説明

セスキテルペンラクトンを含有する抗酸化ストレス剤

【課題】Nrf2−ARE経路におけるAREエンハンサー活性を亢進させ、一群の抗酸化タンパク質の発現を誘導することにより、酸化ストレスを改善する抗酸化ストレス剤の提供。
【解決手段】式1


等で示される特定のセスキテルペンラクトン誘導体。該化合物は、酸化ストレスに対する脆弱性を改善して、酸化ストレスの関連する神経変性疾患、虚血性脳血管障害、虚血性心疾患、炎症性腸疾患、眼疾患、リウマチ等を予防、治療に有効である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セスキテルペンラクトンを含有する抗酸化ストレス剤に関わる。より詳しくは、酸化ストレスが関連する神経変性疾患、虚血性脳血管障害等を予防、治療するセスキテルペンラクトンを含有する抗酸化ストレス剤に関する。
【背景技術】
【0002】
酸素を利用してエネルギーを得る生体では、常に活性酸素種(reactive oxygen species;ROS)が産生される。ROSは反応性が高く、タンパク質、脂質、DNA等の機能分子を修飾して、細胞機能障害を惹起する。細胞はROSに対する防御機構を備えているが、過剰のROSが蓄積すると酸化ストレスが生じ、神経変性疾患、虚血性脳血管障害等の酸化ストレスが関連する疾患の発症や症状の進展に係わると考えられている。
【0003】
異物代謝や酸化ストレス応答において重要な役割を果たす転写因子であるNF-E2 related factor 2(Nrf2)は、薬物代謝第2相酵素や抗酸化タンパク質などの遺伝子の上流に存在する抗酸化剤応答配列(antioxidant response element;ARE)に結合することで、これらの遺伝子の発現を調節している。Nrf2の活性化は一群の抗酸化タンパク質の発現を亢進させることから、Nrf2-ARE経路は酸化ストレスに対する生体防御機構において中心的な役割を担っていると考えられている。ドパミン受容体アゴニストであるアポモルフィン(Apo)は酸化ストレスに対する神経細胞保護作用を有しているが、Apoのこの保護作用にNrf2-ARE経路が関与していることが明らかにされた(非特許文献1)。
【0004】
一方、セスキテルペン誘導体は様々な効果があることが知られている。特許文献1では、セスキテルペンラクトン、あるいはセスキテルペンラクトンを含む植物や植物抽出物などのセスキテルペンラクトン源を、リボフラビンなどのビタミン複合体と組み合わせて使用すると片頭痛、関節炎、ぜんそく等の疾病の治療と予防に有用なことが開示されている。
【0005】
また、非特許文献2においては、セスキテルペンラクトンがヒト腫瘍細胞株であるHL60とSW480細胞に対して細胞毒性作用を示し、この細胞毒性作用とセスキテルペンラクトンのアポトーシスの誘導作用の関係について開示されている。
【0006】
特許文献2及び非特許文献3においては、脂肪細胞分化を阻害する化合物を同定し、肥満あるいは肥満が関与する疾患を予防、改善または治療するための医薬組成物および食品組成物を提供することを目的として、脂肪前駆細胞から脂肪細胞への分化誘導を阻害する天然物質について研究された。その結果、中南米に生息するキク科植物カレアの抽出物であるセスキテルペンラクトンに、優れた脂肪細胞分化誘導を阻害する作用があることが判明した。カレア抽出物またはセスキテルペンラクトンは、肥満あるいは肥満が関連する疾患を予防、改善または治療するための医薬組成物および食品組成物となるものと期待されることが開示されている。
【0007】
上記のように、セスキテルペンラクトンとリボフラビン等のビタミン複合体と組み合わせると片頭痛、関節炎、ぜんそく等の疾病の治療と予防に効果があること、セスキテルペンラクトンが肥満あるいは肥満が関連する疾患を予防、改善する作用が報告されている。しかし、酸化ストレスに対する生体防御機構において中心的な役割を担っているNrf2-ARE経路にセスキテルペンラクトンが関与していることは未だ知られていない。
【特許文献1】特表平10−512573号公報
【特許文献2】特表2005−503381号公報
【非特許文献1】原 宏和、YAKUGAKU ZASSHI 127(8)1199-1205(2007)
【非特許文献2】J.Pharmacol.Sci.,97,242-252,(2005)
【非特許文献3】Biosci.Biotechnol.Biochem.,69(12),2470-2474(2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者等は、酸化ストレスに対する生体防御機構において中心的な役割を担っていると考えられるNrf2−ARE経路におけるAREエンハンサー活性を亢進させ、一群の抗酸化タンパク質の発現を誘導することにより、酸化ストレスを改善する抗酸化ストレス剤を提供する。抗酸化ストレス剤は酸化ストレスによって惹起される細胞の脆弱性を改善して、神経変性疾患、虚血性脳血管障害、虚血性心疾患、炎症性腸疾患、眼疾患、リウマチ等の疾患を予防、治療する予防治療剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
Nrf2は刺激のない状態ではシステインに富むタンパク質Keap1と結合して細胞質内に局在している。しかし、Keap1に内在するシステイン残基が親電子性物質やROS(活性酸素種、reactive oxygen species)などにより酸化的修飾を受けると、Keap1のコンフォメーション変化が起こり、Nrf2はKeap1から解離し、核内に移行する。核内に移行したNrf2は、小Maf因子とヘテロダイマーを形成しAREに結合することで、HO-1(ヘムオキシゲナーゼ1)、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、NQO1などの抗酸化タンパク質の発現を亢進させる。
【0010】
そこで、酸化ストレスに対する生体防御機構において中心的な役割を担っていると考えられるNrf2-ARE経路に対するセスキテルペンラクトン類の作用について鋭意研究を重ね、酸化ストレスに対する細胞の脆弱性の改善を介する神経変性疾患、虚血性脳血管障害、虚血性心疾患、炎症性腸疾患、眼疾患、リウマチ等の予防治療剤の検索を行った。
【0011】
本発明の特徴は、式1〜式6に示す構造式で示される6種類のセスキテルペンラクトンの少なくとも何れか1種を含有することを特徴とする抗酸化ストレス剤である。
【0012】
【化1】

式1:アルカノライド(arucanolide)

【0013】
【化2】

式2:カレアラクトンA(calealactoneA)

【0014】
【化3】

式3:2,3-エポキシ-カレアラクトンA(2,3-epoxy-calealactone A)

【0015】
【化4】

式4:カレアラクトンB(calealactone B)

【0016】
【化5】

式5:2,3-エポキシ-ファニスラミン(2,3-epoxy-juanislamin)

【0017】
【化6】

式6:パルテノライド(parthenolide)

本発明の他の特徴は、酸化ストレスが関連する神経変性疾患、虚血性脳血管障害、虚血性心疾患、炎症性腸疾患、眼疾患、リウマチ等の何れかを予防治療することを特徴とする抗酸化ストレス剤である。
【0018】
本発明の他の特徴は、抗酸化ストレス剤の作用発現が抗酸化タンパク質の発現増強作用であることを特徴とする抗酸化ストレス剤。
【0019】
本発明の他の特徴は、さらに、式1〜式6に示す構造式で示される6種類のセスキテルペンラクトンの少なくとも何れか1種を含有することを特徴とする健康補助食品である。
【0020】

セスキテルペンラクトンの治療的有効量を含む薬学的に許容し得る製剤が、1つまたは複数の薬学的に許容し得る担体(添加剤)および/または希釈剤とともに処方される。以下で詳細に説明するように、セスキテルペンラクトンを含む薬学的組成物は、以下のことに適応したものを含めて、固体または液体での投与のために具体的に処方され得る:(1)経口投与、例えば、水薬(水溶液もしくは非水溶液または懸濁液)、錠剤、巨丸剤、粉末薬、顆粒剤、舌に塗布するためのペースト;(2)非経口投与、例えば滅菌溶液もしくは懸濁液として例えば皮下、筋内もしくは静脈内注射による。
【0021】
「酸化ストレス」とは、「酸化反応と抗酸化反応のバランスが崩れ、前者に傾くことにより生じる生体にとって好ましくない状態」のことである。生体内の抗酸化システムで処理しきれなくなった活性酸素群が生じた場合、生体の構造や機能を担っている脂質、蛋白質・酵素や、遺伝情報を担う遺伝子DNAを酸化し損傷を与え、生体の構造や機能を乱す結果、多岐にわたる疾患が誘発され、老化が促進されるとともに、癌や生活習慣病にも罹患しやすくなる。
【0022】
「抗酸化ストレス剤」とは、生体での酸化反応と抗酸化反応のバランスが崩れた状態を修復し、生体の構造や機能を回復して、病気を予防治療する薬剤をいう。
【0023】
ここで言う「酸化ストレスの関連する疾患」とは、酸化ストレスが発症および疾患の進行に関連する疾患をいい、神経変性疾患、虚血性脳血管障害、虚血性心疾患、炎症性腸疾患、眼疾患、リウマチ等をいう。前記酸化ストレスの関連する疾患について、神経変性疾患とはアルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、ポリグルタミン病、プリオン病等が例示できる。虚血性脳血管障害とは、脳梗塞、一過性脳虚血発作等が例示できる。虚血性心疾患とは狭心症、心筋梗塞などが例示できる。炎症性腸疾患とは、潰瘍性大腸炎、クローン病等が例示できる。眼疾患とは網膜症、白内障、緑内障、加齢黄斑変性等が例示できる。
【0024】
「治療的有効量」とは、本明細書で使用される場合、いずれの医療にも適用可能な妥当な便益/リスク比で、何らかの所望の治療効果を生じるために有効な作用物質または組成物の量を意味する。
【0025】
「薬学的に許容し得る」とは、本明細書では、正しい医学的判断の範囲内で、妥当な便益/リスク比に見合って、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応等の問題や合併症なしに、人間および動物の組織に接触しての使用に好適な、化合物、材料、組成物、および/または投薬形態を指すために使用される。
【0026】
「薬学的に許容し得る担体」とは、本明細書で使用される場合、体の一器官または一部から体の別の器官または一部へ本発明のセスキテルペンラクトンを運搬または輸送することに関与する液体または固体の充填剤、希釈剤、補形薬、溶剤またはカプセル化材料のような、薬学的に許容し得る材料、組成物または賦形剤を意味する。各担体は、剤形の他の成分と適合し、患者に有害でないという意味で「許容し得る」ものでなければならない。薬学的に許容し得る担体として働き得る材料のいくつかの例には以下のものがある:(1)ラクトース、グルコースおよびスクロースのような糖;(2)トウモロコシデンプンおよびバレイショデンプンのようなデンプン;(3)カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロースのようなセルロースおよびその誘導体;(4)粉末トラガカント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)ココアバターおよび座薬ワックスのような補形薬;(9)落花生油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびダイズ油のような油;(10)プロピレングリコールのようなグリコール;(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールのようなポリオール;(12)オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルのようなエステル;(13)寒天;(14)水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムのような緩衝剤;(15)アルギン酸;(16)パイロジェンフリー水;(17)等張食塩液;(18)リンガー溶液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸緩衝溶液;ならびに(21)薬物処方で使用される他の非毒性の適合物質。いくつかの実施形態では、薬物製剤は非発熱性である。すなわち、患者の体温を上昇させない。
【0027】
この点で「薬学的に許容し得る塩」という用語は、セスキテルペンラクトンの比較的非毒性の無機または有機酸付加塩を指す。これらの塩は、セスキテルペンラクトンの最終的な単離および精製中にin situで調製してもよく、またはセスキテルペンラクトンをその遊離塩基形態で好適な有機または無機酸と別個に反応させ、こうして形成された塩を単離することによって調製してもよい。代表的な塩としては、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、トシル酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナフチル酸塩、メシル酸塩、グルコヘプトン酸塩、ラクトビオン酸塩、およびラウリルスルホン酸塩等がある。(例えば、Berge et al. (1977), J. Pharm. Sci. 66:1-19、を参照されたい。)
セスキテルペンラクトンの薬学的に許容し得る塩としては、例えば非毒性の有機または無機酸からの、化合物の従来の非毒性塩または第四アンモニウム塩がある。例えば、このような従来の非毒性塩としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸等のような無機酸から誘導されたもの;ならびに酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パルミチン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2−アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イソチオン酸等のような有機酸から調製された塩がある。
【0028】
他の場合、本発明の作用物質は、1つまたは複数の酸性官能基を含んでもよく、したがって、薬学的に許容し得る塩基と薬学的に許容し得る塩を形成することが可能である。これらの例で「薬学的に許容し得る塩」という用語は、本発明の化合物の比較的非毒性の無機または有機塩基付加塩を指す。これらの塩も同様に、作用物質の最終的な単離および精製中にin situで調製してもよく、または精製された作用物質をその遊離酸形態で、薬学的に許容し得る金属カチオンの水酸化物塩、炭酸塩または炭酸水素塩のような好適な塩基と、アンモニアと、または薬学的に許容し得る有機第一、第二または第三アミンと別個に反応させることによって調製してもよい。代表的なアルカリまたはアルカリ土類塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、およびアルミニウム塩等がある。塩基付加塩の形成に有用な代表的な有機アミンとしては、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジン等がある。(例えば、Berge et al. (1977)、前掲、を参照されたい。)
ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムのような湿潤剤、乳化剤および潤滑剤、ならびに着色剤、放出剤、被覆剤、甘味料、香味剤および香料、保存料および酸化防止剤もまた組成物中に存在してもよい。
【0029】
薬学的に許容し得る酸化防止剤の例には以下のものがある:(1)アスコルビン酸、塩酸システイン、硫酸水素ナトリウム、二亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等のような水溶性酸化防止剤;(2)パルミチン酸アスコルビル、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α−トコフェロール等のような油溶性酸化防止剤;ならびに(3)クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸等のような金属キレート剤。
【0030】
本発明の剤形は、経口、経鼻、局所(口内および舌下を含む)、直腸、膣および/または非経口投与に好適なものを含む。剤形は、単位投薬形態で都合よく差し出されてもよく、薬学分野で周知のいかなる方法によって調製されてもよい。担体材料と組み合わせて単一投薬形態を作製することができる活性成分の量は、治療されるホスト、特定の投与方式に応じて変わるであろう。担体材料と組み合わせて単一投薬形態を作製することができる活性成分の量は一般に、治療効果を生じる化合物の量であろう。一般に、100パーセントのうち、この量は、約1%から約99%まで、好ましくは約5%から約70%まで、最も好ましくは約10%から約30%までの範囲の活性成分である。
【0031】
これらの剤形または組成物を調製する方法は、セスキテルペンラクトンを担体と、および随意に1つまたは複数の副成分と結びつけるステップを含む。一般に、剤形はセスキテルペンラクトンを液体担体、もしくは微粉化した固体担体、またはその両方と均一かつ緊密に結びつけ、必要であれば製品を整形することによって調製される。
【0032】
経口投与に好適な本発明の剤形は、カプセル、カシェ、丸薬、錠剤、ロゼンジ(味付けされた主薬、通常はスクロースおよびアラビアゴムまたはトラガカント、を用いる)、粉末、顆粒、の形態でもよく、または水性もしくは非水性液体中の溶液もしくは懸濁液として、または水中油もしくは油中水液体乳剤として、またはエリキシルもしくはシロップとして、または香錠(ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアラビアゴムのような不活性基剤を用いる)および/または含嗽剤等としてでもよく、それぞれ活性成分として所定量のセスキテルペンラクトンを含む。
【0033】
経口投与のための本発明の固体投薬形態(カプセル、錠剤、丸薬、糖衣錠、粉末薬、顆粒剤等)では、活性成分は、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムのような1つまたは複数の薬学的に許容し得る担体、および/または以下のもののいずれかと混合される:(1)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、および/またはケイ酸のような充填剤または増量剤;(2)例えばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよび/またはアラビアゴムのような粘結剤;(3)グリセロールのような保湿剤;(4)寒天、炭酸カルシウム、バレイショまたはタピオカデンプン、アルギン酸、ある特定のケイ酸塩、および炭酸ナトリウムのような崩壊剤;(5)パラフィンのような溶解遅延剤;(6)4級アンモニウム化合物のような吸収促進剤;(7)セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロールのような湿潤剤;(8)カオリンおよびベントナイト粘土のような吸収剤;(9)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物のような潤滑剤;ならびに(10)着色剤。カプセル、錠剤および丸薬の場合、薬物組成物は緩衝剤を含んでもよい。同様の種類の固体組成物が、ラクトースまたは乳糖のような補形薬と、高分子量ポリエチレングリコール等とを用いたソフトおよびハード充填ゼラチンカプセル内の充填剤としても使用可能である。
【0034】
錠剤は、圧縮または成形によって、随意に1つまたは複数の副成分とともに、作製され得る。圧縮された錠剤は、粘結剤(例えば、ゼラチンもしくはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、潤滑剤、不活性希釈剤、保存料、崩壊剤(例えば、グリコール酸ナトリウムデンプンもしくは架橋型カルボキシメチルセルロースナトリウム)、表面活性剤または分散剤を用いて調製され得る。成形タブレットは、不活性液体希釈剤で湿潤化された粉末化合物の混合物を好適な機械で成形することによって作製され得る。
【0035】
糖衣錠、カプセル、丸薬および顆粒剤のような、本発明の薬物組成物の錠剤等の固体投薬形態は、随意に、刻み目を付けられ、または薬物調剤分野において周知の腸溶性被膜等の被膜および殻を用いて調製されてもよい。それらは、例えば、所望の放出プロファイルを提供するための種々の比率でのヒドロキシプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリックス、リポソームおよび/またはミクロスフェアを用いて、内部の活性成分の緩徐なまたは制御された放出を提供するように調剤されてもよい。それらは、例えば、細菌保持フィルターを通す濾過によって、または使用直前に滅菌水等の滅菌注射可能媒質に溶解することができる滅菌固体組成物の形態で滅菌剤を組み込むことによって、滅菌してもよい。これらの組成物は、随意に乳白剤を含んでもよく、胃腸管のある特定の部分のみで、またはそこで優先的に、随意に遅延したやり方で、1つまたは複数の活性成分を放出する組成であってもよい。使用可能な埋込み組成物の例として、ポリマー物質およびワックスがある。活性成分は、適当であれば1つまたは複数の上記の補形薬とともに、マイクロカプセル化された形態であってもよい。
【0036】
セスキテルペンラクトンの経口投与のための液体投薬形態としては、薬学的に許容し得る乳剤、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシルがある。液体投薬形態は、活性成分に加えて、例えば水や他の溶媒のような当技術分野で一般に使用される不活性希釈剤、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブタジエングリコール、油(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステルのような可溶化剤および乳化剤、およびそれらの混合物を含んでもよい。
【0037】
不活性希釈剤の他に、経口組成物は、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、甘味料、香味剤、着色剤、香料および保存剤のような補助薬を含んでもよい。
【0038】
懸濁液は、活性化合物に加えて、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天およびトラガカント、ならびにそれらの混合物のような懸濁剤を含んでもよい。
【0039】
直腸または膣投与のための本発明の薬物組成物の剤形は、座薬として提示され得る。この座薬は、例えば、ココアバター、ポリエチレングリコール、座薬ワックスまたはサリチル酸塩を含む1つまたは複数の好適な非刺激性補形薬または担体と、本発明の1つまたは複数の作用物質を混合することによって調製することが可能であり、室温で固体であるが、体温では液体であるため、直腸または膣腔で融解し、活性化合物を放出することになる。
【0040】
膣投与に好適な本発明の剤形はまた、当技術分野で適当であることが知られているような担体を含むペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、発泡またはスプレー剤形も含む。
【0041】
経皮的パッチは、セスキテルペンラクトンを体に制御して配送するという更なる利点を有する。このような投薬形態は、適当な媒質に本発明の化合物を溶解または分散させることによってなされ得る。吸収増進剤を用いて、皮膚を横切るセスキテルペンラクトンのフラックスを上昇させることも可能である。このようなフラックスの速さは、速さ制御膜を設けるか、またはポリマーマトリックスもしくはゲル中に化合物を分散させるかのいずれかによって制御することができる。
【0042】
非経口投与に好適な本発明の薬物組成物は、セスキテルペンラクトンとともに、1つまたは複数の薬学的に許容し得る滅菌等張水溶液または非水溶液、分散剤、懸濁液もしくは乳剤、または使用直前に滅菌注射可能溶液または分散剤中で戻すことが可能な滅菌粉末を含み、これは酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、調剤を目的レシピエントの血液と等張にする溶質、または懸濁剤もしくは濃縮剤を含み得る。
【0043】
本発明の薬物組成物で使用可能な好適な水性および非水性担体の例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)、およびそれらの好適な混合物、オリーブ油のような植物油、ならびにオレイン酸エチルのような注射可能有機エステルがある。固有の流動性は、例えば、レシチンのような被覆材料の使用によって、分散剤の場合には必要な粒子サイズの維持によって、および界面活性剤の使用によって、維持することができる。
【0044】
これらの組成物は、保存料、湿潤剤、乳化剤および分散剤のような補助薬を含んでもよい。微生物の活動の防止は、例えば、パラベン、クロロブタノール、ソルビン酸フェノール等の種々の抗菌剤および抗真菌剤の含有によって確保し得る。糖、塩化ナトリウム等の等張剤を組成物に含めると望ましいかもしれない。さらに、注射可能薬物形態の持続性吸収が、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンのような吸収を遅延させる作用物質の含有により引き起こされ得る。
【0045】
セスキテルペンラクトンは、薬剤としてヒトおよび動物に投与される場合、化合物それ自体で与えられてもよく、または、薬学的に許容し得る担体とともに例えば0.0001〜5.0%(より好ましくは、0.005〜2%)の活性成分を含む薬物組成物として与えられてもよい。
【0046】
以下の実施例では、本発明を実施するいくつかの好ましい形態を例示するが、特許請求の範囲に記載された発明の範囲を限定することは意図していない。代替的な材料および方法を用いて、類似の結果を得ることが可能である。
【発明の効果】
【0047】
酸化ストレスに対する生体防御機構において中心的な役割を担っていると考えられるNrf2-ARE経路に対して、式1〜式6に示す構造式で示される6種類のセスキテルペンラクトンは、AREエンハンサー活性を亢進させ、一群の抗酸化タンパク質の発現を誘導することにより、酸化ストレスに対する神経細胞の脆弱性を改善して、神経変性疾患等酸化ストレスの関連する疾患の予防治療剤となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
以下に、酸化ストレスに対する生体防御機構において中心的な役割を担っていると考えられるNrf2-ARE経路に対するセスキテルペンラクトンの作用について調べた。
【実施例1】
【0049】
6種類のセスキテルペンラクトンのAREエンハンサー活性に対する効果(レポーターアッセイ)
ホタルルシフェラーゼ遺伝子の発現を制御するチミジンキナーゼ遺伝子のプロモーターの上流にARE(antioxidant response element)を配置したAREレポーター遺伝子と、チミジンキナーゼ遺伝子のプロモーターによりウミシイタケルシフェラーゼ遺伝子の発現が制御されるコントロール遺伝子を、TransIT-LT1(Mirus Bio社製)を用いて、ラット褐色細胞腫株PC12細胞に導入した。
【0050】
PC12細胞の培養には5%牛胎児血清および10%馬血清添加DMEM培地を用いた。AREレポーター遺伝子およびコントロール遺伝子を導入した細胞を96ウェル培養プレート(Nunc社製 オプティカルボトムプレート)に播種して24時間培養後、式1〜式6に示す構造式の6種類のセスキテルペンラクトンをそれぞれ10 mMの濃度で添加した。対照は溶媒のDMSOのみを添加した。24時間後に、DualGlo Luciferase Assay System(Promega社製)と蛍光プレートリーダーを用いてホタルルシフェラーゼの活性を測定することにより、AREエンハンサー活性を評価した。各化合物に対して3ウェルずつ用いて試験した結果を図1に示す。
【0051】
結果:6種類のセスキテルペンラクトン化合物はAREエンハンサー活性を様々な程度に増強した。式2のカレアラクトンA(Calealactone A , CL-A)が最も効果が強く(+++)、式1のアルカノライド(arucanolide)と式5の2,3-エポキシ-ファニスラミン(2,3-epoxy-juanislamin)がそれに次ぎ(++)、式3の2,3-エポキシ-カレアラクトンA(2,3-epoxy-calealactone A), 式4のカレアラクトンB(calealactone B), 式6のパルテノライド(parthenolide)はより弱かった(+)。この強弱関係は、化合物が持つa, b-不飽和カルボニル基の数と良く相関していた。
【0052】
【化7】

式1:アルカノライド(arucanolide)

【0053】
【化8】

式2:カレアラクトンA(calealactoneA)

【0054】
【化9】

式3:2,3-エポキシ-カレアラクトンA(2,3-epoxy-calealactone A)

【0055】
【化10】

式4:カレアラクトンB(calealactoneB)

【0056】
【化11】

式5:2,3-エポキシ-ファニスラミン(2,3-epoxy-juanislamin)

【0057】
【化12】

式6:パルテノライド(parthenolide)
【実施例2】
【0058】
10 mM CL-A のヘムオキシゲナーゼ1 (HO-1) mRNA発現に対する効果(定量RT-PCR)
PC12細胞を10 mMのCL-Aで6 時間処理した。対照は溶媒のDMSOだけで処理した。この細胞からRNeasy Micro Kit(Qiagen社製)を用いてトータルRNAを単離し、さらにSuperScript III Reverse Transcriptase(Invitrogen社製)を用いて一本鎖cDNAを合成した。これを鋳型とし、LightCycler(装置)とLightCycler FastStart DNA MasterPLUS SYBR Green I(Roche社製)を用いて、HO-1遺伝子および18S rRNA遺伝子について定量PCR(リアルタイムPCR)を行った。それぞれの遺伝子に特異的なプライマーのDNA塩基配列を以下に示す。
HO-1用センス鎖プライマー:5’- CAACCCCACCAAGTTCAAACA-3'
HO-1用アンチセンス鎖プライマー:5’- AGGCGGTCTTAGCCTCTTCTG-3'
18S用センス鎖プライマー:5’- GTAACCCGTTGAACCCCATT-3'
18S用アンチセンス鎖プライマー:5’- CCATCCAATCGGTAGTAGCG-3’
HO-1 mRNAの定量値を18S rRNAのそれで除することにより標準化した。結果を図2-Aに示す。
【0059】
結果:細胞を10 mMのCL-Aで6 時間処理することによりHO-1 mRNA量が約8倍に増加した。実施例1の結果と合わせて、AREのエンハンサー活性が増強された結果、AREをプロモーター領域にもつ遺伝子の一つであるHO-1遺伝子の転写が誘導されたものと考えられる。
【実施例3】
【0060】
10 mM CL-A のHO-1 タンパク発現に対する効果(ウェスタンブロッティング)
PC12細胞を10 mMのCL-Aで24 時間処理した。対照は溶媒のDMSOだけで処理した。この細胞をプロテアーゼインヒビターカクテル(Sigma社製)を添加したRIPAバッファー(10 mM Tris-HCl, pH 7.5, 1% NonidetP-40, 0.1% Sodium deoxycholate, 0.1% SDS, 150 mM NaCl, 1 mMEDTA)で溶解し、15,000×g, 4℃, 15 minで 遠心分離後、その上清を細胞溶解タンパク試料とした。このタンパク試料各10 mgを常法に従ってSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動により展開した。ゲルのアクリルアミド濃度は 10% を用いた。展開後のゲルから、セミドライ型転写装置を用いてタンパクをPVDF膜に転写し、常法に従ってウェスタンブロッティングを行った。洗浄液は 0.1% Tween 20含有トリス緩衝液 (TBS-T)を、ブロッキング液は 5% スキムミルクTBS-T溶液を、一次抗体はウサギ由来抗HO-1ポリクローナル抗体(Stressgen社製)を5,000倍希釈にて、二次抗体はヒツジ由来抗マウス IgG抗体(HRP標識, GE Healthcare社製)を3,000倍希釈にて、それぞれ用いた。検出はECL Plus Western Blotting Detection System(GE Healthcare社製)を用いた化学発光法で行った。HO-1のシグナルを検出後、Restore Western Blot Stripping Buffer(Pierce社製)を用いてストリッピングを行い、b-アクチンに対する抗体反応・検出を行った。一次抗体に抗 b-アクチンモノクローナル抗体(クローンAC-15, Sigma社製)を10,000倍希釈にて、二次抗体にロバ由来抗ウサギ IgG抗体(HRP標識, GE Healthcare社製)を6,000倍希釈にて用いた他は、上記HO-1に対するのと同様に行った。結果を図2-Bに示す。
【0061】
結果:細胞を10 mMのCL-Aで24時間処理することによりHO-1タンパク量が増加した。実施例2の結果と合わせて、HO-1 mRNA量が増加した結果、HO-1タンパクの合成が促進されたものと考えられる。
【実施例4】
【0062】
CL-A の細胞毒性の検討(トリパンブルー色素排除試験)
PC12細胞を1, 1.5, 2, 5, 10 mMのCL-Aで24時間処理した。対照は溶媒のDMSOだけで処理した。これらの培養に対して常法に従ってトリパンブルー色素排除試験を行い、染色されない生細胞の数を計数した。対照の培養での生細胞数を100% とした相対的な生細胞数を図3に示す。
【0063】
結果:CL-Aは、PC12細胞に対して5 mM以上の濃度で細胞障害を惹起し、生細胞数の減少が認められた。一方、CL-Aは2 mM以下では細胞の生存に影響を及ぼさなかった。
【実施例5】
【0064】
0.1〜2 mM CL-AのAREエンハンサー活性に対する効果(レポーターアッセイ)
実施例1と同様にして、0.1, 0.5, 1, 1.5, 2 mM CL-Aで18 時間処理したPC12細胞でレポーターアッセイを行った結果を図4-Aに示す。
【0065】
結果:実施例4の結果において細胞の生存に影響を与えなかった0.1〜2 mMの濃度のCL-Aで細胞を処理することによっても、AREエンハンサー活性が用量依存的に増強された。
【実施例6】
【0066】
0.5〜2 mM CL-AのHO-1 mRNA発現に対する効果(定量RT-PCR)
実施例2と同様にして、0.5, 1, 1.5, 2 mM CL-Aで6 時間処理したPC12細胞で定量RT-PCR行った結果を図4-Bに示す。
【0067】
結果:実施例4の結果において細胞の生存に影響を及ぼさなかった0.5〜2 mMの低濃度のCL-Aで細胞を処理することによっても、HO-1 mRNA量が用量依存的に増加した。
【実施例7】
【0068】
2 mM CL-A のHO-1 タンパク発現に対する効果(ウェスタンブロッティング)
実施例3と同様にして、2 mM CL-Aで1, 3, 6, 12および 24 時間処理したPC12細胞でウェスタンブロッティングを行った結果を図5に示す。
【0069】
結果:実施例4の結果において細胞の生存に影響を及ぼさなかった2 mM濃度のCL-Aで細胞を処理することによっても、HO-1 タンパク量が増加した。増加は処理開始6時間以後に誘導された。
【実施例8】
【0070】
酸化ストレスにより誘導されるAREエンハンサー活性に対する0.2, 0.5 mM CL-Aのプレコンディショニング効果(レポーターアッセイ)
実施例1と同様にAREレポーター遺伝子およびコントロール遺伝子を導入したPC12細胞を96ウェル培養プレートに播種後24 時間培養した。0.2ないし0.5 mMのCL-Aを添加して6 時間培養後(対照はDMSOのみ添加)、400 mMのH2O2を添加してさらに13時間培養した後、実施例1と同様にして、ホタルルシフェラーゼとウミシイタケルシフェラーゼの活性を順次測定した。前者を後者で除することにより、H2O2による生細胞減少の影響を補正した。各条件に対して3ウェルずつ用いて試験した結果を図6-Aに示す。
【0071】
結果:実施例4の結果において細胞の生存に影響を及ぼさず、かつ実施例5の結果においてそれ自体でのAREエンハンサー活性増強効果が非常に弱かった0.2ないし0.5 mM濃度のCL-Aで細胞を前処理することによって、H2O2処理(酸化ストレス)により誘導されるAREエンハンサー活性が増強された。
【実施例9】
【0072】
酸化ストレスにより誘導されるHO-1 mRNA発現に対する0.2, 0.5 mM CL-Aのプレコンディショニング効果(定量RT-PCR)
播種後24時間培養したPC12細胞に、0.2ないし0.5 mMのCL-Aを添加して6 時間培養後(対照はDMSOのみ添加)、300 mMのH2O2を添加してさらに13時間培養した。実施例2と同様にして定量RT-PCRを行い、標準化したHO-1 mRNA量を求めた結果を図6-Bに示す。
【0073】
結果:実施例4の結果において細胞の生存に影響を及ぼさず、かつ実施例6の結果においてそれ自体でのHO-1 mRNA増加効果が非常に弱かった0.2ないし0.5 mMの濃度のCL-Aで細胞を前処理することによって、H2O2処理(酸化ストレス)によるHO-1 mRNAの誘導が増強された。
【実施例10】
【0074】
実施例4の結果においてCL-Aは5μM以上で細胞毒性を示したが、実施例8および実施例9の結果においてH2O2処理(酸化ストレス)によるAREエンハンサー活性およびHO-1 mRNAの誘導は、0.2〜0.5μMのCL-Aによる前処理で増強された。したがって、CL-Aは、細胞毒性を発現する濃度に比し約10分の1の濃度で、酸化ストレスにより誘導される抗酸化タンパク質の発現を増強する、すなわちプレコンディショニング効果を示すことが判明した。
【実施例11】
【0075】
酸化ストレスにより惹起される細胞死に対する0.5 mM CL-Aの保護効果(細胞生存性アッセイ
播種後24時間培養したPC12細胞に0.5 mMのCL-Aを添加して6 時間培養後(対照はDMSOのみ添加)、150 mMのH2O2を添加してさらに24時間培養した。生細胞により還元されて波長450nmの光を吸収する生成物(ホルマザン)を生じるテトラゾリウム塩WST-8を含有する試薬(セルカウンティングキット-8, 同仁化学研究所製)を培地の1/10容量加えてさらに1.5時間培養後、450 nmの吸光度をプレートリーダーにて測定した(対照波長630 nm)。各培養の吸光度から、対照の培養を100%とした相対的な生細胞数を求めた結果を図7に示す。
【0076】
結果: 0.5 mM CL-Aで細胞を前処理することによって、H2O2処理(酸化ストレス)による細胞死が抑制される保護効果が認められた。
【実施例12】
【0077】
以下本発明に係わる化合物を含有する製剤を例示するが、活性成分、及びその含有量と賦形剤は投与方法、対象疾患により異なり、活性成分、含有量、賦形剤は以下の実施例に限定されるものではない。
【0078】
製剤例1
活性成分(CL-A)100mgをそれぞれ含有する錠剤を以下の方法で配合したものは、神経変性疾患、虚血性脳血管障害、心筋細胞障害等の予防治療剤とすることが出来る。
【0079】
<処方>
成分 (100錠当たり)
活性成分 ……… 10.0g
乳糖 ……… 50.7g
小麦デンプン ……… 7.5g
ポリエチレングリコール
6000 ……… 5.0g
タルク ……… 5.0g
マグネシウム ステアレート……… 1.8g
脱イオン水 ……… 適量

まず、固状の有効成分の粒径を0.6mmメッシュ篩を用いて整粒した。整粒後の有効成分、乳糖、タルク、マグネシウムステアレート、及び処方半量の小麦デンプンを混和した。残余半量の小麦デンプンを上記水40mLに懸濁し、ついで、前記水100mL中にポリエチレングリコールの処方量が含まれ、煮沸された溶液に加えた。得られたパスタに賦形剤(pulverulent)を加え、水を追加して、この混合物を顆粒化する。得られた顆粒を35℃で一夜乾燥、1.2mmメッシュの篩を通して整粒した後、両面がレンズ状で径が約6mmの錠剤を打錠して製造した。
【0080】
製剤例2
活性成分100mgをそれぞれ含有する、チューイング錠(tablet for chewing) を以下の方法で製造した。
【0081】
<処方>
成分 (100錠当たり)
活性成分 ……… 10.0g
マンニトール ……… 230.0g
乳糖 ……… 150.0g
タルク ……… 21.0g
グリシン ……… 12.5g
ステアリン酸 ……… 10.0g
サッカリン ……… 1.5g
5%ゼラチン溶液 ……… 適量

まず、固状の有効成分の粒径を0.25mmメッシュ篩を用いて整粒した。
マンニトールと乳糖を混和し、ゼラチン溶液を添加して顆粒化、2mmメッシュ篩と用いて整粒化、50℃で乾燥した後、1.7mmメッシュの篩を用いて整粒した。グリシンとサッカリンとを注意深く混合した整粒済み活性成分、マンニトール、乳糖顆粒、ステアリン酸、及びタルクを混和した。ついで、この完全に混和した組成物を、両面がレンズ状で上面に割り溝を形成した径が約10mmの錠剤を打錠して製造した。健康補助食品として神経変性疾患、虚血性脳血管障害、心筋細胞障害等の予防治療剤とする
製剤例3
活性成分300mgをそれぞれ含有する錠剤を以下の方法で製造した。
【0082】
<処方>
成分 (100錠当たり)
活性成分 ……… 30.0g
乳糖 ……… 328.5g
コーンスターチ ……… 17.5g
ポリエチレングリコール
6000 ……… 5.0g
タルク ……… 25.0g
マグネシウム ステアレート……… 4.8g
脱イオン水 ……… 適量

まず、固状の有効成分の粒径を0.6mmメッシュ篩を用いて整粒した。
整粒後の有効成分、乳糖、タルク、マグネシウム ステアレート、及び処方半量のデンプンを混和した。残余半量のデンプンを水65mLに懸濁し、ついで、前記水260mL中にポリエチレングリコール処方量が含まれる煮沸溶液にこれを加えた。得られたパスタに賦形剤(pulverulent)を加え、水を追加して、この混合物を顆粒化する。得られた顆粒を35℃で一夜乾燥、1.2mmメッシュの篩を通して整粒した後、両面がレンズ状で上面に割り溝を形成した径が約10mmの錠剤を打錠して製造した。
【0083】
製剤例4
例えば、2.0%注射剤は以下の方法で製造することができる。
【0084】
<処方>
活性成分 ……… 50.0g
塩化ナトリウム ……… 22.5g
リン酸緩衝液、pH7.4 ……… 300.0g
脱イオン水に溶解して全量2500.0mLとする。
【0085】

有効成分を脱イオン水1000mLに溶解した後、ミクロフィルターにてろ過するか、或いは脱イオン水1000mLに懸濁した。ついで、緩衝液を加えて、全量を2500mLにメスアップした。単位当たりの薬量を含有するものを製造するため、その1.0若しくは2.5mLをガラス製アンプル中に封入した(それぞれ20.0又は50.0mgの活性成分を含む注射剤となる)。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】図1は6種類のセスキテルペンラクトンのAREエンハンサー活性に対する効果を示す。
【図2A】図2AはCL-A のヘムオキシゲナーゼ1 (HO-1) mRNA発現に対する効果を示す。
【図2B】図2BはCL-A のHO-1 タンパク発現に対する効果を示す。
【図3】図3はCL-A の細胞毒性の検討結果を示す。
【図4A】図4AはCL-AのAREエンハンサー活性に対する効果を示す。
【図4B】図4Bは CL-AのHO-1 mRNA発現に対する効果を示す。
【図5】図5はCL-A のHO-1 タンパク発現に対する効果を示す。
【図6A】図6Aは酸化ストレスにより誘導されるAREエンハンサー活性に対するCL-Aのプレコンディショニング効果を示す。
【図6B】図6Bは酸化ストレスにより誘導されるHO-1 mRNA発現に対する CL-Aのプレコンディショニング効果を示す。
【図7】図7は酸化ストレスにより誘導される細胞死がCL-Aによる前処理で抑制される効果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1〜式6に示す構造式で示される6種類のセスキテルペンラクトンの少なくとも何れか1種を含有することを特徴とする抗酸化ストレス剤。
【化1】

式1:アルカノライド(arucanolide)

【化2】

式2:カレアラクトンA(calealactone A)

【化3】

式3:2,3-エポキシ-カレアラクトンA(2,3-epoxy-calealactone A)

【化4】

式4:カレアラクトンB(calealactone B)
【化5】

式5:2,3-エポキシ-ファニスラミン(2,3-epoxy-juanislamin)

【化6】

式6:パルテノライド(parthenolide)
【請求項2】
酸化ストレスが関連する神経変性疾患、虚血性脳血管障害、虚血性心疾患、炎症性腸疾患、眼疾患、リウマチ等の何れかを予防治療することを特徴とする請求項1記載の抗酸化ストレス剤。
【請求項3】
抗酸化ストレス剤の作用発現が抗酸化タンパク質の発現増強作用であることを特徴とする請求項1記載の抗酸化ストレス剤。
【請求項4】
式1〜式6に示す構造式で示される6種類のセスキテルペンラクトンの少なくとも何れか1種を含有することを特徴とする健康補助食品。

【図1】
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【図2A】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図2B】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−126801(P2009−126801A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−301446(P2007−301446)
【出願日】平成19年11月21日(2007.11.21)
【出願人】(597112472)財団法人岐阜県研究開発財団 (25)
【出願人】(000106771)シーシーアイ株式会社 (245)
【Fターム(参考)】