説明

セラシアマルセセンス(Serratiamarcescence)B−1231KCTC0386BPで分離したプロディジオシン(prodigiosin)を有効成分として含む急性移植片対宿主病(acutegraft−versus−hostdisease)の予防または治療用組成物

本発明はセラシアマルセセンス(Serratia marcescence)B-1231 KCTC 0386BPで分離したプロディジオシン(prodigiosin)を有効成分として含む急性移植片対宿主病(acute graft-versus-host disease)の予防または治療用組成物に関する。本発明のプロディジオシンはT細胞の活性化に必要なIL-2受容体の発現を抑制することでT細胞の増殖を選択的に抑制する免疫抑制活性を持つことで単独投与の場合だけではなくサイクロスポリンAとその作用機序が相異なっており、併用投与も可能であり、この場合には免疫抑制効果が著しく増大するので本発明のプロディジオシンは急性移植片対宿主病の予防及び治療に効果的な組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセラシアマルセセンス(Serratia marcescence)B-1231 KCTC 0386BPで分離したプロディジオシン(prodigiosin)を有効成分として含む急性移植片対宿主病(acute graft-versus-host disease)の予防または治療用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
急性移植片対宿主病は、骨髄移植の時に現われる複合疾患として、免疫機能がある骨髄細胞中のT細胞が移植を受ける人体の臓器を攻撃して現われる疾患である。主要症状は肌、肝臓、消化器系に現われることと知られている。
急性移植片対宿主病は3段階で発生する。1段階では骨髄を移植する以前に発生することで患者の組織が損傷され場合によってはバクテリア感染などによって抗原提示細胞(antigen presenting cell)が活性化になる段階である。2段階では移植される骨髄細胞中のT細胞が活性化になる段階である。既に活性化になった患者の抗原提示細胞がT細胞をTh1細胞で分化させて、最終的にIL-2、 IFN-gammaなどのサイトカイン(cytokine)分泌を増加させる。3段階では患者の臓器が破壊される。活性化になったTh1細胞で分泌するサイトカイン(cytokine)によってサイトトックシックT細胞(cytotoxic T cell)及び自然殺害細胞(natural killer cell)などが活性化になればこれら細胞は患者の臓器を攻撃するようになって移植片対宿主病が発生するようになる。
急性移植片対宿主病を治療するためにさまざまな方法が提案されている。
移植される骨髄細胞の中でT細胞を除去する方法、T細胞と抗原提示細胞の反応を抑制するためにCD80、CD86などに対する抗体を投与する方法、IL-2、IFN-gammaなどのサイトカインに対する抗体を投与する方法などが提示されている。これといっしょにサイクロスポリンA(cyclosporin A)、ラパマイシン(rapamycin)、FK-506ステロイド製剤などの化合物免疫抑制剤を投与する方法も使われている。これら方法の中でT細胞の活性化を抑制する化合物免疫抑制剤投与法が一番広く使われている。
現在まで多くの化合物免疫抑制剤が開発されているがサイクロスポリンA(cyclosporinA)が一番優秀な臨床効果を現わしているし急性移植片対宿主病を含んで自家免疫疾患、臓器移植拒否反応、多様な炎症疾患に広く使われている。サイクロスポリンAは高用量で使う場合T細胞の活性化を完璧に抑制して疾病を治療することができるが腎臟毒性を含んで相当な副作用を現わす短所を持っていて低用量で使うことを勧奨している。この時現われる薬効の減少を補うために2-3種の他の免疫抑制剤と併用投与を実施している。サイクロスポリンAとその他免疫抑制剤を併用投与に使うためには二つの物質の作用モードと毒性部位が相異なっていなければならないという前提条件がある。現在にもこのような条件を満たしてサイクロスポリンAと併用投与法に使うための免疫抑制剤開発研究が続かれている。
ストレプトマイセス(Streptomyces)及びセラシア(Serratia)属の微生物たちはピロルリンピロメテン(pyrolline pyromethene)骨格の赤色物質たちを生産するのにこれらの中にはプロディジオシン、メタサイクロプロディジオシン、プロデジオセン、デスメトックシプロディジオシン、プロディジオシン25-C などが知られている。
プロディジオシンの疾病治療効果については本発明者たちによって既に報告された(韓国特許第406848号:特許文献1、韓国特許第392225号:特許文献2、InternationalJournal of Immunopharmacology 20、pp1-13、1997:非特許文献1、 Journal of Pharmacoloyand Experimental Therapeutics 299(2)、pp415-425、2001:非特許文献2。
しかし前記文献どこにもプロディジオシンを利用した急性移植片対宿主病に対する治療効果に対しては教示または開示されていない。
これによって、本発明者たちはセラシアマルセセンスB-1231 KCTC 0386BPから分離したプロディジオシンの単独投与だけでなくサイクロスポリンAと併用投与する場合急性移植片対宿主病に対する卓越な免疫抑制効果を持つことを確認することで本発明を完成した。
【0003】
【特許文献1】韓国特許第406848号
【特許文献2】韓国特許第392225号
【非特許文献1】InternationalJournal of Immunopharmacology 20、pp1-13、1997
【非特許文献2】Journal of Pharmacoloyand Experimental Therapeutics 299(2)、pp415‐425、2001
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的はセラシアマルセセンス(Serratia marcescence)B-1231 KCTC 0386BPで分離したプロディジオシン(prodigiosin)を有効成分として含む急性移植片対宿主病予防または治療用組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成すために、本発明はセラシアマルセセンス(Serratiamarcescence)B-1231 KCTC 0386BPで分離したプロディジオシン(prodigiosin)を有効成分として含む急性移植片対宿主病(acute graft-versus-host disease)予防または治療用組成物を提供する。
前記プロディジオシンは一般的な免疫抑制剤であるサイクロスポリンAとその作用機序が異なっており併用投与することを特徴とする急性移植片対宿主病の予防または治療用組成物を提供する。
【0006】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明のプロディジオシンは本発明者たちが発明した韓国特許第252197号に開示された方法によってセラシアマルセセンスB-1231 KCTC 0386BPから分離して使うことができるし、その方法は下記である。
免疫抑制物質を生産するためにセラシアマルセセンスB-1231 KCTC 0386BPを1l用量三角フラスコに生産培地〔可溶性澱粉1%、パーマメード(phamamedia)0.5%、葡萄糖0.2%、硫酸アンモニウム0.1%、燐酸カリウム0.1%、硫酸マグネシウム7倍結晶水0.05%、塩化カルシウム0.1%、塩化ナトリウム 0.3%、初期pH7.0〕20〜100mlを加えて20-30℃から50〜70時間の間培養した。
活性物質を抽出するために醗酵液と同量のエチルアセテートを加えて20-60分間撹拌した後有機溶媒層を集めて減圧下で濃縮して有相の赤色物質を得、その後シリカゲルコラムでクロロホルム:メタノール溶液を溶媒勾配方法を利用して活性物質を分離精製して、シリカゲル薄層クロマトグラフィーを利用してプロディジオシンを純粋分離精製することができる。
【0007】
前記の方法によって分離、精製されたプロディジオシンの構造は下記化学式 1に示した。
【化1】

したがって本発明はセラシアマルセセンス(Serratia marcescence)B-1231 KCTC 0386BPで分離した前記化学式1の構造を持つプロディジオシン(prodigiosin)を有効成分として含む急性移植片対宿主病(acute graft-versus-host disease)予防または治療用組成物を提供する。
【0008】
また前記プロディジオシンは一般的な免疫抑制剤であるサイクロスポリンAとその作用機序が異なっていて併用投与が可能であることを特徴とする急性移植片対宿主病の予防または治療用組成物を提供する。
本発明の急性移植片対宿主病の予防及び治療用組成物は、組成物総重量に対して前記化合物を0.1ないし50重量%で含む。
本発明の化合物を含む薬学組成物は薬学的組成物の製造に通常的に使う適切な担体、賦形剤及び希釈剤をもっと含むことができる。
本発明の化合物の薬学的投与形態はこれらの薬学的許容可能な塩の形態でも使われることができるし、また単独でまたは他の薬学的活性化合物と結合だけではなく適当な集合で使われることができる。
本発明の薬学組成物は、それぞれ通常の方法によって散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアゾールなどの經口形剤形、外用剤、坐剤及び滅菌注射溶液の形態で剤形化して使われることができる。本発明の化合物に含まれることができる担体、賦形剤及び希釈剤ではラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール(xylitol)、エリトリトール、マルティトール(maltitol)、澱粉、アカシアゴム、アルギネート(alginate)、ゼラチン、カルシウムフォスファート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、マグネシウムステアレート及び鉱物油を挙げられる。製剤化する場合には普通使う充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を使って調剤される。經口投与のための固形製剤には錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれて、このような固形製剤は前記化合物に少なくとも一つ以上の賦形剤例えば、澱粉、カルシウムカボネート(calcium carbonate)、スクロース(sucrose)またはラクトース(lactose)、ゼラチンなどを交ぜて調剤される。また単純な賦形剤以外にマグネシウムステアレート、タルクみたいな潤滑剤らも使われる。經口のための液状製剤では懸濁剤、内用液剤、油剤、シロップ剤などが当たるのによく使われる単純希釈剤である水、リキッドパラフィン以外にさまざまな賦形剤、例えば湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれることができる。非經口投与のための製剤では滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、油剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁剤ではプロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、エチルオルレートのような注射可能なエステルなどが使われることができる。坐剤基剤ではウィテブソル(witepsol)、マクロゴール(macrogol)、ツイン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどが使われることができる。
【0009】
本発明の組成物の好ましい投与量は患者の状態及び体重、疾病の程度、薬物形態、投与経路及び時間によって違うが、当業者によって適切に選択されることができる。しかし好ましい効果のために本発明の化合物は1日0.0001ないし100mg/kgで、好ましくは0.001ないし10mg/kgで投与した方が良い。投与は一日に一度投与することもできて、数回分けて投与することもできる。前記投与量はどんな面でも本発明の範囲を限定するのではない。
本発明の組成物は鼠、マウス、家畜、人間などの哺乳動物に多様な経路に投与されることができる。投与のすべての方式は予想されることができるのに、例えば、經口、直腸または静脈、筋肉、皮下、子宮内硬膜または脳血管内(intracerebroventricular)注射によって投与されることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明はセラシアマルセセンス(Serratia marcescence)B-1231 KCTC 0386BPで分離したプロディジオシン(prodigiosin)を有効成分として含む急性移植片対宿主病(acute graft-versus-host disease)予防または治療用組成物に係り、本発明のプロディジオシンはIL-2発現には影響を及ぼさないがT細胞の活性化に必要なIL-2の受容体の発現を抑制することでT細胞の増殖を選択的に抑制して、IL-2受容体がT細胞に結合した以後の信号伝逹には影響を及ぼさない免疫抑制活性を持つことで単独投与の場合だけではなく一般的な免疫抑制剤であるサイクロスポリンAとその作用機序が異なっていてこれと共に併用投与する場合には免疫抑制効果が著しく増大する効果を持っているので本発明のプロディジオシンは急性移植片対宿主病の予防及び治療に効果的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を下記の実施例及び実験例によってもっと詳しく説明する。
ただ、下記の実施例及び実験例は本発明の例示のみ、本発明がこれによって限定されない。
【実施例】
【0012】
実施例1.プロディジオシンの分離及び精製
免疫抑制物質を生産するためにセラシアマルセセンスB-1231 KCTC 0386BPを1l用量三角フラスコに生産培地〔可溶性澱粉1%、パーマメード(phamamedia)0.5%、葡萄糖0.2%、硫酸アンモニウム0.1%、燐酸カリウム0.1%、硫酸マグネシウム7倍結晶水0.05%、塩化カルシウム0.1%、塩化ナトリウム 0.3%、初期pH7.0〕100mlを加えて28℃から62時間の間培養した。
活性物質を抽出するために醗酵液と同量のエチルアセテートを加えて30分間撹拌した後有機溶媒層を集めて減圧濃縮して有相の赤色物質を得、その後シリカゲルカラムでクロロホルム:メタノール溶液を溶媒勾配方法を利用して活性物質を分離精製し、シリカゲル薄層クロマトグラフィーを利用してプロディジオシンを純粋分離精製した。
【0013】
実験例1.急性移植片対宿主病に対するプロディジオシンの治療効果
1-1.マウスの生存可否実験
骨髄移植試験系を利用して急性移植片対宿主病に対する本発明のプロディジオシンの治療効果を観察した。
C57BL/6マウスの骨髄細胞(5x107cells)と腓腸細胞(1x107cells)を、放射線を照射して免疫機能を除去したBalb/cマウスに移植して急性移植片対宿主病を誘発した。細胞を移植した後14日間マウスの生存率を調査した(Blood、97(4)、pp1123-1130、2001)。
対照群マウスには0.5%ツイン(tween)80を隔日間隔で腹腔投与した。
前記実試例1で分離、精製したプロディジオシンまたはサイクロスポリンA (Sigma Co.)を0.5%ツイン(tween)80にとかした後1mg/kgの濃度から隔日間隔で腹腔投与した。併用投与群ではプロディジオシンとサイクロスポリンAを同時に投与した。

前記実験遂行の結果、図1で示すように対照群(○)の場合、細胞移植の後6日頃に50%のBalb/cマウスが死亡したし、10日頃にすべてのBalb/cマウスが急性移植片対宿主病で死亡した。しかしプロディジオシン投与群(●)では細胞移植後6日頃に35%のBalb/cマウスが死亡したが、65%のマウスは実験終了日まで生きていた。またサイクロスポリンA投与群(□)の場合50%のマウスが実験終了日まで生存していた。一方プロディジオシン及びサイクロスポリンAの併用投与群(■)ではすべての動物が生存することを確認することができた。
【0014】
1-2.マウスの体重変化実験
実験例1-1と等しい方法で遂行してマウスの体重変化を調査した。
前記実験遂行の結果、図2で示すように対照群(○)の場合、細胞移植の後2日頃からマウスの体重が急激に減少した症状を現わした。9日まで体重が持続的に減少した後すべてのマウスが死亡した。これは移植された骨髄細胞中のT細胞が宿主の臓器を攻撃して現われる急性移植片対宿主病の代表的な症状である。一方プロディジオシン投与群(●)とサイクロスポリンA投与群(□)の単独投与及び併用投与群(■)のBalb/cマウスも2日頃から体重が減少し始めて6日まで持続的に減少したが7日頃から体重が増加し始め、14日には正常な体重を維持することを確認することができた。

したがって、前記実験例1-1及び1-2の結果を総合して見る時プロディジオシン及びサイクロスポリンAは単独投与の場合1mg/kgで50〜60%の急性移植片対宿主病治療効果があり、これらの併用投与の時には100%の力強い治療効果があることを分かる。
【0015】
実験例2.T細胞及びB細胞の増殖に対する影響
2-1.プロディジオシンがT細胞及びB細胞の増殖に及ぶ影響
C57BL/6マウスの腓腸のT細胞を分離して使った。1μg/mlのコンカナバリンAを使ってT細胞の増殖を誘発し、1μg/mlのリポポリサッカライド(lypopolysaccharide)を利用してB細胞の増殖を誘導した。前記実試例1で分離したプロディジオシンはジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide)にとかした後最終濃度が3、10、30ng/mlになるように培地に添加した。60時間の間培養した後[3H]-チミジン(thymidine)を1μCi/wellの濃度で培養容器に添加し、12時間後に細胞を除去してDNA内に流入された放射能の量を測定した。
前記実験遂行の結果、図3で示すようにプロディジオシンはT細胞の増殖を選択的に抑制し、B細胞の増殖は抑制しないことを確認することができた。
【0016】
2-2.サイクロスポリンAがT細胞及びB細胞の増殖に及ぶ影響
前記実験例2-1と等しい方法によってサイクロスポリンA(SigmaCo.)のT細胞及びB細胞の増殖に及ぶ影響を観察した。
前記実験遂行の結果、図4で示すところのようにサイクロスポリンAはT細胞の増殖を選択的に抑制し、B細胞の増殖は抑制しないことを確認することができた。
したがって前記実験例2-1及び実験例2-2の結果を総合して見れば本発明のプロディジオシン及びサイクロスポリンAはT細胞の増殖を選択的に抑制する免疫抑制剤であることがわかり、プロディジオシンは2.03ng/mlのIC50(50%抑制濃度)を示し、サイクロスポリンAは1.29ng/mlのIC50を示し、二つの物質の薬効はほとんど同等であることが分かった。
【0017】
実験例3.プロディジオシン及びサイクロスポリンA がIL-2及びIL-2受容体の発現に及ぶ影響
T細胞の活性化のためには3種類の信号伝逹系が必要である。抗原提示細胞(antigen presenting cell)とMHC-TCR相互作用(Signal 1)と CD80-CD28相互作用(Signal 2)を通じてT細胞が活性化になる。この時、T細胞はIL-2を生成し、自主的にIL-2受容体発現を増加させるようになる。以後にT細胞内部でIL-2−IL-2受容体信号伝逹(Signal 3)が発生するようになる。T細胞が完全に活性化になって免疫機能を遂行するためにはこのような三つの種類の信号が皆必要になる。IL-2受容体はアルファ、ベータ、ガンマの三つの種類の蛋白質で構成されているし、ベータとガンマはいつも発現している一方に、アルファはT細胞活性化にしたがって発現量が調節される。
代表的な免疫抑制剤であるサイクロスポリンAはIL-2の生成を抑制する物質である。シグナル1とシグナル2に関与するカルシネウリン(calcineurin)という蛋白質の機能を抑制して、窮極的に転写調節物質であるNF-ATの機能を抑制してIL-2生成を抑制する物質である。NF-ATはIL-2受容体の生成にも関与するからサイクロスポリンAはIL-2受容体の生成も抑制する。
【0018】
3-1.IL-2発現に及ぶ影響
C57BL/6マウスの腓腸のT細胞を分離して使った。1μg/mlのコンカナバリンAを使ってT細胞を活性化させた。プロディジオシン及びサイクロスポリンAはジメチルスルホキシド(DMSO)にとかした後最終濃度が3、10、30ng/mlになるように培地に添加した。4時間の間培養した後細胞を除去し、RNAを分離した後RT-PCR(reverse transcription-polymerase chain reaction)を利用してIL-2mRNA発現度を測定した。
前記実験遂行の結果、図5で示すように活性化しないT細胞は IL-2mRNAを発現することができなかった(untreated-試験群、U)。しかしコンカナバリンAで処理する場合IL-2mRNAの発現が強く増加した(Naive control、N)。溶媒で使われた0.1%DMSOはIL-2mRNA発現に影響を与えなかった(vehicle control、V)。
プロディジオシンを3、10、30ng/mlの濃度で処理する場合IL-2mRNA発現に影響を与えなかったが、サイクロスポリンAはIL-2mRNA発現を強く抑制した。ベータ-アクチン(beta-actin)に対するRT-PCRを遂行して等しい量のRNAを実験に使った。グラフはベータ-アクチンに対する相対的な量を現わしている。
【0019】
3-2.IL-2受容体の発現に及ぶ影響
C57BL/6マウスの腓腸のT細胞を分離して使った。1μg/mlのコンカナバリンAを使ってT細胞を活性化させた。プロディジオシン及びサイクロスポリンAはジメチルスルホキシド(DMSO)にとかした後最終濃度が3、10、30ng/mlになるように培地に添加した。4時間の間培養した後細胞を除去し、RNAを分離した後RT-PCR(reverse transcription-polymerase chain reaction)を利用してIL-2mRNA発現度を測定した。
前記実験遂行の結果、図6で示すように活性化しないT細胞は IL-2受容体mRNAを発現することができなかった(untreated-試験群、U)。しかしコンカナバリンAで処理する場合IL-2受容体mRNAの発現が強く増加し(Naive control、N)、溶媒で使われた0.1%DMSOはIL-2受容体mRNA発現に影響を与えなかった(vehicle control、V)。プロディジオシンを3、10、30ng/mlの濃度で処理する場合IL-2受容体mRNA発現を強く抑制し、サイクロスポリンAもIL-2受容体mRNA発現を強く抑制した。ベータ-アクチン(beta-actin)に対するRT-PCRを遂行して等しい量のRNAを実験に使った。グラフはベータ-アクチンに対する相対的な量を現わしている。
前記実験例3-1及び3-2の結果を総合して見ればプロディジオシンはIL-2受容体発現を選択的に抑制する免疫抑制剤であることが分かる、一方、サイクロスポリンAはIL-2及びIL-2受容体の発現を皆抑制した。このような結果からプロディジオシン及びサイクロスポリンAは相異なっている作用機序を有した物質であることを確認することができた。
【0020】
実験例4.プロディジオシン及びサイクロスポリンAの免疫抑制効果とIL-2との関連性
4-1.プロディジオシンの免疫抑制効果とIL-2との関連性
C57BL/6マウスの腓腸のT細胞を分離して使い、1μg/mlのコンカナバリンAと10unit/mlのIL-2を利用してT細胞の増殖を誘導した。対照群では 1μg/mlのコンカナバリンAを使ってT細胞の増殖を誘発した。プロディジオシンはDMSOにとかした後最終濃度が3、10、30ng/mlになるように培地に添加した。60時間の間培養した後[3H]-チミジンを1μCi/wellの濃度で培養容器に添加し、12時間後に細胞を除去し、DNA内に流入された放射能の量を測定した。
前記実験遂行の結果、図7で示すようにプロディジオシンはコンカナバリンAによるT細胞の増殖を抑制し、外部で添加した過量のIL-2は影響を与えなかった。
【0021】
4-2.サイクロスポリンAの免疫抑制効果とIL-2との関連性
C57BL/6マウスの腓腸のT細胞を分離して使い、1μg/mlのコンカナバリンAと10unit/mlのIL-2を利用してT細胞の増殖を誘導した。対照群では 1μg/mlのコンカナバリンAを使ってT細胞の増殖を誘発した。サイクロスポリンAはDMSOにとかした後最終濃度が3、10、30ng/mlになるように培地に添加した。60時間の間培養した後[3H]-チミジンを1μCi/wellの濃度で培養容器に添加し、12時間後に細胞を除去してDNA内に流入された放射能の量を測定した。
前記実験遂行の結果、図8で示すようにサイクロスポリンAはコンカナバリンAによるT細胞の増殖を抑制し、外部で添加した過量のIL-2によって復旧された。
したがって実験例4-1及び4-2の結果を総合して見ればプロディジオシンの免疫抑制効果はIL-2と関連性がなく、サイクロスポリンAの免疫抑制効果はIL-2によって復旧されることが分かる。このような結果からプロディジオシン及びサイクロスポリンAの作用機序は相異なっていることを確認することができた。
【0022】
実験例5.プロディジオシン及びサイクロスポリンAのIL-2依存性T細胞の増殖に及ぶ影響
5-1.プロディジオシンのIL-2依存性T細胞の増殖に及ぶ影響
C57BL/6マウスの腓腸のT細胞を分離して使い、1μg/mlのコンカナバリンAを利用してT細胞の増殖を誘導した(コンカナバリンA依存性T細胞増殖、ConA-dependent T cell proliferation)。
IL-2依存性T細胞増殖を測定するために、マウスの腓腸で分離したT細胞1μg/mlコンカナバリンAを48時間の間処理した。3回洗滌してすべてのコンカナバリンAをとり除いた後実験に使った。このように前処理された細胞は過量のIL-2受容体を持っていて外部から加えられるIL-2に応じるが、前処理しない細胞はIL-2受容体がなく、外部から添加するIL-2に応じない。前処理された細胞に10unit/mlのIL-2を添加してT細胞増殖を誘導した(IL-2-dependentT cell proliferation)。
プリディジオシンはDMSOにとかした後最終濃度が3、10、30ng/mlになるように培地に添加した。60時間の間培養した後[3H]-thymidineを1μCi/wellの濃度で培養容器に添加したし、12時間後に細胞を除去してDNA内に流入された放射能の量を測定した。
図9に現われた結果と一緒にプロディジオシンはコンカナバリンAによるT細胞の増殖を抑制したが、IL-2によるT細胞増殖は抑制しなかった。
【0023】
5-2.サイクロスポリンAのIL-2依存性T細胞の増殖に及ぶ影響
C57BL/6マウスの腓腸のT細胞を分離して使い、1μg/mlのコンカナバリンAを利用してT細胞の増殖を誘導した(コンカナバリンA依存性T細胞増殖、ConA-dependent T cell proliferation)。
IL-2依存性T細胞増殖を測定するために、マウスの腓腸で分離したT細胞μg/mlコンカナバリンAを48時間の間処理した。3回洗滌してすべてのコンカナバリンAをとり除いた後実験に使った。このように前処理された細胞は過量のIL-2受容体を持っていて外部から加えられるIL-2に応じるが、前処理しない細胞はIL-2受容体がなくて外部から添加するIL-2に応じない。前処理された細胞に10unit/mlのIL-2を添加してT細胞増殖を誘導した(IL-2-dependentT cell proliferation)。
サイクロスポリンAはジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide)にとかした後最終濃度が3、10、30ng/mlになるように培地に添加した。60時間の間培養した後[3H]-チミジン(thymidine)を1μCi/wellの濃度で培養容器に添加し、12時間後に細胞を除去してDNA内に流入された放射能の量を測定した。
前記実験遂行の結果、図10で示すようにサイクロスポリンAはコンカナバリンAによるT細胞の増殖を抑制したが、IL-2によるT細胞増殖は抑制しなかった。
したがって前記実験例5-1及び5-2の結果を総合して見れば、プロディジオシン及びサイクロスポリンAはIL-2-依存性T細胞増殖、また説明すればIL-2がその受容体に結合した以後の信号伝逹には影響を与えないことを分かる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明のプロディジオシンはIL-2発現には影響を及ぼさないがT細胞の活性化に必要なIL-2受容体の発現を抑制することでT細胞の増殖を選択的に抑制して、IL-2受容体がT細胞に結合した以後の信号伝逹には影響を及ぼさない免疫抑制活性を持つことで単独投与の場合だけではなく一般的な免疫抑制剤であるサイクロスポリンAとその作用機序が相異なっていて一緒に併用投与する場合には免疫抑制効果が著しく増大する効果を持っているので本発明のプロディジオシンは急性移植片対宿主病の予防及び治療に効果的な組成物である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は急性移植片対宿主病を誘発したBalb/cマウスにプロディジオシンを投与して急性移植片対宿主病に対する治療効果可否を確認するために生存率(図1)及びマウスの体重(図2)を観察した図である。
【図2】図2は急性移植片対宿主病を誘発したBalb/cマウスにプロディジオシンを投与して急性移植片対宿主病に対する治療効果可否を確認するために生存率(図1)及びマウスの体重(図2)を観察した図である。
【図3】図3はプロディジオシンT細胞の増殖に及ぶ影響を示す図。
【図4】図4はサイクロスポリンAのT細胞の増殖に及ぶ影響を示す図。
【図5】図5はプロディジオシン及びサイクロスポリンAのT細胞のIL-2の発現に及ぶ影響を示す図。
【図6】図6はプロディジオシン及びサイクロスポリンAのT細胞のIL-2受容体(IL-2Ralpha)の発現に及ぶ影響を示す図。
【図7】図7はプロディジオシンの免疫抑制効果とIL-2との関連性を示す図、
【図8】図8はサイクロスポリンAの免疫抑制効果とIL-2との関連性を示す図、
【図9】図9はプロディジオシンのIL-2依存性T細胞の増殖に及ぶ影響を示す図、
【図10】図10はサイクロスポリンAのIL-2依存性T細胞の増殖に及ぶ影響を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラシアマルセセンス(Serratia marcescence)B-1231 KCTC 0386BPで分離したプロディジオシン(prodigiosin)を有効成分として含む急性移植片対宿主病(acute graft-versus-host disease)の予防または治療用組成物。
【請求項2】
前記プロディジオシンは免疫抑制剤であるサイクロスポリンAとその作用機序が異なっており、併用投与することを特徴とする、請求項1に記載の急性移植片対宿主病の予防または治療用組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2009−500447(P2009−500447A)
【公表日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−521320(P2008−521320)
【出願日】平成18年7月10日(2006.7.10)
【国際出願番号】PCT/KR2006/002700
【国際公開番号】WO2007/008016
【国際公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(505012690)コリア リサーチ インスティテュート オブ バイオサイエンス アンド バイオテクノロジー (7)
【Fターム(参考)】