説明

セラミックヒータ

【課題】セラミックヒータを収容する筐体の大型化を抑制しつつ、加熱対象物に伝える加熱温度を上昇できるセラミックヒータを提供する。
【解決手段】本発明のセラミックヒータ1は、セラミックスにより形成されるセラミック体10を用いて、加熱対象物を加熱する。セラミック体10は、本体部11と、本体部11から加熱対象物側に向けて突出する突出部12とを有し、突出部12は、本体部11における加熱対象物に対向する側の表面11Aの少なくとも一部に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックスにより形成されるセラミック体を用いて、加熱対象物を加熱するセラミックヒータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、セラミックヒータは、半導体の製造過程で使用されるヒータ、ゴミの焼却に使用されるヒータ等の産業用ヒータや、暖房として使用されるヒータ、湯沸器・コーヒーメーカーに使用されるヒータ等の民生用ヒータとして広く利用されている。
【0003】
一般的に、セラミックヒータは、セラミックスにより形成される2枚の板状のセラミック体と、2枚のセラミック体の間に挟まれ、端子を介して電源からの電流が供給される発熱体(リード配線体)とを有している(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平6−76919号公報(第2−3頁、第1,2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような従来のセラミックヒータを用いて、セラミックヒータが加熱対象物を加熱する温度(以下、加熱温度)を上昇させようとした場合、セラミック体及び発熱体のサイズを大きくすることが考えられる。
【0005】
しかしながら、上述した従来のセラミックヒータには、次のような問題があった。すなわち、セラミック体及び発熱体のサイズを大きくしてしまうと、セラミックヒータを収容する筐体が大型化してしまう。
【0006】
そこで、本発明は、セラミックヒータを収容する筐体の大型化を抑制しつつ、加熱対象物に伝える加熱温度を上昇できるセラミックヒータの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するため、本発明は、次のような特徴を有している。まず、本発明の第1の特徴は、セラミックスにより形成されるセラミック体(セラミック体10)を用いて、加熱対象物を加熱するセラミックヒータ(例えば、セラミックヒータ1)であって、前記セラミック体は、本体部(本体部11)と、前記本体部から前記加熱対象物側に向けて盛り上がる隆起部(例えば、突出部12)とを有し、前記隆起部は、前記本体部における前記加熱対象物に対向する側の表面(表面11A)の少なくとも一部に形成されることを要旨とする。
【0008】
かかる特徴によれば、隆起部が本体部の表面の少なくとも一部に形成されていることによって、本体部の大きさを大きくすることなく、セラミックヒータ(特に、表面)の表面積が大きくなる。従って、セラミックヒータを収容する筐体の大型化を抑制しつつ、加熱対象物に伝える加熱温度を上昇できる。
【0009】
本発明の第2の特徴は、本発明の第1の特徴に係り、電源からの電流が供給される端子(端子20)をさらに備え、前記セラミック体は、導電性を有することを要旨とする。
【0010】
本発明の第3の特徴は、本発明の第1又は2の特徴に係り、前記セラミック体は、炭化ケイ素を含む材料で形成されることを要旨とする。
【0011】
本発明の第4の特徴は、本発明の第1乃至3の特徴に係り、前記隆起部は、前記表面に複数設けられることを要旨とする。
【0012】
本発明の第5の特徴は、本発明の第1乃至4の特徴に係り、前記隆起部は、前記本体部から前記加熱対象物側に向けて突出する円柱状に形成されていることを要旨とする。
【0013】
本発明の第6の特徴は、本発明の第5の特徴に係り、前記本体部は、板状に形成され、前記隆起部の直径(D)は、前記本体部11の厚さ(T)に等しいことを要旨とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、セラミックヒータを収容する筐体の大型化を抑制しつつ、加熱対象物に伝える加熱温度を上昇できるセラミックヒータを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下において、本発明に係る実施形態について、図面を参照しながら説明する。具体的には、(1)セラミックヒータの構成、(2)作用・効果、(3)変更例、(4)その他の実施形態について、説明する。
【0016】
なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。
【0017】
したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0018】
(1)セラミックヒータの構成
まず、本実施形態に係るセラミックヒータ1の構成について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係るセラミックヒータ1を示す斜視図である。図2は、本実施形態に係るセラミックヒータ1を示す上面図(図1のA矢視図)である。図3は、本実施形態に係るセラミックヒータ1を示す側面図(図1のB矢視図)である。図4は、本実施形態に係るセラミックヒータ1の一部を示す斜視図である。
【0019】
図1〜4に示すように、セラミックヒータ1は、セラミックスにより形成されるセラミック体10と、電源からの電流が供給される端子20とを備えている。
【0020】
セラミック体10は、導電性を有している。例えば、セラミック体10は、炭化ケイ素、酸化亜鉛などの導電性セラミックスや黒鉛によって形成される。セラミック体10は、本体部11と、本体部11から加熱対象物(不図示)側に向けて突出する円柱状に形成された突出部12(隆起部)とを有する。
【0021】
本体部11は、板状(薄板状の直方体)に形成されている。本体部11は、上面図(図2参照)において、長方形からなる。
【0022】
突出部12は、本体部11における加熱対象物に対向する側の表面11Aの少なくとも一部に複数形成される。突出部12の直径Dは、図4に示すように、本体部11の厚さTに等しい。
【0023】
端子20は、板状の本体部11の長手方向における両端に設けられている。端子20は、電源に接続されている。つまり、電源からの電流は、端子20を介してセラミック体10に流れる。
【0024】
(2)作用・効果
本実施形態では、突出部12がセラミック体10の表面11Aの少なくとも一部に形成されていることによって、本体部11の大きさを大きくすることなく、セラミックヒータ1(特に、表面11A)の表面積が大きくなる。従って、セラミックヒータを収容する筐体の大型化を抑制しつつ、加熱対象物に伝える加熱温度を上昇できる。
【0025】
ここで、セラミックヒータ1と従来のセラミックヒータとをそれぞれ用いて、加熱対象物を同じ温度まで加熱した場合に、セラミックヒータ1の温度が従来のセラミックヒータの温度よりも低くなる。これにより、従来のセラミックヒータにおいて腐食が始まる温度以上の加熱が必要であった材質であっても、セラミックヒータ1に適用できる。
【0026】
例えば、同一の材質を用いて、セラミックヒータ1と従来のセラミックヒータとをそれぞれ生成した。これらを材質の上限温度まで加熱した場合、従来のセラミックヒータでは、加熱対象物の目標温度に達しないが、セラミックヒータ1では、加熱対象物の目標温度に達するという場合がある。従って、本発明に係るセラミックヒータ1の製造に用いることができる材質は、従来のセラミックヒータよりも加熱対象物の温度を上げられる。
【0027】
本実施形態では、セラミック体10が導電性を有することによって、従来の2枚のセラミック体の間に挟まれる発熱体(リード配線体)や、2枚のセラミック体のうちの1枚のセラミック体が不要となるため、セラミック体10の製造コストを低減できる。
【0028】
ここで、従来のセラミックヒータでは、2枚のセラミック体の間に挟まれる発熱体(リード配線体)がセラミック体を加熱しなければならず、加熱対象物を加熱するための熱量をロスしてしまう。しかし、セラミックヒータ1は、セラミック体10自体が加熱されるため、従来のセラミックヒータと比べ、加熱対象物を加熱するための熱量のロスを低減できる。
【0029】
本実施形態では、突出部12が円柱状に形成されていることによって、突出部12が角柱形状で形成されている場合と比べて、角の部分がなく、角の部分に応力が集中することがないため、セラミックヒータ1の耐久性が向上する。
【0030】
本実施形態では、突出部12の直径Dが本体部11の厚さTに等しいことによって、突出部12の直径Dが本体部11の厚さTよりも小さい場合と比べて、突出部12の耐久性が向上する。
【0031】
(3)変更例
上述した実施形態に係るセラミックヒータ1は、以下のように変更してもよい。なお、上述した実施形態に係るセラミックヒータ1と同一部分には同一の符号を付して、相違する部分を主として説明する。
【0032】
(3−1)変更例1
まず、変更例1に係るセラミックヒータ1Aの構成について、図5を参照しながら説明する。図5は、変更例1に係るセラミックヒータ1Aの一部を示す斜視図である。
【0033】
上述した実施形態に係るセラミックヒータ1では、突出部12の直径Dと本体部11の厚さTとが等しい。これに対して、変更例1に係るセラミックヒータ1Aでは、突出部12の直径Dと本体部11の厚さTとが異なる。
【0034】
具体的には、図5に示すように、突出部12の直径Dは、以下の式(1)を満たす。
【0035】
T<D<2×T …(1)
つまり、突出部12の直径Dは、本体部11の厚さTよりも大きく、本体部11の厚さTの2倍よりも小さい。これにより、変更例1に係るセラミックヒータ1Aでは、上述した実施形態と同様の効果を得ることができるとともに、突出部12の直径Dが本体部11の厚さTの2倍以上の場合と比べて、突出部12が形成されていない表面11Aの面積の減少を抑制でき、熱輻射面積が増えることに伴って加熱対象物の温度を上昇できる。
【0036】
(3−2)変更例2
次に、変更例2に係るセラミックヒータ1Bの構成について、図6を参照しながら説明する。図6は、変更例2に係るセラミックヒータ1Bの一部を示す斜視図である。
【0037】
上述した実施形態に係るセラミックヒータ1では、突出部12の直径Dと本体部11の厚さTとが等しい。これに対して、変更例2に係るセラミックヒータ1Bでは、突出部12の直径Dと本体部11の厚さTとが異なる。
【0038】
具体的には、図6に示すように、突出部12の直径Dは、以下の式(2)を満たす。
【0039】
D<T …(2)
つまり、突出部12の直径Dは、本体部11の厚さTよりも小さい。これにより、変更例2に係るセラミックヒータ1Bでは、上述した実施形態と同様の効果を得ることができるとともに、突出部12の耐久性が向上する。
【0040】
(3−3)変更例3
次に、変更例3に係るセラミックヒータ1Cの構成について、図7を参照しながら説明する。図7は、変更例3に係るセラミックヒータ1Cを示す上面図である。
【0041】
上述した実施形態に係るセラミックヒータ1では、本体部11が薄板状の直方体に形成されている。これに対して、変更例3に係るセラミックヒータ1Cでは、本体部11の形状が異なる。
【0042】
具体的には、図7に示すように、本体部11は、上面図において、円弧状(C字上)に形成されている。これにより、変更例3に係るセラミックヒータ1Cでは、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0043】
(3−4)変更例4
次に、変更例4に係るセラミックヒータ1Dの構成について、図8を参照しながら説明する。図8は、変更例4に係るセラミックヒータ1Dを示す上面図である。
【0044】
上述した実施形態に係るセラミックヒータ1では、本体部11が薄板状の直方体に形成されている。これに対して、変更例4に係るセラミックヒータ1Dでは、本体部11の形状が異なる。
【0045】
具体的には、図8に示すように、本体部11は、上面図において、渦巻き状に形成されている。これにより、変更例4に係るセラミックヒータ1Dでは、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0046】
(3−5)変更例5
次に、変更例5に係るセラミックヒータ1Eの構成について、図9を参照しながら説明する。図9は、変更例5に係るセラミックヒータ1Eを示す斜視図である。
【0047】
上述した実施形態に係るセラミックヒータ1では、突出部12が円柱状に形成されている。これに対して、変更例5に係るセラミックヒータ1Eでは、突出部12の形状が異なる。
【0048】
具体的には、図9に示すように、突出部12は、角柱形(三角柱以上であればよい)に形成されている。これにより、変更例5に係るセラミックヒータ1Eでは、突出部12が円柱状に形成されている場合と比べて、セラミックヒータ1(特に、表面11A)の表面積が大きくなる。
【0049】
(3−6)変更例6
次に、変更例6に係るセラミックヒータ1Fの構成について、図10を参照しながら説明する。図10は、変更例6に係るセラミックヒータ1Fを示す斜視図である。
【0050】
上述した実施形態に係るセラミックヒータ1では、本体部11が板状に形成されている。これに対して、変更例6に係るセラミックヒータ1Fでは、本体部11の形状が異なる。
【0051】
具体的には、図10に示すように、本体部11は、円柱状に形成されている。これにより、変更例6に係るセラミックヒータ1Fでは、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0052】
(3−7)変更例7
次に、変更例7に係るセラミックヒータ1Gの構成について、図11を参照しながら説明する。図11は、変更例7に係るセラミックヒータ1Gを示す斜視図である。
【0053】
上述した実施形態に係るセラミックヒータ1では、隆起部としては、本体部11から加熱対象物側に向けて突出する突出部12である。これに対して、変更例7に係るセラミックヒータ1Gでは、隆起部として、突出部12の代わりに凸部13が設けられる。
【0054】
具体的には、図11に示すように、凸部13は、側面図(図11(b)参照)において、本体部11から加熱対象物(不図示)側に向けて突出する波状に形成されている。これにより、変更例7に係るセラミックヒータ1Gでは、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0055】
(5)その他の実施形態
上述したように、本発明の実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0056】
例えば、本発明の実施形態は、次のように変更することができる。具体的には、セラミックヒータ1は、導電性を有しているものとして説明したが、これに限定されるものではなく、2枚のセラミック体と、2枚のセラミック体の間に挟まれる発熱体(リード配線体)とを有していてもよい。この場合、発熱体は、電源からの電流が供給されることによって、2枚のセラミック体を加熱する。
【0057】
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本実施形態に係るセラミックヒータ1を示す斜視図である。
【図2】本実施形態に係るセラミックヒータ1を示す上面図(図1のA矢視図)である。
【図3】本実施形態に係るセラミックヒータ1を示す側面図(図1のB矢視図)である。
【図4】本実施形態に係るセラミックヒータ1の一部を示す斜視図である。
【図5】変更例1に係るセラミックヒータ1Aの一部を示す斜視図である。
【図6】変更例2に係るセラミックヒータ1Bの一部を示す斜視図である。
【図7】変更例3に係るセラミックヒータ1Cを示す上面図である。
【図8】変更例4に係るセラミックヒータ1Dを示す上面図である。
【図9】変更例5に係るセラミックヒータ1Eを示す斜視図である。
【図10】変更例6に係るセラミックヒータ1Fを示す斜視図である。
【図11】変更例7に係るセラミックヒータ1Gを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0059】
1(1A〜1G)…セラミックヒータ
10…セラミック体
11…本体部
11A…表面
12…突出部
20…端子
30…凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックスにより形成されるセラミック体を用いて、加熱対象物を加熱するセラミックヒータであって、
前記セラミック体は、
本体部と、
前記本体部から前記加熱対象物側に向けて盛り上がる隆起部とを有し、
前記隆起部は、前記本体部における前記加熱対象物に対向する側の表面の少なくとも一部に形成されるセラミックヒータ。
【請求項2】
電源からの電流が供給される端子をさらに備え、
前記セラミック体は、導電性を有する請求項1に記載のセラミックヒータ。
【請求項3】
前記セラミック体は、炭化ケイ素を含む材料で形成される請求項1又は2に記載のセラミックヒータ。
【請求項4】
前記隆起部は、前記表面に複数設けられる請求項1乃至3の何れか一項に記載のセラミックヒータ。
【請求項5】
前記隆起部は、前記本体部から前記加熱対象物側に向けて突出する円柱状に形成されている請求項1乃至4の何れか一項に記載のセラミックヒータ。
【請求項6】
前記本体部は、板状に形成され、
前記隆起部の直径は、前記本体部の厚さに等しい請求項5に記載のセラミックヒータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−102963(P2010−102963A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−273587(P2008−273587)
【出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】