説明

スロットル装置

【課題】二輪車等の多気筒エンジンに装着されるスロットル装置において、限られたスペースに容易に配置でき、又、アクセルグリップとアクセル開度検出機構とを連結するアクセルケーブルの取り回しを容易に行えるようにする。
【解決手段】スロットルボア11を画定するスロットルボディ10、スロットルバルブ20、スロットルシャフト30、スロットルシャフトを回転駆動する駆動機構40、スロットルボア内に燃料を噴射するべくスロットルボディの一側部に配列して装着された複数の燃料噴射弁50、アクセルケーブルを介してアクセルグリップの開度を検出するべくスロットルボディに装着されたアクセル開度検出機構70を備え、アクセル開度検出機構70は複数の燃料噴射弁が配列された一側部と同一の側に配置されている。これによれば、二輪車の限られたスペースに容易に配置でき、アクセルケーブルの取り回しを容易になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二輪車等に搭載のエンジンに装着されるスロットル装置に関し、特に、スロットルバルブをモータ等の駆動源により開閉駆動するスロットル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のスロットル装置としては、エンジンの吸気通路に連通する複数のスロットルボアを画定するスロットルボディ、スロットルボアを開閉する複数のスロットルバルブ、複数のスロットルバルブを回動自在に支持するスロットルシャフト、スロットルシャフトを回転駆動するモータ、各々のスロットルボア内に燃料を噴射するべくスロットルボディに装着された複数の燃料噴射弁、二輪車のハンドルに設けられたアクセルグリップに連動してそのアクセルグリップの回転量(アクセル開度)を検出するべくスロットッルボアを挟んで燃料噴射弁と反対側においてスロットルボディに装着されたアクセル開度検出機構、スロットルシャフトの一端側に配置されてアクセル開度検出機構とスロットルシャフトとの回転を連動させる連動機構等を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、このスロットル装置を二輪車のエンジンに装着する場合、スロットルボアを略水平方向に方向付けて配置するホリゾンタルタイプでは、一般的に燃料噴射弁を上側に位置付けるため、アクセル開度検出機構が下側に位置付けられることになり、それ故に、アクセル開度検出機構に連結されたアクセルケーブル(アウターケーブル、インナーケーブル)は、一旦下方に伸ばした後にU字状に屈曲させて上向きに伸ばし、二輪車のフレーム等に沿わせてアクセルグリップに連結されることになる。
このような、アクセルケーブルのレイアウトは、U字状の屈曲部分を配置するためのスペースを必要とし、又、アクセルケーブル(アウターケーブル)内に侵入した水滴等がU字状の領域が溜まって、錆、凍結等を生じる虞がある。
【0004】
一方、スロットルボアを略上下方向に方向付けて配置するダウンドラフトタイプでは、一般的にスロットルボディがエンジンに近接して配置されるため、このようなスロットル装置の装着が困難であり、仮に装着する場合には、スロットルボディをエンジンからある程度離して両者の間に燃料噴射弁及びアクセル開度検出機構の一方を配置するための余分なスペースを確保し、又、スロットルボディの後方において燃料噴射弁及びアクセル開度検出機構の他方を配置するための余分なスペースを確保しなければならず、エンジンに対して部品を集約して配置することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−198355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、構造の簡素化、部品点数の削減、部品の集約化、装置の小型化等を図りつつ、特に二輪車等に搭載される多気筒エンジンにおいて限られたスペースに容易に配置でき、又、アクセルグリップとアクセル開度検出機構とを連結するアクセルケーブルの取り回しを容易に行うことのできるスロットル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のスロットル装置は、複数のスロットルボアを画定するスロットルボディと、複数のスロットルボアをそれぞれ開閉する複数のスロットルバルブと、複数のスロットルバルブを一体的に回動させるべくスロットルボディに支持されたスロットルシャフトと、スロットルシャフトを回転駆動する駆動機構と、複数のスロットルボア内に燃料を噴射するべくスロットルボディの一側部に配列して装着された複数の燃料噴射弁と、アクセルケーブルを介してアクセルグリップの開度を検出するべくスロットルボディに装着されたアクセル開度検出機構とを備え、アクセル開度検出機構は、複数の燃料噴射弁が配列された一側部と同一の側に配置されている。
この構成によれば、複数の燃料噴射弁とアクセル開度検出機構とが、配列された複数のスロットルボアを画定するスロットルボディの一側部(同一の側)に配置されているため、スロットル装置としての部品の集約化による全体の小型化を達成でき、又、このスロットル装置をエンジンに装着する際にスロットルボディの他方の側を有効に活用することができる。
さらに、このスロットル装置を二輪車のエンジンに装着する場合、スロットルボア(の軸線方向)を略水平方向に方向付けて配置するホリゾンタルタイプでは、燃料噴射弁を上側に位置付けつつも、従来のように一旦下向きに伸ばした後に上向きにU字状に屈曲させる必要がなく、アクセルケーブルの取り回しを容易に行うことができ、又、アクセルケーブル内に水滴等が溜まって、錆、凍結等を生じるのを防止することができる。
また、スロットルボア(の軸線方向)を略上下方向に方向付けて配置するダウンドラフトタイプでは、スロットルボディの他側部をエンジンに近接して(対向させて)配置しスロットルボディの一方の側(複数の燃料噴射弁及びアクセル開度検出機構が配置された側)をエンジンから離れる向きに配置することで、二輪車としての部品の集約化を達成しつつ、上記同様に、アクセルケーブの取り回しを容易に行うことができ、又、アクセルケーブル内に水滴等が溜まって、錆、凍結等を生じるのを防止することができる。
【0008】
上記構成において、アクセル開度検出機構は、スロットッルボアの配列方向において、複数の燃料噴射弁の間に配置されている、構成を採用することができる。
この構成によれば、アクセル開度検出機構を燃料噴射弁同士の間に配置することで、その分だけアクセル開度検出機構をスロットルボディに近づけて配置することができ、装置全体のさらなる小型化を達成することができる。
【0009】
上記構成において、複数の燃料噴射弁に燃料を供給するべくスロットルシャフトと略平行に配置されたデリバリパイプをさらに含み、アクセル開度検出機構は、複数の燃料噴射弁のうちの二つの燃料噴射弁の間でかつスロットルボアの軸線方向においてデリバリパイプよりも外側に突出しない領域に配置されている、構成を採用することができる。
この構成によれば、アクセル開度検出機構をスロットルボアの軸線方向においてデリバリパイプから外側に突出しないように燃料噴射弁同士の間に配置することで、デリバリパイプを装置の外輪郭の基準として装置を配置することができ、装置全体のさらなる小型化を達成できると共に、アクセルケーブルの取り回しをさらに容易に行うことができる。
【0010】
上記構成において、アクセル開度検出機構は、アクセルグリップの回動に連動するアクセルケーブルを連結する回転部材と、回転部材を一体的に回転するように固定するセンサ回転軸と、センサ回転軸を回動自在に支持すると共にスロットルボディに着脱自在に固定されるホルダと、ホルダに設けられてセンサ回転軸の回転角度を検出するセンサユニットとを含む、構成を採用することができる。
この構成によれば、アクセルグリップが回転させられると、アクセルケーブルを介して回転部材及びセンサ回転軸が回転し、センサ回転軸の回転角度をセンサユニットが検出することで、アクセル開度が検出される。
ここでは、アクセル開度検出機構が、回転部材、センサ回転軸、ホルダ、及びセンサユニット等により構成されているため、構造の簡素化を達成することができる。
【0011】
上記構成において、センサ回転軸は、内輪及び外輪を含む軸受を介して、ホルダに回動自在に支持され、センサ回転軸は、内輪を外嵌させると共にその軸線方向において内輪の一端部を当接させる段差を画定する縮径部を有し、回転部材は、縮径部に外嵌されると共に内輪の他端部に当接するスペーサを挟んでセンサ回転軸に固定されている、構成を採用することができる。
この構成によれば、センサ回転軸が軸受を介して回動自在に支持されると共に、軸受の内輪がスペーサを挟んでセンサ回転軸と回転部材とで堅固に挟持されるため、センサ回転軸を短くすることができると共にその倒れ(傾き)を防止でき、高精度な検出が可能になる。また、センサ回転軸を短くできるが故に、アクセル開度検出機構をスロットルボアのピッチに応じて間隔が設定される燃料噴射弁同士の間に容易に配置することができる。
【0012】
上記構成において、アクセル開度検出機構は、アクセルケーブルのアウターケーブルを固定するブラケットを含み、ブラケットは、アクセルケーブルの配線方向を調整するべくホルダに対して着脱自在に固定されている、構成を採用することができる。
この構成によれば、ブラケットの取付け方向を適宜調整することで、種々の二輪車に応じたアクセルケーブルの取り回し(配線)を容易に行うことができる。
【0013】
上記構成において、複数の燃料噴射弁は、電気的接続を行うコネクタを有し、アクセル開度検出機構は、電気的接続を行うコネクタを有し、燃料噴射弁のコネクタとアクセル開度検出機構のコネクタとは、略同一の方向を向くように方向付けられている、構成を採用することができる。
この構成によれば、スロットル装置を二輪車のエンジンに装着する際に、これらのコネクタに対して二輪車側の配線を容易に接続することができ、製造ライン等での組立が容易になる。
【発明の効果】
【0014】
上記構成をなすスロットル装置によれば、構造の簡素化、部品点数の削減、部品の集約化、装置の小型化等を達成しつつ、特に二輪車等に搭載される多気筒エンジンにおいて限られたスペースに容易に配置でき、又、アクセルグリップとアクセル開度検出機構とを連結するアクセルケーブルの取り回しを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るスロットル装置を装着するエンジンを搭載した二輪車を示す外観側面図である。
【図2】本発明に係るスロットル装置の一実施形態を示す外観斜視図である。
【図3】図2に示すスロットル装置においてアクセル開度検出機構の一部が切断された状態を示す外観斜視図である。
【図4】図2に示すスロットル装置の平面図である。
【図5】図2に示すスロットル装置の側面図である。
【図6】図2に示すスロットル装置に含まれるアクセル開度検出機構を示す部分断面図である。
【図7】本発明に係るスロットル装置を二輪車に搭載される多気筒エンジンに装着した状態(ホリゾンタルタイプ)を示す模式図である。
【図8】本発明に係るスロットル装置を二輪車に搭載される多気筒エンジンに装着した状態(ダウンドラフトタイプ)を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
このスロットル装置は、図1に示すように、二輪車に搭載される多気筒エンジン(ここでは、3気筒エンジン)に装着されるものである。
二輪車は、図1に示すように、多気筒エンジン1、多気筒エンジン1の複数の吸気ポートに対して連結部材2を介して装着されるスロットル装置M、スロットル装置Mの上流側に接続される吸気系3、ハンドルに回動自在に設けられたアクセルグリップ4、アクセルグリップ4とスロットル装置Mとの間において連結されるアクセルケーブル5(アウターケーブル5a、インナーケーブル5b)等を備えている。
【0017】
スロットル装置Mは、図2ないし図4に示すように、軸線S方向に伸長する複数(ここでは、3つ)のスロットルボア11を画定するスロットルボディ10、複数のスロットルボア11をそれぞれ開閉する複数(ここでは3つ)のスロットルバルブ20、複数のスロットルバルブ20を一体的に回動させるべくスロットルボディ10に支持されたスロットルシャフト30、スロットルシャフト30を回転駆動するべくスロットルボディ10に設けられた駆動機構40、複数のスロットルボア11内に燃料を噴射するべくスロットルボディ10の一側部(U側)に配列して装着された複数(ここでは、3つ)の燃料噴射弁50、複数の燃料噴射弁50に燃料を供給するべくスロットルボディ10に固定されたデリバリパイプ60、アクセルケーブル5を介してアクセルグリップ4の開度を検出するべくスロットルボディ10の一側部(U側)に装着されたアクセル開度検出機構70、スロットルバルブ20の開度位置を検出するべくスロットルボディ10の一端部に装着された位置センサ80等を備えている。
【0018】
スロットルボディ10は、図2ないし図5に示すように、締結用のネジB1により結合可能に分割された第1ボディ10A及び第2ボディ10Bにより構成されている。
第1ボディ10Aは、図2ないし図4に示すように、スロットルシャフト30の軸線L方向に配列された2つのスロットルボア11、スロットルボア11の両端に形成された連結部11a,11b、スロットルシャフト30を回動自在に支持する軸受孔12、燃料噴射弁50を装着する2つの装着部13、アクセル開度検出機構70を装着するボス部14、駆動機構40を収容するケース部15及びカバー部16、第2ボディ10Bを連結するための複数の連結部17等を備えている。
第2ボディ10Bは、図2ないし図5に示すように、スロットルシャフト30の軸線L方向に配列された1つのスロットルボア11、スロットルボア11の両端に形成された連結部11a,11b、スロットルシャフト30を回動自在に支持する軸受孔12、燃料噴射弁50を装着する1つの装着部13、第1ボディ10Aを連結するための複数の連結部18、位置センサ80を装着するための装着部19等を備えている。
【0019】
ここで、第1ボディ10A及び第2ボディ10Bが結合された状態のスロットルボディ10において、3つの装着部13は、スロットルボディ10の一側部(U側)に等間隔にて配列するように形成され、ボス部14は、第1ボディ10Aのスロットルボア11に対して2つの装着部13と同一の側でかつ2つの装着部13の間に形成されている。
ケース部15及びカバー部16は、第1ボディ10A及び第2ボディ10Bが結合された状態のスロットルボディ10において、3つの装着部13及びボス部14が配置された側と反対側に部分的に突出するように形成されている。
【0020】
このように、駆動機構40を配置する領域においてスロットルボディ10が分割されているため、スロットルシャフト30に対して駆動機構40に含まれる部品(スロットルシャフト30に連結される連結ギヤ等)を容易に装着することができ、又、駆動機構40がケース部15及びカバー部16に収容されて囲繞されるため、他部品等の干渉を防止して機能上の信頼性を確保することができる。
【0021】
3つのスロットルバルブ20は、図2に示すように、スロットルシャフト30がスロットルボディ10に回動自在に支持された後に、それぞれ対応するスロットルボア11に配置されて、ネジB2によりスロットルシャフト30に締結して固定され、スロットルシャフト30と一体となって、スロットルボア11を開閉するようになっている。
【0022】
スロットルシャフト30は、円形断面をなす単一のシャフトからなり、その軸線L方向における第1ボディ10Aのケース部15及びカバー部16に囲繞される領域において、駆動機構40の連結ギヤ(不図示)が着脱自在に連結されて、駆動機構40による回転駆動力が伝達されるようになっている。
すなわち、スロットルシャフト30は、予め連結ギヤ(不図示)が連結された状態で、第1ボディ10Aの軸受孔12に挿入され、又、第2ボディ10Bの軸受孔12に挿入された後に、第2ボディ10Bが第1ボディ10AにネジB1を用いて締結固定されることにより、スロットルボディ10に対して軸線L回りに回動自在に支持されるようになっている。
【0023】
駆動機構40は、スロットルシャフト30を回転駆動するものであり、ケース部15及びカバー部16に収容されたモータ(不図示)、モータの回転力をスロットルシャフト30に伝達するための歯車列(不図示)、及び歯車列に噛合すると共にスロットルシャフト30に連結された連結ギヤ等を備えている。
モータは、所定の角度範囲を回動して回転駆動力(トルク)を発生するトルクモータであり、ケース部15及びカバー部16に収容されるモータ本体、その回転軸に直結されたピニオン、カバー部16に固定された電気的接続を行うためのコネクタ部41等を備えている。
【0024】
3つの燃料噴射弁50は、スロットルボディ10の装着部13に装着される電磁弁を含む本体部51、デリバリパイプ60に接続される接続部52、電気的な接続を行うためのコネクタ53等を備えており、スロットボア11からエンジンの吸気通路に向けて燃料を噴射するようになっている。
すなわち、3つの燃料噴射弁50は、図2ないし図4に示すように、スロットルボディ10の一側部(U側)において3つのスロットルボア11の配列方向(軸線L方向)に等間隔にて配列して装着されている。
コネクタ53は、図3ないし図5に示すように、軸線Sに略垂直な方向(軸線V)の外向き(図5中の上向き)に方向付けられている。
【0025】
デリバリパイプ60は、図2ないし図4に示すように、スロットルシャフト30(の軸線L)と略平行でかつ3つの燃料噴射弁50が配列されたスロットルボディ10の一側部(U側)に配置され、3つの燃料噴射弁50の接続部52にそれぞれ接続されると共にスロットルボディ10にネジ等を用いて固定されている。
そして、デリバリパイプ60は、それぞれの燃料噴射弁50に燃料を供給する共通配管として機能するようになっている。
【0026】
アクセル開度検出機構70は、図2ないし図4、図6に示すように、スロットルボディ10の一側部(U側)すなわち複数の燃料噴射弁50と同一の側に配置され、かつ、スロットルボア11の配列方向(軸線L方向)において2つの燃料噴射弁50の間に配置されている。
ここで、アクセル開度検出機構70は、図2ないし図6に示すように、スロットルボディ10のボス部14にネジB3により着脱自在に固定されるホルダ71、ホルダ71により軸線L2回りに回動自在に支持されるセンサ回転軸72、センサ回転軸72の一部を回動自在に支持する軸受73、ホルダ71に設けられてセンサ回転軸72の回転角度を検出するセンサユニット74、センサ回転軸72と一体的に回転するように固定されると共にアクセルグリップの回動に連動するアクセルケーブル5が連結される回転部材75、回転部材75と軸受73との間に介在するスペーサ76、回転部材75を休止位置に回転付勢するべくホルダ71に保持された戻しバネ77、アクセルケーブル5のアウターケーブル5aを固定するべくホルダ71に固定されたブラケット78、センサユニット74の電気的な接続を行うためのコネクタ79等を備えている。
【0027】
そして、アクセルグリップ4が回転させられると、アクセルケーブル5を介して、回転部材75及びセンサ回転軸72が回転し、センサ回転軸72の回転角度をセンサユニット74が検出することで、アクセルグリップ4の回転量すなわちアクセル開度が検出されるようになっている。
ここでは、アクセル開度検出機構70が、ホルダ71、センサ回転軸72、センサユニット74、回転部材75、戻しバネ77、ブラケット78等により構成され、ホルダ71を基準としてそれぞれの部品が集約されているため、構造の簡素化、小型化等を達成することができる。
【0028】
ホルダ71は、図2ないし図4、図6に示すように、スロットルボディ10のボス部14に固定されるためのネジB3を通す孔を有するフランジ部71a、センサ回転軸72を回動自在に支持する軸受孔71b、軸受73を嵌合する嵌合孔71c、戻しバネ77を外嵌させて保持する円筒部71d、戻しバネ77の一端部77aを掛止する掛止部71e、センサユニット74をネジB4により固定するためのネジ孔をもつフランジ部71f等を備えている。
【0029】
センサ回転軸72は、図6に示すように、ホルダ71の軸受孔71bに支持される大径部72a、軸受73により支持されるべく段差72b´を画定する縮径部72b、縮径部72bよりも縮径して形成され回転部材75を回転不能に嵌合させると共にワッシャ72c´を通しかつナット72c´´が螺合される固定部72c、センサユニット74の一部が連結される連結部72d等を備えている。
【0030】
軸受73は、図6に示すように、センサ回転軸72の縮径部72bに嵌合される内輪73a、ホルダ71の嵌合孔71cに嵌合される外輪73b、内輪73aと外輪73bの間に転動自在に介在する複数の転動体73cを備えている。
ここで、内輪73aは、図6に示すように、縮径部72bに外嵌されると共に軸線L2方向におけるその一端部が段差72b´に当接され、その他端部がスペーサ76に当接するように配置されている。
【0031】
センサユニット74は、センサ回転軸72の連結部72dに連結される可動部(不図示)及び固定部を含み、両者の相対的な移動量を接触式(可変抵抗器等)又は非接触式(磁気センサ等)により検出することにより、センサ回転軸72の回転角度を検出するようになっている。
【0032】
回転部材75は、図2ないし図6に示すように、固定部72cに外嵌される略矩形の嵌合孔75a、アクセルケーブル5のインナーケーブル5bが巻回されるドラム部75b、戻しバネ77の他端部77bが掛止される掛止部75c、ブラケット78のストッパ部78bに当接する当接部75d等を備えている。
スペーサ76は、図6に示すように、センサ回転軸72の縮径部72bに外嵌されると共に、軸線方向L2において、その一端部が軸受73の内輪73aの他端部に当接すると共にその他端部が回転部材75の一側面に当接するように形成されている。
そして、回転部材75は、縮径部75bに外嵌されると共に内輪73aの他端部に当接するスペーサ76を挟んで、センサ回転軸72の固定部72cに外嵌されて、ワッシャ72c´及びナット72c´´を用いてセンサ回転軸72に固定されている。
【0033】
ここでは、センサ回転軸72が軸受73を介してホルダ71に回動自在に支持されると共に、軸受73の内輪73aがスペーサ76を挟んでセンサ回転軸72と回転部材75とで堅固に挟持されるため、センサ回転軸72を短くしつつその倒れ(傾き)を防止でき、それ故に高精度な検出が可能になる。また、センサ回転軸72を短くできるが故に、アクセル開度検出機構70をスロットルボア11のピッチに応じて間隔が設定される燃料噴射弁50同士の間に容易に配置することができる。
【0034】
戻しバネ77は、図2ないし図6に示すように、捩り式のコイルバネであり、ホルダ71の円筒部71dに嵌め込まれて保持されると共に、その一端部77aがホルダ71の掛止部71eに掛止され、その他端部77bが回転部材75の掛止部75cに掛止されており、回転部材75及びセンサ回転軸72を所定の休止位置に回転させて復帰させる付勢力を及ぼすようになっている。
【0035】
ブラケット78は、図2、図4、図5に示すように、ホルダ71に対してネジB5を用いて着脱自在に固定されており、アクセルケーブル5のアウターケーブル5aを固定する固定部78a、回転部材75の当接部75dを当接させて休止位置に停止させるストッパ78bを備えている。
固定部78aは、アクセルケーブル5がアクセルグリップに向けて伸びる際のその伸長方向を方向付ける役割をなし、ここでは、図5に示すように、軸線Sに垂直な方向(軸線V)に対してR側に所定角度傾斜してアクセルケーブル5を導くように形成されている。
尚、ここでは、ブラケット78は、ホルダ71に対して所定の角度に固定されて取付けられるように形成されているが、アクセルケーブル5の配線方向(伸長方向)を調整するべく、ホルダ71に対して傾斜角度を調整し得るように形成されていてもよい。
この場合、ブラケット78の取付け方向を適宜調整することで、種々の二輪車に応じたアクセルケーブル5の取り回し(配線)を容易に行うことができる。
【0036】
コネクタ79は、アクセル開度検出機構70(センサユニット74)を電気的に接続するものであり、図3ないし図5に示すように、軸線Sに略垂直な方向(軸線V)の外向き(図5中の上向き)に方向付けられている。
すなわち、アクセル開度検出機構70のコネクタ79と燃料噴射弁50のコネクタ53とは、略同一の方向(軸線Sに略垂直な外向き)を向くように方向付けられている。
したがって、スロットル装置Mを二輪車のエンジン1に装着する際に、これらのコネクタ79,53に対して二輪車側の配線を容易に接続することができ、製造ライン等での組立が容易になる。
【0037】
上記構成をなすアクセル開度検出機構70は、スロットッルボア11の配列方向において複数の燃料噴射弁50のうちの二つの燃料噴射弁50の間に配置されているため、その分だけアクセル開度検出機構70をスロットルボディ10に近づけて配置することができ、装置M全体のさらなる小型化を達成できる。
また、アクセル開度検出機構70は、図5に示すように、複数の燃料噴射弁50のうちの二つの燃料噴射弁50の間でかつスロットルボア11の軸線S方向においてデリバリパイプ60よりも外側に突出しない領域に配置されているため、デリバリパイプ60を装置Mの外輪郭の基準として、この装置Mを二輪車に配置することができる故に、二輪車におけるレイアウトを容易に行うことができ、又、装置M全体のさらなる小型化を達成できると共に、アクセルケーブル5の取り回しをさらに容易に行うことができる。
【0038】
位置センサ80は、スロットルシャフト30の回転角度を検出するものであり、図2ないし図5に示すように、装着部19にネジB6を用いて固定されるセンサ本体部81、センサ本体部81と一体的に形成されて軸線Sに垂直な方向(軸線V)の外向き(図5中の略上向き)に方向付けられたコネクタ82を備えている。
センサ本体部81としては、スロットルシャフト30の回転角度を検出し得るものであれば、接触式あるいは非接触式のセンサを採用することができる。
コネクタ82は、アクセル開度検出機構70のコネクタ79及び燃料噴射弁50のコネクタ53と共に略同一の方向(軸線Sに略垂直な外向き)を向くように方向付けられているため、スロットル装置Mを二輪車のエンジン1に装着する際に、コネクタ79,53と同様に、コネクタ82に対して二輪車側の配線を容易に接続することができ、製造ライン等での組立が容易になる。
【0039】
以上述べたように、上記構成をなすスロットル装置Mによれば、複数の燃料噴射弁50とアクセル開度検出機構70とが、スロットルボア11に対してスロットルボディ10の一方の側(同一の側)に配置されているため、スロットル装置Mとしての部品の集約化による全体の小型化を達成でき、又、このスロットル装置Mをエンジンに装着する際にスロットルボディ10の他方の側を有効に活用することができる。
【0040】
さらに、上記スロットル装置Mの利点についてさらに説明する。
先ず、上記スロットル装置Mが、図7に示すように、スロットルボア11が略水平方向に方向付けられるように二輪車のエンジン1に装着された(ホリゾンタルタイプの)場合、燃料噴射弁50を二輪車の上側に位置付けつつも、図1に示すように、アクセルケーブル5を直接上側に伸ばしてアクセルグリップ4に接続することができるため、従来のような一旦下向きに伸ばした後に上向きにU字状に屈曲させる必要がなく、アクセルケーブル5の取り回しを容易に行うことができ、又、アクセルケーブル5(アウターケーブル5a)内に水滴等が溜まって、錆、凍結等を生じるのを防止することができる。
【0041】
一方、上記スロットル装置Mが、図8に示すように、スロットルボア11が略上下方向あるいは斜め方向に方向付けられるように二輪車のエンジン1に装着された(ダウンドラフトタイプの)場合、スロットルボディ10の他方の側(D側)をエンジン1に近接して(対向させて)配置し、スロットルボディ10の一方の側(複数の燃料噴射弁50及びアクセル開度検出機構70が配置された側/U側)をエンジン1から離れる向きに(二輪車の後向きに)配置することで、二輪車としての部品の集約化を達成しつつ、上記同様に、アクセルケーブ5の取り回しを容易に行うことができ、又、アクセルケーブル5(アウターケーブル5a)内に水滴等が溜まって、錆、凍結等を生じるのを防止することができる。
【0042】
次に、上記スロットル装置の動作について簡単に説明する。
先ず、アクセルグリップ4が休止位置に戻された状態において、アクセル開度検出機構70は、アクセルケーブル5を介してアクセル開度が零(休止位置)にあることを検出し、駆動機構40はスロットルシャフト30及びスロットルバルブ20を休止位置(アイドル開度又はアイドル開度よりも若干大きいデフォルト開度)に位置付けている。
また、位置センサ80は、この休止位置にあるスロットルシャフト30の角度位置を検出すると共にその検出信号を駆動機構40の制御回路にフィードバックしている。
【0043】
そして、アクセルグリップ4が適宜回転させられると、アクセルケーブル4を介してその回転量(アクセル開度)がアクセル開度検出機構70により検出され、その検出信号が制御回路に送られ、その制御回路から発せられる制御信号に基づいて、駆動機構40が駆動制御されて、スロットルシャフト30及びスロットルバルブ20をアクセルグリップ4の回転量に対応する角度位置に回転させる。
そして、スロットルバルブ20の開度に応じて、スロットルボア11内をR側からF側に向けて空気が流れると共に、必要に応じた燃料が燃料噴射弁50から噴射される。
また、位置センサ80は、この状態におけるスロットルシャフト30の角度位置を検出すると共にその検出信号を制御回路にフィードバックしている。
【0044】
一方、アクセルグリップ4が元の休止位置に戻されると、アクセルケーブル4を介してその回転量(アクセル開度)がアクセル開度検出機構70により検出され、その検出信号が制御回路に送られ、その制御回路から発せられる制御信号に基づいて、駆動機構40が駆動制御されて、スロットルシャフト30及びスロットルバルブ20を休止位置(アイドル開度又はアイドル開度よりも若干大きいデフォルト開度)に位置付ける。
また、位置センサ80は、この状態におけるスロットルシャフト30の角度位置を検出すると共にその検出信号を制御回路にフィードバックしている。
【0045】
上記のように、このスロットル装置Mは、スロットルバルブ20(及びスロットルシャフト30)の開閉駆動をアクセルケーブル5により直接行うものではなく、駆動機構40により開閉駆動を行うと共にアクセルケーブル5はアクセル開度を検出するためにアクセル開度検出機構70に接続されるものであるため、アクセルケーブル5を用いてスロットルバルブを直接開閉駆動するようなスロットル装置を装着した多気筒エンジン搭載の二輪車において、アクセルグリップ4及びアクセルケーブル5を流用しつつ、スロットル装置のみを本発明のスロットル装置Mに交換して、スロットルバルブ20を駆動機構40により開閉駆動する構成とすることができる。
【0046】
上記実施形態においては、複数のスロットルバルブ及びスロットルボア、複数の燃料噴射弁として、3つのスロットルバルブ20及びスロットルボア11並びに3つの燃料噴射弁50を示したが、これに限定されるものではなく、2つ又は4つ以上のスロットルバルブ及びスロットルボア並びに燃料噴射弁を備える構成において、本願発明の構成を採用することができる。
上記実施形態においては、アクセル開度検出機構として、ホルダ71、センサ回転軸72、軸受73、センサユニット74、回転部材75、スペーサ76、戻しバネ77、ブラケット78、コネクタ79を備えたアクセル開度検出機構70を示したが、これに限定されるものではなく、アクセルグリップ4の回転量(アクセル開度)を検出するべく、スロットルボアに対して複数の燃料噴射弁と同一の側に配置されてスロットルボディ10に装着されるものであれば、その他の構成をなすアクセル開度検出機構を採用することができる。
上記実施形態においては、スロットルボディ10を第1ボディ10A及び第2ボディ10Bに分割する構成を示したが、これに限定されるものではなく、一体型のスロットルボディにおいて、本発明の構成を採用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
以上述べたように、本発明に係るスロットル装置は、構造の簡素化、部品点数の削減、部品の集約化、装置の小型化等を達成しつつ、多気筒エンジンにおいて限られたスペースに容易に配置でき、又、アクセルグリップとアクセル開度検出機構とを連結するアクセルケーブルの取り回しを容易に行うことができるため、特に配置スペースが限られた二輪車等に搭載される多気筒エンジンのスロットル装置として適しているのは勿論のこと、その他のエンジンを搭載する車両においても有用である。
【符号の説明】
【0048】
1 多気筒エンジン
2 連結部材
3 吸気系
4 アクセルグリップ
5 アクセルケーブル
5a アウターケーブル
5b インナーケーブル
M スロットル装置
10 スロットルボディ
10A 第1ボディ
10B 第2ボディ
11 スロットルボア
S 軸線
11a,11b 連結部
12 軸受孔
13 装着部
14 ボス部
15 ケース部
16 カバー部
17,18, 連結部
19 装着部
20 スロットルバルブ
30 スロットルシャフト
L 軸線
40 駆動機構
50 燃料噴射弁
51 本体部
52 接続部
53 コネクタ
60 デリバリパイプ
70 アクセル開度検出機構
71 ホルダ
71a フランジ部
71b 軸受孔
71c 嵌合孔
71d 円筒部
71e 掛止部
71f フランジ部
72 センサ回転軸
L2 軸線
72a 大径部
72b 縮径部
72b´ 段差
72c 固定部
72c´ ワッシャ
72c´´ ナット
73 軸受
73a 内輪
73b 外輪
73c 転動体
74 センサユニット
75 回転部材
75a 嵌合孔
75b ドラム部
75c 掛止部
75d 当接部
76 スペーサ
77 戻しバネ
77a 一端部
77b 他端部
78 ブラケット
78a 固定部
78b ストッパ
79 コネクタ
80 位置センサ
B1,B2,B3,B4,B5,B6 ネジ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスロットルボアを画定するスロットルボディと、前記複数のスロットルボアをそれぞれ開閉する複数のスロットルバルブと、前記複数のスロットルバルブを一体的に回動させるべく前記スロットルボディに支持されたスロットルシャフトと、前記スロットルシャフトを回転駆動する駆動機構と、前記複数のスロットルボア内に燃料を噴射するべく前記スロットルボディの一側部に配列して装着された複数の燃料噴射弁と、アクセルケーブルを介してアクセルグリップの開度を検出するべく前記スロットルボディに装着されたアクセル開度検出機構と、を備え、
前記アクセル開度検出機構は、前記複数の燃料噴射弁が配列された一側部と同一の側に配置されている、
ことを特徴とするスロットル装置。
【請求項2】
前記アクセル開度検出機構は、前記スロットッルボアの配列方向において、前記複数の燃料噴射弁の間に配置されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のスロットル装置。
【請求項3】
前記複数の燃料噴射弁に燃料を供給するべく前記スロットルシャフトと略平行に配置されたデリバリパイプをさらに含み、
前記アクセル開度検出機構は、前記複数の燃料噴射弁のうちの二つの燃料噴射弁の間でかつ前記スロットルボアの軸線方向において前記デリバリパイプよりも外側に突出しない領域に配置されている、
ことを特徴とする請求項2に記載のスロットル装置。
【請求項4】
前記アクセル開度検出機構は、アクセルグリップの回動に連動するアクセルケーブルを連結する回転部材と、前記回転部材を一体的に回転するように固定するセンサ回転軸と、前記センサ回転軸を回動自在に支持すると共に前記スロットルボディに着脱自在に固定されるホルダと、前記ホルダに設けられて前記センサ回転軸の回転角度を検出するセンサユニットと、を含む、
ことを特徴とする請求項1ないし3いずれか一つに記載のスロットル装置。
【請求項5】
前記センサ回転軸は、内輪及び外輪を含む軸受を介して、前記ホルダに回動自在に支持され、
前記センサ回転軸は、前記内輪を外嵌させると共にその軸線方向において前記内輪の一端部を当接させる段差を画定する縮径部を有し、
前記回転部材は、前記縮径部に外嵌されると共に前記内輪の他端部に当接するスペーサを挟んで、前記センサ回転軸に固定されている、
ことを特徴とする請求項4に記載のスロットル装置。
【請求項6】
前記アクセル開度検出機構は、アクセルケーブルのアウターケーブルを固定するブラケットを含み、
前記ブラケットは、アクセルケーブルの配線方向を調整するべく前記ホルダに対して着脱自在に固定されている、
ことを特徴とする請求項4又は5に記載のスロットル装置。
【請求項7】
前記複数の燃料噴射弁は、電気的接続を行うコネクタを有し、
前記アクセル開度検出機構は、電気的接続を行うコネクタを有し、
前記燃料噴射弁のコネクタと前記アクセル開度検出機構のコネクタとは、略同一の方向を向くように方向付けられている、
ことを特徴とする請求項1ないし6いずれかに記載のスロットル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−32734(P2013−32734A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168918(P2011−168918)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000177612)株式会社ミクニ (332)
【Fターム(参考)】