説明

セメント焼成装置及び高含水有機廃棄物の乾燥方法

【課題】乾燥装置等が爆発する虞がなく、セメントキルンの熱効率が悪化せず、より効率よく高含水有機廃棄物を乾燥させる。
【解決手段】セメントキルン2の仮焼炉4の出口ダクトからプレヒータ3の出口ダクトまでの排ガス流路より抽気した燃焼ガスGが供給され、40質量%以上の水分を含む高含水有機汚泥等の高含水有機廃棄物Wを破砕しながら乾燥させる破砕気流乾燥機7を備えるセメント焼成装置1等。燃焼ガスGと高含水有機廃棄物Wを直接接触させると同時に、高含水有機廃棄物Wを破砕しなら乾燥させることにより、高含水有機廃棄物Wの比表面積の増加による乾燥効率の向上と、高含水有機廃棄物Wの表面乾燥による破砕効率の向上とが相まって、全体的な乾燥効率を飛躍的に向上させることができる。破砕気流乾燥機7には、ケージミル式、鎖打撃式、旋回式等を使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高含水有機汚泥等の高含水有機廃棄物を、安全かつ効率的に乾燥させることのできるセメント焼成装置、及び同装置を利用した高含水有機廃棄物の乾燥方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、都市ごみ等の廃棄物をセメント焼成装置で処理するにあたって、種々の装置及び方法が提案されている。例えば、特許文献1には、都市ごみ等の廃棄物を乾燥させるための乾燥装置にクリンカクーラの高温空気の一部を導入し、乾燥装置からの排気を再びクリンカクーラに戻し、乾燥装置の排気が混入したクリンカクーラの高温空気をセメントキルン又は仮焼炉の燃焼用空気として使用する技術が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、セメント焼成装置で可燃性廃棄物を焼却するにあたって、可燃性廃棄物をクリンカクーラの高温空気の一部を用いて焼却し、廃棄物の焼却工程中に生成した排ガスを、セメント原料を加熱するためのプレヒータに通気し、かつ廃棄物の焼却工程中に発生したスラグを引き出す技術が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開昭63−151650号公報
【特許文献2】特表2003−506299号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献に記載のように、クリンカクーラから抽気される高温空気を都市ごみ等の廃棄物や、可燃性廃棄物の乾燥等に利用する場合には問題はないが、高含水有機汚泥等の高含水有機廃棄物を乾燥させるにあたって上記高温空気を利用すると、該高温空気は酸素濃度が高いため、乾燥装置等において爆発する虞があった。
【0006】
また、セメント焼成装置のプレヒータ出口以降の燃焼排ガスを利用しようとしても、この領域の燃焼排ガスの温度は450℃程度以下と低温であるため、高含水汚泥の乾燥には適さない。
【0007】
さらに、セメントキルンの窯尻からの抽気ガスは、酸素濃度が低く、約1000℃と高温であるため、高含水有機廃棄物の乾燥には適しているが、窯尻から燃焼ガスを抽気すると、セメントキルンの熱効率が悪化するという問題があった。
【0008】
また、有機汚泥等を乾燥させた後に発生する乾燥排ガスは、相当量の臭気成分を含有しているため、脱臭処理後に排気する必要がある。脱臭処理を行うためには、臭気成分を含むガスを800℃以上にすることが好ましく、仮焼炉等の燃焼領域にガスを導き脱臭処理する方法が一般的である。しかし、有機汚泥等の乾燥にセメントキルン排ガスを用いると、乾燥排ガスは低酸素濃度であるため、上述のように乾燥排ガスを燃焼領域で処理すると、燃焼状態が悪化し、セメントキルンの熱効率が低下するため適さないという問題があった。
【0009】
上記に加え、高含水有機汚泥は、40質量%以上の水分を含む粘土のような塊状であり、比表面積が小さいため、高含水有機汚泥を効率よく乾燥させることが困難であるという問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、上記従来の技術における問題点に鑑みてなされたものであって、乾燥装置等が爆発する虞がなく、セメントキルンの熱効率が悪化することもなく、より効率よく高含水有機廃棄物を乾燥させることができるセメント焼成装置及び高含水有機廃棄物の乾燥方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明は、セメント焼成装置であって、セメントキルンの仮焼炉の出口ダクトからプレヒータの出口ダクトまでの排ガス流路より抽気した燃焼ガスが、40質量%以上の水分を含む高含水有機廃棄物と直接接触するように供給され、該高含水有機廃棄物を破砕しながら乾燥させる破砕気流乾燥機を備えることを特徴とする。
【0012】
セメントキルンの仮焼炉の出口ダクトからプレヒータの出口ダクトまでの排ガス流路より抽気した燃焼ガスは、2〜8%と酸素濃度が低いため、乾燥装置等が爆発する虞がなく、燃焼ガスの温度は450〜900℃であるため、高含水有機廃棄物を十分に乾燥させることができる。また、セメントキルンの窯尻等から燃焼ガスを抽気しないため、セメントキルンの熱効率が悪化することもない。さらに、燃焼ガスと高含水有機廃棄物を直接接触させると同時に、高含水有機廃棄物を破砕しながら乾燥させることにより、高含水有機廃棄物の比表面積の増加による乾燥効率の向上と、高含水有機廃棄物の表面乾燥による破砕効率の向上とが相まって、全体的な乾燥効率を飛躍的に向上させることができる。
【0013】
前記セメント焼成装置において、前記破砕気流乾燥機として、ケージミル式、鎖打撃式、又は、旋回式等の種々の方式があるが、破砕と気流乾燥を同時に行うタイプであればいずれの乾燥機でも使用することができる。
【0014】
前記セメント焼成装置において、前記破砕気流乾燥機からの排ガスを、前記セメントキルンの仮焼炉の出口ダクトからプレヒータの出口ダクトまでの排ガス流路へ戻すための第2の排ガス流路を備えることができる。これによって、臭気成分を含む酸素濃度の低い乾燥排ガスを仮焼炉等の燃焼領域に導いて脱臭処理せずに済むため、キルンの熱効率の悪化を引き起こすこともない。
【0015】
前記セメント焼成装置において、前記高含水有機廃棄物は、高含水有機汚泥であってもよく、製紙汚泥、下水汚泥、ビルピット汚泥、食品汚泥等を乾燥させることができる。
【0016】
また、本発明は、高含水有機廃棄物の乾燥方法であって、 セメントキルンの仮焼炉の出口ダクトからプレヒータの出口ダクトまでの排ガス流路より、燃焼ガスの一部を抽気し、該抽気した燃焼ガスの一部を、40質量%以上の水分を含む高含水有機廃棄物に直接接触させるとともに、該高含水有機廃棄物を破砕しながら乾燥させることを特徴とする。本発明によれば、上述のように、乾燥装置等が爆発する虞がなく、セメントキルンの熱効率が悪化することもなく、高含水有機廃棄物をより安全かつ効率的に破砕しながら乾燥させることができる。
【0017】
前記高含水有機廃棄物の乾燥方法において、前記高含水有機廃棄物を乾燥させた後の燃焼ガスを、前記セメントキルンの仮焼炉の出口ダクトからプレヒータの出口ダクトまでの排ガス流路に戻すことができる。これによって、上述のように、キルンの熱効率の悪化を引き起こすことなく、臭気成分を有する乾燥排ガスを処理することができる。
【0018】
前記高含水有機廃棄物の乾燥方法において、前記高含水有機廃棄物を、製紙汚泥、下水汚泥、ビルピット汚泥、食品汚泥等の高含水有機汚泥とすることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、乾燥装置等が爆発する虞がなく、セメントキルンの熱効率が悪化することもなく、より効率よく高含水有機廃棄物を乾燥させることができるセメント焼成装置及び高含水有機廃棄物の乾燥方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は、本発明にかかるセメント焼成装置の一実施の形態を示し、このセメント焼成装置1は、セメントキルン2と、プレヒータ3と、仮焼炉4と、セメント原料回収サイクロン6と、破砕気流乾燥機7と、高含水有機廃棄物貯蔵タンク(以下、「廃棄物貯蔵タンク」という)8と、乾燥有機廃棄物回収サイクロン(以下、「乾燥物回収サイクロン」という)11等で構成される。尚、セメントキルン2、プレヒータ3及び仮焼炉4は、従来のセメント焼成装置と同様の機能を有するので、詳細な説明は省略する。
【0021】
セメント原料回収サイクロン6は、破砕気流乾燥機7の前段に設けられ、プレヒータ3の排ガス流路より抽気した燃焼ガスGに含まれるダストを除去し、ダストを除去した燃焼ガスGを破砕気流乾燥機7に供給するために備えられる。
【0022】
破砕気流乾燥機7は、廃棄物貯蔵タンク8から供給される高含水有機汚泥等の高含水有機廃棄物(以下、適宜「廃棄物」という)Wを破砕しながら、セメント原料回収サイクロン6から供給される燃焼ガスGによって乾燥させるために備えられる。この破砕気流乾燥機7は、上部に廃棄物Wの供給口と、下部にセメント原料回収サイクロン6からの燃焼ガスGの供給口とを備え、廃棄物Wと燃焼ガスGを向流で接触させる。また、内部には、回転軸7aと、この回転軸7aに固定され、回転軸7aの回転とともに遠心力によって水平方向に延伸して回転し、廃棄物Wを破砕する打撃チェーン7bを備える。
【0023】
廃棄物貯蔵タンク8は、高含水有機廃棄物を一時的に貯蔵するために設けられ、高含水有機廃棄物は、高含水有機汚泥であってもよく、製紙汚泥、下水汚泥、ビルピット汚泥、食品汚泥等でもよい。
【0024】
ブロワ9は、破砕気流乾燥機7によって破砕及び乾燥された廃棄物Wをプレヒータ3へ搬送するために備えられ、ルーツブロワ等が用いられる。ファン12は、破砕気流乾燥機7から排出された乾燥排ガスG’を循環ダクト10を介してプレヒータ3へ戻すために備えられる。
【0025】
次に、上記構成を有するセメント焼成装置1の動作について、図面を参照しながら説明する。
【0026】
セメント焼成装置1のプレヒータ3にセメント原料Rを供給し、プレヒータ3で予熱し、仮焼炉4で仮焼し、セメントキルン2によって焼成する。一方、受け入れた廃棄物Wは、廃棄物貯蔵タンク8に一時的に貯蔵する。
【0027】
ファン12を運転し、セメント原料回収サイクロン6にセメントキルン2の燃焼ガスGを導入し、燃焼ガスGに含まれるダストを回収する。回収したダストをプレヒータ3に戻し、ダストを回収した後の燃焼ガスGを破砕気流乾燥機7に供給する。
【0028】
破砕気流乾燥機7の上部に、廃棄物貯蔵タンク8からの廃棄物Wを供給するとともに、破砕気流乾燥機7の下部からセメント原料回収サイクロン6からの燃焼ガスGを導入する。この燃焼ガスGの温度は、800〜900℃程度であるため、高含水有機廃棄物を十分に乾燥させることができる。また、破砕気流乾燥機7では、廃棄物Wと燃焼ガスGとが向流で直接接触するとともに、破砕気流乾燥機7の内部に設けられた打撃チェーン7bによって廃棄物Wを破砕しながら乾燥させるため、廃棄物Wは、その比表面積を増加させながら表面から乾燥することとなる。そのため、比表面積の増加による乾燥効率の向上に加え、廃棄物Wの表面乾燥によって破砕効率も合わせて向上することとなり、従来に比較して全体的な乾燥効率が飛躍的に向上する。また、破砕気流乾燥機7に導入された燃焼ガスGは、酸素濃度が2〜8%程度と低いため、破砕気流乾燥機7等が爆発する虞もない。
【0029】
ここで、破砕気流乾燥機7への廃棄物Wの供給量が一時的に低下したような場合等、破砕気流乾燥機7の出口ガス温度が高すぎる場合には、破砕気流乾燥機7の前段で冷却空気Cを導入することができる。
【0030】
次に、乾燥物回収サイクロン11によって、破砕気流乾燥機7で破砕及び乾燥させた廃棄物Wを回収し、ブロワ9を介してプレヒータ3に戻す。尚、回収した廃棄物Wを、ブロワ9を介してセメント焼成装置1とは別の装置等に搬送して処理することもできる。
【0031】
一方、破砕気流乾燥機7から排出される乾燥排ガスG’を、ファン12によって、循環ダクト10を介して最下段サイクロン3Aから第2サイクロン3Bへの排ガス流路に戻す。これによって、有機汚泥等を乾燥させた後に発生する乾燥排ガスG’が含有する臭気成分の脱臭処理を行うことができる。
【0032】
尚、上記実施の形態においては、破砕気流乾燥機7に、最下段サイクロン3Aから第2サイクロン3Bへの排ガス流路より抽気した燃焼ガスGを供給したが、プレヒータ3のさらに上流の、第2サイクロン3Bから第3サイクロン3Cへの排ガス流路(燃焼ガス温度は、700〜800℃程度)、又は第3サイクロン3Cから第4サイクロン3Dへの排ガス流路(燃焼ガス温度は、550℃〜650程度)から燃焼ガスを抽気して破砕気流乾燥機7に供給することもできる。
【0033】
さらに、破砕気流乾燥機7からの乾燥排ガスG’についても、最下段サイクロン3Aから第2サイクロン3Bへの排ガス流路に戻す場合に限定されず、上記燃焼ガスGを抽気する場合と同様の領域に戻すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明にかかるセメント焼成装置の一実施の形態の全体構成を示す概略図である。
【符号の説明】
【0035】
1 セメント焼成装置
2 セメントキルン
3 プレヒータ
3A 最下段サイクロン
3B 第2サイクロン
3C 第3サイクロン
3D 第4サイクロン
4 仮焼炉
5 窯尻部
6 セメント原料回収サイクロン
7 破砕気流乾燥機
7a 回転軸
7b 打撃チェーン
8 廃棄物貯蔵タンク
9 ブロワ
10 循環ダクト
11 乾燥物回収サイクロン
12 ファン
C 冷却空気
G 燃焼ガス
G’ 乾燥排ガス
R セメント原料
W 廃棄物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントキルンの仮焼炉の出口ダクトからプレヒータの出口ダクトまでの排ガス流路より抽気した燃焼ガスが、40質量%以上の水分を含む高含水有機廃棄物と直接接触するように供給され、該高含水有機廃棄物を破砕しながら乾燥させる破砕気流乾燥機を備えることを特徴とするセメント焼成装置。
【請求項2】
前記破砕気流乾燥機からの排ガスを、前記セメントキルンの仮焼炉の出口ダクトからプレヒータの出口ダクトまでの排ガス流路へ戻すための第2の排ガス流路を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のセメント焼成装置。
【請求項3】
前記高含水有機廃棄物は、高含水有機汚泥であることを特徴とする請求項1又は2に記載のセメント焼成装置。
【請求項4】
セメントキルンの仮焼炉の出口ダクトからプレヒータの出口ダクトまでの排ガス流路より、燃焼ガスの一部を抽気し、
該抽気した燃焼ガスの一部を、40質量%以上の水分を含む高含水有機廃棄物に直接接触させるとともに、該高含水有機廃棄物を破砕しながら乾燥させることを特徴とする高含水有機廃棄物の乾燥方法。
【請求項5】
前記高含水有機廃棄物を乾燥させた後のガスを、前記セメントキルンの仮焼炉の出口ダクトからプレヒータの出口ダクトまでの排ガス流路に戻すことを特徴とする請求項4に記載の高含水有機廃棄物の乾燥方法。
【請求項6】
前記高含水有機廃棄物は、高含水有機汚泥であることを特徴とする請求項4又は5に記載の高含水有機廃棄物の乾燥方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−195584(P2008−195584A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−34206(P2007−34206)
【出願日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】