説明

セラミックヒータの製造方法及びグロープラグの製造方法

【課題】絶縁基体と、この絶縁基体内に埋設された発熱抵抗体とを備え、耐久性の良好なセラミックヒータの製造方法、及びこのようなセラミックヒータを有するグロープラグの製造方法を提供する。
【解決手段】焼成により絶縁基体10の一部となる第1成形体30及び焼成により発熱抵抗体11となる未焼成発熱抵抗体33を有する半成形体34を成形する半成形体成形工程と、焼成により絶縁基体10の残部となる第2成形体35を、半成形体34と一体に成形する第2成形体成形工程とを備え、未焼成発熱抵抗体33の未焼成曲げ返し部32は、一部が第1成形体30中に埋められる一方、残部が第1成形体30から突出しており、半成形体成形工程は、少なくとも、未焼成曲げ返し部32と成形体後側部55との後側境界57において、第1成形体30から突出した後側高さHH2が第1成形体中に埋められた後側深さHD2よりも小さい形態に、半成形体34を成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁性セラミックからなる絶縁基体と、この絶縁基体内に埋設され、導電性セラミックからなる発熱抵抗体とを備えるセラミックヒータの製造方法及びセラミックヒータを有するグロープラグの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、絶縁性セラミックからなる絶縁基体と、この絶縁基体内に埋設され導電性セラミックからなる発熱抵抗体とを備えるセラミックヒータの製造方法として、種々の方法が提案されている。例えば特許文献1には、導電性セラミック粉末およびバインダを含む通電部用混合物を用いて通電部用成形体を作製する工程と、通電部用成形体を金型内に保持し、絶縁性セラミック粉末およびバインダを含む基体用混合物を上述の金型内に充填することにより、通電部用成形体を基体用混合物で覆った素子成形体を作製する工程と、素子成形体を焼成する工程と、を備えた製造方法が開示されている。まず、素子成形体を作製するに当たっては、対向配置した一対の金型を用いて、まず通電部用成形体を成形する。その後、基体成形用の第1の金型部材の内面に、通電部用成形体をその一方側の面が接するように配置する。続いて、他方側に配置された基体成形用の第2の金型部材の内面と、通電部用成形体の他方側の表面との間(キャビティ)に、基体用混合物を充填して絶縁基体の一部(概略半分)となる成形体(以下、第1基体成形体)を射出成形する。次いで、基体成形用の第1の金型部材を基体成形用の第3の金型部材と交換し、この第3の金型部材の内面と、通電部用成形体の一方側の表面及び第1基体成形体からなる面との間(キャビティ)に、基体用混合物を射出して、素子成形体を得る手順が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2009/057596
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の製造方法では、焼成により発熱抵抗体となる通電部用成形体、及び、焼成により絶縁基体の一部となる第1基体成形体を成形した後、次いで素子成形体を得るにあたり、焼成により絶縁基体の残部となる成形体(以下、第2基体成形体)を成形するため、基体用混合物を先端方向または基端方向に向けて射出する。すると、射出された基体用混合物は、通電部用成形体及び第1基体成形体に接しつつ、先端側または基端側へと移動して、通電部用成形体のうちのU字状の曲げ返し部に届き、これを乗り越えて進行する。
【0005】
しかしながら、図13に示すように、通電部用成形体92の曲げ返し部91のうち、第1基体成形体90から突出した部分93の形状は、断面半円形状であり、突出部分93と第1基体成形体90との境界において、突出部分93と第1基体成形体90とがなす角が90度とされている。このため、進行してきた基体用混合物が、通電部用成形体92の曲げ返し部91を乗り越える前あるいは乗り越えた後における曲げ返し部91近傍の第1基体成形体90と第2基体成形体94の界面95において、空隙96が生じたまま互いに十分密着しない場合があった。このため、これを焼成したセラミックヒータの絶縁基体のうち、発熱抵抗体の曲げ返し部付近において、図14に示すように、焼成前に第1基体成形体と第2基体成形体との界面であった部位にスリット状に延びる空隙や列状に並ぶ空隙が形成されて、セラミックヒータの耐久性が悪くなるおそれがあった。
【0006】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、絶縁性セラミックからなる絶縁基体と、この絶縁基体内に埋設され導電性セラミックからなる発熱抵抗体とを備え、耐久性の良好なセラミックヒータの製造方法、及びこのようなセラミックヒータを有するグロープラグの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
その態様は、絶縁性セラミックからなり、軸線に沿って延びる形状を有する絶縁基体と、この絶縁基体内に埋設され、導電性セラミックからなる発熱抵抗体であって、上記絶縁基体の先端部内に配置され、上記軸線に沿う軸線方向のうち先端方向に曲げ返し部を向けたU字状をなし、通電により発熱する発熱部、及び、この発熱部の両端から、上記軸線方向のうち上記先端方向とは逆の基端方向に向けて延びるリード部を有する発熱抵抗体と、を備えるセラミックヒータの製造方法であって、第1絶縁性セラミック粉末を含み、焼成により上記絶縁基体の一部となる第1成形体、及び、導電性セラミック粉末を含み、焼成により上記発熱部となる未焼成発熱部であって、焼成により上記曲げ返し部となる未焼成曲げ返し部を含む未焼成発熱部を有し、焼成により上記発熱抵抗体となる未焼成発熱抵抗体、を有する半成形体を成形する半成形体成形工程と、射出成形法により、上記先端方向または上記基端方向に向けて、第2絶縁性セラミック粉末を含む第2基体用混合物を射出して、焼成により上記絶縁基体の残部となる第2成形体を、上記半成形体と一体に成形する第2成形体成形工程と、を備え、上記半成形体は、上記未焼成発熱抵抗体のうち、少なくとも上記未焼成発熱部の上記未焼成曲げ返し部が、その伸延方向全体に亘って、一部が上記第1成形体中に埋められる一方、残部が上記第1成形体から突出した形態をなしており、上記半成形体の上記第1成形体のうち、上記未焼成曲げ返し部よりも曲げ返しの半径方向の内側に位置する部位を成形体内側部とし、上記未焼成曲げ返し部よりも上記半径方向の外側に位置する部位を成形体外側部とし、成形体内側部及び成形体外側部のうち、上記第2成形体成形工程において、射出された上記第2基体用混合物が先に届く部位を成形体前側部とし、上記第2基体用混合物が前記未焼成曲げ返し部を乗り越えた後に届く部位を成形体後側部とし、上記未焼成曲げ返し部と上記成形体後側部との後側境界において、上記未焼成曲げ返し部の上記第1成形体中に埋められた深さを後側深さ、上記第1成形体から突出した突出高さを後側高さとしたとき、上記半成形体成形工程は、少なくとも、上記後側高さが上記後側深さよりも小さい形態に、上記半成形体を成形するセラミックヒータの製造方法である。
【0008】
このセラミックヒータの製造方法では、半成形体成形工程で、半成形体を成形した後、第2成形体成形工程において、第2絶縁性セラミック粉末を含む第2基体用混合物を、先端方向または基端方向に向けて射出する。すると、射出された第2基体用混合物は、半成形体に接しつつ、先端側または基端側へと移動して、半成形体の未焼成曲げ返し部に届き、これを乗り越えて進行する。この第2基体用混合物は、移動の間に若干冷えるが、これと共に密着性も若干下がる。その上、未焼成曲げ返し部を乗り越える前と乗り越えた後を比較すると、乗り越えた後の方が、第2基体用混合物が回り込んで密着する形となり、圧力も掛かりにくい。このため、未焼成曲げ返し部を乗り越えた後の方が、第2基体用混合物が密着しにくい条件となり易い。
【0009】
そこで、本製造方法では、半成形体成形工程で、半成形体を少なくとも後側高さが後側深さよりも小さい形態に成形してある。これにより、第2成形体成形工程において、第2基体用混合物が、未焼成曲げ返し部を乗り越えた際に、第1成形体の成形体後側部と未焼成曲げ返し部との境界付近において、第1成形体と第2成形体とを互いに密着させ、互いに隙間なく一体化させることができる。このため、焼成後のセラミックヒータの絶縁基体のうち発熱抵抗体の曲げ返し部付近において、第1成形体と第2成形体との界面に隙間が生じていたことに起因する、スリット状に延びる空隙や列状に並ぶ空隙が形成されることが抑制され、耐久性の高いセラミックヒータを製造できる。
【0010】
なお、「セラミックヒータ」としては、例えば、グロープラグに用いるセラミックヒータや、ガスセンサのセンサ部を加熱するのに用いるセラミックヒータなどが挙げられる。
また、「軸線に沿って延びる形状を有する絶縁基体」の形態としては、例えば、円柱状、楕円柱状、長円柱状、四角柱などの多角柱状などが挙げられる。但し、一部にくびれ部分や径大部分を有するものであっても良い。
【0011】
なお、半成形体成形工程で成形する半成形体の第1成形体及び未焼成発熱抵抗体の成形手法は、射出成形法を用いても良いし、それ以外の手法、例えば、粉末プレス、スリップキャスティングなどを用いても良い。
また、半成形体のうち、第1成形体と未焼成発熱抵抗体の成形順序は、第1成形体を先に成形し、次いで、未焼成発熱抵抗体を成形しても良いし、これとは逆に、未焼成発熱抵抗体を先に成形し、次いで、第1成形体を成形しても良い。
また、半成形体のうちの第1成形体を構成する第1絶縁性セラミック粉末と第2成形体を構成する第2絶縁性セラミック粉末とは、同一の粉末を用いても良いし、製法や成分が異なる粉末を用いても良い。
【0012】
更に、上述のセラミックヒータの製造方法であって、前記第2成形体成形工程は、前記半成形体の基端を通り、先端に向けて、前記第2基体用混合物を射出して、前記第2成形体を成形するセラミックヒータの製造方法とすると良い。
【0013】
第2成形体成形工程では、高温とされた第2基体用混合物を射出するので、この第2基体用混合物が半成形体に接することにより、半成形体の第1成形体及び未焼成発熱抵抗体の表面の一部が溶ける場合がある。特に、未焼成発熱抵抗体の未焼成曲げ返し部付近でこれが起きると、焼成後の発熱抵抗体の性能が低下するおそれがある。一方、射出された第2基体用混合物は、軸線方向に比較的長い距離を移動する。このため、射出直後は高温であった第2基体用混合物は、この移動の間に若干冷えて射出直後に比べて低温となる。
【0014】
そこで、このセラミックヒータの製造方法では、第2成形体成形工程において、半成形体の基端を通り、先端に向けて第2基体用混合物を射出している。これにより、先端側では、第2基体用混合物が比較的低温となるので、半成形体のうち、未焼成発熱抵抗体の未焼成曲げ返し部及びこの付近の第1成形体の表面が溶けだすおそれを小さくできる。従って、焼成後のセラミックヒータの性能の低下を抑制できる。
【0015】
更に、上述のセラミックヒータの製造方法であって、前記未焼成曲げ返し部と前記成形体前側部との前側境界において、上記未焼成曲げ返し部の前記第1成形体中に埋められた深さを前側深さ、上記第1成形体から突出した突出高さを前側高さとしたとき、前記半成形体成形工程は、上記前側高さが上記前側深さよりも小さい形態に、上記半成形体を成形するセラミックヒータの製造方法とすると良い。
【0016】
このセラミックヒータの製造方法では、半成形体成形工程で、未焼成曲げ返し部のうち、前側高さが前側深さよりも小さい形態に、半成形体を成形する。前側高さを前側深さよりも小さくすることにより、第2成形体成形工程において、射出された第2基体用混合物が、より容易に未焼成曲げ返し部を乗り越えることができる。このため、未焼成曲げ返し部付近で隣り合う第1成形体と第2成形体との界面に隙間が生じるのをさらに抑制でき、より耐久性の高いセラミックヒータを製造できる。
【0017】
他の態様は、絶縁性セラミックからなり、軸線に沿って延びる形状を有する絶縁基体と、この絶縁基体内に埋設され、導電性セラミックからなる発熱抵抗体であって、上記絶縁基体の先端部内に配置され、上記軸線に沿う軸線方向のうち先端方向に曲げ返し部を向
けたU字状をなし、通電により発熱する発熱部、及び、この発熱部の両端から、上記軸線方向のうち上記先端方向とは逆の基端方向に向けて延びるリード部を有する発熱抵抗体と、を備えるグロープラグ用のセラミックヒータを有するグロープラグの製造方法であって、上記のいずれかに記載のセラミックヒータの製造方法により、上記セラミックヒータを製造するヒータ製造工程と、上記セラミックヒータを用いて、上記グロープラグを組み立てるプラグ組立工程と、を備えるグロープラグの製造方法である。
【0018】
このブロープラグの製造方法では、ヒータ製造工程で得た耐久性の高いセラミックヒータを用いてグロープラグを製造するので、グロープラグにおいても、耐久性を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態に係るグロープラグの縦断面図である。
【図2】実施形態に係るセラミックヒータの縦断面図である。
【図3】実施形態に係るセラミックヒータの図2と直交する方向から見た縦断面図である。
【図4】実施形態に係り、半成形体成形工程で成形された半成形体のうち、先端部分の斜視図である。
【図5】実施形態に係るセラミックヒータの製造方法の半成形体成形工程のうち、第1成形体の成形手順を説明する説明図である。
【図6】実施形態に係るセラミックヒータの製造方法の半成形体成形工程のうち、未焼成発熱抵抗体の成形手順を説明する説明図である。
【図7】実施形態に係り、半成形体成形工程で成形された半成形体のうち、先端部分の縦断面図である。
【図8】実施形態に係り、半成形体の縦断面を含む斜視図である。
【図9】実施形態に係るセラミックヒータの製造方法のうち、第2成形体成形工程を説明する説明図である。
【図10】実施形態に係るセラミックヒータの製造方法のうち、第2成形体成形工程での第2基体用混合物の進行を説明する説明図である。
【図11】実施形態に係る焼成前のセラミックヒータの縦断面図である。
【図12】実施形態に係る焼成前のセラミックヒータのうち、先端部分の縦断面図である。
【図13】従来技術に係り、通電部用成形体及び第1基体成形体の縦断面を含む斜視図である。
【図14】従来技術に係るセラミックヒータの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。図1に、本実施形態に係るセラミックヒータ2を用いたグロープラグ1の縦断面図を示す。
本実施形態に係るグロープラグ1は、図1に示すように、その軸線AXに沿う軸線方向HJのうち先端方向HS(図1において下方)に、通電により発熱するセラミックヒータ2を有する。
また、このセラミックヒータ2の基端側の部位を保持する筒状の主体金具3を有する。
この主体金具3は、自身の先端方向HSに位置し、セラミックヒータ2を保持するヒータ保持部材4と、このヒータ保持部材4の基端方向HKに位置する主体金具本体5とから構成されている。
このうち主体金具本体5は、軸線AXに沿って基端部5kから先端部5sまで延びる筒状をなしている。主体金具本体5の基端部5kには、六角断面形状の工具係合部5eが形成されている。また、主体金具本体5のうち、工具係合部5eよりも先端側の外周には、取付用のねじ部5fが形成されている。
【0021】
この主体金具本体5の内側には、その基端方向HKから、セラミックヒータ2に電力を供給するための棒状の金属端子軸6が、絶縁ブッシュ7を介して主体金具本体5と電気的に絶縁した状態で配置されている。
【0022】
ヒータ保持部材4は、筒状をなし、その基端部4kが主体金具本体5の先端部5sに溶接されている。このヒータ保持部材4には、前述のセラミックヒータ2の基端側の部位が挿入され固定されている。具体的には、セラミックヒータ2は、先端部2s及び基端部2kがそれぞれヒータ保持部材4から突出するようにして、ヒータ保持部材4内に圧入されて、これに保持されている。
【0023】
主体金具本体5に挿通された金属端子軸6の基端部6kは、主体金具本体5よりも基端方向HKに突出して配置されている。そして、この基端部6kには、前述の絶縁ブッシュ7を介して端子金具8が取り付けられている。
一方、金属端子軸6の先端部6sは、筒状の接続リング9に挿入されて、これに溶接されている。また、この接続リング9には、他方でセラミックヒータ2の基端部2kが圧入され、基端部2kに設けられた一方の電極部18(図1では不図示。図2を参照)が、接続リング9に電気的に接続されている。これにより、セラミックヒータ2の一方の電極部18と、金属端子軸6とが電気的に接続されている。なお、セラミックヒータ2のもう一方の電極部19(図1では不図示。図2を参照)は、セラミックヒータ2を保持するヒータ保持部材4、従って、主体金具3に電気的に接続されている。
【0024】
次に、本実施形態に係るセラミックヒータ2について説明する。図2及び図3に、セラミックヒータ2の縦断面図を示す。
セラミックヒータ2は、図2及び図3に示すように、軸線AXに沿って基端部2kから先端部2sまで延びる円柱状をなす。そして、このセラミックヒータ2は、外形が円柱状をなす絶縁基体10の中に、通電によって発熱する発熱抵抗体11が埋設されたものである。
【0025】
このうち絶縁基体10は、絶縁性セラミック(具体的には、窒化珪素質セラミック)からなる。この絶縁基体10は、セラミックヒータ2の基端部2kに対応した基端部10kから、セラミックヒータ2の先端部2sに対応した先端部10sまで、軸線AX方向に延びている。なお、先端部2sは、円柱角部がR面取りされている。
【0026】
絶縁基体10に埋設された発熱抵抗体11は、発熱部12と、これに繋がる一対のリード部14,15とから一体的に構成されている。この発熱抵抗体11は、導電性セラミック(具体的には、導電成分として炭化タングステンを含有する窒化珪素質セラミック)から形成されている。
【0027】
このうち発熱部12は、絶縁基体10の先端部10s内に配置され、曲げ返し部13を軸線AXに沿う軸線方向HJのうち先端方向HSに向けたU字状をなしており、通電により発熱する部分となる。
また、一対のリード部14,15は、発熱部12の両端12a,12bから、軸線方向HJのうち先端方向HSとは逆の基端方向HKに向けて、互いに平行に延びている。
発熱抵抗体11の一方のリード部14は、絶縁基体10の基端部10k付近に位置し、絶縁基体10の外周面10gに露出して、接続リング9と電気的に接続する電極部18を有している。また、他方のリード部15は、電極部18よりもやや先端方向HSに位置し、絶縁基体10の外周面10gに露出して、ヒータ保持部材4と電気的に接続する電極部19を有している。また、電極部18,19は、それぞれ軸線AXから見て、軸線方向HJに直交し且つリード部14,15が並ぶ並び方向HNの外側に向けて延びている(図
2参照)。なお、図2と直交する方向から見た図3では、電極部18,19の記載を省略している。
【0028】
次に、本実施形態に係るセラミックヒータ2及びグロープラグ1の製造方法について説明する。
まず、半成形体成形工程について図4〜図8を参照して説明する。図4は、半成形体成形工程で成形される半成形体34のうち、先端部分の斜視図である。この工程では、焼成により絶縁基体10の一部となる第1成形体30、及び、焼成により発熱抵抗体11となる未焼成発熱抵抗体33を有する半成形体34を成形する。このうち、第1成形体30は、第1絶縁性セラミック粉末(主として窒化珪素質セラミック粉末)及び第1バインダを混合した第1基体用混合物KK1からなる。また、未焼成発熱抵抗体33は、導電性セラミック粉末(導電成分として炭化タングステン粉末を含有する窒化珪素質セラミック粉末)及び第2バインダを混合した発熱体用混合物KHからなる。
【0029】
未焼成発熱抵抗体33は、焼成により発熱部12となる未焼成発熱部31、未焼成発熱部31の両端から延びて、焼成後にリード部14,15となる未焼成リード部36,37を有する。このうち、未焼成発熱部31は、焼成により曲げ返し部13となる未焼成曲げ返し部32を含む。また、未焼成曲げ返し部32は、その伸延方向HEに沿って、U字状をなしている。
【0030】
次いで、半成型体成形工程のうち、第1成形体30と未焼成発熱抵抗体33の成形手順について説明する。まず、図5のように、第1成形体30を成形するための2つの金型40,41を上下に組み合わせることにより、2つの金型40,41の間にキャビティCAを構成する。また、下側の金型41のうち、キャビティCAの先端側GSには、充填口42、ゲート43、及び、これらを結び第1基体用混合物KK1の通り道となる射出路SAを形成してある。次いで、図示しない射出装置を用いて、第1基体用混合物KK1を加熱して流動体とした上で、充填口42からキャビティCAに向けて射出する。このようにして射出成形法によって、第1成形体30を成形する。
【0031】
次に、図6のように、下側の金型41に第1成形体30を残したままとして、第1成形体30を成形型の一部として用いる一方、上側の金型40を未焼成発熱抵抗体33の上側の形態に対応した凹部を設けた別の金型44に交換する。これにより、第1成形体30と金型44との間にキャビティCBを構成する。また、上側の金型44のうち、キャビティCBの基端側GKには、充填口45、ゲート46、及び、これらを結び発熱体用混合物KHの通り道となる射出路SBを形成してある。次いで、図示しない射出装置を用いて、発熱体用混合物KHを加熱して流動体とした上で、充填口45からキャビティCBに向けて射出する。このようにして射出成形法によって、第1成形体30と一体に未焼成発熱抵抗体33を成形して、半成形体34を形成する。
【0032】
図7は、半成形体34の先端部分の縦断面図である。また、図8は、この断面を含めた斜視図である。ここで、未焼成発熱部31の未焼成曲げ返し部32は、その伸延方向HE全体に亘って、一部が第1成形体30中に埋められる一方、残部が第1成形体30から突出した形態になっている。そして、第1成形体30のうち、未焼成曲げ返し部32よりも曲げ返しの半径方向HRの内側RI(図7中、右側)に位置する部位を成形体内側部52、半径方向HRの外側RO(図7中、左側)に位置する部位を成形体外側部55としたとき、成形体内側部52が、第2成形体成形工程(後述する)において、射出された第2基体用混合物KK2(後述する)が先に届く成形体前側部52となる。また、成形体外側部55が、第2成形体成形工程において、第2基体用混合物KK2が未焼成曲げ返し部32の乗り越えた後に届く成形体後側部55となる。ここで、未焼成曲げ返し部32のうち、成形体前側部52(成形体内側部)との前側境界54(内側境界)において、第1成
形体30中に埋められた深さを前側深さHD1、第1成形体30から突出した突出高さを前側高さHH1とする。また、成形体後側部55(成形体外側部)との後側境界57(外側境界)において、第1成形体30中に埋められた深さを後側深さHD2、第1成形体30から突出した突出高さを後側高さHH2とする。このとき、半成形体34は、前側高さHH1が前側深さHD1よりも小さく、また、後側高さHH2が後側深さHD2よりも小さくされている。さらに、後側高さHH2が前側高さHH1より小さくされている。
【0033】
次に、第2成形体成形工程について、図9〜図12を参照して説明する。この工程では、焼成により絶縁基体10の残部となる第2成形体35を、上述の半成形体34と一体に成形する。また、第2成形体35は、第2絶縁性セラミック粉末(主として窒化珪素質セラミック粉末)及び第3バインダを混合した第2基体用混合物KK2からなる。
なお、本実施形態では、第1基体用混合物KK1と第2基体用混合物KK2は、同じ成分の絶縁性セラミック粉末及びバインダで構成されている。即ち、第1絶縁性セラミック粉末と第2絶縁性セラミック粉末、第1バインダと第3バインダは、それぞれ同じ成分で構成されている。
【0034】
まず、図9に示すように、半成形体34を、下側の金型41上に配置し、これを第2成形体成形用の上側の金型47と組み合わせる。これにより、半成形体34と金型47との間にキャビティCCを構成する。また、上側の金型47のうち、キャビティCCの基端側GKには、充填口48、ゲート49、及び、これらを結び第2基体用混合物KK2の通り道となる射出路SCを形成してある。次いで、図示しない射出装置を用いて、第2基体用混合物KK2を加熱して流動体とした上で、充填口48からキャビティCCに向けて射出する。
【0035】
すると、図10に示すように、射出された第2基体用混合物KK2は、半成形体34に接しつつ、先端側GSに移動して、半成形体34の未焼成曲げ返し部32に届き、さらにこれを乗り越えて先端側GSに進行する。その際、半成形体34は、未焼成曲げ返し部32のうち、前側高さHH1が前側深さHD1よりも小さく、また、後側高さHH2が後側深さHD2よりも小さい形態になっている。このため、第2基体用混合物KK2が、未焼成曲げ返し部32を容易に乗り越えられると共に、乗り越えた際に、第1成形体30の成形体後側部55と未焼成曲げ返し部32との境界付近において、第1成形体30と第2成形体35とが互いに密着することができる。かくして、キャビティCC内に、第2基体用混合物KK2が充填され、第2成形体35が半成形体34と一体に成形されて、図11及び図12に示すような一体成形物60となる。この一体成形物60では、第1成形体30と第2成形体35は、その界面61,62で互いに密着し、一体化している。
【0036】
この後、半成形体34と第2成形体35からなる一体成形物60を、公知の焼成工程によって焼成することにより、セラミックヒータ2を製造する。
【0037】
さらに、このセラミックヒータ2とは別に、図1に示すグロープラグ1を構成する各部材(ヒータ保持部材4、主体金具本体5、金属端子軸6、など)を用意する。そして、公知のプラグ製造工程によって、これらの各部材を組み立てることにより、グロープラグ1が完成する。
【0038】
以上で説明したように、本実施形態のセラミックヒータ2の製造方法では、半成形体成形工程において、後側高さHH2が後側深さHD2よりも小さい形態に、半成形体34を成形した。そして、第2成形体成形工程において、第2基体用混合物KK2を、先端方向HSまたは基端方向HKに向けて射出する。すると、射出された第2基体用混合物KK2は、半成形体34に接しつつ、先端側GSまたは基端側GKへと移動して、半成形体34の未焼成曲げ返し部32に届き、これを乗り越えて進行する。
【0039】
ここで、後側高さHH2が後側深さHD2よりも小さい形態に、半成形体34を成形してあることにより、第2成形体35となる第2基体用混合物KK2が、半成形体34の未焼成曲げ返し部32を乗り越えた際に、第1成形体30の成形体後側部55と未焼成曲げ返し部32との境界付近において、第1成形体30と第2成形体35とを互いに密着させ、一体化することができる。このため、焼成後のセラミックヒータ2は、絶縁基体10のうち発熱抵抗体11の曲げ返し部13付近において、第1成形体30と第2成形体35との界面61,62に隙間が生じていたことに起因するスリット状に延びる空隙や列状に並ぶ空隙が形成されることが抑制され、耐久性の高いセラミックヒータ2を製造できた。
【0040】
また、本実施形態では、半成形体成形工程で、半成形体34を成形した後、第2成形体成形工程において、半成形体34の基端34Kを通り、先端34Sに向けて第2基体用混合物KK2を射出する。すると、射出された第2基体用混合物KK2は、半成形体34に接しつつ、軸線方向HJに比較的長い距離を移動する。そして、この移動の間に若干冷えた第2基体用混合物KK2が、先端側GSの半成形体34の未焼成曲げ返し部32に届く。
【0041】
このため、本実施形態の製造方法によれば、先端側GSでは、第2基体用混合物KK2が比較的低温となるので、半成形体34のうち、未焼成発熱抵抗体33の未焼成曲げ返し部32及びこの付近の第1成形体30の表面が溶けだすおそれを小さくできる。従って、焼成後のセラミックヒータ2の性能の低下を抑制できる。
【0042】
また、本実施形態では、半成形体成形工程で、未焼成曲げ返し部32のうち、前側高さHH1が前側深さHD1よりも小さい形態に、半成形体34を成形してある。これにより、第2成形体成形工程で射出された第2基体用混合物KK2が、より容易に未焼成曲げ返し部32を乗り越えることができる。このため、未焼成曲げ返し部32付近で隣り合う第1成形体30と第2成形体35との界面61,62に隙間が生じるのをさらに抑制でき、より耐久性の高いセラミックヒータ2を製造できる。
なお、半成形体成形工程において、未焼成曲げ返し部32のうち、後側高さHH2が前側高さHH1と同等か前側高さHH1より小さい形態に、半成形体34を成形すると良い。このように成形することにより、前側よりも後側で密着しにくい第1成形体30と第2成形体35とを、後側でも互いに密着することができる。
【0043】
また、本実施形態に係るグロープラグ1の製造方法では、ヒータ製造工程で製造した、第1成形体30と第2成形体35との界面61,62での接合不良が生じにくく、耐久性の高いセラミックヒータ2を用いることができるので、グロープラグ1も、耐久性を高くすることができる。
【0044】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
例えば、上述の実施形態では、セラミックヒータ2及び絶縁基体10の外形を円柱状としたが、この他に、楕円柱状、長円柱状、四角柱などの多角柱状などでも良く、一部にくびれ部分や径大部分を有するものであっても良い。
また、上述の実施形態では、第2成形体35のほか、半成形体34の第1成形体30及び未焼成発熱抵抗体33も射出成形法により、成形したが、半成形体34の第1成形体30及び未焼成発熱抵抗体33の成形方法は、粉末プレス、スリップキャスティングなどの射出成形法以外の成形手法を用いても良い。
また、上述の本実施形態では、半成形体成形工程において、まず、第1成形体30を成形した後、この第1成形体30に一体に未焼成発熱抵抗体33を成形して、半成形体34を形成した。しかし、これとは逆に、先に未焼成発熱抵抗体33を金型で成形しておき、これを別の金型に移した上で、この未焼成発熱抵抗体33と一体に第1成形体30を成形して、半成形体34を形成する手順を用いても良い。
また、上述の実施形態では、第1基体用混合物KK1及び第2基体用混合物KK2を共に、同じ絶縁性セラミック粉末(主として窒化珪素質セラミック粉末)及びバインダからなる構成とした。しかし、用いる絶縁性セラミック粉末は、同一の粉末を用いても良いし、製法や成分が異なる粉末を用いても良い。
【符号の説明】
【0045】
AX 軸線
1 グロープラグ
2 セラミックヒータ
2k (セラミックヒータの)基端部
2s (セラミックヒータの)先端部
10 絶縁基体
10k (絶縁基体の)基端部
10s (絶縁基体の)先端部
HJ 軸線方向
HS 先端方向
HK 基端方向
HN 並び方向
11 発熱抵抗体
12 発熱部
13 曲げ返し部
14,15 リード部
30 第1成形体
31 未焼成発熱部
32 未焼成曲げ返し部
33 未焼成発熱抵抗体
34 半成形体
34K (半成形体の)基端
34S (半成形体の)先端
35 第2成形体
HE 伸延方向
KK1 第1基体用混合物
KK2 第2基体用混合物
KH 発熱体用混合物
GK 基端側
GS 先端側
HR (曲げ返しの)半径方向
RI (半径方向の)内側
RO (半径方向の)外側
52 成形体内側部(成形体前側部)
54 内側境界(前側境界)
55 成形体外側部(成形体後側部)
57 外側境界(後側境界)
HH1 前側高さ
HD1 前側深さ
HH2 後側高さ
HD2 後側深さ
60 一体成形物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性セラミックからなり、軸線に沿って延びる形状を有する絶縁基体と、
この絶縁基体内に埋設され、導電性セラミックからなる発熱抵抗体であって、
上記絶縁基体の先端部内に配置され、上記軸線に沿う軸線方向のうち先端方向に曲げ返し部を向けたU字状をなし、通電により発熱する発熱部、及び、
この発熱部の両端から、上記軸線方向のうち上記先端方向とは逆の基端方向に向けて延びるリード部を有する
発熱抵抗体と、を備える
セラミックヒータの製造方法であって、
第1絶縁性セラミック粉末を含み、焼成により上記絶縁基体の一部となる第1成形体、及び、
導電性セラミック粉末を含み、焼成により上記発熱部となる未焼成発熱部であって、焼成により上記曲げ返し部となる未焼成曲げ返し部を含む未焼成発熱部を有し、焼成により上記発熱抵抗体となる未焼成発熱抵抗体、を有する
半成形体を成形する
半成形体成形工程と、
射出成形法により、上記先端方向または上記基端方向に向けて、第2絶縁性セラミック粉末を含む第2基体用混合物を射出して、焼成により上記絶縁基体の残部となる第2成形体を、上記半成形体と一体に成形する
第2成形体成形工程と、を備え、
上記半成形体は、
上記未焼成発熱抵抗体のうち、少なくとも上記未焼成発熱部の上記未焼成曲げ返し部が、その伸延方向全体に亘って、
一部が上記第1成形体中に埋められる一方、
残部が上記第1成形体から突出した形態をなしており、
上記半成形体の上記第1成形体のうち、
上記未焼成曲げ返し部よりも曲げ返しの半径方向の内側に位置する部位を成形体内側部とし、
上記未焼成曲げ返し部よりも上記半径方向の外側に位置する部位を成形体外側部とし、
上記成形体内側部及び上記成形体外側部のうち、
上記第2成形体成形工程において、射出された上記第2基体用混合物が先に届く部位を成形体前側部とし、
上記第2基体用混合物が前記未焼成曲げ返し部を乗り越えた後に届く部位を成形体後側部とし、
上記未焼成曲げ返し部と上記成形体後側部との後側境界において、上記未焼成曲げ返し部の上記第1成形体中に埋められた深さを後側深さ、上記第1成形体から突出した突出高さを後側高さとしたとき、
上記半成形体成形工程は、
少なくとも、上記後側高さが上記後側深さよりも小さい形態に、上記半成形体を成形する
セラミックヒータの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のセラミックヒータの製造方法であって、
前記第2成形体成形工程は、
前記半成形体の基端を通り、先端に向けて、前記第2基体用混合物を射出して、前記第2成形体を成形する
セラミックヒータの製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のセラミックヒータの製造方法であって、
前記未焼成曲げ返し部と前記成形体前側部との前側境界において、上記未焼成曲げ返し部の前記第1成形体中に埋められた深さを前側深さ、上記第1成形体から突出した突出高さを前側高さとしたとき、
前記半成形体成形工程は、
上記前側高さが上記前側深さよりも小さい形態に、上記半成形体を成形する
セラミックヒータの製造方法。
【請求項4】
絶縁性セラミックからなり、軸線に沿って延びる形状を有する絶縁基体と、
この絶縁基体内に埋設され、導電性セラミックからなる発熱抵抗体であって、
上記絶縁基体の先端部内に配置され、上記軸線に沿う軸線方向のうち先端方向に曲げ返し部を向けたU字状をなし、通電により発熱する発熱部、及び、
この発熱部の両端から、上記軸線方向のうち上記先端方向とは逆の基端方向に向けて延びるリード部を有する
発熱抵抗体と、を備えるグロープラグ用のセラミックヒータを有する
グロープラグの製造方法であって、
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のセラミックヒータの製造方法により、上記セラミックヒータを製造するヒータ製造工程と、
上記セラミックヒータを用いて、上記グロープラグを組み立てるプラグ組立工程と、
を備えるグロープラグの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−105684(P2013−105684A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250174(P2011−250174)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】