱(温調チップ又は温調キャップの装着):
図2に示されるように、半田鏝をランドに接触させ、予備加熱を行って、被半田付け部分の温度を上昇させる。しかし、耐熱グレードの低い回路基板や、熱容量が小さい回路基板では、予備加熱のために半田鏝先端と長く接触したランド部分の回路基板は熱的に劣化する場合がある。そのようなランドの焼け防止のために、図3〜図4に示されるように、温調チップ又は温調キャップを装着して、半田鏝先端部の温度を適切にコントロールする。
【0009】
更に、図9に示されるように、クッション機構を有する支持台に回路基板を設置する。耐熱グレードが高い回路基板や、熱容量が大きい回路基板のスルーホール半田付けを行なう場合には、予備加熱が充分可能であるので、温調チップ又は温調キャップを装着することなく、またアジャスターピンを設定せず、半田鏝をランドに直接接触させる。
なお、ランド(被半田付け部分)と鏝先の先端面はクッション機構のスプリングにより一定圧で接触することになるので、回路基板の変形も吸収することができ、半田鏝と回路基板(ランド)を密着させることができる。
一方、耐熱グレードの低い回路基板や、熱容量が小さい回路基板を使用する場合には、予備加熱による回路基板の熱的劣化を回避するため、図10に示されるように、アジャスターピンで回路基板を押し下げ、コテ先端と被半田部分の間に必要な微小隙間(例えば、1mm以下)を設けることができる。これにより、接触による予備加熱ではなく、輻射熱による予備加熱に切り替えることが出来る。即ち、アジャスターピンで設定された微小隙間の距離により、鏝の先端からランドに伝える熱量(輻射熱)をコントロールできる。
【0010】
b)加熱気体による被半田付け部分の予備加熱:
図11a)で示されるように、加熱気体を被半田付け部分に供給する方法がある。即ち、貫通孔を持った筒状の半田鏝の上部(糸半田片の投入孔)をシャッターで塞ぐ。次いで、貫通孔上部の気体導入孔から不活性気体を供給する。供給された気体は半田鏝の貫通孔内部で加熱され、鏝の先端から吐出される。鏝先はランドに接触しているので、コテ先から吐出された気体は効率よく(ほぼ全量)スルーホール内側面に供給される。そのため、本発明では、特許文献3のような、加熱気体を上面から噴射する方式とは異なり、スルーホール内側面を効率よく加熱できている。また、本発明を多層基板のスルーホールに適用しても、同様に効率よく加熱することが出来ている。
更に、使用する気体が窒素ガスの場合、特許文献3に記載された問題の多い多層基板スルーホールの半田付(特許文献3、[0025]〜[0027])であっても、本発明では密閉状態の窒素ガス雰囲気中で半田付を行うため、窒素ガスの効果をより向上させることが出来、品質の高い半田付が可能である。
【0011】
c)半田鏝からの輻射熱による予備加熱:
本発明は、貫通孔を持った筒状の半田鏝であるので、先端部の貫通孔内に突出している端子(金属ピン)は、半田鏝からの輻射熱を受けて効率的に加熱される。従って、端子(金属ピン)の径が太く、熱容量が大きいものが使用される場合であっても、貫通孔内部であれば半田鏝の輻射熱を効率的に受けることができるため、より安定した予備加熱ができる。更に、図10に示されるように、アジャスターピンで回路基板を押し下げ、半田鏝とランドの接触を回避し、輻射熱による予備加熱を行うことが可能となっている。
本発明者らは、これらの知見を総合して、本発明を完成した。
【0012】
即ち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)貫通孔を持った筒状の半田鏝を用いて、電子機器の多層基板やスルーホール基板のスルーホール部分と端子(金属ピン)の被半田付け部分を予備加熱し、
糸半田片を貫通孔上部から投入して、筒状半田鏝の先端部(貫通孔先端部)で熔解し、
被半田付け部分をスルーホール半田付けすることを特徴とする電子機器の製造方法であって、予備加熱方法が、以下の工程を選択し組み合わせて行なう方法である、
a)温調チップ又は温調キャップを装着した筒状半田鏝を用いて、被半田付け部分に接触させ、被半田付け部分の予備加熱を行う、
b)アジャスターピンにより、半田鏝と被半田付け部分の間の距離を調整し、被半田付け部分に対して半田鏝の輻射熱による予備加熱を行う、
c)加熱気体を被半田付け部分に流し、被半田付け部分の予備加熱を行う、
ことを特徴とする、電子機器の製造方法。
(2)半田鏝が窒化アルミであり、温調チップがジルコニアまたはステンレスである、上記(1)記載の製造方法。
(3)半田鏝の鏝先端内部(貫通孔内部)の温度が、350〜500℃であり、温調チップ又は温調キャップの表面温度が200〜370℃である、上記(1)又は(2)に記載の製造方法。
(4)アジャスターピンにより、半田鏝と被半田付け部分の間の距離が0.1mm以上で、1mm以下である、上記(1)に記載の製造方法。
(5)端子(金属ピン)の径が0.8〜1.5mmである、上記(1)に記載の製造方法。
(6)電子機器の回路基板をクッション機構を有する支持台に設置して行なうことを特徴とする、上記(1)に記載の製造方法。
(7)半田鏝の貫通孔の内径が0.6〜2mmである、上記(1)に記載の製造方法。
(8)貫通孔を持った筒状のセラミックス製の半田鏝であって、
a)鏝の先端部がステンレス製またはジルコニア製の温調チップまたは温調キャップが装着されており、
b)貫通孔の先端部の内径が0.6〜2mmである、
ことを特徴とする、セラミックス製の半田鏝。
(9)セラミックスが窒化アルミである、上記(8)記載の半田鏝。
(10)ステンレス製の温調チップまたは温調キャップの厚さが、0.3〜0.7mmである、上記(8)記載の半田鏝。
(11)ジルコニア製の温調チップまたは温調キャップの厚さが、0.1〜0.3mmである、上記(8)記載の半田鏝。
(12)鏝の後端部に貫通孔に気体を導入するための導入孔が開設されていてもよい、上記(8)記載の半田鏝。
(13)貫通孔の形状が、鏝の先端部の内径は、後端部の貫通孔の内径より小さく、先端部で傾斜がついて狭くなっていることを特徴とする、上記(8)記載の半田鏝。
【発明の効果】
【0013】
本発明の予備加熱手段を組み合わせた、半田付け方法を用いることにより、被半田付け部分の耐熱グレード(主に回路基板の樹脂)や熱容量(金属ピンやランド)の大小に係らず、スルーホール半田付けが効率的に品質よく実施できるようになった。特に、窒素等の不活性ガスを半田鏝の貫通孔に供給し、加熱された不活性ガスを金属ピンとスルーホール部分(ランドやホール内側面)に当てて加熱することにより、これまでスルーホールの半田付けが困難であった、例えば径が0.8〜1.5mmである熱容量の大きい端子(金属ピン)でも、容易に高品質なスルーホールの半田付けができるようになった。しかも、糸半田片が熔融して発生するフラックスがスルーホール内側面に流れ込み、スルーホール内側面の半田付けが良好に達成できるようになった。以上のように、本発明の製造方法により、スルーホール半田付けが必要である電子機器において、品質の良い電子機器の製造が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のスルーホール半田付けの対象となっている被半田付け部分の概略図(断面図)である。
【図2】本発明による半田鏝とスルーホール部分の接触による予備加熱と半田片の投入・熔解によるスルーホール半田付けの状況を説明する概略図(断面図)である。
【図3】鏝先に温調チップを設置した半田鏝による、被半田部分の予備加熱を表わす断面図である。
【図4】鏝先に温調キャップを装着し、被半田部分の予備加熱を表わす断面図である。
【図5】鏝先に温調チップした、本発明に使用する半田鏝の形状の一例を表した断面図である。
【図6】本発明の半田鏝の鏝先に装着された温調チップの厚みと温調チップの表面温度の相関関係を表わしたグラフである。
【図7】1.5mmのステンレス製の温調チップが設置されている半田鏝の形状の一例を表した断面図である。
【図8】0.2mmのジルコニアセラミック製の温調チップが設置されている半田鏝の形状の一例を表した断面図である。
【図9】本発明の半田鏝がスルーホール部分に接触して予備加熱できるように、アジャスターピンが設置されていることを表わす、本発明の電子機器製造装置。
【図10】本発明の半田鏝がスルーホール部分に接触せず、微小隙間を開け輻射熱による予備加熱ができるように、アジャスターピンが設置されていることを表わす、本発明の電子機器製造装置。
【図11】不活性ガス等の気体を流し、貫通孔内で加熱して、スルーホール部分や金属ピンを予備加熱した後、スルーホール半田付けを行なう方法を表わした概略図(断面図)である。
【図12】熱容量が大きい金属ピンの一例を示した概略図(断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を、添付図面に示された好ましい態様を参照して更に詳細に説明する。
本発明の製造方法で用いられる半田鏝は、図5や図11の形状を持つものであり、これを用いて図2に示されるように電子機器のスルーホール部分(図1)の半田付けが実施される。即ち、本発明の電子機器のスルーホール半田付け製造方法とは、図3〜図4、図11に示されるように、被半田付け部分の予備加熱の工程に特徴がある。本発明の予備加熱は、次の4つの方法に分かれる。
a)半田鏝の鏝先と被半田付け部分との接触による予備加熱、
b)熱風による被半田付け部分の予備加熱、
c)半田鏝からの輻射熱による予備加熱、
d)熔融半田による加熱
【0016】
本発明の半田鏝は、600℃程度の温度に耐えることが出来て少なくとも鏝先先端部と貫通孔内面が半田に対して濡れ難い性質を有するものであれば良く、単一材料からなっていても複数部材の組合せであってもよい。単一部材からなる場合には、窒化アルミニウム、炭化ケイ素などの高熱伝導性セラミックが望ましい。複数部材の組合せとしては、銅等の高熱伝導性金属に、セラミック、またはステンレス、チタンなどの非半田濡れ性金属で被覆するか、あるいは貫通孔や鏝先の先端部に非半田濡れ性金属部材のチップや筒を嵌合することができる。
更に、半田鏝の先端部に温調チップ又は温調キャップを装着することによって、半田鏝が接触する回路基板やランド等(図1の被半田付け部分)への伝熱量を制御することが出来る。温調チップは鏝本体よりも熱伝導率が小さい材料で作製する。例えば、半田鏝が窒化アルミの場合、温調チップはジルコニアを使用する。なお、該温調チップは溶射、接着、機械的に固定、螺子留め等により装着する。温調キャップは、熱伝導率が低い、セラミック等の非濡れ性材料を用いて、図4b)に示されるように、鏝先の先端を覆うように装着する。また、鏝先の先端部を熱伝導率の低い材料で覆うため、鏝の先端部温度の低下を防止できる。
温調チップ又は温調キャップを装着することにより、鏝先端の内部(貫通孔内部)は、半田を溶融させる温度(例えば、350〜500℃)であるが、被半田付け部分と接触する鏝の先端面は回路基板を熱劣化させない温度(例えば、200〜370℃)とすることができる。
本発明では、半田鏝を半田の熔解と半田ボールの飛散防止に使用する(特許文献4)だけでなく、被半田付け部分の予備加熱にも使用するため、電子機器の回路基板の材質によっては、高温の半田鏝での予備加熱のため回路基板の樹脂等が熱変性することが生じる。そこで、半田鏝本体の設定温度を下げるか、上記温調チップ又は温調キャップとして適切な低伝熱性の材料質を選定するか、あるいは半田鏝の接触時間を好適な範囲に設定することにより、回路基板の熱変性や劣化を回避することが出来る。例えば、回路基板(ランド)の焼け防止のために、図3〜図4に示されるように、温調チップ又は温調キャップを半田鏝の鏝先に装着し、ランドに接触する鏝先の温度をコントロールできる。例えば、図6に示されるように、鏝の先端温度は温調チップの厚さで十分制御できている。
本発明の温調チップ又は温調キャップは、半田鏝本体の熱伝導度より低い材質のものであれば何でもよい。例えば、半田鏝本体が窒化アルミの場合、温調チップ又は温調キャップとして、ステンレス又はジルコニアセラミックスを使用することができる。例えばステンレス板(SUS430)を用いれば、図6に示されるように、板の厚みによる伝熱量の制御が可能である。例えばジルコニアセラミックスを使用する場合には、ステンレスより更に熱伝導性が低く、約8分の1であるので、温調チップ等の板の厚みがステンレスの8分の1で済むことになる。その結果、図8に示されるように温調チップ等の板の厚みが0.2mmで済むので、半田片が貫通孔内面の高熱伝導性セラミックに接触しやすくなり、半田の熔解がより容易になる。温調チップ又は温調キャップの好ましい板の厚さは、0.1〜1.2mmを挙げることができる。このように温調チップ又は温調キャップの材質としてステンレスを使用する場合には、より好ましい板の厚さは、0.3〜0.7mmを挙げることができる。また、ジルコニアセラミックスを使用する場合には、0.1〜0.3mmを挙げることができる。
【0017】
本発明の貫通孔の内径は半田片が通過する距離であれば特に限定されない。特に半田が熔解する半田鏝先端部の開口部の孔径が重要であり、開口部の内径は、使用する半田片の径以上であれば良く、使用する半田片の長さ以下であることが好ましい。なお、ランド径が2mmで半田鏝先端部の開口部の孔径が3.5mm以上になると、被半田付け部分が十分加熱されないため、ランド部分に熔融半田が流れ込まない場合が起きる。従って、半田鏝開口部の孔径は、0.5mm以上で、3.5mm以下の範囲が好適である。また、糸半田の長さを大きく超えるような孔径は好ましくないことから、好ましい孔径としては0.6〜2.5mmの径を挙げることができる。より好ましくは、0.6〜2.0mmの径を挙げることができる。更に、被半田付け部分のサイズや端子(金属ピン)の径にも因るが、金属ピンの径が0.8〜1.2mmと太い場合には、1〜2mmの孔径がより好ましく、金属ピンの径が0.2〜0.6mmと細い場合には、0.6〜1.5mmの孔径がより好ましいものである。
【0018】
本発明の製造方法は、被半田付け部分に対する予備加熱の方法が一つの特徴である。まず、「a)半田鏝の鏝先と被半田付け部分との接触による予熱」としては、半田鏝を被半田付け部分の金属ピン及び/又はランドのスルーホール部分に一定時間接触させ、被半田付け部分の温度が半田の融点近傍になるように予備加熱することである。しかし、半田鏝の直接接触による予備加熱では、耐熱グレードの低い回路基板や、熱容量が小さい回路基板の場合には、予備加熱のために半田鏝先端と長く接触したランド部分の回路基板は熱変性、熱劣化することが起きる。それを回避するため、図3〜図4に示されるように、温調チップ又は温調キャップを装着した半田鏝をランド部分に接触させ、熱の伝導を適切にコントロールする。例えば、金属ピンの長さが長くて径が太い場合や、多層基板等のスルーホール部分の孔の深さが深い場合のように、被半田付け部分の熱容量が大きい場合には、被半田付け部分全体を予備加熱して半田の融点近傍にするためには、長時間の半田鏝の接触が必要になる。そうすると過度な予備加熱により、熱変性が起こり易くなる。そこで、温調チップ等を装着した半田鏝を使用し、温調チップ等の表面温度を図5のように低下させ、熱伝導度も低下させて、回路基板の樹脂等の劣化を回避して、充分な予備加熱をすることが出来るようになった。その結果、良好な品質のスルーホール半田付けができるようになった。
【0019】
なお、回路基板を保持する装置にクッション機構を設置することにより、例えば図9に示されるように、スプリングにより一定圧で半田鏝と回路基板を接触させることができ、回路基板の変形も吸収でき、更に半田鏝と回路基板(ランド)を密着させることができるようになる。
耐熱グレードが高い回路基板や、熱容量が大きい回路基板を使用する場合には、予備加熱が充分行なえるので、まず半田鏝が回路基板(ランド)に接触しても、アジャスターピンが働かないように設定する。次いで、コネクターの端子(金属ピン)をスルーホール部分に挿入し、半田鏝をランドに接触させ、予備加熱を行った後、半田片を投入して半田付を行う。
耐熱グレードの低い回路基板や、熱容量が小さい回路基板を使用する場合には、予備加熱による回路基板の熱的劣化を回避するため、図10に示されるように、アジャスターピンで回路基板を押し下げ、鏝の先端と被半田付け部分の間に必要な微小間隔(例えば、1mm以下)を設ける。この微小隙間の距離により鏝の先端からランドに伝える輻射熱の熱量をコントロールすることが出来る。なお、アジャスターピンは鏝の近傍に設けられ、半田鏝の移動に連動して回路基板を押し下げる働きをする。
上記の鏝のコテ先端と被半田付け部分の間隔は、投入した半田片が貫通孔に接触できる状態が維持できる範囲の間隔である。即ち、半田片が熔解しやすい状態が保持できることである。従って、この間隔は1mm以下であり、0.1mm以上であることが好ましい。より好ましくは0.5mm以下が好適である。
【0020】
「b)熱風による被半田付け部分の予備加熱」としては、図11a)に示されるように、本発明に使用する筒状半田鏝の貫通孔の後端部をシャッター等で閉鎖し、気体導入孔から不活性気体を導入し、貫通孔内で加熱し、加熱気体を金属ピンとスルーホール内側面の隙間を通過させる。あるいは、図10のように、半田鏝が回路基盤と接触しない場合には、加熱気体で、近接する回路基板表面と金属ピン、スルーホール部分をゆるやかに予備加熱する。
本発明で使用する気体は、空気、不活性ガス(窒素ガス)、加熱水蒸気等の加熱に好適なものであれば何でもよい。鏝の先端から吐出された気体によりスルーホール部分と端子(金属ピン)が効率よく加熱されることになるので、図12に示される、熱容量の大きい端子(例えばφ0.8〜φ1.5mm)であっても、適切にスルーホール半田付けができる。
使用する気体が、窒素等の不活性ガスであれば半田や被半田付け部分の酸化を防止できることになる。また、フラックスの活性化を高め、高品質な半田付が可能となる。使用する気体が加熱水蒸気であれば、加熱水蒸気の熱容量が大きいので(空気の10倍以上)、効率よく被半田付け部分を加熱できることになる。特に、使用する気体が窒素ガスの場合、よく知られているように半田の濡れ性、広がり性が向上する。また、特許文献3に示された問題の多い多層基板スルーホールの半田付(特許文献3、[0025]〜[0027])に関しても、本発明ではほぼ密閉状態の窒素ガス雰囲気中で半田付を行うことが可能であるため、他の方式に比べ、窒素ガスの効果をより向上させることができる。その結果として、本発明では、より品質の高いスルーホール半田付が可能となっている。
【0021】
「c)半田鏝からの輻射熱による予熱」としては、前述のアジャスターピンによる半田鏝と回路基板に微小間隔を設定する場合の予備加熱と、半田鏝の貫通孔内に突出している端子(金属ピン)に対する予備加熱のことを言う。例えば、端子(金属ピン)の径が太く、熱容量が大きいものであっても、貫通孔内部であれば半田鏝の輻射熱を効率的に受けることができるため、予備加熱が行いやすくなっている。
「d)熔融半田による加熱」とは、熔融半田がスルーホール内側面部分に流れ込んだ場合に、熔融半田の持つ熱量(凝固熱等)が熔融半田の接触部分に伝わり、被半田付け部分の温度を上昇させる。半田付けに使用される半田片の量が多ければ、加熱に用いられる熱量も多くなるが、半田片の使用量が少なければ、その効果も限定的なものとなる。従って、スルーホールに適量な半田量でスルーホール半田付けを行うとき、被半田付け部分の熱容量が大きい場合には、充分な別途の予備加熱が必要となる。
【0022】
本発明は、回路基板のスルーホール半田付けを行う方法であり、使用する糸半田の量も、スルーホール部分の大きさや金属ピンとの隙間のサイズによって変動するが、約1〜60mgの量が使用できる。より微小なスルーホール半田付けのために、約1〜30mgの半田量を使用できる。
糸半田の径は、0.3〜1.2mmの範囲のものが汎用されている。従って、使用する糸半田の量によって、糸半田の径と長さを選択することが出来る。例えば、使用半田量が約6mgの場合には、糸半田として径が0.8mm、長さが約2.2mmのものを使用できる。
従って、目的とするスルーホール半田付けに対応して、適宜、糸半田の径と長さを調整することが出来る。更に、糸半田の径と半田付けする金属ピンの径の太さに対応して、半田鏝の貫通孔の内径(特に鏝先の開口部の内径)が適切なものを選択する。例えば、糸半田と金属ピンの径が0.8mmのものを使用する場合には、貫通孔の内径(特に鏝先の開口部の内径)は、径が1.2mmのものを使用することができる。
【0023】
本発明における半田鏝の先端部の形状は、被半田付け部分の形状(ランド部分の形状)に応じて適宜選択することができる。しかし、被半田付け部分が半田付けに適切な温度になるまで加熱するため、半田鏝に適切な接触面積があることが必要である。従って、被半田付け部分に接触する半田鏝の接触面積は、約1〜20平方mmであることが好ましい。より好ましくは、約3〜9平方mmを挙げることができる。
なお、予備加熱を効果的に行なうため、ランド部位と半田鏝との密着性を向上させることが必要である。そのために、例えば図9〜10に示されるようなクッション機構を回路基板保持装置に導入することが好ましい。
本発明の被半田付け部分とは、図1に示されるような電子機器の回路基板(配線基板)に挿入された端子(金属ピン)とそれを収納するスルーホール孔部分(スルーホール内側面)のことを言う。
【0024】
本発明のスルーホール半田付けによる電子機器の製造法とは、特許文献4で開示の貫通孔を持った筒状の半田鏝を用いて、電子機器の多層基板やスルーホール基板のスルーホール部分と端子(金属ピン)の被半田付け部分(図1)を予備加熱することを特徴としているものである。即ち、図5の半田鏝を用い、図2a)で示されるように糸半田片を貫通孔上部から投入して、筒状半田鏝の先端部(貫通孔下部)で熔解する。予備加熱をしている結果として、図2b)のようにスルーホール半田付けが達成されることになる。そこで、本発明のスルーホール半田付けには、この適切な予備加熱が必須の工程と言うことになる。
本発明の予備加熱方法とは、即ち以下の工程を選択し組み合わせて行なう方法である。例えば図3または図4のように、温調チップ又は温調キャップを装着した筒状半田鏝を用いて、被半田付け部分に接触させ、図9のように被半田付け部分の予備加熱を行う方法と、
図10のようにアジャスターピンにより、半田鏝と被半田付け部分の間の距離を調整し、被半田付け部分に対して半田鏝の輻射熱により予備加熱を行う方法と、更には図11のように、加熱気体を被半田付け部分に流し、被半田付け部分の予備加熱(特にスルーホール内側面の予備加熱)を行う方法である。
そして、これらの予備加熱方法は、組合せて用いることができる。例えば図11a)では、温調チップを装着した筒状半田鏝を用いてランド部分の予備加熱を行なうと共に、加熱気体によるスルーホール内側面の予備加熱を行なっている。これにより、効果的な予備加熱が行なえている。一方、図10に示されるように、アジャスターピンで調整して、半田鏝と被半田付け部分の間に微小な間隔を設定する場合にも、加熱気体を被半田付け部分に流すことによって、半田鏝からの輻射熱による予備加熱と共に加熱気体による予備加熱も行うことができる。これにより、熱分布に偏りのない予備加熱が出来ることになる。
以上の予備加熱により、品質のよいスルーホール半田付けが行えるようになった。
【実施例】
【0025】
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に何等限定されるものではない。
【0026】
(実施例1)温調チップを用いた半田鏝を用いるスルーホール半田付け
・ ステンレス製温調チップの厚みとランドへの接触面の温度:
図5に示されるような半田鏝を作製した。材質は窒化アルミニウムで、熱伝導率(W/m/K)は、170であった。そして、その半田鏝の先端にステンレス板を介在させステンレス板表面の温度を測定した。
ステンレス板の材質(JIS)は、SUS430であり、熱伝導率(W/m/K)が、25であった。ステンレス板の板厚t(mm)は、0.1mm、0.3mm、0.7mmのものを用いた。鏝先のステンレス板表面の温度を熱伝対にて測定した。その結果を図6に示す。
図6に示されるように、鏝の先端面のステンレス板(温調チップ)温度は板厚に反比例して低下することが明らかとなった。即ち、板厚0.7mmのステンレス板を鏝の先端面に設置すれば鏝の先端面の温度を約75℃低下させることが出来ることが分かった。このことから、ステンレス板の厚さで半田鏝の鏝先端面の温度を調整できることになる。この結果、回路基板の耐熱グレードに応じて温調チップの板の厚みを増減させ、ランドに与える熱ダメージを少なく出来るようにした。
【0027】
(2)温調チップの種類と厚みの影響:
ステンレスの板厚を増やせば鏝の先端面温度はさらに低下するが、鏝の先端内部温度も低下させることになる。しかし、鏝の先端内面(貫通孔内)は、半田片を熔融させるために高温に保つ必要がある。特に、微小片ではステンレスの板厚が問題になる。即ち、上記(1)の半田鏝を用いて、微小半田片(長さ1.5mm)とステンレス板温調チップ(厚さ1.5mm)の場合の例を、図7に示す。
鏝温度を上記(1)の場合と同じにした場合、図7に示すように鏝の先端内部(貫通孔内部)は熱伝導の悪いステンレスで囲まれることになり、半田片を溶かす時間が長くなったり、又は半田片を溶かすことができなくなったりする。
そこで、鏝の先端面の温度を低下させ、そして鏝の先端内部を高温に保つためには、熱伝導率がステンレスより更に低い材料を温調チップとして鏝の先端面に装着すればよい。熱伝導率の低い材料としては、熱伝導率が15W/m/Kのオーステナイト系ステンレス鋼(SUS304)やジルコニアセラミック(熱伝導率3W/m/K)等が考えられる。特に、ジルコニアセラミック(熱伝導率3W/m/K)の熱電率はフェライト系ステンレス鋼(SUS430)の1/8程度であり、鏝の先端に装着する材料としては好ましいと考えられる。なお、キャップ状や板状のジルコニアセラミックを鏝の先端面に装着しても良いが、ジルコニアセラミックを溶射により鏝の先端に積層してもよい。
まず、図8で示されるジルコニアセラミック温調チップ(厚さ0.2mm)で装着された半田鏝を作製し、微小半田片(長さ1.5mm)を用いて、半田の溶解時間を上記(1)の場合と対比した。
温調チップ厚さが半田片長さの1/8程度になるので、鏝の先端内部(貫通孔内)は高温(420℃)になっていた。それ故、半田片を短時間(1.5秒以下)で溶かすことができた。
【0028】
(実施例2)アジャスターピンを用いるスルーホール半田付け
図9や図10に示されるように、アジャスターピンを用いて、半田鏝の先端部とランドの間隔を調整する。例えば、耐熱グレードが高い回路基板や、熱容量が大きい回路基板の場合には、コテ先端と長く接触しても、ランド近接部の回路基板が熱劣化することはない。従って、本発明のアジャスターピンは、回路基板に非接触の位置を取る。図9には、耐熱グレードが高い回路基板の例が図示されている。また、
ランド部分(被半田付け部分)と鏝先の先端面はスプリングにより一定圧で接触するようになっている。そのため、回路基板の変形も吸収できる。
一方、耐熱グレードの低い回路基板や、熱容量が小さい回路基板では、鏝の先端と接触したランド近接部の回路基板が熱劣化する場合がある。そこで、そのような材質の回路基板の場合には、図10に示すようにアジャスターピンで回路基板を押し下げ、鏝の先端と被半田付け部分との間に0.2mmの隙間を設ける。
この隙間により、鏝の先端からランドに伝える熱量をコントロールし、耐熱グレードの低い回路基板の熱変性を回避して、目的とするスルーホール半田付けを行うことができる。
【0029】
(実施例3)加熱気体による予備加熱を用いるスルーホール半田付け
金属ピンの径が約1.3mmと太く、長さも約20mmと長く、スルーホールの孔径が2.5mmで、スルーホール孔の深さが5mmである場合、端子(金属ピン)とランドの熱容量が高いため、なかなか予備加熱することが困難であった。そのため、被半田付け部分の温度を半田の融点付近まで加熱することが難しかったので、スルーホール半田付けを品質良く行うことは難しかった。
そこで、図11a)のように、半田鏝貫通孔の上部から窒素ガスを少しづつ導入し、スルーホール孔の内部を加熱された窒素ガスが流れるように設定した。そうすると、被半田付け部分は加熱窒素で予備加熱が充分行なうことができた。また、投入された糸半田片からフラックスが発生すると、窒素気流に乗ってスルーホール孔の内部にもフラックスが広がることとなった。その結果、図11b)に示されるように熱容量の高い被半田付け部分(金属ピンやスルーホール孔部分)であっても、良好なスルーホール半田付を行うことができた。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の製造方法を使用することにより、スルーホールの半田付けが精度よく良好に実施できるようになった。本発明により、端子(金属ピン)や回路基板(ランド)の耐熱性や熱容量の如何に係らず、品質の良好なスルーホール半田付けが行われた電子機器を製造出来るようになった。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔を持った筒状の半田鏝を用いて、電子機器の多層基板やスルーホール基板のスルーホール部分と端子(金属ピン)の被半田付け部分を予備加熱し、
糸半田片を貫通孔上部から投入して、筒状半田鏝の先端部(貫通孔先端部)で熔解し、
被半田付け部分をスルーホール半田付けすることを特徴とする電子機器の製造方法であって、予備加熱方法が、以下の工程を選択し組み合わせて行なう方法である、
a)温調チップ又は温調キャップを装着した筒状半田鏝を用いて、被半田付け部分に接触させ、被半田付け部分の予備加熱を行う、
b)アジャスターピンにより、半田鏝と被半田付け部分の間の距離を調整し、被半田付け部分に対して半田鏝の輻射熱による予備加熱を行う、
c)加熱気体を被半田付け部分に流し、被半田付け部分の予備加熱を行う、
ことを特徴とする、電子機器の製造方法。
【請求項2】
半田鏝が窒化アルミであり、温調チップがジルコニアまたはステンレスである、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
半田鏝の鏝先端内部(貫通孔内部)の温度が、350〜500℃であり、温調チップ又は温調キャップの表面温度が200〜370℃である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
アジャスターピンにより、半田鏝と被半田付け部分の間の距離が0.1mm以上で、1mm以下である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
端子(金属ピン)の径が0.8〜1.5mmである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
電子機器の回路基板をクッション機構を有する支持台に設置して行なうことを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
半田鏝の貫通孔の内径が0.6〜2mmである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
貫通孔を持った筒状のセラミックス製の半田鏝であって、
a)鏝の先端部がステンレス製またはジルコニア製の温調チップまたは温調キャップが装着されており、
b)貫通孔の先端部の内径が0.6〜2mmである、
ことを特徴とする、セラミックス製の半田鏝。
【請求項9】
セラミックスが窒化アルミである、請求項8記載の半田鏝。
【請求項10】
ステンレス製の温調チップまたは温調キャップの厚さが、0.3〜0.7mmである、請求項8記載の半田鏝。
【請求項11】
ジルコニア製の温調チップまたは温調キャップの厚さが、0.1〜0.3mmである、請求項8記載の半田鏝。
【請求項12】
鏝の後端部に貫通孔に気体を導入するための導入孔が開設されていてもよい、請求項8記載の半田鏝。
【請求項13】
貫通孔の形状が、鏝の先端部の内径は、後端部の貫通孔の内径より小さく、先端部で傾斜がついて狭くなっていることを特徴とする、請求項8記載の半田鏝。
【請求項1】
貫通孔を持った筒状の半田鏝を用いて、電子機器の多層基板やスルーホール基板のスルーホール部分と端子(金属ピン)の被半田付け部分を予備加熱し、
糸半田片を貫通孔上部から投入して、筒状半田鏝の先端部(貫通孔先端部)で熔解し、
被半田付け部分をスルーホール半田付けすることを特徴とする電子機器の製造方法であって、予備加熱方法が、以下の工程を選択し組み合わせて行なう方法である、
a)温調チップ又は温調キャップを装着した筒状半田鏝を用いて、被半田付け部分に接触させ、被半田付け部分の予備加熱を行う、
b)アジャスターピンにより、半田鏝と被半田付け部分の間の距離を調整し、被半田付け部分に対して半田鏝の輻射熱による予備加熱を行う、
c)加熱気体を被半田付け部分に流し、被半田付け部分の予備加熱を行う、
ことを特徴とする、電子機器の製造方法。
【請求項2】
半田鏝が窒化アルミであり、温調チップがジルコニアまたはステンレスである、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
半田鏝の鏝先端内部(貫通孔内部)の温度が、350〜500℃であり、温調チップ又は温調キャップの表面温度が200〜370℃である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
アジャスターピンにより、半田鏝と被半田付け部分の間の距離が0.1mm以上で、1mm以下である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
端子(金属ピン)の径が0.8〜1.5mmである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
電子機器の回路基板をクッション機構を有する支持台に設置して行なうことを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
半田鏝の貫通孔の内径が0.6〜2mmである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
貫通孔を持った筒状のセラミックス製の半田鏝であって、
a)鏝の先端部がステンレス製またはジルコニア製の温調チップまたは温調キャップが装着されており、
b)貫通孔の先端部の内径が0.6〜2mmである、
ことを特徴とする、セラミックス製の半田鏝。
【請求項9】
セラミックスが窒化アルミである、請求項8記載の半田鏝。
【請求項10】
ステンレス製の温調チップまたは温調キャップの厚さが、0.3〜0.7mmである、請求項8記載の半田鏝。
【請求項11】
ジルコニア製の温調チップまたは温調キャップの厚さが、0.1〜0.3mmである、請求項8記載の半田鏝。
【請求項12】
鏝の後端部に貫通孔に気体を導入するための導入孔が開設されていてもよい、請求項8記載の半田鏝。
【請求項13】
貫通孔の形状が、鏝の先端部の内径は、後端部の貫通孔の内径より小さく、先端部で傾斜がついて狭くなっていることを特徴とする、請求項8記載の半田鏝。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−258000(P2010−258000A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−102549(P2009−102549)
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【出願人】(502366262)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【出願人】(502366262)
【Fターム(参考)】
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