説明

セフチオフルおよびケトプロフェンとまたはセフチオフルとベンジルアルコールとを含む製剤

本発明は、セフチオフル、ケトプロフェン、ベンジルアルコール、または有効なこれらの組合せを含み得る獣医用または医薬用製剤に関する。本発明の製剤は、湿潤または分散剤、防腐剤、凝集剤または再懸濁性増強剤、および/または生体適合性オイルビヒクルを含み得る。また、本発明は、特に、畜産動物のような温血動物における呼吸器障害、特に、ウシ呼吸器疾患(BRD)の治療、管理および予防用の製剤を提供する。さらに、本発明は、上記添加剤を含み得る油性製剤の再懸濁性の増強方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願との相互参照)
本出願は、2008年12月4日に出願された米国仮出願第61/119,764号および2008年11月19日に出願された米国仮出願第61/116,031号の権利を主張する;これらの出願の開示は、開示全体を参考として本明細書に合体させる。
【0002】
本発明は、獣医用治療薬分野における改良、さらに詳細には、セフチオフル、ベンジルアルコール、ケトプロフェン、またはこれらの組合せを含み得る製剤に関連する改良に関する。
【背景技術】
【0003】
セフチオフルは、セファロスポリン系抗生物質であり、気道の細菌感染を制御するためにウシおよびブタに投与する。セフチオフルは、獣医学においては、ナトリウム塩および塩酸塩の双方として使用する。セフチオフルは、ウシおよびブタに筋肉内投与する。また、セフチオフルは、ウシおよびブタにおける筋肉内および皮下投与用の無結晶酸として使用することも意図する。セフチオフルは、経口投与後は吸収され難いが、筋肉内投与後は迅速に吸収される。セフチオフル塩酸筋肉内注射液は、油性懸濁液である。
【0004】
セフチオフルを含む油性懸濁液を記載している米国公開第20040022815号として2004年2月5日に公開され、現在放棄されている、2002年8月5日に出願された米国特許出願第10/211,580号を参照されたい。
懸濁液は、内部または懸濁相が、機械的撹拌により、懸濁媒またはビヒクルと称する外部相全体に亘って均一に分配されている特定の群またはタイプの分散系である。内部相は、特定範囲の粒度を有する固形粒子の均質なまたは不均質な分布からなり、これらの粒子は、単独のまたは特定の組合せの懸濁剤の助けによって、次第に懸濁用ビヒクル全体に亘って均一に維持される。
【0005】
3つの一般的な群の医薬用懸濁液は、経口投与懸濁液、外用懸濁液(局所用)および注射用(非経口)懸濁液である(A Martin & P Bustamante, Coarse Dispersion in physical pharmacy 45th edn. Lea and Febiger, Philadelphia, 1993, PP 117‐124参照)。非経口懸濁液用の一般的なビヒクルは、保存塩化ナトリウム溶液または非経口的に許容し得る植物油である(J B Partnoff, E M Cohen & M H Henlay, Development of Parenteral and Sterile ophthalmic suspensions - The R&D Approach, Bull. Parenter. Drug Assoc 31: 136‐143 (1977)参照)。非経口懸濁液は、筋肉内、皮内、病巣内、関節内または皮下投与用に設計されている。
【0006】
医薬用懸濁液の化学安定性は、そのような懸濁液の物理的安定性に影響を与える要因によって複雑である。懸濁液は2以上の状態(液体と固体)で存在するので、系が化学的または物理的変化のいずれかを被り得る種々の経路が存在する(T Higuchi, some physical chemical aspects of suspension formulation, J. Am. Pharm. Assoc. Sci Ed; 47: 657‐660 (1958) 参照)。HainesとMartin, HiestandおよびEconowとCoworkers (J. Pharm. Sci., 61; 268‐272, (1972) およびJ. Pharm. Sci., 52; 757‐762, 1031‐1038, (1963)参照)は、構造化された粒子概念および凝集医薬用懸濁液を確立したものと一般的に認められている。
【0007】
凝集(flocculation)とは、ネットワーク様構造内に、高分子の物理的吸収によって、化学相互作用中のブリッジングによって、或いは長めの距離のファンデルワールス引力が短めの距離の反発力を越える場合に一緒に保持された個々の粒子のゆるい集合(aggregation)の形成を称する。凝結(agglomeration)においては、大多数の粒子は、乾燥または液体状態での集合体として一緒に緊密に結合している。凝固(coagulation)または凝集は、液体状態のみの、場合によっては流体ゲル構造の形の粒子の集合を称する。
【0008】
安定な凝集系の主な利点は、次のとおりである。凝集体は、ボトルまたはバイアルの穏やかな撹拌のような小量の剪断応力の適用下に或いは小オリフィス(皮下注射針およびシリンジ)内の流動によって容易に崩壊する性向を有する。解凝集系とは対照的に、安定な凝集体は急速に沈降し、長保存時間放置した後でさえも容易に再懸濁し得る。安定な凝集体は、必要に応じて、筋肉内注射にとって安全であるビヒクル成分を使用する無菌法を使用することによって製造し得る。
【0009】
幾つかの凝集医薬用懸濁液の製造方法が存在する。方法の選択は、薬物の性質および所望する懸濁液の種類による。
本発明の1つの局面は、再懸濁性増強剤を油性懸濁液に添加したとき、懸濁粒子の再懸濁性が劇的に改善され、従って、油性懸濁液に改良された物理的安定性を付与するという本出願人等の観察に基く。
数種の抗生物質製剤がウシ呼吸器疾患(BRD)を予防/治療する企図において使用されている;この疾患は、牛肉産業の最も有意な健康問題である。ウシは、呼吸器障害に対して極めて感受性があるようである。1つの理由は、ウシの気道が体の大きさと比較して小さいことである。小さい鼻孔は、空気流を制限し、呼吸努力を増大させる。狭いのど通路は、容易に乾燥し過敏性となり得、ウイルスおよび細菌が侵入するのを可能にする。
【0010】
ウシ呼吸器疾患(BRD)の発生に寄与する多くの生物体が存在する。ウイルス存在物としては、ウシ感染性鼻気管炎(IBR)、ウシウイルス性下痢症(BVD)、ウシ呼吸器合胞体ウイルス(BRSV)、およびパラインフルエンザウイルス(Ply)がある。BRDに関与する細菌としては、パスツレラ ヘモリチカ(Pasteurella hemolytica)、パスツレラ マルトシダ(Pasteurella multo-cida)、ヘモフィルス ソムナス(Haemophilus somnus)、マイコプラズマ(Mycoplasma)およびアクチノマイセス ピオゲネス(Actinomyces pyogenes)がある。
【0011】
BRDに典型的に関連する複雑な1連の事象が発生する。子ウシは、離乳、輸送、処置、悪天候および過密によってストレスを受ける。このストレスは、免疫系の防御メカニズムを悪化させる。ウイルスは、弱まった免疫防壁のために鼻および肺を侵す。ウイルスは、上部気道の上皮を損傷し、粒子(細菌、粉塵、黴、および花粉)を肺から払拭する粘膜繊毛装置の有効性を損なう。この繊毛クリアランスの欠如は、正常呼吸器常在菌および細菌性病原体の過増殖を可能にする。二次侵入細菌は、移入し、増殖し、疾患を適切に検知し治療しない場合には潜在的に死に至り得る。
【0012】
BRDの予防は、治療よりもはるかに成功裏に且つ経済的に実施可能である。理想的な処置プロトコールは、適切な免疫応答の発現を可能とし且つ輸送前ストレスを最低限にするためのこれらの子ウシの輸送2週間前のワクチン接種を含むべきである。子ウシは、その送り先に到着した時点で1回ブースターワクチン接種を受けるべきである。ワクチン接種は、健常免疫系における免疫応答を単に誘発させるだけである。免疫不全状態にある動物は、この応答を重度に阻害する。
【0013】
BRDの原因因子の特定は、多くの場合、困難で且つ挫折的であり得る。通常、剖検によって、二次細菌感染、即ち、パスツレラ ヘモリチカの特徴を示す病変は明らかになる。一次ウイルス因子の特徴を示す病変は、多くの場合、死亡時の細菌因子の病変のために存在しない。ウイルス分離の試みは、通常否定的である。これらの動物の死亡前の抗生物質治療は、細菌分離の可能性を妨げると共に、感受性試験に影響を及ぼし得る。
【0014】
ウシにおけるウシ呼吸器疾患の有効な治療が求められている。増強された有効性を有する新規な抗生物質製剤は、この長年に亘る要求に対処するのを助けるであろう。ある場合には、病原体に対する改良された有効性を有する製剤を製造するために、抗炎症剤が抗生物質製剤と成功裏に併用されている。1つのそのような非ステロイド系抗炎症剤であるケトプロフェンは、ウシ呼吸器疾患の治療におけるセフチオフルセファロスポリン抗生物質に対するアジュバントとして使用し得る。しかしながら、本出願を出願した時点で本出願人が知る限りにおいて、セフチオフルとケトプロフェンの両活性剤を含む適切に有効な製剤は製造されていなかった。両活性成分を含有する単回注射製品を入手し得ることは、複数回注射の必要性を減じ、有益であると理解する。
【0015】
上記各出願、およびこれらの出願においてまたはこれら出願の手続き中に引用された全ての文献(“出願引用文献”)および上記出願引用文献において引用または参照された全ての文献;並びに、本明細書において引用または参照した全ての文献(“本明細書において引用した文献”)、および本明細書において引用した文献において引用または参照された全ての文献は、本明細書においてまたは本明細書に参考として合体させる文献において説明されているあらゆる製品についてのあらゆる製造業者の使用説明書、説明書、製品明細書および製品シートと一緒に、本明細書に参考として合体させ、また、本発明の実施において使用し得る。
本出願におけるいずれの文献の引用または確認も、そのような文献が本発明に対する従来技術として利用し得ることの容認ではない。
【発明の概要】
【0016】
本発明は、ウシ呼吸器疾患の治療または予防において有用である、ベンジルアルコールと組合せたセフチオフルまたはセフチオフルとケトプロフェンの組合せを含む製剤を提供する。第1の局面においては、本発明は、一部において、ベンジルアルコールの油性セフチオフルHCl製剤への添加が、ベンジルアルコールを含まない油性セフチオフルHCl製剤と比較したときにより容易に再懸濁させることのできる凝集懸濁液を生じるという本出願人等の発見に基く。
【0017】
第1の局面の1つの実施態様においては、本発明は、(a) セフチオフル、(b) 少なくとも1種の湿潤または分散剤、(c) 少なくとも1種の凝集剤または少なくとも1種の再懸濁性増強剤(resuspendability enhancer)、および(e) 生体適合性オイルビヒクルを含み得、上記凝集剤または再懸濁性増強剤はベンジルアルコールを含む。
第1の局面のもう1つの実施態様においては、セフチオフルは、有利には、セフチオフルHClである。ある実施態様においては、セフチオフルは、約0.01%(質量/容量)〜約10%(質量/容量)の量で存在し得る。さらに有利な実施態様においては、セフチオフルは、HCl塩として、約5%(質量/容量)の量で存在し得る。好ましくは、セフチオフルは、HCl塩として、約5.35%(質量/容量)の量で存在し得る。
【0018】
第1の局面のもう1つの実施態様においては、上記湿潤または分散剤は、水素化ホスファチジルコリン、水素化リソホスファチジルコリン、モノ〜ジグリセリド(mono-diglyceride)、プロピレングリコール、トリグリセリドまたはこれらの組合せを含み得る。上記湿潤または分散剤は、製剤の総容量基準で約0.01%(質量/容量)〜約1%(質量/容量)の量で存在し得る。さらに典型的には、上記湿潤または分散剤は、約0.01%(質量/容量)〜約0.5%(質量/容量)、約0.01%(質量/容量)〜約0.1%(質量/容量)、または約0.05%(質量/容量)〜約0.2%(質量/容量)の量で存在し得る。好ましくは、上記湿潤または分散剤は、約0.05%(質量/容量)の量で存在し得る。有利には、上記湿潤または分散剤は、PHOSPHOLIPON 90Hを含み得る。1つの実施態様においては、PHOSPHOLIPON 90Hは、約0.01%(質量/容量)〜約0.1%(質量/容量)の量、さらにより有利には約0.05%(質量/容量)で存在し得る。
【0019】
第1の局面のもう1つの実施態様においては、上記湿潤または分散剤は、ソルビタンモノオレートを含み得る。ある実施態様においては、上記製剤は、ソルビタンモノオレートを約0.01%(質量/容量)〜約1%(質量/容量)、約0.01%(質量/容量)〜約0.3%(質量/容量)、さらに有利には約0.15%(質量/容量)の量で含み得る。
【0020】
第1の局面のさらにもう1つの実施態様においては、上記凝集剤または再懸濁性増強剤は、プロピレングリコールを含み得る。プロピレングリコールは、典型的には、約0.01%(質量/容量)〜約5%(質量/容量)の量で存在する。さらに典型的には、プロピレングリコールは、約0.01%(質量/容量)〜約1%(質量/容量)または約0.01%(質量/容量)〜約0.5%(質量/容量)の量で存在し得る。有利には、プロピレングリコールは、約0.25(質量/容量)の量で存在し得る。
第1の局面の有利な実施態様においては、ベンジルアルコールは、約0.05%(質量/容量)〜約10%(質量/容量)、より有利には約0.5%(質量/容量)〜約5%(質量/容量)の量で存在し得る。特に、ベンジルアルコールは、約1%(質量/容量)、約2%(質量/容量)または約3%(質量/容量)の量で存在し得る。
【0021】
もう1つの実施態様においては、本発明の製剤は、クロロブタノールを含み得る。ある実施態様においては、クロロブタノールは、約0.01%(質量/容量)〜約10%(質量/容量)の量で存在し得る。さたに典型的には、上記製剤は、クロロブタノールを約0.1%(質量/容量)〜約5%(質量/容量)、約0.1%(質量/容量)〜約1%(質量/容量)の量で含み得る。好ましくは、上記製剤は、クロロブタノールを約0.5%(質量/容量)の量で含有し得る。
第1の局面のもう1つの有利な実施態様においては、上記生体適合性オイルビヒクルは、綿実油を含み得る。
【0022】
第1の局面のもう1つの有利な実施態様においては、本発明は、(a) セフチオフルHCl、(b) ベンジルアルコール、(c) PHOSPHOLIPON 90H、(d) ソルビタンモノオレート、(e) プロピレングリコールおよび(f) 綿実油を含み得る製剤に関する。
第1の局面の特定の有利な実施態様においては、本発明は、(a) セフチオフルHClが約5.35%(質量/容量)の量で存在し得、(b) ベンジルアルコールが約1%(質量/容量)〜約3%(質量/容量)の量で存在し得、(c) PHOSPHOLIPON 90Hが約0.05%(質量/容量)の量で存在し得、(d) ソルビタンモノオレートが約0.15%(質量/容量)の量で存在し得、(e) プロピレングリコールが約0.25%(質量/容量)の量で存在し得、そして、(f) 綿実油が約100%(質量/容量)までの量で存在し得る製剤に関する。
【0023】
第2の局面においては、本発明は、オイル系製剤(oil based formulation)の再懸濁性の改良方法にも関し、この方法は、ベンジルアルコールを上記オイル系製剤に添加し、それによって再懸濁性を改良することを含む。有利には、上記オイル系製剤は、セフチオフル製剤であり得る。
【0024】
第3の局面においては、本発明は、一部では、有効量のセフチオフルとケトプロフェンを含む製剤が、ウシにおいて、ウシ呼吸器疾患(BRD)の治療および/または予防において有効であるという本出願人等の発見に基く。
第3の局面の第1の実施態様においては、本発明は、(a) セフチオフルと(b) ケトプロフェンを含み得る製剤に関する。
第3の局面のもう1つの実施態様においては、本発明は、(a) セフチオフル、(b) ケトプロフェン、(c) 湿潤および/または分散剤(1種以上)、(d) 防腐剤、(e) 凝集剤または再懸濁性増強剤および(f) 生体適合性オイルビヒクルを含み得る製剤に関する。
【0025】
第3の局面のもう1つの実施態様においては、セフチオフルは、セフチオフルHClである。
第3の局面のさらにもう1つの実施態様においては、セフチオフルは、約0.01%(質量/容量)〜約10%(質量/容量)、約1%(質量/容量)〜約8%(質量/容量)、有利には約2%(質量/容量)〜約7%(質量/容量)、より有利には約5%(質量/容量)の量で存在し得る。ケトプロフェンは、約0.01%(質量/容量)〜約30%(質量/容量)、約5%(質量/容量)〜約25%(質量/容量)、有利には約10%(質量/容量)〜約20%(質量/容量)、より有利には約15%(質量/容量)の量で存在し得る。
第3の局面のもう1つの実施態様においては、上記湿潤または分散剤は、水素化ホスファチジルコリン、水素化リソホスファチジルコリン、モノ〜ジグリセリド、プロピレングリコール、トリグリセリドまたはこれらの組合せを含み得る。第3の局面のもう1つの実施態様においては、上記湿潤または分散剤の1つは、ソルビタンモノオレートを含み得る。各種の実施態様においては、上記湿潤または分散剤は、本発明の第1の局面について上記で説明した量に従う量で存在し得る。
【0026】
第3の局面のさらにもう1つの実施態様においては、上記防腐剤は、ベンジルアルコールまたはクロロブタノールを含み得る。
第3の局面のさらにもう1つの実施態様においては、上記凝集剤または再懸濁性増強剤は、プロピレングリコールを含み得る。
第3の局面のもう1つの実施態様においては、上記生体適合性オイルビヒクルは、カプリル酸のエステル、カプリン脂肪酸のエステル、プロピレングリコール、またはこれらの組合せを含み得る。有利には、上記生体適合性オイルは、MIGLYOL 840であり得る。
各種実施態様においては、上記のベンジルアルコール、クロロブタノール、プロピレングリコール、カプリル酸のエステルまたはカプリン脂肪酸のエステル、およびMIGLYOL 840は、上記製剤において、本発明の第1の局面について上記で説明したのと同じ量で存在し得る。
【0027】
第3の局面の1つの有利な実施態様においては、本発明は、(a) セフチオフル、(b) ケトプロフェン、(c) PHOSPHOLIPON 90H、(d) ベンジルアルコールまたはクロロブタノール、(e) ソルビタンモノオレート、(f) プロピレングリコールおよび(g) MIGLYOL 840を含み得る製剤にも関する。
第3の局面のもう1つの実施態様においては、本発明は、(a) セフチオフルが約5%(質量/容量)の量で存在し得、(b) ケトプロフェンが約15%(質量/容量)の量で存在し得、(c) PHOSPHOLIPON 90Hが約0.05%(質量/容量)の量で存在し得、(d) ベンジルアルコールが約1%(質量/容量)の量で存在し得、および/またはクロロブタノールが約0.5%(質量/容量)の量で存在し得、(e) ソルビタンモノオレートが約0.15%(質量/容量)の量で存在し得、(f) プロピレングリコールが約0.25%(質量/容量)の量で存在し得、そして、(g) MIGLYOL 840が約100%(質量/容量)までの量で存在し得る製剤に関する。
【0028】
第4の局面においては、本発明は、畜産動物を処置してウシ呼吸器疾患または他の関連呼吸器障害を治療または予防する方法にも関し、この方法は、畜産動物に上記で開示した製剤のいずれか1つを投与することを含み得る。
本発明の第4の局面の1つの実施態様においては、投与は、注射であり得る。
本発明の第4の局面のさらにもう1つの実施態様においては、上記製剤を、約1mg/kgまでのセフチオフル量および約3mg/kgまでのケトプロフェン量で投与し得る。投与は、3〜5日間1日1回、その後は、必要に応じてであり得る。
【0029】
本開示においては、特に、特許請求の範囲および/または各パラグラフにおいては、“含む(comprises)”、“含む(comprised)”、“含む(comprising)”等のような用語は、米国特許法における用語に帰属する意味を有し得る;例えば、これらの用語は、“含む(includes)”、“含む(included)”、“含む(including)”等を意味し得ること;および、“から本質的になる(consisting essentially of)”および“から本質的になる(consists essentially of)”のような用語は、米国特許法における用語に属する意味を有する;例えば、これらの用語は、明記されていない要素は許容しないが、従来技術において見出せるまたは本発明の基本的なまたは新規な特徴に影響を与える要素は包含することに留意されたい。
これらおよび他の実施態様は、詳細な以下の説明によって開示されており、或いは以下の説明から明白であり、また、以下の説明に含まれている。
以下の詳細な説明は、例として示しており、本発明を、説明する特定の実施態様にのみ限定するものではないが、添付図面と併せれば、最良に理解し得るであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】製造方法の概略のダイアグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、セフチオフル、ケトプロフェンと組合せたセフチオフルを含む製剤、およびベンジルアルコールと組合せたセフチオフルを含む製剤を提供する。ベンジルアルコールと組合せたセフチオフルまたはセフチオフルとケトプロフェンを含む製剤は、改良された凝集特性を有し、再懸濁させるのが実質的に容易である。セフチオフルとケトプロフェンを含む製剤は、ウシ呼吸器障害、特に、ウシ呼吸器疾患(BRD)の治療および/または予防において改良された有効性をもたらす。
【0032】
セフチオフルは、セファロスポリン抗生物質であり、例えば、気道の細菌感染を制御するためにウシまたはブタに筋肉内または皮下注射によって投与し得る。セフチオフルは、中性化合物としてまたは製薬上または獣医学上許容し得る塩として投与し得る。好ましい実施態様においては、本発明の製剤は、下記のセフチオフルHClを含む:
【化1】


分子式:C19H17N5O7S3 HCl
分子量:560.03
CAS登録番号:103980‐44‐5
【0033】
1つの実施態様においては、筋肉内注射によってウシに投与するセフチオフルの投与量は、動物の体重に従い、約0.1mg/kg〜約5mg/kgであり得る。ある種の他の実施態様においては、この投与方式によってウシに投与するセフチオフルの投与量は、3日間1日1回で、約0.1mg/kg、約0.2mg/kg、約0.3mg/kg、約0.4mg/kg、約0.5mg/kg、約0.6mg/kg、約0.7mg/kg、約0.8mg/kg、約0.9mg/kg、約1.0mg/kg、約1.1mg/kg、約1.2mg/kg、約1.3mg/kg、約1.4mg/kg、約1.5mg/kg、約1.6mg/kg、約1.7mg/kg、約1.8mg/kg、約1.9mg/kg、約2.0mg/kg、約2.1mgまたは約2.2mg/kgであり得る。
【0034】
セフチオフルHClは、商業的に入手可能であり、例えば、Orchid Chemical社またはPharmaceuticals Ltd社またはHisun Pharmaceutical Co. Ltd社のような種々の供給元から供給されている。セフチオフルの製薬上許容し得る塩としては、限定するものではないが、ナトリウム塩、塩酸塩または臭化水素酸塩がある。
【0035】
ケトプロフェンは、非ステロイド系抗炎症剤であり、ウシ呼吸器疾患の治療におけるセフチオフルセファロスポリン抗生物質に対するアジュバントとして使用し得る。両活性成分を含有する単回注射製品を入手し得ることは、複数回注射の必要性を減じ、有益であると理解する。
ケトプロフェンは、ウシにおいては、例えば、静脈内または筋肉内注射によって投与し得る。
【化2】


*は、キラル中心を示す
分子式:C16H14O3
分子量:254.3
CAS登録番号:22071‐15‐4
【0036】
本出願は、セフチオフルとケトプロフェンとの全ての製薬上または獣医学上許容し得る酸または塩基塩剤形を意図する。用語“酸”は、全ての製薬上または獣医学上許容し得る無機または有機酸を意図する。無機酸としては、臭化水素酸および塩酸のようなハロゲン化水素酸、硫酸、リン酸および硝酸のような鉱酸がある。有機酸としては、全ての製薬上または獣医学上許容し得る脂肪族、脂環式および芳香族のカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、並びに脂肪酸がある。好ましい酸は、直鎖または枝分れの、必要に応じてハロゲンまたはヒドロキシル基によって置換した飽和または不飽和のC1〜C20脂肪族カルボン酸、或いはC6〜C12芳香族カルボン酸である。そのような酸の例は、炭酸、ギ酸、フマル酸、酢酸、プロピオン酸、イソプロピオン酸、吉草酸、グリコール酸および乳酸のようなα‐ヒドロキシ酸、クロロ酢酸、安息香酸、メタンスルホン酸およびサリチル酸である。ジカルボン酸の例としては、シュウ酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸、およびマレイン酸がある。トリカルボン酸の例は、クエン酸である。脂肪酸としては、4〜24個の炭素原子を有する全ての製薬上または獣医学上許容し得る飽和または不飽和の脂肪族または芳香族カルボン酸がある。例としては、酪酸、イソ酪酸、sec‐酪酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸およびフェニルステリン酸(phenylsteric acid)がある。他の酸としては、グルコン酸、グリコヘプタン酸およびラクトビオン酸がある。
【0037】
用語“塩基”は、全ての製薬上または獣医学上許容し得る無機または有機塩基を意図する。そのような塩基としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウムまたはカルシウム塩のようなアルカリ金属およびアルカリ土類金属の塩がある。有機塩基としては、例えば、モルホリンおよびピペリジン塩のような一般的なヒドロカルビルおよび複素環アミン塩がある。
これらの化合物のエステルおよびアミド誘導体も、必要に応じて、意図し得る。
【0038】
各種の実施態様においては、セフチオフルは、上記製剤中に、約0.01%(質量/容量)〜約10%(質量/容量)、約1%(質量/容量)〜約8%(質量/容量)、有利には約2%(質量/容量)〜約7%(質量/容量)、より有利には約5%(質量/容量)の量で存在し得る。
【0039】
1つの実施態様においては、筋肉内注射によってウシに投与するケトプロフェンの投与量は、動物の体重に従い、約0.1mg/kg〜約10mg/kgであり得る。他の実施態様においては、筋肉内注射によってウシに投与するケトプロフェンの投与量は、3日間1日1回で、約1.0mg/kg、約1.1mg/kg、約1.2mg/kg、約1.3mg/kg、約1.4mg/kg、約1.5mg/kg、約1.6mg/kg、約1.7mg/kg、約1.8mg/kg、約1.9mg/kg、約2.0mg/kg、約2.1mg/kg、約2.2mg/kg、約2.3mg/kg、約2.4mg/kg、約2.5mg/kg、約2.6mg/kg、約2.7mg/kg、約2.8mg/kg、2.9mg/kg、約3.0mg、約3.1mg/kg、約3.2mg/kg、約3.3mg/kg、約3.4mg/kg、約3.5mg/kg、約3.6mg/kg、約3.7mg/kg、約3.8mg/kg、約3.9mg/kg、約4.0mg/kg、約4.1mg/kg、約4.2mg/kgまたは約4.3mg/kgであり得る。
【0040】
ケトプロフェンは、商業的に入手可能であり、例えば、Zhejang Jiuzhou Pharmaceutical Company社、Jinan Haohua Industry Co., Ltd社、King Tang Chemical Group Industry Co., Ltd社、Greatvista Chemicals社、Boehringer Ingelheim- Biopharmaceuticals社、LKT Laboratories社、Sigma-Aldrich社、Difco Microbiology Products社、Glaxosmithkline Pharmaceuticals S.A社または他の供給元から供給されている。
【0041】
第1の局面においては、本発明は、従来技術の製剤と比較して優れた再懸濁性を示す、セフチオフルとベンジルアルコールを含む改良されたオイル系製剤を提供する。
第1の局面の1つの実施態様においては、本発明は、(a) セフチオフル、(b) 少なくとも1種の湿潤または分散剤、(c) 少なくとも1種の凝集剤および/または少なくとも1種の再懸濁性増強剤、および(e) 生体適合性オイルビヒクルを含み得る製剤に関し、上記凝集剤(1種以上)または再懸濁性増強剤(1種以上)は、ベンジルアルコールを含む。
【0042】
ベンジルアルコールは、その極性、低毒性および低蒸気圧故に、有用な溶媒であり、また、静脈内医薬品溶液に、その静菌および止痒特性故に、防腐剤として一般的に添加されている。
【化3】


分子式:C7H8O
分子量:108.14
CAS登録番号:100‐51‐6
【0043】
また、本発明は、ベンジルアルコール以外の他の芳香族アルコールも意図する。一般に、芳香族アルコール化合物は、芳香族成分に結合したヒドロキシル基を含有する。ある場合には、ヒドロキシル基は、限定するものではないがフェニルまたは置換フェニル基、ナフチルおよび置換ナフチル基等のような芳香族基に直接結合させ得る。他の化合物においては、ヒドロキシル基は、芳香環に、アルキレン基のようなリンカー成分によって結合させ得る。両タイプの適切な芳香族アルコールは、本発明に包含される。フェノールは、理論的には芳香族アルコールであるものの、本発明においては意図しない。
【0044】
セフチオフル塩酸油性懸濁液は、凝集懸濁液である。水性懸濁液においては、凝集は、ゼータ電位を低下させ、そして、引力が反発力を超えたときに生じる。ベンジルアルコールは、凝集過程に関与し得る(米国特許第3,457,348号)。この特許は、ヒドロキシ防腐剤のノニオン性界面活性剤との相互作用に関し、オイル系製剤における凝集過程へのベンジルアルコールの関与には触れていない。
【0045】
ベンジルアルコールを含む本発明の製剤は、改良された凝集、即ち、沈降速度の低下を示す。沈降速度に影響を与えることが知られている要因は、下記である:
・粒度および形状
・分散相と分散媒との密度の相違
・分散媒の粘度。
ベンジルアルコールが沈降速度を低下させるためには、ベンジルアルコールは、フロックを、フロックの大きさまたはフロックの多孔度のいずれかによる何らかの方法で変化させなければならない。
第1の局面の有利な実施態様においては、ベンジルアルコールは、約0.05%(質量/容量)〜約10%(質量/容量)、より有利には約0.5%(質量/容量)〜約5%(質量/容量)の量で存在し得る。特に、ベンジルアルコールは、本発明の製剤中に、約1%(質量/容量)、約2%(質量/容量)または約3%(質量/容量)の量で存在し得る。
【0046】
ある実施態様においては、本発明の製剤は、当該技術において既知の湿潤または分散剤を含む。1つの実施態様においては、上記湿潤または分散剤(1種以上)としては、限定するものではないが、水素化ホスファチジルコリン、水素化リソホスファチジルコリン、モノ〜ジグリセリド、プロピレングリコール、トリグリセリドまたはこれらの組合せがある。上記湿潤または分散剤は、製剤の総容量基準で約0.01%(質量/容量)〜約1%(質量/容量)の量で存在し得る。さらに典型的には、上記湿潤または分散剤は、約0.01%(質量/容量)〜約0.5%(質量/容量)、約0.01%(質量/容量)〜約0.1%(質量/容量)、または約0.05%(質量/容量)〜約0.2%(質量/容量)の量で存在し得る。好ましくは、上記湿潤または分散剤は、約0.05%(質量/容量)の量で存在し得る。有利には、上記湿潤または分散剤は、本発明の1つの実施態様においては、PHOSPHOLIPON 90Hを含み得る。
【0047】
レシチン PHOSPHOLIPON 90Hは、Phospholipid GmbH社から供給されており、最低で90.0%の水素化ホスファチジルコリン、最高で4.0%の水素化リソホスファチジルコリン、および最高で2%のオイルまたはトリグリセリドを含有する。
また、限定するものではないが、PHOSPHOLIPON 90G、PHOSPHOLIPON 80HおよびPHOSPHOLIPON 85Gのような、PHOSPHOLIPONRシリーズにおける他の高純度ホスファチジルコリン画分(American Lecithin Company社によって製造されている)も本発明において意図し得る。
【0048】
もう1つの実施態様においては、上記湿潤または分散剤の1つは、ソルビタンモノオレートを含み得、このソルビタンモノオレートは、約0.01%(質量/容量)〜約1%(質量/容量)、約0.01%(質量/容量)〜約0.3%(質量/容量)、さらに有利には約0.15%(質量/容量)の量で存在し得る。ある実施態様においては、適切なソルビタンモノオレートとしては、例えば、ARLACEL 80およびCRILL 4がある。
【0049】
限定するものではないが、1,4‐アンヒドロ‐D‐グルシトール、6‐(9‐オクタデセノエート、ALKAMULS SMO、アンヒドロソルビタトールモノオレート、ARLACEL 80、ARMOTAN MO、ATMER 05、CRILL 4、D‐グリシトール、1,4‐アンヒドロ‐6‐(9‐オクタデセノエート)、DEHYMULS SMO、DISPONIL 100、EMASOL 410、EMASOL O 10、EMASOL O 10F、EMSORB 2500、G 946、GLYCOMUL O、IONET S‐80、KEMMAT S 80、KOSTERAN O 1、LONZEST SMO、ML 55F、MO 33F、モノデヒドロソルビトールモノオレート、MONTAN 80、MONTANE 80 VGA、NEWCOL 80、NIKKOL SO 10、NIKKOL SO‐15、Nissan NONION OP 80R、NONION OP80R、O 250、Oleate de SORBITAN [INN‐French]、OLEATO DE SORBITANO [INN‐Spanish]、RADIASURF 7155、RHEODOL AO 10、RHEODOL SP‐O 10、RIKEMAL O 250、S 270、S 271 (界面活性剤)、S 80、S‐MAX 80、SORBESTER P 17、SORBITANエステル類、モノ(Z)‐9‐オクタデセノエート、SORBITANモノオレート、SORBITANモノオレート [USAN:BAN]、SORBITANモノオレイン酸エステル、SORBITAN O、SORBITAN OLEATE、SORBITAN、モノ‐(9Z)‐9‐オクタデセノエート、SORBITAN、モノ‐9‐オクタデセノエート、SORBITAN、モノ‐9‐オクタデセノエート、(Z)‐, SORBITAN、モノオレート、Sorbitani oleas [INN‐Latin]、SORBON S 80、SORGEN 40、SORGEN 40AおよびSPAN 80のようなソルビタンモノオレートに関連する化合物も本発明において意図する。
ある実施態様においては、本発明の製剤は、限定するものではないがレシチン、ソルビタンまたはグリセリンの脂肪酸エステルのような分散剤を含み得る。
【0050】
さらにもう1つの実施態様においては、上記製剤は、プロピレングリコールを含む凝集剤または再懸濁性増強剤を含み得る。プロピレングリコールは、典型的には、約0.01%(質量/容量)〜約5%(質量/容量)の量で存在する。さらに典型的には、プロピレングリコールは、約0.01%(質量/容量)〜約1%(質量/容量)または約0.01%(質量/容量)〜約0.5%(質量/容量)の量で存在し得る。有利には、プロピレングリコールは、約0.25(質量/容量)の量で存在し得る。
限定するものではないが、ポリオキシル水素化ヒマシ油、ポリオキシルヒマシ油、グリセリン、ポリオキシル水素化植物油、ポリオキシル植物油、グリセリン、ポリエチレングリコール、アルコール類等のような他の凝集剤または再懸濁性増強剤も本発明において意図する。
【0051】
1つの実施態様においては、上記生体適合性オイルビヒクルは、カプリル酸のエステル、カプリン脂肪酸のエステル、プロピレングリコールまたはこれらの組合せを含み得る。有利には、上記生体適合性オイルは、MIGLYOL 840である。
MIGLYOL 840は、カプリル酸とカプリン脂肪酸のエステル(ココナツ油およびパーム核油から得られる)およびプロピレングリコールからなる透明で中性のオイルである。MIGLYOL 840は、20℃で9〜12mPasの明細を有し、Sasol GmbH社から入手し得る特に低粘度のオイルである。
【0052】
もう1つの有利な実施態様においては、上記生体適合性オイルビヒクルは、綿実油を含み得る。
本発明が意図する他の生体適合性オイルとしては、限定するものではないが、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、中鎖コハク酸トリグリセリド、コーン油、綿実油、オリーブ油、ゴマ油、大豆油、サフラワー油、ココナツ油、ヒマワリ油、パーム油、ピーナツ油、コーン油、カプリル酸のエステル、カプリン脂肪酸のエステル、プロピレングリコールまたはこれらの組合せがある。
【0053】
本発明の第1の局面のもう1つの実施態様においては、上記製剤は、クロロブタノールを含み得る。ある実施態様においては、クロロブタノールは、約0.01%(質量/容量)〜約10%(質量/容量)の量で存在し得る。さらに典型的には、上記製剤は、クロロブタノールを約0.1%(質量/容量)〜約5%(質量/容量)、約0.1%(質量/容量)〜約1%(質量/容量)の量で含み得る。好ましくは、上記製剤は、クロロブタノールを約0.5%(質量/容量)の量で含有し得る。
【0054】
第1の局面のもう1つの有利な実施態様においては、本発明は、(a) セフチオフルHCl、(b) ベンジルアルコール、(c) PHOSPHOLIPON 90H、(d) ソルビタンモノオレート、(e) プロピレングリコールおよび(f) 綿実油を含み得る製剤に関する。
第1の局面の特に有利な実施態様においては、本発明は、(a) セフチオフルHClが約5.35%(質量/容量)の量で存在し得、(b) ベンジルアルコールが約1%(質量/容量)〜約3%(質量/容量)の量で存在し得、(c) PHOSPHOLIPON 90Hが約0.05%(質量/容量)の量で存在し得、(d) ソルビタンモノオレートが約0.15%(質量/容量)の量で存在し得、(e) プロピレングリコールが約0.25%(質量/容量)の量で存在し得、そして、(f) 綿実油が製剤の容量を100%に補完する量で存在し得る製剤に関する。
【0055】
第2の局面においては、本発明は、ベンジルアルコールをオイル系製剤に添加し、それによって再懸濁性を改良することを含むオイル系製剤の再懸濁性の改良方法にも関する。有利には、上記オイル系製剤は、セフチオフル製剤であり得る。
有利な実施態様においては、上記方法は、ベンジルアルコールを、上記製剤に、約0.05%(質量/容量)〜約10%(質量/容量)、より有利には約0.5%(質量/容量)〜約5%(質量/容量)の量で添加することを含み得る。他の実施態様においては、上記方法は、ベンジルアルコールを、上記製剤に、約1%(質量/容量)、約2%(質量/容量)または約3%(質量/容量)の量で添加することを含む。
【0056】
第3の局面においては、本発明は、ウシ呼吸器疾患(BRD)を治療および/または予防するのにウシにおいて有効である、セフチオフルとケトプロフェンの組合せを含む製剤を提供する。驚くべきことに、セフチオフルとケトプロフェンのある種の組合せがBRDの治療および/または予防において優れた有効性をもたらすことを見出した。
【0057】
第3の局面のもう1つの実施態様においては、本発明は、(a) セフチオフル、(b) ケトプロフェン、(c) 湿潤および/または分散剤(1種以上)、(d) 防腐剤、(e) 凝集剤または再懸濁性増強剤および(f) 生体適合性オイルビヒクルを含み得る製剤に関する。
第3の局面のもう1つの実施態様においては、セフチオフルは、セフチオフルHClである。
第3の局面のさらにもう1つの実施態様においては、セフチオフルは、約0.01%(質量/容量)〜約10%(質量/容量)、約1%(質量/容量)〜約8%(質量/容量)、有利には約2%(質量/容量)〜約7%(質量/容量)、より有利には約5%(質量/容量)の量で存在し得る。ケトプロフェンは、約0.01%(質量/容量)〜約30%(質量/容量)、約5%(質量/容量)〜約25%(質量/容量)、有利には約10%(質量/容量)〜約20%(質量/容量)、より有利には約15%(質量/容量)の量で存在し得る。
【0058】
第3の局面のある実施態様においては、上記製剤中の湿潤または分散剤は、本発明の第1の局面について上記で説明したセフチオフルとベンジルアルコールを含む製剤において使用したのと同じ湿潤または分散剤を含み得る。ある実施態様においては、上記湿潤または分散剤は、本発明の第1の局面について上記で説明したのと同じ量で使用し得る。例えば、ある実施態様においては、上記製剤は、水素化ホスファチジルコリン、水素化リソホスファチジルコリン、生体適合性オイル、トリグリセリド、PHOSPHOLIPON 90H、ソルビタンモノオレートまたはこれらの組合せを含み得る。
上記湿潤または分散剤は、製剤の総容量基準で約0.01%(質量/容量)〜約1%(質量/容量)の量で存在し得る。さらに典型的には、上記湿潤または分散剤は、約0.01%(質量/容量)〜約0.5%(質量/容量)、約0.01%(質量/容量)〜約0.1%(質量/容量)、または約0.05%(質量/容量)〜約0.2%(質量/容量)の量で存在し得る。好ましくは、上記湿潤または分散剤は、約0.05%(質量/容量)の量で存在し得る。
【0059】
第3の局面のもう1つの実施態様においては、上記湿潤または分散剤の1つは、ソルビタンモノオレートを含み得、このソルビタンモノオレートは、約0.01%(質量/容量)〜約1%(質量/容量)、約0.01%(質量/容量)〜約0.3%(質量/容量)、より有利には約0.15%(質量/容量)の量で存在し得る
【0060】
第3の局面のさらにもう1つの実施態様においては、上記製剤は、ベンジルアルコールまたはクロロブタノールを含み得る。有利には、ベンジルアルコールは、約0.01%(質量/容量)〜約10%(質量/容量)、または約0.5%(質量/容量)〜約5%(質量/容量)の量で存在し得る。さらに典型的には、ベンジルアルコールは、約1%(質量/容量)、約2%(質量/容量)または約3%(質量/容量)の量で存在し得る。
もう1つの実施態様においては、クロロブタノールは、約0.01%(質量/容量)〜約10%(質量/容量)の量で存在し得る。さらに典型的には、上記製剤は、クロロブタノールを約0.01%(質量/容量)〜約5%(質量/容量)、約0.1%(質量/容量)〜約1%(質量/容量)の量で含み得る。好ましくは、上記製剤は、クロロブタノールを約0.5%(質量/容量)の量で含み得る。
【0061】
第3の局面のさらにもう1つの実施態様においては、上記凝集剤または再懸濁性増強剤は、プロピレングリコールを含み得る。有利には、プロピレングリコールは、約0.01%(質量/容量)〜約2%(質量/容量)、約0.05%(質量/容量)〜約1%(質量/容量)、より有利には約0.25%(質量/容量)の量で存在し得る。
第3の局面のもう1つの実施態様においては、上記生体適合性オイルビヒクルは、カプリル酸のエステル、カプリン脂肪酸のエステル、プロピレングリコール、またはこれらの組合せを含み得る。有利には、上記生体適合性オイルは、MIGLYOL 840であり得る。
本発明の第3の局面の他の実施態様においては、上記製剤は、本発明の第1の局面のセフチオフルとベンジルアルコールを含む製剤について上記で説明している他の成分を含み得る。
【0062】
第3の局面の1つの有利な実施態様においては、本発明は、(a) セフチオフル、(b) ケトプロフェン、(c) PHOSPHOLIPON 90H、(d) ベンジルアルコールまたはクロロブタノール、(e) ソルビタンモノオレート、(f) プロピレングリコールおよび(g) MIGLYOL 840を含み得る製剤に関する。
第3の局面のもう1つの実施態様においては、本発明は、(a) セフチオフルが約5%(質量/容量)の量で存在し得、(b) ケトプロフェンが約15%(質量/容量)の量で存在し得、(c) PHOSPHOLIPON 90Hが約0.05%(質量/容量)の量で存在し得、(d) ベンジルアルコールが約1%(質量/容量)の量で存在し得、またはクロロブタノールが約0.5%(質量/容量)の量で存在し得、(e) ソルビタンモノオレートが約0.15%(質量/容量)の量で存在し得、(f) プロピレングリコールが約0.25%(質量/容量)の量で存在し得、そして、(g) MIGLYOL 840が約100%(質量/容量)までの量で存在し得る製剤に関する。
【0063】
第4の局面においては、本発明は、畜産動物のような動物におけるウシ呼吸器疾患または他の関連呼吸器障害の治療または予防方法に関し、この方法は、有効量の本発明の製剤を上記動物に投与することを含む。本明細書において説明する製剤は、注射、経口または局所(ポアオン(pour‐on))投与用に調合し得る。
本発明の第4の局面の1つの実施態様においては、上記製剤は、注射によって投与し得る。最終製品は多数回使用バイアル中の注射用製品であり得るので、滅菌性であることおよびその滅菌性を多数回チャレンジに関して保持し得ることの双方が必要である。油性懸濁液として、滅菌製品を製造する代替方法は、無菌製造またはガンマ線照射のいずれかによる。
【0064】
また、本発明は、上記製剤を、PIGJETR、AVIJETR、DERMOJETRまたはBIOJECTORR (Bioject社、米国オレゴン州)のようなニードルフリーインジェクターを使用して投与することも意図する。当業者であれば、上記インジェクターの仕様は、処置する動物の種類、動物の年齢および体重等のような要因に関連しての必要に応じて、必要以上に試験することなく調整し得るであろう。
もう1つの治療実施態様においては、治療は、ペースト、ポアオン、即使用(ready‐to‐use)、スポットオン(spot‐on)等タイプの製剤のような直接局所投与による。高めの量を動物の体内または体上に極めて長時間の放出において使用し得る。本発明に従う解決法は、それ自体既知の任意の手段を使用して、例えば、アプリケーターガンまたは計量用フラスコを使用して適用し得る。
【0065】
本発明の第4の局面のさらにもう1つの実施態様においては、上記製剤を、約1mg/kgまでのセフチオフル量および約3mg/kgまでのケトプロフェン量で投与し得る。投与は、3〜5日間1日1回、その後は、必要に応じてであり得る。
もう1つの実施態様においては、本発明は、投与量率が動物の生体重のkg当り約1mgのセフチオフルおよび3mgのケトプロフェンであり得る注射投与用に製剤化した組成物を提供する。セフチオフルとケトプロフェンが約1%(質量/容量)の量で存在する場合、例えば、注射用製剤は、動物の生体重の50kg当り1mlの量で投与し得る。特定の宿主および寄生生物に対する特定の投薬処方を決定することは、実施者の日常の熟練の範囲内である。
【0066】
本発明のセフチオフルを含有する組成物は、治療または予防のために、既知の方法によって連続して投与し得る。1つの実施態様においては、単回投与量としてまたは1〜5日間での分割投与量で投与される体重kg当り約0.001〜約50mgの投与量が満足し得るであろうが、勿論、より高めまたは低めの投与量範囲が適応され、本発明の範囲内であるような場合も存在する。特定の宿主および寄生生物に対する投薬処方を決定することは、実施者の日常の熟練の範囲内である。
1つの治療実施態様においては、治療は、動物に、単回の場合、約0.001〜約100mg/kgのセフチオフル或いは約0.1〜約200μg/kgまたは約100μg/kgの該化合物を含有する投与量を投与するように実施する。
【0067】
本発明のセフチオフルとケトプロフェンを含有する組成物は、治療または予防のために、既知の方法によって連続して投与し得る。一般的には、単回投与量としてまたは1〜5日間での分割投与量で投与される体重kg当り約1〜約20mgのセフチオフルとケトプロフェンの投与量が満足し得るであろうが、勿論、より高めまたは低めの投与量範囲が適応し、本発明の範囲内であるような場合も存在する。
【0068】
1つの実施態様においては、筋肉内注射によってウシに投与するセフチオフルの投与量は、動物の体重に従い、約0.1mg/kg〜約5mg/kgであり得る。ある種の他の実施態様においては、この投与方式によってウシに投与するセフチオフルの投与量は、3日間1日1回で、約0.1mg/kg、約0.2mg/kg、約0.3mg/kg、約0.4mg/kg、約0.5mg/kg、約0.6mg/kg、約0.7mg/kg、約0.8mg/kg、約0.9mg/kg、約1.0mg/kg、約1.1mg/kg、約1.2mg/kg、約1.3mg/kg、約1.4mg/kg、約1.5mg/kg、約1.6mg/kg、約1.7mg/kg、約1.8mg/kg、約1.9mg/kg、2.0mg/kg、約2.1mgまたは約2.2mg/kgであり得る。
【0069】
もう1つの実施態様においては、筋肉内注射によってウシに投与するケトプロフェンの投与量は、動物の体重に従い、約0.1mg/kg〜約10mg/kgである。他の実施態様においては、筋肉内注射によってウシに投与するケトプロフェンの投与量は、3日間1日1回で、約1.0mg/kg、約1.1mg/kg、約1.2mg/kg、約1.3mg/kg、約1.4mg/kg、約1.5mg/kg、約1.6mg/kg、約1.7mg/kg、約1.8mg/kg、約1.9mg/kg、約2.0mg/kg、約2.1mg/kg、約2.2mg/kg、約2.3mg/kg、約2.4mg/kg、約2.5mg/kg、約2.6mg/kg、約2.7mg/kg、約2.8mg/kg、2.9mg/kg、約3.0mg、約3.1mg/kg、約3.2mg/kg、約3.3mg/kg、約3.4mg/kg、約3.5mg/kg、約3.6mg/kg、約3.7mg/kg、約3.8mg/kg、約3.9mg/kg、約4.0mg/kg、約4.1mg/kg、約4.2mg/kgまたは約4.3mg/kgであり得る。
1つの治療実施態様においては、治療は、動物に、単回の場合、約1〜約20mg/kgのセフチオフルとケトプロフェンを含有する投与量を投与するように実施する。
【0070】
製剤の開発中に、製造した懸濁液の物理的特性の研究を、100mLの透明ガラスメスシリンダー内または100mLのガラスバイアル(透明または琥珀色のいずれか)内のいずれかで或いは多くの場合は双方内で保存した製剤によって実施した。提案されたパッケージングフォーマットは、ストッパー付きの100mLの透明タイプIガラスバイアルである。また、本発明は、別々のコンパートメント内の、動物への投与時に混合するセフチオフルとケトプロフェンとの投与も意図する。
【0071】
以下、本発明を、下記の非限定的な実施例によってさらに説明する。
実施例
【実施例1】
【0072】
セフチオフルHCl油性懸濁液の物理的性質に対するベンジルアルコールの効果

表1:1%ベンジルアルコールによってまたはベンジルアルコールなしで製造した試験バッチ

% w/v = %(質量/容量)
【0073】
矩形の100mL試験ボトル内での静置時の分離は、ベンジルアルコールを含むバッチにおけるよりもベンジルアルコールを含まない製剤におけるほうが多いことを観察した。この結果は、驚くべきことで且つ予期に反していた。
【0074】
初期観察は、100mL矩形試験ボトル内での4日間での分離を明らかにした。沈降容量Fは、懸濁液の総容量Voに対する沈降物の平衡容量Vuの比である。従って、F = Vu/Voである。沈降物によって占められているように見える懸濁液の容量は増大するので、通常ほぼ0〜1の範囲にあるFの値は上昇する。例えば、F = 0.75である系においては、容器内の総容量の75%は、明らかに、沈降物を形成するゆるい多孔質のフロックによって占められる。F = 1の場合、系が凝集するにしても、沈降物は見られない。この系は、これらの条件では沈降は生じないことから、理想的な懸濁液である。沈降容量(%)は、[(沈降物の容量×100)]/(総容量)]に等しい。

表2:4日間での沈降

【0075】
試験を、0%対1%のベンジルアルコールによって行った。100mLのメスシリンダー内で静置時の沈降容量(%)を下記の表3に要約している。

表3:沈降容量(%) = [(沈降物の容量×100)]/(総容量)]

NR = 記録無し
【0076】
100mLの丸型注入バイアル内で静置時の沈降容量を下記の表4に要約している。下記の表5は、特定容量の懸濁液を装填したフォードカップ No.4の基部のオリフィスからの流速を判定することによって測定したときの流速を示している。表5の結果は、ベンジルアルコールの存在が懸濁液の粘度に対して影響を与えないことを実証している。

表4:沈降容量(%) = [(沈降物の容量×100)]/(総容量)]

NR = 記録無し

表5:フォードカップ No.4内での流速

【0077】
遠心分離・再懸濁試験を次のようにして行った:8mLを10mLの丸底チューブに導入した。チューブを遠心分離機内に1000rpmにて15分間置いた。以下の測定値を記録した:沈降物の容量および生成物の再懸濁時間(チューブの底に痕跡量の残留物も残さない)。沈降後、再懸濁を、チューブを水平に保持し且つ秒当り3回の前後移動を可能にして、5秒間隔で行った。

表6:遠心分離・再懸濁試験

【0078】
また、注射針通過性および注入性試験も行った。2mLのサンプルを、反転させた注入バイアルから18ゲージ針により3mLのシリンジに吸引した。その後、シリンジの内容物を排出した。注射針通過性および注入性は、許容し得ていた。試験をガラスシリンジによって繰返した。注射針通過性と注入性の双方は、ガラスによって改良していた。
要約するに、静置時の沈降は、ベンジルアルコールを含まない製剤における方が1%のベンジルアルコールを含有する製剤におけるよりも速い。遠心分離および再懸濁試験は、再懸濁時間が、1%のベンジルアルコールを含有する製剤の方で速かったことを示していた。フォードカップ流速は、ベンジルアルコールによって有意に影響を受けていない。バッチAとバッチB間で注射針通過性と注入性における変化はなかった。
【0079】
その後、バッチを、0、1.0、2.0および3.0%のベンジルアルコールによって製造した。100mLのメスシリンダー内での静置時の沈降容量を下記の表7に要約している。

表7:沈降容量(%) = [(沈降物の容量×100)]/(総容量)]

【実施例2】
【0080】
ベンジルアルコール含有セフチオフルバッチとEXCENELR RTUとの比較
セフチオフル製剤を0、1.0、2.0および3.0%のベンジルアルコールによって製造し(それぞれ、バッチE〜H)、これらバッチの物理的性質を、Pfizer社によって製造されており、ベンジルアルコールを含有していないEXCENELR RTU滅菌懸濁液(セフチオフル塩酸)の物理的性質と比較した。100mLのメスシリンダー内での静置時の沈降容量を測定した。沈降容量(%) = [(沈降物の容量×100)]/(総容量)]であり、結果を下記の表8に要約している。

表8:沈降容量(%) = [(沈降物の容量×100)]/(総容量)]

NR = 記録無し
【0081】
100rpmのブルックフィールドLV 2内での粘度を測定した;結果は、下記の表9に要約している。

表9:粘度

【0082】
遠心分離・再懸濁試験を次のようにして行った:8mLを10mLの丸底チューブに導入した。チューブを遠心分離機内に1000rpmにて15分間置いた。以下の測定値を記録した:沈降物の容量および製剤の再懸濁時間(チューブの底に痕跡量の残留物も残さない)。沈降後、再懸濁を、チューブを水平に保持し且つ秒当り3回の前後移動を可能にして、5秒間隔で行った。結果は、下記の表10に要約している。

表10:遠心分離・再懸濁試験

【0083】
また、注射針通過性および注入性試験も行った。2mLのサンプルを、反転させた注入バイアルから18ゲージ針により3mLのシリンジに吸引した。その後、シリンジの内容物を排出した。注射針通過性および注入性は、下記の表11に示しているように許容し得ていた。

表11:注射針通過性および注入性試験

【0084】
要約するに、沈降は、ベンジルアルコールを本発明に従う製剤に含ませない場合の方が速い。また、沈降容量も、ベンジルアルコールを本発明に従う製剤に含ませない場合の方が小さい。遠心分離および再懸濁試験は、再懸濁時間がベンジルアルコールを含む製剤の方で速いことを示している。ベンジルアルコールの製剤への添加による粘度値の有意の差異はなかった。全ての製剤の注射針通過性および注入性は、許容し得ていた。
【0085】
セフチオフル塩酸油性懸濁液は、凝集懸濁液である。凝集懸濁液は、限定するものではないが、以下の特性を含む:1) 懸濁液中の粒子は、ゆるい集合体の形にある、2) 沈降物は、比較的に速く形成される、3) 沈降物は、ゆるく密集しており、互いに緊密には結合していない、4) ハードケーキは形成されない、5) 沈降物は、小量の撹拌によって容易に再分散する、6) 圧力分布および粘度は、生成物の深さ全体に亘って一貫している。
ベンジルアルコールを含むまたは含まない上記製剤において得られた試験データからは、ベンジルアルコールが凝集に対して驚くべき且つ予期に反した効果を有することが観察されている。ベンジルアルコールは、沈降率を低下させ、再懸濁率を改良する。
【実施例3】
【0086】
セフチオフルHClとケトプロフェンの併用油性懸濁液の製剤開発
以下は、5.0%(質量/容量))のセフチオフルと15.0%(質量/容量)のケトプロフェンを含有し、筋肉内および皮下注射に適する安定で容易に再懸濁可能であるセフチオフルHClとケトプロフェンの併用注射用油性懸濁液の開発を要約する。所望製剤は、5.0%のセフチオフルHClと、賦形剤、即ち、PHOSPHOLIPON 90H、ソルビタンモノレート、プロピレングリコールおよびベンジルアルコールとを精製綿実油ビヒクル中に含む。エタノールを賦形剤として上記原セフチオフルHCl注射用製剤中に混入させる試みを行った。
【0087】
製剤1
目的:種々の濃度のベンジルアルコールおよびエタノールの添加を比較する。注:ケトプロフェンを含まない。
サブバッチは、下記の量のベンジルアルコールとエタノールを含んでいた:
1:15%ベンジルアルコール/0%エタノール
2:10%ベンジルアルコール/0%エタノール
3:0%ベンジルアルコール/0%エタノール
4:5%ベンジルアルコール/10%エタノール。
【0088】
方法:170mLのセフチオフルHCl懸濁液を、下記の表12に従って製造した。適量のベンジルアルコール、エタノールおよび/または総計7.5mLの綿実油を、42.5mLの上記懸濁液に添加した。成分量は、下記の表12に要約している。

表12


結果:サブバッチ1、2および3は、良好に分散していた。サブバッチ4は、ボトル壁表面上の付着物によって示されるように良好には分散していなかった。
【0089】
製剤2
エタノールを含む上記原製剤をベースとする製剤中へのケトプロフェンの混入を次に試みた。製剤2成分は、下記の表13に要約している。
目的:ケトプロフェンを含まないセフチオフルHCl注射液
方法:綿実油を95〜100℃に加熱し、レシチンを添加し、透明になるまで撹拌し(40分間)、30℃に冷却した。次に、ソルビタンモノオレートを添加し、10分間撹拌した。その後、割当のセフチオフルHClを添加し、完全に溶解するまで撹拌した。撹拌を完全に分散するまで続行した(20分間)。最後に、プロピレングリコール、ベンジルアルコールおよびエタノールを添加し、約10分間撹拌した。容量を、精製綿実油を使用して100とした。成分量は、下記の表13に要約している。
【0090】
表13


結果:両活性成分を含有し、精製綿実油をビヒクルとして使用する製剤は、かなり粘稠な懸濁液を生成する傾向にあった。
【0091】
製剤3
目的:ケトプロフェンを含むセフチオフルHCl注射液
方法:製剤3は、製剤2の方法に従うが、セフチオフルHClと同時にケトプロフェンを添加することによって製造した。成分量は、下記の表14に要約している。

表14


結果:製剤3は粘稠であった。
【0092】
製剤4
目的:ベンジルアルコールを1.0%に減らし、エタノールを0.0%に減らして、エタノールの排除が製剤3の高粘度および“粘着性”の問題を解消するかどうかを判定した。
サブバッチは、下記の量のケトプロフェンを含んでいた。
1:0.0%のケトプロフェン
2:15.0%のケトプロフェン。
方法:製剤4は、製剤3の方法に従うが、ソルビタンモノオレートの後に添加したセフチオフルHClのみまたはセフチオフルHClとケトプロフェンによって製造した。成分量は、下記の表15に要約している。
【0093】
表15


結果:製剤4は濃厚であった。
【0094】
これらの結果に基き、上記組合せに適する代替油性ビヒクルの研究を開始した。代替ビヒクル試験は、中鎖トリグリセリドオイル(MIGLYOL)、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピルおよびトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル(CRODAMOL GTCC)、ならびにこれらのビヒクルの幾つかの1:1の組合せを含んでいた。
【0095】
製剤5
目的:中鎖トリグリセリド(MIGLYOL 810)中10%ベンジルアルコール/5%エタノール製剤を試験する。
方法:製剤5は、製剤3の方法に従って製造したが、綿実油をMIGLYOL 810に置換えた。成分量は、下記の表16に要約している。

表16


結果:MIGLYOL 810は、上記の各製剤の粘度を低下させるのを試みるために添加した。製剤5は、良好な懸濁液であった。
【0096】
製剤6
目的:中鎖トリグリセリド(MIGLYOL 810)中1%ベンジルアルコール/0%エタノール製剤。
サブバッチ1:ケトプロフェンを含まない(表17)、サブバッチ2:ケトプロフェンを含む(表18)。
方法:製剤6は、製剤4の方法に従うが、綿実油の代りのMIGLYOL 810および0.0%または15%いずれかのケトプロフェンによって製造した。成分量は、下記の表17(サブバッチ1)および表18(サブバッチ2)に要約している。
【0097】
表17

【0098】
表18


結果:MIGLYOL 810は、上記の各製剤の粘度を低下させるのを試みるために添加した。サブバッチ1(ケトプロフェンを含まない、表17)が良好な懸濁液であったのに対し、サブバッチ2(15%ケトプロフェン、表18)は、極めて粘稠であり、ほぼ固化した懸濁液であった。
【0099】
製剤7
目的:オレイン酸エチルと綿実油ビヒクル中の10%ベンジルアルコール/5%エタノール製剤。
方法:製剤7は、製剤2の方法に従って製造し、オレイン酸エチルと幾分かの綿実油は、最初の工程において95〜100℃に加熱した。成分量は、下記の表19に要約している。

表19


結果:製剤7は、良好な懸濁液であった。
【0100】
製剤8
目的:安定性のための10%のベンジルアルコール、5%のエタノールおよび綿実油を含むバッチを製造する。
方法:製剤8は、以下の工程に従って製造した:1) 精製綿実油を濾過し、2) 油を95℃〜100℃に加熱し、3) レシチンを、透明な溶液が発生するまで絶えず撹拌しながら添加し、4) 上記油/レシチン混合物を30℃に冷却し、5) ソルビタンモノオレートを添加し、10分間連続撹拌し、6) セフチオフルHClとケトプロフェンを、連続撹拌しながら、完全に分散するまで15分間で添加し、7) プロピレングリコール、ベンジルアルコールおよびエタノールを添加し、10分間連続撹拌し、8) 精製綿実油によって定容量とし、9) 5分間均質化した。成分量は下記の表20に要約しており、密度測定値は下記の表21に要約している。
【0101】
表20


結果:密度(20℃)は、0.9734g/mLであった。

表21

【0102】
製剤9
目的:安定性のための10%のベンジルアルコール、5%のエタノールおよびMIGLYOL 810を含むバッチを製造する。
方法:製剤9は、上記の10%のベンジルアルコール、5%のエタノールおよび綿実油のバッチのようにして製造したが、綿実油をMIGLYOL 810(注:加熱前に濾過していない油)に置換えた。成分量は下記の表22に要約しており、密度測定値は下記の表23に要約している。
【0103】
表22


結果:密度(20℃)は、0.9951g/mLであった。

表23

【0104】
製剤10
目的:安定性のための10%のベンジルアルコール、5%のエタノールおよびオレイン酸エチル/綿実油を含むバッチを製造する。
方法:製剤10は、上記の10%のベンジルアルコール、5%のエタノールおよび綿実油のバッチのようにして製造したが、工程2)における綿実油をオレイン酸エチルおよび精製綿実油(注:加熱前に濾過していない油)に置換えた。成分量は下記の表24に要約しており、密度測定値は下記の表25に要約している。
【0105】
表24


結果:密度(20℃)は、0.9569g/mLであった。

表25

【0106】
製剤11
目的:物理的安定性のための1%のベンジルアルコール、0%のエタノールおよびMIGLYOL 810を含むバッチを製造する。
方法:製剤11は、上記の10%のベンジルアルコール、5%のエタノールおよびMIGLYOL 810のバッチのようにして製造したが、エタノールを添加しなかった。成分量は、下記の表26に要約している。
【0107】
表26


結果:再懸濁は許容し得、沈降容量は5.6mL/9.0mLであり、再懸濁のための反転回数は30回未満であった。
【0108】
製剤12
目的:物理的安定性のための1%のベンジルアルコール、0%のエタノールおよびオレイン酸エチルを含むバッチを製造する。
方法:製剤12は、上記の1%のベンジルアルコール、0%のエタノールおよびMIGLYOL 810のバッチのようにして製造したが、MIGLYOL 810をオレイン酸エチルに置換えた。成分量は、下記の表27に要約している。

表27

【0109】
製剤13
目的:物理的安定性のための1%のベンジルアルコール、0%のエタノールおよびオレイン酸エチル/綿実油(1:1)を含むバッチを製造する。
方法:製剤13は、上記の1%のベンジルアルコール、0%のエタノールおよびMIGLYOL 810のバッチのようにして製造したが、MIGLYOL 810をオレイン酸エチル/精製綿実油(1:1(容量/容量))に置換えた。成分量は、下記の表28に要約している。

表28

【0110】
製剤14
目的:物理的安定性のための1%のベンジルアルコール、0%のエタノールおよびオレイン酸エチル/MIGLYOL 810 (1:1)を含むバッチを製造する。
方法:製剤13は、上記の1%のベンジルアルコール、0%のエタノールおよびMIGLYOL 810のバッチのようにして製造したが、MIGLYOL 810をオレイン酸エチル/MIGLYOL 810 (1:1(容量/容量))に置換えた。成分量は、下記の表29に要約している。

表29

【0111】
製剤15
目的:物理的安定性および応力試験のための1%のベンジルアルコール、0%のエタノールおよびMIGLYOL 810を含むバッチを製造する。
方法:製剤15は、上記の1%のベンジルアルコール、0%のエタノールおよびMIGLYOL 810のバッチのようにして製造した。成分量は、下記の表30に要約している。

表30

【0112】
結果:製剤15の再懸濁は許容し得、沈降容量は6.9mL/9.0mLであり、再懸濁のための反転回数は30回未満であった。データは、下記の表31に要約している。

表:31

【0113】
製剤16
目的:化学的安定性のための1%のベンジルアルコール、0%のエタノールおよびMIGLYOL 810を含むバッチを製造する。
方法:製剤16は、上記の1%のベンジルアルコール、0%のエタノールおよびMIGLYOL 810のバッチのようにして製造した。成分量は、下記の表32に要約している。

表32

【0114】
結果:製剤16の再懸濁は許容し得、沈降容量は6.9mL/9.0mLであり、再懸濁のための反転回数は30回未満であった。データは、下記の表33に要約している。

表:33

【0115】
製剤17
目的:化学的安定性のための1%のベンジルアルコール、0%のエタノールおよびMIGLYOL 810を含むバッチを製造する。
方法:製剤17は、上記の1%のベンジルアルコール、0%のエタノールおよびMIGLYOL 810のバッチのようにして製造した。成分量は、下記の表34に要約している。

表34

【0116】
結果:製剤17の再懸濁は許容し得、沈降容量は6.8mL/9.0mLであり、再懸濁のための反転回数は30回未満であった。データは、下記の表35に要約している。

表:35

【0117】
製剤18
目的:1%のベンジルアルコールを含むバッチを、オイルビヒクルとしてIPMを使用して製造する。
方法:製剤18は、上記の1%のベンジルアルコール、0%のエタノールおよびMIGLYOL 810のバッチのようにして、MIGLYOL 810を0.2μmフィルターにより濾過する追加の第1工程によって製造した。成分量は、下記の表36に要約している。
表36


結果:製剤18は、良好懸濁していなかった;沈降容量は3.7mL/9.0mLであり、再懸濁のための反転回数は300回よりも多かった。
【0118】
製剤19
目的:1%のベンジルアルコールを含むバッチを、オイルビヒクルとしてIPM/精製綿実油(1:1(容量/容量))を使用して製造する。
方法:製剤19は、上記の1%のベンジルアルコール、0%のエタノールおよびMIGLYOL 810のバッチのようにして、MIGLYOL 810を0.2μmフィルターにより濾過する追加の第1工程によって製造した。成分量は、下記の表37に要約している。

表37


結果:製剤19は、良好懸濁していなかった;沈降容量は4.1mL/9.0mLであり、再懸濁のための反転回数は300回よりも多かった。
【0119】
製剤20
目的:1%のベンジルアルコールを含むバッチを、オイルビヒクルとしてオレイン酸エチル/MIGLYOL 810 (1:1(容量/容量))を使用して製造する。
方法:製剤20は、上記の1%のベンジルアルコール、0%のエタノールおよびMIGLYOL 810のバッチのようにして、MIGLYOL 810を0.2μmフィルターにより濾過する追加の第1工程によって製造した。成分量は下記の表38に要約しており、応力試験の結果は、下記の表39に要約している。

表38


結果:製剤20の密度は、0.972g/mLであった。

表39

【0120】
製剤21
目的:CRODAMOL GTCCをオイルビヒクルと使用しての試験バッチ。
方法:製剤21は、上記精製綿実油、加熱前に添加したベンジルアルコールを含む試験バッチの方法のようにして製造したが、CRODAMOL GTCCを綿実油の代りに使用した。成分は、下記の表40に要約している。

表40

【0121】
結果:製剤21は、2〜8℃で1夜保存後に固体であり、振動させると動き始めるが可動性ではない。粘度(フォードカップNo.4)は38秒であり、15分間1000rpm後の沈降(8mL)は98%沈降物であった。製剤21は、10秒内で再懸濁した。再懸濁のための反転回数は1回であった。
方法:その後、7日間分離を製剤21において行った。結果を要約する。

表41

【0122】
製剤22
目的:オレイン酸エチルをオイルビヒクルと使用しての試験バッチ。
方法:製剤22は、上記精製綿実油バッチのようにして、これらの修正でもって、即ち、ベンジルアルコールを加熱前に添加して製造したが、オレイン酸エチルを綿実油の代りに使用した。成分は、下記の表42に要約している。

表42

【0123】
結果:製剤22は、容易に再懸濁した。この製剤は、2〜8℃で保存したとき、極めて粘稠(但し、可動性)であった。粘度(ブルックフィールドスピンドル2、100rpmにて)は102cPであり、粘度(フォードカップNo.4)は17秒であった。15分間1000rpm後の沈降(8mL)は79%沈降物であり、再懸濁時間は30秒であった。7日間分離データを、下記の表43に要約する。

表43

【0124】
この試験は、MIGLYOL 810が綿実油の代替物としての潜在力を有することの指標を提供した。より低めの粘度のMIGLYOL 840へのさらなる試験は、MIGLYOL 840がさらなる製剤開発のための好ましいオイルとなる結果となった。MIGLYOL 840が好ましいとしても、MIGLYOL 810は、依然として、本発明に従う製剤における綿実油の潜在的代替物として意図する。
【0125】
製剤23
目的:MIGLYOL 840をオイルビヒクルとして使用しての試験バッチ。
方法:製剤23は、上記精製綿実油バッチのようにして、小さな修正、即ち、加熱前に添加したベンジルアルコールでもって製造し、MIGLYOL 840を綿実油の代りに使用した。成分は、下記の表44に要約している。

表44

【0126】
結果:製剤23は、2〜8℃で1夜保存後に固体であり、振動させると、適度の可動性でもって動き始めた。粘度は18秒であり、15分間1000rpm後の沈降(8mL)は90%沈降物であり;再懸濁は5秒内で生じ;再懸濁のための反転回数は3回であった。7日間分離データを下記の表45の要約し、応力試験データを下記の表46に要約している。
【0127】

表45


表46

【0128】
さらなる研究を行って、MIGLYOL 840オイルビヒクルを含む製剤に対する種々の量のベンジルアルコールの効果を、典型的な活性濃度のセフチオフル(5.0%)とケトプロフェン(15.0%)または典型的な低めの活性濃度のセフチオフル(3.57%)とケトプロフェン(10.0%)のいずれかを使用して調べた。ベンジルアルコールが、セフチオフルのみを精製綿実油ビヒクル中に含有する製剤に対して有する効果とは対照的に、ベンジルアルコールは、セフチオフルとケトプロフェンの双方を含有する製剤の凝集をもたらしていないようであった。
ベンジルアルコールの上記効果の研究中に、0、1.0、3.0および5.0%のベンジルアルコールを含有する各バッチの応力試験(55℃での4週間までの保存)を実施した。この応力試験からは、55℃で4週間後のセフチオフルの測定値は、ベンジルアルコール含有量にはかかわらず比較的一定のままであるが、この期間における55℃での保存後のケトプロフェンの測定値は、ベンジルアルコール濃度の上昇によって低下することが判明した。
【0129】
製剤24
目的:0%のベンジルアルコール(ANT0088‐25)、1%のベンジルアルコール(ANT0088‐26)、3%のベンジルアルコール(ANT0088‐27)および5%のベンジルアルコール(ANT0088‐28)を含むMIGLYOL 840中の各バッチ(5%セフチオフル/15%ケトプロフェン)を比較する。
方法:精製綿実油を含むバッチのようにして(加熱前にベンジルアルコール添加)。

表47

【0130】
結果:4バッチ全てが2〜8℃で24および48時間の保存後に固体であったが、振動すると可動性になった。

表48


表49

【0131】
製剤の長期安定性を最適化するために、製剤試験バッチを、防腐剤として、ベンジルアルコールよりはむしろ0.50%(質量/容量)のクロロブタノールを使用して製造した。
製剤25
目的:0.5%のクロロブタノールをベンジルアルコールの代りに防腐剤として使用してバッチ(1%ベンジルアルコール、MIGLYOLベースを含む)を製造する。
方法:精製綿実油を含むバッチ(ベンジルアルコールを加熱前に添加した)のようにして、ベンジルアルコールは含まない。クロロブタノールを、加熱したMIGLYOL 840に添加した。

表50

【0132】
結果:粘度(ブルックフィールド、スピンドル2、100rpm)は112cPであり、1000prm15分間後の沈降(8mL)は、91%沈降物であった。
長時間沈降:

表51


開発研究を、振動すると容易に再懸濁して均一な懸濁液を生じる有効な良好に凝集した懸濁液を製造する目的でもって実施した。1000rpm15分間のサンプルの遠心分離を含む試験を、製造した製剤バッチの殆どに対して行った。サンプルを遠心分離した時点で、%沈降が生じ、再懸濁液の時間を試験して、種々の製剤バッチにおいて比較することができた。製剤25バッチは、遠心分離後、90%の沈降物を生じ、その後、約29秒で再懸濁した。また、サンプルバッチにおいて測定した沈降容量も、30日間静置後90%になった。
【0133】
使用中、本発明に従う有効な懸濁液も、シリンジによって容器から吸引し投与しなければならない。18ゲージ針および3mLシリンジを使用する2mLサンプルの吸引および排出を含む注射針通過性および注入性試験を0〜5.0%のベンジルアルコールを含有する製剤バッチについて実施した。プラスチックシリンジを使用しての注射針通過時間は、6〜8秒の範囲であった。1.0%ベンジルアルコール製剤の注射針通過時間は、7秒であり、許容し得るとみなした。
【0134】
概して、400mLまでの製剤バッチを、これまでの開発中に製造している。使用した製造方法は、セフチオフルのみの注射製剤において開発した方法と同じであり、両活性剤を、MIGLYOL 840、防腐剤、PHOSPHOLIPON 90Hおよびソルビタンモノオレートの混合物に、混合物を30℃よりも低く冷却した時点で添加し、その後、プロピレングリコールを添加し、MIGLYOL 840ビヒクルによって定量にすることによる。この方法は、図1の略図的ダイアグラムに詳述している。
【0135】
製剤開発中、製造した懸濁液の物理特性の研究は、100mLの透明ガラスメスシリンダーまたは100mLガラスバイアル(透明または琥珀色)内或いは多くの場合はその両方内に保存した製剤によって実施する傾向にあった。提案されるパッケージング方式は、ストッパー付きの100mL透明タイプIガラスバイアルである可能性がある。
最終製品が多数回使用バイアル中の注射用製品であるときは、滅菌性であることおよびその滅菌性を多数回チャレンジに関して保持し得ることの双方が必要である。油性懸濁液として、滅菌製品を製造する代替方法は、無菌製造またはガンマ線照射のいずれかを含む。ガンマ線照射による熱滅菌は、セフチオフルのみ製剤において以前に研究している。最終提案セフチオフルHCl/ケトプロフェン製剤のガンマ線照射についての研究は、継続中である。
【0136】
ベンジルアルコール1.0%(質量/容量)またはクロロブタノール0.50%(質量/容量)を、提案製剤中に含ませた。下記の表52に示す濃度において、これらの薬剤は、多数回使用提示品の多数回チャレンジに対する有効な防腐剤として作用することが期待される。
1つの好ましい製剤の成分は、表52に提示している。

表52:提案製剤

【0137】
この製剤の試験は、この製剤が、高温でのおよび室温で保存したときの長時間の双方で極めて安定であることを実証した。これらのデータは、下記の表53に要約している。

表53

【0138】
本発明の好ましい実施態様をそのようにして詳細に説明してきたが、上記の実施例によって明確にされた本発明は、その多くの明白な変更が本発明の精神または範囲から逸脱することなく可能であるので、上記の説明に示した特定の詳細に限定されるものではないことを理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量のセフチオフルと少なくとも1種の凝集剤または再懸濁性増強剤の注射用懸濁液を含み、前記少なくとも1種の凝集剤または再懸濁性増強剤が少なくともベンジルアルコールを含むことを特徴とする獣医学上または製薬上許容し得る製剤。
【請求項2】
湿潤または分散剤と生体適合性オイルビヒクルをさらに含む、請求項1記載の製剤。
【請求項3】
セフチオフルが、セフチオフルHClである、請求項1または2記載の製剤。
【請求項4】
セフチオフルが、約1%(質量/容量)〜約10%(質量/容量)の量で存在する、請求項1〜3のいずれか1項記載の製剤。
【請求項5】
セフチオフルが、約5.0%(質量/容量)〜約5.5%(質量/容量)の量で存在する、請求項4記載の製剤。
【請求項6】
前記湿潤または分散剤が、水素化ホスファチジルコリン、水素化リソホスファチジルコリン、モノ〜ジグリセリド、プロピレングリコール、トリグリセリド、およびこれらの組合せからなる群から選ばれる少なくとも1種の薬剤を含む。請求項2〜5のいずれか1項記載の製剤。
【請求項7】
前記湿潤または分散剤が、PHOSPHOLIPON 90Hを含む、請求項6記載の製剤。
【請求項8】
PHOSPHOLIPON 90Hが、約0.01%(質量/容量)〜約1%(質量/容量)の量で存在する、請求項7記載の製剤。
【請求項9】
前記湿潤または分散剤が、ソルビタンモノオレートを含む、請求項6記載の製剤。
【請求項10】
ソルビタンモノオレートが、約0.01%(質量/容量)〜約1%(質量/容量)の量で存在する、請求項9記載の製剤。
【請求項11】
前記凝集剤または再懸濁性増強剤が、プロピレングリコールをさらに含む、請求項1〜10のいずれか1項記載の製剤。
【請求項12】
プロピレングリコールが、約0.01%(質量/容量)〜約5%(質量/容量)の量で存在する、請求項11記載の製剤。
【請求項13】
ベンジルアルコールが、約0.1%(質量/容量)〜約10%(質量/容量)の量で存在する、請求項1〜12のいずれか1項記載の製剤。
【請求項14】
ベンジルアルコールが、約1%(質量/容量)〜約5%(質量/容量)の量で存在する、請求項13記載の製剤。
【請求項15】
ベンジルアルコールが、約3%(質量/容量)の量で存在する、請求項13記載の製剤。
【請求項16】
前記生体適合性オイルビヒクルが、綿実油を含む、請求項13記載の製剤。
【請求項17】
(a) セフチオフル、(b) ベンジルアルコール、(c) PHOSPHOLIPON 90H、(d) ソルビタンモノオレート、(e) プロピレングリコールおよび(f) 綿実油を含む製剤。
【請求項18】
(a) セフチオフルが約5.35%(質量/容量)の量で存在し、(b) ベンジルアルコールが約1%(質量/容量)〜約3%(質量/容量)の量で存在し、(c) PHOSPHOLIPON 90Hが約0.05%(質量/容量)の量で存在し、(d) ソルビタンモノオレートが約0.15%(質量/容量)の量で存在し、(e) プロピレングリコールが約0.25%(質量/容量)の量で存在し、そして、(f) 綿実油が約94%(質量/容量)までの量で存在する、請求項17記載の製剤。
【請求項19】
獣医学上または製薬上適切なオイル系製剤の再懸濁性の改良方法であって、有効量のベンジルアルコールを前記オイル系製剤に添加することを特徴とする前記改良方法。
【請求項20】
前記獣医学上または製薬上適切なオイル系製剤が、セフチオフルを含む請求項19記載の方法。
【請求項21】
有効量のセフチオフルおよびケトプロフェンを、ベンジルアルコールまたはクロロブタノールまたはこれらの組合せと組合せて含むことを特徴とする獣医学上または製薬上許容し得る製剤。
【請求項22】
少なくとも1種の湿潤または分散剤、少なくとも1種の防腐剤、少なくとも1種の凝集剤または再懸濁性増強剤、および少なくとも1種の生体適合性オイルビヒクルをさらに含む、請求項21記載の製剤。
【請求項23】
セフチオフルが、セフチオフルHClである、請求項21または22記載の製剤。
【請求項24】
セフチオフルが約2%(質量/容量)〜約10%(質量/容量)の量で存在し、ケトプロフェンが約6%(質量/容量)〜約30%(質量/容量)の量で存在する、請求項21〜23のいずれか1項記載の製剤。
【請求項25】
前記少なくとも1種の湿潤または分散剤が、水素化ホスファチジルコリン、水素化リソホスファチジルコリン、モノ〜ジグリセリド、プロピレングリコール、トリグリセリド、ソルビタンモノオレート、またはこれらの組合せである、請求項22記載の製剤。
【請求項26】
前記湿潤または分散剤が、PHOSPHOLIPON 90H、またはソルビタンモノオレート、またはこれらの組合せを含む、請求項25記載の製剤。
【請求項27】
PHOSPHOLIPON 90Hが、約0.01%(質量/容量)〜約1%(質量/容量)の量で存在する、請求項26記載の製剤。
【請求項28】
ソルビタンモノオレートが、約1%(質量/容量)までの量で存在する、請求項26記載の製剤。
【請求項29】
ベンジルアルコールが、約0.1%(質量/容量)〜約10%(質量/容量)の量で存在する、請求項21〜28のいずれか1項記載の製剤。
【請求項30】
クロロブタノールが、約0.1%(質量/容量)〜約1.0%(質量/容量)の量で存在する、請求項21〜29のいずれか1項記載の製剤。
【請求項31】
前記凝集剤または再懸濁性増強剤が、プロピレングリコールを含む、請求項22〜31のいずれか1項記載の製剤。
【請求項32】
プロピレングリコールが、約0.01%(質量/容量)〜約0.5%(質量/容量)の量で存在する、請求項31記載の製剤。
【請求項33】
前記生体適合性オイルビヒクルが、カプリル酸のエステル、カプリン脂肪酸のエステル、プロピレングリコール、またはこれらの組合せを含む、請求項22〜32のいずれか1項記載の製剤。
【請求項34】
前記生体適合性オイルが、MIGLYOL 840である、請求項33記載の製剤。
【請求項35】
有効量の(a) セフチオフル、(b) ケトプロフェン、(c) PHOSPHOLIPON 90H、(d) ベンジルアルコールまたはクロロブタノール、(e) ソルビタンモノオレート、(f) プロピレングリコール、および(g) MIGLYOL 840を含む獣医学上または製薬上許容し得る製剤。
【請求項36】
(a) セフチオフルが約5%(質量/容量)の量で存在し、(b) ケトプロフェンが約15%(質量/容量)の量で存在し、(c) PHOSPHOLIPON 90Hが約0.05%(質量/容量)の量で存在し、(d) ベンジルアルコールが約1%(質量/容量)の量で存在し、またはクロロブタノールが約0.5%(質量/容量)の量で存在し、(e) ソルビタンモノオレートが約0.15%(質量/容量)の量で存在し、(f) プロピレングリコールが約0.25%(質量/容量)の量で存在し、そして、(g) MIGLYOL 840が約80%(質量/容量)までの量で存在する、請求項35記載の製剤。
【請求項37】
動物に、有効量の請求項1〜36のいずれか1項記載の製剤を投与することを特徴とする動物の呼吸器障害または疾患の予防または治療方法。
【請求項38】
投与経路が注射である、請求項37記載の方法。
【請求項39】
前記製剤を、約1mg/kgまでのセフチオフル量および約3mg/kgまでのケトプロフェン量で投与する、請求項38記載の方法。
【請求項40】
投与を、3〜5日間1日1回実施する、請求項38または39記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2012−509337(P2012−509337A)
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−537581(P2011−537581)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【国際出願番号】PCT/US2009/064978
【国際公開番号】WO2010/059717
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(304040692)メリアル リミテッド (73)
【Fターム(参考)】