説明

セラミックスの製造方法

【課題】セラミックスの製造においては、品質の安定化のため、密度分布が均一なセラミックスが求められており、特に電磁波加熱によるセラミックスの製造方法ではセッターと接する部分とその他の部分の密度差を低減することが求められている。
【解決手段】ITOやAZO等のセラミックス原料粉末の成形体を電磁波加熱によって焼結するセラミックスの製造方法において、成形体を載せるセッターとして多孔質構造を有するセラミックスからなるものを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波加熱によるセラミックスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からセラミックスの焼成方法としては、常圧焼成法、ホットプレス法、HIP法等があるが、これらの焼成では外部熱源により加熱焼結するため、均一な焼成物を得るためには長時間の焼成が必要であり、エネルギーを多大に消費する製造方法である。近年、自己加熱による均一加熱、焼成時間短縮による省エネ効果の観点からマイクロ波やミリ波といった電磁波を用いた自己加熱型焼結がアルミナ等のセラミックス材料で検討されている(例えば非特許文献1参照)。
【0003】
電磁波を用いた加熱においては、被焼成物の自己発熱を利用した焼結であり、熱は被焼成物内部から外部へ移動し、被焼成物の表面温度は内部より低くなる。この温度差が大きいと焼成時に被焼成物が破損する場合がある。この対策として、被焼成物の表面温度を内部と同等に保持する方法として等温断熱壁という概念が提案され、電磁波加熱によるセラミックス焼成が可能となってきた(例えば特許文献1参照)。
【0004】
一方で、電磁波加熱で得られた焼結体では、焼結体の上下方向、特にセッターと接していた部分の周辺のみ全体に比べ密度が異なる場合が見られる。密度の異なる領域はセッターとの接触面から上部へ2mm程度までの領域である。通常の外部加熱の場合、昇温速度も速くなく、被焼成物とセッターとの温度差は大きくなかった。一方、電磁波加熱によるセラミックスの焼成では自己発熱であるため、被焼成物とセッターとの電磁波吸収率が大きく異なると被焼成物の上下での温度差を誘発すると推測される。その結果、通常使用される気孔率が10%前後のセッターを用いると、セッターに接した部分の焼結体の密度が他の部分に比べ、高くなったり、低くなったりする。
【0005】
密度が高くなる原因ははっきりわからないが、セッターと接している部分は表面への熱の放出が抑制されるために温度が上がりやすいことや、セッターが被焼成物より高温となり、被焼成物の底部が高温となったことが推測される。温度が上がり過ぎた場合、被焼成物とセッターが反応してしまい、製品が取り出せない場合もあり、セッターと接する部分が高温となる場合は、焼成温度をセッターと接する部分に合わせるため、被焼成物の全体の密度が低くなる場合もある。また、密度が低くなる原因はセッターの方が被焼成物より電磁波の吸収が悪いために被焼成物の熱がセッターに奪われるためではないかと推測している。
【0006】
このような現象は、特にセッターとの接触面積が大きい形状の被焼成物を焼成する場合や厚みの薄い製品において、影響が大きい。このような製品の例としては、ITO(Indium Tin Oxide)焼結体、AZO(Aluminum Zinc Oxide)焼結体等からなるセラミックススパッタリングターゲットが挙げられる。スパッタリングターゲットは液晶等のパネル製造装置の大型化に伴い、大型になってきている。例えば、セラミックス焼結体の長さは約80cm、幅が約30cm、厚みが5mmから15mm程度の薄く、平坦な形状をしており、厚み方向の密度分布の存在は品質に影響するため好ましくない。
【0007】
ITO、AZOスパッタリングターゲットはITO、AZO薄膜製造用のスパッタリングターゲットである。ITO、AZO薄膜は高導電性、高透過率といった特徴を有し、更に微細加工も容易に行えることから、フラットパネルディスプレイ用表示電極、太陽電池用窓材、帯電防止膜等の広範囲な分野に渡って用いられている。特に液晶表示装置を始めとしたフラットパネルディスプレイ分野では近年大型化および高精細化が進んでおり、その表示用電極であるITO、AZO薄膜に対する需要もまた急速に高まっている。
【0008】
このようなITO、AZO薄膜の製造方法はスプレー熱分解法、CVD法等の化学的成膜法と電子ビーム蒸着法、スパッタリング法等の物理的成膜法に大別することができる。中でもスパッタリング法は大面積化が容易でかつ高性能の膜が得られる成膜法であることから、様々な分野で使用されている。
【0009】
スパッタリング法によりITO、AZO薄膜を製造する場合、用いるスパッタリングターゲットとしてはITOの場合、酸化インジウムと酸化スズからなる複合酸化物ターゲット(以降ITOターゲットと略する)が用いられる。また、AZO薄膜に関しても同様にAZOターゲットが用いられている。
【0010】
ITOスパッタリングターゲット、AZOスパッタリングターゲットの品質に関しては、成膜中のアーキングの発生に伴う問題点が挙げられる。
【0011】
スパッタリングでのITO、AZO成膜を行なう場合、アーキングが多く発生すると形成された薄膜中にパーティクル由来の異物や欠陥が発生する。これは液晶表示装置等のフラットパネルディスプレイにおける製造歩留まり低下の原因となり、アーキング発生を抑制できるスパッタリングターゲットが強く望まれている。
【0012】
アーキングの低減には、スパッタリングターゲットに用いるITO焼結体、AZO焼結体の密度向上が有効であり、例えば焼結密度98%以上100%以下、焼結粒径1μm以上20μm以下の高密度ITO焼結体が記載されている(例えば特許文献2参照)。また、高密度焼結体の製造方法としては、例えば酸素加圧焼結を行う方法等が知られている(例えば特許文献3参照)。
【0013】
このようにセラミックススパッタリングターゲットの品質に関して高密度な焼結体を製造することが重要である。
【0014】
電磁波加熱によりセラミックススパッタリングターゲットを製造する場合、セッターと接触した部分の温度が上がりまたは下がり、上下方向で密度差が出やすい問題があり、製造が安定しなかった。
【0015】
【特許文献1】特許第3845777号公報
【特許文献2】特許第3457969号公報
【特許文献3】特開平3−207858号公報
【非特許文献1】豊田中央研究所R&Dレビュー Vol.30 NO.4(1995)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
セラミックスの製造においては、品質の安定化のため、密度分布が均一なセラミックスが求められており、特に電磁波加熱によるセラミックスの製造方法ではセッターと接する部分とその他の部分の密度差を低減することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、多孔質構造を有するセラミックスからなるセッターを用いることで、セッターと接する被焼成物の下部の密度の増減を抑制し、上下方向で密度差の少ないセラミックスが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0018】
即ち本発明は、セラミックス原料粉末の成形体を電磁波加熱によって焼結するセラミックスの製造方法において、成形体を載せるセッターとして多孔質構造を有するセラミックスからなるセッターを用いることを特徴とするセラミックスの製造方法である。以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】
本発明で製造されるセラミックスは電磁波加熱により焼結できるセラミックスであれば特に限定されない。例えば、アルミナ、ジルコニア、チタニア、SiC等の構造材料や、ITO(In−SnO)、AZO(Al−ZnO)、In−ZnO、Ga−ZnO、TiO−α(α:Ta等の正五価のイオン)、SnO−β(β:Sb等の正五価のイオン)等の透明導電膜用のターゲット材料、また、BaTiO、PZT等の機能性セラミックス等が挙げられる。
【0020】
本発明で用いられる多孔質構造を有するセラミックスセッターとは、気孔を有するセラミックス製のセッターであり、その気孔率は20%以上であるが、30%以上が好ましい。気孔率が大きいほどセッター自身の発熱量が低下し、また、被焼成物とセッターとの間の熱伝達も低減し、被焼成物への熱的影響が緩和される。
【0021】
また、本発明の多孔質構造を有するセラミックスセッターの孔サイズは特に限定されないが、10nmから10mmが好ましく、被焼結体の焼成温度において、孔サイズ等の構造が変化しないものを選択する。例えば、高温で焼成する場合、孔サイズは1mm程度の大きさで、骨格を形成する材料が網目状になっているセッター等が高温での変形が小さいため好ましい。
【0022】
また、本発明の多孔質構造を有するセラミックスセッターの形状は被焼成物の積載が可能であればどのような形状でもよい。例えば、板状のもの、波状のもの、ブロック状のものを例示することができる。
【0023】
また、本発明の多孔質構造を有するセラミックスセッターの材質は被焼成物の焼成温度において変形や組成変化、また、被焼成物との反応が起きない材質であれば特に限定されない。被焼成物の電磁波吸収特性と似た特性を有する材質がさらに好ましい。例えば、アルミナ、ムライト、ジルコニア、SiC、シリカ−アルミナ等が例示できる。
【0024】
本発明の多孔質構造を有するセッターの設置方法は、被焼成物が多孔質構造を有するセッターの上に載っていることが必須であり、多孔質構造を有するセッターの上に被焼成物を載せてもよく、また通常の気孔率の小さいセッターの上に多孔質セッターを載せて、その上に被焼成物を載せる方法でも良い。
【0025】
次に本発明のセラミックスの製造方法について、ITO、AZO焼結体の製造を例に挙げて説明する。
【0026】
初めに、ITO、AZO焼結体の原料粉末を所定の混合比で混合する。例えば、ITO焼結体の場合、酸化スズの含有量はスパッタリング法により薄膜を製造した際に比抵抗が低下するSnO/(In+SnO)で8重量%以上、15重量%以下とすることが好ましい。また、例えば、AZOの場合、酸化アルミニウムの含有量は、スパッタリング法により薄膜を製造した際に比抵抗が低下する1重量%以上、5重量%以下とすることが望ましい。
【0027】
原料粉末にバインダー等を加えてもよい。混合はボールミル、ジェットミル、クロスミキサー等で行なう。
【0028】
得られた原料粉末をプレス法あるいは鋳込法等の成形方法により成形してターゲット成形体を製造する。この際、使用する粉末の平均粒径が大きいと焼結後の密度が充分に上昇しない場合があるので、使用する粉末の平均粒径は1μm以下であることが望ましく、更に好ましくは0.1〜1μmである。こうすることにより、焼結粒径が小さく、焼結密度の高い焼結体を得ることが可能となる。
【0029】
次に得られた成形体に必要に応じて、CIP等の圧密化処理を行う。この際CIP圧力は充分な圧密効果を得るため1ton/cm以上、好ましくは2ton/cm以上、さらに好ましくは2〜3ton/cmである。ここで初めの成形を鋳込法により行った場合には、CIP後の成形体中に残存する水分およびバインダー等の有機物を除去する目的で脱バインダー処理を施してもよい。また、初めの成形をプレス法により行った場合でも、成型時にバインダーを使用したときには、同様の脱バインダー処理を行うこともできる。
【0030】
次に、このようにして得られた成形体の電磁波加熱による焼結を行う。本発明は電磁波を用いて加熱する焼結方法であれば特に限定されないが、電磁波としてはマグネトロンまたはジャイロトロン等から発生する連続またはパルス状の2.45GHz等のマイクロ波、28GHz等のミリ波、またはサブミリ波が利用できる。電磁波の周波数の選択はセラミックスの焼結挙動から適切なものを選択することができる。
【0031】
使用される電磁波焼成炉としては、バッチ式、連続式、外部加熱式とのハイブリット式等の種々の焼成炉を使用することができる。
【0032】
得られた成形体を多孔質構造を有するセラミックスセッターの上に設置する。ITOの場合、焼結保持温度は1300℃以上、1650℃未満、またAZOの場合は、1200℃以上、1550℃未満のため、多孔質構造を有するセラミックスセッターの材質としては、アルミナ、ムライト、SiC等の耐熱性の高い材質を選択する。
【0033】
成形体とセッターは断熱材で取り囲まれる。この際、断熱材の内部に等温熱障壁のための材料を設置することも可能である。等温断熱壁として、アルミナ、ムライト、SiC等の耐熱性の高い材質が好ましい。
【0034】
焼成時の昇温速度については特に限定されないが、100〜600℃/時間とするのが好ましく、さらには200〜600℃/時間が好ましい。焼結保持温度は、例えばITOの場合、1300℃以上、1650℃未満、好ましくは1400℃以上1600℃以下である。また、AZOの場合は、1200℃以上、1550℃未満、好ましくは1300℃以上1500℃以下である。
【0035】
なお、焼結時の保持時間は特に限定しないが、5時間以内で十分である。また、降温速度は特に規定されないが、例えば、ITO焼結体の場合、1200℃までは100℃/時間以上、好ましくは200℃/時間以上である。1200℃から室温までの降温速度の上限値については特に規定されないが、100℃/時間以下とするのが好ましい。降温速度を遅くする温度の設定および降温速度の選択は、焼結炉の容量、焼結体のサイズおよび形状、割れ易さなどを考慮して適宜決定すればよい。焼結時の雰囲気はセラミックスの種類により任意に選択する。例えば、ITO焼結体の場合、酸素雰囲気中が好ましい。また、AZO焼結体の場合、焼結時の雰囲気としては大気あるいは不活性雰囲気であることが好ましい。
【0036】
このようにして得られたITO、AZO焼結体を所望の形状に研削加工した後、必要に応じて無酸素銅等からなるバッキングプレートにインジウム半田等を用いて接合することにより、本発明のITO、AZOススパッタリングターゲットを得ることができる。
【0037】
得られたターゲットをスパッタリング装置内に設置し、アルゴンなどの不活性ガスと必要に応じて酸素ガスをスパッタリングガスとして用いて、dcあるいはrf電界を印加してスパッタリングを行うことにより、所望の基板上にITO、AZO薄膜を形成することができる。この際アーキング発生量が低減されるという本発明の効果が発現される。
【0038】
また、本発明によるセラミックスの製造方法は、セラミックスに付加機能を持たせることを目的として第3の元素を添加したセラミックスに対しても有効である。第3元素としては、例えば、Mg,Al,Si,Ti,Zn,Ga,In,Ge,Y,Zr,Nb,Hf,Ta等を例示することができる。これら元素の添加量は、特に限定されるものではないが、セラミックスの優れた電気光学的特性を劣化させないため、(第3元素の酸化物の総和)/(セラミックス+第3元素の酸化物の総和)で0重量%を超え20重量%以下(重量比)とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0039】
本発明の製造方法により、容易に高密度で密度分布の少ないセラミックスが得られ、製品の品質が安定化する。したがって、本発明のセラミックスをターゲット材として用いることにより、高密度でかつ密度分布が少ないことから、アーキングの発生が極めて少なく、ターゲット寿命までの長時間に亘ってアーキングの発生の少ない優れたスパッタリングターゲットを得ることができる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、本実施例における各測定は以下のように行った。
(1)焼結体密度:アルキメデス法により測定した。
なお、相対密度(D)とは、例えば、ITO焼結体の場合、InとSnOの真密度の相加平均から求められる理論密度(dITO)に対する相対値を示す。相加平均から求められる理論密度(d)とは、ターゲット組成において、InとSnO粉末の混合量をa(g)とb(g)とした時、それぞれの真密度7.18(g/cm)、6.95(g/cm)を用いて、d=(a+b)/((a/7.18)+(b/6.95))により求めた。焼結体の測定密度をd1とすると、その相対密度Dは、D=d1/dITO×100(%)で求めた。
【0041】
また、例えばAZO焼結体の場合、相対密度(D)とは、ZnOおよびAlの真密度の相加平均から求められる理論密度(dAZO)に対する相対値を示す。相加平均から求められる理論密度(d)とは、ターゲットの組成において、ZnOおよびAl粉末の混合量をx(g)およびy(g)としたとき、それぞれの真密度5.68(g/cm)および3.987(g/cm)を用いて、d=(x+y)/((x/5.68)+(y/3.987))により求めた。実際に得られた焼結体の密度をd2とすると、その相対密度Dは、D=d2/dAZO×100で求めた。
【0042】
(2)焼結体の厚さ方向の密度:電磁波加熱により得られた焼結体の厚さ方向の組織を観察した結果、セッター接触面から2mm程度までの組織がその他の部分に比べ変化が大きいため、セッター接触面から2mm前後での密度を測定した。
密度の測定は、焼結体の厚み方向に、上部密度(上部表面〜セッター接触面より2mm上方まで)と、下部密度(セッター接触面〜その2mm上方まで)について求めた。
下部の密度は、平研によりセッター接触面から2mm上方まで焼結体を研削し、その研削前後のアルキメデス法による密度測定値から、以下の式により算出した。
下部密度={(研削前重量)−(研削後重量)}/{(研削前重量)/(研削前密度)−(研削後重量)/(研削後密度)}
上部の密度は、研削後の焼結体から通常の方法により求めた。
【0043】
(実施例1)
平均粒径0.6μmの酸化インジウム粉末90重量部と平均粒径0.5μmの酸化スズ粉末10重量部とをポリエチレン製のポットに入れ、乾式ボールミルにより20時間混合し、混合粉末を調製した。前記混合粉末のタップ密度を測定したところ2.0g/cmであった。
【0044】
この混合粉末を所定の焼結体厚みが得られるように粉末量を調整して金型に入れ、300kg/cmの圧力でプレスして成形体とした。この成形体を2ton/cmの圧力でCIPによる処理を行った。次にこの成形体をマイクロ波焼成炉(周波数=2.45GHz)にアルミナ製の網目状のセッター(気孔率=30%、孔サイズ=1mm、サイズ80×80mm、厚み=10mm、Al=99%以上)の上に設置して、以下の条件で焼結した。
(焼結条件)昇温速度:300℃/時間、焼結保持温度:1500℃、焼結時の保持時間:1時間、雰囲気:昇温時の室温から降温時の100℃まで純酸素ガスを炉内に導入、降温速度:焼結保持温度から1200℃までは、200℃/時間、以降100℃/時間。
【0045】
得られた焼結体の密度、厚み方向の密度を測定した。結果を表1に示す。焼結体密度は高く、かつ焼結体の厚み方向の密度差が小さい焼結体が得られた。
【0046】
(実施例2)
平均粒径0.9μmの酸化亜鉛粉末98重量部と平均粒径0.3μmの酸化アルミニウム粉末2重量部とをポリエチレン製のポットに入れ、乾式ボールミルにより24時間混合し、混合粉末を調製した。この混合粉末を金型に入れ、300kg/cmの圧力でプレスして成形体とした。この成形体を2ton/cmの圧力でCIPによる処理を行った。
【0047】
次にこの成形体をミリ波焼成炉(周波数=28GHz)にアルミナ製の多孔質セッター(気孔率=40%、孔サイズ=3mm、サイズ80×80mm、厚み=10mm、Al=99%以上)の上に設置して、以下の条件で焼結した。
(焼結条件)昇温速度:300℃/時間、焼結保持温度:1400℃、焼結時の保持時間:1時間、雰囲気:昇温時の室温から降温時の100℃まで純窒素ガスを炉内に導入、降温速度:100℃/時間。
【0048】
得られた焼結体の密度、厚み方向の密度を測定した。結果を表1に示す。焼結体密度は高く、かつ焼結体の厚み方向の密度差が小さい焼結体が得られた。
【0049】
(比較例1)
セッターとして、アルミナ製セッター(気孔率=12%、厚み=10mm)を用いた以外は実施例1と同様にして、ITOの焼成を行った。得られた焼結体はセッターと溶着しており、製品をセッターから取り出せなかった。
【0050】
(比較例2)
焼結保持温度を1450℃とした以外は比較例1と同様にして、ITOの焼成を行った。得られた焼結体の密度、厚み方向の密度を測定した。結果を表1に示す。焼結体の厚み方向の密度差が大きかった。
【0051】
(比較例3)
セッターとして、アルミナ製セッター(気孔率=12%、厚み=10mm)を用い、焼結保持温度=1350℃とした以外は実施例2と同様にして、AZOの焼成を行った。得られた焼結体の密度、厚み方向の密度を測定した。結果を表1に示す。焼結体の厚み方向の密度差が大きかった。
【0052】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス原料粉末の成形体を電磁波加熱によって焼結するセラミックスの製造方法において、成形体を載せるセッターとして多孔質構造を有するセラミックスからなるセッターを用いることを特徴とするセラミックスの製造方法。
【請求項2】
製造されるセラミックスがITOであることを特徴とする、請求項1に記載のセラミックスの製造方法。
【請求項3】
製造されるセラミックスがAZOであることを特徴とする、請求項1に記載のセラミックスの製造方法。

【公開番号】特開2009−51674(P2009−51674A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−217271(P2007−217271)
【出願日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】