説明

セパレータのめっき処理方法

【課題】被処理材の表面に、部分的に所望の箇所にめっき被膜を効率的に形成することができるめっき処理装置を提供する。
【解決手段】燃料電池用の金属製のセパレータ10の被処理表面10aに金を電気めっきするセパレータのめっき処理方法であって、前記被処理表面10aが電極30に対向するように、セパレータ10を金のイオンを含むめっき液中に浸漬し、被処理表面10aと電極30との間にパルス波形の電流を流しながら被処理表面10aに金を粒子状に析出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用の金属製のセパレータにめっき処理を行う方法に係り、特に、貴金属を電気めっきするのに好適なセパレータのめっき処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電解質膜を用いた固体高分子型燃料電池は、低温における作動が可能であり、かつ、小型軽量化が可能であるため、自動車などの移動体への適用が検討されている。特に、固体高分子型燃料電池を搭載した燃料電池自動車はエコロジーカーとして社会的な関心が高まっている。
【0003】
このような固体高分子型燃料電池は、図5に示すように、膜電極接合体(MEA)95を主要な構成要素とし、それを燃料(水素)ガス流路および空気ガス流路を備えたセパレータ96,96で挟持して、単セルと呼ばれる1つの燃料電池90を形成している。膜電極接合体95は、イオン交換膜である電解質膜91の一方側にアノード側の電極(アノード触媒層)93aを積層し、他方側にカソード側の電極(カソード触媒層)93bを積層した構造であり、アノード触媒層93aとカソード触媒層93bには、それぞれ拡散層94a,94bが配置されている。
【0004】
ところで、燃料電池のセパレータの素材として、チタン系材料や、ステンレス鋼などが用いられている。このような素材は、表層に不働態酸化膜を有しており、この酸化膜は、一般的な環境下において耐食性を有しているので、セパレータの素材としては好適である。しかし、燃料電池のセパレータは、燃料電池の発電時に通電されるが、この酸化膜の存在により、接触抵抗値が高くなり、セパレータへの導電性が阻害されるおそれがある。
【0005】
そこで、セパレータの表面に金メッキのような導電性の貴金属めっきを施すことによって、セパレータの導電性を確保している。貴金属のめっきを行う場合には、製造コストの削減、及び環境負荷の低減の観点から、めっき膜厚を極力薄くすることが望ましい。
【0006】
このような点から、貴金属のめっき処理方法として、一定電流を流すことにより、チタン材の表面に貴金属を粒子状に析出させて、電気めっき処理を行う方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2007−146250号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、図6(a)に示すように、特許文献1に記載の方法でめっき膜90を基材80に被覆した場合には、酸化膜81が露出する露出部81aが存在する。特に、めっき処理の低コスト化を図るべく、析出させる貴金属の量を制限した場合には、露出部81aの割合が増加する。
【0009】
ところで、燃料電池の発電環境下では、生成する水は酸性であり、ハロゲンを含む腐食環境下である。さらには、燃料電池の発電により電位が高くなる部分が発生し、セパレータの金属に対してさらに厳しい腐食環境下となる。
【0010】
このような腐食環境下において、前述しためっき処理材を燃料電池のセパレータに用いた場合には、図6(b)に示すように、露出部81aから母材82の腐食又は酸化が進行し、酸化膜81が厚さ方向に成長する(酸化膜の厚みTaがTbにまで厚くなる)場合がある。この酸化膜81の成長に伴い、貴金属めっきが析出している近傍にまで酸化が及ぶことがあり、これらの現象が前述した接触抵抗の上昇の起因となると考えられる。しかし、図6(a)に示す露出部81aを減らすように、貴金属のめっき処理を行う場合、めっき膜の厚みが増え、製造コストが増加する。
【0011】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、貴金属のめっき膜の厚みを薄くすると共に、めっき被覆率を向上させ被処理表面の露出部を少なくすることにより、燃料電池の使用時に抵抗上昇を抑制することができるセパレータのめっき処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明者らは鋭意検討した結果、膜厚の薄くかつめっき被覆率の高いめっき膜を、被処理表面に被覆するには、微細な粒子を被処理表面により多く析出させることが重要であると考え、電気めっき処理時に通電させる電流の波形にパルス波形を用いることにより、このような析出形態でめっき処理を行うことが可能であるとの新たな知見を得た。
【0013】
本発明は、このような新たな知見に基づくものであり、本発明に係るセパレータのめっき処理方法は、燃料電池用の金属製の被処理表面に貴金属を電気めっきするセパレータのめっき処理方法であって、前記被処理表面が電極に対向するように、前記セパレータを前記貴金属のイオンを含む溶液中に浸漬し、前記被処理表面と電極との間にパルス波形の電流を流しながら前記被処理表面に前記貴金属を粒子状に析出させることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、金属製のセパレータを、貴金属イオンを含むめっき液浴中に浸漬させ、セパレータのめっき処理を行うべき被処理表面を、電極に対向するように配置する。そして、セパレータと電極とに電源を接続し、被処理表面と電極との間にパルス波形の電流を通電し、被処理表面に貴金属を粒子状に析出させ、被処理表面に貴金属のめっき膜を被覆することができる。この場合、セパレータの被処理表面と電極との間にパルス波形の電流を通電することにより、直流電流を通電する場合に比べて、被処理表面にめっきを生成する核を増やすことができ、これによりセパレータの被処理表面には、粒子状の貴金属が直流電流を流した場合に比べてより多く析出することになる。このようにして、セパレータの被処理表面に、めっき被覆率が高く、かつ膜厚の薄いめっき膜を被覆することができる。
【0015】
上述した電極と被処理表面との間に通電する電流のパルス波形は、矩形波形だけでなく、例えば、PR波形、単相全波波形、交直重畳波形、三角波波形などの波形を挙げることができ、通常のめっき時の直流波形の電流密度よりも、より大きいピークの電流密度を設定することができるのであれば、特にパルス波形の形状は限定されるものではない。
【0016】
また、金属製のセパレータの素材は、チタン系材料又はステンレス鋼であることがより好ましい。チタン系材料又はステンレス鋼は、表面に不働態酸化膜を形成し、この不働態酸化膜は耐食性を有するので、セパレータの使用環境に好適である。また、本発明のめっき処理方法に用いる貴金属としては、Au,Ru,Rh,Pd,Os,Ir及びPtのうち、少なくとも一種以上の貴金属が選択されることがより好ましい。
【0017】
本発明に係るセパレータのめっき処理方法は、前記被処理表面の表面積に対する前記貴金属のめっき被覆率が、73%以上となるまで電気めっきを行うことがより好ましい。本発明によれば、パルス波形の電流の平均電流密度、ピーク電流密度、及び処理時間等を調整して、被処理表面の表面積に対する前記貴金属のめっき被覆率が73%となるまで粒子状に貴金属を析出させて、被処理表面に電気めっきを行うことにより、めっき処理されたセパレータの耐食性を向上させるばかりでなく、腐食環境下においても低接触抵抗性を維持することができる。
【0018】
なお、本発明でいう「めっき被覆率」とは、被処理表面の面積に対して、被処理表面に析出した貴金属のめっき粒子の占める面積の割合をいう。
【0019】
さらに、本発明に係るセパレータのめっき処理方法は、前記パルス波形電流の平均電流密度が、0.1〜0.8A/dmであり、かつ、前記パルス波形電流のピーク電流密度が、0.5〜8A/dmであることがより好ましい。
【0020】
本発明によれば、前記に示す範囲のパルス波形電流の平均電流密度及びピーク電流密度で、セパレータのめっき処理を行うことにより、より好適にめっき処理をすることができる。すなわち、平均電流密度が0.1A/dm未満の場合には、めっき処理速度が遅いため生産性の観点から好ましいとは言えず、平均電流密度が0.8A/dmを超えた場合には、貴金属の析出不良、焼付き、又はめっき膜の剥がれなどのめっき不良が発生することがある。さらに、ピーク電流密度が、0.5A/dm未満の場合には、めっきの核が生成され難く、めっき被覆率が低下することがあり、ピーク電流密度が8A/dmを超えた場合には、焼付き、又はめっき効率の低下等の不具合が、発生する場合がある。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、セパレータの被処理表面にめっき処理されためっき膜の厚みを薄くすると共に、めっき被覆率を向上させることができる。これにより、発電時における抵抗上昇を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、図面を参照して、本発明に係るセパレータのめっき処理方法を実施形態に基づいて説明する。
【0023】
図1は、本実施形態に係るセパレータのめっき処理方法を行うためのめっき処理装置の全体構成図であり、図2は、図1に示すめっき処理装置を用いて被処理表面にめっき処理を行ったセパレータの部分断面図である。
【0024】
図1に示すように、めっき処理装置100は、めっき用の電極30と、通電用の電源部40と、めっき液収容槽50とを備えている。めっき液収容槽50内には、チタンを白金で被覆した電極30が配置されており、電源部40のプラス極に接続されている。また、めっき液収容槽50内には、金属製のセパレータ10が配置されており、電源部40のマイナス極に接続されている。電源部40は、電極30と被処理材であるセパレータ10との間に電流を通電するための電流供給源であり、所望のパルス波形の電流が通電可能なように電流を調製する電流調整部(図示せず)を備えている。
【0025】
このようなめっき処理装置100を用いて、以下に示すようにして、セパレータ10の被処理表面10aに対して電気めっき処理を行う。まず、めっき液収容槽50内に金イオンを含むめっき液Lを投入する。次に、少なくとも被処理表面10aに対してアルカリ脱脂を行ったセパレータ10を準備する。
【0026】
セパレータ10の素材は、チタン系材料(例えばJIS規格1種相当チタン板)又はステンレス鋼(例えばJIS規格:430)等が好ましい。このような材料は、図2に示すように、母材12に不働態酸化膜11が形成されているので、セパレータのような腐食環境下で使用される部材には好適である。
【0027】
次に、セパレータ10の少なくとも被処理表面10aが、めっき液Lに浸漬されるように、めっき液収容槽50内に配置する。このとき、セパレータ10の被処理表面10aを、電極30に対向するように配置する。この姿勢を維持し、電極30に電源部40の正極を、セパレータ10に電源部40の負極を接続する。
【0028】
そして、セパレータ10の被処理表面10aと電極30との間に、電源部40を用いて電流を通電する。この際、電源部40により、所望のパルス波形に調整した電流を通電し、被処理表面10aに金を粒子状に析出させる。この結果、図2に示すように、セパレータ10の不働態酸化膜11の被処理表面10aに金粒子状体が付着しためっき膜20を被覆することができる。
【0029】
このようにして得られためっき膜20は、セパレータ10の被処理表面10aと電極30との間にパルス波形の電流を通電することにより、直流電流を通電する場合に比べて、ピーク電流密度を増やすことができ、断続的な電流(又は電圧)が被処理表面10aに流れるので、被処理表面10aにめっきを生成する核を増加させることができる。この結果、従来の直流電流を通電してめっき処理を行う場合に比べて、微細な金粒子状体20aが被処理表面10aに無数に析出するので、めっき膜厚Tを薄くし、かつめっき被覆率を高めることができる。これにより、耐食性が高く、接触抵抗が低く、かつ信頼性が高いセパレータをより安価に製造することができる。
【実施例】
【0030】
以下に本発明を実施例に基づいて説明する。
(実施例1)
燃料電池用のチタン製のセパレータに相当する板材を準備し、被処理表面をアルカリ脱脂した。次に、板材を、金イオンを含む非シアン系のめっき液浴中に浸漬させ、板材のめっき処理を行うべき被処理表面を、白金電極に対向するように配置した。そして、板材と電極とに電源を接続し、被処理表面と電極との間に、平均電流密度0.2A/dm、ピーク電流密度0.8A/dmのパルス波形の電流を30秒間通電し、被処理表面に金を粒子状に析出させ、被処理表面に金めっき膜を被覆した。
【0031】
<めっき厚み測定試験>
実施例1のめっき処理されたセパレータのめっき膜のめっき厚みを、蛍光X線分析装置(XRF)を用いて測定した。この結果を表1に示す。
【0032】
<めっき被覆率測定試験>
実施例1のめっき処理されたセパレータのめっき被覆率を測定した。具体的には、走査電子顕微鏡(FE−SEM)によりめっき処理された表面を観察し、画像処理により、めっき被覆率を求めた。この結果を表1及び図3に示す。尚、図4(a),(b)に示すそれぞれの写真図は、後述する比較例2、実施例3の走査電子顕微鏡により観察した写真図である。
【0033】
<定電位腐食試験>
定電位腐食試験は、燃料電池の発電を擬似した環境の評価試験であり、具体的には、まず、実施例1のめっき処理されたセパレータを硫酸溶液(300ml、pH4、80℃)に浸漬した。この状態で、白金板からなる対極とセパレータとを電気的に接続することにより対極とセパレータとの間に電位差を生じさせ、セパレータの腐食試験をおこなった。なお、試験中は、白金線からなる参照極によってセパレータの電位を一定(浸漬電位〜1V)に保持してある。また、定電位腐食試験におけるセパレータの評価面積は16cm(4cm×4cm)であり、試験時間は50時間程度である。
【0034】
<接触抵抗試験>
実施例1のめっき処理されたセパレータのめっき膜上にカーボンペーパを載せ、セパレータおよびカーボンペーパを一定荷重(1MPa)で電極間に挟んだ。この状態で、電極間にセパレータに1Aの電流を流しつつ各燃料電池セパレータに印加される電圧を測定することによりめっき処理された表面の接触抵抗を調べた。接触抵抗試験は、定電位腐食試験の前後において1回ずつ行った。接触抵抗試験における各サンプルの評価面積は4cm(2cm×2cm)である。また、定電位腐食試験の前後の接触抵抗の上昇倍率も算出した。この結果を、表1及び図3に示す。なお、表1及び図3に示す接触低抗率は、後述する比較例1の試験前の接触抵抗の値で正規化したものである。
【0035】
【表1】

【0036】
(実施例2、3)
実施例1と同じように、セパレータの被処理表面に金めっき処理を行った。実施例1と相違する点は、それぞれのピーク電流密度を2.0A/dm、3.0A/dmにした点である。そして、実施例1と同じようにして、めっき膜のめっき厚み、めっき被覆率、接触抵抗、及び抵抗上昇倍率を求めた。この結果、表1及び図3に示す。なお、図4(b)に、実施例3の走査電子顕微鏡により観察した写真図を示した。
【0037】
(比較例1〜3)
実施例1と同じように、セパレータの被処理表面に金めっき処理を行った。実施例1と相違する点は、板材と電極とに電源を接続し、被処理表面と電極との間に、直流電流をそれぞれ30秒から10分間通電し、被処理表面に金を粒子状に析出させ、被処理表面に金めっき膜を被覆した点である。なお、比較例1〜3のそれぞれの平均電流密度を、0.05A/dm、0.2A/dm、0.1A/dmとした。そして、実施例1と同じようにして、めっき膜のめっき厚み、めっき被覆率、接触抵抗、及び抵抗上昇倍率を求めた。この結果、表1及び図3に示す。なお、図4(a)に、比較例2の走査電子顕微鏡により観察した写真図を示した。
【0038】
(結果1及び考察1)
実施例1〜3及び比較例1〜3のセパレータには、いずれも良好なめっき膜が被覆された。また、図4(a),(b)からも明らかなように、実施例1〜3のめっき膜を構成する金の粒子状析出物は、比較例1〜3のものに比べて、微細であった。実施例1〜3のめっき膜のめっき厚みは、比較例3のものに比べて薄く、めっき厚みに対する被覆率も高いと考えられる。
【0039】
これは、実施例1〜3のセパレータは、セパレータの被処理表面と電極との間にパルス波形の電流を通電することにより、比較例1〜3の直流電流を通電する場合に比べて、ピーク電流密度を増加させ、断続的な電流(又は電圧)が被処理表面に流れるので、めっきを生成する核が増えたからであると考えられる。これによりセパレータの被処理表面には、粒子状の貴金属が直流電流を流した場合に比べてより多く析出したと考えられる。この結果、実施例1〜3のセパレータの被処理表面に、被覆率が高くかつ膜厚の薄い(20nm以下)の粒子状の金のめっき膜を被覆することができたと考えられる。
【0040】
(結果2及び考察2)
さらに、実施例2及び3のめっき被覆率は73%以上であり、抵抗上昇倍率も略1倍であった。これは、実施例2及び3のセパレータは、被処理表面の露出部分の割合が少ないことから、めっき処理されたセパレータの耐食性を向上させるばかりでなく、腐食環境下においても低接触抵抗性を維持することができたからであると考えられる。従って、燃料電池用のセパレータの被処理表面のめっき被覆率は、73%以上であることがより好ましいといえる。
【0041】
(実施例4)
実施例1と同じようにしてセパレータのめっき処理を行った。実施例1と相違する点は、パルス波形電流の電流密度の組み合わせで、(平均電流密度,ピーク電流密度)が(0.2A/dm,0.8A/dm)、(0.1A/dm,1.5A/dm)、(0.8A/dm,6.0A/dm)、(0.1A/dm,0.5A/dm)、(0.4A/dm,8A/dm)の条件で、セパレータにめっき処理を行った。これらの条件では、セパレータの表面に良好なめっき膜が形成された。
【0042】
(実施例5)
実施例1と同じようにしてセパレータのめっき処理を行った。実施例1と相違する点は、パルス波形電流の電流密度の組み合わせで、(平均電流密度,ピーク電流密度)が(1.2A/dm(0.8A/dmを超えた値),5.0A/dm(0.5〜8A/dmの値))、(0.5A/dm(0.1〜0.8A/dmの値),12.0A/dm(8A/dmを超えた値))条件で、セパレータにめっき処理を行った。
【0043】
(結果3及び考察3)
実施例5のめっき処理において、平均電流密度が0.8A/dmを超えた場合には、貴金属の析出不良、焼付き、又はめっき膜の剥がれなどのめっき不良が発生することがあった。さらに、ピーク電流密度が8A/dmを超えた場合には、焼付き、又はめっき効率の低下等の不具合が、発生することがあった。従って、燃料電池用のセパレータの被処理表面にめっき処理をする場合には、パルス波形電流の平均電流密度が、0.8A/dm以下であり、かつ、パルス波形電流のピーク電流密度が、8A/dm以下であることがより好ましい。尚、発明者らのその他実験から、めっき処理効率を考慮すると、平均電流密度が、0.1A/dm以上あり、かつ、パルス波形電流のピーク電流密度が、0.5A/dm以上にすることがより好ましいことがわかった。
【0044】
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更があっても、それらは本発明に含まれるものである。
【0045】
本実施形態では、燃料電池用のセパレータについて詳述したが、腐食環境下で使用することを前提に貴金属めっきを行う部材であれば、特にセパレータに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本実施形態に係るセパレータのめっき処理方法を行うためのめっき処理装置の全体構成図。
【図2】図1に示すめっき処理装置を用いて被処理表面にめっき処理を行ったセパレータの部分断面図。
【図3】実施例1〜3及び比較例1,2の定電位腐食試験前後の接触低効率の結果を示した図。
【図4】めっき処理後の表面を、走査電子顕微鏡(FE−SEM)により観察した写真図であり、(a)は、比較例2に係る表面の写真図であり、(b)は、実施例3に係る表面の写真図。
【図5】固体高分子型燃料電池(単セル)の一例を説明する模式図。
【図6】従来のめっき処理を行っためっき処理材の断面図であり、(a)は、めっき処理直後のめっき処理材の断面図であり、(b)は、腐食環境下で使用後のめっき処理材の断面図。
【符号の説明】
【0047】
10:セパレータ、10a:被処理表面、11:不働態酸化膜、12:母材、20:めっき膜、20a:金粒子状体、30:電極、40:電源部、50:めっき液収容槽、100:めっき処理装置、L:めっき液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池用の金属製の被処理表面に貴金属を電気めっきするセパレータのめっき処理方法であって、
前記被処理表面が電極に対向するように、前記セパレータを前記貴金属のイオンを含む溶液中に浸漬し、前記被処理表面と電極との間にパルス波形の電流を流しながら前記被処理表面に前記貴金属を粒子状に析出させることを特徴とするセパレータのめっき処理方法。
【請求項2】
前記被処理表面の表面積に対する前記貴金属のめっき被覆率を73%以上にすることを特徴とする請求項1に記載のセパレータのめっき処理方法。
【請求項3】
前記パルス波形電流の平均電流密度は、0.1〜0.8A/dmであり、かつ、前記パルス波形電流のピーク電流密度は、0.5〜8A/dmであることを特徴とする請求項1または2に記載のセパレータのめっき処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−59462(P2010−59462A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−225598(P2008−225598)
【出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000100805)アイシン高丘株式会社 (202)
【Fターム(参考)】