説明

セラミック表面の金属被覆方法及びセラミックとアルミニウムとの接合方法

セラミックの表面にアルミニウム又はアルミニウム合金薄膜を形成する方法であって、前記セラミックの金属被覆される表面をアルミニウム又はアルミニウム合金溶融液に含漬する工程と、前記表面を前記溶融液に対して移動させ、又は前記溶融液の中で静止させて、前記アルミニウム又はアルミニウム合金の溶融液を前記セラミックの金属被覆表面に付着させる工程と、前記セラミックの金属被覆表面を前記溶融液から移動させながら取り出し、前記表面に付着したアルミニウム又はアルミニウム合金液膜を自然冷却させて、前記表面にアルミニウム又はアルミニウム合金薄膜が接合されたセラミックを得る工程と、を含むことを特徴とする方法。本発明のセラミックの表面にアルミ薄膜及びアルミ合金薄膜を接合する方法によって、セラミックの表面に厚さ数μm〜数十μmのアルミ又はアルミ合金膜を形成できる。この薄膜は、その内部に酸化膜不純物及び気泡などの微視的欠陥は存在しないため、純アルミの良好な物理と力学性能を持つ。この表面金属被覆層を用いて、セラミック同士及びセラミックとアルミとのろう接が可能となる。セラミックと金属を接合する方法及び装置もまた提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセラミックの金属被覆及びセラミックとアルミニウムとの接合方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セラミックは、良好な熱伝導性と絶縁性能を持つため、よいパッケジング材料である。一般的に、使う時に電子回路作製又は電子部品のろう材の加工のために、セラミック表面の金属被覆を施す必要がある。また、セラミックは、比較的に脆く、且つ機械加工は困難であるため、多くの場合それを金属と接合し、複合材料及び部品を作製する必要がある。
【0003】
伝統的な金属被覆方法として、貴金属法、Mo−Mn法がある。貴金属法としては、まず貴金属の粉末、例えば、銀粉末、パラジウム粉末とガラス粉末、バインダー、溶剤などを混合しペーストを作り、セラミックの表面に塗付けて、900℃前後の温度においてガラスを溶かし、セラミックの表面に焼き付けて、貴金属層を形成する。Mo−Mn法としては、モリブデン粉末と酸化マンガン粉末とを混合し、ペーストを作り、そして、セラミックの表面に塗付けし、それから1,500℃前後の温度においてマンガンとセラミックとの複合酸化物を形成し、金属のモリブデンをセラミックの表面に焼き付ける。前者の方法は、使う材料が高価で、且つ接合強度は比較的に低いため、一般的に電導膜を作る場合に使う。後者の方法は、モリブデンとセラミックの熱膨張係数が近く、接合体の焼結後の熱応力は小さく、金属膜とセラミックとの接合強度は高い。電導層の作製とは別に、また表面のモリブデン層を利用し、普通の金属ろう材を使ってセラミックと金属のろう接を行う。
【0004】
セラミックと金属のよく使う接合方法としては、Mo−Mn金属被覆/ろう接法以外にまたDBC法と活性金属ろう接法がある。DBC法としては、酸素を含む銅又は表面酸化された銅板をセラミックの上に重ねてから、不活性雰囲気中で約1,070℃に加熱し、銅材の表面にCu−CuO共晶液を形成させ、この液をろう材として用いセラミックと銅材を接合する。活性金属ろう接法としては、銀、銅又はチタン粉末などを配合しペーストを作り、セラミックの表面に塗付けてから銅又は特殊な鋼材などの金属材料又は部品を重ねる。次に、真空中において約850℃に加熱し、銀−銅−チタンろう材を溶かし、セラミックと金属材料及び部品を接合させる。DBC法は、主にセラミックと銅との複合回路基板の製造に用いられる(セラミックと銅との熱膨張係数の差が大きく、接合の中にセラミックを破裂させる大きな熱応力を生じさせる可能性があるため、銅材の厚み及び形状に制限がある)。活性金属ろう接法は、接合できる金属の種類が多く、セラミックの熱膨張係数に近い金属を接合することで熱応力を緩和させることができるので、例えば、セラミックと銅との複合回路基板、車用ターボチャージャ・ローター、ターペットなどの金属とセラミックとの複合部品の製造におけるその用途は広い。Mo−Mn法はまた、シリコン整流器の実装ケース及び金属電極の接合に広く使用される。
【0005】
アルミニウムは、使用量として鋼に次ぐ金属材料である。アルミニウム自身の化学活性は高いため、理論上セラミックと直接反応し、セラミックと接合することができる。さらに、アルミニウムの降伏強度は比較的低く、塑性変形を通じてセラミックと金属との接合体中の熱応力を緩和することができる。したがって、アルミニウムとセラミックとの接合は広い利用可能性がある。しかし、アルミニウムの表面に存在する酸化物の障害で、セラミックとアルミニウムとの接合は非常に困難である。
【0006】
今日まで、セラミックとアルミニウムとの接合に関して既に沢山の研究が行われてきた。真空ろう接法、固体拡散接合法、摩擦圧着法、高真空クリーニング圧接法、超音波振動圧着法などの方法が次々に開発されてきた。真空ろう接法は、セラミックとアルミニウムとの間にろう材として低融点のアルミニウム合金を挟み、窒素又はその他の不活性ガス雰囲気又は10−3Paより高い高真空において加熱し、アルミニウム合金ろう材を溶かし、セラミックとアルミニウムとを接合させる。固体拡散接合法は、ろう接法とはほぼ同じである。その違いは、ろう材を使わず、且つ接合はアルミニウムの融点より低い低温で行われる。接合過程において液体は生じないため、アルミニウムとセラミックとの接合面を密着させるために大きな圧力を施す必要がある。これらの方法でアルミニウムとセラミックとを接合できるが、アルミニウムの化学的性質は非常に活発で、1,000℃より低い温度範囲での酸素との平衡分圧は10−40Pa以下であり、今まで得られる最高の真空条件でもアルミニウムの酸化を防ぐことはできない。セラミックとアルミニウムとの接合界面では常にアルミニウムの非晶質酸化物が存在する。その結果、接合体の界面に多くの未接欠陥が生じて、接合体の力学性能は悪く、且つそのばらつきは大きくため、実際な応用を妨げる(X. S. Ning, T. Okamoto, Y. Miyamoto, A. Koreeda, K. Suganuma, and S. Goda, Bond strength and interfacial structure of silicon nitride joints brazed with aluminium−silicon and aluminium−magnesium alloys, Journal of Materials Science, 26巻(1991年)2050−2054頁;E. Saiz; A. P. Tomsia; K. Sugamuma, Wetting and strength issues at Al/α−alumina interfaces,Journal of European Ceramic Society, 23巻(2003年)2787−2796頁)。
【0007】
酸化膜の影響をなくすために、摩擦圧着法、超音波振動圧着法、又は超高真空クリーニング圧着法が開発された。摩擦圧着法は、セラミックにアルミニウムを接触させ、圧力が加わった状態で両者に互いに摩擦させ、アルミニウム表面の酸化膜を除去し、それから摩擦で生じた熱でセラミックにアルミニウムを圧着する。超音波振動法の基本原理は摩擦圧着法と同じである。その違いは、摩擦は、超音波振動法の超音波振動により発生させる。超高真空クリーニング圧着法は、まず真空中においてイオン衝撃法でアルミニウム表面の酸化膜を除去し、それから10−6Pa以下の超高真空において、アルミニウムをセラミックに圧着し、接合する。これらの方法は、多かれ少なかれアルミニウム表面の酸化膜を除去し、セラミックとアルミニウムとの接合界面の性能を改善することはできるが、接合過程において大きな圧力を施す必要があり、アルミニウム材の形状変化を生じる。さらに、金属及びセラミックの形状にも制限がある。
【0008】
もし、セラミックの表面にアルミニウム膜を形成させることができれば、セラミックとアルミニウムとの接合をアルミニウムとアルミニウムの接合に転換できる。これで、広く開発されたアルミニウムのろう接技術を使って、セラミックとアルミニウムとを接合することができる。しかしながら、今までセラミックの表面にアルミニウム膜を形成することは依然として非常に難しい問題である。すでに人々は真空蒸着法、マグネトロン・スパッタリング法及び分子線エピタキシー法でアルミナ表面にアルミニウム膜の形成を試みたが、アルミナの表面に連続的なアルミニウム膜を形成することはできなかった。アルミナ基板が室温近くに保存される場合、アルミナ基板に蒸着されたアルミニウムは素早く成長するが、島状に成長する。一方、基板の温度がアルミニウムの融点を超えた場合、アルミニウムはアルミナの上に蒸着することさえできない(G. Dehm, B. J. Inkson, T. Wagner, Growth and micro−structural stability of epitaxial Al films on (0001) α−Al substrates, Acta Mater., 50(2002)5021−32頁;M. Vermeersch, F. Malengreau, R. Sporken, R. Caudano, The aluminium/sapphire interface formation at high temperature: an AES and LEED study, Surf. Sci., 323(1995)175−187頁)。これは、アルミニウムとセラミックとの湿潤性が悪いためである(今まで測定された濡れ角は、75°より大きい)。理論上、濡れ角がゼロより大きい場合、基板の上に均一な膜は成長できない。ちなみに、セラミックとアルミニウムとのろう接界面によくある未接合欠陥は、やはりアルミニウムがセラミックの表面に均一にスプレッドできないことと何等関係はあるはずである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】X. S. Ning, T. Okamoto, Y. Miyamoto, A. Koreeda, K. Suganuma, and S. Goda, Bond strength and interfacial structure of silicon nitride joints brazed with aluminium−silicon and aluminium−magnesium alloys, Journal of Materials Science, 26巻(1991年)2050−2054頁
【非特許文献2】E. Saiz; A. P. Tomsia; K. Sugamuma, Wetting and strength issues at Al/α−alumina interfaces,Journal of European Ceramic Society, 23巻(2003年)2787−2796頁
【非特許文献3】G. Dehm, B. J. Inkson, T. Wagner, Growth and micro−structural stability of epitaxial Al films on (0001) α−Al2O3 substrates, Acta Mater., 50(2002)5021−32頁
【非特許文献4】M. Vermeersch, F. Malengreau, R. Sporken, R. Caudano, The aluminium/sapphire interface formation at high temperature: an AES and LEED study, Surf. Sci., 323(1995)175−187頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
セラミックの表面に均一なアルミニウム及びアルミニウム合金薄膜を形成するために、本発明者らは、広範な研究を行った。最終的に一定量の酸素を含む雰囲気中において、セラミック板をアルミニウム及びアルミニウム合金溶融液に含漬し、そしてその中で移動させてから取り出し、自然冷却してから、セラミックの表面に厚さ1μmから数十μmまでのアルミニウム及びアルミニウム合金膜を形成し、表面にアルミニウム及びアルミニウム合金がコーティングされたセラミックが得られることを知見した。さらに、発明者らは、セラミックの表面にアルミニウム及びアルミニウム合金薄膜が接合されたセラミックとアルミニウム材の接合を試み、この方法でセラミックとアルミニウム材を強く接合させることを知見した。発明者らはまた、溶融温度の低いアルミニウム合金で表面金属被覆層を形成すれば、この金属被覆層は直接にろう材として使え、セラミックとアルミニウム又はアルミニウム合金のろう接を行えることを知見した。発明者はまた、この原理に基づいて、セラミックの金属被覆/ろう接装置を作製し、均一なセラミックとアルミニウムの高性能接合を実現し、本発明を完成した。
【0011】
本発明の一つの目的は、セラミックの表面にアルミニウム及びアルミニウム合金薄膜を形成する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明により提供される方法は、セラミックの表面にアルミニウム又はアルミニウム合金薄膜を形成する方法であって、前記セラミックの金属被覆される表面をアルミニウム又はアルミニウム合金溶融液に含漬する工程と、前記表面を前記溶融液に対して移動させ、又は前記溶融液の中で静止させて、前記アルミニウム又はアルミニウム合金の溶融液を前記セラミックの金属被覆表面に付着させる工程と、前記セラミックの金属被覆表面を前記溶融液から移動させながら取り出し、前記表面に付着したアルミニウム又はアルミニウム合金液膜を自然冷却させて、前記表面にアルミニウム又はアルミニウム合金薄膜が接合されたセラミックを得る工程と、を含むことを特徴とする方法である。
【0013】
本発明により提供されるセラミック表面にアルミニウム又はアルミニウム合金薄膜を接合する方法は、前記セラミックの金属被覆面をアルミニウム又はアルミニウム合金溶融液に含漬し、前記表面を前記溶融液に対して移動させ、アルミニウム溶液表面の酸化膜を除去する。さらに必要に応じて前記セラミックの金属被覆面を前記アルミニウム又はアルミニウム溶融液に一定の時間放置し前記アルミニウム又はアルミニウム合金溶融液を前記表面に付着させてから、前記セラミックの金属被覆面を前記溶融液から移動させ、該表面に付着されたアルミニウム又はアルミニウム合金膜を拘束されない状態で自然冷却・凝固させ、表面に1μm〜数十μm厚みの緻密なアルミニウム又はアルミニウム合金薄膜が接合されたセラミックを得る。
【0014】
上記方法のように、セラミックの金属被覆面をアルミニウム又はアルミニウム合金溶融液に含漬する方法は、前記セラミックを前記アルミニウム又はアルミニウム合金溶融液を含む容器の底から前記溶融液に挿し込んだ後、前記セラミックを垂直に上向きに移動させることを含む。
【0015】
上記方法は、アルミニウム又はアルミニウム合金溶融液が、下記1)又は2)から選ばれる温度を有することを特徴とする、
1)前記アルミニウム又はアルミニウム合金溶融液が、630℃〜850℃、又は700℃〜850℃、又は680℃〜780℃、又は700℃〜760℃であり、具体的には、630℃、680℃、700℃、730℃、760℃、780℃又は850℃である温度;
2)前記アルミニウム又はアルミニウム合金溶融液が、730℃〜820℃又は760℃〜820℃又は780℃〜820℃又は730℃〜760℃又は730℃〜780℃又は760℃〜820℃又は760℃〜780℃であり、具体的には、730℃、760℃、780℃又は820℃である温度。
【0016】
上記方法は、溶融液に対してセラミックを移動させ、又は前記溶融液の中で静止させる方法が、下記1)又は2)又は3)を含む、
1)前記溶融液に対して移動させる場合、前記溶融液に対する移動速度が68.5mm/分間であり、且つ前記セラミックの金属被覆面を溶液から取り出す速度が68.5mm/分間であり;そして
前記溶融液に対し静止させる場合、前記溶融液に対する静止時間が10分間であり、且つ前記セラミックの金属被覆面を前記溶融液から取り出す速度が10mm/分間である方法;
2)前記溶融液に対して移動させる場合、前記溶融液に対する移動速度が10mm/分間〜68.5mm/分間であり、且つ前記セラミックの金属被覆面を前記溶融液液から取り出す速度が10mm/分間又は68.5mm/分間であり;そして
前記溶融液に対して静止させる場合、前記溶融液に対する静止時間が5分間〜60分間又は5分間〜30分間又は30分間〜60分間であり、具体的には、5分間、30分間、又は60分間であり;且つ前記セラミックの金属被覆面を前記溶融液から取り出す速度が274mm/分間である方法;
3)前記溶融液に対して移動させる場合、前記溶融液に対する移動速度が10mm/分間〜68.5mm/分間であり、具体的には、10mm/分間、又は68.5mm/分間であり;且つ前記セラミックの金属被覆面を溶融液から取り出す速度が10mm/分間〜68.5mm/分間であり、具体的には、10mm/分間又は68.5mm/分間であり;そして
前記溶融液に対して静止させる場合、前記溶融液に対する静止時間が5分間〜60分間又は5分間〜30分間又は10分間〜60分間であり、具体的には、5分間、10分間、30分間又は60分間であり;且つ前記セラミックの金属被覆面を溶融液から取り出す速度が10mm/分間〜274mm/分間であり、具体的には10mm/分間又は274mm/分間である方法。
【0017】
上記方法は、下記1)、2)又は3)に記載の雰囲気中で行われる、
1)10−3Paオーダーの真空中;
2)不活性ガス;
3)酸素を含む不活性ガスであり、前記酸素の体積に基づく含有量が、3ppm〜1,300ppm、又は3ppm〜700ppm、又は3ppm〜420ppm、又は3ppm〜110ppm、又は10ppm〜420ppm、又は10ppm〜700ppm、又は110ppm〜420ppm、又は110ppm〜700ppm、又は420ppm〜1,300ppmであり、具体的には、3ppm、10ppm、110ppm、420ppm、700ppm又は1,300ppm(ppmは百万分の一である。);
又は不活性ガスが窒素ガスである。
【0018】
上記方法は、アルミニウム合金が、Al−8質量%Si、Al−12質量%Si、Al−2質量%Si、Al−1質量%Si又はAl−12質量%Si−1質量%Mgであることを特徴とする。
【0019】
上記方法は、セラミックが、酸化物セラミック、窒化物セラミック又は炭化物セラミックであり;又は、前記酸化物セラミックがアルミナセラミック板であり、前記窒化物セラミックが窒化アルミニウムセラミック板又は窒化ケイ素セラミック板であり、前記炭化物セラミックが炭化ケイ素セラミック板であることを特徴とする。
【0020】
上記方法は、アルミニウム又はアルミニウム合金薄膜が、下記1)、又は2)、又は3)で特定される厚みを有する、
1)4μm〜51μm、又は5μm〜17μm、又は6μm〜10μm、又は7μm〜9μm、又は8μm〜17μm、又は8μm〜10μm、又は10μm〜17μmであり、具体的には、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm、10μm、17μm又は51μm;
2)1μm〜7μm、又は1μm〜5μm、又は1μm〜3μm、又は1μm〜4μm、又は2μm〜7μm、又は2μm〜5μm、又は2μm〜4μm、又は3μm〜5μm、又は3μm〜7μm、又は4μm〜7μmであり、具体的には、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm又は7μm;
3)1μm〜51μm、又は2μm〜17μm、又は3μm〜10μm、又は4μm〜9μm、又は5μm〜8μm、又は8μm〜17μm、又は8μm〜10μm、又は10μm〜17μmであり、具体的には、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、7μm、6μm、8μm、9μm、10μm、17μm又は51μm。
【0021】
上記方法で得られた表面にアルミニウム又はアルミニウム合金薄膜が接合されたセラミックもまた本発明であり、セラミックとアルミニウム又はアルミニウム合金薄膜との界面にアルミニウムの非晶質酸化物不純物が存在しないことを特徴とする。
【0022】
本発明のもう一つの目的は、一種類の表面にアルミニウム及びアルミニウム合金の薄膜が接合されたセラミックを提供することである。
【0023】
本発明により提供される、表面にアルミニウム又はアルミニウム合金薄膜が接合されたセラミックアルミニウム又はアルミニウム合金薄膜は、セラミックの表面に均一に付着するアルミニウム又はアルミニウム合金液膜の凝固によって形成され、且つ厚みが数μmから数十μmの間であることを特徴とする。
前記アルミニウム及びアルミニウム合金の薄膜は、セラミックの上に接着されたアルミニウム合金薄膜のアルミニウム連続膜が拘束されない自然な凝固によって形成され、そして、そのアルミニウムの厚みは、1μm〜数十μmの間である。
【0024】
上記表面にアルミニウム又はアルミニウム合金薄膜が接合されたセラミックは、セラミックとアルミニウム又はアルミニウム合金薄膜との界面が、アルミニウムの非晶質酸化物不純物が存在しないものであり、且つ前記アルミニウム又はアルミニウムの合金が前記セラミックと直接に反応し、互いに成長しあうものであることを特徴とする。
【0025】
上記表面にアルミニウム又はアルミニウム合金薄膜が接合されたセラミックは、アルミニウム又はアルミニウム合金薄膜とセラミックとの碁盤分割剥離強度が、4.1N/cm以上であることを特徴とする。
【0026】
上記表面にアルミニウム及びアルミニウム合金の薄膜が接合されたセラミックは、アルミニウムが工業用純アルミニウムを含み、アルミニウム合金はアルミニウム−シリコン2元合金及びアルミニウム−シリコン−マグネシウム3元合金を含む。
【0027】
本発明の第二の目的は、セラミックと金属の接合方法であり、
1)セラミックの接合面に厚さ数μm〜数十μmの緻密なアルミニウム又はアルミニウム合金薄膜を形成させて、前記接合面がアルミニウム又はアルミニウム合金に覆われたセラミックを得る工程と、
2)前記アルミニウム又はアルミニウム合金薄膜を用い、前記接合面がアルミニウム又はアルミニウム合金薄膜に覆われたセラミックと金属とを接合し、又は前記アルミニウム又はアルミニウム合金薄膜を用いて、前記接合面が前記アルミニウム又はアルミニウム合金薄膜に覆われたセラミック同士を接合する工程と、
を含む、方法を提供することである。
【0028】
本発明が提供するセラミックと金属との接合方法は下記のとおりである:1)セラミックの接合面に厚さ数μm〜数十μmの緻密なアルミニウム又はアルミニウム合金1の薄膜を形成し、前記表面が前記アルミニウム又はアルミニウム合金1の薄膜に覆われたセラミックを得る。2)通常のアルミニウム及びアルミニウム合金のろう接方法を活用し、真空、不活性ガス雰囲気において、表面がアルミニウム又はアルミニウム合金1に覆われたセラミック同士を接合し、又は表面がアルミニウム又はアルミニウム合金1に覆われたセラミックとアルミニウム又はアルミニウム合金2の部材とを接合する。アルミニウム又はアルミニウム合金2からなる部材の溶融及び変形を防ぐために、選ばれたアルミニウム合金2の溶融温度は、アルミニウム合金1の溶融温度より高くしなければならない。また、ろう接温度は、アルミニウム合金1の溶融温度より高く、そして、アルミニウム及びアルミニウム合金2の融点又は溶融温度より低く設定しなければならない(即ち、ろう接温度は、アルミニウム合金1の溶融温度より高く、且つ純アルミニウムの融点より低い。又は、ろう接温度は、アルミニウム合金1の溶融温度より高く、且つアルミニウム合金2の溶融温度より低い)。
【0029】
上記のセラミックと金属との接合方法における工程1)又は前記方法は、セラミックの接合面に厚さ数μm〜数十μmの緻密なアルミニウム又はアルミニウム合金薄膜を形成する過程が、下記:前記セラミックの接合面を前記アルミニウム又はアルミニウム合金の溶融液に含漬し、そして、それらを前記溶融液に対し相対運動させ、及び/又はそれらを前記溶融液に静止させて、前記セラミックの接合面を前記溶融液に湿潤させてから;セラミックの接合面を溶融液から移動させながら取り出し、冷却し、前記セラミックの表面に付着するアルミニウム又はアルミニウム合金液膜を自然に凝固させ、アルミニウム又はアルミニウム合金薄膜を形成する方法である。
【0030】
上記セラミックと金属との接合方法における工程2)は、下記I、又はII、又はIII、又はIVに記載された手順にしたがって行われる、
I.前記工程2)が、接合面がアルミニウム又はアルミニウム合金薄膜に覆われたセラミックのアルミニウム又はアルミニウム合金薄膜の上にろう材を置き、さらに金属を前記ろう材の上に重ね、ろう接工程を経て、前記金属と表面が前記アルミニウム又はアルミニウム合金薄膜に覆われたセラミックとを接合する工程を含むプロセスにより行われる手順、
II.前記工程2)が、前記接合面が前記アルミニウム又はアルミニウム合金薄膜に覆われたセラミックの前記アルミニウム又はアルミニウム合金薄膜の上にろう材を置き、前記接合面が前記アルミニウム又はアルミニウム合金薄膜に覆われたセラミックを前記ろう材の上に重ね、ろう接工程を経て、前記接合面が前記アルミニウム又はアルミニウム合金薄膜に覆われたセラミック同士を接合する、工程を含むプロセスにより行われる手順、
III.前記工程2)が、前記アルミニウム又はアルミニウム合金薄膜をろう材として用い、前記接合面が前記アルミニウム又はアルミニウム合金薄膜に覆われたセラミックと金属とを接合する、工程を含むプロセスにより行われる手順、
IV.前記工程2)が、前記アルミニウム又はアルミニウム合金薄膜をろう材として用い、前記接合面がアルミニウム又はアルミニウム合金薄膜に覆われたセラミック同士を接合する、工程を含むプロセスにより行われる手順。
【0031】
上記方法は、工程1)が、下記a)又はb)に記載の雰囲気中で行われ、
a)3ppm〜1,300ppmの体積に基づく酸素含有量を有し、そして、具体的には、前記体積に基づく酸素含有量が、3ppm、30ppm又は1,300ppm(ppmは百万分の一である。)を有する、雰囲気中;
b)3ppm〜1,300ppm、又は3ppm〜700ppm、又は3ppm〜420ppm、又は3ppm〜110ppm、又は10ppm〜420ppm、又は10ppm〜700ppm、又は110ppm〜420ppm、又は110ppm〜700ppm、又は420ppm〜1,300ppm、具体的には、3ppm、10ppm、110ppm、420ppm、700ppm又は1,300ppmの体積に基づく酸素含有量(ppmは百万分の一である)を有する、不活性ガス雰囲気中;
又は不活性ガスが、窒素ガスである。
【0032】
上記方法は、工程1)において、アルミニウム又はアルミニウム合金溶融液の温度が、下記a)又はb)又はc)又はd)又はe)で特定される温度を有する、
a)前記アルミニウム溶融液の温度が、前記アルミニウムの融点より高く、且つ950℃、850℃又は750℃より低い温度;
b)前記アルミニウム合金溶融液の温度が前記アルミニウム合金の溶融温度より高く、且つ950℃、850℃又は750℃より低い温度;
c)前記アルミニウム又はアルミニウム合金溶融液の温度が、600℃〜850℃又は600℃〜700℃又は600℃〜685℃又は660℃〜850℃又は660℃〜700℃又は685℃〜850℃であり、具体的には、600℃、660℃、685℃、700℃又は850℃である温度;
d)前記アルミニウム溶融液の温度が、685℃〜850℃であり、具体的には、685℃、700℃又は850℃である温度;
e)前記アルミニウム合金溶融液の温度が、580℃〜660℃又は600℃〜660℃であり、具体的には660℃又は600℃である温度。
アルミニウム−シリコン2元合金の共融温度は、580℃である。
【0033】
上記方法は、前記工程1)において、溶融液に対してセラミックを移動させる及び/又は溶融液の中で静止させる方法が、下記a)又はb)又はc)又はd)又はe)を含む、
a)前記溶融液に対する相対移動及び/又は静止の時間が、1分間〜60分間であること;
b)セラミックの接合面を前記溶融液の中から移動しながら取り出す速度は10mm/分間〜150mm/分間であること;
c)前記溶融液に対する相対運動及び/又は静止の時間が1分間〜60分間であり、且つ前記セラミックの接合面を溶融液の中から移動しながら取り出す速度が10mm/分間〜150mm/分間であること;
d)前記溶融液に対して相対運動させる場合、前記溶融液に対する相対運動の速度が10mm/分間〜150mm/分間であり、具体的には、10mm/分間、又は68.5mm/分間、又は150mm/分間であり、且つ前記セラミックの接合面を前記溶融液から移動しながら取り出す速度が10mm/分間〜150mm/分間であり、具体的には10mm/分間、又は68.5mm/分間、又は150mm/分間であること;
e)前記溶融液の中で静止させる場合、静止時間が3分間〜58分間であり、具体的には3分間又は58分間であり、前記セラミックの接合面を前記溶融液の中から移動しながら取り出す速度が68.5mm/分間であること;
を含むことを特徴とする。
【0034】
上記方法は、工程1)において、セラミックが、酸化物セラミック、窒化物セラミック又は炭化物セラミックであり、又は、前記酸化物セラミックがアルミナセラミック板であり、前記窒化物セラミックが窒化アルミニウムセラミック板又は窒化ケイ素セラミック板であり、前記炭化物セラミックが炭化ケイ素セラミック板であり;
及び/又は、前記工程1)において、アルミニウム合金がAl−2質量%Si又はAl−12質量%Siであり;
及び/又は、前記工程1)において、数μm〜数十μmとの記載が2μm〜17μm、又は8μm〜17μm、又は8μm〜10μm、又は10μm〜17μm、又は2μm〜10μmであり、具体的には、2μm、8μm、10μm又は17μmであることを特徴とする。
【0035】
上記方法は、工程2)において、ろう接温度が、600℃〜650℃又は600℃〜640℃又は630℃〜650℃であり、具体的には、600℃、630℃、640℃又は650℃であり;
及び/又は、前記工程2)において、I又はIIのろう材が、Al−12質量%Si合金、Al−8質量%Si合金、Al−4質量%Si合金、Al−8質量%Si−0.2質量%Mg合金又はアルミニウムであり;
及び/又は、前記工程2)において、金属がアルミニウム、5A02アルミニウム−マグネシウム合金又は2A02アルミニウム−銅−マグネシウム合金であり;
及び/又は、前記工程2)において、ろう接が、10−3Paオーダーの真空中において行われ、又は不活性ガス雰囲気中において行われることを特徴とする。
【0036】
本発明の第三の目的は一種類のセラミックとアルミニウム又はアルミニウム合金との接合方法を提供することである。
【0037】
セラミックとアルミニウム又はアルミニウム合金との接合方法は、
1)セラミックの接合面にアルミニウム合金1の液膜を形成し、前記接合面がアルミニウム合金1の液膜に覆われたセラミックを得る工程と、
2)前記接合面が前記アルミニウム合金1の液膜に覆われたセラミックのアルミニウム合金1の液膜の上に純アルミニウム又はアルミニウム合金2を置き、前記アルミニウム合金1の液膜をろう材として用い、表面が前記アルミニウム合金1の液膜により覆われたセラミックと純アルミニウム又はアルミニウム合金2をろう接する工程と、
を含む。
【0038】
上記のセラミックとアルミニウム又はアルミニウム合金との接合方法において、ろう接温度は、アルミニウム合金1の溶融温度より高く、且つアルミニウムの融点より低く、又は、ろう接温度は、アルミニウム合金1の溶融温度より高く、且つアルミニウム合金2の溶融温度より低い。
【0039】
上記のセラミックとアルミニウム又はアルミニウム合金との接合方法において、アルミニウム及びアルミニウム合金部材又は材料の溶融又は変形を防ぐために、アルミニウム合金2の温度は、アルミニウム合金1の溶融温度より高く、そして、ろう接温度をアルミニウム合金1の溶融温度以上、そしてアルミニウム及びアルミニウム合金2の部材の融点及び溶融温度以下に設定しなければならない。
【0040】
上記セラミックとアルミニウム又はアルミニウム合金との接合方法の工程1)において、セラミックの接合面にアルミニウム合金1の液膜を形成する方法は、セラミックの接合面をアルミニウム合金1の溶融液に含漬し、そして、前記溶融液に対し前記セラミックを移動させ、及び/又は前記溶融液の中に静止させて、前記溶融液を前記セラミックの接合面に付着させ、次に、前記セラミックの接合面を溶融液の中から移動させながら取り出し、前記セラミックの接合面に前記アルミニウム合金1の液膜を付着させる工程を含む。
【0041】
上記セラミックとアルミ又はアルミ合金との接合方法において、工程1)において、溶融液に対して移動させる場合、前記溶融液に対する相対運動の速度が68.5mm/分間であり、前記セラミックの接合面を前記溶融液の中から移動させながら取り出す速度が68.5mm/分間である。
上記セラミックとアルミニウム又はアルミニウム合金との接合方法において、工程1)において、アルミニウム合金1溶融液が730℃の温度を有し、
及び/又は前記工程1)が、窒素ガス雰囲気中で行われ、
前記工程2)において、ろう接温度が600℃〜620℃であり、具体的には、600℃又は620℃である。
上記セラミックとアルミニウム又はアルミニウム合金との接合方法において、アルミニウム合金1は、アルミニウムシリコン2元合金又はアルミニウムシリコン−マグネシウム3元合金であり;アルミニウム合金1が、Al−12質量%Si合金又はAl−12質量%Si−0.5質量%Mg合金である。
【0042】
上記セラミックとアルミニウム又はアルミニウム合金との接合方法において、セラミックが、酸化物セラミック、窒化物セラミック又は炭化物セラミックであり;又は、前記酸化物セラミックがアルミナセラミック板であり、前記窒化物セラミックが窒化アルミニウムセラミック板又は窒化ケイ素セラミック板であり、前記炭化物セラミックが炭化ケイ素セラミック板である。
【0043】
本発明の最後の目的は、セラミックと金属との接合装置を提供することである。
【0044】
装置は、炉体1、炉蓋2、黒鉛坩堝3、下部金属電気抵抗線ヒーター4、黒鉛ガイド5、下部の不活性ガスの導入口6、ガイド窓口8、アルミニウムストリップ導入口10、ガイドローラ11、駆動ローラ12、ろう接された部材の導出口14、上部の金属抵抗線加熱体15及び上部の不活性ガス導入口17から構成され;
前記黒鉛坩堝が前記炉体の下部に設置されて、前記黒鉛坩堝の周りに前記下部金属線電気抵抗ヒーターが設置され、前記黒鉛坩堝の底と前記炉体の底にガイドにあう穴を有し、2つの穴は同軸であり;前記黒鉛ガイドが、前記穴を通って、前記黒鉛坩堝と前記炉体を貫通し、それぞれに固定され;前記黒鉛ガイドは2つの平行の板からなり、前記板の内部にセラミック板を通過させる溝からなり、且つそれらの坩堝に位置する箇所にガイド窓口8が設置される、
ことを特徴とする。
【0045】
前記装置の炉体と炉蓋との接合部は、シリコーンにより密封されている。
【0046】
本発明者らは研究を重ねることによって、本発明の実施に使う雰囲気炉の中の酸素含有量がアルミニウム又はアルミニウム合金の表面酸化状態に影響を及ぼし、そして、アルミニウム又はアルミニウム合金の付着又は接合に影響を及ぼすことを発見した。酸素含有量が高すぎる場合、アルミニウム又はアルミニウム合金溶融液の表面は強く酸化されて、最終的に、セラミックと接触するアルミニウム又はアルミニウム合金溶融液の表面を酸化させて、アルミニウム及びアルミニウム合金薄膜の被覆率を低減させる(アルミニウム又はアルミニウム合金の表面に形成された酸化膜はアルミニウム又はアルミニウム合金とセラミックとの結合を妨げる)。一方、酸素含有量が低すぎる場合、薄膜の被覆率を低減させ、これは雰囲気中の酸素の減少が、新しく形成されたアルミニウム膜の表面に吸着される酸素原子の量を減少させ、アルミニウム溶融液の表面張力は増大する(Pamies A et al., Scripta. Metallurgica, 1984年, 18巻, 869−872頁)。このことによって、セラミック板をアルミニウムの溶融液の中から移動させる場合に、セラミックの表面に付着する液膜は表面張力の作用で滑り落ち(図4参照:この図はセラミック板を溶融液の中から移動させる場合の、セラミックの表面に付着する膜が受ける力の分析図である。uは、セラミック基板の移動スピードを意味し、Wadは、界面接合力を意味し、γは、液膜に作用する表面張力を意味し、Gは、液膜に作用する重力を意味する)。その上、セラミック板を溶融液から移動させる過程中において、表面に付着するアルミニウムの液膜は表面張力の影響を受けて液滴を形成し、最終的に重力の作用で滑り落ちると考えられる。本発明者らは実験を通じて、雰囲気中の酸素含有量(即ち、酸素の体積含有量)を3ppm〜1,300ppm(即ち、3/百万〜1,300/百万)の間に調整することは、セラミック表面に対するアルミニウム及びアルミニウム合金溶融液の付着並びに接合に寄与することを見出した。
【0047】
発明者らはまた、真空中の酸素の含有量が非常に低いにも拘らず、本発明の方法で10−3Paの真空において、セラミックの表面にアルミニウムの膜が形成されることを見出した。
【0048】
本発明者らは研究を通じて、セラミックとアルミニウム又はアルミニウム合金溶融液の接触時間が溶融液とセラミックの接合に影響を及ぼし、延いてはアルミニウム又はアルミニウム合金のコーティング比率に影響を及ぼすことを見出した。溶融液の温度が低ければ低いほど、又は雰囲気の中の酸素含有量が高ければ高いほど、接合に必要な時間は長くなる。実験を通じて明らかになったのは、本発明の温度及び雰囲気条件下で、適当な接触時間は1分間〜60分間である(接触時間は、セラミックとアルミニウム或はアルミニウム合金溶融液との相対移動及び/又は相対静止時間を含む)。接触時間が短すぎる場合、完全な付着は得られず、一方、接触時間が長すぎる場合、生産効率が低下する。
【0049】
本発明者らはまた、本発明に採用された温度範囲において、アルミニウム又はアルミニウム合金溶融液の温度は、アルミニウム又はアルミニウム合金膜の形成及びろう接体の接合強度に明らかな影響はないにも拘らず、温度が高すぎる場合には、アルミニウム又はアルミニウム合金溶融液の蒸発が強くなる。したがって、適切な溶融液の温度は、一般的にはアルミニウムの蒸発が大きくなる950℃より低い。もっとも適切な温度範囲はアルミニウムの融点又はアルミニウム合金の溶融温度より高く、且つ850℃より低いものであるべきである。
【0050】
セラミックの熱衝撃性能は比較的に悪く、セラミック板の加熱及び冷却を速くすることができないため、セラミック板の移動スピードには制限がある。移動スピードは速すぎる場合には、セラミック板は破裂しやすく、一方、移動スピードが遅くなると、生産効率は低下する。本発明の実験条件において、適切な移動スピードは、10mm/分間〜274mm/分間である。しかし、この移動スピードの上限は変化不可のものではないと指摘されるべきである。理論上、装置の冷却区間を延長し、又は冷却区間の温度勾配を制御すれば、この移動スピードの上限をさらに高くできる可能性はある。
【0051】
セラミックの表面に付着するアルミニウム及びアルミニウム合金薄膜の厚みは、セラミックの移動スピード及び移動距離、アルミニウム又はアルミニウム合金溶融液の粘度及び密度、セラミックの表面状態、アルミニウム又はアルミニウム合金とセラミックとの結合力に依存する。また、移動過程においての、セラミック板表面に付着したアルミニウム溶融液の滑り、セラミック板の表面に付着の液膜の滴下(重力の作用での自然な滴下)、滴下時間に依存する。界面が滑らない状態のモメンタム伝達理論によれば、流体の中で移動する物体が引っ張る流体(モメンタム界面層)の厚さδは、相対運動スピードV及び移動(特性)距離L、流体の粘度η及び密度ρとの間に下記の関係式が存在する(D.R.Poirier and G.H.Geiger,<<Transport Transport Phenomena in Material Processing>>, TMS,(1994):P62−67):
【数1】

即ち、厚さは、粘度及び移動距離の1/2乗に比例し、密度と移動スピードの1/2乗に逆比例する。この関係式に流体の滑り及び重力は考慮していない。滑り及び滴下は、液膜の厚みをさらに薄くする。
【0052】
このことから、本発明により得られたアルミニウム膜の厚みが1μm〜51μmであることがわかるが、本発明はこの範囲に限定されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1、実施例1〜2に使用されたセラミック表面の金属被覆装置の模式図である。
【図2】図2は、実施例3に使用されたセラミック表面の金属被覆/ろう接装置の模式図である。
【図3】図3は、アルミニウムとアルミナセラミックの接合界面部分の高分解能透過電子顕微鏡像及び微小領域の電子回折像である。
【図4】図4は、液膜が受ける力の分析図である。
【図5】図5は、90°引裂強度測定法の模式図である。
【実施例】
【0054】
下記の実施例に使う実験方法は、特に説明がない限り、一般に使う方法である。
【0055】
下記の実施例に使う材料及び薬品は、特に説明がない限り、市販されているものである。
下記の実施例のppmは百万分の一を意味する。
【0056】
実施例1
セラミックの表面へのアルミニウム又はアルミニウム合金薄膜の接合
本実施例に用いる工業用純アルミニウム、Al−20質量%Siアルミニウム−シリコン合金、工業用純マグネシウム及びすべてのセラミック材は、市販されているものである。アルミニウム合金は、Al−20質量%Si合金、工業用途の純マグネシウム及び純アルミニウムを溶融し調製したものである。
【0057】
実験グループ:
本実施例に使用されたセラミック表面金属被覆装置の構造は、図1に示す如く:この装置は、炉体1、炉蓋2、黒鉛坩堝3、金属電気抵抗ヒーター4、黒鉛ガイド5、窒素導入口6から構成され、黒鉛坩堝は、炉体の中に設置され、加熱体は、黒鉛坩堝の周りに配置される。黒鉛坩堝の底と炉体の底及び炉蓋にガイドに合う穴が開かれて、3つの穴の軸は同じであり、黒鉛ガイドはこれらの穴を通って、黒鉛坩堝と炉体と炉蓋との間に設置され、固定される。黒鉛ガイドは2つの平行の板からなり、その中にセラミック板の通過する溝が加工され、且つその坩堝の中に位置する部分に窓口8を設けて、坩堝の中のアルミニウム溶融液9とガイドの中のセラミック板とを接触させる。炉体と炉蓋とを繋ぐ部分をシリコンによって密封し、炉内を窒素ガスでパージした。
なお、窓口下の部分のガイドとセラミック板の間の隙間は0.1mmである。この隙間でセラミックがガイドの中で自由に移動できるが、アルミニウム液は流れない。窓口上部のガイドとセラミック板との間の隙間を1.3mmである。これでセラミック板表面に付着するアルミニウム液はガイドに接触せず、アルミニウム溶融液は自然に冷却、凝固する。
【0058】
実験1
上記のセラミック表面金属被覆装置を用いて、純アルミニウム(99.9%)を黒鉛坩堝に投入し、複数のアルミナセラミック板(長さ137mm、幅35mm、厚み0.64mm、TSINGHUA YUEKE社製、アルミナ純度95%以上)を坩堝に貫通するガイドに挿入してから、窒素雰囲気(窒素の流れ量:20L/分間)中において加熱し、アルミニウムを溶かし730℃に加熱した。それから、もう一枚のアルミナ板を装置下のガイド入口から68.5mm/分間のスピードでガイドに挿入し、ガイドの中の最初に挿入したセラミック板を同じスピードで垂直に上へ移動した。移動過程において、セラミック板はガイドの窓口経由し、坩堝の中のアルミニウム溶融液と接触し、続いて、表面に付着するアルミニウム溶融液とともにガイドの上から押し出した。冷却後、セラミックの両面にそれぞれ厚さ6μmの緻密なアルミニウム膜を形成した。顕微鏡検査により、アルミニウム膜の内部に酸化物不純物又は気泡は存在しないことを示した。
ナイフを用いてアルミニウム膜を1mm×1mmの碁盤状に切断した。接着力の強い粘着テープ(3M社製、接着力4.1N/cm以上)をその上に圧着し、速いスピードでそれを剥離し、アルミニウム膜の剥離強度を測定した。
実験は3回行い、その結果、アルミニウム膜の剥離率は0であり、アルミニウム膜がアルミナセラミックの上に強く接着してあることがわかった。
【0059】
実験2
溶融液の温度を700℃に降下させた以外は、実験1と同じである。この方法でアルミナセラミックの表面に平均厚さ7μmの緻密なアルミニウム膜を形成した。この膜のテープ試験の剥離率0である。同じ実験は3回行い、結果は同じであった。
【0060】
実験3
溶融液の温度を760℃に上げた以外は、実験1と同じである。この方法でアルミナセラミックの表面に平均厚さ5μmの緻密なアルミニウム膜を形成し、この膜のテープ試験の剥離率0である。同じ実験は3回行い、結果は同じであった。
【0061】
実験4
純アルミニウムをチャージした坩堝を真空炉に入れて、5×10−3Paに排気してから、加熱スイッチを入れて、850℃に加熱した。アルミナセラミック板を上部から垂直にアルミニウム溶融液に挿入し、アルミニウム溶融液の中で10分間保持してから、セラミック板を10mm/分間のスピードで徐々に引き上げ、加熱スイッチを切断し、自然に冷却した。この方法でアルミナセラミック板のアルミニウム溶融液に含漬された部分に平均厚さ10μmのアルミニウム膜を形成した。
実験1に述べたテープ剥離測定法でアルミニウム膜の接着状態を調べた。同じ実験は3回行い、その結果、アルミニウム膜の剥離率は0であり、アルミニウム膜がアルミナセラミック板の上に強く接着されていることがわかった。
【0062】
実験5
セラミック板が窒化アルミニウムセラミック板(福建華清社製、窒化アルミニウム含有量95%以上)である以外、他は実験4と同じである。測定の結果:アルミニウム膜の平均厚みは9μmであり、アルミニウム膜の剥離率は0であり、アルミニウム膜がこの窒化アルミニウムセラミック板の上に強く接着してあることがわかった。実験は3回行い、結果は同じであった。
【0063】
実験6
セラミック板が窒化ケイ素セラミック板(常圧焼結品、窒化ケイ素含有量92%以上)である以外、他は実験4と同じである。測定の結果:アルミニウム膜の平均厚みは9μmであり、アルミニウム膜の剥離率は0であり、アルミニウム膜が窒化ケイ素セラミック板の上に強く接着してあることがわかった。実験は3回行い、結果は同じであった。
【0064】
実験7
セラミック板が炭化ケイ素セラミック板(反応焼結品、炭化ケイ素含有量90%以上)である以外、他は実験4と同じである。測定の結果:アルミニウム膜の平均厚みは10μmであり、アルミニウム膜の剥離率は0である。アルミニウム膜が炭化ケイ素セラミック板の上に強く接着してあることがわかった。実験は3回行い、結果は同じであった。
【0065】
実験8
純アルミニウムをAl−8質量%Si合金に変えた以外は、実験1と同じである。この方法でセラミック板の表面に平均厚さ8μmのアルミニウム合金膜を形成した。テープ剥離試験では、アルミニウム合金膜の剥離率は0であり、アルミニウム合金膜がアルミナセラミックの上に強く接着してあることがわかった。実験は3回行い、結果は同じであった。
【0066】
実験9
窒素流量を15L/分間に低下させた以外は、実験8と同じである。この方法でセラミック板の表面に平均厚さ7μmのアルミニウム合金膜を形成し、テープ剥離試験では、アルミニウム合金膜の剥離率は0であった。実験は3回行い、結果は同じであった。
【0067】
実験10
溶融液の温度を780℃に上げた以外は、実験9と同じである。このように、セラミック板の上に平均厚さ6μmのアルミニウム膜を形成し、そのテープ剥離率は0であった。実験は3回行い、結果は同じであった。
【0068】
実験11
アルミニウムをAl−12質量%Si合金に変えた以外は、実験1と同じである。この方法でセラミック板の表面に平均厚さ5μmのアルミニウム合金膜を形成し、そのテープ剥離率は0であった。実験は3回行い、結果は同じであった。
【0069】
実験12
溶融液の温度を680℃に下げた以外は、実験11と同じである。この方法でセラミック板の表面に平均厚さ6μmのアルミニウム合金膜を形成し、そのテープ剥離率は0である。実験は3回行い、結果は同じであった。
【0070】
実験13
純アルミニウムをAl−2質量%Si合金に変えた以外は、実験1と同じである。この方法でセラミック板の表面に平均厚さ8μmのアルミニウム合金膜を形成した。テープ剥離試験では、アルミニウム合金膜の剥離率は0であり、アルミニウム合金膜がアルミナセラミックの上に強く接着してあることがわかった。実験は3回行い、結果は同じであった。
【0071】
実験14
純アルミニウムをAl−1質量%Si合金に変えた以外は、実験1と同じである。この方法でセラミック板の表面に平均厚さ17μmのアルミニウム合金膜を形成した。テープ剥離試験では、アルミニウム合金膜の剥離率は0であり、アルミニウム合金膜がアルミナセラミックの上に強く接着してあることがわかった。実験は3回行い、結果は同じであった。
【0072】
実験15
溶融液の温度を680℃に下げた以外は、実験14と同じである。この方法でセラミック板の表面に平均厚さ51μmのアルミニウム合金膜を形成した。テープ剥離試験では、アルミニウム合金膜の剥離率は0であり、アルミニウム合金膜がアルミナセラミックの上に強く接着してあることがわかった。実験は3回行い、結果は同じであった。
【0073】
実験16
純アルミニウムをAl−12質量%Si−1質量%Mg合金に変えた以外は、実験12と同じである。この方法でセラミック板の表面に平均厚さ5μmのアルミニウム合金膜を形成した。実験は3回行い、結果は同じであった。
【0074】
実験17
窒素の流れ量を半分にした(10L/分間)以外、他は実験16と同じである。この方法でセラミック板の表面に平均厚さ5μmのアルミニウム合金膜を形成し、但しアルミニウム膜の表面は僅かに酸化された。実験は3回行い、結果は同じであった。
【0075】
実験18
溶融液の温度を730℃に上げた以外は、17と同じである。この方法でセラミック板の表面に平均厚さ6μmのアルミニウム合金膜を形成し、但しアルミニウム膜の表面は僅かに酸化された。実験は3回行い、結果は同じであった。
【0076】
実験19
溶融液の温度を780℃に上げた以外は、17と同じである。この方法でセラミック板の表面に平均厚さ4μmのアルミニウム合金膜を形成し、但しアルミニウム膜の表面は僅かに酸化された。実験は3回行い、結果は同じであった。
【0077】
実験20
溶融液の温度を630℃に下げた以外は、17と同じである。この方法でセラミック板の表面に平均厚さ5μmのアルミニウム合金膜を形成し、但しアルミニウム膜の表面は僅かに酸化された。実験は3回行い、結果は同じであった。
【0078】
実験21
実験方法は実験1に述べたものと同じであり、但し、炉体の出口の寸法を改造することをにより、炉体の密閉性を上げた。また、気体中の酸素含有量分析装置を用いて、炉内の酸素含有量を分析し調整した。炉内の酸素体積含有量の具体的な測定方法は、次のとおりである:内径2mmのステンレスパイプを通じ、坩堝中の気体を酸素分析装置(上海Aiyong社製、GNL−6000)に吸入し、酸素分析を行った。なお、気体の吸引(800ml/分間)時の雰囲気への影響を避けるために、分析後の気体はステンレスパイプで炉内に送り出した。実験では、窒素の流れ量を制御することで、炉内の酸素体積含有量を10ppm(ppm:百万分の一)に調整した。この方法でアルミナセラミックの上に厚さ5μmの緻密なアルミニウム膜を形成し、そのテープ剥離率は0であった。実験は3回行い、結果は同じであった。
【0079】
実験22
セラミックの移動スピードを274mm/分間に変え、またセラミック板をアルミニウム溶融液に挿入した後、まず5分間保持する以外、他は実験21と同じである。この方法でセラミックの上に厚さ4μmの緻密なアルミニウム膜を形成し、そのテープ剥離率は0であった。実験は3回行い、結果は同じであった。
【0080】
実験23
セラミックの移動スピードを10mm/分間に変えた以外は、実験21と同じである。この方法でセラミックの上に厚さ7μmの緻密なアルミニウム膜を形成し、そのテープ剥離率は0であった。実験は3回行い、結果は同じであった。
【0081】
実験24
溶融液の温度を780℃に上げた以外は、実験21と同じである。この方法でセラミックの上に厚さ3μmの緻密なアルミニウム膜を形成し、そのテープ剥離率は0であった。実験は3回行い、結果は同じであった。
【0082】
実験25
溶融液の温度を820℃に上げた以外は、実験21と同じである。この方法でセラミックの上に厚さ2μmの緻密なアルミニウム膜を形成し、そのテープ剥離率は0であった。実験は3回行い、結果は同じであった。
【0083】
実験26
セラミック板を窒化アルミニウムセラミック板(福建華清製、窒化アルミニウム含有量>95%)に変えた以外は、実験22と同じである。この方法で窒化アルミニウムの上に厚さ1μmの緻密なアルミニウム膜を形成し、そのテープ剥離率は0であった。実験は3回行い、結果は同じであった。
【0084】
実験27
溶融液の温度を760℃に変えた以外は、実験26と同じである。この方法でセラミックの上に厚さ1μmの緻密なアルミニウム膜を形成し、そのテープ剥離率は0であった。実験は3回行い、結果は同じであった。
【0085】
実験28
溶融液の温度を780℃に変えた以外は、実験26と同じである。この方法でセラミックの上に厚さ1μmの緻密なアルミニウム膜を形成し、そのテープ剥離率は0であった。実験は3回行い、結果は同じであった。
【0086】
実験29
溶融液の温度を820℃に変えた以外は、実験26と同じである。この方法でセラミックの上に厚さ1μmの緻密なアルミニウム膜を形成し、そのテープ剥離率は0であった。実験は3回行い、結果は同じであった。
【0087】
実験30
窒素の流量を調整し、炉内の酸素体積含有量を700ppmに調整した以外は、実験26と同じである。この方法でセラミックの上に厚さ1μmの緻密なアルミニウム膜を形成し、そのテープ剥離率は0であった。実験は3回行い、結果は同じであった。
【0088】
実験31
窒化アルミニウムセラミックをアルミナセラミックに変えた以外は、実験30と同じである。この方法で窒化アルミニウムの上に厚さ2μmの緻密なアルミニウム膜を形成し、そのテープ剥離率は0であった。実験は3回行い、結果は同じであった。
【0089】
実験32
窒素の流量を調整し、炉内の酸素体積含有量を110ppmに調整した以外は、実験31と同じである。この方法でセラミックの上に厚さ3μmの緻密なアルミニウム膜を形成し、そのテープ剥離率は0であった。実験は3回行い、結果は同じであった。
【0090】
実験33
窒素の流量を調整し、炉内の酸素体積含有量を3ppmに調整した以外は、実験31と同じである。この方法でセラミックの上に厚さ3μmの緻密なアルミニウム膜を形成し、そのテープ剥離率は0であった。実験は3回行い、結果は同じであった。
【0091】
実験34
溶融液の温度を820℃に上げ、また窒素の流量を調整し、炉内の酸素体積含有量を420ppmに調整した以外は、実験31と同じである。この方法でセラミックの上に厚さ2μmの緻密なアルミニウム膜を形成し、そのテープ剥離率は0であった。実験は3回行い、結果は同じであった。
【0092】
実験35
炉内の酸素含有量を1,300ppmに調整した以外は、実験34と同じである。この方法でセラミックの上に厚さ2μmの緻密なアルミニウム膜を形成し、そのテープ剥離率は0であった。実験は3回行い、結果は同じであった。
【0093】
実験36
セラミック板をアルミニウム液に挿入した後30分間保持した以外は、実験22と同じである。この方法でセラミックの上に厚さ4μmの緻密なアルミニウム膜を形成し、そのテープ剥離率は0であった。実験は3回行い、結果は同じであった。
【0094】
実験37
セラミック板をアルミニウム液に挿入した後60分間保持した以外は、実験22と同じである。この方法でセラミックの上に厚さ4μmの緻密なアルミニウム膜を形成し、そのテープ剥離率は0であった。実験は3回行い、結果は同じであった。
【0095】
比較例の群の試験
比較例1
空気中において、加熱されたアルミナセラミック板を徐々に680℃に加熱したアルミニウム溶融液に挿入した。その後、68.5mm/分間のスピードで徐々に引き上げた。セラミック板の表面にアルミニウム液は付着できなかった。実験は3回行い、結果は同じであった。この実験は、酸化膜が存在する状態で、アルミニウム液がセラミックを湿潤せず、セラミックへのアルミニウム溶融液が付着しないことを示した。
【0096】
比較例2
大気中において、加熱されたアルミナセラミック板を徐々に680℃に加熱したアルミニウム溶融液に挿入してからその中で撹拌した。その後、27mm/分間のスピードで徐々に引き上げた。この方法でセラミック板の局部にアルミニウム膜が接着され、但し、アルミニウム膜の表面は厳重に酸化された。このアルミニウム膜の局部は手で簡単に剥ぎ取られるため、この部分はセラミック板に強く接着していないことが示された。テープ剥離試験では、アルミニウム膜の剥離率は、34%であった。同じ実験は、3回行い、剥離率はそれぞれ34%、27%、45%であった。このことから、アルミニウム表面の元の酸化膜を有効に剥きとられない場合、残存の酸化膜がセラミックとアルミニウムの接合に悪影響を及ぼすことがわかった。
【0097】
比較例3
温度を820℃に上げた以外は、実験33と同じである。セラミック板の中心部分に付着のアルミニウム液が液滴に収縮し、但しアルミニウム液に含漬されたセラミックの表面は白色から灰色に変わった。これは温度を上げたことによって、雰囲気の中の酸素はアルミニウム膜の上に吸着しづらくなり、アルミニウム液膜の表面張力が増大し、最終的に表面張力の作用で、セラミック板の表面に付着したアルミニウム液膜が収縮し、滴下したことによるものだと推測される。
【0098】
比較例4
アルミナセラミック板を窒化アルミニウムセラミック板に変えた以外は、比較例1と同じである。セラミック板の上にアルミニウム膜は付着していないため、アルミニウム液と窒化アルミニウムセラミックとの付着力はアルミナより低いことは推測できた。
【0099】
比較例5
窒素の流量調整により炉内の雰囲気中の酸素含有量を1,300ppmに調整した以外は、実験1と同じである。作製したサンプルは、セラミックの中心部だけアルミニウム膜が付着し、且つアルミニウム膜の表面は黒色又は金色であり、一方、同じくアルミニウム液に含漬されたがアルミニウム膜が付着していないセラミック板の表面は何ら色変化がなかった。セラミックの両側にアルミニウムが付着しなかったことは、明らかに雰囲気中の酸素が黒鉛ガイドの繋ぎ面を通ってガイドの中に入り、セラミックと接触するアルミニウム液の表面を酸化し、この部分のアルミニウム液はセラミックに接着できないと考えられる。
実験35のサンプルと比較し、セラミック板に付着するアルミニウム膜の幅は明らかに狭い。温度の低下は明らかにアルミニウム液とセラミック板との接合に不利である。
【0100】
比較例6
窒素の流量調整により炉内の雰囲気中の酸素含有量を1ppmに調整した以外は、実験1と同じである。作製したサンプルは、セラミック板の両端だけアルミニウム膜が接着された。同じくアルミニウム液に含漬されて、アルミニウム膜の接合されていない中心部分の色が変化した。これは、雰囲気中の酸素含有量が低すぎて、セラミック板の表面に付着する新鮮なアルミニウム液膜の表面張力の増大に直結し、アルミニウム膜が集積し、最終的に滴下するためと考えられた。
【0101】
実施例2
セラミック同士、セラミックとアルミニウム又はアルミニウム合金とのろう接
本実施例に使う工業用純アルミニウム、5A02アルミニウム合金、2A02アルミニウム合金、Al−20質量%Siアルミニウム−シリコン合金、工業用純マグネシウム、及びすべてのセラミック板は、市販品である。セラミックの接合面に液膜を形成するために用いられるアルミニウム合金はAl−20質量%Si合金、工業用の純マグネシウム及び純アルミニウムを溶融して調製したものである。
本実施例に用いるセラミックの表面にアルミニウム又はアルミニウム合金の薄膜を形成する装置は、実施例1の実験1に用いた装置と同じである。
【0102】
実験1
上記のセラミック表面金属被覆装置を用いた。純アルミニウム(99.9%)を黒鉛坩堝に投入し、複数のアルミナセラミック板(長さ137mm、幅35mm、厚み0.64mm、TSINGHUA YUEKE社製、アルミナ純度95%以上)を坩堝に貫通するガイドに挿入してから、炉内に窒素を導入し(窒素の流量:15L/分間、炉内雰囲気中の酸素の体積含有量:20/百万(即ち、30ppm))、スイッチを入れて加熱し、アルミニウムを溶かした後700℃に昇温した。溶かした後のアルミニウム溶融液の高さは137mmであった。もう一枚のアルミナ板を装置下のガイド入口から68.5mm/分間のスピードでガイドに挿入し、ガイドの中の最初に挿入したセラミック板を同じスピードで垂直に上へ移動させた。移動過程において、セラミック板はガイドの窓を経由し、坩堝の中のアルミニウム溶融液と接触し、続いて、表面に付着したアルミニウム溶融液とともにガイドの上から押し出された。冷却後、セラミックの両面にそれぞれ厚さ8μmの緻密なアルミニウム膜を形成した。この過程において、アルミニウム溶融液に挿入されたセラミック板の滞留時間を調節することによって、セラミック板とアルミニウム溶融液との接触時間を5分に調節した(即ち、セラミック板とアルミニウム溶融液との相対移動時間(セラミック板が68.5mm/分間のスピードでアルミニウム溶融液に進入してから取り出すまでの移動時間)は2分間、セラミック板のアルミニウム溶融液中の静止時間は3分間、合計5分間である)。なお、顕微鏡検査により、アルミニウム膜の内部に酸化物不純物、又は気泡は存在せず、純アルミニウムの持つ良好な物理及び力学性能を有することが示された。
ナイフを使ってアルミニウム膜を1mm×1mmの四角状に切断し、面積が10mm×10mm碁盤状物を作ってから、接着力の強い粘着テープ(3M社製、接着力4.1N/cm以上)をこの碁盤状のアルミニウム膜の上に圧着し、それから速いスピードで剥がし、アルミニウム膜の剥離強度を測定する。
実験は3回行い、アルミニウム膜の剥離率は0であり、アルミニウム膜がアルミナセラミック板の上に強く接着された。
サンプルから、45mm×26mmの大きさの表面にアルミニウム膜の附いたアルミナ基板を切り出した。アルミニウム膜の上に同じサイズの厚さ100μmのAl−12質量%Siろう材を重ね、2枚の50mm×40mm面積の、厚さ0.5mmのアルミニウム板の間に挟み(より大きいアルミニウム板の一部は引張強度テストの掴む部分)、さらにこれらをアルミナ敷板の間に挟み、300グラムの荷重をかけて、3×10−3Paの真空中において、640℃(アルミニウムの融点より低く、Al−12質量%Si合金の溶融温度より高い)に加熱し、30分間保持してから、冷却し、アルミニウムとセラミックとをろう接した。
ダイヤモンド切断機を用いて、ろう接サンプルを切断し、顕微鏡観察用のサンプルを作った。この顕微鏡観察により、アルミニウム板はセラミックの板に強く接合し、界面での未接合欠陥は認められなかった。さらに、サンプルから幅5mmのサンプルを切りだし、90°引張強度試験(図5参照。1はセラミック、2はアルミニウム板、3は固定金具、4は移動金具、5は引裂力の方向を示す。)を実施した。なお、測定した引裂強度は10.3kg/cmであり、サンプルの破壊はアルミニウム板の掴む部分であった。明らかに、界面の接合強度は10.3kg/cmの値より大きい。この方法を適用することでアルミニウムとセラミックとを強く接合できる。
同じ実験は3回行い、引張強度サンプルの破壊はすべてアルミニウム板の掴む部分で発生した。引張強度はそれぞれ10.3kg/cm、11.5kg/cm、9.8kg/cmであった。サンプルの破壊は界面で起こっていないため、アルミニウム板とセラミックとの接合界面の強度は少なくとも9.8kg/cmより高かった(3回実験の最小の引張強度は9.8kg/cmであった)。
【0103】
下記の実験において、「引張強度がある値より大きい」との記述は3回の実験の最小値のこの値であり、破壊はすべてアルミニウム板の掴むところで発生し、界面で発生しない場合、界面の引張強度は明らかにこの値より大きかった。
【0104】
実験2
ろう材をAl−8質量%Si合金に変えた以外は、実験1と同じである。アルミニウムと接合した後、界面に欠陥がない。引張強度測定中の破壊は、アルミニウム板の掴むところで発生した。同じ実験は3回行い、引張強度は10.2kg/cmより大きかった。明らかにアルミニウム板とセラミックとの接合界面の接合強度は10.2kg/cm以上であった。
【0105】
実験3
ろう材をAl−4質量%Si合金に変えた以外は、実験1と同じである。アルミニウムと接合した後、界面に欠陥がなく、且つ引張強度測定中の破壊は、アルミニウム板の掴むところで発生した。同じ実験は3回行い、引張強度は9.7kg/cmより大きかった。明らかにアルミニウム板とセラミックとの接合界面の接合強度は9.7kg/cm以上であった。
【0106】
実験4
ろう材をAl−8質量%Si−0.2質量%Mgに変えた以外は、実験1と同じである。アルミニウムと接合した後、界面に欠陥がなく、且つ引張強度測定中の破壊は、アルミニウム板の掴むところで発生した。同じ実験は3回行い、引張強度は8.7kg/cmより大きかった。明らかにアルミニウム板とセラミックとの接合界面の接合強度は8.7kg/cm以上であった。
【0107】
実験5
ろう接温度を630℃に変えた以外は、実験1と同じである。アルミニウムと接合した後、界面に欠陥がなく、且つ引張強度測定中の破壊は、アルミニウム板の掴むところで発生した。同じ実験は3回行い、引張強度は12.3kg/cmより大きかった。明らかにアルミニウム板とセラミックとの接合界面の接合強度は12.3kg/cm以上であった。
【0108】
実験6
アルミナセラミック板を窒化アルミニウムセラミック板(福建華清社製、窒化アルミニウム含有量95%以上)に変えた以外は、実験1と同じである。同じ実験は3回行い、引張強度サンプルの破壊は、アルミニウム板の掴むところで発生し、引張強度は9.5kg/cmより大きかった。明らかにアルミニウム板とセラミックとの接合界面の接合強度は9.5kg/cm以上であった。
【0109】
実験7
アルミナセラミック板を窒化ケイ素セラミック板(常圧焼結品、窒化ケイ素含有量92%以上)に変えた以外は、実験1と同じである。
同じ実験は3回行い、引張強度サンプルの破壊は、アルミニウム板の掴むところで発生し、引張強度は9.9kg/cmより大きかった。明らかにアルミニウム板とセラミックとの接合界面の接合強度は9.9kg/cm以上であった。
【0110】
実験8
アルミナセラミック板を炭化ケイ素セラミック板(反応焼結品、炭化ケイ素含有量90%以上)に変えた以外は、実験1と同じである。
同じ実験は3回行い、引張強度サンプルの破壊は、アルミニウム板の掴むところで発生し、引張強度は11.0kg/cmより大きかった。明らかにアルミニウム板とセラミックとの接合界面の接合強度は11.0kg/cm以上であった。
【0111】
実験9
アルミニウム板を厚み0.5mmの5A02アルミニウム−マグネシウム合金板に変え、ろう接温度を600℃に下げた以外は、実験1と同じである。
同じ実験は3回行い、接合界面欠陥は認められなかった。引張強度サンプルの破壊は、アルミニウム−マグネシウム合金板の掴むところで発生し、引張強度は10.6kg/cmより大きかった。明らかに5A02アルミニウム−マグネシウム合金板とセラミックとの接合界面の接合強度は10.6kg/cm以上であった。
【0112】
実験10
アルミニウム板を2A02アルミニウム−銅−マグネシウム合金板に変えた以外は、実験1と同じである。
同じ実験は3回行い、接合界面欠陥は認められなかった。引張強度サンプルの破壊は、アルミニウム−銅−マグネシウム合金板の掴むところで発生し、引張強度は8.6kg/cmより大きかった。明らかに2A02アルミニウム−銅−マグネシウム合金板とセラミックとの接合界面の接合強度は8.6kg/cm以上であった。
【0113】
実験11
表面にアルミニウム膜の附いたセラミックと金属を接合するときに、炉内に窒素ガスを導入し、真空を不活性雰囲気に変えた以外は、実験1と同じである。
同じ実験は3回行い、接合界面欠陥は認められなかった。引張強度サンプルの破壊は、アルミニウム板の掴むところで発生し、引張強度は9.8kg/cmより大きかった。明らかにアルミニウム板とセラミックとの接合界面の接合強度は9.8kg/cm以上であった。
【0114】
実験12
セラミックの接合面にアルミニウム合金膜を形成するプロセス中において、純アルミニウムをAl−2質量%Si合金に変え、溶融液の温度を660℃に変えた以外は、実験1と同じである。表面にAl−2質量%Si合金膜の附いたセラミックを作製した。この表面にAl−2質量%Si合金膜が接着されたセラミックと金属アルミニウムとの接合のプロセスは実験1に述べたことと同じである。同じ実験は3回行い、この方法でセラミックの表面に厚さ17μmの緻密なアルミニウム合金膜を形成し、その碁盤分割剥離試験の剥がれ率は0であった。ろう接の後で、接合界面欠陥は認められなかった。引張強度サンプルの破壊はアルミニウム板の掴むところで発生した。引張強度は9kg/cmより大きく、明らかにアルミニウム板とセラミックとの接合界面の接合強度は9kg/cm以上であった。
【0115】
実験13
セラミックの接合面にアルミニウム膜を形成するプロセスの中に、アルミニウム溶融液の温度を685℃に変え、窒素の流量を20L/分間(この時の炉内雰囲気中の酸素含有量は3ppmである)に変えた以外は、実験1と同じようにして、アルミニウム膜に覆われたセラミックを作製した。この接合面がアルミニウム膜に覆われるセラミックと金属アルミニウムとの接合プロセスは実験1に述べたとおりである。同じ実験は3回行い、セラミックの表面はアルミニウムに完全に覆われておらず、そのコーティング比率は71%である。アルミニウム膜の厚みは10μmであった。
セラミック板上から、コーティング良好な部分を切り出し、碁盤分割剥離試験とろう接試験を実施した。実験は3回行い、結果から、碁盤分割剥離試験の剥離率は0であり、また、ろう接界面から未接欠陥は認められず、引張強度サンプルの破壊はアルミニウム板の挟むところであった。引張強度は9.3kg/cm以上であり、明らかにアルミニウム板とセラミックとの界面の接合強度は9.3kg/cmを超えた。
【0116】
実験14
セラミックの接合面にアルミニウム膜を形成するプロセスの中に、アルミニウム溶融液の温度を850℃に変え、窒素の流量を3L/分間(この時の炉内雰囲気中の酸素含有量は1,300ppmである)に変え、セラミックとアルミニウム液との接触時間を60分間に(即ちセラミックの進入から取り出しまでの時間は2分間、セラミックがアルミニウム液の中での静止時間は58分間である)に変えた以外は、実験1と同じようにして、アルミニウム膜に覆われたセラミックを作製した。この接合面がアルミニウム膜に覆われるセラミックと金属アルミニウムとの接合プロセスは実験1に述べたとおりである。同じ実験は3回行い、これらの条件でセラミックの表面はアルミニウム膜に完全に覆われておらず、そのコーティング比率は83%であった。アルミニウム膜の厚みは2μmであった。
セラミック板上から、コーティング良好な部分を切り出し、碁盤分割剥離試験とろう接試験を実施した。実験は3回行い、結果から、碁盤分割剥離試験の剥離率は0であり、また、ろう接界面から未接欠陥は認められず、引張強度サンプルの破壊はアルミニウム板の挟むところであった。引張強度は9.8kg/cmを超えて、明らかにアルミニウム板とセラミックとの界面の接合強度は少なくとも9.8kg/cm以上であった。
【0117】
実験15
セラミックの接合面にアルミニウム膜を形成するプロセスにおいて、セラミックとアルミニウム液との接触時間を2分間に変えた(即ちセラミックは68.5mm/分間のスピードでアルミニウム溶融液を通過し、アルミニウム溶融液のなかで静止しなかった)以外は、実験14と同じである。同じ実験は3回行い、これらの条件でセラミックの表面はアルミニウム膜に完全に覆われておらず、そのコーティング比率は48%であった。アルミニウム膜の厚みは2μmであった。
セラミック板上から、コーティング良好な部分を切り出し、碁盤分割剥離試験とろう接試験を実施した。実験は3回行い、結果から、碁盤分割剥離試験の剥離率は0であり、また、ろう接界面から未接欠陥は認められず、引張強度サンプルの破壊はアルミニウム板の挟む部分であった。引張強度は9.6kg/cmを超えて、明らかにアルミニウム板とセラミックとの界面の接合強度は少なくとも9.6kg/cm以上であった。
【0118】
実験16
セラミックの接合面にアルミニウム膜を形成するプロセス中に、セラミック板の移動スピードを150mm/分間に変え、セラミックとアルミニウム溶融液との接触時間を約1分間に変えた(即ちセラミック板は150mm/分間のスピードで移動し、アルミニウム液に静止しない)以外は、実験14と同じようにし、アルミニウム膜に覆われたセラミックを作製した。この接合面がアルミニウム膜に覆われるセラミックと金属アルミニウムとの接合プロセスは実験14に述べたとおりである。同じ実験は3回行い、これらの条件でセラミックの表面はアルミニウム膜に完全に覆われておらず、そのコーティング比率は43%であった。アルミニウム膜の厚みは2μmであった。
セラミック板上から、コーティング良好な部分を切り出し、碁盤分割剥離試験とろう接試験を実施した。実験は3回行い、結果から、碁盤分割剥離試験の剥離率は0であり、またろう接界面から未接欠陥が認められず、引張強度サンプルの破壊はアルミニウム板の挟むところであった。引張強度は10.3kg/cmを超え、明らかに、アルミニウム板とセラミックとの界面の接合強度は、少なくとも10.3kg/cm以上であった。
【0119】
実験17
セラミックの接合面にアルミニウム膜を形成するプロセス中に、セラミック板の移動スピードを10mm/分間に変えた以外は、実験14と同様にし(即ちセラミックは10mm/分間のスピードでアルミニウム液の中で移動し、静止しなかった)、アルミニウム膜に覆われたセラミックを作製した。この接合面がアルミニウム膜に覆われるセラミックと金属アルミニウムとの接合プロセスは実験14に述べたとおりである。同じ実験は3回行い、結果から、この条件でセラミックの表面はアルミニウム膜に完全に覆われておらず、そのコーティング比率は89%であった。アルミニウム膜の厚みは2μmであった。
セラミック板上から、コーティング良好な部分を切り出し、碁盤分割剥離試験とろう接試験を実施した。実験は3回行い、結果から、碁盤分割剥離試験の剥離率は0であり、また、ろう接界面から未接欠陥は認められず、引張強度サンプルの破壊はアルミニウム板の挟む部分であった。引張強度は9.7kg/cmを超えて、明らかにアルミニウム板とセラミックとの界面の接合強度は少なくとも9.7kg/cm以上であった。
【0120】
実験18
実験1に述べた方法で表面がアルミニウム膜に覆われたセラミック板を作製した。二枚のアルミニウム膜に覆われたセラミック板を重ね、その間にAl−12質量%Siろう材を挟み、さらにその上と下にAl−12質量%Siろう材を置き、アルミニウム板を重ねた。他は実験1と同じである。
同じ実験は3回実施した。すべての接合界面には未接合欠陥が認められなかった。引張強度サンプルの破壊はアルミニウム板の掴む部分で発生し、引張強度は10.5kg/cmを超えた。明らかに、セラミック板とセラミック板との間、又はセラミック板とアルミニウム板の間の接合強度は少なくとも10.5kg/cm以上であった。
【0121】
実験19
方法は実験18とほぼ同じである。違いは固体拡散方法でセラミック同士を接合するために使用した点である。具体的な違いは下記のとおりである:Al−12質量%Siろう材を純アルミニウムに変え、接合温度をアルミニウム融点以下の650℃にし、窒素雰囲気においてホットプレス使ってサンプルに5MPaの圧力を掛けて、保温時間を60分間に延長し、固体拡散接合を行った。
同じ実験は3回実施し、アルミニウム板は圧力で形が変化した以外、ろう接体には接合欠陥は認められなかった。引張強度サンプルの破壊はアルミニウム板の挟む部分で発生し、引張強度は5.3kg/cmを超え、明らかに、アルミニウム板とセラミックとの界面の接合強度は少なくとも5.3kg/cm以上であった。
【0122】
実験20
方法は実験18とほぼ同じである。具体的な違いはセラミックの接合面にアルミニウム膜を形成するプロセス中に、純アルミニウム溶融液をAl−12質量%Si合金溶液に変え、溶融液の温度を600℃に変え、且つセラミックとセラミック及びセラミックとアルミニウム板を接合するときに、再びろう材を入れない点である。
同じ実験は3回実施し、すべての接合界面に欠陥は認められなかった。引張強度サンプルの破壊はアルミニウム板の挟む部分で発生し、引張強度は9.5kg/cmを超え、明らかに、アルミニウム板とセラミックとの界面の接合強度は、少なくとも9.5kg/cm以上であった。
【0123】
実施例3
セラミックとアルミニウムとの連続接合
本実施例に用いる工業用純アルミニウム、5A02アルミニウム合金、2A02アルミニウム合金、Al−20質量%Si合金、工業用純マグネシウム、及びすべてのセラミック板は市販品である。セラミックの接合面に液膜を形成するために用いるアルミニウム合金はAl−20質量%Si合金、工業用の純マグネシウム及び純アルミニウムを溶融して調製したものである。
【0124】
以下の実施例に用いるセラミック表面金属被覆/接合装置の構造は図2に示すとおりである。この装置は炉体1、炉蓋2、黒鉛坩堝3、下部の熱抵抗ヒーター4、黒鉛ガイド5、下部の不活性ガス導入口6、ガイド窓口8、アルミニウムストリップの導入口10、ガイドローラ11、駆動ローラ12、ろう接された部材の導出口14、上部金属製電気抵抗ヒーター15及び上部不活性ガス導入口17から構成される。アルミニウムとセラミックのろう接体に13を付した。
黒鉛坩堝が炉体の下部に設置され、黒鉛坩堝の周りに炉の下部分の金属線電気抵抗ヒーターは設置され、黒鉛坩堝の底と炉のケースの底にガイドにあう穴は開かれて、2つの穴の軸は同じであり、黒鉛ガイドはこれらの穴を通って、黒鉛坩堝と炉体を貫通し、固定される。黒鉛ガイドは2つの平行の板からなり、その中にセラミック板が通過する溝が加工され、且つその坩堝の中に位置する部分にガイド窓口8は開かれて、坩堝の中のアルミニウム合金溶融液9とガイド中のセラミック板7とを接合させる。
なお、窓口下の部分のガイドとセラミック板の間の隙間は0.1mmである。この隙間でセラミックがガイドの中で自由に移動できるがアルミニウム液は流れない。窓口上部のガイドとセラミック板との間の隙間を1.3mmにし、これによりセラミック板表面に付着するアルミニウム液はガイドに接触することがない。
アルミニウムストリップ16は炉体両側の導入口から炉内に入り、ガイドローラ11を使って、表面にアルミニウム合金液膜が付着されたセラミック板の両側に置かれ、駆動ローラ12の引張り及びセラミック板の推力で、炉蓋上の導出口14から出る。ガイドローラ及び駆動ローラとアルミニウムストリップとの間の接触圧力は二つのガイドローラ又は2つの駆動ローラの間の隙間の調整で制御する。炉の上部と下部のヒーターの温度は単独で調節できる。黒鉛の酸化燃焼を防ぐために、炉体と炉蓋との繋ぐところはシリコンで密閉し、炉内に窒素ガスを導入して保護する。
【0125】
実験1
上記のセラミック表面金属被覆装置を用いて、Al−12質量%Si合金を黒鉛坩堝に入れて、複数のアルミナセラミック板(長さ137mm、幅35mm、厚み0.64mm、TSINGHUA YUEKE社製、アルミナ純度95%以上)を坩堝を貫通するガイドに挿入し、厚さ0.5mmのアルミニウムストリップを入口から取り入れ、ガイドローラ又は駆動ローラの間を通って、導出口から取り出し、それから、窒素雰囲気(上、下窒素導入口の流量:20L/分間)中においてスイッチを入れて加熱し、坩堝中のアルミニウム合金を溶融し730℃に昇温する。それから、もう一枚のアルミナ板を装置下のガイド入口から68.5mm/分間のスピードでガイドに挿入し、ガイドの中の最初に挿入したセラミック板を同じスピードで垂直に上へ移動させる。移動過程において、セラミック板は、ガイド窓口経由して坩堝の中のアルミニウム合金溶融液と接触し、表面に付着したアルミニウム溶融液とともにガイドの上から押し出される。続いて、ローラの間に入るとアルミニウムストリップと接触し、ともに移動する間に、セラミックの表面に付着したアルミニウム合金液膜がアルミニウムストリップと反応し、アルミニウムストリップにも付着し、アルミニウムストリップをセラミックの上にろう接し、最終的に出口から出る。上部の加熱体の温度を600℃に設定し、この温度はAl−12質量%Si合金の溶融温度(580℃)より高く、且つアルミニウムの融点(660℃)より低い。
ダイヤモンド切断機を用いて、ろう接サンプルを切断し、顕微鏡観察用のサンプルを作製した。この顕微鏡観察により、アルミニウム板はセラミックの板に強く接合しており、界面に未接合欠陥は認められなかった。さらに、サンプルから幅5mmのサンプルを切りだし、90°引張強度試験を実施した。なお、測定した引張強度は14.1kg/cmであり、サンプルの破壊はアルミニウム板の掴む部分であった。明らかに界面の接合強度はこの値より大きかった。この方法でアルミニウムとセラミックとを強く接合できることがわかった。
同じ実験は3回行い、引張強度サンプルの破壊はすべてアルミニウム板の掴む部分で発生した。引張強度はそれぞれ14.1kg/cm、13.3kg/cm、13.3kg/cmであり、明らかに界面の接合強度は少なくとも13.3kg/cm以上であった。
【0126】
実験2
上部加熱ヒータの温度を620℃に変えた以外は、実験1と同じである。顕微鏡観察から、アルミニウム板がセラミックの上に強く接合され、界面に未接合欠陥は認められなかった。引張強度は11.8kg/cmであり、破壊はアルミニウムの掴むところであった。同じ実験を3回実施し、アルミニウムとセラミックとの接合界面の強度は10.6kg/cm以上であった。
【0127】
実験3
合金をAl−12質量%Si−0.5質量%Mg合金に変え、上部と下部の窒素流量を10L/分間に変えた以外は、実験1と同じである。セラミックとアルミニウム板と界面に未接合欠陥は認められず、引張強度試験サンプルの破壊はアルミニウムの掴む部分で発生した。同じ実験は3回実施し、界面の接合強度は9.5kg/cm以上であった。
【0128】
実験4
アルミナセラミック板を窒化アルミニウムセラミックに変えた以外は、実験1と同じである。顕微鏡観察から、アルミニウム板はセラミック板の上に強く接着し、界面に未接合欠陥は認められなかった。引張強度試験サンプルの破壊はアルミニウムの掴む部分で発生した。同じ実験は3回実施し、界面の接合強度は9.3kg/cm以上であった。
同様にして、本発明の実験には純アルミニウムだけを実験材料に使ったが、純アルミニウムとアルミニウム合金のろう接は本質的な区別がないので、この方法は他のアルミニウム合金部材又は材料のろう接にも使用できる。唯一の制限は、これらのアルミニウム合金部品又は材料の溶融温度はアルミニウム合金ろう材の溶融温度より高くすべき点である。
【産業上の利用可能性】
【0129】
先ず、本発明は、セラミックの表面にアルミニウム膜でコーティングすることが困難である問題を解決した。本発明者らは多くの研究の重ね、セラミック表面の金属被覆処理面をアルミニウム又はアルミニウム合金溶融液に含漬してから移動させ、アルミニウム又はアルミニウム合金をセラミックの金属被覆面に強く付着させて、それから3ppm〜1,300ppm(ppm:百万分の一)の酸素を含む雰囲気中、又は10−3Paの真空中において、それを徐々にアルミニウム又はアルミニウム合金溶融液から取り出し、冷却し、セラミックの表面に強く接着するアルミニウム又はアルミニウム合金の膜を形成できることを見出した。この薄膜は均一にセラミックの表面に付着した連続のアルミニウム又はアルミニウム合金液膜の自然凝固によるものであり、その内部に酸化膜不純物、気泡などの微視的な欠陥はなく、そのために、純アルミニウムの優れた物理又は力学的性能を持つ。
【0130】
現在の技術と比較して、本発明のセラミックの表面にアルミニウム薄膜及びアルミニウム合金薄膜を接合する方法は、セラミックの表面に厚さ1μm〜数十μmのアルミニウム及びアルミニウム膜の付着が形成できるようになった。
【0131】
次に、本発明は、一挙にアルミニウム表面の酸化膜がアルミニウムとセラミックの接合を妨げ、接合体の性能低下の問題を解決した。図3は、本発明の方法で作製したアルミナセラミックとアルミニウムとの接合体の界面の高分解能透過電子顕微鏡像と各微小領域の電子回折像を示す。この図から、界面には通常のろう接界面で一般的に存在する、アルミニウムの表面酸化物からなる非晶質酸化膜不純物は存在しない(普通のろう接法の界面の酸化物不純物に関する記述は、下記の文献が参照される:X. S. Ning, K. Suganuma, M. Morita and T. Okamoto, Interfacial reaction between silicon nitride and aluminium, Philosophical Magazine letter, 55巻,(1987),93−96頁;E. Saiz; A. P. Tomsia; K. Sugamuma, Wetting and strength issues at Al/α−alumina interfaces,Journal of European Ceramic Society, 23巻(2003)2787−2796頁)。本発明によると、アルミニウム表面の元の酸化膜は有効に除去されたことが示された。さらにこの図からわかるように、アルミニウムとアルミナの間に反応がおこり、エピタキシャル界面反応層を形成し(界面反応層(104)面と元のアルミナ結晶粒の(104)面、(110)面とアルミニウムの(111)面の間にエピタキシャル関係はある)、アルミニウムとセラミックが原子レベルで一緒に成長した。理論上の計算から、アルミナとアルミニウムのエピタキシャル界面は低い界面自由エネルギーと高い結合力を持つことが示された(W. Zhang; J. R. Smith; Nonsoichiometric Interfaces and Al Adhension with Al and Ag, Physical Review Letters, 85巻(2000)3225−3228頁)。この研究結果は、本発明の方法を用いると、接合界面での酸化物不純物の形成は妨げられ、アルミニウム又はアルミニウム合金の薄膜はセラミックの表面に直接成長し、そのために、接合が強く、剥離しにくい。本発明の方法は作業が簡単であり、時間と労力が節約でき、非常に簡単で且つ実用性が高い。
【0132】
本発明の研究成果を十分に活用するため、本発明はさらに下記の技術的解決手段を用いる。
【0133】
第一の技術的解決手段:セラミックをアルミニウム合金溶融液に含漬してから移動させ、アルミニウム表面の元の酸化膜を除去し、それから3ppm〜1,300ppm(ppm:百万分の一)の酸素を含む雰囲気又は10−3Paの真空中において、それを徐々に取り出し、冷却し、セラミックの表面に接着力の強いアルミニウム合金の膜を形成する。さらに、このアルミニウム合金膜をろう材として用い、ろう接を行い、セラミックとアルミニウム又はアルミニウム合金とを強固に接合する。一方、セラミックの表面に形成された薄膜は、接合界面に酸化膜不純物が存在しない、内部に気泡などの微視的欠陥が存在しない、セラミックとの接合は非常に安定するなど利点がある。一方、このセラミックの表面に形成された安定な薄膜は、ろう接工程において劣化せず、そして、その薄膜の厚みは数μmから数十μmの範囲であり、ろう接工程においてろう剤の必要な厚みと正確に一致するものであった。したがって、この薄膜はアルミニウム又はアルミニウム合金とセラミックとのろう接に直接用いることができる。接合体の90°の引張強度は、アルミニウム又はアルミニウム合金とセラミックの表面接合強度が、6.5kg/cmにも達し、非常に強固であることを示すものである。さらに、ろう接工程における不要な圧力がかからないため、明らかに本発明の方法でセラミックとアルミニウム又はアルミニウム合金との高強度接合ができる。この効果は現在の技術で実現し難いところであり、したがって、本発明の設備は簡単であり、工業生産に向いているので、セラミック同士の接合及びセラミックとアルミニウムなどの金属材料の接合領域において広い応用可能性がある。
【0134】
第二の技術的解決手段:セラミックをアルミニウム合金溶融液に含漬してから移動させ、アルミニウム表面の元の酸化膜を除去し、それから3ppm〜1,300ppm(ppm:百万分の一)の酸素を含む雰囲気又は10−3Paの真空中において、それを徐々に取り出し、冷却し、セラミックの表面に接着力の強いアルミニウム合金の膜を形成する。さらに、このアルミニウム又はアルミニウム合金膜の上にろう材を置き、このろう材を用い、セラミックとアルミニウム又はアルミニウム合金なとの金属を強固に接合し、又はこの表面がアルミニウム又はアルミニウム合金薄膜に覆われたセラミック板同士を接合する。一方、このセラミックの表面に形成された薄膜は、接合界面に酸化膜不純物が存在しない、内部に気泡などの微視的欠陥が存在しない、セラミックとの接合は非常に安定するなど利点がある。一方、通常のアルミニウムろう接技術を用いて、表面にアルミニウム又はアルミニウム合金の薄膜を付着するセラミック同士及びそれとアルミニウム又はアルミニウム合金とを接合させると、接合体の90°引張強度が12kg/cmにも達し、且つ破壊は界面で起こらないため、明らかに、本発明の方法によりセラミックとアルミニウム又はアルミニウム合金との高強度接合が実現できる。本発明の効果は現在の技術で実現し難いところであり、したがって、本発明の設備は簡単であり、工業生産に向いているので、セラミック同士の接合及びセラミックとアルミニウムなどの金属材料の接合領域において広い応用可能性がある。
【0135】
第三の技術的解決手段:セラミックをアルミニウム合金溶融液に含漬してから移動させ、アルミニウム表面の元の酸化膜を除去し、それから3ppm〜1,300ppm(ppm:百万分の一)の酸素を含む雰囲気中において、又は10−3Paの真空中において、それを徐々に取り出し、セラミックの表面にアルミニウム合金の膜を付着させる。さらに、この液膜をろう材として用い、セラミックとアルミニウム又はアルミニウム合金部品又は材料とを強固に接合する。現在の技術と比べて、本発明の方法は下記利点がある:液膜とセラミックとの界面に元の酸化膜の介在は有効に妨げられて、アルミニウム合金とセラミックとを十分に反応させて、界面での未接欠陥の発生は妨げられる;セラミックの表面に形成されたアルミニウム合金液膜の内部に酸化膜不純物が存在しないため、直接アセラミックとアルミニウム又はアルミニウム合金との接合に使用することができる;接合するセラミック及びアルミニウム又はアルミニウム合金部材の形状には厳しい制限がなく、一般に使用することができる;接合過程において、アルミニウム又はアルミニウム合金部品及び材料の変形を引き起こす多大の圧力が加わらず、接合部品の精度が保てる;直接セラミック表面に付着する液膜をろう材として用い、その上に接合しようとする部材を放置するだけで接合できるので、連続生産が可能である。そのために、本発明の方法はセラミックとアルミニウムなどの金属部材の接合領域において広い応用可能性がある。
【0136】
本発明の実施例にアルミナセラミック、窒化ケイ素セラミック、窒化アルミニウムセラミック及び炭化ケイ素セラミックを採用し、いずれも効果が期待された。アルミニウムとセラミックとの接合はセラミックとアルミニウムとの間の直接化学反応が基本であるので、また熱力学によると、上記のセラミック以外にもアルミニウムがその他の酸化物、窒化物、炭化物、ホウ化物、ケイ素化合物、シリコン、カーボン等の無機材料に反応するため、本発明は上記の四種類のセラミックに限定されるべきではないことは明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックの表面にアルミニウム又はアルミニウム合金薄膜を形成する方法であって、前記セラミックの金属被覆される表面をアルミニウム又はアルミニウム合金溶融液に含漬する工程と、前記表面を前記溶融液に対して移動させ、又は前記溶融液の中で静止させて、前記アルミニウム又はアルミニウム合金の溶融液を前記セラミックの金属被覆表面に付着させる工程と、前記セラミックの金属被覆表面を前記溶融液から移動させながら取り出し、前記表面に付着したアルミニウム又はアルミニウム合金液膜を自然冷却させて、前記表面にアルミニウム又はアルミニウム合金薄膜が接合されたセラミックを得る工程と、を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
セラミックの金属被覆面をアルミニウム又はアルミニウム合金溶融液に含漬する方法が、前記セラミックを前記アルミニウム又はアルミニウム合金溶融液を含む容器の底から前記溶融液に挿し込んだ後、前記セラミックを垂直に上向きに移動させることを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アルミニウム又はアルミニウム合金溶融液が、下記1)又は2)から選ばれる温度を有する請求項1又は2のいずれかに記載の方法、
1)前記アルミニウム又はアルミニウム合金溶融液が、630℃〜850℃、又は700℃〜850℃、又は680℃〜780℃、又は700℃〜760℃であり、具体的には、630℃、680℃、700℃、730℃、760℃、780℃又は850℃である温度;
2)前記アルミニウム又はアルミニウム合金溶融液が、730℃〜820℃又は760℃〜820℃又は780℃〜820℃又は730℃〜760℃又は730℃〜780℃又は760℃〜820℃又は760℃〜780℃であり、具体的には、730℃、760℃、780℃又は820℃である温度。
【請求項4】
溶融液に対してセラミックを移動させ、又は前記溶融液の中で静止させる方法が、下記1)又は2)又は3)を含む請求項1、2又は3のいずれかに記載の方法、
1)前記溶融液に対して移動させる場合、前記溶融液に対する移動速度が68.5mm/分間であり、且つ前記セラミックの金属被覆面を前記溶融液から取り出す速度が68.5mm/分間であり;そして
前記溶融液に対し静止させる場合、前記溶融液に対する静止時間が10分間であり、且つ前記セラミックの金属被覆面を前記溶融液から取り出す速度が10mm/分間である方法;
2)前記溶融液に対して移動させる場合、前記溶融液に対する移動速度が10mm/分間〜68.5mm/分間であり、且つ前記セラミックの金属被覆面を前記溶融液から取り出す速度が10mm/分間又は68.5mm/分間であり;そして
前記溶融液に対して静止させる場合、前記溶融液に対する静止時間が5分間〜60分間又は5分間〜30分間又は30分間〜60分間であり、具体的には、5分間、30分間、又は60分間であり;且つ前記セラミックの金属被覆面を前記溶融液から取り出す速度が274mm/分間である方法;
3)前記溶融液に対して移動させる場合、前記溶融液に対する移動速度が10mm/分間〜68.5mm/分間であり、具体的には、10mm/分間又は68.5mm/分間であり;且つ前記セラミックの金属被覆面を前記溶融液から取り出す速度が、10mm/分間〜68.5mm/分間であり、具体的には、10mm/分間又は68.5mm/分間であり;そして
前記溶融液に対して静止させる場合、前記溶融液に対する静止時間が5分間〜60分間又は5分間〜30分間又は10分間〜60分間であり、具体的には、5分間、10分間、30分間又は60分間であり;且つ前記セラミックの金属被覆面を溶融液から取り出す速度が10mm/分間〜274mm/分間であり、具体的には、10mm/分間又は274mm/分間である方法。
【請求項5】
下記1)、2)又は3)に記載の雰囲気中で行われる請求項1から4のいずれかに記載の方法、
1)10−3Paオーダーの真空中;
2)不活性ガス;
3)酸素を含む不活性ガスであり、前記酸素の体積に基づく含有量が、3ppm〜1,300ppm、又は3ppm〜700ppm、又は3ppm〜420ppm、又は3ppm〜110ppm、又は10ppm〜420ppm、又は10ppm〜700ppm、又は110ppm〜420ppm、又は110ppm〜700ppm、又は420ppm〜1,300ppmであり、具体的には、3ppm、10ppm、110ppm、420ppm、700ppm又は1,300ppm(ppmは百万分の一である);
又は前記不活性ガスが窒素ガスである。
【請求項6】
アルミニウム合金が、Al−8質量%Si、Al−12質量%Si、Al−2質量%Si、Al−1質量%Si又はAl−12質量%Si−1質量%Mgである請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
セラミックが、酸化物セラミック、窒化物セラミック又は炭化物セラミックであり;又は、前記酸化物セラミックがアルミナセラミック板であり、前記窒化物セラミックが窒化アルミニウムセラミック板又は窒化ケイ素セラミック板であり、前記炭化物セラミックが炭化ケイ素セラミック板である請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
アルミニウム又はアルミニウム合金薄膜が、下記1)、又は2)、又は3)で特定される厚みを有する請求項1から7のいずれかに記載の方法、
1)4μm〜51μm、又は5μm〜17μm、又は6μm〜10μm、又は7μm〜9μm、又は8μm〜17μm、又は8μm〜10μm、又は10μm〜17μmであり、具体的には、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm、10μm、17μm又は51μm;
2)1μm〜7μm、又は1μm〜5μm、又は1μm〜3μm、又は1μm〜4μm、又は2μm〜7μm、又は2μm〜5μm、又は2μm〜4μm、又は3μm〜5μm、又は3μm〜7μm、又は4μm〜7μmであり、具体的には、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm又は7μm;
3)1μm〜51μm、又は2μm〜17μm、又は3μm〜10μm、又は4μm〜9μm、又は5μm〜8μm、又は8μm〜17μm、又は8μm〜10μm、又は10μm〜17μmであり、具体的には、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、7μm、6μm、8μm、9μm、10μm、17μm又は51μm。
【請求項9】
セラミックとアルミニウム又はアルミニウム合金薄膜との界面にアルミニウムの非晶質酸化物不純物が存在しない請求項1から8のいずれかに記載の方法で得られたことを特徴とする表面にアルミニウム又はアルミニウム合金薄膜が接合されたセラミック。
【請求項10】
アルミニウム又はアルミニウム合金薄膜が、セラミックの表面に均一に付着するアルミニウム又はアルミニウム合金液膜の凝固によって形成され、且つ厚みが数μmから数十μmの間であることを特徴とする表面にアルミニウム又はアルミニウム合金薄膜が接合されたセラミック。
【請求項11】
セラミックとアルミニウム又はアルミニウム合金薄膜との界面が、アルミニウムの非晶質酸化物不純物が存在しないものであり、且つ前記アルミニウム又はアルミニウムの合金が前記セラミックと直接に反応し、互いに成長し合うものである請求項10に記載の表面にアルミニウム又はアルミニウム合金薄膜が接合されたセラミック。
【請求項12】
アルミニウム又はアルミニウム合金薄膜とセラミックとの碁盤分割剥離強度が、4.1N/cm以上である請求項10又は11に記載の表面にアルミニウム又はアルミニウム合金薄膜が接合されたセラミック。
【請求項13】
1)セラミックの接合面に厚さ数μm〜数十μmの緻密なアルミニウム又はアルミニウム合金薄膜を形成させて、前記接合面がアルミニウム又はアルミニウム合金に覆われたセラミックを得る工程と、
2)前記アルミニウム又はアルミニウム合金薄膜を用い、前記接合面が前記アルミニウム又はアルミニウム合金薄膜に覆われたセラミックと金属とを接合し、又は前記アルミニウム又はアルミニウム合金薄膜を用いて、前記接合面が前記アルミニウム又はアルミニウム合金薄膜に覆われたセラミック同士を接合する工程と、
を含むことを特徴とするセラミックと金属の接合方法。
【請求項14】
工程1)において、セラミックの接合面に厚さ数μm〜数十μmの緻密なアルミニウム又はアルミニウム合金薄膜を形成する工程が、前記セラミックの接合面をアルミニウム又はアルミニウム合金の溶融液に含漬し、そして、前記セラミックを前記溶融液に対して相対移動させ、及び/又は前記溶融液の中で静止させて、前記セラミックの接合面を前記溶融液に湿潤させて、前記セラミックの接合面を前記溶融液から移動させながら取り出し、冷却し、前記セラミックの表面に付着するアルミニウム又はアルミニウム合金液膜を自然に凝固させ、前記アルミニウム又はアルミニウム合金薄膜を形成する工程を含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
工程2)が、下記I、又はII、又はIII、又はIVに記載された手順にしたがって行われる請求項13又は14に記載の方法、
I.前記工程2)が、接合面がアルミニウム又はアルミニウム合金薄膜に覆われたセラミックのアルミニウム又はアルミニウム合金薄膜の上にろう材を置き、さらに金属を前記ろう材の上に重ね、ろう接工程を経て、前記金属と表面が前記アルミニウム又はアルミニウム合金薄膜に覆われたセラミックとを接合する工程を含む手順、
II.前記工程2)が、前記接合面が前記アルミニウム又はアルミニウム合金薄膜に覆われたセラミックの前記アルミニウム又はアルミニウム合金薄膜の上にろう材を置き、前記接合面が前記アルミニウム又はアルミニウム合金薄膜に覆われたセラミックを前記ろう材の上に重ね、ろう接工程を経て、前記接合面が前記アルミニウム又はアルミニウム合金薄膜に覆われたセラミック同士を接合する手順、
III.前記工程2)が、前記アルミニウム又はアルミニウム合金薄膜をろう材として用い、前記接合面が前記アルミニウム又はアルミニウム合金薄膜に覆われたセラミックと金属とを接合する手順、
IV.前記工程2)が、前記アルミニウム又はアルミニウム合金薄膜をろう材として用い、前記接合面がアルミニウム又はアルミニウム合金薄膜に覆われたセラミック同士を接合する手順。
【請求項16】
工程1)が、下記a)又はb)に記載の雰囲気中で行われる請求項13、14又は15に記載の方法、
a)3ppm〜1,300ppmの体積に基づく酸素含有量を有し、そして、具体的には、前記体積に基づく酸素含有量が、3ppm、30ppm又は1,300ppm(ppmは百万分の一である)を有する雰囲気中;
b)3ppm〜1,300ppm、又は3ppm〜700ppm、又は3ppm〜420ppm、又は3ppm〜110ppm、又は10ppm〜420ppm、又は10ppm〜700ppm、又は110ppm〜420ppm、又は110ppm〜700ppm、又は420ppm〜1,300ppm、具体的には、3ppm、10ppm、110ppm、420ppm、700ppm又は1,300ppmの体積に基づく酸素含有量(ppmは百万分の一である)を有する不活性ガス雰囲気中;
又は不活性ガスが、窒素ガスである。
【請求項17】
工程1)において、アルミニウム又はアルミニウム合金溶融液の温度が、下記a)又はb)又はc)又はd)又はe)で特定される温度を有する請求項13から16のいずれかに記載の方法、
a)前記アルミニウム溶融液の温度が、前記アルミニウムの融点より高く、且つ950℃、850℃又は750℃より低い温度;
b)前記アルミニウム合金溶融液の温度が、前記アルミニウム合金の溶融温度より高く、且つ950℃、850℃又は750℃より低い温度;
c)前記アルミニウム又はアルミニウム合金溶融液の温度が、600℃〜850℃又は600℃〜700℃又は600℃〜685℃又は660℃〜850℃又は660℃〜700℃又は685℃〜850℃であり、具体的には、600℃、660℃、685℃、700℃又は850℃である温度;
d)前記アルミニウム溶融液の温度が、685℃〜850℃であり、具体的には、685℃、700℃又は850℃である温度;
e)前記アルミニウム合金溶融液の温度が、580℃〜660℃又は600℃〜660℃であり、具体的には、660℃又は600℃である温度。
【請求項18】
工程1)において、溶融液に対してセラミックを移動させる及び/又は前記溶融液の中で静止させる方法が、下記a)又はb)又はc)又はd)又はe)を含む請求項13から17のいずれかに記載の方法、
a)前記溶融液に対する相対移動及び/又は静止の時間が1分間〜60分間であること;
b)セラミックの接合面を前記溶融液の中から移動させながら取り出す速度が10mm/分間〜150mm/分間であること;
c)前記溶融液に対する相対移動及び/又は静止の時間が1分間〜60分間であり、且つ前記セラミックの接合面を前記溶融液の中から移動しながら取り出す速度が10mm/分間〜150mm/分間であること;
d)前記溶融液に対して相対移動させる場合、前記溶融液に対する相対移動の速度が10mm/分間〜150mm/分間であり、具体的には、10mm/分間、又は68.5mm/分間、又は150mm/分間であり、且つ前記セラミックの接合面を前記溶融液から移動させながら取り出す速度が10mm/分間〜150mm/分間であり、具体的には、10mm/分間、又は68.5mm/分間、又は150mm/分間であること;
e)前記溶融液の中で静止させる場合、静止時間が3分間〜58分間であり、具体的には、3分間又は58分間であり、前記セラミックの接合面を前記溶融液の中から移動しながら取り出す速度が68.5mm/分間であること。
【請求項19】
工程1)において、セラミックが、酸化物セラミック、窒化物セラミック又は炭化物セラミックであり、又は、前記酸化物セラミックがアルミナセラミック板であり、前記窒化物セラミックが窒化アルミニウムセラミック板又は窒化ケイ素セラミック板であり、前記炭化物セラミックが炭化ケイ素セラミック板であり;
及び/又は、前記工程1)において、アルミニウム合金がAl−2質量%Si又はAl−12質量%Siであり;
及び/又は、前記工程1)において、数μm〜数十μmとの記載が、2μm〜17μm、又は8μm〜17μm、又は8μm〜10μm、又は10μm〜17μm、又は2μm〜10μmであり、具体的には、2μm、8μm、10μm又は17μmである、請求項13から18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
工程2)において、ろう接温度が、600℃〜650℃又は600℃〜640℃又は630℃〜650℃であり、具体的には、600℃、630℃、640℃又は650℃であり;
及び/又は、前記工程2)において、I又はIIの方法のろう材が、Al−12質量%Si合金、Al−8質量%Si合金、Al−4質量%Si合金、Al−8質量%Si−0.2質量%Mg合金又はアルミニウムであり;
及び/又は、前記工程2)において、金属がアルミニウム、5A02アルミニウム−マグネシウム合金又は2A02アルミニウム−銅−マグネシウム合金であり;
及び/又は、前記工程2)において、ろう接が、10−3Paオーダーの真空中において行われ、又は不活性ガス雰囲気中において行われる、
請求項13から19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
1)セラミックの接合面にアルミニウム合金1の液膜を形成し、前記接合面が前記アルミニウム合金1の液膜に覆われたセラミックを得る工程と、
2)前記接合面が前記アルミニウム合金1の液膜に覆われたセラミックのアルミニウム合金1の液膜の上に純アルミニウム又はアルミニウム合金2を置き、前記アルミニウム合金1の液膜をろう材として用い、表面が前記アルミニウム合金1の液膜により覆われたセラミックと純アルミニウム又はアルミニウム合金2をろう接する工程と、
を含むことを特徴とするセラミックとアルミニウム又はアルミニウム合金との接合方法。
【請求項22】
ろう接温度が、アルミニウム合金1の溶融温度より高く、且つアルミニウムの融点より低く、又は、ろう接温度が、前記アルミニウム合金1の溶融温度より高く、且つアルミニウム合金2の溶融温度より低い、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
工程1)において、セラミックの接合面にアルミニウム合金1の液膜を形成する方法が、前記セラミックの接合面を前記アルミニウム合金1の溶融液に含漬し、そして、前記溶融液に対し前記セラミックを移動させ、及び/又は前記溶融液の中に静止させて、前記溶融液を前記セラミックの接合面に付着させ、次に、前記セラミックの接合面を前記溶融液から移動させながら取り出し、前記セラミックの接合面に前記アルミニウム合金1の液膜を付着させる工程を含む請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
工程1)において、溶融液に対して移動させる場合、前記溶融液に対する相対運動の速度が68.5mm/分間であり、前記セラミックの接合面を前記溶融液の中から移動させながら取り出す速度が68.5mm/分間である請求項21から23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
工程1)において、アルミニウム合金1溶融液が730℃の温度を有し、
及び/又は前記工程1)が、窒素ガス雰囲気中で行われ、
前記工程2)において、ろう接温度が600℃〜620℃であり、具体的には、600℃又は620℃である請求項21から24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
アルミニウム合金1が、アルミニウムシリコン2元合金又はアルミニウムシリコン−マグネシウム3元合金であり;前記アルミニウム合金1がAl−12質量%Si合金又はAl−12質量%Si−0.5質量%Mgである請求項21から25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
セラミックが、酸化物セラミック、窒化物セラミック又は炭化物セラミックであり;又は、前記酸化物セラミックがアルミナセラミック板であり、前記窒化物セラミックが窒化アルミニウムセラミック板又は窒化ケイ素セラミック板であり、前記炭化物セラミックが炭化ケイ素セラミック板である請求項21から26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
炉体1、炉蓋2、黒鉛坩堝3、下部金属電気抵抗線ヒーター4、黒鉛ガイド5、下部の不活性ガスの導入口6、ガイド窓口8、アルミニウムストリップ導入口10、ガイドローラ11、駆動ローラ12、ろう接された部材の導出口14、上部の金属抵抗線加熱体15及び上部の不活性ガス導入口17から構成され;
前記黒鉛坩堝が前記炉体の下部に設置されて、前記黒鉛坩堝の周りに前記下部金属線電気抵抗ヒーターが設置され、前記黒鉛坩堝の底と前記炉体の底にガイドにあう穴を有し、2つの穴は同軸であり;前記黒鉛ガイドが、前記穴を通って、前記黒鉛坩堝と前記炉体とを貫通し、それぞれに固定され;前記黒鉛ガイドは2つの平行の板からなり、前記板の内部にセラミック板を通過させる溝からなり、且つそれらの坩堝に位置する箇所にガイド窓口8が設置されることを特徴とする装置。
【請求項29】
炉体と炉蓋との接合部が、シリコーンにより密封されている請求項28に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−525311(P2012−525311A)
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−507578(P2012−507578)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際出願番号】PCT/CN2010/000612
【国際公開番号】WO2010/124532
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(598098331)ツィンファ ユニバーシティ (534)
【Fターム(参考)】