説明

セパレータおよび電池

【課題】高い安全性と電池特性とを両立する。
【解決手段】第1の主面および第2の主面を有し、高分子樹脂を含む微多孔膜からなる第1の層と、第1の主面および第2の主面の少なくとも一方に形成され、電気的な絶縁性を有する無機粒子と高分子樹脂とを含み、無機粒子の平均粒径D20が、第1の層の表面に開口する細孔の平均細孔径よりも大きい第2の層とを備えるセパレータを用いる。第1の層の表面に開口する細孔の平均細孔径は、0.03μm以上2.00μm以下であることが好ましい。また、第1の層の平均膜厚が10.0μm以上30.0μm未満であり、無機粒子の平均粒径D90が第1の層の膜厚の1/3以下であることが好ましい。第2の層における粒子の体積分率が60vol%以上95vol%以下であり、第2の層の単位面積あたりの面積密度が0.2mg/cm2以上1.8mg/cm2以下であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、セパレータおよびそれを備える電池に関する。詳しくは、積層型のセパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の携帯電子技術のめざましい発達により、携帯電話やノートブックコンピューターなどの電子機器は高度情報化社会を支える基盤技術と認知されている。また、これらの電子機器の高機能化に関する研究開発が精力的に進められており、これらの電子機器の消費電力も比例して増加の一途を辿っている。その反面、これらの電子機器は長時間の駆動が求められており、駆動電源である二次電池の高エネルギー密度化が必然的に望まれている。また、電子機器に内蔵される電池の占有体積や質量などの観点より、電池のエネルギー密度は高いほど望ましい。このため、現在では、優れたエネルギー密度を有するリチウムイオン二次電池が、殆どの機器に内蔵されるに至っている。
【0003】
リチウムイオン二次電池では、正極と負極とをセパレータを介して対向させることにより、安全性と電池性能とを両立している。しかしながら、高容量化、高安全化に向けた検討においては、従来のポリオレフィン微多孔性膜だけでは十分な性能が得られなくなっている。すなわち、電子機器の高機能化に伴って高容量化させた電池では電極層の厚みが増加し、充電時の負極膨張が大きくなる。このとき、セル内部に圧力がかかるためセパレータの細孔が潰れてイオン透過性が低下するため、耐圧縮特性が低いと十分な電池特性が得られない。
【0004】
これに対して、例えば特許文献1のように、ポリオレフィン微多孔性膜の少なくとも片面に耐熱性高分子の多孔質体からなる被覆層を形成してなる複合膜において、圧子の荷重が12kgf/cm2に達するときのダイナミック硬度DHが1000以上であるセパレータを用いることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−4536号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、容量増加により負極合剤が厚くなることによりさらに電池内の圧力は上昇するが、特許文献1では、セパレータに対する負荷が12kgf/cm2以上の状態においてセパレータが細孔を維持しているかの確認は出来ていない。
【0007】
したがって、この発明の目的は、充放電に伴う電極の膨張が生じた場合でも、セパレータの細孔を保持することができるセパレータおよびそれを備える電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するために、第1の発明は、
第1の主面および第2の主面を有する第1の層と、
第1の主面および第2の主面の少なくとも一方に形成された第2の層と
を備え、
第1の層が、高分子樹脂を含む微多孔膜であり、
第2の層が、電気的な絶縁性を有する無機粒子と、高分子樹脂とを含み、無機粒子の平均粒径D20が第1の層の表面に開口する細孔の平均細孔径よりも大きい微多孔膜である
セパレータである。
【0009】
第2の発明は、
正極と、負極と、電解質と、セパレータとを備え、
セパレータは、
第1の主面および第2の主面を有する第1の層と、
第1の主面および第2の主面の少なくとも一方に形成された第2の層と
を備え、
第1の層が、高分子樹脂を含む微多孔膜であり、
第2の層が、電気的な絶縁性を有する無機粒子と、高分子樹脂とを含み、無機粒子の平均粒径D20が第1の層の表面に開口する細孔の平均細孔径よりも大きい微多孔膜である
電池である。
【0010】
このセパレータは、第1の層の透気度との透気度の差が60sec/100ml以下であり、また、60℃、50kgf/cm2で2分間圧力をかけた時の透気度の、圧力負荷前の透気度に対する透気度上昇率が35%以下であることが好ましい。このようなセパレータを実現するために、さらに、第1の層の表面に開口する細孔の平均細孔径が0.03μm以上2.00μm以下であることが好ましい。
【0011】
この発明では、耐圧性を向上させ、また、第1の層の表面の細孔に無機粒子が入り込まないようにする。これにより、セパレータの第1の層の細孔を潰れにくくし、高いイオン透過性と耐圧性とを両立することができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、耐圧性とイオン透過性とを両立したセパレータを得ることができ、高い安全性と電池特性を有する電池を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、この発明の第1の実施の形態による非水電解質二次電池の一構成例を示す断面図である。
【図2】図2は、図1に示した巻回電極体の一部を拡大して表す断面図である。
【図3】図3は、この発明の第1の実施の形態によるセパレータの一構成例を示す断面図である。
【図4】図4は、この発明の第2の実施の形態による非水電解質二次電池の一構成例を示す分解斜視図である。
【図5】図5は、図4に示した巻回電極体のVI−VI線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明の実施の形態について図面を参照しながら以下の順序で説明する。
(1)第1の実施の形態(円筒型電池の例)
(2)第2の実施の形態(扁平型電池の例)
【0015】
<1.第1の実施の形態>
[電池の構成]
図1は、この発明の第1の実施の形態による非水電解質二次電池の一構成例を示す断面図である。この非水電解質二次電池は、負極の容量が、電極反応物質であるリチウム(Li)の吸蔵および放出による容量成分により表されるいわゆるリチウムイオン二次電池である。この非水電解質二次電池はいわゆる円筒型といわれるものであり、ほぼ中空円柱状の電池缶11の内部に、一対の帯状の正極21と帯状の負極22とがセパレータ23を介して積層し巻回された巻回電極体20を有している。巻回電極体20は、セパレータ23、負極22、セパレータ23、正極21が、この順番に積層され巻回された状態となっており、最外周はセパレータの外周側の端部が露出して、電池缶11の内壁と対面している。電池缶11は、ニッケル(Ni)のめっきがされた鉄(Fe)により構成されており、一端部が閉鎖され他端部が開放されている。電池缶11の内部には、電解液が注入され、セパレータ23に含浸されている。また、巻回電極体20を挟むように巻回周面に対して垂直に一対の絶縁板12、13がそれぞれ配置されている。
【0016】
電池缶11の開放端部には、電池蓋14と、この電池蓋14の内側に設けられた安全弁機構15および熱感抵抗素子(Positive Temperature Coefficient;PTC素子)16とが、封口ガスケット17を介してかしめられることにより取り付けられている。これにより、電池缶11の内部は密閉されている。電池蓋14は、例えば、電池缶11と同様の材料により構成されている。安全弁機構15は、電池蓋14と電気的に接続されており、内部短絡あるいは外部からの加熱などにより電池の内圧が一定以上となった場合にディスク板15Aが反転して電池蓋14と巻回電極体20との電気的接続を切断するようになっている。封口ガスケット17は、例えば、絶縁材料により構成されており、表面にはアスファルトが塗布されている。
【0017】
巻回電極体20の中心には例えばセンターピン24が挿入されている。巻回電極体20の正極21にはアルミニウム(Al)などよりなる正極リード25が接続されており、負極22にはニッケルなどよりなる負極リード26が接続されている。正極リード25は、正極21の巻回中心側端部に一端を固定されて、巻回電極体から延設され、他端を安全弁機構15に溶接されることにより電池蓋14と電気的に接続されており、負極リード26は、負極22の外周側端部に一端固定されて、巻回電極体20から延設され、他端を電池缶11に溶接され、電気的に接続されている。
【0018】
図2は、図1に示した巻回電極体20の一部を拡大して表す断面図である。また、図3は、セパレータの一構成例を示す断面図である。以下、図2および図3を参照しながら、この発明の二次電池を構成する正極21、負極22、セパレータ23および電解液について順次説明する。
【0019】
[正極]
正極21は、例えば、正極集電体21Aの両面に正極活物質層21Bが設けられた構造を有している。なお、図示はしないが、正極集電体21Aの片面のみに正極活物質層21Bを設けるようにしてもよい。正極集電体21Aは、例えば、アルミニウム箔などの金属箔により構成されている。正極活物質層21Bは、正極集電体21Aの両端部を残して設けられている。正極21の、正極活物質層21Bが形成されていない集電体露出部では、正極集電体21Aに正極リード25が接続されている。
正極活物質層21Bは、例えば、正極活物質として、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料の1種または2種以上を含んでおり、必要に応じてグラファイトなどの導電剤およびポリフッ化ビニリデンなどの結着剤を含んで構成されている。
【0020】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、例えば、リチウム酸化物、リチウムリン酸化物、リチウム硫化物あるいはリチウムを含む層間化合物などのリチウム含有化合物が適当であり、これらの2種以上を混合して用いてもよい。エネルギー密度を高くするには、リチウムと遷移金属元素と酸素(O)とを含むリチウム含有化合物が好ましく、中でも、遷移金属元素として、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)および鉄(Fe)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものであればより好ましい。このようなリチウム含有化合物としては、例えば、式(1)、式(2)もしくは式(3)に示した層状岩塩型の構造を有するリチウム複合酸化物、式(4)に示したスピネル型の構造を有するリチウム複合酸化物、または式(5)に示したオリビン型の構造を有するリチウム複合リン酸塩などが挙げられ、具体的には、LiNi0.50Co0.20Mn0.302、LiaCoO2(a≒1)、LibNiO2(b≒1)、Lic1Nic2Co1-c22(c1≒1,0<c2<1)、LidMn24(d≒1)あるいはLieFePO4(e≒1)などがある。
【0021】
LifMn(1-g-h)NigM1h(2-j)k ・・・(1)
(式中、M1は、コバルト(Co)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。f、g、h、jおよびkは、0.8≦f≦1.2、0<g<0.5、0≦h≦0.5、g+h<1、−0.1≦j≦0.2、0≦k≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、fの値は完全放電状態における値を表している。)
【0022】
LimNi(1-n)M2n(2-p)q ・・・(2)
(式中、M2は、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。m、n、pおよびqは、0.8≦m≦1.2、0.005≦n≦0.5、0.1≦p≦0.2、0≦q≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、mの値は完全放電状態における値を表している。)
【0023】
LirCo(1-s)M3s(2-t)u ・・・(3)
(式中、M3は、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。r、s、tおよびuは、0.8≦r≦1.2、0≦s<0.5、0.1≦t≦0.2、0≦u≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、rの値は完全放電状態における値を表している。)
【0024】
LivMn2-wM4wxy ・・・(4)
(式中、M4は、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。v、w、xおよびyは、0.9≦v≦1.1、0≦w≦0.6、3.7≦x≦4.1、0≦y≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、vの値は完全放電状態における値を表している。)
【0025】
LizM5PO4 ・・・(5)
(式中、M5は、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、タングステン(W)およびジルコニウム(Zr)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。zは、0.9≦z≦1.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、zの値は完全放電状態における値を表している。)
【0026】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、これらの他にも、MnO2、V25、V613、NiS、MoSなどのリチウムを含まない無機化合物も挙げられる。
【0027】
[負極]
負極22は、例えば、負極集電体22Aの両面に負極活物質層22Bが設けられた構造を有している。なお、図示はしないが、負極集電体22Aの片面のみに負極活物質層22Bを設けるようにしてもよい。負極集電体22Aは、例えば、銅箔などの金属箔により構成されている。負極活物質層22Bは、負極集電体22Aの両端部を残して設けられている。負極22の、負極活物質層22Bが形成されていない集電体露出部には、負極リード26が接続されている。
【0028】
負極活物質層22Bは、負極活物質として、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料のいずれか1種または2種以上を含んで構成されており、必要に応じて正極活物質層21Bと同様の結着剤を含んで構成されている。
【0029】
なお、この二次電池では、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料の電気化学当量が、正極21の電気化学当量よりも大きくなっており、充電の途中において負極22にリチウム金属が析出しないようになっている。
【0030】
また、この二次電池は、完全充電時における開回路電圧(すなわち電池電圧)が、例えば4.2V以上4.6V以下、好ましくは4.25V以上4.5V以下の範囲内になるように設計されている。開回路電圧が4.25V以上4.5V以下の範囲内に設計されている場合には、開回路電圧が4.20Vの電池よりも電極の膨張が大きくなる。このため、この発明のセパレータを用いることによる効果をより顕著に得ることができる。なお、
開回路電圧が4.25V以上4.5V以下の範囲内に設計されている場合には、同じ正極活物質であっても単位質量当たりのリチウムの放出量が多くなるので、それに応じて正極活物質と負極活物質との量が調整される。これにより高いエネルギー密度が得られるようになっている。
【0031】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、難黒鉛化性炭素、易黒鉛化性炭素、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体、炭素繊維あるいは活性炭などの炭素材料が挙げられる。このうち、コークス類には、ピッチコークス、ニードルコークスあるいは石油コークスなどがある。有機高分子化合物焼成体というのは、フェノール樹脂やフラン樹脂などの高分子材料を適当な温度で焼成して炭素化したものをいい、一部には難黒鉛化性炭素または易黒鉛化性炭素に分類されるものもある。また、高分子材料としてはポリアセチレンあるいはポリピロールなどがある。これら炭素材料は、充放電時に生じる結晶構造の変化が非常に少なく、高い充放電容量を得ることができると共に、良好なサイクル特性を得ることができるので好ましい。特に黒鉛は、電気化学当量が大きく、高いエネルギー密度を得ることができ好ましい。また、難黒鉛化性炭素は、優れた特性が得られるので好ましい。さらにまた、充放電電位が低いもの、具体的には充放電電位がリチウム金属に近いものが、電池の高エネルギー密度化を容易に実現することができるので好ましい。
【0032】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、リチウムを吸蔵および放出することが可能であり、金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を構成元素として含む材料も挙げられる。このような材料を用いれば、高いエネルギー密度を得ることができるからである。特に、炭素材料と共に用いるようにすれば、高エネルギー密度を得ることができると共に、優れたサイクル特性を得ることができるのでより好ましい。この負極材料は金属元素あるいは半金属元素の単体でも合金でも化合物でもよく、またこれらの1種または2種以上の相を少なくとも一部に有するようなものでもよい。なお、この発明において、合金には2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを含むものも含める。また、非金属元素を含んでいてもよい。その組織には固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物あるいはそれらのうちの2種以上が共存するものがある。
【0033】
この負極材料を構成する金属元素あるいは半金属元素としては、例えば、マグネシウム(Mg)、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、パラジウム(Pd)あるいは白金(Pt)が挙げられる。これらは結晶質のものでもアモルファスのものでもよい。
【0034】
中でも、この負極材料としては、短周期型周期表における4B族の金属元素あるいは半金属元素を構成元素として含むものが好ましく、特に好ましいのはケイ素(Si)およびスズ(Sn)の少なくとも一方を構成元素として含むものである。ケイ素(Si)およびスズ(Sn)は、リチウム(Li)を吸蔵および放出する能力が大きく、高いエネルギー密度を得ることができるからである。
【0035】
スズ(Sn)の合金としては、例えば、スズ(Sn)以外の第2の構成元素として、ケイ素(Si)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、およびクロム(Cr)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。ケイ素(Si)の合金としては、例えば、ケイ素(Si)以外の第2の構成元素として、スズ(Sn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)およびクロム(Cr)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。
【0036】
スズ(Sn)の化合物あるいはケイ素(Si)の化合物としては、例えば、酸素(O)あるいは炭素(C)を含むものが挙げられ、スズ(Sn)またはケイ素(Si)に加えて、上述した第2の構成元素を含んでいてもよい。
【0037】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、さらに、他の金属化合物あるいは高分子材料が挙げられる。他の金属化合物としては、MnO2、V25、V613などの酸化物、NiS、MoSなどの硫化物、あるいはLiN3などのリチウム窒化物が挙げられ、高分子材料としてはポリアセチレン、ポリアニリンあるいはポリピロールなどが挙げられる。
【0038】
[セパレータ]
図3は、セパレータ23の一構成例を示す断面図である。セパレータ23は、正極21と負極22とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。セパレータ23は、第1の主面および第2の主面を有する第1層23Aと、この第1層23Aの両主面のうちの少なくとも一方に形成された第2層23Bとを備える。安全性を向上する観点からすると、第1層23Aの両主面に第2層23Bが形成することが好ましい。また、少なくとも一方の面に第2層を形成する場合には、膨張度合いの高い電極に対向する面に第2層を形成することが好ましい。さらに、円筒型電池に適用する場合には、電極が巻回電極体外周側に膨張することから、セパレータの巻回内側面に第2層を設けることが好ましい。なお、図3では、第1層の両主面に第2層23Bが形成された例が示されている。
【0039】
この発明のセパレータ23は、セパレータ23を構成する多孔性樹脂層が相互連続性相構造を有し、電解液の含浸性に優れ、また多孔性であることからイオン透過性に優れる特徴を有する。さらに、イオン透過性の観点から、50kgf/cm2以上においても細孔が維持している。このような観点から、圧力に対して緩衝材となりうる無機材料を含む第2層を形成する。
【0040】
セパレータ23は、大荷重が負荷された場合に細孔が潰れてイオン透過性の低下が生じることが考えられる。電池特性は、そのイオン透過性に影響されるところが大きい。よって、電池内部の圧力変化によるセパレータの評価指標としては、耐圧縮特性を知ることは重要である。また、無機材料による第1層の細孔の目詰まりが起こり、イオン透過性の低下が生じることも考えられる。よって、この発明においては、イオン透過性を把握するために透気度を測定して細孔の状態を明らかにし、優れた電池特性を有するセパレータ構造を見い出した。以下、第1層および第2層について、詳細に説明する。
【0041】
[第1層]
第1層23Aは、例えば、高分子樹脂を主成分としている微多孔性膜である。高分子樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂を用いることが好ましい。ポリオレフィンを主成分とする微多孔性膜は、ショート防止効果に優れ、且つシャットダウン効果による電池安全性向上を図ることができるからである。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレンの単体またはそれらの混合体を用いることが好ましい。また、ポリプロピレンおよびポリエチレン以外にも、化学的安定性を備えた樹脂であればポリエチレンまたはポリプロピレンと共重合させたり、または混合することで用いることができる。
【0042】
第1層23Aの平均膜厚は、10.0μm以上30.0μm未満の範囲内であることが好ましい。平均膜厚が30.0μmを超えると、イオン透過性が悪化し、電池特性が低下する。また、電池内に占めるセパレータ23の体積率が大きくなり過ぎ活物質の体積率が減少し電池容量が低下してしまう。巻回型電池の場合には、巻回電極体20が電池缶11内に収容できなくなることもある。平均膜厚が10.0μm未満であると、機械強度が小さ過ぎ電池捲回時の不具合や、電池安全性の低下に繋がる。
【0043】
第1層23Aの表面に開口する細孔の平均細孔径は、0.03μm以上2.00μm以下の範囲であることが好ましい。表面細孔径が0.03μm未満であると、イオン透過性が悪化し、電池特性が低下する。また、表面細孔径が2.00μm以上であると、機械強度が小さ過ぎ電池捲回時の不具合や、電池安全性の低下に繋がる。また、第2層に含まれる無機粒子が細孔内に入りやすくなり、目詰まりを起こしやすくなるおそれがある。
【0044】
[第2層]
セパレ−タ23の第2層23Bは、電気的な絶縁性を有する無機粒子と、高分子樹脂とを含む多孔性機能層である。高分子樹脂は、相互連続的に繋がった3次元的なネットワーク構造(網目状構造)を有しており、例えばフィブリル化された状態であることが好ましい。無機粒子は、このネットワーク構造内に担持されていることが好ましい。
【0045】
第1の実施の形態においては、第2層23Bは、第1層23Aの各主面の全面に形成されている。したがって、巻回電極体20の正極21および負極22は、セパレータ23の第2層23Bにより囲まれている。そして、第1層23Aの一方の主面に形成された第2層23Bは、正極21の正極活物質層21Bに加えて、正極集電体露出部の正極集電体21A、および集電体露出部に接続された正極リード25と対向している。また、第1層23Aの他方の主面に形成された第2層23Bは、負極22の負極活物質層22Bに加えて、負極集電体露出部の負極集電体22A、および集電体露出部に接続された負極リード26と対向している。そのため、正極集電体21Aや負極集電体22A、正極リード25、負極リード26は、いずれも、直接電池缶11と対面することはなく、間にセパレータ23の第2層23Bが介在されている。
【0046】
第2層23Bが無機粒子を含むことで、圧力に対する緩衝材として機能し、第1層の細孔の潰れを抑制することができる。高分子樹脂が相互連続的に繋がった3次元的なネットワーク構造を有することで、第2層23B自身も空隙を維持することができる。このため、イオン透過性を阻害せず電池特性(サイクル特性)の劣化を抑制でき、且つ柔軟性も付与出来るため安全性を向上させることができる。高分子樹脂がフィブリル化されている場合、フィブリルの平均直径が1μm以下であると、フィブリルを構成する成分の組成比が少なくても、絶縁性を確保できるだけの粒子を確実に担持でき、安全性を向上できる。
【0047】
高分子樹脂は、相互連続的に繋がった3次元的なネットワーク構造を形成可能なものであればよく特に限定されるものではない。高分子樹脂の平均分子量は、50万以上200万以下の範囲であることが好ましい。平均分子量を50万以上にすることで、上述のネットワーク構造を得ることができる。平均分子量を50万以下では、粒子の保持力が弱く、粒子を含む層の剥離などが発生する。高分子樹脂としては、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、ポリスチレン、ポリカーボネートの単体またはそれらを2種以上含む混合体を用いることができる。
【0048】
高分子樹脂としては、電気化学的な安定性の点からすると、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレン、またはポリエチレンオキサイドが好ましい。また、高分子樹脂としては、熱安定性、電気化学的安定性の点からすると、フッ素樹脂を用いることが好ましい。また、高分子樹脂としては、第2層23Bの柔軟性を向上させる点からすると、ポリフッ化ビニリデンが好ましい。第2層23Bの柔軟性が向上すると、電極とセパレータ23との間に混入物が存在する場合に、第2層23Bの混入物に対する形状追随性が向上し、安全性が向上する。
【0049】
また、高分子樹脂として、耐熱性樹脂を用いるようにしてもよい。耐熱性樹脂を用いることで、絶縁性と耐熱性とを両立することができる。耐熱性樹脂としては、高温雰囲気化での寸法安定性の点から、ガラス転移温度の高い樹脂が好ましくい。また、高分子樹脂として、流動による寸法変化や収縮を少なくする点からすると、融解エントロピーを持つ、融点を有しない樹脂を用いることが好ましい。このような樹脂としては、例えば、芳香族骨格を有するポリアミド、芳香族骨格を有しイミド結合を持つもの、またはそれらの共重合体が挙げられる。
【0050】
無機粒子は、例えば、電気的に絶縁性を有する無機粒子である。無機粒子としては電気的に絶縁性を有するものではよく、種類は特に限定されるものではないが、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニアなどの無機酸化物を主成分とするものを用いることが好ましい。
【0051】
第2層23Bに含まれる無機粒子の平均粒径は、粒子径をもとにした20%累積粒径である平均粒径D20が第1層の表面に開口する細孔の平均細孔径よりも大きいことが好ましい。第2層に含まれる無機粒子は、第2層形成時に第1層表面の開口から細孔内に入り込むおそれがある。平均粒径D20が第1層の表面に開口する細孔の平均細孔径よりも大きいことにより、細孔内に入り込む無機粒子の量を顕著に減少させることができる。
【0052】
また、第2層23Bに含まれる無機粒子の平均粒径は、90%累積粒径である平均粒径D90が第1層の膜厚の1/3以下であることが好ましい。無機粒子として粒径の大きい粒子が含まれている場合、無機粒子によって第1層の損傷や破断が生じるおそれがある。また、粒径の大きな無機粒子が含まれることで、大粒子近傍に第2層が形成されない領域が生じるおそれがある。第2層は、例えば無機粒子と高分子樹脂とを含む塗料を塗布する工程を有するため、大粒子の塗布方向脇の領域に塗料が行き渡らないためである。このため、粒径の大きな無機粒子をできるだけ含まないようにすることで、第2層を安定して形成することができる。
【0053】
第2層23Bの単位面積あたりの面積密度は、0.2mg/cm2以上1.8mg/cm2以下であることが好ましい。単位面積あたりの面積密度が0.2mg/cm2未満であると、ショート時抵抗が小さくなり、ショート時発熱量が大きくなるため、安全性が低下する。また、第2層の塗料の塗布むらや塗布切れが生じ、この発明のセパレータを形成することができなくなるおそれがある。単位面積あたりの面積密度が1.8mg/cm2を超えると、安全性は確保できるが、セパレータ23が厚くなり電池内に占めるセパレータ23の体積率が大きくなり過ぎ活物質の体積率が減少し電池容量が低下してしまうため好ましくない。円筒型電池においては、巻回電極体20の素子径が大きくなり、電池缶11に挿入できなくなるおそれもある。
【0054】
第2層23Bにおける無機粒子の混合量(体積分率)が、60vol%以上95vol%以下であることが好ましい。無機粒子の混合量が60vol%未満であると、セパレータの耐圧性が低下するとともに、樹脂の混合量が多いことから樹脂によって第1層の表面の細孔が潰れやすくなる。また、無機粒子の混合量が0vol%であるときには、サイクル特性も低下する。無機粒子の混合量が95vol%を超えると、樹脂の粒子保持力が低下し、無機粒子の剥落、すなわち粉落ちが発生する。
【0055】
このようなセパレータ23では、第2層23B形成後の透気度の変化量(すなわち、第2層形成前後での透気度の差)が60sec/100ml以下であることが好ましい。第1層23A表面に第2層23Bを形成したセパレータ23の透気度が、第1層23A単独での透気度よりも高くなるが、第2層23B形成後の透気度の変化量は小さい方が好ましい。第1層表面の細孔に入り込む無機粒子が多くなるにつれて、第1層のみと第2層形成後との透気度差が大きくなる。すなわち、セパレータ23が無機粒子の目詰まりが抑制されて高いイオン透過性を維持するためには、第1層のみと第2層形成後との透気度差が小さい方が好ましい。
【0056】
ここで、透気度は例えばガーレー式デンソメーターを用いて測定することができる。
【0057】
また、第2層形成後のセパレータを60℃の環境下に載置し、第2層形成後のセパレータに対して50kgf/cm2の圧力を2分間かけた時点での透気度(第2層の圧力負荷後の透気度)が35%以下となることが好ましい。第2層23B形成後のセパレータに対して圧力をかけた際の透気度上昇率は、小さい方が好ましい。圧力がかかった場合にセパレータ23の細孔の潰れが大きくなるほど、圧力負荷時の透気度上昇率が低下する。すなわち、セパレータ23が高い耐圧性を維持するためには、圧力負荷前後での透気度上昇率が小さい方が好ましい。
【0058】
[電解液]
セパレータ23には、液状の電解質である電解液が含浸されている。この電解液は、溶媒と、この溶媒に溶解された電解質塩とを含んでいる。
【0059】
溶媒としては、炭酸エチレンあるいは炭酸プロピレンなどの環状の炭酸エステルを用いることができ、炭酸エチレンおよび炭酸プロピレンのうちの一方、特に両方を混合して用いることが好ましい。サイクル特性を向上させることができるからである。
【0060】
溶媒としては、また、これらの環状の炭酸エステルに加えて、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチルあるいは炭酸メチルプロピルなどの鎖状の炭酸エステルを混合して用いることが好ましい。高いイオン伝導性を得ることができるからである。
【0061】
溶媒としては、さらにまた、2,4−ジフルオロアニソールあるいは炭酸ビニレンを含むこと好ましい。2,4−ジフルオロアニソールは放電容量を向上させることができ、また、炭酸ビニレンはサイクル特性を向上させることができるからである。よって、これらを混合して用いれば、放電容量およびサイクル特性を向上させることができるので好ましい。
【0062】
これらの他にも、溶媒としては、炭酸ブチレン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、N,N−ジメチルフォルムアミド、N−メチルピロリジノン、N−メチルオキサゾリジノン、N,N−ジメチルイミダゾリジノン、ニトロメタン、ニトロエタン、スルホラン、ジメチルスルフォキシドあるいはリン酸トリメチルなどが挙げられる。
【0063】
なお、これらの非水溶媒の少なくとも一部の水素をフッ素で置換した化合物は、組み合わせる電極の種類によっては、電極反応の可逆性を向上させることができる場合があるので、好ましい場合もある。
【0064】
電解質塩としては、例えばリチウム塩が挙げられ、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。リチウム塩としては、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiClO4、LiB(C654、LiCH3SO3、LiCF3SO3、LiN(SO2CF32、LiC(SO2CF33、LiAlCl4、LiSiF6、LiCl、ジフルオロ[オキソラト−O,O']ホウ酸リチウム、リチウムビスオキサレートボレート、あるいはLiBrなどが挙げられる。中でも、LiPF6は高いイオン伝導性を得ることができると共に、サイクル特性を向上させることができるので好ましい。
【0065】
[電池の製造方法]
次に、この発明の第1の実施の形態による非水電解質二次電池の製造方法の一例について説明する。まず、例えば、正極活物質と、導電剤と、結着剤とを混合して正極合剤を調製し、この正極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させてペースト状の正極合剤スラリーを作製する。次に、この正極合剤スラリーを正極集電体21Aに塗布し溶剤を乾燥させ、ロールプレス機などにより圧縮成型することにより正極活物質層21Bを形成し、正極21を形成する。
【0066】
また、例えば、負極活物質と、結着剤とを混合して負極合剤を調製し、この負極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させてペースト状の負極合剤スラリーを作製する。次に、この負極合剤スラリーを負極集電体22Aに塗布し溶剤を乾燥させ、ロールプレス機などにより圧縮成型することにより負極活物質層22Bを形成し、負極22を作製する。
【0067】
次に、正極集電体21Aに正極リード25を溶接などにより取り付けると共に、負極集電体22Aに負極リード26を溶接などにより取り付ける。次に、正極21と負極22とをセパレータ23を介して巻回する。次に、正極リード25の先端部を安全弁機構15に溶接すると共に、負極リード26の先端部を電池缶11に溶接して、巻回した正極21および負極22を一対の絶縁板12、13で挟み電池缶11の内部に収納する。次に、正極21および負極22を電池缶11の内部に収納したのち、電解液を電池缶11の内部に注入し、セパレータ23に含浸させる。次に、電池缶11の開口端部に電池蓋14、安全弁機構15および熱感抵抗素子16を封口ガスケット17を介してかしめることにより固定する。これにより、図1に示した二次電池が得られる。
【0068】
この第1の実施の形態による二次電池では、完全充電状態における開回路電圧が、例えば4.2V以上4.6V以下、好ましくは4.25V以上4.5V以下の範囲内である。4.25V以上にすると正極活物質の利用率を増加することができ、より多くのエネルギーを取り出すことが可能となり、4.5V以下にするとセパレータ23の酸化や電解液の化学変化などを抑えることができるからである。
【0069】
この第1の実施の形態による二次電池では、充電を行うと、正極活物質層21Bからリチウムイオンが放出され、電解液を介して、負極活物質層22Bに含まれるリチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料に吸蔵される。次に、放電を行うと、負極活物質層22B中のリチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料に吸蔵されたリチウムイオンが放出され、電解液を介して正極活物質層21Bに吸蔵される。
【0070】
第1の実施の形態によるセパレータでは、電池の充放電に伴って電極が膨張した場合でも、高い耐圧性を備えているためセパレータの細孔を潰すことなく高いイオン透過性を維持することができる。これに対して、従来の単層のポリオレフィンセパレータでは、電極の膨張に伴って細孔が潰れ、電池特性が低下する。
【0071】
加えて、第1の実施形態では、巻回電極体20の最外周がセパレータ23となっており、かつセパレータ23の第2層23Bが配置されていることから、負極22の外周端部と電池缶11との間に無機粒子が介在する。そのため、巻回電極体20と電池缶11との間での短絡を良好に回避し、高い安全性を実現することが可能である。
【0072】
また、電池の充電にともなう巻回電極体20の膨張によって、巻回電極体20は電池缶11に押し付けられる。さらに、この発明の様に、正極21または負極22(第1の実施の形態では負極22)の外周端部にリード(第1の実施の形態では負極リード26)を配置している場合、リードのエッジに応力が集中し易い。そのため、セパレータ23の外周側端部が傷んでしまう可能性がある。しかし、第1の実施の形態では、この部分にセパレータ23の第2層23Bの無機粒子が対面していることにより、このようなセパレータ23の破膜リスクが低減され、この点からも安全性が向上する。
【0073】
<2.第2の実施の形態>
[電池の構成]
図4は、この発明の第2の実施の形態による非水電解質二次電池の一構成例を示す分解斜視図である。この二次電池は、正極リード31および負極リード32が取り付けられた巻回電極体30をフィルム状の外装部材40の内部に収容したものであり、小型化、軽量化および薄型化が可能となっている。
【0074】
正極リード31および負極リード32は、それぞれ、外装部材40の内部から外部に向かい例えば同一方向に導出されている。正極リード31および負極リード32は、例えば、アルミニウム、銅、ニッケルあるいはステンレスなどの金属材料によりそれぞれ構成されており、それぞれ薄板状または網目状とされている。
【0075】
外装部材40は、例えば、ナイロンフィルム、アルミニウム箔およびポリエチレンフィルムをこの順に貼り合わせた矩形状のアルミラミネートフィルムにより構成されている。外装部材40は、例えば、ポリエチレンフィルム側と巻回電極体30とが対向するように配設されており、各外縁部が融着あるいは接着剤により互いに密着されている。外装部材40と正極リード31および負極リード32との間には、外気の侵入を防止するための密着フィルム41が挿入されている。密着フィルム41は、正極リード31および負極リード32に対して密着性を有する材料、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリエチレンまたは変性ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂により構成されている。
【0076】
なお、外装部材40は、上述したアルミラミネートフィルムに代えて、他の構造を有するラミネートフィルム、ポリプロピレンなどの高分子フィルムまたは金属フィルムにより構成するようにしてもよい。
【0077】
図5は、図4に示した巻回電極体30のVI−VI線に沿った断面図である。巻回電極体30は、正極33と負極34とをセパレータ35および電解質層36を介して積層し、巻回したものであり、最外周部は保護テープ37により保護されている。
【0078】
正極33は、正極集電体33Aの片面あるいは両面に正極活物質層33Bが設けられた構造を有している。負極34は、負極集電体34Aの片面あるいは両面に負極活物質層34Bが設けられた構造を有しており、負極活物質層34Bと正極活物質層33Bとが対向するように配置されている。正極集電体33A、正極活物質層33B、負極集電体34A、負極活物質層34Bおよびセパレータ35の構成は、それぞれ第1の実施の形態における正極集電体21A、正極活物質層21B、負極集電体22A、負極活物質層22Bおよびセパレータ23と同様である。
【0079】
電解質層36は、電解液と、この電解液を保持する保持体となる高分子化合物とを含み、いわゆるゲル状となっている。ゲル状の電解質層36は高いイオン伝導率を得ることができると共に、電池の漏液を防止することができるので好ましい。電解液(すなわち溶媒および電解質塩など)の構成は、第1の実施の形態に係る二次電池と同様である。高分子化合物としては、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、ポリスチレンまたはポリカーボネートが挙げられる。特に電気化学的な安定性の点からはポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレンあるいはポリエチレンオキサイドが好ましい。
【0080】
[電池の製造方法]
次に、この発明の第2の実施の形態による非水電解質二次電池の製造方法の一例について説明する。
【0081】
まず、正極33および負極34のそれぞれに、溶媒と、電解質塩と、高分子化合物と、混合溶剤とを含む前駆溶液を塗布し、混合溶剤を揮発させて電解質層36を形成する。そののち、正極集電体33Aの端部に正極リード31を溶接により取り付けると共に、負極集電体34Aの端部に負極リード32を溶接により取り付ける。次に、電解質層36が形成された正極33と負極34とをセパレータ35を介して積層し積層体としたのち、この積層体をその長手方向に巻回して、最外周部に保護テープ37を接着して巻回電極体30を形成する。最後に、例えば、外装部材40の間に巻回電極体30を挟み込み、外装部材40の外縁部同士を熱融着などにより密着させて封入する。その際、正極リード31および負極リード32と外装部材40との間には密着フィルム41を挿入する。これにより、図4および図5に示した二次電池が得られる。
【0082】
また、この二次電池は、次のようにして作製してもよい。まず、上述のようにして正極33および負極34を作製し、正極33および負極34に正極リード31および負極リード32を取り付ける。次に、正極33と負極34とをセパレータ35を介して積層して巻回し、最外周部に保護テープ37を接着して、巻回電極体30の前駆体である巻回体を形成する。次に、この巻回体を外装部材40に挟み、一辺を除く外周縁部を熱融着して袋状とし、外装部材40の内部に収納する。次に、溶媒と、電解質塩と、高分子化合物の原料であるモノマーと、重合開始剤と、必要に応じて重合禁止剤などの他の材料とを含む電解質用組成物を用意し、外装部材40の内部に注入する。
【0083】
電解質用組成物を注入したのち、外装部材40の開口部を真空雰囲気下で熱融着して密封する。次に、熱を加えてモノマーを重合させて高分子化合物とすることによりゲル状の電解質層36を形成する。以上により、図4に示した二次電池が得られる。
【0084】
この第2の実施の形態による非水電解質二次電池の作用および効果は、第1の実施の形態による非水電解質二次電池と同様である。
【実施例】
【0085】
以下、この発明を具体的な実験結果に基づいてさらに詳細に説明する。なお、本発明は以下の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0086】
[実施例1]
実施例1では、基材である第1層の表面に第2層を設けたセパレータにおいて、第1層の表面の細孔の平均細孔径と、第2層に混合する無機粒子の平均粒径D20とをそれぞれ変化させて作製したセパレータを用いて電池を作製し、セパレータと電池特性を評価した。
【0087】
<実施例1−1>
[セパレータの作製]
<塗料の調製>
まず、平均分子量が約100万のポリフッ化ビニリデン(PVdF)樹脂を、2wt%になるようにN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に溶解させた。次に、得られたPVdF/NMP溶液中に、無機粒子として平均粒径D20が0.21μm、平均粒径D90が3.18μmのアルミナ粒子を体積比でPVdF:アルミナ粒子=5:95(体積分率95.0vol%)となるよう投入し、均一なスラリーとなるまで攪拌した後、メッシュパスを行い塗料とした。なお、体積分率は、無機粒子の体積比および樹脂の体積比を用いて、以下の式から求めた。
体積分率[vol%]=((無機粒子の体積比)/(無機粒子の体積比+樹脂の体積比))×100
【0088】
<塗布工程>
次に、厚さ16μmで、表面に露出する複数の細孔の平均細孔径が0.05μmであるポリエチレン微多孔性膜(第1層)の両面に、上述の塗料を卓上コーターにて塗布した。このとき、塗料が面積密度0.60mg/cm2で塗布されるように調整した。次に、水浴にて相分離させた後、乾燥させることにより、第1層であるポリエチレン微多孔性膜の両面にアルミナ粒子を含む第2層を形成し、セパレータを得た。
【0089】
<実施例1−2>
塗料の作製時に、アルミナ粒子の混合量を90.0vol%となるようにした以外は実施例1−1と同様にしてセパレータを作製した。
【0090】
<実施例1−3>
塗料の作製時に、アルミナ粒子の混合量を82.0vol%となるようにした以外は実施例1−1と同様にしてセパレータを作製した。
【0091】
<実施例1−4>
塗料の作製時に、アルミナ粒子の混合量を69.0vol%となるようにした以外は実施例1−1と同様にしてセパレータを作製した。
【0092】
<実施例1−5>
塗料の作製時に、アルミナ粒子の混合量を60.0vol%となるようにした以外は実施例1−1と同様にしてセパレータを作製した。
【0093】
<実施例1−6>
塗料の作製時に混合する無機粒子として、平均粒径D20が0.80μm、平均粒径D90が2.00μmのシリカ粒子を用いた以外は実施例1−1と同様にしてセパレータを作製した。
【0094】
<実施例1−7>
表面に露出する複数の細孔の平均細孔径が0.10μmのポリエチレン微多孔性膜を第1層として用い、塗料の作製時に混合する無機粒子として、平均粒径D20が2.10μm、平均粒径D90が5.00μmのシリカ粒子を用い、シリカ粒子の混合量を90.0vol%となるようにした以外は実施例1−1と同様にしてセパレータを作製した。
【0095】
<実施例1−8>
表面に露出する複数の細孔の平均細孔径が0.50μmのポリエチレン微多孔性膜を第1層として用い、塗料の作製時に混合する無機粒子として、平均粒径D20が2.10μm、平均粒径D90が5.00μmのシリカ粒子を用い、シリカ粒子の混合量を90.0vol%となるようにした以外は実施例1−1と同様にしてセパレータを作製した。
【0096】
<実施例1−9>
表面に露出する複数の細孔の平均細孔径が1.50μmのポリエチレン微多孔性膜を第1層として用い、塗料の作製時に混合する無機粒子として、平均粒径D20が2.10μm、平均粒径D90が5.00μmのシリカ粒子を用い、シリカ粒子の混合量を90.0vol%となるようにした以外は実施例1−1と同様にしてセパレータを作製した。
【0097】
<実施例1−10>
表面に露出する複数の細孔の平均細孔径が2.00μmのポリエチレン微多孔性膜を第1層として用い、塗料の作製時に混合する無機粒子として、平均粒径D20が2.10μm、平均粒径D90が5.00μmのシリカ粒子を用い、シリカ粒子の混合量を90.0vol%となるようにした以外は実施例1−1と同様にしてセパレータを作製した。
【0098】
<比較例1−1>
表面に露出する複数の細孔の平均細孔径が0.21μmのポリエチレン微多孔性膜を第1層として用いた以外は実施例1−1と同様にしてセパレータを作製した。
【0099】
<比較例1−2>
表面に露出する複数の細孔の平均細孔径が0.21μmのポリエチレン微多孔性膜を第1層として用い、塗料の作製時に、アルミナ粒子の混合量を90.0vol%となるようにした以外は実施例1−1と同様にしてセパレータを作製した。
【0100】
<比較例1−3>
表面に露出する複数の細孔の平均細孔径が0.21μmのポリエチレン微多孔性膜を第1層として用い、塗料の作製時に、アルミナ粒子の混合量を82.0vol%となるようにした以外は実施例1−1と同様にしてセパレータを作製した。
【0101】
<比較例1−4>
表面に露出する複数の細孔の平均細孔径が0.21μmのポリエチレン微多孔性膜を第1層として用い、塗料の作製時に、アルミナ粒子の混合量を69.0vol%となるようにした以外は実施例1−1と同様にしてセパレータを作製した。
【0102】
<比較例1−5>
表面に露出する複数の細孔の平均細孔径が0.21μmのポリエチレン微多孔性膜を第1層として用い、塗料の作製時に、アルミナ粒子の混合量を60.0vol%となるようにした以外は実施例1−1と同様にしてセパレータを作製した。
【0103】
<比較例1−6>
表面に露出する複数の細孔の平均細孔径が2.20μmのポリエチレン微多孔性膜を第1層として用い、塗料の作製時に、平均粒径D20が2.10μm、平均粒径D90が5.00μmのシリカ粒子を混合量が90.0vol%となるように混合した以外は実施例1−1と同様にしてセパレータを作製した。
【0104】
<比較例1−7>
第2層を設けない以外は実施例1−1と同様にしてセパレータを作製した。
【0105】
[評価]
(a)セパレータの透気度差
第2層形成前の第1層の透気度を測定した。続いて、第2層形成後のセパレータの透気度を、第1層と同様にして測定した。第1層の透気度と、第2層の透気度の差を、下記の式から算出した。
透気度差[sec/100ml]=第1層の透気度−第2層の透気度
なお、透気度の測定は、ガーレー式デンソメーター(東洋精機社製)を用いて測定した。
【0106】
(b)セパレータの透気度上昇率
第2層形成後のセパレータを60℃の環境下に載置し、第2層形成後のセパレータに対して50kgf/cm2の圧力を2分間かけた時点での透気度(第2層の圧力負荷後の透気度)を測定した。そして、上記条件下での圧力負荷後の透気度上昇率を、下記の式から算出した。
透気度上昇率[%]=(第2層の圧力負荷後の透気度−第2層の透気度)/第2層の透気度
【0107】
なお、透気度上昇率の測定試験では、50kgf/cm2の荷重がかかった時点での目詰まりの度合いを測ることができる。一定圧力下での透気度上昇率が高い程、その圧力がかかった場合の細孔の潰れが大きいと判断できる。
【0108】
(c)容量維持率
上述のセパレータを用いて円筒型電池を作製し、100サイクル目での容量維持率を測定した。各実施例および比較例の円筒型電池を25℃の恒温槽中に載置し、0.2Cで定電流充電を行い、電池電圧が4.2Vとなった時点で定電圧充電に切り替えた。その後、0.2Cの放電電流で電池電圧が3.0Vとなるまで定電流放電を行い、放電容量(初回容量)を測定した。
【0109】
上述の充放電条件にて100サイクルの充放電を繰り返し、100サイクル目の放電容量を測定した。100サイクル目での容量維持率を、以下の式から算出した。
容量維持率[%]=(100サイクル目の放電容量/初回容量)×100
【0110】
なお、円筒型電池は以下のようにして作製した。
【0111】
<円筒型電池の作製>
[正極の作製]
正極活物質としてコバルト酸リチウム(LiCoO2)92重量%と、導電剤として黒鉛粉末5重量%と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)3重量%とを均一に混合し、これをN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に分散させてスラリー状の正極合剤を調製した。この正極合剤を正極集電体となるアルミニウム箔の両面に均一に塗布し、100℃で24時間減圧乾燥することにより正極活物質層を形成した。続いて、これをロールプレス機で加圧成形することにより正極シートとした。
【0112】
[負極の作製]
人造黒鉛91重量%と、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)9重量%とを均一に混合し、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)に分散させてスラリー状の負極合剤を調製した。次に、この負極合剤を負極集電体となる銅箔の両面に均一に塗布し、120℃で24時間減圧乾燥することにより負極活物質層を形成した。続いて、これをロールプレス機で加圧成形することにより負極シートとした。
【0113】
[電解液の作製]
電解液として、炭酸エチレン(EC)と炭酸エチルメチル(EMC)と炭酸ジメチル(DMC)とを2:2:6の体積比で混合した混合溶媒と、電解質塩としての六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)とを含むものを用いた。電解液中における六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)の濃度は1mol/dm3とした。
【0114】
[電池の組み立て]
上述の方法で作製した正極集電体に正極リードを溶接などにより取り付けるとともに、負極集電体に負極リードを溶接により取り付けた。次に、正極と負極とをセパレータを介して巻回し、正極リードの先端部を安全弁機構に溶接するとともに、負極リードの先端部を電池缶に溶接して、巻回した正極および負極を一対の絶縁板で挟み電池缶の内部に収納した。正極および負極を電池缶の内部に収納した後、電解液を電池缶の内部に注入し、セパレータに含浸させた。その後、ガスケットを介して電池蓋を電池缶にかしめることにより、18650サイズの円筒型電池が得られた。
【0115】
以下の表1に、評価結果を示す。
【0116】
【表1】

なお、表1では、容量維持率が80%以上となった場合には「○」、80%未満となった場合には「×」で示す。
【0117】
表1から分かるように、第1層の表面の細孔の平均細孔径よりも大きい平均粒径D20の無機粒子を含む第2層を形成したセパレータを用いた実施例1−1ないし1−10では、容量維持率が80%以上となった。
【0118】
これに対して、第1層の表面の細孔の平均細孔径と同等の無機粒子を含む第2層を形成したセパレータを用いた比較例1−1ないし1−6では、容量維持率が80%未満となった。
【0119】
また、第2層を設けない比較例1−7でも容量維持率が低下してしまった。これは、電極の膨張により第1層、すなわちセパレータであるポリエチレン微多孔性膜の空孔が潰れてしまい、イオン透過性が低下したためであると考えられる。
【0120】
各比較例では、第2層に含まれる無機粒子の粒径が全体的に小さいことから、塗料の塗布工程において第1層の表面に開口する細孔内に入り込む無機粒子の量が多くなった。このため、第1層の開口径が小さくなる、または表面に開口する細孔が詰まり、イオン透過性が低下した。
【0121】
この発明のセパレータは、第1層表面に無機粒子を含む第2層を形成するため、第1層よりも第2層形成後の方が透気度が高くなる。第1層表面の細孔に入り込む無機粒子が多くなるにつれて、第1層のみと第2層形成後との透気度差が大きくなる。すなわち、高いイオン透過性を維持するためには、第1層のみと第2層形成後との透気度差が小さくなる方が良いことが分かった。
【0122】
表1から分かるように、透気度の差が70sec/100mlであるセパレータを用いた各比較例では、容量維持率が低下した。このため、透気度の差は60sec/100ml以下となることが好ましいことが分かった。同様に、透気度上昇率の観点からは、透気度上昇率が35%以下となることが好ましいことが分かった。
【0123】
[実施例2]
実施例2では、第1層の表面の細孔の平均細孔径を変化させて作製したセパレータを用いて電池を作製し、セパレータと電池特性を評価した。
【0124】
<実施例2−1>
[セパレータの作製]
<塗料の調製>
まず、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)樹脂に分散する無機粒子として平均粒径D20が0.21μm、平均粒径D90が3.18μmのアルミナ粒子を用い、アルミナ粒子の混合量が90.0vol%となるようにして塗料とした。
【0125】
<塗布工程>
次に、厚さ16μmで、表面に露出する複数の細孔の平均細孔径が0.05μmであるポリエチレン微多孔性膜(第1層)の両面に、上述の塗料を卓上コーターにて塗布した。このとき、塗料が面積密度0.60mg/cm2で塗布されるように調整した。次に、水浴にて相分離させた後、乾燥させることにより、第1層であるポリエチレン微多孔性膜の両面にアルミナ粒子を含む第2層を形成し、セパレータを得た。
【0126】
<実施例2−2>
厚さ9.0μm、表面に露出する複数の細孔の平均細孔径が0.04μmのポリエチレン微多孔性膜を第1層として用い、塗料の作製時に混合する無機粒子として、平均粒径D20が0.13μm、平均粒径D90が2.48μmのシリカ粒子を用いた以外は実施例2−1と同様にしてセパレータを作製した。
【0127】
<実施例2−3>
厚さ12.0μm、表面に露出する複数の細孔の平均細孔径が0.03μmのポリエチレン微多孔性膜を第1層として用い、塗料の作製時に混合する無機粒子として、平均粒径D20が0.13μm、平均粒径D90が2.48μmのシリカ粒子を用いた以外は実施例2−1と同様にしてセパレータを作製した。
【0128】
<実施例2−4>
表面に露出する複数の細孔の平均細孔径が0.10μmのポリエチレン微多孔性膜を第1層として用い、塗料の作製時に混合する無機粒子として、平均粒径D20が2.10μm、平均粒径D90が5.00μmのシリカ粒子を用いた以外は実施例2−1と同様にしてセパレータを作製した。
【0129】
<実施例2−5>
表面に露出する複数の細孔の平均細孔径が0.50μmのポリエチレン微多孔性膜を第1層として用い、塗料の作製時に混合する無機粒子として、平均粒径D20が2.10μm、平均粒径D90が5.00μmのシリカ粒子を用いた以外は実施例2−1と同様にしてセパレータを作製した。
【0130】
<実施例2−6>
表面に露出する複数の細孔の平均細孔径が1.50μmのポリエチレン微多孔性膜を第1層として用い、塗料の作製時に混合する無機粒子として、平均粒径D20が2.10μm、平均粒径D90が5.00μmのシリカ粒子を用いた以外は実施例2−1と同様にしてセパレータを作製した。
【0131】
<実施例2−7>
表面に露出する複数の細孔の平均細孔径が2.00μmのポリエチレン微多孔性膜を第1層として用い、塗料の作製時に混合する無機粒子として、平均粒径D20が2.10μm、平均粒径D90が5.00μmのシリカ粒子を用いた以外は実施例2−1と同様にしてセパレータを作製した。
【0132】
<比較例2−1>
表面に露出する複数の細孔の平均細孔径が0.01μmのポリエチレン微多孔性膜を第1層として用い、塗料の作製時に混合する無機粒子として、平均粒径D20が2.10μm、平均粒径D90が5.00μmのシリカ粒子を用いた以外は実施例2−1と同様にしてセパレータを作製した。
【0133】
<比較例2−2>
表面に露出する複数の細孔の平均細孔径が2.20μmのポリエチレン微多孔性膜を第1層として用い、塗料の作製時に混合する無機粒子として、平均粒径D20が3.00μm、平均粒径D90が5.00μmのシリカ粒子を用いた以外は実施例2−1と同様にしてセパレータを作製した。
【0134】
[評価]
実施例1と同様にして、
(a)セパレータの透気度差
透気度差[sec/100ml]=第1層の透気度−第2層の透気度
(b)セパレータの透気度上昇率
透気度上昇率[%]=(第2層の透気度−第1層の透気度)/第1層の透気度
(c)容量維持率
容量維持率[%]=(100サイクル目の放電容量/初回容量)×100
を求めた。
【0135】
以下の表2に、評価結果を示す。
【0136】
【表2】

なお、表2では、容量維持率が80%以上となった場合には「○」、80%未満となった場合には「×」で示す。
【0137】
実施例2では、第1層の表面の細孔の平均細孔径よりも大きい平均粒径D20の無機粒子を含む第2層を形成したセパレータを用いた。表2から分かるように、実施例2−1ないし2−7のように第1層の平均細孔径が0.03μm以上2.00μm以下の場合、容量維持率が80%以上となった。
【0138】
これに対して、比較例2−1のように第1層の表面の細孔の平均細孔径が0.01μmと小さすぎる場合、第2層に含まれる無機粒子の平均粒径D20に関係なく、容量維持率が低下することが分かった。この場合、細孔への無機粒子の詰まりに関係なくイオン透過性が低下してしまうため、電池性能が低下した。また、比較例2−2のように第1層の表面の細孔の平均細孔径が2.20μmと大きすぎる場合、基材である第1層の強度が著しく低下し、巻回電極体作製時にセパレータの切れが生じた。また、充電時にリチウムデンドライトの析出が生じるため、円筒型電池の作製ができた場合でも、リチウムデンドライトにより短絡が生じた。
【0139】
実施例2より、第1層の表面の細孔の平均細孔径が0.03μm以上2.0μm以下が好ましいことが分かった。
【0140】
[実施例3]
実施例3では、第2層に含まれる無機粒子の混合量を変化させて作製したセパレータを用いて電池を作製し、セパレータと電池特性を評価した。
【0141】
<実施例3−1>
[セパレータの作製]
<塗料の調製>
まず、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)樹脂に分散する無機粒子として平均粒径D20が0.21μm、平均粒径D90が3.18μmのアルミナ粒子を用い、アルミナ粒子の混合量が95.0vol%となるようにして塗料とした。
【0142】
<塗布工程>
次に、厚さ16μmで、表面に露出する複数の細孔の平均細孔径が0.05μmであるポリエチレン微多孔性膜(第1層)の両面に、上述の塗料を卓上コーターにて塗布した。このとき、塗料が面積密度0.60mg/cm2で塗布されるように調整した。次に、水浴にて相分離させた後、乾燥させることにより、第1層であるポリエチレン微多孔性膜の両面にアルミナ粒子を含む第2層を形成し、セパレータを得た。
【0143】
<実施例3−2>
アルミナ粒子の混合量を90.0vol%とした以外は実施例3−1と同様にしてセパレータを作製した。
【0144】
<実施例3−3>
アルミナ粒子の混合量を82.0vol%とした以外は実施例3−1と同様にしてセパレータを作製した。
【0145】
<実施例3−4>
アルミナ粒子の混合量を69.0vol%とした以外は実施例3−1と同様にしてセパレータを作製した。
【0146】
<実施例3−5>
アルミナ粒子の混合量を60.0vol%とした以外は実施例3−1と同様にしてセパレータを作製した。
【0147】
<実施例3−6>
塗料の作製時に混合する無機粒子として、平均粒径D20が0.80μm、平均粒径D90が2.00μmのシリカ粒子を用いた以外は実施例3−1と同様にしてセパレータを作製した。
【0148】
<実施例3−7>
塗料の作製時に混合する無機粒子として、平均粒径D20が2.10μm、平均粒径D90が5.00μmのシリカ粒子を用い、シリカ粒子の混合量を90.0vol%とした以外は実施例3−1と同様にしてセパレータを作製した。
【0149】
<比較例3−1>
アルミナ粒子の混合量を98.0vol%とした以外は実施例3−1と同様にしてセパレータを作製した。
【0150】
<比較例3−2>
アルミナ粒子の混合量を50.0vol%とした以外は実施例3−1と同様にしてセパレータを作製した。
【0151】
[評価]
実施例1と同様にして、
(a)セパレータの透気度差
透気度差[sec/100ml]=第1層の透気度−第2層の透気度
(b)セパレータの透気度上昇率
透気度上昇率[%]=(第2層の透気度−第1層の透気度)/第1層の透気度
(c)容量維持率
容量維持率[%]=(100サイクル目の放電容量/初回容量)×100
を求めた。
【0152】
以下の表3に、評価結果を示す。
【0153】
【表3】

なお、表3では、容量維持率が80%以上となった場合には「○」、80%未満となった場合には「×」で示す。
【0154】
表3から分かるように、実施例3−1ないし3−7のように無機粒子(アルミナ)の混合量が60.0vol%以上95.0vol%以下の場合、容量維持率が80%以上となった。
【0155】
これに対して、比較例3−1のように無機粒子の混合量が多すぎる場合、無機粒子の剥落等が生じた。また、比較例3−2のように無機粒子の混合量が少なすぎる場合、混合する樹脂(PVdF)の量が多くなるため、樹脂が第1層の表面から細孔に入り込み、細孔を潰してしまう。このため、セパレータの透気度上昇率が著しく大きくなり、イオン透過性が低下して容量維持率が低下した。
【0156】
実施例3より、第2層における無機粒子の混合量は、60.0vol%以上95.0vol%以下が好ましいことが分かった。
【0157】
[実施例4]
実施例4では、第1層の厚みを変えて作製したセパレータを用いて電池を作製し、セパレータと電池特性を評価した。
【0158】
<実施例4−1>
[セパレータの作製]
<塗料の調製>
まず、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)樹脂に分散する無機粒子として平均粒径D20が0.21μm、平均粒径D90が3.18μmのアルミナ粒子を用い、アルミナ粒子の混合量が90.0vol%となるようにして塗料とした。
【0159】
<塗布工程>
次に、厚さ10μmで、表面に露出する複数の細孔の平均細孔径が0.05μmであるポリエチレン微多孔性膜(第1層)の両面に、上述の塗料を卓上コーターにて塗布した。このとき、塗料が面積密度0.60mg/cm2で塗布されるように調整した。次に、水浴にて相分離させた後、乾燥させることにより、第1層であるポリエチレン微多孔性膜の両面にアルミナ粒子を含む第2層を形成し、セパレータを得た。
【0160】
<実施例4−2>
第1層の厚みを12.0μmとした以外は実施例4−1と同様にしてセパレータを作製した。
【0161】
<実施例4−3>
第1層の厚みを14.0μmとした以外は実施例4−1と同様にしてセパレータを作製した。
【0162】
<実施例4−4>
第1層の厚みを16.0μmとした以外は実施例4−1と同様にしてセパレータを作製した。
【0163】
<実施例4−5>
第1層の厚みを18.0μmとした以外は実施例4−1と同様にしてセパレータを作製した。
【0164】
<実施例4−6>
第1層の厚みを20.0μmとした以外は実施例4−1と同様にしてセパレータを作製した。
【0165】
<実施例4−7>
第1層の厚みを24.0μmとした以外は実施例4−1と同様にしてセパレータを作製した。
【0166】
<実施例4−8>
第1層の厚みを28.0μmとした以外は実施例4−1と同様にしてセパレータを作製した。
【0167】
<比較例4−1>
第1層の厚みを9.0μmとした以外は実施例4−1と同様にしてセパレータを作製した。
【0168】
<比較例4−2>
第1層の厚みを30.0μmとした以外は実施例4−1と同様にしてセパレータを作製した。
【0169】
<比較例4−3>
第1層の厚みを40.0μmとした以外は実施例4−1と同様にしてセパレータを作製した。
【0170】
[評価]
実施例1と同様にして、
(a)セパレータの透気度差
透気度差[sec/100ml]=第1層の透気度−第2層の透気度
(b)セパレータの透気度上昇率
透気度上昇率[%]=(第2層の透気度−第1層の透気度)/第1層の透気度
(c)容量維持率
容量維持率[%]=(100サイクル目の放電容量/初回容量)×100
を求めた。
【0171】
以下の表4に、評価結果を示す。
【0172】
【表4】

なお、表4では、容量維持率が80%以上となった場合には「○」、80%未満となった場合には「×」で示す。
【0173】
表4から分かるように、実施例4−1ないし4−8のように第1層の厚みが10.0μm以上30.0μm未満のセパレータを用いた場合、容量維持率が80%以上となった。
【0174】
これに対して、比較例4−1のように第1層の厚みが9.0μmと薄い場合、セパレータの強度が低下し、セパレータに切れが生じた。また、比較例4−2、比較例4−3のように第1層の厚みが30.0μm以上となった場合、巻回して作製した巻回電極体の素子径が増大し、電池缶への挿入ができなかった。
【0175】
実施例4より、第1層の厚みは10.0μm以上30.0μm未満が好ましいことが分かった。
【0176】
[実施例5]
実施例5では、第2層形成時に塗料の塗布面積密度を変えて作製したセパレータを用いて電池を作製し、セパレータと電池特性を評価した。
【0177】
<実施例5−1>
[セパレータの作製]
<塗料の調製>
まず、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)樹脂に分散する無機粒子として平均粒径D20が0.21μm、平均粒径D90が3.18μmのアルミナ粒子を用い、アルミナ粒子の混合量が90.0vol%となるようにして塗料とした。
【0178】
<塗布工程>
次に、厚さ16μmで、表面に露出する複数の細孔の平均細孔径が0.05μmであるポリエチレン微多孔性膜(第1層)の両面に、上述の塗料を卓上コーターにて塗布した。このとき、塗料が面積密度0.20mg/cm2で塗布されるように調整した。次に、水浴にて相分離させた後、乾燥させることにより、第1層であるポリエチレン微多孔性膜の両面にアルミナ粒子を含む第2層を形成し、セパレータを得た。
【0179】
<実施例5−2>
塗料の塗布面積密度が0.40mg/cm2となるように調整した以外は実施例5−1と同様にしてセパレータを作製した。
【0180】
<実施例5−3>
塗料の塗布面積密度が0.60mg/cm2となるように調整した以外は実施例5−1と同様にしてセパレータを作製した。
【0181】
<実施例5−4>
塗料の塗布面積密度が0.80mg/cm2となるように調整した以外は実施例5−1と同様にしてセパレータを作製した。
【0182】
<実施例5−5>
塗料の塗布面積密度が1.80mg/cm2となるように調整した以外は実施例5−1と同様にしてセパレータを作製した。
【0183】
<実施例5−6>
塗料の作製時に混合する無機粒子として、平均粒径D20が0.80μm、平均粒径D90が2.00μmのシリカ粒子を用い、シリカ粒子の混合量が95.0vol%、塗料の塗布面積密度が0.60mg/cm2となるように調整した以外は実施例5−1と同様にしてセパレータを作製した。
【0184】
<比較例5−1>
塗料の塗布面積密度が0.10mg/cm2となるように調整した以外は実施例5−1と同様にしてセパレータを作製した。
【0185】
<比較例5−2>
塗料の塗布面積密度が2.00mg/cm2となるように調整した以外は実施例5−1と同様にしてセパレータを作製した。
【0186】
<比較例5−3>
第2層を設けない以外は実施例5−1と同様にしてセパレータを作製した。
【0187】
[評価]
実施例1と同様にして、
(a)セパレータの透気度差
透気度差[sec/100ml]=第1層の透気度−第2層の透気度
(b)セパレータの透気度上昇率
透気度上昇率[%]=(第2層の透気度−第1層の透気度)/第1層の透気度
(c)容量維持率
容量維持率[%]=(100サイクル目の放電容量/初回容量)×100
を求めた。
【0188】
以下の表5に、評価結果を示す。
【0189】
【表5】

なお、表5では、容量維持率が80%以上となった場合には「○」、80%未満となった場合には「×」で示す。
【0190】
表5から分かるように、実施例5−1ないし5−6のように第2層の塗布面積密度を0.20mg/cm2以上1.80mg/cm2以下とすることにより、第1層の平均細孔径が0.03μm以上2.00μm以下の場合、容量維持率が80%以上となった。
【0191】
これに対して、比較例5−1のように第2層の塗布面積密度が0.10mg/cm2と小さい場合、第2層の塗布むらや、塗布切れが生じ、この発明のセパレータを形成することができなかった。また、比較例5−2のように第2層の塗布面積密度が2.00mg/cm2と大きい場合、巻回して作製した巻回電極体の素子径が増大し、電池缶への挿入ができなかった。第2層を設けない比較例5−3でも容量維持率が低下してしまった。これは、電極の膨張により第1層、すなわちセパレータであるポリエチレン微多孔性膜の空孔が潰れてしまい、イオン透過性が低下したためであると考えられる。
【0192】
実施例5より、第1層表面に対する第2層の塗布面積密度は、0.20mg/cm2以上1.8010mg/cm2以下が好ましいことが分かった。
【0193】
[実施例6]
実施例6では、第1層の厚みと第2層に混合する無機粒子の平均粒径D90とをそれぞれ変化させて作製したセパレータを用いて電池を作製し、セパレータと電池特性を評価した。
【0194】
<実施例6−1>
<塗料の調製>
まず、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)樹脂に分散する無機粒子として平均粒径D20が0.21μm、平均粒径D90が3.18μmのアルミナ粒子を用い、アルミナ粒子の混合量が90.0vol%となるようにして塗料とした。
【0195】
<塗布工程>
次に、厚さ16μmで、表面に露出する複数の細孔の平均細孔径が0.05μmであるポリエチレン微多孔性膜(第1層)の両面に、上述の塗料を卓上コーターにて塗布した。このとき、塗料が面積密度0.60mg/cm2で塗布されるように調整した。次に、水浴にて相分離させた後、乾燥させることにより、第1層であるポリエチレン微多孔性膜の両面にアルミナ粒子を含む第2層を形成し、セパレータを得た。
【0196】
<実施例6−2>
第1層を厚みを9.0μm、表面の平均細孔径を0.04μmとし、第2層に混合する無機粒子として平均粒径D20が0.13μm、平均粒径D90が2.48μmのシリカ粒子を用いた以外は実施例6−1と同様にしてセパレータを作製した。
【0197】
<実施例6−3>
第1層を厚みを12.0μm、表面の平均細孔径を0.03μmとし、第2層に混合する無機粒子として平均粒径D20が0.13μm、平均粒径D90が2.48μmのシリカ粒子を用いた以外は実施例6−1と同様にしてセパレータを作製した。
【0198】
<実施例6−4>
第1層の表面の平均細孔径1.50μmとし、第2層に混合する無機粒子として平均粒径D20が2.10μm、平均粒径D90が5.00μmのシリカ粒子を用いた以外は実施例6−1と同様にしてセパレータを作製した。
【0199】
<比較例6−1>
第1層の厚みを9.0μmとした以外は実施例6−1と同様にしてセパレータを作製した。
【0200】
<比較例6−2>
第1層の厚みを9.0μm、平均細孔径を0.04μmとし、第2層に混合する無機粒子として平均粒径D20が1.00μm、平均粒径D90が5.00μmのシリカ粒子を用いた以外は実施例6−1と同様にしてセパレータを作製した。
【0201】
<比較例6−3>
第1層の厚みを12.0μm、平均細孔径を0.03μmとし、第2層に混合する無機粒子として平均粒径D20が1.00μm、平均粒径D90が5.00μmのシリカ粒子を用いた以外は実施例6−1と同様にしてセパレータを作製した。
【0202】
[評価]
実施例1と同様にして、
(a)セパレータの透気度差
透気度差[sec/100ml]=第1層の透気度−第2層の透気度
(b)セパレータの透気度上昇率
透気度上昇率[%]=(第2層の透気度−第1層の透気度)/第1層の透気度
(c)容量維持率
容量維持率[%]=(100サイクル目の放電容量/初回容量)×100
を求めた。
【0203】
以下の表6に、評価結果を示す。
【0204】
【表6】

なお、表6では、容量維持率が80%以上となった場合には「○」、80%未満となった場合には「×」で示す。
【0205】
表6から分かるように、実施例6−1ないし6−4のように、第2層に含まれる無機粒子の平均粒径D90が第1層の厚みの1/3以下である場合には、巻回電極体の作製時に不具合が生じず、容量維持率が80%以上となった。
【0206】
これに対して、第2層に含まれる無機粒子の平均粒径D90が第1層の厚みの1/3を超える場合には、第2層の無機粒子が第1層を突き破ってセパレータの切れが生じる。また、無機粒子が大きすぎるために、第2層形成時に塗料の糸引きが生じる、すなわち塗料が塗布されない部分(無機粒子脇に塗料が行き渡らない部分)が生じてしまう。このため、この発明のセパレータを作製することができなかった。
【0207】
実施例6より、無機粒子の平均粒径D90は、第1層の厚みの1/3以下が好ましいことが分かった。
【0208】
以上、この発明の実施形態について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0209】
例えば、上述の実施形態において挙げた構成、形状、材料および数値などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、形状、材料および数値などを用いてもよい。
【0210】
また、上述の実施形態では、リチウムイオン電池に対してこの発明を適用した例を示したが、この発明は電池の種類に限定されるものではなく、セパレータを有する電池であれば適用可能である。例えば、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、リチウム−二酸化マンガン電池、リチウム−硫化鉄電池などの各種電池に対してこの発明を適用可能である.
【0211】
また、上述の実施形態では、巻回構造を有する電池に対してこの発明を適用した例について説明したが、電池の構造はこれに限定されるものではなく、正極および負極を折り畳んだ構造、または積み重ねた構造を有する電池などに対してもこの発明は適用可能である。
【0212】
また、上述の実施形態では、円筒型または扁平型を有する電池に対してこの発明を適用した例について説明したが、電池の形状はこれに限定されるものではなく、コイン型、ボタン型、または角型などの電池に対しても本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0213】
11・・・電池缶
12、13・・・絶縁板
14・・・電池蓋
15・・・安全弁機構
15A・・・ディスク板
16・・・熱感抵抗素子
17・・・ガスケット
20、30・・・巻回電極体
21、33・・・正極
21A、33A・・・正極集電体
21B、33B・・・正極活物質層
22、34・・・負極
22A、34A・・・負極集電体
22B、34B・・・負極活物質層
23、35・・・セパレータ
23A・・・第1層
23B・・・第2層
24・・・センターピン
25、31・・・正極リード
26、32・・・負極リード
36・・・電解質層
37・・・保護テープ
40・・・外装部材
41・・・密着フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の主面および第2の主面を有する第1の層と、
上記第1の主面および上記第2の主面の少なくとも一方に形成された第2の層と
を備え、
上記第1の層が、第1の高分子樹脂を含む微多孔膜であり、
上記第2の層が、電気的な絶縁性を有する無機粒子と、第2の高分子樹脂とを含み、該無機粒子の平均粒径D20が、上記第1の層の表面に開口する細孔の平均細孔径よりも大きい微多孔膜である
セパレータ。
【請求項2】
上記高分子樹脂が、網目状構造を有する
請求項1に記載のセパレータ。
【請求項3】
上記第1の層の透気度との透気度の差が、60sec/100ml以下である
請求項2に記載のセパレータ。
【請求項4】
60℃、50kgf/cm2で2分間圧力をかけた時の透気度の、圧力負荷前の透気度に対する透気度上昇率が35%以下である請求項2に記載のセパレータ。
【請求項5】
上記第1の層の表面に開口する細孔の平均細孔径が、0.03μm以上2.00μm以下である
請求項3または請求項4に記載のセパレータ。
【請求項6】
上記第1の層の平均膜厚が、10.0μm以上30.0μm未満である
請求項5に記載のセパレータ。
【請求項7】
上記無機粒子の平均粒径D90が、上記第1の層の膜厚の1/3以下である
請求項6に記載のセパレータ。
【請求項8】
上記第2の層における粒子の体積分率が、60vol%以上95vol%以下である
請求項3または請求項4に記載のセパレータ。
【請求項9】
上記第2の層の単位面積あたりの面積密度が、0.2mg/cm2以上1.8mg/cm2以下である
請求項3または請求項4に記載のセパレータ。
【請求項10】
正極と、負極と、電解質と、セパレータとを備え、
上記セパレータは、
第1の主面および第2の主面を有する第1の層と、
上記第1の主面および上記第2の主面の少なくとも一方に形成された第2の層と
を備え、
上記第1の層が、第1の高分子樹脂を含む微多孔膜であり、
上記第2の層が、電気的な絶縁性を有する無機粒子と、第2の高分子樹脂とを含み、無機粒子の平均粒径D20が第1の層の表面に開口する細孔の平均細孔径よりも大きい微多孔膜である
電池。
【請求項11】
満充電状態における開回路電圧が4.2V以上4.6V以下の範囲内である
請求項10に記載の電池。
【請求項12】
上記第1の層の透気度と、上記セパレータの透気度との差が、60sec/100ml以下である
請求項10または請求項11に記載の電池。
【請求項13】
上記セパレータに対して60℃、50kgf/cm2で2分間圧力をかけた時の透気度の、上記セパレータに対する圧力負荷前の透気度に対する透気度上昇率が35%以下である
請求項10または請求項11に記載の電池。
【請求項14】
上記正極、上記負極、および上記セパレータが、積層され巻回されて巻回電極体を構成しており、
上記巻回電極体の最外周はセパレータの外周側端部が露出して配置され、
上記セパレータは、少なくともその外周側端部に、上記第2の層を有する
請求項10に記載の電池。
【請求項15】
正極および負極のうちの少なくとも一方の外周側端部に、リードが接続されている
請求項14に記載の電池。
【請求項16】
上記正極および負極のうちの少なくとも一方の外周側端部は、内方側または外方側の少なくとも一方の主面側の集電体が露出されており、該集電体の露出した部分に上記リードが接続されている
請求項14に記載の電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−138761(P2011−138761A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270136(P2010−270136)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】