説明

セキュリティ特徴を有する文書、読み取り装置、及びセキュリティ特徴を読み取る方法

本発明は、セキュリティ特徴102と光学素子108とを備える文書に関する。セキュリティ特徴は光学素子の前方に配置されており、光学素子は、該セキュリティ特徴の検査のために、少なくとも第1の光学状態と第2の光学状態との間で切り替え可能である。セキュリティ特徴は、第1の状態及び第2の状態のうちの一方のみにおいて光学的に検査可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セキュリティ特徴を有する文書、特に重要文書又はセキュリティ文書、このような文書のための読み取り装置、及びセキュリティ特徴を読み取る方法に関する。
【背景技術】
【0002】
当該技術水準から、重要文書又はセキュリティ文書のための様々なセキュリティ特徴が既知である。これらのセキュリティ特徴には、ユーザによって視覚的に且つ/又は光センサによって機械的に捉えることが可能な光学セキュリティ特徴が含まれる。
【0003】
光学セキュリティ特徴として例えば以下が挙げられる:
波縞:波縞は、いわゆる線印刷によって文書上に印刷される。波縞は通常、様々な色において重なり合って印刷される波及び縞の模様から成る。
マイクロ文字:これは、極めて小さい文字における印刷された筆跡である。肉眼ではマイクロ文字はほとんど認識することができない。例えば、マイクロ文字は、ユーロ紙幣に画素としてモチーフ内に組み込まれている。拡大鏡を用いてマイクロ文字を読み取ることができる。
条件等色システム:条件等色による色同一性に起因して、光の異なるスペクトル組成が人に対して同じ色印象を抱かせることができ、例えば、カラーフィルタ又は可変照明源を用いて該スペクトル組成を光学的に知覚可能にすることができる。
蛍光色、燐光色、及び/又はアップコンバージョン色を有する印刷テキスト。
赤外色を有する印刷テキスト:この色は、赤外線放射下においてのみ、読み取り装置が対応するセンサによって検出可能である。例えばユーロ紙幣はこの光学セキュリティ特徴を備えている。
バーコード、特に1次元又は2次元のバーコード。単色又はカラーである。
光学可変インク(OVI):光学可変インクでは、観察角度に応じて色印象が変化する。これは、光が顔料において屈折、散乱、又は反射するためである。
ホログラム及びキネグラム(透明又は反射性)
透かし
可視の且つ/又は機械的に読み出すことが可能な情報を有するデジタル透かし
レジストレーションプリント(Passerdruck: registration print:見当プリント):様々な模様又は記号が、特定の画像を共同で生成するように重なり合って又は相並んで印刷される。位置のずれ、すなわちいわゆるレジストレーション誤差はほんのわずかであっても肉眼で容易に認識することができる。例えば紙幣のような文書の両面に部分画像が存在する場合、この光学セキュリティ特徴は透かしレジストレーション(Durchsichtspasser: looking-through registration)と呼ばれる。
透明窓(Durchsichtsfenster: looking-through window):透明なプラスチック箔から成る窓が文書内に組み込まれる。
斑繊維(Melierfasern: mottled fibers):文書の紙に、UV光下で様々な色を発する繊維が混合される。
セキュリティスレッド
マイクロパーフォレーション
【0004】
特許文献1から、ルミネセンス素子を備えた有価・偽造防止製品が既知である。真偽判定手段として形成されている層の下にルミネセンス素子が配置されており、それによって、視覚的又は機械的な光学的真偽判定を全ての照明条件下で実施することができる。これによって、別個の放射源を必要とせずに真偽判定が暗がりにおいても可能となる。しかしながら、放射源を用いると、真偽判定手段は、ルミネセンス素子の状態に依存せずにいずれの場合においても判定可能である。
【0005】
出願時には公開されていない、同一出願人による特許出願である特許文献2は、セキュリティ特徴の前方に配置されている光学素子を備える文書を開示している。光学素子は、該光学素子の下に配置されているセキュリティ特徴を覆い、それによって、光学素子が該光学素子の不透明状態にある限りセキュリティ特徴はユーザには不可視である。セキュリティ特徴の検査のために、光学素子は透明状態に移行させられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第197 35 293号
【特許文献2】独国特許出願第10 2006 059 865.2−55号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、公開されている当該技術水準に対して、改良された文書、並びにこのような文書のための読み取り装置及び方法を作成するという課題に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明が基づく課題はそれぞれ、独立特許請求項の特徴によって解決される。本発明の好ましい実施の形態は従属特許請求項において提示されている。
【0009】
本発明によって、例えば重要文書またはセキュリティ文書、特に支払手段、チップカード、証明書、資格証明書、支払手段等のような、光学セキュリティ特徴を有する文書が作成される。該文書は紙ベース且つ/又はプラスチックベースで実現することができる。
【0010】
本発明による文書はセキュリティ特徴を有し、該セキュリティ特徴は、該セキュリティ特徴を観察するか又は機械的に捉えるための放射の入射方向において光学素子の前方に配置されている。光学素子は第1の状態と第2の状態との間で切り替え可能であり、これらの状態において該光学素子はそれぞれ異なる光学特性を有する。例えば、光学素子は該光学素子の第1の状態において、その前方にあるセキュリティ特徴が光学的に捉えられることが可能である、セキュリティ特徴に対する背景を生成する。これに対して、光学素子は、例えば該光学素子の第2の状態では、その前方にあるセキュリティ特徴が視覚的且つ/又は機械的に光学的に捉えられることができない、セキュリティ特徴に対する背景を生成する。
【0011】
光学素子を双方の状態のうちの一方にすることがセキュリティ特徴の検査に必要であることによって、さらなるセキュリティ特徴が与えられる。これは、文書の光学セキュリティ特徴の検査が、例えばユーザが読み取り装置を用いて光学素子を切り替えることができることを前提とするためである。さらに、本発明による文書は高い偽造耐性を有するように形成することができる。これは、該文書の再調整が、従来のセキュリティ印刷技術を用いても、またデジタル技術を単独で用いても不可能であるためである。
【0012】
本発明の1つの実施の形態によれば、光学素子の状態のうちの一方は、セキュリティ特徴を光学的に捉えることができない通常状態である。エネルギーの供給によって、光学素子は少なくとも一時的に、セキュリティ特徴を光学的に捉えることができる、該光学素子の別の状態へと移行する。
【0013】
本発明の1つの実施の形態によれば、光学素子は、該光学素子が透過効果を有する第1の状態と、該光学素子が反射性を有する第2の状態とを有する。光学素子が該光学素子の透過状態にあるときにのみ、文書の裏面においてセキュリティ特徴の検査が可能である。
【0014】
本発明の1つの実施の形態によれば、光学素子は、エネルギーの供給によって、該光学素子の第1の状態から該光学素子の第2の状態に、及び/又は該光学素子の第2の状態から該光学素子の第1の状態に切り替え可能である。エネルギーは、光学素子の実施の形態に応じて、直接、例えば電磁場によって光学素子に供給することができ、それによって、該光学素子は、該光学素子の第2の実質的に透明な状態になる。
【0015】
しかしながら、エネルギーの供給は、例えば接触型インタフェース、非接触型インタフェース、又はデュアルモードインタフェース、特にチップカードインタフェース又はRFインタフェースのような別個の結合素子を介して行うこともできる。結合素子は、例えば、光学素子を該光学素子の第2の実質的に透明な状態に切り替える電圧の誘導的供給のための、例えばアンテナ又はコイルとすることができる。
【0016】
本発明の1つの実施の形態によれば、光学素子は双安定である。すなわち、光学素子は、切り替えられない限り、該光学素子のそれぞれの状態に留まる。したがって、このような双安定光学素子の場合、該光学素子を、光学セキュリティ特徴の検査後に、該光学素子の第2の実質的に透明な状態から、再び該光学素子の第1の実質的に不透明な状態に切り替えて戻すことが必要である。これは、文書の対応する回路によって且つ/又は例えば外部読み取り装置からのエネルギーの新たな供給によって行うことができる。
【0017】
本発明の1つの実施の形態によれば、光学素子は準双安定である。したがって、光学素子は該光学素子の第1の状態に留まる。光学素子が該光学素子の第2の状態に切り替えられた後、該光学素子は、この第2の状態に特定の時間にわたって留まり、その後、自動的に再び第1の状態に戻る。この実施の形態は、文書の光学セキュリティ特徴の検査のために特定の期間の間光学素子を該光学素子の第2の状態にシフトするのに切り替え動作は1回しか必要でなく、そして光学素子が該第2の状態から、さらなる切り替え動作を必要とせずに自動的に再び第1の状態に戻るという利点を有する。第1の状態を実質的に反射性にすると共に、第2の状態を実質的に吸光性にすることができる。さらなる実施の形態では、第1の状態を実質的に吸光性にすると共に、第2の状態を実質的に反射性にすることができる。さらなる実施の形態では、第1の状態を実質的に不透明にすると共に、第2の状態を実質的に透明にすることができ、又はその逆も可能である。
【0018】
本発明の1つの実施の形態によれば、光学素子は、第1の回転位置において光を吸収するように作用すると共に第2の回転位置において光を通過させる回転要素を備える双安定回転要素ディスプレイを含み、それによって、回転要素が該回転要素の第1の回転位置にあるとき、文書の光学セキュリティ特徴は隠される。
【0019】
本発明の1つの実施の形態によれば、光学素子は、第1の回転位置において光を吸収するように作用すると共に第2の回転位置において反射性を有する回転要素を備える双安定回転要素ディスプレイを含み、それによって、回転要素が該回転要素の第1の回転位置にあるとき、文書の光学セキュリティ特徴は認識可能にならない。
【0020】
1つの実施の形態によれば、光学素子は電気泳動表示装置又はエレクトロクロミック表示装置を含む。
【0021】
本発明の1つの実施の形態によれば、光学素子は、静電ウェッティング素子、すなわちいわゆるエレクトロウェッティング表示装置を含む。
【0022】
本発明の1つの実施の形態によれば、光学素子は、特にコレステリック液晶材料又はネマチック液晶材料を有する液晶表示装置を含む。
【0023】
本発明の1つの実施の形態によれば、光学素子は、例えばCitala社(http://www.citala.com)から発売されているようなフレキシブルディスプレイを含む。
【0024】
本発明の1つの実施の形態によれば、光学素子は、例えばFlixel社(www.flixel.com)から発売されているようなマイクロシャッタアレイのような微小電子機械システム(MEMS)を含む。
【0025】
本発明の1つの実施の形態によれば、光学素子は、強誘電材料に基づく表示装置を含む。
【0026】
本発明の1つの実施の形態によれば、光学素子は、有機発光ダイオードに基づく表示装置を含む。
【0027】
光学素子を形成する表示装置は、例えばマトリクス状表示素子を含むことができる。しかしながら、表示素子は必ずしも個別に駆動する必要はなく、該表示素子をそれぞれ、第1の実質的に不透明の状態又は第2の実質的に透明な状態にシフトするには、表示素子の集団的な駆動で十分である。
【0028】
光学素子を形成する表示装置は、例えばマトリクス状表示素子を含むことができる。しかしながら、表示素子は必ずしも個別に駆動する必要はなく、該表示素子をそれぞれ、第1の実質的に非反射性の状態又は第2の実質的に反射性の状態にシフトするには、表示素子の集団的な駆動で十分である。
【0029】
本発明の1つの実施の形態によれば、文書の光学セキュリティ特徴は、波縞、マイクロ文字、条件等色システム、蛍光色、燐光色、及び/若しくはアップコンバージョン色を有する印刷テキスト、赤外色を有する印刷テキスト、光学可変インク(OVI)、ホログラム若しくはキネグラム(透明又は反射性)、透かし、レジストレーションプリント、透明窓、透かしレジストレーションの一部、透過ホログラム、可視光のスペクトルから波長を選択的に通すホログラフィックフィルタ若しくは他の透過素子、斑繊維、セキュリティスレッド、並びに/又はマイクロパーフォレーションである。
【0030】
本発明の1つの実施の形態によれば、セキュリティ特徴は光学的に読み出し可能な情報を含む。例えば、セキュリティ特徴は、デジタル透かし又は1次元若しくは2次元のバーコードである。透かし及びバーコードはそれぞれ、文書上に印刷することができる。
【0031】
本発明の1つの実施の形態によれば、セキュリティ特徴は、光データ記憶装置、特にホログラフィックデータ記憶装置によって特にプラスチックベースで形成される。
【0032】
本発明の1つの実施の形態によれば、セキュリティ特徴は、例えば顔データ、指紋データ、及び/又は虹彩スキャンデータのようなバイオメトリックデータを記憶する。例えば、文書は、特にICAO(国際民間航空機関)標準規格による機械可読旅行文書(MRTD)である。バイオメトリックデータは、MRTDの所持者のバイオメトリックデータとすることができる。
【0033】
本発明の1つの実施の形態によれば、セキュリティ特徴は、いわゆる基本アクセス制御内で使用することができるデータを記憶する。例えば、文書は、光学的に読み取り可能なデータが記憶されている機械読み取り領域(MRZ)を有する。これらのデータ、該データの暗号、又は該データのハッシュ値はセキュリティ特徴内に記憶することができる。
【0034】
本発明の1つの実施の形態によれば、文書は、光学素子を駆動するための集積電子回路を含み、それによって、該光学素子を該光学素子の第1の状態から第2の状態に及び/又は該光学素子の第2の状態から該光学素子の第1の状態に移行させ、セキュリティ特徴への光学的アクセスが行われた後、該光学素子を必要に応じて、セキュリティ特徴の検査が可能である該光学素子の状態から再び該光学素子の通常状態に移行させる。
【0035】
集積電子回路はインタフェースを備えるか又はインタフェースに接続することができ、該インタフェースを介して、該集積電子回路の作動及び光学素子の駆動のためのエネルギーが接触を伴わずに又は接触を伴って供給される。特に、インタフェースはチップカード又はRFインタフェースとすることができる。
【0036】
さらなる一態様では、本発明は、本発明による文書のための読み取り装置に関する。読み取り装置は、光学素子の第1の状態及び第2の状態間の切り替えを開始する手段を有し、それによって、文書のセキュリティ特徴への光学的アクセスを可能にする。
【0037】
さらなる態様では、本発明は、本発明による文書のセキュリティ特徴を読み取る方法に関する。
【0038】
以下において、本発明の実施例を図面を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明による文書の1つの実施形態のブロック図である。
【図2】本発明による文書のさらなる実施形態のブロック図である。
【図3】本発明による文書及び本発明による読み取り装置のさらなる実施形態のブロック図である。
【図4】光学素子が該光学素子の第1の状態にあるときの、本発明による文書のさらなる実施形態の断面図である。
【図5】光学素子が該光学素子の第2の状態にあるときの、図4の実施形態である。
【図6】セキュリティ特徴が線パターンを有する、詳細には光学素子が該光学素子の第1の状態にあるときの、本発明による文書のさらなる実施形態の断面図である。
【図7】光学素子が該光学素子の第2の状態にあるときの、図6の実施形態である。
【図8】セキュリティ特徴が体積ホログラムとして形成されており、光学素子が該光学素子の第1の状態にある、本発明による文書のさらなる実施形態の断面図である。
【図9】光学素子が該光学素子の第2の状態にあるときの、図8の実施形態である。
【図10】光学素子が該光学素子の第1の状態にある、本発明による文書のさらなる実施形態の断面図である。
【図11】光学素子が該光学素子の第2の状態にあるときの、図10の実施形態である。
【図12】光学素子が該光学素子の第1の状態にある、本発明による文書のさらなる実施形態の断面図である。
【図13】光学素子が該光学素子の第2の状態にある、図12の実施形態である。
【図14】光学素子が該光学素子の第1の状態にある、本発明による文書のさらなる実施形態の断面図である。
【図14b】光学素子が該光学素子の第1の状態にある、本発明による文書のさらなる実施形態の断面図である。
【図15】光学素子が該光学素子の第2の状態にある、図14の実施形態である。
【図15b】光学素子が該光学素子の第2の状態にある、図14bの実施形態である。
【図16】本発明による文書のさらなる実施形態、及び本発明による読み取り装置のさらなる実施形態のブロック図である。
【図17】本発明による方法の1つの実施形態の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下の図面の説明では、様々な実施形態の互いに対応する要素は同じ参照符号を付される。
【0041】
図1は、本発明による文書100の1つの実施形態の概略断面図である。文書100はセキュリティ特徴102を有し、該セキュリティ特徴は、当該技術水準から既知の任意の光学セキュリティ特徴とすることができる。セキュリティ特徴102は文書100上に配置されているか、又は文書100の本体内に埋め込まれており、それによって、文書100の裏面104からは該セキュリティ特徴は不可視である。しかしながら、文書の裏面104は透明に形成することもでき、それによって、セキュリティ特徴102は、光学素子108の状態に応じて裏面104から可視となる。これは、セキュリティ特徴102が、透かしレジストレーション、透かしレジストレーションの一部、透過型ホログラム、可視光のスペクトルから波長を選択的に通すホログラフィックフィルタ、透明窓、又は他の透過素子である場合に特に有利である。
【0042】
セキュリティ特徴102の後方には、文書100の本体内に光学素子108が配置されている。光学素子108は、少なくとも2つの異なる状態間で切り替え可能である。これらの状態において、光学素子108はそれぞれ異なる光学特性を有する。例えば、光学素子108は、セキュリティ特徴102に対する異なる背景を生成するのに用いられ、これらの背景の前方では、セキュリティ特徴102を光学的に捉えることができるか又は光学的に捉えることができない。さらに、光学素子108は、例えば、該光学素子の第1の状態において入射放射に対して吸光効果を有する一方、該光学素子の第2の状態では反射性を有する。
【0043】
読み取り装置112はエネルギー源として形成することができる。該エネルギー源から、光学素子108にエネルギーが供給され、それによって、該光学素子が切り替えられる。光学素子108が準双安定光学素子である場合、特定の期間の間、光学素子108を特定の状態に移行させるには単一のエネルギーパルスで十分であり得る。そして、この期間が満了した後、該光学素子は該状態から自動的に元に戻る。これに対して、光学素子108が双安定光学素子である場合、該光学素子を再び該光学素子の元の状態に移行させるにはさらなるエネルギーパルスが必要である可能性がある。
【0044】
さらに、光学素子108は、該光学素子108を特定の状態に保つのに絶えずエネルギーを供給する必要があるように形成することもできる。エネルギーの供給が途絶えると、このような実施形態では、光学素子108は直ぐに、再び該光学素子の開始状態に戻る。
【0045】
例えば、光学素子108は、双安定回転要素ディスプレイとして、又は例えば国際公開WO03/009059号パンフレットからそれ自体が既知であるような双安定電気泳動ディスプレイとして形成することができる。準双安定の実施形態の場合、光学素子108は、例えば電気泳動ディスプレイを備える表示装置を含む。光学素子108を該光学素子の第2の状態に保つためにエネルギーを常に供給する必要がある実施形態の場合、該光学素子はLCDディスプレイを含むことができる。
【0046】
例えば、光学素子108は、帯電又は帯磁した回転要素を含む。読み取り装置102から対応する電磁場を放射することによって、回転要素を、光学素子108が該光学素子の第1の状態と該光学素子の第2の状態との間で切り替え可能であるように動かすことができる。したがって、このような実施形態では、エネルギーは光学素子108に直接供給される。
【0047】
図2は、光学素子108の駆動のためにエネルギーを供給する結合素子114を備える、本発明による文書100の代替の実施形態を示す。結合素子114は、接触型、非接触型、又はデュアルモードのインタフェースとして、特にチップカードインタフェース又はRFインタフェースとして実現することができる。例えば、結合素子114はアンテナ又はコイルとすることができ、それによって、例えば、光学素子108を該光学素子の第2の状態にシフトする電圧を誘導的に供給する。
【0048】
例えば、結合素子114は導線116によって光学素子108に接続しており、それによって、該光学素子を駆動すると共に必要な場合に該光学素子にエネルギーを供給する。このような装置は、該装置を壊さずに文書100から取り外して別の文書本体に入れることができないため、改竄に対するセキュリティが高いという利点を提供する。これは特に、導線116が文書本体内に延在する場合に該当する。ここで、文書100の文書本体は、例えば紙ベースの旅行文書又はチップカードの形態において、紙ベース且つ/又はプラスチックベースで実現することができる。
【0049】
図3は、本発明による読み取り装置112の1つの実施形態を示す。読み取り装置112は、例えば接触型又は非接触型のインタフェースを介してエネルギーを結合素子114に供給するためのエネルギー源118を有する。読み取り装置112はさらに、文書100のセキュリティ特徴102を光学的に検査するための読み取り光線122を生成する放射源120を有する。
【0050】
セキュリティ特徴を光学的に捉えるために、読み取り装置112は、例えば光センサ124及び126のような1つ又は複数の光センサを有する。光センサ124は、文書100に対して、放射源120と同じ側に配置されており、それによって、読み取り光線122に起因してセキュリティ特徴102及び場合によっては光学素子108によって反射される放射128を捉えるように形成されている。これに対して、光センサ126は、文書100の裏面104に対して配置されており、それによって、透過放射130、すなわち、セキュリティ特徴102及び光学素子108を透過した、読み取り光線の部分を捉える。図3に示されるように、読み取り装置112において、文書100を収容する収容領域132を形成することができる。
【0051】
光センサは記号的に示されている。特に、例えばいわゆる「回折領域符号(Diffractive Area Codes)」から生じるような、広範囲に反射されるパターンを検出するために複数のセンサを配置することが可能である。さらに、センサは、例えばビームスプリッタのようなさらなる光学補助手段を介して方向付けることができ、それによって、放射源120の方向に反射される光も検出することができる。
【0052】
読み取り装置112は、読み取り装置112の様々な構成要素を制御するためのプログラム命令121及び光センサ124によって且つ/又は光センサ126によって送信される信号を評価するためのプログラム命令123を実施するプロセッサ119を有する。さらに、プロセッサ119は読み取り装置112のインタフェース125を駆動することができる。該インタフェースはユーザインタフェース及び又はネットワークインタフェースとすることができる。インタフェース125を介して、評価に基づいて得られたデータ及び/又は文書100から読み取られた他のデータを出力することができる。
【0053】
図4は、本発明による文書100の1つの実施形態の断面を示す。文書は、プラスチックベース及び/又は紙ベースとすることができると共にさらなるセキュリティ特徴、印刷テキスト等を含むことができる支持体134を有する。支持体134上には光学素子108が配置されている。図4は、該光学素子の第1状態における光学素子108を示し、該状態においては該光学素子は吸光効果を有する。
【0054】
光学素子108の上にさらなる層136を配置することができ、該層上に光学セキュリティ特徴102が存在している。通常、文書100はさらに、セキュリティ特徴102の上に存在する保護層138を備えることができる。
【0055】
ここで考察している実施形態では、セキュリティ特徴102は、例えば緑色光のような特定のスペクトル領域の放射を反射するように作用する一方、可視領域内の他のスペクトル成分、すなわち特に、赤色光及び青色光を透過させるように作用するように形成されている。例えば、セキュリティ特徴102は体積ホログラムとして形成することができる。
【0056】
図4は、読み取り光線122の赤色成分122'、緑色成分122''、及び青色成分122'''を例示的に示す。赤色成分122'及び青色成分122'''は、セキュリティ特徴102がこれらのスペクトル領域において透過性を有するため、セキュリティ特徴102を透過し、光学素子108によって吸収される。これに対して、緑色成分122''はセキュリティ特徴102によって反射され、それによって、反射放射128は、緑色成分122''のセキュリティ特徴102によって反射された部分から成る。したがって、この反射放射128は、ユーザ110(図1及び図2を参照されたい)に緑色の色印象、すなわち像111をもたらす。
【0057】
図5は、光学素子108が該光学素子の別の状態に切り替わった後の文書100を示す。光学素子108は、図4に示される該光学素子の第1の状態において黒の背景を生成する一方、図5に示される該光学素子の第2の状態では白の又は反射性の(反射をもたらす)背景を生成する。この状態では、光学素子108は反射器として作用する。
【0058】
これによって、読み取り光線122の、セキュリティ特徴102によって反射されるのではなく該セキュリティ特徴を透過する部分が、光学素子によって散乱させられるか又は反射され、それによって、結果的に、読み取り光線122全体が文書から出射することができるか又は直接反射される。したがって、128の方向に散乱する放射はもはや緑色のスペクトル領域のみからなるのではなく、付加的に存在する赤色成分及び青色成分によって明白な色シフトを受け、それによって、セキュリティ特徴102は知覚可能でないか又はほとんど知覚可能でない。したがって、反射放射128はこの場合、読み取り光線122の、反射された赤色成分122'、緑色成分122''、及び青色成分122'''から成る。これによって、全体的に、例えば像111の概ね白の色印象がユーザ110にもたらされ、それによって、セキュリティ特徴102は知覚可能でない。
【0059】
図4及び図5の文書100の実施形態は、セキュリティ特徴102が体積反射ホログラムである場合に特に有利である。これは、体積反射ホログラムが暗い背景に存在することによって、該体積反射ホログラムの可視性が大幅に向上するためである。したがって、例えばフルカラーホログラムは、ホログラフィック記録媒体の特性を適切に選択して、例えば材料厚さを約10μmに、屈折率変調を10−3から10−2にした場合、白い背景においては非常に見えにくいが、黒い背景においては非常に良く見える。したがって、図4及び図5の実施形態では、光学素子が該光学素子の吸光性の、すなわち黒い状態にあるときに、体積ホログラムとして形成されるセキュリティ特徴102に関してコントラストを向上させることができる。
【0060】
光学素子108は、2つの異なる色の間で切り替え可能であるように形成することができる。例えば、光学素子108は、セキュリティ特徴102の観察のために黒い背景を作成するために、該光学素子の第1の状態では黒くなるように形成することができる。これに対して、光学素子108は、該光学素子の第2の状態では、セキュリティ特徴102が入射読み取り光線122を反射するか又は散乱させる色と概ね同じ色を有する。この場合、セキュリティ特徴の構造はユーザ110には不可視である。これは、光学素子が該光学素子の第2の状態にあるときに、光学素子108によって作成される背景がセキュリティ特徴102と同じ色を有するためである。
【0061】
セキュリティ特徴102は、特定の色の放射を自身で生成するアクティブ放射源として形成することもできる。この場合においても、光学素子108は、該光学素子の第1の状態においてセキュリティ特徴102とは別の色、したがって例えば黒を有し、該光学素子の第2の状態において、セキュリティ特徴102が放射を放つのに用いる色と実質的に同じ色を有するように形成することができる。この実施形態は、読み取り光線122が必ずしも必要でないという利点を有する。
【0062】
例えば、セキュリティ特徴102は、ルミネセンスマークとすることができる。ルミネセンスマークは特定の色を有する放射を放出する。この場合、光学素子108は、該光学素子の第1の状態において例えば黒であり、該光学素子の第2の状態では、セキュリティ特徴102が放射を放出する色と概ね同じ色を有する。
【0063】
例えば、セキュリティ特徴102は、ルミネセンスマークとすることができる。ルミネセンスマークは特定の色を有する放射を放出する。この場合、光学素子108は、該光学素子の第1の状態において例えば黒であり、該光学素子の第2の状態では、セキュリティ特徴102が放射の放出のために励起する光を放出する。
【0064】
ルミネセンスセキュリティ特徴102を有するさらなる実施形態では、該ルミネセンスセキュリティ特徴は、光学素子108の第1の切り替え状態の色印象に対応する色印象を有する光を放出する。しかしながら、第2の切り替え状態では、光学素子108は別の色印象を有し、それによって、該ルミネセンスセキュリティ特徴を知覚することはできない。
【0065】
ルミネセンスセキュリティ特徴102を有する第3の実施形態では、該ルミネセンスセキュリティ特徴は、光学素子108の第1の切り替え状態の色印象に対応する色印象を有する光を放出する。しかしながら、第2の切り替え状態では、光学素子108は、別の色印象、特に好ましくは対比色又は補色を有する光を放出し、それによって、セキュリティ特徴102を容易に検証することができる。
【0066】
さらに、光学素子108は好ましくはアクティブ放射源として形成することができる。例えば、光学素子は該光学素子の第1の状態ではルミネセンスを発しない、すなわち例えば黒い。これに対して、光学素子108は該光学素子の第2の状態ではルミネセンスを発する。ここで、ルミネセンスに基づいて光学素子108によって出力される放射は、セキュリティ特徴102の放射と同様であるか又は同一である。同じ効果を、有機発光ダイオード又は有機発光ダイオードディスプレイを光学素子108として使用することによって達成することができる。
【0067】
セキュリティ特徴102は、光学素子が該光学素子の第2の状態にあるときに光学素子108の色に対して条件等色である色を有する印刷テキストから成ることができる。好ましくは光学素子108の通常状態であるこの第2の状態では、セキュリティ特徴102の印刷されたモチーフは特定の照明条件下のみにおいて観察することができる。セキュリティ特徴102の検証のために、特に機械的検証のために、光学素子108は短期間で、該光学素子の第2の状態から該光学素子の第1の状態に切り替えられ、ここで、該光学素子は対比色、好ましくは黒又は白を帯びる。
【0068】
さらなる実施形態によれば、セキュリティ特徴102は、第1の偏光方向の線形偏光を反射する色の印刷テキストである。この場合、光学素子108は、第2の偏光方向の線形偏光を反射するように構成されている。ここで、第2の偏光方向は第1の偏光方向に対して90度回転している。したがって、読み取り光線122の第1の偏光方向にある成分はセキュリティ特徴102によって反射される。一方、読み取り光線122の第2の偏光方向にある成分は光学素子108によって反射される。
【0069】
1つの実施形態では、セキュリティ特徴102は或る色の印刷テキストから成る。光学素子108は、該光学素子がセキュリティ特徴102と同じ色を有する状態と、同じ色印象(条件等色の色)を有する色を有する第2の状態との間で切り替わる。さらなる実施形態では、光学素子108は、セキュリティ特徴102の色と対比色との間で、又はさらなる形態においては、条件等色の色と対比色との間で切り替わることができる。対比色は、特に好ましくは技術的手段を利用せずにセキュリティ特徴を光学的に捉えることを可能にする各色である。
【0070】
したがって、結果的に、読み取り光線122はその全体が文書100によって反射される。光学素子108が第2の偏光方向における線形偏光を反射する、該光学素子の切り替え状態では、セキュリティ特徴102は偏光フィルタを用いてしか捉えることができない。セキュリティ特徴102を検証するために、特に機械的な検証のために、光学素子108を対比色、好ましくは黒又は白に切り替えることができる。代替的に、光学素子108は、該光学素子の別の状態において、第1の偏光方向の線形偏光を反射するように形成することもできる。したがって、後者の場合、読み取り光線122の第1の偏光方向にある成分のみが依然として文書100によって反射される。この場合、セキュリティ特徴102は偏光フィルタ無しで捉えることができる。
【0071】
本発明のさらなる実施形態では、セキュリティ特徴102は、可視光は吸収するが赤外光は吸収しない色の印刷テキストである。したがって、読み取り光線122の可視成分はセキュリティ特徴102によって吸収される一方、読み取り光線122の赤外成分はセキュリティ特徴102によって吸収されるのではなく該セキュリティ特徴を通過する。それによって、読み取り光線の赤外成分は、セキュリティ特徴102の下に配置される光学素子108に到達することができる。ここで、光学素子108は、或る状態において赤外光を吸収し、該光学素子の別の状態では赤外光を吸収するのではなく例えば反射するか又は透過させるように形成されている。したがって、光学素子108の切り替え状態に応じて、赤外領域内の信号は、読み取り装置102によって検出することができるか又は検出することができない。
【0072】
本発明のさらなる実施形態では、セキュリティ特徴102は、例えば赤外光のような不可視スペクトル成分の光は吸収するが可視光は通過させる色の、全面にはわたらない印刷テキストである。このようなセキュリティ特徴102も、光学素子108が、赤外光を吸収する状態を有すると共に、赤外光を吸収しない、したがって例えば反射するか又は透過させる別の状態を有する場合に、該光学素子によって検査することができる。この実施形態では、光学素子108は該光学素子の双方の状態において、光の可視領域において、同一の、同様の、又は異なる特性を有することができる。
【0073】
図6は、例えば線パターンのような構造を有するセキュリティ特徴102を有する、本発明による文書100の1つの実施形態を示す。図6は例示的に、セキュリティ特徴102の線140、142、及び144を示す。
【0074】
読み取り光線122は、ここで考察する実施形態では、図4及び図5の実施形態におけるように垂直ではなく、図6に示されるように、文書100に対して傾斜して方向付けられている。読み取り光線122がセキュリティ特徴102の線のうちの1本に入射する場合、読み取り光線122の1つのスペクトル成分が反射され、一方、読み取り光線122の他のスペクトル成分は通過する。
【0075】
図4及び図5の実施例におけるように、これは図6において緑色成分122''に関して例示的に示される。したがって、読み取り光線122の赤色成分122'は、赤色成分122'がセキュリティ特徴102の線のうちの1本に入射するか否かに関わらずセキュリティ特徴102を通る。したがって、赤色成分122'は光学素子108に到達する。光学素子108の図6に示される状態では、該光学素子は吸光効果を有し、それによって、読み取り光線122の赤色成分122'は文書100によって完全に吸収される。読み取り光線122の他のスペクトル成分、特に青色成分122'''に、またセキュリティ特徴102の線のうちの1本に入射しない限り緑色成分122''にも、対応することが適用される。
【0076】
読み取り光線122の緑色成分122''が線のうちの1本、例えば線140に入射する場合、反射放射128がもたらされる。反射放射128に起因して、線パターンの印象146、すなわちセキュリティ特徴102の線140、142、144、…の像がユーザ110にもたらされる。
【0077】
この実施例は、線パターンが垂直に反射するように形成されており、したがって波長選択性を有しない場合においても機能する。セキュリティ素子108が吸光性を有するように切り替えられた場合、高コントラストにおいて線パターンが見られ、セキュリティ素子108が反射性を有するように切り替えられた場合、このコントラストは弱まる。
【0078】
図7は、光学素子108が反射効果を有する該光学素子の別の状態にあるときの、図6の実施形態の文書100を示す。この場合、セキュリティ特徴102の線において透過するスペクトル成分、すなわち特に赤色成分122'及び青色成分122'''は光学素子108によって吸収されるのではなく反射される。それによって、線パターン146と、赤色成分112'及び青色成分112'''によって生成される線150との重ね合わせから成る変更線パターン148がもたらされる。線150は、緑色成分122''のフェードアウトに起因して概ねマゼンタ色である。
【0079】
層136は、例えば概ね100μmの高さを有することができ、したがって、45度での観察の場合、200μm以下の幅の線と1ミリメートル当たり線が約2.5本以下の厚さとを有する印刷を選択することができる。代替的に、該層は例えば250μmの高さを有することができる。この場合、500μm以下の幅の線を有する印刷を選択することができる。反射器の代わりに、光学素子108は、該光学素子の図7に示される状態において白い表面も形成することができる。この場合、マゼンタ色の線150は任意の角度から明るさが低減した状態で見られることになるであろう。しかしながら、この実施形態においても、変化する線像としての知覚が依然として得られる。
【0080】
上記において図4及び図5の実施形態を参照して記載した変形実施形態は、例えば異なる偏光方向、ルミネセンス、及び赤外放射成分に関して、図6及び図7の実施形態において同様に適用することができる。
【0081】
図8は、セキュリティ特徴102が体積ホログラムとして形成されている、文書100の1つの実施形態を示す。体積ホログラムは、出射観察光線が、標準的な反射条件に従って予期される角度とは別の角度下で観察可能であるように作成される。例えば読み取り光線122が約45度の入射角度で、図8に例示的に示される、セキュリティ特徴102の体積ホログラムの像点152上に入射する場合、0度、すなわち像点153の観察角度下で反射放射128がもたらされる。光学素子108は、該光学素子の図8に示される状態において吸光効果を有する。すなわち、読み取り光線122の赤色成分122'及び青色成分122'''は光学素子108によって吸収される。
【0082】
図9は、光学素子108が反射効果を有する該光学素子の別の状態に切り替わった後の、図8の実施形態における文書100を示す。この状態では、読み取り光線122の赤色成分122'及び青色成分122'''は光学素子108によって吸収されるのではなく反射される。ここで、図9に示されるように出射角度は入射角度と同じである。赤色成分122'及び青色成分122'''が重なり合うことによって、体積ホログラムの像点152からマゼンタ色の追加の点154がもたらされる。
【0083】
図10及び図11は、光学素子108が、図10に示されるような吸光状態と図11に示されるような透明状態との間で切り替え可能である、文書100の1つの実施形態を示す。セキュリティ特徴102の実施形態に応じて、読み取り光線122はセキュリティ特徴102によって変更されるか又は変更されないままであることができる。例えば、読み取り光線は緑色成分122''のみから成り、該緑色成分に対して、文書の構造の他の層、すなわち保護層138、層136、及び支持体134は透明である。光学素子108の図10に示される状態では、セキュリティ特徴102を検査することはできない。これは、読み取り光線が完全に吸収されるためである。これに対して、光学素子108の図11に示される状態では、読み取り光線の少なくとも一部が透過し、それによって、対応する透過像156がもたらされる。
【0084】
ここで、セキュリティ特徴102は、透かしレジストレーション、透かしレジストレーションの一部、透過ホログラム、可視光のスペクトルから波長を選択的に通すホログラフィックフィルタ、透明窓、又は他の透過素子等とすることができる。
【0085】
図12及び図13は、本発明による文書100のさらなる実施形態を示す。この実施形態では、光学素子は、図12に示される吸光状態と図13に示される透過常態との間で切り替え可能である。図12に示されるように、光学素子108の吸光状態では、図4の実施形態と同様に単一の像111が得られる一方、光学素子108の透明状態では追加の像158が得られる。該追加の像は、ここで例示的に考察される、赤色成分122'及び青色成分122'''の重ね合わせに基づいて、セキュリティ特徴102における緑色成分122''の反射に起因してマゼンタ色で現れる。セキュリティ特徴102は、ここで考察される実施形態ではホログラムとして形成することができる。
【0086】
図14及び図15は、反射器160を備える、本発明による文書の1つの実施形態を示す。ここで、セキュリティ特徴102は透過ホログラムとすることができる。光学素子108はここで、図14に示される不透明状態と図15に示される透明状態との間で切り替わることができる。図15に示されるように、光学素子108が該光学素子の透明状態にあるときにのみ、像162が得られる。
【0087】
光学素子108が該光学素子の透明状態にあるときにのみ、光線122の透過ホログラムによって回折する部分、すなわち光線122bが光学素子108を通って反射器160に入射し、それによって、像162が得られる。光線122の回折しない部分、すなわち光線122aは対応して動作する。
【0088】
反射器160は反射金属面とすることができる。該反射金属面は、光学素子108の構成要素として、例えば光学素子108を形成する表示素子の背後電極として形成することができる。光学素子108が反射状態と吸光状態との間で切り替え可能である場合、この実施形態において追加の反射器は不要である。
【0089】
本発明のさらなる実施形態によれば、セキュリティ特徴102はフーリエホログラムから成る。フーリエホログラムは、適した波長及び適した入射角度の適切な光による照射の場合に像を投影することができるという特性を有する。この像は例えば、データページ、ロゴ等とすることができる。従来のディスプレイホログラムのレーザ照射が同じ効果を生成することができる。図14b及び図15bはそれぞれこの特徴を示す。
【0090】
全ての上述の実施例では、純粋なホログラフィックミラー又は同様の回折構造の代わりに、フーリエホログラム又はディスプレイホログラムを適宜使用することが可能である。
【0091】
図16は、本発明による文書100及び本発明による読み取り装置112のさらなる実施形態を示す。ここで考察される実施形態では、文書100は、例えば電子パスポートのような旅行文書である。文書100は、いわゆる機械読み取り領域164を有する。結合素子114はここではRFチップとして形成されている。該RFチップは、暗号プロトコルの実施のためのプログラム命令166と、光学素子108の駆動のためのプログラム命令168とを実施するのに用いられる。さらに、RFチップ内に、例えば機密データ又は保護を要するデータ、特に文書100の所持者のバイオメトリックデータのようなデータ170を記憶することができる。
【0092】
ここで、読み取り装置112のプロセッサ119は、暗号プロトコルの読み取り装置112に関連するステップを実施するプログラム命令172を実施するのに用いられる。読み取り装置112のエネルギー源118はここではRFインタフェースとして形成されており、それによって、文書100のRFチップと通信する。光センサ124の他に、読み取り装置112はさらなる光センサ174を備えることができ、それによって、例えばMRZ164又は他の光学的に機械的に読み取り可能なデータが捉えられる。
【0093】
プログラム命令166及び172によって実施される暗号プロトコルは、例えば、基本アクセス制御(BAC)を実施するためのプロトコルとすることができる。RFチップはさらに、BACの実施に成功した後になって初めて、プログラム命令168によって光学素子108が、セキュリティ特徴102が読み取り装置112によって検査されることができるように駆動されるように形成されている。
【0094】
したがって、例えば、まずMRZ164が光センサ174によって捉えられる。このように捉えられたデータから、読み取り装置112は、該読み取り装置112がRFチップによって送信される乱数を暗号化すると共に、RFインタフェースによって暗号をRFチップに伝送するのに用いられる鍵を生成する。RFチップはこの暗号を期待値と一致するか否かに関して検査する。暗号が期待値と一致する場合、BACは首尾良く合格したとみなされる。
【0095】
図17は対応する流れ図を示す。ステップ200において、読み取り装置と文書との間でBACプロトコルを実施する。BACプロトコルが首尾良く終了した後、RFチップは、文書の光学素子に切り替え信号を出力し、それによって、該光学素子は、文書のセキュリティ特徴が検査可能である状態にシフトする。ステップ204において、セキュリティ特徴内に記憶されているデータが読み取り装置によって読み出される。ステップ206において、BACプロトコルの実施のために文書のMRZから捉えられたデータとの一致を検査する。一致しない場合、読み取り装置はステップ208においてエラー報告を出力する。一致する場合、読み取り装置はステップ210において、文書内に記憶されているデータにアクセスし、それによって、該データをRFを介して読み出す(図16の実施形態において記憶装置170内に記憶されているデータを参照されたい)。
【0096】
102内に記憶されているものが機密データである場合、BACの成功に加えて、拡張アクセス制御(EAC)の成功を前提条件とすることも可能である。該拡張アクセス制御中、端末は、セキュリティ特徴102内に記憶されているデータにアクセスする権利があることを証明する。
【符号の説明】
【0097】
100 文書
102 セキュリティ特徴
104 裏面
106 表面
108 光学素子
110 ユーザ
111 像
112 読み取り装置
114 結合素子
116 導線
118 エネルギー源
119 プロセッサ
120 放射源
121 プログラム命令
122 読み取り光線
123 プログラム命令
124 光センサ
125 インタフェース
126 光センサ
128 反射放射
130 透過放射
132 収容領域
134 支持体
136 層
138 保護層
140 線
142 線
144 線
146 線パターン
148 線パターン
150 線
152 像点
153 点
154 点
156 透過像
158 像
160 反射器
162 像
164 MRZ
166 プログラム命令
168 プログラム命令
170 データ
172 プログラム命令
174 光センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セキュリティ特徴(102)と光学素子(108)とを備える文書であって、該セキュリティ特徴は該光学素子の前方に配置されており、該光学素子は、該セキュリティ特徴の検査のために、少なくとも第1の光学状態と第2の光学状態との間で切り替え可能であり、前記セキュリティ特徴は、前記第1の状態及び前記第2の状態のうちの一方のみにおいて光学的に検査可能であり、前記セキュリティ特徴は、前記光学素子の前記第1の状態又は前記第2の状態のみにおいて視覚的に知覚可能であるように形成されている、文書。
【請求項2】
前記光学素子は、エネルギーの供給によって、該光学素子の第1の状態と該光学素子の第2の状態との間で切り替え可能である、請求項1に記載の文書。
【請求項3】
前記光学素子は、電気泳動表示装置、エレクトロクロミック表示装置、静電表示装置、回転要素表示装置、エレクトロウェッティング表示装置、強誘電表示装置、及び/若しくは、特にコレステリック液晶材料若しくはネマチック液晶材料を有する液晶表示装置、例えばマイクロシャッタアレイのような微小電子機械システム(MEMS)、並びに/又は、強誘電材料若しくは干渉変調器に基づく表示装置、有機発光ダイオード若しくは有機発光ダイオードディスプレイを含む、請求項1又は2に記載の文書。
【請求項4】
前記セキュリティ特徴は、ホログラム、特に体積ホログラム、反射ホログラム、透過ホログラム、フーリエホログラム、ディスプレイホログラム、ルミネセンスマーク、偏光の反射のための反射器、特定のスペクトル領域の光の吸収のための吸光器、波縞、マイクロ文字、条件等色システム、蛍光色、燐光色、及び/若しくはアップコンバージョン色を有する印刷テキスト、赤外色を有する印刷テキスト、光学可変インク(OVI)、キネグラム(透明又は反射性)、透かし、バーコード、レジストレーションプリント、透明窓、斑繊維、セキュリティスレッド、並びに/又はマイクロパーフォレーションである、請求項1から3のいずれか一項に記載の文書。
【請求項5】
前記セキュリティ特徴は、光学的に読み出し可能な且つ/又は光学的に認知的に捉えることが可能なデータを有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の文書。
【請求項6】
前記データはバイオメトリックデータ及び/又は個人データである、請求項5に記載の文書。
【請求項7】
前記光学素子を切り替えるための集積電子回路(114)を備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の文書。
【請求項8】
前記光学素子は、該光学素子の第1の状態において入射放射を吸収し、該光学素子の第2の状態において入射放射を反射する、請求項1から7のいずれか一項に記載の文書。
【請求項9】
前記セキュリティ特徴は、第1のスペクトル領域(122'')における反射のために且つ第2のスペクトル領域(122'、122''')における透過のために形成されており、前記光学素子は、該光学素子の第1の状態において、少なくとも前記第2のスペクトル領域において吸光効果を有し、該光学素子の第2の状態において、少なくとも前記第2のスペクトル領域において反射効果を有するように形成されている、請求項8に記載の文書。
【請求項10】
前記セキュリティ特徴は、第1のスペクトル領域における放射の反射、散乱、又は生成のために形成されており、前記光学素子は、該光学素子の第2の状態において、前記第1のスペクトル領域における反射のために形成されている、請求項8に記載の文書。
【請求項11】
前記セキュリティ特徴は、第1のスペクトル領域においてルミネセンスを発するマークであり、前記光学素子は、該光学素子の第1の状態において、ルミネセンスを発せず、該光学素子の第2の状態において、前記第1のスペクトル領域においてルミネセンスを発する、請求項1から10のいずれか一項に記載の文書。
【請求項12】
前記セキュリティ特徴は第1の色を有し、前記光学素子は該光学素子の第1の状態において、前記第1の色とは異なる第2の色を有し、前記光学素子は該光学素子の第2の状態において、前記第1の色に対して条件等色である第3の色を有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の文書。
【請求項13】
暗号プロトコルを実施すると共に、該暗号プロトコルの条件が満たされるときに前記光学素子を駆動する集積電子回路(114)を備える、請求項1から12のいずれか一項に記載の文書。
【請求項14】
重要文書又はセキュリティ文書、特に旅行文書又は証明書、チップカード、資格証明書、支払手段等である、請求項1から13のいずれか一項に記載の文書。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図14b】
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【図15】
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【図15b】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2010−524070(P2010−524070A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−501481(P2010−501481)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際出願番号】PCT/EP2008/053585
【国際公開番号】WO2008/119708
【国際公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(599147447)ブンデスドルケライ ゲーエムベーハー (21)
【氏名又は名称原語表記】BUNDESDRUKEREI GMBH
【Fターム(参考)】