説明

スルーポート酸素−燃料バーナー

空気−燃料蓄熱器ポートを、空気−燃料燃焼から酸素−燃料燃焼に変更するための、流体で冷却するスルーポート酸素−燃料バーナー、及びそれに関連する炉及び方法を与える。この酸素−燃料バーナーは、蓄熱器ポートネックを通して取付けるのに適切である。このバーナーは、蓄熱器ポートネックの構造に収容させるためのエルボー状の曲げ部を有する。このバーナーは、冷却流体ジャケット、燃料導管、第一の酸化剤導管、及び随意に酸化剤分岐導管を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温炉、例えばガラス溶解炉で用いるための酸素−燃料バーナーに関する。
【背景技術】
【0002】
空気−燃料燃焼式の蓄熱式ガラス溶解炉(regenerative glass furnace)が周知である。蓄熱式ガラス溶解炉は、ガラス溶融のための燃焼火炎を発生させる複数の空気−燃料の蓄熱器ポート(regenerator port)を有する。ガラス溶解炉の基本的設計の特徴は、様々な文献、例えば非特許文献1及び2に記載されている。これらは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
1以上の蓄熱器ポートの、酸素−燃料燃焼への転換が、炉をハイブリッド炉へと改良するのに望ましいであろう。ハイブリッド炉は、例えば、特許文献1に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6,519,973号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】“Glass Furnaces, Design Construction and Operation,” by Wolfgang Trier, translated by K. L. Loewenstein, Society of Glass Technology, Sheffield, UK, 2000
【非特許文献2】“The Handbook of Glass Manufacture,“ 3rd Ed. Vols. 1 & 2, by Fay Tooley (ed.), Ashlee Publishing Co. (New York), 1984
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
空気−燃料燃焼を終わらせて、そしてエネルギー投入を酸素−燃料燃焼に置き換えることが求められている。炉は、初めに空気−燃料の炉として設計されているため、酸素−燃料バーナーを設置するのに適切な場所を見つけるのが難しい。酸素−燃料バーナーが設置されている1つの場所は、蓄熱器ポートのポートネックである。
【0007】
そのポートの後ろを、遮蔽し又は別の場合は遮って、蓄熱器からポートへの高温空気流れを制限する又は妨げることができる。酸素−燃料バーナーの設置のために、孔を、ポートネックの上部、下部又は側面に作ることができる。そうして、酸素−燃料バーナーを、この孔から通してポートネックに挿入する。酸素−燃料バーナーは、炉の燃焼空間に燃料及び酸素を放出するように設計する必要がある。これは、バーナーが、燃料及び酸化剤の流れの向きを変えるエルボー又は曲げ部を有することを必要とする。ポートネックを通してバーナーを設置する場合の問題点は、ポートネックの構造的完全性を維持するために、バーナーを設置するための孔の大きさが小さくなることである。
【0008】
バーナーを蓄熱器のポートネックの上部又は下部に孔から設置する場合に、バーナーは、孔を通じて燃料及び酸素を運ぶための略垂直部分、及びガラス溶解炉の燃焼空間に燃料及び酸素を放出するための略水平部、並びに略垂直部分と略水平部分との間にエルボー部分を有するであろう。バーナーを蓄熱器のポートネックの側壁に取り付ける場合、バーナーは、2つの略水平部分、及びその2つの略水平部分の間にエルボー部分を有することができる。
【0009】
酸素−燃料バーナーを蓄熱器のポートネックに設置する場合の問題点は、酸素−燃料バーナーが、放出ノズルをエルボー部分の近くに有する必要があることであり、これは放出ノズルの近くの位置で、流れの方向に突然の又は大きな変化を必要とする。ポート内の放出ノズルで末端となる長い水平部分は、蓄熱器ポートでの空間の制限に起因して、問題がある。さらに、放出ノズルで末端となる長い水平部分は、ポートの壁に大きな孔の切込みを必要とし、これはポート周辺の構造用鉄鋼に影響を与える場合がある。放出ノズルの近くの位置での流れ方向への突然の又は大きな変化は、大きな圧力損失、及びノズルを出る流れの乱流を引き起こす。乱流は、急速な混合を引き起こし、結果としてノズル近くの燃焼が短い火炎となる。ノズルに近い燃焼は、ノズルの過熱、及びバーナーをスルーポートバーナーとして用いる場合にはポートネックでの耐火部の過熱のために、望ましくない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の課題を解決しながら、蓄熱器ポートを用いる空気−燃料燃焼を、酸素−燃料燃焼に転換するのに適切なバーナーに関する。さらに、本発明は、そのバーナーを用いた炉、及びそのバーナーを用いて炉を加熱する方法に関する。この方法を、蓄熱器の修理の間に用いて、炉の寿命を延ばし、かつ/又は既存の炉の生産効率を向上させることができる。
【0011】
このバーナーは、等価外径Dを有する第一の冷却流体ジャケット、その第一の冷却流体ジャケットと一定の間隔をあけ、かつその第一の冷却流体ジャケット内で略同軸に配置されている第一の酸化剤導管、及び燃料導管を具備する。
【0012】
第一の酸化剤導管は、入口、第一の酸化剤導管の入口の下流にある第一部分、第一の酸化剤導管の第一部分の下流にある曲げ部、及び第一の酸化剤導管の曲げ部の下流にある第二部分を有する。
【0013】
曲げ部は、45°〜120°の曲げ角度αを有する。曲げ角度αは、60°〜110°とすることができる。
【0014】
第一の酸化剤導管の第二部分は、入口端部で末端となり、かつ流れの軸及び長さLを有する。その第二部分は、円形の断面を有することができる。
【0015】
燃料導管は、入口、その入口の下流にある第一部分、曲げ部及び第二部分を有する。燃料導管の第一部分は、第一の酸化剤導管の第一部分と一定の間隔をあけ、かつ第一の酸化剤導管の第一部分内で略同軸に配置されている。燃料導管の曲げ部は、酸化剤導管の曲げ部と一定の間隔をあけ、かつ酸化剤導管の曲げ部内で略同軸に配置されている。燃料導管の第二部分は、出口端部で末端となり、かつ流れの軸を有する。燃料導管の第二部分は、第一の酸化剤導管の第二部分と一定の間隔をあけ、かつ第一の酸化剤導管の第二部分内で略同軸に配置されている。燃料導管の第二部分は、円形断面を有することができる。
【0016】
第一の酸化剤導管の第二部分の流れの軸は、真直ぐとすることができ、燃料導管の第二部分の流れの軸と、実質的に平行又は実質的に一致させることができる。
【0017】
酸化剤流路を、燃料導管の第二部分と第一の酸化剤導管の第二部分との間に形成又は画定する。酸化剤流路は、入口部、入口部の下流にある移行部、移行部の下流にある出口部を有する。入口部は、断面積Aを有する。出口部は、断面積Aを有する。
【0018】
L/Dは、0.8〜7の範囲となり、又は1.4〜7の範囲となり、かつA/Aは、1.3〜5の範囲となる。
【0019】
第一の酸化剤導管の第二部分は、酸化剤流路の移行部分に凸面の内部表面を有することができる。
【0020】
燃料導管の第二部分は、燃料流路を画定し、この燃料流路は、入口部、入口部の下流にある移行部、移行部の下流にある出口部を有する。燃料導管の第二部分の入口部は、断面積Afiを有し、そして燃料導管の第二部分の出口部は、断面積Afoを有し、ここでAfi/Afoは、1.0〜5又は1.37〜5とすることができる。
【0021】
燃料導管の第二部分は、酸化剤流路の移行部分に凹面の外部表面を有することができる。
【0022】
燃料導管の第二部分は、燃料流路の移行部分に凹面の内部表面及び凸面の内部表面を有することができ、燃料導管のその凸面の内部表面は、燃料導管の凹面の内部表面の下流となる。
【0023】
第一の酸化剤導管の第二部分の出口端部は、燃料導管の第二部分の出口端部から、0.2cm〜3cm突き出ることができる。
【0024】
バーナーは、第一の酸化剤導管の第二部分と一定の間隔を有する第二の酸化剤導管をさらに具備することができる。
【0025】
第二の酸化剤導管を、第一の冷却流体ジャケットと一定の間隔をあけ、かつ第一の冷却流体ジャケット内で略同軸に配置させることができる。バーナーは、第二の冷却流体ジャケットをさらに具備することができ、その第二の酸化剤導管は、第二の冷却流体ジャケットと一定の間隔をあけ、かつ第二の冷却流体ジャケット内で略同軸に配置することができる。第二の酸化剤導管は、入口、第二の酸化剤導管の入口の下流にある第一部分、第二の酸化剤導管の第一部分の下流にある曲げ部、及び第二の酸化剤導管の曲げ部の下流にある第二部分を有する。
【0026】
第二の酸化剤導管の曲げ部は、曲げ角度αの15°以内である曲げ角度β、及び第二の酸化剤導管の曲げ部の下流にある第二部分を有する。その第二の酸化剤導管の第二部分は、ノズルで末端となり、流れの軸を有し、かつ第一の酸化剤導管の第二部分と一定の間隔を有する。
【0027】
曲げ角度βは、曲げ角度αの2°以内とすることができ、第二の酸化剤導管の第二部分の流れの軸は、第一の酸化剤導管の第二部分の流れの軸に実質的に平行とすることができる。
【0028】
第二の酸化剤導管のノズルは、入口と出口を有する。第一の酸化剤導管の第二部分の出口端部は、第二の酸化剤導管の第二部分のノズルの出口から、0.2cm〜3cm突き出ることができる。入口は、円形断面を有することができ、かつ断面積Aniを有することができ、出口は、非円形断面を有することができ、かつ断面積Anoを有することができ、ここでノズルの出口は、1.5〜5の幅対高さ比を有する。Ani/Anoは、1.25〜5の範囲とすることができる。
【0029】
第二の酸化剤導管のノズルは、収束する高さ及び発散する幅を有することができる。
【0030】
第二の酸化剤導管のノズルは、円形断面と非円形断面との間に移行する凸面の表面を有することができる。
【0031】
炉は、蓄熱器、炉燃焼室、及び蓄熱器と炉燃焼室とを連結している蓄熱器ポートネックを具備する。蓄熱器ポートネックは、ポート及び炉の壁にポート孔を画定する。さらに、炉は、上記の構造を有するバーナーを具備する。バーナーは、蓄熱器ポートネックからポートへと貫き、バーナーは、燃料及び酸化剤ガスをポート孔から炉へと向けるように配置される。
【0032】
炉は、炉燃焼室の下に位置しかつ隣接している溶融タンク容器、ガラス成形材料を溶融タンク容器に導入するための投入端部、溶融タンク容器からガラス生成品を取り出すための排出端部をさらに具備する。炉は、炉燃焼室から燃焼生成品を取り出すための排出ポートを炉の壁にさらに具備する。
【0033】
一実施態様において、第二の酸化剤導管は、ポート孔の下の位置で炉の壁を貫き、炉に酸化剤を向けるように配置される。
【0034】
炉を加熱する方法は、ポートへの空気の流れを遮ること、ポートと関連する空気−燃料バーナーへの燃料の流れを止めること、上記のバーナーを、蓄熱器ポートネックからポートへと貫くように設置すること、第一の冷却流体ジャケット及び存在するなら第二の冷却流体ジャケットへと冷媒を通すこと、第一の酸化剤ガスを、第一の酸化剤導管から炉へと導入し、かつ燃料及び他の1つの燃料を、燃料導管から炉へと導入すること、その燃料又は他の燃料を第一の酸化剤ガスと共に燃焼して、燃焼生成品を形成すること、及び炉燃焼室から排出部を通じて燃焼生成品を取り出すことを含む。
【0035】
この方法は、バーナーを通る燃料の燃焼に化学量論的に必要な空気の5%超から25%以下の量で、ポートを通る空気流れを継続することを含むことができる。この方法は、第一の酸化剤ガス又は第二の酸化剤ガスを、第二の酸化剤導管から炉に導入して燃料又は他の燃料を燃焼することをさらに含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】随意のインポート酸化剤分岐ランスを有するスルーポートバーナーを示す。
【図2】アンダーポート酸化剤分岐ランスを有する、炉の蓄熱器ポートネックに設置されたスルーポートバーナーを示す。
【図3】第一の酸化剤導管及び燃料導管の放出端部の拡大表示を示す。
【図4】アンダーポート酸化剤分岐ランスの放出端部の拡大表示を示す。
【図5】試験炉でのバーナーからの距離の関数としての規格化された熱流束のプロットである。
【図6】無次元のノズル長さの関数としてのピーク火炎温度を示す、モデルの結果のプロットである。
【図7】バーナーのノズル出口からの距離の関数としての火炎温度を示す、モデルの結果のプロットである。
【図8a】モデルの結果からの速度の大きさのコンタープロットである。
【図8b】モデルの結果からの速度の大きさのコンタープロットである。
【図9】ノズルの無次元長の関数として火炎長さを示すモデル化の結果のプロットである。
【図10】酸素流路の面積比の関数として温度を示す、モデル化の結果のプロットである。
【図11】酸素流路の面積比の関数として温度を示す、モデル化の結果のプロットである。
【図12】バーナーのノズル出口からの距離の関数として火炎温度を示す、モデル化の結果のプロットである。
【図13】第二の酸化剤流路の面積比の関数として第二の酸化剤速度の偏差を示す、モデル化の結果のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本明細書の原文中、冠詞「a」及び「an」は、明細書及び請求の範囲の本発明の実施態様のあらゆる特徴に適用する場合、1以上を意味する。「a」及び「an」の使用は、そのような限定を特に述べない限り、単一の特徴に限定しない。単一又は複数の名詞又は名詞句に先立つ冠詞「the」は、1つの又は複数の特定の規定の特徴を示し、かつそれが用いられる文脈に応じて単一の又は複数の意味を有する場合がある。形容詞「あらゆる」は、すべての量でも無差別に、1つの、複数の、又はすべての、を意味する。
【0038】
語句「少なくとも一部」は、一部又は全てを意味する。
【0039】
単純さ及び明確さの目的のために、周知の装置、回路及び方法の詳細な説明は、省略し、本発明を不必要に詳細に記載して曖昧にしないようにする。
【0040】
本発明は、バーナーに関する。より詳しくは、本発明は、空気−燃料蓄熱器ポートを有するガラス溶解炉での空気−燃料燃焼を、酸素−燃料燃焼に置き換えるのに用いる酸素−燃料バーナーに関する。このバーナーは、蓄熱器ポートを、空気−燃料燃焼から酸素−燃料燃焼に、少なくとも部分的に置き換えるのに特に適している。ガラス溶解炉の蓄熱器ポートの構造に起因して、このような置き換えに用いられるバーナーは、放出ノズル付近の位置で流れ方向に、突然の又は大きな変化を必要とする。
【0041】
蓄熱器ポートは、関連する蓄熱器に修理する必要がある場合、空気−燃料燃焼から酸素−燃料燃焼に一時的に換えることができる。蓄熱器ポートは、酸素−燃料燃焼に換えて、より永続的に酸素−燃料の利益を得ることができる。ガラス溶解炉のバッチ端部に非常に近い複数のポートを、酸素−燃料燃焼に換えて、酸素−燃料火炎によるバッチ溶融によって改良することができる。
【0042】
以下、図面を参照する。同様の参照番号は、複数の図面を通じて同様の要素を参照している。図1は、本発明の実施態様によるバーナー1を示し、図2は、蓄熱器ポートネック105、及び蓄熱器ポートネックに取り付けたバーナー101を具備する、炉100の断面を示す。
【0043】
バーナー1及び101は、第一の冷却流体ジャケットジャケット10、第一の酸化剤導管20及び燃料導管40を具備する。第一の冷却流体ジャケット10は、円形断面の場合は外径と等しくなり、非円形断面の場合はジャケットの外側断面積を外側周囲長で割ったものの4倍と等しい、等価外径Dを有する。第一の酸化剤導管20は、第一の冷却流体ジャケット10と一定の間隔をあけ、かつ第一の冷却流体ジャケット10内で略同軸に配置されており、かつ燃料導管40は、第一の酸化剤導管20と一定の間隔をあけ、かつ第一の酸化剤導管20内で略同軸に配置されている。略同軸とは、1つの導管の軸が、外側の導管の軸と共通しているか、又は最大で2cmだけわずかにずれていることを意味する。
【0044】
冷却流体ジャケットは、温度制御流体が循環できる中間の空間を包囲するカバーとしての、外側のカバー又はケースである。この冷却流体は、水とすることができる。冷却流体ジャケット、例えば水冷ジャケットは、バーナー及び燃焼の分野で周知である。冷却流体ジャケットの設計の詳細は、本発明について重要ではない。当業者は、適切な冷却流体ジャケットの設計を、本分野で周知のジャケットの設計から容易に選択し、かつ/又は変更することができる。
【0045】
第一の冷却流体ジャケット10には、バーナーを過熱から防ぐことが必要とされる。バーナーを、ガラス溶解炉の蓄熱器ポートに取り付ける場合、炉からの熱がバーナーの外側表面に放射するであろう。このバーナーを用いる場合、バーナーからの火炎がバーナーに放射して戻るであろう。水又は他の冷却流体を、第一の冷却流体ジャケット10の入口11に導入し、そして燃料及び酸化剤の排出端部の周りの領域を含む第一の酸化剤導管20の周りに流す。その水又は他の冷却流体を、第一の冷却流体ジャケット10の出口13から抜き出す。
【0046】
本明細書で用いる場合、導管は、流体を運ぶあらゆる手段、例えばパイプ、チューブ、ダクト等である。第一の冷却流体ジャケット10、第一の酸化剤導管20及び燃料導管40は、金属から、好ましくはステンレス鋼から作製される。当業者は、バーナーの構築に関して適切な材料を容易に選択することができる。
【0047】
酸化剤導管は、酸化剤ガスを運ぶことを意図した導管であり、酸化剤供給源に連結している。酸化剤ガスは、21体積%超の酸素を含むあらゆるガスである。80体積%〜100体積%の酸素濃度を有する工業グレードの酸素は、酸化剤ガスである。通常60体積%〜80体積%の酸素濃度を有する窒素工場からのガス状放出流れも同様である。酸化剤を、22体積%〜28体積%の間、又は28体積%〜60体積%の間の酸素濃度を有する、空気と工業用酸素又は放出流れの酸素との配合物とすることもできる。酸化剤導管を、工業グレードの酸素と適合する材料を用いて、工業グレードの酸素を運ぶように設計することができる。
【0048】
燃料導管は、燃料を運ぶことを意図した導管である。燃料導管は、燃料供給源に連結している。燃料は、ガス状燃料、例えば天然ガス、プロパン若しくは他のガス状炭化水素、水素、一酸化炭素又はこれらの混合物とすることができる。あるいは、燃料は、液体、例えば第一蒸留油、第二蒸留燃料油、ディーゼル燃料、バイオディーゼル燃料及びその副生成物(例えばグリセロール)、ケロシン、第四燃料油、第五残留油、第六残留燃料油、C重油(Bunker−C type fuel oil)及び当業者に公知の他の燃料とすることができる。液体燃料を、当業者に公知の複数の手段の1つで噴霧化することができる。
【0049】
第一の酸化剤導管20は、酸化剤ガスを受け入れるための入口21、入口21の下流にある第一部分23、第一部分23の下流にある曲げ部25及び曲げ部25の下流にある第二部分27を有する。酸化剤ガスを、工業グレードの酸素とすることができる。
【0050】
上流及び下流は、流体の意図する流れ、例えば燃料又は酸化剤の意図する流れに対して定義される。上流端部は、流体を装置に導入する入口に最も近い端部に対応する。下流端部は、流体が装置から出る出口又はノズル端部に対応する。
【0051】
入口21は、酸化剤ガス供給源をバーナーに繋げる、クイックコネクトフィッティング(quick disconnect fitting)又は他の適切な治具を含めることができる。
【0052】
第一部分23は、円形断面を有することができる。第一部分23は、第一の酸化剤導管の第一部分及び燃料導管の第一部分との間で同心性を確保するためのスペーサーを有することもできる。
【0053】
曲げ部25は、45°〜120°の曲げ角度αを有する。曲げ角度αは、60°〜110°とすることができる。曲げ角度は、夾角(included angle)の補角として定義される。180°未満である夾角は、導管の第一部分の直線部と、導管の第二部分の直線部の間で決まる角度である。第一の酸化剤導管に関する夾角は、第一の酸化剤導管の第一部分の直線部と、第一の酸化剤導管の第二部分の直線部との間で決まる。図1及び図2で示すように、曲げ角度αは、第一の酸化剤導管に関する夾角に対する補角である。0°の曲げ角度は、曲げのないこと、すなわち直線に対応する。180°の曲げ角度は、U字型の曲げに対応する。
【0054】
曲げ部25での曲げは、図2に示すように、半径を有してなだらかとすることができ、又は図1に示すように、曲げは鋭角を有することができる。
【0055】
第一の酸化剤導管20の第二部分27は、出口端部29で末端となり、流れ軸22及び長さLを有する。第二部分27は、円形断面を有することができる。
【0056】
流れ軸は、導管の断面の構造的中心を通る、流れ方向にある直線に対応し、この断面は、その直線に垂直な平面にある。流れ軸は、曲線を含むことができる。このバーナーに関して、流れ軸の少なくとも一部は、直線部である。
【0057】
この開示の目的に関して、第一の酸化剤導管の第二部分の長さLは、図1及び図2に示すように、曲げ部と出口端部との間の流れ軸の直線部に対応する。
【0058】
燃料導管40は、燃料を受け入れるための入口41、入口41の下流にある第一部分43、曲げ部45及び第二部分47を有する。
【0059】
入口41は、燃料供給源をバーナーに繋げる、クイックコネクトフィッティング又は他の適切な治具を含めることができる。
【0060】
図1及び図2に示すように、燃料導管40の第一部分43は、第一の酸化剤導管20の第一部分23と一定の間隔をあけ、かつ第一の酸化剤導管20の第一部分23内で略同軸に配置されている。曲げ部45は、曲げ部25と一定の間隔をあけ、かつ曲げ部25内で略同軸に配置されている。
【0061】
曲げ部45での曲げは、図2に示すように、半径を有してなだらかとすることができ、又は図1に示すように、鋭角を有することができる。曲げ部45は、曲げ部25と両立するであろう。
【0062】
第二部分47は、出口端部49で末端となり、かつ流れ軸42を有する。第二部分47は、第一の酸化剤導管20の第二部分27内と一定の間隔をあけ、かつ第一の酸化剤導管20の第二部分27内で略同軸に配置されている。第二部分47は、円形断面を有することができる。
【0063】
燃料導管の第二部分47は、第一の酸化剤導管20の第二部分27と同軸性を有し、そうして流れ軸42及び流れ軸22は、ともに直線となり、かつ実質的に平行となり又は実質的に一致することができる。図1では、流れ軸42及び流れ軸22は一致している。
【0064】
用語「平行」とは、どこの場所でも等距離であり、かつ交差しないで、同じ方向に伸張していることを意味する。流れ軸22及び流れ軸42に関して、実質的に平行とは、最大の間隔の距離の逸脱が2cmとなって離れて間隔があることを意味する。
【0065】
用語「一致」とは、同じ空間又は位置を占めていることを意味する。流れ軸22及び流れ軸42に関して、実質的に一致とは、2cm以内での一致を意味する。
【0066】
酸化剤流路50は、燃料導管40の第二部分47と、第一の酸化剤導管20の第二部分27との間で形成又は画定される。酸化剤流路50は、入口部分51、入口部分51の下流にある移行部分53、移行部分53の下流にある出口部分55を有する。入口部分51は、断面積Aを有する。出口部55は、断面積Aを有する。断面積Aを設計して、設計の酸化剤ガス流速で約30m/秒〜約150m/秒の酸化剤ガス速度を与える。
【0067】
放出ノズルに近い位置での第一の酸化剤の流れ方向における突然の又は大きな変化は、長さLと、第一の冷却流体ジャケットの等価外径Dとの間の関係性によって記載することができる。比L/Dを最大化して、放出ノズルでの第一の酸化剤の速度プロファイルにおける不均一性を最小化させるのが望ましい。速度の不均一性は、放出ノズル付近での強い燃焼の主な原因となり、これは過度に高い火炎温度、そしてそれゆえバーナーの損傷又は故障をもたらす場合があるからである。しかし、ガラス溶解炉の蓄熱器ポートで使用可能な限られた空間に、バーナー組立てを取り付けるのには、長さは短い必要がある。使用可能な空間に基づく最大の許容L/Dは、7.0と推算される。
【0068】
短いL/Dで許容可能な流れ分布を得る1つの解法は、第一の酸化剤流路の第二部分に静的混合機器を設置することである。静的混合機器は、流れ場に設置した固定の障害物であり、通常静圧の消失を通じて乱流混合及び拡散を局所的に強めることによって、流れの再分配を促進する。静的混合機器の一般的な例は、穿孔プレートであり、すなわち流れの断面を横切るプレートであって、プレートにわたって分布している複数の小さい孔を有し、流れはその孔を通る必要があるプレートである。
【0069】
あいにく、静圧の消失と乱流混合/拡散との両方が、この場合には流れ特性に好ましくない。第一に、酸化剤流れの乱流の増加は、酸化剤と燃料との比較的急速な混合をもたらし、これはバーナーノズル付近の過度に高い火炎温度の問題の悪化をもたらす。第二に、静圧の消失は、酸化剤に関して比較的高い供給圧力の必要性をもたらす。いくつかの場合には、比較的高い供給圧力の必要性を満たすことができず、他の場合には、1以上のガスコンプレッサーを設置し、そしてそれを使用する必要性のために、その設置に顕著な資本的コスト及び運転コストを追加する。第一の酸化剤導管と一定の間隔で第二の酸化剤導管を具備するこのバーナーの実施態様に関して、0.8≦L/D≦7である。第二の酸化剤導管を具備しないバーナーの実施態様に関して、1.4≦L/D≦7である。
【0070】
静的混合機器の上記の好ましくない特性のない状態で、酸化剤の流れを均等に分配し、かつ真直ぐにし、そして炉内で酸化剤と燃料との早期の混合を妨げる傾向を有するこのバーナーの特徴は、入口部51から出口部55への酸化剤流路50の断面積の低下である。この第一の酸化剤流路の断面積の低下は、移行部53を通じてなされる。第一の酸化剤流れの分布の改良のため、入口断面積の出口断面積に対する比率を最大化させることが望ましい。しかし、出口での所定の第一の酸化剤の速度に関して、A/A比率の拡大は、入口断面積の大きさの拡大を必要とする。蓄熱器ポートにおける使用可能な空間の制限による、この比率の高い値についての実用上の制限は、A/A=5である。このバーナーに関して、1.3≦A/A≦5である。
【0071】
図1、図2及び拡大された図3に示すように、酸化剤導管20の第二部分27は、酸化剤流路50の移行部53において、凸面の内部表面を有することができる。
【0072】
図1、図2及び拡大された図3に示すように、燃料導管40の第二部分47は、酸化剤流路50の移行部53において凹面の外側表面を有することができる。これらの凸面及び凹面の屈曲は、酸化剤の流れを真直ぐにするのを促進して、それによって出口端部29に近づくほど、第一の酸化剤流れの軸22と直線上に合わせながら、同時に乱流渦の生成及び拡散を減少させる。
【0073】
燃料導管40の第二部分47は、燃料流路60を形成又は画定する。燃料流路60は、入口部61、入口部61の下流にある移行部63及び移行部63の下流にある出口部65を有する。燃料導管の第二部分の入口部は、断面積Afiを有し、かつ燃料導管の第二部分の出口部は、断面積Afoを有する。
【0074】
第一の酸化剤導管の第二部分と同様に、燃料の流れを真直ぐにし、そして炉内で酸化剤と燃料との乱流混合を強めるのを防止する傾向にある、このバーナーの特徴は、入口部61から出口部65への燃料流路60の断面積の低下である。燃料流れの分布の改良のために、入口断面積の出口断面積に対する比率を最大化させることが望ましい。しかし、出口での所定の燃料速度に関して、比率Afi/Afoの拡大は、入口断面積の大きさの拡大を必要とする。蓄熱器ポートにおける使用可能な空間の制限による、この比率の高い値についての実用上の制限は、Afi/Afo=5である。このバーナーに関して、1.0≦A/A≦5、又は1.37≦A/A≦5である。予想の燃焼率(すなわち、燃料流速)に基づいて、断面積Afoを設計して、約25m/秒〜約150m/秒の燃料速度を与える。
【0075】
図1及び図2に示すように、燃料導管40の第二部分47は、燃料流路60の移行部に凹面の内部表面及び凸面の内部表面を有し、ここで、その凸面の内部表面は、燃料導管60の凹面の内部表面の下流にある。この構造は、燃料流れにおける乱流渦の生成及び拡散を最小化させながら、燃料流路の内部表面で流れを流れ軸42に再調整するのを促進する。第一の酸化剤及び燃料の流れを、それぞれの軸に沿うように調整し、かつ同時に乱流渦の生成及び拡散を最小化させることによって、これらの特徴は、燃料及び酸化剤が炉に放出するにしたがい、燃料及び酸化剤の混合の速度を低下させるように機能する。上述のように、これは、短い酸素/燃料火炎に起因する高温の損傷からバーナーの金属部品を防護するのに重要である。
【0076】
図1及び図2に示すように、酸化剤導管20の第二部分27の出口端部29は、燃料導管40の第二部分47の出口端部49から突き出る。出口端部29は、出口端部49より、0.2cm〜3cm突き出ることができる。突き出るとは、周囲表面又は前後関係から外側に張り出す又は伸びることを意味する。
【0077】
燃料導管40の出口端部49は、酸化剤導管20の出口端部29から奥まった場所にあって、バーナーの火炎からの放射及びガラス溶解炉の高温の環境から、出口端部49を防護する。酸化剤導管の出口端部29を含む酸化剤導管20は、第一の冷却流体ジャケット10を循環して流れる冷却流体によって冷却される。
【0078】
他方で、燃料導管40は、酸化剤流路を通る酸化剤の流れによって冷却される。出口端部49を埋め込むことによって、出口端部49は、比較的低い熱放射にさらされることになり、そして過熱を避けられる場合がある。出口端部49が埋め込まれすぎている場合、燃料及び酸化剤が、バーナー内部で反応し、酸化剤導管の過熱によってバーナーに損傷をもたらすことがある。熱放射から出口端部49を保護することと、燃料及び酸化剤の混合との間での適切なバランスは、出口端部49から0.2cm〜3cm突き出る出口端部29によって与えられる。
【0079】
バーナーは、酸化剤分岐を含むこともできる。この開示の文脈において酸化剤の分岐は、第一の酸化剤流れから燃焼酸素の一部を引き出し、それによってそれを燃料の燃焼の後の段階に運ぶことができることを意味する。図1に示すように、分岐ランスは、蓄熱器ポートに設置されたバーナーの一部とすることができ、インポートランスと呼ばれ、かつ/又は図2に示すように、分岐ランスは、蓄熱器ポートの下に位置する別個の部品とすることができ、アンダーポートランスと呼ばれる。酸化剤の分岐は、炉内の火炎を調整する手段を与えることがわかっている。
【0080】
酸素を分岐させることは、酸素/燃料火炎のピーク温度を低下させる機能を有する。ピーク温度を低下させることは、高温に起因するバーナーの損傷のリスクを低下させ、また燃料と酸化剤との混合速度を低下させる。燃料及び酸化剤の混合速度の低下は、燃焼プロセスを遅くさせ、それによって比較的長い火炎をもたらし、これはより望ましい。さらに、分岐は火炎中に燃料の多い領域又は酸素の少ない領域を生み出す。燃料の多い領域は、炭素の多い固体粒子(スス)の形成を促進し、これは火炎からガラス溶融物への放射伝熱を強め、かつNOxの比較的低い放出ももたらす。しかし、安全にかつ効果的に使用することができる分岐の度合いには実用上の制限がある。この制限は、分岐の酸素の量が増加するにつれて減少する、火炎の推進力によって通常決まる。火炎の推進力が低すぎる場合、火炎は、炉内で不安定となり、そして例えば、炉のクラウン(天井)に達して、このクラウンの耐火物に損傷を与えることがある。
【0081】
分岐する酸素の配置及び方向は、バーナーからの火炎にも影響を与える。第一の酸化剤/燃料ノズルのすぐ下に導入される分岐の酸化剤は、ある種の望ましい特徴を有する。例えば、この位置に導入される分岐の酸化剤は、バーナーのノズルのすぐ下流で燃料と混合し、そしてそれゆえ炉のガスで実質的に希釈されない。その上、この位置での分岐は、主なバーナーの火炎の比較的低い部分の燃焼を強化するのに効果的である。これは、火炎からの放射エネルギーを、クラウンへ向けて上にするのではなく、ガラス溶融物へ向けて優先的に下にするようにする。ポートを過熱する懸念がある場合、インポート分岐ノズルを、ポートの床へ向けて下にすることができ、その表面に対流冷却を与える。あるいは、バーナーノズルとランスとの両方をポート内に収容するのに使用可能な余地が不十分な場合、分岐の酸素ノズルを、どこにでも、例えばポートの下で、かつガラス溶融物表面の上に設置することも可能である。
【0082】
蓄熱器ポートの下(under)と、蓄熱器ポートで(in)との両方に酸化剤分岐を含めることは、作業員に柔軟性を与えて、ガラス溶融物の加熱、蓄熱器ポートの耐火物の過熱、及び汚染物質、例えばNOxの放出に影響を与える。実験を単一ポートの試験炉で行った。実験結果は、熱伝達、ポート温度及び炉の天井温度への、酸化剤分岐の量及び位置による実質的な影響を証明した。例えば図5は、分岐なし及び80%のアンダーポート分岐の場合と比較して、80%のインポート酸化剤分岐が、炉の床へのずっと高い熱流束を達成することを示している。これらのデータは代表的な傾向を与えるが、酸化剤分岐の最適な量及び位置が、特定の炉の構造及び運転条件に基づいて最も良く決まる。
【0083】
図2に示すように、バーナーは、第一の酸化剤導管20の第二部分27と一定の間隔で配置されているアンダーポート酸化剤分岐ランス90を含めることができる。アンダーポート酸化剤分岐ランスを用いて、それぞれ燃料導管40及び第一の酸化剤導管20からの燃料及び酸化剤の導入によって作られる火炎の下に、酸化剤流れを向ける。
【0084】
アンダーポート酸化剤分岐ランス90は、第一の酸化剤ガス又は第二の酸化剤ガスを受け入れるための入口91を有する。第一の酸化剤ガス及び第二の酸化剤ガスは、同じ原料又は異なる原料からの工業グレードの酸素とすることができる。
【0085】
入口91は、酸化剤供給源をアンダーポート酸化剤分岐ランス90に繋ぐためのクイックコネクトフィッティング又は他の適切な治具を含めることができる。
【0086】
アンダーポート酸化剤分岐ランス90は、冷却流体ジャケットを必要としない場合がある。アンダーポート酸化剤分岐ランスを通る酸化剤の流れは、アンダーポート酸化剤分岐ランスが冷たい状態を維持するのに十分な場合がある。アンダーポート酸化剤分岐ランス90に導入される酸化剤ガスは、例えば工業グレードの酸素である、第一の酸化剤導管20に導入される酸化剤ガスと通常同じとなるであろう。しかし、アンダーポート酸化剤分岐ランスに導入される酸化剤ガスは、第一の酸化剤導管20に導入される酸化剤ガスと異なる場合がある。
【0087】
バーナーは、図1に第一の酸化剤導管20の第二部分27と一定の間隔を有して配置される第二の酸化剤導管80として示すような、インポート酸化剤分岐ランスを有することができる。第二の酸化剤導管80を用いて、火炎の下に酸化剤の流れを向ける。
【0088】
インポート酸化剤分岐ランスは、蓄熱器ポートにあるので、冷却が必要となるであろう。第二の酸化剤導管80を、図1に示すような第一の冷却流体ジャケット10又は随意の第二の冷却流体ジャケット70と一定の間隔をあけ、かつ第一の冷却流体ジャケット10又は随意の第二の冷却流体ジャケット70内で略同軸に配置させることができる。
【0089】
さらに、バーナーは、随意の第二の冷却流体ジャケット70及びその第二の冷却流体ジャケット70と一定の間隔を有し、かつ随意の第二の冷却流体ジャケット70及びその第二の冷却流体ジャケット70内で略同軸に配置される、第二の酸化剤導管80を具備することができる。第二の冷却流体ジャケット70は、酸化剤ランスのノズルを、火炎及び炉からの放射熱に起因する過熱から防ぐことを必要とする場合がある。水又は他の冷却流体を、随意の第二の冷却流体ジャケット70の入口71に導入し、そしてこれを酸化剤排出端部の周りの領域を含む、第二の酸化剤導管80の周りに流す。水又は他の冷却流体は、随意の第二の冷却流体ジャケット70の出口73から抜き出す。
【0090】
第二の酸化剤導管80は、酸化剤ガス又は第二の酸化剤ガスを受け入れるための入口81、入口81の下流にある第一部分83、第一部分83の下流にある曲げ部85及び曲げ部85の下流にある第二部分87を有する。第一の酸化剤ガス及び第二の酸化剤ガスは、同じ原料又は異なる原料からの工業グレードの酸素とすることができる。
【0091】
入口81は、酸化剤ガス供給源をバーナーに向けて酸化剤ランスに繋げる、クイックコネクトフィッティング又は他の適切な治具を有することができる。
【0092】
第一部分83は、円形断面を有することができ、かつ第一の酸化剤ノズルの第一部分の外側表面に、例えば溶接によって、物理的に取り付けることができる。
【0093】
曲げ部85は、曲げ角度βを有し、ここで曲げ角度βは、曲げ角度αの15°以内である。曲げ角度βは、60°〜110°とすることができる。第二の酸化剤導管80の第二部分87は、第一の酸化剤導管20の第二部分27に対して、上向きに又は下向きに傾くことができる。第二の酸化剤導管80に関する夾角は、第二の酸化剤導管80の第一部分81の直線部分と、第二の酸化剤導管80の第二部分85の直線部分との間で決まる。曲げ角度βは、第二の酸化剤導管に関する夾角に対する補角である。
【0094】
第二の酸化剤導管80の第二部分87は、ノズルで終端となり、流れ軸82を有する。第二の酸化剤導管80の第二部分87は、第一の酸化剤導管20の第二部分27と一定の間隔を有する。随意の第二の冷却流体ジャケット70及び第二の酸化剤導管80を、バーナー組立の一部として、共に溶接し、またその他の方法で取り付けることができる。
【0095】
曲げ角度βを、曲げ角度αの2°以内にすることができる。第二の酸化剤導管80の第二部分87の流れ軸82を、第一の酸化剤導管20の第二部分27の流れ軸22と実質的に平行とすることができる。流れ軸82及び流れ軸22に関して、実質的に平行とは、間隔を空けて離れ、かつ間隔の最大距離の10%以内で等距離にあることをいう。
【0096】
図1に示すように、第一の酸化剤導管20の第二部分27の出口端部29は、ノズルの出口89から突き出ることができる。出口端部29は、出口89から0.2cm〜3cm突き出ることができる。第二の酸化剤導管80のノズルを、第一の酸化剤導管20の第二部分27の出口端部29に対して奥まった場所において、第一の冷却ジャケット及び/又は第一の酸化剤導管20の第二部分27に、火炎及び/又は炉からの放射からノズルを保護させることができる。
【0097】
図1及び詳細には図4に示すように、第二の酸化剤導管80の第二部分87のノズルは、入口88、移行部、及び出口89を有する。入口88は、断面積Aniの円形断面を有することができ、かつ出口89は、断面積Anoの非円形断面を有する。ノズルの出口89は、1.5〜5の幅対高さ(W対H)比を有することができる。この開示の目的に関して、出口89の幅対高さ比を、ノズルの出口表面で測定する。幅は、高さと比較して、比較的大きい寸法である。
【0098】
このノズルに関して、Ani/Anoを、1.25〜5とすることができる。この下限よりも大きい面積比は、ノズル出口での酸化剤流れの不均一性を、最小化するのに本質的である。ノズル出口での酸化剤流れの不均一性は、分離した流れ又は逆流をもたらすことがあり、これはノズルの腐食、閉塞(pluggage)及び早期の故障のリスクを高める。この上限よりも低い面積比は、過度に高い第二の酸化剤速度又は許容できない程度に大きい第二の酸化剤導管のいずれかを避けるのに必要である。
【0099】
ノズルは、収束する高さ及び発散する幅を有することができる。収束する幅は、断面積を縮小させ、これは流れの分離を防ぐために必要である。発散する幅は、新たに現れる第二の流れの全幅を拡げ、それによって第一の酸化剤及び燃料により作られる火炎より幅広くなる。これは、分岐する酸化剤の真下かつ火炎の下側での混合の均一性を向上させる。第二の酸化剤導管80の第二部分87は、凸面の内部表面を出口89付近に有することができる。凸面の内部表面は、主な流れ軸82と平行である向きに出口流れを迅速かつ円滑に移行させることを可能にする。幅寸法におけるこの発散の半角は、5°〜15°とすることができる。
【0100】
ノズルは通常、「収束性」(流れの方向に、広い寸法からより小さくなる寸法に狭くなる)又は「発散性」(流れの方向に、より小さな寸法からより大きな寸法に拡大する)として記載される。ラバルノズルは、収束部分の次に発散部分を有し、収束−発散ノズルと呼ばれることがある。
【0101】
収束性ノズルは、音速以下の流体を加速させる。ノズルの圧力比が十分に高い場合、その流れは、最狭小点(すなわち、ノズルのスロート)で音速に達するであろう。この場合に、ノズルは、「チョークされている」といわれる。
【0102】
本明細書で述べられるノズルは、ラバル型ノズルとは異なる。ラバル型ノズルは、収束部の次に発散部を有するのに対し、本発明のノズルは、発散する幅及び収束する高さを有する。
【0103】
このバーナーを、図2に示すように、蓄熱器ポートに挿入するように設計する。孔を蓄熱器ポートネックに切り込んで入れて、バーナーを挿入するための場所を与える必要がある。孔を、ポートネックの上部、下部(土台)又は側部に切り込んで入れることができる。好ましくは、この孔は、ポートネックの下部又は床に切り込んで入れる。
【0104】
このバーナーを、ポートネックの下部に切り込んで入れた孔を通じてポートに挿入することができる。これは、好ましくは、図2に示すように実質的に垂直の向きにすることができる。このバーナーは、ポートネックに位置合わせし、かつ取付けるための据付プレート95を具備することができる。このバーナーは、実質的に水平な平面で燃料及び酸化剤ガスを、炉の燃焼空間に放出する。
【0105】
このバーナーを、ガラスタンク及び蓄熱器ポートの両方で、温度及び熱流束の分布を制御するさまざまな方法で用いることができる。これは、基本的に酸素の分布を調整することによって達成される。その有利な使用は、火炎の長さ、光度及び安定性を調整することを与え、かつポート表面の冷却を促進することもできる。
【0106】
このバーナーを、第一の酸化剤ガス導管20、インポート酸化剤分岐ランス(第二の酸化剤導管80)及びアンダーポート酸化剤分岐ランス90の2以上を通じて、1種以上の酸化剤ガス流れを導入しながら、ガス状燃料を、燃料導管40を通じて導入することによって、用いることができる。
【0107】
本発明は、炉100にも関連し、その一部が図2に示されている。本発明による炉は、図2によるバーナーと共に示されているが、図1によるバーナーも、この炉と併せて用いることができ、当業者は、図1によるバーナーに関する記載を明確に適用することができる。炉は、蓄熱器125、炉の燃焼室135、及び蓄熱器125を炉の燃焼室135に繋ぐ蓄熱器ポートネック105を有する。蓄熱器ポートネック105は、ポート110及び炉100の壁120にポート孔115を画定する。炉は、上記の特徴によるバーナーも含む。バーナーは、蓄熱器ポートネック105から通して、そしてポート110に貫き、かつバーナーは、燃料及び酸化剤を炉100に向けるように配置する。
【0108】
蓄熱器ポートネック105は、ポートアーチ(上部)、ポート土台(下部)及び側壁を含み、通常耐火れんがで構築される。蓄熱器ポートネックは、蓄熱器と、炉のポート孔又はポート口との間に、通路又はポートを画定する。本明細書で用いる場合、ポートは、通路であり、ポート孔とは区別される。
【0109】
蓄熱器は、蓄熱式の熱伝達を利用する熱回収機器であり、本分野で周知である。蓄熱器の詳細は、“Glass Furnaces, Design Construction and Operation,” by Wolfgang Trier, translated by K. L. Loewenstein, Society of Glass Technology, Sheffield, UK, 2000及び“The Handbook of Glass Manufacture,“3rd Ed. Vols. 1 & 2, by Fay Tooley (ed.), Ashlee Publishing Co. (New York), 1984.で見つけることができる。
【0110】
本明細書で用いる場合、蓄熱器ポートネックは、蓄熱器から炉の燃焼空間への燃焼空気を移送するのに用いる、又は前に用いられたあらゆる導管である。
【0111】
炉は、バーナーに関して上述した特徴のいくつか又は全てを含むバーナーを有することができる。
【0112】
ある実施態様では、図1に示すように、インポート分岐ランスを炉で用いることができる。
【0113】
ある実施態様では、図2に示すように、導管90は、ポート孔115の下部の位置で炉の壁120を貫き、かつ酸化剤を炉に向けるように配置される。導管90は、アンダーポート酸化剤分岐ランスである。この導管は、ランスから垂直に上に引いた線が、ポートと交わる場合、ポート孔の「下部」にある。垂直は、真直ぐな上、又は真直ぐな下、鉛直を意味する。
【0114】
炉は、インポート酸化剤分岐ランス及びアンダーポート酸化剤分岐ランスの両方を含むことができる。
【0115】
炉は、炉燃焼室の下に位置しかつ隣接している溶融タンク容器、ガラス成形材料を溶融タンク容器に導入するための投入端部、溶融タンク容器からガラス生成品を取り出すための排出端部をさらに具備する。ガラス成形材料は、炉の溶融タンク容器に投入され、そして炉燃焼室で燃焼火炎からの熱によって溶融する。溶融ガラスは、投入端部から排出端部に流れ、炉から生成品として取り出される。取り出された溶融ガラスは、成形工程を経て、このガラスをシートガラス、ファイバーガラス、容器又は他の所望の製品に成形する。
【0116】
炉は、炉燃焼室から燃焼生成品を取り出すための排出ポートを炉の壁にさらに具備する。燃料及び酸化剤を、蓄熱器ポートネックのバーナーを通じて、炉の燃焼室に導入し、燃焼して火炎を形成し、そしてガラス成形材料及び溶融ガラスに熱を移す。燃料及び酸化剤の反応からの燃焼生成品は、炉燃焼室から排出ポートを通じて取り除かれる。
【0117】
本発明は、例えば蓄熱器の修理中に、炉を加熱する方法に関する。炉を長期間運転した後で、蓄熱器での熱伝達パッキング又はチェッカー(heat transfer packing or checker)は、ガラス溶解炉からの濃縮した揮発物、あるいは分解物で詰まる場合がある。炉は、空気−燃料ポートが停止して蓄熱器を修理するときに、いまだ加熱する必要がある。好ましくは、十分な熱を与えて、ガラスの生産を維持する。
【0118】
この方法を用いても、性能が低下した蓄熱器を修理することなく炉の寿命を延ばすことができ、又は既存の炉の生産効率を向上させることができる。
【0119】
蓄熱器を修理している間に炉を加熱する方法に上述のバーナーを用いて、蓄熱器を修理することなく炉の寿命を延ばすことができ、かつ/又は既存の炉の生産効率を向上させることができる。
【0120】
炉を加熱する方法は、ポートへの空気の流れを遮る工程、そのポートに付随する空気−燃料バーナーへの燃料への流れを止める工程、上述のバーナーを取り付けて、それによってバーナーを蓄熱器ポートネックから、そしてポートに貫く工程、第一の冷却流体ジャケットに冷媒を通す工程、第一の酸化剤導管から第一の酸化剤ガスを炉に導入する工程、及び前の空気−燃料運転の間に用いたのと同じ燃料又は異なる燃料を、燃料導管から炉に導入する工程を含む。
【0121】
この方法は、選択した燃料を第一の酸化剤ガスと共に燃焼して燃焼生成品を形成する工程、及びその燃焼生成品を炉燃焼室から排出部を通じて取り出す工程も含む。
【0122】
蓄熱器の修理の間に、蓄熱器チェッカーパックのその部分からの空気の流れを、止める必要があり、それによって性能が低下したチェッカーを取り除いて、そして交換のチェッカーを取付けることができる。蓄熱器を、オープンボックスの設計又は区分化された設計とすることができる。空気の流れを、蓄熱器のその底部で遮り、あるいは妨げることができる。また、蓄熱器ポートの上流端部で空気の流れを遮り又は妨げるのが望ましい場合がある。
【0123】
蓄熱器ポートネックを、切りとって又は修正して、バーナーを取付けるために孔を与えることができる。蓄熱器ポートネックにおける孔を、図2に示すように、蓄熱器ポートネックの底部又は土台に存在させることができる。蓄熱器ポートネックの側部か、蓄熱器ポートネックのアーチ又は上部かのいずれかに、孔を切り込んで入れることもできる。
【0124】
バーナーを取付けて、それによってバーナーを、蓄熱器ポートネックから、ポートに貫くことができる。あらゆるポートネックの壁からの、第一の酸化剤導管の第二部分の出口端部の距離、及び燃料導管の第二部分の出口端部の距離を、据付プレート95の位置によって調整することができる。
【0125】
一般的に、冷媒、好ましくは水を、蓄熱器ポートネックへのバーナーの取付けの間に、第一の冷却流体ジャケットに流通させて、取り付けている間のバーナーの過熱を防ぐであろう。
【0126】
一度取り付けたら、第一の酸化剤ガスを、第一の酸化剤導管から炉に導入し、かつ燃料を燃料導管から炉に導入するであろう。燃料を、前の空気−燃料運転に関して用いたものと同じ燃料とすることができ、又は望ましいならば異なる燃料とすることができる。燃料を天然ガスとすることができる。
【0127】
この方法は、第一の酸化剤ガス又は第二の酸化剤ガスを、第二の酸化剤導管から炉に導入する工程を、さらに含むことができる。
【0128】
この方法は、蓄熱器ポートから大量の空気を導入する工程をさらに含むことができる。その空気は、蓄熱器を通じて、又は他の1つの空気源から来ることができる。そうして導入した空気は、少なくとも3つの有利な効果を有する。第一に、これは、再循環している炉のガス及び微粒子を有するポートをパージし、ポート内での腐食及び微粒子の堆積を最小化する。第二に、これは火炎に推進力を与える。最後に、これはバーナーへの酸化剤流れを減少させ、これは運転コストを低下させ、かつバーナーノズル付近の燃焼速度を遅くする。比較的遅い燃焼速度は、一般的に、火炎の明るい領域を拡げ、かつ強化し、それによって放射熱伝達を向上させる。化学量論的にバーナーに必要な酸素の25%までを、ポートを通じて空気流れによって供給することができる。ポートからの空気によって与えられる一定の酸素の必要量を用いることによって、バーナーへの燃料の完全燃焼に必要な化学両論量の酸化剤の95%からせいぜい約75%を、第一の酸化剤ガス及び/又は第二の酸化剤ガスによって与えることができる。
【0129】
バーナーの運転が炉に加熱を与える間に、蓄熱器を修理することができ、そしてガラス生産を続ける。
【0130】
その他の場合には、炉は、蓄熱器を修理しないで、炉の一連の運転が終わるまで、この方式で運転を続けることができる。
【0131】
バーナーのパラメーターの範囲に関するいくつかの制限を、蓄熱式ガラス溶解炉のバーナー及びポートの構造上(すなわち、使用可能な空間)の検討事項によって決定した。これらの範囲に関する他の制限を決定するのを支援するために、次の実施例に記載したように、計算流体力学(CFD)モデルを用いた。
【実施例】
【0132】
CFDモデルを用いて、バーナーの流体力学及び熱現象についての設計の影響及び運転パラメーターの影響を個別化し、そして試験した。図1に示すようなバーナー及び関連する第二の酸化剤を、基本的なモデル構成として用いた。モデル化の取組みの間に変化させたパラメーターを、それぞれの範囲と共に図1に与えた。分岐する酸化剤流れ、すなわち(第一と第二の)合計の酸化剤流れの百分率は、バーナーに関する設計パラメーターではないが、これは、その例内での変化が他のパラメーターの影響をさらに強調するのに役立つので、ここに含めていることに留意する必要がある。燃料を天然ガスと想定し、これは100%のメタンとしてモデル化した。
【0133】
実用上の理由のため、最も目立ったCFDの結果を提示する。
【0134】
【表1】

【0135】
バーナーの無次元長L/Dの変化を、第一の酸化剤及び燃料の流れの断面積比を用いて、それらの最大値で実行した(表1参照)。結果を、図6〜9に要約する。
【0136】
例えば、ピーク火炎温度についてのL/Dの影響を、図6に示す。20%の分岐の場合に対する傾向は、L/Dの低下につれて温度の段階的かつ比較的小さな増加を示しているが、80%の分岐の場合に関するピーク火炎温度は、L/Dが2.7から1.4に低くなる場合に、80%の酸化剤に関して100K近く上昇し、そしてさらに0.8まで低くなる場合には、ピーク火炎温度が低下することに留意する必要がある。ピーク火炎温度の増加は、L/Dが0.8〜2.7の範囲では100K未満なので、2.7超のL/Dは、さらに低いピーク火炎温度を持つと考えられ、0.8〜7のL/Dが適切である。バーナーは、0.8〜7の範囲のL/Dを超えて使用可能である。
【0137】
80%の分岐に関する場合の火炎温度の比較的近い試験を、図7に与える。これは、L/Dが0.8、1.4及び2.7に対する火炎温度の分布を比較している。3つ全ての場合に関してピーク温度は、バーナーノズルの比較的近くて発生しており、それゆえ、ピーク値での運転は、バーナーの金属を高温の損傷に潜在的にさらすということに、まず注意することである。さらに、L/Dが1.4及び2.7である場合では、火炎温度は初めは上昇し、ノズル出口から約0.5mの距離でピーク値に達する。しかし、L/Dが0.8である場合では、ピーク温度は、ノズル出口から0.2m未満の距離で発生し、それゆえノズルの過熱のリスクを上昇させる。また、L/Dが0.8である場合に対する火炎温度は、ピークを達成した直後に低下し、他の2つの場合で発生した温度より150〜200K低い、局所的な最小値に達することは興味深い。これらの特徴は、L/Dが1.4と0.8との間で起こる火炎の特性の急激な変化は、2.7及び1.4であるL/Dから起こるものより大きいことを示唆する。
【0138】
火炎特性での変化に関する解釈は、それぞれ図8a及び8bで与えられるL/Dが1.4及び0.8である場合のノズル出口の速度プロファイルから推定することができる。特に、燃料/第一の酸化剤の混合物の軌跡は、2つの場合に関して本質的に変化せず留まるが、第二の酸化剤の軌跡は、L/Dが変化するにつれて顕著に変わる。すなわち、L/Dが1.4である場合、第二の酸化剤の軌跡は、第一の酸化剤/燃料の流れの軌跡と本質的に平行となる。しかし、L/Dが0.8まで低くなると、分岐する酸化剤流れは、第二の酸化剤ノズル内で不十分な発達長を有し、おおよそ4°だけ主な火炎に向けて上方に角度をなす。これは、火炎と第二の酸化剤との間に急速な収束をもたらし、比較的大きな体積の第二の酸化剤と組み合わせる場合に(分岐する酸化剤として、合計の酸化剤の80%)、バーナー先端付近で強い混合を発生させ、ピーク温度をノズルにより近い位置とし、かつ続く最小温度を他の場合に関する温度より低くする。これらの結果の実用的な影響は、バーナーが第二の酸化剤導管を具備する場合に、L/Dの最小値は、1.4以上とするべきであることである。しかし、燃料/第一の酸化剤流れの特徴は、1.4のL/Dから0.8への変化によって大きく影響されないので、バーナーが第二の酸化剤導管を具備しない場合、L/Dの最小値は、0.8以上とするべきである。
【0139】
図9に示す火炎長へのL/Dの影響は、図6〜8から導かれる結論を補強する。この図は、L/Dの低下が、どのように火炎の短縮を導くのかを示す。これは、強い混合をもたらす、バーナー内及び分岐ランスノズル内での反応物の速度プロファイルの不十分な発達に起因していると考えられる。80%の酸化剤分岐の場合に対する1.4〜0.8のL/Dの火炎短縮の影響は特に重大であり、上述の主なノズル流れと第二のノズル流れとの間で、急速な収束の原因に再びなることがある。
【0140】
0.8及び1.4のバーナーの無次元長L/Dと共に、第一の酸化剤面積比の変化を行った。ピーク火炎温度は、第一の酸化剤面積比に影響を受けることが示された。図10は、L/Dが1.4で、20%及び80%の酸化剤分岐に関して、A/Aの関数としてピーク温度を示す。面積比A/Aを1.9から1.0に低くする場合に、80%の分岐では、190Kのオーダーでのピーク温度の上昇が起きるのに対し、20%の分岐では、230Kのピーク温度の上昇が起きる。20%の分岐の場合、面積比A/Aが1.9から1.0に低下するにつれて、ピーク温度の上昇が急勾配になる。同様の結果が、図11でL/Dが0.8である場合に対して示されている。図10でのように、A/Aが1.3未満に低下すると、ピーク温度は急に上昇する。全ての場合に関して、A/Aが1.0で、最も高いピーク火炎温度は、2600〜2650Kの範囲の値に到達する。
【0141】
/Aが1.0及び1.9で、80%の分岐の場合に関して、火炎温度分布を比較する追加の詳細を、図12に提示する。両方の場合に関して温度分布は、再びバーナー出口付近の特徴的なピーク値を示す。しかし、A/Aが1.9でバーナーノズルから約0.4mの距離から、A/Aが1.0でノズルから約0.2mの距離に、ピークシフトの位置が変化することに留意する必要がある。これは、ノズルの過熱の相対的リスクを決める燃焼のピーク温度及びピーク位置なので、1.3未満のA/Aの値は避けられるべきと結論付けられる。
【0142】
酸化剤面積比を変えることが火炎特性を変化させることの効果のメカニズムは、第一の酸化剤出口速度プロファイルに通じる。すなわち、比A/Aを低くすることは、バーナーノズル出口での第一の酸化剤流れの不均衡配分を増加させ、それによって過剰の乱流、及びピーク火炎温度を上昇させ、かつ火炎長を短くするシアを生成させる。速度の不均衡配分を定量化する1つの方法は、断面積の平均値からの局所的な速度の標準偏差として定義される、速度の偏差を計算することである。このように定義すると、比較的高い速度の偏差は、比較的大きな不均一性の度合いに対応し、これは本発明に関して、燃料と第一の酸化剤との間の望ましくない比較的高い混合速度をもたらす。1.0、1.3及び1.9である第一の酸化剤面積比A/A;1.4であるL/D;20%の分岐に対応する速度偏差を、表2に記載している。断面積の平均速度の百分率として規格化された偏差の大きさは、面積比A/Aを1.9から1.0に低くする場合に、第一の酸化剤の不均一性が、倍増することを示している。さらに、これは、A/Aを1.3から1.0に低くする場合の、速度の偏差におけるかなり大きな増加と比較して、面積比A/Aを1.9から1.3に低くする場合には、速度の偏差において比較的小さな増加を示す。さらに、これは、第一の酸化剤の面積比A/Aが1.3以上を維持する必要があることを示している。
【0143】
【表2】

【0144】
燃料面積比Afi/Afoに関して、このパラメーターを1.9から1.0の範囲を超えて低くすることは、第一の酸化剤面積比における変化(同じ制限を越える)と、ピーク火炎温度について定性的に同じ影響を与える。しかし、この影響の大きさは、比較的小さい。例えば、L/Dが0.8で、1.9から1.0への燃料面積比の低下は、ピーク火炎温度に70Kの上昇を生じさせたが、第一の酸化剤面積比で同様の低下によって生じる火炎温度の上昇は、250Kだった(図11参照)。
【0145】
第一の酸化剤面積比に対する火炎特性への感受性と比較して、燃料ノズル面積比に対する火炎特性への低い感受性は、燃料ノズル出口速度プロファイルが、第一の酸化剤出口速度プロファイルほど面積比に対して感受性がないという事実で追従できる。表3に与えるように、燃料面積比Afi/Afoが1.0及び1.9となる場合に、ノズル出口での燃料速度の偏差は、第一の酸化剤に対して比較される値の半分より小さい(表2参照)。1.0未満の燃料面積比Afi/Afoは、不安定な流れの分離効果となる傾向となるので、望ましくない。それゆえ、CFDモデルに基づくと、1.0以上のあらゆる燃料面積比Afi/Afoが、本発明で許容可能である。しかし、実験室の試作品の試験の間になされた火炎特性の測定及び観測は、1.37超の燃料面積比、また図3に示すような凹面から凸面の輪郭を用いることによって、バーナーの性能がさらに向上することを示す。
【0146】
【表3】

【0147】
第二の酸化剤導管の流れ断面積比Ani/Anoは、ノズルを出る第二の酸化剤の速度分布に強く影響を与え、これはバーナー装置の性能及び耐久性の両方に影響する。本発明に興味のある条件、1.0≦Ani/Ano≦1.55、に関して、CFDモデルの結果は、速度分布への強い影響を証明した。図13は、面積比Ani/Anoが約1.25の値未満に低くなるときに、第二の酸化剤の速度の偏差が急に増加することを示している。これは、その曲線における高い傾きによって示される。この結果は、燃焼の性能についての影響が、この範囲にわたって比較的小さいことを示唆しているが、この臨界値より低い面積比でのノズル出口速度のプロファイルにおける断絶(breakdown)は、分離した流れ又は逆流をもたらすことがある不安定な傾向にある、非常に低い出口速度の領域をもたらす。これは、ノズルの腐食及び閉塞のリスクを高め、そして比較的頻繁なメンテナンスの必要性及び比較的高い故障率をもたらすであろう。そのように、本発明の第二の酸化剤ノズルに関して許容可能な最小の面積比Ani/Anoは、1.25である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
等価外径Dを有する、第一の冷却流体ジャケット;
次を具備する、前記第一の冷却流体ジャケットと一定の間隔をあけ、かつ前記第一の冷却流体ジャケット内で略同軸に配置されている、第一の酸化剤導管:
入口、
前記第一の酸化剤導管の前記入口の下流にある第一部分、
45°〜120°の曲げ角度αを有する、前記第一の酸化剤導管の前記第一部分の下流にある曲げ部、及び
出口端部で末端となり、かつ流れ軸及び長さLを有する、前記第一の酸化剤導管の前記曲げ部の下流にある第二部分;並びに
次を具備する、燃料導管:
入口、
前記第一の酸化剤導管と一定の間隔をあけ、かつ前記第一の酸化剤導管内で略同軸に配置されている、前記燃料導管の前記入口の下流にある第一部分、及び
前記第一の酸化剤導管の前記曲げ部と一定の間隔をあけ、かつ前記第一の酸化剤導管の前記曲げ部内で略同軸に配置されている曲げ部、
出口端部で末端となり、かつ流れ軸を有する第二部分であって、前記第一の酸化剤導管の前記第二部分と一定の間隔をあけ、かつ前記第一の酸化剤導管の前記第二部分内で略同軸に配置されており、それにより前記燃料導管の前記第二部分と、前記第一の酸化剤導管の前記第二部分との間に酸化剤流路を画定している、第二部分;
を具備するバーナーであって、
前記酸化剤流路は、断面積Aを有する入口部、前記入口部の下流にある移行部、及び前記移行部の下流にある断面積Aを有する出口部を有し、ここで
0.8≦L/D≦7、かつ1.3≦A/A≦5である、バーナー。
【請求項2】
前記燃料導管の前記第二部分が、燃料流路を画定しており、前記燃料流路は、断面積Afiを有する入口部、前記入口部の下流にある移行部、及び前記移行部の下流にある断面積Afoを有する出口部を有し、ここで、1.0≦Afi/Afo≦5である、請求項1に記載のバーナー。
【請求項3】
前記燃料導管の前記第二部分が、燃料流路を画定しており、前記燃料流路は、断面積Afiを有する入口部、前記入口部の下流にある移行部、及び前記移行部の下流にある断面積Afoを有する出口部を有し、ここで、1.37≦Afi/Afo≦5である、請求項1に記載のバーナー。
【請求項4】
前記燃料導管の前記第二部分が、前記燃料流路の前記移行部分に、凹面の内部表面及び凸面の内部表面を有し、前記燃料導管の前記凸面の内部表面は、前記燃料導管の前記凹面の内部表面の下流にある、請求項2又は3に記載のバーナー。
【請求項5】
前記第一の酸化剤導管の前記第二部分の前記出口端部が、前記燃料導管の前記第二部分の前記出口端部から0.2cm〜3cm突き出ている、請求項2又は3に記載のバーナー。
【請求項6】
随意の第二の冷却流体ジャケット;及び
次を具備する、前記第一の冷却流体ジャケット及び前記第二の冷却流体ジャケットの少なくとも1つと一定の間隔をあけ、かつそれらの少なくとも1つ内で略同軸に配置されている、第二の酸化剤導管:
入口、
前記第二の酸化剤導管の前記入口の下流にある第一部分、
前記曲げ角度αの15°以内の曲げ角度βを有する、前記第二の酸化剤導管の前記第一部分の下流にある曲げ部、及び
前記第一の酸化剤導管の前記第二部分と、一定の間隔をあけて配置されている、前記第二の酸化剤導管の前記曲げ部の下流にある第二部分であって、ノズルで末端となり、かつ流れ軸を有する第二部分;
をさらに具備し、ここで1.4≦L/D≦7である、請求項1に記載のバーナー。
【請求項7】
前記曲げ角度βが、前記曲げ角度αの2°以内であり、前記第二の酸化剤導管の前記第二部分の前記流れ軸は、前記第一の酸化剤導管の前記第二部分の前記流れ軸と、実質的に平行である、請求項6に記載のバーナー。
【請求項8】
前記ノズルが、入口及び出口を有し、前記第一の酸化剤導管の前記第二部分の前記出口端部は、前記第二の酸化剤導管の前記第二部分の前記ノズルの前記出口から、0.2cm〜3cm突き出ている、請求項6に記載のバーナー。
【請求項9】
前記第二の酸化剤導管の前記第二部分の前記ノズルが、入口及び出口を有し、前記入口は、断面積Aniの円形断面を有し、前記出口は、断面積Anoの非円形断面を有し、ここで前記ノズルの前記出口は、1.5〜5の幅対高さ比を有する、請求項6に記載のバーナー。
【請求項10】
1.25≦Ani/Ano≦5である、請求項9に記載のバーナー。
【請求項11】
前記ノズルが、収束する高さ及び発散する幅を有する、請求項9に記載のバーナー。
【請求項12】
前記ノズルが、前記円形断面と前記非円形断面との間を移行する凸面表面を有する、請求項9に記載のバーナー。
【請求項13】
前記第一の酸化剤導管の前記第二部分が、前記酸化剤流路の前記移行部分に凸面の内部表面を有する、請求項1に記載のバーナー。
【請求項14】
前記燃料導管の前記第二部分が、前記酸化剤流路の前記移行部分に凹面の外部表面を有する、請求項1に記載のバーナー。
【請求項15】
60°<α<110°、かつ60°<β<110°である、請求項6に記載のバーナー。
【請求項16】
前記第一の酸化剤導管の前記第二部分が、円形断面を有する、請求項1に記載のバーナー。
【請求項17】
前記燃料導管の前記第二部分が、円形断面を有する、請求項1に記載のバーナー。
【請求項18】
前記第一の酸化剤導管の前記第二部分の前記流れ軸が、真直ぐであり、かつ前記燃料導管の前記第二部分の前記流れ軸と実質的に平行又は実質的に一致している、請求項1に記載のバーナー。
【請求項19】
次を具備する炉:
蓄熱器;
炉燃焼室;
ポートを画定し、かつ前記炉の壁にポート孔を画定している、前記蓄熱器を前記炉燃焼室に繋げる蓄熱器ポートネック;及び
前記蓄熱器ポートネックを通って前記ポートに入り、かつ燃料及び酸化剤を前記炉燃焼室に向けるように配置されている、請求項1〜18のいずれか一項に記載のバーナー。
【請求項20】
さらに次を具備する請求項19に記載の炉:
前記炉燃焼室の下に配置されている溶融タンク容器であって、ガラス形成材料を前記溶融タンク容器に導入するための投入端部、及び前記溶融タンク容器からガラス生成物を取り出すための排出端部を有する、溶融タンク容器;及び
前記炉の前記壁又は他の1つの壁にある、前記炉燃焼室から燃焼生成物を取り出すための排出ポート。
【請求項21】
次を具備する炉:
蓄熱器;
炉燃焼室;
ポートを画定し、かつ前記炉の壁にポート孔を画定している、前記蓄熱器を前記炉燃焼室に繋げる蓄熱器ポートネック;及び
前記第一の冷却ジャケット、前記第一の酸化剤導管、及び前記燃料導管が、前記蓄熱器ポートネックを貫きそして前記ポートに入り、前記第一の酸化剤導管は、前記炉に酸化剤を向けるように配置されており、前記燃料導管は、前記炉に燃料を向けるように配置されており、かつ前記第二の酸化剤導管は、前記ポート孔の下の位置で前記炉の壁を貫通しており、かつ前記炉に前記酸化剤を向けるように配置されている、請求項5に記載のバーナー。
【請求項22】
さらに次を具備する請求項21に記載の炉:
前記炉燃焼室の下に配置されている溶融タンク容器であって、ガラス形成材料を前記溶融タンク容器に導入するための投入端部、及び前記溶融タンクからガラス生成物を取り出すための排出端部を有する、溶融タンク容器;及び
前記炉の前記壁又は他の1つの壁にある、前記炉燃焼室から燃焼生成物を取り出すための排出ポート。
【請求項23】
ポートを画定し、かつ炉の壁にポート孔を画定している蓄熱器ポートネックであって、蓄熱器を炉燃焼室に繋げる蓄熱器ポートネックを有する前記炉の加熱方法であって、次の工程を含む方法:
前記ポートへの空気の流れを遮る工程;
前記ポートに付随する空気−燃料バーナーへの燃料の流れを止める工程;
バーナーが前記蓄熱器ポートネックを貫きそして前記ポートに入るように、請求項1〜18のいずれか一項に記載のバーナーを取り付ける工程;
冷媒を、前記第一の冷却流体ジャケットに通し、かつ存在するならば前記第二の冷却流体ジャケットに通す工程;
第一の酸化剤ガスを、前記第一の酸化剤導管を通して前記炉燃焼室に導入する工程;
前記燃料又は他の燃料を、前記燃料導管を通して前記炉燃焼室に導入する工程;
前記燃料又は前記他の燃料を、前記第一の酸化剤ガスで燃焼させて、燃焼生成物を形成する工程;及び
前記燃焼生成物を、前記炉燃焼室から排出部を通じて抜き出す工程。
【請求項24】
さらに次の工程を含む、請求項23に記載の方法:
前記バーナーを通る前記燃料又は前記他の燃料の燃焼に化学両論的に必要な空気の5%超から25%以下の量で、空気を前記ポートに流し続ける工程。
【請求項25】
前記第一の酸化剤ガスが、28体積%〜100体積%の酸素を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記バーナーが、請求項5〜12及び18のいずれか一項に記載されているバーナーである請求項24に記載の方法であって、次の工程を含む方法:
前記第一の酸化剤ガス又は第二の酸化剤ガスを、前記第二の酸化剤導管から前記炉燃焼室に導入する工程。
【請求項27】
前記第二の酸化剤ガスが、28体積%〜100体積%の酸素を含む、請求項26に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2012−529624(P2012−529624A)
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514995(P2012−514995)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/037076
【国際公開番号】WO2010/144286
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(591035368)エア プロダクツ アンド ケミカルズ インコーポレイテッド (452)
【氏名又は名称原語表記】AIR PRODUCTS AND CHEMICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】7201 Hamilton Boulevard, Allentown, Pennsylvania 18195−1501, USA
【Fターム(参考)】