説明

セラミックヒータ

【課題】耐久性に優れたセラミックヒータを提供すること。
【解決手段】セラミック製のヒータ基材11の内部に発熱体を内蔵してなるセラミックヒータ1。セラミックヒータ1は、発熱体に接続されると共にヒータ基材11の外表面に配設された外部端子12と、外部端子12の表面に配設されたコバールからなる接合層2と、接合層2に溶接されたリード線3とを有する。接合層2とリード線3との溶接部4の周囲において接合層2とリード線3との間に形成される微小隙間13には、埋設用ろう材51が充填されている。接合層2は被覆用ろう材52によって被覆されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス中の特定ガス濃度を検出するガスセンサ等に内蔵されるセラミックヒータに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、排ガス中の特定ガス濃度を検出するガスセンサには、ガスセンサ素子を加熱するためのセラミックヒータが内蔵されている。
該セラミックヒータは、セラミック製のヒータ基材の内部に発熱体を内蔵してなり、上記発熱体に接続された外部端子が上記ヒータ基材の外表面に配設され、上記外部端子にリード線が接続されている(図4、特許文献1参照)。
【0003】
また、図9に示すごとく、ヒータ基材91とリード線93との間に生ずる熱応力を緩和すべく、外部端子912の表面に、ヒータ基材91との熱膨張差が小さいコバールからなる接合層92を配設したセラミックヒータ1がある。上記接合層92は、リード線93を溶接した上で、ヒータ基材91の外部端子912に接続されている。即ち、リード線93は、接合層92を介して外部端子912に接続されている。
【0004】
上記セラミックヒータ9を内蔵するガスセンサにおいては、リード線93の接合部の腐食等を防ぐべく、セラミックヒータ9に排ガスが接触することを防止するような構造を有している。
しかしながら、近年、排ガス規制の強化により、排ガス温度が上昇している。そのため、セラミックヒータ9側への排ガス侵入を防ぐシール材に熱負荷がかかり、気密性が低下するおそれがある。
【0005】
これにより、排ガス中の腐食物質(窒素酸化物等)がセラミックヒータ9の外部端子912とリード線93との接合部に達するおそれがある。また、上記セラミックヒータ9の外部端子912とリード線93との接合部には、排ガス中の水蒸気が付着したり、停車時に結露するおそれもある。
この接合部に付着した水分に上記腐食物質が溶出することにより、強酸性溶液が生成され、接合部の腐食の原因となる。
【0006】
そして、リード線93は、上述のごとく外部端子912に配設された接合層92に対して溶接されているが、その溶接部94の周囲には、接合層92とリード線93との間に微小隙間913が形成される。この微小隙間913には、特に上記強酸性溶液が溜まりやすく、微小隙間913から溶接部94や接合層92へと腐食が進行するおそれがある。そして、場合によっては断線するおそれもある。
このように、従来のセラミックヒータ9においては、その耐久性を充分に確保することが困難となるおそれがある。
【0007】
【特許文献1】特開平11−292649号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、耐久性に優れたセラミックヒータを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、セラミック製のヒータ基材の内部に発熱体を内蔵してなるセラミックヒータであって、
該セラミックヒータは、上記発熱体に接続されると共に上記ヒータ基材の外表面に配設された外部端子と、該外部端子の表面に配設されたコバールからなる接合層と、該接合層に溶接されたリード線とを有し、
上記接合層と上記リード線との溶接部の周囲において上記接合層と上記リード線との間に形成される微小隙間には、埋設用ろう材が充填されており、
上記接合層は被覆用ろう材によって被覆されていることを特徴とするセラミックヒータにある(請求項1)。
【0010】
次に、本発明の作用効果につき説明する。
上記セラミックヒータにおいては、接合層とリード線との間に形成される微小隙間に、上記埋設用ろう材が充填されている。そのため、排ガス中の腐食物質や結露水等が上記微小隙間に侵入し、滞留することを防ぐことができる。
これにより、上記微小隙間から接合層や溶接部への腐食の進行を防ぐことができる。
【0011】
即ち、接合層に対して溶接によってリード線を接合した構造においては、溶接部の周囲に上記微小隙間が形成され、該微小隙間には腐食物質や水分が溜まりやすい。このような構造において、微小隙間を上記埋設用ろう材によって充填することにより、微小隙間を起点とする溶接部や接合層の腐食を効果的に防ぐことができる。
【0012】
また、上記接合層は被覆用ろう材によって被覆されているため、上記腐食物質や結露水等が接合層に接触することを防ぐことができる。これにより、接合層の腐食を防ぐことができる。
このようにして、接合層及び溶接部の腐食を防ぎ、耐久性に優れたセラミックヒータを得ることができる。
【0013】
以上のごとく、本発明によれば、耐久性に優れたセラミックヒータを提供することができる。
【0014】
第2の発明は、セラミック製のヒータ基材の内部に発熱体を内蔵してなるセラミックヒータであって、
該セラミックヒータは、上記発熱体に接続されると共に上記ヒータ基材の外表面に配設された外部端子と、該外部端子の表面に配設されたコバールからなる接合層と、該接合層に溶接されたリード線とを有し、
上記接合層と上記リード線との溶接部の周囲であって、上記接合層と上記リード線との間に形成される微小隙間には、埋設用ろう材が充填されており、
上記接合層は、被覆用めっきによって被覆されていることを特徴とするセラミックヒータにある(請求項4)。
【0015】
次に、本発明の作用効果につき説明する。
上記セラミックヒータにおいても、上記第1の発明(請求項1)のセラミックヒータと同様に、上記微小隙間に上記埋設用ろう材が充填されているため、排ガス中の腐食物質や結露水等が上記微小隙間に侵入し、滞留することを防ぐことができる。
これにより、上記微小隙間から接合層や溶接部への腐食の進行を防ぐことができる。
【0016】
また、上記接合層は被覆用めっきによって被覆されているため、上記腐食物質や結露水等の接触を防ぎ、接合層の腐食を防ぐことができる。
このようにして、接合層及び溶接部の腐食を防ぎ、耐久性に優れたセラミックヒータを得ることができる。
【0017】
以上のごとく、本発明によれば、耐久性に優れたセラミックヒータを提供することができる。
【0018】
第3の発明は、セラミック製のヒータ基材の内部に発熱体を内蔵してなるセラミックヒータであって、
該セラミックヒータは、上記発熱体に接続されると共に上記ヒータ基材の外表面に配設された外部端子と、該外部端子の表面に配設されたコバールからなる接合層と、該接合層に溶接されたリード線とを有し、
上記接合層と上記リード線との溶接部の周囲であって、すくなくとも上記接合層と上記リード線との間に形成される微小隙間は、被覆用めっきによって被覆されていることを特徴とするセラミックヒータにある(請求項9)。
【0019】
次に、本発明の作用効果につき説明する。
上記セラミックヒータにおいても、上記第1、第2の発明のセラミックヒータと同様に、上記微小隙間に埋設用めっきが充填されているため、排ガス中の腐食物質や結露水等が上記微小隙間に侵入し、滞留することを防ぐことができる。
これにより、上記微小隙間から接合層や溶接部への腐食の進行を防ぐことができる。
【0020】
また、上記接合層は被覆用めっきによって被覆されているため、上記腐食物質や結露水等の接触を防ぎ、接合層の腐食を防ぐことができる。
このようにして、接合層及び溶接部の腐食を防ぎ、耐久性に優れたセラミックヒータを得ることができる。
【0021】
以上のごとく、本発明によれば、耐久性に優れたセラミックヒータを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
上記第1の発明(請求項1)において、上記被覆用ろう材は、上記接合層と接続された上記リード線をも覆っていることが好ましい。この場合には、接合層との接続部において、リード線の耐久性を向上させることができる。
また、上記第2の発明(請求項4)において、上記被覆用めっきは、上記接合層と接続された上記リード線をも覆っていることが好ましい。この場合には、接合層との接続部において、リード線の耐久性を向上させることができる。また、めっきの形成を容易に行うことができる。
【0023】
また、上記ヒータ基材は、例えば、窒化珪素(Si3O4)又はアルミナ(Al2O3)を主成分とするセラミック体からなることが好ましい。また、上記リード線は、例えば、Ni、Ni−Cr等からなることが好ましい。
【0024】
また、上記第1の発明(請求項1)において、上記埋設用ろう材及び上記被覆用ろう材は、Ag−Cu、Au−Cu、又はAu−Niからなることが好ましい(請求項2)。
この場合には、接合層及びリード線に対する濡れ性に優れると共に、耐熱性、耐食性に優れた埋設用ろう材及び被覆用ろう材とすることができる。その結果、より接合層及び溶接部の耐久性を向上させることができる。
【0025】
また、上記被覆用ろう材は、0.005〜0.025mmの厚みを有することが好ましい(請求項3)。
この場合には、接合層の腐食を確実に防止すると共に、接合層とヒータ基材との間の熱応力の上昇を防ぐことができる。
上記被覆用ろう材の厚みが0.005mm未満の場合には、接合層の腐食を充分に防ぐことが困難となるおそれがある。一方、上記被覆用ろう材の厚みが0.025mmを超える場合には、接合層に形成した被覆用ろう材とヒータ基材との間の熱膨張差に起因して、熱応力が生じるおそれがある。
【0026】
また、上記第2の発明(請求項4)において、上記埋設用ろう材は、Ag−Cu、Au−Cu、又はAu−Niからなることが好ましい(請求項5)。
この場合には、接合層及びリード線との濡れ性に優れると共に、耐熱性、耐食性に優れた埋設用ろう材とすることができる。その結果、より接合層及び溶接部の耐久性を向上させることができる。
【0027】
また、上記被覆用めっきは、上記リード線を構成する金属材料と同等もしくはこれよりも卑である金属材料からなることが好ましい(請求項6)。
この場合には、上記リード線よりも優先して上記被覆用めっきが腐食することとなるため、リード線の腐食を効果的に防止することができる。また、めっき方法としては、電解めっき法、無電解めっき法のいずれのでもよい。
なお、ここで「同等」とは腐食電位が同等であることを意味し、「卑」とは腐食電位が低いことを意味する。
【0028】
また、上記被覆用めっきは、0.005〜0.025mmの厚みを有することが好ましい(請求項7)。
この場合には、接合層の腐食を確実に防止すると共に、接合層とヒータ基材との間の熱応力の上昇を防ぐことができる。
上記被覆用めっきの厚みが0.005mm未満の場合には、接合層の腐食を充分に防ぐことが困難となるおそれがある。一方、上記被覆用めっきの厚みが0.025mmを超える場合には、接合層に形成した被覆用ろう材とヒータ基材との間の熱膨張差に起因して、熱応力が生じるおそれがある。
【0029】
また、上記埋設用ろう材は、その最大厚みが0.005〜0.05mmであることが好ましい(請求項8)。
この場合には、上記微小隙間を起点とする接合層及び溶接部の腐食を確実に防ぐと共に、応力の発生を防ぐことができる。
上記最大厚みが0.005mm未満の場合には、上記微小隙間を起点とする接合層及び溶接部の腐食を確実に防ぐことが困難となるおそれがある。一方、上記最大厚みが0.05mmを超える場合には、埋設用ろう材とヒータ基材との間の熱膨張差に起因して、熱応力が生じるおそれがある。
【0030】
次に、上記第3の発明(請求項9)において、上記被覆用めっきは、上記接合層と接続された上記リード線をも覆っていることが好ましい。この場合には、接合層との接続部において、リード線の耐久性を向上させることができる。
また、上記埋設用めっき及び被覆用めっきは、電解めっき法、無電解めっき法のいずれによって形成してもよい。
【0031】
また、上記埋設用めっき及び上記被覆用めっきは、Au、Ni又はAu−Niからなることが好ましい(請求項10)。
この場合には、接合層とリード線との微少隙間を覆いうる厚さと共に、耐熱性、耐食性を充分に確保することができる。。その結果、より接合層及び溶接部の耐久性を向上させることができる。
【0032】
また、上記被覆用めっきは、0.005〜0.025mmの厚みを有することが好ましい(請求項11)。
この場合には、接合層の腐食を確実に防止すると共に、接合層とヒータ基材との間の熱応力の上昇を防ぐことができる。
上記被覆用めっきの厚みが0.005mm未満の場合には、接合層の腐食を充分に防ぐことが困難となるおそれがある。一方、上記被覆用めっきの厚みが0.025mmを超える場合には、接合層に形成した被覆用ろう材とヒータ基材との間の熱膨張差に起因して、熱応力が生じるおそれがある。
【0033】
また、上記埋設用めっきは、その最大厚みが0.005〜0.05mmであることが好ましい(請求項12)。
この場合には、上記微小隙間を起点とする接合層及び溶接部の腐食を確実に防ぐと共に、応力の発生を防ぐことができる。
上記最大厚みが0.005mm未満の場合には、上記微小隙間を起点とする接合層及び溶接部の腐食を確実に防ぐことが困難となるおそれがある。一方、上記最大厚みが0.05mmを超える場合には、埋設用めっきとヒータ基材との間の熱膨張差に起因して、熱応力が生じるおそれがある。
【0034】
また、上記被覆用めっきの上には、厚みが0.0001〜0.003mmのCrめっきを更に施してあることが好ましい(請求項13)。
この場合には、耐熱性、耐食性を向上させ、接合層の腐食をより効果的に防止することができる。また、上記Crめっきは、リード線を構成する金属材料と同等もしくはこれよりも卑とすることができるため、リード線の腐食をより効果的に防止することができる。また、上記被覆用めっきとして、例えば、Ni又はAu―Ni等を用いた場合には、これらの腐食を効果的に防ぐことができる。
なお、Crめっきの方法としては、電解めっき法、無電解めっき法のいずれでもよい。
【実施例】
【0035】
(実施例1)
本発明の実施例にかかるセラミックヒータにつき、図1〜図5を用いて説明する。
本例のセラミックヒータ1は、セラミック製のヒータ基材11の内部に発熱体を内蔵してなる。
セラミックヒータ1は、図1〜図4に示すごとく、上記発熱体に接続されると共に上記ヒータ基材11の外表面に配設された外部端子12と、該外部端子12の表面に配設されたコバールからなる接合層2と、該接合層2に溶接されたリード線3とを有する。
接合層2とリード線3との溶接部4の周囲において接合層2とリード線3との間に形成される微小隙間13には、埋設用ろう材51が充填されている。
そして、図1、図2に示すごとく、上記接合層2は、被覆用ろう材52によって被覆されている。なお、図3においては、被覆用ろう材52を省略してある。
【0036】
また、被覆用ろう材52は、接合層2と接続されたリード線3をも覆っている。
埋設用ろう材51及び被覆用ろう材52は、Ag−Cu、Au−Cu、又はAu−Niからなる。
埋設用ろう材51と被覆用ろう材52とは、特に区別される必要はなく、同一材料によって連続して形成することができる。
【0037】
また、埋設用ろう材51は、その最大厚みd1が0.005〜0.05mmである。被覆用ろう材52の厚みd2は0.005〜0.025mmである。
上記ヒータ基材11は、窒化珪素(Si3O4)或いはアルミナ(Al2O3)を主成分とするセラミック体からなる。また、上記リード線3はNi又はNi−Crからなる。
【0038】
本例のセラミックヒータ1は、排ガス中の特定ガス濃度を検出するガスセンサに内蔵され、ガスセンサ素子を加熱するために用いられる。
セラミックヒータ1は、図1、図4に示すごとく、円柱形状のヒータ基材11を有し、その一端に形成された一対の外部端子12に設けた接合層2にリード線3が接続されている。
【0039】
リード線3は、略クランク形状に屈曲形成された接合端部31において、上記接合層2に接合されている。そして、図1〜図3に示すごとく、この接合端部31の一部分を抵抗溶接することによって、リード線3と接合層2とが接合されている。そのため、溶接部4を取り囲むようにして、上記微小隙間13が形成されている。即ち、溶接部4に対して、リード線3の軸方向の両脇、周方向の両脇の何れにも微小隙間13が形成されている。
【0040】
接合層2にリード線3を接合するに当っては、まず、図5に示すごとく、コバールからなる接合層2にリード線3を抵抗溶接によって接合する。その後、リード線3を溶接した上記接合層2を、ヒータ基材11の外部端子12にろう付け接続する。
このとき、溶接部4の周囲には、接合層2とリード線3との間に形成される微小隙間13が存在している。
【0041】
そこで、図1〜図3に示すごとく、該微小隙間13に埋設用ろう材51を充填する。その手段としては、球状もしくは棒状ろう材を、上記微小隙間13の側方、即ちリード線3の両脇における接合層2の表面に配置する。この状態で、約1100℃にて上記棒状ろう材をセラミックヒータ1ごと加熱する。これにより、棒状ろう材が溶融すると共に上記微小隙間13の中へ拡散し、埋設用ろう材51が微小隙間13へ充填される。
【0042】
更に、溶融したろう材は、接合層2の表面及び該接合層2に接続されたリード線3の接合端部31の表面にも拡散して、図1、図2に示すごとく、被覆用ろう材52がこれらを覆う。
そして、セラミックヒータ1を冷却して、ろう材(埋設用ろう材51及び被覆用ろう材52)を固着させる。
以上により、図1、図2に示すごとく、接合層2とリード線3との接合部分の形成が完了する。
【0043】
なお、埋設用ろう材51と被覆用ろう材52とは、上記の一つのろう付け工程によって連続して形成され、材質的にも特に区別されるものではない。
また、接合層2及びリード線3を覆う被覆用ろう材52の上から、更にめっきを施すことにより、リード線3の接合部の耐久性を一層向上させることもできる。
【0044】
次に、本例の作用効果につき説明する。
上記セラミックヒータ1においては、図1〜図3に示すごとく、接合層2とリード線3との間に形成される微小隙間13に、上記埋設用ろう材51が充填されている。そのため、排ガス中の腐食物質や結露水等が微小隙間13に侵入し、滞留することを防ぐことができる。
これにより、微小隙間13から接合層2や溶接部4への腐食の進行を防ぐことができる。
【0045】
即ち、接合層2に対して溶接によってリード線3を接合した構造においては、溶接部4の周囲に微小隙間13が形成され、該微小隙間13には腐食物質や水分が溜まりやすい。このような構造において、微小隙間13を上記埋設用ろう材51によって充填することにより、微小隙間51を起点とする溶接部4や接合層2の腐食を効果的に防ぐことができる。
【0046】
また、上記接合層2は被覆用ろう材52によって被覆されているため、上記腐食物質や結露水等が接合層2に接触することを防ぐことができる。これにより、接合層2の腐食を防ぐことができる。
このようにして、接合層2及び溶接部4の腐食を防ぎ、耐久性に優れたセラミックヒータ1を得ることができる。
【0047】
また、埋設用ろう材51及び被覆用ろう材52は、Ag−Cu、Au−Cu、又はAu−Niからなるため、接合層2及びリード線3に対する濡れ性に優れると共に、耐熱性、耐食性に優れた埋設用ろう材51及び被覆用ろう材52とすることができる。その結果、より接合層2及び溶接部4の耐久性を向上させることができる。
【0048】
また、埋設用ろう材51は、その最大厚みd1が0.005〜0.05mmであるため、上記微小隙間13を起点とする接合層2及び溶接部4の腐食を確実に防ぐと共に、応力の発生を防ぐことができる。
また、被覆用ろう材52の厚みd2が0.005〜0.025mmであるため、接合層2の腐食を確実に防止すると共に、接合層2とヒータ基材11との間の熱応力の上昇を防ぐことができる。
【0049】
以上のごとく、本例によれば、耐久性に優れたセラミックヒータを提供することができる。
【0050】
(実施例2)
本例は、図6、図7に示すごとく、接合層2とリード線3との間の微小隙間13に埋設用ろう材51を充填すると共に、接合層2を被覆用めっき53によって被覆してなるセラミックヒータ1の例である。
図6に示すごとく、被覆用めっき53は、接合層2と接続されたリード線3をも覆っている。
【0051】
被覆用めっき53は、リード線3を構成する金属材料と同等もしくはこれよりも卑である金属材料からなる。即ち、リード線3がNiからなる場合には、被覆用めっき53は、例えば、Ni、Cr、Zn等により構成することができる。リード線3がNi−Crからなる場合には、被覆用めっき53は、例えば、Ni−Cr、Cr、Zn等により構成することができる。
また、被覆用めっき53の厚みd3は、0.005〜0.025mmである。
【0052】
上記埋設用ろう材51を微小隙間13に充填する方法としては、実施例1と同様の方法を採用することができる。ただし、実施例1に比べて、用いるろう材の量を少なくする必要があるため、加熱処理の前に微小隙間13の脇に配置する球状もしくは棒状ろう材として、細いものを用いる。
【0053】
これにより、図7に示すごとく、微小隙間13にのみろう材(埋設用ろう材51)を充填する。
その後、図6に示すごとく、接合層2とリード線3と埋設用ろう材51とを覆うように、被覆用めっき53を施す。めっき方法としては、電解めっき法、無電解めっき法の何れでもよく、併用してもよい。
その他は、実施例1と同様である。
【0054】
本例の場合にも、耐久性に優れたセラミックヒータ1を提供することができる。
また、被覆用めっき53の厚みd3が0.005〜0.025mmであるため、接合層2の腐食を確実に防止すると共に、接合層2とヒータ基材11との間の熱応力の上昇を防ぐことができる。
【0055】
また、被覆用めっき53は、リード線3を構成する金属材料と同等もしくはこれよりも卑である金属材料からなる。これにより、リード線3よりも優先して被覆用めっき53が腐食することとなるため、リード線3の腐食を効果的に防止することができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0056】
(実施例3)
本例は、図8に示すごとく、接合層2とリード線3との間の微小隙間13に埋設用めっき55を充填すると共に、接合層2を被覆用めっき53にて被覆してなるセラミックヒータ1の例である。
図8に示すごとく、被覆用めっき53は、接合層2と接続されたリード線3をも覆っている。
また、埋設用めっき55と被覆用めっき53とは、特に区別される必要はなく、同一材料によって連続して形成することができる。即ち、接合層2及びリード線3の外周全体に対して厚膜のめっきを施すことにより、微小隙間13を埋めると共に接合層2及びリード線3を被覆する。
【0057】
埋設用めっき55及び被覆用めっき53は、リード線3を構成する金属材料と同等もしくは、これよりも卑であるめっき材が施されている。即ち、リード線3がNiからなる場合には、埋設用めっき55及び被覆用めっき53は、例えば、Ni、Zn等により構成することができる。リード線3がNi−Crからなる場合には、被覆用めっき53は、例えば、Ni−Cr、Zn等により構成することができる。
埋設用めっき55の最大厚みd5は0.005〜0.05mmであり、被覆用めっき53の厚みd3は、0.005〜0.025mmである。
【0058】
更に、被覆用めっき53の外周には、保護を狙いとしたCrめっき54を施す。その厚みd4は、0.0001〜0.003mmである。
なお、被覆用めっき53がAu材の場合には、耐熱性、耐食性に優れるため、特にCrめっきを施す必要はない。
上記埋設用めっき55及び被覆用めっき53は、電解めっき法または無電解めっき法のいずれによって施してもよいが、一回にて所定の厚さを施行するよりも複数回の施行にて形成することが望ましい。
その他は、実施例1と同様である。
【0059】
本例の場合にも、耐久性に優れたセラミックヒータ1を提供することができる。
また、埋設用めっき55及び被覆用めっき53は、Au、Ni又はAu−Niからなるため、微少隙間13を覆いうる厚さと共に、耐熱性、耐食性を充分に確保することができる。その結果、より接合層2及び溶接部4の耐久性を向上させることができる。
【0060】
また、被覆用めっき53の厚みd3が0.005〜0.025mmであるため、接合層2の腐食を確実に防止すると共に、接合層2とヒータ基材11との間の熱応力の上昇を防ぐことができる。
また、埋設用めっき55の最大厚みd5が0.005〜0.05mmであるため、微小隙間13を起点とする接合層2及び溶接部4の腐食を確実に防ぐと共に、応力の発生を防ぐことができる。
【0061】
また、被覆用めっき53の上には、厚みd4が0.0003〜0.003mmのCrめっき54を更に施してある。そのため、耐熱性、耐食性を向上させ、接合層2の腐食をより効果的に防止することができる。また、上記Crめっき54は、リード線3を構成する金属材料(Ni、Ni−Cr等)と同等もしくはこれよりも卑とすることができるため、リード線3の腐食をより効果的に防止することができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0062】
上記実施例においては、円柱形状のセラミックヒータについて説明したが、本発明は、積層型ガスセンサ等に積層する板状のセラミックヒータにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】実施例1における、セラミックヒータの接合層とリード線との接合部付近の径方向断面図。
【図2】実施例1における、セラミックヒータの接合層とリード線との接合部付近の軸方向断面図。
【図3】実施例1における、セラミックヒータの接合層とリード線との接合部付近の平面図。
【図4】実施例1における、セラミックヒータの正面図。
【図5】実施例1における、埋設用ろう材を充填する前の微小隙間付近の径方向断面図。
【図6】実施例2における、セラミックヒータの接合層とリード線との接合部付近の径方向断面図。
【図7】実施例2における、埋設用ろう材を充填した後の微小隙間付近の径方向断面図。
【図8】実施例3における、セラミックヒータの接合層とリード線との接合部付近の径方向断面図。
【図9】従来例における、セラミックヒータの接合層とリード線との接合部付近の径方向断面図。
【符号の説明】
【0064】
1 セラミックヒータ
11 ヒータ基材
12 外部端子
13 微小隙間
2 接合層
3 リード線
4 溶接部
51 埋設用ろう材
52 被覆用ろう材
53 被覆用めっき
54 Crめっき
55 埋設用めっき

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック製のヒータ基材の内部に発熱体を内蔵してなるセラミックヒータであって、
該セラミックヒータは、上記発熱体に接続されると共に上記ヒータ基材の外表面に配設された外部端子と、該外部端子の表面に配設されたコバールからなる接合層と、該接合層に溶接されたリード線とを有し、
上記接合層と上記リード線との溶接部の周囲において上記接合層と上記リード線との間に形成される微小隙間には、埋設用ろう材が充填されており、
上記接合層は、被覆用ろう材によって被覆されていることを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項2】
請求項1において、上記埋設用ろう材及び上記被覆用ろう材は、Ag−Cu、Au−Cu、又はAu−Niからなることを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項3】
請求項1又は2において、上記被覆用ろう材は、0.005〜0.025mmの厚みを有することを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項4】
セラミック製のヒータ基材の内部に発熱体を内蔵してなるセラミックヒータであって、
該セラミックヒータは、上記発熱体に接続されると共に上記ヒータ基材の外表面に配設された外部端子と、該外部端子の表面に配設されたコバールからなる接合層と、該接合層に溶接されたリード線とを有し、
上記接合層と上記リード線との溶接部の周囲であって、上記接合層と上記リード線との間に形成される微小隙間には、埋設用ろう材が充填されており、
上記接合層は被覆用めっきによって被覆されていることを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項5】
請求項4において、上記埋設用ろう材は、Ag−Cu、Au−Cu、又はAu−Niからなることを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項6】
請求項4又は5において、上記被覆用めっきは、上記リード線を構成する金属材料と同等もしくはこれよりも卑である金属材料からなることを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれか一項において、上記被覆用めっきは、0.005〜0.025mmの厚みを有することを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項8】
請求項1〜7において、上記埋設用ろう材は、その最大厚みが0.005〜0.05mmであることを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項9】
セラミック製のヒータ基材の内部に発熱体を内蔵してなるセラミックヒータであって、
該セラミックヒータは、上記発熱体に接続されると共に上記ヒータ基材の外表面に配設された外部端子と、該外部端子の表面に配設されたコバールからなる接合層と、該接合層に溶接されたリード線とを有し、
上記接合層と上記リード線との溶接部の周囲において上記接合層と上記リード線との間に形成される微小隙間には、埋設用めっきが充填されており、
上記接合層は、被覆用めっきによって被覆されていることを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項10】
請求項9において、上記埋設用めっき及び上記被覆用めっきは、Au、Ni又はAu−Niからなることを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項11】
請求項9、10において、上記被覆用めっきは、0.005〜0.025mmの厚みを有することを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項12】
請求項9〜11において、上記埋設用めっきは、その最大厚みが0.005〜0.05mmであることを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項13】
請求項9〜12において、上記被覆用めっきの上には、厚みが0.0001〜0.003mmのCrめっきを更に施してあることを特徴とするセラミックヒータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−210138(P2006−210138A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−20589(P2005−20589)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】