セラミック被覆表面を有する部品
本発明の局面によれば、基材と、基材表面の少なくとも一部分を覆うセラミック被覆とを備える、部品が提供される。セラミック被覆は、基材と共形であるセラミック層によって接続される隆起セラミックシェルを含む。本発明の別の局面によれば、カーボンナノチューブの少なくとも一部分を覆うセラミック被覆を備える、カーボンナノチューブが提供される。シェルは、部分的または完全に充填されてもよく、またはそれらは、中空であってもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(本発明の分野)
本発明は、セラミック被覆表面を有する、医療用部品を含む、部品に関する。
【背景技術】
【0002】
(本発明の背景)
部品には、無数の用途で使用するためのセラミック表面が提供される。したがって、新規のセラミック被覆部品および同部品を作製する方法に対する継続的な需要がある。
【発明の概要】
【0003】
(本発明の概要)
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の局面によれば、基材、および基材表面の少なくとも一部分を覆うセラミック被覆を備える、部品が提供される。セラミック被覆は、基材と共形である下位のセラミック層によって接続される隆起セラミックシェルを含む。シェルは、部分的または完全に充填されてもよく、またはそれらは、中空であってもよい。
【0005】
本発明の別の局面によれば、カーボンナノチューブの少なくとも一部分を覆うセラミック被覆を備える、カーボンナノチューブが提供される。
【0006】
上記および他の局面、ならびに本発明の種々の実施形態および利点は、以下の、詳細な説明および請求項を検討すると、当業者にとって即座に明白となるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1A】図1Aは、従来技術によるステントの概略斜視図である。
【図1B】図1Bは、図1Aの線b−bに沿って得られる概略断面図である。
【図2A】図2Aおよび図2Bは、本発明の2つの実施形態による、ステント支柱の概略断面図である。
【図2B】図2Aおよび図2Bは、本発明の2つの実施形態による、ステント支柱の概略断面図である。
【図3A】図3Aは、本発明の実施形態による、セラミック被覆を伴う部品の概略断面図である。
【図3B】図3Bおよび図3Cは、本発明によるセラミック被覆のSEM画像である。
【図3C】図3Bおよび図3Cは、本発明によるセラミック被覆のSEM画像である。
【図4A】図4Aおよび図4Bは、本発明の2つの実施形態による、ポリマー層をさらに備えるセラミック被覆を伴う部品の概略断面図である。
【図4B】図4Aおよび図4Bは、本発明の2つの実施形態による、ポリマー層をさらに備えるセラミック被覆を伴う部品の概略断面図である。
【図4C】図4Cは、図4Bのようなポリマー層を形成するためのプロセスを示す、概略断面図である。
【図5A】図5A〜図5Gは、本発明の種々の実施形態による、セラミック被覆を伴う部品および同部品を形成するためのプロセスを示す、概略断面図である。
【図5B】図5A〜図5Gは、本発明の種々の実施形態による、セラミック被覆を伴う部品および同部品を形成するためのプロセスを示す、概略断面図である。
【図5C】図5A〜図5Gは、本発明の種々の実施形態による、セラミック被覆を伴う部品および同部品を形成するためのプロセスを示す、概略断面図である。
【図5D】図5A〜図5Gは、本発明の種々の実施形態による、セラミック被覆を伴う部品および同部品を形成するためのプロセスを示す、概略断面図である。
【図5E】図5A〜図5Gは、本発明の種々の実施形態による、セラミック被覆を伴う部品および同部品を形成するためのプロセスを示す、概略断面図である。
【図5F】図5A〜図5Gは、本発明の種々の実施形態による、セラミック被覆を伴う部品および同部品を形成するためのプロセスを示す、概略断面図である。
【図5G】図5A〜図5Gは、本発明の種々の実施形態による、セラミック被覆を伴う部品および同部品を形成するためのプロセスを示す、概略断面図である。
【図6A】図6Aおよび図6Bは、本発明の2つの実施形態による部品の概略断面図である。
【図6B】図6Aおよび図6Bは、本発明の2つの実施形態による部品の概略断面図である。
【図7A】図7A〜図7H、図8A〜図8C、および図9A〜図9Dは、本発明の種々の実施形態による部品および同部品を形成するためのプロセスを示す、概略断面図である。
【図7B】図7A〜図7H、図8A〜図8C、および図9A〜図9Dは、本発明の種々の実施形態による部品および同部品を形成するためのプロセスを示す、概略断面図である。
【図7C】図7A〜図7H、図8A〜図8C、および図9A〜図9Dは、本発明の種々の実施形態による部品および同部品を形成するためのプロセスを示す、概略断面図である。
【図7D】図7A〜図7H、図8A〜図8C、および図9A〜図9Dは、本発明の種々の実施形態による部品および同部品を形成するためのプロセスを示す、概略断面図である。
【図7E】図7A〜図7H、図8A〜図8C、および図9A〜図9Dは、本発明の種々の実施形態による部品および同部品を形成するためのプロセスを示す、概略断面図である。
【図7F】図7A〜図7H、図8A〜図8C、および図9A〜図9Dは、本発明の種々の実施形態による部品および同部品を形成するためのプロセスを示す、概略断面図である。
【図7G】図7A〜図7H、図8A〜図8C、および図9A〜図9Dは、本発明の種々の実施形態による部品および同部品を形成するためのプロセスを示す、概略断面図である。
【図7H】図7A〜図7H、図8A〜図8C、および図9A〜図9Dは、本発明の種々の実施形態による部品および同部品を形成するためのプロセスを示す、概略断面図である。
【図8A】図7A〜図7H、図8A〜図8C、および図9A〜図9Dは、本発明の種々の実施形態による部品および同部品を形成するためのプロセスを示す、概略断面図である。
【図8B】図7A〜図7H、図8A〜図8C、および図9A〜図9Dは、本発明の種々の実施形態による部品および同部品を形成するためのプロセスを示す、概略断面図である。
【図8C】図7A〜図7H、図8A〜図8C、および図9A〜図9Dは、本発明の種々の実施形態による部品および同部品を形成するためのプロセスを示す、概略断面図である。
【図9A】図7A〜図7H、図8A〜図8C、および図9A〜図9Dは、本発明の種々の実施形態による部品および同部品を形成するためのプロセスを示す、概略断面図である。
【図9B】図7A〜図7H、図8A〜図8C、および図9A〜図9Dは、本発明の種々の実施形態による部品および同部品を形成するためのプロセスを示す、概略断面図である。
【図9C】図7A〜図7H、図8A〜図8C、および図9A〜図9Dは、本発明の種々の実施形態による部品および同部品を形成するためのプロセスを示す、概略断面図である。
【図9D】図7A〜図7H、図8A〜図8C、および図9A〜図9Dは、本発明の種々の実施形態による部品および同部品を形成するためのプロセスを示す、概略断面図である。
【図10A】図10A〜図10Cは、本発明によるセラミック被覆カーボンナノチューブを形成するためのプロセスを示す、概略断面図である。
【図10B】図10A〜図10Cは、本発明によるセラミック被覆カーボンナノチューブを形成するためのプロセスを示す、概略断面図である。
【図10C】図10A〜図10Cは、本発明によるセラミック被覆カーボンナノチューブを形成するためのプロセスを示す、概略断面図である。
【図11】図11は、本発明の実施形態によるセラミック被覆のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(本発明の詳細な説明)
本発明の局面によれば、基材、および基材表面の少なくとも一部分を覆うセラミック被覆を備える、部品が提供される。セラミック被覆は、基材と共形である下位のセラミック層によって接続される隆起セラミックシェルを含む。シェルは、部分的または完全に充填されてもよく、またはそれらは、中空であってもよい。以下でより詳細に論議されるように、ある実施形態では、セラミック被覆は、基材表面全体を覆って延在する、単一のセラミック構造を構成する。
【0009】
本明細書で使用される、所与の材料の「層」は、厚さがその長さおよび幅の両方よりも小さい、その材料の領域である。例えば、長さおよび幅は、各々厚さの少なくとも5倍であってもよく、例えば、独立して、厚さの5倍から10倍、30倍、100倍、300倍、1000倍、またはそれ以上に及ぶ。本明細書で使用される、層は、平坦である必要はなく、例えば、下位基材の輪郭を帯びる。したがって、本明細書で説明されるセラミックシェルは、層である。層は、不連続性となり得る(例えば、パターン化される)。
【0010】
本明細書で使用される、「セラミック」領域、例えば、セラミック層またはセラミックシェルは、単一のセラミック種または2つ以上の異なるセラミック種の混合物を含有する、材料の領域である。例えば、本発明によるセラミック領域は、通常、例えば、10重量%以下から25重量%、50重量%、75重量%、90重量%、95重量%、95重量%、またはそれ以上の1つ以上のセラミック種を備える。したがって、本発明によるセラミック領域は、セラミック種以外の種を備えることができ、例えば、いくつかの実施形態では、1重量%以下から2重量%、5重量%、10重量%、25重量%、50重量%、またはそれ以上のポリマー種を備える。
【0011】
セラミック領域で使用するためのセラミック種は、とりわけ、金属および半金属酸化物、金属および半金属窒化物、ならびに金属および半金属炭化物を含む。金属および半金属酸化物、窒化物、および炭化物の例は、周期表の第14族半金属(例えば、Si、Ge)の酸化物、窒化物、および炭化物、ならびに、第3族金属(例えば、Sc、Y)、第4族金属(例えば、Ti、Zr、Hf)、第5族金属(例えば、V、Nb、Ta)、第6族金属(例えば、Cr、Mo、W)、第7族金属(例えば、Mn、Tc、Re)、第8族金属(例えば、Fe、Ru、Os)、第9族金属(例えば、Co、Rh、Ir)、第10族金属(例えば、Ni、Pd、Pt)、第11族金属(例えば、Cu、Ag、Au)、第12族金属(例えば、Zn、Cd、Hg)、第13族金属(例えば、Al、Ga、In、Tl)、第14族金属(例えば、Sn、Pb)、第15族金属(例えば、Bi)等の、遷移および非遷移金属の酸化物、窒化物、および炭化物を含む。金属および半金属酸化物の炭化物および窒化物は、例えば、とりわけ、高温炭素熱還元および窒化物形成プロセスを使用して、形成されてもよい。
【0012】
本発明による部品の一例が、図3Aの断面で概略的に示され、図中、共形セラミック層320cによって接続された隆起セラミックシェル320sを含む、セラミック被覆320で覆われた基材310が示されている。セラミックシェル320sの内部350は、示されるように中空である。共形セラミック層320cは、非常に薄くすることができ(例えば、100nm以下)、したがって、下位基材とともに容易に変形する(例えば、屈曲または屈折する)ことが可能である。さらに、セラミックシェル320は、適度の屈折/屈曲中に相互に係合しないように、均一に離間することができる(図3参照)。セラミックシェル320sの高さは、数桁分変動することができ、以下でさらに論議されるように、シェルを形成するためにテンプレートとして使用される粒子のサイズに依存する。
【0013】
図3Bは、図3Aで概略的に図示されるような構造のSEMである。図3Cは、単一の隆起セラミックシェルのSEMである。それは壊されており、中空であることを明示する。サンプルによる表面粗度の違いは、下位基材の粗度、ならびに処理変動を含む、いくつかのパラメータから発生する場合がある。SEMを見た時に明確ではないが、基材および球体のセラミックシェルを覆うセラミック層は、図3Aで概略的に図示されるように、1つの連続構造である。
【0014】
図3A−3Cでは、セラミックシェルは、球状である。しかしながら、以下でさらに論議されるように、セラミックシェルは、シェルを形成するために使用されるテンプレート粒子に応じて、ほぼ無限範囲の形状を帯びることができる。図3A−3Cでは、セラミックシェルの内部は、中空である。しかしながら、シェルを形成するために使用されるテンプレート粒子、および処理中にテンプレート粒子が完全または部分的に除去されるか否かに応じて、セラミックシェルの内部は、数ある材料の中でも特に、金属、ポリマー、セラミック、およびこれらの組み合わせ(混成物)を含む、ほぼ無限の一連の物質で部分的または完全に充填することができる。1つの具体例として、セラミックシェルは、数ある可能性の中でも特に、カーボンナノチューブ(例えば、機械的補強等を提供する)を備えてもよい。
【0015】
被覆されている基材が採用される処理条件に適合する限り、本発明は、セラミック被覆が有用である、事実上任意の部品に適用可能である。被覆部品は、シェル構造を伴って、または伴わずに提供される、セラミック被覆を伴う部品を含み、シェル構造が提供される場合、そのシェル構造は、中空であるか、または補強粒子(例えば、カーボンナノチューブ等)を含有してもよい。そのような被覆は、とりわけ、耐食性、耐摩耗性、光学的性質、抗ウイルスおよび抗菌性質(例えば、アナターゼTiOx被覆等)、および光活性挙動を含む、種々の理由で提供されてもよい。部品の例は、数ある部品の中でも、セラミック層で被覆されてもよい車の完全な枠組みを含む自動車の構成要素、ガス、油、他の侵攻性化学媒体用の輸送パイプの内側、光触媒および光起電部品(例えば、ポリマー基材上でアナターゼ被覆等の光活性セラミック被覆を形成することによる)、航空宇宙用部品(例えば、飛行機、スペースシャトル、ロケット等の外部パネル)、金属銃器の構成要素、窓(例えば、本発明にしたがって形成されるナノメートルの厚さの被覆は、反射被覆の役割を果たしてもよい)、ドアノブおよびドアハンドル、電話、床タイル、ビニル壁紙、プラスチック紙幣(例えば、オーストラリアなどのいくつかの国で使用されているもの等)、硬貨、公共の場で見られる家具を含む家具、座席(例えば、車、電車、およびバスの中)、階段の手すりおよびエスカレータのゴムのハンドベルトを含む、手すり、ポリマーを用いた子供の玩具(学校、託児所等で使用されるものを含む)、およびATM機のキーパッドを含む。
【0016】
ある実施形態では、被覆部品は、医療用部品である。医療用部品は、無傷の皮膚および傷ついた皮膚(創傷を含む)への治療薬の送達のためのパッチ等の身体への外部塗布のための部品、および埋込型または挿入型デバイス、例えば、ステント(冠血管ステント、末梢血管ステント、脳、尿道、尿管、胆管、気管、胃腸、および食道ステント)、ステント被膜、ステントグラフト、血管移植片、腹部大動脈瘤(AAA)デバイス(例えば、AAAステント、AAAグラフト)、血管アクセスポート、透析ポート、カテーテル(例えば、泌尿器カテーテル、またはバルーンカテーテルおよび種々の中心静脈カテーテル等の血管カテーテル)、ガイドワイヤ、バルーン、フィルタ(例えば、大静脈フィルタおよび蒸留保護デバイス用のメッシュフィルタ)、脳動脈瘤充填コイル(Guglilmi着脱式コイルおよび金属コイルを含む)を含む塞栓デバイス、中隔欠損閉鎖デバイス、デバイスの遠位にある動脈の部分の治療のために、動脈中に配置するために適合される持続性薬剤、心筋プラグ、パッチ、ペースメーカー、ペースメーカーリード、除細動リード、およびコイルを含むリード、左心室補助心臓およびポンプを含む心室補助デバイス、完全人工心臓、シャント、心臓弁および血管弁を含む弁、吻合クリップおよびリング、蝸牛インプラント、組織増量デバイス、生体内組織再生における軟骨、骨、皮膚、およびその他のための組織工学的足場、縫合糸、縫合固着器、手術部位における組織ステープルおよび結紮クリップ、カニューレ、金属ワイヤ結紮、尿道スリング、ヘルニア用「メッシュ」、人工靱帯、骨移植片、骨プレート、フィン、および融合デバイス等の整形外科用人工装具、人工関節、足首、膝、および手領域における干渉ネジ、靱帯付着部および半月板修復用の鋲、骨折固定用の棒およびピン、頭蓋顎顔面修復用のネジおよびプレート等の整形外科用固定デバイス、歯科インプラント、または身体に埋め込まれるか、または挿入される他のデバイスを含む。
【0017】
本発明のデバイスは、例えば、全身治療に使用される埋込型および挿入型医療デバイス、ならびに被検体の任意の組織または臓器の局所治療に使用されるデバイスを含む。非限定的な例は、腫瘍、ならびに心臓、冠血管および末梢血管系(総合的に「血管系」と呼ばれる)、腎臓、膀胱、尿道、尿管、前立腺、膣、子宮、および卵巣を含む泌尿生殖器系、目、耳、脊椎、神経系、肺、気管、食道、腸、胃、脳、肝臓、および膵臓を含む臓器、骨格筋、平滑筋、乳房、皮膚組織、軟骨、歯、および骨である。本明細書で使用される、「治療」とは、疾患または症状の予防、疾患または症状と関連する兆候の軽減または排除、あるいは、疾患または症状の実質的または完全な排除を指す。「被検体」は、脊椎動物の被検体、例えば、ヒト、家畜、およびペットを含む。
【0018】
本発明の医療デバイスは、とりわけ、心臓、動脈(例えば、冠状動脈、大腿動脈、大動脈、腸骨動脈、頸動脈、および椎骨脳底動脈)、および静脈等の心臓血管系の管腔、尿道(尿道前立腺部を含む)、膀胱、尿道、膣、子宮、精管、および卵管等の泌尿生殖器系の管腔、鼻涙管、耳管、気管、気管支、鼻道、および副鼻腔等の呼吸管の管腔、食道、胃、十二指腸、小腸、大腸、直腸、胆管、および膵管系等の胃腸管の管腔、リンパ系の管腔、および主要な体腔(腹腔、胸腔、心嚢)を含む、そのいくつかが上記に記載されている、幅広い身体管腔の中へ、および/またはそれらを通して挿入するための、種々の埋込型および挿入型医療デバイスを含む。
【0019】
本発明によるセラミック被覆が提供され得る、医療デバイス基材は、例えば、医療デバイス全体(例えば、金属ステント)に、または医療デバイスの一部分のみ(例えば、医療デバイスの構成要素、医療デバイスまたはデバイス構成要素に接着される材料等に対応する)に対応してもよい。
【0020】
ここで、本発明を図示する目的で、血管ステントと併せて本発明のいくつかの例示的実施形態を説明する。しかしながら、本発明は、上記のような、ステント、または医療用部品にさえも決して限定されない。
【0021】
背景として、Boston Scientific Corp.から市販されているもの(TAXUSおよびPROMUS)、Johnson & Johnsonから市販されているもの(CYPHER)およびその他のような、冠状動脈ステントが、例えば、バルーン血管形成術後に、血管の開通性を維持するための使用のために、頻繁に所用される。これらの製品は、血管の再狭窄を予防するために、制御された速度および総投与量で抗増殖治療薬を放出する、生体安定性ポリマー被覆を伴う金属バルーン拡張型ステントに基づく。1つのそのようなデバイスを、例えば、図1Aおよび1Bで概略的に図示する。図1Aは、いくつかの相互接続支柱101を含有するステント100の概略斜視図である。図1Bは、図1Aのステント100の支柱101の線b−bに沿って得られた断面図であり、ステンレス鋼支柱基材110と、ステント支柱基材110全体を被包化し、その管腔側表面110l(血液側)、反管腔側表面110a(血管側)、および側面110sを覆う、治療薬含有ポリマー被覆120とを示す。
【0022】
再狭窄に対抗するための抗増殖剤を放出することが可能であるポリマー被覆を伴う、そのようなステントの反管腔側表面を提供することが望ましいが、そのような薬剤は、ステントの管腔側表面上で同等に望まれなくてもよい。ポリマー被覆がステントの反管腔側表面のみに塗布された場合、単にステント支柱を包囲するという事実により、もはやポリマー被覆がステントに固定されなくなるため、ステント表面とポリマー被覆との間の良好な接着が所望される。十分な接着がないと、例えば、ステントの送達中に、ステントからの被覆の剥離が発生する場合がある。
【0023】
さらに、ステント表面とポリマー被覆との間の良好な接着があっても、軟質ポリマー被覆の場合、その送達管からのステントの摺動除去と関連する高い剪断力の結果として、それでもなお、被覆が自己拡張式ステントの表面から擦り落とされる場合がある。
【0024】
一方で、ステントの管腔側表面上に所望されるものは、機能的内皮細胞層の急速な形成を促進する表面であり、それは、血管系の中の異物の埋込と併せて発生し得る炎症、および血栓症を軽減または排除する目的で、効果的であることが知られている。例えば、J.M.Caves et al.,J.Vase.Surg.(2006)44:1363−8を参照されたい。
【0025】
とりわけ、上記の目標のうちの1つ以上は、上述のように、いくつかの実施形態では、セラミック層によって接続される隆起セラミックシェル(中空であるか、または、種々の固体材料で部分的または完全に充填されてもよい)を含む、本発明によるセラミック被覆を使用して達成され得る。
【0026】
例えば、ここで、ステント支柱201の概略断面図である、図2Aを参照すると、本発明によるセラミック被覆220は、ステント支柱基材210の管腔側表面210l、反管腔側表面210a、および側面210sを覆って提供される。薬剤溶出ポリマー層230は、セラミック被覆220上に提供されるが、ステント支柱基材210の反管腔側表面210aのみを覆って(管腔側表面210lおよび側面210sを覆わない)提供される。別の例として、かつ図2Bを参照すると、本発明によるセラミック被覆220は、再度、ステント支柱基材210の管腔側表面210l、反管腔側表面210a、および側面210sを覆って提供され、薬剤溶出ポリマー層230は、管腔側表面210lを覆わずに、ステント支柱基材210の反管腔側表面210aおよび側面210sを覆って提供される。いずれか一方の実施形態では、ポリマー被覆230で使用されるポリマーが生体崩壊性である場合、生物学的に不活性または生体活性である種々の材料(例えば、チタン酸化物、ジルコニウム酸化物、イリジウム酸化物等)から選択され得る、セラミック被覆を有して、最終的に生体内に残されることに留意されたい。
【0027】
上記の目標に対応することに関して、本発明によるセラミック被覆220、特に、セラミック構造が複数のセラミックシェルを備える実施形態は、例えば、ポリマー被覆230と下位セラミック被覆220との間の界面表面積を(すなわち、セラミック構造220がない場合に、そうでなければポリマー被覆230と基材210との間に存在し得る界面表面積に対して)増加させることによって、ポリマー被覆接着を促進する。加えて、本発明によるセラミック被覆は、多かれ少なかれ、隣接するポリマー被覆230と相互繋止する。
【0028】
このことは、本発明によるセラミック被覆420がその上に配置されている、基材410(例えば、無数の可能性の中でも、ステント支柱)の概略図である、図4Aを参照するとより良く理解することができる。被覆420は、基材410と共形であるセラミック層420cによって接続される、隆起セラミックシェル420sを含む。前述のように、隆起セラミックシェル420sおよびセラミック層420cは、単一のセラミック構造を構成する。セラミック被覆420を覆って配置された、ポリマー被覆430が示されている。セラミックシェル420sの下の切り込みにより、ポリマー被覆430は、セラミック被覆420とある程度は相互繋止する。図7Hおよび図8C(以下でさらに論議される)を見て分かるように、本発明のセラミック被覆とそれらの上に横たわるポリマー層との間で、さらに多大な相互繋止を生成することが可能である、より複雑なセラミック被覆を形成することができる。
【0029】
(例えば、剪断力、摩滅等に対して)ポリマー被覆を保護する、本発明のセラミック被覆の能力に関して、基材420と共形であるセラミック層420cによって接続される、隆起セラミックシェル420sを含む、本発明によるセラミック被覆420がその上に配置されている、図4Aと同様に基材410の概略図である図4Bを参照すると、1つのそのような実施形態を見ることができる。セラミック被覆420を覆って配置された、ポリマー被覆430が示されている。しかしながら、図4Aと違って、ポリマー被覆430は、隆起セラミックシェル420sの高さを実質的に越えて延在しない。その結果として、セラミックシェル420sは、ポリマー被覆430が、例えば、摩耗、剪断力等の結果として擦り落とされることから保護することが可能である。
【0030】
図4Bのようなポリマー被覆430を生成するためのプロセスの一例を図4Cで概略的に図示する。粘性ポリマー溶液430vでセラミック被覆420c、420sを覆った後、構造の上でブレードを走らせる(3枚刃のかみそりと類似した方式で配設された、3つのブレード450が図4Cに図示されている)。セラミックシェル420sは、ブレード450がセラミック層420cに接近することができる程度を制限するように作用する。その結果、セラミックシェル420sと本質的に同じ高さのポリマー層が生成される。粘性ポリマー溶液430vが、その中に含有される溶媒の蒸発時に体積を失うため、所望に応じて、プロセスを繰り返して、最終ポリマー層の厚さを増加させてもよい。当然ながら、ポリマー溶解および硬化性ポリマー組成物を含む、他の液体ポリマー組成物をポリマー被覆プロセスで採用することができる。
【0031】
したがって、ステントと併せて採用される場合、図4Bに示されたもののようなセラミック被覆は、ステントの機械的品質に影響を及ぼすことなく、軟質ポリマー被覆が機械的な力に対して保護されることを可能にする。後者の利点に関して、機械的な力からポリマー被覆を保護するための別の選択肢は、ポリマー被覆を遮蔽する、ステント表面内にくぼみを形成することであろう。しかしながら、これらのくぼみ内に搭載することができるポリマー被覆(したがって治療薬)の量は、除去される材料の量に限定され、材料の著しい除去が潜在的にステントを弱体化させる。
【0032】
図4Bに示されたもののようなセラミック被覆の別の利点は、被覆が、任意の治療薬含有ポリマー層の高さおよび全体積に対する、したがって治療薬含有量に対する良好な制御を可能にすることである。より具体的には、被覆の高さは、球状シェルの高さに依存し、これは、2.0%より良好なサイズ偏差で得ることができる、元のテンプレート粒子(例えば、ポリスチレン球)のサイズによって画定される。球体によって取り込まれる体積を考慮に入れなければならない。しかしながら、このことは、図3Bを見て分かるように、表面上に均一に分散される球状シェルの直径および平均密度を考慮に入れることによって行うことができる。
【0033】
機能的内皮細胞層の急速な形成を促進するステント表面を提供する目標に関して、本発明のセラミック被覆は、以下で論議されるように、細胞付着性および/または細胞増殖を促進すると広く報告されている、ミクロン規模および/またはナノメートル規模の特徴を伴って容易に形成される。この点で、セラミック被覆は、多種多様な形状およびサイズを有する形態学的な特徴を伴って生成することができる。表面特徴は、概して、100ミクロン(μm)未満、例えば、100ミクロン以上から50ミクロン、25ミクロン、10ミクロン、5ミクロン、2ミクロン、1ミクロン、500nm、250nm、100nm、50nm、25nm以下に及ぶ、幅を有する。以下で論議されるように、表面特徴の形状およびサイズは、セラミックシェルの生成のためのテンプレートとして使用される粒子によって決定される。
【0034】
上述のように、表面上の細胞付着性および細胞成長(増殖)は両方とも、表面上で見出される紋様付けの影響を受けることが報告されている。例えば、文献は、紋様付き表面上で培養された内皮細胞がより速く広がり、むしろ自然動脈中の細胞のように見えることを示している。R.G.Flemming et al.,Biomaterials 20(1999)573−588を参照されたい。紋様付き表面が安定化した偽内膜新生を促進することが報告されている。この点で、N.Fujisawa et al.,Biomaterials 20(1999)955−962は、ヒツジの頸動脈に埋め込むと、平滑基礎面上の規則的に離間した突出極細繊維(繊維の基部における長さ、ピッチ、および直径は、それぞれ、250、100、および25μmであった)から成る、紋様付きポリウレタン表面が、安定化した血栓基部の形成を促進し、その上で後続の細胞移動および組織治癒が、平滑表面上よりも急速に生じたことを見出した。他は、表面上で輪郭明瞭なマイクロ紋様付きパターンを生成することによって、表面における流体の流れが改変されて低剪断応力の離散領域を生成し、内皮細胞等の細胞の保護区域としての機能を果たし、それらの保持を促進し得ることに注目している。S.C.Daxini et al.“Micropatterned polymer surfaces improve retention of endothelial Cells exposed to flow−induced shear stress,”Biorheology 2006 43(1)45−55を参照されたい。
【0035】
100nm未満の範囲での紋様付けが、細胞付着性および/または増殖を増加させることが観察されている。例えば、平滑筋細胞および内皮細胞が、ナノパターン化表面上の細胞接着および増殖を向上させたことを報告した、E.K.F Yim et al.による総説、“Significance of synthetic nanostructures in dictating cellular response,”Nanomedicine:Nanotechnology,Biology,and Medicine 1(2005)10−21を参照されたい。両方の種類の細胞が、ナノ形態に敏感であった。理論に縛られることは望まないが、100nm未満の特徴のサイズは、フィブロネクチン、ラミニン、および/またはビトロネクチン等のタンパク質のナノ紋様付き表面への接着を可能にし、内皮細胞結合を強化するRGDおよびYGSIR等のアミノ酸配列をより良好に暴露する、これらのタンパク質の立体構造を提供すると考えられる。例えば、Standard handbook of biomedical engineering and design,Myer Kutz,Ed.,2003 ISBN 0−07−135637−1,p.16.13を参照されたい。また、ナノ紋様付けは、細胞接着を増加させると考えられる、表面エネルギ−を増加させる。例えば、J.Y.Lim et al.,J.Biomed.Mater.Res.(2004)68A(3):504−512を参照されたい。この点で、100nm未満の範囲の細孔、繊維、および隆起を含む、サブミクロン形態が、大動脈弁内非細胞の基底膜について、ならびに他の基底膜材料について観察されている。R.G.Flemming et al.,Biomaterials 20(1999)573−588,S.Brody et al.,Tissue Eng.2006 Feb;12(2):413−421、およびS.L.Goodman et al.,Biomaterials 1996;17:2087−95を参照されたい。Goodmanらは、露出および膨張した血管の内皮下細胞外基質表面の形態学的な特徴を複製するために、ポリマー鋳造を採用し、そのような材料の上で成長した内皮細胞が、紋様のない表面上で成長した細胞よりもより速く広がり、自然動脈中の細胞のように見えることを見出した。
【0036】
ここで、図3A−3Cに示されたもののような構造を生成するために使用されてもよいプロセスの一例を説明する。このプロセスは、層ごとの処理およびゾル・ゲル処理の組み合わせに基づく。層ごと/ゾル・ゲル処理についての情報は、例えば、“Colloids and Colloid Assemblies,”Wiley−VCH,edited by Frank Caruso, ISBN 3−527−30660−9,pp.266−269、D.Wang and F.Caruso,“Polyelectrolyte−Coated Colloid Spheres as Templates for Sol−Gel Reactions,”Chem.Mater.2002,14,1909−1913、D.Wang et al.,“Synthesis of Macroporous Titania and Inorganic Composite Materials from Coated Colloidal Spheres A Novel Route to Tune Pore Morphology,”Chem.Mater.2001,13,364−371、およびCarusoに対するWO02/074431に、見出すことができる。
【0037】
背景として、一般的に層ごと(LBL)の方法と呼ばれる、帯電物質の静電自己集合に基づいて、多層被覆を基材上で形成できることが周知である。LBL方法では、第1の表面電荷を有する第1の層が、通常、下位基材(本発明では、医療デバイス基材またはその一部分)上に堆積され、その後に、第1の層の表面電荷とは符号が反対である第2の表面電荷を有する第2の層等が続く。外層上の電荷は、各逐次層の堆積時に逆転される。一般的に、多層構造の所望の厚さに応じて、5から10、25、50、100、200、またはそれ以上の層が、この技法で塗布される。LBL技法は、一般的に、複数の荷電群を有するポリマーである、「高分子電解質」として知られる荷電種を採用する。通常は、荷電群の数が非常に多いため、ポリマーは、イオン的に解離した形態(ポリイオンとも呼ばれる)である時に極性溶媒(水を含む)中で可溶性である。荷電群の種類に応じて、高分子電解質は、ポリカチオン(概して、そのポリ酸およびポリ塩に由来する)またはポリアニオン(概して、そのポリ塩基およびポリ塩に由来する)として分類されてもよい。ポリアニオン/ポリ酸の具体例は、とりわけ、ポリ(スチレンスルホン酸)(PSS)(例えば、ポリ(スチレンスルホン酸ナトリウム))、ポリアクリル酸、ポリビニル硫酸、ポリビニルスルホン酸、アルギン酸ナトリウム、ユードラギット、ゼラチン、ヒアルロン酸、カラギーナン、コンドロイチン硫酸、およびカルボキシメチルセルロースを含む。ポリカチオン/ポリ塩基の具体例は、とりわけ、硫酸プロタミン、ポリ(アリルアミン)(例えば、ポリ(アリルアミン塩酸塩)(PAH))、ポリジアリルジメチルアンモニウム種、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリビニルアミン、ポリビニルピリジン、キトサン、ゼラチン、スペルミジン、およびアルブミンを含む。LBLプロセスに関するさらなる情報については、例えば、Weberらに対する米国特許出願公開第2005/0208100号、およびChenらに対する国際出願第2005/115496号を参照されたい。
【0038】
セラミック領域は、ゾル・ゲル処理技法を使用して形成されてもよいことも周知である。通常のゾル・ゲルプロセスでは、通常は、無機金属および半金属塩、金属および半金属錯体/キレート、金属および半金属水酸化物、ならびに、金属アルコキシドおよびアルコキシラン等の有機金属および有機半金属化合物から選択される、前駆体物質が、セラミック材料の形成において加水分解および縮合反応を受ける。一般に、半金属の精選したアルコキシド(例えば、メトキシド、エトキシド、イソプロポキシド、tert−ブトキシド等)または精選した金属(例えば、シリコン、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、スズ、鉄、ハフニウム、タンタル、モリブデン、タングステン、レニウム、イリジウム等)が、例えば、適切な溶媒中で、例えば、1つ以上のアルコール中で溶解される。後に、水、または、酸性あるいは塩基性水溶液(その水溶液は、アルコール等の無機溶媒種をさらに含有することができる)等の別の水溶液が添加され、加水分解および縮合を発生させる。ゾル・ゲル反応は、基本的に、G.Kickelbick,Prog.Polym.Sci,28(2003)83−114による、以下の単純化スキームで例証されるような、セラミックネットワーク形成プロセスであると理解される。
【0039】
【化1】
【0040】
【化2】
式中、セラミック相内の金属/半金属原子(概してMと指定される)は、M−O−M結合等の共有結合を介して、相互に結合されると示されているが、例えば、ネットワーク内の残留M−OH基等のヒドロキシル基の存在による水素結合を含む、他の相互作用も一般的に存在する。正確な機構にかかわらず、いわゆる「ゾル」(すなわち、液体内の固形粒子の懸濁)のさらなる処理は、個体材料が種々の異なる形態で作製されることを可能にする。例えば、湿潤「ゲル」被覆は、スプレーコーティング、塗布器による(例えば、ローラまたはブラシによる)被覆、インクジェット印刷、スクリーン印刷等によって生成することができる。次いで、湿潤ゲルは、セラミック領域を形成するように乾燥させられる。ゾル・ゲル材料についてのさらなる情報は、例えば、G.Kickelbick supra and Viitala R.et al,“Surface properties of in vitro bioactive and non−bioactive sol−gel derived materials,”Biomaterials,2002 Aug;23(15):3073−86、およびHelmusらに対する米国特許出願公開第2006/0129215号の複数部分で見出すことができる。
【0041】
ここで図5A−5Fを参照して、本発明による構造の形成のためのプロセスを説明する。
【0042】
第1のステップでは、LBLプロセスを使用して、高分子電解質多層(PML)被覆512が基材510上に形成される。この点で、ある基材は、本質的に帯電しており、したがって、層ごとの組立技法に容易に役立つ。基材が固有の正味表面電荷を持たない程度に、それでもなお表面電荷が提供されてもよい。例えば、被覆される基材が伝導性である場合、表面電荷は、同基材に電位を印加することによって提供されてもよい。別の例として、金属およびポリマー基材を含む基材は、とりわけ、アミノ基、リン酸基、硫酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、およびカルボン酸基等の荷電群をそれらに提供するよう表面を修飾する還元剤および酸化剤(例えば、三酸化硫黄)を含む、種々の試薬で化学処理を施されてもよい。表面電荷を提供するための他の技法は、それにより表面領域が反応性プラズマで処理される技法を含む。表面修飾は、部分的にイオン化されたガスに(すなわち、プラズマに)表面を暴露させることによって得られる。プラズマ相が幅広い反応種(電子、イオン等)から成るため、これらの技法は、とりわけ、ポリマー表面を含む表面の官能化に広く使用されている。例は、グロー放電技法(減圧において行われる)およびコロナ放電技法(大気圧において行われる)を含み、グロー放電プロセス中に、処理される物体の形状はあまり重要でないため、場合によっては前者が好ましい。レーザビームの付近(例えば、ビームの焦点の真上)で局所プラズマを生成するために、レーザが使用されてもよい。一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)、または酸素(O2)のようなガスが使用される時は、−COOH基(陽子を提供して陰性基を形成する)による官能化が一般的に観察される。アンモニア、プロピルアミン、またはN2/H2のようなガスが採用される時は、−NH2基(陽子を受け取って陽性基を形成する)が一般的に形成される。また、官能基を含有する「モノマー」が採用されるプラズマ重合プロセスを使用して、官能基含有表面が得られてもよい。この目的で、アリルアミン(−NH2基を生成する)およびアクリル酸(−COOH基を生成する)が使用されている。不飽和モノマーと組み合わせて第2の供給ガス(概して、非重合性ガス)を使用することによって、この第2の種をプラズマ堆積層に組み込むことが可能である。ガス対の例は、アリルアミン/NH3(−NH2基の強化された生成につながる)およびアクリル酸/CO2(−COOH基の強化された生成につながる)を含む。プラズマ処理についてのさらなる情報は、例えば、“Functionalization of Polymer Surfaces,”Europlasma Technical Paper,05/08/04、および米国特許出願公開第2003/0236323号に見出されてもよい。別の例として、上記で説明されるもの等のプラズマを用いた技法は、基材表面を官能化するために最初に使用されてもよく、その後に、例えば、堆積を最小限化するために不活性雰囲気または真空中で、レーザビームに表面を暴露させることによって、表面における官能基の一部分の除去が続く。さらに別の例として、当技術分野で周知の方法を使用して、正電荷(例えば、アミン基、イミン基、または他の塩基)または負電荷(例えば、カルボン酸基、ホスホン酸基、リン酸基、硫酸基、スルホン酸基、または他の酸基)とともに官能基を有する種と共有結合することによって、基材に電荷を提供することができる。共有結合についてのさらなる情報は、例えば、米国特許出願公開第2005/0002865号に見出されてもよい。多くの実施形態では、単に、第1の荷電層として基材の表面にポリカチオンまたはポリアニオンを吸着することによって、表面電荷が基材上に提供される。PEIは、種々の基材への接着を強力に促進するため、この目的で一般的に使用されている。さらなる情報は、Atanasoskaらに対する米国特許出願第11/322,905号に見出すことができる。
【0043】
所与の基材に表面電荷が提供される方法にかかわらず、いったん十分な表面電荷が提供されると、逆帯電した材料の層によって基材を容易に被覆することができる。そのような層の例は、(a)高分子電解質、(b)荷電粒子、または(c)高分子電解質および荷電粒子の両方を含有する層を含む。多層領域は、逆帯電した材料を含有する溶液への暴露を交互に行うことによって形成される。層は、静電気による層ごとの堆積によって自己集合し、したがって、基材を覆う多層領域を形成する。
【0044】
高分子電解質溶液(および粒子含有溶液)は、種々の技法によって塗布されてもよい。これらの技法は、例えば、とりわけ、浸漬技法等の完全浸没技法、スプレー技法、ロールおよびブラシ被覆技法、空中懸垂等の機械的懸垂を介した被覆を伴う技法、インクジェット技法、スピンコーティング技法、ウェブ被覆技法、およびこれらのプロセスの組み合わせを含む。また、例えば、S.Kidambi et al.,“Selective Depositions on Polyelectrolyte Multilayers:Self−Assembled Monolayers of m−dPEG Acid as Molecular Templates,”J.Am.Chem.Soc.126,4697−4703,2004、およびPark et al.,“Multilayer Transfer Printing for Polyelectrolyte Multilayer Patterning: Direct Transfer of Layer−by−Layer Assembled Micropatterned Thin Films,Adv.Mater.,”2004,16(6),520−525で説明されるような、スタンピングが採用されてもよい。
【0045】
技法の選択は、目下の要件に依存する。例えば、視界から隠されている表面(例えば、スプレー技法等の視線技法によって到達することができない表面)を含む、基材全体に種を塗布することが所望される場合に、堆積または完全浸没技法が採用されてもよい。一方で、例えば、基材のある部分のみに種を塗布する(例えば、基材の1つの側面上、基材上のパターンの形で、等)ことが所望される場合に、スプレー、ロール被覆、ブラシ被覆、インクジェット印刷、およびマイクロポリマースタンピングが採用されてもよい。
【0046】
ここで図5Aを参照すると、例えば、反対の電荷の連続高分子電解質領域に浸漬することによって、基材510には、示されるようなPML被覆512が提供される。このプロセスの終了時の多層高分子電解質被覆512の表面電荷は、基材が暴露された最後の溶液がポリカチオン溶液であったか、またはポリアニオン溶液であったかによって決定される。いくつかの実施形態では、この時点で、以下で論議されるように、ゾル・ゲル型プロセスが高分子電解質層内で実行される。
【0047】
図5B−5Cで図示されたもの等の他の実施形態では、最適な粒子が表面に吸着される。通常は、例えば、上記で説明される技法のうちの1つを使用して、本来的に帯電しているか、または帯電させられる、荷電粒子が使用される。例えば、粒子は、負荷電粒子を生成するように、PEIの溶液に暴露されてもよい。所望であれば、粒子上の電荷は、反対の電荷の高分子電解質を含有する溶液に暴露させることによって逆転させることができる。いくつかの実施形態では、粒子の溶液が採用されてもよく、その場合、粒子には、高分子電解質多層被覆が提供される。上記のもの等の技法(例えば、浸漬等)を使用して、基材が、例えば、荷電粒子の懸濁液に暴露されてもよい。このステップの結果を、医療デバイス基材510、PML被覆512、および荷電粒子515を概略的に示す、図5Bに図示する。次いで、図5Bの構造は、PML被覆512に荷電粒子515を封入するように、交互電荷の高分子電解質溶液にさらに浸没される。このプロセスはまた、基材510に以前に塗布された高分子電解質被覆の厚さを増加させる。このプロセスの結果を図5Cに図示する。
【0048】
いくつかの実施形態では、PML被覆512の1つ以上の層を形成するために、荷電治療薬が使用される。「荷電治療薬」とは、関連電荷を有する治療薬を意味する。例えば、治療薬は、本来的に帯電しているため(例えば、酸性基および/または塩の形態であってもよい塩基性基を有するため)、関連電荷を有してもよい。治療薬は、それに1つ以上の荷電官能基を提供するように化学修飾されているため、関連電荷を有してもよい。
【0049】
例えば、薬剤を可溶化するために(および場合によっては、腫瘍標的性を向上させ、薬物毒性を低減するために)、パクリタキセル等の抗腫瘍薬を含む、非水溶性または難水溶性薬剤の親水性ポリマーへの結合が、近年では実行されている。同様に、カチオンまたはアニオン性の非水溶性または難水溶性薬剤も開発されている。具体例としてパクリタキセルを挙げると、パクリタキセルN−メチルピリジニウムメシラート、およびN−2−ヒドロキシプロピルメチルアミドと共役したパクリタキセルを含む、この薬剤の種々のカチオン形態が知られており、パクリタキセル−ポリ(l−グルタミン酸)、パクリタキセル−ポリ(l−グルタミン酸)−PEOを含む、パクリタキセルの種々のアニオン形態も知られている。例えば、米国特許第6,730,699号、Duncan et al.,Journal of Controlled Release,74(2001)135、Duncan,Nature Reviews/Drug Discovery,Vol.2,May 2003,347、J.G.Qasem et al.,AAPS PharmSciTech 2003,4(2) Article 21を参照されたい。これらに加えて、米国特許第6,730,699号はまた、ポリ(d−グルタミン酸)、ポリ(dl−グルタミン酸)、ポリ(l−アスパラギン酸)、ポリ(d−アスパラギン酸)、ポリ(dl−アスパラギン酸)、ポリ(l−リジン)、ポリ(d−リジン)、ポリ(dl−リジン)、ポリエチレングリコールを伴う上記で記載されたポリアミノ酸の共重合体(例えば、パクリタキセル−ポリ(l−グルタミン酸)−PEO)、ならびに、ポリ(2−ヒドロキシエチルl−グルタミン)、キトサン、カルボキシメチルデキストラン、ヒアルロン酸、ヒト血清アルブミン、およびアルギン酸を含む、種々の他の荷電ポリマー(例えば、高分子電解質)と共役したパクリタキセルも説明している。パクリタキセルのなおも他の形態は、l’−マリルパクリタキセルナトリウム塩等のカルボキシル化された形態を含む(例えば、E.W.DAmen et al.,“Paclitaxel esters of malic acid as prodrugs with improved water solubility,”Bioorg.Med.Chem.,2000 Feb,8(2),pp.427−32を参照)。パクリタキセルが、第2’位置におけるヒドロキシル基を通して、ポリ−L−グルタミン酸(PGA)のΔカルボン酸に結合される、ポリグルタミン酸パクリタキセルが、Cell Therapeutics,Inc.(Seattle,WA,USA)によって生成されている(第7位置ヒドロキシル基もエステル化に利用可能である。)この分子は、ジグルタミルパクリタキセルを遊離させるように、カテプシンBによって生体内で開裂されるといわれている。この分子では、パクリタキセルは、ポリマーの骨格に沿ってカルボキシル基のうちのいくつかに結合され、1分子につき複数のパクリタキセル単位をもたらす。さらなる情報については、例えば、R.Duncan et al.,“Polymer−drug conjugates,PDEPT and PELT:basic principles for design and transfer from the laboratory to clinic,”Journal of Controlled Release 74(2001)135−146、C.Li,“Poly(L−glutamic acid)−anticancer drug conjugates,”Advanced Drug Delivery Reviews 54(2002)695−713、Duncan,Nature Reviews/Drug Discovery,Vol.2,May 2003,347、Qasem et al.,AAPS PharmSciTech 2003,4(2) Article 21、および米国特許第5,614,549号を参照されたい。
【0050】
上記および他の方法を使用して、パクリタキセルおよび無数の他の治療薬は、荷電ポリマー分子(例えば、高分子電解質)を含む、種々の荷電種と共有結合されるか、または他の方法で関連付けられてもよく、それにより、PMLプロセスで組み立てることができる、荷電薬剤およびプロドラッグを形成する。そのような荷電種は、投与前または投与時に、薬剤/プロドラッグからの開裂(例えば、酵素的開裂等による)のために適合されてもよい。
【0051】
次のステップでは、ゾル・ゲル型プロセスが高分子電解質層内で実行される。例えば、図5Cの構造は、無水溶媒、例えば、無水アルコール中で洗浄されてもよい。このことは、PML被覆512内で吸着されたままである水を除いて、構造から本質的に全ての水を除去する。次いで、構造は、ゾル・ゲル前駆体溶液に浸没される。例えば、構造は、無水アルコール溶媒中、または高アルコール含有量を有する水・アルコール溶媒(すなわち、水濃度が低すぎて加水分解・縮合反応が発生しない溶媒)中の半金属または金属アルコキシドの溶液に浸没されてもよい。作用理論に縛られることは望まないが、高分子電解質基の高電荷密度は、PML被覆512に周辺ゾル・ゲル前駆体溶液よりも高い水濃度を持たせると考えられる(例えば、ゾル・ゲル前駆体溶液から水分子を引き出すこと、および/または無水溶媒中の洗浄の間に水分子を保持することによって)。PML被覆512の中へ拡散時に、ゾル・ゲル前駆体は、増加した水濃度の環境に遭遇し、その場合、加水分解および縮合が発生し得る。PML被覆512は、層内のゾル・ゲル前駆体の原位置反応により膨張する。しかしながら、膨張により電荷密度も減少し、水濃度の低減を引き起こし、それが最終的にゾル・ゲル反応を停止させる。正確な機構にかかわらず、高分子電解質/セラミックハイブリッド被覆である、結果として生じる被覆は、均一に厚く、その厚さは、高分子電解質被覆内の層の数に依存する(より多くの層がより厚い被覆をもたらす)。結果として生じる構造を、基材510、粒子515、および高分子電解質/セラミックハイブリッド被覆514を示す、図5Dに図示する。
【0052】
次に、図5Dの構造は、図5E−5Gに示されるような熱処理されたセラミック被覆520を形成するように、例えば、約150℃から約600℃以上の間に及ぶ温度まで、加熱されてもよい。範囲の高い方で、セラミック被覆520は、高い割合のセラミック種(例えば、90重量%以上のセラミック種、例えば、95重量%から98重量%、99重量%、99.5重量%、99.9重量%、またはそれ以上を含有する)を有し、被覆の高分子電解質成分の実質的に全てが、焼成と呼ばれることもあるプロセスで、構造から脱ガスされている。上記で示されるように、結果として生じるシェルの厚さは、概して、ゾル・ゲル処理の前に堆積された高分子電解質層の数に比例するようになる。例えば、高分子電解質層につき約1nmの厚さが、D.Wang and F. Caruso,Chem.Mater.2002,14,1909−1913で報告されている。
【0053】
上述のように、いくつかの実施形態では、金属および半金属酸化物の炭化物および窒化物は、例えば、とりわけ、高温炭素熱還元または窒化物形成プロセスを使用して、形成されてもよい。
【0054】
温度範囲の低い方で、セラミック被覆520は、セラミック種に加えて、相当量のポリマー種(高分子電解質)を含有する。しかしながら、そのような場合、熱処理は、セラミック被覆520を増強するように作用する。
【0055】
さらに他の実施形態では、セラミック被覆は、水蒸気暴露によって形成されてもよい。例えば、多孔質のチタニアを用いた(TiOxを用いた)アナターゼ被覆は、60℃〜180℃の水蒸気に、0〜50モル%のシリカを含有したゾル・ゲル由来のチタニア薄膜を暴露させることによって形成されている(H.Imai et al.,J.Am.Ceram.Soc,82(9),1999,2301−2304)。チタン酸化物被覆は、光触媒性質および光起電力効果を保有すると報告されている(同上)。エタノール中のチタンイソプロポキシドおよび過酸化水素を使用するゾル・ゲル手段を通して、非常に低い温度で調整される、ナノ結晶アナターゼ(TiO2)膜の調整を報告する、Margit J.Jensen et al.,J.Sol−Gel Sci.Techn.(2006)39:229−233も参照されたい。結晶化は、水蒸気で飽和した雰囲気中において35℃での膜蒸着後に発生した。本発明では、そのような処理は、上記で説明されるように形成されるゾル・ゲル膨張PML層と併せて採用することができる。このことにより、例えば、非常に可撓性の(被覆が非常に薄いため)ハイブリッドポリマー・セラミック被覆でポリマー基材を被覆することが可能となる(条件が基材を破壊しないため)。
【0056】
とりわけ、治療薬がPML構造に提供され(上記参照)、その治療薬がより高い温度で阻害されてもよい場合に、上記のプロセス等の低温後処理プロセスもまた、所望され得る。
【0057】
熱処理温度および雰囲気と、図5Dの粒子515を形成する材料の性質とに応じて、熱処理プロセスは、粒子形成材料の除去をもたらさずに(しかし、場合によっては、粒子の化学修飾をもたらす)、図5Eに図示されるようなセラミックシェル520sに包み込まれた粒子515を残すか、または、粒子形成材料の部分的または完全除去をもたらして、それにより、図5Fに示されるような部分的または完全中空内部517を伴うセラミックシェル520sを生成するかする。
【0058】
粒子除去はまた、熱処理とは無関係に、例えば、熱処理がない場合に、熱処理の前に、または熱処理の後(この場合、熱処理が粒子を除去しない)に、行われてもよい。例えば、粒子は、溶解プロセスを経て除去されてもよい。具体例として、ポリマー粒子は、有機溶媒を使用して除去されてもよく(例えば、テトラヒドロフランによるポリスチレン粒子の除去)、無機粒子は、酸性または塩基性水溶液を使用して除去されてもよい(例えば、HFを使用するシリカ粒子の除去)。
【0059】
いくつかの実施形態では、ハイブリッドテンプレート粒子が採用され、その場合、各粒子の一部分が除去され(例えば、熱処理、溶解等によって)、各粒子の一部分が中空セラミックシェル内に残留する。そのような粒子の一例は、1つ以上のより小さい常磁性粒子(例えば、ポリスチレン基質内の常磁性粒子、ポリスチレンシェルを伴う常磁性粒子核等)を含有する、ポリスチレン球である。そのような粒子のポリスチレン部分は、例えば、熱によって、または有機溶媒溶解によって、除去することができる。
【0060】
ここで図5Gの構造を参照すると、高分子電解質多層被覆で基材510を(図5Aで行われるように)最初に被覆することなく、荷電粒子515が基材510上で静電的に堆積されていることを除いて、この構造は、図5Eを形成するために使用されるもののようなプロセスによって形成され、結果として、図5Gの構造中の粒子515は、図5Eの粒子515よりも基材510に近接している。
【0061】
いくつかの実施形態では、本発明によるセラミック被覆は、基材の表面全体を覆って提供される。いくつかの実施形態では、本発明によるセラミック被覆は、基材の表面一部分のみ(例えば、管腔側ステント表面のみ、反管腔側ステント表面のみ、反管腔側表面およびステント側面のみ、等)を覆って提供される。基材は、例えば、基材の一部分のみに、採用される種々の溶液(高分子電解質溶液、粒子溶液、ゾル・ゲル溶液)を暴露させることによって、部分的に被覆されてもよい。そうするための技法の例は、数ある技法の中でも、マスキングの使用、部分浸漬、ロール被覆(例えば、ステント等の管状デバイスの反管腔側表面に被覆を塗布することが所望される場合)、または、ブラシ、ローラ、スタンプ、またはインクジェットプリンタ等の適切な塗布デバイスの使用を含む、他の転写被覆技法を含む。
【0062】
LBL処理の直接的な性質により、および無荷電材料が種々の技法を使用して帯電させられてもよいという事実により、多種多様な基材および粒子材料が本発明の実践に採用されてもよい。
【0063】
したがって、適切な基材材料は、(a)ポリマー材料等の有機材料(例えば、有機種であって、一般的には50重量%以上の有機種を含有する材料)、および(b)金属材料(例えば、金属および金属合金)および非金属無機材料(例えば、とりわけ、炭素、半導体、ガラス、金属および非金属酸化物、金属および非金属窒化物、金属および非金属炭化物、金属および非金属ホウ化物、金属および非金属リン酸塩、ならびに金属および非金属硫化物)等の、無機材料(例えば、無機種であって、一般的には50重量%以上の無機種を含有する材料)を含む、種々の材料から選択されてもよい。適切な基材材料は、生体安定性材料および生体崩壊性材料(すなわち、体内に配置されると、溶解され、分解され、再吸収され、および/または他の方法で配置部位から除去される材料)を含む。
【0064】
非金属無機材料の具体例は、例えば、とりわけ、アルミニウム酸化物および遷移金属酸化物(例えば、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、タンタル、モリブデン、タングステン、レニウム、およびイリジウム、ならびにセラミック種の例として上記に記載されるもの等の他の金属)の酸化物を含む金属酸化物、シリコン、ならびにシリコン窒化物、シリコン炭化物、およびシリコン酸化物(ガラスセラミックと呼ばれることもある)を含有するもの等のシリコンベースの材料、リン酸カルシウムセラミック(例えば、ヒドロキシアパタイト)、窒化炭素等の炭素または炭素ベースのセラミック状材料のうちの1つ以上を含有する、材料から選択されてもよい。
【0065】
金属無機材料の具体例は、例えば、とりわけ、実質的に純粋な生体安定性および生体崩壊性金属(例えば、金、白金、パラジウム、イリジウム、オスミウム、ロジウム、チタン、タンタル、タングステン、およびルテニウム等の生体安定性金属、ならびにマグネシウム、亜鉛、および鉄等の生体崩壊性金属)、ならびに生体安定性および生体崩壊性金属合金、例えば、鉄およびクロムを含む生体安定性金属合金(例えば、白金に富んだ放射線不透過性ステンレス鋼を含む、ステンレス鋼)、ニッケルおよびチタンを含む合金(例えば、ニチノール)、コバルト、クロム、および鉄を含む合金(例えば、エルジロイ合金)、ニッケル、コバルト、およびクロムを含む合金(例えば、MP35N)、ならびにコバルト、クロム、タングステン、およびニッケルを含む合金(例えば、L605)を含む、コバルトおよびクロムを含む合金、ニッケルおよびクロムを含む合金(例えば、インコネル合金)、ならびにマグネシウム合金、亜鉛合金、および鉄合金等の生体崩壊性金属合金(数ある元素の中でも、Ce、Ca、Zn、Zr、およびLiの相互の組み合わせを含む、Heubleinらに対する米国特許出願公開第2002/0004060号を参照)から選択されてもよい。
【0066】
有機材料の具体例は、生体安定性および生体崩壊性ポリマーを含み、それらは、例えば、とりわけ、以下から選択されてもよい。ポリアクリル酸を含む、ポリカルボン酸ポリマーおよび共重合体;アセタールポリマーおよび共重合体;アクリル酸およびメタクリル酸ポリマーおよび共重合体(例えば、メタクリル酸n−ブチル);酢酸セルロース、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、セロハン、レーヨン、三酢酸レーヨン、ならびにカルボキシメチルセルロースおよびヒドロキシアルキルセルロース等のセルロースエーテルを含む、セルロースポリマーおよび共重合体;ポリオキシメチレンポリマーおよび共重合体;ポリエーテルブロックイミド、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、ポリエーテルイミド等のポリイミドポリマーおよび共重合体;ポリアリールスルホンおよびポリエーテルスルホンを含む、ポリスルホンポリマーおよび共重合体;ナイロン6,6、ナイロン12、ポリエーテルブロックコポリアミドポリマー(例えば、Pebax(登録商標)樹脂)、ポリカプロラクタム、およびポリアクリルアミドを含む、ポリアミドポリマーおよび共重合体;アルキド樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アリル樹脂、およびエポキシド樹脂を含む樹脂;ポリカーボネート;ポリアクリロニトリル;ポリビニルピロリドン(架橋したものおよびその他);ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル等のポリハロゲン化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルメチルエーテル等のポリビニルエーテル、ポリスチレンなどのビニル芳香族ポリマーおよび共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン共重合体(例えば、Kraton(登録商標)Gシリーズポリマーとして入手可能な、ポリスチレン−ポリエチレン/ブチレン−ポリスチレン(SEBS)共重合体)、スチレン−イソプレン共重合体(例えば、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン)、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、およびスチレン−イソブチレン共重合体(例えば、SIBS等のポリイソブチレン−ポリスチレンブロック共重合体)を含む、ビニル芳香族−炭化水素共重合体、ポリビニルケトン、ポリビニルカルバゾール、ならびにポリ酢酸ビニル等のポリビニルエステルを含む、ビニルモノマーのポリマーおよび共重合体;ポリベンゾイミダゾール;イオノマー;ポリエチレンオキシド(PEO)を含む、ポリアルキルオキシドポリマーおよび共重合体;ラクチド(乳酸、ならびにd−、l−、およびメソ−ラクチドを含む)、エプシロン−カプロラクトン、グリコリド(グリコール酸を含む)、ヒドロキシ酪酸エステル、ヒドロキシ吉草酸エステル、パラジオキサノン、炭酸トリメチレン(およびそのアルキル誘導体)、1,4−ジオキセパン−2−オン、1,5−ジオキセパン−2−オン、および6,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2−オンのポリマーおよび共重合体等の、ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、および脂肪族ポリエステルを含む、ポリエステル(ポリ乳酸およびポリカプロラクトンの共重合体が一具体例である);ポリフェニレンエーテル等のポリアリールエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンを含む、ポリエーテルポリマーおよび共重合体;ポリフェニレンスルフィド;ポリイソシアナート;ポリプロピレン、ポリエチレン(低密度および高密度、低分子量および高分子量)、ポリブチレン(ポリブト−1−エンおよびポリイソブチレン等)、ポリオレフィンエラストマー(例えば、Santoprene)、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴム、ポリ−4−メチル−ペン−1−エン、エチレン−アルファ−オレフィン共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、およびエチレン−酢酸ビニル共重合体等の、ポリアルキレンを含む、ポリオレフィンポリマーおよび共重合体;ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ(テトラフルオロエチレン−コ−ヘキサフルオロプロペン共重合体)(FEP)、変性エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、およびポリフッ化ビニリデン(PVDF)を含む、フッ素化ポリマーおよび共重合体;シリコーンポリマーおよび共重合体;ポリウレタン;p−キシリレンポリマー;ポリイミノカーボネート;ポリエチレンオキシド−ポリ乳酸共重合体等のコポリ(エーテル−エステル);ポリホスファジン;シュウ酸ポリアルキレン;ポリオキサアミドおよびポリオキサエステル(アミンおよび/またはアミド基を含有するものを含む);ポリオルトエステル;フィブリン、フィブリノゲン、コラーゲン、エラスチン、キトサン、ゼラチン、デンプン、ヒアルロン酸などのグリコサミノグリカンを含む、ポリペプチド、タンパク質、多糖類、および脂肪酸(およびそれらのエステル)等のバイオポリマー;ならびに、上記のものの混合物およびさらなる共重合体。
【0067】
本発明で使用するための粒子は、組成、サイズ、および、形状(例えば、球体、多面体、円柱、管、繊維、リボン状粒子、円盤状粒子、ならびに他の整形および不整形粒子形状)が大きく異なる。
【0068】
一般に、堆積された状態の粒子を横断する距離(例えば、球体、円柱、および管については直径、円盤状、リボン状粒子、繊維、多面体、ならびに他の整形および不整形粒子形状については幅)は、100ミクロン(μm)未満であり(長さはしばしばさらに長い)、例えば、100ミクロン以上から50ミクロン、25ミクロン、10ミクロン、5ミクロン、2ミクロン、1ミクロン、500nm、250nm、100nm、50nm、25nm、またはそれ以下に及ぶ。ある実施形態では、堆積された時の粒子を横断する距離が1000nm未満であり、より通常は、100nm未満であるという意味で、粒子は、サブミクロン粒子である。
【0069】
粒子の適切な材料は、基材の材料として使用するために上記で説明される、有機および無機材料から選択することができる。これらの材料だけにとどまらない、粒子のさらなる例は、とりわけ、Microparticles(Berlin,Germany)から入手可能なもの(http://www.microparticles.de/product_palette.html)等の、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)微小球およびポリスチレン微小球を含むポリマー微小球、アルミナ粒子、酸化チタン粒子、酸化タングステン粒子、酸化タンタル粒子、酸化ジルコニウム粒子、シリカ粒子、ケイ酸ルミニウム粒子等のケイ酸塩粒子、モンモリロナイト、ヘクトライト、ヒドロタルサイト、バーミキュライト、ラポナイト等の、粘土および雲母(随意で、挿入および/または剥離されてもよい)を含む合成または天然のフィロケイ酸塩、およびアタパルジャイト等の針状粘土、ならびに、様々な官能化POSSおよび重合POSS、ポリオキソメタレート(例えば、Keggin型、Dawson型、Preyssler型等)、フラーレン(例えば、「バッキーボール」)、炭素ナノ繊維、単層カーボンナノチューブ、および多層カーボンナノチューブ(いわゆる「少数層」ナノチューブを含む)を含む、多面体オリゴマーシルセスキオキサン(POSS)等の微粒子分子をさらに含むものから、選択されてもよい。
【0070】
いくつかの実施形態では、1つ以上の治療薬が粒子内に配置される。
【0071】
上述のように、いくつかの実施形態では、ポリマー被覆(例えば、治療薬溶出被覆、潤滑被覆等)は、本発明によるセラミック被覆の全部または一部分を覆って配置されてもよい。本明細書で使用されるように、ポリマー被覆は、単一のポリマー、または、例えば、50重量%以下から75重量%、90重量%、95重量%、97.5重量%、99重量%、またはそれ以上の1つ以上のポリマーを備える、ポリマーが異なる混合物を備えるものである。ポリマーは、生体安定性または生体崩壊性であってもよい。この目的で適切なポリマーは、例えば、基材材料として使用するために上記で説明されるポリマーのうちの1つ以上から選択されてもよい。これらの材料だけにとどまらない、ポリマーのさらなる例は、とりわけ、ポリ(スチレン−コ−イソブチレン)ブロック共重合体、ポリ(メタクリル酸メチル−コ−アクリル酸ブチル)ブロック共重合体、および熱可塑性ポリウレタン等の熱可塑性エラストマー、PTFE、FEP、ETFE、およびPVDF等のフッ素重合体、架橋チオール化コンドロイチン硫酸等の架橋ヒドロゲル、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコールまたはポリビニルピロリドン、ポリ(セバシン酸)またはポリ(アジピン酸)等の脂肪族ポリ酸無水物を含む、ポリ酸無水物、ポリ(4,4’−スチルベンジカルボン酸無水物)等の不飽和ポリ酸無水物、ポリ(テレフタル酸)等の芳香族ポリ酸無水物、ポリ(脂肪族−芳香族無水物)を含む、前述の無水物との相互の共重合体、ならびにポリ(エステル無水物)およびポリ(エーテル無水物)を含む、前述の無水物の他のモノマーとの共重合体、脂肪酸ベースの無水物、終端ポリ酸無水物、分岐ポリ酸無水物、架橋ポリ酸無水物、およびアミノ酸ベースのポリ酸無水物(例えば、N.Kumar et al.,“Polyanhydrides:an overview,”Advanced Drug Delivery Reviews 54(2002)889−910を参照)、ポリ乳酸およびポリ(ラクチド−コ−グリコリド)等の生分解性ポリエステル、ならびに前述のものの混合物を含む。
【0072】
治療薬溶出ポリマー被覆の厚さは、大きく異なってもよく、通常は、厚さが25nm以下から50nm、100nm、250nm、500nm、1μm、2.5μm、5μm、10μm、25μm、50μm、100μm、またはそれ以上に及ぶ。上述のように、いくつかの実施形態では、ポリマー被覆の厚さは、表面上に存在するセラミックシェルのサイズによって決定されるが、他の実施形態ではそうではない。
【0073】
いくつかの実施形態では、ポリマー被覆は、治療薬溶出ポリマー被覆である。本明細書で使用されるような、「治療薬溶出ポリマー被覆」は、治療薬およびポリマーを含む被覆であり、例えば、被検体との接触時、または被検体への埋込あるいは挿入時に、そこから治療薬の少なくとも一部分が溶出する。治療薬溶出ポリマー被覆は、通常は、被覆内に、例えば、1重量%以下から2重量%、5重量%、10重量%、25重量%、50重量%、またはそれ以上の単一の治療薬または治療薬の混合物を含む。治療薬は、例えば、とりわけ、以下で記載されるものから選択されてもよい。
【0074】
ポリマー被覆は、任意の適切な方法を使用して塗布されてもよい。例えば、被覆が、熱可塑特性を有する1つ以上のポリマーを含有する場合、被覆は、例えば、(a)ポリマー、および所望に応じて治療薬等の任意の他の随意的な種を含有する、溶解物を提供し、(b)後に溶解物を冷却することによって、形成されてもよい。別の例では、被覆は、例えば、(a)ポリマー、硬化剤、および所望に応じて治療薬等の任意の他の随意的な種を含有する、硬化性組成物を提供し、(b)組成物を硬化することによって、硬化性組成物(例えば、紫外線硬化性組成物)から形成されてもよい。さらに別の例として、被覆は、例えば、(a)1つ以上の溶媒種、ポリマー、および所望に応じて治療薬等の任意の他の随意的な種を含有する、溶液を提供し、(b)後に溶媒種を除去することによって、形成されてもよい。溶解物、溶液、または分散は、例えば、数ある方法の中でも、ロール被覆(例えば、ステント等の管状デバイスの反管腔側表面に被覆を塗布することが所望される場合)、または、ブラシ、ローラ、スタンプ、またはインクジェット等の適切な塗布デバイスを使用する、浸漬による、およびスプレーコーティングによる塗布を含む、他の転写被覆技法によって塗布されてもよい。
【0075】
多種多様な疾患および症状の治療に使用され得る、遺伝子治療薬、非遺伝子治療薬、および細胞を含む、多種多様な治療薬が、本発明と併せて採用されてもよい。
【0076】
本発明に関連して使用するための適切な治療薬は、例えば、以下のうちの1つ以上から選択されてもよい。(a)ヘパリン、ヘパリン誘導体、ウロキナーゼ、クロピドグレル、およびPPack(デキストロフェニルアラニンプロリンアルギニンクロロメチルケトン)等の抗血栓剤、(b)デキサメタゾン、プレドニゾロン、コルチコステロン、ブデソニド、エストロゲン、スルファサラジン、およびメサラミン等の抗炎症剤、(c)パクリタキセル、5−フルオロウラシル、シスプラチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エポチロン、エンドスタチン、アンギオスタチン、アンギオペプチン、平滑筋細胞増殖を阻止することが可能なモノクローナル抗体、およびチミジンキナーゼ阻害剤等の抗腫瘍/抗増殖/抗縮瞳剤、(d)リドカイン、ブピバカイン、およびロピバカイン等の麻酔薬、(e)D−Phe−Pro−Argクロロメチルケトン、RGDペプチド含有化合物、ヘパリン、ヒルジン、抗トロンビン化合物、血小板受容体拮抗剤、抗トロンビン抗体、抗血小板受容体抗体、アスピリン、プロスタグランジン阻害剤、血小板阻害剤、およびマダニ抗血小板ペプチド等の抗凝固剤、(f)成長因子、転写活性化因子、翻訳促進因子等の血管細胞成長促進因子、(g)成長因子阻害剤、成長因子受容体拮抗剤、転写抑制因子、翻訳抑制因子、複製阻害剤、阻害抗体、成長因子に対する抗体、成長因子および細胞毒素から成る二機能性分子、抗体および細胞毒素から成る二機能性分子等の血管細胞成長阻害剤、(h)タンパク質キナーゼおよびチロシンキナーゼ阻害剤(例えば、チロホスチン、ゲニステイン、キノキサリン)、(i)プロスタサイクリン類似体、(j)コレステロール降下剤、(k)アンジオポエチン、(l)トリクロサン、セファロスポリン、マガイニン、アミノグリコシド、およびニトロフラントイン等の抗微生物ペプチド等の、抗菌剤、(m)細胞毒性剤、細胞増殖抑制剤、および細胞増殖影響因子、(n)血管拡張剤、(o)内在性血管作動性機構に干渉する薬剤、(p)モノクローナル抗体等の白血球動員の阻害剤、(q)サイトカイン、(r)ホルモン、(s)ゲルダナマイシンを含む、HSP90タンパク質(すなわち、分子シャペロンまたはハウスキーピングタンパク質であり、細胞の成長および生存に関与する他のクライアントタンパク質/シグナル形質導入タンパク質の安定性および機能のために必要とされる、ヒートショックタンパク質)の阻害剤、(t)ベータ遮断薬、(u)bARKct阻害剤、(v)ホスホランバン阻害剤、(w)Serca2遺伝子/タンパク質、(x)アミノキナゾリン、例えば、レシキモドおよびイミキモド等のイミダゾキノリンを含む、免疫反応修飾因子、(y)ヒトアポリポタンパク質(例えば、AI、AII、AIII、AIV、AV等)、(z)ラロキシフェン、ラソフォキシフェン、アルゾキシフェン、ミプロキシフェン、オスペミフェン、PKS3741、MF101、およびSR16234等の選択的エストロゲン受容体モジュレータ(SERM)、(aa)ロシグリタゾン、ピオグリタゾン、ネトグリタゾン、フェノフィブラート、ベキサロテン、メタグリダセン、リボグリタゾン、およびテサグリタザル等のPPAR作動薬、(bb)アルプロスタジルまたはONO8815Ly等のプロスタグランジンE作動薬、(cc)トロンビン受容体活性化ペプチド(TRAP)、(dd)ベナゼプリル、フォシノプリル、リシノプリル、キナプリル、ラミプリル、イミダプリル、デラプリル、モエキシプリル、およびスピラプリルを含む、バソペプチターゼ阻害剤、(ee)チモシンベータ4。
【0077】
好ましい非遺伝子治療薬は、とりわけ、パクリタキセル(その微粒子形態、例えば、アルブミン結合パクリタキセルナノ粒子(例えば、ABRAXANE)のようなタンパク質結合パクリタキセル粒子を含む)等のタキサン、シロリムス、エベロリムス、タクロリムス、ゾタロリムス、Epo D、デキサメタゾン、エストラジオール、ハロフジノン、シロスタゾール、ゲルダナマイシン、ABT−578(Abbott Laboratories)、トラピジル、リプロスチン、アクチノマイシンD、Resten−NG、Ap−17、アブシキシマブ、クロピドグレル、Ridogrel、ベータ遮断薬、bARKct阻害剤、ホスホランバン阻害剤、Serca2遺伝子/タンパク質、イミキモド、ヒトアポリポタンパク質(例えば、AI−AV)、成長因子(例えば、VEGF−2)、先述のものの誘導体を含む。
【0078】
必ずしも上記に記載されるものにとどまらない、多数の治療薬が、血管および他の治療養生法のための候補として、例えば、再狭窄を標的にする薬剤として識別されている。そのような薬剤は、本発明の実践に有用であり、適切な例は、以下のうちの1つ以上から選択されてもよい。(a)ジルチアゼムおよびクレンチアゼム等のベンゾチアザピン、ニフェジピン、アムロジピン、およびニカルダピン等のジヒドロピリジン、およびベラパミル等のフェニルアルキルアミンを含む、Caチャネル遮断薬、(b)ケタンセリンおよびナフチドロフリル等の5−HT拮抗剤、ならびにフルオキセチン等の5−HT取込阻害剤を含む、セロトニン経路調節因子、(c)シロスタゾールおよびジピリダモール等のホスホジエステラーゼ阻害剤、フォルスコリン等のアデニル酸/グアニル酸シクラーゼ刺激剤、ならびにアデノシン類似体を含む、環状ヌクレオチド経路剤、(d)プラゾシンおよびブナゾシン等のα拮抗剤、プロプラノロール等のβ拮抗剤、ならびにラベタロールおよびカルベジロール等のα/β拮抗剤を含む、カテコールアミン調節因子、(e)ボセンタン、シタキスセンタンナトリウム、アトラセンタン、エンドネンタン等のエンドセリン受容体拮抗剤、(f)ニトログリセリン、二硝酸イソソルビド、および亜硝酸アミル等の有機硝酸塩/亜硝酸塩、ニトロプルシドナトリウム等の無機ニトロソ化合物、モルシドミンおよびリンシドミン等のシドノンイミン、ジアゼニウムジオラートおよびアルカンジアミンのNO付加体等のノノエート、低分子量化合物(例えば、カプトプリル、グルタチオン、およびN−アセチルペニシラミンのS−ニトロソ誘導体)および高分子量化合物(例えば、タンパク質、ペプチド、オリゴ糖、多糖類、合成ポリマー/オリゴマー、および天然ポリマー/オリゴマーのS−ニトロソ誘導体)を含むS−ニトロソ化合物、ならびに、C−ニトロソ化合物、O−ニトロソ化合物、N−ニトロソ化合物、およびL−アルギニンを含む、酸化窒素供与体/放出分子、(g)シラザプリル、フォシノプリル、およびエナラプリル等のアンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、(h)サララシンおよびロサルチン等のATII−受容体拮抗剤、(i)アルブミンおよびポリエチレンオキシド等の血小板粘着阻害剤、(j)シロスタゾール、アスピリン、およびチエノピリジン(チクロピジン、クロピドグレル)を含む血小板凝集阻害剤、ならびにアブシキシマブ、エピチフィバチド、チロフィバン等のGPIIb/IIIa阻害剤、(k)ヘパリン、低分子量ヘパリン、硫酸デキストラン、およびβ−シクロデキストリンテトラデカ硫酸エステル等のヘパリノイド、ヒルジン、ヒルログ、PPACK(D−phe−L−プロピル−L−arg−クロロメチルケトン)、およびアルガトロバン等のトロンビン阻害剤、アンチスタチンおよびTAP(マダニ抗凝固ペプチド)等のFXa阻害剤、ワルファリン等のビタミンK阻害剤、ならびに活性化プロテインCを含む、凝固経路調節因子、(l)アスピリン、イブプロフェン、フルルビプロフェン、インドメタシン、およびスルフィンピラゾン等のシクロオキシゲナーゼ経路阻害剤、(m)デキサメタゾン、プレドニゾロン、メトプレドニゾロン、およびヒドロコルチゾン等の天然および合成コルチコステロイド、(n)ノルジヒドログアヤレチン酸およびコーヒー酸等のリポキシゲナーゼ経路阻害剤、(o)ロイコトリエン受容体拮抗剤、(p)E−およびP−セレクチンの拮抗剤、(q)VCAM−1及びICAM−1相互作用の阻害剤、(r)PGE1およびPGI2等のプロスタグランジン、ならびにシプロステン、エポプロステノール、カルバサイクリン、イロプロスト、およびベラプロスト等のプロスタサイクリン類似体を含む、プロスタグランジンおよびそれらの類似体、(s)ビスホスホネートを含むマクロファージ活性化防止剤、(t)ロバスタチン、プラバスタチン、アトルバスタチン、フルバスタチン、シンバスタチン、およびセリバスタチン等のHMG−CoA還元酵素阻害剤、(u)魚油およびオメガ−3−脂肪酸、(v)プロブコール、ビタミンCおよびE、エブセレン、トランス−レチノイン酸、SOD(オルゴテイン)、SOD模倣体、ベルテポルフィン、ロスタポルフィン、AGI1067、およびM40419等のフリーラジカル捕捉剤/酸化防止剤、(w)bFGF抗体およびキメラ融合タンパク質等のFGF経路剤、トラピジル等のPDGF受容体拮抗剤、アンギオペプチンおよびオクレオチド等のソマトスタチン類似体を含むIGF経路剤、ポリアニオン薬剤(ヘパリン、フコイジン)、デコリン、およびTGF−β抗体等のTGF−β経路剤、EGF抗体、受容体拮抗剤、およびキメラ融合タンパク質等のEGF経路剤、サリドマイドおよびそれらの類似体等のTNF−α経路剤、スロトロバン、バピプロスト、ダゾキシベン、およびリドグレル等のトロンボキサンA2(TXA2)経路調節因子、ならびにチロホスチン、ゲニステイン、キノキサリン誘導体等のタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤を含む、種々の成長因子に影響を及ぼす薬剤、(x)マリマスタット、イロマスタット、メタスタット、多流酸ペントサン、レビマスタット、インサイクリニド、アプラタスタット、PG116800、RO1130830、またはABT518等のマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)経路阻害剤、(y)サイトカラシンB等の細胞運動阻害剤、(z)プリン類似体(例えば、塩素化プリンヌクレオシド類似体である、6−メルカプトプリンまたはクラドリビン)、ピリミジン類似体(例えば、シタラビンおよび5−フルオロウラシル)、およびメトトレキセート等の抗代謝剤、ナイトロジェンマスタード、スルホン酸アルキル、エチレンイミン、抗生物質(例えば、ダウノルビシン、ドキソルビシン)、ニトロソ尿素、シスプラチン、微小管動態に影響を及ぼす薬剤(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、コルヒチン、パクリタキセル、Epo D、およびエポチロン)、カスパーゼ活性化剤、プロテアソーム阻害剤、血管形成阻害剤(例えば、エンドスタチン、アンギオスタチン、およびスクアラミン)、ラパマイシン(シロリムス)およびその類似体(例えば、エベロリムス、タクロリムス、ゾタロリムス等)、セリバスタチン、フラボピリドール、およびスラミンを含む、抗増殖/抗腫瘍剤、(aa)ハロフジノンまたは他のキナゾリノン誘導体、ピルフェニドン、およびトラニラスト等のマトリックス沈着/組織経路阻害剤、(bb)VEGFおよびRGDペプチド等の内皮化促進因子、および(cc)ペントキシフィリン等の血液レオロジー調節因子。
【0079】
本発明の実践に有用である、さらなる治療薬は、Kunzらに対する米国特許第5,733,925号でも開示されている。
【0080】
ここで図面を参照して、付加的な実施形態について論議する。
【0081】
図6Aの概略断面図に示された構造は、図4Aおよび4Bで説明されたものに類似しており、基材610を含み、基材610はその上に配置される、本発明によるセラミック被覆620を有し、基材610と共形であるセラミック層620cによって接続される、隆起セラミックシェル620sを含んでいる。この実施形態では治療薬を含む、セラミック被覆620を覆って配置された、ポリマー被覆630が示されている。しかしながら、図4Aおよび4Bと違って、図6Aのセラミックシェル620sは、常磁性粒子640を含有する。常磁性粒子は、通常は、ある遷移元素、希土類元素、およびアクチニド元素の金属、合金、または化合物(例えば、鉄、磁鉄鉱を含む酸化鉄等)である、種々の常磁性材料から選択され得る。
【0082】
そのような構造は、例えば、上記のLBL/ゾル・ゲルプロセス用のテンプレートとして組み込まれた常磁性粒子を含有する、ポリマー粒子(例えば、ポリスチレン球)を使用して形成されてもよい。球体のポリスチレン成分を除去した後(例えば、熱処理または溶解によって)、常磁性粒子は、セラミックシェル620sの内側に残留する。常磁性粒子640は、セラミックシェル620sによって外部環境から分離される。常磁性であるため、外部磁場を使用して、セラミックシェル620sの内側でこれらの粒子640を振動させることができる。このことは、例えば、数ある効果の中でも、治療薬がポリマー被覆から放出される速度を増加させることができる、熱を引き起こす。代替実施形態として、磁性材料(例えば、上記のもののうちの1つ)が、ポリマー粒子の外側に配置される(例えば、磁鉄鉱被覆を有するポリスチレン粒子が提供されてもよい)。さらなる情報については、例えば、Marina Spasova et al.,“Magnetic and optical tunable microspheres with a magnetite/gold nanoparticle shell,”J.Mater.Chem.,15,(2005)2095−2098を参照されたい。上記のように、これらの実施形態では、磁性材料は、最終的に形成されるセラミックシェルに埋め込まれる。
【0083】
図6Bは、図6Aのような構造であるが、ポリマー被覆630がない。図6Aの構造のように、外部磁場を使用してこの構造を加熱することができる。例えば、壊死、血栓症、および他の生理学的効果を体内で引き起こすために、生成される高温が使用され得る。例えば、図6Bに示されたもののような被覆は、動脈瘤の治療のための塞栓コイル上に提供されてもよい。動脈瘤への埋込後に、コイルを加熱し、それにより、動脈瘤内で血栓症を引き起こすことができる。
【0084】
上述のように、本発明によって、図4A、4B、および6Aの構造よりもはるかに複雑な構造を形成することができ、セラミック被覆とそれらの上に横たわるポリマー被覆との間でさらに多大な相互繋止を生成することが可能である。
【0085】
一実施形態では、そのような構造は、2つの荷電粒子を使用して生成される。例えば、図7A−7Eを参照すると、第1のステップでは、LBLプロセスを使用して(例えば、交互電荷の高分子電解質溶液への浸漬によって)、PML被覆712aが基材710上に形成される。図7Aに示された実施形態では、高分子電解質多層被覆712aの最上面の高分子電解質層は、正電荷を持つ。後続のステップで、図7Bに示されるように、最上層が負電荷を持つPML被覆712bをそれぞれ備える、球状粒子715bが、PML被覆712a上に静電的に集合させられる。
【0086】
次に球状粒子715cが、最上層が正電荷を持つPML被覆712cを各々備えて、P図7Bの構造上で静電的に集合させられる。結果として生じる構造を図7Cに図示する。粒子715cは、粒子715bよりも大きい。さらに、示された実施形態では、1つ以上の常磁性核718が各粒子715c内に位置する。具体例として、ポリスチレン球715b、715cが採用されてもよい。例えば、200nmの直径を有する、より小さい球体、および超常磁性核とともに500の直径を有する、より大きい球体が、Microparticles(Berlin,Germany)から購入されてもよい。核718に磁場を受けさせることによって、磁力が生成され(図7Cの矢印によって図示される)、被覆粒子715cは、図7Dに示されるように、下位被覆粒子715bとのより密接な関係へと促される。このことは、より大きい被覆粒子715cが、1つの球体のみにしがみつくよりもむしろ、いくつかのより小さい被覆粒子715bと接触する可能性を向上させる。図7Cおよび図7Dを比較されたい。
【0087】
次いで、所望に応じて、種々のPML被覆712a、712b、712cの厚さを増加させ、さらにそれらを結合して単一の連続PML構造にするために、図7Dの構造は、さらなる高分子電解質堆積ステップ(例えば、交互電荷の高分子電解質溶液への浸漬による)を受けることができる。結果は、図7Eのような構造である。次に、上記で論議されたゾル・ゲル前駆体溶液を使用して、ゾル・ゲル型プロセスがPML構造内で実行され、それにより、図7Fに示されるような高分子電解質/セラミックハイブリッド構造714を形成する。
【0088】
次いで、図7Fの構造は、粒子715bおよび715cを除去するために、さらなる処理を受けてもよい。例えば、粒子715bおよび715cが、事実上ポリマー(例えば、ポリスチレン)であると仮定すると、図7Fの構造は、ポリマー粒子715bおよび715c(同様に、高分子電解質/セラミックハイブリッド構造714のポリマー成分)を実質的に除去するのに十分な温度まで加熱されてもよく、それにより、図7Gに示されたセラミック被覆720を生成する。連続構造である被覆720は、基材被膜部分720cと、多数のセラミックシェル720sとを含む。大きいセラミックシェル720内では、所望であれば、生体内で(または生体外で)医療デバイスを加熱するために用いられ得る、常磁性核718が見出される。
【0089】
図7Gの構造は、セラミックシェル720sによって完全に被包化/包囲される空間r1、ならびに外部環境に対して開いた空間r2を含有することに留意されたい。ポリマー被覆730が図7Hに示されるように塗布された場合、空間r2は、ポリマー被覆730に、セラミック被覆720との完全相互繋止界面を形成する機会を提供する。
【0090】
別の実施形態では、前の実施形態で説明された大きい球体が、とりわけ、カーボンナノ繊維またはカーボンナノチューブ等の細長い粒子と交換され得る。上記の大きい球体と同様に、細長い粒子は、PML被覆で外側被覆される。例えば、H.Kong et al.,“Polyelectrolyte−functionalized multiwalled carbon nanotubes:preparation,characterization and layer−by−layer self−assembly,”Polymer 46(2005)2472−2485で説明されるように、高分子電解質官能化カーボンナノチューブを採用することができ、またはPML被覆とともにカーボンナノチューブを採用することができる。図7Cの構造を生成するために、上記で説明されたような(大きい球体よりもむしろ細長い粒子を使用することを除く、かつ磁力を使用しない)ステップに従うと、反対の電荷を有する細長い粒子によって接続される、第1の電荷の小さい球体の底層が最終的に生じる。上記の図7E−7Gで説明される、さらなる処理(高分子電解質堆積、ゾル・ゲル前駆体への暴露、熱処理)は、図8Aに図示されるような構造をもたらす。図7Gのように、図8Aは、本発明によるセラミック被覆820がその上に配置されている、基材810を含む。領域820は、基材810と共形であるセラミック層820cによって接続される、隆起セラミック中空球状シェル820s1を含む。しかしながら、図7Gと違って、図8Aの連続セラミック被覆820はさらに、細長い粒子815を含有する、非中空で非球状のセラミックシェル820s2を含む。例えば、細長い粒子は、炭素繊維、カーボンナノチューブ、または処理に耐える任意の他の細長い粒子であってもよい。図8Aを見て分かるように、これらのセラミック被覆繊維815、820s2は、中空セラミック球820s1を相互に接続する。あるいは、熱処理プロセス中に除去される細長い粒子が使用されてもよく、その場合、図8Bのような構造が結果的に生じ、中空セラミック繊維820s2は、中空セラミック球820s1を相互に接続する。(図7Gの場合のように、より大きいセラミック球よりもむしろ)下位セラミック球を相互接続するために薄い繊維が使用されるため、図8Aおよび8Bのような構造は、図7Gの構造よりも屈折または屈曲に耐えられるはずである。
【0091】
図7Gと同様に、図8Aおよび8Bの構造は、セラミックシェル(すなわち、シェル820s1、820s2)によって完全に被包化/包囲される空間r1、ならびに外部環境に対して開いた空間r2を含有する。これらの空間r2は、図8Cで見られるように、ポリマー被覆830に、セラミック被覆820との完全相互繋止界面を形成する機会を提供する。
【0092】
本発明の他の実施形態では、球体の使用は完全に排除される。例えば、荷電基材(例えば、LBL被覆基材)に、反対の電荷の細長い粒子(例えば、LBL被包化粒子)の層を塗布することができ、その粒子は、例えば、数ある可能性の中でも、カーボンナノチューブ等の耐熱性粒子、またはポリスチレン繊維等の熱不安定性粒子であってもよい。粒子を吸着した後に、細長い粒子を含有し得る、または完全または部分的に中空であり得る、隆起セラミックシェルを含有するセラミック被覆を生成するように、LBL処理、ゾル・ゲル処理、および熱処理が行われてもよい(上記参照)。
【0093】
この実施形態の変化例では、所与の電荷(例えば、負電荷)を有する基材(例えば、LBL被覆基材)に、反対の電荷(例えば、正電荷)の細長い粒子(例えば、LBL被覆粒子)の第1の層を塗布することができ、その後に、反対の電荷(例えば、負電荷)の細長い粒子(例えば、LBL被覆粒子)の第2の層等が続く。これらのステップの後には、さらなるLBL高分子電解質処理、ゾル・ゲル処理、および熱処理が続いてもよい。そのようなプロセスは、細長い粒子の比較的無作為な配向を生成し、隆起セラミックシェル(再度、そのシェルは、細長い粒子で充填されるか、部分的または完全に中空であり得る)の複雑な網目を生成する。
【0094】
堆積時に溶液内で細長い粒子を配向させるために、AC電場を使用することによって、より規則的な構造が生成されてもよい。例えば、カーボンナノチューブは、電場に応じた誘起双極子の形成の結果として、自らを整列させることが知られている。DC電場は、ナノチューブを整列させ、移動させるが、AC電場は、それらを整列させるのみである。これに関して、例えば、M.Senthil Kumar et al.,“Influence of electric field type on the assembly of single walled carbon nanotubes,”Chemical Physics Letters 383(2004)235−239を参照されたい。また、米国特許出願第11/368,738号も参照されたい。例えば、電場整列を使用して、種々の層の粒子が、単一方向に整列されてもよい。別の例として、電場整列は、正電荷および負電荷を持つ層を、相互に対して直角に整列させるために使用されてもよい。これらのステップの後には、再度、さらなるLBL高分子電解質処理、ゾル・ゲル処理、および熱処理が続いてもよく、それにより、カーボンナノチューブに基づく内部補強ととともに、強力に接続されたセラミックネットワークを形成する。
【0095】
本発明のさらなる実施形態が、図9A−9Dと併せて図示される。図9Aに示されるように、1つ以上のくぼみ(例えば、止まり穴910b)を有する基材910が、PML被覆で被覆される。内側の正の高分子電解質層912pおよび外側の負の高分子電解質層912nといった、2つの層が図9Aで概略的に示されているが、単一の層または3つ以上の層が塗布されてもよい。また、外層は、図示されるような負の層よりもむしろ、正の層となり得る。基材は、例えば、ステントであってもよく、その内側で多数の止まり穴が形成される(例えば、レーザアブレーションを介して)。
【0096】
後続のステップでは、正の高分子電解質層912p、または正の高分子電解質層で終端する複数の交互の高分子電解質層は、上方の基材表面を覆う負の高分子電解質層912n層の部分に選択的に塗布されるが、止まり穴910bの内側の部分には塗布されず、図9Bのような構造をもたらす。この構造は、止まり穴919bの内側の負の表面電荷、および止まり穴の外側の正の表面電荷を有する。(図9Aの構造が外側の正の層を有するものである場合、止まり穴の表面が正の表面電荷を有し、構造の上面が負の表面電荷を有するように、このステップが逆転される)。そのような選択的塗布が達成されてもよい技法の例は、PML被覆がポリマー(ポリジメチルシロキサン)スタンプの表面上に吸着される技法を説明する、J.Park et al,Adv.Mater.2004,16(6),520−525で説明されている。スタンプ上に吸着される第1の層は、カチオン性ポリアリルアミン塩酸塩(PAH)であり、その後に、アニオン性スルホン化ポリスチレン(SPS)およびカチオン性ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(PDAC)の交互の層が続く。最後の層は、カチオン性PDACである。次いで、スタンプは、負の表面電荷を有する基材と接触させられ、多層がその全体でスタンプから基材へと転写される。転写パターンの最上層は、アニオン性PAH層である。
【0097】
この時点で、図9Bの構造は、負の表面電荷を有する粒子に暴露される。図9Cに示された実施形態では、粒子は、正電荷を持つ高分子電解質層921pで終端するPML被覆層を伴う球体915である。次いで、本明細書の他の場所にあるように、図9Cの構造には、随意で、所望に応じて付加的な高分子電解質層を提供することができ、その後に、ゾル・ゲル処理および熱処理が続いて、基材と共形であるセラミック層920cによって接続される隆起セラミックシェル920s(図9Dでは、シェルは中空であるが、本明細書の他の場所で記述されるように、中空である必要はない)を含む、セラミック被覆を有する基材910を含む、図9Dのような構造を生成する。この例では、隆起セラミックシェル920sは、止まり穴の中でのみ見出される。
【0098】
本発明の別の局面によれば、基材の使用が完全に排除され、結果として生じる生成物は、セラミック層で被覆されたカーボンナノチューブの集合である。例えば、図10Aを参照すると、カーボンナノチューブ1010には、高分子電解質多層被覆1012が提供され得る。次いで、この構造は、ゾル・ゲル前駆体に暴露され、図10Bに示されるような高分子電解質/セラミックハイブリッド被覆1014を形成し、その後に熱処理が続いて、図10Cに示されるようなセラミック被覆1020を伴うカーボンナノチューブ1010を生成する。そのようなカーボンナノチューブには、多くの分野での用途があり、例えば、ポリマーまたは金属中の補強粒子としての使用を見出す。カーボンナノチューブは通常、π−π結合による凝集の危険性があり、それはセラミック被覆によって破壊される。
【0099】
(実施例1)
ここで、図3Bに示されるような被覆を生成するための手順を説明する。
【0100】
溶液を以下のように調製する。(a)PAH溶液:ポリ(アリルアミン塩酸塩)(PAH)(分子量約70,000)(Sigma−Aldrich)の溶液をDI水中で、以下の構成物質(1g/LのPAH、0.2MのNaCl、および0.05MのNaAc(酢酸ナトリウム緩衝溶液、pH=5.6))で、作製した。(b)PSS溶液:以下の構成物質で、ポリ(ナトリウム4−スチレンスルホナート)(PSS)(分子量約70,000)(Sigma−Aldrich)の溶液をDI水中で、以下の構成物質(1g/LのPSS、0.2MのNaCl、0.05MのNaAc(酢酸ナトリウム緩衝溶液、pH=5.6))で、作製した。(c)ポリスチレン(PS)粒子溶液:ポリ(ナトリウム4−スチレンスルホナート)粒子(500nm)(Forschungs− und Entwicklungslaboratorium,Berlin,Germany)の溶液を濃縮溶液(5重量%)として受容し、0.5重量%の濃度まで脱イオン(DI)水中で希釈した。(d)ゾル・ゲル溶液:2gのTEOS(Alfa Aesar, Johnson Matthey Catalog Company,Inc.,Ward Hill,MA,USA)を100mLのエタノール(無水、変性、製品番号EX0285−3、EMD Chemicals,Gibstown,NJ,USA)と合わせて10分間混合し、その後、10mLのDI水および1mLの水酸化アンモニウム(水中で25%)(Sigma−Aldrich)を添加し、その後さらに混合を続けた。
【0101】
以下のプロセスパラメータ(P=200mトール、300ワット、ガス1(アルゴン)=250sccm、ガス2(酸素)=200sccm、t=180s)を使用して、March AP−1000 Plasma Systemにおいてステンレス鋼316Lの電解研磨した試片(3.5”×0.79”×0.03”)がRF酸素プラズマで洗浄される。
【0102】
試片に1.5の二重層(PAH/PSS/PAH)を提供し、その後にPS粒子層が続き、その後に1.5の二重層(PAH/PSS/PAH)が続く。結果として生じる構造は、図5A−5Cにおいて概略的に示されるもの(上記で説明された)と類似する。各高分子電解質層については、試片をPAHまたはPSS溶液(上記で説明されるように調製される)のビーカーに浸没し、攪拌器で20分間撹拌する。PS粒子層については、試片をPS粒子溶液(上記で説明されるように調製される)のビーカーに浸没し、攪拌器で1時間撹拌する。吸着されない高分子電解質/粒子を除去するために、各層後に3回のDI水洗浄を行い、試片を次の溶液の中へ直接入れる。
【0103】
次いで、この構造を、ゾル・ゲル溶液(上記で説明されるように調製される)のビーカーに約16時間沈殿させる。ゾル・ゲル溶液への暴露後に、3回のDI水洗浄を行う。図5Fで概略的に示されるもの(上記で説明される)と類似する、結果として生じる構造を、周囲温度でオーブンに入れ、約1.5時間の期間にわたって540℃の最終温度まで上昇させる。6時間の総サイクル時間(上昇および540℃持続)後に、オーブンをオフにし、サンプルを一晩冷却させる。最終構造は、図5Fで概略的に示されるもの(上記で説明される)と類似する。
【0104】
(実施例2)
ここで、図11に図示されるもののような被覆を生成するための手順を説明する。
【0105】
PAH溶液、PSS溶液、およびPS粒子溶液を、上記の実施例1で説明されるように調製する。ゾル・ゲル溶液については、実施例1の処方を半分にした溶液を調製した。アタパルジャイト粒子溶液(Atta)を以下のように調製する。50g/Lのアタパルジャイト粘度(ATTAGEL(登録商標)50)(BASF)を、25mMのNaCl中で提供する。
【0106】
以下のプロセスパラメータを使用して、March AP−1000 Plasma Systemにおいて16mmのLiberte(登録商標)ステンレス鋼ステントをRF酸素プラズマで洗浄する。P=200mトール、300ワット、ガス1(アルゴン)=250sccm、ガス2(酸素)=200sccm、t=180s。
【0107】
ステントに3.5の二重層(PAH/PSS/PAH/PSS/PAH/PSS/PAH)を提供し、その後に2つの二重層(Atta/PAH/Atta/PAH)が続き、その後にPS粒子層が続き、その後に2つの二重層(PAH/PSS/PAH/PSS)が続く。各高分子電解質層およびアタパルジャイト粒子層については、ステントをPAH、PSS、またはAtta溶液(上記で説明されるように調製される)のビーカーに浸没し、攪拌器で20分間撹拌する。PS粒子層については、ステントをPS粒子溶液(上記で説明されるように調製される)のビーカーに浸没し、攪拌器で1時間撹拌する。吸着されない高分子電解質/粒子を除去するために、各層後に3回のDI水洗浄を行い、ステントを次の溶液の中へ直接入れる。
【0108】
次いで、この構造を、ゾル・ゲル溶液(上記で説明されるように調製される)のビーカーに約16時間沈殿させ、その後、3回のDI水洗浄を行う。結果として生じる構造を、周囲温度(約23℃)でオーブンに入れ、約1.5時間の期間にわたって540℃まで上昇させる。オーブンの中での6時間の総時間(上昇および540℃持続)後に、オーブンをオフにし、サンプルを一晩冷却させる。
【0109】
(実施例3)
初期ステップとして、高分子電解質被覆カーボンナノチューブを調製する。ポリ(2−(N,N−ジメチルアミノエチル)メタクリラート(PDMAEMA)(0.15g)(Sigma Aldrich Bornem,Belgium)、NaCl(5.8g)、および100mLの脱イオン水を250mLフラスコに入れ、PDMAEMAおよびNaClが完全に溶解されるまで撹拌する。2MのHClを添加することによって、溶液のpH値を3.7に調整する。次いで、カルボキシル基(MWNT−COOH)(80mg)(Cheap Tubes,Inc.112 Mercury Drive,Brattleboro,VT,USA)で誘導体化された多層カーボンナノチューブを、調製されたままのPDMAEMA溶液に添加する。混合物を超音波浴(40kHz)に3分間入れ、穏やかに30分間撹拌する。次いで、固体を0.22マイクロメートルのMilliporeポリカーボネート膜フィルタを通した濾過によって分離し、DI水で3回洗浄する。結果として生じた固体を、DI水中のPSS(1.5g/L)(Sigma Aldrich,Bornem,Belgium)およびNaCl(1M)の100mLの水溶液に添加し、上記で説明されるのと同じステップに従う(超音波分散、穏やかな撹拌、濾過、および洗浄)。PDMAEMAおよびPSSのさらに2つの二重層を追加する。最終洗浄ステップ後に、結果として生じる粒子を、1g/Lの濃度のDI水に懸濁する。この溶液は、上記の実施例1のPS溶液に、および上記の実施例2のAtta溶液に代替される。
【0110】
本明細書では、種々の実施形態が具体的に図示され、説明されているが、本発明の修正および変化例は、上記の教示によって網羅され、本発明の精神および意図された範囲から逸脱することなく、添付の請求項の範囲内であることが理解されるであろう。
【技術分野】
【0001】
(本発明の分野)
本発明は、セラミック被覆表面を有する、医療用部品を含む、部品に関する。
【背景技術】
【0002】
(本発明の背景)
部品には、無数の用途で使用するためのセラミック表面が提供される。したがって、新規のセラミック被覆部品および同部品を作製する方法に対する継続的な需要がある。
【発明の概要】
【0003】
(本発明の概要)
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の局面によれば、基材、および基材表面の少なくとも一部分を覆うセラミック被覆を備える、部品が提供される。セラミック被覆は、基材と共形である下位のセラミック層によって接続される隆起セラミックシェルを含む。シェルは、部分的または完全に充填されてもよく、またはそれらは、中空であってもよい。
【0005】
本発明の別の局面によれば、カーボンナノチューブの少なくとも一部分を覆うセラミック被覆を備える、カーボンナノチューブが提供される。
【0006】
上記および他の局面、ならびに本発明の種々の実施形態および利点は、以下の、詳細な説明および請求項を検討すると、当業者にとって即座に明白となるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1A】図1Aは、従来技術によるステントの概略斜視図である。
【図1B】図1Bは、図1Aの線b−bに沿って得られる概略断面図である。
【図2A】図2Aおよび図2Bは、本発明の2つの実施形態による、ステント支柱の概略断面図である。
【図2B】図2Aおよび図2Bは、本発明の2つの実施形態による、ステント支柱の概略断面図である。
【図3A】図3Aは、本発明の実施形態による、セラミック被覆を伴う部品の概略断面図である。
【図3B】図3Bおよび図3Cは、本発明によるセラミック被覆のSEM画像である。
【図3C】図3Bおよび図3Cは、本発明によるセラミック被覆のSEM画像である。
【図4A】図4Aおよび図4Bは、本発明の2つの実施形態による、ポリマー層をさらに備えるセラミック被覆を伴う部品の概略断面図である。
【図4B】図4Aおよび図4Bは、本発明の2つの実施形態による、ポリマー層をさらに備えるセラミック被覆を伴う部品の概略断面図である。
【図4C】図4Cは、図4Bのようなポリマー層を形成するためのプロセスを示す、概略断面図である。
【図5A】図5A〜図5Gは、本発明の種々の実施形態による、セラミック被覆を伴う部品および同部品を形成するためのプロセスを示す、概略断面図である。
【図5B】図5A〜図5Gは、本発明の種々の実施形態による、セラミック被覆を伴う部品および同部品を形成するためのプロセスを示す、概略断面図である。
【図5C】図5A〜図5Gは、本発明の種々の実施形態による、セラミック被覆を伴う部品および同部品を形成するためのプロセスを示す、概略断面図である。
【図5D】図5A〜図5Gは、本発明の種々の実施形態による、セラミック被覆を伴う部品および同部品を形成するためのプロセスを示す、概略断面図である。
【図5E】図5A〜図5Gは、本発明の種々の実施形態による、セラミック被覆を伴う部品および同部品を形成するためのプロセスを示す、概略断面図である。
【図5F】図5A〜図5Gは、本発明の種々の実施形態による、セラミック被覆を伴う部品および同部品を形成するためのプロセスを示す、概略断面図である。
【図5G】図5A〜図5Gは、本発明の種々の実施形態による、セラミック被覆を伴う部品および同部品を形成するためのプロセスを示す、概略断面図である。
【図6A】図6Aおよび図6Bは、本発明の2つの実施形態による部品の概略断面図である。
【図6B】図6Aおよび図6Bは、本発明の2つの実施形態による部品の概略断面図である。
【図7A】図7A〜図7H、図8A〜図8C、および図9A〜図9Dは、本発明の種々の実施形態による部品および同部品を形成するためのプロセスを示す、概略断面図である。
【図7B】図7A〜図7H、図8A〜図8C、および図9A〜図9Dは、本発明の種々の実施形態による部品および同部品を形成するためのプロセスを示す、概略断面図である。
【図7C】図7A〜図7H、図8A〜図8C、および図9A〜図9Dは、本発明の種々の実施形態による部品および同部品を形成するためのプロセスを示す、概略断面図である。
【図7D】図7A〜図7H、図8A〜図8C、および図9A〜図9Dは、本発明の種々の実施形態による部品および同部品を形成するためのプロセスを示す、概略断面図である。
【図7E】図7A〜図7H、図8A〜図8C、および図9A〜図9Dは、本発明の種々の実施形態による部品および同部品を形成するためのプロセスを示す、概略断面図である。
【図7F】図7A〜図7H、図8A〜図8C、および図9A〜図9Dは、本発明の種々の実施形態による部品および同部品を形成するためのプロセスを示す、概略断面図である。
【図7G】図7A〜図7H、図8A〜図8C、および図9A〜図9Dは、本発明の種々の実施形態による部品および同部品を形成するためのプロセスを示す、概略断面図である。
【図7H】図7A〜図7H、図8A〜図8C、および図9A〜図9Dは、本発明の種々の実施形態による部品および同部品を形成するためのプロセスを示す、概略断面図である。
【図8A】図7A〜図7H、図8A〜図8C、および図9A〜図9Dは、本発明の種々の実施形態による部品および同部品を形成するためのプロセスを示す、概略断面図である。
【図8B】図7A〜図7H、図8A〜図8C、および図9A〜図9Dは、本発明の種々の実施形態による部品および同部品を形成するためのプロセスを示す、概略断面図である。
【図8C】図7A〜図7H、図8A〜図8C、および図9A〜図9Dは、本発明の種々の実施形態による部品および同部品を形成するためのプロセスを示す、概略断面図である。
【図9A】図7A〜図7H、図8A〜図8C、および図9A〜図9Dは、本発明の種々の実施形態による部品および同部品を形成するためのプロセスを示す、概略断面図である。
【図9B】図7A〜図7H、図8A〜図8C、および図9A〜図9Dは、本発明の種々の実施形態による部品および同部品を形成するためのプロセスを示す、概略断面図である。
【図9C】図7A〜図7H、図8A〜図8C、および図9A〜図9Dは、本発明の種々の実施形態による部品および同部品を形成するためのプロセスを示す、概略断面図である。
【図9D】図7A〜図7H、図8A〜図8C、および図9A〜図9Dは、本発明の種々の実施形態による部品および同部品を形成するためのプロセスを示す、概略断面図である。
【図10A】図10A〜図10Cは、本発明によるセラミック被覆カーボンナノチューブを形成するためのプロセスを示す、概略断面図である。
【図10B】図10A〜図10Cは、本発明によるセラミック被覆カーボンナノチューブを形成するためのプロセスを示す、概略断面図である。
【図10C】図10A〜図10Cは、本発明によるセラミック被覆カーボンナノチューブを形成するためのプロセスを示す、概略断面図である。
【図11】図11は、本発明の実施形態によるセラミック被覆のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(本発明の詳細な説明)
本発明の局面によれば、基材、および基材表面の少なくとも一部分を覆うセラミック被覆を備える、部品が提供される。セラミック被覆は、基材と共形である下位のセラミック層によって接続される隆起セラミックシェルを含む。シェルは、部分的または完全に充填されてもよく、またはそれらは、中空であってもよい。以下でより詳細に論議されるように、ある実施形態では、セラミック被覆は、基材表面全体を覆って延在する、単一のセラミック構造を構成する。
【0009】
本明細書で使用される、所与の材料の「層」は、厚さがその長さおよび幅の両方よりも小さい、その材料の領域である。例えば、長さおよび幅は、各々厚さの少なくとも5倍であってもよく、例えば、独立して、厚さの5倍から10倍、30倍、100倍、300倍、1000倍、またはそれ以上に及ぶ。本明細書で使用される、層は、平坦である必要はなく、例えば、下位基材の輪郭を帯びる。したがって、本明細書で説明されるセラミックシェルは、層である。層は、不連続性となり得る(例えば、パターン化される)。
【0010】
本明細書で使用される、「セラミック」領域、例えば、セラミック層またはセラミックシェルは、単一のセラミック種または2つ以上の異なるセラミック種の混合物を含有する、材料の領域である。例えば、本発明によるセラミック領域は、通常、例えば、10重量%以下から25重量%、50重量%、75重量%、90重量%、95重量%、95重量%、またはそれ以上の1つ以上のセラミック種を備える。したがって、本発明によるセラミック領域は、セラミック種以外の種を備えることができ、例えば、いくつかの実施形態では、1重量%以下から2重量%、5重量%、10重量%、25重量%、50重量%、またはそれ以上のポリマー種を備える。
【0011】
セラミック領域で使用するためのセラミック種は、とりわけ、金属および半金属酸化物、金属および半金属窒化物、ならびに金属および半金属炭化物を含む。金属および半金属酸化物、窒化物、および炭化物の例は、周期表の第14族半金属(例えば、Si、Ge)の酸化物、窒化物、および炭化物、ならびに、第3族金属(例えば、Sc、Y)、第4族金属(例えば、Ti、Zr、Hf)、第5族金属(例えば、V、Nb、Ta)、第6族金属(例えば、Cr、Mo、W)、第7族金属(例えば、Mn、Tc、Re)、第8族金属(例えば、Fe、Ru、Os)、第9族金属(例えば、Co、Rh、Ir)、第10族金属(例えば、Ni、Pd、Pt)、第11族金属(例えば、Cu、Ag、Au)、第12族金属(例えば、Zn、Cd、Hg)、第13族金属(例えば、Al、Ga、In、Tl)、第14族金属(例えば、Sn、Pb)、第15族金属(例えば、Bi)等の、遷移および非遷移金属の酸化物、窒化物、および炭化物を含む。金属および半金属酸化物の炭化物および窒化物は、例えば、とりわけ、高温炭素熱還元および窒化物形成プロセスを使用して、形成されてもよい。
【0012】
本発明による部品の一例が、図3Aの断面で概略的に示され、図中、共形セラミック層320cによって接続された隆起セラミックシェル320sを含む、セラミック被覆320で覆われた基材310が示されている。セラミックシェル320sの内部350は、示されるように中空である。共形セラミック層320cは、非常に薄くすることができ(例えば、100nm以下)、したがって、下位基材とともに容易に変形する(例えば、屈曲または屈折する)ことが可能である。さらに、セラミックシェル320は、適度の屈折/屈曲中に相互に係合しないように、均一に離間することができる(図3参照)。セラミックシェル320sの高さは、数桁分変動することができ、以下でさらに論議されるように、シェルを形成するためにテンプレートとして使用される粒子のサイズに依存する。
【0013】
図3Bは、図3Aで概略的に図示されるような構造のSEMである。図3Cは、単一の隆起セラミックシェルのSEMである。それは壊されており、中空であることを明示する。サンプルによる表面粗度の違いは、下位基材の粗度、ならびに処理変動を含む、いくつかのパラメータから発生する場合がある。SEMを見た時に明確ではないが、基材および球体のセラミックシェルを覆うセラミック層は、図3Aで概略的に図示されるように、1つの連続構造である。
【0014】
図3A−3Cでは、セラミックシェルは、球状である。しかしながら、以下でさらに論議されるように、セラミックシェルは、シェルを形成するために使用されるテンプレート粒子に応じて、ほぼ無限範囲の形状を帯びることができる。図3A−3Cでは、セラミックシェルの内部は、中空である。しかしながら、シェルを形成するために使用されるテンプレート粒子、および処理中にテンプレート粒子が完全または部分的に除去されるか否かに応じて、セラミックシェルの内部は、数ある材料の中でも特に、金属、ポリマー、セラミック、およびこれらの組み合わせ(混成物)を含む、ほぼ無限の一連の物質で部分的または完全に充填することができる。1つの具体例として、セラミックシェルは、数ある可能性の中でも特に、カーボンナノチューブ(例えば、機械的補強等を提供する)を備えてもよい。
【0015】
被覆されている基材が採用される処理条件に適合する限り、本発明は、セラミック被覆が有用である、事実上任意の部品に適用可能である。被覆部品は、シェル構造を伴って、または伴わずに提供される、セラミック被覆を伴う部品を含み、シェル構造が提供される場合、そのシェル構造は、中空であるか、または補強粒子(例えば、カーボンナノチューブ等)を含有してもよい。そのような被覆は、とりわけ、耐食性、耐摩耗性、光学的性質、抗ウイルスおよび抗菌性質(例えば、アナターゼTiOx被覆等)、および光活性挙動を含む、種々の理由で提供されてもよい。部品の例は、数ある部品の中でも、セラミック層で被覆されてもよい車の完全な枠組みを含む自動車の構成要素、ガス、油、他の侵攻性化学媒体用の輸送パイプの内側、光触媒および光起電部品(例えば、ポリマー基材上でアナターゼ被覆等の光活性セラミック被覆を形成することによる)、航空宇宙用部品(例えば、飛行機、スペースシャトル、ロケット等の外部パネル)、金属銃器の構成要素、窓(例えば、本発明にしたがって形成されるナノメートルの厚さの被覆は、反射被覆の役割を果たしてもよい)、ドアノブおよびドアハンドル、電話、床タイル、ビニル壁紙、プラスチック紙幣(例えば、オーストラリアなどのいくつかの国で使用されているもの等)、硬貨、公共の場で見られる家具を含む家具、座席(例えば、車、電車、およびバスの中)、階段の手すりおよびエスカレータのゴムのハンドベルトを含む、手すり、ポリマーを用いた子供の玩具(学校、託児所等で使用されるものを含む)、およびATM機のキーパッドを含む。
【0016】
ある実施形態では、被覆部品は、医療用部品である。医療用部品は、無傷の皮膚および傷ついた皮膚(創傷を含む)への治療薬の送達のためのパッチ等の身体への外部塗布のための部品、および埋込型または挿入型デバイス、例えば、ステント(冠血管ステント、末梢血管ステント、脳、尿道、尿管、胆管、気管、胃腸、および食道ステント)、ステント被膜、ステントグラフト、血管移植片、腹部大動脈瘤(AAA)デバイス(例えば、AAAステント、AAAグラフト)、血管アクセスポート、透析ポート、カテーテル(例えば、泌尿器カテーテル、またはバルーンカテーテルおよび種々の中心静脈カテーテル等の血管カテーテル)、ガイドワイヤ、バルーン、フィルタ(例えば、大静脈フィルタおよび蒸留保護デバイス用のメッシュフィルタ)、脳動脈瘤充填コイル(Guglilmi着脱式コイルおよび金属コイルを含む)を含む塞栓デバイス、中隔欠損閉鎖デバイス、デバイスの遠位にある動脈の部分の治療のために、動脈中に配置するために適合される持続性薬剤、心筋プラグ、パッチ、ペースメーカー、ペースメーカーリード、除細動リード、およびコイルを含むリード、左心室補助心臓およびポンプを含む心室補助デバイス、完全人工心臓、シャント、心臓弁および血管弁を含む弁、吻合クリップおよびリング、蝸牛インプラント、組織増量デバイス、生体内組織再生における軟骨、骨、皮膚、およびその他のための組織工学的足場、縫合糸、縫合固着器、手術部位における組織ステープルおよび結紮クリップ、カニューレ、金属ワイヤ結紮、尿道スリング、ヘルニア用「メッシュ」、人工靱帯、骨移植片、骨プレート、フィン、および融合デバイス等の整形外科用人工装具、人工関節、足首、膝、および手領域における干渉ネジ、靱帯付着部および半月板修復用の鋲、骨折固定用の棒およびピン、頭蓋顎顔面修復用のネジおよびプレート等の整形外科用固定デバイス、歯科インプラント、または身体に埋め込まれるか、または挿入される他のデバイスを含む。
【0017】
本発明のデバイスは、例えば、全身治療に使用される埋込型および挿入型医療デバイス、ならびに被検体の任意の組織または臓器の局所治療に使用されるデバイスを含む。非限定的な例は、腫瘍、ならびに心臓、冠血管および末梢血管系(総合的に「血管系」と呼ばれる)、腎臓、膀胱、尿道、尿管、前立腺、膣、子宮、および卵巣を含む泌尿生殖器系、目、耳、脊椎、神経系、肺、気管、食道、腸、胃、脳、肝臓、および膵臓を含む臓器、骨格筋、平滑筋、乳房、皮膚組織、軟骨、歯、および骨である。本明細書で使用される、「治療」とは、疾患または症状の予防、疾患または症状と関連する兆候の軽減または排除、あるいは、疾患または症状の実質的または完全な排除を指す。「被検体」は、脊椎動物の被検体、例えば、ヒト、家畜、およびペットを含む。
【0018】
本発明の医療デバイスは、とりわけ、心臓、動脈(例えば、冠状動脈、大腿動脈、大動脈、腸骨動脈、頸動脈、および椎骨脳底動脈)、および静脈等の心臓血管系の管腔、尿道(尿道前立腺部を含む)、膀胱、尿道、膣、子宮、精管、および卵管等の泌尿生殖器系の管腔、鼻涙管、耳管、気管、気管支、鼻道、および副鼻腔等の呼吸管の管腔、食道、胃、十二指腸、小腸、大腸、直腸、胆管、および膵管系等の胃腸管の管腔、リンパ系の管腔、および主要な体腔(腹腔、胸腔、心嚢)を含む、そのいくつかが上記に記載されている、幅広い身体管腔の中へ、および/またはそれらを通して挿入するための、種々の埋込型および挿入型医療デバイスを含む。
【0019】
本発明によるセラミック被覆が提供され得る、医療デバイス基材は、例えば、医療デバイス全体(例えば、金属ステント)に、または医療デバイスの一部分のみ(例えば、医療デバイスの構成要素、医療デバイスまたはデバイス構成要素に接着される材料等に対応する)に対応してもよい。
【0020】
ここで、本発明を図示する目的で、血管ステントと併せて本発明のいくつかの例示的実施形態を説明する。しかしながら、本発明は、上記のような、ステント、または医療用部品にさえも決して限定されない。
【0021】
背景として、Boston Scientific Corp.から市販されているもの(TAXUSおよびPROMUS)、Johnson & Johnsonから市販されているもの(CYPHER)およびその他のような、冠状動脈ステントが、例えば、バルーン血管形成術後に、血管の開通性を維持するための使用のために、頻繁に所用される。これらの製品は、血管の再狭窄を予防するために、制御された速度および総投与量で抗増殖治療薬を放出する、生体安定性ポリマー被覆を伴う金属バルーン拡張型ステントに基づく。1つのそのようなデバイスを、例えば、図1Aおよび1Bで概略的に図示する。図1Aは、いくつかの相互接続支柱101を含有するステント100の概略斜視図である。図1Bは、図1Aのステント100の支柱101の線b−bに沿って得られた断面図であり、ステンレス鋼支柱基材110と、ステント支柱基材110全体を被包化し、その管腔側表面110l(血液側)、反管腔側表面110a(血管側)、および側面110sを覆う、治療薬含有ポリマー被覆120とを示す。
【0022】
再狭窄に対抗するための抗増殖剤を放出することが可能であるポリマー被覆を伴う、そのようなステントの反管腔側表面を提供することが望ましいが、そのような薬剤は、ステントの管腔側表面上で同等に望まれなくてもよい。ポリマー被覆がステントの反管腔側表面のみに塗布された場合、単にステント支柱を包囲するという事実により、もはやポリマー被覆がステントに固定されなくなるため、ステント表面とポリマー被覆との間の良好な接着が所望される。十分な接着がないと、例えば、ステントの送達中に、ステントからの被覆の剥離が発生する場合がある。
【0023】
さらに、ステント表面とポリマー被覆との間の良好な接着があっても、軟質ポリマー被覆の場合、その送達管からのステントの摺動除去と関連する高い剪断力の結果として、それでもなお、被覆が自己拡張式ステントの表面から擦り落とされる場合がある。
【0024】
一方で、ステントの管腔側表面上に所望されるものは、機能的内皮細胞層の急速な形成を促進する表面であり、それは、血管系の中の異物の埋込と併せて発生し得る炎症、および血栓症を軽減または排除する目的で、効果的であることが知られている。例えば、J.M.Caves et al.,J.Vase.Surg.(2006)44:1363−8を参照されたい。
【0025】
とりわけ、上記の目標のうちの1つ以上は、上述のように、いくつかの実施形態では、セラミック層によって接続される隆起セラミックシェル(中空であるか、または、種々の固体材料で部分的または完全に充填されてもよい)を含む、本発明によるセラミック被覆を使用して達成され得る。
【0026】
例えば、ここで、ステント支柱201の概略断面図である、図2Aを参照すると、本発明によるセラミック被覆220は、ステント支柱基材210の管腔側表面210l、反管腔側表面210a、および側面210sを覆って提供される。薬剤溶出ポリマー層230は、セラミック被覆220上に提供されるが、ステント支柱基材210の反管腔側表面210aのみを覆って(管腔側表面210lおよび側面210sを覆わない)提供される。別の例として、かつ図2Bを参照すると、本発明によるセラミック被覆220は、再度、ステント支柱基材210の管腔側表面210l、反管腔側表面210a、および側面210sを覆って提供され、薬剤溶出ポリマー層230は、管腔側表面210lを覆わずに、ステント支柱基材210の反管腔側表面210aおよび側面210sを覆って提供される。いずれか一方の実施形態では、ポリマー被覆230で使用されるポリマーが生体崩壊性である場合、生物学的に不活性または生体活性である種々の材料(例えば、チタン酸化物、ジルコニウム酸化物、イリジウム酸化物等)から選択され得る、セラミック被覆を有して、最終的に生体内に残されることに留意されたい。
【0027】
上記の目標に対応することに関して、本発明によるセラミック被覆220、特に、セラミック構造が複数のセラミックシェルを備える実施形態は、例えば、ポリマー被覆230と下位セラミック被覆220との間の界面表面積を(すなわち、セラミック構造220がない場合に、そうでなければポリマー被覆230と基材210との間に存在し得る界面表面積に対して)増加させることによって、ポリマー被覆接着を促進する。加えて、本発明によるセラミック被覆は、多かれ少なかれ、隣接するポリマー被覆230と相互繋止する。
【0028】
このことは、本発明によるセラミック被覆420がその上に配置されている、基材410(例えば、無数の可能性の中でも、ステント支柱)の概略図である、図4Aを参照するとより良く理解することができる。被覆420は、基材410と共形であるセラミック層420cによって接続される、隆起セラミックシェル420sを含む。前述のように、隆起セラミックシェル420sおよびセラミック層420cは、単一のセラミック構造を構成する。セラミック被覆420を覆って配置された、ポリマー被覆430が示されている。セラミックシェル420sの下の切り込みにより、ポリマー被覆430は、セラミック被覆420とある程度は相互繋止する。図7Hおよび図8C(以下でさらに論議される)を見て分かるように、本発明のセラミック被覆とそれらの上に横たわるポリマー層との間で、さらに多大な相互繋止を生成することが可能である、より複雑なセラミック被覆を形成することができる。
【0029】
(例えば、剪断力、摩滅等に対して)ポリマー被覆を保護する、本発明のセラミック被覆の能力に関して、基材420と共形であるセラミック層420cによって接続される、隆起セラミックシェル420sを含む、本発明によるセラミック被覆420がその上に配置されている、図4Aと同様に基材410の概略図である図4Bを参照すると、1つのそのような実施形態を見ることができる。セラミック被覆420を覆って配置された、ポリマー被覆430が示されている。しかしながら、図4Aと違って、ポリマー被覆430は、隆起セラミックシェル420sの高さを実質的に越えて延在しない。その結果として、セラミックシェル420sは、ポリマー被覆430が、例えば、摩耗、剪断力等の結果として擦り落とされることから保護することが可能である。
【0030】
図4Bのようなポリマー被覆430を生成するためのプロセスの一例を図4Cで概略的に図示する。粘性ポリマー溶液430vでセラミック被覆420c、420sを覆った後、構造の上でブレードを走らせる(3枚刃のかみそりと類似した方式で配設された、3つのブレード450が図4Cに図示されている)。セラミックシェル420sは、ブレード450がセラミック層420cに接近することができる程度を制限するように作用する。その結果、セラミックシェル420sと本質的に同じ高さのポリマー層が生成される。粘性ポリマー溶液430vが、その中に含有される溶媒の蒸発時に体積を失うため、所望に応じて、プロセスを繰り返して、最終ポリマー層の厚さを増加させてもよい。当然ながら、ポリマー溶解および硬化性ポリマー組成物を含む、他の液体ポリマー組成物をポリマー被覆プロセスで採用することができる。
【0031】
したがって、ステントと併せて採用される場合、図4Bに示されたもののようなセラミック被覆は、ステントの機械的品質に影響を及ぼすことなく、軟質ポリマー被覆が機械的な力に対して保護されることを可能にする。後者の利点に関して、機械的な力からポリマー被覆を保護するための別の選択肢は、ポリマー被覆を遮蔽する、ステント表面内にくぼみを形成することであろう。しかしながら、これらのくぼみ内に搭載することができるポリマー被覆(したがって治療薬)の量は、除去される材料の量に限定され、材料の著しい除去が潜在的にステントを弱体化させる。
【0032】
図4Bに示されたもののようなセラミック被覆の別の利点は、被覆が、任意の治療薬含有ポリマー層の高さおよび全体積に対する、したがって治療薬含有量に対する良好な制御を可能にすることである。より具体的には、被覆の高さは、球状シェルの高さに依存し、これは、2.0%より良好なサイズ偏差で得ることができる、元のテンプレート粒子(例えば、ポリスチレン球)のサイズによって画定される。球体によって取り込まれる体積を考慮に入れなければならない。しかしながら、このことは、図3Bを見て分かるように、表面上に均一に分散される球状シェルの直径および平均密度を考慮に入れることによって行うことができる。
【0033】
機能的内皮細胞層の急速な形成を促進するステント表面を提供する目標に関して、本発明のセラミック被覆は、以下で論議されるように、細胞付着性および/または細胞増殖を促進すると広く報告されている、ミクロン規模および/またはナノメートル規模の特徴を伴って容易に形成される。この点で、セラミック被覆は、多種多様な形状およびサイズを有する形態学的な特徴を伴って生成することができる。表面特徴は、概して、100ミクロン(μm)未満、例えば、100ミクロン以上から50ミクロン、25ミクロン、10ミクロン、5ミクロン、2ミクロン、1ミクロン、500nm、250nm、100nm、50nm、25nm以下に及ぶ、幅を有する。以下で論議されるように、表面特徴の形状およびサイズは、セラミックシェルの生成のためのテンプレートとして使用される粒子によって決定される。
【0034】
上述のように、表面上の細胞付着性および細胞成長(増殖)は両方とも、表面上で見出される紋様付けの影響を受けることが報告されている。例えば、文献は、紋様付き表面上で培養された内皮細胞がより速く広がり、むしろ自然動脈中の細胞のように見えることを示している。R.G.Flemming et al.,Biomaterials 20(1999)573−588を参照されたい。紋様付き表面が安定化した偽内膜新生を促進することが報告されている。この点で、N.Fujisawa et al.,Biomaterials 20(1999)955−962は、ヒツジの頸動脈に埋め込むと、平滑基礎面上の規則的に離間した突出極細繊維(繊維の基部における長さ、ピッチ、および直径は、それぞれ、250、100、および25μmであった)から成る、紋様付きポリウレタン表面が、安定化した血栓基部の形成を促進し、その上で後続の細胞移動および組織治癒が、平滑表面上よりも急速に生じたことを見出した。他は、表面上で輪郭明瞭なマイクロ紋様付きパターンを生成することによって、表面における流体の流れが改変されて低剪断応力の離散領域を生成し、内皮細胞等の細胞の保護区域としての機能を果たし、それらの保持を促進し得ることに注目している。S.C.Daxini et al.“Micropatterned polymer surfaces improve retention of endothelial Cells exposed to flow−induced shear stress,”Biorheology 2006 43(1)45−55を参照されたい。
【0035】
100nm未満の範囲での紋様付けが、細胞付着性および/または増殖を増加させることが観察されている。例えば、平滑筋細胞および内皮細胞が、ナノパターン化表面上の細胞接着および増殖を向上させたことを報告した、E.K.F Yim et al.による総説、“Significance of synthetic nanostructures in dictating cellular response,”Nanomedicine:Nanotechnology,Biology,and Medicine 1(2005)10−21を参照されたい。両方の種類の細胞が、ナノ形態に敏感であった。理論に縛られることは望まないが、100nm未満の特徴のサイズは、フィブロネクチン、ラミニン、および/またはビトロネクチン等のタンパク質のナノ紋様付き表面への接着を可能にし、内皮細胞結合を強化するRGDおよびYGSIR等のアミノ酸配列をより良好に暴露する、これらのタンパク質の立体構造を提供すると考えられる。例えば、Standard handbook of biomedical engineering and design,Myer Kutz,Ed.,2003 ISBN 0−07−135637−1,p.16.13を参照されたい。また、ナノ紋様付けは、細胞接着を増加させると考えられる、表面エネルギ−を増加させる。例えば、J.Y.Lim et al.,J.Biomed.Mater.Res.(2004)68A(3):504−512を参照されたい。この点で、100nm未満の範囲の細孔、繊維、および隆起を含む、サブミクロン形態が、大動脈弁内非細胞の基底膜について、ならびに他の基底膜材料について観察されている。R.G.Flemming et al.,Biomaterials 20(1999)573−588,S.Brody et al.,Tissue Eng.2006 Feb;12(2):413−421、およびS.L.Goodman et al.,Biomaterials 1996;17:2087−95を参照されたい。Goodmanらは、露出および膨張した血管の内皮下細胞外基質表面の形態学的な特徴を複製するために、ポリマー鋳造を採用し、そのような材料の上で成長した内皮細胞が、紋様のない表面上で成長した細胞よりもより速く広がり、自然動脈中の細胞のように見えることを見出した。
【0036】
ここで、図3A−3Cに示されたもののような構造を生成するために使用されてもよいプロセスの一例を説明する。このプロセスは、層ごとの処理およびゾル・ゲル処理の組み合わせに基づく。層ごと/ゾル・ゲル処理についての情報は、例えば、“Colloids and Colloid Assemblies,”Wiley−VCH,edited by Frank Caruso, ISBN 3−527−30660−9,pp.266−269、D.Wang and F.Caruso,“Polyelectrolyte−Coated Colloid Spheres as Templates for Sol−Gel Reactions,”Chem.Mater.2002,14,1909−1913、D.Wang et al.,“Synthesis of Macroporous Titania and Inorganic Composite Materials from Coated Colloidal Spheres A Novel Route to Tune Pore Morphology,”Chem.Mater.2001,13,364−371、およびCarusoに対するWO02/074431に、見出すことができる。
【0037】
背景として、一般的に層ごと(LBL)の方法と呼ばれる、帯電物質の静電自己集合に基づいて、多層被覆を基材上で形成できることが周知である。LBL方法では、第1の表面電荷を有する第1の層が、通常、下位基材(本発明では、医療デバイス基材またはその一部分)上に堆積され、その後に、第1の層の表面電荷とは符号が反対である第2の表面電荷を有する第2の層等が続く。外層上の電荷は、各逐次層の堆積時に逆転される。一般的に、多層構造の所望の厚さに応じて、5から10、25、50、100、200、またはそれ以上の層が、この技法で塗布される。LBL技法は、一般的に、複数の荷電群を有するポリマーである、「高分子電解質」として知られる荷電種を採用する。通常は、荷電群の数が非常に多いため、ポリマーは、イオン的に解離した形態(ポリイオンとも呼ばれる)である時に極性溶媒(水を含む)中で可溶性である。荷電群の種類に応じて、高分子電解質は、ポリカチオン(概して、そのポリ酸およびポリ塩に由来する)またはポリアニオン(概して、そのポリ塩基およびポリ塩に由来する)として分類されてもよい。ポリアニオン/ポリ酸の具体例は、とりわけ、ポリ(スチレンスルホン酸)(PSS)(例えば、ポリ(スチレンスルホン酸ナトリウム))、ポリアクリル酸、ポリビニル硫酸、ポリビニルスルホン酸、アルギン酸ナトリウム、ユードラギット、ゼラチン、ヒアルロン酸、カラギーナン、コンドロイチン硫酸、およびカルボキシメチルセルロースを含む。ポリカチオン/ポリ塩基の具体例は、とりわけ、硫酸プロタミン、ポリ(アリルアミン)(例えば、ポリ(アリルアミン塩酸塩)(PAH))、ポリジアリルジメチルアンモニウム種、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリビニルアミン、ポリビニルピリジン、キトサン、ゼラチン、スペルミジン、およびアルブミンを含む。LBLプロセスに関するさらなる情報については、例えば、Weberらに対する米国特許出願公開第2005/0208100号、およびChenらに対する国際出願第2005/115496号を参照されたい。
【0038】
セラミック領域は、ゾル・ゲル処理技法を使用して形成されてもよいことも周知である。通常のゾル・ゲルプロセスでは、通常は、無機金属および半金属塩、金属および半金属錯体/キレート、金属および半金属水酸化物、ならびに、金属アルコキシドおよびアルコキシラン等の有機金属および有機半金属化合物から選択される、前駆体物質が、セラミック材料の形成において加水分解および縮合反応を受ける。一般に、半金属の精選したアルコキシド(例えば、メトキシド、エトキシド、イソプロポキシド、tert−ブトキシド等)または精選した金属(例えば、シリコン、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、スズ、鉄、ハフニウム、タンタル、モリブデン、タングステン、レニウム、イリジウム等)が、例えば、適切な溶媒中で、例えば、1つ以上のアルコール中で溶解される。後に、水、または、酸性あるいは塩基性水溶液(その水溶液は、アルコール等の無機溶媒種をさらに含有することができる)等の別の水溶液が添加され、加水分解および縮合を発生させる。ゾル・ゲル反応は、基本的に、G.Kickelbick,Prog.Polym.Sci,28(2003)83−114による、以下の単純化スキームで例証されるような、セラミックネットワーク形成プロセスであると理解される。
【0039】
【化1】
【0040】
【化2】
式中、セラミック相内の金属/半金属原子(概してMと指定される)は、M−O−M結合等の共有結合を介して、相互に結合されると示されているが、例えば、ネットワーク内の残留M−OH基等のヒドロキシル基の存在による水素結合を含む、他の相互作用も一般的に存在する。正確な機構にかかわらず、いわゆる「ゾル」(すなわち、液体内の固形粒子の懸濁)のさらなる処理は、個体材料が種々の異なる形態で作製されることを可能にする。例えば、湿潤「ゲル」被覆は、スプレーコーティング、塗布器による(例えば、ローラまたはブラシによる)被覆、インクジェット印刷、スクリーン印刷等によって生成することができる。次いで、湿潤ゲルは、セラミック領域を形成するように乾燥させられる。ゾル・ゲル材料についてのさらなる情報は、例えば、G.Kickelbick supra and Viitala R.et al,“Surface properties of in vitro bioactive and non−bioactive sol−gel derived materials,”Biomaterials,2002 Aug;23(15):3073−86、およびHelmusらに対する米国特許出願公開第2006/0129215号の複数部分で見出すことができる。
【0041】
ここで図5A−5Fを参照して、本発明による構造の形成のためのプロセスを説明する。
【0042】
第1のステップでは、LBLプロセスを使用して、高分子電解質多層(PML)被覆512が基材510上に形成される。この点で、ある基材は、本質的に帯電しており、したがって、層ごとの組立技法に容易に役立つ。基材が固有の正味表面電荷を持たない程度に、それでもなお表面電荷が提供されてもよい。例えば、被覆される基材が伝導性である場合、表面電荷は、同基材に電位を印加することによって提供されてもよい。別の例として、金属およびポリマー基材を含む基材は、とりわけ、アミノ基、リン酸基、硫酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、およびカルボン酸基等の荷電群をそれらに提供するよう表面を修飾する還元剤および酸化剤(例えば、三酸化硫黄)を含む、種々の試薬で化学処理を施されてもよい。表面電荷を提供するための他の技法は、それにより表面領域が反応性プラズマで処理される技法を含む。表面修飾は、部分的にイオン化されたガスに(すなわち、プラズマに)表面を暴露させることによって得られる。プラズマ相が幅広い反応種(電子、イオン等)から成るため、これらの技法は、とりわけ、ポリマー表面を含む表面の官能化に広く使用されている。例は、グロー放電技法(減圧において行われる)およびコロナ放電技法(大気圧において行われる)を含み、グロー放電プロセス中に、処理される物体の形状はあまり重要でないため、場合によっては前者が好ましい。レーザビームの付近(例えば、ビームの焦点の真上)で局所プラズマを生成するために、レーザが使用されてもよい。一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)、または酸素(O2)のようなガスが使用される時は、−COOH基(陽子を提供して陰性基を形成する)による官能化が一般的に観察される。アンモニア、プロピルアミン、またはN2/H2のようなガスが採用される時は、−NH2基(陽子を受け取って陽性基を形成する)が一般的に形成される。また、官能基を含有する「モノマー」が採用されるプラズマ重合プロセスを使用して、官能基含有表面が得られてもよい。この目的で、アリルアミン(−NH2基を生成する)およびアクリル酸(−COOH基を生成する)が使用されている。不飽和モノマーと組み合わせて第2の供給ガス(概して、非重合性ガス)を使用することによって、この第2の種をプラズマ堆積層に組み込むことが可能である。ガス対の例は、アリルアミン/NH3(−NH2基の強化された生成につながる)およびアクリル酸/CO2(−COOH基の強化された生成につながる)を含む。プラズマ処理についてのさらなる情報は、例えば、“Functionalization of Polymer Surfaces,”Europlasma Technical Paper,05/08/04、および米国特許出願公開第2003/0236323号に見出されてもよい。別の例として、上記で説明されるもの等のプラズマを用いた技法は、基材表面を官能化するために最初に使用されてもよく、その後に、例えば、堆積を最小限化するために不活性雰囲気または真空中で、レーザビームに表面を暴露させることによって、表面における官能基の一部分の除去が続く。さらに別の例として、当技術分野で周知の方法を使用して、正電荷(例えば、アミン基、イミン基、または他の塩基)または負電荷(例えば、カルボン酸基、ホスホン酸基、リン酸基、硫酸基、スルホン酸基、または他の酸基)とともに官能基を有する種と共有結合することによって、基材に電荷を提供することができる。共有結合についてのさらなる情報は、例えば、米国特許出願公開第2005/0002865号に見出されてもよい。多くの実施形態では、単に、第1の荷電層として基材の表面にポリカチオンまたはポリアニオンを吸着することによって、表面電荷が基材上に提供される。PEIは、種々の基材への接着を強力に促進するため、この目的で一般的に使用されている。さらなる情報は、Atanasoskaらに対する米国特許出願第11/322,905号に見出すことができる。
【0043】
所与の基材に表面電荷が提供される方法にかかわらず、いったん十分な表面電荷が提供されると、逆帯電した材料の層によって基材を容易に被覆することができる。そのような層の例は、(a)高分子電解質、(b)荷電粒子、または(c)高分子電解質および荷電粒子の両方を含有する層を含む。多層領域は、逆帯電した材料を含有する溶液への暴露を交互に行うことによって形成される。層は、静電気による層ごとの堆積によって自己集合し、したがって、基材を覆う多層領域を形成する。
【0044】
高分子電解質溶液(および粒子含有溶液)は、種々の技法によって塗布されてもよい。これらの技法は、例えば、とりわけ、浸漬技法等の完全浸没技法、スプレー技法、ロールおよびブラシ被覆技法、空中懸垂等の機械的懸垂を介した被覆を伴う技法、インクジェット技法、スピンコーティング技法、ウェブ被覆技法、およびこれらのプロセスの組み合わせを含む。また、例えば、S.Kidambi et al.,“Selective Depositions on Polyelectrolyte Multilayers:Self−Assembled Monolayers of m−dPEG Acid as Molecular Templates,”J.Am.Chem.Soc.126,4697−4703,2004、およびPark et al.,“Multilayer Transfer Printing for Polyelectrolyte Multilayer Patterning: Direct Transfer of Layer−by−Layer Assembled Micropatterned Thin Films,Adv.Mater.,”2004,16(6),520−525で説明されるような、スタンピングが採用されてもよい。
【0045】
技法の選択は、目下の要件に依存する。例えば、視界から隠されている表面(例えば、スプレー技法等の視線技法によって到達することができない表面)を含む、基材全体に種を塗布することが所望される場合に、堆積または完全浸没技法が採用されてもよい。一方で、例えば、基材のある部分のみに種を塗布する(例えば、基材の1つの側面上、基材上のパターンの形で、等)ことが所望される場合に、スプレー、ロール被覆、ブラシ被覆、インクジェット印刷、およびマイクロポリマースタンピングが採用されてもよい。
【0046】
ここで図5Aを参照すると、例えば、反対の電荷の連続高分子電解質領域に浸漬することによって、基材510には、示されるようなPML被覆512が提供される。このプロセスの終了時の多層高分子電解質被覆512の表面電荷は、基材が暴露された最後の溶液がポリカチオン溶液であったか、またはポリアニオン溶液であったかによって決定される。いくつかの実施形態では、この時点で、以下で論議されるように、ゾル・ゲル型プロセスが高分子電解質層内で実行される。
【0047】
図5B−5Cで図示されたもの等の他の実施形態では、最適な粒子が表面に吸着される。通常は、例えば、上記で説明される技法のうちの1つを使用して、本来的に帯電しているか、または帯電させられる、荷電粒子が使用される。例えば、粒子は、負荷電粒子を生成するように、PEIの溶液に暴露されてもよい。所望であれば、粒子上の電荷は、反対の電荷の高分子電解質を含有する溶液に暴露させることによって逆転させることができる。いくつかの実施形態では、粒子の溶液が採用されてもよく、その場合、粒子には、高分子電解質多層被覆が提供される。上記のもの等の技法(例えば、浸漬等)を使用して、基材が、例えば、荷電粒子の懸濁液に暴露されてもよい。このステップの結果を、医療デバイス基材510、PML被覆512、および荷電粒子515を概略的に示す、図5Bに図示する。次いで、図5Bの構造は、PML被覆512に荷電粒子515を封入するように、交互電荷の高分子電解質溶液にさらに浸没される。このプロセスはまた、基材510に以前に塗布された高分子電解質被覆の厚さを増加させる。このプロセスの結果を図5Cに図示する。
【0048】
いくつかの実施形態では、PML被覆512の1つ以上の層を形成するために、荷電治療薬が使用される。「荷電治療薬」とは、関連電荷を有する治療薬を意味する。例えば、治療薬は、本来的に帯電しているため(例えば、酸性基および/または塩の形態であってもよい塩基性基を有するため)、関連電荷を有してもよい。治療薬は、それに1つ以上の荷電官能基を提供するように化学修飾されているため、関連電荷を有してもよい。
【0049】
例えば、薬剤を可溶化するために(および場合によっては、腫瘍標的性を向上させ、薬物毒性を低減するために)、パクリタキセル等の抗腫瘍薬を含む、非水溶性または難水溶性薬剤の親水性ポリマーへの結合が、近年では実行されている。同様に、カチオンまたはアニオン性の非水溶性または難水溶性薬剤も開発されている。具体例としてパクリタキセルを挙げると、パクリタキセルN−メチルピリジニウムメシラート、およびN−2−ヒドロキシプロピルメチルアミドと共役したパクリタキセルを含む、この薬剤の種々のカチオン形態が知られており、パクリタキセル−ポリ(l−グルタミン酸)、パクリタキセル−ポリ(l−グルタミン酸)−PEOを含む、パクリタキセルの種々のアニオン形態も知られている。例えば、米国特許第6,730,699号、Duncan et al.,Journal of Controlled Release,74(2001)135、Duncan,Nature Reviews/Drug Discovery,Vol.2,May 2003,347、J.G.Qasem et al.,AAPS PharmSciTech 2003,4(2) Article 21を参照されたい。これらに加えて、米国特許第6,730,699号はまた、ポリ(d−グルタミン酸)、ポリ(dl−グルタミン酸)、ポリ(l−アスパラギン酸)、ポリ(d−アスパラギン酸)、ポリ(dl−アスパラギン酸)、ポリ(l−リジン)、ポリ(d−リジン)、ポリ(dl−リジン)、ポリエチレングリコールを伴う上記で記載されたポリアミノ酸の共重合体(例えば、パクリタキセル−ポリ(l−グルタミン酸)−PEO)、ならびに、ポリ(2−ヒドロキシエチルl−グルタミン)、キトサン、カルボキシメチルデキストラン、ヒアルロン酸、ヒト血清アルブミン、およびアルギン酸を含む、種々の他の荷電ポリマー(例えば、高分子電解質)と共役したパクリタキセルも説明している。パクリタキセルのなおも他の形態は、l’−マリルパクリタキセルナトリウム塩等のカルボキシル化された形態を含む(例えば、E.W.DAmen et al.,“Paclitaxel esters of malic acid as prodrugs with improved water solubility,”Bioorg.Med.Chem.,2000 Feb,8(2),pp.427−32を参照)。パクリタキセルが、第2’位置におけるヒドロキシル基を通して、ポリ−L−グルタミン酸(PGA)のΔカルボン酸に結合される、ポリグルタミン酸パクリタキセルが、Cell Therapeutics,Inc.(Seattle,WA,USA)によって生成されている(第7位置ヒドロキシル基もエステル化に利用可能である。)この分子は、ジグルタミルパクリタキセルを遊離させるように、カテプシンBによって生体内で開裂されるといわれている。この分子では、パクリタキセルは、ポリマーの骨格に沿ってカルボキシル基のうちのいくつかに結合され、1分子につき複数のパクリタキセル単位をもたらす。さらなる情報については、例えば、R.Duncan et al.,“Polymer−drug conjugates,PDEPT and PELT:basic principles for design and transfer from the laboratory to clinic,”Journal of Controlled Release 74(2001)135−146、C.Li,“Poly(L−glutamic acid)−anticancer drug conjugates,”Advanced Drug Delivery Reviews 54(2002)695−713、Duncan,Nature Reviews/Drug Discovery,Vol.2,May 2003,347、Qasem et al.,AAPS PharmSciTech 2003,4(2) Article 21、および米国特許第5,614,549号を参照されたい。
【0050】
上記および他の方法を使用して、パクリタキセルおよび無数の他の治療薬は、荷電ポリマー分子(例えば、高分子電解質)を含む、種々の荷電種と共有結合されるか、または他の方法で関連付けられてもよく、それにより、PMLプロセスで組み立てることができる、荷電薬剤およびプロドラッグを形成する。そのような荷電種は、投与前または投与時に、薬剤/プロドラッグからの開裂(例えば、酵素的開裂等による)のために適合されてもよい。
【0051】
次のステップでは、ゾル・ゲル型プロセスが高分子電解質層内で実行される。例えば、図5Cの構造は、無水溶媒、例えば、無水アルコール中で洗浄されてもよい。このことは、PML被覆512内で吸着されたままである水を除いて、構造から本質的に全ての水を除去する。次いで、構造は、ゾル・ゲル前駆体溶液に浸没される。例えば、構造は、無水アルコール溶媒中、または高アルコール含有量を有する水・アルコール溶媒(すなわち、水濃度が低すぎて加水分解・縮合反応が発生しない溶媒)中の半金属または金属アルコキシドの溶液に浸没されてもよい。作用理論に縛られることは望まないが、高分子電解質基の高電荷密度は、PML被覆512に周辺ゾル・ゲル前駆体溶液よりも高い水濃度を持たせると考えられる(例えば、ゾル・ゲル前駆体溶液から水分子を引き出すこと、および/または無水溶媒中の洗浄の間に水分子を保持することによって)。PML被覆512の中へ拡散時に、ゾル・ゲル前駆体は、増加した水濃度の環境に遭遇し、その場合、加水分解および縮合が発生し得る。PML被覆512は、層内のゾル・ゲル前駆体の原位置反応により膨張する。しかしながら、膨張により電荷密度も減少し、水濃度の低減を引き起こし、それが最終的にゾル・ゲル反応を停止させる。正確な機構にかかわらず、高分子電解質/セラミックハイブリッド被覆である、結果として生じる被覆は、均一に厚く、その厚さは、高分子電解質被覆内の層の数に依存する(より多くの層がより厚い被覆をもたらす)。結果として生じる構造を、基材510、粒子515、および高分子電解質/セラミックハイブリッド被覆514を示す、図5Dに図示する。
【0052】
次に、図5Dの構造は、図5E−5Gに示されるような熱処理されたセラミック被覆520を形成するように、例えば、約150℃から約600℃以上の間に及ぶ温度まで、加熱されてもよい。範囲の高い方で、セラミック被覆520は、高い割合のセラミック種(例えば、90重量%以上のセラミック種、例えば、95重量%から98重量%、99重量%、99.5重量%、99.9重量%、またはそれ以上を含有する)を有し、被覆の高分子電解質成分の実質的に全てが、焼成と呼ばれることもあるプロセスで、構造から脱ガスされている。上記で示されるように、結果として生じるシェルの厚さは、概して、ゾル・ゲル処理の前に堆積された高分子電解質層の数に比例するようになる。例えば、高分子電解質層につき約1nmの厚さが、D.Wang and F. Caruso,Chem.Mater.2002,14,1909−1913で報告されている。
【0053】
上述のように、いくつかの実施形態では、金属および半金属酸化物の炭化物および窒化物は、例えば、とりわけ、高温炭素熱還元または窒化物形成プロセスを使用して、形成されてもよい。
【0054】
温度範囲の低い方で、セラミック被覆520は、セラミック種に加えて、相当量のポリマー種(高分子電解質)を含有する。しかしながら、そのような場合、熱処理は、セラミック被覆520を増強するように作用する。
【0055】
さらに他の実施形態では、セラミック被覆は、水蒸気暴露によって形成されてもよい。例えば、多孔質のチタニアを用いた(TiOxを用いた)アナターゼ被覆は、60℃〜180℃の水蒸気に、0〜50モル%のシリカを含有したゾル・ゲル由来のチタニア薄膜を暴露させることによって形成されている(H.Imai et al.,J.Am.Ceram.Soc,82(9),1999,2301−2304)。チタン酸化物被覆は、光触媒性質および光起電力効果を保有すると報告されている(同上)。エタノール中のチタンイソプロポキシドおよび過酸化水素を使用するゾル・ゲル手段を通して、非常に低い温度で調整される、ナノ結晶アナターゼ(TiO2)膜の調整を報告する、Margit J.Jensen et al.,J.Sol−Gel Sci.Techn.(2006)39:229−233も参照されたい。結晶化は、水蒸気で飽和した雰囲気中において35℃での膜蒸着後に発生した。本発明では、そのような処理は、上記で説明されるように形成されるゾル・ゲル膨張PML層と併せて採用することができる。このことにより、例えば、非常に可撓性の(被覆が非常に薄いため)ハイブリッドポリマー・セラミック被覆でポリマー基材を被覆することが可能となる(条件が基材を破壊しないため)。
【0056】
とりわけ、治療薬がPML構造に提供され(上記参照)、その治療薬がより高い温度で阻害されてもよい場合に、上記のプロセス等の低温後処理プロセスもまた、所望され得る。
【0057】
熱処理温度および雰囲気と、図5Dの粒子515を形成する材料の性質とに応じて、熱処理プロセスは、粒子形成材料の除去をもたらさずに(しかし、場合によっては、粒子の化学修飾をもたらす)、図5Eに図示されるようなセラミックシェル520sに包み込まれた粒子515を残すか、または、粒子形成材料の部分的または完全除去をもたらして、それにより、図5Fに示されるような部分的または完全中空内部517を伴うセラミックシェル520sを生成するかする。
【0058】
粒子除去はまた、熱処理とは無関係に、例えば、熱処理がない場合に、熱処理の前に、または熱処理の後(この場合、熱処理が粒子を除去しない)に、行われてもよい。例えば、粒子は、溶解プロセスを経て除去されてもよい。具体例として、ポリマー粒子は、有機溶媒を使用して除去されてもよく(例えば、テトラヒドロフランによるポリスチレン粒子の除去)、無機粒子は、酸性または塩基性水溶液を使用して除去されてもよい(例えば、HFを使用するシリカ粒子の除去)。
【0059】
いくつかの実施形態では、ハイブリッドテンプレート粒子が採用され、その場合、各粒子の一部分が除去され(例えば、熱処理、溶解等によって)、各粒子の一部分が中空セラミックシェル内に残留する。そのような粒子の一例は、1つ以上のより小さい常磁性粒子(例えば、ポリスチレン基質内の常磁性粒子、ポリスチレンシェルを伴う常磁性粒子核等)を含有する、ポリスチレン球である。そのような粒子のポリスチレン部分は、例えば、熱によって、または有機溶媒溶解によって、除去することができる。
【0060】
ここで図5Gの構造を参照すると、高分子電解質多層被覆で基材510を(図5Aで行われるように)最初に被覆することなく、荷電粒子515が基材510上で静電的に堆積されていることを除いて、この構造は、図5Eを形成するために使用されるもののようなプロセスによって形成され、結果として、図5Gの構造中の粒子515は、図5Eの粒子515よりも基材510に近接している。
【0061】
いくつかの実施形態では、本発明によるセラミック被覆は、基材の表面全体を覆って提供される。いくつかの実施形態では、本発明によるセラミック被覆は、基材の表面一部分のみ(例えば、管腔側ステント表面のみ、反管腔側ステント表面のみ、反管腔側表面およびステント側面のみ、等)を覆って提供される。基材は、例えば、基材の一部分のみに、採用される種々の溶液(高分子電解質溶液、粒子溶液、ゾル・ゲル溶液)を暴露させることによって、部分的に被覆されてもよい。そうするための技法の例は、数ある技法の中でも、マスキングの使用、部分浸漬、ロール被覆(例えば、ステント等の管状デバイスの反管腔側表面に被覆を塗布することが所望される場合)、または、ブラシ、ローラ、スタンプ、またはインクジェットプリンタ等の適切な塗布デバイスの使用を含む、他の転写被覆技法を含む。
【0062】
LBL処理の直接的な性質により、および無荷電材料が種々の技法を使用して帯電させられてもよいという事実により、多種多様な基材および粒子材料が本発明の実践に採用されてもよい。
【0063】
したがって、適切な基材材料は、(a)ポリマー材料等の有機材料(例えば、有機種であって、一般的には50重量%以上の有機種を含有する材料)、および(b)金属材料(例えば、金属および金属合金)および非金属無機材料(例えば、とりわけ、炭素、半導体、ガラス、金属および非金属酸化物、金属および非金属窒化物、金属および非金属炭化物、金属および非金属ホウ化物、金属および非金属リン酸塩、ならびに金属および非金属硫化物)等の、無機材料(例えば、無機種であって、一般的には50重量%以上の無機種を含有する材料)を含む、種々の材料から選択されてもよい。適切な基材材料は、生体安定性材料および生体崩壊性材料(すなわち、体内に配置されると、溶解され、分解され、再吸収され、および/または他の方法で配置部位から除去される材料)を含む。
【0064】
非金属無機材料の具体例は、例えば、とりわけ、アルミニウム酸化物および遷移金属酸化物(例えば、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、タンタル、モリブデン、タングステン、レニウム、およびイリジウム、ならびにセラミック種の例として上記に記載されるもの等の他の金属)の酸化物を含む金属酸化物、シリコン、ならびにシリコン窒化物、シリコン炭化物、およびシリコン酸化物(ガラスセラミックと呼ばれることもある)を含有するもの等のシリコンベースの材料、リン酸カルシウムセラミック(例えば、ヒドロキシアパタイト)、窒化炭素等の炭素または炭素ベースのセラミック状材料のうちの1つ以上を含有する、材料から選択されてもよい。
【0065】
金属無機材料の具体例は、例えば、とりわけ、実質的に純粋な生体安定性および生体崩壊性金属(例えば、金、白金、パラジウム、イリジウム、オスミウム、ロジウム、チタン、タンタル、タングステン、およびルテニウム等の生体安定性金属、ならびにマグネシウム、亜鉛、および鉄等の生体崩壊性金属)、ならびに生体安定性および生体崩壊性金属合金、例えば、鉄およびクロムを含む生体安定性金属合金(例えば、白金に富んだ放射線不透過性ステンレス鋼を含む、ステンレス鋼)、ニッケルおよびチタンを含む合金(例えば、ニチノール)、コバルト、クロム、および鉄を含む合金(例えば、エルジロイ合金)、ニッケル、コバルト、およびクロムを含む合金(例えば、MP35N)、ならびにコバルト、クロム、タングステン、およびニッケルを含む合金(例えば、L605)を含む、コバルトおよびクロムを含む合金、ニッケルおよびクロムを含む合金(例えば、インコネル合金)、ならびにマグネシウム合金、亜鉛合金、および鉄合金等の生体崩壊性金属合金(数ある元素の中でも、Ce、Ca、Zn、Zr、およびLiの相互の組み合わせを含む、Heubleinらに対する米国特許出願公開第2002/0004060号を参照)から選択されてもよい。
【0066】
有機材料の具体例は、生体安定性および生体崩壊性ポリマーを含み、それらは、例えば、とりわけ、以下から選択されてもよい。ポリアクリル酸を含む、ポリカルボン酸ポリマーおよび共重合体;アセタールポリマーおよび共重合体;アクリル酸およびメタクリル酸ポリマーおよび共重合体(例えば、メタクリル酸n−ブチル);酢酸セルロース、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、セロハン、レーヨン、三酢酸レーヨン、ならびにカルボキシメチルセルロースおよびヒドロキシアルキルセルロース等のセルロースエーテルを含む、セルロースポリマーおよび共重合体;ポリオキシメチレンポリマーおよび共重合体;ポリエーテルブロックイミド、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、ポリエーテルイミド等のポリイミドポリマーおよび共重合体;ポリアリールスルホンおよびポリエーテルスルホンを含む、ポリスルホンポリマーおよび共重合体;ナイロン6,6、ナイロン12、ポリエーテルブロックコポリアミドポリマー(例えば、Pebax(登録商標)樹脂)、ポリカプロラクタム、およびポリアクリルアミドを含む、ポリアミドポリマーおよび共重合体;アルキド樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アリル樹脂、およびエポキシド樹脂を含む樹脂;ポリカーボネート;ポリアクリロニトリル;ポリビニルピロリドン(架橋したものおよびその他);ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル等のポリハロゲン化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルメチルエーテル等のポリビニルエーテル、ポリスチレンなどのビニル芳香族ポリマーおよび共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン共重合体(例えば、Kraton(登録商標)Gシリーズポリマーとして入手可能な、ポリスチレン−ポリエチレン/ブチレン−ポリスチレン(SEBS)共重合体)、スチレン−イソプレン共重合体(例えば、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン)、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、およびスチレン−イソブチレン共重合体(例えば、SIBS等のポリイソブチレン−ポリスチレンブロック共重合体)を含む、ビニル芳香族−炭化水素共重合体、ポリビニルケトン、ポリビニルカルバゾール、ならびにポリ酢酸ビニル等のポリビニルエステルを含む、ビニルモノマーのポリマーおよび共重合体;ポリベンゾイミダゾール;イオノマー;ポリエチレンオキシド(PEO)を含む、ポリアルキルオキシドポリマーおよび共重合体;ラクチド(乳酸、ならびにd−、l−、およびメソ−ラクチドを含む)、エプシロン−カプロラクトン、グリコリド(グリコール酸を含む)、ヒドロキシ酪酸エステル、ヒドロキシ吉草酸エステル、パラジオキサノン、炭酸トリメチレン(およびそのアルキル誘導体)、1,4−ジオキセパン−2−オン、1,5−ジオキセパン−2−オン、および6,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2−オンのポリマーおよび共重合体等の、ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、および脂肪族ポリエステルを含む、ポリエステル(ポリ乳酸およびポリカプロラクトンの共重合体が一具体例である);ポリフェニレンエーテル等のポリアリールエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンを含む、ポリエーテルポリマーおよび共重合体;ポリフェニレンスルフィド;ポリイソシアナート;ポリプロピレン、ポリエチレン(低密度および高密度、低分子量および高分子量)、ポリブチレン(ポリブト−1−エンおよびポリイソブチレン等)、ポリオレフィンエラストマー(例えば、Santoprene)、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴム、ポリ−4−メチル−ペン−1−エン、エチレン−アルファ−オレフィン共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、およびエチレン−酢酸ビニル共重合体等の、ポリアルキレンを含む、ポリオレフィンポリマーおよび共重合体;ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ(テトラフルオロエチレン−コ−ヘキサフルオロプロペン共重合体)(FEP)、変性エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、およびポリフッ化ビニリデン(PVDF)を含む、フッ素化ポリマーおよび共重合体;シリコーンポリマーおよび共重合体;ポリウレタン;p−キシリレンポリマー;ポリイミノカーボネート;ポリエチレンオキシド−ポリ乳酸共重合体等のコポリ(エーテル−エステル);ポリホスファジン;シュウ酸ポリアルキレン;ポリオキサアミドおよびポリオキサエステル(アミンおよび/またはアミド基を含有するものを含む);ポリオルトエステル;フィブリン、フィブリノゲン、コラーゲン、エラスチン、キトサン、ゼラチン、デンプン、ヒアルロン酸などのグリコサミノグリカンを含む、ポリペプチド、タンパク質、多糖類、および脂肪酸(およびそれらのエステル)等のバイオポリマー;ならびに、上記のものの混合物およびさらなる共重合体。
【0067】
本発明で使用するための粒子は、組成、サイズ、および、形状(例えば、球体、多面体、円柱、管、繊維、リボン状粒子、円盤状粒子、ならびに他の整形および不整形粒子形状)が大きく異なる。
【0068】
一般に、堆積された状態の粒子を横断する距離(例えば、球体、円柱、および管については直径、円盤状、リボン状粒子、繊維、多面体、ならびに他の整形および不整形粒子形状については幅)は、100ミクロン(μm)未満であり(長さはしばしばさらに長い)、例えば、100ミクロン以上から50ミクロン、25ミクロン、10ミクロン、5ミクロン、2ミクロン、1ミクロン、500nm、250nm、100nm、50nm、25nm、またはそれ以下に及ぶ。ある実施形態では、堆積された時の粒子を横断する距離が1000nm未満であり、より通常は、100nm未満であるという意味で、粒子は、サブミクロン粒子である。
【0069】
粒子の適切な材料は、基材の材料として使用するために上記で説明される、有機および無機材料から選択することができる。これらの材料だけにとどまらない、粒子のさらなる例は、とりわけ、Microparticles(Berlin,Germany)から入手可能なもの(http://www.microparticles.de/product_palette.html)等の、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)微小球およびポリスチレン微小球を含むポリマー微小球、アルミナ粒子、酸化チタン粒子、酸化タングステン粒子、酸化タンタル粒子、酸化ジルコニウム粒子、シリカ粒子、ケイ酸ルミニウム粒子等のケイ酸塩粒子、モンモリロナイト、ヘクトライト、ヒドロタルサイト、バーミキュライト、ラポナイト等の、粘土および雲母(随意で、挿入および/または剥離されてもよい)を含む合成または天然のフィロケイ酸塩、およびアタパルジャイト等の針状粘土、ならびに、様々な官能化POSSおよび重合POSS、ポリオキソメタレート(例えば、Keggin型、Dawson型、Preyssler型等)、フラーレン(例えば、「バッキーボール」)、炭素ナノ繊維、単層カーボンナノチューブ、および多層カーボンナノチューブ(いわゆる「少数層」ナノチューブを含む)を含む、多面体オリゴマーシルセスキオキサン(POSS)等の微粒子分子をさらに含むものから、選択されてもよい。
【0070】
いくつかの実施形態では、1つ以上の治療薬が粒子内に配置される。
【0071】
上述のように、いくつかの実施形態では、ポリマー被覆(例えば、治療薬溶出被覆、潤滑被覆等)は、本発明によるセラミック被覆の全部または一部分を覆って配置されてもよい。本明細書で使用されるように、ポリマー被覆は、単一のポリマー、または、例えば、50重量%以下から75重量%、90重量%、95重量%、97.5重量%、99重量%、またはそれ以上の1つ以上のポリマーを備える、ポリマーが異なる混合物を備えるものである。ポリマーは、生体安定性または生体崩壊性であってもよい。この目的で適切なポリマーは、例えば、基材材料として使用するために上記で説明されるポリマーのうちの1つ以上から選択されてもよい。これらの材料だけにとどまらない、ポリマーのさらなる例は、とりわけ、ポリ(スチレン−コ−イソブチレン)ブロック共重合体、ポリ(メタクリル酸メチル−コ−アクリル酸ブチル)ブロック共重合体、および熱可塑性ポリウレタン等の熱可塑性エラストマー、PTFE、FEP、ETFE、およびPVDF等のフッ素重合体、架橋チオール化コンドロイチン硫酸等の架橋ヒドロゲル、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコールまたはポリビニルピロリドン、ポリ(セバシン酸)またはポリ(アジピン酸)等の脂肪族ポリ酸無水物を含む、ポリ酸無水物、ポリ(4,4’−スチルベンジカルボン酸無水物)等の不飽和ポリ酸無水物、ポリ(テレフタル酸)等の芳香族ポリ酸無水物、ポリ(脂肪族−芳香族無水物)を含む、前述の無水物との相互の共重合体、ならびにポリ(エステル無水物)およびポリ(エーテル無水物)を含む、前述の無水物の他のモノマーとの共重合体、脂肪酸ベースの無水物、終端ポリ酸無水物、分岐ポリ酸無水物、架橋ポリ酸無水物、およびアミノ酸ベースのポリ酸無水物(例えば、N.Kumar et al.,“Polyanhydrides:an overview,”Advanced Drug Delivery Reviews 54(2002)889−910を参照)、ポリ乳酸およびポリ(ラクチド−コ−グリコリド)等の生分解性ポリエステル、ならびに前述のものの混合物を含む。
【0072】
治療薬溶出ポリマー被覆の厚さは、大きく異なってもよく、通常は、厚さが25nm以下から50nm、100nm、250nm、500nm、1μm、2.5μm、5μm、10μm、25μm、50μm、100μm、またはそれ以上に及ぶ。上述のように、いくつかの実施形態では、ポリマー被覆の厚さは、表面上に存在するセラミックシェルのサイズによって決定されるが、他の実施形態ではそうではない。
【0073】
いくつかの実施形態では、ポリマー被覆は、治療薬溶出ポリマー被覆である。本明細書で使用されるような、「治療薬溶出ポリマー被覆」は、治療薬およびポリマーを含む被覆であり、例えば、被検体との接触時、または被検体への埋込あるいは挿入時に、そこから治療薬の少なくとも一部分が溶出する。治療薬溶出ポリマー被覆は、通常は、被覆内に、例えば、1重量%以下から2重量%、5重量%、10重量%、25重量%、50重量%、またはそれ以上の単一の治療薬または治療薬の混合物を含む。治療薬は、例えば、とりわけ、以下で記載されるものから選択されてもよい。
【0074】
ポリマー被覆は、任意の適切な方法を使用して塗布されてもよい。例えば、被覆が、熱可塑特性を有する1つ以上のポリマーを含有する場合、被覆は、例えば、(a)ポリマー、および所望に応じて治療薬等の任意の他の随意的な種を含有する、溶解物を提供し、(b)後に溶解物を冷却することによって、形成されてもよい。別の例では、被覆は、例えば、(a)ポリマー、硬化剤、および所望に応じて治療薬等の任意の他の随意的な種を含有する、硬化性組成物を提供し、(b)組成物を硬化することによって、硬化性組成物(例えば、紫外線硬化性組成物)から形成されてもよい。さらに別の例として、被覆は、例えば、(a)1つ以上の溶媒種、ポリマー、および所望に応じて治療薬等の任意の他の随意的な種を含有する、溶液を提供し、(b)後に溶媒種を除去することによって、形成されてもよい。溶解物、溶液、または分散は、例えば、数ある方法の中でも、ロール被覆(例えば、ステント等の管状デバイスの反管腔側表面に被覆を塗布することが所望される場合)、または、ブラシ、ローラ、スタンプ、またはインクジェット等の適切な塗布デバイスを使用する、浸漬による、およびスプレーコーティングによる塗布を含む、他の転写被覆技法によって塗布されてもよい。
【0075】
多種多様な疾患および症状の治療に使用され得る、遺伝子治療薬、非遺伝子治療薬、および細胞を含む、多種多様な治療薬が、本発明と併せて採用されてもよい。
【0076】
本発明に関連して使用するための適切な治療薬は、例えば、以下のうちの1つ以上から選択されてもよい。(a)ヘパリン、ヘパリン誘導体、ウロキナーゼ、クロピドグレル、およびPPack(デキストロフェニルアラニンプロリンアルギニンクロロメチルケトン)等の抗血栓剤、(b)デキサメタゾン、プレドニゾロン、コルチコステロン、ブデソニド、エストロゲン、スルファサラジン、およびメサラミン等の抗炎症剤、(c)パクリタキセル、5−フルオロウラシル、シスプラチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エポチロン、エンドスタチン、アンギオスタチン、アンギオペプチン、平滑筋細胞増殖を阻止することが可能なモノクローナル抗体、およびチミジンキナーゼ阻害剤等の抗腫瘍/抗増殖/抗縮瞳剤、(d)リドカイン、ブピバカイン、およびロピバカイン等の麻酔薬、(e)D−Phe−Pro−Argクロロメチルケトン、RGDペプチド含有化合物、ヘパリン、ヒルジン、抗トロンビン化合物、血小板受容体拮抗剤、抗トロンビン抗体、抗血小板受容体抗体、アスピリン、プロスタグランジン阻害剤、血小板阻害剤、およびマダニ抗血小板ペプチド等の抗凝固剤、(f)成長因子、転写活性化因子、翻訳促進因子等の血管細胞成長促進因子、(g)成長因子阻害剤、成長因子受容体拮抗剤、転写抑制因子、翻訳抑制因子、複製阻害剤、阻害抗体、成長因子に対する抗体、成長因子および細胞毒素から成る二機能性分子、抗体および細胞毒素から成る二機能性分子等の血管細胞成長阻害剤、(h)タンパク質キナーゼおよびチロシンキナーゼ阻害剤(例えば、チロホスチン、ゲニステイン、キノキサリン)、(i)プロスタサイクリン類似体、(j)コレステロール降下剤、(k)アンジオポエチン、(l)トリクロサン、セファロスポリン、マガイニン、アミノグリコシド、およびニトロフラントイン等の抗微生物ペプチド等の、抗菌剤、(m)細胞毒性剤、細胞増殖抑制剤、および細胞増殖影響因子、(n)血管拡張剤、(o)内在性血管作動性機構に干渉する薬剤、(p)モノクローナル抗体等の白血球動員の阻害剤、(q)サイトカイン、(r)ホルモン、(s)ゲルダナマイシンを含む、HSP90タンパク質(すなわち、分子シャペロンまたはハウスキーピングタンパク質であり、細胞の成長および生存に関与する他のクライアントタンパク質/シグナル形質導入タンパク質の安定性および機能のために必要とされる、ヒートショックタンパク質)の阻害剤、(t)ベータ遮断薬、(u)bARKct阻害剤、(v)ホスホランバン阻害剤、(w)Serca2遺伝子/タンパク質、(x)アミノキナゾリン、例えば、レシキモドおよびイミキモド等のイミダゾキノリンを含む、免疫反応修飾因子、(y)ヒトアポリポタンパク質(例えば、AI、AII、AIII、AIV、AV等)、(z)ラロキシフェン、ラソフォキシフェン、アルゾキシフェン、ミプロキシフェン、オスペミフェン、PKS3741、MF101、およびSR16234等の選択的エストロゲン受容体モジュレータ(SERM)、(aa)ロシグリタゾン、ピオグリタゾン、ネトグリタゾン、フェノフィブラート、ベキサロテン、メタグリダセン、リボグリタゾン、およびテサグリタザル等のPPAR作動薬、(bb)アルプロスタジルまたはONO8815Ly等のプロスタグランジンE作動薬、(cc)トロンビン受容体活性化ペプチド(TRAP)、(dd)ベナゼプリル、フォシノプリル、リシノプリル、キナプリル、ラミプリル、イミダプリル、デラプリル、モエキシプリル、およびスピラプリルを含む、バソペプチターゼ阻害剤、(ee)チモシンベータ4。
【0077】
好ましい非遺伝子治療薬は、とりわけ、パクリタキセル(その微粒子形態、例えば、アルブミン結合パクリタキセルナノ粒子(例えば、ABRAXANE)のようなタンパク質結合パクリタキセル粒子を含む)等のタキサン、シロリムス、エベロリムス、タクロリムス、ゾタロリムス、Epo D、デキサメタゾン、エストラジオール、ハロフジノン、シロスタゾール、ゲルダナマイシン、ABT−578(Abbott Laboratories)、トラピジル、リプロスチン、アクチノマイシンD、Resten−NG、Ap−17、アブシキシマブ、クロピドグレル、Ridogrel、ベータ遮断薬、bARKct阻害剤、ホスホランバン阻害剤、Serca2遺伝子/タンパク質、イミキモド、ヒトアポリポタンパク質(例えば、AI−AV)、成長因子(例えば、VEGF−2)、先述のものの誘導体を含む。
【0078】
必ずしも上記に記載されるものにとどまらない、多数の治療薬が、血管および他の治療養生法のための候補として、例えば、再狭窄を標的にする薬剤として識別されている。そのような薬剤は、本発明の実践に有用であり、適切な例は、以下のうちの1つ以上から選択されてもよい。(a)ジルチアゼムおよびクレンチアゼム等のベンゾチアザピン、ニフェジピン、アムロジピン、およびニカルダピン等のジヒドロピリジン、およびベラパミル等のフェニルアルキルアミンを含む、Caチャネル遮断薬、(b)ケタンセリンおよびナフチドロフリル等の5−HT拮抗剤、ならびにフルオキセチン等の5−HT取込阻害剤を含む、セロトニン経路調節因子、(c)シロスタゾールおよびジピリダモール等のホスホジエステラーゼ阻害剤、フォルスコリン等のアデニル酸/グアニル酸シクラーゼ刺激剤、ならびにアデノシン類似体を含む、環状ヌクレオチド経路剤、(d)プラゾシンおよびブナゾシン等のα拮抗剤、プロプラノロール等のβ拮抗剤、ならびにラベタロールおよびカルベジロール等のα/β拮抗剤を含む、カテコールアミン調節因子、(e)ボセンタン、シタキスセンタンナトリウム、アトラセンタン、エンドネンタン等のエンドセリン受容体拮抗剤、(f)ニトログリセリン、二硝酸イソソルビド、および亜硝酸アミル等の有機硝酸塩/亜硝酸塩、ニトロプルシドナトリウム等の無機ニトロソ化合物、モルシドミンおよびリンシドミン等のシドノンイミン、ジアゼニウムジオラートおよびアルカンジアミンのNO付加体等のノノエート、低分子量化合物(例えば、カプトプリル、グルタチオン、およびN−アセチルペニシラミンのS−ニトロソ誘導体)および高分子量化合物(例えば、タンパク質、ペプチド、オリゴ糖、多糖類、合成ポリマー/オリゴマー、および天然ポリマー/オリゴマーのS−ニトロソ誘導体)を含むS−ニトロソ化合物、ならびに、C−ニトロソ化合物、O−ニトロソ化合物、N−ニトロソ化合物、およびL−アルギニンを含む、酸化窒素供与体/放出分子、(g)シラザプリル、フォシノプリル、およびエナラプリル等のアンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、(h)サララシンおよびロサルチン等のATII−受容体拮抗剤、(i)アルブミンおよびポリエチレンオキシド等の血小板粘着阻害剤、(j)シロスタゾール、アスピリン、およびチエノピリジン(チクロピジン、クロピドグレル)を含む血小板凝集阻害剤、ならびにアブシキシマブ、エピチフィバチド、チロフィバン等のGPIIb/IIIa阻害剤、(k)ヘパリン、低分子量ヘパリン、硫酸デキストラン、およびβ−シクロデキストリンテトラデカ硫酸エステル等のヘパリノイド、ヒルジン、ヒルログ、PPACK(D−phe−L−プロピル−L−arg−クロロメチルケトン)、およびアルガトロバン等のトロンビン阻害剤、アンチスタチンおよびTAP(マダニ抗凝固ペプチド)等のFXa阻害剤、ワルファリン等のビタミンK阻害剤、ならびに活性化プロテインCを含む、凝固経路調節因子、(l)アスピリン、イブプロフェン、フルルビプロフェン、インドメタシン、およびスルフィンピラゾン等のシクロオキシゲナーゼ経路阻害剤、(m)デキサメタゾン、プレドニゾロン、メトプレドニゾロン、およびヒドロコルチゾン等の天然および合成コルチコステロイド、(n)ノルジヒドログアヤレチン酸およびコーヒー酸等のリポキシゲナーゼ経路阻害剤、(o)ロイコトリエン受容体拮抗剤、(p)E−およびP−セレクチンの拮抗剤、(q)VCAM−1及びICAM−1相互作用の阻害剤、(r)PGE1およびPGI2等のプロスタグランジン、ならびにシプロステン、エポプロステノール、カルバサイクリン、イロプロスト、およびベラプロスト等のプロスタサイクリン類似体を含む、プロスタグランジンおよびそれらの類似体、(s)ビスホスホネートを含むマクロファージ活性化防止剤、(t)ロバスタチン、プラバスタチン、アトルバスタチン、フルバスタチン、シンバスタチン、およびセリバスタチン等のHMG−CoA還元酵素阻害剤、(u)魚油およびオメガ−3−脂肪酸、(v)プロブコール、ビタミンCおよびE、エブセレン、トランス−レチノイン酸、SOD(オルゴテイン)、SOD模倣体、ベルテポルフィン、ロスタポルフィン、AGI1067、およびM40419等のフリーラジカル捕捉剤/酸化防止剤、(w)bFGF抗体およびキメラ融合タンパク質等のFGF経路剤、トラピジル等のPDGF受容体拮抗剤、アンギオペプチンおよびオクレオチド等のソマトスタチン類似体を含むIGF経路剤、ポリアニオン薬剤(ヘパリン、フコイジン)、デコリン、およびTGF−β抗体等のTGF−β経路剤、EGF抗体、受容体拮抗剤、およびキメラ融合タンパク質等のEGF経路剤、サリドマイドおよびそれらの類似体等のTNF−α経路剤、スロトロバン、バピプロスト、ダゾキシベン、およびリドグレル等のトロンボキサンA2(TXA2)経路調節因子、ならびにチロホスチン、ゲニステイン、キノキサリン誘導体等のタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤を含む、種々の成長因子に影響を及ぼす薬剤、(x)マリマスタット、イロマスタット、メタスタット、多流酸ペントサン、レビマスタット、インサイクリニド、アプラタスタット、PG116800、RO1130830、またはABT518等のマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)経路阻害剤、(y)サイトカラシンB等の細胞運動阻害剤、(z)プリン類似体(例えば、塩素化プリンヌクレオシド類似体である、6−メルカプトプリンまたはクラドリビン)、ピリミジン類似体(例えば、シタラビンおよび5−フルオロウラシル)、およびメトトレキセート等の抗代謝剤、ナイトロジェンマスタード、スルホン酸アルキル、エチレンイミン、抗生物質(例えば、ダウノルビシン、ドキソルビシン)、ニトロソ尿素、シスプラチン、微小管動態に影響を及ぼす薬剤(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、コルヒチン、パクリタキセル、Epo D、およびエポチロン)、カスパーゼ活性化剤、プロテアソーム阻害剤、血管形成阻害剤(例えば、エンドスタチン、アンギオスタチン、およびスクアラミン)、ラパマイシン(シロリムス)およびその類似体(例えば、エベロリムス、タクロリムス、ゾタロリムス等)、セリバスタチン、フラボピリドール、およびスラミンを含む、抗増殖/抗腫瘍剤、(aa)ハロフジノンまたは他のキナゾリノン誘導体、ピルフェニドン、およびトラニラスト等のマトリックス沈着/組織経路阻害剤、(bb)VEGFおよびRGDペプチド等の内皮化促進因子、および(cc)ペントキシフィリン等の血液レオロジー調節因子。
【0079】
本発明の実践に有用である、さらなる治療薬は、Kunzらに対する米国特許第5,733,925号でも開示されている。
【0080】
ここで図面を参照して、付加的な実施形態について論議する。
【0081】
図6Aの概略断面図に示された構造は、図4Aおよび4Bで説明されたものに類似しており、基材610を含み、基材610はその上に配置される、本発明によるセラミック被覆620を有し、基材610と共形であるセラミック層620cによって接続される、隆起セラミックシェル620sを含んでいる。この実施形態では治療薬を含む、セラミック被覆620を覆って配置された、ポリマー被覆630が示されている。しかしながら、図4Aおよび4Bと違って、図6Aのセラミックシェル620sは、常磁性粒子640を含有する。常磁性粒子は、通常は、ある遷移元素、希土類元素、およびアクチニド元素の金属、合金、または化合物(例えば、鉄、磁鉄鉱を含む酸化鉄等)である、種々の常磁性材料から選択され得る。
【0082】
そのような構造は、例えば、上記のLBL/ゾル・ゲルプロセス用のテンプレートとして組み込まれた常磁性粒子を含有する、ポリマー粒子(例えば、ポリスチレン球)を使用して形成されてもよい。球体のポリスチレン成分を除去した後(例えば、熱処理または溶解によって)、常磁性粒子は、セラミックシェル620sの内側に残留する。常磁性粒子640は、セラミックシェル620sによって外部環境から分離される。常磁性であるため、外部磁場を使用して、セラミックシェル620sの内側でこれらの粒子640を振動させることができる。このことは、例えば、数ある効果の中でも、治療薬がポリマー被覆から放出される速度を増加させることができる、熱を引き起こす。代替実施形態として、磁性材料(例えば、上記のもののうちの1つ)が、ポリマー粒子の外側に配置される(例えば、磁鉄鉱被覆を有するポリスチレン粒子が提供されてもよい)。さらなる情報については、例えば、Marina Spasova et al.,“Magnetic and optical tunable microspheres with a magnetite/gold nanoparticle shell,”J.Mater.Chem.,15,(2005)2095−2098を参照されたい。上記のように、これらの実施形態では、磁性材料は、最終的に形成されるセラミックシェルに埋め込まれる。
【0083】
図6Bは、図6Aのような構造であるが、ポリマー被覆630がない。図6Aの構造のように、外部磁場を使用してこの構造を加熱することができる。例えば、壊死、血栓症、および他の生理学的効果を体内で引き起こすために、生成される高温が使用され得る。例えば、図6Bに示されたもののような被覆は、動脈瘤の治療のための塞栓コイル上に提供されてもよい。動脈瘤への埋込後に、コイルを加熱し、それにより、動脈瘤内で血栓症を引き起こすことができる。
【0084】
上述のように、本発明によって、図4A、4B、および6Aの構造よりもはるかに複雑な構造を形成することができ、セラミック被覆とそれらの上に横たわるポリマー被覆との間でさらに多大な相互繋止を生成することが可能である。
【0085】
一実施形態では、そのような構造は、2つの荷電粒子を使用して生成される。例えば、図7A−7Eを参照すると、第1のステップでは、LBLプロセスを使用して(例えば、交互電荷の高分子電解質溶液への浸漬によって)、PML被覆712aが基材710上に形成される。図7Aに示された実施形態では、高分子電解質多層被覆712aの最上面の高分子電解質層は、正電荷を持つ。後続のステップで、図7Bに示されるように、最上層が負電荷を持つPML被覆712bをそれぞれ備える、球状粒子715bが、PML被覆712a上に静電的に集合させられる。
【0086】
次に球状粒子715cが、最上層が正電荷を持つPML被覆712cを各々備えて、P図7Bの構造上で静電的に集合させられる。結果として生じる構造を図7Cに図示する。粒子715cは、粒子715bよりも大きい。さらに、示された実施形態では、1つ以上の常磁性核718が各粒子715c内に位置する。具体例として、ポリスチレン球715b、715cが採用されてもよい。例えば、200nmの直径を有する、より小さい球体、および超常磁性核とともに500の直径を有する、より大きい球体が、Microparticles(Berlin,Germany)から購入されてもよい。核718に磁場を受けさせることによって、磁力が生成され(図7Cの矢印によって図示される)、被覆粒子715cは、図7Dに示されるように、下位被覆粒子715bとのより密接な関係へと促される。このことは、より大きい被覆粒子715cが、1つの球体のみにしがみつくよりもむしろ、いくつかのより小さい被覆粒子715bと接触する可能性を向上させる。図7Cおよび図7Dを比較されたい。
【0087】
次いで、所望に応じて、種々のPML被覆712a、712b、712cの厚さを増加させ、さらにそれらを結合して単一の連続PML構造にするために、図7Dの構造は、さらなる高分子電解質堆積ステップ(例えば、交互電荷の高分子電解質溶液への浸漬による)を受けることができる。結果は、図7Eのような構造である。次に、上記で論議されたゾル・ゲル前駆体溶液を使用して、ゾル・ゲル型プロセスがPML構造内で実行され、それにより、図7Fに示されるような高分子電解質/セラミックハイブリッド構造714を形成する。
【0088】
次いで、図7Fの構造は、粒子715bおよび715cを除去するために、さらなる処理を受けてもよい。例えば、粒子715bおよび715cが、事実上ポリマー(例えば、ポリスチレン)であると仮定すると、図7Fの構造は、ポリマー粒子715bおよび715c(同様に、高分子電解質/セラミックハイブリッド構造714のポリマー成分)を実質的に除去するのに十分な温度まで加熱されてもよく、それにより、図7Gに示されたセラミック被覆720を生成する。連続構造である被覆720は、基材被膜部分720cと、多数のセラミックシェル720sとを含む。大きいセラミックシェル720内では、所望であれば、生体内で(または生体外で)医療デバイスを加熱するために用いられ得る、常磁性核718が見出される。
【0089】
図7Gの構造は、セラミックシェル720sによって完全に被包化/包囲される空間r1、ならびに外部環境に対して開いた空間r2を含有することに留意されたい。ポリマー被覆730が図7Hに示されるように塗布された場合、空間r2は、ポリマー被覆730に、セラミック被覆720との完全相互繋止界面を形成する機会を提供する。
【0090】
別の実施形態では、前の実施形態で説明された大きい球体が、とりわけ、カーボンナノ繊維またはカーボンナノチューブ等の細長い粒子と交換され得る。上記の大きい球体と同様に、細長い粒子は、PML被覆で外側被覆される。例えば、H.Kong et al.,“Polyelectrolyte−functionalized multiwalled carbon nanotubes:preparation,characterization and layer−by−layer self−assembly,”Polymer 46(2005)2472−2485で説明されるように、高分子電解質官能化カーボンナノチューブを採用することができ、またはPML被覆とともにカーボンナノチューブを採用することができる。図7Cの構造を生成するために、上記で説明されたような(大きい球体よりもむしろ細長い粒子を使用することを除く、かつ磁力を使用しない)ステップに従うと、反対の電荷を有する細長い粒子によって接続される、第1の電荷の小さい球体の底層が最終的に生じる。上記の図7E−7Gで説明される、さらなる処理(高分子電解質堆積、ゾル・ゲル前駆体への暴露、熱処理)は、図8Aに図示されるような構造をもたらす。図7Gのように、図8Aは、本発明によるセラミック被覆820がその上に配置されている、基材810を含む。領域820は、基材810と共形であるセラミック層820cによって接続される、隆起セラミック中空球状シェル820s1を含む。しかしながら、図7Gと違って、図8Aの連続セラミック被覆820はさらに、細長い粒子815を含有する、非中空で非球状のセラミックシェル820s2を含む。例えば、細長い粒子は、炭素繊維、カーボンナノチューブ、または処理に耐える任意の他の細長い粒子であってもよい。図8Aを見て分かるように、これらのセラミック被覆繊維815、820s2は、中空セラミック球820s1を相互に接続する。あるいは、熱処理プロセス中に除去される細長い粒子が使用されてもよく、その場合、図8Bのような構造が結果的に生じ、中空セラミック繊維820s2は、中空セラミック球820s1を相互に接続する。(図7Gの場合のように、より大きいセラミック球よりもむしろ)下位セラミック球を相互接続するために薄い繊維が使用されるため、図8Aおよび8Bのような構造は、図7Gの構造よりも屈折または屈曲に耐えられるはずである。
【0091】
図7Gと同様に、図8Aおよび8Bの構造は、セラミックシェル(すなわち、シェル820s1、820s2)によって完全に被包化/包囲される空間r1、ならびに外部環境に対して開いた空間r2を含有する。これらの空間r2は、図8Cで見られるように、ポリマー被覆830に、セラミック被覆820との完全相互繋止界面を形成する機会を提供する。
【0092】
本発明の他の実施形態では、球体の使用は完全に排除される。例えば、荷電基材(例えば、LBL被覆基材)に、反対の電荷の細長い粒子(例えば、LBL被包化粒子)の層を塗布することができ、その粒子は、例えば、数ある可能性の中でも、カーボンナノチューブ等の耐熱性粒子、またはポリスチレン繊維等の熱不安定性粒子であってもよい。粒子を吸着した後に、細長い粒子を含有し得る、または完全または部分的に中空であり得る、隆起セラミックシェルを含有するセラミック被覆を生成するように、LBL処理、ゾル・ゲル処理、および熱処理が行われてもよい(上記参照)。
【0093】
この実施形態の変化例では、所与の電荷(例えば、負電荷)を有する基材(例えば、LBL被覆基材)に、反対の電荷(例えば、正電荷)の細長い粒子(例えば、LBL被覆粒子)の第1の層を塗布することができ、その後に、反対の電荷(例えば、負電荷)の細長い粒子(例えば、LBL被覆粒子)の第2の層等が続く。これらのステップの後には、さらなるLBL高分子電解質処理、ゾル・ゲル処理、および熱処理が続いてもよい。そのようなプロセスは、細長い粒子の比較的無作為な配向を生成し、隆起セラミックシェル(再度、そのシェルは、細長い粒子で充填されるか、部分的または完全に中空であり得る)の複雑な網目を生成する。
【0094】
堆積時に溶液内で細長い粒子を配向させるために、AC電場を使用することによって、より規則的な構造が生成されてもよい。例えば、カーボンナノチューブは、電場に応じた誘起双極子の形成の結果として、自らを整列させることが知られている。DC電場は、ナノチューブを整列させ、移動させるが、AC電場は、それらを整列させるのみである。これに関して、例えば、M.Senthil Kumar et al.,“Influence of electric field type on the assembly of single walled carbon nanotubes,”Chemical Physics Letters 383(2004)235−239を参照されたい。また、米国特許出願第11/368,738号も参照されたい。例えば、電場整列を使用して、種々の層の粒子が、単一方向に整列されてもよい。別の例として、電場整列は、正電荷および負電荷を持つ層を、相互に対して直角に整列させるために使用されてもよい。これらのステップの後には、再度、さらなるLBL高分子電解質処理、ゾル・ゲル処理、および熱処理が続いてもよく、それにより、カーボンナノチューブに基づく内部補強ととともに、強力に接続されたセラミックネットワークを形成する。
【0095】
本発明のさらなる実施形態が、図9A−9Dと併せて図示される。図9Aに示されるように、1つ以上のくぼみ(例えば、止まり穴910b)を有する基材910が、PML被覆で被覆される。内側の正の高分子電解質層912pおよび外側の負の高分子電解質層912nといった、2つの層が図9Aで概略的に示されているが、単一の層または3つ以上の層が塗布されてもよい。また、外層は、図示されるような負の層よりもむしろ、正の層となり得る。基材は、例えば、ステントであってもよく、その内側で多数の止まり穴が形成される(例えば、レーザアブレーションを介して)。
【0096】
後続のステップでは、正の高分子電解質層912p、または正の高分子電解質層で終端する複数の交互の高分子電解質層は、上方の基材表面を覆う負の高分子電解質層912n層の部分に選択的に塗布されるが、止まり穴910bの内側の部分には塗布されず、図9Bのような構造をもたらす。この構造は、止まり穴919bの内側の負の表面電荷、および止まり穴の外側の正の表面電荷を有する。(図9Aの構造が外側の正の層を有するものである場合、止まり穴の表面が正の表面電荷を有し、構造の上面が負の表面電荷を有するように、このステップが逆転される)。そのような選択的塗布が達成されてもよい技法の例は、PML被覆がポリマー(ポリジメチルシロキサン)スタンプの表面上に吸着される技法を説明する、J.Park et al,Adv.Mater.2004,16(6),520−525で説明されている。スタンプ上に吸着される第1の層は、カチオン性ポリアリルアミン塩酸塩(PAH)であり、その後に、アニオン性スルホン化ポリスチレン(SPS)およびカチオン性ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(PDAC)の交互の層が続く。最後の層は、カチオン性PDACである。次いで、スタンプは、負の表面電荷を有する基材と接触させられ、多層がその全体でスタンプから基材へと転写される。転写パターンの最上層は、アニオン性PAH層である。
【0097】
この時点で、図9Bの構造は、負の表面電荷を有する粒子に暴露される。図9Cに示された実施形態では、粒子は、正電荷を持つ高分子電解質層921pで終端するPML被覆層を伴う球体915である。次いで、本明細書の他の場所にあるように、図9Cの構造には、随意で、所望に応じて付加的な高分子電解質層を提供することができ、その後に、ゾル・ゲル処理および熱処理が続いて、基材と共形であるセラミック層920cによって接続される隆起セラミックシェル920s(図9Dでは、シェルは中空であるが、本明細書の他の場所で記述されるように、中空である必要はない)を含む、セラミック被覆を有する基材910を含む、図9Dのような構造を生成する。この例では、隆起セラミックシェル920sは、止まり穴の中でのみ見出される。
【0098】
本発明の別の局面によれば、基材の使用が完全に排除され、結果として生じる生成物は、セラミック層で被覆されたカーボンナノチューブの集合である。例えば、図10Aを参照すると、カーボンナノチューブ1010には、高分子電解質多層被覆1012が提供され得る。次いで、この構造は、ゾル・ゲル前駆体に暴露され、図10Bに示されるような高分子電解質/セラミックハイブリッド被覆1014を形成し、その後に熱処理が続いて、図10Cに示されるようなセラミック被覆1020を伴うカーボンナノチューブ1010を生成する。そのようなカーボンナノチューブには、多くの分野での用途があり、例えば、ポリマーまたは金属中の補強粒子としての使用を見出す。カーボンナノチューブは通常、π−π結合による凝集の危険性があり、それはセラミック被覆によって破壊される。
【0099】
(実施例1)
ここで、図3Bに示されるような被覆を生成するための手順を説明する。
【0100】
溶液を以下のように調製する。(a)PAH溶液:ポリ(アリルアミン塩酸塩)(PAH)(分子量約70,000)(Sigma−Aldrich)の溶液をDI水中で、以下の構成物質(1g/LのPAH、0.2MのNaCl、および0.05MのNaAc(酢酸ナトリウム緩衝溶液、pH=5.6))で、作製した。(b)PSS溶液:以下の構成物質で、ポリ(ナトリウム4−スチレンスルホナート)(PSS)(分子量約70,000)(Sigma−Aldrich)の溶液をDI水中で、以下の構成物質(1g/LのPSS、0.2MのNaCl、0.05MのNaAc(酢酸ナトリウム緩衝溶液、pH=5.6))で、作製した。(c)ポリスチレン(PS)粒子溶液:ポリ(ナトリウム4−スチレンスルホナート)粒子(500nm)(Forschungs− und Entwicklungslaboratorium,Berlin,Germany)の溶液を濃縮溶液(5重量%)として受容し、0.5重量%の濃度まで脱イオン(DI)水中で希釈した。(d)ゾル・ゲル溶液:2gのTEOS(Alfa Aesar, Johnson Matthey Catalog Company,Inc.,Ward Hill,MA,USA)を100mLのエタノール(無水、変性、製品番号EX0285−3、EMD Chemicals,Gibstown,NJ,USA)と合わせて10分間混合し、その後、10mLのDI水および1mLの水酸化アンモニウム(水中で25%)(Sigma−Aldrich)を添加し、その後さらに混合を続けた。
【0101】
以下のプロセスパラメータ(P=200mトール、300ワット、ガス1(アルゴン)=250sccm、ガス2(酸素)=200sccm、t=180s)を使用して、March AP−1000 Plasma Systemにおいてステンレス鋼316Lの電解研磨した試片(3.5”×0.79”×0.03”)がRF酸素プラズマで洗浄される。
【0102】
試片に1.5の二重層(PAH/PSS/PAH)を提供し、その後にPS粒子層が続き、その後に1.5の二重層(PAH/PSS/PAH)が続く。結果として生じる構造は、図5A−5Cにおいて概略的に示されるもの(上記で説明された)と類似する。各高分子電解質層については、試片をPAHまたはPSS溶液(上記で説明されるように調製される)のビーカーに浸没し、攪拌器で20分間撹拌する。PS粒子層については、試片をPS粒子溶液(上記で説明されるように調製される)のビーカーに浸没し、攪拌器で1時間撹拌する。吸着されない高分子電解質/粒子を除去するために、各層後に3回のDI水洗浄を行い、試片を次の溶液の中へ直接入れる。
【0103】
次いで、この構造を、ゾル・ゲル溶液(上記で説明されるように調製される)のビーカーに約16時間沈殿させる。ゾル・ゲル溶液への暴露後に、3回のDI水洗浄を行う。図5Fで概略的に示されるもの(上記で説明される)と類似する、結果として生じる構造を、周囲温度でオーブンに入れ、約1.5時間の期間にわたって540℃の最終温度まで上昇させる。6時間の総サイクル時間(上昇および540℃持続)後に、オーブンをオフにし、サンプルを一晩冷却させる。最終構造は、図5Fで概略的に示されるもの(上記で説明される)と類似する。
【0104】
(実施例2)
ここで、図11に図示されるもののような被覆を生成するための手順を説明する。
【0105】
PAH溶液、PSS溶液、およびPS粒子溶液を、上記の実施例1で説明されるように調製する。ゾル・ゲル溶液については、実施例1の処方を半分にした溶液を調製した。アタパルジャイト粒子溶液(Atta)を以下のように調製する。50g/Lのアタパルジャイト粘度(ATTAGEL(登録商標)50)(BASF)を、25mMのNaCl中で提供する。
【0106】
以下のプロセスパラメータを使用して、March AP−1000 Plasma Systemにおいて16mmのLiberte(登録商標)ステンレス鋼ステントをRF酸素プラズマで洗浄する。P=200mトール、300ワット、ガス1(アルゴン)=250sccm、ガス2(酸素)=200sccm、t=180s。
【0107】
ステントに3.5の二重層(PAH/PSS/PAH/PSS/PAH/PSS/PAH)を提供し、その後に2つの二重層(Atta/PAH/Atta/PAH)が続き、その後にPS粒子層が続き、その後に2つの二重層(PAH/PSS/PAH/PSS)が続く。各高分子電解質層およびアタパルジャイト粒子層については、ステントをPAH、PSS、またはAtta溶液(上記で説明されるように調製される)のビーカーに浸没し、攪拌器で20分間撹拌する。PS粒子層については、ステントをPS粒子溶液(上記で説明されるように調製される)のビーカーに浸没し、攪拌器で1時間撹拌する。吸着されない高分子電解質/粒子を除去するために、各層後に3回のDI水洗浄を行い、ステントを次の溶液の中へ直接入れる。
【0108】
次いで、この構造を、ゾル・ゲル溶液(上記で説明されるように調製される)のビーカーに約16時間沈殿させ、その後、3回のDI水洗浄を行う。結果として生じる構造を、周囲温度(約23℃)でオーブンに入れ、約1.5時間の期間にわたって540℃まで上昇させる。オーブンの中での6時間の総時間(上昇および540℃持続)後に、オーブンをオフにし、サンプルを一晩冷却させる。
【0109】
(実施例3)
初期ステップとして、高分子電解質被覆カーボンナノチューブを調製する。ポリ(2−(N,N−ジメチルアミノエチル)メタクリラート(PDMAEMA)(0.15g)(Sigma Aldrich Bornem,Belgium)、NaCl(5.8g)、および100mLの脱イオン水を250mLフラスコに入れ、PDMAEMAおよびNaClが完全に溶解されるまで撹拌する。2MのHClを添加することによって、溶液のpH値を3.7に調整する。次いで、カルボキシル基(MWNT−COOH)(80mg)(Cheap Tubes,Inc.112 Mercury Drive,Brattleboro,VT,USA)で誘導体化された多層カーボンナノチューブを、調製されたままのPDMAEMA溶液に添加する。混合物を超音波浴(40kHz)に3分間入れ、穏やかに30分間撹拌する。次いで、固体を0.22マイクロメートルのMilliporeポリカーボネート膜フィルタを通した濾過によって分離し、DI水で3回洗浄する。結果として生じた固体を、DI水中のPSS(1.5g/L)(Sigma Aldrich,Bornem,Belgium)およびNaCl(1M)の100mLの水溶液に添加し、上記で説明されるのと同じステップに従う(超音波分散、穏やかな撹拌、濾過、および洗浄)。PDMAEMAおよびPSSのさらに2つの二重層を追加する。最終洗浄ステップ後に、結果として生じる粒子を、1g/Lの濃度のDI水に懸濁する。この溶液は、上記の実施例1のPS溶液に、および上記の実施例2のAtta溶液に代替される。
【0110】
本明細書では、種々の実施形態が具体的に図示され、説明されているが、本発明の修正および変化例は、上記の教示によって網羅され、本発明の精神および意図された範囲から逸脱することなく、添付の請求項の範囲内であることが理解されるであろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材表面の少なくとも一部分を覆うセラミック被覆とを備える、被覆部品であって、該セラミック被覆は、該基材表面と共形である下位セラミック層によって接続される、隆起した第1のセラミックシェルを備える、被覆部品。
【請求項2】
前記部品は、医療用部品である、請求項1に記載の被覆部品。
【請求項3】
前記医療用部品は、埋込型または挿入型医療デバイスである、請求項2に記載の被覆部品。
【請求項4】
前記医療デバイスは、ステント、導線、電気コイル、カテーテル、注射針、ガイドワイヤ、および塞栓デバイスから選択される、請求項3に記載の被覆部品。
【請求項5】
前記基材は、金属基材およびポリマー基材から選択される、請求項1に記載の被覆部品。
【請求項6】
前記セラミック被覆は、シリコン、チタン、ジルコニウム、イリジウム、およびそれらの組み合わせの酸化物から選択される、1つ以上の酸化物を含有する、請求項1に記載の被覆部品。
【請求項7】
前記セラミック被覆は、シリコン、チタン、ジルコニウム、イリジウム、およびそれらの組み合わせの炭化物ならびに窒化物から選択される、1つ以上の種を含有する、請求項1に記載の被覆部品。
【請求項8】
前記第1のセラミックシェルおよび前記下位セラミック層は、少なくとも90重量%の金属酸化物を含む、請求項1に記載の被覆部品。
【請求項9】
前記第1のセラミックシェルは、少なくとも部分的に中空である、請求項1に記載の被覆部品。
【請求項10】
前記少なくとも部分的に中空の第1のセラミックシェルは、常磁性粒子を含有する、請求項9に記載の被覆部品。
【請求項11】
前記第1のセラミックシェルは、ポリマー材料、金属材料、セラミック材料、および炭素から選択される材料を封入する、請求項1に記載の被覆部品。
【請求項12】
前記第1のセラミックシェルは、球状である、請求項1に記載の被覆部品。
【請求項13】
前記第1のセラミックシェルは、細長い、請求項1に記載の被覆部品。
【請求項14】
前記細長いシェルは、整列している、請求項13に記載の被覆部品。
【請求項15】
前記第1のセラミックシェルに接続される第2のセラミックシェルをさらに備える、請求項1に記載の被覆部品。
【請求項16】
ポリマー被覆をさらに備える、請求項15に記載の被覆部品。
【請求項17】
前記第1および第2のセラミックシェルは、球状である、請求項15に記載の被覆部品。
【請求項18】
前記第1および第2のセラミックシェルは、細長い、請求項15に記載の被覆部品。
【請求項19】
前記第1のセラミックシェルは、球状であり、前記第2のセラミックシェルは、細長い、請求項に記載の被覆部品。
【請求項20】
ポリマー被覆をさらに備える、請求項1に記載の被覆部品。
【請求項21】
前記ポリマー被覆は、治療薬を含む、請求項20に記載の被覆部品。
【請求項22】
前記医療デバイスは、ステントであり、前記治療薬は、抗増殖剤であり、前記セラミック被覆は、該ステント全体を覆って配置され、前記ポリマー被覆は、該ステントの管腔側表面を覆わず、該ステントの反管腔側表面を覆って配置される、請求項21に記載の被覆部品。
【請求項23】
前記ポリマー被覆は、潤滑被覆、電気絶縁被覆、生体吸収性被覆、およびタンパク質被覆から選択される、請求項20に記載の被覆部品。
【請求項24】
前記第1のセラミックシェルは、球状であり、前記ポリマー被覆の厚さは、該第1のセラミックシェルの高さによって決定される、請求項20に記載の被覆部品。
【請求項25】
前記基材は、止まり穴、貫通穴、または両方を備え、前記セラミックシェルは、該穴の中に優先的に配置される、請求項1に記載の被覆部品。
【請求項26】
前記セラミック被覆は、金属または半金属の酸化物、および高分子電解質を備える、請求項1に記載の被覆部品。
【請求項27】
前記セラミック被覆は、治療薬をさらに含む、請求項26に記載の被覆部品。
【請求項28】
前記セラミックシェルは、治療薬を含む材料を封入する、請求項1に記載の被覆部品。
【請求項29】
セラミック被覆を備える、カーボンナノチューブ。
【請求項30】
セラミック被覆を伴うカーボンナノチューブを備える、医療用部品。
【請求項1】
基材と、該基材表面の少なくとも一部分を覆うセラミック被覆とを備える、被覆部品であって、該セラミック被覆は、該基材表面と共形である下位セラミック層によって接続される、隆起した第1のセラミックシェルを備える、被覆部品。
【請求項2】
前記部品は、医療用部品である、請求項1に記載の被覆部品。
【請求項3】
前記医療用部品は、埋込型または挿入型医療デバイスである、請求項2に記載の被覆部品。
【請求項4】
前記医療デバイスは、ステント、導線、電気コイル、カテーテル、注射針、ガイドワイヤ、および塞栓デバイスから選択される、請求項3に記載の被覆部品。
【請求項5】
前記基材は、金属基材およびポリマー基材から選択される、請求項1に記載の被覆部品。
【請求項6】
前記セラミック被覆は、シリコン、チタン、ジルコニウム、イリジウム、およびそれらの組み合わせの酸化物から選択される、1つ以上の酸化物を含有する、請求項1に記載の被覆部品。
【請求項7】
前記セラミック被覆は、シリコン、チタン、ジルコニウム、イリジウム、およびそれらの組み合わせの炭化物ならびに窒化物から選択される、1つ以上の種を含有する、請求項1に記載の被覆部品。
【請求項8】
前記第1のセラミックシェルおよび前記下位セラミック層は、少なくとも90重量%の金属酸化物を含む、請求項1に記載の被覆部品。
【請求項9】
前記第1のセラミックシェルは、少なくとも部分的に中空である、請求項1に記載の被覆部品。
【請求項10】
前記少なくとも部分的に中空の第1のセラミックシェルは、常磁性粒子を含有する、請求項9に記載の被覆部品。
【請求項11】
前記第1のセラミックシェルは、ポリマー材料、金属材料、セラミック材料、および炭素から選択される材料を封入する、請求項1に記載の被覆部品。
【請求項12】
前記第1のセラミックシェルは、球状である、請求項1に記載の被覆部品。
【請求項13】
前記第1のセラミックシェルは、細長い、請求項1に記載の被覆部品。
【請求項14】
前記細長いシェルは、整列している、請求項13に記載の被覆部品。
【請求項15】
前記第1のセラミックシェルに接続される第2のセラミックシェルをさらに備える、請求項1に記載の被覆部品。
【請求項16】
ポリマー被覆をさらに備える、請求項15に記載の被覆部品。
【請求項17】
前記第1および第2のセラミックシェルは、球状である、請求項15に記載の被覆部品。
【請求項18】
前記第1および第2のセラミックシェルは、細長い、請求項15に記載の被覆部品。
【請求項19】
前記第1のセラミックシェルは、球状であり、前記第2のセラミックシェルは、細長い、請求項に記載の被覆部品。
【請求項20】
ポリマー被覆をさらに備える、請求項1に記載の被覆部品。
【請求項21】
前記ポリマー被覆は、治療薬を含む、請求項20に記載の被覆部品。
【請求項22】
前記医療デバイスは、ステントであり、前記治療薬は、抗増殖剤であり、前記セラミック被覆は、該ステント全体を覆って配置され、前記ポリマー被覆は、該ステントの管腔側表面を覆わず、該ステントの反管腔側表面を覆って配置される、請求項21に記載の被覆部品。
【請求項23】
前記ポリマー被覆は、潤滑被覆、電気絶縁被覆、生体吸収性被覆、およびタンパク質被覆から選択される、請求項20に記載の被覆部品。
【請求項24】
前記第1のセラミックシェルは、球状であり、前記ポリマー被覆の厚さは、該第1のセラミックシェルの高さによって決定される、請求項20に記載の被覆部品。
【請求項25】
前記基材は、止まり穴、貫通穴、または両方を備え、前記セラミックシェルは、該穴の中に優先的に配置される、請求項1に記載の被覆部品。
【請求項26】
前記セラミック被覆は、金属または半金属の酸化物、および高分子電解質を備える、請求項1に記載の被覆部品。
【請求項27】
前記セラミック被覆は、治療薬をさらに含む、請求項26に記載の被覆部品。
【請求項28】
前記セラミックシェルは、治療薬を含む材料を封入する、請求項1に記載の被覆部品。
【請求項29】
セラミック被覆を備える、カーボンナノチューブ。
【請求項30】
セラミック被覆を伴うカーボンナノチューブを備える、医療用部品。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図5G】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図7F】
【図7G】
【図7H】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図5G】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図7F】
【図7G】
【図7H】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11】
【公表番号】特表2010−534518(P2010−534518A)
【公表日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−518346(P2010−518346)
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【国際出願番号】PCT/US2008/070822
【国際公開番号】WO2009/018029
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(506192652)ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド (172)
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【国際出願番号】PCT/US2008/070822
【国際公開番号】WO2009/018029
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(506192652)ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド (172)
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
【Fターム(参考)】
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