説明

セパレータの選定方法および該選定方法により選定されたセパレータを用いた粘着シート

【課題】粘着シートに好適なセパレータを簡便に選定する方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、少なくとも粘着剤層を形成する材料が溶融した状態でセパレータと貼り合せ、少なくとも粘着剤層とセパレータとを有する粘着シートを得る工程、得られた粘着シートから該セパレータを剥離し、該粘着シートの粘着剤層と評価用セパレータとを貼り合せて評価用粘着シートを作製する工程、および、該評価用粘着シートを一対のクッション材および一対のプレス板で狭持し、プレス板面温度140℃、圧力5MPaで1分間保持した後、剥離速度300mm/分での180°剥離試験により評価用セパレータの剥離力を評価する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セパレータの選定方法および該選定方法により選定されたセパレータを用いた粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
粘着剤層および基材層を有する粘着シートの製造方法として、生産効率およびコスト性に優れることから、基材層を構成する材料と粘着剤層を構成する材料を共押し出しする成形方法が知られている(例えば、特許文献1)。また、粘着シートは、通常、使用されるまでの保護材として粘着剤層と接するように、セパレータが配置されている。このような粘着シートにおいて、共押し出しにより粘着シートを成形する場合、粘着剤層とセパレータの間への異物の混入を抑えることができ、かつ、粘着剤層とセパレータとが接する面が平滑な粘着シートが得られることから、共押し出しされた粘着剤層形成材料が溶融した状態でセパレータと貼り合わせる方法が検討されている。しかしながら、このようにして得られる粘着シートは、セパレータの剥離が困難となり、粘着シートのハンドリング性が低下する場合が多い。また、このような問題に対し、軽剥離のセパレータを用いると、ハンドリング性は向上するものの、粘着シートの保管時に粘着剤層の粘着力が低下する場合が多い。このように、粘着シートの良好なハンドリング性と適度な粘着力とを両立することは困難である。
【0003】
粘着シートに用いるセパレータは、剥離剤の種類やその剥離力等により所望のセパレータが適宜選定される。しかしながら、上記の通り、溶融した粘着剤層形成材料と貼り合せられる場合、得られた粘着シートにおいてセパレータ本来の能力が発揮されない場合がある。そのため、溶融共押し出し成形で製造される粘着シートに用いるセパレータは、まず候補となるセパレータを選択し、実際に粘着シートを製造したうえで、セパレータの適性を検討する必要がある。そのため、粘着シートの構成を変更するごとに、粘着シートを作製し、セパレータの適性を検討する必要があり、適切なセパレータの選定は容易ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−275209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、少なくとも粘着剤層を有する粘着シートに適したセパレータを簡便に選定することができる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のセパレータの選定方法は、少なくとも粘着剤層を形成する材料が溶融した状態でセパレータと貼り合せ、少なくとも粘着剤層とセパレータとを有する粘着シートを得る工程、得られた粘着シートから該セパレータを剥離し、該粘着シートの粘着剤層と評価用セパレータとを貼り合せて評価用粘着シートを作製する工程、および、該評価用粘着シートを、一対のクッション材と一対のプレス板で狭持し、プレス板面温度140℃、圧力5MPaで1分間保持した後、剥離速度300mm/分での180°剥離試験により評価用セパレータの剥離力を評価する工程を含む。
好ましい実施形態においては、上記評価工程において測定された剥離力が2.0N/50mm以下であるセパレータを選定する。
好ましい実施形態においては、上記粘着シートの粘着剤層はポリオレフィン系樹脂を含む。
好ましい実施形態においては、上記ポリオレフィン系樹脂はメタロセン触媒を用いて重合された非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体を含む。
本発明の別の実施形態においては、粘着シートが提供される。該粘着シートは、基材層、粘着剤層、および、上記選定方法により選定されたセパレータを含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、粘着シートに好適なセパレータを簡便に選定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のセパレータの選定方法は、粘着シートに好適なセパレータを選定する方法である。本発明の方法によれば、少なくとも粘着剤層を形成する材料が溶融した状態でセパレータと貼り合せることにより得られる粘着シートに好適なセパレータを簡便に選択することができる。本発明のセパレータの選定方法は、少なくとも粘着剤層を形成する材料が溶融した状態でセパレータと貼り合せ、少なくとも粘着剤層とセパレータとを有する粘着シートを得る工程、得られた粘着シートから該セパレータを剥離し、該粘着シートの粘着剤層と評価用セパレータとを貼り合せて評価用粘着シートを作製する工程、および、該評価用粘着シートを一対のクッション材および一対のプレス板で狭持し、プレス板面温度140℃、圧力5MPaで1分間保持した後、剥離速度300mm/分での180°剥離試験により評価用セパレータの剥離力を評価する工程を含む。本発明の選定方法により、セパレータの剥離力を評価することにより、粘着シートに好適なセパレータを簡便に選定することができる。
【0009】
A.少なくとも粘着剤層とセパレータとを有する粘着シートを得る工程
本発明の選定方法は少なくとも粘着剤層を形成する材料が溶融した状態でセパレータと貼り合せ、少なくとも粘着剤層とセパレータとを有する粘着シートを得る工程を含む。該粘着シートは、代表的には、基材層、粘着剤層およびセパレータをこの順に有する。
【0010】
上記粘着シートを成形する方法としては、特に制限はなく、少なくとも粘着剤層を形成する材料が溶融した状態でセパレータと貼り合せられる工程を含んでいればよい。上記成形方法は、例えば、粘着剤層を形成する材料および基材層を形成する材料を溶融後、押し出し、粘着剤層と基材層との積層体を得る工程、少なくとも粘着剤層を形成する材料が溶融した状態で、該積層体の粘着剤層とセパレータとを貼り合せ、粘着シートを得る工程を含む。
【0011】
上記粘着剤層と基材層の積層体を得る工程において、該積層体は、例えば、ダイスに連結した少なくとも2台の押出し機のうち、1台に粘着剤層を形成する材料を、別の1台に基材層を形成する材料を、それぞれ供給し、溶融後、押出しすることにより、得られ得る。上記粘着シートを成形する際の条件(例えば、ダイス温度)は、該粘着シートの各層を構成する材料に応じて、適宜設定することができる。例えば、ダイス温度は、粘着シートの各層の形成材料が溶融状態となる温度に設定され得る。一つの実施形態においては、ダイス温度は160℃〜220℃に設定され得る。
【0012】
上記積層体とセパレータとを貼り合せる工程は、具体的には、上記積層体を得る工程において、押し出された積層体の少なくとも該粘着剤層を形成する材料が溶融した状態で該積層体の粘着剤層とセパレータとを接触させ、タッチロール成形法により引き取ることにより、行われ得る。上記粘着剤層を形成する材料とセパレータとを接触させる際の条件(例えば、粘着剤層を構成する材料とセパレータとを接触させる温度および接触圧力)は、粘着シートの各層を構成する材料に応じて、適宜設定することができる。例えば、粘着剤層を構成する材料とセパレータとを接触させる温度は、少なくとも粘着剤層を形成する材料が溶融した状態が維持される温度に設定され得る。一つの実施形態においては、粘着剤層を構成する材料とセパレータとを接触させる温度は、120℃〜200℃に設定され得る。
【0013】
この工程で用いるセパレータ(以下、製造用セパレータともいう)としては、任意の適切なセパレータを用いることができる。例えば、当該技術分野において、粘着シートのセパレータとして、汎用されているセパレータを用いることができ、具体的には、三菱樹脂製の商品名MRF−38、東山フイルム社製の商品名HY−S06等が挙げられる。
【0014】
B.評価用粘着シートの作製工程
本発明の選定方法における評価工程で用いる評価用粘着シートは、以下のようにして得られる。まず、上記A項の方法により得られた粘着シートからセパレータを剥離する。該セパレータの剥離は、任意の適切な手段により行うことができ、任意の剥離機を用いて剥離してもよく、手で剥離してもよい。
【0015】
次いで、セパレータを剥離した粘着シートの粘着剤層と選定の対象となる評価用セパレータを貼り合せる。後述する剥離力の評価工程において、プレスを行うため、評価用粘着シートの作製工程においては、該粘着シートと該評価用セパレータとを強固に貼り合せる必要はなく、該粘着シートと該評価用セパレータとの積層状態が維持される程度に貼り合せられていればよい。
【0016】
C.評価用セパレータの剥離力評価工程
上記評価用セパレータの剥離力評価工程は以下のようにして行う。上記B工程で得られた評価用粘着シートを一対のクッション材で狭持した後、さらに一対のプレス板で狭持し、プレス板面温度140℃、圧力5MPaで1分間保持し、プレスを行う。粘着シートに用いられるセパレータは、プレス板面温度が140℃を超えると、セパレータと粘着剤層との剥離が急激に困難になる傾向がある。したがって、プレス板面温度を140℃として評価用粘着シートのプレスを行い、プレス後の粘着シートにおける評価用セパレータの剥離力を評価することにより、粘着シートのセパレータとして適したセパレータを選定することができる。なお、本発明の剥離力評価試験におけるプレス板面温度は、プレス板表面の温度をいう。
【0017】
上記プレスにおいて、評価用粘着シートとプレス板との間には、粘着シートに過度の圧力がかかることを防止するため、クッション材が配置される。このクッション材としては、熱プレスに適用可能な任意の適切なクッション材を用いることができ、例えば、ゴム、耐熱性エラストマー、有機または無機繊維をバインダーで結合したもの、不織布、ゴムと不織布との積層体等が挙げられる。プレスに用いるクッション材は、評価用粘着シートにかかる圧力が適当な圧力となるよう適切なクッション材を選択して用いればよい。例えば、クッション材の構成材料、サイズ(面積)を調整することにより、評価用粘着シートにかかる圧力を調整することができる。より具体的には、サイズが150mm×200mmのセパレータに対しては、面積が130mm×160mmのゴム板が用いられ得る。
【0018】
また、プレス時にクッション材および評価用粘着シートのブロッキングを防止するため、クッション材と評価用粘着シートとの間にそれぞれ樹脂シートを配置し、プレスを行ってもよい。該樹脂シートは、セパレータとして適用可能な樹脂シートであればよく、任意の適切なシートを用いることができ、例えば、ポリエチレンテレフタレート系樹脂シート、ポリイミド系樹脂フィルム等を用いることができる。該樹脂シートの厚みは、通常、38μm〜75μmである。
【0019】
評価用粘着シートのプレスは、上記のプレス板面温度および圧力を設定可能な任意の適切な手段を用いて行うことができる。例えば、市販のプレス機を用いて行うことができ、具体的には、東洋精機社製、MINI TEST PRESS−10等が挙げられる。
【0020】
プレス後の評価用粘着シートは、室温になるまで放置し、評価用セパレータの剥離試験を行う。該剥離試験は、剥離速度300mm/分、剥離角度180°にて評価用セパレータを剥離することにより行う。
【0021】
上記剥離試験により測定された剥離力から、セパレータに要求する特性に応じて、所望のセパレータを選択することができる。例えば、ハンドリング性に優れ、かつ、適度な粘着力が保持されたセパレータを所望する場合には、上記剥離試験で測定された剥離力が2.0N/50mm以下であるセパレータが好適に用いられ得る。また、より粘着剤層とセパレータとの密着性の高いセパレータを所望する場合には、上記剥離試験で測定された剥離力が2.0N/50mmを超えるセパレータを用いればよい。市販のテープ貼り付け装置(例えば、日東精機社製のバックグラインド用保護テープ貼り付け装置、商品名DR3000III等)での取り扱いの点から、上記剥離試験で測定された剥離力2.0N/50mmを基準として、所望のセパレータを選択し得る。なお、よりハンドリング性の高いセパレータを所望する場合には、上記剥離試験で測定された剥離力がより小さいセパレータを用いればよい。
【0022】
D.粘着シート
本発明が適用される粘着シートは、代表的には、基材層、粘着剤層、およびセパレータを含む。また、該粘着シートは必要に応じて、任意の適切な他の層を含んでいてもよい。該他の層としては、例えば、耐熱性を付与する表面層が挙げられる。
【0023】
粘着シートの厚み(セパレータの厚みを除く)は、好ましくは90μm〜285μmであり、より好ましくは105μm〜225μmであり、さらに好ましくは130μm〜210μmである。
【0024】
D−1.セパレータ
上記セパレータは、本発明のセパレータの選定方法により選定されたものである。セパレータは、通常、基材層および剥離剤層を有する。該基材層および剥離剤層は、任意の適切な材料で構成され得る。好ましくは、該セパレータは、本発明の選定方法において評価したセパレータの剥離力が2.0N/50mm以下であり、より好ましくは0.05N/50mm〜2.0N/50mmであり、さらに好ましくは0.05N/50mm〜1.8N/50mmである。このようなセパレータを用いることにより、優れたハンドリング性を有し、かつ、適度な粘着力が保持された粘着シートが得られる。また、セパレータが粘着剤層からより剥がれにくい粘着シートとする場合には、本発明の選定方法において評価した剥離力が2.0N/50mmを超えるセパレータを用いればよい。
【0025】
セパレータの厚みは、特に制限はなく、任意の適切な厚みに設定し得る。セパレータの厚みは、例えば、25μm〜250μmに設定し得る。
【0026】
D−2.粘着剤層
上記粘着剤層は、任意の適切な粘着剤により構成され、例えば、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂等の熱可塑性樹脂を含む粘着剤等が挙げられる。該粘着剤層は、好ましくはポリオレフィン系樹脂を含み、具体的には、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、低結晶ポリプロピレン、非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリ酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体などのエチレン共重合体やポリオレフィン変性ポリマー等が挙げられる。該粘着剤層は、より好ましくは非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体を含む。このような粘着剤層を用いることにより、被着体への汚染が少なく、粘着力と剥離性とが両立され、かつ、共押し出し成形により製造し得る粘着シートが得られる。さらに、このような粘着剤層であれば、基材層との共押し出し成形により粘着シートを製造することが可能であり、少ない工程数で、かつ、有機溶剤を使用することなく粘着シートを得ることができる。なお、本明細書において、「非晶質」とは、結晶質のように明確な融点を有さない性質をいう。
【0027】
上記非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体は、好ましくは、メタロセン触媒を用いて、プロピレンと1−ブテンとを重合することにより得ることができる。より詳細には、非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体は、例えば、メタロセン触媒を用いてプロピレンと1−ブテンとを重合させる重合工程を行い、当該重合工程の後、触媒残さ除去工程、異物除去工程等の後処理工程を行うことにより、得ることができる。非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体は、このような工程を経て、例えば、パウダー状、ペレット状等の形状で得られる。メタロセン触媒としては、例えば、メタロセン化合物とアルミノキサンとを含むメタロセン均一混合触媒、微粒子状の担体上にメタロセン化合物が担持されたメタロセン担持型触媒等が挙げられる。メタロセン触媒を用いて重合された非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体は、狭い分子量分布を示す。
【0028】
上記非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体における、プロピレン由来の構成単位の含有割合は、好ましくは80モル%〜99モル%であり、より好ましくは85モル%〜99モル%であり、さらに好ましくは90モル%〜99モル%である。
【0029】
上記非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体における、1−ブテン由来の構成単位の含有割合は、好ましくは1モル%〜15モル%であり、より好ましくは1モル%〜10モル%である。このような範囲であれば、靭性と柔軟性とのバランスに優れた粘着シートを得ることができる。
【0030】
上記非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体は、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよい。
【0031】
上記非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体は、本発明の効果を損なわない範囲で、さらにその他のモノマー由来の構成単位を含んでいてもよい。その他のモノマーとしては、例えば、エチレン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン等が挙げられる。
【0032】
上記粘着剤層は、本発明の効果を損なわない範囲で、さらにその他の成分を含んでいてもよい。当該その他の成分としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤等が挙げられる。その他の成分の種類および使用量は、目的に応じて適切に選択され得る。
【0033】
粘着剤層の厚みは、好ましくは20μm〜100μmであり、より好ましくは30μm〜65μmである。
【0034】
D−3.基材層
上記基材層は、任意の適切な材料を用いて構成することができ、例えば、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレートなど)、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体など)、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド、ポリイミド、セルロース類、フッ素系樹脂、ポリエーテル、ポリスチレン系樹脂(ポリスチレンなど)、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン等が挙げられる。好ましくは、上記基材層は、エチレン−酢酸ビニル共重合体を含む。
【0035】
上記基材層は、本発明の効果を損なわない範囲で、さらにその他の成分を含んでいてもよい。当該その他の成分としては、例えば、上記で説明した粘着剤層に含まれ得るその他の成分と同様の成分が用いられ得る。
【0036】
基材層の厚みは、好ましくは30μm〜185μmであり、より好ましくは65μm〜175μmである。
【0037】
D−4.その他の層
本発明の粘着シートに含まれる他の層としては、例えば、粘着シートに耐熱性を付与し得る表面層が挙げられる。該表面層は耐熱性を有する任意の適切な樹脂を用いることができ、好ましくはポリプロピレン系樹脂を含む。上記ポリプロピレン系樹脂は、好ましくはメタロセン触媒を用いた重合により得られる。より詳細には、ポリプロピレン系樹脂は、例えば、メタロセン触媒を用いてプロピレンを含むモノマー組成物を重合させる重合工程を行い、当該重合工程の後、触媒残さ除去工程、異物除去工程等の後処理工程を行うことにより、得ることができる。ポリプロピレン系樹脂は、このような工程を経て、例えば、パウダー状、ペレット状等の形状で得られる。メタロセン触媒としては、例えば、上記で例示したものが挙げられる。
【0038】
上記ポリプロピレン系樹脂は市販品を用いてもよい。市販品のポリプロピレン系樹脂の具体例としては、日本ポリプロ(株)製の商品名「WINTEC(ウィンテック)」、「WELNEX(ウェルネックス)」シリーズ等が挙げられる。
【0039】
上記表面層は、本発明の効果を損なわない範囲で、さらにその他の成分を含んでいてもよい。当該その他の成分としては、上記で説明した粘着剤層に含まれ得るその他成分と同じものが挙げられる。その他の成分の種類および使用量は、目的に応じて適切に選択され得る。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例になんら限定されるものではない。なお、実施例等における、試験および評価方法は以下のとおりである。また、部は重量部を意味する。
【0041】
(参考例1)試験用粘着シートの作製
耐熱性を付与し得る表面層を形成する材料として、メタロセン触媒により重合したポリプロピレン系樹脂(日本ポリプロ社製、商品名「WELNEX:RFGV4A」;融点130℃、軟化点120℃、Mw/Mn=2.9)を用いた。
基材層を形成する材料として、エチレン−酢酸ビニル共重合体(三井デュポン社製、商品名「エバフレックスP−1007」)を用いた。
粘着剤層を形成する材料として、メタロセン触媒により重合した非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体(住友化学社製、商品名「タフセレンH5002」:プロピレン由来の構成単位90モル%/1−ブテン由来の構成単位10モル%、Mw=230,000、Mw/Mn=1.8)を用いた。
上記表面層を形成する材料100部、上記基材層を形成する材料100部および上記粘着剤層を形成する材料100部をそれぞれの押し出し機に投入し、Tダイ溶融共押し出しした(ダイス温度:180℃)。ダイスから共押し出しされた表面層/基材層/粘着剤層の積層体の粘着剤層に製造用セパレータ(三菱樹脂社製、MRF38、厚み38μm)をタッチロールにより貼り合せ(エアギャップ:150mm、接触温度:165℃)、表面層(厚み30μm)/基材層(厚み130μm)/粘着剤層(厚み45μm)/セパレータの試験用粘着シートを得た。なお、表面層、基材層および粘着剤層の厚みは、Tダイ出口の形状により制御した。
【0042】
[実施例1]粘着シートに適したセパレータの選定
(評価用セパレータ1)
参考例1で得られた粘着シートから粘着剤層側のセパレータを剥離した。次いで、粘着剤層に、評価用セパレータ1(東山フイルム社製、HY−S30、厚み38μm)を貼り合せ、評価用粘着シートを得た。
得られた評価用粘着シートをプレス機(東洋精機社製、MINI TEST PRESS−10、板面面積:250mm×250mm)を用いてプレスした。樹脂シート(セパレータ)として三菱樹脂製、MRN38を、クッション材としてゴム板(厚み:1mm、130mm×160mm)を用いた。評価用粘着シートは、ステンレス板(SUS板)/樹脂シート/クッション材/樹脂シート/評価用粘着シート/樹脂シート/クッション材/樹脂シート/ステンレス板の順に積層した後、プレス板で狭持し、プレス板面温度140℃、プレス圧力5MPaで1分間保持した。次いで、粘着シートを室温まで放置し、粘着シートの評価用セパレータの剥離力(剥離速度:300mm/分、剥離角度:180°)を測定した。測定した剥離力を表1に示す。
【0043】
(評価用セパレータ2)
評価用セパレータ1に代えて、評価用セパレータ2(東山フイルム社製、HY−TS11、厚み75μm)を用いた以外は評価用セパレータ1と同様にして、評価用セパレータの剥離力を測定した。測定した剥離力を表1に示す。
【0044】
(評価用セパレータ3)
評価用セパレータ1に代えて、評価用セパレータ3(東山フイルム社製、HY−TS15、厚み75μm)を用いた以外は評価用セパレータ1と同様にして、評価用セパレータの剥離力を測定した。測定した剥離力を表1に示す。
【0045】
(評価用セパレータ4)
評価用セパレータ1に代えて、評価用セパレータ4(三菱樹脂社製、MRE38、厚み38μm)を用いた以外は評価用セパレータ1と同様にして、評価用セパレータの剥離力を測定した。測定した剥離力を表1に示す。
【0046】
(評価用セパレータ5)
評価用セパレータ1に代えて、評価用セパレータ5(三菱樹脂社製、MRN38、厚み38μm)を用いた以外は評価用セパレータ1と同様にして、評価用セパレータの剥離力を測定した。測定した剥離力を表1に示す。
【0047】
(評価用セパレータ6)
評価用セパレータ1に代えて、評価用セパレータ6(三菱樹脂社製、MRF38、厚み38μm)を用いた以外は評価用セパレータ1と同様にして、評価用セパレータの剥離力を測定した。測定した剥離力を表1に示す。
【0048】
(評価用セパレータ7)
評価用セパレータ1に代えて、評価用セパレータ7(東山フイルム社製、HY−S10、厚み75μm)を用いた以外は評価用セパレータ1と同様にして、評価用セパレータの剥離力を測定した。測定した剥離力を表1に示す。
【0049】
(評価用セパレータ8)
評価用セパレータ1に代えて、評価用セパレータ8(東山フイルム社製、HY−S06、厚み75μm)を用いた以外は評価用セパレータ1と同様にして、評価用セパレータの剥離力を測定した。測定した剥離力を表1に示す。
【0050】
(評価用セパレータ9)
評価用セパレータ1に代えて、評価用セパレータ9(東山フイルム社製、HY−TS05G、厚み75μm)を用いた以外は評価用セパレータ1と同様にして、評価用セパレータの剥離力を測定した。測定した剥離力を表1に示す。
【0051】
(評価用セパレータ10)
評価用セパレータ1に代えて、評価用セパレータ10(東山フイルム社製、HY−US20、厚み75μm)を用いた以外は評価用セパレータ1と同様にして、評価用セパレータの剥離力を測定した。測定した剥離力を表1に示す。
【0052】
【表1】

【0053】
[実施例2]選定したセパレータを用いた粘着シートの評価
評価用セパレータ1〜10を用いた以外は参考例1と同様にして、粘着シート1〜10を得た。得られた粘着シート1〜10を以下の評価に供した。結果を表2に示す。
[評価]
(1)セパレータの剥離力
得られた粘着シートにおけるセパレータの剥離力(剥離速度:300mm/min、剥離角度:180°)を測定した。
(2)粘着剤層の粘着力
得られた粘着シートを50℃にて2日間エージングした後、粘着剤層に貼り合せられたセパレータを剥離し、該粘着剤層の4インチ半導体ウエハのミラー面(シリコン製)に対する粘着力を、JIS Z 0237(2000)に準じた方法(貼り合わせ条件:2kgローラー1往復、剥離速度:300mm/min、剥離角度180°)により測定した。測定した値が0.005N/20mm以上であれば、粘着シートとして十分な粘着力を有している。
【0054】
【表2】

【0055】
実施例1で測定したセパレータの剥離力が2.0N/50mm以下であるセパレータ1〜5を用いた粘着シート1〜5は、セパレータの剥離が容易であり、かつ、粘着剤層の粘着力が適度に維持されていた。また、実施例1で測定したセパレータの剥離力が2.0N/50mmを超えるセパレータ6〜10を用いた粘着シート6〜10は、セパレータ1〜5に比べてセパレータを剥離するために必要な力が大きかった。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明のセパレータの選定方法は、例えば、粘着シートに用いるセパレータの選定に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも粘着剤層を形成する材料が溶融した状態でセパレータと貼り合せ、少なくとも粘着剤層とセパレータとを有する粘着シートを得る工程、
得られた粘着シートから該セパレータを剥離し、該粘着シートの粘着剤層と評価用セパレータとを貼り合せて評価用粘着シートを作製する工程、および、
該評価用粘着シートを一対のクッション材および一対のプレス板で狭持し、プレス板面温度140℃、圧力5MPaで1分間保持した後、剥離速度300mm/分での180°剥離試験により評価用セパレータの剥離力を評価する工程を含む、セパレータの選定方法。
【請求項2】
前記評価工程において測定された剥離力が2.0N/50mm以下であるセパレータを選定する、請求項1に記載のセパレータの選択方法。
【請求項3】
前記粘着シートの粘着剤層がポリオレフィン系樹脂を含む、請求項1または2に記載のセパレータの選定方法。
【請求項4】
前記ポリオレフィン系樹脂がメタロセン触媒を用いて重合された非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体を含む、請求項3に記載のセパレータの選定方法。
【請求項5】
基材層、粘着剤層、および、請求項1から4のいずれかに記載の選定方法により選定されたセパレータを含む、粘着シート。

【公開番号】特開2013−1738(P2013−1738A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131911(P2011−131911)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】