説明

セラミック製の層状複合材及び、該セラミック製の層状複合材を製造するための方法

本発明は、セラミック製の層状複合材(1)であって、非酸化物セラミックから成るセラミック製の基板(3)を含んでいる形式のものに関する。セラミック製の層状複合材(1)はその表面上にセラミック製の層(7)を含んでおり、該セラミック製の層(7)は、大きな比表面積を有している。本発明は、さらにセラミック製の層状複合材(1)を製造するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック製の層状複合材であって、非酸化物セラミックから成るセラミック製の基板を含んでおり、該基板上にセラミック製の層を設けてある形式のものに関する。
【0002】
酸化物セラミックに比べて、非酸化物セラミックは、共有結合の割合の高い特性を有している。このことは、高い結合エネルギーに基づき高い化学的及び熱的な安定性を可能にし、かつ高い弾性係数、並びに高い強度及び硬度を生ぜしめている。しかしながら非酸化物セラミックは、延性が低く、靱性が極めて高いものである。
【0003】
殊に窒化ケイ素セラミックは、著しく高い動的応力を受けかつ高い信頼性の要求される機械構成部分のために用いられる。さらに、窒化ケイ素セラミックは、高温用材料として適している。例えば窒化ケイ素セラミックの使用分野として、内燃機関のシース形グロープラグ、加熱エレメント、切刃材料による金属加工用の製品(スローアウェイチップ)、球体、ローラ及びリングを用いる転がり軸受分野、及びエンジン若しくはタービンにおける高負荷の機械要素がある。
【0004】
腐食作用のある熱い媒体は、非酸化物セラミックの使用にとって問題である。非酸化物セラミックは、その脆性及び開放気泡に基づき、高温で酸化しやくすなっている。腐食作用により材料劣化、強度低下、亀裂や破壊が生じて、ひいては構成部分及び要素の急速な摩耗を生ぜしめてしまうことになる。この種のセラミック要素の作動確実性を高め、かつ耐久性及び有効寿命を改善するために、セラミック要素は腐食に対して有効に保護されねばならない。
【0005】
腐食防止のための適切な手段は、非酸化物セラミックを別のセラミック層で被覆することである。しかしながら殊に、セラミック同士を結合する接着結合は、限定的な熱負荷にしか耐えられず、したがって高温での使用にとって全く適していない。
【0006】
高温での使用の際にも十分な腐食防止を達成するために、非酸化物セラミック上にセラミック層を設けることが知られており、この場合に設けられるセラミック層は非酸化物セラミックに化学的に結合されている。セラミック層(セラミック製の層)のこのような成形は、雰囲気プラズマスプレー法によって行われている。
【0007】
殊にシース形グロープラグのための使用の場合には、セラミック層は、内燃機関の燃焼室内への燃料の噴射に際して発生する燃料噴流によって熱衝撃及び浸食を受けることになる。熱衝撃は、最悪の場合にはセラミックの亀裂若しくは破損を引き起こしてしまうことになる。このような浸食は腐食及び腐食生成物の切除により生じ、これによって腐食は進行することになる。
【0008】
本発明に基づき形成されるセラミック製の層状複合材は、非酸化物セラミックから成るセラミック製の基板を含んでおり、該基板上にセラミック製の層を設けてあり、該セラミック製の層は、大きな比表面積を有している。本発明において大きな比表面積なる記載は、比表面積が10〜350m2 /gの範囲内にあることを意味している。
【0009】
大きな比表面積は、形成された燃料噴射流を気化させるべき表面に用いられる。このような構成は、表面における気化を急速に生ぜしめ、ひいては、比表面積の小さなシース形グロープラグに比べてシース形グロープラグをわずかにしか冷やさないようになっている。
【0010】
セラミック製の基板(セラミック基板)に用いられる適した非酸化物セラミックは、例えば窒化ケイ素、炭化ケイ素及び窒化アルミニウムである。
【0011】
非酸化物セラミックなる用語は、本発明において、単数若しくは複数の添加物をドープ若しくは混合される非酸化物・セラミック材料をも含むものである。添加物は、例えばAl2O3、MgO、Yb2O3、Y2O3のグループ及び、例えば製造の際に焼結添加剤として添加される別の希土類酸化物から選ばれる。この種の添加剤はセラミック材料の特性に影響を及ぼして、該特性を改善するものである。この種の材料から成る部材は、高温発生部位にも信頼して用いられるものである。
【0012】
殊に有利な非酸化物セラミックとして窒化ケイ素が考えられ、それというのは窒化ケイ素は、厳しい使用条件に適う種々の優れた材料特性を有しているからである。窒化ケイ素は特に、高温発生部位における使用のために、例えばシース形グロープラグのために適している。シース形グロープラグにおいては、セラミック製の基板は一般的に1400℃までの温度に加熱される。これに対して窒化ケイ素は、殊にシース形グロープラグの場合に冷たい燃料噴射流の形成により交番する熱負荷に対する良好な耐熱性(耐交番熱性)を有している。
【0013】
しかしながら窒化ケイ素は、腐食作用を有する媒体のあるところでは腐食する傾向にあるので、腐食に対して保護されねばならない。このことは、耐腐食層として機能する多孔質の低いセラミック製の層を施す、つまり設けることによって行われる。このようなセラミック製の層(セラミック層)は、セラミック製の基板(セラミック基板)又はサブストレートと比表面積の大きなセラミック製の層(セラミック層)との間に配置されている。
【0014】
本発明において、低い多孔質なる記載は、多孔体積が10%よりも少ないことを意味している。
【0015】
耐腐食層として機能する多孔質(又は多孔性)の低いセラミック製の層は、有利には、Al2O3、AIN、希土類ケイ酸塩、例えばYb2O3 *SiO2、又はY2O3 *SiO2 、希土類酸化物、Si3N4、ムライト、コーディエライト、又はアルミノケイ酸塩から成る化学結合されたセラミック層である。化学結合なる用語は、本発明では、層間をイオン及び/又は共有により結合することを意味している(イオン結合及び/又は共有結合)。層は基板に付加的に機械的にも結合されるものである。
【0016】
多孔質の低いセラミック製の層の付加的な化学結合は、純然たる機械的結合及び物理的な相互作用に対して次の利点を有しており、つまり、基板と低い多孔質のセラミック製の層との間の結合部の破壊には極めて大きなエネルギーを必要とし、かつセラミック組織内の亀裂進行は著しく遅くなっている。結合部は有利には、基板表面から多孔質の低いセラミック製の層への移行部において熱膨張及び弾性係数の滑らかな適合を達成できるように形成されている。このように本発明に基づき材料特性を滑らかに移行(変化又は推移)することにより、耐腐食層の剥離は確実に避けられる。これによって、基板の明確に改善された耐摩耗性及び高い耐用年数を達成している。
【0017】
多孔質の低いセラミック製の層のセラミック材料は、有利には、該セラミック材料の材料特性がセラミック製の基板の材料特性とできるだけ同じであるように選ばれている。多孔質の低いセラミック製の層及びセラミック製の基板の特に熱膨張係数は、互いに狭い範囲内にあり、つまりわずかしか異なっていない。このような構成により、特に熱的にしばしば生じる交番負荷(交番熱負荷)の際の層間の大きな応力の発生は避けられるようになっている。このようにして、高い強度及び優れた耐交番負荷性を有する傾斜機能形のセラミック複合材(複数の層を積層して形成されたセラミック製層状複合材又は積層複合材)を提供することができるようになっている。
【0018】
多孔質の低いセラミック製の層は、2μm〜1mmの範囲、殊に有利には2μm〜100μmの範囲の厚さを有している。
【0019】
本発明の1つの実施態様では、セラミック製の基板表面と多孔質の低いセラミック製の層との間に、別の少なくとも1つのセラミック製の層を設けてある。セラミック製の基板表面と多孔質の低いセラミック製の層との間に設けられ、つまり含まれる前記別の各層は、該各層の下側に位置するセラミック製の層と有利には化学的に結合されている。同時に、下側に位置する層との機械的な結合も生じる。基板表面と多孔質の低いセラミック製の層との間に位置する少なくとも1つのセラミック製の層は、多孔質の低いセラミック製の層と同じセラミック材料から成っていてよく、若しくは多孔質の低いセラミック製の層と異なるセラミック材料から成っていてよい。別のセラミック製の層は、有利な実施態様では、セラミック製の基板と多孔質の低いセラミック製の層との間の付着剤層又は接着剤層として作用するようになっている。別のセラミック製の層により、基板の耐食性はさらに著しく高められている。
【0020】
少なくとも1つの別のセラミック製の層は、2μm〜1mmの範囲、有利には20μm〜100μmの範囲の厚さを有している。比表面積の大きなセラミック製の層は、1つの実施態様では、別のセラミック製の層若しくは第1のセラミック製の層よりも厚く形成されている。少なくとも1つの別のセラミック製の層は、有利には同じく耐腐食層として作用するようになっている。
【0021】
基板から比表面積の大きなセラミック製の層までの層順序は、層間の移行において材料特性、殊に熱膨張係数の最適な勾配を生ぜしめるように規定されている。材料特性の滑らかな移行(特性線の緩やかな勾配若しくは特性線の滑らか又は連続的な推移)により、セラミック製の層間の応力及び各セラミック製の層の剥離は避けられ、少なくとも減少されるようになっている。これにより、セラミック製の層状複合材は、優れた耐腐食性及び耐摩耗性を有している。
【0022】
材料特性の滑らかな移行又は変化(緩やかな勾配)は例えば、多孔質の低いセラミック製の層及び比表面積の大きなセラミック製の層を同一のセラミックから製造することによって達成される。この場合に有利には、セラミックの塗布成形の際のプロセス特性は、層がまず低い多孔質を有し、次いで該パラメータの変化によって比表面積を増大するように変えられる。このために、特にプラズマスプレー法が適している。
【0023】
有利な実施態様では、比表面積の大きなセラミック製の層は、多孔質の低いセラミック製の層と同一のセラミックによって形成されている。多孔質の低いセラミック製の層及び比表面積の大きなセラミック製の層のために同一のセラミックを用いる利点は、両方の層が同一の材料特性、殊に同一の熱膨張係数を有していることにある。
【0024】
比表面積の大きなセラミック製の層のための適切な材料は、例えばムライト、希土類ケイ酸塩、例えばY2O3 *SiO2 若しくはYb2O3 *SiO2、コーディエライト、アルミノケイ酸塩、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、若しくはこれらの混合物である。比表面積の大きなセラミック製の層のための有利な材料は、ムライト又は希土類ケイ酸塩である。大きな比表面積を得るために、有利な実施態様では該セラミック製の層は多孔質である。この場合に有利には層の多孔質は、セラミック製の層状複合材をシース形グロープラグに用いる場合に、該多孔質により燃料の組成に基づき最適な蒸発又は気化を可能にするように形成されている。この場合に多孔質の形成は一般的に、被覆すべき表面におけるセラミックの意図的な遊離によって、若しくは塗布成形の後にセラミックから焼却除去される例えばポリマー粒子の混入によって行われる。
【0025】
別の実施態様によれば、比表面積の大きなセラミック製の層は、表面に複数の凹部を含み、若しくは微細構造部(又はマイクロパターン)を施され、つまり設けられている。表面の凹部若しくは設けられた微細構造部により、比表面積は増大されている。表面の凹部若しくは微細構造部は例えばレーザー加工により成形される。
【0026】
本発明はさらに、セラミック製の層状複合材の製造のための方法に関する。この場合に、セラミック製の基板上における比表面積の大きなセラミック製の層の成形は、プラズマスプレー法、懸濁プラズマ法、CVD法(Chemical Vapor Deposition[化学蒸着法])又はPVD法(Physical Vapor Deposition[物理蒸着法])によって、或いはゾル-ゲル懸濁液の塗布及び続く熱処理によって行われる。プラズマスプレー法、懸濁プラズマ法、CVD法又はPVD法の利点は、これらの方法によって、比表面積の大きなセラミック製の層に所定の表面構造部(表面に形成される構造部又は成形パターン、例えば凹凸又はピン状部分)を意図的に成形することができることにある。
【0027】
比表面積の大きなセラミック製の層をゾルゲル懸濁法により成形する場合に、有利な実施態様では懸濁液は同じくポリマー粒子を含んでおり、該ポリマー粒子は、比表面積の大きなセラミック製の層若しくは第2の層に微細孔又は多孔を形成するために、熱処理によって該層から焼却除去される。
【0028】
有利な実施態様では、比表面積の大きなセラミック製の層の成形はプラズマスプレー法を用いて行われる。この場合に、雰囲気プラズマスプレー法又は大気圧プラズマスプレー法も真空下でのプラズマスプレー法も用いられる。
【0029】
プラズマガスとしては有利にはアルゴン又はヘリウムが用いられる。プラズマガスに還元ガスを追加的に添加又は混合することができる。有利な還元ガスは、水素である。アルゴンと水素又はヘリウムと水素との混合物を用いる場合には、水素の比率は有利には体積比5%以下である。
【0030】
プラズマガスへの還元ガスの添加によって、基板表面から酸化膜が除去される。基板上へのセラミック製の層の付着又は接着を改善するために、基板をまず粗面化することも可能である。基板表面の粗面化及び洗浄の前処理は、例えば小さな粒子を含む噴流によって行われる。有利には前処理は、基板の損傷及び破損を避けるため、又は減少させるために小さい粒子(微粒子)を用いて低い圧力で行われる。
【0031】
多孔質の低いセラミック製の層の成形は、セラミック製の基板の表面における雰囲気プラズマスプレー法(APS)によっても有利に行われる。
【0032】
粗面化及び洗浄の前処理と同時に、セラミック製の層は基板上に成形されてよい。粉末状の被覆添加物(又は層添加物)として、プラズマガスに、金属性又はセラミック性のあらゆる材料を添加することができ、該材料は基板上にセラミック製の層を形成し、若しくはセラミック製の層に変換される。被覆添加物は例えば、窒素を用いたニトロ化によりAINに変換されるアルミニウム粉末、Al2O3、Si3N4、コーディエライト(菫青石)、ムライト、希土類ケイ酸塩若しくはアルミノケイ酸塩である。
【0033】
多孔質の低いセラミック製の層のための被覆添加物又は層添加物は有利には、成形された該層が基板のセラミック性の材料と実質的に同一の材料特性、殊に熱膨張係数を有するように選ばれている。比表面積の大きなセラミック製の層のための被覆添加物は、本発明によれば、成形された該層が、多孔質の低いセラミック製の層と実質的に同一の材料特性を有するように選ばれている。材料特性の連続的な移行又は変化により、セラミック製の層の剥離が有利に避けられる。このことは、著しく改善された耐腐食性及び耐摩耗性を可能にし、かつ急激な熱変化若しくは交番温度に対する耐熱性の改善に基づく高い耐用年数を可能にしている。
【0034】
比表面積の大きなセラミック製の層にとって必要な比表面積は、例えば粗面化によって、若しくは微細構造部又はマイクロパターンの成形によって、例えば格子構造部若しくは多数(複数)の微細な凹凸又はピン状部分の成形によって得られてよい。
【0035】
別の実施態様によれば、比表面積の大きなセラミック製の層のセラミックの塗布に際して、層材料又は被覆材料内に粒子を含んでおり、該粒子は、セラミックの塗布の後に、第2のセラミック製の層又は比表面積の大きなセラミック製の層の多孔質(多孔性)を得るために除去される。粒子の除去は、粒子が溶剤に可溶性である場合には、例えばセラミックからの粒子の溶出によって行われる。別の実施態様によれば、特に比表面積の大きなセラミック製の層を低い温度で成形する場合には、ポリマーを用いてあり、ポリマーは高い温度での焼却によってセラミックから除去されるものである。
【0036】
基板表面と多孔質の低いセラミック製の層との間、多孔質の低いセラミック製の層と比表面積の大きなセラミック製の層との間、或いは基板表面と比表面積の大きなセラミック製の層との間の化学的な結合を改善するために、有利な実施態様では、基板は、多孔質の低いセラミック製の層若しくは比表面積の大きなセラミック製の層を施す、つまり成形する前に、又は成形中に加熱されるようになっている。殊に有利な実施態様では、基板は層材料、つまり被覆材料の結晶化温度を超えて加熱される。基板のこのような加熱により、基板表面から多孔質の低いセラミック製の層への移行部、若しくは多孔質の低いセラミック製の層から比表面積の大きなセラミック製の層への移行部に、拡散に基づき追加的に材料特性の勾配を付与して、該材料特性の勾配(傾斜)若しくは傾斜機能により、成形されたセラミック製の層状複合材の急激な熱変化若しくは交番温度に対する耐熱性を著しく高めるようになっている。
【0037】
基板表面と低い多孔質を有するセラミック製の層との間に少なくとも1つの別の層を施し、つまり設けてある場合には、該別の層は、多孔質の低いセラミック製の層の被着のための付着剤層又は接着剤層としても作用するようになっていてよい。多孔質の低いセラミック製の層は、化学的に結合される別のセラミック製の層よりも厚くなっていてよい。このような構成により、基板の耐腐食性はさらに改善される。
【0038】
セラミック製の層状複合材の良好な耐熱性並びに、施されて蒸発の改善を可能にするものでありかつぶつかる液体の蒸発により絶縁作用を生ぜしめる蒸気層をも形成する比表面積の大きなセラミック製の層の良好な耐熱性に基づき、本発明に基づくセラミック製の層状複合材は、有利には、内燃機関、殊に自己着火式の内燃機関に使用されるシース形グロープラグの製造のために用いられるようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に基づき形成されたセラミック製の層状複合材の第1の実施形態を示す図である。
【図2】本発明に基づき形成されたセラミック製の層状複合材の第2の実施形態を示す図である。
【0040】
セラミック製の層状複合材1は、非酸化物セラミックから成るセラミック製の基板3を含んでいる。有利には、基板3は、窒化ケイ素(Si3N4)・セラミックから製造されている。窒化ケイ素・セラミックの利点は、該セラミックが過酷な条件下での層状複合材の使用を可能にする材料特性を有していることにある。殊に高い温度での使用を可能にしている。
【0041】
窒化ケイ素の代わりに、BN、TiN、TiAIN、AIN、サイアロン、SiCも用いることができる。しかしながら有利には窒化ケイ素である。
【0042】
前に述べてあるように、非酸化物セラミックなる用語は、1つ若しくは複数の添加物がドープ(ドーピング)され又は加えられた非酸化のセラミック材料をも意味している。添加物は、例えばAl2O3、MgO、Yb2O3、Y2O3のグループ及び、例えば製造の際に焼結添加剤として用いられるほかの希土類酸化物から選ばれる。
【0043】
セラミック製の基板上にセラミック製の層5を設けてある。セラミック製の層5は、低い多孔質によって特徴づけられる。
【0044】
低い多孔質を有するセラミック製の層5の成形は、有利には雰囲気プラズマスプレー法(又は雰囲気プラズマス溶射法)により行われる。この場合にガス流は、粉末状の層材料が供給される高エネルギーのプラズマ並びにイオン化及び解離されたガスから約12000Kの温度で形成されて、被覆すべき基板3に向けて供給される。粉末状の層材料(被覆材料)は、溶解して、ガス流によって被覆品、つまり基板の表面上へ射出され、そこでただちに凝固するようになっている。上記極端な温度により、金属粉末や高温溶融タイプのセラミック粉末等のほぼすべての素材が被覆材料として用いられるようになっている。上記方法は、所定の厚さを有する硬い層の成形のために特に適している。上記方法は一般的に標準圧力で行われる。しかしながら、上記方法を真空中で若しくは保護ガス下で行うことも可能である。
【0045】
本発明によれば、低い多孔質を有するセラミック製の層5上に、大きな比表面積を有するセラミック製の層7を設けてある。該大きな比表面積は、セラミック製の層7が、図1に示してあるように多孔質であることによって達成される。多孔質(多孔性)は、例えば次のようにして得られ、つまり多孔質の層7が、低い多孔質を有するセラミック製の層5の上に塗布して成形される。多孔質は、例えばスペースホルダーを被覆材料と一緒に塗布して形成することによって得られる。スペースホルダーは第2のセラミック製の層の成形の後にセラミック製の層7から除去される。除去は、例えば溶出若しくは焼却によって行われる。焼却(燃やし尽くし)は、孔を満たしている粒子が、セラミック製の層7の材料よりも低い引火点を有している場合に可能である。
【0046】
大きな比表面積を有するセラミック製の層7の成形は、有利にはプラズマスプレー法(又はプラズマ溶射法)により行われる。プラズマスプレー法の場合には、セラミック粒子は、低い多孔質を有するセラミック製の層5上に意図的に塗布される。これによって所望の多孔質が、すでにセラミック製の層7の成形時に得られる。別の実施形態では、比表面積の大きなセラミック製の層7を、懸濁プラズマ法、CVD法若しくはPVD法によって成形することも可能である。懸濁プラズマ法、CVD法若しくはPVD法により比表面積の大きなセラミック製の層7を成形する場合にも、比表面積の大きなセラミック製の層7の多孔質は、すでに成形時に得られるようになっている。
【0047】
別の実施形態は、比表面積の大きなセラミック製の層7をゾルゲル懸濁法により成形して、次いで熱的に処理することにある。このような実施形態においては、比表面積の大きなセラミック製の層7の多孔質を得るために、塗布すべき懸濁液は粒子を添加される。粒子は、例えば球状の粒子であり、有利にはすでに低い温度で熱的に分解される材料によって製造されている。適切な材料は例えばポリマーである。粒子は、懸濁液の塗布の後に被覆から焼却除去される。これにより、比表面積の大きなセラミック製の層7内に所定の多孔質が生ぜしめられる。
【0048】
図2には、第2の実施形態のセラミック製の層状複合材を示してある。
【0049】
図2に示してあるセラミック製の層状複合材1は、図1に示すセラミック製の層状複合材1と次の点で異なっており、つまり、多孔質の低いセラミック製の層5上に、微細構造部9として形成された比表面積の大きなセラミック製の層7を成形してある。微細構造部9は、図示してあるように例えばピン状である。微細構造部9の別の形状も考えられる。ピン状の構造部は、プラズマ溶射法における被覆材料の意図的な塗布により成形される。適切な材料は、例えばムライト、希土類ケイ酸塩、例えばY2O3 *SiO2 若しくはYb2O3 *SiO2、コーディエライト、アルミノケイ酸塩、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、若しくはこれらの混合物である。
【0050】
図1及び図2に示す実施形態に対して追加的に、若しくは異なって、比表面積の大きなセラミック製の層7の表面積を増大するために、該層に複数の凹部を設けることも可能である。凹部は任意のあらゆる形を有していてよいものである。有利には、凹部は、比表面積の大きなセラミック製の層7の表面のレーザー処理によって成形される。さらに別の実施形態として、凹部を、比表面積の大きなセラミック製の層7における穿孔の形で設けることも可能である。
【0051】
本発明に基づく被覆により、セラミック製の基板3は腐食に対しても、熱衝撃に対しても保護されている。多孔質の低いセラミック製の層5は、耐食層として機能して、基板3のセラミック材料の酸化を防止している。比表面積の大きなセラミック製の層7は、蒸発層又は気化層として機能するようになっている。該層に当たる液体は該層上で蒸発(気化)して、蒸気層を形成して、追加的な絶縁体として用いられ、その結果として冷たい液体が基板3に当たるようなことはなくなっている。
【0052】
図1及び図2に示す実施形態のほかに、基板3と多孔質の低いセラミック製の層5との間に、さらに別の少なくとも1つのセラミック製の層を設けることも可能である。別の少なくとも1つのセラミック製の層は、有利には同じく、低い多孔質を有していて、したがって耐食層として用いられる。基板3と多孔質の低いセラミック製の層5との間に設けられる別のセラミック製の層のための材料は、有利には、多孔質の低いセラミック製の層5と同じ材料である。
【0053】
さらに別の実施形態によれば、比表面積の大きなセラミック製の層7を、直接に基板3に設けることも可能である。この場合にはセラミック製の基板3の、殊に熱衝撃に対する保護を行うようになっている。
【0054】
本発明に基づくセラミック製の層状複合材1は、高温でかつ腐食性の環境下での使用に適している。この種の使用例は、例えば自己着火式の内燃機関用のシース形グロープラグである。
【符号の説明】
【0055】
1 層状複合材、 3 基板、 5,7 層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック製の層状複合材であって、非酸化物セラミックから成るセラミック製の基板(3)を含んでおり、該基板上にセラミック製の層(7)を設けてある形式のものにおいて、前記セラミック製の層(7)は、大きな比表面積を有していることを特徴とするセラミック製の層状複合材。
【請求項2】
前記セラミック製の基板(3)と前記比表面積の大きなセラミック製の層(7)との間に、多孔質の低いセラミック製の層(5)を設けてある請求項1に記載のセラミック製の層状複合材。
【請求項3】
前記セラミック製の基板(3)と前記多孔質の低いセラミック製の層(5)との間に、別の少なくとも1つのセラミック製の層を設けてある請求項2に記載のセラミック製の層状複合材。
【請求項4】
前記多孔質の低いセラミック製の層(5)と前記比表面積の大きなセラミック製の層(7)とは同一のセラミックによって形成されている請求項2又は3に記載のセラミック製の層状複合材。
【請求項5】
前記比表面積の大きなセラミック製の層(7)は、ムライト、希土類ケイ酸塩、コーディエライト、アルミノケイ酸塩、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、若しくはこれらの混合物、有利にはムライト又は希土類ケイ酸塩を含んでいる請求項1から4のいずれか1項に記載のセラミック製の層状複合材。
【請求項6】
前記比表面積の大きなセラミック製の層(7)は、多孔質である請求項1から5のいずれか1項に記載のセラミック製の層状複合材。
【請求項7】
前記比表面積の大きなセラミック製の層(7)は、該層の表面に複数の凹部を有しており、又は、セラミック製の層状複合材(1)上の微細構造部(9)として形成されている請求項1から5のいずれか1項に記載のセラミック製の層状複合材。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載のセラミック製の層状複合材(1)を製造するための方法において、前記比表面積の大きなセラミック製の層(7)は、前記セラミック製の層状複合材(1)上に、プラズマスプレー法、懸濁プラズマ法、CVD法又はPVD法と、若しくはゾル-ゲル懸濁液の塗布と、続く熱処理とによって成形されることを特徴とする、セラミック製の層状複合材を製造するための方法。
【請求項9】
前記比表面積の大きなセラミック製の層(7)の比表面積は、粗面化によって若しくは微細構造部(9)の成形によって増大される請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記比表面積の大きなセラミック製の層(7)のセラミックの塗布に際して、被覆材料内に粒子を含んでおり、該粒子は、前記塗布の後に、前記比表面積の大きなセラミック製の層(7)の多孔質を得るために除去される請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
プラズマスプレー法は、プラズマガスとしてのアルゴン又はヘリウムを用いて行われる請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記プラズマガスに水素を混入する請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記多孔質の低いセラミック製の層(5)は、プラズマスプレー法により前記セラミック製の基板(3)の表面上に成形される請求項8から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1から7のいずれか1項に記載のセラミック製の層状複合材を使用する方法において、該セラミック製の層状複合材を内燃機関用のシース形グロープラグのための材料として使用することを特徴とする、セラミック製の層状複合材を使用する方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−502091(P2011−502091A)
【公表日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527393(P2010−527393)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際出願番号】PCT/EP2008/062411
【国際公開番号】WO2009/047096
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】